JP2012072435A - 金属材料及び金属加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】マトリクス中に溶質元素を均一に分散固溶させた金属材料及び金属加工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る金属材料では、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させ、この剪断変形により固溶された溶質元素が、冷却中に析出しないように急冷して形成した。また、本発明に係る金属加工方法では、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させると共に剪断変形領域を急冷することによって、溶質元素をマトリクス中に過飽和に固溶させ、次いで再加熱によって微細かつ均一に析出物を析出させ、しかも、再加熱の温度および時間・加熱速度・冷却速度等の制御することによって析出物の大きさ・位置・形状・量を制御することとした。
【選択図】図3

Description

本発明は、金属組織中に溶質元素を均一に分散固溶させて高強度化させた金属材料及び同金属材料を製造するための金属加工方法に関するものである。
従来、金属組織中に溶質元素を固溶させることにより、強度向上を図った金属材料が知られている。
例えば、調質型アルミニウム合金は、母材であるアルミニウムに溶質元素としてのマグネシウム及びシリコンを添加して合金とし、この合金に塑性加工を施すことにより、母材に溶質元素を固溶させて、母材である調質型アルミニウム合金よりも強度を高めている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2004−359993号公報
しかしながら、上記従来の熱間鍛造する方法では、塑性加工時に瞬間的に溶質元素が母材原子と置換したり、母材原子間に侵入することで固溶状態となるものの、直ちに元の状態に戻ってしまうため、溶質元素が均一に分散された状態の固溶体を得るのは困難であった。
本発明は、かかる見地より完成されたものであり、マトリクス中に溶質元素を均一に分散固溶させた金属材料を提供することを目的とする。
請求項1記載の金属材料では、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させ、この剪断変形により固溶された溶質元素が、冷却中に析出しないように急冷して形成した。
また、請求項2記載の金属材料では、請求項1に記載の金属材料において、溶質元素をマトリクス中に過飽和に固溶させたことに特徴を有する。
また、請求項3に記載の金属材料では、請求項1または請求項2に記載の金属材料において、溶質元素をマトリクス中に固溶させた金属材料を再加熱によって微細かつ均一に析出物を析出させたことに特徴を有する。
また、請求項4に記載の金属材料では、請求項1〜3いずれか1項に記載の金属材料において、金属体に予め再結晶抑制元素が添加されていることに特徴を有する。
また、請求項5に記載の金属材料では、請求項1〜4いずれか1項に記載の金属材料において、2相もしくはそれ以上の複相組織を有する金属体において、単相もしくは第1相の比率が80%以上になる温度域で低変形抵抗領域を形成した部位を剪断変形させると共に剪断変形領域を急冷し、単一相もしくは第1相内に大小の多くの転位・結晶粒界を析出サイトとして形成すると共に、再加熱によって微細な第2相を析出させたことに特徴を有する。
また、請求項6に記載の金属加工方法では、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させると共に、溶質元素をマトリクス中に過飽和に固溶させるように剪断変形領域を急冷し、次いで再加熱によって微細かつ均一に析出物を析出させ、しかも、再加熱の温度および時間・加熱速度・冷却速度等の制御することによって析出物の大きさ・位置・形状・量を制御することとした。
また、請求項7に記載の金属加工方法では、請求項6に記載の金属加工方法において、再加熱の温度および時間・加熱速度・冷却速度等の制御によって、析出物の大きさ・位置・形状・量等とマトリクス内の溶質元素固溶量を制御することにより、強度と延性・靱性のバランスを制御することに特徴を有する。
また、請求項8に記載の金属加工方法では、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させると共に剪断変形領域を急冷することによって、溶質元素をマトリクス中に過飽和に固溶させ、次いで再加熱によって微細かつ均一に析出物を析出させるとともに、再加熱の前後に塑性加工を加えることによって析出サイトを形成することにより、析出物の大きさ・位置・形状を制御することとした。
