JP2005518212A - 新規な1型サイトカインレセプターglm−r - Google Patents

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Abstract

本発明は、GLM−Rポリペプチドの新規ポリペプチド及びその変異体、並びにそれらのポリペプチドをコードする核酸分子を目的とする。本発明では、それらの核酸配列を有するベクター及び宿主細胞、異種ポリペプチド配列に融合した本発明のポリペプチドを有するキメラポリペプチド分子、本発明のポリペプチドに結合する抗体、並びに本発明のポリペプチドの製造方法も提供される。また、GLM−Rの活性を調節する薬剤を検出するための方法も提供される。更には、単球又はマクロファージの過多或いは不足を特徴とする疾患の診断及び治療法が提供される。

Description

本出願は、2002年2月25日出願の仮出願第60/359806号に対して優先権を主張する非仮出願であり、該仮特許出願の開示内容全体は出典明示によりここに取り込む。
(発明の分野)
本発明は、単球及びマクロファージの発達と機能に関与する新規遺伝子である、ヒトGLM−R遺伝子を含むGLM−R遺伝子に関する。本発明の範囲には、本明細書においてGLM−Rポリペプチドと呼ぶ新規ポリペプチドをコードする新規DNAの同定と単離、及び該新規ポリペプチドの組換え生産、並びに単球又はマクロファージの過多又は不足いによって特徴付けられる疾患の診断及び治療においてかかるポリペプチドを利用する方法、組成物及びアッセイが含まれる。本発明は、GLM−R核酸のヌクレオチド配列、宿主細胞発現系、及びトランスジェニック動物を含めこれら発現系により形質転換された宿主を包含する。更には、GLM−Rタンパク質、GLM−Rアミノ酸配列を含むポリペプチド及びペプチド、GLM−Rタンパク質の融合タンパク質、ポリペプチド及びペプチド、並びにそれに特異的に結合する抗体も含む。
(発明の背景)
螺旋状サイトカインは宿主防御から発達及び身体ホメオスタシスに亘る複数の生物学的プロセスを制御する。リガンドのこのファミリーは、インターロイキン(IL−x)2,3,4,5,6,7,9,11,12,13,15,21,23、胸腺間質性リンパ球ポエチン(TSLP)、顆粒球因子(GM−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、プロラクチン(PRL)、成長ホルモン(GN)、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、カルディオトロフィン−1(CT−1)、カルディオトロフィン様サイトカイン(CLC)、繊毛状神経栄養因子(CNTF)、及びレプチン(OB)から構成され、特異性の高い生物学的効果及び重要な治療可能性を持つ分子の豊かな供給源を有する。
螺旋状サイトカインファミリーとは、特徴的な「上−上−下−下」トポロジーを持つアンチパラレルな4本へリックスバンドルからなる共通の3次元構造により定義される。Bazan, J.F., Immunol. Today 11(10):350-4(1990), Rozwarski, D.A.等, Structure (2)3:159-73 (1994)を参照。残念なことに、有意な配列相同性がないため、相同性スクリーニング、また最近ではデータマイニングによっては、このファミリーの新規なメンバーの同定はできなかった。しかしながら、同族レセプターは、いわゆる1型サイトカインレセプターのファミリーを形成し、細胞外ドメインに2対の保存されたシステイン残基とWSXWS配列モチーフを有するサイトカインレセプター相同性(CRH)ドメイン[Bazan, J.F., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87(18):6934-8 (1990)]、単一の膜貫通ドメイン、及び内因性酵素活性を持たない細胞内ドメインを含め、幾つかの構造的モチーフを共有している。これらの特徴は、相同性に基づく新規レセプターの同定を可能とし、その結果、様々な異なったスクリーニング技術によりそれらのリガンドを同定するためのツールとして用いることができる。De Sauvage等, Nature 369(6481):533-8 (1994); Parrish-Novak J.等, Nature 408(6808): 57-63 (2000); Lok, S.等, Nature 369 (6481):565-8 (1994)。
リガンド結合は、少なくとも2つのレセプターサブユニットのホモマー化又はヘテロマー化を誘導する。ホモマー化が誘導される場合、2つの相同なレセプターサブユニットがリガンド結合及びシグナル伝達に十分なホモダイマーレセプターを形成する[例えば、GH-R, de Vos, A.M.等, Science 255(5042):306-12 (1992)を参照]。ヘテロマー化は、リガンド特異的α鎖がシグナル伝達β鎖と組み合わさって親和性の高いレセプターを形成するときに誘導される。このβ鎖は、幾つかの他のα鎖、例えばIL−3、IL−5、GM−CSF等にも共通である。Itoh, N.等, Science 247(4940):324-7 (1990)。いずれの場合も、レセプターへのリガンド結合によりヤヌスキナーゼ(Jak)ファミリーの細胞質チロシンキナーゼが活性化し、それが細胞内ドメインの膜近接部内の保存されたボックス1及びボックス2モチーフを介してレセプターサブユニットと結合する。Ihle, J.N., Nature 377(6550):591-4 (1995)。Jak活性化により細胞質標的タンパク質、特にSTATタンパク質ファミリーのメンバー及びレセプターの細胞内ドメインがリン酸化し、これはそれらのsrc相同2型(SH2)ドメインによりレセプターのホスホチロシンに補充される。Ihle, J.H. Cell 84(3):331-4 (1996); Ihle, J.H.等, Stem Cells 15 (Suppl.1):105-11, discussion 112 (1997)参照。STATのリン酸化によりダイマー化及び核への転移が誘導され、遺伝子転写の特異的な活性化がもたらされる。Darnell, J.E., Jr., Science 277 (5332):1630-5 (1997)。これまでに7つのSTATタンパク質が知られている(STAT1,2,3,4,5a,5b及び6)。STATアイソフォームを欠く動物の分析により、STATがサイトカインの特定の効果の多くを媒介することが示され(Ihle J.N. Curr. Opin. Cell Biol. 13(2):211-7 (2001)、それらがサイトカインレセプターのシグナル伝達において重要な位置を占めていることが強調された。特定の標的遺伝子の調節に加えて、またマイトジェンにより活性化されたタンパク質キナーゼ及びホスファチジルイノシトール−3キナーゼ等のサイトカインレセプターにより活性化されたその他のシグナル伝達経路と共に、STATは活性化すると抗アポトーシス及び分裂促進的シグナルに寄与することができる(Ihle, J.N. Nature 377(6550):591-4 (1995))。
(発明の概要)
本発明は、単球及びマクロファージの発達と機能、及びそれに関連する生理学的状態に関与する新規なGLM−Rポリペプチドをコードする核酸の同定に関する。核酸分子は、ヒトGLM−Rポリヌクレオチドを含む哺乳動物GLM−Rポリヌクレオチドに対応するヌクレオチド配列を表す。本発明の核酸分子の特定の例を本明細書ではDNA173920−2924と呼ぶ。
一実施形態において、本発明は、GLM−Rポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する単離された核酸分子を提供する。例示的GLM−RポリペプチドはPRO21073である。
一態様では、単離された核酸分子は、(a)図2(配列番号2)の約1又は約20から約732のアミノ酸残基の配列を有するポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の相補体に対し、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の核酸配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する。
別の態様では、単離された核酸分子は、(a)図2(配列番号2)の約1又は約20から約732のアミノ酸残基の配列を有するGLM−Rポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は(b)(a)のDNA分子の相補体を有する。
また別の態様では、単離された核酸分子は、(a)図1(配列番号1)の約63又は約120から約2258のヌクレオチドの配列を有するDNA分子、或いは(b)(a)のDNA分子の相補体に対し、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の核酸配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する。
更に別の態様では、単離された核酸分子は、(a)図1(配列番号1)の約63又は約120から約2258のヌクレオチド配列、又は(b)(a)のDNA分子の相補体を有する。
また別の態様では、単離された核酸分子は、(a)ATCC寄託番号1874−PTA(DNA173920−2924)で2000年5月16日にATCCに寄託されたヒトタンパク質cDNAによりコードされる同一の成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のヌクレオチド配列の相補体に対し、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の核酸配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する。
また別の態様では、単離された核酸分子は、(a)ATCC寄託番号1874−PTA(DNA173920−2924)で2000年5月16日にATCCに寄託されたDNAの完全長ポリペプチドコード化配列、又は(b)(a)のヌクレオチド配列の相補体に対し、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の核酸配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する。特定の態様では、単離された核酸分子は、(a)ATCC寄託番号1874−PTA(DNA173920−2924)で2000年5月16日にATCCに寄託された完全長ポリペプチドコード化配列、又は(b)(a)のヌクレオチド配列の相補体を含む。
また別の態様では、単離された核酸分子は、(a)図2(配列番号2)の約1又は約20から約732のアミノ酸残基をコードする核酸配列の相補体にハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する下記の活性GLM−Rポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。好ましくは、ハイブリダイゼーションはストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件の下で起こる。
更に別の態様では、(a)図1(配列番号1)の約63又は約120から約2258の核酸配列の相補体にハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する下記の活性GLM−Rポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。好ましくは、ハイブリダイゼーションはストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件の下で起こる。
また別の態様では、単離された核酸は、少なくとも702のヌクレオチド残基を有し、ストリンジェントな条件下で、(a)図2A(配列番号2)の約1又は約20から約732のアミノ酸残基の配列を有するGLM−RポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の相補体に試験DNA分子をハイブリダイズさせ、試験DNA分子が(a)又は(b)に対し、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の核酸配列同一性を有する場合、試験DNA分子を単離することにより、生産されるヌクレオチド配列である。
更に他の態様では、単離された核酸分子は、N末端シグナル配列及び/又は開始メチオニンを持たないGLM−RポリペプチドをコードするDNAを有するか、又はそのようなコード化核酸分子に相補的である。シグナルペプチドは、図2(配列番号2)の配列中、暫定的にアミノ酸位置約1からアミノ酸位置約19に亘っていると同定された。しかしながら、シグナルペプチドのC末端の境界は、ここで最初に同定されたシグナルペプチドC末端境界の何れかの側にあるおそらく約5以下のアミノ酸によってではあるが、変わりうることを注記する。この場合において、シグナルペプチドのC末端境界は、そのタイプのアミノ酸配列要素を同定するために当該分野で常套的に使用される基準に従って同定されうる(例えば、Nielsen等, Prot. Eng. 10:1-6(1997) 及びvon Heinje等, Nucl. Acids. Res. 14:4683-4690 (1986))。更に、時には、分泌ポリペプチドからのシグナル配列の切断が完全に均一ではないことから、1よりも多い分泌種を生じることが認識されている。これらのポリペプチド、及びそれらをコードするポリヌクレオチドが、本発明によって検討される。このように、本出願の目的において、図2(配列番号2)に示されるGLM−Rポリペプチドのシグナルペプチドが図2(配列番号2)のアミノ酸1からXにわたり、Xが図2(配列番号2)の15から24の任意のアミノ酸である。従って、本発明で検討されるGLM−Rポリペプチドの成熟形態は、図2(配列番号2)のアミノ酸残基Xから732(Xは図2(配列番号2)の15から24の任意のアミノ酸)を有するものと、後述するようなその変異体を含む。これらのポリペプチドをコードする単離された核酸分子もまた考慮される。
更に他の実施態様では、本発明は、膜貫通ドメインが削除又は不活性化されているGLM−Rポリペプチドをコードするヌクレオチド配列か、或いはそのようなコード化ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有する単離された核酸分子を提供し、この場合、膜貫通ドメインは暫定的に図2の配列(配列番号2)のアミノ酸位約515から約539と同定されていたものである。従って、本明細書に開示するGLM−Rポリペプチドの可溶性の細胞外ドメインを検討する。
別の実施形態において、本発明は、(a)図2(配列番号2)のアミノ酸1からX(Xは図2(配列番号2)の510から519の何れかのアミノ酸)をコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の相補体に対し、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の核酸配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する単離された核酸分子を提供する。特定の態様では、単離された核酸分子は、(a)図2(配列番号2)のアミノ酸1からX(Xは図2(配列番号2)の510から519の任意のアミノ酸)をコードするか、又は(b)(a)のDNA分子の相補体であるヌクレオチド配列を有する。
また別の実施態様では、本発明は、例えば、場合によっては抗GLM−R抗体のための結合部位を有するポリペプチドをコードすることができるGLM−Rポリペプチドの断片をコード化するための、又はハイブリダイゼーションプローブとしての用途を見出すことが可能なコード化配列を含むGLM−Rポリペプチド配列の断片を提供する。そのような核酸断片は、通常、長さが少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000のヌクレオチドであり、ここで「約」という語は、基準となるヌクレオチド配列の長さプラスマイナス10%の長さであることを意味する。好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列断片は、図1(配列番号1)に示すヌクレオチド配列の任意のコード化領域から獲得される。GLM−Rポリペプチドコード化ヌクレオチド配列の新規な断片は、多くの周知の配列アラインメントプログラムを使用してGLM−Rポリペプチドコード化ヌクレオチド配列を既知のヌクレオチド配列と整列させ、何れのGLM−Rポリペプチドコード化ヌクレオチド配列の断片が新規であるかを決定することにより、常套的に決定できることに注意されたい。このようなGLM−Rポリペプチドコード化ヌクレオチド配列の全てを本明細書で検討し、過度の実験を行うこと無しに決定することが可能である。また、これらヌクレオチド分子断片によりコードされるGLM−Rポリペプチド断片、好ましくは抗GLM−R抗体の結合部位を有するGLM−Rポリペプチド断片を検討する。
また別の実施態様では、本発明は、GLM−R又はその変異体をコードするヌクレオチド配列を有するベクター(例えば発現ベクター)を提供する。本ベクターは、上記の単離された核酸分子のうち任意のものを含んでよい。そのようなベクターを含んでなる宿主細胞もまた提供される。例えば、宿主細胞はCHO細胞、大腸菌、バキュロウイルスに感染した昆虫細胞、又は酵母とすることができる。一態様では、本発明は、例えばトランスジェニック動物を含む、GLM−Rコード化ヌクレオチド配列で形質転換された宿主生物体を含む。
別の態様では、本発明のトランスジェニック動物は、GLM−R変異体、特に肥満症、悪液質又は拒食症等の体重障害に関連する変異体を発現する。とりわけ、このようなトランスジェニック動物は、正常値よりも高い又は低いレベルでGLM−R導入遺伝子を発現するものを含む。別の特定の態様では、トランスジェニック動物はその細胞の全て又は一部(「モザイク」)にGLM−Rを発現するものを含む。さらなる他の特定の態様では、このようなトランスジェニック動物は、GLM−R核酸が内部に導入されており、特定の細胞型にのみ発現されるものを更に含む。また別の特定態様では、本発明は、「ノックアウト」動物、又はGLM−Rポリヌクレオチドを全く発現しないか、少量しか発現しないように改変された動物を含む。
また別の実施形態では、本発明は上記の単離された核酸配列の何れかによりコードされた単離されたGLM−Rポリペプチドを提供する。一態様では、本発明は単離された天然配列GLM−Rポリペプチドを提供し、該ポリペプチドは特定の実施形態では、図2(配列番号2)の約1又は約20から約732の残基を有するアミノ酸配列を含む。
更に別の態様では、本発明は、図2(配列番号2)の約1又は約20から約732のアミノ酸残基の配列に対し、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、単離されたGLM−Rポリペプチドを提供する。
また別の態様では、本発明は、ATCC寄託番号1874−PTA(DNA173920−2924)で、2000年5月16日にATCCに寄託されたヒトタンパク質cDNAによりコードされるアミノ酸配列に対し、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ配列同一性を有する単離されたGLM−Rポリペプチドを提供する。特定の実施態様では、単離されたGLM−RポリペプチドはATCC寄託番号1874−PTA(DNA173920−2924)で、2000年5月16日にATCCに寄託されたヒトタンパク質cDNAによりコードされるアミノ酸配列を含む。
また別の態様では、単離されたGLM−Rポリペプチドは、N末端シグナル配列及び/又は開始メチオニンを持たないポリペプチドを有し、本明細書に開示するようなアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によりコードされる。本明細書ではこれを生産する方法も開示され、該方法は、適切なコード化核酸分子を有するベクターを含む宿主細胞をGLM−Rポリペプチドの発現に適した条件下で培養する工程と、細胞培養物からGLM−Rポリペプチドを回収する工程を含む。
また別の態様では、本発明は、膜貫通ドメインが削除又は不活性化されている単離されたGLM−Rポリペプチドを提供する。本明細書ではこれを生産する方法も開示され、該方法は、適切なコード化核酸分子を有するベクターを含む宿主細胞をGLM−Rポリペプチドの発現に適した条件下で培養する工程と、細胞培養物からGLM−Rポリペプチドを回収する工程を含む。
特定の態様では、本発明は、図2(配列番号2)のアミノ酸1からX(ここで、Xは図2(配列番号2)の510から519の何れかのアミノ酸)に対し、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する単離された可溶性GLM−Rポリペプチドを提供する。特定の態様では、単離された可溶性GLM−Rポリペプチドは、図2(配列番号2)のアミノ酸1からX(ここで、Xは図2(配列番号2)の510から519の任意のアミノ酸)を有する。
また別の態様では、単離されたGLM−Rポリペプチドは、図2(配列番号2)の約1又は約20から約732のアミノ酸残基の配列か、或いは生物学的に活性であるか、又は抗GLM−R抗体の結合部位を提供するのに十分なその断片を有するポリペプチドであり、ここで、生物学的活性を有する、又は抗GLM−R抗体の結合部位を提供するGLM−Rポリペプチド断片の同定は、当該技術分野で周知の技術を使用して常套的に行うことができる。好ましくは、GLM−R断片は、単球又はマクロファージの発達又は機能への影響を含め、天然GLM−Rポリペプチドの定性的な生物学的活性を保持している。
また別の態様では、単離されたGLM−Rポリペプチドは、(1)(a)図2(配列番号2)の約1又は約20から約732のアミノ酸残基の配列を有するGLM−RポリペプチドをコードするDNA分子、(b)(a)のDNA分子の相補体と、ストリンジェントな条件下で試験DNA分子をハイブリダイズさせ、該試験DNA分子が(a)又は(b)に対し、少なくとも約80%の配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の核酸配列同一性を有する場合、(2)該ポリペプチドの発現に適した条件下で試験DNA分子を有する宿主細胞を培養し、(3)細胞培養物から該ポリペプチドを回収することにより生産されるポリペプチドである。
