JP2005538093A - 抗血管形成療法のための、テトラポリアンモニウムテトラチオモリブデートおよび関連化合物 - Google Patents

抗血管形成療法のための、テトラポリアンモニウムテトラチオモリブデートおよび関連化合物 Download PDF

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Abstract

本発明は、銅と結合しかつ三成分からなる、化合物−銅−タンパク質の複合体を形成するある範囲の化合物を提供することによってこのような必要性を解決する。この化合物は、溶解性または治療効力の重大な損失を伴うことなく安定性の増大を提示する。したがって、本発明の、これらのような化合物、薬学的処方物、およびキットは、専門病院における抗血管新生療法および抗腫瘍療法における種々の発展を有する。この発展としては、調製および取り扱いの容易性、および貯蔵寿命の増大が挙げられ、これらの利点は、それらの化合物の治療プロファイルを限定することなく達成される。本発明は、基礎となる化合物、薬剤、医薬品、およびキット、ならびに、癌を含む血管新生性疾患における安全で効果的な介入における用途のための、予防方法および治療方法が包含される。

Description

本発明は、共有に係る米国仮出願第60/397,804号(2002年7月23日)(本仮出願は、断りなしに、参考として本明細書において参考として援用される)に対する優先権を主張するものである。
(1.発明の分野)
本発明は、概して、血管新生疾患の領域に関連する。より具体的には、本発明は、間然された特性を有する銅結合化合物および血管新生的素因を有する疾患(癌を含む)の予防および処置においてこのような化合物を使用する方法を提供する。薬学的組成物、治療キットおよび併用療法がまた、提供される。
(2.関連技術の説明)
固体腫瘍は、最も末梢の細胞層以外に対して十分な栄養を維持するために、持続的増殖のための血管増殖(新脈管形成)を必要とする(Hayes、1994:Horakら、1993;Parangiら、1996)。一方で、正常な成体ヒト組織は、創傷治癒、外傷または外科後の再生、および月経周期の間の子宮の内部裏打ちの増殖を除き、新しい血管成長をほとんど必要としない。従って、新脈管形成は、腫瘍と正常組織の間の基本的な違いである。この違いは、細胞複製および細胞死の速度(多くの細胞減少性の化学療法はこれに依存する)における違いよりも量的に顕著である。新脈管形成への腫瘍の依存の結果として、悪性腫瘍のための抗脈管形成治療の概念が発生した(Folkman,1995a;Folkman,1995b;HanahanおよびFolkman,1996)。
異常な新脈管形成により特徴付けられる疾患の他の多くの例が存在する。新脈管形成により媒介されるこのような疾患の1例は、眼の新生血管症である。この疾患は、網膜または角膜のような眼の構造への新しい血管の侵入により特徴付けられる。これは、失明の最も通常の原因であり、そしてほぼ20の眼疾患に関与する。加齢性黄斑変性症において、関連する視覚的問題が網膜色素上皮下の血管結合組織の増殖を伴うブルーフ膜の欠失を通じる脈絡膜の毛細血管の内殖により生じる。
新脈管形成が関与すると考えられる別の疾患は慢性関節リウマチである。関節の滑膜裏打層における血管は新脈管形成を経験する。新しい血管ネットワークを形成することに加えて、内皮細胞は、パンヌス成長および軟骨破壊を導く因子および反応性酸素種を放出する。新脈管形成に関与する因子は、慢性関節リウマチの慢性炎症性状態に能動的に寄与しそしてその維持を助ける。
銅は、ウサギの角膜における血管新生の研究により示されたように、新脈管形成のための要件であり、そして強力な刺激因子でもある(Parkeら、1998)。ウサギの角膜におけるプロスタグランジンE1(PGE1)誘導性の新脈管形成の間、銅は新脈管形成が生じる部位で蓄積する(Parkeら、1998)。逆に銅欠損ウサギでは、PEG1に応答するウサギ角膜における新脈管形成は、大きく低下する。ウサギの角膜において、新脈管形成のための銅はセルロプラスミン(銅タンパク質)により、および溶解した硫酸銅により供給され得が、アポセルロプラスミン(銅を有さないセルロプラスミン)は、新脈管形成を支持しない(Gullino,1986)。さらなる研究はまた、銅が重要な脈管形成因子であることを示す(Rajuら、1982;Zicheら、1982)。これらの研究は全て、非結合の銅が脈管形成に必要であるという概念を支持する。
数年前、いくつかの動物腫瘍モデル研究が抗−銅アプローチを用いて実行された(Bremら、1990a;1990b;Yoshidaら、1995)。キレート化ペニシラミンおよび低銅含量の食餌を、脳内腫瘍を移植したラットおよびウサギにおいて銅のレベルを低下させるために用いた。しかし、低い銅レジメンで処置した動物は腫瘍サイズの低下を示したが、未処置のコントロールを上回る生存の改善は示さなかった。
ペニシラミン治療はまた、悪心および腹部不快感、ならびにより重篤な副作用(例えば、再生不良性貧血を導き得る白血球減少症および血小板減少症)を含む重大な副作用と関連することが報告されている。ネフローゼ症候群がまた、特定の例で報告されている。
文献(その処置した動物における致死数が、未処置のコントロール動物と同じ速度で発生するというBrem et al.(1990b)の研究を含む)における否定的な報告が、この領域におけるさらなる研究を大いに思いとどまらせるものであった。しかし、このような先入観を打破したとき、成功に至った抗血管新生療法が、全身の銅の状態の効果的な調製に基づいてついに開発された(PCT出願公開WO 00/13712)。この研究の基礎は、銅の欠損の範囲を決定することに関わる。この範囲において、血管新生が阻害され得るが、必須の銅依存性の細胞プロセスが、傷害性を回避するのに十分な量で、維持される。銅に結合しかつ薬剤−銅−タンパク質の複合体(例えば、テトラチオモリブデート(TM))を形成する薬剤の範囲を使用する「幅(window)」の内の有効量が達成され、そして、その劇的な成功例が、臨床試験において報告されている(PCT出願公開WO 00/13712)。しかし、これらの進歩にもかかわらず、銅の低減およびその維持を介した抗血管新生療法における用途のための薬剤の改善の必要性が、当該分野においていまだ存在する。改善された安定性および貯蔵寿命を有する化合物の開発が、特に望まれるものである。より安定な胴結合化合物の開発を試みるときに、このような研究において出くわす問題を解決することが重要である。したがって、改善された安定性および貯蔵寿命を有する可溶な治療有効量の銅結合化合物の薬学的処方物を調製することができることが、特に意義深い進歩を表すものである。
(発明の要旨)
本発明は、銅と結合しかつ三成分からなる、化合物−銅−タンパク質の複合体を形成するある範囲の化合物を提供することによって当該分野におけるこのような必要性を解決する。この化合物は、溶解性または治療効力の重大な損失を伴うことなく安定性の増大を提示する。したがって、本発明の、これらのような化合物、薬学的処方物、およびキットは、専門病院における抗血管新生療法および抗腫瘍療法における種々の発展を有する。この発展としては、調製および取り扱いの容易性、および貯蔵寿命の増大が挙げられ、これらの利点は、それらの化合物の治療プロファイルを限定することなく達成される。本発明は、基礎となる化合物、薬剤、医薬品、およびキット、ならびに、癌を含む血管新生性疾患における安全で効果的な介入における用途のための、予防方法および治療方法が包含される。
本発明は、生物学的有効量または治療有効量の少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を含む、化合物、組成物、薬学的処方物、およびキット、ならびそれらの関連治療法および医薬品使用を提供する。これらの組成物は、好ましくは、薬学的組成物または処方物であり、この組成物または処方物は、少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物とともに薬学的に受容可能な賦形剤を含む。
本出願の全体に亘って使用されるように、用語「a」および「an」は、これらが「少なくとも1」、「少なくとも第1の」、「1以上の」または「複数の」構成要素または工程を意味するという意味において、使用される。但し、当業者によって明確に理解されるように、上限が、それ以降に具体的に言及された後の場合は除かれる。したがって、「アルキルアンモニウムチオモリブデート化合物(an alkylammonium thiomolybdate compound)」は、「少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物」を意味する。その操作可能な、組合せの限定およびパラメータは、いずれの単数形のものの量と同様に、本開示を鑑みると当業者にとって明らかなものである。
用語「a」および「an」はまた、記載の方法において、「少なくとも1」、「少なくとも第1の」、「1以上の」、「複数の」工程を意味するように使用される。但し、具体的に言及されてる場合は除く。これは、処置方法における投与工程に特に関連する。したがって、様々な用量が、本発明に関して使用され得るばかりでなく、(複数回以下の)様々な回数の投薬が使用され得る。
本明細書および特許請求の範囲にわたって、用語「または(もしくは、あるいは)(or)」は、開示されたか特許請求された構成要素および工程に関して、「および/または」を意味する意味において、使用される。但し、異なる意味が、具体的に言及されたそれ以降または当業者にとって明らかである場合は除く。したがって、「モノアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウムまたはテトラアルキルアンモニウム(monoalkylammonium, dialkylammonium,trialkylammonium or tetraalkylammonium)」との用語は、本明細書中で使用される場合、「モノアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、またはテトラアルキルアンモニウム(monoalkylammonium, dialkylammonium, trialkylammonium or tetraalkylammonium)」を意味するのと同様に、それらの組合せ(例えば、「モノアルキルアンモニウムおよびジアルキルアンモニウム;モノアルキルアンモニウムおよびテトラアルキルアンモニウム;ジアルキルアンモニウムおよびトリアルキルアンモニウム」(monoalkylammonium and dialkylammonium;monoalkylammonium and tetraalkylammonium;dialkylammonium and trialkylammonium)など)も意味する。したがって、明示的に言及されるかまたは当業者によって明らかに理解される場合を除いて、「または(もしくは、あるいは)(or)」との用語は、列挙された構成要素または工程の各々、およびそれらの組合せを含むための簡潔な指示語として簡便に使用される。
本発明の組成物、薬学的組成物、医薬品およびキットは、後に身体から除去される「三成分(の)薬剤−銅−タンパク質(の)複合体」を形成することによってさらに銅レベルを低くするより安定な薬剤を含む。これらの「三成分(の)薬剤−銅−タンパク質(の)複合体」として結合した銅は、これらの複合体にから可逆的に放出されず、このことによって、可逆的である二成分銅キレート化と本発明が区別される。
特定の実施形態において、本発明のこれらの組成物、薬学的組成物、医薬品およびキットは、薬学的に受容可能な賦形剤および少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を含み、この第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物は、空気および水分に対して曝露されたときでも実質的に安定であり、溶解性を保持しつつかつ溶液中の生物学的有効量または治療有効量のチオモリブデート化合物を放出する。
そのアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物におけるアルキル基の数は、本発明に実施において変化され得る。したがって、本発明の例示的な実施形態としては、モノアルキルアンモニウムチオジモリブデート化合物、ジアルキルアンモニウムチオジモリブデート化合物、トリアルキルアンモニウムチオジモリブデート化合物およびテトラアルキルアンモニウムチオジモリブデート化合物、およびそれらの薬学的組成物が挙げられる。テトラアルキルアンモニウムチオジモリブデートが、特定の実施形態において好ましい。
チオモリブデート化学において知られるように、イオウ基の数は、変化され得る。したがって、本発明の化合物のさらなる例としては、アルキルアンモニウムモノチオモリブデート化合物、アルキルアンモニウムジチオモリブデート化合物、アルキルアンモニウムトリチオモリブデート化合物、アルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物、アルキルアンモニウムオクタチオモリブデート化合物、ならびにアルキルアンモニウムデカチオジモリブデート化合物が挙げられる。
本発明のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物および薬学的組成物は、そのチオモリブデート化合物が少なくとも第1の鉄原子または少なくとも第1の酸素原子を含む場合の化合物をさらに包含する。1つの特定の実施例は、アルキルアンモニウム鉄オクタチオジモリブデートである。このチオモリブデート化合物の完全な酸化は回避すべきであることが、理解される。
特定の好ましい実施形態において、本発明は、薬学的に受容可能な賦形剤および少なくとも第1のアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物を含む、組成物、薬学的組成物、医薬品、およびキットを包含し、この第1のアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物は、空気および水分に曝露されたときの酸化からそのトトラチオモリブデートを保護するのに十分な数のアルキル基を含み、それによって、テトラチオモリブデート化合物の安定性を向上させる。ここで、このアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物は、溶液中に生物学的有効量または治療有効量のテトラチオモリブデートを放出する。
他の好ましい実施形態において、本発明は、テトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物およびそれらの薬学的組成物を提供する。それらのアルキル基の特性は、本発明について、限定的ではない。したがって、本発明としては、テトラメチルアンモニウムテトラチオモリブデート、テトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデートおよびテトラブチルアンモニウムテトラチオモリブデートならびにそれらの薬学的組成物が挙げられる。テトラポリアンモニウムテトラチオモリブデートおよびそれらの薬学的組成物は、本発明の特定の局面において好ましい。
したがって、このような組成物、薬学的組成物、医薬品およびキットは、薬学的に受容可能な賦形剤および少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物を含み、ここで、これらのアルキル基は、空気および水分に曝露されたときの酸化からそのテトラチオモリブデートを保護し、それによって、テトラチオモリブデート化合物の安定性を向上させ、ここで、そのテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物は、溶解性を保持し、かつ、水溶液中で、実質的に生物学的に活性であるかまたは治療学的に活性であるテトラチオモリブデートおよび実質的に生物学的に不活性なアルキルアンモニウム基を放出する。
本発明はまた、生物学的有効量または治療有効量のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物および薬学的に受容可能な賦形剤を含む、組成物、薬学的組成物、医薬品およびキットを提供し、ここで、このテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物は、少なくとも約7日間に亘って加熱した湿潤空気において実質的に安定であり;室温の空気に曝露した場合の、アンモニウムテトラチオモリブデートの半減期の少なくとも2倍の半減期を有し、水中に少なくとも約1mg/mlまで溶解可能であり、実質的にインタクトな銅結合特性を有するテトラモリブデートを水溶液中に放出する。
このような有利な特性を提供する特定の好ましい、組成物および薬学的組成物は、少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物が、テトラポリアンモニウムテトラチオモリブデートである、組成物および薬学的組成物である。したがって、生物学的有効量の テトラポリアンモニウムテトラチオモリブデートおよび薬学的に受容可能な賦形剤を含む、組成物、医薬品、およびキットが、本発明の好ましい実施形態である。
その薬学的組成物および薬学的に受容可能な賦形剤の特性は、本発明の実施に対して重要なものでない。代表的には、このような組成物および賦形剤は、処置されるべき抗新血管形成条件に一致するために選択され、これらは、静脈内投与、経口投与、眼用投与などのための処方される。本発明の利点は、組成物および化合物の全身投与が、広範な種々の条件を処置するのに有効であるあることである。経口投与のために処方された組成物は、特に好ましい。それにもかかわらず、特定の部位に対する局所投与、それゆえ、本発明の、眼用の局所用処方および他の処方もまた、企図される。
本発明の所定の組成物または薬学的組成物は、1以上のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を含み、それらの組成物または薬学的組成物は、少なくとも2、3、4またはそれ以上のそのような化合物を、含む。複数のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を含む組成物および薬学的組成物もまた、本発明に包含される。
本発明の組成物および薬学的組成物はまた、生物学的有効量または治療有効量のさらなる生物学的薬剤および/または治療剤を含み、これらの組成物および薬学的組成物は、生物学的有効量または治療学的有効量の少なくとも第2、第3、また第4またはさらなる生物学的薬剤および/または治療剤を含む。本来的に、「少なくとも第2の生物学的および/または治療学的薬剤」との言い回しは、その組成物中の第1の生物学的および治療学的な薬剤である「少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物」を参照して選択される。
「少なくとも第2の生物学的および/または治療的な薬剤」は、しばしば、治療剤であるが、それは、治療剤である必要はない。例えば、その少なくとも第2の生物学的薬剤は、薬学的に受容可能な賦形剤、希釈剤、またはビヒクル;抗真菌剤または抗細菌剤;または他の薬剤の調製および/または貯蔵に関連する他の生物学的薬剤であり得る。第2の生物学的薬剤はまた、診断剤であり得、この診断剤は、アルキルアンモニウムチオモリブデート治療剤と別個に維持される。
その少なくとも第2の生物学的薬剤が治療剤である場合、このような薬剤は、代表的には、処置されるべき状態に基づいて選択される。例えば、抗関節炎化合物は、関節炎処置などにおいて使用され得る。本発明のこのような「併用される」組成物およ薬学的組成物は、本発明における販売および/または使用のためにおパッケージされる別個の処方物同様に、混合物または「カクテル」を含む。
本発明の組み合わせた組成物、薬剤、カクテル、キット、関連方法、医薬品、ならびに第1の医学的用途および第2の医学的用途、それらの組み合わせは、「治療(的に)有効(な)組合せ」である。したがって、本発明の意図した実施は、第2の治療剤の事前、同時、または事後の投与を含み、その結果、併用した治療有効量の薬剤が、投与時間に関わらず、かつ併用した治療有効量が、漸増的、加算的、または相乗的な量であるか否かに関わらず、インビボで結果として生じる。
特定の好ましい第2の治療剤は、第2の抗血管新生剤であるか、または「第2の、別個の抗血管新生剤」であり、ここで、その少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物が、その組成物中の第1の抗血管新生剤である。例示的な第2の抗血管新生剤としては、アルキルアンモニウム基とは関連しない他のチオモリブデート(例えば、テトラチオモリブデート自体)が挙げられる。少なくとも第1の糖質(モノサッカリド、ジサッカリド、トリサッカリド、オリゴサッカリド、またはポリサッカリド)と関連するさらなるチオモリブデート化合物は、本発明のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物と併用され得る薬剤の更なる例である。
本発明の組成物および薬学的組成物における併用のための更なる例示的な抗血管新生剤は、表2から選択される抗血管新生剤である。抗VEGF抗体は、適切な抗血管新生剤の別の群である。例として、少なくとも第2の抗血管新生剤は、アンギオスタチン、エンドスタチン、トリエンチン(trientine)、およびペニシラミン(pencillamine)からなる群より選択される抗血管新生剤であり得る。本発明における併用用途のための他の有効な第2の抗血管新生剤は、亜鉛化合物である。
治療されるべき異常な血管新生と関連する状態が癌である場合、上記の少なくとも第2の治療剤は、少なくとも第2の抗癌剤、すなわち、「少なくとも第2の、別個の抗癌剤」である。このような実施形態において、前記少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物は、上記の「少なくとも第1の抗癌剤」である。
例示的な第2の抗癌剤としては、化学療法剤、放射線治療剤、イムノトキシン、アポトーシス誘導剤、別個の抗血管新生剤、および銅に結合する別個の薬剤からなる群より選択される抗癌剤である。第2の抗癌剤としては、再び、亜鉛化合物が挙げられる。
本明細書中で使用される場合、用語「化学療法剤(chemotherapeutic agent)」とは、従来型の化学療法剤または悪性腫瘍を処置するときに使用される薬物をいうために使用される。この用語は、他の化合物(イムノトキシンを含む)がそれらが抗癌効果を発揮する点において化学療法剤として技術的には記載され得るとの事実に関わらず、簡便のために使用される。しかし、「化学療法薬(chemotherapeutic)」は、当該分野においては別個の意味を有するようになり、この標準的な意味にしたがって使用される。したがって、本願明細書の文脈における「化学療法薬」は、一般に、それらの操作上の重なりにもかかわらず、イムノトキシン、放射線療法剤などは、示さない。
多くの例示的な化学療法剤が当該分野で公知であり、かつ、本明細書中で開示されている。当業者は、化学療法剤の用途および適切な用量を理解し得るが、本発明と併用されれるときにそれらの用量が十分に低減される。「化学療法剤」と称され得る新規の薬物が、アポトーシスを誘導する薬剤である。1以上のこのような薬物のいずれか(適切であるものとして、遺伝子、ベクター、およびアンチセンス構築物を含む)はまた、本発明と組み合わせて使用され得る。
本発明はまた、所定の範囲の治療キットを提供する。特定の治療キットは、1つの実施例において、少なくとも第1の薬学的組成物を含み、その組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤および生物学的有効量または治療有効量の少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を含む。別の実施例において、他のキットは、生物学的有効量または治療有効量の少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物、および異常な血管新生に関連する疾患の処置または予防の際にその化合物を投与するための指示書(例えば、癌の処置または予防におけるその化合物の投与のための指示書)を含む。好ましくは、これらのキットのいずれかが、薬学的組成物または組成物のための少なくとも第1の容器を備える。
これらのキットはまた、生物学的有効量または治療有効量の少なくとも1つの診断成分あるいは少なくとも1つの第2の生物学的薬剤または治療学的薬剤(例えば、抗血管新生剤または抗癌剤)を含む。上記の第1の生物学的薬剤または治療剤が、このようなキットにおいて使用され得る。
このようなキットにおいて、いずれの併用療法剤(組み合わせ治療剤)は、単一の容器または容器手段中に含まれ得、または別個の容器または容器手段中に含まれる。カクテルは、一般的には、併用目的のために混合される。診断成分およびアッセイ成分は、別個の容器または容器手段に含まれる。特定の実施形態において、本発明のキットは、血清セルロプラスミンレベルを決定するためのアッセイシステムの少なくとも1つの構成要素を含む。好ましくは、これらのキットは、血清セルロプラスミンレベルを決定するために必要なアッセイシステムの構成要素の各々を含む。このような構成要素または全体のアッセイシステムは、上記のキットの第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物とは別個の容器中に含まれる。好ましい実施形態において、このようなアッセイは、さらなる指示書、例えば、所定の患者に対して決定された血清セルロプラスミンレベルに基づいてアルキルアンモニウムチオモリブデート療法を調節するための指示書を含み得る。
本発明のなおさらなるキットは、癌を検出または診断するためのアッセイシステムの、生物学的有効量または診断有効量の少なくとも1つの構成要素、すなわち、「癌診断構成要素」を含むキットを含む。癌診断システムまたは癌診断アッセイの全体が、好ましい。このような構成要素またはスステムは、上記の少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデートとは別個の組成物中に含まれている。
本発明のこれらの化合物、組成物、薬学的組成物、キットおよびこれらの組合せは、特に、銅に結合しかつ薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する用途のために適切であり、したがって、異常な脈管形成(vascularization)もしくは血管新生(angiogenesis)に関連するかまたはそれらによって特徴付けられる範囲の疾患および障害を処置または予防する用途において効果的に使用され得る。
したがって、本発明は、異常な脈管形成(vascularization)もしくは血管新生(angiogenesis)に関連するかまたはそれらによって特徴付けられる範囲の疾患および障害を処置また予防するための医薬品の製造における1以上のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物の使用を提供する。本発明の特定の局面は、ヒト被験体における異常な脈管形成(vascularization)または血管新生(angiogenesis)に関連するかまたはそれらによって特徴付けられる範囲の疾患および障害を処置また予防するための医薬品の製造における1以上の少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物の使用である。本発明の別の局面は、場合によっては、ヒト被験体における、異常な脈管形成(vascularization)または血管新生(angiogenesis)に関連するかまたはそれらによって特徴付けられる範囲の疾患および障害を処置また予防するための医薬品の製造における、銅に結合してチオモリブデート化合物−銅−タンパク質複合体を形成するアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物の使用である。
本発明のこれらの局面は、さらなる進歩性のあるキットを生じる。例えば、ヒト被験体に投与するために好ましい、治療キットであって、このキットは、以下:
(a)本発明に従って製造された医薬品、すなわち、少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を含む医薬品;および
(b)血清セルロプラスミン(Cp)レベルを決定するための、好ましくは、ヒト被験体における血清セルロプラスミンを決定するための手段
を備える、キット。
本発明のさらなるキットは、以下:
(a)負荷用量の、本発明に従って製造された医薬品(すなわち、少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を含む医薬品)であって、ここで、この負荷用量によって、血清セルロプラスミンレベルが、その医薬品を投与する前のレベルの約20%未満まで低減させる、医薬品;および
(b)維持用量の、本発明に従って製造された医薬品(すなわち、少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を含む医薬品)であって、ここで、この維持用量によって、血清セルロプラスミンレベルが、その医薬品を投与する前のレベルの約20%未満で維持させる、医薬品;、
を含むキットである。
方法に関して、本発明は、異常な脈管形成(vascularization)または血管新生(angiogenesis)に関連する疾患を処置または予防する方法を提供する。本明細書中で使用される場合、用語「異常(な)脈管形成(vascularization)」または「異常(な)血管新生(angiogenesis)」は、異常な新血管形成(新しい血管、より太い血管、より分岐した血管を含む)(腸重積症)、ならびに、不適切であるかまたは疾患の組織または部位への増大した血液運搬能力を生じる全ての機構を意味すると理解される。本発明の薬剤は、作用の実際の機構とは無関係に、「異常脈管形成」または「異常血管新生」に対抗するものと理解される。
本発明によって提供される「抗血管新生療法」は、所望しない、不適切、異常、過剰および/または病理学的である脈管形成または血管新生によって特徴付けられる任意の疾患または障害をゆうするかまたはそれらの疾患もしくは障害を発症する危険性を有する、動物および患者において適用される。血管新生の根底にあるプロセスが、その周囲の組織に関わらず、本質的に同じであること、そして、異常血管新生が、疾患および障害の広範な範囲において生じると、所定の抗血管新生療法が、一旦承認されたモデル系のいずれかのモデル系で有効であることが示された場合に、血管新生と結びつく疾患および障害の範囲の全体を処置するために使用され得る。
本発明の方法、医薬品および医学的使用は、血管形成性の腫瘍の形態;筋肉変性(加齢筋変性を含む);関節炎(慢性関節リウマチを含む);アテローム性動脈硬化症およびアテローム性質硬化症プラーク(atherosclerotic plaques);糖尿病性網膜症および他の網膜症;甲状腺肥大(グレーヴズ病を含む);血管腫;血管新生性緑内障;および乾癬のいずれかを有するかまたはそれらを生じる危険性がある動物または患者における用途が意図される。
これらの方法、医薬および医学的使用は、動脈形成異常(AVM);髄膜腫;および血管性再狭窄(血管形成術後の再狭窄を含む)を有するかまたはそれらを生じる危険性のある動物および患者の治療においてさらに使用され得る。治療方法および治療用途において他に意図される標的は、血管線維腫、皮膚炎、子宮内膜症、出血性関節、肥大性瘢痕、炎症性疾患および炎症性障害、化膿性肉芽腫、強皮症、髄膜炎、トラコーマ、および血管癒着を有するかまたはそれらを生じる危険性のある動物および患者である。
米国特許第5,712, 291号(これは、具体的に、本明細書中で参考として援用される)に開示されるように、上述のいくらかの好ましい処置群の各々は、本発明によって処置される状態の型を網羅的に表したものでは決してない。米国特許第5,712,291号は、抗血管新生療法によって効果的に処置され得る多くのほかの状態を同定するための目的;一旦、規定されたカテゴリーの抗血管新生化合物(この場合、アルキルアンモニウムチオモリブデート化合物)が開示されると、全ての抗血管新生疾患の処置が、統合された概念を表すことを示す目的:および全ての血管新生性疾患の処置が単一のモデル系によるデータによって可能となることを示す目的のために、本明細書中で、参考として援用される。
