JP2006054091A - 導電性被膜被覆ガラス基板及びその製造方法 - Google Patents

導電性被膜被覆ガラス基板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた導電性を発揮できると共に、耐衝撃性及び生産性に優れた導電性被膜被覆ガラス基板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ガラス基板2と、その表面の少なくとも一部に形成された導電性被膜3とを有する導電性被膜被覆ガラス基板1である。導電性被膜3は、金属を主成分とし、ガラス成分を0重量%〜5重量%含有する。また、被覆工程と焼成工程とを有する導電性被膜被覆ガラス基板1の製造方法である。被覆工程においては、ガラス基板2の表面の少なくとも一部に、導電性ペーストを塗布してペースト被膜を形成する。焼成工程においては、ペースト被膜が形成されたガラス基板2を温度550〜900℃にて焼成し、金属からなる導電性被膜3を形成させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガラス基板の表面に導電性被膜を有する導電性被膜被覆ガラス基板及びその製造方法に関する。
トッププレート下部にハロゲンヒーター等の発熱体を取り付けた電気調理器、或いは誘電コイルを用いて電磁誘導作用により発熱させる電磁調理器は、その安全性のため、近年特に需要が高まってきている。これらのトッププレート自体としては、例えば図2に示すごとく低膨張ガラス基板7の表面に、導電性表示部等の導電性被膜8を被覆してなる導電性被膜被覆ガラス基板6がある。
上記導電性被膜被覆ガラス基板は、例えば低膨張ガラス基板の表面に、導電性を有する導電性ぺ一ストを、スクリーン印刷法等により導体路等の所望の形状に印刷し、焼成して作製することにより作製されていた。
従来、このような導電性ペーストとしては、金属等の導電性粉末材料とガラスフラックス等を含有するものが用いられていた(特許文献1参照)。また、ガラスフリットを含有する銀ペーストをガラス基板に焼き付けて第1層を形成し、該第1層の上からガラスフラックスを含有しない銀ペーストを焼き付けて二層構造の導電性被膜を形成する技術も開示されている(特許文献2参照)。
このように、導電性ペーストにガラスフラックスを含有させることにより導電性ペーストをガラス基板に密着性よく焼き付けることができると考えられていた。
しかしながら、このような従来の導電性ぺ一ストを低膨張ガラス基板の表面に、例えば焼成温度600〜900℃で焼き付けて導電性被膜被覆ガラス基板を形成した場合には、図2に示すごとく、導電性被膜8と低膨張ガラス基板7との界面に反応層9が形成され、該反応層9にクラックが発生する場合があった。その結果、導電性被膜被覆ガラス基板6の耐衝撃性(落球衝撃に対する耐性や曲げ強度等)が劣化し、例えば導電性被膜8を形成した面(被覆膜形成面)と反対側の面から衝撃が加えられた際に、比較的容易に導電性被膜被覆ガラス基板が破損するおそれがあった。このとき、導電性被覆ガラス基板の耐衝撃性は、導電性被膜を形成する前のガラス基板自体の耐衝撃性よりも低くなり易い。
このような耐衝撃性の低下を抑制するため、従来においては、導電性ペーストのガラス基板に対する焼き付けを、例えば600℃未満という低温で行っていた。
ところが、600℃未満という低温で焼成を行った場合には、焼成後の導電性被膜の比抵抗が、金属の理論抵抗値より1桁以上高くなり、充分な導電性が得られないという問題があった。
また、導電性被膜被覆ガラス基板には、通常、導電性被膜を形成する面とは反対側の面等に、様々な装飾膜が高温で焼き付けられる。
したがって、導電性被膜を600℃未満という低温にて焼き付けを行う場合には、装飾膜等の焼き付けを導電性ペーストの焼き付けとは別工程の焼成で行う必要があった。即ち、この場合には、複数回の焼成を行う必要性があり、生産効率が低下するという問題があった。
特開2003−217347号公報 特開平7−141914号公報
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、優れた導電性を発揮できると共に、耐衝撃性及び生産性に優れた導電性被膜被覆ガラス基板及びその製造方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、ガラス基板と、該ガラス基板の表面の少なくとも一部に形成された導電性被膜とを有する導電性被膜被覆ガラス基板において、