また別の実施形態では、本発明は、異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したGLM−Rポリペプチドを有するキメラ分子を提供し、このときGLM−Rポリペプチドは、本明細書に開示する任意のGLM−Rポリペプチド、変異体又はその断片を有しうる。このようなキメラ分子の一例は、イムノグロブリンのエピトープタグ配列又はFc領域に融合したGLM−Rポリペプチドを含む。
別の実施形態では、本発明は、上記のGLM−Rポリペプチドに特異的に結合する下記の抗体を提供する。場合によっては、抗体はモノクローナル抗体、抗体断片、又は一本鎖抗体である。
また別の実施形態では、本発明は、GLM−Rポリペプチドに対するアゴニスト又はアンタゴニストの識別方法を提供し、該方法は、GLM−Rポリペプチドを候補分子に接触させる工程と、前記GLM−Rポリペプチドが媒介する生物学的活性をモニターする工程を含む。特定の態様では、GLM−Rポリペプチドは天然配列GLM−Rポリペプチドである。
また別の実施形態では、本発明は、GLM−Rポリペプチド、又はここに記載したGLM−Rポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニスト、又は抗GLM−R抗体を、担体と組み合わせて含有する物質の組成物を提供する。場合によっては、担体は製薬的に許容可能な担体である。
別の実施形態では、本発明は、GLM−Rポリペプチド、そのアゴニスト又はアンタゴニスト又は抗GLM−R抗体に反応性の状態の治療に有用な薬剤の調製のための、GLM−Rポリペプチド、又はここに開示するそのアゴニスト又はアンタゴニスト、又は抗GLM−R抗体の使用を提供する。
また別の実施形態では、本発明は、GLM−Rへの結合能を有する生理活性剤のスクリーニング方法を提供する。一態様では、本方法は、GLM−Rの試料に候補生理活性剤を加え、前記候補剤の前記GLM−Rへの結合を測定することを含み、ここで結合がGLM−Rへの結合能を有する生理活性剤の指標となる。
また別の実施形態では、本発明は、GLM−Rの活性の調節能を有する生理活性剤のスクリーニング方法を提供する。一態様では、本方法は、GLM−Rの試料に候補生理活性剤を添加し、GLM−Rの生物学的活性の変化を測定することを含み、ここで変化がGLM−Rの活性調節能を有する生理活性剤の指標となる。特定の態様では、GLM−R活性は末梢血単核球細胞(PBMC)上のSTAT−3又はSTAT−5の活性化である。
また別の態様では、本発明はGLM−Rのレセプターの同定方法を提供する。一態様において、本方法は、細胞膜物質を含む組成物とGLM−Rを混合(組み合わせ)することによりGLM−Rを細胞膜物質上のレセプターと複合化させ、前記レセプターをGLM−Rレセプターとして同定することを含む。一態様では、本方法は前記GLM−Rとレセプターを架橋させる工程を含む。細胞膜は無傷細胞又は細胞膜抽出調製物由来とすることができる。
また別の実施形態では、細胞内のSTAT−3又はSTAT−5活性化方法が提供される。一態様では、本方法は、少なくともSTAT−3又はSTAT−5の活性化を誘導するのに効果的な量のGLM−Rを細胞に投与することを含む。
また別の実施形態では、単球又はマクロファージの発達及び機能の調節方法が提供される。一態様では、本方法は、少なくとも単球又はマクロファージの発達及び分化に作用するのに効果的な量のGLM−Rを細胞に投与することを含む。
別の実施形態では、本発明は、GLM−Rポリヌクレオチド及び/又はGLM−Rポリペプチドと相互作用する化合物を同定するための細胞及び非細胞アッセイを提供する。特定の態様において、本発明の細胞に基づくアッセイは、GLM−Rポリペプチドを発現する細胞、細胞系、或いは改変された細胞又は細胞系を利用する。
また別の実施形態では、本発明は、哺乳動物GLM−Rポリヌクレオチドの発現、及び/又はその生物学的活性のレベルを調節する化合物を同定する方法を提供する。一態様では、本方法は:
(a)GLM−Rポリヌクレオチドを発現する細胞に化合物を接触させ;
(b)細胞におけるGLM−R DNAの発現のレベルを測定し;
(c)(b)において取得したレベルを、化合物不在下で取得されるGLM−R発現レベルと比較すること、
を含み、(b)で取得されたレベルと化合物不在下で取得されたレベルとの間に差異がある場合、GLM−R活性調節化合物と同定する。
別の実施形態では、本発明は、
(a)GLM−Rポリヌクレオチドを含む細胞に化合物を接触させ;
(b)細胞におけるGLM−Rポリペプチドのレベル又は活性を測定し;
(c)(b)において取得したレベルを、化合物不在下で取得されるGLM−Rレベル又は活性と比較すること、
を含み、(b)で取得されたレベルと化合物不在下で取得されたレベルとの間に差異がある場合、GLM−R活性調節化合物と同定する、GLM−Rポリペプチドの生物学的活性を調節する化合物の同定方法を提供する。
また別の実施形態では、本発明は、
(a)宿主(例えば、GLM−R導入遺伝子を発現するトランスジェニック動物)に化合物を投与し;
(b)GLM−R活性のGLM−R遺伝子転写、GLM−R発現又はGLM−R活性の活性のレベルを測定し;
(c)(b)において取得したレベルを、化合物不在の場合のレベルと比較すること、
を含み、(b)のレベルと化合物不在下で取得されたレベルとの間に差異がある場合、GLM−R活性調節化合物と同定する、GLM−Rポリペプチドの生物学的活性を調節する化合物の同定方法を提供する。
I.定義
ここで使用される際の「GLM−Rポリペプチド」、「GLM−Rタンパク質」及び「GLM−R」という用語は、天然配列GLM−R及びGLM−Rポリペプチド変異体(ここで更に定義する)を含む。GLM−Rポリペプチドは、ヒト組織型又は他の供給源といった種々の供給源から単離してよく、あるいは組換え及び/又は合成法によって調製してもよい。「GLM−Rポリヌクレオチド」という用語は、本段落に記載のポリペプチドをコードする核酸を含む。
「天然配列GLM−R」は、天然由来のGLM−Rと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでいる。このような天然配列GLM−Rは、自然から単離することもできるし、組換え及び/又は合成手段により生産することもできる。「天然配列GLM−R」という用語には、特に、GLM−Rの自然に生じる切断又は分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列)、自然に生じる変異体形態(例えば、選択的にスプライシングされた形態)及び自然に生じる対立遺伝子変異体が含まれる。本発明の一実施形態において、天然配列GLM−Rは、図2(配列番号2)のアミノ酸1又は約20から約732を有する成熟又は完全長天然配列GLM−Rである。また、図2(配列番号2)に開示するGLM−Rポリペプチドはここでアミノ酸位1とするメチオニン残基で始まることが示されているが、図2のアミノ酸位1の上流又は下流に位置する他のメチオニン残基をGLM−Rポリペプチドの開始アミノ酸残基として用いることも考えられるし可能でもある。
GLM−Rポリペプチド「細胞外ドメイン」又は「ECD」は、膜貫通及び細胞質ドメインを実質的に有しないGLM−Rポリペプチドの形態を意味する。通常、GLM−RポリペプチドECDは、そのような膜貫通及び/又は細胞質ドメインを1%未満、好ましくはそのようなドメインを0.5%未満しか持たない。本発明のGLM−Rポリペプチドについて同定された任意の膜貫通ドメインは、疎水性ドメインのその型を同定するために当該分野において日常的に使用される基準に従い同定されることが理解されるであろう。膜貫通ドメインの厳密な境界は変わり得るが、ここで最初に同定されたドメインのいずれかの末端から約5アミノ酸を越えない可能性が非常に高い。しかして、特定の態様では、GLM−Rポリペプチドの細胞外ドメインは、アミノ酸1又は約20からX(ここで、Xは図2(配列番号2)の510から519の任意のアミノ酸)を有する。
ここに開示する種々のGLM−Rポリペプチドの「シグナルペプチド」のおおよその位置を、本明細書及び/又は添付図面に示す。例えば、DNA173920−2924(配列番号1)でコードされるタンパク質については、それぞれシグナル配列を図1に示す。しかし、シグナルペプチドのC-末端境界は変化しうるが、その変化は多くの場合ここで最初に定義したシグナルペプチドC末端境界のいずれかの側で約5アミノ酸以下であり、シグナルペプチドのC末端境界は、そのような型のアミノ酸配列成分を同定するのに日常的に使用される基準に従って同定しうる(例えば、Nielsen等, Prot. Eng.10:1-6(1997)及びvon Heinje等, Nucl. Acids. Res.14:4683-4690(1986))。更に、場合によっては、分泌ポリペプチドからのシグナル配列の切断は完全に均一ではなく、一を越える分泌種をもたらすことも認められる。ここで同定したシグナルペプチドのC末端境界のいずれかの側のアミノ酸約5以下内で切断されるこれら成熟ポリペプチド、及びそれらをコードするポリヌクレオチドを本発明において検討する。
「GLM−R変異体ポリペプチド」(「GLM−R突然変異体」又は「GLM−R多型」を含む)とは、(a)図2(配列番号2)の1又は約20から約732、(b)図2(配列番号2)に示すGLM−RポリペプチドのXから732(ここで、Xは図2(配列番号2)の15から24の間の任意のアミノ酸)、(c)図2(配列番号2)の1又は約20からX(ここで、Xは図2(配列番号2)のアミノ酸残基510〜519の任意のアミノ酸)、又は(d)図2(配列番号2)に示すアミノ酸配列から特に獲得された別の断片のアミノ酸配列に対し、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、下記に定義する活性GLM−Rポリペプチドを意味する。このようなGLM−R変異体ポリペプチドには、例えば、図2の配列の、N及び/又はC末端、並びに1以上の内部ドメインに、1以上のアミノ酸残基が付加、もしくは欠失されたGLM−Rポリペプチドが含まれる。通常、GLM−R変異体ポリペプチドは、(a)図2(配列番号2)のGLM−Rポリペプチドの1又は約20から約732、(b)図2(配列番号2)のXから732(ここで、Xは図2(配列番号2)の15から24の間の任意のアミノ酸)、(c)図2(配列番号2)の1又は約20からX(ここで、Xは図2(配列番号2)のアミノ酸残基510から519の任意のアミノ酸)、又は(d)図2(配列番号2)に示すアミノ酸配列から特に獲得された別の断片のアミノ酸配列に対し、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸配列同一性を有している。GLM−R変異体ポリペプチドは天然GLM−Rポリペプチド配列を明示的に含まない。通常、GLM−R変異体ポリペプチドは、少なくとも約10のアミノ酸長、あるいは少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600アミノ酸長、又はそれ以上である。
ここに同定されるGLM−Rポリペプチドに対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、GLM−R配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN、ALIGN−2又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のために、%アミノ酸配列同一性の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を用いて後述のように計算され、ここでALIGN−2プログラムのための完全なソースコードを以下の表1に示す。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテク社によって著作され、表1に示したソースコードは米国著作権庁, Washington D.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下に登録されている。ALIGN−2はジェネンテク社、South San Francisco, Californiaから公的に入手可能であり、また表1に与えられたソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN−2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN−2プログラムによって設定され変動しない。
ここでの目的のため、所定のアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、任意のアミノ酸配列Bと、又はそれに対し、ある%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む所定のアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN−2のA及びBのプログラムアラインメントによって合致していることが認められたアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることが理解されよう。%アミノ酸配列同一性の計算の例として、表2及び3は、「比較タンパク質」と称されるアミノ酸配列の「PRO」と称されるアミノ酸配列に対する%アミノ酸配列同一性の計算方法を実証している。
特に断らない限り、ここで使用する全ての%アミノ酸同一性の値はALIGN−2配列比較コンピュータプログラムを使用して上述のように取得されたものである。しかしながら、%アミノ酸配列同一性は、配列比較プログラムNCBI−BLAST2[Altschul等, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997)]を使用して決定してもよい。NCBI−BLAST2配列比較プログラムは、http://www.ncbi.nlm.nih.govからダウンロードしてもよく、又はそれ以外の方法によりNational Institute of Health, Bethesda, MDから入手可能である。NCBI−BLAST2は複数の検索パラメータを使用し、それら検索パラメータの全てが、例えば、アンマスキング=する(unmask=yes)、ストランド=すべて(strand=all)、予想発生件数=10(expected occurrence=10)、最小低複雑性長=15/5(minimum low complexity length=15/5)、マルチパスe値=0.01(multi-pass e-value=0.01)、マルチパスの定数=25(constant for multi-pass=25)、間隙を入れた最終アラインメントのドロップオフ=25(dropoff for final gapped alignment=25)及びスコアリングマトリクス=BLOSUM62(scoring matrix=BLOSUM62)を含む、デフォルト値に設定される。
NCBI−BLAST2がアミノ酸配列比較に使用されるとき、所定のアミノ酸配列Aの、任意のアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、任意のアミノ酸配列Bと、又はそれに対し、ある%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む所定のアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムNCBI−BLAST2のA及びBのプログラムアラインメントによって合致していることが認められたアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることが理解されよう。
「GLM−R変異体ポリヌクレオチド」又は「GLM−R変異体核酸配列」とは、(a)図2(配列番号2)のGLM−Rポリペプチドの1又は約20から約732、(b)図2(配列番号2)のXから732(ここで、Xは図2(配列番号2)の15から24の間の任意のアミノ酸残基)、(c)図2(配列番号2)の1又は約20からX(ここで、Xは図2(配列番号2)の510から519の間の任意のアミノ酸残基)、又は(d)図2(配列番号2)に示すアミノ酸配列から特に獲得された別の断片のアミノ酸残基をコードする核酸配列に対し、少なくとも80%の核酸配列同一性を有する下記に定義するような活性GLM−Rポリペプチドをコードする核酸分子である。通常は、GLM−R変異体ポリペプチドヌクレオチドは、(a)図2(配列番号2)に示すGLM−Rポリペプチドの残基1又は約20から約732をコードする核酸配列、(b)図2(配列番号2)に示すGLM−Rポリペプチドのアミノ酸Xから732(ここで、Xは図2(配列番号2)の15から24の間の任意のアミノ酸残基)をコードする核酸配列、(c)図2(配列番号2)のアミノ酸1又は約20からX(ここで、Xは図2(配列番号2)の残基510から519の任意のアミノ酸)をコードする核酸配列、又は(d)図2(配列番号2)に示すアミノ酸配列から特に獲得された別の断片をコードする核酸配列に対し、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の核酸配列同一性を有している。GLM−Rポリヌクレオチド変異体は、天然GLM−Rヌクレオチド配列を含まない。
通常、GLM−R変異体ポリヌクレオチドは、少なくとも約5ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、又は1000ヌクレオチド長であり、この文脈の「約」という用語は、参照したヌクレオチド配列長の±10%の範囲の参照ヌクレオチド配列長を意味する。
ここで同定されるGLM−Rポリペプチドコード化核酸配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入した当該GLM−Rポリペプチドコード化核酸配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセンテージと定義される。パーセント核酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、当業者の技量内の種々の方法、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN、ALIGN−2又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較する配列の全長対し最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、ここでの目的のために、%核酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を使用することによって得られる。ALIGN−2プログラム用の完全なソースコードを下記の表1に示す。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって著作され、下記の表1に示したソースコードは米国著作権庁,ワシントン D.C.,20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下に登録されている。ALIGN−2プログラムはジェネンテック社(South San Francisco, California)から公的に入手可能であり、表1に提供されたソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN−2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN−2プログラムによって設定され変動しない。
ここでの目的のため、核酸配列Cの、与えられた核酸配列Dとの、又はそれに対する%核酸配列同一性(あるいは、任意の核酸配列Dと、又はそれに対して或る%核酸配列同一性を持つ又は含む核酸配列Cと言うこともできる)は次のように計算される:
分率W/Zの100倍
ここで、Wは配列アラインメントプログラムALIGN−2のC及びDのプログラムアラインメントによって同一であると認められたヌクレオチドの数であり、ZはDのヌクレオチド総数である。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと異なる場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性とは異なることは理解されよう。%核酸配列同一性の計算の例として、「PRO−DNA」と命名された核酸配列に対する「比較DNA」と呼ぶ核酸配列の%核酸配列同一性の計算方法を表4及び5に示す。特に断らない限りは、ここで使用する全ての%核酸配列同一性値は、上述のようにALIGN−2配列比較コンピュータプログラムを用いて得られる。
特に断らない限り、ここで使用する全ての%核酸同一性値はALIGN−2配列比較コンピュータプログラムを使用して上述のように取得されたものである。しかしながら、%核酸配列同一性は、配列比較プログラムNCBI−BLAST2(Altschul等, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997))を使用して決定してもよい。NCBI−BLAST2配列比較プログラムは、http://www.ncbi.nlm.nih.govからダウンロード可能であるか、又はそれ以外の方法によりNational Institute of Health, Bethesda, MDから入手可能である。NCBI−BLAST2は複数の検索パラメータを使用し、それら検索パラメータの全てが、例えば、アンマスキング=する(unmask=yes)、ストランド=すべて(strand=all)、予想発生件数=10(expected occurrence=10)、最小低複雑性長=15/5(minimum low complexity length=15/5)、マルチパスe値=0.01(multi-pass e-value=0.01)、マルチパスの定数=25(constant for multi-pass=25)、間隙を入れた最終的アラインメントのドロップオフ=25(dropoff for final gapped alignment=25)及びスコアリングマトリクス=BLOSUM62(scoring matrix=BLOSUM62)を含む、デフォルト値に設定される。