なおさらなる局面において、米国特許第5,712,291号(これは、本明細書中で三個として援用される)に開示されるように、本発明の方法、医薬品、医学的使用は、以下を有するかまたはそれらを生じる危険性のある動物または患者の処置について意図される:血管結合組織の異常増殖、酒さ性ざ瘡、後天性免疫不全症候群、動脈閉塞、アトピー性角膜炎症、細菌性潰瘍、ベーチェット病(Bechets disease)、血液由来腫瘍(blood borne tumors)、頚動脈閉塞性疾患、薬品やけど、脈絡膜新血管新生、慢性炎症、慢性網膜はく離、慢性ブドウ膜炎、慢性ブドウ膜炎、コンタクトレンズの過剰装用、角膜移植片拒絶反応、角膜新血管新生、角膜移植片血管新生、クローン病、イールズ病、流行性)乾性角結膜炎、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、ヘルペス帯状疱疹感染、過粘稠症候群(hyperviscosity syndromes)、カポジ肉腫、白血病、脂質変性、ライム病(Lyme’s disease)、辺縁性角質溶解、蚕食性角膜潰瘍(Mooren ulcer)、ライ病以外の放線菌感染、近視、眼性新血管新生疾患、眼窩(optic pits)、オースラー−ウェーバー症候群(Osler−Weber syndrome (Osler−Weber−Rendu))、変形関節症、パジェット病、前部ブドウ膜炎(pars planitis)、類天疱瘡、フェレクテヌロシシス(phylectenulosis)、多発性動脈炎、レーザー処置後の合併症(post−laser complication)、原生生物感染、弾力繊維性仮性黄色腫(pseudoxanthoma elasticum)、翼状角膜炎乾燥症、放射状角膜切開、網膜新生血管形成、未熟網膜症、水晶体後線維増殖症、サルコイド、強膜炎、鎌状赤血球貧血、ソグレン症候群(Sogrens syndrome)、固形腫瘍、スタルガルト病(Stargarts disease)、スティーヴンズ−ジョンソン疾患、上方輪部角結膜炎、梅毒、全身性エリテマトーデス、テリエン辺縁変性、トキソプラズマ症、外傷、ユーイング肉腫の腫瘍、神経芽細胞腫の腫瘍、骨肉腫の腫瘍、網膜芽細胞腫の腫瘍、横紋筋肉腫の腫瘍、潰瘍性大腸炎(ulceritive colitis)、静脈閉塞、ビタミンA欠乏症およびウェゲナーサルコイドーシス。
本発明は、通常は、米国特許第5,753, 230号(これは、本明細書中で参考として具体的に援用される)に記載の関節炎の処置を用いて、関節炎を有するかまたは関節炎を発症する危険性がある動物または患者の処置のための方法、医薬および医学的使用をさらに提供する。米国特許第5,972,922号はまた、糖尿病、寄生性疾患、異常創傷治癒、外科手術後の肥大、やけど、損傷または外傷、毛髪成長の阻害、排卵および黄体形成の疎外、移植の阻害ならびに子宮での胚発生の阻害に関連する所望しない血管新生の治療に対する抗血管新生ストラテジーの適用をなおさらに例示するために、本明細書中で参考として具体的に援用される。米国特許第5,639,757号は、移植片拒絶反応の一般的な処置に対する抗血管新生ストラテジーの使用を例示するために参考として本明細書中で具体的に援用される。したがって、上記の条件の全ては、本発明の方法および本発明の使用による処置について企図される。
上述の疾患の各々の処置は本発明、統合された本発明において実施されるものであるが、本発明の方法、医薬品および医学的使用の特に好ましい局面は、血管新生された固形癌、転移性腫瘍または原発性腫瘍からの転移を有するかまたはそれらを発症する動物または患者に抗血管新生療法を提供することである。
本発明の文脈において、用語「血管新生した腫瘍」は、最も好ましくは、血管新生された、悪性腫瘍、固形腫瘍または「癌」を意味する。癌処置に関して、本発明の組成物および方法は、血管性成分を有する固形腫瘍の形成の全てを処置するために使用され得る。固形腫瘍(例えば、癌腫および肉腫)は、本発明の組成物および方法を用いる処置に対して特に影響を受けやすい型の腫瘍の例である。本発明を使用して予防または処置され得る腫瘍の例示的な型としては、腎臓の腫瘍、肺の腫瘍、胸部の腫瘍、結腸の腫瘍、前立腺の腫瘍、胃の腫瘍、肝臓の腫瘍、膵臓の腫瘍、食道の腫瘍、脳腫瘍および咽頭の腫瘍、ならびに血管肉腫および軟骨肉腫が挙げられる。
種々のサイズの腫瘍はまた、本発明を使用して処置され得る。したがって、直径にして約1cm未満である腫瘍によって例示されるような小型の腫瘍(転移性腫瘍を含む)、直径にして約1cmと約5cmとの間の腫瘍によって例示されるような中規模または中程度の腫瘍、直径にして約5cm以上の腫瘍によって例示されるような中規模または大規模の腫瘍が、本発明を使用する処置について企図される。これらの腫瘍は、原発性腫瘍または転移性腫瘍、あるいはその両方であり得る。
本発明の組成物および方法は、腫瘍細胞の表原型に関わらず、種々の細胞を処置することに適用可能であるので、1以上の型の腫瘍を有する患者は、本発明によって効果的に処置される。したがって、少なくとも第1および第2、第3またはそれ以降の、別個の型の腫瘍を有する患者は、胸部腫瘍および軟骨肉腫または腎臓腫瘍および肺腫瘍によって例示されるような、本発明を使用する処置について企図される。
本発明の例示的な方法は、異常血管新生と関連する疾患(筋変性、慢性関節リウマチ、および癌を含む)を有するかまたはそれらを発症する危険性がある動物または患者に、生物学的有効量または治療有効量の少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を含む薬学的組成物を投与する工程を包含する。
上述のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物のうちの1つ以上のいずれかが、このような方法において使用され得、これらの化合物としては、テトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物(例えば、テトラメチルアンモニウムテトラチオモリブデート、テトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデートまたはテトラブチルアンモニウムテトラチオモリブデート)が挙げられ、テトラポリアンモニウムテトラチオモリブデートが、特定の実施形態においては好ましい。
特定の実施形態において、本発明の方法は、異常な脈管形成または血管新生を伴う疾患(筋変性、慢性リウマチ、または癌を含む)を処置するかまたは予防する方法を提供し、この方法は、このような疾患を有するかまたはこれらを発症する危険性のある動物または患者に、水に実質的に可溶性であるかまたは空気または水分に対する曝露においても実質的に安定である少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を、それらの動物または患者に対して投与する際に治療用量の生物活性のチオモリブデート化合物を放出するのに有効である量で、投与する工程を包含する。
他の実施形態において、本発明は、異常な脈管形成または血管新生に関連する疾患(筋変性、慢性リウマチ、または癌を含む)を処置するかまたは予防する方法を提供し、この方法は、このような疾患を有するかまたはこれらを発症する危険性のある動物または患者に、投与前の貯蔵期間にそのテトラチオモリブデートが酸化するのを実質的に防止するのに十分な多くのアルキル基を含む少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を、それらの動物または患者に対して投与する際に治療用量の生物活性のチオモリブデート化合物を放出するのに有効である量で、投与する工程を包含し;ここで、このアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物は、その動物または患者に投与されたときに治療有効量の生物活性のテトラチオモリブデートを放出する。
なおさらなる実施形態において、本発明の方法は、異常な脈管形成または血管新生を伴う疾患(筋変性、慢性リウマチ、または癌を含む)を処置するかまたは予防する方法を提供し、この方法は、このような疾患を有するかまたはこれらを発症する危険性のある動物または患者に、少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物を含む薬学的組成物を投与する工程を包含し、ここで、それらのアルキル基は、そのテトラチオモリブデート化合物に実質的に増加した半減期を与え、ここで、このテトラアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物は、溶解性を保持し、かつ有効量の実質的に治療活性なテトラチオモリブデートおよび実質的に無毒性のアルキルアンモニウム基を、その動物または患者に投与する際に、放出する。
本発明の薬学的組成物は、適切な経路(例えば、非経口経路、経口経路、経眼経路など)を介して動物または患者に投与され得る。特定の局面において、経口投与が好ましい。しかし、他の経路の投与も企図され、経路としては、静脈内、筋肉内、および皮下の注射;直腸投与、経鼻投与、投与および経膣投与;徐放性(slow release)処方などが挙げられる。
その疾患に関わらず、本発明は、異常な脈管形成または血管形成に関連する疾患の発症の遅延またはそれらの疾患の予防の方法を提供し、これらの疾患としては、筋変性、慢性リウマチおよび癌が挙げられる。このような方法は、異常な脈管形成または血管新生に関連する疾患を発症する危険性のある動物または患者に、予防有効量の少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を含む少なくとも第1の薬学的組成物を、投与する工程を包含する。このような予防的(preventative)または予防的(prophylactic)な方法において、異常な脈管形成または血管新生(例えば、筋変性、慢性関節リウマチ、または癌)に関連する疾患を発症する危険性がある患者が、存在する患者の親族を同定すること、遺伝的試験による感受性の高い被験体の同定などによって、「選択され」るかまたは同定される。
「予防有効量」は、動物または患者に対して投与された際に、異常な脈管形成または血管新生に関連する疾患(筋変性、慢性関節リウマチ、および癌)の発症を遅延させるかまたは実質的に予防するのに有効な1以上のアルキルアンモニウムチオモリブデートの量である。
本発明はまた、顕在的な(overt)治療方法を提供し、この方法は、血管新生性疾患の全範囲に対して適用可能である。したがって、本発明は、異常な脈管形成または血管新生に関連する疾患(筋変性、慢性関節リウマチ、および癌)を処置する方法を提供し、異常な脈管形成または血管新生に関連する疾患(筋変性、慢性関節リウマチ、および癌)を有する動物または患者に、治療有効量の少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を含む少なくとも第1の薬学的組成物を投与する工程を包含する。
従って、「治療有効量」の本発明は、動物または患者に投与したときに、異常な脈管形成または血管新生に関連する疾患(筋変性、慢性関節リウマチ、および癌)の進行を遅延させるかまたはそれらの疾患の進行を実質的に防ぐか、そして/またはそれらの疾患の症状を軽減するのに有効な1以上のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物の量である。例えば、治療有効量は、動物または患者に投与したときに疾患組織(例えば、腫瘍)の増殖を遅くし得、実質的にこのような増殖を静止させ得、疾患組織または腫瘍の少なくとも一部分において壊死を引き起こし、そして/または疾患の退縮および寛解を誘導し得る。
このような治療効果が達成され、他方、好ましくは、その動物または患者の正常で、健康な組織に対する無視できるほどであるか僅かな有害な副作用を提示する。したがって、「治療有効量」は、動物によって、または患者によって、多くの因子に依存して変化し得る。この因子としては、患者の疾患の程度および規模が挙げられるがこれらに限定されない。このような投与の問題の全ては、本開示を参照して携わる内科医によって慣用的に解決され得る。
本発明の特定の局面において、上記の少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物の生物学的有効量または治療有効量は、患者に対して約10mgと約300mgとの間である。他の局面において、その生物学的有効量または治療有効量は、治療有効時間または期間にわたって患者当たり約20mgと約200mgとの間である。一般的に、この薬剤は、毎日、患者に投与され、したがって、本発明のこれらの実施形態において、生物学的有効量および治療有効量の少なくとも第1の薬剤は、約10mgと約300mgとの間であるか、または約125mgと約190mgとの間であるか、そして、約150mgと約180mgとの間である。
「約10mgと約300 mgとの間」は、この範囲の値の全てを包含し、したがって、これは、以下の量を包含する:約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約75mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約125mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mgおよび約295mg。「約(およそ)」は、所定の数の上および下の値を包含する。したがって、「約20mg」は、約18mg、約19mg、約21mgおよび約22mgまたはそのような値を含むと理解され、そして、「約200mg」は、約201mg、約202mg、約203mgおよび約204mgまたはそのような値を含むと理解される。
本発明の他の実施形態において、生物学的有効量または治療有効量の少なくとも第1の薬剤は、患者当たり、約20mgと約190mgとの間、約20mgと約180mgとの間、約20mgと約170mgとの間、約20mgと約160mgとの間、約20mgと約150mgとの間、約20mgと約140mgとの間、約20mgと約130mgとの間、約20mgと約120mgとの間、約20mgと約110mgとの間、約20mgと約100mgとの間、約20mgと約90mgとの間、約20mgと約80mgとの間、約20mgと約70mgとの間、約20mgと約60mgとの間、約20mgと約50mgとの間、約20mgと約40mgとの間、約20mgと約30mgとの間、約30mgと約200mgとの間、約40mgと約200mgとの間、約50mgと約200mgとの間、約60mgと約200mgとの間、約70mgと約200mgとの間、約80mgと約200mgとの間、約90mgと約200mgとの間、約100mgと約200mgとの間、約110mgと約200mgとの間、約120mgと約200mgとの間、約130mgと約200mgとの間、約140mgと約200mgとの間、約150mgと約200mgとの間、約160mgと約200mgとの間、約170mgと約200mgとの間、約180mgと約200mgとの間、約190mgと約200mgとの間、約30mgと約190mgとの間、約40mgと約180mgとの間、約50mgと約170mgとの間、約60mgと約160mgとの間、約70mgと約150mgとの間、約80mgと約140mgとの間、約90mgと約130mgとの間、約100mgと約120mgとの間、約125mgと約200mgまたは約150mgと約180mgとの間である。
上述の値はまた、mg/kg体重で表現される。上述のように、その生物学的有効量または治療有効量は、動物またはヒト患者のサイズに依存して変化し得る。しかし、ヒトの男性の平均体重と約70kgとして、その生物学的有効量または治療有効量の化合物は、mg/kgで容易に計算され得る。
生物学的有効量および治療有効量は、銅の減少レベルに関して効果的に表現され得る。そのものとして、本発明は、好ましくは、異常な脈管形成または血管新生に関連する疾患(筋変性、慢性関節リウマチ、または癌)を有する動物または患者に、少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を、その動物または患者におけるアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物の投与前の銅レベルの約10%と約40%との間にまで低下させるのに有効な量および時間的な期間で、投与することに関する。約15%と約30%との間、約10%と約20%との間、または約15%と約20%との間までの銅レベルの低減は、特に効果的であり、処置前のレベルの約20%までの低減は、殆どの動物および患者にとって、有効である。
動物および患者における銅レベルは、容易に決定され得、そして、好ましい方法は、血清セルロプラスミンのレベルを決定することである。
さらなる実施形態において、本発明の最初の処置の後に、その動物または患者における低減した銅レベルを実質的に維持するのに有効な量の銅結合剤を、その動物または患者に対して続いて投与する。好ましくは、このような連続的な投与は、最初の処置前のレベル約10%〜20%で動物または患者における銅レベルを維持するのに有効な量および時間的な期間にわたって、与えられる。
したがって、本発明は、負荷量の少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物が、投与前のレベルの約20%〜約40%まで動物または患者の銅レベルを最小に低減するのに有効な量および時間的な期間で、その動物または患者に対して、はじめに投与され;そして、維持量の銅結合剤が、最初の処置前のレベルの約10%〜約20%で動物または患者における銅レベルを維持するのに有効な量および時間的期間で、その後、その動物または患者に投与される。
本発明のこれらの方法は、異常な脈管形成または血管新生に関する疾患(筋変性、慢性関節リウマチ、および癌)を処置または予防することに適用される。このような方法は、このような疾患を有するかまたはそれらを発症する危険性がある動物または患者に対して以下:(a)その動物または患者の銅レベルを好ましくは、処置前の銅レベルの約10%と約40%との間まで、より好ましくは処置前の銅レベルの約20%まで効果的に低減するのに十分な量の少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物投与する工程を包含し;そして(b)その動物または患者における低減された銅レベルをその後維持する。
このような全ての実施形態において、連続的に投与された銅結合剤は、結合して動物における銅レベルを低減するのに有効な任意の薬剤であり得る。適切な銅結合剤は、チオモリブデート化合物(最初の処置のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を含む)である。しかし、他の結合剤(特に、酢酸亜鉛のような亜鉛化合物)は、効果的に使用され得る。銅レベルは、好ましくは、血清セルロプラスミンレベルによって示される。
上述の方法の任意のものが、治療有効量の少なくとも第2の治療剤をその動物または冠者に投与する工程を包含する。この第2の治療剤は、第2の抗血管新生剤または第2の抗癌剤であり得る。
第2の治療剤はまた、抗血管新生剤以外の手段(例えば、抗関節炎化合物)よって処置される疾患を叩くためのし薬剤であり得る。例示的な第2の抗血管新生剤は、別個の銅キレート剤および亜鉛化合物である。例示的な第2の抗癌剤は、キレート剤、放射線治療剤、別個の抗血管新生剤およびアポトーシス誘導剤である。
その少なくとも第2の治療剤、抗血管新生剤または抗癌剤は、少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物を連続的に同時に用いて(例えば、これは、単一の薬学的組成物からか、または、近接して一緒に投与される2つの薬学的組成物による)投与され得る。
あるいは、少なくとも第2の治療剤、少なくとも第2の治療剤、抗血管新生剤または抗癌剤が、少なくとも第1のアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物の投与後に連続してでその動物または患者に投与され得る。「(時間的に)連続して(した時点で)」とは、本明細書中で使用される場合に、「ずれている」ことを意味し、その結果、その少なくとも第2の薬剤は、アルキルアンモニウムチオモリブデート化合物の投与とは別個時点で同定または患者に投与される。
一般的に、これらの2つの薬剤は、効率的に間隔があけられた時点で投与され、これらの薬剤が、それらのそれぞれの治療学的効果を発揮することを可能にする。これらは、「生物学的に効果的な時間間隔」で投与する。その少なくとも第2の薬剤は、アルキルアンモニウムチオモリブデート化合物の前に生物学的に効果的な時間で、またはその化合物の後に生物学的に効果的な時間で、投与され得る。他の併用療法(外科的な切除法および放射線療法(例えば、X線療法)を含む)もまた、本発明に包含される。
以下の図は、本明細書の一部分を形成し、本発明の特定の局面をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書中で提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて1以上のこれらの図面を参照することによって、より良く理解される。
図1は、(n−PrN)MoS(TP−TM)の結晶充填の投影を示す。 図2は、単一結晶のX線構造決定法によって取得された原子座標に基づいてk生産されたX線粉末パターンを示す。 図3は、結晶質の(n−PrN)MoS(TP−TM)か実験的に取得されたX線粉末間ターンを示す。 図4は、TM(AmmTM)に対するTP−TMの安定性の増加を示す。各々化合物の安定性は、不安定を悪化させる条件のもとで研究された。すなわち、それらの薬物は、室温で、ペトリ皿中に存在する。このパーセント活性は、時間(日)の関数としてプロットされる。 図5は、TP−TMが、TMと同様に、ヒト腫瘍外移植片のインビボでの増殖を阻害することを示す。10の乳癌細胞を、無胸腺のヌードマウス(1群につき5匹のマウス)の4つの群の哺乳動物の脂肪パッド中に注入した。コントロールマウスは、なんら処置を受けなかった。3つの実験群が、指定時間で処置を始め、1mg/日のオリジナルTMであるAmmTM;1mg/日のTP−TM、テトラプロピル−テトラチオモリブデート(図上では、「TP 1mg」として示される」;または1.5mg/日のTP−TM(図上では、「TP 1.5mg」)のいずれかを受けた。エラーバーは、示された値の5%域にある。この処置した動物の増殖曲線は、コントロール動物と有意に異なっていた(p<0.01)。このTP−TM(TP)増殖曲線は、TM曲線とは統計学的に区別がつかない。
(例示的に実施形態の説明)
固形腫瘍は、男性の全ての癌の90%を超える原因となる(Shockleyら、1991)。モノクローナル抗体および免疫毒素の治療的用途は、リンパ腫および白血病の治療で研究されている(Lowderら、1987;Viettaら、1991)が、固形腫瘍に対する臨床的トライアルでは、期待はずれに無効であった(ByersおよびBaldwin,1988;AbramsおよびOldham,1985)。
抗体に基づく処置の無効性についての主要な理由は、高分子が、固形腫瘍に容易に輸送されないことである(Sands,1988;Epenetosら、1986)。たとえ、これらの分子が腫瘍塊へとたどり着いたとしても、それらは、腫瘍細胞(Dvorakら、1991)、繊維性間質(fibrous stroma)(Baxterら、1991)、腸圧勾配(intestinal pressure gradient)(Jain、1990)および結合部位障壁(Juweidら、1992)の間の強固な接合の存在のために、均一に分散できない。
癌の制御において常に、高機能の個体は、臨床的癌診断の高い可能性に対処するか、または致死病期まで主に無症候性の癌の容赦のない進行と闘う。臨床的設定の多様性にもかかわらず、細胞レベルでは、初発性および現存の腫瘍は、全てそれらの宿主の生活の質に影響するために新しい血管成長または新脈管形成を必要とする。従って、首尾良い抗新脈管形成療法の開発は、新生の腫瘍を臨床的に関連することから防ぐ効果を有し得るか、または安定な転移性疾患を伴う延長された無症候性状態を可能にし得る。さらに、このような治療また、明白な腫瘍の病期を下げる効果を有し得る。
銅が新脈管形成における補因子であることは1970年代から公知である。多くの重要な新脈管形成媒介物質(例えば、FGF、アンジオゲニン、およびSPARC)は、それらの新脈管形成前の状態において銅と結合または相互作用する。固形腫瘍に関する抗新脈管形成処置の概念(Folkman,1972;1995c;1977)は、確かな根拠を有し、そして動物腫瘍モデルにおいて効力を示す(Volpertら、1996;Milauerら、1996;Warrenら、1995;Borgstomら、1996;1998;Yuanら、1996;O’Reillyら、1997;Benjaminら、1999およびMerajverら、1998)。抗新脈管形成カスケードにおける臨床的段階で干渉する化合物は、診療所に行きわたっている(Marshallら、1997)。原発性部位および転移部位での首尾良い腫瘍新脈管形成に必要とされる段階は、多様であり、そしてこれらは、VEGFおよびbFGFのような新脈管形成活性化因子(Iruela−ArispeおよびDvorak,1997;HanahanおよびFolkman,1996)とトロンボスポンジン−1(TSP−1)(Volpertら、1995;Salnikowら、1997;Guoら、1997;SchapiraおよびSchapira、1983;Qianら、1997))、アンジオスタチン(O’Reillyら、1994;Lannuttiら、1997;Simら、1997)ならびにエンドスタチン(O’Reillyら、1997)のようなインヒビターとの間の不均衡に依存する。異なる組織における異なる新脈管形成調節分子の相対的重要性は、原発性部位および転移部位の両方で、応答を誘発するための抗新脈管形成化合物の相対的効力を決定し得る。
銅が、新脈管形成に必要とされることは十分に実証されている(Parkeら、1988;Rajuら、1982;Zicheら、1982)。Bremら(1990a,b)およびより最近、Yoshidaら(1995)は、動物研究における腫瘍の処置において抗銅アプローチを用いることを試みた。彼らは、銅欠乏食餌を、ペニシラミン治療と組み合わせて用いた(CDPTと呼ばれる)。この研究は、ウサギ脳においてウサギVX2癌腫(Bremら、1990b)およびラット脳においてラット9L神経膠肉腫(Bremら、1990a、Yoshidaら、1995)の増殖を、このような処置の結果、比較的阻害することを示したが、有意な、全体的生存における改善は報告されなかった。Yoshidaらの動物は、全体的生存が評価される前に屠殺された。Bremらの研究では、死は、大脳下の水腫を併発することに起因し、これは、処置動物において、未処置の腫瘍がコントロール動物において生じるのと同じ割合で死を生じるのに十分なほど重篤であった。さらに、ウサギ脳モデルと対照的に、CPDTは、大腿筋および肺への転移においてVX2癌腫の腫瘍増殖および血管新生を阻害し得なかった。脳腫瘍インプラントモデルにおける生存の改善の欠如、および非脳腫瘍における効果の欠如は、この分野におけるさらなる研究を思いとどまらせたようである。
本発明者らは、ヒト腫瘍に一般に適用可能にするため、新脈管形成の複数の活性化因子に影響する抗新脈管形成ストラテジーを開発することが非常に望ましいと推論した。多くの抗新脈管形成の提案は、単一の標的に向けられている。銅は、新脈管形成の多くの重要な媒介物質(例えば、bFGF(Watanabeら、1990;EnglekaおよびMaciag,1994;Shing,1988;PastoneおよびMaher,1996)、VEGF、およびアンジオゲニン(Badetら、1989)の機能のために必要とされる補因子であるので、本発明者らは、全身の銅の状態の調節に基づく異常な新脈管形成によって特徴付けられる癌および他の疾患の処置のための抗新脈管形成ストラテジーを開発した。本研究の根底にある基礎は、銅欠乏症のウインドウ(ここで、新脈管形成が損なわれるが、他の銅依存細胞プロセスは、臨床的毒性を生じるのに十分なほどは影響されない)を同定することであった。本発明者らは、動物モデルを用いる他者の記録された失敗にもかかわらず、彼らの臨床的目的において成功を納めた。
インビトロで、銅のレベルを低下させる安全で効果的な予防薬または治療薬の開発は、当該分野で問題であるつづけている。癌治療に対する抗銅、抗新脈管形成アプローチの本発明者らの仮説は、新脈管形成に必要とされる銅のレベルが、本質的な銅依存細胞機能(例えば、ヘム合成、シトクロム機能、および銅の酵素および他の酵素への取り込み)を必要とされるレベルに対してより高いことである。本発明者らは、抗銅剤として、他の抗銅剤と比較される、テトラチオモリブデン酸(TM)の固有かつ好ましい特性は、TMを、抗銅、抗新脈管形成治療において、非毒性の有効な新しい攻撃手段にし得ると初めて推論した。
以下に詳細に記載されるように、過去20年間、本発明は、ウィルソン病(異常な銅沈着および毒性を生じる銅トランスポーターの常染色体性の劣性疾患)のための新しい抗銅治療を開発してきた。現在用いられる薬物の1つは、TMであり、これは以下の固有かつ望ましい特性を示す:速い作用、銅特異性、および低い毒性(Brewerら、1991a;1994b;1996)、ならびに作用の固有の機構。TMは、銅およびタンパク質を有する安定なものからなる複合体を形成する食品と共に与える場合、それは、食品の銅と食品のタンパク質との複合体を形成し、そして胃腸管からの銅の吸収を防ぐ。食物摂取に関する唾液および胃分泌における銅の内因性の分泌が存在し、そしてこの銅はまた、食事と共に取り込まれる場合、TMによって複合体を形成し、それによって銅の再吸収を防ぐ。従って、TMが食品と共に与えられる場合、患者は、迅速に負の銅平衡下に置かれる。TMが食事の間に与えられる場合、TMは血流の中に吸収される。ここで、TMは、遊離の銅または血清アルブミンと緩く結合した銅と複合体を形成する。このTM結合銅画分は、もはや細胞取り込みに利用可能ではなく、既知の生物学的活性を有さない。
発明者らの初期の研究は、TMが安全かつ有効な抗癌剤であることを実際に示す。TMは、Her2−neuトランスジェニックマウス(実施例2)において新規の乳癌の発症を損なうことにおいて効力を示し、そして銅レベルがベースラインの10%まで低下した場合、臨床的に明白な毒性を示さなかった。本開示はまた、転移性癌を有する患者においてテトラチオモリブデートの使用に基づく抗新脈管形成治療に対する抗銅アプローチの第1のヒト試験を詳述する(実施例3および4)。TMの第一相試験、用量に対して得られた情報、用量応答、患者における銅状態の評価、毒性および効力は、特に他者(Bremら、1990a;Yoshidaら、1995)により行われた期待はずれの動物研究を考えると、驚くほど有益である。
発明者の思想としての画期的な成功、その概念を発達させて臨床的な成功につなげた将来性のある研究成果が理解され得ないにしても、広範な処置の直接的および経済的な発展が、改善された「第二世代」の化合物、特に、安定性および貯蔵寿命を増大させる化合物によって、顕著に促進されるであろう。本発明は、このような化合物のある範囲を提供し、これは、大気および湿気に対して曝露されたときも顕著に改善された安定性を有するが、安定性を保持しかつインビボ投与の際に同じ治療応答を提供する。
(I.ウィルソン病)
(A.背景)
ウィルソン病は、銅代謝の常染色体性劣性障害である。この障害において、銅の胆汁への排出が欠損しているように見え、そして銅のセルロプラスミンへの肝臓への取り込みの減少が存在し、血漿およびほとんどの体組織中に銅の蓄積を導く。普通、ウィルソン病は、肝機能不全および/または神経性機能不全を導く。
ウィルソン病の治療法は、広範に2つのカテゴリーに分割され得る(BrewerおよびYuzbasiyan−Gurkan、1992a)。これらの方法は、急性病患者における初期の治療法であり、かつ維持治療である。初期治療は新たな提示患者が、なおも急性の銅の毒性で苦しむ時間の期間であり、一般的に治療の最初の数週間から数ヶ月である。本質的に、維持治療は、患者の残りの人生であるか、または銅レベルを準毒性閾値まで下げられた後の時間の期間であり、そして患者は単に、銅の蓄積および銅の毒性の再発を予防するために治療する。
