以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔吸水性樹脂粒子〕
本発明で用いる吸水性樹脂粒子は、水溶性不飽和単量体を重合して得ることができる水不溶性水膨潤性ヒドロゲル形成性重合体(以下、吸水性樹脂とも言う)の粒子であって、少なくとも生理食塩水(0.90質量%NaCl水溶液)の吸収倍率が5倍以上である、球形或いは不定形の粒子形状のものである。なお、本発明においては、吸水性樹脂粒子を単に吸水性樹脂と称することもある。
水不溶性水膨潤性ヒドロゲル形成性重合体の具体例としては、部分中和架橋ポリアクリル酸重合体(米国特許第4625001号明細書、米国特許第4654039号明細書、米国特許第5250640号明細書、米国特許第5275773号明細書、欧州特許第456136号明細書等)、架橋されて部分的に中和された澱粉−アクリル酸グラフトポリマー(米国特許第4076663号明細書)、イソブチレン−マレイン酸共重合体(米国特許第4389513号明細書)、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体のケン化物(米国特許第4124748号明細書)、アクリルアミド(共)重合体の加水分解物(米国特許第3959569号明細書)、アクリロニトリル重合体の加水分解物(米国特許第3935099号明細書)等が挙げられる。
本発明で用いる吸水性樹脂粒子はアクリル酸および/またはその塩を含む単量体を重合して得られるアクリル酸および/またはアクリル酸塩を構成単位として含むポリアクリル酸(塩)系架橋重合体からなる吸水性樹脂の粒子であることが好ましい。本発明においてポリアクリル酸(塩)系架橋重合体とは、全構成単位中、アクリル酸および/またはその塩を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む単量体を重合して得られる架橋重合体である。また、重合体中の酸基は、その50〜90モル%が中和されていることが好ましく、60〜80モル%が中和されていることがより好ましく、塩としてはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などを例示することができる。好ましくはナトリウム塩である。塩を形成させるための中和は重合前に単量体の状態で行っても良いし、あるいは重合途中や重合後に重合体の状態で行っても良いし、それらを併用してもよい。
本発明に好ましく用いられる吸水性樹脂粒子であるポリアクリル酸(塩)系架橋重合体としては、主成分として用いられる単量体(アクリル酸および/またはその塩)に併用して、必要により他の単量体を共重合させたものであってもよい。他の単量体の具体例としては、メタアクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロパンスルホン酸などのアニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−ビニルアセトアミドなどのノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびそれらの四級塩などのカチオン性不飽和単量体などを挙げることができる。これらアクリル酸および/またはその塩以外の単量体の使用量は、全単量体中0〜30モル%が好ましく、より好ましくは0〜10モル%である。
本発明で用いる吸水性樹脂粒子は、内部架橋構造を有する架橋重合体である。
本発明に用いられる吸水性樹脂粒子に内部架橋構造を導入する方法として、架橋剤を使用しない自己架橋によって導入する方法や、1分子中に2個以上の重合性不飽和基および/または2個以上の反応性基を有する内部架橋剤を共重合または反応させて導入する方法等を例示できる。好ましくは、内部架橋剤を共重合または反応させて導入する方法である。
これらの内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ−ト、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール類;エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレートなどを挙げることが出来る。これらの内部架橋剤は1種のみ用いてもよいし2種以上使用してもよい。中でも、得られる吸水性樹脂粒子の吸水特性などから、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を内部架橋剤として必須に用いることが好ましく、その使用量としては全単量体に対して0.005〜3モル%が好ましく、より好ましくは0.01〜1.5モル%である。
重合に際しては、澱粉−セルロース、澱粉−セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子や、次亜リン酸(塩)等の連鎖移動剤を添加してもよい。
本発明に用いられる吸水性樹脂粒子を得るために上記したアクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体を重合するに際しては、バルク重合、逆相懸濁重合、沈澱重合を行うことも可能であるが、性能面や重合の制御の容易さから、単量体を水溶液として、水溶液重合を行うことが好ましい。かかる重合方法は、例えば、米国特許第4625001号明細書、米国特許第4769427号明細書、米国特許第4873299号明細書、米国特許第4093776号明細書、米国特許第4367323号明細書、米国特許第4446261号明細書、米国特許第4683274号明細書、米国特許第4690996号明細書、米国特許第4721647号明細書、米国特許第4738867号明細書、米国特許第4748076号明細書、欧州特許第1178059号明細書などに記載されている。
重合を行うにあたり、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤、紫外線や電子線などの活性エネルギー線等を用いることができる。また、ラジカル重合開始剤を用いる場合、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス重合としても良い。これらの重合開始剤の使用量は、全単量体に対して、0.001〜2モル%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.5モル%である。
上記の重合により得られた吸水性樹脂粒子の形状は、一般には、不定形破砕状、球状、繊維状、棒状、略球状、偏平状等であるが、本発明に用いられる吸水性樹脂粒子は粒子状であるので、乾燥後に粉砕して得られるような不定形破砕状のものを用いると、より本発明の効果が大きくなるので好ましい。
本発明で用いる吸水性樹脂粒子は、その表面近傍が表面架橋処理されたものが好ましい。
表面架橋処理は、表面架橋剤を用いて行っても良いし、その他の公知の表面架橋処理方法でもよい。
表面架橋処理に用いることのできる表面架橋剤としては、吸水性樹脂粒子の有する官能基、特に、カルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する有機表面架橋剤や多価金属化合物が挙げられる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物や、それらの無機塩ないし有機塩(例えば、アゼチジニウム塩等);2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;尿素、チオ尿素、グアニジン、ジシアンジアミド、2−オキサゾリジノン等の炭酸誘導体;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物、および、その多価アミン付加物(例えばハーキュレス製カイメン:登録商標);γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール、3−クロロメチル−3−メチルオキセタン、3−クロロメチル−3−エチルオキセタン、多価オキセタン化合物などのオキセタン化合物;等が挙げられる。これら表面架橋剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも多価アルコールは、安全性が高く、吸水性樹脂粒子表面の親水性を向上させることができる点で好ましい。また、多価アルコールを使用することで、吸水性樹脂粒子表面の4価の水溶性多価金属塩との馴染みが良くなり、多価アルコール残基と4価の水溶性多価金属塩表面との相互作用により吸水性樹脂粒子表面に4価の水溶性多価金属塩をより均一に存在させることが可能となる。
表面架橋剤の使用量は、吸水性樹脂粒子の固形分100質量部に対して0.001〜5質量部が好ましい。
表面架橋剤と吸水性樹脂粒子との混合の際には水を用いてもよい。水の使用量は、吸水性樹脂粒子の固形分100質量部に対して、0.5を越え、10質量部以下が好ましく、1質量部〜5質量部の範囲内がより好ましい。
表面架橋剤やその水溶液を混合する際には、親水性有機溶媒や、第三物質を混合助剤として用いてもよい。