上記導電性被膜は、金属を主成分とし、ガラス成分を0重量%〜5重量%含有することを特徴とする導電性被膜被覆ガラス基板にある(請求項1)。
上記第1の発明の導電性被膜被覆ガラス基板において、上記導電性被膜は、金属を主成分とし、5重量%以下という微量のガラス成分を含有するか、又はガラス成分を全く含有していない。
そのため、上記導電性被膜被覆ガラス基板は、その作製時において、ガラス基板と導電性被膜のガラス成分とが反応して生じる反応層を生じることがほとんどなく、クラックをほとんど有していない。それ故、上記導電性被膜被覆ガラス基板は、耐衝撃性に優れたものとなる。
また、上述のごとく、作製時において反応層を生じることがほとんどないため、上記導電性被膜被覆ガラス基板の作製においては、例えば600℃以上という高温で焼成して上記導電性被膜を形成することができる。そのため、上記導電性被膜は、比抵抗が低く、高い導電性を発揮できる。さらに、高温にて焼成できるため、上記ガラス基板に例えば他の装飾層等を設ける場合であっても、該装飾層等を上記導電性被膜と同時に焼き付けることができる。即ち、作製時における焼成回数を減らすことができるため、上記導電性被膜被覆ガラス基板は、生産性に優れたものとなる。
このように、上記第1の発明によれば、優れた導電性を発揮できると共に、耐衝撃性及び生産性に優れた導電性被膜被覆ガラス基板を提供することができる。
第2の発明は、ガラス基板の表面に、金属を主成分とする導電性被膜を形成して導電性被膜被覆ガラス基板を製造する方法において、
上記ガラス基板の表面の少なくとも一部に、導電性ペーストを塗布してペースト被膜を形成する被覆工程と、
上記ペースト被膜が形成された上記ガラス基板を温度550〜900℃にて焼成し、金属からなる上記導電性被膜を形成させる焼成工程とを有し、
上記被覆工程における上記導電性ペーストは、金属粒子を95重量部以上、ガラスフラックスを0〜5重量部、及び上記金属粒子とガラスフラックスとの合計量100重量部に対して有機バインダーを20〜45重量部含有することを特徴とする導電性被膜被覆ガラス基板の製造方法にある(請求項4)。
上記第2の発明の製造方法においては、上記被覆工程と上記焼成工程とを行う。
上記被覆工程においては、上記ガラス基板の表面の少なくとも一部に、上記特定組成の上記導電性ペーストを塗布することにより、上記ペースト被膜を形成する。また、上記焼成工程においては、上記ペースト被膜が形成された上記ガラス基板を温度550〜900℃にて焼成する。そして、上記ガラス基板の表面に、金属からなる上記導電性被膜を形成させる。
即ち、上記被覆工程においては、5重量%以下という微量のガラスフラックスを含有するか、またはガラスフラックスを含有しない上記導電性ペーストを用いて上記ペースト被膜を形成し、上記焼成工程においては、上記ペースト被膜を温度550〜900℃という高温で上記ガラス基板に焼き付けている。
そのため、上記焼成工程後に得られる上記導電性被膜被覆ガラス基板においては、上記ガラス基板と焼成後の上記導電性被膜との間に、ガラス基板とガラスフラックスとが反応して生じる反応層がほとんど生じない。その結果、クラックの発生を抑制又は防止できる。それ故、耐衝撃性に優れた導電性被膜被覆ガラス基板を作製することができる。
また、上記焼成工程においては、550〜900℃という高温で焼成を行っている。
そのため、焼成後の上記導電性被膜は、比抵抗が低くなり、高い導電性を発揮することができる。
さらに、550〜900℃という高温にて焼成を行うことができるため、上記ガラス基板に例えば他の装飾層等を設ける場合であっても、該装飾層等を上記導電性被膜と同時に焼き付けることができる。即ち、焼成回数を減らすことができるため、生産性良く上記導電性被膜被覆ガラス基板を作製できる。
このように、上記第2の発明によれば、優れた導電性を発揮できると共に、耐衝撃性及び生産性に優れた導電性被膜被覆ガラス基板の製造方法を提供することができる。
次に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明において、上記導電性被膜被覆ガラス基板は、上記ガラス基板と、該ガラス基板の表面の少なくとも一部に形成された導電性被膜とを有する。