また、請求項9に記載の金属加工方法では、請求項8に記載の金属加工方法において、塑性加工は剪断変形であることに特徴を有する。
また、請求項10に記載の金属加工方法では、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させると共に剪断変形領域を急冷することによって、金属材料中に大小の多くの転位・結晶粒界を析出サイトとして形成し、ついで再加熱するにあたり、再加熱により生じる析出物を剪断変形の大きさ・温度・冷却速度により制御することとした。
また、請求項11に記載の金属加工方法では、請求項10に記載の金属加工方法において、剪断変形は捻回ひずみであることに特徴を有する。
また、請求項12に係る金属加工方法では、請求項10または請求項11に記載の金属加工方法において、金属材料に予め再結晶抑制元素を添加することにより、再加熱時に金属材料中の転位および結晶粒界に再結晶抑制元素を析出させることに特徴を有する。
また、請求項13に係る金属加工方法では、金属材料に予め再結晶抑制元素を添加する事により、再加熱時に金属材料中の転位および結晶粒界に再結晶抑制元素を析出させることにより、微細化した金属体の浸炭・窒化などのために行う再々加熱時に生じる結晶粒粗大化を抑制することとした。
請求項1に係る発明によれば、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させ、この剪断変形により固溶された溶質元素が、冷却中に析出しないように急冷して形成したため、マトリクス中に溶質元素を均一に分散固溶させた金属材料を提供することができる。
また、請求項2に係る発明によれば、請求項1に記載の金属材料において、溶質元素をマトリクス中に過飽和に固溶させたため、金属体の結晶内部や結晶界面に溶質元素を析出させることができ、金属体を飛躍的に強化することができる。
また、請求項3に係る発明によれば、請求項1または請求項2に記載の金属材料において、溶質元素をマトリクス中に固溶させた金属材料を再加熱によって微細かつ均一に析出物を析出させたため、強度の高い金属材料を提供することができる。
また、請求項4に係る発明によれば、請求項1〜3いずれか1項に記載の金属材料において、金属体に予め再結晶抑制元素が添加されていることとしたため、再加熱後の冷却時における再結晶を抑制することができ、微細化した結晶構造が再び粗大化するのを防ぐことができる。
また、請求項5に係る発明によれば、請求項1〜4いずれか1項に記載の金属材料において、2相もしくはそれ以上の複相組織を有する金属体において、単相もしくは第1相の比率が80%以上になる温度域で低変形抵抗領域を形成した部位を剪断変形させると共に剪断変形領域を急冷し、単一相もしくは第1相内に大小の多くの転位・結晶粒界を析出サイトとして形成すると共に、再加熱によって微細な第2相を析出させたため、金属体の強度をさらに向上させることができる。
また、請求項6に係る発明によれば、金属加工方法において、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させると共に剪断変形領域を急冷することによって、溶質元素をマトリクス中に過飽和に固溶させ、次いで再加熱によって微細かつ均一に析出物を析出させ、しかも、再加熱の温度および時間・加熱速度・冷却速度等の制御することによって析出物の大きさ・位置・形状・量を制御することとしたため、金属体の強度を飛躍的に向上させることができる。
また、請求項7に係る発明では、請求項6に記載の金属加工方法において、再加熱の温度および時間・加熱速度・冷却速度等の制御によって、析出物の大きさ・位置・形状・量等とマトリクス内の溶質元素固溶量を制御する事により、強度と延性・靱性のバランスを制御することとしたため、金属体に、所望の強度や延性・靱性を付与することができる。
また、請求項8に係る発明では、金属加工方法において、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させると共に剪断変形領域を急冷することによって、溶質元素をマトリクス中に過飽和に固溶させ、次いで再加熱によって微細かつ均一に析出物を析出させるとともに、再加熱の前後に塑性加工を加えることによって析出サイトを形成することにより、析出物の大きさ・位置・形状を制御することとしたため、金属体に所望の強度を付与することができる。
また、請求項9に係る発明では、請求項8に記載の金属加工方法において、塑性加工は剪断変形であることとしたため、簡便に金属体の強度を向上させることができる。
