JP2004186108A - 導電ペースト及びその使用 - Google Patents

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亜紀 田中
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Abstract

【課題】耐めっき性を改善した鉛フリーガラスフリットを用いた電子回路素子用の導電ペーストを提供する。
【解決手段】導電粒子、ガラスフリット及びビヒクルを含む導電ペーストにおいて、該ガラスフリットが、鉛フリーであり、かつ球状であることを特徴とする含む厚膜導体形成用導電ペースト、該導電ペーストを用いた厚膜導体及びその製造方法、並びに導電ペーストを用いて得られる電子デバイスである。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚膜導体形成用の鉛フリー導電ペーストに関する。更に、本発明は、上記の導電ペーストを用いて形成した厚膜導体を用いた電子デバイス、並びにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
厚膜形成技術により様々な電子デバイス、例えば積層コンデンサ等が製造されている。このような厚膜形成技術によって、まず厚膜導体、厚膜抵抗体、厚膜半導体、厚膜誘電体を形成し、これを加工して厚膜電極のような電子回路素子を製造し、さらに電子回路素子を用いた電子デバイスを製造することができる。厚膜導体の内部電極と誘電体の積層板を更に積層し、積層体の接合相当部に厚膜導体の外部電極を形成して、積層コンデンサを製造することができる。また、基板上に形成された厚膜導体を回路に加工して、厚膜多層印刷配線板を製造することができる。このような厚膜電極は、導電ペーストを印刷又は塗布し、乾燥させて溶媒を除去した後、温度500〜950℃で焼成して、形成する。次に、電気デバイス内の厚膜電極とそれを装着させるプリント回路基板との間の接着強さを改善するため、厚膜電極の表面にめっきを施し、更に両者の界面に、はんだ付けを施している。厚膜電極の表面に施すめっきは、はんだ付け性を厚膜電極に付与するためであり、導電ペーストを焼成し、膜を形成した後、pH4〜5、温度50〜90℃で、ニッケルめっきを施し、更に鉛フリーのハンダめっき、例えばスズめっきをしている。
【0003】
厚膜導体形成用の導電ペーストは、導電粒子、ガラスフリット及びビヒクルで構成することが多い。このガラスフリットは、従来、鉛含有ガラスフリットを使用していたが、環境保全の見地から、現在は鉛フリーガラスフリットが使用されている。しかし、鉛フリーガラスフリットを使用した導電ペースト(以下、「鉛フリー導電ペースト」という)は、従来の鉛含有ガラスフリットを使用した導電ペースト(以下、「鉛含有導電ペースト」という)と比較すると、次のような課題があった。
【0004】
鉛フリー導電ペーストは、一般的に、耐めっき液性が低く、めっき液が浸透しやすい。そのため、はんだ付けの際、厚膜電極内に浸透しためっき液が加熱されて膨張し、厚膜電極が基板から飛び跳ねること、更には厚膜電極の耐湿性が低下し、それを用いた電気デバイスの絶縁抵抗が低下すること等という問題点があった。
【0005】
また、鉛フリー導電ペーストは、従来の鉛含有導電ペーストと比較すると、焼成温度の範囲が狭い、すなわち導電ペーストが膜を形成するのに必要な焼成最低温度が高く、かつ焼成温度の上限が低いという問題点があった。厚膜電極を形成する導電ペーストにおける焼成温度の範囲は、電極の内部材料の耐熱温度と、導電ペースト内の導電粒子、ガラスフリット、ビヒクル等による焼成温度範囲との両方の要因により決定される。例えば、焼成温度の下限は、膜形成可能な最低温度によって決定され、また、焼成温度の上限は電極の内部材料の耐熱温度と導電ペーストの耐熱温度により決定される。このため、その焼成温度の上限以上の高温で焼成すると、ガラスフリットが電極表面に浮き、めっき付けができなくなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題を解決する厚膜導体形成用の鉛フリー導電ペースト及びその製造方法を提供することにある。更に、本発明の目的は、該導電ペーストを用いて形成した電子デバイスを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を達成するために検討を重ねた結果、鉛フリーガラスフリットの形状に着目した。従来、ガラスフリットは粉砕生成物のみが入手可能であり、破砕状ガラスフリットを用いていた。しかし、従来の破砕状ガラスフリットを用いて得られる導電ペーストは、塗布した後の塗膜密度が低く、焼成後に微細な空隙が発生しているため、ここにメッキ液が浸透することを見出した。破砕状ガラスフリットではなく、球状の形状のガラスフリットを使用することにより、破砕状ガラスフリットを使用する場合よりも、塗膜密度が改善され、めっき液の浸透がなく、低温で焼成可能な導電ペーストを達成したものである。
