JP2006026938A - 成形加工性に優れる水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板 - Google Patents

成形加工性に優れる水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板 Download PDF

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Abstract

【課題】成形加工が潤滑油なしで行え、成形加工後の後処理が容易な水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板を提供する。
【解決手段】陽極酸化処理された、Mnを0.9〜2.0%(質量%、以下同じ)、Mgを0.05〜6.0%含有し、Feを0.20%以下、Siを0.13%以下に規制し、残部がAlと不可避不純物からなり、前記板材中に円相当径が0.03〜1.0μmのAl−Mn−Mg系金属間化合物粒子が密度10個/mm以上、面積率1.8%以上で分散し、前記面積率は円相当径が1.0μmを超えるAl−Mn系金属間化合物粒子の面積率より大きく、前記板材表面に陽極酸化皮膜が3〜10μmの厚さに形成され、その上に厚さ3〜8μmの水溶性潤滑樹脂塗膜が設けられている成形加工性に優れる水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板。
【選択図】なし

Description

本発明は、成形加工が潤滑油なしで行え、成形加工後の後処理が容易な、家電筐体部品などに適した水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板に関する。
陽極酸化処理されたアルミニウムまたはアルミニウム合金板は意匠性に優れるため、建物の外壁および内装、スイッチのカバーおよびプレート、パソコン筐体、家電筐体部品、ケース類、装飾品など幅広い分野で使用されている。建物の外壁など屋外使用品は意匠性の他、耐食性や耐候性が求められるが、家電筐体部品などの屋内使用品は専ら意匠性が求められ、色調としてはメタル質感のある灰色系が好まれる。
前記陽極酸化処理された板材はプレス加工或いはロール加工により成形されるが、陽極酸化皮膜(アルミ酸化物)は硬いため成形加工時にクラックが生じたり、剥離したりし、また成形金型にかじり傷や黒ズミなどの欠陥が生じたりすることがある。
前記欠陥は、金型内面を滑らかにし、さらに高潤滑性油を大量に塗布すれば防止できるが、コストおよび作業環境上に問題がある。またマスキングフィルムを貼りつけて表面を保護して成形加工する方法は、マスキングフィルム費が掛かるうえ、加工後にマスキングフィルムを分離、除去、処分する手間を要する。一方、成形加工後に単品毎に陽極酸化処理する方法(特許文献1)は生産性が劣りコスト高になる。
特開平8−252885号公報
本発明は、成形加工が潤滑油なしで行え、成形加工後の後処理が容易な水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板の提供を目的とする。
請求項1発明は、陽極酸化処理が施されたアルミニウムまたはアルミニウム合金板材の表面に水溶性潤滑樹脂塗膜が設けられていることを特徴とする成形加工性に優れる水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板である。
請求項2発明は、前記水溶性潤滑樹脂塗膜中に有機樹脂系のワックス潤滑剤が固形分として1乃至10%(質量%、以下同じ)含有され、前記水溶性潤滑樹脂塗膜の厚さが3〜8μmであることを特徴とする請求項1記載の成形加工性に優れる水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板である。
