JP2006008722A - 熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐衝撃性、流動性、耐薬品性のバランスに加えて、成形品外観および塗装密着性に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品の提供。
【解決手段】ABS樹脂(A)、ビニル系共重合体(B)およびポリアミド樹脂(C)を特定の割合で配合してなり、これら(A)、(B)および(C)各成分の分散状態(モルフォロジー)を縞状模様に調整してなる熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】図2
【解決手段】ABS樹脂(A)、ビニル系共重合体(B)およびポリアミド樹脂(C)を特定の割合で配合してなり、これら(A)、(B)および(C)各成分の分散状態(モルフォロジー)を縞状模様に調整してなる熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】図2
Description
本発明は、成形品外観および塗装密着性に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
さらに詳しくは、芳香族ビニル系共重合体とゴム質重合体含有グラフト共重合体からなる樹脂(以下ABS樹脂と記載する場合がある。)とポリアミド樹脂からなる成形品外観、塗装密着性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得るものである。また、タルク、ウォラストナイト、雲母、シリカに代表される無機充填材、ガラス繊維や炭素繊維及び金属繊維に代表される繊維強化材などを必要に応じて溶融混合させても、成形品外観、塗装密着性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることが可能である。
ABS樹脂とポリアミド樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物は、ABS樹脂の欠点である耐薬品性・流動性を補い、ポリアミド樹脂の欠点である耐衝撃性、寸法安定性を補う目的で、家庭電気機器、OA機器、自動車などの各部品の分野で従来から使用されている。しかしながら、単にABS樹脂とポリアミド樹脂とをブレンドしただけでは、樹脂相互の相溶性に乏しいために層剥離を起こすという問題があり、塗装品の塗料密着力にも悪影響を与える場合があることから、相溶化剤を添加する試みがなされてきた。
例えば、ABS樹脂とポリアミド樹脂に、さらに無水マレイン酸を共重合させたアクリル系ランダム共重合体を相溶化剤として添加してなる耐衝撃性に優れ、層状剥離のない樹脂組成物(例えば、特許文献1および2参照)が提案されているが、無水マレイン酸を共重合させた共重合体を使用すると、薄肉成形品では表面部に波打ち模様が浮出して外観が悪く、塗装を厚くして目立たなくする必要があるばかりか、ポリアミド樹脂のアミド基と反応してゲル化現象を起こし、ポリアミド樹脂が持つ流動性の効果が発現せず、相溶化剤の添加により経済面でも不利となるという問題があった。
特開昭62−452
特開平4−255756
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、相溶化剤を添加しなくても、グラフト共重合体の組成成形品外観および塗装密着性に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品の提供を目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ABS樹脂を構成するグラフト共重合体とビニル系共重合体、およびポリアミド樹脂の各成分が縞模様形状の分散状態を作り出すことにより、目的を満たす熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、上記の目的を達成するために本発明によれば、ゴム質重合体(a)50〜80重量部の存在下に、芳香族ビニル系単量体(b)40〜90重量%、シアン化ビニル系単量体(c)10〜25重量%、およびその他の共重合可能なビニル系単量体(d)0〜80重量%からなる単量体混合物80〜50重量部をグラフト共重合してなり、グラフト率が10〜100重量%であるグラフト共重合体(A)5〜35重量部、芳香族ビニル系単量体(b)40〜90重量%、シアン化ビニル系単量体(c)10〜25重量%、およびその他共重合可能なビニル系単量体(d)0〜80重量%からなるビニル系共重合体(B)5〜35重量部、およびポリアミド樹脂(C)45〜75重量部を、これら(A)、(B)および(C)の合計が100重量部となるように配合した熱可塑性樹脂組成物であって、これら(A)、(B)および(C)各成分の分散状態(モルフォロジー)を縞状模様に調整してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物が提供される。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、
前記グラフト共重合体(A)が、ゴム質重合体が50〜80重量部でグラフト率30〜60重量%のスチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体であること、
前記ビニル系共重合体(B)が、スチレン−アクリロニトリル共重合体で、極限粘度[η](メチルエチルケトン溶媒、30℃測定)が0.30〜0.55dl/gの範囲であるあること、および、
前記ポリアミド樹脂(C)がナイロン6であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