NCBI−BLAST2がアミノ酸配列比較に使用されるとき、核酸配列Cの、任意の核酸配列Dとの、又はそれに対する%核酸配列同一性(あるいは、任意の核酸配列Dと、又はそれに対し、ある%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む所定の核酸配列Cと言うこともできる)は次のように計算される:
分率W/Zの100倍
ここで、Wは配列アラインメントプログラムNCBI−BLAST2のC及びDのプログラムアラインメントによって同一であると認められたヌクレオチドの数であり、ZはDのヌクレオチド総数である。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと異なる場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性とは異なることは理解されよう。
他の実施形態では、GLM−R変異体ポリヌクレオチドは、活性GLM−Rポリペプチドをコードする核酸分子であり、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で、図2(配列番号2)に示す完全長GLM−Rポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションすることができる。GLM−R変異体ポリペプチドは、GLM−R変異体ポリヌクレオチドによってコードされているものであり得る。
ここで開示する種々のポリペプチドを記載するために使用される「単離」とは、自然環境の成分から同定及び分離及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。好ましくは、単離されたポリペプチドはそれが自然に伴う全ての成分を伴っていない。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分に、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が達せられるまで、精製される。単離されたポリペプチドには、GLM−Rの自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのポリペプチドが含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により調製される。
GLM−Rポリペプチドをコードする「単離された」核酸分子は、同定され、GLM−Rコード化核酸の天然源に通常付随している少なくとも1つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。好ましくは、単離された核酸はそれが自然に伴っている全ての成分を伴っていない。単離されたGLM−Rコード化核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。ゆえに、単離された核酸分子は、天然の細胞中に存在する場合、GLM−Rポリペプチドをコードする核酸分子とは区別される。しかし、GLM−Rポリペプチドをコードする単離された核酸分子には、例えば、核酸分子が天然細胞のものとは異なった染色体位置にある場合、GLM−Rを通常は発現する細胞に含まれるGLM−Rコード化核酸分子が含まれる。
「コントロール配列」という用語は、特定の宿主生物体において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合」している。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現されているならば、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合しているDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
「抗体」という用語は最も広義に使用され、具体的には例えば、単一の抗GLM−Rモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、及び中和抗体を含む)、多エピトープ特異性を持つ抗GLM−R抗体組成物、一本鎖抗GLM−R抗体、及び抗GLM−R抗体の断片(下記を参照)を包含する。ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる自然発生突然変異を除いて同一である。
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定され、一般に、プローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングに必要な温度が高くなり、プローブが短くなるとそれに必要な温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、通常、相補鎖がその融点より低い環境に存在する場合に、変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション配列の間で所望される相同性の程度が高くなればなるほど、用いることができる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントにすることになり、低い温度はストリンジェンシーを低下させることになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの更なる詳細及び説明については、Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照のこと。
ここで定義される「ストリンジェントな条件」又は「高度にストリンジェントな条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファーと750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いるもの;又は(3)42℃における50%ホルムアミド、5xSSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5xデンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%のデキストラン硫酸と、42℃における0.2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中の洗浄及び55℃での50%ホルムアミド、ついで55℃におけるEDTAを含む0.1xSSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を用いるもの、によって定義される。
「中程度のストリンジェント条件」は、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Press, 1989)に記載されているように定義され、上記よりストリンジェンシーが低い洗浄溶液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度のストリンジェント条件は、20%ホルムアミド、5xSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハード液、10%デキストラン硫酸、及び20mg/mLの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中の37℃での終夜インキュベーション、ついで1xSSC中37−50℃でのフィルターの洗浄といった条件である。当業者であれば、プローブ長などの因子に適合させる必要に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかを認識している。
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」と融合したGLM−Rポリペプチドを含んでなるキメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するのに十分な残基を有し、その長さは融合するポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8から約50のアミノ酸残基(好ましくは、約10から約20のアミノ酸残基)を有する。
ここで用いられている「イムノアドヘシン」という用語は、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能と異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性を組み合わせる抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは抗体の抗原認識及び結合部位以外の所望の結合特異性を持つアミノ酸配列(即ち「異種」)と免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物である。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む近接アミノ酸配列を含む。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3、又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
ここでの目的に対する「活性な」又は「活性」とは、天然又は天然に生じるGLM−Rの生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するGLM−Rの形態を意味し、ここで、「生物学的」活性とは、天然又は天然に生じるGLM−Rが保持する、抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力以外の、天然又は天然に生じるGLM−Rによって引き起こされる生物学的及び/又は免疫学的機能(阻害又は刺激)を意味し、「免疫学的」活性とは、天然又は天然に生じるGLM−Rが保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力を意味する。好ましい生物学的活性は、体重減少、脂肪過多減少(例えば体重に占める脂肪の割合)、除脂肪筋量の増加のうち、1つ以上を含む。生物学的活性の別の定義は、STAT−3又はSTAT−5を活性化する能力を含む。
「アンタゴニスト」なる用語は最も広義に用いられ、ここに開示した天然GLM−Rポリペプチドの生物学的活性を部分的又は完全にブロックし、阻害し、又は中和する任意の分子を含む。同じように、「アゴニスト」という用語は最も広義に用いられ、ここに開示した天然GLM−Rポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子を含む。適切なアゴニスト又はアンタゴニスト分子には、特にアゴニスト又はアンタゴニスト抗体又は抗体断片、天然GLM−Rポリペプチドの断片又はアミノ酸配列変異体、ペプチド、小有機分子等が含まれる。GLM−Rポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法は、GLM−Rポリペプチドと候補アゴニスト又はアンタゴニスト分子を接触させ、通常はGLM−Rポリペプチドに関連している一つ又は複数の生物学的活性の検出可能な変化を測定することを含みうる。
GLM−Rの活性の一部はGLM−Rによって直接誘発されるものと、間接的に誘発されるものがあるが、いずれもGLM−Rが存在する結果誘発されるものであり、GLM−Rが不在の場合は誘発されないことを理解されたい。
「治療」とは、疾患の病的症状の進行を防ぐか、又は変化させることを目的に行われる行為である。従って、「治療」は治療的処置及び予防的又は防護的療法の双方を意味し、その目的は、標的とする病的症状又は疾患を防ぐか又は遅延(低減)させることである。治療を必要とするものには、疾患に既に罹っているもの、並びに疾患が予防されるべきものを含む。
「有効量」という用語は、体重障害のインビトロの細胞に基づくモデルにおいて検出可能な改善を引き起こすか、誘発するか、又は結果として生じさせるGLM−Rの最小濃度である。例として、脂肪細胞へのグルコース摂取の減少、脂肪細胞からのレプチン放出の増加が挙げられる。更に、「治療的有効量」という用語は、体重障害に関連する病的症状を減少させるか又は改善するのに有効な、哺乳動物に対して投与されるGLM−Rの最小濃度(量)である。例えば、体重減少、体重に占める脂肪の割合の減少、体重に占める除脂肪筋量の割合の増加、代謝率上昇、血清トリグリセリド又は脂肪酸等が挙げられる。
「慢性」投与とは、初期の治療効果(活性)を長期間にわたって維持するようにするために、急性態様と異なり連続的な態様で薬剤を投与することを意味する。「間欠性」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる治療である。
治療のための「哺乳動物」とは、哺乳動物に分類される任意の動物を意味し、ヒト、家畜用及び農場用動物、及び動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、フェレットなどを含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
「個体」とは、任意の対象となる患者/患畜であり、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトである。
一又は複数の更なる治療薬と「組み合わせた」投与とは、同時(同時期)及び任意の順序での連続した投与を含む。
「アンタゴニスト」なる用語は最も広義に用いられ、ここに開示した天然GLM−Rポリペプチドの生物学的活性を部分的又は完全にブロックし、阻害し、又は中和する任意の分子を含む。同じように、「アゴニスト」という用語は最も広義に用いられ、ここに開示した天然GLM−Rポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子を含む。適切なアゴニスト又はアンタゴニスト分子には、特にアゴニスト又はアンタゴニスト抗体又は抗体断片、天然GLM−Rポリペプチドの断片又はアミノ酸配列変異体、ペプチド、小有機分子等が含まれる。GLM−Rポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法は、GLM−Rポリペプチドと候補アゴニスト又はアンタゴニスト分子を接触させ、通常はGLM−Rポリペプチドに関連している一つ又は複数の生物学的活性の検出可能な変化を測定することを含みうる。
ここで用いられる「担体」は、製薬的に許容されうる担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、用いられる服用量及び濃度でそれらに曝露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。生理学的に許容されうる担体は、水性pH緩衝液であることが多い。生理学的に許容されうる担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)を含む。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab')、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体(Zapata等, Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]);単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
抗体のパパイン消化は、それぞれが単一の抗原結合部位を持つ「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して命名された残留「Fc」断片を産生する。抗体のペプシン処理により、単一のF(ab')断片が生じ、これは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合させることができるものである。
「Fv」は、完全な抗原-認識及び-結合部位を含む最小の抗体断片である。この領域は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。この構造において、各可変領域の3つのCDRが相互作用してVH−VLダイマーの表面に抗原結合部位を形成する。合計で6つのCDRが抗体に対し抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
またFab断片は軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常ドメイン(CH1)を含む。Fab断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されている点でFab'断片と相違する。Fab'-SHは、ここでは定常ドメインのシステイン残基(類)が遊離のチオール基を持つFab'を表す。F(ab')抗体断片は、通常は間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生成される。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κ及びλと呼ばれる2つの別個の型のうちの1つに分類される。
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに分類される。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMという5つの主要なクラスがあり、これらの一部は更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分けられる。
「単鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、単一のポリペプチド鎖内に存在する抗体のVHドメイン及びVLドメインを含む。好ましくは、FvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの概説については、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照のこと。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原-結合部位を有する小さな抗体断片を意味し、この断片は同一のポリペプチド鎖(VH−VL)中に軽鎖可変ドメイン(VL)と連結した重鎖可変ドメイン(VH)を有する。同一鎖状の2つのドメイン間における対形成が可能となるのに十分に短いリンカーを使用することにより、ドメインは強制的に別の鎖の相補的なドメインと対形成され、2つの抗原結合部位を形成する。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号;国際公開93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993) に更に詳細に記載されている。
「単離された抗体」とは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、抗体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法によって定量して95重量%、最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分な程度まで、あるいは(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた還元又は非還元条件下でSDS-PAGEによる均一性が達せられるまで精製される。単離された抗体には、組換え体細胞内のインサイツの抗体が含まれるが、これは抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないからである。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一つの精製工程により調製される。
特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープに「特異的に結合する」又は「特異的な」抗体は、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープに対し、それ以外のポリペプチド又はポリペプチドエピトープには実質的に結合することなく、結合するものを意味する。
「標識」という語は、ここで用いられる場合、「標識化」抗体を作製するために、抗体に直接的又は間接的に結合させる検出可能な化合物又は組成物を意味する。標識はそれ自身によって検出可能でもよく(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)、あるいは、酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物又は組成物の化学的変換を触媒してもよい。
「固相」とは、本発明の抗体が接着できる非水性マトリクスを意味する。ここに包含される固相の例は、部分的又は全体的にガラス(例えば、径調整ガラス)、ポリサッカリド(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンで形成されたものを含む。ある実施態様では、前後関係に応じて、固相はアッセイ用プレートのウェル;その他では精製用カラム(例えばアフィニティクロマトグラフィーカラム)を含むことができる。また、この用語は、米国特許第4275149号に記載されたような別々の粒子の不連続な固相も含む。
「リポソーム」は、哺乳動物への薬物(例えばGLM−Rポリペプチド、又はそれに対する抗体)の輸送に有用な、脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤を含む種々のタイプの小胞体である。リポソームの成分は、生物膜の脂質配向に類似して、通常は2層構造に配列される。
「小分子」は約500ダルトン未満の分子量を持つとしてここで定義される。
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表2