請求項3発明は、前記アルミニウム合金板材がMnを0.9〜2.0%(質量%、以下同じ)含有し、Feを0.20%以下、Siを0.13%以下に規制し、残部がAlと不可避不純物からなるAl−Mn系合金板材であり、前記板材中に円相当径が0.03〜1.0μmのAl−Mn系金属間化合物粒子が個数密度10個/mm以上、面積率1.8%以上で分散し、前記面積率は円相当径が1.0μmを超えるAl−Mn系金属間化合物粒子の面積率より大きく、前記板材表面に陽極酸化皮膜が3〜10μmの厚さに形成され、その上に水溶性潤滑樹脂塗膜が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の成形加工性に優れる水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板である。
請求項4発明は、前記アルミニウム合金板材がMnを0.9〜2.0%(質量%、以下同じ)、Mgを0.05〜6.0%含有し、Feを0.20%以下、Siを0.13%以下に規制し、残部がAlと不可避不純物からなるAl−Mn−Mg系合金板材であり、前記アルミニウム合金板材中に円相当径が0.03〜1.0μmのAl−Mn−Mg系金属間化合物粒子が個数密度10個/mm以上、面積率1.8%以上で分散し、前記面積率は円相当径が1.0μmを超えるAl−Mn−Mg系金属間化合物粒子の面積率より大きく、前記板材表面に陽極酸化皮膜が3〜10μmの厚さに形成され、その上に水溶性潤滑樹脂塗膜が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の成形加工性に優れる水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板である。
請求項1記載発明の水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板は、陽極酸化皮膜上に水溶性潤滑樹脂塗膜が設けられているので、成形加工性に優れ、陽極酸化皮膜および金型の損傷が防止される。また前記潤滑樹脂塗膜は水溶性なので、アルカリ脱脂、湯洗などの常法により容易に除去できる。従って、従来の高潤滑性油を多量に用いる方法、加工面をフィルムで保護する方法、成形加工後に陽極酸化処理する方法などに較べて生産性に優れ、低コストである。
請求項2記載発明の水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板は、潤滑樹脂塗膜中に有機樹脂系のワックス潤滑剤を適量含有させ、さらに前記水溶性潤滑樹脂塗膜厚さを適正に規定したものなので、陽極酸化皮膜および金型の損傷がより良好に防止される。
請求項3記載発明は、請求項1または2記載発明において、アルミニウム合金板材に所定組成のAl−Mn系合金を用い、前記板材に分散するAl−Mn系金属間化合物の微細粒子(円相当径が0.03〜1.0μmの粒子)の個数密度並びに面積率、および陽極酸化皮膜の厚さをそれぞれ適正に規定したものなので、これを成形加工して得られる成形加工品はメタル質感のある灰色系の好ましい色調を呈するものになる。
請求項4記載発明は、請求項1または2記載発明において、アルミニウム合金板材に所定組成のAl−Mn−Mg系合金を用い、前記板材に分散するAl−Mn−Mg系金属間化合物の微細粒子(円相当径が0.03〜1.0μmの粒子)の個数密度並びに面積率、および陽極酸化皮膜の厚さをそれぞれ適正に規定したものなので、これを成形加工して得られる成形加工品はメタル質感のある灰色系の好ましい色調を呈するものになる。
本発明において、アルミニウムおよびアルミニウム合金は、常法により行う陽極酸化処理で発色し、かつロール成形、曲げ加工、絞り加工などの成形加工が可能なものであれば任意である。陽極酸化処理後の洗浄は、水溶性潤滑樹脂塗料がはじかれない程度に行われていれば良く、湯洗、アルカリ洗浄などの常法が適用できる。
水溶性潤滑樹脂塗料は特に限定しないが、特に、水溶性のアクリル樹脂類、ポリエステル樹脂類、ポリアミド樹脂類、酢酸ビニル樹脂類、前記樹脂類の混合物などは除去し易く好適である。ワックス状のものやペースト状のものも使用可能である。
水溶性潤滑樹脂塗膜に含有させる有機樹脂系のワックス潤滑剤は、ポリエチレン系或いはテフロン(登録商標)系の微粒子ワックスが潤滑性向上効果が大きく好適である。