ウィルソン病の治療の維持のために、現在、3つの薬物が入手可能である。3つの薬剤は、最も古い入手可能な薬物であるペニシラミン(Walshe、1956)、ペニシラミンに不耐性の患者のために開発されたトリエンまたはトリエンチンと呼ばれた薬物、(Walshe、1982)、および亜鉛酢酸(BrewerおよびYuzbasiyan−Gurkan、1992a、b;Brewerら、1983;Hillら、1987;Hillら、1986;Brewerら、1987b、c、d;Yuzbasiyan−Gurkanら、1989;Brewerら、1989;Leeら、1989;Brewerら、1990;Brewerら、1991b;BrewerおよびYuzbasiyan−Gurkan、1989;Brewerら、1992a、b;Yuzbasiyan−Gurkanら、1992;Brewerら、1993a、b、c、d;Brewerら、1993;Hoogenraadら、1978;Hoogenraadら、1979;Hoogenraadら、1987;)を含む。亜鉛は、かなり低いレベルの毒性とともに効果的な維持治療を提供する。
ウィルソン病を有する患者の約2/3が、脳に関係する症状とともに存在する(Brewerら、1992a;ScheinbergおよびSternlieb、1984;Dank、1989)。これらの患者は神経性の症状であるか、または、初めは精神医学的に自然であるが、後に神経性の症状を有する。これらの患者に対する治療は、維持段階の患者に対する治療ほど全く単純ではない。本発明者らは、ペニシラミンを処置されている患者のおよそ50%が、改善するよりも悪化することを見出した(Brewerら、1987a)。これらの患者の半分がさらに悪化するか、または初めのサンプルの約25%が決してペニシラミンのベースラインまで回復しない。言いかえると、ペニシラミンは付加的な不可逆的損害を誘導する。
おそらく、肝臓の銅の流動が、この薬物によりさらに脳の銅を上昇させるためであろうが、このさらに悪化する機構は、確実に公知ではない。発明者らは、このことは、ラットモデルにおいて発生し得ることを示した。この機構とは関係なく、神経学的に示される患者は、初めにペニシラミンを処置された後、かなりの頻度でもっと悪化して終わる。実際、前駆症状の患者でさえも、ペニシラミンで始められた後は、神経性疾患を発達させ得る(Glassら、1990;Brewerら、1994a)。この種の状況において、あまりトリエンチンが使用されていないという理由により、トリエンチンが、初期治療として使用される場合、神経学的に悪化させる事象を示すか否かは知られていない。ペニシラミンの作用機構と類似した作用機構であるという理由で、たとえトリエンチンが、ある程度まで、この問題を示したとしても、驚くことではないが、銅におけるその効果がいくらか穏やかにみえるので、それはかなり少なくなり得る。
亜鉛は、この型の患者に対する初めの処置としては理想的な薬剤ではない。亜鉛は、比較的ゆっくりとした作用の開始を有し、そして適度のネガティブな銅平衡のみを産生する。従って、数ヶ月の間、銅を準毒性閾値まで下げるために、亜鉛を必要とすれば、患者はさらなる銅毒性およびその疾患をさらに悪化させる危険におかれ得る。
(B.TM治療の結果)
本発明者らは、過去数年間、神経学的に発症したウィルソン病患者の初期の処置のためのTMの使用の開放標識(open label)研究を実施してきた。本発明者らは、投与される薬物の安定性を評価するため、および投与される薬物の効力を確認するために、薬物の活性について分光光度法およびバイオアッセイの両方を開発した(Brewerら、1991a;Brewerら、1994b)。この薬物は、空気に曝される場合にゆっくりと効力を失う。酸素分子は、硫黄分子を交換し、薬物を不活性にする。
研究された最初の患者における結果は、いくつかの点を例証するために使用され得る。最初の7日間、この患者は、食事とともにのみ(食事とともに1日3回(tid))TMを受けた。これは、作用の最初の機構(食事とともに与えられた場合、銅吸収の遮断)から予測される、即時型の負の銅バランスを生じた。最初の7日の後、TMを、同様に食事の間に与えた(食事とともに1日3回、および食間に1日3回)。これは、TMの血液への吸収から予測される、血漿中の銅の即時型の上昇、および銅、TMおよびアルブミンの複合体の形成を誘導した。TMおよびアルブミンと複合体化した銅は、細胞取り込みに利用可能でなく、従って、この銅は、非毒性である(Gooneratneら、1981b)。この複合体におけるモリブデンと銅との間には、1:1の化学両論的な関係が存在する。血液中のモリブデンレベル、およびセルロプラスミンレベルがわかれば(セルロプラスミンもまた、非毒性である銅を含む)、どれだけの血漿中の銅が互いに結合していないかが計算され得る。このいわゆる「遊離の銅(非セルロプラスミン血漿の銅)」は、潜在的に毒性の銅である。ゼロに減少する場合、血漿の銅−モリブデン「ギャップ」は閉鎖される。これは、最初の患者において16日を要した(食事間用量を加えた9日後)。脳(および他の器官)の遊離の銅が血液と平衡にあるので、血液の遊離銅を低レベルに下げることは、脳の遊離の(毒性の)銅のレベルを低下するプロセスを開始する。
本発明者らは、ここで、開放標識研究において、総計51人のウィルソン病患者(彼らの全ては神経学的疾患または精神医学的疾患を提示した)をTMを用いて処置した。これらの患者は、全て標準的な基準によって診断された。これらの患者は、診断上上昇した肝臓の銅または尿の銅、通常その両方を有していた。彼らの幾人かは、この試行の前に他の薬剤を用いて簡単に処置されていた。2人の患者は、精神医学的症状を有したが、神経学的症状を有していなかった。
研究の最も初期の部分で3人を除いて、全ての患者は、20mgの用量を、食事とともに1日3回か、または3回の食事および間食とともに1日4回(qid)で受けた。従って、120mgの総用量を受ける患者と140mgの総用量を受ける患者との唯一の差異は、前者が、食事とともに20mgを1日3回(すなわち60mg)受け、そして後者が、20mgを1日4回(すなわち80mg)を食事プラス間食とともに受けることである。毎日の総用量の残余は、3つの等用量に分割され、そして食事の間に与えた。
毎日の総用量は、患者間で、高いもので410mgから低いもので120mgまで、かなり変化した。結局は、本発明者らは、銅の変数との用量関連相関も、研究の間または1年および2年の時点でのいずれかで測定される機能的変数との用量関連相関も認知し得なかった。
亜鉛投与もまた、これらの患者において使用された。亜鉛投与の開始時は、広範に変化され、そして銅の変数、結果の変数または毒性と相関しなかった。早期の亜鉛治療は、理論的には肝臓機能を保持することを助けるはずである。これらの患者において,肝臓機能は1年までに正常に戻ったが、これらの試験は組織保存の程度を測定しないので、亜鉛は幾分有益であったようである。
血漿のトリクロロ酢酸(TCA)可溶性の銅を測定することは、ウィルソン病における銅代謝に対するTM治療の影響の評価において幾分有用である。一般に、これらの患者における高い割合の血漿銅は、TCA可溶性である(これは、患者で平均して56%−27μg/dlである)。非サイロプラスミン血漿銅の全ては、TCA可溶性であり、そして幾分変動性の割合のサイロプラスミンの銅もまた、TCA可溶性である。サイロプラスミンのレベルが、通常ウィルソン病においてやや低いので、血漿銅のほとんどは、TCA可溶性である。血液中のTM/アルブミン/銅複合体中の銅は、TCA不溶性である。従って、治療が進行するにつれ、TCA可溶性である血漿銅の画分は、より少なくなる。TM治療の後期段階の間、患者の血漿の銅のTCA可溶性画分は、平均して15μg/dlであり、開始値の27から有意に減少した。このTCA可溶性画分は、例えば、それをゼロに減少させることを試みるという、完全な目的として使用され得ない。なぜなら、小さくかつ幾分変動性の可溶性画分は、通常、血漿セルロプラスミンに起因して存在するからである。しかし、27μg/dlから15μg/dlへの有意な平均の減少は、TM治療が、これらの患者において潜在的に毒性の血漿銅の状態に対して有する有利な効果を例示する。銅の代謝に対するTM治療の望ましい影響のさらなる証拠は、ベースライン値と比較して、TM治療の後者の部分の間の、尿中の銅の平均値の減少によって示される。
TMは、銅の代謝に迅速かつ都合良く影響して、血液および理論的に身体の残部に潜在的に毒性の銅を減少する。この主要な臨床的目的は、臨床的悪化を可能にしないで銅の毒性を超える制御を得ることである。言い換えると、根本的な目的は、治療が開始される時に存在する全ての神経学的機能を保護することである。これは、定量的な神経学的試験およびスピーチ試験によって毎週評価された。スケール系を割り当てる方法論および神経学は、公表されている(Youngら、1986)。TM投与の週の間、すなわち、銅の代謝が制御されている間は、定量的な神経学的試験によって評価されるような神経学的機能は、保護される。2人の患者のみ(サンプルの4%)が、5単位(有意な悪化に対する基準)より多い変化を示した。
次の数年間の間、これらの患者は治療を維持しているが、銅によって以前に誘導された脳の損傷は、少なくとも部分的に回復している。これは、毎年の時点での追跡調査において観察される神経学的スコアにおける部分的回復によって示されている。最初のTM治療によって長期の回復が良好であり、ほとんどの患者は、実質的な神経学的回復を示している。これらの良好な結果は、ペニシラミン治療と比較されるべきである。以前に指摘されたように、患者の約50%は、最初にペニシラミンに対して悪化し、そして彼らの半分(当初のサンプルの25%)は、決してペニシラミン前のベースラインまで回復していない。
定量的なスピーチ試験に対するTM治療の最初の8週間の間の結果は、記載されるように実施される(Brewerら、1996)。TM投与の数週の間、すなわち、銅の代謝が制御されている間は、定量的なスピーチ試験によって測定されるような神経学的機能は、制御されている。スコアにおいて有意な(2.0単位より多い)減少を示す患者はいない。続く数年の間、患者は、治療を維持しているが、銅によって以前に誘導された脳の損傷は、部分的に回復している。これは、数年にわたる追跡調査のスピーチスコアにおける部分的な回復によって示されている。長期の回復は、良好である。治療の開始の時点よりも有意に(2.0単位より多い)少ない長期の機能を示す患者はおらず、そしてほとんどは、顕著な改善を示している。
TM治療からの2つの望ましくない効果が、これらの患者において観察された。1つは、可逆性の貧血/骨髄低下であり、これは7人の患者によって示された。これらの患者の全てにおいてヘモグロビンの低下が有意であり、これは平均で3.4g%であった。3人の患者は血小板数における減少を示し、そして4人の患者は有意であり得る白血球数における減少を示した。TMは、7人全ての場合おいて停止された。2人の患者を除いて、中止はTMの56日過程の遅くであった。
貧血の時点で、これらの患者の全ては、ゼロの非セルロプラスミン血漿銅および極めて低いTCA可溶性銅を有していた。後者は、これらの患者において平均2.7であり、そして患者の群全体におけるこの変数についての平均値は、始めに27であり、そして治療の絶頂で15であった。貧血/骨髄低下の原因は、銅の骨髄枯渇であると結論付けられた。銅は、ヘム合成および細胞増殖のほかの工程に必要とされるので、貧血および骨髄効果が、銅枯渇の最初の徴候であると予測され得る。銅枯渇からのこの結果は、周知の現象である。
従って、TMに対するこの望ましくない応答は、副作用ではないが、むしろ、過剰処置に起因する。ウィルソン病(身体が銅で過負荷される疾患)におけるこのような短い期間内に局在化された骨髄の銅枯渇さえ生じることが可能であることは、おそらく驚くべきことである。TMに対するこの応答は、独特である。他の抗銅薬物のいずれもが、早期治療においてこの効果を生じ得ない。従って、これは、TMの効力および銅レベルを制御し得る迅速性を示す。また、骨髄は、特に血漿銅に依存し、そしてこれは、非常に低レベルまで減少する最初のプールであるようである。180mg/日以上の用量で、過剰処置は、37人の患者のうち6人で生じた。150以下の用量で、13人の患者のうち1人のみが過剰処置を示し、そしてこれは非常に遅かった(56日のプログラムにおいて53日)。
これらの患者におけるTM治療の第2の望ましくない効果は、これらの患者のうちの4人におけるトランスアミナーゼ値の上昇である。血清ASTおよびALT値は、上昇した。これらの上昇のために、TM治療は1人の患者において中断された。これらの上昇の間、他の患者における一般的な傾向(銅が減少する)とは逆に、尿銅は増加する。これらのデータは、損傷した肝細胞からの銅の放出とともに、肝炎が生じるという概念を支持する。肝炎が生じる理由は明らかではない。しかし、処置されていないウィルソン病患者は、彼らの履歴の一部として、偶発性肝炎を有している。診断後に処置されていない患者の観察の途中ではほとんど存在しないので、どのくらいの頻度でトランスアミナーゼ上昇の発症がこの疾患の天然の履歴の一部として生じるかについての良好な情報は、存在しない。
あるいは、いくつかの場合において、TMは、それが処理され得るよりも速い速度で肝の銅を移動し得る。この場合において、これらの患者は、処置の副作用を示すとして分類される。これは、銅に毒されたヒツジにおいて観察されることに対し、ここでは、急性肝炎、肝臓壊死および溶血性貧血は、高用量のTMで迅速に矯正される。これらの患者の4人全ては、150mgTM/日以上で処置された。150mg以下で処置された患者のいずれもが、この応答を示さなかった。TMの他の負の効果は、観察されなかった。
(II.チオモリブデート化合物)
(A.テトラチオモリブデート)
テトラチオモリブデート(TM)は、4つのスルフィド基に囲まれたモリブデン原子から構成された化合物である。TMの生物学的効果の発見は、ウシおよびヒツジに対する観察から始まり、ここで、これらは、高いモリブデン(Mo)含量を伴って放牧および牧畜された場合に、銅の欠乏症を発症した(Fergusonら、1943;DickおよびBull,1945;MillerおよびEngel,1960)。補充Moの投与は、反芻動物において銅代謝を障害することが確認されているが(Macilese Ammermanら、1969);しかし、Moは、ラットのような非反芻動物に対してほとんど効果を有さない(Millsら、1958;Coxら、1960)。この謎に対する答えは、Moが、瘤胃における高い硫化物代謝の結果として、瘤胃においてチオモリブデートに変換されること、およびチオモリブデートが、活性な抗銅薬剤であることを示唆する観察から得られた(Dickら、1975)。この理論は、チオモリブデート化合物がラットに与えられ、そして抗銅効果を生じた際に、確証された(Millsら、1981a,b;Bremnerら、1982)。テトラチオ置換化合物である、TMは、これらのうちで最も強力である。
TMの作用の抗銅機構は、二重である(Millsら、1981a,b;Bremnerら、1982;Gooneratneら、1981b)。1つの機構は、GI管において作用し、第2の機構は、血中で作用する。GI管において、TMは、銅と食品タンパク質(または他のタンパク質)との錯体を形成し、これらは、吸収されない。この吸収阻害は、食品中の銅のみならず、むしろ唾液、胃液および他のGI管分泌物中に内因的に分泌されたかなりの量の銅にも関連する(AllenおよびSolomons,1984)。TMは、亜鉛よりもより効果的な銅吸収のブロッカーである。なぜなら、亜鉛は、メタロチオネインが誘導され得る、小腸の領域においてのみ作用するからである(Yuzbasiyan−Gurkanら、1992)。対照的に、TMは、上方および下方の全てのGI管で作用する。この設定下での亜鉛を超えるTMの他の利点は、TMが直ちに作用することである。TMは、メタロチオネインの誘導に必要なラグ期間を有さない。
TMの第2の効果は、血液に対するものである。食事から離れた時点で与えられたTMは、血中に比較的良好に吸収される。ここでは、TMは、銅とアルブミンとの錯体を形成し、この錯体化された銅を、細胞の取り込みに利用不可能にさせる(Gooneratneら、1981b)。正常な血漿中の銅は、2つの主要なプール中に存在する。正常なヒトにおける血漿中の銅の大半は、セルロプラスミン分子の部分である。この銅は、細胞との容易な交換に本質的に利用可能でなく、非毒性と考えられる。銅のもう一方のプールは、アルブミンおよび低分子(例えば、アミノ酸)により緩く結合される。この銅のプールは、ウィルソン病のような疾患における、急性の銅毒性の間に大きく拡大し、そして細胞の取り込みに容易に利用可能であり、従って、潜在的に毒性である(ScheinbergおよびSternlieb、1984)。TMが血中に進入した場合、TMは、この後者の銅と錯体化し、そして銅を、セルロプラスミン銅のように、細胞の取り込みおよびさらなる毒性に利用不可能なものにする。
TM錯体化銅が、細胞の取り込みに利用不可能である、非常によい証拠が存在する。もっとも直接的な証拠は、ヒツジにおいて、通常、溶血性貧血を生じるのに十分に高い血漿中の銅のレベルが、TMの存在下ではそうではないことである(Gooneratneら、1981b)。TMが結合した銅は、赤血球を浸透しないことが示された。これは、TM錯体化銅が、細胞を浸透しない直接的な証拠である。
TMおよびTMの塩は、入手可能である;TMの好ましい塩の1つは、アンモニウム塩である。Aldrich Chemical Company(カタログ番号 W180−0;Milwaukee,WI)から購入されるTMは、中程度に水溶性であり、明赤色溶液を生じる、黒色粉末である。Aldrich Chemical Companyから購入されるTM(1キログラムのバルクのロットで入手可能)は、ヒト使用のために純粋であるとが保証される。このバルク薬物は、酸素非存在下で保存されるべきであり、さもなければ、酸素は、徐々に硫黄と交換されて、時間が経過するにつれ、この薬物を無効なものにする。従って、このバルク薬物は、アルゴン下で保存される。本発明者らによって開発された安定性アッセイは、この薬物が、アルゴン下で数年間安定であることを示す(Brewerら、1991a)。カプセルを、自ら充填し得、そしてこの薬物は、室温で数ヶ月間、このカプセル中で安定である。
TMは、銅とタンパク質との三部分錯体を形成することによって作用する(Millsら、1981a、b;Bremnerら、1982)。TMは、2つの作用機構を有する。食事と共に与えられた場合、TMは、食品中の銅および内因的に分泌された銅を、それ自体および食品タンパク質と錯体化し、そして銅の吸収を妨げる。患者は、食事と共にTMを投与することによって、即座に、TMに対する銅の負の平衡下に置かれ得る。食事間に与えられる場合、TMは、血流中に吸収され、そして血清中の銅を、それ自体およびアルブミンと錯体化し、迅速にその銅を細胞の取り込みに利用不可能にする。器官中の遊離の銅は、血液の遊離の銅と平衡下にあり、器官中および腫瘍組織の遊離の銅が、血中の銅が結合される場合に、非常に低いレベルに即座に減少される。この錯体は、腎臓および肝臓を通って排除される。TMは、最も強力かつ最も迅速に作用する、公知の抗銅薬剤である。
(B.TMの効力)
テトラチオモリブデート(TM)は、本発明者らが、ウィルソン病のオーファン治療剤として開発した薬物である。この薬物は、銅毒性に対する即時性制御を与え、そしてウィルソン病に通常使用される薬物であるペニシラミンでの初期処置の間の時間の、50%が生じる神経学的な悪化を予防する、優れた役割を果たす(Brewerら、1991a;Brewerら、1994B;Brewerら、1996)。これまで、本発明者らは、通常8週間の期間で、55人のウィルソン病患者をTMで処置してきた。従って、TMは、ウィルソン病の初期処置における非常に重要なニッチを満たす。ウィルソン病研究は、ヒトにおける、TMを用いる広範な経験を提供し、そしてヒトにおける、TMの極度に低い毒性レベルを実証するのに役立ってきた。
ヒトウィルソン病研究において、時折観察された1つの副作用は、TMの抗銅効果に起因する、可逆性貧血である。非常に高用量で与えられた場合、TMは、骨髄に対して、深刻なまたは全体的な銅欠乏をもたらす。銅は、赤血球形成に必要であるので、貧血を発症する。この貧血は、TMを単に中止することによって迅速に回復する。ウィルソン病研究において、TMの過剰な処置効果は、1日あたり20mgを6回に、用量を単に減少することによって解消された。ウィルソン病に罹患しないヒト(例えば、癌患者)において、前貧血状態の軽度の銅欠乏のレベルは、TM治療の間セルロプラスミン(Cp)を注意深くモニターすることによって簡単に確認され得る。
TMは、チオモリブデート、モリブデートおよび酸化モリブデンに最終的に代謝され、そのために、これらの化合物の潜在的な毒性が、考慮されなければならない。しかし、これらのモリブデン化合物は、本明細書中で記載される臨床状況で使用されるTMの分解から生じるレベルで、極めて無毒性であることが理解される。TMの約37重量%が、Moであり、そのために、本明細書中で記載される研究は、50mg Mo/日までが、2週間投与され、その後、わずか約25mg/日が、維持のために投与される。350〜1400mg/日の高用量のMoが、以前にウィルソン病を罹患する患者において、4〜11ヶ月間、毒性を伴わずに使用された(Bickelら、1957)。従って、25〜50mg/日の用量範囲が、予期される問題を示さず、そして全体的に安全であるはずである。
TMの潜在的毒性についてのかなりの研究が、ラットにおいて行われている(Millsら、1981a;Bremnerら、1982)。1kgの食餌あたり約6mgのTMで、ラットは、血漿セルロプラスミンの減少ならびに肝臓および腎臓の銅における減少を含む、銅に対する実質的な効果を示す。約12mgのTMでは、これらの変化の全てが増加し、そしてさらに、肝臓Moが増加した。軽度の貧血が示され、骨格の病変が、6匹の動物中1匹において示された。18mgのTMでは、貧血が重度であった。毛のメラニン産生は障害され、下痢が示され、成長速度が、顕著に減少し、そして全ての動物は、長骨の骨端軟骨における形成異常、海綿質の吸収、および靱帯における構造変化によって特徴付けられる骨格病変を有した。
1キログラムの食餌あたり36mgまでの、TMの全ての毒性効果は、銅の経口補給によって、または銅の腹腔内注射を用いて予防され得ることが、後に示された(Millsら、1981b)。従って、TMによって誘導される全ての毒性病変は、TMによって誘導される銅欠乏に起因することが明らかである。このことの支持において、上記病変のほぼ全ては、骨格病変および下痢を導く腸細胞ミトコンドリア損傷の2つの例外を除き、食餌性の銅欠乏によって誘導される。これら例外の2つの病変が、TM投与で見出されるが、食餌性の銅欠乏において見出され得ない理由は、TMによって誘導される銅欠乏の重篤性および迅速性に関連し得る。食餌性銅欠乏の場合、通常いくらかの混在する利用可能な銅が存在し、そして腸細胞および骨端細胞のような分裂細胞は、これらの病変を予防するのに十分な銅を獲得し得る。銅補給による、これら2つの病変の予防および他の全てのTM誘導性病変の予防は、これらの病変が、おそらく銅欠乏に起因することを示す。
別のグループは、1キログラムの食餌あたり約18mgのTMを受けるラットにおける、腸の病理学を試験した(Fellら、1979)。これらのラットはまた、1キログラムの食餌あたり約3mgの銅を受けた。これらの科学者は、低銅症(hypocuprosis)に起因しない、細胞アポトーシス、水腫、および壊死に関する腸の病理学を見出したが、これは証明されていない。このような問題の全てが、適切な銅補給によって予防されたという知見の観点から、おそらく、より高い銅補給が予防に必要とされるであろう(Millsら、1981b)。
ウィルソン病患者は、過剰な銅の大きい貯蔵を有し、銅欠乏に起因するTMの毒性は、これらの患者に全く危険ではない。骨格病変および腸細胞病変の場合でさえ、銅投与が保護されるので、過剰の銅の貯蔵を有するウィルソン病患者はまた、保護される。他の研究者らは、ヒツジに負荷された銅に対するTMの効果を研究した(Goonertneら、1981a)。ヒツジは、銅の毒性に極めて感受性であり、通常、肝不全および溶血性貧血を発症することが周知である。これらの研究は、ヒツジを、肝臓の損傷の開始時に銅を食餌的に負荷することを含み、次いでTMが、11週間までの間、毎週2回、50mgまたは100mgの用量で静脈内的に与えた。
26頭のヒツジのうち5頭が、研究中に死亡した。全ての死は、検死結果に基づいて、銅中毒症に起因した。5頭の死のうち3頭の死は、銅を受けたがTMを受けなかったコントロールにおいて生じた。1頭の死は、動物が1用量のTMのみを受けた後に生じ、そして別のものは、4用量のみをうけた動物で生じた。これら2頭の動物は、TMがこれらをレスキューする能力に先立って、銅の毒性のために死亡した。動物が、銅中毒症の最初の発生を生存する場合、これらは、銅の投与が継続されるいくつかの場合においてでさえ、TMによってさらなる銅の毒性から保護された。これらの動物は、臨床的問題なく、22回までのTM注射に耐性であった。
重篤な肝臓の銅毒性に対するヒツジの保護におけるIV(Humphriesら、1986)または皮下(Humphriesら、1988)のいずれかでのTMの有益な効果の支持もまた、示されている。TMは、肝臓の銅の量だけでなく、急性の肝臓の損傷も減少した。TMをまた、予防的に使用して、商業用のヒツジの群における銅の毒性を予防した。400を超える動物が、有害な副作用を伴うことなくTMで処置された(Humphriesら、1988)。
予備的研究もまた、TMが、LECラットモデルにおける銅毒性に対して劇的に効果的であり得ることを示した(Suzukiら、1993)。これらのラットにおける遺伝的欠損が、最近、ウィルソン病遺伝子における欠損に依存して示された(Wuら、1994)。これらのラットは、重篤な肝臓疾患を発症し、そして通常死亡する。TMは、これらの動物の肝臓疾患の後期における、これらの動物の処置において非常に効果的であった。
ヒツジにおけるMo代謝は、99Mo標識化TMのIV注射後に研究された(Masonら、1983)。15分間にわたる迅速な血漿消失、およびその後の約40時間のT1/2でゆっくりした消失が存在した。TMは、モリブデートを段階的に変換し、糞便中の5%に対して、90%を超えるTMが、尿中に排泄された。同じ群を、ヒツジにおける二重標識したTMのIV注射後の、99Moおよび35Sの代謝について、引き続いて公開された(Hynesら、1984)。99Moおよび35Sのほとんどは、アルブミンと初期に結合した。置換TMまたは非結合TMは、迅速にモリブデートとスルフェートに加水分解された。TCA不溶性銅画分の消失にもかかわらず、35Sまたは99Moのいずれかの、銅および血漿との不可逆性相互作用の証拠はなかった。
高レベルの銅の存在下で、TM投与は、肝臓および腎臓の両方においてTMと錯体化した銅の蓄積を生じることは、明らかである(Jonesら、1984;BremnerおよびYoung、1978)。しかし、この錯体と関連する蓄積症は、示されなかった。現在の理論は、この錯体が解離すること、およびTMがオキシモリブデートへ代謝され、そして排出されることを支持する(Masonら、1983)。次いで、銅は、肝臓の他の経路に進入する。高レベルのメタロチオネインの存在下で、これは、メタロチオネインによってほぼ取り込まれるようである。腎臓においては、この銅が単に排泄されることが明らかである。
2つの場合の可逆性の骨髄抑制が、治療の持続のためにTMを受けている患者において報告されている(HarperおよびWalshe,1986)。本発明者らは、7人の患者において可逆性貧血を見出した。これらの患者は、治療に対する強い応答を有し、そして局所的な、骨髄の銅欠乏に陥ったようであった。銅は、ヘム合成に必要とされ、これは、少なくとも骨髄が関連する限りは、過剰処置の徴候であるようである。TMは、このような効果的な抗銅薬剤であるが、HarperおよびWalshe(HarperおよびWalshe、1986)の場合のようなTMでの持続的治療の間、過剰処置が生じることは予期されなかった。
TMの約37%がMoである。Moの正常な摂取量は、約350μg/日(Seelig、1972)、すなわち、約1.0mgのTMにおけるMoの等価量である。モリブデンは、ヒトによって非常によく耐性が示されるようである。1957年の研究において、比較的高用量の5〜20mg/kg/日のMo(1〜4gのTMにおけるMoに等価的)が、4〜11ヶ月間ウィルソン病に罹患する患者において、既知の毒性を伴わずに使用された(Bickleら、1957)。しかし、それは、先に指摘されたように、TMが活性な代謝物であり、おして反芻動物においてのみMoから効率的に形成されるために、効果的ではなかった。
(C.他のチオモリブデート化合物)
遊離の銅の還元において類似の作用様式を有する他のチオモリブデート化合物としては、ドデカチオジモリブデート、トリチオモリブデート、ジチオモリブデートおよびモノチオモリブデートが挙げられる。これらの化合物は、テトラチオモリブデートのように、銅とタンパク質との三部分の錯体を形成し、これは、銅を利用不可能なものにし、そして最終的には銅錯体のクリアランスを導く。
多くのチオモリブデート錯体、オキソ/チオモリブデート錯体、ならびに鉄、モリブデンおよび硫黄を含み、酸素を含むかまたは含まない、ヘテロ金属錯体の合成および特徴付けは、記載されている(Coucovanis,1998;Coucouvanisら、1989;Coucovanisら、1988;HadjikyriacouおよびCoucovanis、1987;Coucovanisら、1984;Teoら、1983;Coucovanisら、1983;KantzidisおよびCoucovanis、1983;Coucovanisら、1981;Coucovanisら、1981;Coucovanisら、198a、b)。これらの錯体は、銅に結合することが示され、従って、本発明の特定の実施態様における使用が意図される。
好ましいチオモリブデートの化合物または錯体は、1、2または3個のモリブデン原子、1個のモリブデン原子および1個の鉄原子、2個のモリブデン原子および1個の鉄原子、ならびに1個のモリブデン原子および2個の鉄原子を含む、チオモリブデートの化合物または錯体である。チオモリブデート化合物のこれらの3つの一般的なクラスの構造、およびこの好ましいチオモリブデート化合物のうちの2つは、WO00/13712に記載されている。
使用について企図されるチオモリブデート錯体の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない;ノナチオモリブデート([MoS2−)、ヘキサチオジモリブデート([Mo2−)、ヘプタチオジモリブデート([Mo2−)、オクタチオジモリブデート([Mo2−)、ノナチオジモリブデート([Mo2−)、デカチオジモリブデート([Mo122−)、ウンデカチオジモリブデート([Mo112−)、ドデカチオジモリブデート([Mo122−)、ドデカチオモリブデートのアンモニウム塩((NH[Mo]);Mullerら、1980;MullerおよびKrickemeyer、1990)、トリデカチオトリモリブデートのアンモニウム塩((NH[Mo(S)(S]);MullerおよびKrickemeyer、1990)、ならびに[FeClMoSFeCl2−、[SMoSFeSMoS3−、および[SMoSFeCl2−のコア構造を有するこれらのチオモリブデート。
さらに、本発明者らは、グルコン酸鉄が、ハロゲン化物イオンを含まない鉄の供給源であることを発見した。水酸化アンモニウムの存在下でのテトラチオモリブデートを用いるその反応は、別の好ましいチオモリブデート化合物である、オクタチオジモリブデート鉄の新規なアンモニウム塩((NH[SMoSFeSMoS])を生成した。これは、非常に水溶性である。これらの化合物のいくつかは、テトラチオモリブデートより体内で銅のレベルを減少するのに強力ではないかもしれないが、これらは、いうまでもなく、本発明の特定の処置における有用性が見出される。
(D.チオモリブデート−炭水化物複合体)
本発明者らはこれまでに、チオモリブデート化合物と糖質(例えば、スクロース)との間で錯体を形成することによって、安定化された形態のチオモリブデート化合物が生成されることを発見した。これらのチオモリブデート−炭水化物複合体において、糖質分子の層は、水素結合によって安定化された配列下のチオモリブデート化合物の周辺に集合する。これらの層は、酸化および加水分解に対してチオモリブデートコアを保護するように作用する。このチオモリブデート化合物に水素結合し得る、他の分子(例えば、アミノ酸)もまた、使用について企図される。