前記グラフト共重合体(A)が、ゴム質重合体が50〜80重量部でグラフト率30〜60重量%のスチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体であること、
前記ビニル系共重合体(B)が、スチレン−アクリロニトリル共重合体で、極限粘度[η](メチルエチルケトン溶媒、30℃測定)が0.30〜0.55dl/gの範囲であるあること、および、
前記ポリアミド樹脂(C)がナイロン6であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
また、本発明の成形品は、上記の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする。
本発明によれば、以下に説明するとおり、相溶化剤を添加しなくても成形品外観および塗装密着性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明における グラフト共重合体(A)とは、ゴム質重合体(a)50〜80重量部の存在下に 芳香族ビニル系単量体(b)40〜90重量%、シアン化ビニル系単量体(c)10〜25重量%およびその他の共重合可能なビニル系単量体(d)0〜80重量%からなる単量体混合物80〜50重量部をグラフト共重合してなるグラフト共重合体である。
ここでいうグラフト共重合体とは、ゴム質重合体に単量体混合物がグラフト共重合した構造をとった材料の他に、グラフトしていない共重合体をも含むものである。
上記ゴム質重合体(a)としては、ガラス転移温度が0℃以下のものが好適であり、ジエン系ゴムが好ましく用いられる。具体的にはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体などのジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴム、ポリイソプレン、およびエチレン−プロピレン−ジエン系三元共重合体などが挙げられる。なかでもポリブタジエンまたはブタジエン共重合体が好ましい。
ゴム質重合体(a)のゴム粒子径は特に制限されないが、ゴム粒子の重量平均粒子径が0.10〜0.50μmであることが、耐衝撃性の点から必要であり、好ましくは0.18〜0.40μmの範囲である。
なお、重量平均粒子径は「Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt,P.H.Biddison」記載のアルギン酸ナトリウム法(アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める)により測定することができる。
グラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)に用いる芳香族ビニル系単量体(b)としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、およびp−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましい。
グラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)に用いるシアン化ビニル系単量体(c)としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが耐衝撃性の点で好ましい。
グラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)に用いるその他の共重合可能なビニル系単量体(d)としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、などのα,β−不飽和カルボン酸エステルおよびアクリルアミドなどが使用でき、中でもN−フェニルマレイミド、メタクリル酸メチルが成形性の点で好ましい。
グラフト共重合体(A)に用いる単量体混合物に占める芳香族ビニル系単量体(c)の割合は、40〜90重量%、好ましくは50〜80重量%の範囲である。芳香族ビニル系単量体(b)が40重量%未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性が十分でなく90重量%を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が不十分となるため好ましくない。
また、グラフト共重合体(A)に用いる単量体混合物に占めるシアン化ビニル系単量体(c)の割合は、10〜25重量%、好ましくは15〜25重量%の範囲である。シアン化ビニル系単量体(c)が10重量%未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が十分でなく、25重量%を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の黄味が強くなり外観が悪くなるばかりか、塗装時の密着性も悪くなり、成形品ゲート部位で僅かな外力により剥離する傾向を生じるため好ましくない。
さらに、グラフト共重合体(A)に用いる単量体混合物に占めるその他の共重合可能なビニル系単量体(d)の割合は、0〜80重量%、好ましくは0〜70重量%の範囲である。その他の共重合可能なビニル系単量体(d)が80重量%を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が不十分となるため好ましくない。
グラフト共重合体(A)を得る際のゴム質重合体(a)と単量体混合物との割合は、ゴム質重合体(a)50〜80重量部の存在下に、単量体混合物50〜20重量部をグラフト重合する必要がある。ゴム質重合体(a)が50重量部未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が十分でなく、80重量部を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物成分の分散状態を調整することが困難となるため好ましくない。