前記ワックス潤滑剤の水溶性潤滑樹脂塗膜に占める含有率は、1%未満ではその潤滑性向上効果効果が十分に得られず、10%を超えるとその効果が飽和するので1乃至10%が好ましい。
潤滑剤にはカーボン、二硫化モリブデン、ボロンナイトライド、タルクなどの無機系潤滑剤も適用できるが、有機樹脂系のものの方が潤滑性向上効果が大きい。
前記水溶性潤滑樹脂塗料の塗布方法は、ロールコーター法が簡便で好ましいが、スプレー法、引き上げ法などの他の方法も適用できる。前記塗料を塗布した後は乾燥させる。
本発明において、前記水溶性潤滑樹脂塗料の塗膜厚さを3〜8μmに規定する理由は、前記塗膜厚さが3μm未満では十分な潤滑効果が得られず、8μmを超えて厚くしても潤滑効果が飽和してコスト的に不利なためである。
請求項3記載発明は、請求項1、2記載発明において、アルミニウム合金板材にFe、Siの量を規定したAl−Mn系合金を用いたものであり、請求項4記載発明はアルミニウム合金板材にFe、Siの量を規定したAl−Mn−Mg系合金を用いたものであり、いずれも得られる成形加工品はメタル質感のある灰色系の好ましい色調を呈する。
前記アルミニウム合金において、MnはAlと反応して金属間化合物粒子(主にAlMnおよびAl(Mn、Fe))を形成する。前記金属間化合物粒子は硫酸を含む液(陽極酸化処理液)には基本的に不溶なため、皮膜中に多数分散して陽極酸化皮膜の灰色化に寄与する。Mnが0.9%未満では、陽極酸化皮膜の厚さが薄い場合、灰色化が不十分な淡色となる。またMnが2.0%を超えると、合金鋳造時にMnを含む粗大な晶出物が生成して色むらや皮膜割れの原因になる。従ってMnの含有量は0.9〜2.0%に規定する。なお固溶状態のMnが多く存在すると、陽極酸化皮膜に色味を与えるので、無彩色の灰色を得るためには固溶Mn量は0.3%以下が好ましい。
Mgは強度向上に寄与する。またMnの析出を促進してMnを含む微細な金属間化合物粒子の個数密度および面積率を高めるので、陽極酸化皮膜が薄い場合でも灰色化し易い。
この効果は、Mg含有量が0.05%未満では十分に得られず、6.0%を超えると圧延が困難になり健全な板材が得られなくなる。従ってMgの含有量は0.05〜6.0%に規定する。
Fe、Siはそれぞれ0.20%以下、0.13%以下に規制する。これを超えて含有されると、いずれも鋳造時に粗大な晶出物が生成し、陽極酸化皮膜の色むらや皮膜割れが起き易くなる。
板材となるアルミニウム合金の鋳造組織或いは再結晶組織を微細化するためにTi、Cr、Zr、Vの1種又は2種以上を添加するのが好ましい。
Tiは0.003%未満では微細化効果が小さく、0.10%を超えると粗大な晶出物が生成して陽極酸化皮膜に色むらや割れが生じる。Crは0.05%未満では微細化効果が小さく、0.15%を超えると陽極酸化皮膜に黄色みが生じ好ましくない。
Zr、Vはともに0.05%未満では微細化効果が小さく、0.30%を超えると粗大な晶出物が生成して陽極酸化皮膜に色むらや割れが生じ好ましくない。
TiにBを組み合わせて添加すると鋳造組織の微細化が促進する。Bが0.0001%未満ではその効果が小さく、0.05%を超えると粗大な晶出物が生成して陽極酸化皮膜に色むらや割れが生じ好ましくない。
Cuは陽極酸化皮膜の色調に黄色みを与えるので0.10%以下に規制するのが好ましい。Znは0.50%以下なら特性に悪影響がなく許容される。鋳造時の溶湯酸化防止のためBeを0.01%以下添加しても構わない。
アルミニウム合金板材中に分散する円相当径が0.03〜1.0μmのAl−Mn系或いはAl−Mn−Mg系の金属間化合物粒子(微細粒子)は、特に陽極酸化皮膜が薄い場合に、灰色化に有効に寄与する。その個数密度を10個/mm以上に規定する理由は、10個/mm未満ではその灰色化効果が十分に得られないためである。
前記微細粒子は成形加工時に陽極酸化皮膜の割れを助長することはない。
前記微細粒子の面積率は前記個数密度と同様に陽極酸化皮膜の灰色化に重要である。
前記面積率を1.8%以上に規定する理由は、1.8%未満では、淡色となり十分に灰色化されないためである。前記微細粒子の面積率を1.8%以上にするには、Mnの含有量は0.9%以上にする必要がある。
