JP2005264083A - 熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】実使用温度範囲において温度依存性を受けない耐衝撃性、耐薬品性、耐熱性、塗装外観および塗装密着性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物および成形品の提供。
【解決手段】ゴム質重合体含有グラフト共重合体とポリアミド樹脂の相溶性を改善すべく規定組成の共重合体を添加し、更に特定のガラス転移温度を持つエチレン−α−オレフィン系酸変性共重合体とタルクを特定の配合量添加する。
【選択図】 なし
【解決手段】ゴム質重合体含有グラフト共重合体とポリアミド樹脂の相溶性を改善すべく規定組成の共重合体を添加し、更に特定のガラス転移温度を持つエチレン−α−オレフィン系酸変性共重合体とタルクを特定の配合量添加する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、実使用温度範囲において温度依存性を受けない耐衝撃性、耐薬品性、耐熱性、塗装外観および塗装密着性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成およびそれからなる成形品に関するものである。
ABS樹脂とポリアミド樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物は公知であり、ABS樹脂の欠点である耐薬品性・流動性を補い、ポリアミド樹脂の欠点である耐衝撃性、寸法安定性を補う目的で、家庭電気機器、OA機器、自動車などの各部品として使用されている。
例えば、ジエン系で高ゴム量を含有するグラフト共重合体とポリアミド樹脂とからなる組成物に、さらにエチレン−プロピレンゴムとタルクとを添加することにより、低温衝撃強度、寸法安定性、耐薬品性、塗装外観のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)が知られているが、この熱可塑性樹脂組成物からなり、低温域・高速衝突における薄い厚さの成形品では十分な衝撃強度が得られず、脆性破壊形態を示す場合があり、このような破壊状況では安全性に懸念が残るばかりか、高ゴム量のグラフト共重合体を添加することで分散不良を起こし、薄い厚さの成形品では塗装外観が十分ではないという問題があった。
特開平11−241016
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、実使用温度範囲において温度依存性を受けない耐衝撃性、耐薬品性、耐熱性、塗装外観および塗装密着性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品の提供を目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ゴム質重合体含有グラフト共重合体とポリアミド樹脂の相溶性を改善すべく規定組成の共重合体を添加し、更にガラス転移温度の低いエチレン−α−オレフィン系ゴムを使用した酸変性共重合体およびタルクを特定の配合分量で添加することにより、実使用温度範囲において温度依存性を受けない耐衝撃性、耐薬品性、耐熱性、塗装外観、塗装密着性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、上記の目的を達成するために本発明によれば、ゴム質重合体(a)10〜60重量部存在下に、シアン化ビニル系単量体(b)5〜50重量%、芳香族ビニル系単量体(c)10〜90重量%およびその他の共重合可能なビニル系単量体(d)0〜80重量%からなる単量体混合物90〜40重量部をグラフト共重合してなり、グラフト率が10〜100重量%であるグラフト共重合体(A)15〜35重量部、シアン化ビニル系単量体(b)0〜30重量%、芳香族ビニル系単量体(c)85〜45重量%、その他共重合可能なビニル系単量体(d)0〜60重量%、カルボキシル基、エポキシ基、無水酸基、アミノ基の中から選ばれた少なくとも1種以上の官能基を持ち共重合可能なビニル系単量体(e)0.1〜10重量%からなる共重合体(B)1〜20重量部、ポリアミド樹脂(C)30〜70重量部、およびガラス転移温度が−55℃以下のエチレン−α−オレフィン系酸変性共重合体(D)10〜30重量部の合計100重量部に対して、タルク(E)を5〜35重量部配合してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物が提供される。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、前記グラフト共重合体(A)が、グラフト率15〜60重量%のスチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体であること、および前記ポリアミド樹脂(C)がナイロン6であることが、いずれも好ましい条件として挙げられる。
また、本発明の成形品は、上記の熱可塑性樹脂からなり、厚みが3mm以下の薄い実用成形品において、環境温度:−40℃以上、衝突速度:5m/s以下の環境条件で延性破壊形態を示すことを特徴とする。
本発明によれば、以下に説明するとおり、実使用温度範囲において温度依存性を受けない耐衝撃性、耐薬品性、耐熱性、塗装外観および塗装密着性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成およびそれからなる成形品を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明における グラフト共重合体(A)とは、ゴム質重合体(a)10〜60重量部存在下に、シアン化ビニル系単量体(b)5〜50重量%、芳香族ビニル系単量体(c)10〜90重量%およびその他の共重合可能なビニル系単量体(d)0〜80重量%からなる単量体混合物90〜40重量部をグラフト共重合してなり、グラフト率が10〜100重量%のものである。