親水性有機溶媒を用いる場合には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、メトキシ(ポリ)エチレングリコール等のエーテル類;ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール等が挙げられる。親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂粒子の種類や粒径、含水率等にもよるが、吸水性樹脂粒子の固形分100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、0.1質量部〜5質量部の範囲内がより好ましい。また、第三物質として欧州特許第0668080号明細書に示された無機酸、有機酸、ポリアミノ酸等を存在させてもよい。これらの混合助剤は表面架橋剤として作用しても良いが、表面架橋後に吸水性樹脂粒子の吸水性能を低下させないものが好ましい。特に沸点が150℃未満の揮発性アルコール類は表面架橋処理時に揮発してしまうので、残存物が残らず望ましい。
吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とをより均一に混合するため、非架橋性の水溶性無機塩基類(好ましくは、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ金属水酸化物、および、アンモニアあるいはその水酸化物)や、非還元性アルカリ金属塩pH緩衝剤(好ましくは炭酸水素塩、リン酸二水素塩、リン酸水素塩等)を、吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とを混合する際に共存させても良い。これらの使用量は、吸水性樹脂粒子の種類や粒径等にもよるが、吸水性樹脂粒子の固形分100質量部に対して0.005〜10質量部の範囲内が好ましく、0.05〜5質量部の範囲内がより好ましい。
吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とを混合する混合方法は特に限定されないが、たとえば吸水性樹脂粒子を親水性有機溶剤に浸漬し、必要に応じて水および/または親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を混合する方法、吸水性樹脂粒子に直接、水および/または親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を噴霧若しくは滴下して混合する方法等が例示できる。
吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とを混合した後、通常、加熱処理を行い、架橋反応を遂行させることが好ましい。上記加熱処理温度は、用いる表面架橋剤にもよるが、40℃以上250℃以下が好ましく、150℃以上250℃以下がより好ましい。加熱処理温度が40℃未満の場合には、加圧下の吸収倍率等の吸収特性が十分に改善されない場合がある。加熱処理温度が250℃を越える場合には、吸水性樹脂粒子の劣化を引き起こし、各種性能が低下する場合があり注意を要する。加熱処理時間は、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは5分〜1時間である。
本発明における吸水性樹脂粒子が熱処理されたものである場合、熱処理の方法は、例えば、欧州特許第530517号明細書、欧州特許第603292号明細書、国際公開第95/05856号パンフレット等に記載されている、乾燥後の吸水性樹脂粒子をさらに加熱する方法が挙げられる。
本発明で用いる吸水性樹脂粒子の粒子径や粒子径分布に特に制限は無いが、粒子径が比較的小さく、小粒子径成分の多い粒子径分布のものを用いると、吸収倍率などの吸収性能の向上が顕著であるので好ましい。
本発明で用いる吸水性樹脂粒子は、質量平均粒子径が100〜600μmであることが好ましい。より好ましくは200〜500μmである。質量平均粒子径が100〜600μmの範囲を外れると、通液性・拡散性が著しく低下したり、吸収速度が大幅に低下し、例えばオムツに用いた場合、液の漏れなどを引き起こすおそれがある。また、300μm以下の粒子径の吸水性樹脂粒子の微紛を造粒し粒度調整したものを用いても良く、粉砕して得られる一次粒子の不定形破砕状の粒子に微紛の造粒物を一部混合した吸水性樹脂粒子を用いても良い。吸水性樹脂粒子の造粒物を一部混合した場合には、吸水速度、毛管吸収倍率などの吸収特性が一層優れた吸水性樹脂組成物を得ることが出来る。微紛の造粒物の混合量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。
微粉造粒物の作成方法としては、微粉を再生する公知の技術が使用可能である。例えば、温水と吸水性樹脂粒子の微粉を混合し乾燥する方法(米国特許第6228930号明細書)や、吸水性樹脂粒子の微粉を単量体水溶液と混合し重合する方法(米国特許第5264495号明細書)、吸水性樹脂粒子の微粉に水を加え特定の面圧以上で造粒する方法(欧州特許第844270号明細書)、吸水性樹脂粒子の微粉を十分に湿潤させ非晶質のゲルを形成し乾燥・粉砕する方法(米国特許第4950692号明細書)、吸水性樹脂粒子の微粉と重合ゲルを混合する方法(米国特許第5478879号明細書)などを用いることが可能であるが、好ましくは前記の温水と吸水性樹脂粒子の微粉を混合し乾燥する方法が用いられる。なお、粒子径は分級される篩目径で示される。
本発明で用いる吸水性樹脂粒子は、遠心分離機保持容量(CRC)が、好ましくは5(g/g)以上であり、より好ましくは10(g/g)以上であり、さらに好ましくは20(g/g)以上であり、特に好ましくは25(g/g)以上である。上限値は、特に限定されないが、好ましくは50(g/g)以下であり、より好ましくは45(g/g)以下であり、さらに好ましくは40(g/g)以下である。遠心分離機保持容量(CRC)が10(g/g)未満の場合、吸収量が少なすぎ、オムツ等の衛生材料の使用に適さない。また、遠心分離機保持容量(CRC)が50(g/g)よりも大きい場合、通液性に優れる吸水性樹脂組成物を得ることができなくなるおそれがある。
本発明で用いる吸水性樹脂粒子は、4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が、好ましくは18(g/g)以上であり、より好ましくは20(g/g)以上であり、さらに好ましくは22(g/g)以上である。4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が18(g/g)未満の場合、通液性に優れる吸水性樹脂組成物を得ることができなくなるおそれがある。
本発明で用いる吸水性樹脂粒子は、食塩水流れ誘導性(SFC)が、好ましくは10(×10−7・cm3・s・g−1)以上であり、より好ましくは30(×10−7・cm3・s・g−1)以上であり、さらに好ましくは50(×10−7・cm3・s・g−1)以上である。食塩水流れ誘導性(SFC)が10(×10−7・cm3・s・g−1)未満の場合、4価の水溶性多価金属塩と含窒素ケトン化合物(A)を添加しても、通液性が向上しないことがある。
本発明で用いる吸水性樹脂粒子は、水可溶分量が、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。水可溶分量が35質量%を超える場合、ゲル強度が弱く、通液性に劣ったものとなることがある。また、オムツ中で長時間使用した際に、吸収特性(CRCやAAPなど)が経時的に低下することがある。
〔吸水性樹脂組成物〕
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、水溶性不飽和単量体を重合して得られる内部架橋構造を有する吸水性樹脂粒子、一般式(1)で表される構造を有する含窒素ケトン化合物(A)(ただし、カルボキシル基は有さない)、および4価の水溶性多価金属塩を含む吸水性樹脂組成物である。
水溶性不飽和単量体を重合して得られる内部架橋構造を有する吸水性樹脂粒子は、前述した通りであり、表面架橋処理されていることが好ましい。
含窒素ケトン化合物(A)としては、一般式(1)で表される構造を有する含窒素ケトン化合物(A)(ただし、カルボキシル基は有さない)であり、例えば、カルバミド酸メチル、カルバミド酸エチルなどのカルバミド酸アルキル;カルバジン酸エチルなどのカルバジン酸アルキル;ホルムアミド、アセトアミド、プロピオンアミドなどの脂肪酸アミド;N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミドなどのアミド基の窒素がアルキル基で置換された化合物;(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;2−オキサゾリドン;3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−アルキル−2−オキサゾリジノン、4−メチル−2−オキサゾリジノン、4−アルキル−2−オキサゾリジノンなどの2−オキサゾリジノン類;2,5−オキサゾリジンジノンなどのオキサゾリジンジノン類;2−ピロリジノン、3−ヒドロキシメチル−2−ピロリジノン、3−アルキル−2−ピロリジノン;4−アルキル−2−ピロリジノン、5−アルキル−2−ピロリジノンなどの2−ピロリジノン類;2,5−ピロリジンジノンなどのピロリジンジノン類;一般式(2)で表される構造を有する尿素および/またはその誘導体;などが挙げられる。好ましくは、一般式(2)で表される構造を有する尿素および/またはその誘導体である。一般式(2)で表される構造を有する尿素および/またはその誘導体は、4価の水溶性多価金属塩との相互作用が、一般式(1)で表される構造を有する含窒素ケトン化合物(A)の中でも特に強いと考えられ、4価の金属と含窒素ケトン化合物(A)とが作用し、吸水性樹脂粒子表面における4価の金属による共有結合性の表面架橋効果が高くなるため、好ましい。