このような安定化したチオモリブデート化合物の例は、スクロースで安定化されたテトラチオモリブデートである。スクロース−アンモニウムテトラチオモリブデート複合体を調製するために、25gのスクロースを、20mlの蒸留水に溶解する。1gのテトラチオモリブデートアンモニウム(TM)を添加し、そしてこの混合物をTMが溶液になるまでアルゴン下で攪拌する。次いで、減圧下でのフラッシュエバポレーションによりこの混合物から水を除去する。
用語「糖質(炭水化物)」は、一般式(CHO)を有する、広範な種々の化合物を含み、そしてモノサッカリド、ジサッカリド、トリサッカリド、オリゴサッカリド、ポリサッカリドならびにそれらのアミノ化形態、硫酸化形態、アセチル化形態および他の誘導体化形態のような化合物を含む。オリゴサッカリドは、糖単位(これは、モノサッカリドとしても公知)から構成される鎖である。糖単位は、任意の順番で配置され得、そして任意の多くの異なる様式でそれらの糖単位が連結され得る。従って、異なる立体異性体のオリゴサッカリドのあり得る鎖はきわめて数多くある。
当該分野で公知であるように、モノサッカリドは、1つの糖単位を含む糖分子である。本明細書中で使用される場合、用語「糖単位」はモノサッカリドを意味する。やはり当該分野で公知であるように、ジサッカリドは、2つの糖単位を含む糖分子であり、トリサッカリドは、3つの糖単位を含む糖分子であり、オリゴサッカリドは、一般に、約2〜約10の間の糖単位を含む糖分子であり、そしてポリサッカリドは、10を超える糖単位を含む糖分子である。ジサッカリド、トリサッカリド、およびオリゴサッカリドにおける糖単位は、全てグリコシド結合により結合される。本発明において使用されるように、用語「オリゴサッカリド」は、少なくとも2つの糖単位を含む糖分子を意味する。
「モノサッカリド」としては、D−アイソマーまたはL−アイソマーのトリオース、アルドペントース、アルドヘキソース、アルドテトロース、ケトペントースおよびケトヘキソースのいずれかが挙げられるが、これらに限定されないことが理解される。言及した化合物はまた、ラクトンの形態であり得る。アルドペントースの例としては、リボース、アラビノース、キシロース、およびリオースが挙げられるが、これらに限定されない;アルドヘキソースの例としては、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フコースおよびラムノースが挙げられるが、これらに限定されない。ケトペントースの例としては、リブロースおよびキシルロースが挙げられるが、これらに限定されず、テトロースの例としては、エリスロースおよびトレオースが挙げられるが、これらに限定されず、そしてケトヘキソースの例としては、プシコース、フルクトース、ソルボースまたはタガトースが挙げられるが、これらに限定されない。
ジサッカリドの例は、トレハロース、マルトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、サッカロース、ラクトース、キトビオース、N,N−ジアセチルキトビオース、パラチノースまたはスクロースである。トリサッカリドの例は、ラフィノース、パノース、メレジトースまたはマルトトリオースである。オリゴサッカリドの例は、マルトテトラオース、マルトヘキソースまたはキトヘプタオースである。用語「糖質(炭水化物)」は、本明細書中で使用される場合、糖アルコール(例えば、マンニトール、ラクチトール、キシリトール、グリセロールまたはソルビトールのようなアルジトール)を含むこともまた意図される。ポリサッカリドの例としては、ポリデキストロースおよびマルトデキストリンが挙げられるが、これらに限定されない。
この安定化は、本明細書中で規定されるように、任意の糖質を使用して、チオモリブデート金属塩中心につき、約5の糖単位〜約100または200の糖単位の間の割合周辺で効果的であると意図される。この範囲は、この範囲の全ての値、すなわち、チオモリブデート金属塩中心につき、約10の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約20の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約25の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約30の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約40の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約50の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約60の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約70の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約75の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約80の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約90の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約110の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約125の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約150の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約175の糖単位またはチオモリブデート金属塩中心につき、約190の糖単位の割合を含むと理解される。
(III.安定化したチオモリブデート化合物)
チオモリブデート錯体は、空気に曝露されたときに酸化を受けやすい。これは、臨床におけるこのような化合物の容易な処方および使用に対する特定の実際的な障害を与える。したがって、銅錯体化を使用して血管新生疾患の臨床的処置における技術水準を発展させるために、発明者らは、安定性が増大した改善されたある範囲のチオモリブデート化合物を開発した。この得られた化合物は、薬学的に受容可能なビヒクルへとより容易に処方され、そして、そのように製造されたときに、半減期が改善される。
新規分子を設計および選択するときに、溶解性または効力を代償に安定性を取得しないことが重要であった。当業者は、所定のクラスの化合物の物理的特性と、化学的特性と、生物学的特性との間の相互関係は予測し得ず、その結果、リード化合物が作製され、試験されるまで、新たな決定なしに、その所望の特性の存在が予測し得ないことを理解する。したがって、本発明は、対照の研究において溶解性、抗銅特性または治療学的活性のいずれの損失もなく、安定性の上で実証された改善点との文脈において、一連の新規の化合物を提供する。したがって、本発明によって提供された、これらの化合物、薬学的処方物、およびキットは、それらの治療用途における損失部分を伴うことなく、調製および取り扱いにおける容易性、および貯蔵寿命の増大という利点を有する。
これらの新規の化合物は、アルキルアンモニウムチオモリブデート化合物に基づき、この化合物の好ましい例は、テトラポリアンモニウムテトラチオモリブデート(TP−TM)である。この用語は、本願全体に亘って簡潔に使用され、そして、当業者は、より正確な名称が、「ジテトラプロピルアンモニウムテトラチオモリブデート」、すなわち、[N(C]+MoS42−[N(C]であることを理解する。テトラチオタングステートの類似の誘導体がまた、本発明において使用され得、ここで、タングステンがモリブデンの代わりに使用される。
この新規の塩および関連するアルキルアンモニウムチオモリブデート化合物は、その分子のチオモリブデートエステルを安定化させ、他方、安定性、低毒性および抗銅特性を保持する。本発明の初期の研究において使用されたテトラチオモリブデート(AmmTMまたはTM)のアンモニウム塩は、空気に曝露されていると酸素がその硫黄を置換して、その重要な抗銅特性に関してその化合物を不活性にする。このプロセスは、空気中の任意の水分によってさらに触媒される。
その新規ファミリーの分子において、それらのアルキル基が、チオモリブデートコアを取り巻き、そのコアを大気および水分から保護する。初期の試験において、加熱された湿潤空気(これは、周囲条件と比べて10倍までAmmTMno活性の損失を増大させる)における安定性は、少なくとも7日間に亘って確実であった。その後、2週間に亘る安定性は、その後実証された。室温における開放型のペトリ皿でのTP−TMの貯蔵寿命は、AmmTMが約40日間のみであったのに対して、例えば、約180日であった。しかし、それらの化合物は、TP−TMによって例示されるように、薬学的目的のための十分な安定性を保持し、少なくとも1mg/mlの水に対して安定であり、これは、十分量よりも多い。インビトロアッセイにおいて、新規の化合物(例えば、TP−TM)は、生物学的に抗銅活性であると期待される、親AmmTm化合物の標準的な銅−アルブミン−TMの三成分結合を示す。溶解性および銅結合特性を維持しつつも安定であるという差異によって、TP−TMは、一般的に、AmmTMよりも非常に改善された薬物となる。
しかし、本発明は、このようなインビトロデータにのみ頼みにするのではなく、インビボで、この新規の化合物の有効性、およびそれらが毒性がないことを実証した。技術分野で容認されるインビボモデルにおける研究において、新規の化合物を代表するTP−TMの効果は、腫瘍増殖を阻害することにおいてAmmTMの効果と変わりがない。
発明者らはまた、この新規のクラスの化合物、特にTP−TMの安全性を示すインビボデータを提供する。テトラメチルアンモニウムおよび、それより低い程度で、テトラエチルアンモニウム(これは、関連化合物から放出される)は、ある程度のCNS神経節遮断活性を有し得るが、これは、特に、以下のTP−TMの研究において確立された安全域を考慮すると、担当医師によって管理され得る。
TP−TMからのこのテトラポリアンモニウム部分の放出は、塩化テトラポリアンモニウムの単一の投与によるインビボの研究において提示された。ヒトにおける抗腫瘍効果に必要とされるよりも466倍高い用量で、全ての動物は、58用量のあとでも生存してかつ健康であった。したがって、これらのデータは、TP−TMから放出される塩が、ヒトにおけるこの化合物を用いた銅低減療法について可能な限り必要とされる用量の数倍の用量で非毒性であることを示した。
したがって、新規化合物は、安定、可溶性、治療的に有効および実質的に非毒性であり、既存のAmmTMおよび関連する、第1世代の化合物に比べ驚くべき改善を提示する。
(IV.銅レベルのモニタリング)
血清セルロプラスミン(これは、肝臓の銅状態に直接依存する)は銅状態の正確な指標である。以前の齧歯類での研究において使用したTMの用量は、平均重量のラットにおいて平均約0.5mg/日であった。マウスおよびラットでの本発明者らの研究、ならびに本発明者らのウィルソン病を有するヒトおよび癌を有するヒトでの広範な実験は、血清セルロプラスミンを、齧歯類における低銅状態の最適な基準である正常の約10%まで減少させるために、その4回の用量がラットで必要とされることを示す。Cu状態の最適なモニタリングおよびTM投薬のこれらの構想は、引き続いて、実施例2に記載のTMの動物研究において援用された。
本明細書中の研究、およびTMでの本発明者らの実験に基づくと、セルロプラスミン(Cp)のレベルが処置前基準値の約40%〜約10%の間まで減少させることは、少なくともあるレベルの有益な臨床的抗脈管形成効果を生じる。しかし、Cpが処置前基準値の約20%のレベルまで低下することは、大部分の臨床的な指標において好ましい。TP−TMに関する本明細書において提供されたデータは、TP−TMは、インビボでの腫瘍増殖を阻害することにおいて少なくともTMと同じくらいに効力があることを示す(図5)。したがって、TMについて利用可能なデータの体積は、TP−TMおよび関連する化合物の臨床利用に容易に利用可能である。
(III.組み合わせ治療)
本発明の方法は、患者が示す特定の疾患または障害の処置に一般に利用される任意の他の処置と組み合わせられ得る。例えば、固形腫瘍の処置とともに、本発明の方法は、古典的なアプローチ(例えば、手術、放射線療法など)と組み合わせて使用され得る。特定の治療アプローチが、それ自体有害であることが知られていないか、またはTM治療の有効性を妨げない限り、本発明との組合わせが企図される。1つ以上の薬剤が、TM治療と組み合わせて使用される場合、組み合わせ効果は、各処置が別々に行われる場合に観察される効果に対して相加的である必要はないが、これは、明らかに望ましく、そして組み合わせ処置が相乗効果を示す必要は特にないが、これは間違いなく可能であり、かつ有利である。
手術に関して、銅欠乏症の間に伴う手術は、創傷治癒に血管増殖が必要であるために好ましくない。しかし、TM治療を中断して約24時間以内に銅が供給十分であるときは、銅充満後にいかなる手術的介入を行うことも可能である。次いで、TM治療は、創傷治癒が確立された後(代表的には、手術の約1〜2週間後)にもとに戻され得る。放射線療法とともに、腫瘍細胞内に局所的にDNA損傷を誘導するための任意の機構は企図される(例えば、ガンマ線照射、X線、UV照射、マイクロ波ならびにさらに電子発光など)。腫瘍細胞に対する放射性同位体の方向付けられた送達もまた企図され、そしてこれは、標的化抗体または他の標的化手段とともに使用され得る。
サイトカイン治療もまた、組み合わせ治療レジメンの有効なパートナーであることが分かった。種々のサイトカインが、このような組み合わせアプローチにおいて利用され得る。サイトカインの例としては、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNFα、TNFβ、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β、IFN−γが挙げられる。サイトカインは、患者の状態およびサイトカインの相対的毒性のような臨床的指標と一致して、標準的レジメンに従って投与される。
(銅キレート剤)
(1.亜鉛)
本発明者らは、長期間に及ぶ中程度の銅欠乏状態を維持するためにがん患者において、低銅状態を達成したあとに亜鉛を使用することを企図する。本発明者らは、長期間にわたり中程度の銅欠乏状態を維持するために、癌患者において低銅状態の達成後の亜鉛の使用を企図する。上記で議論されるように、本発明者らは、ウィルソン病の抗銅薬剤としての亜鉛を明らかにし、そしてこの目的に関して、米国食品医薬品局(FDA)により1997年1月に認可された。亜鉛は、腸粘膜細胞においてメタロチオネインを誘導することによって作用し、これによって銅吸収を遮断する(BrewerおよびYuzbasiyan−Gurkan,1992a)。亜鉛はまた、きわめて安全である。200症例のウィルソン病患者に達する現在の研究において、毎日150mgの用量での亜鉛は、全く毒性を生じなかった(BrewerおよびYuzbasiyan−Gurkan,1992a)。
亜鉛化合物(例えば、酢酸亜鉛)は、初期処置を含むウィルソン病の総合処置のために使用されている(Hoogenraadら、1978;Hoogenraadら、1979;Hoogenraadら、1987)。しかし、亜鉛は、かなり作用が遅いので初期治療(単独で)としては理想的ではない。従って、腸メタロチオネイン誘導およびネガティブ銅平衡を達成するために約2週間を要する(Yuzbasiyan−Gurkanら,1992)。2週間の時点で、亜鉛は、これらの患者の平均の銅平衡を1日に+0.54mg(ポジティブ)直ちに逆転させるが、誘導されたネガティブ銅平衡は、かなり小さく、1日に平均−0.35mg(ネガティブ)銅平衡である(Brewerら、1990;Brewerら、1993b)。銅除去の速度が遅いことに起因して、尿の銅および非セルロプラスミン血漿の銅(潜在的に血液中で毒性銅が測定される)を毒性未満のレベルまで低下させるために約6ヶ月ほどの亜鉛治療を要する。
それでもなお、低い銅の状態を達成したあとの維持療法としての亜鉛の使用は、本発明の好ましい局面のままである。亜鉛化合物は比較的安価でありかつ調製しやすく、そして、それらが広く利用されているという事実に起因して、最初の低い銅の状態を達成するのに亜鉛化合物を利用するのさえ、全般としての本発明の1つの局面である。
(2.ペニシラミン)
ペニシラミンは、最もよく用いられ、かつ最も良好であることが公知の薬物である。しかし、神経学的患者の初期処置に対しては最後の選択であるべきである。なぜなら、これは、患者を神経学的に悪化させる危険性が非常に高いからである(Brewerら、1987a;Glassら、1990;Brewerら、1994a)。ペニシラミンに伴う別の問題は、約1/4〜1/3の患者が初期の過敏症症候群を発症させることであり、このことは、重大な介入(例えば、一時的な薬物中断、およびそれを低用量で再び開始すること(通常は、コルチコステロイド投与と同時に))を必要とする。これは、既に病気である患者にとっては、いくらか驚くような経験であり、そして本発明者らの研究においては、主治医による盲検が妨げられてしまう。最終的には、治療の最初の数週間の間にペニシラミンで生じ得る他の副作用の長いリストがある。これらとしては、骨髄低下、タンパク尿、および自己免疫疾患が挙げられる。
(3.トリエンチン)
トリエンチンは、銅のキレート化および尿排出によって作用する(Walshe、1982)。治療的用量(1,000〜2,000mg/日)は、通常、同様な量のペニシラミンの約半分程度の銅尿(cupruresis)を生じるにすぎない。それにも拘わらず、トリエンチンは、亜鉛よりはるかに多い、数mgのネガティブ銅平衡の初期生成を生じ得る。代表的には、この4〜5mgの銅尿は治療の最初の数週間の間で、より穏やかであるがなお実質的である、2〜3mgまでに減少する。銅の摂取は、約1mg/日であり、強制的に、約0.5mgの非尿の銅が喪失する。従って、2〜3mgの銅尿は、1.5〜2.5mg/日のネガティブ銅平衡を生じる。
トリエンチンは、ペニシラミン治療に耐えられない患者の使用のために正式に認可されている。このため、およびトリエンチンは、ペニシラミンよりはるかに遅く導入されたために、非常に広範に使用されてもおらず、そして報告もされていない。正式な毒性研究は行われてこなかった。ペニシラミンよりは副作用の危険性が実質的に少ないようである。初期の過敏症の問題は報告されていない。約20%の患者においては使用の数週間後に、タンパク尿を確かに引き起こす。また、ときおり、骨髄低下および自己免疫疾患を生じ得るが、後者は通常長期の使用後である。
これまで、トリエンチンは、神経学的患者において初期の悪化を引き起こすことは報告されていないが、このタイプの患者での単独でのその使用は、おそらく、非常に制限されている。不確かではあるが、本発明者らは、ペニシラミンで悪化し、一時的にトリエンチンに切り換え、そしてさらに悪化した(改善されなかった)ときに、TM治療のために本発明者らに移管された移管中の患者を受けいれた。この種の患者において、悪化する際にトリエンチンが何らかの役割を果たしたか否かは分からない。理論的には、ペニシラミンを使用したときと同様に、銅に移動性を持たせ、尿排出を達成するためにより高い血中レベルを生じたのであろう。しかし、この増加したレベルの血中銅が、増加した脳レベル、および増加した神経毒性に解釈されるか否かは未知である。
(B.化学療法組み合わせおよび処置)
増強した腫瘍破壊が達成されることによる機構とは関係なく、本発明の組み合わせ処置の局面は、疾患の有効な処置において明らかな有用性を有する。化学療法剤の投与との組み合わせで本発明を用いるために、当業者は、動物内の組み合わせ抗腫瘍作用を生じるに有効な様式で、そして化学療法剤との併用して、より安定なチオモリブデート化合物(例えば、TP−TM)を、動物に対して簡単に投与する。従って、これらの薬剤は、有効な量で、そしてそれらの腫瘍血管系内の組み合わされた存在および腫瘍環境におけるそれらの組み合わせ作用を生じるに有効な期間にわたり提供される。この目的を達成するために、そのより安定でなチオモリブデート化合物(例えば、TP−TM)および化学療法剤を、単一の組成物で、または異なる投与経路を用いる2つの別個の組成物としてのいずれかで、動物に同時に投与し得る。
あるいは、そのより安定でなチオモリブデート化合物(例えば、TP−TM)での処置を、数分から数週間の範囲の間隔で化学療法剤処置の前および後に行い得る。化学療法薬剤、およびそのより安定でなチオモリブデート化合物を形成する薬剤が動物に別々に適用される実施態様において、当業者は、一般に、化学療法薬剤、およびそのより安定でなチオモリブデート化合物が、腫瘍に対して有利に組み合わせ効果をさらに発揮し得るように、有意な期間が各送達時の間に確実に終了しないようにする。このような場合において、当業者は、腫瘍と両方の薬剤とを、互いを約5分〜約1週間の間に、より好ましくは、互いを約12〜72時間の間に接触させることが意図され、わずか約12〜48時間の遅延時間が最も好ましい。
しかし、いくつかの状況においては、処置期間を有意に延長することが望ましくあり得る。ここで数日(2、3、4、5、6または7日間)またはさらに数週間(1、2、3、4、5、6、7または8週間)がそれぞれの投与の間に経過する。さらに、本発明の好ましい実施態様は、そのより安定でなチオモリブデート化合物(例えば、TP−TM)を、数回の化学療法の間に、または化学療法後の維持レジメンにおいて投与することである。従って、そのより安定でなチオモリブデート化合物(例えば、TP−TM)および/または化学療法剤のいずれかの1回を超える投与が望ましいこともまた想到される。腫瘍退縮を達成するために、投与の時期には関係なく、その増殖を阻害するに有効な組み合わせ量で両方の薬剤が送達される。
種々の化合療法剤が、本明細書中に開示される組み合わせ処置方法において有用であることが意図される。例示的な種々の化学療法剤としては、例えば、エトポシド(VP−16)、アドリアマイシン、5−フルオロウラシル(5FU)、カンプトセシン(camptothecin)、アクチノマイシン−D、マイトマイシン−C、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセルおよびさらに過酸化水素が挙げられる。当業者に理解されるように、化学療法剤の適切な用量は、一般に、化学療法剤が単独で、または他の化学療法剤との組み合わせで投与される臨床治療において既に利用された用量周辺である。
さらに有用な薬剤としては、DNA複製、有糸分裂および染色体分離を妨げる化合物が挙げられる。このような化学療法化合物としては、アドリアマイシン、(ドキソルビシンとしてもまた公知である)、エトポシド、ベラパミル、ポドフィロトキシンなどが挙げられる。新生物の処置のための臨床設定において広範に使用される場合、これらの化合物は、アドリアマシンに関しては、21日の間隔で25〜75mg/mの範囲の用量でボーラス注射により静脈内に、エトポシドに関しては、35〜50mg/mまで、静脈内にもしくは静脈内用量の2倍が経口的に投与される。
ポリヌクレオチド前駆体の合成および忠実度を破壊する薬剤もまた使用され得る。広範な試験を受けた薬剤および容易に利用可能な薬剤が特に有用である。このようにして、5−フルオロウラシル(5−FU)のような薬剤は、新生物組織により優先的に使用され、このことは、この薬剤を新生物細胞に標的化するに特に有用にしている。非常に毒性ではあるが、5−FUは、広範なキャリアに適用可能である。しかし、3〜15mg/kg/日の範囲の用量での静脈内投与(局所的を含む)が一般に使用される。
組み合わせ治療に関して有用な例示的な化学療法剤は、表1に列挙される。そこに列挙される薬剤の各々は、例示であって、限定するものではない。当業者は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、第33章、特に624〜652頁に指示される。投薬量におけるいくらかのバリエーションは、処置される被験体の状態に依存して必然的に生じる。投与に責任のある人は、いずれにしても、個々の被験体にとって適切な用量を決定する。さらに、ヒト投与に関しては、生物学的基準についてFDA当局によって要求されるように、調製物は、無菌性、発熱性、全般的安全性および純度の基準を満たすべきである。
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(C.抗脈管形成)
用語「脈管形成」とは、一般に、組織または器官中への新しい血管の生成をいう。通常の生理条件下では、ヒトまたは動物は、非常に制限された特定の状況においてのみ脈管形成を受ける。例えば、脈管形成は、通常、黄体、子宮内膜および胎盤の創傷治癒、胎児および胚の発生および形成において観察される。
制御された脈管形成および制御されていない脈管形成の両方は、同様の様式で進行すると考えられる。基底膜に囲まれた内皮細胞および周皮細胞は、毛細血管を形成する。脈管形成は、内皮細胞および白血球により放出される酵素により基底膜の侵食を伴って開始する。次いで、血管の管腔に沿う内皮細胞は、基底膜を通じて突出する。脈管形成刺激剤は、内皮細胞が侵食された基底膜を通じて移動することを誘導する。移動している細胞は、親血管から「発芽」を形成し、このとき内皮細胞は、有糸分裂を経て、そして増殖する。内皮の発芽は、互いに一緒になって毛細管ループを形成し、これにより新しい血管が生成する。
本発明のより安定なチオモリブレート化合物(例えば、TP−TM)は、1以上の他の抗血管新生療法と併用して使用されてもよい。VEGFを阻害する薬剤(例えば、VEGFまたはVEGRレセプターに対する、中和抗体、可溶性レセプター構築物、チロシンキナーゼインヒビター、アンチセンスストラテジー、RNAアプタマーおよびリボザイム)との併用も、包含される。拮抗的特性を有するVEGFの改変体もまた、WO98/16551において記載される。
一般的には、この抗血管新生療法は、抗血管新生剤の供給または血管新生因子の阻害に基づき得る。例えば、アンギオゲニン(angiogenin)に対する抗体が、米国特許第5,520, 914号(これは、本明細書中で参考として詳細に援用される)に記載されるように、利用され得る。FGFが血管新生と関連する点において、FGFインヒビターもまた、使用されていもよい。特定の実施例は、それらの主要な繰り返し単位としての2−O−硫酸化ウロン酸と配列において互換するN−アセチルグルコサミンを有する化合物(アルキラン(archaran)スルフェートのようなグリコサミングリカンを含む)である。このような化合物は、米国特許第6,028, 061号(これは、具体的に、本明細書中で参考として援用される)、ここで、組み合わせて使用され得る。
種々の疾患状態で顕著であるように、新脈管形成の処置に有用である多数のチロシンキナーゼインヒビターが、現在公知である。これらとしては、例えば、米国特許第5,639,757号(具体的に、参考として本明細書中で援用される)の4−アミノピロール[2,3−d]ピリミジンが挙げられる。これはまた、本発明と組み合わせて使用され得る。VEGDR2レセプターを介するチロシンキナーゼシグナル伝達を媒介し得る有機分子のさらなる例は、キナゾリン化合物および米国特許第5,792,771号(具体的に、脈管形成疾患の処置における本発明と共に使用するためのさらなる組み合わせを記載する目的で、参考として本明細書中で援用される)の組成物である。
他の化学クラスの化合物はまた、新脈管形成を阻害することが示されており、そして本発明と組み合わせて使用され得る。例えば、米国特許第5,972,922号(具体的に、参考として本明細書中で援用される)に記載されるステロイド(例えば、新脈管形成の4,9(11)−ステロイドおよびC21−酸化ステロイド)は、併用治療において使用され得る。米国特許第5,712,291号および同第5,593,990号(各々、参考として本明細書中で援用される)は、サリドマイドならびに関連する化合物、前駆体、アナログ、代謝物および加水分解産物を記載する。これらもまた、新脈管形成を阻害するために本発明と組み合わせて使用され得る。米国特許第5,712,291号および同第5,593,990号における化合物は、経口的に投与され得る。組合せ治療に関して有用である、さらなる例示的な抗新脈管形成剤は、表2に列挙される。ここで列挙される各薬剤は、例示であって、限定することを意味しない。
(表2 血管新生のインヒビターおよび負の抑制因子)
アンギオスタチン
エンドスタチン
16kDa プロラクチンフラグメント
ラミニンペプチド
フィブロネクチンペプチド
組織メタロプロテインナーゼインヒビター(TIMP1,2,3,4)
プラスミノーゲンアクチベータインヒビター(PAI−1,−2)
腫瘍壊死因子α(高用量、インビトロ)
TGF−β1
インターフェロン(INF−α、INF−β、INF−γ)
ELR−CXC ケモカイン:IL−12;SDF−1;MIG;血小板因子4(PF−4);IP−10
トロンボスポンジン(TSP);
SPARC
2−メトキシオエステオラジオール
プロリフェリン関連タンパク質
スラミン
サリドマイド
コルチゾン
リノマイド(Linomide)
フマジリン(Fumagillin)(AGM−1470l;TNP−470)
タモキシフェン
韓国産ヤドリギ(Korean mistletoe)抽出物(Viscum album coloratum)
レチノイド
CM101
デキサメタゾン
白血病抑制因子(LIF)
より安定な本発明のチオモリブデート(thiomolybdate)化合物(例えば、TP−TM)と併用して血管新生を阻害することにおける用途のための特定の成分は、アンギオスタチン、エンドスタチン、バスキュロスタチン(vasculostatin)、カンスタチン(canstatin)およびマスピン(maspin)である。アンギオスタチンは、米国特許第5,776,704号;同第5,639,725号および同第5,733,876号において開示されている。これらの各々は、本明細書中に参考として援用される。アンギオスタチンは、還元ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるように、約38kDa〜約45kDaの分子量を有するタンパク質であり、これは、プラスミノゲン分子のほぼKringle領域の1〜4を含む。アンギオスタチンは、一般に、インタクトなマウスプラスミノゲン分子のアミノ酸番号98から開始するマウスプラスミノゲンのフラグメントと実質的に類似のアミノ酸配列を有する。
アンギオスタチンのアミノ酸配列は、種の間でわずかに変化する。例えば、ヒトアンギオスタチンにおいて、このアミノ酸配列は、上記のマウスプラスミノゲンフラグメントの配列と実質的に類似であるが、活性なヒトアンギオスタチン配列は、インタクトなヒトプラスミノゲンアミノ酸配列のアミノ酸番号97または99のいずれかで開始し得る。さらに、ヒトプラスミノゲンは、類似の抗脈管形成活性を有するので、マウス腫瘍モデルにおいて示されるように使用され得る。
アンギオスタチンおよびエンドスタチンは、マウスにおいて、腫瘍増殖を阻害するだけでなく腫瘍後退もまたもたらす能力が実証された最初の新脈管形成インヒビターであるので、これらは熱心な研究の焦点となる。エラスターゼ、マクロファージメタロエラスターゼ(MME)、マトリリシン(matrilysin)(MMP−7)、および92kDaゼラチナーゼB/IV型コラゲナーゼ(MMP−9)を含む、プラスミノゲンからアンギオスタチンを生成することが示される複数のプロテアーゼが存在する。
MMEは、腫瘍においてプラスミノゲンからアンギオスタチンを生成し得、そして顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)は、アンギオスタチンの生成を誘導するマクロファージによってMMEの発現をアップレギュレートする。アンギオスタチン生成におけるMMEの役割は、MMEが患者由来の肝細胞癌の臨床サンプルにおいて実際に発現されるという知見によって支持される。アンギオスタチンを生成し得ると考えられる別のプロテアーゼは、ストロメライシン−1(MMP−3)である。MMP−3は、インビトロにおいてプラスミノゲンからアンギオスタチン様フラグメントを生成することが示されている。アンギオスタチンについての作用機構は現在のところ明らかではなく、これが、プログラム化された細胞死または有糸分裂の阻止を受けるように内皮細胞を誘導する内皮細胞上の同定されていない細胞表面レセプターに結合すると推定されている。
エンドスタチンは、その生物学はあまり明白ではないものの、さらにより強力な抗新脈管形成および抗腫瘍剤であるようである。エンドスタチンは、マウスにおける多くの腫瘍モデルにおいて後退を生じることにおいて有効である。腫瘍は、エンドスタチンに対する耐性を発生させず、そして複数のサイクルの処置後に、腫瘍は、休止状態に進入し、この間、これらは体積において増加しない。この休止状態において、アポトーシスを受ける腫瘍細胞の割合は増加し、そして本質的に同じサイズをとどめる集団を生じた。エンドスタチンは、その効果を媒介する未同定の内皮細胞表面レセプターに結合すると考えられる。