また、請求項10に係る発明では、金属加工方法において、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させると共に剪断変形領域を急冷することによって、金属材料中に大小の多くの転位・結晶粒界を析出サイトとして形成し、ついで再加熱するにあたり、再加熱により生じる析出物を剪断変形の大きさ・温度・冷却速度により制御することとしたため、金属体に所望の強度を付与することができる。
また、請求項11に係る発明では、請求項10に記載の金属加工方法において、剪断変形は捻回ひずみであることとしたため、簡便かつ高効率で金属材料中に大小の多くの転位・結晶粒界を析出サイトを形成することができる。
また、請求項12に係る発明では、請求項10または請求項11に記載の金属加工方法において、金属材料に予め再結晶抑制元素を添加する事により、再加熱時に金属材料中の転位および結晶粒界に再結晶抑制元素を析出させることとしたため、結晶粒の粗大化を防止することができ、強度の高い金属体とすることができる。
また、請求項13に係る発明では、金属加工方法において、金属材料に予め再結晶抑制元素を添加する事により、再加熱時に金属材料中の転位および結晶粒界に再結晶抑制元素を析出させることにより、微細化した金属体の浸炭・窒化などのために行う再々加熱時に生じる結晶粒粗大化を抑制することとしたため、再々加熱が可能でありながら、強度に優れた金属体とすることができる。
低抵抗領域に加える剪断変形の説明図である。 結晶微細化プロセス装置の一例の概略説明図である。 剪断変形微細化処理前後の金属組織を示した説明図である。
まず、本発明の概要について説明する。本発明の金属加工方法は、金属組織中に溶質原子に由来する微細な析出物を均一かつ多量に析出させて金属体を高強度化する技術を中心とするものである。
具体的には、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させ、この剪断変形により固溶された溶質元素が、冷却中に析出しないように急冷して形成している。以下の説明において、この低変形抵抗領域を剪断変形し急冷する処理を「剪断変形微細化処理」という。
この剪断変形微細化処理を行うことにより、金属を構成する結晶粒の微細化による強度向上に加え、金属体の内部に析出させた微細な析出物によって、さらなる強度向上を図ることができ、極めて強度の高い金属材料を提供することができる。
付言すれば、本発明に係る金属材料中には、溶質元素由来の析出物が、あたかも繊維強化プラスチックにおける繊維質のように均一且つ多量に析出することとなり、金属体の強度を飛躍的に向上できるのである。
本発明を実施するにあたり、金属体は、二種類以上の金属元素からなる合金で構成してもよいし、金属元素と非金属元素とからなる金属間化合物で構成してもよい。
また、金属体の形態は、剪断変形微細化処理によって金属組織、すなわち結晶粒が微細化するのであれば、特に限定されるものではない。例えば、金属体は、断面が矩形状となった矩形体や、断面が円形状となった丸棒体に限定するものではなく、平板体や中空部を有する筒状体となっていてもよいし、これら以外でもたとえばH形鋼体、山形鋼体、溝形鋼体、T形鋼体、リップル溝鋼体等であってもよい。
剪断変形微細化処理は、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させることによって前記金属体の金属組織を微細化するとともに、金属体に含有させた溶質元素を均一に分散させ、また、母材のマトリクスを構成する原子間を効率よく広げて、溶質原子の固溶を促進する金属加工処理である。
金属体に形成する低変形抵抗領域とは、金属体を加熱することによって変形抵抗が低下した領域であり、低変形抵抗領域以外の領域と比較して外力の作用にともなって変形を生じやすくなっている領域のことである。なお、説明の便宜上、低変形抵抗領域以外の領域を非低変形抵抗領域と呼ぶ。
低変形抵抗領域の剪断変形は、例えば、同低変形抵抗領域に振動を付与したり、捻ることで生起させることができる。
例えば、丸棒状の金属体を捻ることで低変形抵抗領域に剪断変形を加える場合を例に挙げると、図1に示すように、第2非低変形抵抗領域32'を第1非低変形抵抗領域31'に対して、金属体の伸延方向と略平行とした回転軸周りに捻回することによって低変形抵抗領域30'を剪断変形させることができる。このとき、第2非低変形抵抗領域32'は、第1非低変形抵抗領域31'に対して常に一定の角速度で回転させてもよいし、正回転と逆回転とを交互に繰り返してもよい。
第1非低変形抵抗領域31'に対する第2非低変形抵抗領域32'の相対的な振動運動あるいは捻回運動の運動量は、低変形抵抗領域30'に剪断変形を生じさせて金属組織の微細化が可能な程度の運動量であればよい。