上記ガラス基板としては、例えば低膨張結晶化ガラス、石英ガラス等からなるものがある。
上記ガラス基板の熱膨張係数は、−5×10-7〜60×10-7/Kであることが好ましい。熱膨張係数が−5×10-7/K未満の場合には、上記導電性被膜との熱膨張差が大きくなり、導電性被膜がガラス基板から剥離するおそれがある。一方、60×10-7/Kを超える場合には、熱衝撃によりガラス基板が破壊するおそれがある。
また、上記ガラス基板は、該ガラス基板の表面又は低膨張ガラス基板自体に着色が施されていてもよい。さらに、上記ガラス基板には、上記導電性被膜とは別に模様等の絵付けが施されていてもよい。この場合には、上記導電性被膜被覆ガラス基板の意匠性を向上させることができる。
次に、上記第1の発明において、上記導電性被膜は、金属を主成分とする。該金属としては、例えば銀、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等から選ばれる1種以上を用いることができる。好ましくは貴金属がよい。また、貴金属と他の金属との合金を用いることもできる。また、上記導電性被膜における金属は、その一部が酸化されていてもよい。
上記導電性被膜中の金属は、銀を主成分とすることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記導電性被膜の導電性をより向上させることができると共に、上記導電性被膜と上記ガラス基板との密着性をより向上させることができる。
また、上記導電性被膜は、ガラス成分を0重量%〜5重量%含有する。
ガラス成分の含有量が5重量%を超える場合には、上記導電性被膜と上記ガラス基板との界面に、クラックが発生するおそれがある。そのためこの場合には、上記導電性被膜被覆ガラス基板の耐衝撃性が低下するおそれがある。より好ましくは、ガラス成分の含有量は、3重量%以下がよく、さらに好ましくは、1重量%以下がよい。
また、上記ガラス成分の含有量は0重量%とすることができる。即ち、上記導電性被膜にガラス成分を含有させないようにすることができる。この場合には、上記導電性被膜と上記ガラス基板との界面に、両者のガラス成分が反応することによって生じる上記反応層が形成されるおそれがなくなり、その結果クラックの発生を防止することができる。
また、上記導電性被膜は、その比抵抗が10×10-6Ω・cm以下であることが好ましい(請求項3)。
比抵抗が10×10-6Ω・cmを超える場合には、比抵抗が高いため、所望の導電性を得ることができないおそれがある。
上記導電性被膜の比抵抗は、例えば4探針法(JISK7194)によって測定することができる。
また、上記導電性被膜は、その厚みが5μm〜50μmであることが好ましい。
導電性被膜の厚みが5μm未満の場合には、導電性被膜が充分な導電性を発揮できなくなるおそれがある。一方、50μmを超える場合には、導電性被膜がガラス基板から剥離しやすくなるおそれがある。より好ましくは、導電性被膜の厚みは5〜25μmがよい。
次に、上記第2の発明においては、被覆工程と焼成工程とを行うことにより、ガラス基板の表面に、金属を主成分とする導電性被膜を形成して導電性被膜被覆ガラス基板を製造する。
上記被覆工程においては、上記ガラス基板の表面の少なくとも一部に、導電性ペーストを塗布してペースト被膜を形成する。また、上記焼成工程においては、上記ペースト被膜が形成された上記ガラス基板を温度550〜900℃にて焼成し、ガラス基板上に金属からなる上記導電性被膜を形成させる。
上記被覆工程における上記導電性ペーストは、金属粒子を95重量部以上含有する。
金属粒子の含有量が95重量部未満の場合には、上記焼成工程後に形成される上記導電性被膜の導電性が低下し、所望の導電性が得られないおそれがある。
金属粒子としては、例えば銀、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、及びオスミウム等から選ばれる1種以上からなるものを用いることができる。好ましくは貴金属がよい。また、貴金属と他の金属との合金からなるものを用いることもできる。
また、上記金属粒子は、その一部が酸化されていてもよい。
一部が酸化された金属粒子を用いる場合には、金属粒子中の金属の量が95重量%以上のものを用いることが好ましい。金属粒子中の金属の量が95重量%未満の場合には、上記導電性被膜の導電性が低下するおそれがある。