ここでいう グラフト共重合体(A)とは、ゴム質重合体にグラフト共重合した構造をとった材料の他に、グラフトしていない共重合体を含むものである。
上記のゴム質重合体(a)の具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体などのジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴム、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン系三元共重合体などが挙げられる。これらは1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのゴム質重合体のうちでも、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、エチレン−プロピレンラバーの使用が好ましい。
ゴム質重合体(a)のゴム粒子径は特に制限されないが、ゴム粒子の重量平均粒子径が0.10〜0.50μmの範囲であることが、耐衝撃性の点から必要であり、好ましくは0.18〜0.40μmの範囲である。
なお、重量平均粒子径は「Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt,P.H.Biddison」記載のアルギン酸ナトリウム法(アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める)により測定することができる。
グラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)に用いるシアン化ビニル系単量体(b)の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルの使用が耐衝撃性の点で好ましい。
グラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)に用いる芳香族ビニル系単量体(c)の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンの使用が好ましい。
グラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)に用いるその他の共重合可能なビニル系単量体(d)の具体例としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステルおよびアクリルアミドなどが挙げられるが、特にN−フェニルマレイミド、メタクリル酸メチルの使用が成形性の点で好ましい。
グラフト共重合体(A)に用いる単量体混合物に占めるシアン化ビニル系単量体(b)の割合は5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%の範囲である。シアン化ビニル系単量体(c)が5重量%未満では得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が十分でなく、50重量%を越えると得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性が悪くなるばかりか、塗装時の密着性も悪く、成形品ゲート部位で僅かな外力により塗料が剥離する場合があるため好ましくない。
グラフト共重合体(A)に用いる単量体混合物に占める芳香族ビニル系単量体(c)の割合は10〜90重量%、好ましくは30〜80重量%の範囲である。芳香族ビニル系単量体(b)が10重量%未満では得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性が十分ではなく、90重量%を越えると得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が不十分となるため好ましくない。
また、グラフト共重合体(A)に用いる単量体混合物に占めるその他の共重合可能なビニル系単量体(d)の割合は0〜80重量%、好ましくは0〜75重量%の範囲である。その他の共重合可能なビニル系単量体(d)が80重量%を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が不十分となるため好ましくない。
グラフト共重合体(A)を得る際のゴム質重合体(a)と単量体混合物との割合は、ゴム質重合体(a)10〜60重量部の存在下に、単量体混合物90〜40重量部をグラフト重合する必要がある。ゴム質重合体(a)が10重量部未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が十分でなく、60重量部を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物成分の分散状態を調整することが困難となり、フィッシュアイによる外観悪化、塗装外観悪化などの悪影響を及ぼす場合がある。
グラフト共重合体(A)は公知の重合法で得ることができる。例えばゴム質重合体(a)のラテックスの存在下に単量体および連鎖移動剤の混合物と乳化剤に溶解したラジカル発生剤の溶液を連続的に重合容器に供給して乳化重合する方法などによって得ることができる。
グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体(a)にグラフトした構造をとった材料の他に、グラフトしていない共重合体を含有する。 グラフト共重合体(A)のグラフト率は、耐衝撃性および光沢が均衡して優れる樹脂組成物を得るために10〜100重量%であることが必要であり、好ましくは20〜80重量%である。更に好ましくは30〜45重量%である。ここで、グラフト率は次式により算出される。