GLM−R XXXXXXXXXXXXXXX (長さ=15アミノ酸)
比較タンパク質 XXXXXYYYYYYY (長さ=12アミノ酸)
%アミノ酸配列同一性 =
(ALIGN-2によって決定された通りに、2つのポリペプチド配列の間で同一であったアミノ酸残基の数) ÷ (GLM−Rポリペプチドの全アミノ酸残基数)
= 5÷15 = 33.3%
表3
GLM−R XXXXXXXXXX (長さ=10アミノ酸)
比較タンパク質 XXXXXYYYYYYZZYZ (長さ=15アミノ酸)
%アミノ酸配列同一性 =
(ALIGN-2によって決定された通りに、2つのポリペプチド配列の間で同一であったアミノ酸残基の数) ÷ (GLM−Rポリペプチドの全アミノ酸残基数)
= 5÷10=50%
表4
GLM−R−DNA NNNNNNNNNNNNNN (長さ=14ヌクレオチド)
比較DNA NNNNNNLLLLLLLLLL (長さ=16ヌクレオチド)
%核酸配列同一性 =
(ALIGN-2によって決定された通りに、2つの核酸配列の間で同一であったヌクレオチドの数) ÷ (GLM−R−DNA核酸配列のヌクレオチドの数)
= 6÷14=42.9%
表5
GLM−R−DNA NNNNNNNNNNNN (長さ=12ヌクレオチド)
比較DNA NNNNLLLVV (長さ=9ヌクレオチド)
%核酸配列同一性 =
(ALIGN-2によって決定された通りに、2つの核酸配列の間で同一であったヌクレオチドの数) ÷ (GLM−R−DNA核酸配列のヌクレオチドの数)
= 4÷12=33.3%
II.本発明の組成物と方法
本発明は、I型レセプターに典型的なアーキテクチャー及びその構造的特徴を示す新規な分子を開示するものである。該新規分子はこのレセプターファミリーに既知のメンバー、特にgp130及びGCSF−Rと、有意な相同性を共有しており、ヒト染色体5及びマウス染色体13のgp130に物理的に非常に近いところに見いだされる。
GLM−Rは活性化された単球上に優勢に発現することが分かった。この発見を支持する事実として、GLM−Rは2つの単球細胞系、TMP−1とU937に発現するが、リンパ系及び骨髄由来の多くのその他細胞系には発現しない。更に、LPS及びIFN−γによる刺激によってGLM−Rの強い誘発が単球及び2つの細胞系(示さない)に見られた。総合すると、これら発現データは、単球と場合によってはマクロファージがこのレセプターの生理学的活性の部位であると思われることを示し、それら細胞内におけるその機能のさらなる分析を促すものである。単球中での発現は、胸腺と骨髄で検出されるGLM−Rレベルの上昇を説明する。一方、精巣及び前立腺中でのGLM−Rの存在は、それが免疫系外の付加的な機能であることを示す。
GLM−Rの細胞内ドメインを、hGHによる刺激によりホモ二量体化することが知られているレセプターであるhGH−Rのリガンド結合ドメインに融合することにより、GLM−Rのシグナル伝達能を試験した。得られたキメラ分子は、骨髄32D細胞に増殖性シグナルを形質導入することができ、転写因子STAT−3の活性化と、それより程度は低いがSTAT−5の活性化をもたらした。よって、GLM−Rはシグナル伝達能を有するが、その細胞外ドメインがそれ自体でリガンドに結合するのか、それとも機能的レセプターを形成するには付加的なレセプターサブユニットが必要になるのかについては、決定を待つところである。読み出しとして完全長ヒト分子を用いて形質移入した32D細胞の増殖を使用して、IL−2、−3、−4、−5、−6、−7、−9、−11、−12、−13、−15、−23、GCSF、GM−CSF、EPO、TPO、PRL、GH、OSM、CT−1及びOB(示さない)にとってGLM−Rが十分なレセプターでないことを発見した。これら細胞は、現在、GLM−Rリガンドの様々な供給源をスクリーニングするために使用することができるが、そのような戦略はGLM−Rがホモ二量体として働くことができる場合か、又は必要な付属鎖が32D細胞に内在的に発現する場合にのみ有効である。
GLM−RはSTAT−3を優先的に活性化する一方、STAT−5の活性化は小さいが検出可能であった。これら2つのタンパク質は、骨髄細胞において大きく異なる機能を有していることが示された。構成的に活性なSTAT−5a又はSTAT−5bの強制的発現により、BaF3細胞の因子非依存性及び骨髄分化[Nosaka等, Embo J. 18(17):4754-65 (1999)]、並びにM1細胞のマクロファージ分化[Kawashima等, J. Immunol. 167(7):3652-60 (2001)]が得られる一方、STAT−5aが欠損したマクロファージは、GM−CSFにより誘発される増殖及び遺伝子発現の欠陥を示した。Feldman等, Blood 90(5):1768-76 (1997)。更に、単球を含む、全ての血液細胞系統の再増殖は、野生型細胞の代わりにSTAT−5a−/−5b−/−骨髄細胞を移植片として使用して致命的に照射を受けた動物を救おうとしたとき、大きく損なわれた。Bunting等, Blood 99(2):479-487 (2002)。総合すると、これらのデータにより、STAT−5が単球/マクロファージの発達及び増殖において重要な役割を果たすことが示唆される。一方、STAT−3は、主にIL−10により担われる機能であるマクロファージ活性化のネガティブ制御に関わっていると思われる。Riley等, J. Biol. Chem. 274(23), 16513-16521 (1999), O’Farrel等, Embo. J. 17(4):1006-18 (1998)。マクロファージ及び好中球においてSTAT−3が組織特異的に削除されているマウスモデルでは、マクロファージは恒常的に活性化されており、それは、IL−10欠損マウスに類似の表現型であるインビボTh1細胞(Takeda等, Immunity 10(1):39-49 (1999))の活性化により慢性的全腸炎を引き起こした。Kuhn等, Cell 75(2):263-74 (1993)。
総合すると、我々のデータは、GLM−Rが恐らく単球に及び場合によってはマクロファージにも作用するまだ知られていない螺旋状サイトカインのレセプターであることを示すものである。レセプターをツールとして使用することにより、うまく行けば、GLM−Rの生物学的機能を更に理解するのに重要なこのリガンドを同定することが可能である。
A.完全長GLM−Rポリペプチド
本発明は、本出願でGLM−R(或いはPRO21073又はUNQ6368)と呼ばれるポリペプチドをコードする新規に同定され単離された核酸配列を提供する。特に下記の実施例で更に詳細に説明するように、種々のGLM−RポリペプチドをコードするcDNAが同定され単離された。別々の発現ラウンドで生成されたタンパク質には異なるPRO番号が与えられるが、UNQ番号は全ての与えられたDNA及びコード化タンパク質に独特であり、変わることはないことを記しておく。しかしながら、単純化のために、本明細書において、DNA173920−2924にコードされるタンパク質並びに上記のGLM−R(時にPRO21073と称される)の定義に含まれるさらなる天然相同体及び変異体は、それらの起源又は調製形式に関わらず、「GLM−R」で呼称する。
下記の実施例に開示するように、本明細書でDNA173920−2924と命名するcDNAクローンをATCCに寄託している。これらのクローンの正確なヌクレオチド配列は、この分野で日常的な方法を用いて寄託されたクローンを配列決定することにより容易に決定することができる。予測されるアミノ酸配列は、ヌクレオチド配列から常套的技量を用いて決定できる。ここに記載したGLM−Rポリペプチド及びコード化核酸について、本出願人は、現時点で入手可能な配列情報と最も良く一致するリーディングフレームであると考えられるものを同定した。
B.GLM−R変異体
ここに記載した全長天然配列GLM−Rポリペプチドに加えて、GLM−R変異体も調製できると考えられる。GLM−R変異体は、GLM−R DNAに適当なヌクレオチド変化を導入することにより、あるいは所望のGLM−Rポリペプチドを合成することにより調製できる。当業者は、グリコシル化部位の数又は位置の変化あるいは膜固着特性の変化などのアミノ酸変化がGLM−Rの翻訳後プロセスを変えうることを理解するであろう。
天然完全長配列GLM−R又はここに記載したGLM−Rの種々のドメインにおける変異は、例えば、米国特許第5364934号に記載されている保存的及び非保存的変異についての任意の技術及び指針を用いてなすことができる。変異は、結果として天然配列GLM−Rと比較してGLM−Rのアミノ酸配列が変化するGLM−Rをコードする一又は複数のコドンの置換、欠失又は挿入であってよい。場合によっては、変異は少なくとも1つのアミノ酸のGLM−Rの一又は複数のドメインの任意の他のアミノ酸による置換である。いずれのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を与えることなく挿入、置換又は欠失されるかの指針は、GLM−Rの配列を相同性の知られたタンパク質分子の配列と比較し、相同性の高い領域内でなされるアミノ酸配列変化を最小にすることによって見出される。アミノ酸置換は、一のアミノ酸の類似した構造及び/又は化学特性を持つ他のアミノ酸での置換、例えばロイシンのセリンでの置換、即ち保存的アミノ酸置換の結果とすることができる。挿入及び欠失は、場合によっては1から5のアミノ酸の範囲内とすることができる。許容される変異は、配列においてアミノ酸の挿入、欠失又は置換を系統的に作成し、得られた変異体を下記の実施例に記載するインビトロアッセイの任意のもので活性について試験することにより決定される。
GLM−Rポリペプチド断片がここに提供される。このような断片は、例えば、全長天然タンパク質と比較した際に、N末端又はC末端で切断されてもよく、又は内部残基を欠いていてもよい。或る種の断片は、GLM−Rポリペプチドの所望の生物学的活性に必須ではないアミノ酸残基を欠いている。
GLM−R断片は、多くの従来技術の任意のものによって調製してよい。所望のペプチド断片は化学合成してもよい。代替的方法は、酵素的消化、例えば特定のアミノ酸残基によって決定される部位のタンパク質を切断することが知られた酵素でタンパク質を処理することにより、あるいは適当な制限酵素でDNAを消化して所望の断片を単離することによるGLM−R断片の生成を含む。更に他の好適な技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、所望のポリペプチド断片をコードするDNA断片を単離し増幅することを含む。DNA断片の所望の末端を決定するオリゴヌクレオチドは、PCRの5’及び3’プライマーで用いられる。好ましくは、GLM−Rポリペプチド断片は、図2(配列番号2)に示した天然GLM−Rポリペプチドと少なくとも1つの生物学的及び/又は免疫学的活性を共有する。
特定の実施態様では、対象とする保存的置換を、好ましい置換と題して表6に示す。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表6に例示的置換と名付けた又は以下にアミノ酸分類で更に記載するように、より実質的な変化が導入され生成物がスクリーニングされる。
表6
元の残基 例示的置換 好ましい置換
Ala(A) val; Leu; ile val
Arg(R) lys; gln; asn lys
Asn(N) gln; his; lys; arg gln
Asp(D) glu glu
Cys(C) ser ser
Gln(Q) asn asn
Glu(E) asp asp
Gly(G) pro; ala ala
His(H) asn; gln; lys; arg arg
Ile(I) leu; val; met; ala; phe;
ノルロイシン leu
Leu(L) ノルロイシン; ile; val;
met; ala; phe ile
Lys(K) arg; gln; asn arg
Met(M) leu; phe; ile leu
Phe(F) leu; val; ile; ala; tyr leu
Pro(P) ala ala
Ser(S) thr thr
Thr(T) ser ser
Trp(W) tyr; phe tyr
Tyr(Y) trp; phe; thr; ser phe
Val(V) ile; leu; met; phe;
ala; ノルロイシン leu
GLM−Rポリペプチドの機能及び免疫学的同一性の実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持しながら、それらの効果において実質的に異なる置換基を選択することにより、達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいてグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン, met, ala, val, leu, ile;
(2)中性の親水性:cys, ser, thr;
(3)酸性:asp, glu;
(4)塩基性:asn, gln, his, lys, arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly, pro; 及び
(6)芳香族:trp, tyr, phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。また、そのように置換された残基は、保存的置換部位、又はより好ましくは残された(非保存)部位に導入されうる。
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャンニング、及びPCR突然変異誘発[Carter等, Nucl. Acids Res., 13: 4331 (1986); Zoller等, Nucl. Acids Res., 10: 6487 (1987)]、カセット突然変異誘発[Wells等, Gene, 34: 315 (1985)]、制限的選択突然変異誘発[Wells等, Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317: 415 (1986)]等のこの分野で知られた方法を用いてなすことができ、又は他の知られた技術をクローニングしたDNAに実施してGLM−R変異体DNAを作成することもできる。
また、隣接配列に沿って一又は複数のアミノ酸を同定するのにスキャンニングアミノ酸分析を用いることができる。好ましいスキャンニングアミノ酸は比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し変異体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で典型的に好ましいスキャンニングアミノ酸である[Cuningham及びWells, Science, 244: 1081-1085 (1989)]。また、アラニンは最もありふれたアミノ酸であるため典型的には好ましい。更に、それは埋もれた及び露出した位置の両方に見られることが多い[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150: 1 (1976)]。アラニン置換が十分な量の変異体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
C.GLM−Rの修飾
GLM−Rの共有結合的修飾は本発明の範囲内に含まれる。共有結合的修飾の一型は、GLM−Rポリペプチドの標的とするアミノ酸残基を、GLM−Rの選択された側鎖又はN又はC末端残基と反応できる有機誘導体化試薬と反応させることである。二官能性試薬での誘導体化が、例えばGLM−Rを水不溶性支持体マトリクスあるいは抗GLM−R抗体の精製方法又はその逆で用いるための表面に架橋させるのに有用である。通常用いられる架橋剤は、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等の二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミダート等の試薬を含む。
他の修飾は、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチルへの脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
本発明の範囲内に含まれるGLM−Rポリペプチドの共有結合的修飾の他の型は、ポリペプチドの天然グリコシル化パターンの変更を含む。「天然グリコシル化パターンの変更」とは、ここで意図されるのは、天然配列GLM−Rに見られる1又は複数の炭水化物部分の欠失(存在するグリコシル化部位の除去又は化学的及び/又は酵素的手段によるグリコシル化の削除のいずれかによる)、及び/又は天然配列GLM−Rに存在しない1又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。更に、この文節は、存在する種々の炭水化物部分の性質及び特性の変化を含む、天然タンパク質のグリコシル化における定性的変化を含む。
GLM−Rポリペプチドへのグリコシル化部位の付加はアミノ酸配列の変更を伴ってもよい。この変更は、例えば、1又は複数のセリン又はトレオニン残基の天然配列GLM−R(O-結合グリコシル化部位)への付加、又は置換によってなされてもよい。GLM−Rアミノ酸配列は、場合によっては、DNAレベルでの変化、特に、GLM−RポリペプチドをコードするDNAを予め選択された塩基において変異させ、所望のアミノ酸に翻訳されるコドンを生成させることを通して変更されてもよい。
GLM−Rポリペプチド上に炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、グリコシドのポリペプチドへの化学的又は酵素的結合による。このような方法は、この技術分野において、例えば、1987年9月11日に公開されたWO87/05330、及びAplin及びWriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
GLM−Rポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的に、あるいはグルコシル化の標的となるアミノ酸残基をコードするコドンの変異的置換によってなすことができる。化学的脱グリコシル化技術は、この分野で知られており、例えば、Hakimuddin等, Arch. Biochem. Biophys., 259:52 (1987)により、及びEdge等, Anal. Biochem., 118: 131 (1981)により記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura等, Meth. Enzymol. 138:350 (1987)に記載されているように、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼを用いることにより達成される。
GLM−Rの共有結合的修飾の他の型は、米国特許第4640835号;第4496689号;第4301144号;第4670417号;第4791192号又は第4179337号に記載された方法で、種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンの一つへGLM−Rポリペプチドを結合させるものである。
また、本発明のGLM−Rは、他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したGLM−Rを含むキメラ分子を形成するように修飾してもよい。
一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとGLM−Rとの融合を含む。エピトープタグは、一般的にはGLM−Rのアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このようなGLM−Rのエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によってGLM−Rを容易に精製できるようにする。種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(ポリ-His)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-his-gly)タグ;fluHAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Field等, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c−mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]を含む。
他の実施態様では、キメラ分子はGLM−Rの免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含んでもよい。キメラ分子の二価形態(「イムノアドヘシン」とも呼ばれる)については、そのような融合体はIgG分子のFc領域であり得る。Ig融合体は、好ましくはIg分子内の少なくとも1つの可変領域に換えてGLM−Rポリペプチドの可溶化(膜貫通ドメイン欠失又は不活性化)形態を含む。特に好ましい実施態様では、免疫グロブリン融合体は、IgG分子のヒンジ、CH2及びCH3、又はヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合体の製造については、1995年6月27日発行の米国特許第5428130号を参照のこと。
D.GLM−Rの調製
以下の説明は、主として、GLM−R核酸を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することによりGLM−Rを生産する方法に関する。もちろん、当該分野においてよく知られている他の方法を用いてGLM−Rを調製することも考えられる。例えば、GLM−R配列、又はその一部は、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生産してもよい[例えば、Stewart等, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., San Francisco, CA (1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。手動技術又は自動によるインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(Foster City, CA)を用いて、製造者の指示により実施してもよい。GLM−Rの種々の部分は、別々に化学的に合成され、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて完全長GLM−Rを生産してもよい。