また、上記金属粒子は、銀を主成分とすることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記導電性被膜の導電性をより向上させることができると共に、上記導電性被膜と上記ガラス基板との密着性をより向上させることができる。
上記金属粒子は、略球状の金属粒子25〜95重量%と略鱗片状の金属粒子5〜75重量%とからなることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記導電性ペースト中の上記金属粒子が沈殿し固化することを抑制又は防止することができ、上記導電性ペーストの安定性を向上させることができる。そのためこの場合には、上記導電性ペーストを長期間にわたって使用し、上記導電性被膜被覆ガラス基板を作製することができ、その製造コストを抑えることができる。
略球状の金属粒子の含有量が25重量%未満の場合、又は略鱗片状の金属粒子の含有量が75重量%を超える場合には、上記焼成工程後における上記導電性被膜と上記ガラス基板との密着性が悪くなるおそれがある。一方、略球状の金属粒子の含有量が95重量%を超える場合、又は略鱗片状の金属粒子の含有量が5重量%未満の場合には、上記導電性ペーストの粘度が経時的に高くなり易く、上記被覆工程において上記導電性ペーストを所望の形状や厚みに塗布することができなくなるおそれがある。
また、上記金属粒子における略球状の金属粒子の粒径は、10μm以下であり、略鱗片状の金属粒子の粒径は、30μm以下であることが好ましい(請求項7)。
略球状の金属粒子の粒径が10μmを超える場合には、上記導電性ペースト中において上記金属粒子が沈殿し易くなり、その結果、上記被覆工程において上記ガラス基板に上記導電性ペーストを所望の形状及び厚みにて塗布することが困難になるおそれがある。より好ましくは、略球状の金属粒子の粒径は5μm以下がよい。
略鱗片状の金属粒子の粒径が30μmを超える場合には、上記被覆工程において形成する上記ペースト被膜の表面が粗くなり、膜厚の制御が困難になるおそれがある。
略球状又は略鱗片状の金属粒子の粒径は、該金属粒子における最も長尺な部分の長さの平均、即ち金属粒子における最大直径の平均(平均粒径)を示すものである。
また、上記導電性ペーストは、ガラスフラックスを0〜5重量部含有する。
ガラスフラックスの含有量が5重量部を超える場合には、上記焼成工程後に、上記導電性被膜と上記ガラス基板との界面に、上記反応層が形成され、該反応層にクラックが発生するおそれがある。そのため、この場合には、上記導電性被膜被覆ガラス基板の耐衝撃性が劣化するおそれがある。
また、上記ガラスフラックスとしては、例えばSiO2を56〜69重量%、Al23を0.1〜7重量%、B23を23〜30重量%、Li2Oを0.1〜3重量%、及びNa2Oを1〜5重量%含有するものを用いることができる。
上記無鉛ガラスフラックス中のSiO2の含有量が56重量%未満の場合には、ガラスフラックスの熱膨張係数が高くなり、上記ガラス基板との熱膨張差が大きくなるおそれがある。そのためこの場合には、焼成後の導電性被膜にクラックが発生したり、焼成後の導電性被膜が剥離し易くなるおそれがある。一方、69重量%を超える場合には、ガラスフラックスの粘性流動が高くなり、焼成後の導電性被膜の表面が粗くなるおそれがある。
また、Al23の含有量が0.1重量%未満の場合には、熱膨張係数が高くなり、焼成後の導電性被膜にクラックが発生し易くなるおそれがある。一方、7重量%を超える場合には、焼成後の導電性被膜の表面が粗くなるおそれがある。
23の含有量が23重量%未満の場合には、焼成後の導電性被膜の耐酸性が劣化するおそれがある。一方、30重量%を超える場合には、焼成後の導電性被膜の耐アルカリ性が劣化するおそれがある。
Li2Oの含有量が0.1重量%未満の場合には、ガラスフラックスの熱膨張係数が高くなり、焼成後の導電性被膜にクラックが発生し易くなるおそれがある。一方、3重量%を超える場合には、焼成後の導電性被膜の耐アルカリ性が劣化するおそれがある。
Na2Oの含有量が1重量%未満の場合には、ガラスフラックスの粘性流動が高くなり、焼成後の導電性被膜の表面が粗くなるおそれがある。一方、5重量%を超える場合には、ガラスフラックスの熱膨張係数が著しく高くなるおそれがある。また、この場合には、耐アルカリ性が劣化するおそれがある。