グラフト率(%)=(ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系共重合体量/グラフト共重合体のゴム含有量)×100
グラフト率(%)=(ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系共重合体量/グラフト共重合体のゴム含有量)×100
本発明におけるビニル系共重合体(B)は、シアン化ビニル系単量体(b)0〜30重量%、芳香族ビニル系単量体(c)85〜45重量%、その他共重合可能なビニル系単量体(d)0〜60重量%、カルボキシル基、エポキシ基、無水酸基、アミノ基の中から選ばれた少なくとも1種以上の官能基を持ち共重合可能なビニル系単量体(e)0.1〜10重量%からなる共重合体である。
ビニル系単量体(B)に用いるカルボキシル基、エポキシ基、無水酸基、アミド基の中から選ばれた少なくとも1種以上の官能基を持ち共重合可能なビニル系単量体(e)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フタル酸、無水マレイン酸、安息香酸、テレフタル酸などのカルボキシル基・無水酸基、グリシン、アラニン、リシン、メチルアミン、メチルジアミンなどのアミノ基、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基を含む単量体が挙げられる。中でも、メタクリル酸、無水マレイン酸、メチルアミン、グリシジルメタクリレートの使用が好ましい。
ビニル系共重合体(B)において用いるシアン化ビニル系単量体(b)の割合は0〜30重量%であり、好ましくは0〜25重量%の範囲である。シアン化ビニル系単量体(b)が30重量%を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性が低下するばかりか、塗装時の密着性も悪く、成形品ゲート部位で僅かな外力で塗料が剥離する場合が確認されるため好ましくない。
ビニル系共重合体(B)において用いる芳香族ビニル系単量体(c)の割合は85〜45重量%であり、好ましくは80〜50重量%の範囲である。芳香族ビニル系単量体(b)が45重量%未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性が低下し、85重量%を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下するため好ましくない。
ビニル系共重合体(B)において用いる共重合可能なビニル系単量体(d)の割合は0〜60重量%の範囲である。共重合可能なビニル系単量体(d)が60重量%を超えると、耐衝撃性が不十分となるため好ましくない。
ビニル系共重合体(B)において用いるカルボキシル基、エポキシ基、無水酸基、アミド基の中から選ばれた少なくとも1種以上の官能基を持ち共重合可能なビニル系単量体(e)の割合は0.1〜10重量%の範囲である。共重合可能なカルボキシル基、エポキシ基、無水酸基、アミド基の中から選ばれた少なくとも1種以上の官能基を持ち共重合可能なビニル系単量体(e)が0.1重量%未満では、ABS樹脂とポリアミド樹脂の分散性が悪くなり、耐衝撃性が不十分となるばかりか、分散性が不十分である成形品の部位は塗装時の密着性が悪化し、僅かな外力で塗料が剥離する場合があるため好ましくない。また、逆に10重量%を超えると、押出時や成形加工時に増粘し加工性が低下するため好ましくない。
本発明におけるビニル系共重合体(B)の重合方法には特に制限がなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などが挙げられる。芳香族ビニル系単量体を重合中に適宜添加することによって、残存単量体のシアン化ビニル系単量体含有量を制御し、オリゴマー量を低減させ、乳化剤、溶媒などの副原料による溶融時の熱着色安定性の阻害を防止するといった観点から、水系懸濁重合が特に好ましい。
本発明に用いるポリアミド樹脂(C)は、脂肪族および芳香族のどちらのポリアミド樹脂でもよく、一般にはナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミドや、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミドなどの芳香族ポリアミドが挙げられる。これらは1種でも2種以上混合して使用することも可能である。特に、ナイロン6、ナイロン6,6の使用が好ましい。
ポリアミド(C)の製造法は特に制限がなく、アミノカルボン酸の縮合反応、ラクタムの開環重合反応、カルボン酸とアミンによる重縮合反応など通常の公知の方法で製造することができる。
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限はないが、例えば98%濃硫酸溶液(ポリマー0.5g、濃硫酸100ml)、25℃で測定した相対粘度が1.5〜6.0の範囲、好ましくは1.5〜5.5、特に2.0〜5.0の範囲であることが好ましい。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィン系共重合体(D)は、ガラス転移温度が−55℃以下にあることを特徴とする。ガラス転移温度が−55℃以上では、低温時の衝撃強度が維持されず、脆性破壊形態による製品安全性が懸念されるため好ましくない。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィン系共重合体(D)における、エチレンとα−オレフィンとの共重合割合(重量比)は、95/5〜5/95、好ましくは95/5〜20/80、更に好ましくは92/8〜60/40の範囲である。エチレン−α−オレフィン系エラストマー共重合体(D)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、耐衝撃性の面から5〜200、好ましくは5〜100、更に好ましくは5〜50の範囲である。ここで使用されるα−オレフィンは、炭素数3〜20個を有する不飽和炭化水素化合物であり、具体例としては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、4−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1などが挙げられる。特に好ましいものはプロピレン、ブテン−1である。