グラフト共重合体(A)は公知の重合法で得ることができる。例えばゴム質重合体(a)のラテックスの存在下に、単量体および連鎖移動剤の混合物と乳化剤に溶解したラジカル発生剤の溶液を連続的に重合容器に供給して乳化重合する方法などによって得ることができる。
グラフト共重合体(A)のグラフト率は、耐衝撃性および光沢が均衡して優れる樹脂組成物を得るために、30〜100重量%であることが必要であり、好ましくは30〜60重量%である。ここで、グラフト率とは次式により算出される値である。
グラフト率(%)=<ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系共重合体量>/
<グラフト共重合体のゴム含有量>×100
グラフト率(%)=<ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系共重合体量>/
<グラフト共重合体のゴム含有量>×100
本発明におけるビニル系共重合体(B)は、芳香族ビニル系単量体(b)40〜90重量%、シアン化ビニル系単量体(c)10〜25重量%およびその他の共重合可能なビニル系単量体(d)0〜80重量%からなる単量体混合物を共重合することにより得られる共重合体である。
ここで、ビニル系共重合体(B)において用いる芳香族ビニル系単量体(b)の割合は、40〜80重量%、好ましくは50〜80重量%の範囲である。芳香族ビニル系単量体(b)が40重量%未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性が十分でなく、80重量%を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が不十分となるため好ましくない。
また、ビニル系共重合体(B)において用いるシアン化ビニル系単量体(c)の割合は、10〜25重量%、好ましくは15〜25重量%の範囲である。シアン化ビニル系単量体(c)が10重量%未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が十分でなく、25重量%を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の黄味が強く外観が悪くなるばかりか、塗装時の密着性も悪くなり、成形品ゲート部位で僅かな外力により剥離する傾向を生じるため好ましくない。
さらに、ビニル系共重合体(B)において用いるその他の共重合可能なビニル系単量体(d)の割合は、0〜80重量%、好ましくは0〜70重量%の範囲である。その他の共重合可能なビニル系単量体(d)が80重量%を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が不十分となるため好ましくない。
なお、 ビニル系共重合体(B)の粘度は、極限粘度[η](メチルエチルケトン溶媒、30℃測定)が0.30〜0.55dl/gの範囲であることが、耐衝撃性、流動性の点から必要であり、特に0.35〜0.50dl/gの範囲のものが好ましく用いられる。
極限粘度[η]が0.30dl/g未満ではゴム質重合体との絡み合いが悪く、衝撃強度の低下を起こすために好ましくなく、極限粘度[η]が0.55dl/gより高いと分散状態が縞模様にならず、グラフト共重合体(A)・ビニル系共重合体(B)の塊状とポリアミド共重合体(c)の塊状分布によるモルフォロジーになり、塗装時の剥離を起こしやすくなる。
ビニル系共重合体(B)の製造法には特に制限がなく、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状−懸濁重合法など通常の公知の方法で製造することができる。
ただし、熱処理により揮発成分が多く発生しやすい塊状重合品や乳化重合品は塗装外観を悪化させたり、塗膜密着力を低下させる場合があるため、懸濁重合や溶液重合が好ましい。
ただし、熱処理により揮発成分が多く発生しやすい塊状重合品や乳化重合品は塗装外観を悪化させたり、塗膜密着力を低下させる場合があるため、懸濁重合や溶液重合が好ましい。
本発明で用いるポリアミド樹脂(C)は、脂肪族でも芳香族のどちらのポリアミド樹脂でもよく、一般にはナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミドや、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミドなどの芳香族ポリアミドが挙げられる。これらは複数混合させて使用することも可能である。特に、ナイロン6およびナイロン6,6の使用が好ましい。
ポリアミド(C)の製造法には特に制限がなく、アミノカルボン酸の縮合反応、ラクタムの開環重合反応、カルボン酸とアミンによる重縮合反応など通常の公知の方法で製造することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物100重量部中にグラフト共重合体(A)が占める割合は、5〜35重量部、好ましくは10〜30重量部の範囲である。グラフト共重合体(A)が35重量部を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物成分の分散状態を調整することが困難となり、5重量部未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が不十分となるため好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物100重量部中にビニル系共重合体(B)が占める割合は、5〜35重量部、好ましくは、10〜30重量部の範囲である。