FolkmanおよびO’Reileyらへの米国特許第5,854,205号(本明細書中で参考として詳細に援用される)は、内皮細胞増殖および脈管形成のインヒビターとしてのエンドスタチンおよびその使用に関する。エンドスタチンタンパク質は、コラーゲンXVIII型のC末端フラグメントに対応し、そしてこのタンパク質は、種々の供給源から単離され得る。米国特許第5,854,205号はまた、エンドスタチンが、コラーゲンXVIII型、コラーゲンXV型、またはBOVMPE1プロガストリン(pregastric)エステラーゼのフラグメントのアミノ酸配列を有し得るということを教示する。エンドスタチンの他の抗脈管形成タンパク質、特にアンギオスタチンとの組み合わせはまた、米国特許第5,854,205号に記載され、その結果、組合された組成物は、脈管形成依存性腫瘍塊を効果的に後退させ得る。バスキュロスタチン(Vasculostatin)、カンスタチン(Canstatin)、およびマスピン(maspin)はまた、本発明との併用について適切である。
特定の抗血管新生療法(細菌性ポリサッカリドCM101およびその抗体KM609を含む)は、腫瘍抑制を引き起こすことが示されている。CM101は、細菌性ポリサッカリドであり、これは、腫瘍において新血管炎症を誘導する能力において十分に特徴付けられている。CM101は、補体系の活性化を刺激する脱分化した内皮上で発現されるレセプターに結合し、そして架橋する。それはまた、腫瘍を選択的に標的するサイトカイン駆動化炎症応答を開始する。これは、発現VEGFおよびそのレセプターをダウンレギュレートする固有の抗病理新脈管形成剤である。CM101は、現在、抗癌剤として臨床試験中であり、そしてこれと組み合わせて使用され得る。
トロンボスポンジン(thrombospondin)(TSP−1)および血小板因子4(PF4)もまた、本発明において使用され得る。これらはともに、へパリンと会合する新脈管形成インヒビターであり、そしてまた血小板α−顆粒において見出される。TSP−1は、細胞外マトリクスの構成成分である、大きな450kDaのマルチドメイン糖タンパク質である。TSP−1は、HSPG、フィブロネクチン、ラミニン、および種々の型のコラーゲンを含む、細胞外マトリクスにおいて見出される多くのプロテオグリカン分子に結合する。TSP−1は、インビトロにおいて内皮細胞遊走および増殖、ならびにインビボにおいて新脈管形成を阻害する。TSP−1はまた、形質転換された内皮細胞の悪性表現型および腫瘍形成を抑制し得る。腫瘍抑制遺伝子p53は、TSP−1の発現を直接的に調節することが示されており、その結果、p53活性の損失は、TSP−1生成における劇的な減少、および腫瘍が開始する新脈管形成を付随する増大を生じる。
PF4は、ケモカインのCXC ELRファミリーのメンバーである70aaタンパク質あり、これは、インビトロにおける内皮細胞の増殖およびインビボにおける新脈管形成を強力に阻害し得る。腫瘍内に投与された、またはアデノウイルスベクターによって送達されたPF4は、腫瘍増殖の阻害を生じ得る。
インターフェロンおよびメタロプロテイナーゼインヒビターは、本発明に従って送達され得る、2つの他のクラスの天然に存在する脈管形成インヒビターである。インターフェロンの抗内皮活性は、1980年代初期から公知であるが、阻害の機構は、未だ明確でない。これらが内皮細胞の移動を阻害し得ること、およびこれらが、腫瘍細胞による新脈管形成プロモーターの産生を阻害する能力によっておそれく媒介される、インビボでのいくつかの抗新脈管形成活性を有することは公知である。血管腫瘍は具体的に、インターフェロンに感受性であり、例えば、増殖中の血管腫はIFNαで首尾よく処置され得る。
メタロプロテイナーゼの組織インヒビター(TIMP)は、天然に存在するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)のインヒビターのファミリーであり、これもまた、新脈管形成を阻害し得、そして本発明の処置プロトコルにおいて使用され得る。MMPは、新脈管形成プロセスにおいて重要な役割を果たす。なぜなら、これらは、血管網を拡大または再構築する場合、内皮細胞および線維芽細胞が移動するマトリックスを分解するからである。実際、MMPの1つのメンバーであるMMP−2は、おそらくこの目的のためにインテグリンαvβ3を介して活性化された内皮と会合することが示されている。この相互作用がMMP−2のフラグメントによって崩壊されられる場合、次いで新脈管形成はダウンレギュレートされ、そして腫瘍増殖において阻害される。
新脈管形成を阻害する多くの薬理学的物質が存在し、これらの任意の1以上が本発明の一部として使用され得る。これらの物質としては、AGM−1470/TNP−470、サリドマイド、およびカルボキシアミドトリアゾール(CAI)が挙げられる。フマギリンは、1990年に新脈管形成の強力なインヒビターであることが見出されており、そしてそれ以来、フマギリンの合成アナログである、AGM−1470およびTNP−470が開発されてきた。これら両方の薬物は、インビトロでの内皮細胞増殖およびインビボでの新脈管形成を阻害する。TNP−470は、ヒトの臨床試験で広範に研究され、そのデータは長期の投与が最適であることを示唆する。
サリドマイドは、元来鎮静薬として使用されていたが、強力な催奇形物質であることが見出され、そして中止された。1994年に、サリドマイドは新脈管形成インヒビターであることが見出された。サリドマイドは現在、抗癌剤および血管性の眼疾患の処置として臨床試験されている。
CAIは新脈管形成の低分子量の合成インヒビターであり、これは、アクチンの再組織化、内皮細胞の移動およびコラーゲンIV上での延展を妨げる、カルシウムチャネルブロッカーとして作用する。CAIは生理学的に達成可能な濃度で新生血管形成を阻害し、そして癌患者によって経口的に十分許容される。CAIを用いた臨床試験によって、処置前に進行性の疾患を有する癌患者の49%において疾患の安定化を生じた。
ヘパリンまたはヘパリンフラグメントの存在下のコルチゾンは、内皮細胞増殖をブロックすることによってマウスにおいて腫瘍増殖を阻害することが示された。ステロイドおよびヘパリンの相加的な阻害効果に関与する機構は明らかでないが、ヘパリンが内皮細胞によるステロイドの取り込みを増加させ得ると考えられる。この混合物は、新しく形成された毛細血管の下の基底膜の溶解を増加させることが示されており、そしてこれはまた、相加的な血管抑制(angiostatic)効果についての可能性のある説明である。ヘパリン−コルチゾール結合体はまた、インビボでの強力な血管抑制効果活性および抗腫瘍効果活性を有する。
さらに特定の新脈管形成インヒビターが、本発明の腫瘍標的化方法を使用して腫瘍に送達され得る。これには、抗侵襲性因子(Anti−Invasive Factor)、レチノイン酸およびパクリタキセル(米国特許第5,716,981号;参考として本明細書中に援用される);AGM−1470(Ingberら、1990;参考として本明細書中に援用される);サメ軟骨抽出物(米国特許第5,618,925号;参考として本明細書中に援用される);陰イオン性ポリアミドオリゴマーまたは陰イオン性ポリ尿素オリゴマー(米国特許第5,593,664号;参考として本明細書中に援用される);オキシンドール(oxindole)誘導体(米国特許第5,576,330号;参考として本明細書中に援用される));エストラジオール誘導体(米国特許第5,504,074号;参考として本明細書中に援用される);およびチアゾールピリミジン誘導体(米国特許第5,599,813号;参考として本明細書中に援用される)が挙げられるが、これらに限定されない。これらはまた、本発明の併用使用のための、抗新脈管形成組成物としての使用が意図される。
αβインテグリンのアンタゴニストを含む組成物はまた、本発明と組合せて新脈管形成を阻害するために使用され得る。米国特許第5,766,591号(参考として本明細書中に援用される)に開示されるように、RGD含有ポリペプチドおよびその塩(環状ポリペプチドを含む)は、αβインテグリンアンタゴニストの適切な例である。
αβインテグリンに対する抗体LM609はまた、腫瘍の退縮を誘導する。αβインテグリンアンタゴニスト(例えば、LM609)は、冒されていない休止血管を残す血管新生内皮細胞のアポトーシスを誘導する。LM609または他のαβアンタゴニストはまた、αβおよび内皮細胞と線維芽細胞の移動のおいて重要な役割を有すると考えられているタンパク質分解酵素であるMMP−2との相互作用を阻害することによって機能する。米国特許第5,753,230号は、血管新生を阻害するために本発明と併用するための、αβに対する抗体(ビトロネクチンαβ)を記載するために本明細書中で参考として具体的に援用される。
この場合におけるこの血管新生性内皮細胞のアポトーシスは、血管網の残りに対するカスケード効果を有し得る。腫瘍の血管網が腫瘍のシグナルに完全に応答して拡大することを阻害することは、実際、部分的または完全な腫瘍血管網の崩壊を起こし、その腫瘍細胞死および腫瘍体積の消失を生じる。エンドスタチンおよびアンギオスタチンは同様の様式で機能すること可能性がある。LM609は静止血管に影響を与えないが、腫瘍の退縮を引き起こし得るという事実は、抗腫瘍効果を取得するために、腫瘍における血管の全てが、処置のために標的化される必要はないことを強力に示唆する。
Tie2レセプターを介したシグナル伝達を変更することに基づく治療介入の他の方法がまた、本発明と併用して使用され得る(例えば、Tie2活性化をブロックし得る可溶性Tie2レセプターを使用すること)。組換えアデノウイルス遺伝子療法を用いるこのような構築物の送達が、癌を処置することおよび転移を減少させることにおいて有効であることが示されている。
(D.アポトーシス誘導剤)
本発明のより安定なチオモリブデート化合物(例えば、TP−TM)もまた、腫瘍内の任意の細胞(腫瘍細胞および腫瘍血管内皮細胞を含む)においてアポトーシスを誘導する処置方法と組み合わされ得る。多くの抗癌剤が、それらの作用機構の一部として、アポトーシス誘導効果を有し得るが、特定の薬剤は、以下に記載されるように、主な機構としてこれで発見、設計、または選択されている。
多くの癌遺伝子は、アポトーシス、すなわちプログラムされた細胞死を阻害することが記載されている。このカテゴリーにおける例示的な癌遺伝子には、bcr−abl、bcl−2(bcl−1とは異なる、サイクリンD1;GenBnk登録番号M14745、X06487;米国特許第5,650,491号;および同第5,539,094号;各々が参考として本明細書中に援用される)ならびにファミリーのメンバー(Bcl−xl、Mcl−1、Bak、A1、A20を含む)が挙げられるがこれらに制限されない。bcl−2の過剰発現は、T細胞リンパ腫で初めて発見された。bcl−2は、Bax(アポトーシス経路におけるタンパク質)を結合し、かつ不活性化することによって癌遺伝子として機能する。bcl−2機能の阻害は、Baxの不活性化を妨げ、そしてアポトーシス経路が進行することを可能にする。従って、例えば、アンチセンスヌクレオチド配列を使用する、このクラスの癌遺伝子の阻害は、アポトーシスの増強が所望される局面において、本発明における使用に意図される(米国特許第5,650,491号;同第5,539,094号;および同第5,583,034号;各々が参考として本明細書中に援用される)。
癌の多くの形態が、腫瘍抑制遺伝子(例えば、p53)における変異を報告した。p53の不活性化は、アポトーシスを促進しない。この不全に関して、癌細胞は、細胞死に運命付けられるのではなく、腫瘍形成を進行する。従って、腫瘍サプレッサーの供給もまた、細胞死を刺激するために、本発明における使用に意図される。例示的な腫瘍サプレッサーには、p53、網膜芽腫遺伝子(Rb)、ウィルムス腫(WT1)、baxα、インターロイキン−1b−変換酵素およびファミリー、MEN−1遺伝子、神経線維腫症1型(NF1)、cdkインヒビターp16、結腸直腸癌遺伝子(DCC)、家族性腺腫ポリポーシス(familial adenomatosis polyposis)遺伝子(FAP)、多発性腫瘍(multiple tumor)サプレッサー遺伝子(MTS−1)、BRCA1およびBRCA2が挙げられるがこれらに限定されない。
p53遺伝子(米国特許第5,747,469号;同第5,677,178号;および同第5,756,455号;各々が参考として本明細書中に援用される)、網膜芽腫遺伝子、BRCA1遺伝子(米国特許第5,750,400号;同第5,654,155号;同第5,710,001号;同第5,756,294号;同第5,709,999号;同第5,693,473号;同第5,753,441号;同第5,622,829号;および同第5,747,282号;各々が参考として本明細書中に援用される)、MEN−1遺伝子(GenBank登録番号U93236)ならびにアデノウイルスE1A遺伝子(米国特許第5,776,743号;本明細書中に参考として援用される)が、使用のために好ましい。
使用され得る他の組成物には、TRAILと呼ばれる腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンドをコードする遺伝子、およびTRAILポリペプチド(米国特許第5,763,233号;参考として本明細書中に援用される);米国特許第5,605,826号の24kDaアポトーシス関連プロテアーゼ(本明細書中に参考として援用される);Fas関連因子1(FAF1)(米国特許第5,750,653号;本明細書中に参考として援用される)が挙げられる。アポトーシスを刺激することが報告されている、インターロイキン−1β−変換酵素およびファミリーメンバーの提供もまた、本発明のこれらの局面における使用に意図される。
カルボスチリル(carbostyril)誘導体(米国特許第5,672,603号;および同第5,464,833号;各々が参考として本明細書中に援用される);分枝型アポゲニック(apogenic)ペプチド(米国特許第5,591,717号;本明細書中に参考として援用される);ホスホチロシンインヒビターおよび非加水分解性ホスホチロシンアナログ(米国特許第5,565,491号;および同第5,693,627号;各々が本明細書中に参考として援用される);RXRレチノイドレセプターのアゴニスト(米国特許第5,399,586号;本明細書中に参考として援用される);ならびにさらに抗酸化剤(米国特許第5,571,523号;本明細書中に参考として援用される)のような化合物もまた、使用され得る。チロシンキナーゼインヒビター(例えば、ゲニステイン)もまた、細胞表面レセプターを標的とするリガンドに連結され得る(米国特許第5,587,459号;本明細書中に参考として援用される)。
(VI.薬学的組成物およびキット)
本発明の薬学的組成物は、一般に、銅を結合し、そして薬剤−銅−タンパク質の3つからなる複合体を形成する、有効量の薬剤(例えば、テトラチオモリブデート)を含み、これは、薬学的に受容可能なキャリアまたは水性媒体中に溶解または分散される。
句「薬学的または薬理学的に受容可能」とは、適切に動物またはヒトに投与された場合に、有害な反応、アレルギー反応または他の所望されない反応を生じない分子実体および組成物をいう。本明細書中で使用される場合、「薬学的に受容可能なキャリア」は、任意および全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質に対するこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と非適合性であることを除いて、治療組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性成分もまた、これらの組成物中に取り込まれ得る。
(A.非経口処方物)
本発明の薬剤(例えば、TP−TM)は、しばしば、非経口投与のために処方される(例えば、腫瘍または疾患部位中への直接的な点滴注入を含む、静脈内、筋肉内、皮下、または他のこのような経路を介する注射のために処方される)。1以上のこのような薬剤を活性成分として含む水性組成物の調製は、本発明の開示を鑑みて当業者に公知である。代表的には、このような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかのように注射用として調製され得;注射前に、液体を添加して溶液または懸濁液を調製するために使用するに適切な固体形態もまた、調製され得;そしてこの調製物もまた、乳化され得る。
遊離塩基としての活性な化合物または薬理学的に受容可能な塩の溶液は、界面活性剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)と適切に混合されて、水中で調製され得る。分散剤もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、ならびにそれらの混合液および油中で調製され得る。貯蔵および使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を予防するために保存剤を含む。
注射用途に適切な薬学的形態は、滅菌水溶液または分散剤;ゴマ油、ピーナッツ油または水性プロピレングリコールを含む処方物;および滅菌注射溶液または分散剤の即時調製物のための滅菌粉末を含む。全ての場合において、この形態は、無菌でなければならず、かつ容易な注射能力(syringability)が存在する程度まで流動性でなければならない。これは、製造および貯蔵の条件下で安定でなけらばならず、そして微生物(例えば、細菌および真菌)の汚染作用に対して保護されなけらばならない。
本発明の薬剤(例えば、TP−TM)を含む組成物は、中性または塩形態における組成物中に処方され得る。薬学的に受容可能な塩は、酸付加塩(このタンパク質の遊離アミノ基で形成される)を含み、これは、無機塩(例えば、塩酸またはリン酸)あるいは有機塩(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸)などと形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩もまた、無機塩(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化鉄(II))および有機塩(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)から誘導され得る。
キャリアもまた、溶媒または分散媒体(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、ならびに植物油を含む)であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティングの使用(例えば、レシチン)によって、分散剤の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤(例えば、糖または塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。注射用組成物の延長した吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の組成物における使用によってもたらされ得る。
滅菌注射用溶液は、適切な溶媒中に必要とされる量で活性化合物を取り込ませ、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般に、懸濁剤は、種々の滅菌活性成分を、基本的な分散媒体および上記に列挙された必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル中に取り込ませることによって調製され得る。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合では、調製の好ましい方法は、真空乾燥技術および凍結乾燥技術であり、これは、予め滅菌濾過されたその溶液からの活性成分および任意のさらなる所望される成分の粉末を生じる。
処方の際に、溶液は、投薬処方物と適合性の様式で、かつ治療的有効量で投与される。処方物は、種々の投薬形態(例えば、上記の注射用溶液の形態)にて容易に投与されるが、薬物放出カプセルなどもまた、用いられ得る。
本発明に従う適切な薬学的組成物は、一般的に、増加した安定性を有する一定量の1以上のチオモリブデート化合物(特に、アルキルアルミニウムチオモリブデート化合物(TP−TM))を、受容可能な薬学的希釈剤または賦形剤(例えば、滅菌水溶液)と混合して含み、意図された使用に依存して最終濃度の範囲を与える。調製技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、16版、Mack Pubilishing Company、1980(本明細書中に参考として援用される)に例示されるように、一般に、当該分野において周知である。エンドトキシン汚染は、安全なレベル(例えば、0.5ng/mgタンパク質未満)で最小限に維持されるべきであることが理解されるべきである。さらに、ヒト投与について、調製物は、生物学的標準についてFDA当局により要求されるような、無菌性、発熱性、一般的な安全性および純度の基準を満たすべきである。
治療的な有効用量は、本明細書中に詳述される研究において示されるように、動物モデルを使用して容易に決定可能である。固形腫瘍を有する実験動物は、しばしば、臨床環境に移す前に、適切な治療用量を最適化するために使用される。このようなモデルは、効果的な抗癌ストラテジーを予想する際に非常に確かであることが公知である。例えば、その作業実施例で使用されるような、固形腫瘍を保有するマウスは、前臨床試験に広範に使用される。本発明者らは、最小の毒性で有益な抗腫瘍効果を生じる薬剤(例えば、テトラチオモリブデートおよびTP−TM)の作用範囲を決定するために、このような当該分野で受け入れられているマウスモデルを使用した。
非経口投与(例えば、静脈内注射または筋肉内注射)に処方される化合物に加えて、他の薬学的に受容可能な形態(例えば、経口投与に関して錠剤または他の固体、時限放出カプセル、リポソーム形態など)もまた、意図される。他の薬学的処方物もまた、処置される状態に依存して使用され得る。例えば、局所処方物は、病的状態(例えば、皮膚炎および乾癬)を処置するために適切であり得;そして眼処方物は、糖尿病網膜症のような状態に適切であり得る。当然に、これらのような状態に最適な投薬量を決定するための方法は、本明細書に開示された最適化された投薬量方法論、および当業者の知識を鑑みて、当業者に明らかである。
本明細書中に詳細に記載されるように、特定の有益性は、銅を結合しそして薬剤−銅−タンパク質の3つからなる複合体を形成する、本発明の薬剤(例えば、TP−TM)の操作から生じ、このことは、より長期のインビボ半減期をこれらに提供する。徐放性処方物は、一般に、長期間にわたって一定の薬物レベルを与えるように設計される。薬物(例えば、銅を結合し、そして薬剤−銅−タンパク質の3つからなる複合体を形成する、本発明の薬剤(例えば、テトラチオモリブデート))の半減期の増大は、投与の際に、高い血漿レベル(このレベルは、長期間維持されるが、このレベルは、一般に、この構築物の薬物動態に依存して分解する)を生じることが意図される。現在は好ましくないが、本発明の組成物およびその組合せの徐放性処方物は、本発明における使用から決して除外されない。

(B.眼性処方物)
血管新生成分を伴う多くの疾患は、その眼と関連する。例えば、本願発明に従って処置され得る角膜新脈管形成に関連する疾患としては、以下が挙げられるが、これらの限定されない:糖尿病網膜症、未熟網膜症、角膜移植片拒絶反応、血管新生緑内障および水晶体後線維増殖症、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズの過剰装用、アトピー性角膜炎症、上方輪部角結膜炎、翼状角膜炎乾燥症、シューグレン、酒さ性ざ瘡、フェレクテヌロシシス、梅毒、ミコバクテリア感染、脂質変性、化学熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、ヘルペス帯状疱疹感染、原生生物感染、カポジ肉腫、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁性角質溶解、外傷、慢性関節リウマチ、全身性エリトマトーデス、多発性動脈炎、ウェゲナーサルコイドーシス、強膜炎、スティーヴンズ−ジョンソン疾患、放射状角膜切開、および角膜移植片拒絶反応。
本発明に従って処置され得る網膜/脈絡膜の新生血管形成に関連する疾患としては、糖尿病網膜症、黄斑変性、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾性線維性仮性黄色腫、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、頚動脈閉塞性疾患、慢性ブドウ膜炎、ミコバクテリア感染、ライム病、全身性エリテマトーデス、未熟網膜症、イールズ病、ベーチェット病、網膜炎または脈絡膜炎を引き起こす感染症、推定眼ヒストプラスマ症(presumed ocularhistoplasmosis)、ベスト病、近視、視窩、スタルガルト病、前部ブドウ膜炎、慢性網膜はく離、過粘稠症候、トキソプラスマ症、外傷およびレーザー処置後の合併症が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に従って処置され得る他の疾患としては、ルベオーシス(新生血管形成角)に関連する疾患、および維管束組織または線維性組織の異常増殖によって引き起こされる疾患(糖尿病に関連するか否かに関わらず、すべての形態の増殖性硝子体網膜症が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。
従って、本発明のチオモリブデート化合物(例えば、TP−TM)は、眼性溶液として使用するために適切な薬学的組成物の調製において有利に使用され得、この薬学的組成物は、硝子体内および/または房内(intracameral)投与のための組成物を含む。前述の障害または他の障害の処置のために、本発明の化合物は、従来の薬学的慣行(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15編、1488〜1501頁(Mack Publishing Co.,Easton,PA)を参照のこと)に従って調製された眼性調製物の形態で処置の必要な被験体の眼に投与される。
眼性調製物は、薬学的に受容可能な溶液、懸濁液または軟膏中に約0.01〜1重量%、好ましくは約0.05〜約0.5重量%の濃度で治療剤を含む。濃度のいくらかの変更は、使用する特定の化合物、処置される被験体の状態などに依存して必要に生じ、そして処置の担当者は、個々の被験体について最も適切な濃度を決定する。眼性調製物は、好ましくは、滅菌水溶液の形態であり、所望の場合、さらなる成分、例えば、防腐剤、緩衝液、弾力剤、酸化防止剤および安定剤、非イオン性湿潤剤または浄水剤、粘性増加剤などを含む。
このような溶液において使用するための適切な防腐剤としては、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンズエトニウム、クロロブタノール、チメロサールなどが挙げられる。適切な緩衝液としては、約pH6とpH8との間、好ましくは、約pH7とpH7.5との間のpHを維持するために十分な量の、ホウ酸、炭酸水素ナトリウムおよびカリウム、ホウ酸ナトリウムおよびカリウム、炭酸ナトリウムおよびカリウム、酢酸ナトリウム、ビリン酸(biphosphate)ナトリウムなどが挙げられる。適切な弾力剤は、デキストラン40、デキストラン70、デキストロース、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウム、などであり、眼性溶液の塩化ナトリウム当量は、0.9±0.2%の範囲である。
適切な酸化防止剤おおび安定剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸水素ナトリウム、チオ亜硫酸ナトリウム、チオ尿素などが挙げられる。適切な湿潤剤および浄水剤としては、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー282およびチロキサポールが挙げられる。適切な粘性増加剤としては、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ペトロラタム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。眼性調製物は、例えばドロップの形態で従来の方法によってか、または眼性溶液中に眼を浸すことによって処置の必要な被験体の眼に局所的に投与される。
(C.局所処方物)
広範な意味で、局所投与のための処方物は、口(頬側)を介してかつ皮膚を通して送達するための処方物を含む。「局所送達システム」はまた、投与される成分を含む経皮的パッチを含む。皮膚を通す送達は、所望の場合、イオン注入または電気的運搬によってさらに達成され得る。
口において局所投与するための適切な処方物は、風味のある基礎原料の成分、通常は、ショ糖およびアカシアまたはトラガカントを含むロゼンジ;不活性基礎原料(例えば、ゼラチンおよびグリセリン)の活性成分またはショ糖およびアカシアを含む香錠;ならびに適切な液体キャリアで投与される成分を含むうがい薬が挙げられる。
皮膚に局所投与するための適切な処方物としては、軟膏、クリーム、ゲルおよび泥膏(薬学的に受容可能なキャリアで投与される成分を含む)が挙げられる。局所使用(例えば、クリーム、軟膏およびゲルで)のための治療剤としては、当該分野で周知のような、脂肪性基剤または水溶性軟膏剤の調製物が挙げられる。例えば、これらの組成物は、野菜オイル、動物性脂肪、が挙げられ、そしてより好ましくは、石油から得た半個体炭化水素が挙げられ得る。使用される特定の成分は、白色軟膏、黄色軟膏、セチルエステルワックス、オレイン酸、オリーブオイル、パラフィン、ペトロラタム、白色ペトロラタム、鯨蝋、グリセリンデンプン、白色ワックス、黄色ワックス、ラノリン、無水ラノリンおよびモノステアリン酸グリセリルが挙げられ得る。種々の水溶性軟膏剤が、使用され得、グリコールエーテルおよび誘導体、ポリエチレングリコール、ポリオキシル40ステアレート、ならびにポリソルベートが挙げられる。
直腸投与のための処方物は、適切な塩基(例えば、ココアバターまたはサリチレートを含む)とともに坐剤として与えられ得る。窒投与のための適切な処方物は、さらなる活性成分(例えば、当該分野で適切であると知られるキャリア)を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、泥膏、包状物、またはスプレー処方物として与えられ得る。
(D.鼻性処方物)
鼻経路および呼吸器経路を介する局所送達は、種々の状態を処置するため(特に、本発明の抗ウイルス処置方法における使用のため)に意図される。これらの送達経路はまた、薬剤を全身性循環に送達するために適切である。従って、鼻性投与のための適切なキャリアにおける活性成分の処方物は、本発明内に含まれ、例えば、鼻性溶液、スプレー、エアロゾルおよび吸入抗原が挙げられる。キャリアが個体である場合、処方物は、例えば、20〜500ミクロンの範囲の粒子サイズを有する粗散剤が挙げられ、例えば、鼻に近接して維持される散剤のコンテナから鼻経路を通る急速な吸入によって投与される。
キャリアが液体である適切な処方物は、鼻投与において有用である。鼻溶液は、通常は、ドロップまたはスプレーで鼻経路に投与されるように設計される水溶液であり、そしてそれらが、多くの局面において鼻分泌と類似であり、通常の線毛作用が維持されるように調製される。従って、鼻水溶液は、通常、等張性であり、そして5.5〜6.5のpHを維持するようにわずかに緩衝化される。さらに、必要な場合、眼性調製物において使用される防腐剤と類似の抗菌防腐剤および適切な薬物安定剤は、処方物中に含まれ得る。種々の市販の鼻性調製物は、公知であり、そして例えば、抗生物質および抗ヒスタミン剤が挙げられ、ぜん息予防に使用される。
吸入薬および吸入剤は、薬物または化合物の患者の呼吸樹への送達のために設計される薬学的調製物である。蒸気または霧が、投与され、そして有効領域に到達する。この経路はまた、薬剤を全身性循環に送達するために使用され得る。吸入薬は、鼻または口呼吸性経路によって投与され得る。吸入薬溶液の投与は、この液滴が十分に良質でかつサイズが均一であり、その結果、この霧が、細気管支に到達する場合にのみ、有効である。