Mnを含む金属間化合物粒子のうち粒径が1.0μm超の粗大粒子で、特に2.0μm以下の粗大粒子は、陽極酸化皮膜が厚い場合は灰色化に寄与するが、陽極酸化皮膜が薄い(10μm以下)場合は灰色化の寄与率が小さい。そのため前記1.0μm超の粗大粒子が多く存在すると、薄い陽極酸化皮膜の灰色化に有効な微細粒子が相対的に減少し好ましくない。そこで、本請求項3、4発明では、前記灰色化の観点から、アルミニウム合金板材中の微細粒子の面積率が粗大粒子の面積率を上回るように規定する。
陽極酸化処理前のエッチング処理で溶解或いは脱落する粒子は粗大粒子より微細粒子の方が多く、そのためエッチング処理後は、微細粒子が相対的に減少する。その結果、陽極酸化皮膜が薄い場合は灰色化が不十分となることがある。従って過度のエッチングは避けることが好ましい。
陽極酸化皮膜中の粗大粒子は成形加工時に割れの起点或いは割れの伝播経路となり皮膜割れを助長するので、特に径が5.0μm以上の粗大粒子の個数密度は500個/mm以下にするのがよい。
本発明において、前記陽極酸化皮膜厚さを3〜10μmの範囲内で調整することにより灰色の濃度を種々に調整できる(特許願2002−300852参照)。
陽極酸化皮膜厚さは薄いほど安価になるが、3μm未満では十分な灰色が得られないことがあり、また陽極酸化皮膜を安定して形成するのが困難になる。一方、陽極酸化皮膜が10μmを超えると成形加工時に陽極酸化皮膜にクラックが発生し易くなり、またコスト高になり、さらに灰色が濃くなりすぎ用途が制限される。従って陽極酸化皮膜の厚さは3〜10μmが好ましい。
本発明の陽極酸化処理板では、反射率は60度鏡面反射率で52%以下に抑制(光沢の抑制)される。これにより灰色の落ち着いた色調が得られる。
前記光沢の抑制は、陽極酸化処理前のエッチングで板材表面に露出した金属間化合物粒子が溶解或いは脱落することで実現する。前記エッチングは、例えば5〜15%のNaOH水溶液を用いて行われる。なお、過度のエッチングは、前述したように、微細粒子の面積率を減少させ灰色化を阻害するので注意する必要がある。
請求項3、4発明において、Al−Mn系合金板材或いはAl−Mn−Mg系合金板材は、例えば、DC鋳造、加熱処理、熱間圧延、冷間圧延(中間焼鈍含む)を組み合わせた常法により製造できる。この中で、鋳造後の加熱処理でAl−Mn系或いはAl−Mn−Mg系の金属間化合物が析出する。前記加熱処理条件は、400℃未満では灰色化に必要な微細粒子の個数密度および面積率が得られず、530℃超では析出する金属間化合物粒子が大きくなりすぎ、薄い陽極酸化皮膜で灰色化が安定して得られなくなる。また前記加熱処理時間は、0.5時間未満では微細粒子の個数密度および面積率が十分得られず、48時間を超えても灰色化が特段に向上するわけではなく、コストおよび生産性の点で不利である。従って前記加熱処理は400〜530℃で0.5〜48時間行うのがよい。
特に好ましい加熱処理温度は420〜490℃であり、この温度範囲では、陽極酸化膜厚が4μm未満の薄さでも濃い灰色が得られる。
前記加熱処理は、熱間圧延前の均質化処理或いは予備加熱、熱間圧延後の焼鈍、冷間圧延時の中間焼鈍などを兼ねて行うのが経済的である。
板材となる合金板の鋳造は、板連続鋳造(ストリップキャスティング)法により行ってもよい。この場合、熱間圧延の有無に拘らず、冷間圧延前または冷間圧延途中で金属間化合物を析出させるための加熱処理を行なう必要がある。
板材となる合金板はO材(焼鈍材)が好ましいが、加工材(JISの調質記号でH1X、H2X、Mg含有合金に関してはH3X。Xは1〜9の整数)でも構わない。
板材がO材の場合、結晶粒径が大きいと陽極酸化後の成形加工で変形部に肌荒れが生じ、これが原因で陽極酸化皮膜に割れが生じることがある。従って板材の結晶粒径は90μm以下に調整するのが好ましい。
この結晶粒の粗大化防止には、(1)最終焼鈍前の冷間圧延率を50%以上にする、(2)中間焼鈍等を連続焼鈍ライン(CAL)を用いて急速短時間加熱して行う、(3)微細化作用のあるCr、Zr、Vなどを微量添加する、などが有効である。