含窒素ケトン化合物(A)(好ましくは、一般式(2)で表される構造を有する尿素および/またはその誘導体)としては、水溶性のものが好ましく、1atm、25℃の水100gに対する溶解度が、好ましくは10g以上、より好ましくは20g以上、さらに好ましくは40g以上である。
含窒素ケトン化合物(A)(好ましくは、一般式(2)で表される構造を有する尿素および/またはその誘導体)としては、分子量が、好ましくは45〜10000g/モル、より好ましくは59〜1000g/モル、さらに好ましくは60〜150g/モルである。
含窒素ケトン化合物(A)(好ましくは、一般式(2)で表される構造を有する尿素および/またはその誘導体)としては、安全性が高く、安定なものが好ましい。
一般式(2)で表される構造を有する尿素および/またはその誘導体としては、具体的には、例えば、尿素;N−メチル尿素、N−エチル尿素、N,N´−ジメチル尿素、エチレン尿素、N,N−ジメチル尿素などの、尿素の窒素にアルキル基が結合した尿素誘導体;ヒドロキシ尿素、N,N´−ジヒドロキシ尿素、N−ヒドロキシ−N´−メチル尿素、N−ヒドロキシ−N−メチル尿素などの、尿素の窒素にヒドロキシル基が結合した尿素誘導体;シアノ尿素、N−シアノ−N´−メチル尿素、N−シアノ−N−メチル尿素などの、尿素の窒素にシアノ基が結合した尿素誘導体;ヒドロキシメチル尿素;シアノメチル尿素;ニトロソ尿素;ヒドラジンカルボキシアミド;カルボニックジヒドラジド;ホルミル尿素;1−アジリジンカルボキサミド;N,N´−ジボリル尿素などの、尿素の窒素にホウ素が結合した尿素誘導体;シリル尿素などの、尿素の窒素にケイ素が結合した尿素誘導体;1,3−ジアゼチジン−2−オン;ニトロソ尿素;2−プロピニル尿素;ホスホラニリデン尿素;エテニル尿素;メチレン尿素;カルボニソシアナチジックアミド;1,2,4−オキサジアゼチジン−3−オン;アミノメチル尿素;エチニル尿素;などが好ましく挙げられる。より好ましくは、尿素;N−メチル尿素、N−エチル尿素、N,N´−ジメチル尿素、エチレン尿素、N,N−ジメチル尿素などの、尿素の窒素にアルキル基が結合した尿素誘導体;ヒドロキシ尿素、N,N´−ジヒドロキシ尿素、N−ヒドロキシ−N´−メチル尿素、N−ヒドロキシ−N−メチル尿素などの、尿素の窒素にヒドロキシル基が結合した尿素誘導体;であり、さらに好ましくは、尿素;N−メチル尿素、N−エチル尿素、N,N´−ジメチル尿素、エチレン尿素、N,N−ジメチル尿素などの、尿素の窒素にアルキル基が結合した尿素誘導体;である。これらの中でも、尿素は、4価の水溶性多価金属塩との相互作用が特に強く、4価の金属と尿素とが作用し、吸水性樹脂粒子表面における4価の金属による共有結合性の表面架橋効果が特に高くなり、また、水との親和性も強いと考えられるので、特に好ましい。
また、一般式(1)で表される構造を有する含窒素ケトン化合物(A)や一般式(2)で表される構造を有する尿素および/またはその誘導体は、4価の水溶性多価金属塩と水溶液中で混合した際に、安定な均一溶液となることが好ましい。
なお、含窒素ケトン化合物(A)がカルボキシル基を有した場合、4価の水溶性多価金属塩と作用して、水不溶性の塩を生成する場合がある。
4価の水溶性多価金属塩としては、4価の原子価を有する金属の塩であり、粉末状であることが好ましい。本発明にかかる吸水性樹脂組成物がおむつなどの衛生材料用の吸収体に利用されることを考えれば、吸水性樹脂組成物を着色せず、人体に対する毒性の低いものを選ぶのが好ましい。
吸液時に4価の水溶性多価金属塩の効果をより効率的に長時間持続させるために、常温の純水に5質量%以上の濃度で溶解し得る4価の水溶性多価金属塩を選択することが好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上溶解し得るものを選択して使用する。
本発明で使用することができる4価の水溶性多価金属塩としては、塩化酸化ジルコニウム8水和物、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸ジルコニウムナトリウム、硫酸ジルコニウム水和物、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、チタントリエタノールアミネート、チタンラクテートなどを例示することができる。また、尿などの吸収液との溶解性の点からもこれらの結晶水を有する塩を使用するのが好ましい。より好ましいのは、塩化酸化ジルコニウム8水和物、硫酸ジルコニウム水和物である。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明で使用することができる4価の水溶性多価金属塩は、粒子状であることが好ましく、その粒子径は、混合性の観点より、吸水性樹脂粒子の粒子径より小さいことが好ましい。質量平均粒子径は500μm以下のものが好ましく、より好ましくは400μm以下である。性能の観点からは、さらに好ましくは粒子径150μm以下の粒子を、該4価の水溶性多価金属塩の全体に対して、20質量%以上含む粒子であり、最も好ましくは30質量%以上含む粒子である。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物においては、吸水性樹脂粒子、含窒素ケトン化合物(A)、および4価の水溶性多価金属塩の合計量の割合が、吸水性樹脂組成物全量に対して、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。前記割合が85質量%未満の場合には、CRCやAAPなどの吸収特性が低下するおそれがある。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物においては、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩の合計量が、好ましくは0.01〜100質量部であり、より好ましくは0.05〜50質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部である。含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩の合計量が0.01質量部よりも少ないと、通液性・拡散性およびブロッキング率の改良効果が十分でないおそれがあり、100質量部よりも多いと、CRCやAAPなどの吸収特性が著しく低下するおそれがある。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物においては、含窒素ケトン化合物(A)の含有量と4価の水溶性多価金属塩の含有量との比率が、質量比で、好ましくは1:10〜10:1、より好ましくは3:7〜7:3である。含窒素ケトン化合物(A)の含有量と4価の水溶性多価金属塩の含有量との比率が、質量比で1:10〜10:1の範囲を外れると、通液性・拡散性およびブロッキング率の改良効果が十分でなかったり、CRCやAAPなどの吸収特性が著しく低下したりするおそれがある。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物においては、本発明の効果を十分に発揮させるために、吸水性樹脂粒子の表面の少なくとも一部が、前記含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩によって被覆されていることが好ましい。さらに、その被覆は、吸水性樹脂粒子の表面全体の被覆ではないことがより好ましい。吸水性樹脂粒子の表面全体が被覆されると、吸収速度(例えば、遠心分離機保持容量(CRC)や4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)など)が大きく低下するおそれがある。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、質量平均粒子径が100〜600μmであることが好ましい。より好ましくは200〜500μmである。質量平均粒子径が100〜600μmの範囲を外れると、通液性・拡散性が著しく低下したり、吸収速度が大幅に低下し、例えばオムツに用いた場合、液の漏れなどを引き起こすおそれがある。