製品の別のグループ(吸入薬としても公知であり、そして時には、吸入剤といわれる)は、特異的送達システムの使用によって呼吸経路に運ばれる良質の散剤薬物または液体薬物(例えば、薬学的エアロゾル)を含み、液体ガス噴霧剤中に薬物の溶液または懸濁液を維持する。適切なバルブおよび口アダプターを通して放出される場合、吸入薬の測定用量は、患者の呼吸路に進められる。粒子サイズは、この型の調製物の投与において主に重要である。肺腔への穿通のための最適粒子サイズは、0.5〜7μmのオーダーであると、報告されてきた。良質の霧は、加圧エアロゾルによって産生され、それによって、それらの使用の利点が、考慮される。
(E.キット)
本発明はまた、治療キットおよび併用治療剤(組合せ治療剤)、ならびに診断キットを提供し、これらには、安定性の増加させたチオモリブデート化合物(例えば、TP−TM)を含む。このようなキットは、一般に、適切な容器用手段中に、本発明に従った少なくとも1つのこのような化合物の薬学的に受容可能な処方物を含む。このキットはまた、他の薬学的に受容可能な処方物(例えば、任意の1以上の範囲の化学療法剤)を含む。
これらのキットは、さらなる任意の成分を含みまたは含まずに、安定性を増加したチオモリブデート化合物(例えば、TP−TM)を含む1個の容器手段を有し得るか、あるいは各々の所望される薬剤に対して異なる容器手段を有し得る。本発明の特定の好ましいキットは、第2の抗癌剤(例えば、化学療法剤、放射線療法剤、異なる銅キレート剤、抗脈管形成剤、またはアポトーシス誘導剤)の共投与と組み合わされる使用のためにキット中に包装された、安定性を増加したチオモリブデート化合物(例えば、TP−TM)を含む。このようなキットにおいて、この成分は、モル当量の組合せで、または他方の成分の過剰下で1つの成分とともにのいずれかで予め複合体化され得るか、あるいはこのキットの各々の成分は、患者への投与前に異なる容器内に別々に維持され得る。
このキットの成分が、1以上の液体溶液で提供される場合、この液体溶液は、水溶液であり、滅菌水溶液が特に好ましい。しかし、このキットの成分は、乾燥粉末として提供され得る。試薬または成分が乾燥粉末として提供される場合、この粉末は、適切な溶媒の添加によって再構成され得る。この溶媒もまた、別の容器手段で提供され得ることが想定される。このキットの成分のうちの1つは、経口投与のためのカプセルで提供され得る。
このキットの容器手段は、本発明の安定性を増加したチオモリブデート化合物(例えば、TP−TM)、ならびに任意の他の所望される薬剤が配置され得、そして好ましくは適切にアリコートされる、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または他の容器手段を含む。さらなる成分が含まれる場合、このキットはまた、一般に、これらが配置される第2のバイアルまたは他の容器を含み、このことは、別々に設計された用量の投与を可能にする。このキットはまた、無菌の薬学的に受容可能な緩衝液または他の希釈剤を含むために、第2/第3の容器手段を含み得る。
このキットはまた、本発明のチオモリブデート化合物を、例えば、1以上の針もしくはシリンジ、または眼への液滴、ピペット、あるいはこの処方物が動物中に注射され得るかまたは身体の疾患領域に適用され得る他のこのような装置によって、動物または患者に投与する手段を含み得る。本発明のキットはまた、代表的には、例えば、所望のバイアルおよび他の装置が配置および保持される注射または打撃成形プラスチック容器のような、商業的販売のために密着させて拘束して、バイアル、またはそのようなものを含むための手段、および他の要素を含む。
さらなるキットが、血清セルロプラスミンレベルを決定するための手段またはアッセイシステムの1以上の成分および/またはそれらの指示書、好ましくは必要とされるアッセイ構成要素の全ておよびこのアッセイを実施するための指示書を備え得る。血清セルロプラスミンレベル(好ましくは、ヒト結成セルロプラスミンレベル)を決定するための手段およびアッセイシステムにおいて、オキシダーゼ法で使用されるための構成要素、手段、およびアッセイシステムが使用され得る。例えば、Brewer etal., 1987b, Brewer etal., 1987c, Brewer etal., 1989ならびにSundermanおよびNomoto, 1970(これらの各々は、本明細書中において、参考として援用される)において報告されるように、ウイルソン病に使用される。
(VII.癌および処置)
本発明により提供される組成物および方法は、血管成分を有する任意の悪性腫瘍の処置に対して広範に適用可能である。代表的な血管新生化腫瘍は、固形腫瘍(特に、癌および肉腫)であり、これは、酸素および栄養素の供給のための血管成分を必要とする。血液学的な悪性疾患はまた、発達のために新脈管形成を必要とするように思われ、従って、即時銅低下剤を用いる処置にも潜在的に敏感である。本発明を使用して処置され得る模範的な固形腫瘍には、肺、乳房、卵巣、胃、膵臓、喉頭、食道、精巣、肝臓、耳下腺、胆道、結腸、直腸、頚部、子宮、子宮内膜、腎臓、膀胱、前立腺、甲状腺の主要な悪性腫瘍、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫(例えば、血管肉腫および軟骨肉腫)などが挙げられるか、これらに限定されない。転移性腫瘍もまた、本発明の方法および組成物を使用して処置し得る。
本発明は、固形腫瘍を提示する任意の患者の処置における使用について意図される。しかし、ここにおいて、本発明は、中程度のサイズまたは大きなサイズの固形腫瘍の処置において特に成功しており、これらのカテゴリーの患者はおそらく、本明細書中に提供される方法および組成物に従う処置からより顕著な利益を受ける。一般的に、本発明を使用し、約0.3〜0.5cm以上の腫瘍を処置し得るが、ヒトにおいて見出される最大の腫瘍まで、および最大の腫瘍を含む腫瘍もまた、処置され得る。
本発明の特定の局面において、本発明のより安定なチオモリブデート化合物(TP−TM)は、防止的または予防的処置および維持薬剤として意図される。本発明の外延のこの局面に基礎をなす多くの理由が存在する。例えば、中程度の大きさ以上の原発性腫瘍を提示する患者もまた、小サイズか、さらに転移性腫瘍シーディングの初期段階にあるとさえ考えられる種々の他の転移性腫瘍を有し得る。本発明のTP−TMおよび組み合わせが通常に経口投与されるか、または患者の体循環に投与されると仮定すると、本発明のTMおよび組み合わせは、二次的に、より小さくかつ転移性の腫瘍に自然に影響を及ぼすが、これはこの処置の第1の目的ではないかもしれない。さらに、全体としての腫瘍塊が単一性の小さい腫瘍である状況においてでさえ、特定の有益な抗腫瘍効果が、本処置の使用より生じる。
本明細書中に提供される、本発明に関係する使用のための最も適切な患者に関するガイダンスは、特定の患者のプロファイルが患者(本発明により処置され得るか、またはおそらく、他の抗癌処置ストラテジーを使用してより良好に処置され得る患者)の選択を援助し得る教示として意図される。それにもかかわらず、好ましいかまたはさもなくばより効果的な処置が、特定のカテゴリーの患者との関連において認知され存在するという事実は、血管化腫瘍を有するすべての患者の処置に関連する本発明の基本的な有用性をいずれにしても否定しない。さらなる考慮は、腫瘍に対する初期の攻撃(本発明の治療法により提供されるような)は、任意の測定可能かつ即効的な効果において小さいものとなり得るが、さらなる治療的処置に対して腫瘍を感作させるかまたは効果を高めさせ得、その結果、後の処置が全体的な相乗効果を生じ、さらに全体的な寛解または治癒に導くという事実である。
任意の特定のタイプの腫瘍を、本発明を使用する処置から除外すべきであるとは考えられない。本発明の方法論は、すべての固形腫瘍の処置に対して広範にまたは全体的に適用可能であり、腫瘍細胞それ自体の特定の表現型または遺伝子型とは無関係である。しかし、このタイプの腫瘍細胞は、2次的な治療薬剤との組み合わせた本発明の使用と関連し得る。
当業者は、特定のタイプの腫瘍が、本発明を使用して腫瘍停滞、腫瘍後退、および腫瘍壊死さえの誘導がより受け入れられ得ることを理解する。実験動物においてこの事象が観察され、ヒトの処置においても発生し得る。実験動物における前臨床研究と任意の特定の患者または患者のグループを処置する際の使用のための投薬量を最適化することにおける前臨床研究の両方を実施する際に、このような意図を考慮に入れる。
本明細書中に詳述されるように、臨床的処置の行為の前の前臨床試験に関連するガイドラインとして使用され得る現実的な目的が存在する。しかし、この目的は、全体的な有用性よりも費用効果がより重要であり、そして最も有利な化合物および用量を選択するための機構である。基本的な有用性に関しては、任意の一貫した抗腫瘍効果を生じる任意の構築物またはそれらの組み合わせは、さらに有用な発明を定義する。即製の組成物およびそれらの組み合わせの抗腫瘍効果が、その範囲の下限に向かっているという状況においてもなお、この治療法が特定の腫瘍標的の背景において公知である他のすべての治療法となお等しく効果的であり得るか、またはさらにより効果的であり得るということも理解される。臨床家にとって、特定の腫瘍が、中期または長期にわたって効果的に処置され得ないことは不幸にも明らかであるが、そのことは本治療法の有用性を否定するものではなく、特に、それが一般的に提案される他のストラテジーと大体同程度に効果的である場合、すなわちそれは、従来の他のすべてのストラテジーが失敗に終わった後、効果的になり得る。この治療法に対する抵抗性が発達することは予想されない。
より安定なチオモリブデート化合物、およびそれとの組み合わせの、適切な薬剤の用量を設計する際に、臨床投与のための適切な投与量に到達するために本明細書中に記載された動物研究から容易に推測し得る。この転換を達成するために、実験動物の1単位量あたりに投与される薬剤の量を計算し、そしてさらに、実験動物とヒト患者との間の体表面積の違いを計算する。このようなすべての計算は、当業者に周知であり、そして慣用的である。従って、本明細書中に提供される情報を使用して、本発明者らは、ヒト投与に使用するために、銅に結合し、そして3成分(薬剤−銅−タンパク質)からなる複合体を形成する(例えば、テトラチオモリブデート)薬剤の有用な毎日の投薬量が、1日あたり1患者あたり、約20mgと約200mgの間であることが意図される。明言されたこの範囲にかかわらず、所定のパラメーターおよび上記で表された詳細なガイダンス、活性なまたは最適な範囲のさらなる変動は、なおも本発明に含まれることが理解される。
従って、意図される毎日の投薬量は、通常は約20mgと約180mgとの間;約130mgと約200mgとの間;25mgと約160mgとの間;50mgと約150mgとの間;約150mgと約180mgとの間;約30mgと約125mgとの間;約40mgと約100mgとの間;約35mgと約80mgとの間;約140mgと約190mgとの間;約20mgと約65mgとの間;約125mgと約195mgとの間;約30mgと約50mgとの間;約150mgと約200mgとの間;または前記に列挙された模範的な投薬量のいずれかを使用する任意の特定の範囲内もしくは特定の決められた範囲の間の任意の中間値である。
およそ約60〜120mg以内またはその付近の投薬量が、本発明の特定の実施態様において現在は好ましいが、およそ約125〜200mg以内またはその付近の投薬量が、本発明の他の実施態様において現在は好ましく、より少ない投与量が、他の薬剤との組み合わせにおいて、または維持の状態下でより適切であり、そして多くの投与量がさらに許容され得ることが理解され、特に、本発明における使用のために銅に結合し、そして3成分(薬剤−銅−タンパク質)複合体を形成する薬剤それ自体は細胞毒性ではないという事実を考えると、たとえ有害な副作用が生じたとしても、このことは、必ずしも通常の恒常性機構により中和され得ない毒性を生じたということではなく、これは健常組織に対する有意な毒性の可能性を減少したと考えられる。
本発明の特定の好ましい実施態様において、毎日、約130mgまたは約150mgかそこらから約180mgまたは約200mgかそこらの間の負荷投与量を約2週間患者に投与し、続いて、毎日、約30mgまたは約40mgかそこらから約60mgまたは約70mgかそこらの間か、あるいはこの特定の決められた範囲の間の任意の中間値の維持投与量を患者に投与する。従って、本発明の特定の局面において、約125mgよりも多くの、約130mgよりも多くの、約140mgよりも多くの、約150mgよりも多くの、約155mgよりも多くの、約160mgよりも多くの、約170mgよりも多くの、約175mgよりも多くの、約180mgよりも多くの、約190mgよりも多くの、または約200mgかそこらよりも多くの本明細書中に記載される最大投与量までの負荷投与量が、発明者らによって、約1週間、約2週間、約3週間、または約4週間かそこらの間の毎日の模範的な負荷投与量として意図され、約20mg、約25mg、約35mg、約40mg、約50mg、約55mg、約65mg、約75mg、約80mg、または約90mgかそこらの毎日の維持投薬量が続く。
本発明の治療レジメの意図は、受け入れられない毒性に関連するレベルより下の投与量を維持する一方で、最大の抗腫瘍効果を通常に生成することである。投与量それ自体を変えることに加えて、投与レジメもまた、処置のストラテジーを最適化するために適合され得る。現在の好ましい処置のストラテジーは、銅に結合し、そして3成分(薬剤−銅−タンパク質)複合体またはその組み合わせを形成する薬剤を約20mgと約200mgとの間で、1日に約3回以上、約4回以上、約5回以上、約6回以上、食事のおよそ半分の時間および食間のおよそ半分の時間で投与することである。彼ら自身が特定の投与量を投与する際には、好ましくは、だれかがその患者の全身に薬学的に受容可能な組成物を提供する。一般的には、経口投与が好ましい。
(VIII.異常な脈管形成により特徴付けられる他の疾患)
癌および固形腫瘍の予防または処置に加えて、本明細書中に開示されるチオモリブデート組成物もまた、脈管形成異常に関連する他に疾患を予防または処置する際に使用され得、脈管形成異常には、関節炎、糖尿病、動脈硬化、動静脈の先天異常、角膜移植性新生血管形成、遅延した創傷治癒、糖尿病性網膜症、年齢関連黄斑変性、顆粒化、火傷、血友病関節、リウマチ様動脈炎、過形成性瘢痕、血管新生緑内症、偽関節、骨折、オースラーウェーバー症候群、乾癬、化膿性肉芽腫、水晶体後線維増殖、翼状膜、強皮症、トラコーマ、血管癒着、眼性新生血管形成、寄生虫病、手術後肥大、および体毛成長阻害が挙げられるが、それらに限定されない。
上述の疾患の各々は、本明細書中で記載されるように、種々の型の角膜における新脈管形成、慢性関節リウマチ、および全ての型の腫瘍は、米国特許第5,712, 291号(これは、本明細書中で参考として援用される)に開示されるように、当該分野における知見に従って本発明によって効果的に処置され得る。
米国特許第5,712, 291号は、本明細書中で参考として具体的に援用され、1つのモデル、系または疾患における抗血管新生活性が、非常に広範な血管新生疾患の処置を指示することが十分に予測される。
米国特許第5,712, 291号(これは、本明細書中で参考として援用される)に開示されるように、本発明の組成物、方法および使用もまた、以下を有するかまたはそれらを発症する危険性がある動物および患者を処置することが意図される。:血管結合組織の異常増殖、酒さ性ざ瘡、後天性免疫不全症候群、動脈閉塞、アトピー性角膜炎症、細菌性潰瘍、ベーチェット病(Bechets disease)、血液由来腫瘍(blood borne tumors)、頚動脈閉塞性疾患、薬品やけど、脈絡膜新血管新生、慢性炎症、慢性網膜はく離、慢性ブドウ膜炎、慢性ブドウ膜炎、コンタクトレンズの過剰装用、角膜移植片拒絶反応、角膜新血管新生、角膜移植片血管新生、クローン病、イールズ病、流行性)乾性角結膜炎、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、ヘルペス帯状疱疹感染、過粘稠症候群(hyperviscosity syndromes)、カポジ肉腫、白血病、脂質変性、ライム病(Lyme’s disease)、辺縁性角質溶解、蚕食性角膜潰瘍(Mooren ulcer)、ライ病以外の放線菌感染、近視、眼性新血管新生疾患、眼窩(optic pits)、オースラー−ウェーバー症候群(Osler−Weber syndrome (Osler−Weber−Rendu))、変形関節症、パジェット病、前部ブドウ膜炎(pars planitis)、類天疱瘡、フェレクテヌロシシス、多発性動脈炎、レーザー処置後の合併症(post−laser complication)、原生生物感染、弾力繊維性仮性黄色腫(pseudoxanthoma elasticum)、翼状角膜炎乾燥症、放射状角膜切開、網膜新生血管形成、未熟網膜症、水晶体後線維増殖症、サルコイド、強膜炎、鎌状赤血球貧血、ソグレン症候群(Sogrens syndrome)、固形腫瘍、スタルガルト病(Stargarts disease)、スティーヴンズ−ジョンソン疾患、上方輪部角結膜炎、梅毒、全身性エリテマトーデス、テリエン辺縁変性、トキソプラズマ症、外傷、ユーイング肉腫の腫瘍、神経芽細胞腫の腫瘍、骨肉腫の腫瘍、網膜芽細胞腫の腫瘍、横紋筋肉腫の腫瘍、潰瘍性大腸炎(ulceritive colitis)、静脈閉塞、ビタミンA欠乏症およびウェゲナーサルコイドーシス。
黄斑変性は、年齢関連疾患についての共通の名前であり、ここで黄斑網膜色素上皮細胞機能は通常よりかなり低下している。結果として、円錐体の老廃物除去および栄養補給が損傷し、中心視の欠損を引き起こす。黄斑変性は、さらに2つの種類:「乾燥型」および「湿気型」に分類され得る。乾燥型黄斑変性は、光感受性円錐体の外部セグメント(連続的に照らされる)が黄斑の色素上皮層により消化され得ない場合に生じる。結果として、色素上皮層が膨張し、円錐体由来の大量の未消化物質の蓄積後、結局死滅する。この老廃物の黄色の沈殿物は、脈絡膜と色素上皮との間の網膜下で徐々に発達する。この「乾燥型」黄斑変性は、円錐体がもはや機能しないエリアを生成して、一部の黄斑が死滅し始めた結果として中枢神経の視力を漸進的にぼんやりさせるか、または部分的に暗くすることによって特徴付けられる視力欠損である。臨床的に、この型の疾患で苦しむ人間は、比較的穏やかな中枢神経の視力の歪曲(直線が曲がったり、波打つように見える)を経験し得る。
この障害の第2番目すなわち「湿気」型は、より厳しく、かつ突然に視力の欠損を生じ得る。これは、異常な新しい血管または「新生血管膜」が、損傷した色素上皮を介し、そして黄斑の下で脈絡膜より発達する場合に生じる。新生血管膜は、壊れやすく、出血する傾向があり、このことは黄斑組織の厳しい歪曲を生じる。結果として、光感受性細胞(円錐体)が、その栄養源より分離され、そして出血が長く発生したときの傷に起因するさらなる損傷を受ける。この型の障害に関しては、中心視において暗さまたは「紛失」スポットが急速に発生し得、出血変化に起因する警告をほとんど伴わない。幸運にも、この初期過程におけるレーザー治療の介入が、さらなる視力欠損を予防し得る。
年齢関連黄斑変性(AMD)は、西洋諸国の65歳以上の成人の間の視力欠損の主要な原因である。新生血管性AMDは、すべてのケースのわずか10%を占めるにすぎないが、この疾患に起因する法律上の盲目の80%〜90%はそれが原因であり、この年齢集団の脈絡膜の新生血管形成(CNV)のほとんど共通の原因である。CNVへ導く病理学上の変化は、神経感覚網膜の2次的関与とともに、脈絡毛細管板(choriocapilaris)、Bruch膜、および網膜色素上皮(RPE)における組織の複合体に関与する。本質的に、網膜色素上皮およびBruch膜を変化させるどのようなものでもCNVを引き起こし得る。
AMD以外の種々の状態がCNV(眼性ヒストプラズマ症候群(POHS)、病的近視、網膜色素線条、および特発的な原因を含む)と関連している。ほとんどの組織病理学的研究が、AMDを有する眼球について実施されてきた。CNVを発達させる多くの眼球に共通する組織病理学的特徴は、Bruch膜の破壊である。毛細血管様新生血管形成は、脈絡膜血管より生じ、そして破壊のいたる所に伸長する。年齢関連黄斑変性は、CNVを有する患者の最も大きな群を占める。ほとんどのCNVの徴候はサブホビール(subfoveal)であり、そして極端に乏しい自然の病歴を実証する。サブホビール新生血管形成は、ホビール(foveal)無血管ゾーン(FAZ)の幾何的な中心の下に位置する病変として定義される。黄斑光凝固研究(MPS)における2年間未処理の眼から、88%が、20/200またはそれよりも悪い最終の視覚活性を有したのに対し、わずか5%のみが、20/100よりも良い最終の視覚活性を有した。
レーザー光凝固は、脈絡膜新生血管形成に対する治療の主流であった。良好に実行され、無作為化され、見込みのある一連の臨床試験を介して、種々の設定におけるCVNについての観察にわたってMPSの光凝固の優位性を確立した。特に、AMDおよび他の障害におけるホビール外の新生血管膜およびホビール近傍の新生血管膜の光凝固処置が、未処置群と比較して有益であることが見出された。しかし、CNVの全体エリアを処置するために、眼科医は、脈絡膜新生血管膜の境界を同定できるようになるべきである。従って、CNVの境界がよく区別される場合においてのみ、処置が指示される。不幸にも、潜在的またははっきりしない新しい血管が、AMDの浸出性の黄斑病変についての症状において最も共通するパターンである。1つの研究において、可視または規範となる新生血管膜が、処置について言及されたわずか23%の眼だけに関与した。最近、MPSは、レーザー処置の有益性を示すAMDにおけるサブホビール新生血管病変に対する光凝固の結果を報告したが、処置群と観察群との間の違いは小さく、2年および5年後に見られただけであった。また、レーザーエネルギーは網膜と網膜下膜の両方を破壊し、処置に関連する視覚活性において険しい落差が存在した。これらの結果は、乏しい自然の病歴の状態および処置様式としての光凝固の限界の両方を強調する。
角膜の新生血管形成に関連する他の疾患には、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏、コンタクトレンズ長時間使用、アトピー性角膜炎、上輪部角結膜炎、翼状角膜炎乾燥、シューグレン、しゅさ性挫瘡、フェレクテヌロシシス、梅毒、放線菌感染、脂質変性、化学的熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状ヘルペス感染、原生動物感染、カポージ肉腫、モレーン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁角膜炎(mariginal keratolysis)、慢性関節リウマチ、全身性狼瘡、多発性動脈炎、外傷、ウェゲナー類肉腫症、強膜炎、スティーブン−ジョンソン病、periphigoid radial keratotomy、および角膜移植片拒絶反応(corneal graph rejection)が挙げられるが、これらに限定されない。
網膜/脈絡膜新生血管形成に関連する疾患には、糖尿病性網膜症、黄斑変性、鎌状赤血球貧血、類肉腫、梅毒、弾性線維性仮黄色腫、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、頚動脈閉塞疾患、慢性のブドウ膜炎/vitritis、放線菌感染、ライム病、全身性エリテマトーテス、未熟児網膜症、イールズ病、Bechets病、網膜炎または脈絡膜炎を引き起こす感染、推定眼ヒストプラスマ症、ベスト病、近視、optic pits、Stargarts病、pars planitis、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラスマ症、外傷、およびレーザー後の合併症が挙げられるが、これらに限定されない。他の疾患には、ルベオーシス(アングルの新生血管形成)に関連する疾患、および線維性血管または線維組織(増殖性硝子体網膜症のすべての形態を含む)の異常増殖により引き起こされる疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
新脈管形成が関与するものと考えられる別の疾患は、リウマチ様動脈炎である。リウマチ様動脈炎は、拡散性および結節状の単核細胞浸透ならびに間質の結合組織の塊状過形成により特徴付けられ、線維芽様細胞および新しい血管を含む。接合部の滑膜の裏打ちされる血管が、新脈管形成を起こす。新しい血管ネットワークの形成に加えて、内皮細胞が因子および活性酸素種(パンヌス増殖および軟骨破壊を導く)を放出する。新脈管形成に関与する因子は、リウマチ様動脈炎の慢性的な炎症状態に活動的に寄与し得、そして維持を補助し得る。
新脈管形成に関与する因子はまた、変形性関節症において役割を有し得る。脈管形成関連因子による軟骨細胞の活性化は、その接合部の破壊に寄与する。後の段階において、脈管形成因子は、新しい骨形成を促進する。慢性的な炎症はまた、病理学的な新脈管形成に関与する。潰瘍性大腸炎およびクローン病のような疾患の状態は、炎症組織への新しい血管の内殖とともに、組織学的変化を示す。バルトネラ症(南アメリカにおいて見出された細菌感染)は、血管内皮細胞の増殖により特徴付けられる慢性段階を生じ得る。新脈管形成に関連する別の病理学的役割が、アテローム性動脈硬化症において見いだされる。血管の内腔内に形成されたプラークが、脈管形成刺激活性を有することが示された。
以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様を実証するために含まれる。以下の本実施例において開示される技術は、本発明の実施において十分に機能するために本発明者らによって開発された技術を示し、従って、その実施のための好ましい様式を構築するとみなされ得ることは、当業者に明らかである。しかし、本開示を考慮して、多くの変更が本発明の精神および範囲から逸脱することなく開示される特定の実施態様においてなされ得、そしてなお同様のまたは類似の結果を得ることが、当業者に明らかであるべきである。
(実施例1)
(細胞毒性に対するTMの効果)
培養中の正常細胞および腫瘍細胞は、それらの栄養分を、培地から細胞の内部への分子の移動および利用から誘導する。このプロセスは、血管増殖に依存せず、従って、TM、TP−TMおよび関連する化合物は、ほとんどの細胞にとって毒性であるレベルが達成されるまで、広範囲の濃度にわたって細胞増殖速度および細胞の生存度に対して効果を有さない。毒性の1つの機構は、基礎的な細胞機能に必要な銅のレベル未満の遊離の銅のレベルの枯渇である。この毒性レベルを超えるTM、TP−TMおよび関連する化合物の濃度について、正常細胞および腫瘍細胞の両方は、細胞毒性に起因して、生存し得ない。
このことを、MML細胞(前立腺癌)および乳癌細胞の細胞傷害性アッセイにおいて確認した。0.001μM〜1mMの範囲にある種々の濃度のTMを含む培地中で同数の細胞をプレートした後、インビボで使用された濃度の範囲において、毒性は観察されなかった。生存細胞の画分は、TMの濃度が1μg/mlから10μg/mlへ増加した場合に、100%から15%へ大きく減少した。従って、細胞傷害性効果に必要な非常に高用量で、腫瘍細胞死および正常細胞死の両方が生じることが明らかであるので、TMは、直接的な細胞傷害性薬剤を使用するために意図されない。有効な除銅レベルを達成するために必要な血清TM、血清TP−TMおよび血清中の関連する化合物の濃度は、細胞に対する致死閾値レベルよりも100〜500倍低い。ウィルソン病を患うマウスおよびヒトにおいて有効な除銅用量を使用した場合、TMは、いずれの臨床的に明白な直接的な細胞傷害性を生じなかった。
(実施例2)
(マウス前臨床抗癌研究におけるTMの使用)
本発明者らは、以前に達成されたよりも大きい程度の銅欠損が、新脈管形成を阻害し、そして腫瘍増殖を有意に阻止するために必要であることを結論付けた。このことは、減少した腫瘍塊に加えて、延長した生存または腫瘍後退もまた観察されることを意味する。以下に記載される研究(これは、げっ歯類において腫瘍増殖阻害のための抗銅アプローチを使用した)は、一般に、そして特に銅の研究において、ヒトおよび動物微量元素に由来する指針を十分に取り込まなかった(DickおよびBull、1945;MillerおよびEngel、1960;Macilese Ammermanら、1969;Millsら、1958;Coxら、1960;Dickら、1975;Mason、1990;McQuaidおよびMason、1991;Millsら、1981a;Millsら、1981b;Bremnerら、1982;Gooneratneら、1981a、b;Jacobら、1981)。
対照的に、本発明は、公知の最も能力のある抗銅薬剤であるTM、TP−TMおよび関連する化合物、強力な抗銅剤を使用する。鎌状赤血球貧血における処置として亜鉛を(ここで、本発明者らは、銅欠損を誘導した亜鉛の最初のヒトの事例について記載した;Brewerら、1983)、ウィルソン病における抗銅処置として亜鉛を(Brewerら、1989;Brewer、1995a)、そしてウィルソン病における最初の抗銅処置のためにTMを(Brewerら、1983;Brewer、1992;Brewerら、1994b;Brewerら、1995b)使用する、本発明者らの広範な実験を、有効な銅欠損を達成するためのアルゴリズムの開発において使用した。臨床的使用のためのTMの開発者として、本発明者らは、動物およびヒトの両方における有意な実験を獲得した。
(A.C567B1/C6マウスへの腫瘍細胞の注入)
これらの指針下において、抗新脈管形成の治療研究を、マウス腫瘍モデルにおいてTMを使用して実施した。この研究は、若い成体C57B1/6Jマウスへの腫瘍細胞の皮下注射または筋内注射を含めた。2つの腫瘍(マウス肉腫(MCA205)およびマウス黒色腫(B16B16))を使用した。MCA205腫瘍細胞懸濁液を、C57B16マウスに皮下注射した。腫瘍を触知可能にした後、銅欠損を、銅の状態をモニターするためにCpレベルを使用して、動物の半数に、TMの使用によって誘導した。他方の半数は、偽処置した。腫瘍増殖を、処置していないコントロール群と、正常コントロールの約10%までCpを減少するに十分なTMを用いて処置したマウスとの間で比較した。
腫瘍の増殖速度の減少に対する有意な効果、ならびに最終的な腫瘍サイズおよび重量の減少に対する有意な効果を、TMを用いて得た。比較的短期間の観察(16日)において、腫瘍増殖を処置によって緩慢にしたが、停止しなかった。TM処置したマウスにおける腫瘍は、この動物の総体重に対して正規化し、これは、コントロールマウスにおける腫瘍よりも有意に低かった。これらの結果は、両方の腫瘍型において類似していた。従って、TMは、使用された用量で細胞傷害性効果がないとき、おそらくその抗新脈管形成機構により、腫瘍増殖および重量を減少した。
しかし、この実験計画は、以下の理由のため、抗腫瘍薬剤としてのTMの潜在的効力を評価するためにさらに改良され得る:1)マウスにおいて、1cm以上の腫瘍は、生命にかかわる負荷になり、そしてしばしば潰瘍化する。しかし、マウスおよびヒトの両方において、このサイズの腫瘍およびより大きい腫瘍は、持続性増殖のために新脈管形成に最も依存する;ならびに2)2〜3mmでの腫瘍の検出と、1.5cmでの腫瘍の検出との間の期間は、マウスにおいて比較的短く、ほんの数日である。銅の腫瘍塊を枯渇するために時間を要するので(特にほとんどの腫瘍は、高レベルの銅を隔離するので)、腫瘍は、ほぼ完全な銅枯渇の達成の前に、それ自体の貯蔵から有意な新脈管形成を支持し得る。
(B.HER2−neuトランスジェニックマウス)
従って、動物プロトコルを、癌傾向性の雌性HER2−neuトランスジェニックマウスにおける臨床的に明白な腫瘍の遅延または予防におけるTMの効果の有効性を試験するために設計した(Guyら、1992;Mullerら、1988)。これらのマウスは、誕生時および乳児期において正常であるが、トランスジーンに起因して、これらのマウスの100%が、4〜8月齢の間に(中間値205日)乳腺癌を発症する(Guyら、1992)。このモデルを選択する主要なさらなる理由は、これらのマウス乳腺癌の天然の履歴が、ヒトにおける処置していない乳癌の臨床的挙動に顕著に類似することである。HER2−neuマウス腫瘍は、長い潜伏後に発症し(トランスジーンの変異誘発に起因し、そして過剰発現に起因しないようであることが現在公知である)、そしてこの腫瘍は、この腫瘍がほとんどは肺に転移する前に大きなサイズ(しばしば>2.5cm)を達成するまで、主に局所領域に残存する。処置群とコントロール群との間の、腫瘍の発症時期ならびに腫瘍血管の質および量を比較した。