また、上記ガラスフラックスは、任意成分として、さらにK2Oを4重量%以下、TiO2を5重量%以下、ZrO2を5重量%以下含有することができる。これらの任意成分は、1種又は2種以上を組み合わせて含有させることができる。
上記ガラスフラックスが上記の任意成分を含有する場合には、耐アルカリ性を向上させることができる。
上記ガラスフラックス中のK2Oの含有量が4重量%を超える場合、TiO2の含有量が5重量%を超える場合、又はZrO2の含有量が5重量%を超える場合には、ガラスフラックスの粘性流動が高くなり、焼成後の導電性被膜の表面が粗くなるおそれがある。また、この場合には、所望の形状及び厚みの導電性被膜を形成することが困難になるおそれがあり、さらに焼成後の導電性被膜の導電性が低下するおそれがある。
また、上記導電性ペーストは、有機バインダーを上記金属粒子と上記ガラスフラックスとの合計量100重量部に対して20〜45重量部含有する。
有機バインダーの含有量が20重量部未満の場合には、上記導電性ペーストの粘度が高くなりすぎて、上記被覆工程において上記導電性ペーストを上記ガラス基板に所望のパターンで塗布することができなくなるおそれがある。一方、45重量部を超える場合には、上記焼成工程後にカーボンが残存し易くなり、この残存カーボン成分のために上記導電性被膜の導電性が低下するおそれがある。
また、上記有機バインダーの含有量は、上記金属粒子と上記ガラスフラックスとの合計量100重量部に対する量である。したがって、上記導電性ペースト中の上記ガラスフラックスの含有量が0重量部である場合、即ち、上記ガラスフラックスを含有しない場合には、上記有機バインダーの含有量は、上記金属粒子100重量部に対する含有量とすることができる。
上記有機バインダーとしては、例えばアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ブチル樹脂等から選ばれる一種以上を用いることができる。
また、上記導電性ぺ一ストには、ガラスを除く無機酸化物・金属材料からなる添加剤を任意に含有させることもできる。このような添加剤の含有量は、上記金属と上記ガラスフラックスとの合計100重量部に対して、5重量部未満であることが好ましい。
添加剤が5重量部を超える場合には、上記焼成工程後における上記導電性被膜と上記ガラス基板との密着性が悪くなり、上記導電性被膜が上記ガラス基板から剥離するおそれがある。
また、上記被覆工程において、上記ペースト被膜の厚みは、10〜100μmであることが好ましい。
ペースト被膜の厚みが10μm未満の場合には、焼成工程後の上記導電性被膜の厚みが5μm未満となりやすく、導電性被膜の導電性が低下するおそれがある。一方、100μmを超える場合には、焼成工程後の導電性被膜の厚みが50μmを超えやすくなり、この場合には、導電性被膜がガラス基板から剥離し易くなるおそれがある。
また、上記被覆工程において、上記導電性ペーストは、例えばスクリーン印刷、ロールコート印刷、及びバーコート印刷等によりガラス基板上に塗布することができる。
次に、上記焼成工程においては、温度550〜900℃にて焼成する。
焼成温度が550℃未満の場合には、焼成が充分に行われず、導電性被膜にカーボンが残存し、導電性被膜がガラス基板から剥離しやすくなるおそれがある。また、この場合には、焼成後の上記導電性被膜の導電性が低下するおそれがある。一方、900℃を超える場合には、焼成時に、導電性ペーストが溶融・揮発し、所望の形状の導電性被膜が得られなくなるおそれがある。
(実施例1)
次に、本発明の実施例につき説明する。
本例は、ガラス基板の表面に導電性ペーストを焼き付けて導電性被膜被覆ガラス基板を作製し、その特性を評価する例である。
図1に示すごとく、本例の導電性被膜被覆ガラス基板1は、ガラス基板2と、該ガラス基板2の表面の少なくとも一部に形成された導電性被膜3とを有する。導電性被膜3は、金属としての銀を主成分とし、ガラス成分を0重量%〜5重量%含有する。
本例の導電性被膜被覆ガラス基板1を製造するにおいては、被覆工程と焼成工程とを行う。
被覆工程においては、ガラス基板2の表面の少なくとも一部に、導電性ペーストを塗布してペースト被膜を形成する。
また、焼成工程においては、ペースト被膜が形成されたガラス基板2を温度550〜900℃にて焼成し、金属からなる導電性被膜3を形成させる。