1.GLM−RをコードするDNAの単離
GLM−RをコードするDNAは、GLM−RmRNAを保有していてそれを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリーから得ることができる。従って、ヒトGLM−R DNAは、実施例に記載されるように、ヒトの組織から調製されたcDNAライブラリーから簡便に得ることができる。またGLM−R-コード化遺伝子は、ゲノムライブラリーから又は公知の合成方法(例えば、自動化核酸合成)により得ることもできる。
ライブラリーは、対象となる遺伝子あるいはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計されたプローブ(GLM−Rに対する抗体又は少なくとも約20−80塩基のオリゴヌクレオチド等)によってスクリーニングできる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリーのスクリーニングは、例えばSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。GLM−Rをコードする遺伝子を単離する他の方法はPCR法を使用するものである[Sambrook等,上掲;Dieffenbach等, PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
下記の実施例には、cDNAライブラリーのスクリーニング技術を記載している。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、充分な長さで、疑陽性が最小化されるよう充分に明瞭でなければならない。オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリー内のDNAとのハイブリダイゼーション時に検出可能であるように標識されていることが好ましい。標識化の方法は当該分野において良く知られており、32P標識されたATPのような放射標識、ビオチン化あるいは酵素標識の使用が含まれる。中程度の厳密性及び高度の厳密性を含むハイブリダイゼーション条件は、上掲のSambrook等に与えられている。
このようなライブラリースクリーニング法において同定された配列は、GenBank等の公共データベース又は個人の配列データベースに寄託され公衆に利用可能とされている既知の配列と比較及びアラインメントすることができる。分子の決定された領域内又は全長に渡っての(アミノ酸又は核酸レベルのいずれかでの)配列同一性は、この分野で知られ、ここに記載した方法を用いて決定することができる。
タンパク質コード化配列を有する核酸は、初めてここで開示された推定アミノ酸配列を使用し、また必要ならば、cDNAに逆転写されなかったmRNAの生成中間体及び先駆物質を検出する上掲のSambrook等に記述されているような従来のプライマー伸展法を使用し、選択されたcDNA又はゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより得られる。
2.宿主細胞の選択及び形質転換
宿主細胞を、ここに記載したGLM−R生産のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)及び 上掲のSambrook等に見出すことができる。
原核生物細胞形質移入及び真核生物細胞形質移入の方法、例えば、CaCl、CaPO、リポソーム媒介及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrook等に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、一般的に原核生物に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shaw等, Gene, 23:315 (1983)及び1989年6月29日公開のWO89/05859に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が好ましい。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4399216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van Solingen等, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
ここに記載のベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母菌、又は高等真核生物細胞である。適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えば大腸菌のような腸内細菌科を含む。種々の大腸菌株が公衆に利用可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31,446);大腸菌X1776(ATCC31,537);大腸菌株W3110(ATCC27,325)及びK5772(ATCC53,635)である。他の好ましい原核動物宿主細胞は、腸内細菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルビニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ、例えば、ネズミチフス菌、セラチア、例えば、セラチアマルセサンス(Serratia marcescans) 、及び赤痢菌、並びに桿菌、例えばバシリスブチリス(B. subtilis)及びバシリリチェニフォルミス(B. licheniformis)(例えば、1989年4月12日発行のDD 266,710に記載されたバシリリチェニフォルミス41P)、シュードモナス、例えば緑膿筋及びストレプトマイセスなどの腸内細菌科を含む。これらの例は限定ではなく例示である。株W3110は、組換えDNA生産発行のための共通の宿主株であるので一つの特に好ましい宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、株W3110は、細胞に外来のタンパク質をコードする遺伝子における遺伝子変異をするように修飾してもよく、そのような宿主の例としては、完全な遺伝子型tonAを有する大腸菌W3110株1A2;完全な遺伝子型tonA ptr3を有する大腸菌W3110株9E4;完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (argF-lac)169 degP ompT kanrを有する大腸菌W3110株27C7(ATCC 55,244);完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (algF-lac)169 degP ompT rbs7 ilvG kanrを有する大腸菌W3110株37D6;非カナマイシン耐性degP欠失変異を持つ37D6株である大腸菌W3110株40B4;及び1990年8月7日発行の米国特許第4946783号に開示された変異周辺質プロテアーゼを有する大腸菌株を含む。あるいは、クローニングのインビトロ法、例えばPCR又は他の核酸ポリメラーゼポリメラーゼ反応が好ましい。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、GLM−Rポリペプチドコード化ベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシアは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。他に、シゾサッカロミセスプロンブ(Schizosaccharomyces pombe)(Beach及びNurse, Nature, 290: 140 [1981]; 1985年5月2日発行のEP139,383);クルベロミセスホスツ(Kluveromyces hosts)(米国特許第4,943,529号; Fleer等, Bio/Technology, 9: 968-975 (1991))、例えばケーラクチス(K. lactis)(MW98-8C, CBS683, CBS4574; Louvencourt等, J. Bacteriol., 154(2):737-742 [1983])、ケーフラギリス(K. fragilis)(ATCC 12,424)、ケーブルガリクス(K. bulgaricus)(ATCC 16,045)、ケーウィケラミイ(K. wickeramii)(ATCC 24,178)、ケーワルチイ(K. waltii)(ATCC 56,500)、ケードロソフィラルム(K. drosophilarum)(ATCC 36,906; Van den Berg等, Bio/Technology, 8: 135 (1990))、ケーテモトレランス(K. themotolerans)及びケーマルキシアナス(K. marxianus);ヤロウィア(yarrowia)(EP 402,226);ピッチャパストリス(Pichia pastoris)(EP 183,070; Sreekrishna等, J. Basic Microbiol, 28: 265-278 [1988]);カンジダ;トリコデルマレーシア(reesia)(EP 244,234);アカパンカビ(Case等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76: 5259-5263 [1979]);シュワニオマイセス(schwanniomyces)、例えばシュワニオマイセスオクシデンタリス(occidentalis)(1990年10月31日発行のEP394,538);及び糸状真菌、例えば、ニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラジウム(Tolypocladium)(1991年1月10日発行のWO91/00357);及びコウジ菌、例えば偽巣性コウジ菌(Ballance等, Biochem. Biophys. Res. Commun., 112: 284-289 [1983]; Tilburn等, Gene, 26: 205-221 [1983]; Yelton等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 1470-1474 [1984])及びクロカビ(Kelly及びHynes, EMBO J., 4: 475-479 [1985])が含まれる。ここで好ましいメチロトロピック(methylotropic)酵母は、これらに限られないが、ハンセヌラ(Hansenula)、カンジダ、クロエケラ(Kloeckera)、ピチア(Pichia)、サッカロミセス、トルロプシス(Torulopsis)、及びロドトルラ(Rhodotorula)からなる属から選択されるメタノールで成長可能な酵母を含む。この酵母の分類の例示である特定の種のリストは、C. Anthony, The Biochemistry of Methylotrophs, 269 (1982)に記載されている。
グリコシル化GLM−Rの発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、ショウジョウバエS2及びスポドスペラSf9等の昆虫細胞並びに植物細胞が含まれる。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びCOS細胞を含む。より詳細な例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980))ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL 75); ヒト肝細胞 (Hep G2, HB 8065); 及びマウス乳房腫瘍細胞 (MMT 060562, ATTC CCL51)を含む。適切な宿主細胞の選択は、この分野の技術常識内にある。
3.複製可能なベクターの選択及び使用
GLM−Rをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で周知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、一又は複数のシグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の一又は複数を含む適当なベクターの作成には、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を用いる。
GLM−Rは直接的に組換え手法によって生産されるだけではなく、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN-末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生産される。一般に、シグナル配列はベクターの成分であるか、ベクターに挿入されるGLM−Rコード化DNAの一部である。シグナル配列は、例えばアルカリフォスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列であってよい。酵母の分泌に関しては、シグナル配列は、酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含み、後者は米国特許第5010182号に記載されている)、又は酸ホスフォターゼリーダー、白体(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日発行のEP362179)、又は1990年11月15日に公開されたWO90/13646に記載されているシグナルであり得る。哺乳動物細胞の発現においては、哺乳動物シグナル配列は、同一あるいは関連ある種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダーのようなタンパク質の直接分泌に使用してもよい。
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選べるマーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシリに対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
哺乳動物細胞に適切な選べるマーカーの例は、DHFRあるいはチミジンキナーゼのように、GLM−Rコード化核酸を取り込むことのできる細胞成分を同定することのできるものである。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、Urlaub等によりProc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)に記載されているようにして調製され増殖されたDHFR活性に欠陥のあるCHO株化細胞である。酵母菌中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979);Kingman等, Gene, 7:141(1979);Tschemper等, Gene, 10:157(1980)]。trp1遺伝子は、例えば、ATCC番号44076あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力を欠く酵母菌の突然変異株に対する選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
発現及びクローニングベクターは、通常、GLM−R-コード化核酸配列に作用可能に結合し、mRNA合成を制御するプロモーターを含む。種々の可能な宿主細胞により認識される好適なプロモーターが知られている。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Cahng等, Nature, 275:615 (1978); Goeddel等, Nature, 281:544 (1979)]、アルカリフォスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); EP 36,776]、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター[deBoer 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するプロモータもまたGLM−RをコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を含む。
酵母宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ[Hitzeman 等, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]又は他の糖分解酵素[Hess 等, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1987)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸フォスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域である。酵母菌での発現に好適に用いられるベクターとプロモータは更にEP73657に記載されている。
哺乳動物の宿主細胞中でのベクターからのGLM−R転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス(1989年7月5日公開のUK2211504)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及び熱衝撃プロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り制御される。
より高等の真核生物によるGLM−RをコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。エンハンサーは、通常は約10から300塩基対で、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、GLM−Rコード化配列の5’又は3’位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’位に位置している。
また真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの通常は5’、時には3’の非翻訳領域から取得できる。これらの領域は、GLM−RをコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
組換え脊椎動物細胞培養でのGLM−Rの合成に適応化するのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gething等, Nature, 293:620-625 (1981); Mantei等, Nature, 281:40-46 (1979); EP 117,060; 及びEP 117,058に記載されている。
4.遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子の増幅及び/又は発現は、ここで提供された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来よりのサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:5201-5205 (1980)]、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリダイゼーション法によって、直接的に試料中で測定することができる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。ついで、抗体を標識し、アッセイを実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば細胞又は組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイによって、測定することもできる。試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列GLM−Rポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又はGLM−R DNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
5.ポリペプチドの精製
GLM−Rの形態は、培地又は宿主細胞の溶菌液から回収することができる。膜結合性であるならば、適切な洗浄液(例えばトリトン-X(登録商標)100)又は酵素的切断を用いて膜から引き離すことができる。GLM−Rの発現に用いられる細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤などの種々の化学的又は物理的手段によって破壊することができる。
GLM−Rを、組換え細胞タンパク又はポリペプチドから精製することが望ましい。適切な精製手順の例である次の手順により精製される:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEによるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラム;及びGLM−Rのエピトープタグ形態を結合させる金属キレート化カラムである。この分野で知られ、例えば、Deutscher, Methodes in Enzymology, 182 (1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載された多くのタンパク質精製方法を用いることができる。選ばれる精製工程は、例えば、用いられる生産方法及び生産される特定のGLM−Rの性質に依存する。