また、本発明のエチレン−α−オレフィン系共重合体(D)としては、エチレンと上記α−オレフィンの他に、ジエン化合物を共重合した重合体中に不飽和基を導入したものを用いることができる。この不飽和基は、ヨウ素価に換算して4〜40の範囲が好ましい。用いられるジエン化合物の種類は、アルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類であり、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンである。上記エチレン−α−オレフィン系共重合体は、1種または2種以上で使用される。
本発明におけるエチレン−α−オレフィン系共重合体(D)の製造方法については特に制限はなく、公知の方法を利用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるタルク(E)は特に規定されるものではなく、一般に知られている市販のものが使用可能である。グリシドキシシラン、アミノシラン、カルボキシシランなどのカップリング剤で表面処理を行ったものでも使用することも可能である。タルクの粒径についても特に制限はなく、一般的には平均粒子径1〜10μmのものが使用可能である。好ましくは平均粒子径2〜8μmのものである。さらに好ましくは平均粒子径2〜8μmで、2μm以下と8μm以上のタルクが全体の30%未満のものが使用される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、グラフト共重合体(A)が占める割合は15〜35重量部、好ましくは20〜30重量部の範囲である。グラフト共重合体(A)が35重量部を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物成分の成形加工性を調整することが困難となり、15重量部未満では得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が不十分となるため好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、ビニル系共重合体(B)が占める割合は1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部の範囲である。ビニル系共重合体(B)が1重量部未満では得られる熱可塑性樹脂組成物成分の分散状態を調整することが困難となり、20重量部を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性が不十分となるばかりか、樹脂の増粘が著しくなり、成形品にフローマークなどが発生し、塗装後にもフローマークが浮出しやすく塗装外観の悪化にもなるため好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、ポリアミド樹脂(C)が占める割合は30〜70重量部であり、好ましくは40〜70重量部の範囲である。ポリアミド樹脂(C)が70重量部を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の塗装密着性が十分ではなく、表層剥離を起こす場合があり、寸法安定性が劣るために好ましくない。また、30重量部未満では得られる熱可塑性樹脂の耐薬品性が十分ではなく、得られた熱可塑性樹脂の成形加工性も十分満足できるものではなくなるため好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、エチレン−α−オレフィン系共重合体(D)が占める割合は10〜30重量部の範囲であり、好ましくは15〜25重量部であり、更に好ましくは15〜25重量部である。エチレン−α−オレフィン系共重合体(D)が30重量部を超えると得られる熱可塑性樹脂の耐熱性、成形加工性が十分でなく、10重量部未満では低温時の衝撃強度が維持されず、脆性破壊形態による製品安全性が懸念されることになるため好ましくない。
また、タルク(E)が占める割合は、グラフト共重合体(A)、共重合体(B)、ポリアミド樹脂(C)、酸変性共重合体(D)の合計100重量部に対して、5〜35重量部、好ましくは10〜30重量部の範囲である。5重量部未満では成形品の耐熱性・耐衝撃性・塗装密着性が劣り、35重量部を超すと成形外観に劣ることになるため好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を得るための溶融混合方法は特に制限されない。加熱装置を有するシリンダーで単軸、二軸のスクリューを使用して溶融混合することができる。二軸のスクリューを使用することが好ましい。加熱温度も本発明の目的を損なわない範囲で、溶融混合時の温度勾配などを自由に設定することができる。