ビニル系共重合体(B)が5重量部未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物成分の分散状態を調整することが困難となり塗料の密着性が低下し、35重量部を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が不十分となるため好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物100重量部中にポリアミド樹脂(C)が占める割合は、45〜75重量部であり、好ましくは50〜70重量部の範囲である。ポリアミド樹脂(C)が75重量部を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の塗装密着性が十分でなく、表層剥離を起こす場合がある。また、45重量部未満では、得られる熱可塑性樹脂の耐薬品性が十分ではなく、流動性も十分満足できるものではなくなるため好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を得るための溶融混合方法は、得られる組成物中で、グラフト共重合体(A)・ビニル系共重合体(B)およびポリアミド樹脂(C)の各成分の分散状態(モルフォロジー)が縞状模様に調整できる方法であれば特に制限されない。例えば、加熱装置を有するシリンダーで単軸または二軸のスクリューを使用して溶融混合する方法が採用されるが、中でも二軸のスクリューを使用することが好ましい。加熱温度も本発明の目的を損なわない範囲で、溶融混合時の温度勾配などを自由に設定することができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、本発明の分散状態を損なわない範囲でABS樹脂とポリアミド樹脂の界面密着力を向上させ、さらに優れた塗装密着性を得るために、エポキシ基含有化合物や無水酸基含有化合物やアミド基含有化合物のような添加剤を加えることもできる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、リン系化合物や無水マレイン酸のようなアルカリ中和効果を持つ添加剤を添加することができる。ここでいうリン系化合物とは、トリメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリアリルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリキシレニルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、およびヒドロキシフェニルジフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステルやこれらを各種置換基で変成した化合物などである。中でも、フェニルジイソデシルホスファイトやジフェニルイソデシルホスファイトの添加が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、ヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系、含リン有機化合物系などの酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンソフェノン系、サクシレート系などの紫外線吸収剤、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系などの光安定剤などの各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類などの滑剤、フタル酸エステル類、リン酸エステル類などの可塑剤、デカブロモビフェニールエーテル、テトラブロモビスフェノールA、塩素化ポリエチレン、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化ポリカーポネート、三酸化アンチモン、縮合リン酸エステルなどの難燃剤・難燃助剤、カーボンブラック、酸化チタン、離型剤、潤滑剤、顔料および染料などを添加することもできる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸マグネシウム、タルク、アルミナ、酸化鉄、シリカ、雲母、ウイスカー、ウォラストナイトなどの無機充填剤、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維および金属繊維などの繊維系補強剤を添加することもできる。この場合、無機充填剤にはタルクを、繊維系補強剤には炭素繊維かガラス繊維をそれぞれ添加するのが好ましい。
上記によって得られた熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形およびガスアシスト成形などの現在の熱可塑性樹脂の成形に用いられる公知の方法によって成形することができ、成形方法については特に制限されるものではない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ABS樹脂とポリアミド樹脂が持つ耐薬品性、流動性、耐衝撃性、寸法安定性のバランスが良い特徴に加えて、成形品外観および塗装密着性に優れるという特徴を持つものであり、この熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、自動車部品類に適している。
以下に、実施例および比較例を挙げ、この発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の部数および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。参考例および実施例中で用いた特性および物性の測定方法を以下に示す。
(1)グラフト共重合体(A)のグラフト率