また、被覆工程における上記導電性ペーストは、金属粒子を95重量部以上、ガラスフラックスを0〜5重量部、及び上記金属粒子とガラスフラックスとの合計量100重量部に対して有機バインダーを20〜45重量部含有する。
以下、本例の導電性被膜被覆ガラス基板の製造方法につき、詳細に説明する。
まず、略球状の銀粒子(平均粒径4.5μm)80重量%及び略鱗片状の銀粒子(平均粒径5μm)20重量%とからなる金属粒子と、有機バインダーとしてのアクリル樹脂とを準備した。次いで、金属粒子100重量部に対して有機バインダーを30重量部の割合でこれらを混合し、導電性ペーストを作製した。これを試料P1とする。
また、ガラス基板として、常温における熱膨張係数−5×10-7/Kの低膨張ガラス基板を準備した。
次いで、このガラス基板の表面に、スクリーン印刷法により上記にて作製した導電性ペースト(試料P1)を厚み10μmとなるように印刷した。スクリーン印刷法においては300メッシュのスクリーンを用いた。
次に、導電性ペーストを印刷したガラス基板を加熱炉に入れ、温度700℃にて10分間加熱した。これにより、導電性ペースト中のカーボン成分等を焼失させると共に、金属からなる導電性被膜をガラス基板に焼き付けた。
このようにして、導電性被膜被覆ガラス基板を作製した。これを試料E1とする。
また、本例においては、上記試料P1とは、組成の異なる5種類の導電性ペースト(試料P2〜試料P6)を作製し、さらに印刷時の厚みや焼成温度等を変えて、5種類の導電性被膜被覆ガラス基板(試料E2〜試料E6)を作製した。
具体的には、試料E2の作製にあたっては、まず、略球状の銀粒子(平均粒径4μm)50重量%及び略鱗片状の銀粒子(平均粒径7μm)50重量%とからなる金属粒子を準備した。この金属粒子100重量部に対して、有機バインダー25重量部を混合して導電性ペースト(試料P2)を作製した。次いで、この導電性ペースト(試料P2)を、上記試料E1と同様の低膨張ガラス基板に、250メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷法により、厚みが10μmとなるように塗布した。次に、加熱炉にて温度650℃にて15分間加熱して、導電性被膜をガラス基板に焼き付けた。このようにして、導電性被膜被覆ガラス基板(試料E2)を作製した。
また、試料E3の作製にあたっては、まず、略球状の銀粒子(平均粒径4μm)75重量%及び略鱗片状の銀粒子(平均粒径5μm)25重量%とからなる金属粒子を準備した。この金属粒子100重量部に対して、有機バインダー20重量部を混合して導電性ペースト(試料P3)を作製した。次いで、この導電性ペースト(試料P3)を、上記試料E1と同様の低膨張ガラス基板に、200メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷法により、厚みが20μmとなるように塗布した。次に、加熱炉にて温度800℃にて15分間加熱して、導電性被膜をガラス基板に焼き付けた。このようにして、導電性被膜被覆ガラス基板(試料E3)を作製した。
試料E4の作製にあたっては、まず、略球状の銀粒子(平均粒径4.5μm)60重量%及び略鱗片状の銀粒子(平均粒径10μm)40重量%とからなる金属粒子を準備した。この金属粒子100重量部に対して、有機バインダー45重量部を混合して導電性ペースト(試料P4)を作製した。次いで、この導電性ペースト(試料P4)を、上記試料E1と同様の低膨張ガラス基板に、250メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷法により、厚みが10μmとなるように塗布した。次に、加熱炉にて温度600℃にて20分間加熱して、導電性被膜をガラス基板に焼き付けた。このようにして、導電性被膜被覆ガラス基板(試料E4)を作製した。
試料E5の作製にあたっては、まず、略球状の銀粒子(平均粒径3.5μm)95重量%及び略鱗片状の銀粒子(平均粒径7μm)5重量%とからなる金属粒子を準備した。この金属粒子100重量部に対して、有機バインダー40重量部を混合して導電性ペースト(試料P5)を作製した。次いで、この導電性ペースト(試料P5)を、上記試料E1と同様の低膨張ガラス基板に、200メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷法により、厚みが15μmとなるように塗布した。次に、加熱炉にて温度900℃にて10分間加熱して、導電性被膜をガラス基板に焼き付けた。このようにして、導電性被膜被覆ガラス基板(試料E5)を作製した。