以上、本発明で用いるアルミニウム合金板材の製造方法について説明したが、要は、薄い陽極酸化皮膜の灰色化には、アルミニウム合金板材中に円相当径が0.03〜1.0μmの微細なAl−Mn系或いはAl−Mn−Mg系の金属間化合物粒子が10個/mm以上の個数密度で、かつ1.8%以上の面積率で分散し、しかも前記面積率が円相当径1.0μmを超える粗大なAl−Mn系金属間化合物粒子の面積率より大きい金属組織が必要であり、本発明では、アルミニウム合金板材の製造方法は、前記金属組織が得られるのであれば特に限定しない。
本発明では、陽極酸化処理は、板材コイルを連続的に陽極酸化処理する連続コイルアルマイト法が推奨される。この方法は、バッチ式に比べて、処理コストが安く、生産性に優れ、陽極酸化皮膜を安定して薄く形成でき、色調も安定する。連続陽極酸化処理の給電方法は、間接給電方法でも、ロールによる直接給電方法でも構わない。
前記連続コイルアルマイト法は、例えば、コイル状板をアンコイルしつつ、予備処理、陽極酸化処理、封孔処理、最終乾燥をこの順に連続的に施す方法である。乾燥後の板材はリコイルしても、切り板にしてもよい。
前記予備処理は、種々方法による脱脂、アルカリ溶液によるエッチング、硝酸によるデスマットなどにより行う。前記アルカリエッチングは5〜15%のNaOH水溶液(室温〜60℃)に10〜300秒間浸漬して行う。
前記陽極酸化処理は10〜20%の硫酸水溶液(液温は10〜22℃)中で行うのが好ましい。陽極酸化処理後、酢酸ニッケルなどにより封孔処理を施すのが好ましい。封孔処理を兼ねて陽極酸化皮膜面に透明塗装を施してもよい。
陽極酸化処理した板材の色調は、JIS Z 8730に規定されたハンター色差式で示される。式中、L値はこの表色系の明度指数で、数値の大きいほど明るい色調となる。aがプラス側で高い値では赤みを帯び、逆では緑色みを帯びる。またbがプラス側で高いほど黄色みを帯び、逆では青色みを帯びる。前記L、a、b値が、37<L<77、−1.5<a<1.5、−1.5<b<1.5の範囲内では、ほぼ色味の無い淡灰色から濃(暗)灰色までの色調になる。濃淡は陽極酸化皮膜厚さに左右される。
本発明において、アルミニウムまたはアルミニウム合金の板材は、結晶粒制御、スキンパス、レベラー矯正などを行って成形加工時に降伏点伸びが生じないようにしておくことが好ましい。降伏点伸びが生じると、その個所は、肌荒れやストレッチャーストレインマークが発生して局部的に変形し、陽極酸化皮膜にクラックが発生したり、色調が変化したりすることがある。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。
表1に示す組成のAl−Mn系合金(合金No.A)を通常のDC法によりスラブに鋳造し、これを熱間圧延(均質化処理なし、熱延予備加熱460℃×10時間)して厚さ5.0mmの熱延板とし、これを冷間圧延(中間CAL、最終CALとも500℃×0秒)して厚さ1.0mmの板材とした。次に、この板材にアルカリ脱脂→硫酸浴中での陽極酸化処理→ロールコーターによる水溶性潤滑塗料塗布→120℃の乾燥炉中に2分間保持→冷却の工程を施して水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板を製造した。
陽極酸化処理は、間接給電式連続コイルアルマイト法により施した。
即ち、コイル巻きした板幅30cmのアルミニウム合金板材を、6〜12m/分の速度でアンコイルして、弱アルカリ脱脂槽、アルカリエッチング槽(50℃の10%NaOH水溶液)、デスマット槽に通して連続的に予備処理し、次いで15%硫酸水溶液(18℃)中で電流密度12〜16A/dmの条件で陽極酸化処理を施した。この後、酢酸ニッケル系の封孔助剤を加えた封孔槽(90℃)で5分間封孔処理を施した。
次に、前記封孔処理後の陽極酸化皮膜上に水溶性潤滑塗料を塗布した。前記水溶性潤滑塗料には水溶性アクリル樹脂塗料、水溶性ポリエステル樹脂塗料、酢酸ビニル樹脂塗料の3種を用い、それぞれにポリエチレンワックス(ワックス潤滑剤)を3〜8%添加した。
陽極酸化皮膜の厚さは3〜10μmの範囲で、水溶性潤滑塗膜の厚さは3〜8μmの範囲でそれぞれ変化させた。
得られた各々の水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板について、成形加工性、脱脂性、色調、反射率を下記方法により調べた。