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、その全体中、粒子径150〜850μmの粒子が90質量%以上であることが好ましく、粒子径150〜600μmの粒子が90質量%以上であることがより好ましい。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、好ましくは粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45であり、さらに好ましくは0.27〜0.43、最も好ましくは0.30〜0.40mm/sである。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は粒度分布の広がりを示す数値である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)の値が小さいほど粒度分布の幅が狭いことを表している。粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25未満の場合には、粒度分布が狭すぎるため、液の拡散・通液性と毛管力のバランスが悪くなる恐れがある。0.45を超える場合には、取り扱い性に問題が出たり、液の拡散・通液性と毛管力のバランスが悪くなる恐れがある。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、遠心分離機保持容量(CRC)が、好ましくは5(g/g)以上であり、より好ましくは10(g/g)以上であり、さらに好ましくは15(g/g)以上であり、さらに好ましくは20(g/g)以上であり、最も好ましくは25(g/g)以上である。上限値は、特に限定されないが、好ましくは50(g/g)以下であり、より好ましくは40(g/g)以下であり、さらに好ましくは35(g/g)以下である。遠心分離機保持容量(CRC)が5(g/g)未満の場合、吸収量が少なすぎ、オムツ等の衛生材料の使用に適さない。また、遠心分離機保持容量(CRC)が50(g/g)よりも大きい場合、ゲル強度が弱く、通液性に優れる吸水性樹脂組成物を得ることができないおそれがある。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が、好ましくは10(g/g)以上であり、より好ましくは15(g/g)以上であり、さらに好ましくは20(g/g)以上である。4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が10(g/g)未満の場合、例えば、オムツに用いた場合、戻り量、いわゆるRe−wetが多くなり、赤ちゃんの肌あれを引き起こすことがある。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、食塩水流れ誘導性(SFC)が、好ましくは30(×10−7・cm3・s・g−1)以上であり、より好ましくは70(×10−7・cm3・s・g−1)以上であり、さらに好ましくは100(×10−7・cm3・s・g−1)以上であり、特に好ましくは130(×10−7・cm3・s・g−1)以上である。食塩水流れ誘導性(SFC)が30(×10−7・cm3・s・g−1)未満の場合、オムツのコア中での吸水性樹脂粒子の濃度が30質量%以上、好ましくは50質量%以上の場合において、尿の吸収速度が遅くなり、漏れを引き起こす恐れがある。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、水可溶分量が、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。水可溶分量が35質量%を超える場合、ゲル強度が弱く、通液性に劣ったものとなることがある。また、オムツ中で長時間使用した際に、吸収倍率(CRCやAAPなど)が経時的に低下することがある。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、ダストの抑制効果に優れる。ダスト発生量は、好ましくは1.00mg/m3以下であり、より好ましくは0.30mg/m3以下である。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、ブロッキング率(BR)に優れる。ブロッキング率(BR)は、好ましくは35%以下であり、より好ましくは10%以下である。
〔吸水性樹脂組成物の製造方法〕
水溶性不飽和単量体を重合して得られる内部架橋構造を有する吸水性樹脂粒子、含窒素ケトン化合物(A)、および4価の水溶性多価金属塩を含む吸水性樹脂組成物を製造する方法は特に限定されないが、好ましくは下記の製造方法1〜4が挙げられる。
(製造方法1)
本発明にかかる吸水性樹脂組成物の第1の製造方法(製造方法1)は、水溶性不飽和単量体を重合して得られる内部架橋構造を有する吸水性樹脂粒子に、含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩の粉体を混合する(以下の説明では、この混合のことを融着と呼ぶ)。
吸水性樹脂粒子への含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩の融着は、含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩を同時に融着してもよいし、含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩を別々に融着してもよい。
含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩の使用量は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩の合計量が0.01〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜50質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部である。含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩の合計量が0.01質量部よりも少ないと、通液性・拡散性およびブロッキング率の改良効果が十分でないおそれがあり、100質量部よりも多いと、CRCやAAPなどの吸収特性が著しく低下するおそれがある。
含窒素ケトン化合物(A)の使用量と4価の水溶性多価金属塩の使用量との比率は、質量比で、好ましくは1:10〜10:1、より好ましくは3:7〜7:3である。含窒素ケトン化合物(A)の使用量と4価の水溶性多価金属塩の使用量との比率が、質量比で1:10〜10:1の範囲を外れると、通液性・拡散性およびブロッキング率の改良効果が十分でなかったり、CRCやAAPなどの吸収特性が著しく低下したりするおそれがある。
本発明における融着とは、含窒素ケトン化合物(A)と4価の水溶性多価金属塩の少なくとも一部が接触することによって、溶融または固体状態よりも柔らかくなり、吸水性樹脂粒子の表面に接着させるような方法をいう。
すなわち、上記の方法であれば特に限定されないが、例えば下記の(a)〜(d)ような方法がある。
(a)含窒素ケトン化合物(A)と4価の水溶性多価金属塩の融点以上の吸水性樹脂粒子(必要であれば加熱されたもの)と含窒素ケトン化合物(A)と4価の水溶性多価金属塩とを混合する方法。
(b)含窒素ケトン化合物(A)の融点以上の含窒素ケトン化合物(A)(必要であれば加熱されたもの)と4価の水溶性多価金属塩の融点以上の4価の水溶性多価金属塩(必要であれば加熱されたもの)と吸水性樹脂粒子とを混合する方法。
(c)吸水性樹脂粒子と含窒素ケトン化合物(A)と4価の水溶性多価金属塩を混合した後に、その混合物を含窒素ケトン化合物(A)と4価の水溶性多価金属塩の融点以上に加熱する方法。
(d)含窒素ケトン化合物(A)と4価の水溶性多価金属塩の融点以上の吸水性樹脂粒子(必要であれば加熱されたもの)と、含窒素ケトン化合物(A)の融点以上の含窒素ケトン化合物(A)(必要であれば加熱されたもの)と、4価の水溶性多価金属塩の融点以上の4価の水溶性多価金属塩(必要であれば加熱されたもの)とを混合する方法。
これらの方法が好ましいが、他の方法を用いることも可能である。
加熱する手段としては、例えば、ヒーター、マイクロ波、超音波、遠赤外線などが挙げられる。
加熱する際には、含窒素ケトン化合物(A)と水溶性多価金属の融点以上に加熱することが好ましい。加熱の温度範囲は、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜180℃、最も好ましくは130〜150℃である。
吸水性樹脂粒子と含窒素ケトン化合物(A)と4価の水溶性多価金属塩を混合しただけで融着できる場合には、必ずしも加熱は必要ではない。
添加・混合方法に特に制限はなく、公知の粉体添加・混合方法を用いれば良い。吸水性樹脂粒子に所定量の含窒素ケトン化合物(A)と4価の水溶性多価金属塩を一括または分割または連続的に添加する方法が好ましい。