【0008】
本発明は、導電粒子、ガラスフリット及びビヒクルを含む導電ペーストであって、該ガラスフリットが、鉛フリーであり、かつ該ガラスフリットが、球状である導電ペーストに関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において、導電ペーストの配合は、重量%で、ガラスフリット、導電粒子、ビヒクル、及び所望により添加する添加剤の割合を示している。以下、それぞれの成分の好ましい配合の範囲においては、これらの成分の総量を100重量%とする。
【0010】
本発明に用いる鉛フリーの球状ガラスフリットは、公知の鉛フリーガラスを球状のフリットに形成して用いることができ、特に制限されない。球状ガラスフリットの形成方法としては、例えばアトマイズ法を用いることができる。本発明のガラスフリットの均斉度は、球状体の縦・横軸の比が0.7〜1.0であることが好ましく、0.8〜1.0であることがより好ましく、0.9〜1.0であることが特に好ましい。均斉度は、本発明の球状ガラスフリットを顕微鏡観察し、縦軸と横軸を測定し、球状体の縦/横軸比を算出している。
【0011】
本発明のガラスフリットの粒径は、0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましく、1〜5μmであることが特に好ましい。ここで鉛フリーガラスフリットとは、ガラスフリット中の鉛化合物の含有量が、1.5重量%未満であり、好ましくは1.0重量%未満であることをいう。鉛フリーガラスフリットの材料として、例えば、SiO−B−ZrO系ガラス、SiO−B−BaO系ガラス及びSiO−B−ZnO系ガラスのようなSiO−B系ガラスなどが挙げられる。
【0012】
本発明によれば、鉛フリーガラスフリットとして、Bが、ガラスフリット中、5.0〜30.0重量%であることが好ましく、7.0〜25.0重量%であることがより好ましく、9.0〜20.0重量%であることが特に好ましい。SiOは、ガラスフリット中、10.0〜60.0重量%であることが好ましい。鉛フリーガラスフリットは、更にBaO、ZnO、Al及びNaOから選ばれる1種以上の酸化物を含むことができる。その場合、BaO含有量は60.0重量%以下が好ましく、ZnO含有量は30.0重量%以下が好ましく、Al含有量は12.0重量%以下が好ましく、NaO含有量は15.0重量%以下が好ましい。ここで、ガラスフリットは、酸化物の網目状構造及び修飾体からなる非晶質の複合体であるが、組成は、ガラスフリット中の単位酸化物の構成比で表す。
【0013】
ガラス原料を粉砕して、微細な粒子の形態に形成された粉砕生成物のガラスフリットは、針状、方柱状、方錐状等のような球状ではない形状(破砕状)が大部分を構成し、本発明の球状ガラスフリットに含まれない。
【0014】
導電ペースト中の鉛フリーガラスフリットの含有量は、電極と電子回路素子、基板等の間の接着強度を維持することから、0.1〜30重量%が好ましく、5〜15重量%がより好ましい。
【0015】
本発明の導電ペーストに用いる導電粒子及びビヒクルは、公知のものを本発明の特徴を損なわない範囲で用いることができ、特に制限されない。
【0016】
導電粒子は、銀、銅、ニッケル、パラジウム等の金属、又はそれらの合金等が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの導電粒子のうち、安定で優れた導電性が比較的容易に得られることから、銀又は銀合金の粒子が好ましく、銀粒子が特に好ましい。銀合金としては、銀を主成分とするAg−Cu合金、Ag−Au合金、Ag−Pd合金、Ag−Sn合金等が挙げられる。また、銅粒子を用いる場合、焼成雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。導電粒子の形状は、球状及び鱗片状の形状の混合物が好ましい。平均粒径は、印刷又は塗布の後に優れた表面状態を与え、また、形成した電極に優れた導電性を与えることから、0.05〜30μmが好ましく、0.07〜25μmがより好ましく、0.1〜20μmが特に好ましい。導電ペースト中の導電粒子の構成比は、導電ペーストが良好な印刷適性を示し、得られた電極が優れた比抵抗を得ることから、10〜95重量%が好ましく、30〜90重量%がより好ましく、40〜80重量%が特に好ましい。
【0017】