また、溶融混練の回数は必要に応じて2回以上行ってもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じてヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系、含リン有機化合物系などの酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンソフェノン系、サクシレート系などの紫外線吸収剤、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系などの光安定剤などの各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類などの滑剤、フタル酸エステル類、リン酸エステル類などの可塑剤、デカブロモビフェニールエーテル、テトラブロモビスフェノールA、塩素化ポリエチレン、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化ポリカーポネート、三酸化アンチモン、縮合リン酸エステルなどの難燃剤・難燃助剤、カーボンブラック、酸化チタン、離型剤、潤滑剤、顔料および染料などを添加することもできる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本目的を損なわない範囲で、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム硫酸マグネシウム、アルミナ、酸化鉄、シリカ、雲母、ウイスカー、ウォラストナイトなどの無機充填剤、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維および金属繊維などの繊維系補強剤を添加することもできる。この場合、繊維系補強剤には炭素繊維かガラス繊維を添加するのが好ましい。
上記によって得られた熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形および、ガスアシスト成形などの現在の熱可塑性樹脂の成形に用いられる公知の方法によって成形することができ、成形方法については特に制限されるものではない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ABS樹脂とポリアミド樹脂が持つ耐薬品性、流動性、耐衝撃性、寸法安定性のバランスが良い特徴に加えて、実使用温度範囲において温度依存性を受けない耐衝撃性、耐熱性、塗装外観、塗装密着性のバランスに優れた特徴を持ち、この熱可塑性樹脂組成物からなる本発明の成形品は、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、フェンダー部位、バンパー部位、スクーターフロントカウル部位など自動車部品類に適している。
以下に、実施例および比較例を挙げ、この発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の部数および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。参考例および実施例中で用いた特性および物性の測定方法を以下に示す。
(1)グラフト共重合体(A)のグラフト率:
グラフト共重合体の所定量(m)にアセトンを加え3時間還流した。この溶液を8000rpm(10,000G)30分遠心分離後、不溶分を濾過した。この不溶分を70℃で5時間減圧乾燥し、乾燥重量(n)を測定した。
グラフト率=[(n)−(m)×L]/[(m)×L]×100
ここで、Lはグラフト共重合体のゴム含有率を意味する。
グラフト共重合体の所定量(m)にアセトンを加え3時間還流した。この溶液を8000rpm(10,000G)30分遠心分離後、不溶分を濾過した。この不溶分を70℃で5時間減圧乾燥し、乾燥重量(n)を測定した。
グラフト率=[(n)−(m)×L]/[(m)×L]×100
ここで、Lはグラフト共重合体のゴム含有率を意味する。
(2)高速面衝撃強度:
3mm厚さで5m/sの速度で衝撃強度と破壊形態を測定した(23℃と−40℃の2点条件で測定)。
3mm厚さで5m/sの速度で衝撃強度と破壊形態を測定した(23℃と−40℃の2点条件で測定)。
(3)荷重たわみ温度:
熱可塑性樹脂組成物の射出成形品について、ASTMD648(6.4mm幅、0.46MPa負荷応力)に準じて測定した。
熱可塑性樹脂組成物の射出成形品について、ASTMD648(6.4mm幅、0.46MPa負荷応力)に準じて測定した。
(4)塗装外観:
平板70×240×2.5mmをエチルアルコールで脱脂処理した後に、関西ペイント社製塗料「TP−65−2グレー」および「ネオアミラックUS−300(C)」を140℃、20分間焼き付け、乾燥した。この塗装面をスガ試験機デジタル変角光沢計UGV−5D(反射角60度)にて測定し、反射率が80%以上を○、50%以上〜80%未満を△、50%未満を×と評価した。
平板70×240×2.5mmをエチルアルコールで脱脂処理した後に、関西ペイント社製塗料「TP−65−2グレー」および「ネオアミラックUS−300(C)」を140℃、20分間焼き付け、乾燥した。この塗装面をスガ試験機デジタル変角光沢計UGV−5D(反射角60度)にて測定し、反射率が80%以上を○、50%以上〜80%未満を△、50%未満を×と評価した。
(5)塗装密着性:
塗料を下記条件で塗布、乾燥、放置させた後に、セロハンテープでの碁盤目試験を実施して、下記の判定基準に基づいて評価した。セロハンテープでの碁盤目試験方法はJIS規格に基づき下記手順に従って行った。
塗料を下記条件で塗布、乾燥、放置させた後に、セロハンテープでの碁盤目試験を実施して、下記の判定基準に基づいて評価した。セロハンテープでの碁盤目試験方法はJIS規格に基づき下記手順に従って行った。
<判定基準>
10点・・切り傷1本ごとが、細かくて両側が滑らかで、切り傷の交 点と正方形の一目一目に剥離がない、
8点・・切り傷の交点に僅かな剥離が見られ、正方形の一目一目に 剥離がなく、欠損部位の面積は全正方形面積の5%以内、
6点・・切り傷の両側と交点とに剥離が見られ、欠損部の面積は全
正方形面積の5〜15%、
4点・・切り傷より剥離幅が広く2マス以上にわたる欠損が数カ所
見られ、面積は全正方形面積の15〜35%、
2点・・剥離マスが4マス以上にわたる欠損が数カ所見られ、面積
は全正方形面積の35〜65%、