添加・混合は攪拌下に行われることが好ましい。また、攪拌下に含窒素ケトン化合物(A)と4価の水溶性多価金属塩の少なくとも一部を吸水性樹脂粒子の表面に融着させることが好ましい。
攪拌装置としては、パドルブレンダー、リボンミキサー、ロータリーブレンダー、ジャータンブラー、プラウジャーミキサー、モルタルミキサーなどを使用することができる。これらの攪拌装置は加熱できる装置であっても良いし、加熱した混合物を冷却する装置であっても良い。
攪拌時間は特に限定されないが、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下である。
融着させる時には、吸水性樹脂粒子と含窒素ケトン化合物(A)と4価の水溶性多価金属塩の混合物を加圧することが好ましい。加圧することによって、融着が促進される。
(製造方法2)
本発明にかかる吸水性樹脂組成物の第2の製造方法(製造方法2)は、水溶性不飽和単量体を重合して得られる内部架橋構造を有する吸水性樹脂粒子と、含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩を含む液状物とを混合する。
含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩の使用量、含窒素ケトン化合物(A)の使用量と4価の水溶性多価金属塩の使用量との比率は、前述した製造方法1と同様である。
含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩を含む液状物としては、例えば、含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩のみからなる液状物でもよく、これらにさらに水、多価アルコール(好ましくは、前述して例示したもの)などの液体が含まれる液状物でもよい。特に、含窒素ケトン化合物(A)(好ましくは尿素(常温で固体))と塩化酸化ジルコニウム8水和物とを混合すると液状物を形成することを本発明者は今回の発明の完成にあたって見出した。
含窒素ケトン化合物(A)(好ましくは尿素)および4価の水溶性多価金属塩を含む液状物中の、含窒素ケトン化合物(A)(好ましくは尿素)の含有割合は、10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、30〜60質量%であることがさらに好ましい。
含窒素ケトン化合物(A)(好ましくは尿素)および4価の水溶性多価金属塩を含む液状物中の、4価の水溶性多価金属塩の含有割合は、10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、30〜60質量%であることがさらに好ましい。
液状物が高粘度の場合、溶媒などを用いても良い。溶媒としては、有機溶媒、アルコール類、水などが好ましく使用できるが、水が特に好ましい。溶媒の使用量は、液状物中の割合で、好ましくは0〜80質量%、より好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。
含窒素ケトン化合物(A)(好ましくは尿素)および4価の水溶性多価金属塩を含む液状物の使用量は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、含窒素ケトン化合物(A)(好ましくは尿素)および4価の水溶性多価金属塩を含む液状物の量が、0.01〜100質量部であることが好ましく、0.1〜50質量部であることがより好ましく、1.0〜10質量部であることがさらに好ましい。
添加・混合方法は前述した製造方法1と同様である。
(製造方法3)
本発明にかかる吸水性樹脂組成物の第3の製造方法(製造方法3)は、水溶性不飽和単量体を重合して得られる内部架橋構造を有する吸水性樹脂粒子と、含窒素ケトン化合物(A)を含む水溶液および4価の水溶性多価金属塩を含む水溶液とを混合する。
含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩の使用量、含窒素ケトン化合物(A)の使用量と4価の水溶性多価金属塩の使用量との比率は、前述した製造方法1と同様である。
含窒素ケトン化合物(A)を含む水溶液中の含窒素ケトン化合物(A)の濃度は、吸水性樹脂粒子内部への浸透・拡散を防ぐために、飽和濃度に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。もちろん、飽和濃度で用いても良い。
4価の水溶性多価金属塩を含む水溶液中の4価の水溶性多価金属塩の濃度は、吸水性樹脂粒子内部への浸透・拡散を防ぐために、飽和濃度に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。もちろん、飽和濃度で用いても良い。
含窒素ケトン化合物(A)を含む水溶液には、例えば、多価アルコール(好ましくは、前述して例示したもの)などの水性液を含んでいても良い。
4価の水溶性多価金属塩を含む水溶液には、例えば、多価アルコール(好ましくは、前述して例示したもの)などの水性液を含んでいても良い。前記多価アルコール(好ましくは、前述して例示したもの)などの水性液は、混合助剤として作用しても、表面架橋剤として作用しても良い。
含窒素ケトン化合物(A)を含む水溶液の使用量は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、含窒素ケトン化合物(A)を含む水溶液の量が、0.01〜100質量部であることが好ましく、0.1〜50質量部であることがより好ましく、1.0〜10質量部であることがさらに好ましい。
4価の水溶性多価金属塩を含む水溶液の使用量は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、4価の水溶性多価金属塩を含む水溶液の量が、0.01〜100質量部であることが好ましく、0.1〜50質量部であることがより好ましく、1.0〜10質量部であることがさらに好ましい。
含窒素ケトン化合物(A)を含む水溶液と4価の水溶性多価金属塩を含む水溶液の添加順序は特に限定されず、同時でもよいし、いずれか一方を先に添加開始してもよい。好ましくは、4価の水溶性多価金属塩を含む水溶液を添加した後に、含窒素ケトン化合物(A)を含む水溶液を添加する。この場合、4価の水溶性多価金属塩を含む水溶液の添加によって、吸水性樹脂粒子の表面処理(好ましくは、表面架橋処理)が行われることがより好ましい。また、表面処理(好ましくは、表面架橋処理)は、好ましくは150〜250℃の温度で行われる。
添加・混合方法は前述した製造方法1と同様である。
(製造方法4)
本発明にかかる吸水性樹脂組成物の第4の製造方法(製造方法4)は、水溶性不飽和単量体を重合して得られる内部架橋構造を有する吸水性樹脂粒子に、含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩のいずれか一方を水溶液として混合し、もう一方をドライブレンドする。
含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩の使用量、含窒素ケトン化合物(A)の使用量と4価の水溶性多価金属塩の使用量との比率は、前述した製造方法1と同様である。
含窒素ケトン化合物(A)を含む水溶液中の含窒素ケトン化合物(A)の濃度は、吸水性樹脂粒子内部への浸透・拡散を防ぐために、飽和濃度に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。もちろん、飽和濃度で用いても良い。
4価の水溶性多価金属塩を含む水溶液中の4価の水溶性多価金属塩の濃度は、吸水性樹脂粒子内部への浸透・拡散を防ぐために、飽和濃度に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。もちろん、飽和濃度で用いても良い。
含窒素ケトン化合物(A)を含む水溶液を用いる場合、含窒素ケトン化合物(A)を含む水溶液には、例えば、多価アルコール(好ましくは、前述して例示したもの)などの水性液を含んでいても良い。
4価の水溶性多価金属塩を含む水溶液を用いる場合、4価の水溶性多価金属塩を含む水溶液には、例えば、多価アルコール(好ましくは、前述して例示したもの)などの水性液を含んでいても良い。
吸水性樹脂粒子に、含窒素ケトン化合物(A)および4価の水溶性多価金属塩のいずれか一方を水溶液として混合し、もう一方をドライブレンドするにあたっては、水溶液添加とドライブレンドは、同時でもよいし、いずれか一方を先に添加開始してもよい。
添加・混合方法は前述した製造方法1と同様である。
〔吸水体〕
本発明における吸水性樹脂組成物は、適当な素材と組み合わせることにより、たとえば、衛生材料の吸収層として好適な吸水体とすることができる。以下、吸水体について説明する。