3匹の初代トランスジェニック雌性マウスを3匹のトランスジェニック雄性マウスと繁殖した後、雌性子孫を2つの群に分けた:一方の群は、15匹の処置動物を有し、そして他方の群は、22匹のコントロール群を有した。処置していないコントロール群において疾患を有さないマウスの百分率を、100日齢で開始する毎日の胃管栄養法により0.5〜1.0mgのTMで処置した同じトランスジェニックマウスの群と比較した。TMを用いる処置を、腫瘍が臨床的に明白となる約80〜100日前に開始し、その結果、処置した動物に、新脈管形成が必要となり始め得る場合に、重要な腫瘍発生の期間を通じて銅欠損を与える。これは、これらが身体の銅の総量が低下するにもかかわらず、腫瘍が新脈管形成を維持し得る、大量の銅を隔離することを防ぐ。
260日の追跡の中間で、TMで処置したマウスのいずれもが、臨床的に顕性な腫瘍を発症しなかったが、コントロールの70%が、同じ追跡期間において腫瘍を示した。コントロールマウスの50%は、218日齢までに臨床的に明白な腫瘍を発症した(p<0.02)。コントロールは、153日齢に始まって腫瘍を示し始めたが、TM処置した動物は、TM治療を中断し、そして銅のレベルが上向きにドリフトことを可能にするまで、腫瘍を示さなかった(p<0.0146)。
代理指標であるセルロプラスミン(Cp)(分光光度計活性アッセイによって測定される)の使用による処置群における血液の銅レベルのモニタリングは、Cpがベースラインの40%未満まで減少したことを示した。この系統のマウスにおいて、銅がこのレベルに減少したときに観察された貧血は存在しなかった。別々の群の4匹の処置動物に、2〜4週間にわたって1.0〜1.5mgのより高い用量のTMを与えた。1.25〜1.5mgを受けた動物は、治療の1〜3週間後に死亡した。剖検は、1匹の動物が吸引性肺炎によって死亡し(胃管栄養法の事故に基づく)、2匹の動物が検死(necrospy)においてこれらの組織に対する血管性傷害の明らかな証拠を伴い、尿細管性壊死および肺性出血によって死亡したことを示した。これらの研究は、延長した処置が計画される場合に、1.0mg/日が、成体マウス(平均体重32グラム)におけるTMについての最大寛容用量(MTD)であることを示唆する。
コントロールマウスにおける乳腺癌を、TMを用いてサイズを減少し得るか否かを試験するために、3匹のコントロール動物を、腫瘍が十分に確立された(>1.5cmの最大直径)後に処置した。2/3の場合において、腫瘍は、25%および50%有意に縮小した。
次に、延長したTM治療が、おそらく乳房組織を損傷し、腫瘍が標的の欠失に起因して処置動物においておそらく上昇し得なかったという可能性を決定した。コントロール動物の80%が腫瘍を発症し、そして処置動物のいずれもが腫瘍を発症しなかった後、コントロール動物を処置から解放した。臨床的に顕性の乳腺癌は、マウスのこの交差群において、18日以内に発症し始め(これは、以前に疾患を有さなかった)、これは、確かに標的組織における腫瘍開始事象が生じたが、臨床的に検出可能な塊への腫瘍の拡大は、銅欠損状態において可能でなかったことを示唆する。
TMで処置したマウスの乳腺の顕微鏡的分析は、血管形成しなかった約3〜10細胞の層の厚さの、多く(1〜8)の小さな「微小腫瘍」を示した。しかし、TM治療からの解放に際して、これらの微小腫瘍は、活発に血管形成した明白な塊へ非常に迅速に成長した。全ての細胞および分子の詳細は、まだ解明されていないが、この重要な発癌モデルにおいて、処置したマウスの微小腫瘍のいずれもが血管形成されなかったので、銅欠損が、脈管形成を転換するか、またはそれからすぐ下流の工程を阻害したことは、明らかである。
要約すると、銅のアベイラビリティを減少させると、固形腫瘍の増殖(転移の増殖を含む)を減少させ、そして最終的には停止させる。ウィルソン病を有しないヒトにおける腫瘍増殖の減少に必要な銅のアベイラビリティにおける減少が、本明細書中以下に記載されるように、確認された。抗腫瘍剤としてのTM、TP−TM、および抗腫瘍薬剤のような関連の化合物の成功は、効果を得るために必要な銅の欠乏の程度と、銅の欠乏の程度の毒性との間の関係に、少なくとも一部基づく。腫瘍脈管形成が軽度の銅の欠乏の後に続く場合に抑止されるので、TM、TP−TMおよび関連する化合物はいくつかの異なる腫瘍学的適用のために顕著に有効な薬剤である。TM療法、TP−TM療法および療法のために意図される他の設定としては、高齢者であるかさもなければ化学療法を受けるには不適格である患者における、または高い危険性にある個体(炎症性癌、複数の陽性結節)における細胞増殖抑制性剤としての、化学療法または骨髄移植の後の療法の維持が挙げられるが、これらに限定されない。
(C.移植した腫瘍を有するヌードマウス)
この研究において、ヒト乳癌細胞の垂直性注射後のヌードマウスの乳房パッドにおける腫瘍の増殖を抑止するかまたは遅延させるテトラチオモリブデート(tetrathiomolybdate:TM)の能力を研究した。SUM149と称される高度に脈管形成性の炎症性乳癌細胞株を、この研究のために選択した。注射したヌードマウスの80〜100%の乳房への注射の2週間以内に明白な腫瘍を形成するその傾向高い場合に、この細胞株は、腫瘍の進行を損なうTMの能力のストリンジェント試験を止めた。
5匹のヌードマウスの3群の各々を、別々の檻に設定した。群2および3に、−7日で開始して、平均1.2mg/日/マウスの摂取になるよう飲料水中でTMを与えた。群1、2および3に、第2の胸郭乳房脂肪パッドにおいて10SUM149乳癌細胞を0日目で注射した。34日目に、明白な腫瘍が処置群における任意のマウスにおいて顕著ではない場合、TMを群2および3において省き、次いでTMを、群2においては、0.6mg/日/マウスの用量で再開したが、TMを、群3においては、完全量(1.2mg/マウス/日)で再開した。
発症している腫瘍を、ほぼ週に2回測定した。そして各群についての時間に対する二次元の水晶体周囲の直径の産物の平均を決定した。コントロール群における腫瘍は比較的迅速に増殖し、そして全ての動物が腫瘍を発達させた。対照的に、処置群については、TMを34日に省く、腫瘍は明白ではなかった。その後、1/2用量のTM(これは、銅のレベルが50%まで減少するのみであることが公知である)を受けた群において腫瘍はより迅速に増殖した。対照的に、非常に小さな腫瘍のみが、完全量のTM(これは、1.2mg/日/マウスとして規定される)で処置した群において増殖した。この用量は、ベースラインレベルの約10〜20%まで銅を減少させる。これは、マウスおよびヒトの両方において十分寛容された銅の欠乏の程度であり、この程度は、腫瘍脈管形成を阻害するに必要であるようである。
この研究は、TM、TP−TMおよび関連の化合物はおそらく、少なくとも2通りの方法で脈管形成を阻害するという考えを支持する:1つは、「脈管形成スイッチ」の阻害により、そしてもう1つは、かさ高い腫瘍の脈管形成の阻害による。34日目でTMを省くと、脈管形成スイッチは活性化できず、そして銅を欠乏したヌードマウスに注射した腫瘍クラスターへ血管をもたらし始める。このスイッチの活性化は、いくつかの腫瘍増殖を可能にするが、TMで処置した群がかなりゆっくりと腫瘍を増殖させ、そしてプラトーに達するようであることが明らかである。この研究はまた、ヌードマウスの飲料水中におけるTM、TP−TMおよび関連の化合物の経口投与を確証する。
(実施例3:抗癌療法としてのTMのフェーズI/II臨床試験)
(A.緒言)
転移性固形腫瘍を有する患者は、しばしば、細胞減少化学療法の蓄積性毒性および薬物耐性に起因して、治療選択肢が非常に限定されている。上記の臨床前研究(これは、マウス腫瘍モデルにおける抗銅アプローチについての効率を示した)後に、フェーズI臨床試験を、転移性癌を有する18人の患者において行った。この患者を、食事とともにおよび食間に6分割用量で投与された3用量レベルの経口テトラチオモリブデート(TM;90、105、および120mg/日)にて登録した。血清セルロプラスミン(Cp)を、全身銅についての代理マーカーとして使用した。貧血が銅の欠乏の最初の臨床的徴候である場合、この研究の目的は、ベースラインの80%未満までヘマトクリットを減少させずに、ベースライン値の20%までCpを減少させることであった。Cpは、銅の状態の確実かつ感度のよい測定であり、そしてTMは、Cpをベースラインの15〜20%まで減少させた場合、非毒性であった。120mg/日のTMのレベルIII用量は、毒性を追加せずに、目標Cpを到達させるのに有効であった。TMで誘導した軽度の銅の欠乏は、少なくとも90日間の目標範囲にて銅が欠乏している6人の患者の内の5人において、安定な疾患に達成した。
(1.毒性)
TM、TP−TMおよび関連する化合物の薬理学的効果は、完全に銅に特異的である。これらが、他の無機塩に対する検出可能な効果を有さない場合、その毒性は、銅の欠乏に直接関連する。使用した用量では銅の欠乏以外には、動物において記載される毒性は存在しない。ヒトにおいて、1日あたり6回、30〜40mgの用量で治療を維持するためにTMを摂取するウィルソン病患者において、可逆性貧血の2つの報告が存在する。ウィルソン病を有する45人の患者にウィルソン病のための最初の治療としてTMを8週間用いる処置において、可逆性貧血の5症例(11.1%)が観察された。貧血は、骨髄における銅の枯渇の結果として、ヘム合成が減少することに起因する。血液がCuレベルにおける最も重篤な減少を示した患者は、この貧血を示す。
上記で言及したように、TM、TP−TMおよび関連の療法を受けている動物またはヒトの銅の状態は、血清銅単独に続き得ない。なぜなら、TM、銅、およびアルブミンの複合体は、銅の高い定常状態が達成されるまで、その蓄積よりもゆっくりと血液から除かれるからである。しかし、この複合体の銅は、細胞取り込みには利用可能ではなく、いずれの銅依存性の細胞プロセス(例えば、脈管形成)にも関与せずに、そして尿および胆汁を介して身体から徐々に除かれる。本発明者らは、以下のような、TM、TP−TM、および関連の療法の間のヒトにおける銅バランスを、認識される銅の欠乏の3つの状態に従ってモニターするためのガイドラインを開発した(Brewer,1992;Brewerら、1991a)。
(第1段階−化学的な銅の欠乏)
この段階の間に、血清セルロプラスミン(Cp)活性は、ベースラインの約5〜10%まで減少する。Cp(銅含有タンパク質)は肝臓において合成され、そしてCp合成は、銅の枯渇の間に減少する。銅の欠乏のこの段階は、研究室においては測定可能であるが、臨床的徴候または症状を有しない。Cpは、初期の臨床的な銅の欠乏が結果として生じる前に、正常の数%未満でなければならない。
(第2段階−軽度の臨床的な銅の欠乏)
Cpを5〜10日間0〜5%で保持した後、銅の欠乏の最初の臨床的徴候が出現し得る。これらは、軽度の好中球減少症および低色素性小球性赤血球変化である。白血球数およびヘマトクリットの両方は、ベースラインの約75〜85%まで落ちる。銅はヘム合成に必要なので、末梢スメアにおいて見られる形態学的変化は、鉄の欠乏のこれらの特徴と類似する。銅の欠乏がより重篤になる場合、赤血球不同症および変形赤血球症を悪化させる。この軽度の貧血および好中球減少症の発症は緩やかであり、そしてしばしば、全体的に無症候である。
(第3段階−中程度から重篤な臨床的な銅の欠乏)
代表的には、Hctがベースラインの70%未満の場合、不適切な造血から生じるより重篤な臨床的徴候および症状が起こる。これらは、食欲の減退、体重減少、下痢、損なわれたメラニン産生に続く毛色の損失、稀に不整脈である。
本発明者らは、軽度の化学的な銅の欠乏(見かけ上は長期間、ヒトによって非常に良く寛容される状態)は、固形腫瘍脈管形成を阻害するためのストラテジーとしての効力を有すると結論付けた。それゆえ、TM、TP−TMおよび関連の化合物の効力の代理終点を確立するための銅の欠乏の程度の調節および注意深モニタリングは、このアプローチの重要なエレメントである。
本発明者らは、相対的な銅の欠乏の様々な段階、化学的な銅の欠乏と臨床的な銅の欠乏との間の分割線、およびどのように測定して銅の状態を評価するかについての適切なプロトコルについての非常に良好な、証拠に基づく知見を有する。患者は緊密にモニターされるので、フェーズI研究は、これまでは、非常に安全であった。見分けられるべき主な治療的問題は、銅についての腫瘍脈管形成の要求が、銅を必要とする必須の細胞ハウスキーピングより有意に高いか否かである。
(2.薬力学)
TMは、食事とともにおよび食事を伴わずに投与され、そして後者の条件で十分に吸収される。TMは、銅およびタンパク質と3成分の複合体を形成し、それにより、食事とともに投与される場合に食物中の銅を結合し、銅の吸収を妨げるか、または吸収後に血流中(TM−Cu−アルブミン)において、細胞の銅の取り込みを妨げる。正常な銅代謝を有する患者において、非セルロプラスミン血漿銅(潜在的に脈管形成に利用可能)と血漿モリブデンとの間の化学量論的な1:1の関係は、各々10〜20mgの6の毎日の用量を用いて予期される。軽度の銅の欠乏の定常状態を生じるTM、TP−TM、および関連の化合物の用量レベルは、ほとんどの個体について、毎日40〜90mgの範囲内で変化する。TM−Cu−タンパク質の複合体は、胆汁中に優先的にゆっくりと排泄され、小量もまた尿中に排泄される。MoおよびCuの24時間の尿の測定は、3成分の複合体の排除の速度の決定を助ける。
(B.方法)
(1.患者)
転移性固形腫瘍を有する18人の成人(測定可能な疾患、3ヶ月以上の平均余命、および少なくとも60%のカルノフスキー効率状態を示す)を登録した。疾患の唯一の徴候として滲出または骨髄関与を有する患者、および集中管理が必要な重篤な介入性疾病を有するかまたは輸血依存性の患者を除外した。患者は以前の毒性からは回復していなければならず、そして研究室パラメーターについて以下の要件を有した:WBC≧3,000/mm、ANC≧1,200/mm、Hct≧27%、Hgb≧8.0gm/dl、血小板数≧80,000/mm、ビリルビン<2.0mg/dl、AST/ALT<施設基準の上限の4倍、血清クレアチニン<1.8mg/dlまたは算定されたクレアチニンクリアランス≧55ml/分、カルシウム<11.0、アルブミン≧2.5gm/dl、PT<13秒、およびPTT<35秒。他の要件は、手術、化学療法、放射線療法、および/または免疫療法のような標準的な処置後の、以前3ヶ月における疾患の実証可能な進行、あるいは従来の処置様式の減退後の進行性疾患であった。
(2.処置計画:用量および段階的増大)
3つの用量レジメを評価した。TM20mgからなる全ての用量レベルを、食事とともに毎日3回および食間投薬で段階的増大(レベルI、IIおよびIII)を、毎日3回(1日に全部で6用量)与えた、負荷用量レベルI、IIおよびIIIは、全ての用量レベルで、食事とともに、各20mgの3用量に加えて、それぞれ、食間に3回、TMを、10mg、15mgおよび20mg与えた。
ベースラインCpを、処置の1日(1日を含む)に最も近いCp測定として選択した。なぜなら、血液が、全ての患者について、TM前に抜き取られたからである目標CPの減少を、ベースラインCpの20%として規定した。約2%のCpアッセイの可変性に起因して、ベースラインの22%までのCpの変化を、銅の所望の減少が達成されたとみなした。さらに、絶対的なCpが5mg/dl未満である場合、患者を、目標Cpに達成したとみなした。5mg/dl未満の絶対的Cp(ベースラインから少なくとも78%の減少を伴わない)に起因して、目標に達した患者はいなかった。目標の銅の欠乏状態に達した後に、TM用量は、個々にあつらわれ、ベースラインからの70〜90%減少の目標ウインドウ内でCpを維持した。
6人の患者は、各用量レベルにて登録されることになっていた。4人の患者をレベルIに登録した後、1人の患者が用量限定毒性(DLT)(Hct<ベースラインの80%として規定される)を経験した場合、さらに2人の患者をレベルIに登録した。DLTが観察されなかった場合、患者を次の用量レベルに登録した。患者が以下の規定によって臨床的応答を部分的もしくは完全に経験したかまたは臨床的に安定な疾患に達成した場合、処置を、目標の銅の欠乏の導入を超えて続けた。完全な応答を、活性疾患の臨床および研究室徴候および症状の全ての消失として規定する。部分応答を、病変の最長の垂線直径の積の合計によって規定した測定可能な病変のサイズにおける50%以上の減少(新たな病変または病変のサイズの増大なし)として規定する。わずかな応答を、1つ以上の測定可能な病変の最長の垂線直径の積の合計における25〜49%の減少(いずれの損傷のサイズの増大も新たな病変もなし)として規定する;安定な疾患は、最小の以前の測定または新たな病変の出現と比較した、腫瘍測定における任意の変化であり、応答または進行性疾患についての基準(これは、任意の測定可能な指標病変の最長の垂線直径の積の合計において25%異常の増加として規定される)によっては表されない。銅の欠乏は、細胞傷害性処置の様式ではないので、進行型の癌を有する患者のこの集団において、長期治療のためのTMの効力についての情報を提供する患者は、主に、90日間にわたってベースラインの(20±10)%の目標Cpウインドウ内に残る患者(疾患進行を有しない)である。
(3.銅状態のモニタリング)
方法は、銅状態を容易かつ確実にモニターすることを必要とし、その結果、TM用量は、この試験の間、適切に調整され得る。TM投与を用いると、血清銅は、全身銅の有用な測定ではない。なぜなら、TM−銅−アルブミン複合体は、迅速に除去されず、そして全血清銅(TM−タンパク質複合体に結合した画分を含む)は、実際に、TM治療の間に増加するからである(Brewerら、1991a;1994b;1996)。毎週得た血清セルロプラスミンレベルを、全身銅状態の代理測定として使用した。血清Cpレベルは、肝臓によるCp合成によって制御され、これは次に、肝臓に対する銅のアベイラビリティによって決定される(Linderら、1979)。従って、全身銅が減少するにつれ、血清Cpレベルは比例して減少する。血清Cpレベルは、正常なコントロールおよび癌患者について、それぞれ、20〜35mg/dlおよび30〜65mg/dlの範囲にある。この試験としての目的は、7〜12mg/dlの範囲における代表的なCp値を用いて、ベースラインの20%またはそれ未満までCpを減少させることであり、そしてベースラインCpの(20±10%)程度にわたるウインドウ内にこのレベルを維持することである。この程度の銅減少のからの臨床効果は都合が悪くないようであるので、このレベルの銅の欠乏は、「化学的な銅の欠乏」と称されている。真の臨床的な銅の欠乏の最初の指標は、銅がヘム合成および細胞増殖に必要であるので、血液数における減少、原発性貧血である(Brewerら、1996)。従って、この試験の銅の欠乏の目的は、(患者のヘマトクリットまたはWBCを登録時のベースライン値の80%未満まで減少させることなく)ベースラインの20%またはそれ未満までCpを減少させることであった。
(4.毒性、追跡、および疾患の評価)
完全な血球数、肝臓および腎臓機能試験、尿検査、ならびにCpレベル(オキシダーゼ法による)を、16週間毎週1回行い、次いで2週間に1回行った。毒性の身体的試験および評価を、8週間2週間毎に行い、次いで、治療の間4週間毎に行った。毒性を、National Cancer Institute Common Toxicity Criteriaを用いて評価した。TM、TP−TM、および関連する化合物が使用した用量では細胞傷害性薬物ではなく、既に、上記の詳細に記載されたものとは異なる任意の他の毒性を伴わずにヒトに与えられているので、毒性の大部分は、起こるはずであるが、TM、TP−TM、および関連する化合物に起因して予測できない。にもかかわらず、治療を中断し、そして患者を、可能性のある病因にかかわらず、グレード3または任意の型のより高い毒性が観察された場合には、この研究から取り除いた。グレード2の毒性について、それらの病因を確立する試みを行う。慣用的な支持ケア手段が状態を緩和しない場合、この薬物を中断し、そしてこの患者を研究から除外する。
疾患の程度を、登録時、銅の欠乏(ベースラインの20%またはそれ未満のCpとして規定した)の達成時、およびその後10〜12週毎に評価した。コンピューター支援断層撮影または磁気共鳴画像化を、全ての公知の部位での疾患の従来の測定および疾患の任意の可能性のある新たな部位の評価に適切なように使用した。3次元ドップラー分析を用いる脈管形成感受性超音波を、従来の画像化への補助として、選択した場合に使用して、異なる時点で腫瘍への血流を評価した。
(5.TMの調製および貯蔵)
TMを、ヒト投与に適したバルクロットで購入した(Aldrich Chemical Company、Milwaukee、WI)。TMは、空気に曝露した場合にゆっくり分解され、酸素がこの分子中の硫黄を置換して、TMを不活性にする(Brewerら、1991a;1994b;1996)ので、アルゴン下で、100グラムロットで貯蔵した。処方を書いた時点で、適切な用量のTMを、ゼラチンカプセル中に配置した。以前に、本発明者らによって、このようなカプセル中に分散されたTMは、8週の間、その効力の少なくとも90%を保持したことが示された(Brewerら、1991a)。従って、TMを、この試行の間にわたって、8週分割して、各患者に分配した。
(6.血流の測定)
血流を、接近可能な損傷を有する選択患者中で、その患者らが銅欠乏になった時点で、そしてその後8〜16週間の種々の間隔で、超音波により測定した。3Dスキャンを、739L、7.5MHz線形アレイスキャンヘッドを備えた、GE Logiq 700超音波システム上で実施した。このスキャン技術および血管分布定量技術は、以前に記載されたのと同様である(Carsonら、1998;LeCarpentierら、1999)。
(C.結果)
(1.患者の特徴)
他の処置選択肢を通じて進行したかまたは(1つの症例では)減少した、11の異なる型の転移性癌を有する、18人の好適な患者(10人の男性および8人の女性)を、この患者らを照会した順で、この試行に登録した。6人、5人、そして7人の患者を、プロトコル用量漸増スキームに従って、それぞれ、90mg/日、105mg/日、および120mg/日の薬物レベルで登録した。もともと105mgレベルに割り当てた1人の患者を、疾患の迅速な進行に起因して、早期に除いて、細胞傷害性化学療法を遂行した。この同じ患者を、後に、より長い期間の間120mgレベルで再処置した。従って、この同じ患者を、この分析について120mg薬物レベルでのみカウントする。平均年齢は59歳であり;平均ベースラインCpは47.8mg/dlであった。これは、その患者の疾患状態を反映して、正常と比較して高い。表4は、各用量レベルについての患者の特徴を要約する。
(2.毒性)
ベースラインの20%またはそれを超えるCpレベルが観察された、心臓毒性、肺毒性、胃腸毒性、腎臓毒性、肝臓毒性、血液学的毒性、感染毒性、皮膚毒性、粘膜毒性、または神経学的毒性は存在しなかった。軽い(ベースラインHctの80%を超える)可逆的貧血が、ベースラインの10〜20%の間のCpレベルの4人の患者で観察された。これらの患者のうちの2人は、細胞傷害性化学療法で処置されており、そして2人の患者は、この試行にエントリーした時点で、その疾患への広範な骨髄の関与の証拠を有した。これらの場合のうちの後の方の2人において、その貧血は処置以外の原因に起因した可能性が最もあるが、2単位のパックされたRBCの輸液によってHctが受容可能なレベルまで回復されるまで、TMを一時的に停止した。1人の患者において、TMにより引き起こされた銅欠乏が、貧血を生じた可能性が非常にある。この薬物の停止により、5〜7日以内に、輸液の必要なしでヘマトクリットが回復するのが可能になった;患者の要求により、TMを、より低用量で再開して、貧血のさらなる合併症を伴わなかった。幾人かの患者は、TM摂取の30分以内に、一過性の、硫黄臭のするげっぷを時折経験した。いかなる型のさらなる毒性も観察されず、8〜15月にわたり軽い臨床的銅欠乏を長期維持した。注意すべきことには、胃腸の出血または他の粘膜の出血、またはわずかな外傷の治癒の減損の証拠は、長期の治療に伴って観察されなかった。広範な転移性腎臓癌を有する1人の閉経前の患者が、TM治療の間に、正常な月経期間を経験した(ベースラインの20%未満の銅欠乏の間の2.5月の観察を含む)。
(3.銅の状態の代理基準としてのセルロプラスミン)
TM療法における時間の関数としてCpの応答は、が決定され、この応答は、90mg/日、105mg/日、および120mg/日の用量レベルに登録された各患者についてのベースラインCpレベルに対する時間tでのCpの割合として表現される。1日あたり10mgを3回から1日あたり15mgまたは20mgを3回までに食間用量を増加することは、Cpレベルの減少速度に対する有意な効果を有さず、平均30日(中間値=28日)でベースラインの50%のレベルに達した。TM治療に対する時間の関数としてのCpの応答は、わずかな変動しか示さず、TMを停止した場合には、48時間以内に、Cpの迅速な増加が観察された。
4人の患者を、疾患の進行に起因して、ベースラインの20%の標的Cpを達成する前に研究から除いたが、残りの14人の患者は、この標的Cpレベルを達成した。この標的Cpレベルを達成した14人すべての患者が研究続行を望んだので、これらの患者が疾患の進行または毒性を示さない限り、このプロトコルに従って、これらの患者が研究続行することを許可した。このTM用量を、これらの患者において、ベースラインの10〜20%の間のCpを維持するように調整した。これらの患者は、このアプローチの効力および長期の許容性の、予備的証拠を提供する。
(4.標的Cpを維持するための用量調整)
ベースラインの20%のCp標的を維持するため、および5mg/dl未満の絶対Cp値を防ぐために、TM用量を調整した。このCp試験のための慣用的7日の所要時間に起因して、これらの用量変更を、Cp測定のための血液を採取した約7〜10日後に、行った。標的Cpを達成した後、食間用量は、代表的に20mg減少された。さらなる15〜30mgの減少が、長期の治療の間に必要であった。長期の治療に際して、乳癌の放射線処置に従属的な転移性軟骨肉腫を有する患者が、12月の銅欠乏の後に安定した疾患を有し、安定した生活の質を伴った。生検で明らかである第3指上の転移性小節は、容易に測定可能であり、そして安定であった。興味深いことに、この患者は、この比較的に長い期間を通じて、標的Cpを維持するために、開始負荷用量レベルからこのTM用量へ、わずかな調整しか必要ではなかった。
ベースラインの20%のCp標的を維持するためのTM、TP−TMおよび関連する化合物を用いた長期間の療法の管理は、容易に達成され得、これは、TMを用いた療法の約100日間に亘って、以下の代表的な患者について記載される。ある患者は、60日間の間隔での用量の減少のみを必要としてきた。Cpが5mg/d位未満に低下することを防ぐために、この患者は、将来的に、TM用量の減少が必要とされる可能性がある。殆どの患者は、長期間の療法においては、用量における増加と減少の両方を必要としてきた。例えば、TM用量を、Cpがずれて標的範囲を超えることを防ぐために100日目後に増大した。食餌および腫瘍挙動(例えば、腫瘍細胞溶解)の不均一性が、用量調節の必要性における個々の変わりやすさを説明し得る。胸部において疑われる疾患の他の部位が、安定である。結論として、週ごとに評価されるTM療法に対するCp応答は、不安定ではなく、または広範な揺らぎのもとにない。
(5.TMに対する転移性癌の応答の測定)
(a.臨床的評価)
これらの患者は、異なる開始負荷用量のTMを受けたが、ベースラインの(20±10)%のCp維持範囲を、負荷用量に関わらず、すべてのグループで使用した。90日を超える間、TM用量の行き届いた調整を通じて、この程度の銅欠乏を維持した患者は、その腫瘍に対するTM、TP−TM、および関連する化合物の抗脈管形成性活性を反映するようである。90日の期間は、2つの主な理由のために選択される。第1に、TMは、癌または内皮細胞のいずれに対しても細胞傷害性ではなく、そして主に、内皮細胞機能および前脈管形成因子(pro−angiogenic factor)産生を損う。この作用機構は、腫瘍塊のサイズに対する非常に遅い効果を有することが予期される。第2に、腫瘍が銅を封鎖する(sequester)ので、その腫瘍の微小環境が、より長い時間をかけて、銅欠乏にされると予期される。表5は、この18人の患者の臨床的経過を要約する。
14人の患者が、疾患の進行または他の疾患合併症の前に、標的銅欠乏を達成した。これらのうち、8人の患者が、銅欠乏を達成した30日以内に進行したか、または90日未満の間安定な疾患を有したかのいずれかであった;これらの腫瘍のほとんどは、この型の治療に対する臨床的応答を評価するに十分長く、抗脈管形成環境を経験した。疾患の進行または選択に起因してプロトコルから除かれたすべての患者において、そして小腸閉塞を軽減するための腹部手術の必要性に起因して1人の患者において、TM治療の停止の後に、大いにより迅速な速度の疾患の進行が、臨床的に着目された。
残りの6人の患者は、安定した状態の疾患を受けたか(6人のうち5人)、または1つの部位では疾患が進行し、他の部位では安定した状態の疾患を受けた(6人のうち1人)。標準的な規準によって安定な状態の疾患を有する2人の患者はまた、120日および49日に標的Cpでの観察期間の間に、いくつかの肺病変の完全な消失および他の肺病変の大きさの減少を受けた。安定した状態の疾患を伴う、長期(90日を超える)維持療法下の5人の患者は、この分析の時点で、120〜413日間、銅欠乏性であった。
(放射線学評価)
CAT走査またはMRIを用いる従来の画像化による腫瘍塊の連続評価は、特定の塊の放射線学外見が経時的に有意に変化することを明らかにした。特に、推定の中心壊死の領域(X線シグナルのより低い減衰に対応する)が、種々の腫瘍タイプにおいて、最も顕著には、腎臓細胞癌、血管肉腫、および乳癌において観察された。長期TM療法における銅欠乏の間の時間の関数として、腫瘍に対して血流を評価しようとして、超音波が到達可能な病変を、銅欠乏の開始時、およびその後2〜4ヶ月の間隔で、カラーフロー(color flow)三次元超音波で画像化した。
従来のCAT走査画像および血流感受性3D超音波を、標的銅欠乏に達した際、および8週間後に腎臓細胞癌からの肋骨転移において比較した。CAT走査は、この病変が経時的に安定した大きさであることを示した。一方、(見こみのある)中心壊死のより明確な領域は、標的銅欠乏に達した8週間後に観察される。比較して、約8週間のこの期間におけるこの塊に対する血流の4.4倍の減少が、3D超音波によって検出された。これらの2つの技術によって研究された塊に加えて、この患者は、胸部、骨盤、および大腿において広範な疾患を有した。
(他の処置様式と組み合わせたTM)
銅欠乏の長期維持の間、さらなる処置様式を、患者の最適な管理に適切であるように、TMに追加した。以前に処置していない転移性乳癌を有する患者は、処置の12ヶ月後には、良好から優れた生活レベルを伴える程度に回復している。この患者は、気管傍リンパ節、後頚部リンパ節、および腹膜後リンパ節鎖において転移を有したが、全ての細胞傷害性療法を辞退した。この患者は、TM処置における6ヶ月を超える間、安定した状態の疾患を有した。このとき、気管傍節および腹膜後節の二次元サイズのわずかな増加(ベースラインの25%未満)に起因して、この薬物が市販されるようになった後、トラスツズマブ(trastuzumab)療法を平行して開始した。この患者は、疾患の全ての部位でトラスツズマブに対する迅速な応答を示した:1サイクル後、頚部において完全な臨床応答があり、そして3サイクルのトラスツズマブ後には、全ての以前疾患であった部位で、完全な応答が放射線学的に確証された。この患者は、TMを続けたが、トラスツズマブは、6投与後に中断した。患者は、トラスツズマブ療法の中断後の3ヶ月間、TM単独では完全な応答者として状態を維持しつづけた。トラスツズマブ療法の追加後に完全な応答が達成されたので、この患者は、TMに対して安定した状態の疾患のみを有するとして分類される。
顔面および頭皮の広範な血管肉腫を有する2人の患者は、TMに対して安定した状態の疾患を達成した。眼窩を脅かす眼病変からの重篤な慢性出血を有する1人の患者において、インターフェロン−α2(IFN−α)を、腫瘍応答を増強しようとしてTMに追加した。血管腫の進行についての研究に基づいて、低用量のインターフェロンの使用が、血管腫の処置の間、有効であり得るという示唆(Takahashiら、1994)を考慮して、IFN−αをこれらの両方の患者に、1日に2回、500,000単位の用量で、皮下投与した。放射線療法もまた、これらの2人の患者に対し、活発に出血中の(しかし、進行していない)病変を制御しようとして、TMを行う一方で行った。両患者とも、60日を超える間、疾患が安定した。彼らの1人は、患者の選択のために治療を中断する前は、5ヶ月を超える間、安定した状態の疾患を維持した。TMにこれらの処置様式を追加することによって、毒性の悪化は見られなかった。