ビヒクルは、樹脂を有機溶媒に溶解させたもので、導電ペーストを素子材料に印刷又は塗布することを容易にし、また焼成工程が進行する間、素子材料への良好な密着性を与えるものである。導電ペースト中のビヒクルの構成比は、5〜90重量%であることが好ましく、10〜70重量%であることがより好ましく、15〜50重量%であることが特に好ましい。ビヒクル中の樹脂と有機溶媒の量比は、用いられる導電粒子、ガラスフリット及び樹脂の種類と構成比、並びに導電ペーストを印刷又は塗布する方法等により、任意に選択することができるが、樹脂が5〜50重量%、有機溶媒が50〜95重量%であることが好ましい。
【0018】
ビヒクルに用いる樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、エチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、ポリスルホン、フェノキシ樹脂、ポリイミド等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂のようなアミノ樹脂;ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、脂環式等のエポキシ樹脂;オキセタン樹脂;レゾール型、ノボラック型のようなフェノール樹脂等が好ましい。エポキシ樹脂の場合、自己硬化型樹脂を用いる場合であっても、アミン類、イミダゾール類、酸無水物又はオニウム塩のような硬化剤や硬化促進剤を用いることができ、アミノ樹脂やフェノール樹脂を、エポキシ樹脂の硬化剤として機能させることもできる。樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。樹脂としては、燃焼して、導電層中に樹脂やその分解生成物の残存する量が少ないことから、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0019】
ビヒクルに用いる有機溶媒は、特に制限されないが、樹脂の種類に応じて選択することが好ましい。有機溶媒は、例えば芳香族炭化水素類;ケトン類;ラクトン類;エーテル類;テレピネオールのようなアルコール類;それらに対応する酢酸エステル、例えばブチルカルビトールアセテートのようなエステル類;並びにジカルボン酸のジエステル類が挙げられる。有機溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
本発明の導電ペーストには、更に、所望により、添加剤を配合することができる。添加剤は、例えば分散助剤、レベリング剤、チキソトロピック剤、消泡剤、シランカップリング剤等が挙げられる。分散助剤としては、脂肪族多価カルボン酸エステル;不飽和脂肪酸アミン塩;ソルビタンモノオレエートのような界面活性剤;及びポリエステルアミン塩、ポリアミドのような高分子化合物等が挙げられる。シランカップリング剤としては、置換プロピルトリアルコキシシラン、置換プロピルメチルジアルコキシシラン等が挙げられ、導電粒子、樹脂、及び厚膜導体を接着させる素子材料や基板等の種類に応じて選択することができる。
【0021】
本発明の導電ペーストは、素子、基板等に印刷又は塗布する方法に応じて、適切な粘度に調製することができる。例えば、スクリーン印刷に用いられる場合、常温における導電ペーストの見かけ粘度は、10〜500Pa・sが好ましく、15〜100Pa・sが更に好ましい。
【0022】
本発明の導電ペーストは、例えば次のようにして調製できる。すなわち、樹脂を有機溶媒に溶解させて、ビヒクルを調製する。これに、導電粒子、ガラスフリット、金属酸化物粉末及び必要に応じて配合する他の成分を配合して、三本ロール、ライカイ機、ポットミル、ニーダーのような混合手段によって均一に分散させることにより、導電ペーストが得られる。調製温度は、特に限定されず、例えば常温で調製することができる。
【0023】
本発明は、更に、該導電ペーストを、温度500〜950℃で焼成する工程を含む、厚膜導体の製造方法、及び該厚膜導体を備えた電子デバイスに関する。
【0024】
本発明によれば、厚膜導体の製造方法は、導電ペーストを、厚膜導体を設ける対象に、印刷又は塗布し、次いで印刷又は塗布された導電ペーストを、70〜250℃で2〜15分間加熱乾燥して、導体層を形成し、得られた導体層を焼成して、本発明の厚膜導体を形成することができる。印刷は、例えばスクリーン印刷、転写等によって行い、塗布は、例えばアプリケータ、ディスペンサ等を用いて行うことができる。印刷又は塗布する厚さは、焼成後の厚膜導体の厚さが5〜100μmになるような厚さである。
【0025】