吸水体とは、血液や体液、尿などを吸収する、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる、吸水性樹脂組成物とその他の素材からなる成形された組成物のことであり、用いられる素材の例としては、たとえば、セルロース繊維が挙げられる。セルロース繊維の具体例としては、木材からのメカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、溶解パルプ等の木材パルプ繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維等を例示できる。好ましいセルロース繊維は木材パルプ繊維である。これらセルロース繊維はナイロン、ポリエステル等の合成繊維を一部含有していてもよい。本発明における吸水性樹脂組成物を吸水体の一部として使用する際には、吸水体中に含まれる本発明における吸水性樹脂組成物の質量が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上の範囲である。吸水体中に含まれる本発明における吸水性樹脂組成物の質量が、20質量%未満になると、十分な効果が得られなくなるおそれがある。
本発明における吸水性樹脂組成物とセルロース繊維から吸水体を得るには、たとえば、セルロース繊維からなる紙やマットに吸水性樹脂組成物を散布し、必要によりこれらで挟持する方法、セルロース繊維と吸水性樹脂組成物を均一にブレンドする方法、など吸水体を得るための公知の手段を適宜選択できる。好ましくは、吸水性樹脂組成物とセルロース繊維を乾式混含した後、圧縮する方法である。この方法により、セルロース繊維からの吸水性樹脂組成物の脱落を著しく抑えることが可能である。圧縮は加熱下に行うことが好ましく、その温度範囲は、たとえば50〜200℃である。また、吸水体を得るために、特表平9−509591号公報や特開平9−290000号公報に記載されている方法も好ましく用いられる。
本発明における吸水性樹脂組成物は、吸水体に使用された場合、諸物性に優れるため、液の取り込みが早く、また、吸水体表層の液の残存量が少ない、非常に優れた吸水体が得られる。
本発明における吸水性樹脂組成物は、優れた吸水特性を有しているため、種々の用途の吸水保水剤として使用できる。例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の吸収物品用吸水保水剤;水苔代替、土壌改質改良剤、保水剤、農薬効力持続剤等の農園芸用保水剤;内装壁材用結露防止剤、セメント添加剤等の建築用保水剤;リリースコントロール剤、保冷剤、使い捨てカイロ、汚泥凝固剤、食品用鮮度保持剤、イオン交換カラム材料、スラッジまたはオイルの脱水剤、乾燥剤、湿度調整材料等で使用できる。また、本発明における吸水性樹脂組成物は、紙おむつ、生理用ナプキンなどの、糞、尿または血液の吸収用衛生材料に特に好適に用いられる。
吸水体は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる場合、(a)着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、(b)着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される、液体に対して不透過性のバックシート、および(c)トップシートとバックシートの間に配置された吸水体、を含んでなる構成で使用されることが好ましい。吸水体は二層以上であっても良いし、パルプ層などとともに用いても良い。
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、「質量%」を「wt%」と記すことがある。
吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物の諸性能は、以下の方法で測定した。特に記載が無い限り下記の測定は室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で行われたものとする。
なお、衛生材料などの最終製品として使用された吸水性樹脂組成物の場合は、吸水性樹脂組成物は吸湿しているので、適宜、吸水性樹脂組成物を最終製品から分離して減圧低温乾燥後(例えば、1mmHg以下、60℃で12時間)に測定すればよい。また、本発明の実施例および比較例において使用された吸水性樹脂組成物の含水率はすべて6質量%以下であった。
<遠心分離機保持容量(CRC)>
遠心分離機保持容量(CRC)は0.90質量%食塩水に対する無加圧下で30分の吸収倍率を示す。なお、CRCは、無加圧下吸収倍率と称されることもある。
吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物0.200gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールした後、室温で大過剰(通常500ml程度)の0.90質量%食塩水(塩化ナトリウム水溶液)中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物を用いずに行い、その時の質量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から、次式に従って遠心分離機保持容量(CRC)(g/g)を算出した。
遠心分離機保持容量(CRC)(g/g)
=(W1(g)−W0(g))/(吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物の質量(g))−1
<圧力に対する吸収力(AAP)>
圧力に対する吸収力(AAP)は0.90質量%食塩水に対する4.83kPaで60分の吸収倍率を示す。なお、AAPは、4.83kPaでの加圧下吸収倍率と称されることもある。
図1に示す装置を用い、内径60mmのプラスチックの支持円筒100の底に、ステンレス製400メッシュの金網101(目の大きさ38μm)を融着させ、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、該網上に吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物0.900gを均一に散布し、その上に、吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物に対して4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒との隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストン103と荷重104とをこの順に載置し、この測定装置一式の質量Wa(g)を測定した。
直径150mmのペトリ皿105の内側に直径90mmのガラスフィルター106(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、0.90質量%食塩水108(20〜25℃)をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙107(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を1枚載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
上記測定装置一式を前記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で吸収させた。1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その質量Wb(g)を測定した。そして、Wa、Wbから、下記の式に従って圧力に対する吸収力(AAP)(g/g)を算出した。
圧力に対する吸収力(AAP)
=(Wb(g)−Wa(g))/(吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物の質量(0.900g))
<食塩水流れ誘導性(SFC)>
食塩水流れ誘導性(SFC)は吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物の膨潤時の液透過性を示す値である。SFCの値が大きいほど高い液透過性を有することを示している。
特表平9−509591号公報記載の食塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じて行った。
図2に示す装置を用い、容器40に均一に入れた吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物(0.900g)を人工尿(1)中で0.3psi(2.07kPa)の加圧下、60分間膨潤させ、ゲル44のゲル層の高さを記録し、次に0.3psi(2.07kPa)の加圧下、0.69質量%食塩水33を、一定の静水圧でタンク31から膨潤したゲル層を通液させた。このSFC試験は室温(20〜25℃)で行った。コンピューターと天秤を用い、時間の関数として20秒間隔でゲル層を通過する液体量を10分間記録した。膨潤したゲル44(の主に粒子間)を通過する流速Fs(T)は増加質量(g)を増加時間(s)で割ることによりg/sの単位で決定した。一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をTsとし、Tsと10分間の間に得たデータだけを流速計算に使用して、Tsと10分間の間に得た流速を使用してFs(T=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算した。Fs(T=0)はFs(T)対時間の最小2乗法の結果をT=0に外挿することにより計算した。