E.GLM−Rの用途
本発明のGLM−Rをコードする核酸配列(又はそれらの相補鎖)は、ハイブリダイゼーションプローブとしての使用を含む分子生物学の分野において、染色体及び遺伝子マッピングにおいて、及びアンチセンスRNA及びDNAの生成において種々の用途を有している。また、GLM−R核酸も、ここに記載される組換え技術によるGLM−Rポリペプチドの調製に有用であろう。
完全長天然配列GLM−R DNA(配列番号1)、又はその一部は、完全長GLM−R cDNAの単離、又は図1(配列番号1)に開示されたGLM−R配列と所望の配列同一性を有するその他cDNA(例えば、GLM−Rの天然に生じる変異体又は他の種からのものをコードするもの)の単離のためのcDNAライブラリー用のハイブリダイゼーションプローブとして使用できる。場合によっては、プローブの長さは約20〜約50塩基である。ハイブリダイゼーションプローブは、配列番号1のヌクレオチド配列の新規領域から少なくとも部分的に得ることができ、そのような領域は、過度の実験を行うことなく、又は天然配列GLM−Rのプロモーター、エンハンサー成分及びイントロンを含むゲノム配列から決定できる。例えば、スクリーニング法は、GLM−R遺伝子のコード化領域を周知のDNA配列を用いて単離して約40塩基の選択されたプローブを合成することを含む。ハイブリダイゼーションプローブは、32P又は35S等の放射性ヌクレオチド、又はアビディン/ビオチン結合系を介してプローブに結合したアルカリホスファターゼ等の酵素標識を含む種々の標識で標識されうる。本発明のGLM−R遺伝子に相補的な配列を有する標識されたプローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリーをスクリーニングし、そのライブラリーの何れのメンバーがプローブにハイブッド形成するかを決定するのに使用できる。ハイブリダイゼーション技術は、以下の実施例において更に詳細に記載する。
本出願で開示した任意のEST配列はプローブとして、ここに記載した方法で用いることができる。
GLM−R核酸のその他有用な断片には、標的GLM−R mRNA(センス)又はGLM−R DNA(アンチセンス)配列に結合可能な一本鎖核酸配列(RNAかDNAの何れか)を含んでなるアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。本発明に係るアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、GLM−R DNAのコード領域の断片を含んでなる。そのような断片は一般に少なくとも約14ヌクレオチド、好ましくは約14から30ヌクレオチドを含む。所定のタンパク質をコードするcDNA配列に基づいて、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを引き出す能力は例えばSteinとCohen, Cancer Res. 48:2659(1988)及びvan der Krol等, Bio Techniques 6:958 (1988)に記載されている。
核酸配列を標的とするアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドの結合により、二重鎖の分解の増強、転写又は翻訳の早期停止を含む幾つかの手段の一つ、あるいは他の手段を含む複数の方法の1つにより標的配列の転写又は翻訳を阻止する二重鎖が形成される。しかしてアンチセンスオリゴヌクレオチドがGLM−Rタンパク質の発現を阻止するために使用されうる。アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは更に変更された糖−ホスホジエステル骨格(あるいはWO91/06629に記載されているもののような他の糖結合)を有するオリゴヌクレオチドを含み、ここで、そのような糖結合は内因性ヌクレアーゼに対して耐性である。耐性糖結合を持つそのようなオリゴヌクレオチドはインビボで安定である(すなわち、酵素分解に抗しうる)が、標的ヌクレオチド配列に結合可能な配列特異性を保持している。
センス又はアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドの他の例には、WO90/10048に記載されているもののような有機部分及びポリ-L-リシンのような標的核酸配列に対して親和性を増加させる他の部分に共有結合的に結合しているオリゴヌクレオチドが含まれる。また更に、挿入剤、例えばエリプティシン(ellipticine)、及びアルキル化剤又は金属錯体が、標的ヌクレオチド配列に対するアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドの結合特異性を変更させるためにアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドに付着されうる。
アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、例えばCaPO媒介DNA形質移入、エレクトロポレーションを含む任意の遺伝子導入法により、又はエプスタイン・バーウイルスのような遺伝子導入ベクターを使用して、標的核酸配列を含む細胞中に導入することができる。好適な手順では、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは適切なレトロウィルスベクター中に挿入される。標的核酸配列を含む細胞がインビボかエキソビボで組み換えレトロウィルスベクターと接触させられる。限定されるものではないが、好適なレトロウィルスベクターには、マウスレトロウルスM-MuLV由来のもの、N2(M-MulV由来のレトロウィルス)、又はDCT5A、DCT5B及びDCT5Cと命名された二重コピーベクターが含まれる(WO90/13641を参照)。
アンチセンスオリゴヌクレオチドはまたWO91/04753に記載されているように、リガンド結合分子との抱合体の形成により標的核酸配列を含む細胞中に導入することができる。限定されるものではないが、好適なリガンド結合分子には、細胞表面レセプター、成長因子、その他のサイトカイン、又は細胞表面レセプターに結合する他のリガンドが含まれる。好ましくは、リガンド結合分子の抱合体はリガンド結合分子のその対応する分子又はレセプターに結合する能力、又はセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチド又はその抱合体バージョンの細胞内への侵入を阻止する能力を実質的に妨害しない。
あるいは、センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、WO90/10448に記載されたように、オリゴヌクレオチド−脂質複合体の形成により標的核酸配列を含む細胞内に導入されうる。センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチド-脂質複合体は好ましくは内因性リパーゼにより細胞内で分離される。
また、プローブをPCR技術で用いて、密接に関連したGLM−R配列の同定のための配列のプールを産生することができる。
GLM−Rをコードする核酸配列は、また、そのGLM−Rをコードする遺伝子のマッピングのため、及び遺伝子障害を持つ個体の遺伝子分析のためのハイブリダイゼーションプローブを作成するために用いることができる。ここに提供されるヌクレオチド配列は、インサイツハイブリダイゼーション、既知の染色体マーカーに対する結合分析、及びライブラリーでのハイブリダイゼーションスクリーニング等の周知の技術を用いて、染色体及び染色体の特定領域にマッピングすることができる。
GLM−Rのコード化配列が他のタンパク質に結合するタンパク質をコードする場合(例えば、GLM−Rがレセプター又はコリガンド(co-ligand)である場合)、GLM−Rは、結合相互作用に関与する他のタンパク質又は分子を同定するアッセイに用いることができる。そのような方法により、レセプター/リガンド結合性相互作用の阻害剤を同定することができる。このような結合性相互作用に関与するタンパク質も、ペプチド又は小分子阻害剤又は結合相互作用のアゴニストのスクリーニングに用いることができる。また、レセプターGLM−Rは相関性のリガンド(類)を単離するために使用することができる。スクリーニングアッセイは、天然GLM−R又はGLM−Rのレセプターの生物活性を模倣するリード化合物を発見するために設計できる。このようなスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリーの高スループットスクリーニングにも用いられ、それらを小分子候補薬剤の同定に特に適したものとする。考えられる小分子には、合成有機又は無機化合物が含まれる。アッセイは、当該分野で良く特徴付けられているタンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学スクリーニングアッセイ、免疫検定及び細胞ベースのアッセイを含む種々の方式で実施することができる。
また、GLM−R又はその修飾型をコードする核酸は、治療的に有用な試薬の開発やスクリーニングに有用であるトランスジェニック動物又は「ノックアウト」動物を産生するためにも使用できる。トランスジェニック動物(例えばマウス又はラット)とは、出生前、例えば胚段階で、その動物又はその動物の祖先に導入された導入遺伝子を含む細胞を有する動物である。導入遺伝子とは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれるDNAである。一実施態様では、GLM−RをコードするcDNAは、確立された技術によりGLM−RをコードするゲノムDNAをクローン化するために使用することができ、且つGLM−RをコードするDNAを発現する細胞を含むトランスジェニック動物を産生するためにそのゲノム配列を使用することができる。トランスジェニック動物、特にマウス又はラット等の動物を産生する方法は当該分野において常套的になっており、例えば米国特許第4736866号や第4870009号に記述されている。典型的には、特定の細胞を組織特異的エンハンサーでのGLM−R導入遺伝子の導入の標的にする。胚段階で動物の生殖系列に導入されたGLM−Rコード化導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物はGLM−RをコードするDNAの発現の増加の影響を調べるために使用することができる。このような動物は、例えばその過剰発現を伴う病理症状からの保護をもたらすと思われる試薬のテスター動物として使用できる。本発明のこの態様では、動物を試薬で治療し、導入遺伝子を有する未治療の動物に比べ病理症状の発症率が低ければ、病理症状に対する治療的処置の可能性が示される。
あるいは、GLM−Rの非ヒト相同体は、動物の胚性細胞に導入されたGLM−Rをコードする変更ゲノムDNAと、GLM−Rをコードする内在性遺伝子との間の相同的組換えによって、GLM−Rをコードする欠陥又は変更遺伝子を有するGLM−R「ノックアウト」動物を作成するために使用できる。例えば、GLM−RをコードするcDNAは、確立された技術に従い、GLM−RをコードするゲノムDNAのクローニングに使用できる。GLM−RをコードするゲノムDNAの一部を欠失したり、組み込みを監視するために使用することができる選択可能なマーカーをコードする遺伝子等の他の遺伝子で置換することができる。典型的には、無変化のフランキングDNA(5’と3’末端の両方)の数キロベースがベクターに含まれる[例えば、相同的組換えベクターの説明についてはThomas及びCapecchi, Cell, 51:503(1987)を参照のこと]。ベクターは胚性幹細胞株に(例えばエレクトロポレーションによって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に組換えられた細胞が選択される[例えば、Li等, Cell, 69:915(1992)参照]。選択された細胞は次に動物(例えばマウス又はラット)の胚盤胞内に注入されて集合キメラを形成する[例えば、Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照]。ついで、キメラ性胚を適切な偽妊娠の雌性養育動物に移植し、胚を妊娠させて「ノックアウト」動物をつくり出す。胚細胞に相同的に組換えられたDNAを有する子孫は標準的な技術により同定され、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を育種することができる。ノックアウト動物は、GLM−Rポリペプチドが不在であることによるある種の病理症状及びその病理症状の進行に対する防御能力によって特徴付けることができる。
GLM−Rポリペプチドをコードする核酸はまた遺伝子療法に使用することができる。遺伝子療法の用途では、例えば欠陥遺伝子の置換のために治療的有効量の遺伝子産物のインビボ合成を達成するために遺伝子が細胞に導入される。「遺伝子療法」には、持続効果が単一の治療によって達成される一般的な遺伝子療法と、治療的有効量のDNA又はmRNAの一回又は繰り返し投与を含む遺伝子治療剤の投与の双方が含まれる。アンチセンスRNA及びDNAを、ある種の遺伝子のインビボでの発現を阻止するための治療剤として使用することができる。短いアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞膜によるその制限された取り込みにより引き起こされるその低細胞内濃度にもかかわらず、阻害剤として作用する細胞中に移入されうることは既に示されている。(Zamecnik等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:4143-4146 [1986])。オリゴヌクレオチドは、例えば負に荷電したホスホジエステル基を無電荷基で置換することにより、その取り込みを亢進するように修飾することができる。
生細胞に核酸を導入するために利用できる様々な技術がある。その技術は、核酸がインビトロで培養細胞中に移されるか、又は意図した宿主の細胞中にインビボで移されるかに依存して変わる。哺乳動物細胞へのインビトロでの核酸の移送に好適な技術には、リポソームの使用、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法等々が含まれる。現在好適なインビボでの遺伝子移送技術には、ウィルス(典型的にはレトロウィルス)ベクターでの形質移入とウィルスコートタンパク質−リポソーム媒介形質移入(Dzau等, Trends in Biotechnology 11:205-210[1993])が含まれる。ある状況では、核酸源に標的細胞をターゲッティングする薬剤、例えば細胞表面膜タンパク質又は標的細胞に対して特異的な抗体、標的細胞上のレセプターに対するリガンドを提供することが望ましい。リポソームが用いられる場合、エンドサイトーシスに関連する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質は、例えば特定の細胞型向けのキャプシドタンパク質又はその断片、サイクリングにおいて内部移行を受けるタンパク質の抗体、細胞内局在化を標的にし、細胞内半減期を亢進するタンパク質を標的とする、及び/又は取り込みを容易にするために使用しうる。レセプター媒介エンドサイトーシスの技術は、例えばWu等, J. Biol. Chem. 262:4429-4432 (1987);及びWagner等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:3410-3414(1990)に記載されている。遺伝子作成及び遺伝子療法プロトコールについてはAnderson等, Science 256:808-813 (1992)を参照されたい。
ここに記載したGLM−Rポリペプチドはまたタンパク質電気泳動法の目的のための分子量マーカーとして使用することもできる。
ここに記載したGLM−Rポリペプチド又はその断片をコードする核酸分子は染色体の同定のために有用である。この点において、実際の配列データに基づく染色体標識試薬はごくわずかしか現在は利用できないので、新しい染色体マーカーを同定する必要性が以前より存在する。本発明のGLM−R核酸分子は染色体マーカーとして使用することができる。
本発明のGLM−Rポリペプチドと核酸分子はまた組織分類に対して使用することもでき、ここで本発明のGLM−Rポリペプチドは他のものと比較してある組織に差次的に発現されうる。GLM−R核酸分子はPCR法、ノーザン分析法、サザン分析法及びウェスタン分析法に用途が見出される。
ここに開示するGLM−Rポリペプチド及びそのモジュレーターは、治療薬として使用できる。本発明のGLM−Rポリペプチド及びそのモジュレーターを既知の方法に従って調剤し、治療的に有用な組成物を調製することができ、この場合そのGLM−R産物は混合剤中で製薬的に許容可能な担体媒体と混合される。製薬的組成物は、所望される程度の純度を持つ活性成分を、親油性製剤又は水性溶液の形態で、任意の製薬上許容される担体、賦形剤又は安定化剤と混合することにより調製され保存される(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. [1980])。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール、又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はトゥイーン(TWEEN)(商品名)、プルロニクス(PLURONICS)(商品名)、又はPEG等の非イオン性界面活性剤を含む。
インビボ投与に使用される製剤は滅菌されていなくてはならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、滅菌フィルター膜を通す濾過により容易に達成される。
ここで、本発明の製薬組成物は一般に、無菌のアクセスポートを具備する容器、例えば、皮下注射針で貫通可能なストッパーを持つ静脈内バッグ又はバイアル内に配される。
投与経路は周知の方法、例えば、静脈内、腹膜内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内又は病巣内経路での注射又は注入、局所投与、又は徐放系による。
本発明の製薬組成物の用量及び望ましい薬物濃度は、意図する特定の用途に応じて変化する。適切な用量又は投与経路の決定は、通常の内科医の技量の範囲内である。動物実験は、ヒト治療のための有効量の決定についての信頼できるガイダンスを提供する。有効量の種間スケーリングは、Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobi等, 編, Pergamon Press, New York 1989, pp. 42-96のMordenti, J. 及びChappell, W. 「The use of interspecies scaling in toxicokinetics」に記載された原理に従って実施できる。
GLM−Rポリペプチド又はそのアゴニスト又はアンタゴニストのインビボ投与が用いられる場合、正常な投与量は、投与経路に応じて、哺乳動物の体重当たり1日に約10ng/kgから100mg/kgまで、好ましくは約1μg/kg/日から10mg/kg/日である。特定の用量及び輸送方法の指針は文献に与えられている;例えば、米国特許第4657760号、第5206344号、又は第5225212号参照。異なる製剤が異なる治療用化合物及び異なる疾患に有効であること、例えば一つの器官又な組織を標的とする投与には他の器官又は組織とは異なる方式で輸送することが必要となることが予想される。
GLM−Rポリペプチド又はモジュレーターの投与を必要とする任意の疾患又は疾病の治療に適した放出特性を持つ製剤でGLM−Rポリペプチド又はモジュレーターの持続放出が望まれる場合、マイクロカプセル化が考えられる。持続放出のための組換えタンパク質のマイクロカプセル化は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン(rhIFN-)、インターロイキン-2、及びMNrgp120で成功裏に実施されている。Johnson等, Nat. Med., 2: 795-799 (1996); Yasuda, Biomed. Ther., 27: 1221-1223 (1993); Hora等, Bio/Technology, 8: 755-758 (1990); Cleland, 「Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polyactide Polyglycolide Microsphere Systems」Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach, Powell 及び Newman編, (Plenum Press: New York, 1995), p. 439-462; WO97/03692、WO96/40072、WO96/07399;及び米国特許第5654010号。
これらのタンパク質の持続放出製剤は、ポリ-乳酸-コグリコール酸(PLGA)ポリマーを用い、その生体適合性及び広範囲の生分解特性に基づいて開発された。PLGAの分解生成物である乳酸及びグリコール酸は、ヒト身体内で即座にクリアされる。更に、このポリマーの分解性は、分子量及び組成に依存して数ヶ月から数年まで調節できる。Lewis, 「Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer」: M. Chasin及び R. Langer (編), Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems (Marcel Dekker: New York, 1990), pp. 1-41。
GLM−R及びGLM−Rを有する組成物は好ましくはインビボで使用される。しかし、上述のように、GLM−Rのモジュレーターのスクリーニングについて後述する方法の場合のように、インビトロで投与することもできる。動物モデル及び患者からの試料を使用することによりGLM−Rのモジュレーターも同定可能であることを理解されたい。