0点・・剥離面積は全正方形面積の65%以上。
10点・・切り傷1本ごとが、細かくて両側が滑らかで、切り傷の交 点と正方形の一目一目に剥離がない、
8点・・切り傷の交点に僅かな剥離が見られ、正方形の一目一目に 剥離がなく、欠損部位の面積は全正方形面積の5%以内、
6点・・切り傷の両側と交点とに剥離が見られ、欠損部の面積は全
正方形面積の5〜15%、
4点・・切り傷より剥離幅が広く2マス以上にわたる欠損が数カ所
見られ、面積は全正方形面積の15〜35%、
2点・・剥離マスが4マス以上にわたる欠損が数カ所見られ、面積
は全正方形面積の35〜65%、
0点・・剥離面積は全正方形面積の65%以上。
<塗装方法>
i.アクリル塗料を20〜40μm厚みで塗布する
ii.80℃〜90℃で30分乾燥する、
iii.1日以上室温放置させる。
i.アクリル塗料を20〜40μm厚みで塗布する
ii.80℃〜90℃で30分乾燥する、
iii.1日以上室温放置させる。
<碁盤目試験方法>
i.すきま間隔1mmでマス目100の切り傷をカッターナイフで入れる、
ii.JIS Z 1552に規定されたセロハン粘着テープを碁盤目傷の上に張り付け、J IS S 6050に規定する消しゴムでこすり、塗膜にテープを完全に付着させる、 iii.瞬間的にテープを試験片と直角方向に引き剥がす、
iv.碁盤目の剥離状態を上記判定基準に基づき評価点数をつける、
v.上記ivの試験をn=2で行い、その平均点を点数とする。
i.すきま間隔1mmでマス目100の切り傷をカッターナイフで入れる、
ii.JIS Z 1552に規定されたセロハン粘着テープを碁盤目傷の上に張り付け、J IS S 6050に規定する消しゴムでこすり、塗膜にテープを完全に付着させる、 iii.瞬間的にテープを試験片と直角方向に引き剥がす、
iv.碁盤目の剥離状態を上記判定基準に基づき評価点数をつける、
v.上記ivの試験をn=2で行い、その平均点を点数とする。
(6)耐薬品性:
射出成形した短冊状試験片(127mm×12.6mm×1.5mm)1を、図1に示した1/4楕円治具2に沿わして固定後、試験片1の表面に薬液(ワックスリムーバー)3を塗布する。23℃環境下で24時間放置後、クレーズおよびクラックの発生有無を確認し、下記式(1)より臨界歪み(%)を算出した。式(1)より算出した臨界歪みが1.0以上を○、1.0未満を×と判定した。
射出成形した短冊状試験片(127mm×12.6mm×1.5mm)1を、図1に示した1/4楕円治具2に沿わして固定後、試験片1の表面に薬液(ワックスリムーバー)3を塗布する。23℃環境下で24時間放置後、クレーズおよびクラックの発生有無を確認し、下記式(1)より臨界歪み(%)を算出した。式(1)より算出した臨界歪みが1.0以上を○、1.0未満を×と判定した。
ε:臨界歪み(%)
a:治具の長軸(mm)[127mm]
b:治具の短軸(mm)[38mm]
t:試験片の厚み(mm)[1.5mm]
X:クラック発生点の長方向長(mm)
a:治具の長軸(mm)[127mm]
b:治具の短軸(mm)[38mm]
t:試験片の厚み(mm)[1.5mm]
X:クラック発生点の長方向長(mm)
[参考例]
下記のグラフト共重合体(A−1)、(A−2)、(A−3)、共重合体(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B−4)、ポリアミド樹脂(C−1)、(C−2)、エチレン−αオレフィン系酸変性共重合体(D−1)、(D−2)およびタルク(E)を準備した。
下記のグラフト共重合体(A−1)、(A−2)、(A−3)、共重合体(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B−4)、ポリアミド樹脂(C−1)、(C−2)、エチレン−αオレフィン系酸変性共重合体(D−1)、(D−2)およびタルク(E)を準備した。
グラフト共重合体(A−1):
窒素置換した反応器に純水100重量部、ブドウ糖0.4部、硫酸第一鉄0.004部、ピロリン酸ソーダ0.2部および重量平均粒子径0.28μmのゴムで構成されるポリブタジエンゴムラテックス55部を仕込み、撹拌させながら反応器内の温度を65℃に設定した。この時点を重合開始温度として、スチレン70%とアクリロニトリル30%からなる混合単量体45重量部とt−ドデシルメルカプタン0.3部からなる混合物を5時間かけて連続滴下した。また、別ラインからクメンハイドロパーオキサイト0.22部、オレイン酸カリウム0.16部および純水20重量部の混合水溶液を7時間かけて連続滴下し、乳化重合反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和後、洗浄、濾過、脱水、乾燥工程を経て、グラフト共重合体(A−1)を得た。グラフト率は38%であった。
窒素置換した反応器に純水100重量部、ブドウ糖0.4部、硫酸第一鉄0.004部、ピロリン酸ソーダ0.2部および重量平均粒子径0.28μmのゴムで構成されるポリブタジエンゴムラテックス55部を仕込み、撹拌させながら反応器内の温度を65℃に設定した。この時点を重合開始温度として、スチレン70%とアクリロニトリル30%からなる混合単量体45重量部とt−ドデシルメルカプタン0.3部からなる混合物を5時間かけて連続滴下した。また、別ラインからクメンハイドロパーオキサイト0.22部、オレイン酸カリウム0.16部および純水20重量部の混合水溶液を7時間かけて連続滴下し、乳化重合反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和後、洗浄、濾過、脱水、乾燥工程を経て、グラフト共重合体(A−1)を得た。グラフト率は38%であった。
グラフト共重合体(A−2):