食塩水流れ誘導性(SFC)
=(Fs(t=0)×L0)/(ρ×A×ΔP)
=(Fs(t=0)×L0)/139506
ここで、
Fs(t=0):g/sで表した流速
L0:cmで表したゲル層の高さ
ρ:NaCl溶液の密度(1.003g/cm3)
A:セル41中のゲル層上側の面積(28.27cm2)
ΔP:ゲル層にかかる静水圧(4920dyne/cm2)
およびSFC値の単位は(10−7・cm3・s・g−1)である。
図2に示す装置としては、タンク31には、ガラス管32が挿入されており、ガラス管32の下端は、0.69質量%食塩水33をセル41中の膨潤ゲル44の底部から、5cm上の高さに維持できるように配置した。タンク31中の0.69質量%食塩水33は、コック付きL字管34を通じてセル41へ供給された。セル41の下には、通過した液を補集する容器48が配置されており、補集容器48は上皿天秤49の上に設置されていた。セル41の内径は6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)42が設置されていた。ピストン46の下部には液が通過するのに十分な穴47があり、底部には吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物あるいはその膨潤ゲルが、穴47へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター45が取り付けてあった。セル41は、セルを乗せるための台の上に置かれ、セルと接する台の面は、液の透過を妨げないステンレス製の金網43の上に設置した。
人工尿(1)は、塩化カルシウムの2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウムの6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、りん酸2水素アンモニウム0.85g、りん酸水素2アンモニウム0.15g、および、純水994.25gを加えたものを用いた。
<質量平均粒子径(D50)および粒度分布の対数標準偏差(σζ)>
吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物を目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μmなどのJIS標準ふるいで篩い分けし、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、R=50質量%に相当する粒子径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。また、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
σζ=0.5×ln(X2/X1)
(X1はR=84.1%、X2はR=15.9%の時のそれぞれの粒子径)
質量平均粒子径(D50)および粒度分布の対数標準偏差(σζ)を測定する際の分級方法は、吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物10.0gを、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μmのJIS標準ふるい(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により、5分間、分級を行った。
<ブロッキング゛率(BR)>
25℃、相対湿度70%、1時間経過時のブロッキング率(Blocking Ratio)のことを示す。
吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物2.00gを底面の内径50mm、高さ10mmのポリプロピレン製カップの底に均一に散布し、あらかじめ25℃、相対湿度70%に調整した恒温恒湿器(タバイエスペック製PLATIOOUS LUCIFER PL−2G)にすばやく入れ、60分間放置した。その後、吸湿した吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物を直径7.5cm、目開き2000μmのJIS標準ふるいに移し、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により5分間ふるい、ふるい上に残存した吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物の質量W4(g)およびふるいを通過した吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物の質量W5(g)を測定した。
ブロッキング゛率(BR)(%)=質量W4(g)/(質量W4(g)+質量W5(g))×100
によりブロッキング率(%)を算出した。吸湿ブロッキング率が低いほど、吸湿時の流動性に優れている。
<水可溶分(水可溶成分)量>
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に0.90質量%食塩水184.3gをはかり取り、その水溶液中に吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物1.00gを加え16時間、スターラーを回転させ攪拌することにより樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを測り取り測定溶液とした。
はじめに0.90質量%食塩水だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。
同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。
例えば既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩からなる吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物中の可溶分量を以下の計算式により算出することができる。未知量の場合は滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量を算出する。
可溶分(質量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0
中和率(mol%)=(1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl]))×100
<ダスト量>
予め静電気防止剤を塗布しておいたPE袋(No.13、0.03×260×380mm)に、吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物を入れた。この袋を30回振った後、袋を開けて、DIGITAL DUST INDICATOR P−5L (SHIBATA製)にて1分間測定した。この測定を10回行い、その平均値を求めた。ダスト量の単位はmg/m3である。
<ペイントシェーカーテスト>
ペイントシェーカーテスト(PS)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は特開平9−235378号公報に開示されている。
振盪時間を30分間としたものをペイントシェーカーテスト1、10分間としたものをペイントシェーカーテスト2とする。
浸透後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、ダメージを与えられた吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物が得られる。
〔製造例1〕
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸505.6g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4430.8g、純水497.0g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)12.79gを溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、20分間脱気した。続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液29.34gおよび0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液24.45gを攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、20〜95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径350μmの不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得た。吸水性樹脂粒子(1)の遠心分離機保持容量(CRC)は33.0g/g、水可溶分は9.0質量%であった。