これは、癌についての抗脈管形成療法として、テトラチオモリブデートを用いる銅欠乏の誘導および維持の初めてのヒトでの試験である。進行した癌を伴う患者群において、TMは、Cpが、処置の17ヶ月までの間に、ベースラインレベルの10〜20%に低下する場合、顕著に無毒であることが実証された。観察された薬物関連毒性は、1人の患者において軽度の貧血のみであった。これは、Cpレベルを所望の標的にもたらすようにTM用量を調整して、容易に可逆性であった。多様な必須の生物学的プロセス(ヘム合成、スーパーオキシドジスムターゼおよびシトクローム機能を含む)において銅が果たす多様な役割にもかかわらず、継続した有意な有害な効果は、ベースラインの約20%までのCpの減少の際に観察されなかった。この銅の減少のレベルにより、化学的な銅欠乏の限界がより低くなり、そして軽度の臨床上の銅欠乏(これは、軽度の貧血の最初の徴候である)の開始となる。
オキシダーゼ法(安価でかつ広く利用可能な試験)により得られた血清Cpレベルの使用は、TM療法の間の全身の銅状態の感受性があり、かつ信頼性のある代理マーカーとして確証された。1日当たり6回の投薬レジメ、および1日当たり90〜120mgの範囲の開始TM用量を使用すると、血清Cpは、試験した18人の患者のうち17人で、ベースラインの50%に再現性をもって低下し、そして18人の患者のうち14人でベースラインの20%に再現性をもって低下した。ベースラインの50%への減少は平均30日で達成され、さらに、5〜10mg/dlのCpレベルの低下には20〜30日間かかった。このCpの減少速度は、早期の悪性病変の初期処置またはアジュバント設定には合理的であるが、広範に転移した進行した癌においては、この速度は、有意な数の患者において、銅欠乏の誘導の間のいくらかの疾患進行を妨げるために加速される。90〜120mg/日の負荷用量の変化は、Cp減少の速度に影響しないようであるので、そして、食物による銅の代表的な1日摂取を考慮すると、食間におけるより高い用量が、銅欠乏の誘導の速度を加速するために必要とされる。
TM誘導銅欠乏に対するCp応答は、単調であり、そして被験体間の変動をほとんど示さないので、用量管理を難しくする、突然の変化または予測し得ない変動の危険性は本質的にない。Cpレベルに従って、銅状態をモニタリングするには、1〜2週間に1回で十分である。結果として、過治療が容易に検出可能であり、そして矯正可能である。
本研究の結果として、現在のTM用量レジメを用いると、TM療法の開始と、おそらく抗脈管形成レベルまでの腫瘍中の銅レベルの減少との間には、かなりの開きがあることが明らかである。銅欠乏の抗脈管形成レベルに達する能力のさらなる遅延は、ほとんどの腫瘍が銅を隔絶する(sequester)可能性である(ArnoldおよびSasse、1961;Apelgotら、1986;Gullinoら、1990;FuchsおよびSacerdote de Lustig、1989)。従って、脈管形成を阻害するのに十分に低いレベルであるとして定義される、有効に低いレベルの銅に腫瘍微環境を枯渇させるには、さらなる時間が必要であり得る。従って、非常に迅速な進行性の大きな腫瘍を有する患者は、抗脈管形成療法に加えて、本明細書中に記載のようなさらなる処置様式を必要とし得る。
さらに、初期に有効な抗脈管形成は、活発な腫瘍壊死を引き起こし得、このことは、死滅しつつある細胞からさらなる銅の放出を生じる。1人の患者の場合、Cpにおける一過性の上昇は、超音波が、大きな腫瘍塊が血流の有意な減少に起因して中心的な壊死を受けることを示唆したのとほぼ同じ時に、観察された。従って、ベースラインの20%の標的レベルでのCpの60〜90日という期間は、抗銅療法に対する応答の評価のために合理的な出発点である。肺病変の部分的な退縮を示した2人の患者では、腫瘍の制御はより早期に始まり得た。これらの両患者において、肺実質転移が腫瘍退縮の部位であったこともまた、興味深いことである。軽度の臨床上の銅欠乏は、高い酸化ストレスの条件(例えば、肺において存在するような条件)下では、転移病巣が酸化的損傷により感受性であるように、スーパーオキシドジスムターゼ機能を損なう可能性がある(Culottaら、1997)。
個体差に関わらず、所定の塊に対する全血流を決定するための3D超音波の使用は、少なくとも8週間の間に誘導されたベースラインの20%への軽度の銅減少の維持が、腫瘍血流を変化させるのに十分なようであることを示す。病巣の血流または代謝状態に対してコンピューター補助断層撮影が相対的に非感受性であるために、3D超音波についてここで実証されるように、並行した画像化様式が、腫瘍の大きさに加えて機能的応答を評価するために好ましい。
これらの研究は、種々のタイプの固形腫瘍の大きさが、本研究により定義されるようにベースラインの20%以下にまでCpを減少させることにより表される、軽度の臨床上の銅欠乏の状態に十分な時間を考慮して、TMにより安定しているか、または減少していることを示す。90日を超える日数の間、標的Cpレベルで維持された患者間で、有意な割合の症例(6人のうち5人)が安定しており、生活レベルに悪影響はなかった。進行した癌を有するこの患者集団では、処置された患者のうち39%が、この期間の間、標的Cpで維持され得た。
これらの患者において観察された進行パターンおよび進度もまた、有用な情報を提供した。1人の患者が1つを除いて全ての部位で安定した状態の疾患を達成し、より生活を脅かす疾患部位(腸リンパ節および気管傍リンパ節)での疾患の安定のために、TM療法を続けることを選択した。興味深いことに、黒色腫を有するこの患者における進行の部位は、大副腎転移である。この部位は、現時点で、照射を受けている。この試験におけるこの所見および他の所見は、銅欠乏が、脈管形成の大部分の阻害性となり得るが、腫瘍タイプの異質性および転移の特異的な局在が、この治療様式に対する応答を調整し得ることを示唆する。病変は、TM療法を受けているときよりも銅が枯渇した際にずっと早く進行するようであるので、補助様式(全身的または局所局部的のいずれかで)が、患者に銅欠乏状態を残しながら、進行の特異的部位に取り組むために、使用され得る。
これらの研究はまた、TMと放射線療法、トラスツズマブ、およびインターフェロンαとの組み合わせ療法が、追加した様式の明らかな毒性悪化を伴うことなく生じることを示した。全体として考慮すると、この試験に由来する安全性および予備的な効力データは、早期転移性疾患、最小疾患の処置のために、および伴う高リスク臨床設定(化学防御を含む)において、TM、TP−TMおよび関連する化合物を単独で、または組み合わせて使用することを支持する。
(実施例4:抗癌療法としてのTMの第二期/第三期臨床試験)
(A.序)
この試験における薬物用量およびスケジュールの設計に、4つの考慮要件が提起される。第一の要件は、以前使用した投薬レジメは、銅の減少に有効ではあるが、余りにも長くかかりすぎ、効力を適切に評価するためにCp終点に達することができないことである。腫瘍は銅を隔絶することが知られているので(Apelgotら、1986;ArnoldおよびSasse、1961)、抗脈管形成効果は、全身銅欠乏が、おそらく少なくとも数週間から数ヶ月まで維持されるまで、検出されないようである。従って、効力についての可能性を最大にするためにできるだけ迅速に全身銅欠乏の終点(0〜20%Cpレベル)に達することが重要である。従って、現在の試験は、「負荷」用量を利用して(2週間用いる)、Cp規準を達成し、続いて、より低い維持用量を利用して、0〜20%ベースラインの標的Cpが続くようにする。この設計は、第一期試験で得られた知識を利用し、そして安定な状態の疾患または腫瘍の減少を提供するTMの効力を決定する。
第二に、この試験は、有効な応答が、どれほど厳密にCpレベルが制御されるかに依存するか否かを評価する。従って、第一の患者群では、Cpレベルは、10〜20%の間で維持され、そして第二の患者群では、Cpレベルは、0〜10%の間で維持される。
第三に、この試験は、低い銅状態の維持が、亜鉛療法と共により容易に維持されるか否かを決定する。本発明者らは、ウィルソン病のFDA認可療法として亜鉛を開発した。これは、腸メタロチオネインを誘導し、そして銅の吸収を阻止することによって作用する。従って、6人の患者では、低い銅状態が、1日3回25mgの亜鉛を使用することにより維持される。この用量は、Cp規準を維持するのに必要なように調整される。
(B.第二期研究)
(1.負荷用量)
本発明者らは、食事と共に1日3回20mgおよび食事間に1回の60mgの投与の投薬スケジュールが、食事と共に1日3回20mgおよび食事間に1日3回の20mgの投与の投薬スケジュールよりも、Cpレベルを迅速に20%未満に減少することを見出した。従って、この投薬スケジュールを第二期試験で研究する。TMの3つの他の負荷用量もまた研究する:レベル1:食事間に1日3回20mgおよび食事と共に1日3回20mg、Cpが20%未満になるまで(10人の患者);レベル2:食事間に1日3回25mgおよび食事と共に1日3回25mg、Cpが20%未満になるまで(10人の患者);ならびにレベル3:食事間に1日3回30mgおよび食事と共に1日3回30mg、Cpが20%未満になるまで(10人の患者)。
負荷用量研究の目的は、2〜3週間以内で所望のCpレベル(ベースラインの20%未満)に達することである。この試験は、レベル1で開始する。レベル1が、所望のCpレベルを達成すれば、全ての30人の患者は、用量レベル1の用量で負荷する。レベル1が所望のCpレベルを達成しなければ、この試験は、レベル2の負荷用量に移り、そして必要であればレベル3の用量に移る。これらの用量の各々は、数週間から数ヶ月の間は安全である。
(2.TMの維持用量)
2つのレベルの維持用量を研究する:レベル1:TM用量を、必要に応じて、Cpをベースラインの10〜20%に維持するように調整する(12人の患者);およびレベル2:TM用量を、必要に応じて、Cpをベースラインの0〜10%に維持するように調整する(12人の患者)。
2つの維持用量レベルを比較する目的は、よりストリンジェントな銅制御が効力を増強する傾向にあるか否かの全体像を得ることである。一般に、腫瘍タイプを、2つのレベル間で無作為化する。
(3.亜鉛の維持用量)
各負荷用量群からの2人の患者(合計で6人の患者)を、維持制御のために亜鉛療法で処置する。この試験は、(食事とは別に)1日3回の25mgの亜鉛で開始し、そしてベースラインの20%未満にCpを維持するように用量を調整する。
亜鉛研究の目的は、TMを用いるよりも、亜鉛を用いる維持の間に銅状態を制御することがより容易であるかを知ること、および亜鉛を用いる効力がTMを用いる効力にほぼ匹敵し得るか否かの全体像を得ることである。
(4.患者選択規準)
患者選択規準は、以下を包含する:a)転移性腺癌、扁平上皮癌、または肉腫が任意の器官に由来すること;b)疾患が、胸部X線、CAT走査、または骨単純写真により測定可能であること;c)疾患の進行が、開始3ヶ月以内で少なくとも1回示されること;d)インフォームドコンセントを受けることができること;e)動作状態がECOG 0−1であること;およびF)余命6ヶ月以上であること。
排除規準は、以下を包含する:ヘマトクリットが29未満であること、LFTが正常の4倍を超えること、または重篤な共存する医学的疾患が集中的な管理を必要とすること。
(5.パラメーター)
患者において伴われるパラメーターは、以下である:1)CBC血小板(毎週);2)電解質、BUN、クレアチニン、LFT(毎週);3)血清中銅、モリブデン、セルロプラスミンのための血液(毎週);4)検尿(毎週);5)臨床状態(2週間毎);6)腫瘍測定(4週間毎);および7)脈管形成の探索−感受性の超音波(8週間毎)。
(6.毒性終点)
既に述べたとおり、薬物は、ヘマトクリットまたはWBCのいずれかがベースラインの80%より下方に低下した場合に停止する。薬物はまた、考えられる全身毒性(例えば、異常な肝臓もしくは腎臓機能試験)、またはNCI規準により3級以上のいかなる他の毒性もの形跡がある場合にも停止する。
(7.研究の長さ)
6ヶ月までに患者において疾患の安定または減少の形跡がなかった場合、その患者での研究は終了する。そうでない場合、治療は、疾患が、全ての部位の最初の大きさの25%以内に制御され、有意な毒性がなく、そして患者が続けることを望む限り、続ける。
(実施例5)
(テトラプロピルアンモニウムテトラチオモリブデート(TP−TM))
(A.調製)
(NH4)2[MoS4](5.2g,20mmol)を、水(100ml)中に溶解して、そして、この濾液を、1.0MのnPr4NOH水溶液(40ml)に添加した。溶液の色は、明赤色に変化して、その反応混合物は、赤色沈殿を形成した。1時間に亘って、攪拌した後に、その沈殿物を、濾過して、空気乾燥した。その濾液を、N2のスリーミングによって水を取り除き、より多くの生成物を生成した。通常は、10〜11g(収率84〜92%)の結晶質生成物が、単離された。その化合物を、XRD分析、FT−IR分析、UV−VIS分析およびCHN分析によって特徴付けた。調製物のごとのCHN分析は、僅かに低いCおよびNの含有量を示した。これは、その水に起因するものであるが、XRD測定によって、全ての化合物が、同じ結晶系を有していることを確認した。
(B.X線結晶解析)
濃縮した水溶液からの針状結晶を、単離して、回折データをCCS回折計上で回収した。この化合物は、単斜晶系にて結晶化する。単位格子:a=32.067(3)Å b=13.7236(15)Å c=14.8379(16)Åaおよびβ=109.241(2)°。この構造は、空間群C2/Cで解いた。(NH[MoS]の結晶充填投影図を、図1に示す。
単一の結晶のX線構造決定から取得した原子座標に基づいて計算されたX線粉末パターンを、図2に示す。そして、結晶から実験的に取得したX線粉末パターン(n−Pr4N)2MoSを、図3に示す。これは、その結晶物質が、構造決定に使用された単一結晶と同一であると結論される。
Figure 2005538093
Figure 2005538093
Figure 2005538093
Figure 2005538093
対照変換が、等価な原子を生成するために使用される:#1−x,y,−z+1/2
Figure 2005538093
Figure 2005538093
Figure 2005538093
(C.安定性)
4つの異なるサンプルを、経時間的に評価した。乾燥した結晶を、密閉ボトルおよび開放したボトルにおいて維持した。乾燥した基礎結晶(Ground crystal)および湿った基礎結晶を、開放したボトルの中で維持した。UV−可視光の分光計を、その安定性のために移用して、1mgの化合物を、20mlの水に溶解して、その溶液を調製した。その化合物は、2ヶ月の期間に亘って安定であり、そして、その吸光度の変化は、実験誤差の範囲のうちであった。
(実施例6)
(TP−TMの安定性の増強)
安定性の増強の初めに示された後に、TP−TMの安定性をオリジナルのTM調製物(AmmTM)に対して比較するための研究を行った。この研究は、不安定性を悪化する条件の下で実施された。すなわち、その薬物を、開放したペトリ皿中に室温に存在させた。経時的な2つの薬物の活性における差異を、表8および図4に示す。
Figure 2005538093
これらの研究から、これらの条件下にあるTP−TMの半減期は、驚くべきことに、約180日であると決定された。対照的に、同じ条件下のオリジナルのTM(AmmTM)の半減期は、約40日間であった。安定性における差異によって、TP−TMがTMに比べて非常に改善された薬物となった。なぜならば、これは、脱気することに過度の注意を払うこともなくバルク中で薬学的操作可能であり得るからである。類似の条件下のその最終的な処方物の貯蔵寿命が、TP−TMについてものがずっと良好であることも意味する。
(実施例7)
(インビボでのTP−TMの抗腫瘍効果)
TMは、動物およびヒトにおいて、安全であるが、効果的な抗血管新生作用および抗腫瘍作用を有するために、そして、TP−TMが重要な銅結合作用を維持するが安定性を増加するように設計されたために、TP−TMはまた、有益な抗血管新生効果および抗腫瘍効果を有することが期待された。以下の研究は、インビボにおけるこれらの特性を確認するために設計した。
この研究において、10の乳癌細胞が、無胸腺のヌードマウス(1群につき5匹のマウス)の4つの群の哺乳動物性脂肪パットにおいて注入された。コントロールマウスは、処置を受けていない。この他の3つの群は、オリジナルのTM(AmmTM 1mg/日)または2種の異なる用量のTP−TM(1mg/日および1.5mg/日)で処置し、そして、その処置の経過にしたがって腫瘍の体積を測定した。
図5に示されるように、処置された動物の増殖曲線は、コントロール動物(p<0.01)とは有意に違い、そして、TMおよびTP−TMの両方が、その研究の時間的な経過にしたがって腫瘍増殖を効率的に阻害する。重要なことに、このTP−TM増殖曲線(図5上で「TP」と標識される)は、TM曲線からは有意に識別可能ではなかった。これは、新規の化合物が、親化合物とインビボ腫瘍増殖を阻害するのに親化合物と等価な生物学的な効力を有することを示している。さらに、この研究は、TP−TMの1〜1.5mg/マウス/日の用量が効力をもつのに十分であることを示している。
(実施例8)
(インビボにおけるTP−TMの安全性)
実施例6および7におけるデータは、TP−TMがその親化合物よりも安定を増加させるが、それは、本質的に、インビボにおける対照研究において同じ抗腫瘍効果を有していることを示している。この実施例は、TP−TMから放出された塩が、臨床処置のために必要とされる用量よりも数倍高い容量でもマウスにおいて非毒性あることを示す。
TP−TMの分解産物の非毒性の特性を確認するために、塩化テトラプロピルアンモニウムを、3から4匹のマウスの群に2mg/マウス/日、20mg/マウス/日、40mg/マウス/日、60mg/マウス/日、80mg/マウス/日、100mg/マウス/日、および200mg/マウス/日の用量で投与した。2mg/マウス/日および20/mgマウス/日の用量について、全ての動物が、58日間後でも生存かつ健康であった(表9)。
Figure 2005538093
表9はまた、その塩化テトラプロピルアンモニウムの用量のヒトにおける等価量を示し、より大きい哺乳動物に対してスケーリングされる。上述の研究において腫瘍の阻害のための必要とされる用量の20倍の用量まで使用したときに、マウスにおける検出可能な毒性は存在しなかった(実施例7)。これらの用量レベルは、TP−TMの等価な生物学的銅低減効果のために、ヒトが曝露されるテトラプロピルの用量の46.6倍および466倍を示す。これらのデータは、ヒトにおいてこの化合物を用いた銅低減療法に可能な限り必要とされる用量の数倍の用量であるTP−TMから放出された塩がマウスにおいて無毒性であることを示す。

本明細書中に開示され、そして請求された全ての組成物および/または方法は、本開示を考慮して過度の実験を伴うことなく作製され、そして実施され得る。本発明の組成物および方法は、好ましい実施態様によって記載されるが、この組成物および/または方法に対して、ならびに本明細書中で開示された方法の工程または一連の工程において、発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく変更が適用されることが、当業者に明らかである。より詳細には、化学的かつ生理学的の両面で関連しているある薬剤が、同じまたは類似の結果が達成されれば本明細書中に記載の薬剤について置きかえられ得ることも明らかである。当業者に明らかである、このような全ての同様の置き換えおよび改変は、上記の特許請求の範囲に定義されるような発明の精神、範囲、および概念内であることは当業者に明らかである。
(参考文献)
以下の参照文献は、それらが、本明細書中の記載を補充して、代表的な手順または他の詳細を提供する程度に、参照として本明細書中に詳細に援用される。
Figure 2005538093
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Claims (55)

  1. 組成物であって、生物学的有効量の少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物および薬学的に受容可能な賦形剤を含む、組成物。
  2. 請求項1に記載の組成物であって、ここで、該組成物は、テトラメチルアンモニウムテトラチオモリブデートを含む、組成物。
  3. 請求項1に記載の組成物であって、テトラエチルアンモニウムテトラチオモリブデートを含む、組成物。
  4. 請求項1に記載の組成物であって、テトラブチルアンモニウムテトラチオモリブデートを含む、組成物。
  5. 請求項1に記載の組成物であって、テトラプロピルアンモニウムテトラチオモリブデートを含む、組成物。
  6. 薬学的に受容可能な賦形剤およびテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物を含む組成物であって、ここで、該アルキル基が、空気および水分に対して曝露されることによる酸化から該テトラチオモリブデートを保護して、それによって、該テトラチオモリブデート化合物の安定性を増大させ;ここで、該テトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物が、溶解性を保持し、かつ、実質的に生物学的に活性であるテトラチオモリブデートおよび実質手的に生物学的に不活性であるアルキルアンモニウム基を水溶液中に放出する、組成物。
  7. 生物学的有効量のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物および薬学的に受容可能な賦形剤を含む組成物であって、ここで、該テトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物が、少なくとも約7日間に亘って加熱した湿潤空気の中で実質的に安定であり;室温での空気に曝露した場合のアンモニウムテトラチオモリブデートの半減期の少なくとも2倍の半減期を有し;水中において少なくとも約1mg/mlまで安定であり;そして、水溶液中で、実質的にインタクトな銅結合特性を有するテトラチオモリブデートを放出する、組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物であって、静脈内投与のために処方される、組成物。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物であって、眼用投与のために処方される、組成物。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物であって、ここで、該組成物は、経口投与のための処方される、組成物。
  11. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物であって、少なくとも第2の、別個の、治療剤をさらに含む、組成物。
  12. 請求項11に記載の組成物であって、亜鉛化合物をさらに含む、組成物。
  13. 請求項11に記載の組成物であって、少なくとも第2の、別個の抗血管新生剤をさらに含む、組成物。
  14. 請求項13に記載の組成物であって、アンギオスタチン、エンドスタチン、トリエンチン、ペンシラミン、および亜鉛からなる群より選択される少なくとも第2の抗血管新生剤をさらに含む、組成物。
  15. 請求項11に記載の組成物であって、少なくとも第2の、別個、抗癌剤をさらに含む、組成物。
  16. 請求項15に記載の組成物であって、化学療法剤、放射線療法剤、イムノトキシン、抗血管新生剤、アポトーシス誘導剤、銅化合物および亜鉛化合物に結合する別個の薬剤からなる群より選択される、少なくとも第2の抗癌剤をさらに含む、組成物。
  17. 治療用途のために、少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物を含む、組成物。
  18. 異常血管新生に関連する疾患の処置または予防における用途のための、少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物を含む、組成物。
  19. 癌の処置または予防の用途のための、少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物を含む、組成物。
  20. 癌を標的化する用途のための、請求項1〜7のいずれかに1項目に記載の組成物。
  21. 異常血管新生によって特徴付けられる疾患の処置または予防のための医薬品の製造におけるテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物の使用。
  22. 請求項21に記載の使用であって、ここで、前記医薬品は、滲出型黄斑変性症または慢性関節リウマチを処置または予防することを意図する、使用。
  23. 請求項21に記載の使用であって、ここで、該医薬品が、癌を処置または予防することを意図する、使用。
  24. 癌を処置するための医薬品の製造における、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物の使用。
  25. 治療有効量の少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物、ならびに、(a)治療有効量の少なくとも第2の、別個の治療剤;または(b)血清セルロプラスミンレベルを決定するためのアッセイシステムの少なくとも1つの成分を、少なくとも第1のコンテナの中に含む、キット。
  26. 請求項25に記載のキットであって、ここで、該少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物が、薬学的に受容可能な組成物中に配合される、キット。
  27. 請求項25に記載のキットであって、ここで、該少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物は、テトラプロピルアンモニウムテトラチオモリブデートである、キット。
  28. 請求項25〜27のいずれか1項に記載のキットであって、ここで、該キットは、前記少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物、および前記少なくとも第2の、別個の治療剤を、備える、キット。
  29. 請求項28に記載のキットであって、ここで、前記少なくとも第2の、別個の治療剤が、亜鉛化合物または少なくとも第2の別個の抗血管新生剤である、キット。
  30. 請求項28に記載のキットであって、前記少なくとも第2の、別個の治療剤が、少なくとも第2の、別個の抗癌剤である、キット。
  31. 請求項28に記載のキットであって、ここで、前記少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物および前記少なくとも第2の、別個の治療剤が、単一のコンテナ中に含まれる、キット。
  32. 請求項28に記載のキットであって、ここで、前記少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物、および前記少なくとも第2の、別個の治療剤が別個のコンテナに含まれる、キット。
  33. 請求項25〜請求項27のいずれか1項に記載のキットであって、該キットは、前記少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物および血清セルロプラスチンレベルを決定するためのアッセイシステムの前記少なくとも1つの成分を含む、キット。
  34. 請求項33に記載のキットであって、該キットが、血清セルロプラスチンレベルを決定するためのアッセイシステムの全ての成分をさらに含む、キット。
  35. 異常血管新生と関連する疾患を処置または予防する方法であって、異常血管新生に関連する疾患を有するかまたは発症する危険性を有する動物に、治療有効量の少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物を含む薬学的組成物を投与する工程を
    包含する、方法。
  36. 請求項35に記載の方法であって、ここで、前記薬学的組成物は、治療有効量のテトラポリアンモニウムテトラチオモリブデートを含む、方法。
  37. 請求項35または請求項36に記載の方法であって、ここで、前記薬学的組成物が、非経口的に前記動物に投与される、方法。
  38. 請求項35または請求項36に記載の方法であって、ここで、前記薬学的組成物は、前記動物の眼に投与される、方法。
  39. 請求項35または請求項36に記載の方法であって、前記薬学的組成物が、経口的に前記動物に対して投与される、方法。
  40. 請求項35または請求項36に記載の方法であって、治療有効量の少なくとも第2の、別個の治療剤を前記動物に投与する工程をさらに包含する、方法。
  41. 請求項40に記載の方法であって、前記少なくとも第2の治療剤が、亜鉛化合物または少なくとも第2の別個の抗血管新生剤である、方法。
  42. 請求項35または請求項36に記載の方法であって、前記動物が、滲出型黄斑変性症を有するかまたは滲出型黄斑変性症を発症する危険性を有する、方法。
  43. 請求項35または請求項36に記載の方法であって、前記動物は、慢性関節リウマチを有するかまたは慢性関節リウマチを発症する危険性を有する、方法。
  44. 請求項35または請求項36に記載の方法であって、前記動物が、癌を発症を有するかまたは発祥する危険性を有する、方法。
  45. 前記動物が、癌を有する、請求項44に記載の方法。
  46. 請求項45に記載の方法であって、治療有効量の少なくとも第2の、別個の抗癌剤を投与する工程をさらに包含する、請求項45に記載の方法。
  47. 請求項35または36のいずれかに記載の方法であって、ここで、約10mgと約300mgとの間の前記少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物が前記動物に投与される、方法。
  48. 請求項35または請求項36のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物を、前記動物における銅レベルを第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物の投与前の約10%と約40%との間に低減するのに有効な、量および期間で該動物に投与する、方法。
  49. 請求項48に記載の方法であって、ここで、前記少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物を、前記動物における銅レベルを、該第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物の投与前の約10%と約20%との間に低減するのに有効な、量および期間で該動物に投与する、方法。
  50. 請求項48に記載の方法であって、ここで、治療有効量の銅結合剤を、該第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物の投与の前に、前記動物における銅レベルを約10%〜約20%との間に維持するのに有効な、期間で該動物に連続的に投与する、方法。
  51. 請求項50に記載の方法であって、ここで、前記連続的に投与された銅結合剤は、チオモリブデート化合物である、方法。
  52. 請求項50に記載の方法であって、ここで、前記連続的に投与された銅結合剤は、亜鉛化合物である、方法。
  53. 請求項48に記載の方法であって、ここで、負荷投与量の前記少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物を、まず、初期の段階で該動物における銅レベルを、投与前のレベルの約20%〜約40%に低減するのに有効な、量および期間で、該動物に投与し、そして、その後、維持量の前記少なくとも第1のテトラアルキルアンモニウムテトラチオモリブデート化合物を、投与前のレベルの約10%〜約20%で該動物において該銅レベルを維持するのに有効な、量および期間で、該動物に投与する、方法。
  54. 請求項35または請求項36に記載の方法であって、前記動物における銅レベルが、血清セルロプラスミンのレベルによって示される、方法。
  55. 請求項35あたは請求項36に記載の方法であって、前記動物がヒト被験体である、方法。
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