なお、低変形抵抗領域30'を剪断変形させる場合には、低変形抵抗領域30'に金属体の伸延方向に沿って圧縮応力を作用させることにより、低変形抵抗領域30'に大きな形状変形が生起されたり、低変形抵抗領域30'部分において破断が生じたりすることを抑制できる。
このような、捻りによる低変形抵抗領域の剪断変形は、例えば、次に説明する結晶微細化プロセス装置によって行うことができる。
図2は、金属体に形成した低変形抵抗領域を捻回することにより剪断変形させる装置である。本発明者らは、このように低変形抵抗領域を捻回することによって剪断変形させて金属組織を微細化させることを結晶微細化プロセス法と称しており、図2は結晶微細化プロセス装置の一例の概略説明図である。
結晶微細化プロセス装置は、金属体Mの伸延方向に沿って基台60上面に固定部61と、剪断変形部62と、回転部63とを設けて構成している。
固定部61は、基台60上面に立設した第1固定壁61a及び第2固定壁61bに、それぞれ金属体Mを挿通させる挿通孔を設け、同挿通孔にそれぞれ金属体Mを挿通させ、第1固定壁61a及び第2固定壁61bの上端に螺着した固定用ネジ61c,61dの先端部を挿通孔に挿通させた金属体M周面に当接させて、金属体Mを固定する。
回転部63は、基台60上面に立設した第1規制壁63aと、第2規制壁63bとを備え、第1規制壁63a及び第2規制壁63bにはそれぞれ金属体Mを挿通させる挿通孔を設け、同挿通孔にそれぞれ金属体Mを挿通させている。
回転部63側の金属体Mの端部には、回転用モータ(図示せず)が連動連結されており、この回転用モータにより金属体Mの回転部63側の非低変形抵抗領域を軸回り方向へ回転可能に構成している。
剪断変形部62は、金属体Mを非接触にて所定温度に加熱する加熱装置64と、この加熱装置64による加熱によって金属体Mに形成した低変形抵抗領域30'を所定の幅寸法とするために金属体Mを冷却する冷却装置65とで構成している。
加熱装置64には高周波加熱コイルを用いており、この高周波加熱コイルの内部に金属体Mを非接触状態で挿通させ、金属体Mを所定温度に誘導加熱することによって変形抵抗を低減させて低変形抵抗領域30'を形成している。
冷却装置65は、給水配管65aから供給された水を吐出する第1吐水口65bと第2吐水口65cで構成しており、第1吐水口65b及び第2吐水口65cから吐出した水によって金属体Mを冷却している。なお、図3中、符号66は第1吐水口65b及び第2吐水口65cから吐出された水を受ける受水容器であり、符号67は同受水容器66に接続した排水管である。
結晶微細化プロセス装置は上記のように構成しており、金属体Mに形成した低変形抵抗領域30'を捻回することによって金属組織を微細化する場合には、結晶微細化プロセス装置に金属体Mを装着し、冷却装置65によって低変形抵抗領域30'の両側を冷却しながら加熱装置64によって低変形抵抗領域30'を加熱するとともに、回転用モータを所定の回転数で回転させて低変形抵抗領域30'を捻回することにより、剪断変形微細化処理を行うことができる。
また、このように低変形抵抗領域を、金属体の所定部位に局部的に形成していることによって、金属組織を微細化するために加えた剪断変形による剪断応力が低変形抵抗領域に集中して作用するので、効率よく金属組織を微細化することができる。
また、高周波加熱コイルによって非接触状態で金属体を誘導加熱する構成としているため、金属体を効率的に加熱しながらも、急速な冷却を行うことが可能である。
この構成は、特に、金属体中に存在させた溶質元素を均一に分散固溶させる上で、極めて大きな役割を果たす。
すなわち、捻回により原子間距離が広がったマトリクス中に、熱運動する溶質元素を多量に取り込ませつつ、溶質元素がマトリクスから離脱するいとまを与えずに冷却して、従来にない高濃度の溶質元素をマトリクス中に固溶できるためである。
従って、母材金属に対して、溶質元素を飽和状態とすることができるのは勿論のこと、溶質元素を固溶限を越えて過飽和状態として、溶質元素の析出をさらに促進させることができる。
マトリクス中に溶質元素を固溶させた金属材料は、時効処理などの再加熱により溶質元素を析出させることで、析出物が金属組織中に微細かつ均一に出現し、金属体をより高強度化させることができる。なお、ここで均一とは、金属体全体における析出物の分散状態を表現したものであり、必ずしも金属体内に一様に析出物が存在することをいうものではない。金属体全体としては析出物が均一に分布しているが、更にミクロ的な視点で見た場合、金属体内の転位や結晶粒界に析出物が偏在している状態も含んでいる。