グラフト共重合体の所定量(m)にアセトンを加え3時間還流した。この溶液を8000rpm(10,000G)30分遠心分離後、不溶分を濾過した。この不溶分を70℃で5時間減圧乾燥し、乾燥重量(n)を測定した。
グラフト率=[(n)−(m)×L]/[(m)×L]×100
ここで、Lはグラフト共重合体のゴム含有率を意味する。
グラフト共重合体の所定量(m)にアセトンを加え3時間還流した。この溶液を8000rpm(10,000G)30分遠心分離後、不溶分を濾過した。この不溶分を70℃で5時間減圧乾燥し、乾燥重量(n)を測定した。
グラフト率=[(n)−(m)×L]/[(m)×L]×100
ここで、Lはグラフト共重合体のゴム含有率を意味する。
(2)アイゾット衝撃強さ:ASTM D256−56A(23℃条件で測定、テストピース厚み=12.7mm)に準じて測定した。
(3)MFR(メルトフローレート値):ISO1133(260℃、49N荷重に準じて測定した)。
(4)成形品外観:
成形品外観評価試験は次のように評価した。射出成形機を使用して、シリンダー温度250℃および金型温度70℃に設定し、熱可塑性樹脂組成物から70×240×2.5mmの角板を成形し、角板成形品の波打ち模様(メルトフラクチャー)の有無を目視することにより、次の三基準に判定した。
外観判定基準
◎ 全く波打ち模様が見られない、
○ 薄い白色の波打ち模様が見られる、
× 白色と黒色の波打ち模様がはっきり見られる。
成形品外観評価試験は次のように評価した。射出成形機を使用して、シリンダー温度250℃および金型温度70℃に設定し、熱可塑性樹脂組成物から70×240×2.5mmの角板を成形し、角板成形品の波打ち模様(メルトフラクチャー)の有無を目視することにより、次の三基準に判定した。
外観判定基準
◎ 全く波打ち模様が見られない、
○ 薄い白色の波打ち模様が見られる、
× 白色と黒色の波打ち模様がはっきり見られる。
(5)塗装密着性:
塗料を下記条件で塗布、乾燥、放置させた後に、セロハンテープでの碁盤目試験を実施し、下記の判定基準に基づいて評価した。セロハンテープでの碁盤目試験方法はJIS規格に基づき下記手順に従って行った。
評価点数 傷の状態
10点 切り傷1本ごとが、細かくて両側が滑らかで、切り傷の交点と正方形の 一目一目に剥離がない、
8点 切り傷の交点に僅かな剥離が見られ、正方形の一目一目に剥離がなく、 欠損部位の面積は全正方形面積の5%以内、
6点 切り傷の両側と交点とに剥離が見られ、欠損部の面積は全正方形面積の 5〜15%、
4点 切り傷より剥離幅が広く2マス以上にわたる欠損が数カ所見られ、面積 は全正方形面積の15〜35%、
2点 剥離マスが4マス以上にわたる欠損が数カ所見られ、面積は全正方形面 積の35〜65%、
0点 剥離面積は全正方形面積の65%以上。
塗料を下記条件で塗布、乾燥、放置させた後に、セロハンテープでの碁盤目試験を実施し、下記の判定基準に基づいて評価した。セロハンテープでの碁盤目試験方法はJIS規格に基づき下記手順に従って行った。
評価点数 傷の状態
10点 切り傷1本ごとが、細かくて両側が滑らかで、切り傷の交点と正方形の 一目一目に剥離がない、
8点 切り傷の交点に僅かな剥離が見られ、正方形の一目一目に剥離がなく、 欠損部位の面積は全正方形面積の5%以内、
6点 切り傷の両側と交点とに剥離が見られ、欠損部の面積は全正方形面積の 5〜15%、
4点 切り傷より剥離幅が広く2マス以上にわたる欠損が数カ所見られ、面積 は全正方形面積の15〜35%、
2点 剥離マスが4マス以上にわたる欠損が数カ所見られ、面積は全正方形面 積の35〜65%、
0点 剥離面積は全正方形面積の65%以上。
図1にこれらの傷の状態を模式的に表したものを示した。図1において、黒く表示されている部分が剥離されている箇所である。
<塗装方法>
1.アクリル系塗料を20〜40μm厚みで塗布する、
2.80℃〜90℃で30分乾燥する、
3.1日以上室温放置させる。
1.アクリル系塗料を20〜40μm厚みで塗布する、
2.80℃〜90℃で30分乾燥する、
3.1日以上室温放置させる。
<碁盤目試験方法>
1.すきま間隔1mmでマス目100の切り傷をカッターナイフで入れる、
2.JIS Z 1552に規定されたセロハン粘着テープを碁盤目傷の上に張り付け JIS S 6050に規定する消しゴムでこすり、塗膜にテープを完全に密着させ る、
3.瞬間的にテープを試験片と直角方向に引き剥がす、
4.碁盤目の剥離状態を下表に基づき評価点数をつける。
1.すきま間隔1mmでマス目100の切り傷をカッターナイフで入れる、
2.JIS Z 1552に規定されたセロハン粘着テープを碁盤目傷の上に張り付け JIS S 6050に規定する消しゴムでこすり、塗膜にテープを完全に密着させ る、
3.瞬間的にテープを試験片と直角方向に引き剥がす、
4.碁盤目の剥離状態を下表に基づき評価点数をつける。
(6)耐薬品性:
(2)で使用するアイゾッド衝撃用試験片に(5)で使用する塗料条件で塗布してアイゾッド衝撃(x)を測定し、塗布前のアイゾッド衝撃(y)での保持率を測定することで評価を行った。
保持率(%)=((x)/(y))×100 (%)
(2)で使用するアイゾッド衝撃用試験片に(5)で使用する塗料条件で塗布してアイゾッド衝撃(x)を測定し、塗布前のアイゾッド衝撃(y)での保持率を測定することで評価を行った。
保持率(%)=((x)/(y))×100 (%)
(7)分散状態:
成形品の一片を電子顕微鏡を使用して観察することにより分散状態を評価した。代表として図2に実施例1と比較例1の写真を掲載した。
成形品の一片を電子顕微鏡を使用して観察することにより分散状態を評価した。代表として図2に実施例1と比較例1の写真を掲載した。
[参考例1(グラフト共重合体(A)の調製)]