厚膜導体を設ける対象としては、例えば磁性体、誘電体等の素子、基板、電気回路等が挙げられる。磁性体としては、公知の材料を用いることができ、特に制限されない。例えば、酸化鉄のような金属酸化物;金属又は合金のフェライト類;イットリウム−鉄−ガーネットのようなガーネット類;合金類が挙げられる。誘電体としては、公知の材料を用いることができ、特に制限されない。例えば、金属とチタン酸、スズ酸、ジルコン酸の塩及びそれらの固溶体、アルミナ、ペロブスカイト等が例示され、優れた誘電特性から、チタン酸バリウムが好ましい。基板としては、セラミックス、アルミナ等が挙げられる。
【0026】
本発明によれば、焼成工程において、機械的強度、及び素子、基板、導電回路等に対する充分な接着強さ、またプリント回路基板に対してはんだ付けを行う際に、充分な接着強さを有する電極が得るため、温度500〜950℃で焼成することが好ましい。
【0027】
導電ペーストに銀又は銀合金粒子を使用する場合は、550〜670℃で10分間保持して焼成することが好ましい。また、用いる銀合金の性質に応じて、窒素のような不活性雰囲気下で焼成することができる。
導電ペーストに銅又は銅合金粒子を使用する場合は、850〜900℃、窒素のような不活性雰囲気下で10分間保持して焼成することが好ましい。
【0028】
本発明において、厚膜導体をプリント配線基板に接着させて、該素子を該基板に装着する場合は、焼成によって得られる素子のプリント配線基板への接着強さを高めるために、ニッケル、スズのような金属でめっきを行うか、又ははんだのような合金で係合させることが好ましい。めっきは、電解めっきでも、無電解めっきでもよいが、寸法精度から電解めっきが好ましい。ニッケルとスズで二重にめっきすることが好ましい。次いで、プリント配線基板との間に、はんだ付けを行って、導体を該基板に装着することが好ましい。
【0029】
本発明の電子デバイスは、本発明の導電ペーストを用いて形成した、厚膜導体を備えたものである。厚膜導体としては、例えば厚膜電極のような外部電極が挙げられる。厚膜導体を備えた電子デバイスとしては、インダクタ、コンデンサ、抵抗器、LCR複合部品、IC、LCD、EL等が挙げられる。
【0030】
【実施例】
次に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、他に断らない限り、部は重量部を意味する。
【0031】
実施例1〜5
表1、2に示す組成を用いて、下記の方法で導電ペーストを形成した。
(a) ビヒクル25部(アクリル樹脂30部をテレピネオール70部に溶解したアクリル樹脂(30%)、又はエチルセルロース40部をブチルカルビトール60部に溶解したエチルセルロース(40%))に、テレピネオール4部又はブチルカルビトールアセテート10部を加え、撹拌機で撹拌しながら、均斉度0.7〜1.0である本発明のガラスフリットa(SiO−B−ZrO系ガラス、SiO:30〜60%、B:10〜30%、ZrO:1〜10%、鉛化合物の含有量1.0重量%未満、平均粒径7μm)、ガラスフリットb(SiO−B−BaO系ガラス、SiO:20〜40%、B:20〜30%、BaO:30〜50%、鉛化合物の含有量1.0重量%未満、平均粒径12μm)、又はガラスフリットc(SiO−B−ZnO系ガラス、SiO:20〜40%、B:10〜20%、ZnO:20〜40%、鉛化合物の含有量1.0重量%未満、平均粒径10μm)から選択される1種のガラスフリット、及び導電粒子を加える。その後、三本ロールに3回通すか、又はライカイ機に入れて4時間均一に混合して、実施例1〜5の導電ペーストを調製した。
【0032】
(b) 得られた導電ペーストを、内部電極を有する2012サイズの積層セラミックコンデンサーの両面に、焼成後の厚さが30μmになるように均一に塗布し、150℃で10分間乾燥し、乾燥時塗膜密度を測定した。その後、空気中で、それぞれ表1に示した温度で10分間、その前後に所定温度までの昇温と徐冷に要する時間を含めて60分間加熱することによって焼成し、さらに電解ニッケルめっき(ワット浴)及び電解スズめっきを行って、積層セラミックコンデンサーの両面に、外部電極を形成させた。
得られた外部電極の耐めっき性を試験し、評価した。表1、2に結果を示す。
【0033】
乾燥時塗膜密度の測定方法
導電ペーストをマイラーフィルム上に膜厚約100μmになるように塗布し、送風乾燥機にて乾燥し(条件80℃×2時間)、ゆっくりと室温に戻した。その後、乾燥させた試料を5点切り取り、各試料の半径r(mm)、厚さt(mm)、重量w(g)を測定し(5点の平均値をとった)、乾燥膜密度を下記の式を用いて算出した。
体積V=πr×t×10−3
乾燥膜密度=(w/V)
【0034】
耐めっき性試験
260℃のシリコーンオイル中に、試料をピンセットで挟み10秒間浸漬し、試料から発生する泡の有無について確認した。評価は、○:発泡がない、*:発泡がある、**:試料上にめっきがつかない、として、3段階評価で表した。