得られた吸水性樹脂粒子(1)100質量部に1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面処理剤を均一に混合した後、混合物を200℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(A)を得た。
〔製造例2〕
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸185.4g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.942g(0.07モル%:対アクリル酸)、および、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.13gを混合した溶液(A)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液148.53gと50℃に調温したイオン交換水159.71gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系ですばやく加えて混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液が得られた。
得られた単量体水溶液に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液4.29gを加え、数秒攪拌した後に、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000、(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250×250mm、上面640×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されていた。
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生して上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、4分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
得られた含水重合体を、ダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K、飯塚工業株式会社製)により粉砕し、細分化された含水重合体を得た。
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径450μmの不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得た。吸水性樹脂粒子(2)の遠心分離機保持容量(CRC)は36.0g/g、水可溶分は12.0質量%であった。
得られた吸水性樹脂粒子(2)100質量部に1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面処理剤を均一に混合した後、混合物を200℃で40分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(B)を得た。
また、得られた吸水性樹脂粒子(2)100質量部に1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面処理剤を均一に混合した後、混合物を200℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(C)を得た。
〔実施例1〕
製造例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)100質量部に、塩化酸化ジルコニウム8水和物1質量部、尿素1質量部からなる液状物を均一に添加し、60℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この組成物に前記ペイントシェーカーテスト2を行った。こうして、吸水性樹脂組成物(1d)を得た。
〔実施例2〕
製造例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)100質量部に、塩化酸化ジルコニウム8水和物1質量部、尿素1質量部をそれぞれ粉末状態で添加し、スパチュラで良く攪拌した。攪拌していくと、塩化酸化ジルコニウム8水和物と尿素が作用し、吸水性樹脂粒子はしっとりとしたが、しばらく攪拌するとさらさらになった。こうして得られた組成物を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして、吸水性樹脂組成物(2)を得た。
〔実施例3〕
製造例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)100質量部に、硫酸ジルコニウム水和物1質量部、尿素2質量部をそれぞれ粉末状態で添加し、スパチュラで良く攪拌した。攪拌していくと、硫酸ジルコニウム水和物と尿素が作用し、吸水性樹脂粒子はしっとりとしたが、しばらく攪拌するとさらさらになった。こうして得られた組成物を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして、吸水性樹脂組成物(3)を得た。
〔実施例4〕
製造例1で得られた吸水性樹脂粒子(1)100質量部に、塩化酸化ジルコニウム8水和物1質量部、尿素1質量部からなる液状物を均一に添加し、100℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして、吸水性樹脂組成物(4)を得た。
〔実施例5〕
製造例2で得られた吸水性樹脂粒子(B)100質量部に、塩化酸化ジルコニウム8水和物1質量部、尿素1質量部からなる液状物を均一に添加し、60℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この組成物に前記ペイントシェーカーテスト2を行った。こうして、吸水性樹脂組成物(5d)を得た。
〔実施例6〕
製造例2で得られた吸水性樹脂粒子(C)100質量部に、塩化酸化ジルコニウム8水和物1質量部、尿素1質量部をそれぞれ粉末状態で添加し、スパチュラで良く攪拌した。攪拌していくと、塩化酸化ジルコニウム8水和物と尿素が作用し、吸水性樹脂粒子はしっとりとしたが、しばらく攪拌するとさらさらになった。こうして得られた組成物を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この組成物に前記ペイントシェーカーテスト2を行った。こうして、吸水性樹脂組成物(6d)を得た。
〔比較例1〕
製造例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)を比較吸水性樹脂粒子(1)とした。
〔比較例2〕
製造例2で得られた吸水性樹脂粒子(B)を比較吸水性樹脂粒子(2)とした。
〔比較例3〕
製造例2で得られた吸水性樹脂粒子(C)を比較吸水性樹脂粒子(3)とした。
〔比較例4〕
製造例1で得られた吸水性樹脂粒子(1)100質量部に、塩化酸化ジルコニウム8水和物1質量部、純水1質量部からなる水溶液を均一に添加し、100℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして、比較吸水性樹脂組成物(4)を得た。
〔比較例5〕
製造例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)100質量部に、塩化酸化ジルコニウム8水和物1質量部、純水1質量部からなる水溶液を均一に添加し、60℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この組成物に前記ペイントシェーカーテスト2を行った。こうして、比較吸水性樹脂組成物(5d)を得た。
上記の実施例および比較例で得られた、吸水性樹脂組成物、比較吸水性樹脂粒子、比較吸水性樹脂組成物の遠心分離機保持容量(CRC)、圧力に対する吸収力(AAP)、食塩水流れ誘導性(SFC)を測定した結果を表1に示す。
吸水性樹脂組成物(1d)、(2)、(3)、比較吸水性樹脂粒子(1)、比較吸水性樹脂組成物(5d)のダスト量を測定した結果を表2に示す。
吸水性樹脂組成物(1d)、(2)、比較吸水性樹脂粒子(1)、(2)、(3)のブロッキング率(BR)を測定した結果を表3に示す。
吸水性樹脂粒子(A)、(C)、吸水性樹脂組成物(1d)、(6d)の質量平均粒子径(D50)および粒度分布の対数標準偏差(σζ)を表4に示す。