この再加熱は、比較的低めの温度(第1の温度)で加熱して、小さい析出物を多量に析出させ、その後、第1の温度よりも高い第2の温度で加熱して、第1の温度にて析出させた析出物を核として、析出物をさらに成長させるといった二段階の加熱処理を行うのが好ましい。
高い温度で一段階の加熱処理を行うと、高い温度による熱エネルギーが溶質元素の熱運動を亢進させ、マトリクス中に固溶している溶質元素の移動距離が大きくなってしまい、析出物が粗大化する傾向がある。析出物が粗大化すると、金属体の強度の向上が困難となる。
一方、再加熱を前述の二段階で行うことにより、適切な大きさの析出物を、均一かつ多量に析出させることができるため、金属体の強度を飛躍的に向上させることができる。
なお、この再加熱を行うに際し、金属体には予め再結晶抑制元素を添加しておくと良い。この再結晶抑制元素は、結晶微細化プロセス装置で微細化した結晶粒が、金属体の再加熱に伴って粗大化するのを防止する役割を有する。
従って、溶質元素を析出させる際に行った加熱によって、再結晶により金属体の強度が低下するのを防止することができ、金属体をより高強度なものとすることができる。
換言すれば、再結晶抑制元素の添加により、微細な結晶粒による強度向上と、溶質元素の微細かつ均一な析出による強度向上との両者をともに実現して、飛躍的に強度の高い金属材料とすることができる。なお、再結晶抑制元素は、金属体のマトリクスを形成する元素組成により、適宜選択する必要がある。一例を挙げると、金属体を鉄鋼材料とした場合には、再結晶抑制元素は、ニオブやバナジウムが好適である。
また、金属体が複相組織を有するものである場合には、単相もしくは所定の第1相の比率が80%以上になる温度域で低変形抵抗領域を形成した部位を剪断変形させると共に剪断変形領域を急冷し、単相もしくは第1相内に大小多くの転位・結晶粒界を析出サイトとして形成し、再加熱を行うようにしても良い。このような金属材料は、再加熱によって微細な第2相が析出することとなり、金属体の高強度化を図ることができる。
また、再加熱は、温度、加熱速度、加熱時間、冷却速度等を調整することにより、析出物の大きさや位置、形状、量を制御することができる。これにより、所望の強度で所望の性状を有する金属材料とすることが可能となる。
また、金属体のマトリクス内の溶質元素の固溶量を調整するようにしても良い。前述の再加熱の調整に加えて、固溶量の調整を行うことにより、所望の強度や、延性・靱性のバランスを備えた金属材料とすることができる。
なお、析出物の大きさや位置、形状、量の制御は、再加熱の前後少なくともいずれか一方で塑性加工を加えることによっても行うことができる。この塑性加工としては、例えば、圧延、鍛造、押出を挙げることができる。
剪断変形は、例えば前述の結晶微細化プロセス装置を用いて金属体に捻回ひずみを与えるようにしても良い。またこのとき、剪断変形の大きさ(捻回力の大きさや角速度)、加熱温度、冷却速度等を調整することにより、析出物の大きさや位置、形状等を制御して、所望の強度や性状を有する金属材料としても良い。
また、予め金属体に添加した再結晶抑制元素は、再加熱時に金属体中の転位や結晶粒界に析出させることにより、結晶粒が微細化された金属体の浸炭・窒化等のために行う再々加熱時に生じる結晶粒の粗大化を抑制させることもできる。
本発明に係る金属材料及び金属加工方法では、上述の構成を備えることにより、従来にない高強度の金属材料や金属加工方法を提供することが可能となる。
以下、本実施形態に係る金属材料及び金属加工方法について、実施例を挙げて説明する。
〔実施例1〕
本実施例1では、金属体として直径50mmの棒状のアルミニウム合金M1を用い、前述の結晶微細化プロセス装置を用いて以下の条件により結晶微細化プロセス法による剪断変形微細化処理を行うことにより、処理片M1'を得た。なお、アルミニウム合金M1には、予め、溶質元素として0.6%のシリコンと1.0%のマグネシウムが含まれている。
・加熱装置64によるアルミニウム合金M1の加熱温度:515〜590℃
・捻回回転数:20〜200rpm
・横移動速度:450mm/min
次に、電子顕微鏡により、得られた処理片M1'の結晶構造の観察を行った。なお、処理片M1'との比較を行うために、剪断変形微細化処理前のアルミニウム合金M1を比較対象サンプルとして同様に観察に供した。その結果を図3に示す。
図3に示すように、剪断変形微細化処理を行った後の結晶構造(図3(b)参照)は、処理を行う前の結晶構造(図3(a)参照)と比較して、結晶粒が微細化されていることが分かる。
次に、引っ張り試験法により、得られた処理片M1'の強度測定試験を行った。なお、処理片M1'との強度比較を行うために、剪断変形微細化処理前のアルミニウム合金M1を比較対象サンプルとして同様に測定に供した。