本発明は、GLM−Rポリペプチドを模倣又は亢進する(アゴニスト)、或いはGLM−Rポリペプチドの効果を防ぐ又は阻害する(アンタゴニスト)ものを同定するための化合物のスクリーニング方法も包含する。アゴニスト及びアンタゴニストを本明細書ではモジュレーターと呼ぶ。アンタゴニスト候補薬のスクリーニングアッセイは、ここに同定した遺伝子にコードされるGLM−Rポリペプチドと結合又は複合体形成する化合物、又はコード化ポリペプチドの他の細胞性タンパク質との相互作用を阻害する化合物を同定するために設計される。このようなスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリーの高スループットスクリーニングに適用可能であり、よって特に小分子候補薬の同定に適したアッセイを含む。
このアッセイは、タンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ、及び細胞ベースのアッセイで、この分野で知られたものを含む種々の方式で実施される。
アンタゴニストについての全てのアッセイは、それらが候補薬をここで同定された核酸にコードされるGLM−Rポリペプチドと、これら2つの成分が相互作用するのに十分な条件下及び時間で接触させることを必要とすることにおいて共通する。
結合アッセイにおいて、相互作用は結合であり、形成された複合体は単離されるか、又は反応混合物中で検出される。特別な実施態様では、ここに同定された遺伝子にコードされるGLM−Rポリペプチド又は候補薬が、共有又は非共有結合により固相、例えばマイクロタイタープレートに固定化される。非共有結合は、一般的に固体表面をGLM−Rポリペプチドの溶液で被覆し乾燥させることにより達成される。あるいは、固定化されるGLM−Rポリペプチドに特異的な固定化抗体、例えばモノクローナル抗体を、それを固体表面に固着させるために用いることができる。アッセイは、固定化成分、例えば固着成分を含む被覆表面に、検出可能な標識で標識されていてもよい非固定化成分を添加することにより実施される。反応が完了したとき、未反応成分を例えば洗浄により除去し、固体表面に固着した複合体を検出する。最初の非固定化成分が検出可能な標識を有している場合、表面に固定化された標識の検出は複合体形成が起こったことを示す。最初の非固定化成分が標識を持たない場合は、複合体形成は、例えば、固定化された複合体に特異的に結合する標識抗体によって検出できる。
候補化合物が相互作用するがここに同定した遺伝子にコードされる特定のGLM−Rポリペプチに結合しない場合、そのポリペプチドとの相互作用は、タンパク質−タンパク質相互作用を検出するために良く知られた方法によってアッセイすることができる。そのようなアッセイは、架橋、同時免疫沈降、及び勾配又はクロマトグラフィカラムを通す同時精製などの伝統的な手法を含む。更に、タンパク質−タンパク質相互作用は、Chevray及びNathans, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 5789-5793 (1991))に開示されているように、Fields及び共同研究者等(Fiels及びSong, Nature(London) 340: 245-246 (1989); Chien等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 9578-9582 (1991))に記載された酵母菌ベースの遺伝子系を用いることにより監視することができる。酵母菌GAL4などの多くの転写活性化剤は、2つの物理的に別個のモジュラードメインからなり、一方はDNA結合ドメインとして作用し、他方は転写活性化ドメインとして機能する。以前の文献に記載された酵母菌発現系(一般に「2-ハイブリッド系」と呼ばれる)は、この特性の長所を利用して、2つのハイブリッドタンパク質を用いる。該2つのタンパク質の一方は標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合したものであり、他方は、候補となる活性化タンパク質が活性化ドメインに融合したものである。GAL1-lacZリポーター遺伝子のGAL4活性化プロモーターの制御下での発現は、タンパク質-タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β-ガラクトシダーゼに対する色素生産性物質で検出される。2-ハイブリッド技術を用いた2つの特定のタンパク質間のタンパク質−タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKER(商標))は、Clontechから商業的に入手可能である。この系は、特定のタンパク質相互作用に含まれるタンパク質ドメインのマッピング、並びにこの相互作用にとって重要なアミノ酸残基の特定にも拡張することができる。
ここで同定されたGLM−RポリペプチドをコードするDNAとその他細胞内又は細胞外成分との相互作用を阻害する化合物は、次のように試験できる:通常、反応混合物は、GLM−Rと細胞外又は細胞内成分を、それら2つの成分が相互作用及び結合する条件下及び時間で含むように調製される。候補化合物が結合を阻害する能力を試験するために、反応は試験化合物の不存在及び存在下で実施される。更に、プラシーボを第3の反応混合物に添加してポジティブ対照を提供してもよい。混合物中に存在する試験化合物と細胞内又は細胞外成分との結合(複合体形成)は上記のように監視される。対照反応に複合体の形成が見られるが、試験化合物を含有する反応混合物に見られないことは、試験化合物が試験化合物とその結合パートナーとの相互作用を阻害することを示す。
アンタゴニストを検定するために、GLM−Rポリペプチドを特定の活性についてスクリーニングする化合物とともに添加してよく、GLM−Rポリペプチド存在下での対象とする活性を阻害する化合物の能力が化合物がGLM−Rポリペプチドのアンタゴニストであることを示す。あるいは、アンタゴニストは、GLM−Rポリペプチド及び膜結合GLM−Rポリペプチドレセプター又は組換えレセプターを持つ潜在的アンタゴニストを、競合的阻害アッセイに適した条件下で結合させることにより検出してもよい。GLM−Rポリペプチドは、放射性等で標識でき、レセプターに結合したGLM−Rポリペプチドの数を潜在的アンタゴニストの有効性を決定するのに使用できる。レセプターをコードする遺伝子は、当業者に知られた多くの方法、例えばリガンドパンニング及びFACSソートにより同定できる。Coligan等, Current Protocols in Immun., 1(2): Chapter 5 (1991)。好ましくは、発現クローニングが用いられ、ポリアデニル化RNAがGLM−Rポリペプチドに反応性の細胞から調製され、このRNAから生成されたcDNAライブラリーがプールに分配され、COS細胞又はGLM−Rポリペプチド反応性でない他の細胞の形質移入に使用される。スライドガラスで成長させた形質移入細胞を標識したGLM−Rポリペプチドに暴露する。GLM−Rポリペプチドは、部位特異的タンパク質キナーゼの認識部位の包含又はヨウ素化を含む種々の手段で標識できる。固定及びインキュベーションの後、スライドにオートラジオグラフィ分析を施す。ポジティブプールを同定し、相互作用サブプール化及び再スクリーニング工程を用いてサブプールを調製して再形質移入し、結果的に推定レセプターをコードする単一のクローンを生成する。
レセプター同定の代替的方法として、標識化GLM−Rポリペプチドをレセプター分子を発現する細胞膜又は抽出調製物に光親和性結合させることができる。架橋材料はPAGEに溶解させ、X線フィルムに暴露する。レセプターを含む標識複合体を励起し、ペプチド断片に分離し、タンパク質マイクロ配列決定を施すことができる。マイクロ配列決定から得たアミノ酸配列は、推定レセプターをコードする遺伝子を同定するためのcDNAライブラリーをスクリーニングする分解性オリゴヌクレオチドプローブの組の設計に用いられる。
アンタゴニストの他の検定では、レセプターを発現する哺乳動物細胞又は膜調製物を、候補化合物の存在下で標識GLM−Rポリペプチドとともにインキュベートする。ついで、この相互作用を促進又は阻止する化合物の能力を測定する。
潜在的なアンタゴニストのより特定的な例は、免疫グロブリンとGLM−Rポリペプチドとの融合体に結合するオリゴヌクレオチド、特に、限られないが、ポリクローナル及びモノクローナル抗体及び抗体断片、一本鎖抗体、抗-イディオタイプ抗体、及びこれらの抗体又は断片のキメラ又はヒト化形態、並びにヒト抗体及び抗体断片を含む抗体を含んでいる。あるいは、潜在的アンタゴニストは、密接に関連したタンパク質、例えば、レセプターを認識するが効果を与えず、従ってGLM−Rポリペプチドの作用を競合的に阻害するGLM−Rポリペプチドの変異形態であってもよい。
競合的結合アッセイを実施する本明細書の一実施形態では、GLM−Rレセプター又はGLM−Rに対する抗体をコンペティターとして使用できる。
他の潜在的なGLM−Rポリペプチドアンタゴニストは、アンチセンス技術を用いて調製されたアンチセンスRNA又はDNA作成物であり、例えば、アンチセンスRNA又はDNA分子は、標的mRNAにハイブリダイゼーションしてタンパク質翻訳を妨害することによりmRNAの翻訳を直接阻止するように作用する。アンチセンス技術は、トリプルへリックス形成又はアンチセンスDNA又はRNAを通して遺伝子発現を制御するのに使用でき、それらの方法はともに、ポリペプチドヌクレオチドのDNA又はRNAへの結合に基づく。例えば、ここでの成熟GLM−Rポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の5’コード化部分は、約10から40塩基対長のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドの設計に使用される。DNAオリゴヌクレオチドは、転写に含まれる遺伝子の領域に相補的であるように設計され(トリプルへリックス−Lee等, Nucl, Acid Res., 6: 3073 (1979); Cooney等, Science, 241: 456 (1988); Dervan等, Science, 251: 1360 (1991)参照)、それによりGLM−Rポリペプチドの転写及び生成を防止する。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドはインビボでmRNAにハイブリダイゼーションしてmRNA分子のGLM−Rポリペプチドへの翻訳を阻止する(アンチセンス−Okano, Neurochem., 56: 560 (1991); Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression (CRC Press: Boca Raton, FL, 1988))。上記のオリゴヌクレオチドは、細胞に輸送され、アンチセンスRNA又はDNAをインビボで発現させて、GLM−Rポリペプチドの生産を阻害することもできる。アンチセンスDNAが用いられる場合、翻訳開始部位、例えば標的遺伝子ヌクレオチド配列の約−10から+10位置の間から誘導されるオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
潜在的アンタゴニストは、GLM−Rポリペプチドの活性部位、レセプター結合部位、又は成長因子又は他の関連結合部位に結合し、それによりGLM−Rポリペプチドの正常な生物学的活性を阻止する小分子を含む。小分子の例は、これらに限られないが、小型ペプチド又はペプチド様分子、好ましくは可溶性ペプチド、及び合成非ペプチド有機又は無機化合物を含む。
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒できる酵素的RNA分子である。リボザイムは、相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、ついでヌクレオチド鎖切断的切断により作用する。潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、既知の技術で同定できる。更なる詳細は、例えば、Rossi, Current Biology 4: 469-471 (1994)及びPCT公報WO97/33551(1997年9月18日公開)を参照。
転写阻害に用いられるトリプルヘリックス形成における核酸分子は一本鎖でデオキシヌクレオチドからなる。これらのオリゴヌクレオチドの基本組成は、フーグスチン塩基対則によるトリプルヘリックス形成を促進するように設計され、それは一般に二重鎖の一方の鎖上のプリン又はピリミジンのサイズ変更可能な伸展を必要とする。さらなる詳細は、例えば、上掲のPCT公報WO97/33551を参照。
これらの小分子は、上記で議論したスクリーニングアッセイの一又は複数の任意のものにより及び/又は当業者に良く知られた他の任意のスクリーニング技術により同定できる。
ここで提供されている全てのアッセイは、幅広い種々の候補生物活性剤をスクリーニングすることに用いることができる。ここで用いられている「候補生物活性剤」、「候補薬剤」又は「候補薬」、又はここで用いられている文法的に同等の用語は、例えば、タンパク質、オリゴペプチド、小有機分子、多糖類、ポリヌクレオチド、プリン類似体などの細胞活性表現型、又は核酸配列及びタンパク質配列の双方を含むGLM−R配列の発現の何れかを直接的又は間接的に変化させることができる生物活性剤のために試験される全ての分子を表す。
候補薬剤は、主として有機分子であるが、多くの化学物質を包含し、好ましくは100を越え、約2500ダルトン(d)より小さい分子量を有する小有機化合物である。小分子は、ここで更に、50dと2000dの間の分子量を有すると定義される。別の実施形態では、小分子は1500より小さい、又は1200より小さい、又は1000より小さい、又は750より小さい、又は500dより小さい分子量を有する。一実施形態では、ここで用いられる小分子は、約100から200dの分子量を有する。候補薬剤は、タンパク質との構造的な相互作用に必要な官能基を含み、特には水素結合、通常は、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシ又はカルボキシ基、好ましくは少なくとも2つの官能基を含む。候補薬剤は、1つ又は複数の上記の官能基で置換された環状炭素又はヘテロ環状構造及び/又は芳香族又は多芳香族構造を頻繁に含む。また、候補薬剤は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体又はその組み合わせの中に見出される。特に好まれるのはペプチドである。
候補薬剤は、合成又は天然化合物のライブラリーを含む幅広い種々のソースから得られる。例えば、ランダム化オリゴヌクレオチドの発現を含む、幅広い種々の化合物及び生物分子のランダム及び直接合成のための多くの手段を利用することができる。あるいは、細菌、糸状菌、植物及び動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーを利用することができるか、又は容易に作製することができる。更には、通常の化学的、物理的及び生化学的手段によって、天然又は合成的に作製されたライブラリー及び化合物を容易に修飾できる。構造類似体を作製するために、既知の薬理学的な薬剤にアシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などの直接又はランダム化学修飾を施してもよい。
好ましい実施態様では、候補生物活性薬剤はタンパク質である。ここで「タンパク質」によってとは、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド及びペプチドを含む、少なくとも2つの共有結合的に結合しているアミノ酸を意味する。このタンパク質は、天然発生アミノ酸及びペプチド結合、又は合成ペプチド模倣構造で構成されうる。従って、ここで用いられる「アミノ酸」、又は「ペプチド残基」とは、天然発生及び合成アミノ酸の双方を意味する。例えば、ホモフェニルアラニン、シトルリン及びノルロイシンは、本発明の目的のアミノ酸であると考えられている。また、「アミノ酸」は、プロリン及びヒドロキシプロリンのようなアミノ酸残基を含む。その側鎖は、(R)又は(S)配置の何れかである。好ましい実施形態では、このアミノ酸は(S)又はL−配置である。非天然発生側鎖が用いられる場合には、非アミノ酸置換基が、例えばインビボでの分解を防いだり、遅くしたりすることに用いられてもよい。
好ましい実施態様では、候補生物活性薬剤は、天然発生タンパク質又は天然発生タンパク質の断片である。従って、例えば、タンパク質を含む細胞抽出物、又はタンパク質性細胞抽出物のランダム又は直接消化物を用いてもよい。この方法では、原核生物及び真核生物タンパク質のライブラリーは、本発明の方法でのスクリーニングのために作製される。特に、この実施形態で好まれるのは、細菌、糸状菌、ウイルス、及び哺乳動物タンパク質のライブラリーであり、哺乳動物タンパク質、更にはヒトタンパク質が特に好ましい。
好ましい実施形態では、候補生物活性剤は、約5から約30アミノ酸のペプチドで、約5から約20アミノ酸が好まれ、そして約7から約15が特に好まれる。このペプチドは、上記で概説したように、ランダムペプチド、又は「偏向(biased)」ランダムペプチドで、天然発生タンパク質の消化物でありうる。「ランダム化」又は文法的に同等な表現は、各核酸及びペプチドが、基本的に、各々ランダムヌクレオチド及びアミノ酸で構成されていることを意味する。一般的に、これらランダムペプチド(又は核酸、下記にて記載)は化学的に合成されることから、それらは、任意のヌクレオチド又はアミノ酸を任意の位置へ取り入れうる。この合成工程は、ランダム化タンパク質又は核酸を生成し、配列の長さにわたってすべて又は殆どの可能性ある組み合わせの形成を許容するために設計することができ、故にランダム化候補生物活性タンパク質性剤のライブラリーを形成する。
1つの実施形態では、全ての位置において配列優先又は一定さをともなわずに、ライブラリーは完全にランダム化される。好ましい実施形態では、ライブラリーは偏っている。すなわち、配列内のある位置は、一定に保たれているか、限られたメンバーの可能性から選択されるかの何れかである。例えば、好ましい実施形態では、例えば、疎水性アミノ酸、親水性残基、立体構造的に偏った(小さい又は大きい)残基の明確な種類において、核酸結合ドメインの作成、システインの作成、架橋結合のため、SH−3ドメインのプロリン、セリン、スレオニン、リン酸化部位のチロシン又はヒスチジンなど、又はプリンに対して等、ヌクレオチド又はアミノ酸残基はランダム化されている。
好ましい実施形態では、候補生物活性剤は核酸である。「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」又は文法的に同等の表現は、少なくとも2つのヌクレオチドが共有結合的に結合していることを意味する。本発明の核酸は、概してリン酸ジエステル結合を含んでいるが、下記に概説するように、場合によっては、代替バックボーンを有しうる核酸類似体が含まれ、この代替バックボーンは、例えば、ホスホルアミド(Beaucageら, Tetrahedron 49(10): 1925(1993)及びその参考文献;Letsinger, J. Org. Chem. 35:3800(1970);Sprinzlら, Eur. J. Biochem. 81:579(1977);Letsingerら, Nucl. Acids Res. 14:3487(1986);Sawaiら, Chem. Lett. 805(1984), Letsingerら, J. Am. Chem. Soc. 110:4470(1988);及びPauwelsら, Chemica Scripta 26:141 (1986))、ホスホロチオエート(Magら, Nucleic Acids Res. 19:1437(1991);及び米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオアート(Briuら, J. Am. Chem. Soc. 111: 2321(1989))、O−メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Press参照)、及びペプチド核酸バックボーン及び結合(Egholm, J. Am. Chem. Soc. 114:1895(1992);Meierら, Chem. Int. Ed. Engl. 31:1008(1992);Nielsen, Nature, 365:566(1993);Carlssonら, Nature 380:207(1996)、すべて参考文献として取り入れる)を含んでなる。他の類似核酸は、ポジティブ(陽性)バックボーン(Denpcyら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6097(1995);非イオンバックボーン(米国特許第5386023号、第5637684号、第5602240号、第5216141号及び第4469863号;Kiedrowshiら, Angew. Chem. Intl.( Ed. English) 30:423(1991);Letsingerら, J. Am. Chem. Soc. 110:4470(1988);Letsingerら, Nucleoside & Nucleotide 13: 1597(1994);第2章及び3章、ASC Symposium Series 580,「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」, Ed. Y.S. Sanghui 及びP. Dan Cook;Mesmaekerら, Bioorganic & Medicinal Chem. Lett. 4:395(1994);Jeffsら, J. Biomolecular NMR 34:17(1994);Tetrahedron Lett. 37:743(1996))並びに非リボゾームバックボーンを含み、それらは米国特許第5235033号及び第5034506号、及び第6及び7章、ASC Symposium Series 580, 「Carbohydrate Modification in Antisense Research」, Ed. Y.S. Sanghui及びP. Dan Cookに記載のものを含む。1つ又は複数の炭素環糖を含む核酸もまた、核酸の定義に含まれる(Jenkinsら, Chem. Soc. Rev.(1995)pp169-176)。幾つかの核酸類似体は、Rawls, C & E News June 2, 1997 35ページに記載されている。これら参考文献のすべては、ここで参照することにより本明細書に明確に取り入れる。リボース−リン酸バックボーンの修飾は、標識のような付加的物質の付加を容易にするためか、又は生理的環境下におけるそのような分子の安定性と半減期を増すために施される。更には、天然発生核酸と類似体の混合物を作製することができる。あるいは、異なる核酸類似体の混合物、及び天然発生核酸と類似体の混合物を作製してもよい。この核酸は、仕様としては、一本鎖又は二本鎖でもよく、或いは二本鎖又は一本鎖配列の双方の部分を含んでもよい。この核酸が任意のデオキシリボ-及びリボ-ヌクレオチドの任意の組み合わせ、並びにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニンなどを含む任意の塩基の組み合わせを含む場合には、この核酸は、DNA、ゲノム及びcDNAの双方、RNA又はハイブリッドでよい。