(1)グラフト共重合体(A−1)の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.21μm、ゲル含率80%)50部(固形分換算)の存在下で、スチレン79%、アクリロニトリル21%からなる単量体混合物50部を乳化重合した。得られたグラフト共重合体を硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和、洗浄、ろ過、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体(A−1)を調製した。得られたグラフト共重合体(A−1)のグラフト率は41%であった。
(1)グラフト共重合体(A−1)の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.21μm、ゲル含率80%)50部(固形分換算)の存在下で、スチレン79%、アクリロニトリル21%からなる単量体混合物50部を乳化重合した。得られたグラフト共重合体を硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和、洗浄、ろ過、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体(A−1)を調製した。得られたグラフト共重合体(A−1)のグラフト率は41%であった。
(2)グラフト共重合体(A−2)の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.21μm、ゲル含率80%)60部(固形分換算)の存在下で、スチレン70%、アクリロニトリル30%からなる単量体混合物40部を乳化重合した。得られたグラフト共重合体を硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和、洗浄、ろ過、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体(A−1)を調製した。得られたグラフト共重合体(A−1)のグラフト率は36%であった。
ポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.21μm、ゲル含率80%)60部(固形分換算)の存在下で、スチレン70%、アクリロニトリル30%からなる単量体混合物40部を乳化重合した。得られたグラフト共重合体を硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和、洗浄、ろ過、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体(A−1)を調製した。得られたグラフト共重合体(A−1)のグラフト率は36%であった。
(3)グラフト共重合体(A−3)の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.21μm、ゲル含率80%)40部(固形分換算)の存在下で、スチレン79%、アクリロニトリル21%からなる単量体混合物60部を乳化重合した。得られたグラフト共重合体を硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和、洗浄、ろ過、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体(A−1)を調製した。得られたグラフト共重合体(A−1)のグラフト率は46%であった。
ポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.21μm、ゲル含率80%)40部(固形分換算)の存在下で、スチレン79%、アクリロニトリル21%からなる単量体混合物60部を乳化重合した。得られたグラフト共重合体を硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和、洗浄、ろ過、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体(A−1)を調製した。得られたグラフト共重合体(A−1)のグラフト率は46%であった。
[参考例2(ビニル系共重合体(B)の調製)]
(1)ビニル系共重合体(B−1)の調製
スチレン77%、アクリロニトリル23%の単量体混合物を懸濁重合してビニル系共重合体(B−1)を調製した。得られたビニル系共重合体(B−1)はメチルエチルケトン可溶分の極限粘度が0.46dl/gであった。
(1)ビニル系共重合体(B−1)の調製
スチレン77%、アクリロニトリル23%の単量体混合物を懸濁重合してビニル系共重合体(B−1)を調製した。得られたビニル系共重合体(B−1)はメチルエチルケトン可溶分の極限粘度が0.46dl/gであった。
(2)ビニル系共重合体(B−2)の調製
スチレン50%、N−フェニルマレイミド30%、アクリロニトリル20%、の単量体混合物を乳化重合してビニル系共重合体(B−2)を調製した。得られたビニル系共重合体(B−2)はメチルエチルケトン可溶分の極限粘度が0.52dl/gであった。
スチレン50%、N−フェニルマレイミド30%、アクリロニトリル20%、の単量体混合物を乳化重合してビニル系共重合体(B−2)を調製した。得られたビニル系共重合体(B−2)はメチルエチルケトン可溶分の極限粘度が0.52dl/gであった。
(3)ビニル系共重合体(B−3)の調製
スチレン66%、アクリロニトリル34%の単量体混合物を懸濁重合してビニル系共重合体(B−3)を調製した。得られたビニル系共重合体(B−3)はメチルエチルケトン可溶分の極限粘度が0.48dl/gであった。
スチレン66%、アクリロニトリル34%の単量体混合物を懸濁重合してビニル系共重合体(B−3)を調製した。得られたビニル系共重合体(B−3)はメチルエチルケトン可溶分の極限粘度が0.48dl/gであった。