また、試料E6の作製にあたっては、まず、略球状の銀粒子(平均粒径4.5μm)60重量%及び略鱗片状の銀粒子(平均粒径5μm)40重量%とからなる金属粒子を準備した。この金属粒子99重量部に対して、ガラスフラックス1重量部、及び有機バインダー30重量部を混合して導電性ペースト(試料P6)を作製した。次いで、この導電性ペースト(試料P6)を、上記試料E1と同様の低膨張ガラス基板に、200メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷法により、厚みが15μmとなるように塗布した。次に、加熱炉にて温度800℃にて5分間加熱して、導電性被膜をガラス基板に焼き付けた。このようにして、導電性被膜被覆ガラス基板(試料E6)を作製した。
また、本例においては、上記試料E1〜試料E6の導電性被膜被覆ガラス基板の優れた特性を明らかにするため、比較用の2種類の導電性ペースト(試料P7及び市販品)を用いて、さらに印刷時の厚みや焼成温度を変えて3種類の導電性被膜被覆ガラス基板(試料C1〜試料C3)を作製した。
具体的には、試料C1の作製にあたっては、まず、略鱗片状の銀粒子(平均粒径7μm)90重量部と、ガラスフラックス10重量部と、有機バインダー70重量部とを混合して導電性ペースト(試料P7)を作製した。次いで、この導電性ペースト(試料P7)を、上記試料E1と同様の低膨張ガラス基板に、200メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷法により、厚みが10μmとなるように塗布した。次に、加熱炉にて温度800℃にて15分間加熱して、導電性被膜をガラス基板に焼き付けた。このようにして、導電性被膜被覆ガラス基板(試料C1)を作製した。
試料C2の作製にあたっては、まず、市販の半導体用銀ペースト(市販品)を準備した。このペーストを、上記試料E1と同様の低膨張ガラス基板に、350メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷法により、厚みが10μmとなるように塗布した。次に、加熱炉にて温度800℃にて10分間加熱して、導電性被膜をガラス基板に焼き付けた。このようにして、導電性被膜被覆ガラス基板(試料C2)を作製した。
また、試料C3の作製にあたっては、上記試料C2の場合と同様の市販の半導体用銀ペースト(市販品)を準備し、このペーストを上記試料E1と同様の低膨張ガラス基板に、200メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷法により、厚みが20μmとなるように塗布した。次に、加熱炉にて温度400℃にて10分間加熱して、導電性被膜をガラス基板に焼き付けた。このようにして、導電性被膜被覆ガラス基板(試料C3)を作製した。
以上のようにして、9種類の導電性被膜被覆ガラス基板(試料E1〜E6及び試料C1〜C3)を作製した。
また、これら試料E1〜試料E6及び試料C1〜試料C3の導電性被膜被覆ガラス基板の作製に用いた導電性ペーストの組成を表1に示す。
各導電性ペースト(試料P1〜P7及び市販品)については、下記のようにして粘度変化を判定した。
(粘度変化判定)
各試料P1〜試料P7及び市販品の導電性ペーストをそれぞれ容器に入れて、120時間静置させた。120時間の静置後、沈殿の有無を目視にて観察した。さらに、静置前と静置後における粘度を、粘度計(RION
VT−04E)を用いて測定し、静置前後における粘度変化(%)を調べた。
このとき、沈殿がなく、粘度変化が10%未満の場合を○と判定し、また沈殿がなく、粘度変化が20%未満の場合を△と判定し、沈殿が生じ、粘度変化が20%以上の場合を×として評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2006054091
表1より知られるごとく、試料P1〜P6の導電性ペーストは、120時間の静置後も沈殿がほとんど生じず、また粘度変化も小さいものであった。そのため、試料P1〜P6は、長期間安定して使用することができることがわかる。これに対し、試料P7及び市販品は、静置後に沈殿が生じ、また粘度変化が大きいものであった。
次に、試料E1〜試料E6及び試料C1〜試料C3の導電性被膜被覆ガラス基板について、その比抵抗を測定した。