これらの評価は、次のように解される。発泡がない場合、電極膜に欠陥又は穴はない。発泡がある場合、電極膜に欠陥又は穴があり、その穴からめっき液が電極内部に浸透する。めっき液の浸透は、基板へのはんだ付け時に電極が基板から飛び跳ね、また電極内部の腐食を引き起こす。試料上にめっきがつかない場合、焼成温度が高すぎたためガラスフリットが電極表面に浮いたからであり、はんだ付けができない。
【0035】
比較例1及び2
ガラスフリットに粉砕生成物である比較ガラスフリットd(SiO−B−ZnO系ガラス、SiO:20〜40%、B:10〜20%、ZnO:20〜40%、鉛化合物の含有量1.0重量%未満、平均粒径10μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較導電ペーストを得た。
【0036】
比較例1及び2については、得られた比較導電ペーストを、150℃で20分乾燥して塗膜密度を求め、表1及び表2の温度で焼成し、膜を形成した。得られた膜に、めっきを施し、耐めっき性試験した。結果を表2に示した。
【0037】
【表1】
Figure 2004186108
【0038】
【表2】
Figure 2004186108
【0039】
表1、2から明らかなように、均斉度0.7〜1.0の球状ガラスフリットを用いた本発明の導電ペーストを焼成して得られた外部電極は、破砕状ガラスフリットを用いた従来の導電ペーストから得られた外部電極と比較して、優れた耐めっき液性を示した。また、本発明の導電ペーストは、従来の導電ペーストよりも乾燥時塗膜密度が高いことが分かる。
しかし、比較例の導電ペーストは、銅粒子で900℃の場合、耐めっき性試験で発泡が観察された。また、銀粒子で650℃の場合、めっきがつかなかった。
【0040】
図1に、破砕状の従来のガラスフリット、並びに図2及び3に、本発明の真球状ガラスフリットa及びcのSEM写真を示す。ここで、JSM−5600を用いて観察し、図1〜3において、(A)は倍率1,000倍、(B)は倍率3,000倍における写真である。これらのSEM写真から明らかなように、従来品の破砕生成物であるガラスフリットは、柱状、方錐状等の形状を有し、個々の粒子の分布は密な領域と疎な領域が存在している。それに対し、本発明のガラスフリットは均斉度が高く、各粒子は互いに規則的重なり密に存在している。
【0041】
本発明のガラスフリットcについて、上記の図3のSEM写真を用いて、数個のガラスフリットの縦軸及び横軸を測定し、均斉度(縦/横軸比)を求めた。
結果を、表3に示す。
【0042】
【表3】
Figure 2004186108
【0043】
【発明の効果】
本発明の導電ペーストは、めっきに対する耐性が高いので、めっき液の浸透がなく、素子、基板等に対して、充分な接着強さを有する。
また、本発明によれば、回路の欠陥や短絡等のない電子デバイスを得ることができる。電子デバイスとしては、例えば厚膜導体で構成された厚膜電極、インダクタ、コンデンサ、抵抗器、LCR複合部品、IC、LCD、EL等が挙げられる。本発明の厚膜導体の製造方法によれば、外部電極のような厚膜電極を含めた厚膜導体、電子デバイス等を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】破砕状の従来のガラスフリットの乾燥時塗膜のSEM写真である。
【図2】本発明の真球状ガラスフリットaの乾燥時塗膜のSEM写真である。
【図3】本発明の真球状ガラスフリットcの乾燥時塗膜のSEM写真である。

Claims (6)

  1. 導電粒子、ガラスフリット及びビヒクルを含む導電ペーストであって、該ガラスフリットが、鉛フリーであり、かつ球状であることを特徴とする厚膜導体形成用導電ペースト。
  2. 該ガラスフリットの均斉度が、0.7〜1.0である、請求項1記載の導電ペースト。
  3. 該ガラスフリットの粒径が、0.5〜20μmである、請求項1又は2記載の導電ペースト。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の導電ペーストを焼成して得られる厚膜導体。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項記載の導電ペーストを、温度500〜950℃で焼成する工程を含む、厚膜導体の製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項記載の導電ペースト、又は請求項4記載の厚膜導体を用いて得られる電子デバイス。
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