(4)ビニル系共重合体(B−4)の調製
スチレン77%、アクリロニトリル23%の単量体混合物を塊状重合してビニル系共重合体(B−1)を調製した。得られたビニル系共重合体(B−1)はメチルエチルケトン可溶分の極限粘度が0.58dl/gであった。
スチレン77%、アクリロニトリル23%の単量体混合物を塊状重合してビニル系共重合体(B−1)を調製した。得られたビニル系共重合体(B−1)はメチルエチルケトン可溶分の極限粘度が0.58dl/gであった。
[参考例3(ポリアミド樹脂(C))]
実施例および比較例で使用したポリアミド樹脂は、東レ(株)ポリアミド樹脂「アミランCM1021」(ηrel=3.5)または「アミランCM1001」(ηrel=2.6)のどちらかである。
ポリアミド樹脂(C−1):アミランCM1021
ポリアミド樹脂(C−2):アミランCM1001
実施例および比較例で使用したポリアミド樹脂は、東レ(株)ポリアミド樹脂「アミランCM1021」(ηrel=3.5)または「アミランCM1001」(ηrel=2.6)のどちらかである。
ポリアミド樹脂(C−1):アミランCM1021
ポリアミド樹脂(C−2):アミランCM1001
[実施例1〜実施例4]
参考例1で製造したグラフト共重合体(A)、参考例2で製造したビニル系共重合体(B)、参考例3に記載したポリアミド樹脂(C)を、それぞれ表1に示した配合比で配合し、酸化防止剤トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを0.2%、イルガノックス1076を0.2%、カーボンブラックを0.03%添加した後、ベント付30mmφ2軸押出機を使用して樹脂温度260℃で溶融混練、押出しを行い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。
参考例1で製造したグラフト共重合体(A)、参考例2で製造したビニル系共重合体(B)、参考例3に記載したポリアミド樹脂(C)を、それぞれ表1に示した配合比で配合し、酸化防止剤トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを0.2%、イルガノックス1076を0.2%、カーボンブラックを0.03%添加した後、ベント付30mmφ2軸押出機を使用して樹脂温度260℃で溶融混練、押出しを行い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。
[実施例5〜実施例6]
参考例1で製造したグラフト共重合体(A)、参考例2で製造したビニル系共重合体(B)、参考例3に記載したポリアミド樹脂(C)を、それぞれ表1に示した配合比で配合し、酸化防止剤トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを0.2%、イルガノックス1076を0.2%、カーボンブラックを0.03%添加して、さらに添加剤(D−1)として東レ(株)「AS−5M」2部を添加した後、ベント付30mmφ2軸押出機を使用して樹脂温度260℃で溶融混練、押出しを行い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。
参考例1で製造したグラフト共重合体(A)、参考例2で製造したビニル系共重合体(B)、参考例3に記載したポリアミド樹脂(C)を、それぞれ表1に示した配合比で配合し、酸化防止剤トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを0.2%、イルガノックス1076を0.2%、カーボンブラックを0.03%添加して、さらに添加剤(D−1)として東レ(株)「AS−5M」2部を添加した後、ベント付30mmφ2軸押出機を使用して樹脂温度260℃で溶融混練、押出しを行い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。
添加剤(D−1):東レ(株)「AS−5M」
芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、メタクリル酸からなる共重合体組成物である。
芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、メタクリル酸からなる共重合体組成物である。
[実施例7〜実施例8]
参考例1で製造したグラフト共重合体(A)、参考例2で製造したビニル系共重合体(B)、参考例3に記載したポリアミド樹脂(C)を、それぞれ表1に示した配合比で配合して、酸化防止剤トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを0.2%、イルガノックス1076を0.2%、カーボンブラックを0.03%添加して、さらに添加剤(D−2)として東亜合成(株)「GP−301」2部を添加した後、ベント付30mmφ2軸押出機を使用して樹脂温度260℃で溶融混練、押出しを行い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。
参考例1で製造したグラフト共重合体(A)、参考例2で製造したビニル系共重合体(B)、参考例3に記載したポリアミド樹脂(C)を、それぞれ表1に示した配合比で配合して、酸化防止剤トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを0.2%、イルガノックス1076を0.2%、カーボンブラックを0.03%添加して、さらに添加剤(D−2)として東亜合成(株)「GP−301」2部を添加した後、ベント付30mmφ2軸押出機を使用して樹脂温度260℃で溶融混練、押出しを行い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。
添加剤(D−2):東亜合成(株)「GP−301」