比抵抗(Ω/cm)は、四探針法による抵抗測定器(三菱化学株式会社製のロレスタGP)を用いて、JIS
K7194に基づいて測定した。その結果を表2に示す。
また、試料E1〜試料E6及び試料C1〜試料C3の耐衝撃性を、落球強度を調べることにより評価した。
具体的には、まず、導電性被膜を形成していないガラス基板を準備した。このガラス基板は、上記試料E1〜試料E6及び試料C1〜試料C3の作製に用いたものと同様のものである。このガラス基板に、該ガラス基板から10cmの高さから重さ535gの鋼球を落下させた。さらに高さを5cmずつ増加させながら、ガラス基板に剛球を落下させ、ガラス基板が割れたときの高さをh0とした。
次に、各試料の導電性被膜被覆ガラス基板を、導電性被膜を形成した面とは反対側の面を上に向けて載置した。次いで、各試料の上面に、10cmの高さから535gの鋼球を落下させた。さらに高さを5cmずつ増加させながら、ガラス基板に剛球を落下させ、各試料が割れたときの高さをhxとした。
このとき、各試料の落球強度S(%)を下記の式(1)により算出した。
S=(h0−hx)/h0×100 ・・・(1)
本例においては、各試料の落球強度が10%未満の場合を○として評価し、25%未満の場合を△として評価し、25%以上の場合を×として評価した。その結果を表2に示す。
Figure 2006054091
表2より知られるごとく、試料E1〜試料E6は、いずれも4.1以下という非常に小さい比抵抗を示すことができると共に、落球強度にも優れていた。したがって、試料E1〜試料E6は、導電性に優れると共に、耐衝撃性にも優れていることがわかる。
これに対し、試料C1は、比抵抗は、充分に低いが、落球強度が不充分であり、耐衝撃性に問題があった。試料C2は、比抵抗及び落球強度のいずれもが不充分であった。また、試料C3は、落球強度は、充分に優れていたが、比抵抗が非常に高く導電性が不充分であった。
以上のごとく、本例の導電性被膜被覆ガラス基板(試料E1〜試料E6)は、優れた導電性及び耐衝撃性に優れることがわかる。
実施例1にかかる、導電性被膜被覆ガラス基板の断面を示す説明図。 導電性被膜被覆ガラス基板において、導電性被膜とガラス基板との間に反応層が形成された様子を示す説明図。
符号の説明
1 導電性被膜被覆ガラス基板
2 ガラス基板
3 導電性被膜

Claims (7)

  1. ガラス基板と、該ガラス基板の表面の少なくとも一部に形成された導電性被膜とを有する導電性被膜被覆ガラス基板において、
    上記導電性被膜は、金属を主成分とし、ガラス成分を0重量%〜5重量%含有することを特徴とする導電性被膜被覆ガラス基板。
  2. 請求項1において、上記導電性被膜中の金属は、銀を主成分とすることを特徴とする導電性被膜被覆ガラス基板。
  3. 請求項1又は2において、上記導電性被膜は、その比抵抗が10×10-6Ω・cm以下であることを特徴とする導電性被膜被覆ガラス基板。
  4. ガラス基板の表面に、金属を主成分とする導電性被膜を形成して導電性被膜被覆ガラス基板を製造する方法において、
    上記ガラス基板の表面の少なくとも一部に、導電性ペーストを塗布してペースト被膜を形成する被覆工程と、
    上記ペースト被膜が形成された上記ガラス基板を温度550〜900℃にて焼成し、金属からなる上記導電性被膜を形成させる焼成工程とを有し、
    上記被覆工程における上記導電性ペーストは、金属粒子を95重量部以上、ガラスフラックスを0〜5重量部、及び上記金属粒子とガラスフラックスとの合計量100重量部に対して有機バインダーを20〜45重量部含有することを特徴とする導電性被膜被覆ガラス基板の製造方法。
  5. 請求項4において、上記金属粒子は、銀粒子を主成分とすることを特徴とする導電性被膜被覆ガラス基板の製造方法。
  6. 請求項4又は5において、上記金属粒子は、略球状の金属粒子25〜95重量%と略鱗片状の金属粒子5〜75重量%とからなることを特徴とする導電性被膜被覆ガラス基板の製造方法。
  7. 請求項6において、上記金属粒子における略球状の金属粒子の粒径は、10μm以下であり、略鱗片状の金属粒子の粒径は、30μm以下であることを特徴とする導電性被膜被覆ガラス基板の製造方法。
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