成形加工性は、前記処理板を角筒絞り成形し、破断限界絞り高さおよび金型壁面の黒ズミ(陽極酸化皮膜の色調変化)とかじり傷の発生有無を調べて評価した。
前記角筒絞り成形は、ポンチに一辺の長さが100mmの断面正方形の四隅に半径10mmの面取りを施したものを用い、シワ押え力3ton、プレス速度100mm/分の条件で行った。前記処理板の破断限界絞り高さが15mmを超えたものは絞り性(成形加工性)が極めて良好(○)、12〜15mmのものは良好(△)、12mm未満のものは不良(×)と評価した。
金型の黒ずみおよびかじり傷は、成形後の金型のコーナー壁部を目視観察し、黒ずみもかじり傷も存在しないものは成形加工性が良好(○)、どちらか1つでも存在したら不良(×)と評価した。
脱脂性は、スターラーにより弱い攪拌状態としたPH10.5、水温40℃のアルカリ水溶液中に2分浸間漬し、その後水道水の流水で30秒間水洗した後、乾燥した。
乾燥後の陽極酸化処理板の表面を目視観察し、水溶性潤滑塗膜が全く残っていないものは脱脂性が良好(○)、塗膜が少しでも残っているものは不良(×)と判定した。
色調はJIS Z 8730に記載されたハンター色差式のL、a、b値で示した。
反射率は60度反射率をJIS Z 8741に従って調べた。
表1に示す組成のAl−Mn−Mg系合金(合金No.B)を用いた他は実施例1と同じ方法により、水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板を製造し、実施例1と同じ調査を行った。
比較例1として、陽極酸化皮膜厚さまたは水溶性潤滑塗膜の厚さを本発明規定値外とした他は、実施例1と同じ方法により水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板を製造し、実施例1と同じ調査を行った。
比較例2として、陽極酸化皮膜厚さまたは水溶性潤滑塗膜の厚さを本発明規定値外とした他は、実施例1と同じ方法により水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板を製造し、実施例2と同じ調査を行った。
比較例3として、水溶性潤滑塗料にワックスを0.5%含有させた他は、実施例1または実施例2と同じ方法により水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板を製造し、実施例1と同じ調査を行った。
比較例4として、水溶性潤滑樹脂塗料に代えて非水溶性潤滑剤を塗布した他は、実施例2と同じ方法により、水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板を製造し、実施例1と同じ調査を行った。
比較例5として、予備加熱温度などの製造条件を変化させてAl−Mn系金属間化合物粒子の個数または面積率を請求項3記載発明規定値外(表1の合金No.C〜E)とした他は、実施例1と同じ方法により水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板を製造し、実施例1と同じ調査を行った。
比較例6として、予備加熱温度などの製造条件を変化させてAl−Mn−Mg系金属間化合物粒子の個数または面積率を請求項4記載発明規定値外(表1の合金No.F〜H)とした他は、実施例2と同じ方法により水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板を製造し、実施例1と同じ調査を行った。
実施例1、2および比較例1〜6の調査結果を表2に示した。
表1には、金属間化合物微細粒子の個数密度と面積率、および粗大粒子の面積率を併記した。前記の個数密度および面積率は試料断面を電子顕微鏡で観察し画像解析装置で測定した。
表2には、陽極酸化皮膜および水溶性潤滑塗膜の厚さを併記した。
前記陽極酸化皮膜の厚さは、10平方mmあたりのアルミニウム合金板の質量を、皮膜剥離前後で計測し、その差をAlの密度で除して求めた。潤滑樹脂塗膜の厚さは市販の膜厚計により測定した。