ポリブタジエンゴムラテックス55重量部に連続滴下する単量体混合物を、スチレン50%とアクリロニトリル15%とN−フェニルマレイミド35%からなる混合単量体45重量部に変更した以外は、グラフト共重合体(A−1)と同様の乳化重合方法および凝固、中和、洗浄、濾過、脱水、乾燥方法を実施してグラフト共重合体(A−2)を得た。グラフト率は32%であった。
ポリブタジエンゴムラテックス55重量部に連続滴下する単量体混合物を、スチレン50%とアクリロニトリル15%とN−フェニルマレイミド35%からなる混合単量体45重量部に変更した以外は、グラフト共重合体(A−1)と同様の乳化重合方法および凝固、中和、洗浄、濾過、脱水、乾燥方法を実施してグラフト共重合体(A−2)を得た。グラフト率は32%であった。
グラフト共重合体(A−3):
ポリブタジエンゴムラテックスを65重量部、スチレン70%とアクリロニトリル30%からなる単量体混合物を35重量部とした以外は、グラフト共重合体(A−1)と同様の乳化重合方法および凝固、中和、洗浄、濾過、脱水、乾燥方法を実施してグラフト共重合体(A−3)を得た。グラフト率は32%であった。
ポリブタジエンゴムラテックスを65重量部、スチレン70%とアクリロニトリル30%からなる単量体混合物を35重量部とした以外は、グラフト共重合体(A−1)と同様の乳化重合方法および凝固、中和、洗浄、濾過、脱水、乾燥方法を実施してグラフト共重合体(A−3)を得た。グラフト率は32%であった。
共重合体(B−1):
メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体0.05部をイオン交換水145重量部に溶解した溶液を撹拌させながら、系内を窒素置換した。次に、スチレン75部、アクリロニトリル22部、メタクリル酸3部、t−ドデシルメルカプタン0.04部、重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.40部の混合溶液を撹拌させた系内に添加した。添加後に60℃の温度に調整後に重合を開始した。20分かけて反応温度を70℃まで昇温後に、さらに60分かけて100℃まで昇温させた。通常の方法で、反応系の冷却、洗浄、乾燥を行い共重合体(B−1)を得た。
メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体0.05部をイオン交換水145重量部に溶解した溶液を撹拌させながら、系内を窒素置換した。次に、スチレン75部、アクリロニトリル22部、メタクリル酸3部、t−ドデシルメルカプタン0.04部、重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.40部の混合溶液を撹拌させた系内に添加した。添加後に60℃の温度に調整後に重合を開始した。20分かけて反応温度を70℃まで昇温後に、さらに60分かけて100℃まで昇温させた。通常の方法で、反応系の冷却、洗浄、乾燥を行い共重合体(B−1)を得た。
共重合体(B−2):
添加する混合単量体の組成を、スチレン55部、N−フェニルマレイミド44.5部、無水マレイン酸0.5部になるように設計した。スチレンと無水マレイン酸の溶液重合後に後イミド化反応させた。後に脱溶媒反応により回収物を得て、共重合体(B−2)を得た。
添加する混合単量体の組成を、スチレン55部、N−フェニルマレイミド44.5部、無水マレイン酸0.5部になるように設計した。スチレンと無水マレイン酸の溶液重合後に後イミド化反応させた。後に脱溶媒反応により回収物を得て、共重合体(B−2)を得た。
共重合体(B−3):
重合前に添加する混合単量体の組成を、スチレン65部、アクリロニトリル22部、メタクリル酸3部とした。重合開始後20分経過時に残りのスチレン5部、更に20分経過後に5部を添加した以外は、共重合体(B−1)と同様の重合方法を実施して共重合体(B−3)を得た。
重合前に添加する混合単量体の組成を、スチレン65部、アクリロニトリル22部、メタクリル酸3部とした。重合開始後20分経過時に残りのスチレン5部、更に20分経過後に5部を添加した以外は、共重合体(B−1)と同様の重合方法を実施して共重合体(B−3)を得た。
共重合体(B−4):
添加する混合単量体の組成を、スチレン75部、アクリロニトリル25部とした以外は、共重合体(B−1)と同様の重合方法を実施して共重合体(B−4)を得た。
添加する混合単量体の組成を、スチレン75部、アクリロニトリル25部とした以外は、共重合体(B−1)と同様の重合方法を実施して共重合体(B−4)を得た。
ポリアミド樹脂(C−1):
98%濃硫酸溶液(ポリマー0.5g、濃硫酸100ml)、25℃で測定した相対粘度が2.7であるナイロン6
98%濃硫酸溶液(ポリマー0.5g、濃硫酸100ml)、25℃で測定した相対粘度が2.7であるナイロン6
ポリアミド樹脂(C−2):
98%濃硫酸溶液(ポリマー0.5g、濃硫酸100ml)、25℃で測定した相対粘度が3.0であるナイロン6.6
98%濃硫酸溶液(ポリマー0.5g、濃硫酸100ml)、25℃で測定した相対粘度が3.0であるナイロン6.6
エチレン−αオレフィン系酸変性共重合体(D−1):
三井化学製”タフマーMH5020” Tg=−65℃
三井化学製”タフマーMH5020” Tg=−65℃
エチレン−αオレフィン系酸変性共重合体(D−2):
三井化学製”タフマーMA8510” Tg=−52℃
三井化学製”タフマーMA8510” Tg=−52℃
タルク(E):
勝光山鉱業所製”SK−BB”
勝光山鉱業所製”SK−BB”
[実施例1〜実施例11]
上記で準備したグラフト共重合体(A−1)、(A−2)、(A−3)、共重合体(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B−4)、ポリアミド樹脂(C−1)、(C−2)、エチレン−αオレフィン系酸変性共重合体(D−1)、(D−2)およびタルク(E)をそれぞれ表2に記載した比率で配合した後に、加熱装置を備えた40mmφの二軸スクリューを用いて溶融混合することにより熱可塑性樹脂組成物を得た。その際の温度は260℃に設定した。