エポキシ変性アクリル樹脂にメタクリル酸メチルをグラフト共重合させて生成した共重合体組成物である。
エポキシ変性アクリル樹脂にメタクリル酸メチルをグラフト共重合させて生成した共重合体組成物である。
[比較例1〜比較例8]
参考例1で製造したグラフト共重合体(A)、参考例2で製造したビニル系共重合体(B)、参考例3で記載したポリアミド樹脂(C)を、それぞれ表1に示した配合比で配合し、酸化防止剤トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを0.2%、イルガノックス1076を0.2%、カーボンブラックを0.03%添加した後、ベント付30mmφ2軸押出機で樹脂温度260℃で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。
参考例1で製造したグラフト共重合体(A)、参考例2で製造したビニル系共重合体(B)、参考例3で記載したポリアミド樹脂(C)を、それぞれ表1に示した配合比で配合し、酸化防止剤トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを0.2%、イルガノックス1076を0.2%、カーボンブラックを0.03%添加した後、ベント付30mmφ2軸押出機で樹脂温度260℃で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。
上記で得られた各熱可塑性樹脂組成物について、物性を測定評価した結果を表2に示した。
表1および表2の結果から次のことが明らかである。本発明の熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜9)はいずれも耐衝撃性、流動性、耐薬品性の均衡に優れ、成形品外観、塗装密着性にも優れていることが確認できる。そして、いずれも図2(1)のような分散構造をとっており、成形品の表面には波打ち模様を生じてはおらず、外観の優れたものであった。
一方、 ABS樹脂とポリアミド樹脂の組成配分や粘度相違により、図2(2)のような分散構造になる場合(比較例1)は、塗装密着力が弱いため好ましくない。
共重合体(B)のシアン化ビニル系単量体(c)組成が25重量%を超える場合(比較例2、3)は、塗装密着力も弱いため好ましくない。
グラフト共重合体(A)のシアン化ビニル系単量体(c)組成が25重量%を超える場合(比較例4)は塗装密着力も弱いため好ましくない。
グラフト共重合体(A)のゴム質重合体(a)組成が50重量%より少ない場合(比較例5)は、得られる成形品の耐衝撃性が不十分であり好ましくない。
ポリアミド樹脂(C)の配合量が45重量部未満の場合(比較例6)は、成形品の流動性が劣り成形外観不良劣るため好ましくない。また、耐薬品性も劣り、塗装後の衝撃強度が懸念される。また、75重量部を超える場合(比較例7)は、塗装密着力が最も劣るため好ましくない。
共重合体(B)の(メチルエチルケトン溶媒、30℃)極限粘度が0.55dl/gを超える場合(比較例8)、分散状態がグラフト共重合体(A)・共重合体(B)とポリアミド(C)の両者塊状の分散状態となり、塗装密着性が低下するため好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ABS樹脂とポリアミド樹脂が持つ耐衝撃性、流動性、耐薬品性のバランスが良い特徴に加えて、成形品外観および塗装密着性に優れるものであることから、この熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は、各種自動車外装・内装部品、OA機器、家電機器、一般雑貨、住宅機器部品などに有用である。
Claims (5)
- ゴム質重合体(a)50〜80重量部の存在下に、芳香族ビニル系単量体(b)40〜90重量%、シアン化ビニル系単量体(c)10〜25重量%、およびその他の共重合可能なビニル系単量体(d)0〜80重量%からなる単量体混合物50〜20重量部をグラフト共重合してなり、グラフト率が30〜100重量%であるグラフト共重合体(A)5〜35重量部、芳香族ビニル系単量体(b)40〜90重量%、シアン化ビニル系単量体(c)10〜25重量%、およびその他共重合可能なビニル系単量体(d)0〜80重量%からなり、極限粘度[η](メチルエチルケトン溶媒、30℃測定)が0.30〜0.55dl/gの範囲であるビニル系共重合体(B)5〜35重量部、およびポリアミド樹脂(C)45〜75重量部を、これら(A)、(B)および(C)の合計が100重量部となるように配合した熱可塑性樹脂組成物であって、これら(A)、(B)および(C)各成分の分散状態(モルフォロジー)を縞状模様に調整してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- 前記グラフト共重合体(A)が、グラフト率30〜60重量%のスチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ビニル系共重合体(B)が、スチレン−アクリロニトリル共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂(C)がナイロン6であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする成形品。
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-
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- 2004-06-22 JP JP2004183190A patent/JP2006008722A/ja active Pending
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