その結果、比較対象サンプルの強度は320N/mm2 であったのに対し、処理片M1'の強度は410N/mm2となり、処理片M1'は、比較対象サンプルにに比して28%の強度向上が確認された。
上述してきたように、本実施形態に係る金属材料によれば、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させると共に剪断変形領域を急冷し、マトリクス中に溶質元素を均一に分散固溶させたことにより、高強度な金属材料を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
30 低変形抵抗領域
31 第1非低変形抵抗領域
32 第2非低変形抵抗領域
60 基台
61 固定部
62 剪断変形部
63 回転部
64 加熱装置
65 冷却装置
M1 チタン合金

Claims (13)

  1. 金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させ、この剪断変形により固溶された溶質元素が、冷却中に析出しないように急冷して形成した金属材料。
  2. 溶質元素をマトリクス中に過飽和に固溶させたことを特徴とする請求項1に記載の金属材料。
  3. 溶質元素をマトリクス中に固溶させた金属材料を再加熱によって微細かつ均一に析出物を析出させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属材料。
  4. 金属体に予め再結晶抑制元素が添加されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の金属材料。
  5. 2相もしくはそれ以上の複相組織を有する金属体において、単相もしくは第1相の比率が80%以上になる温度域で低変形抵抗領域を形成した部位を剪断変形させると共に剪断変形領域を急冷し、単一相もしくは第1相内に大小の多くの転位・結晶粒界を析出サイトとして形成すると共に、再加熱によって微細な第2相を析出させたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の金属材料。
  6. 金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させると共に、溶質元素をマトリクス中に過飽和に固溶させるように剪断変形領域を急冷し、次いで再加熱によって微細かつ均一に析出物を析出させ、しかも、再加熱の温度および時間・加熱速度・冷却速度等の制御することによって析出物の大きさ・位置・形状・量を制御する金属加工方法。
  7. 再加熱の温度および時間・加熱速度・冷却速度等の制御によって、析出物の大きさ・位置・形状・量等とマトリクス内の溶質元素固溶量を制御する事により、強度と延性・靱性のバランスを制御することを特徴とする請求項6に記載の金属加工方法。
  8. 金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させると共に、溶質元素をマトリクス中に過飽和に固溶させるように剪断変形領域を急冷し、次いで再加熱によって微細かつ均一に析出物を析出させるとともに、再加熱の前後に塑性加工を加えることによって析出サイトを形成することにより、析出物の大きさ・位置・形状を制御する金属加工方法。
  9. 塑性加工は剪断変形であることを特徴とする請求項8に記載の金属加工方法。
  10. 金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させると共に剪断変形領域を急冷することによって、金属材料中に大小の多くの転位・結晶粒界を析出サイトとして形成し、ついで再加熱するにあたり、再加熱により生じる析出物を剪断変形の大きさ・温度・冷却速度により制御する金属加工方法。
  11. 剪断変形は捻回ひずみであることを特徴とする請求項10に記載の金属加工方法。
  12. 金属材料に予め再結晶抑制元素を添加する事により、再加熱時に金属材料中の転位および結晶粒界に再結晶抑制元素を析出させることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の金属加工方法。
  13. 金属材料に予め再結晶抑制元素を添加する事により、再加熱時に金属材料中の転位および結晶粒界に再結晶抑制元素を析出させることにより、微細化した金属体の浸炭・窒化などのために行う再々加熱時に生じる結晶粒粗大化を抑制する金属加工方法。
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