上記で準備したグラフト共重合体(A−1)、(A−2)、(A−3)、共重合体(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B−4)、ポリアミド樹脂(C−1)、(C−2)、エチレン−αオレフィン系酸変性共重合体(D−1)、(D−2)およびタルク(E)をそれぞれ表2に記載した比率で配合した後に、加熱装置を備えた40mmφの二軸スクリューを用いて溶融混合することにより熱可塑性樹脂組成物を得た。その際の温度は260℃に設定した。
得られた熱可塑性樹脂組成物から射出成形により試験片を作成し、この試験片の特性を評価した結果を表3に示す。
表1および表2の結果から明らかなように、本発明の熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜11)は、実使用温度範囲において温度依存性を受けない耐衝撃性、耐薬品性、耐熱性、塗装外観、塗装密着性のバランスに優れたものである。
[比較例1〜比較例9]
上記の各成分を表2に記載した比率で配合した後に、加熱装置を備えた40mmφの二軸スクリューを用いて溶融混合することにより熱可塑性樹脂組成物を得た。その際の温度は260℃に設定した。
上記の各成分を表2に記載した比率で配合した後に、加熱装置を備えた40mmφの二軸スクリューを用いて溶融混合することにより熱可塑性樹脂組成物を得た。その際の温度は260℃に設定した。
得られた熱可塑性樹脂組成物から射出成形により試験片を作成し、この試験片の特性を評価した結果を表3に併せて示す。
この結果、比較例1、比較例2は、共重合体(B)が規定範囲外の添加部数であるため、塗装外観の悪化、面衝撃強度の低下、塗装密着性の低下、耐薬品性の低下などが確認され、熱可塑性樹脂組成物の物性バランスに劣るものであった。
比較例3、比較例4は、エチレン−α−オレフィン系酸変性共重合体(D)が規定範囲外の添加部数であるため、塗装外観の悪化、面衝撃強度の低下、耐熱性の低下などが確認され、熱可塑性樹脂組成物の物性バランスに劣るものであった。
比較例5は、グラフト共重合体(A)が請求項記載の範囲外であるために、塗装外観の悪化、耐熱性の低下が確認され、熱可塑性樹脂組成物の物性バランスに劣るものであった。
比較例6は、共重合体(B)が請求項記載の範囲外であるために、面衝撃強度の低下、塗装外観の悪化、塗装密着性の低下、耐薬品性の低下が確認され、熱可塑性樹脂組成物の物性バランスに劣るものであった。
比較例7は、エチレン−α−オレフィン系酸変性共重合体(D)が請求項記載の範囲外であるために、−40℃の低温衝撃強度が著しく低下していた。
比較例8、比較例9は、タルク(E)が規定範囲外の添加部数であるため、面衝撃強度の低下、塗装密着性の低下、塗装外観の悪化、耐薬品性の低下、耐熱性の低下が確認され、熱可塑性樹脂組成物の物性バランスに劣るものであった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ABS樹脂とポリアミド樹脂が持つ耐衝撃性、流動性、耐薬品性のバランスが良い特徴に加えて、実使用温度範囲において温度依存性を受けない耐衝撃性、耐熱性、塗装外観、塗装密着性のバランスに優れた特徴を持つことから、この熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、フェンダー部位、バンパー部位、スクーターフロントカウル部位などの自動車部品類に有用である。
1 短冊状試験片
2 1/4楕円治具
3 薬液(ワックスリムーバー)
2 1/4楕円治具
3 薬液(ワックスリムーバー)
Claims (4)
- ゴム質重合体(a)10〜60重量部存在下に、シアン化ビニル系単量体(b)5〜50重量%、芳香族ビニル系単量体(c)10〜90重量%およびその他の共重合可能なビニル系単量体(d)0〜80重量%からなる単量体混合物90〜40重量部をグラフト共重合してなり、グラフト率が10〜100重量%であるグラフト共重合体(A)15〜35重量部、シアン化ビニル系単量体(b)0〜30重量%、芳香族ビニル系単量体(c)85〜45重量%、その他共重合可能なビニル系単量体(d)0〜60重量%、カルボキシル基、エポキシ基、無水酸基、アミノ基の中から選ばれた少なくとも1種以上の官能基を持ち共重合可能なビニル系単量体(e)0.1〜10重量%からなる共重合体(B)1〜20重量部、ポリアミド樹脂(C)30〜70重量部、および
ガラス転移温度が−55℃以下のエチレン−α−オレフィン系酸変性共重合体(D)10〜30重量部の合計100重量部に対して、タルク(E)を5〜35重量部配合してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 前記グラフト共重合体(A)が、グラフト率15〜60重量%のスチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂(C)がナイロン6であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂からなり、厚みが3mm以下の薄い実用成形品において、環境温度:−40℃以上、衝突速度:5m/s以下の環境条件で延性破壊形態を示すことを特徴とする成形品。
Priority Applications (1)
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JP2004081862A JP2005264083A (ja) | 2004-03-22 | 2004-03-22 | 熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品 |
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