なお、表1の合金No.C〜Eは請求項3に対する比較例、合金No.F〜Hは請求項4に対する比較例、表2のNo.25、26、29、30の陽極酸化皮膜厚さは請求項3、4に対する比較例、No.27、28、31、32の樹脂塗膜厚さは請求項2〜4に対する比較例、No.33、34の樹脂塗膜中のワックス含有量は請求項2〜4に対する比較例である。
Figure 2006026938
Figure 2006026938
表2から明らかなように、本発明例の陽極酸化処理板(No.1〜24)は、いずれも、成形加工時に陽極酸化処理板と金型に欠陥が生じず、また前記塗膜が水溶性のため脱脂が容易になされた。さらに色調はメタル質感を有する無光沢(反射率52%以下)の灰色系のものとなった。
これに対し、比較例1、2では、No.25、29は陽極酸化皮膜が薄すぎるため、十分な灰色発色が得られず、No.26、30は陽極酸化皮膜が厚すぎるため、No.27、31は水溶性潤滑樹脂塗膜が薄すぎるためいずれも前記陽極酸化皮膜にクラックが発生し、金型にかじり傷が発生した。No.28、32は水溶性潤滑樹脂塗膜が10μmと厚いが、厚さ8μmのNo.10、22と潤滑性が同等で飽和しており、コスト的に不利である。比較例3のNo.33、34は水溶性潤滑樹脂塗膜中に含まれるワックス量が少ないため陽極酸化皮膜にクラックが発生し、金型にかじり傷が発生した。比較例4のNo.35〜37はプレス油を用いたが、量が不足し金型にかじり傷が発生するなどした。また成形加工後の脱脂(洗浄)も実施例1、2に較べて格段に手間を要した。比較例5のNo.38〜40および比較例6のNo.41〜43は、微細粒子の個数または面積率が本発明規定値外のため、いずれも灰色発色が不十分であり、反射率も大きくなった。

Claims (4)

  1. 陽極酸化処理が施されたアルミニウムまたはアルミニウム合金板材の表面に水溶性潤滑樹脂塗膜が設けられていることを特徴とする成形加工性に優れる水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板。
  2. 前記水溶性潤滑樹脂塗膜中に有機樹脂系のワックス潤滑剤が固形分として1乃至10%(質量%、以下同じ)含有され、前記水溶性潤滑樹脂塗膜の厚さが3〜8μmであることを特徴とする請求項1記載の成形加工性に優れる水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板。
  3. 前記アルミニウム合金板材がMnを0.9〜2.0%(質量%、以下同じ)含有し、Feを0.20%以下、Siを0.13%以下に規制し、残部がAlと不可避不純物からなるAl−Mn系合金板材であり、前記板材中に円相当径が0.03〜1.0μmのAl−Mn系金属間化合物粒子が個数密度10個/mm以上、面積率1.8%以上で分散し、前記面積率は円相当径が1.0μmを超えるAl−Mn系金属間化合物粒子の面積率より大きく、前記板材表面に陽極酸化皮膜が3〜10μmの厚さに形成され、その上に水溶性潤滑樹脂塗膜が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の成形加工性に優れる水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板。
  4. 前記アルミニウム合金板材がMnを0.9〜2.0%(質量%、以下同じ)、Mgを0.05〜6.0%含有し、Feを0.20%以下、Siを0.13%以下に規制し、残部がAlと不可避不純物からなるAl−Mn−Mg系合金板材であり、前記アルミニウム合金板材中に円相当径が0.03〜1.0μmのAl−Mn−Mg系金属間化合物粒子が個数密度10個/mm以上、面積率1.8%以上で分散し、前記面積率は円相当径が1.0μmを超えるAl−Mn−Mg系金属間化合物粒子の面積率より大きく、前記板材表面に陽極酸化皮膜が3〜10μmの厚さに形成され、その上に水溶性潤滑樹脂塗膜が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の成形加工性に優れる水溶性潤滑樹脂被覆陽極酸化処理板。
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