タンパク質に関する上記の一般的な記述のように、核酸候補生物活性剤は、天然発生核酸、ランダム核酸、又は「偏向」ランダム核酸でよい。例えば、タンパク質に関して上記にて概説しているように、原核生物又は真核生物ゲノムの消化物を用いてもよい。
好ましい実施形態では、候補生物活性剤は、有機化学的物質であり、その幅広い多くのものを文献から得ることが可能である。
上記にて概説した好ましい実施形態では、個々の遺伝子と遺伝子の産物(タンパク質)についてスクリーニングを行ってもよい。好ましい実施態様では、遺伝子又はタンパク質は、特定の組織、つまりこれら組織に関連している状態と関連して別々に発現した遺伝子であり、下記の実施例に記載されているように同定された。従って、一実施形態では、スクリーニングは、GLM−Rに結合できる候補薬剤を最初に見出すように設計され、ついで、候補薬剤のGLM−R活性を調節する能力を評価するアッセイに、これら薬剤を用いることができる。従って、当該分野において認識されているように、実行し得る多数の方法がある。
GLM−Rの活性を調節する薬剤のスクリーニングも実行される。好ましい実施形態では、GLM−Rの活性を調節することができる生物活性剤のスクリーニングの方法は、GLM−Rの試料へ候補生物活性剤を添加し、GLM−Rの生物学的活性の変化を測定することを含む。「GLM−Rの活性を調節すること」は、活性の増加、活性の低下、又は存在する活性の型や種類の変化を含む。従って、この実施形態では、候補薬剤は、GLM−Rへ結合するはずであるし(必修でないが)、且つここで定義されるGLM−Rの生物学的又は生化学的活性を変化するはずである。この方法は、上記にて全般的に概説したインビトロスクリーニング法、及びGLM−Rの存在、発現、分布、活性、又は量の変化に関する細胞のインビボスクリーニング法の両方を含む。
従って、この実施形態では、これらの方法は、試料と候補生物活性剤を組み合わせること、並びにGLM−R活性への効果を評価することを含む。「GLM−Rタンパク質活性」又は本明細書における文法的に同等の用語は、上述した、GLM−Rタンパク質の生物学的活性の少なくとも1つを表す。
好ましい実施形態では、GLM−Rタンパク質の活性が上昇する;別の好ましい実施形態では、GLM−Rタンパク質の活性が低下する。従って、アンタゴニストである生物活性剤が好まれる実施形態があれば、アゴニストである生物活性剤が好まれる実施形態もある。
本発明の一態様では、GLM−Rに対する薬剤候補物質の効果を評価することで、GLM−R配列を含む細胞は薬剤スクリーニングアッセイで用いられる。細胞型は、正常細胞、腫瘍細胞、及び脂肪細胞を含む。
グルコース取り込み、レプチン放出、新陳代謝、トリグリセリド及び遊離脂肪酸レベル、体重及び体脂肪の変化などのGLM−R活性を評価する方法は、当該分野で知られており、下記の実施例において例示されている。
好ましい実施態様では、本方法は、上記の定義のように、GLM−Rを含む細胞へ候補生物活性剤を添加することを含む。好ましい細胞型は、殆ど全ての細胞を含む。これらの細胞は、好ましくは組み換え体であるが、GLM−Rタンパク質をコードする核酸を含む。好ましい実施態様では、候補薬剤のライブラリーは、複数の細胞で試験される。
一態様では、このアッセイは、例えばホルモン、抗体、ペプチド、抗原、サイトカイン、成長因子、活動電位、化学療法剤を含む薬理学的薬剤、放射線、発癌物質、又は他の細胞(すなわち、細胞間接触)などの生理学的シグナルの存在下又は非存在下での、又は先だっての又は後での曝露で評価される。別の実施例では、測定は、細胞周期プロセスの異なった段階で行われる。
また、ここで提供されるGLM−R配列は、診断方法で用いることができる。GLM−Rの過剰発現は異常に高い代謝速度を示し、発現不足は肥満症及びそれに関連する障害の傾向を示す。更には、変異又は機能失調のGLM−Rに関して、患者からの試料を分析してもよい。一般的には、そのような方法は、患者からの試料を比較すること、及びGLM−Rの発現を対照群の発現と比較することを含む。
GLM−Rは、単球又はマクロファージの発達又は機能の制御、及びそれに関連する障害の治療に使用の可能性を有する。
F.抗GLM−R抗体
本発明は抗GLM−R抗体を更に提供する。抗体の例には、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性、及び異種抱合抗体が含まれる。
1.ポリクローナル抗体
抗GLM−R抗体はポリクローナル抗体を含んでよい。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫化剤又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、GLM−Rポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に抱合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例は、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。
2.モノクローナル抗体
あるいは、抗GLM−R抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。また、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫化剤は、典型的には断片を含むGLM−Rポリペプチド、又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用されるか、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。ついで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化細胞系と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化細胞系は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫細胞系が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプチリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
好ましい不死化細胞系は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性のものである。より好ましい不死化細胞系はマウス骨髄腫系であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのソーク研究所(Salk Institute)Cell Distribution Centerやヴァージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)より入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞系も開示されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984)、Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
ついでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、GLM−Rに対するモノクローナル抗体の存在について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを制限希釈工程によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる[Goding, 上掲]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製される。
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4816567号に記載された方法により作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成などしない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより[上掲のMorrisonらの米国特許第4816567号]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに置換するか、本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換し、キメラ性二価抗体を産生することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、あるいは本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られている。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意のポイントで切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の生成は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成できる。
3.ヒト及びヒト化抗体
本発明の抗GLM−R抗体は、更にヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jonesら, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmannら, Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンター(winter)及び共同研究者[Jonesら, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmannら, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyenら, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
また、ヒト抗体は、ファージ表示ライブラリー[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marksら, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]を含むこの分野で知られた種々の方法を用いて作成することもできる。また、Coleら及びBoernerらの技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる[Coleら, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985)及びBoernerら, J. Immunol., 147(1):86-95(1991) ]。同様に、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子は部分的又は完全に不活性化されたマウスに導入することにより産生することができる。投与の際に、遺伝子再配列、組立、及び抗体レパートリーを含むあらゆる観点においてヒトに見られるものに非常に類似しているヒト抗体の生産が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;同第5661016号、及び次の科学文献:Marksら, Bio/Technology 10, 779-783 (1992); Lonbergら, Nature 368 856-859 (1994); Morrison, Nature 368, 812-13 (1994); Fishwildら, Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996); Lonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)に記載されている。
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本発明の場合において、結合特異性の一方はGLM−Rポリペプチドに対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
二重特異性抗体を作成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開のWO93/08829、及びTrauneckerら, EMBO J.,10:3655-3659 (1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合体をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するための更なる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
WO96/27011に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体のパーセントを最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置換される。大きな側鎖と同じ又はより小さいサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(アラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモ二量体のような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab')二重特異性抗体)として調製できる。抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
大腸菌からFab'フラグメントを直接回収でき、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalabyら, J. Exp. Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')分子の製造を記述している。各Fab'フラグメントは大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、正常なヒトT細胞及びErbB2レセプターを過剰発現する細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体フラグメントを作成し分離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelnyら, J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体フラグメントを作成する別のメカニズムを提供した。フラグメントは、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つのフラグメントのV及びVドメインは他のフラグメントの相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体フラグメントを製造する他の方策もまた報告されている。Gruberら, J. Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら,J. Immunol. 147:60(1991)。例示的二重特異性抗体は、任意のGLM−Rタンパク質上の2つの異なるエピトープに結合しうる。あるいは、抗GLM−Rポリペプチドアームは、T細胞レセプター分子(例えばCD2、CD3、CD28又はB7)等の白血球上のトリガー分子、又はFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgGのFcレセプター(FcγR)に結合するアームに結合し、細胞防御メカニズムを特定のGLM−Rポリペプチド発現細胞に集中するようにしてもよい。二重特異性抗体は、特定のGLM−Rポリペプチドを発現する細胞に対する局所的細胞毒性薬として使用してもよい。これらの抗体は、GLM−R結合アーム及び細胞毒性薬又はキレート化剤、例えばEOTUBE、DPTA、DOTA、又はTETAに結合するアームを有する。他の対象とする二重特異性抗体は、GLM−Rポリペプチドに結合し、更に組織因子(TF)に結合する。
5.ヘテロ抱合体抗体
ヘテロ抱合抗体もまた本発明の範囲に入る。ヘテロ抱合抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4676980号]及びHIV感染の治療のために[WO91/00360;WO92/200373;EP03089]提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第46767980号に開示されているものが含まれる。
6.エフェクター機能の設計
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えばガンの治療における抗体の効能を増強することが望ましい。例えば、システイン残基をFc領域に導入して、この領域における鎖間ジスルイド結合を形成させる。このようにして産生されたホモダイマー抗体は改善されたインターナリゼーション能力及び/又は増加した補体媒介細胞死滅及び抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を有しうる。Caronら, J. Exp. Med. 176:1191-1195 (1992)及びShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照されたい。抗腫瘍活性が高められたホモダイマー抗体は、Wolffら, Cancer Research 53:2560-2565(1993)に記載されているようなヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製することもできる。あるいは二重Fc領域を有し、よって増強された補体溶解及びADCC能を有しうる抗体を設計することができる。Stevensonら, Anti-Cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。
7.免疫複合体
本発明はまた、化学治療薬、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素、又はその断片)などの細胞毒性薬、あるいは放射性同位体(即ち、放射性抱合)に抱合された抗体を含む免疫複合体にも関する。
このような免疫複合体の生成に有用な化学治療薬は上記した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria oficinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)を含む。様々な放射性ヌクレオチドが放射性抱合抗体の生成に利用可能である。例として212Bi、131I、131In、90Y及び186Reを含む。
抗体及び細胞毒性薬の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら, Science 238: 1098 (1987)に記載されたように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のためのキレート剤の例である。WO94/11026を参照のこと。
他の実施態様では、腫瘍の予備標的化で使用するために、抗体は「レセプター」(ストレプトアビジン等)に抱合されてもよく、抗体-レセプター複合体は患者に投与され、ついで清澄化剤を用いて未結合複合体を循環から除去し、次に細胞毒性薬(例えば、放射性ヌクレオチド等)に抱合された「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
8.免疫リポソーム
また、ここに開示する抗体は、免疫リポソームとして調製してもよい。抗体を含むリポソームは、Epsteinら, Proc. Natl. acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985); Hwangら, Proc. natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980); 及び米国特許第4485045号及び第4544545号に記載されたような、この分野で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5013556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成される。リポソームは、所定サイズのフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab’断片は、Martinら, J. Biol. Chem. 257: 286-288 (1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームに抱合され得る。化学治療薬(ドキソルビシン等)は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizonら, J. National Cancer Inst. 81(19) 1484 (1989)を参照のこと。
9.抗体の製薬組成物
ここで同定されるGLM−Rポリペプチドに特異的に結合する抗体、並びに上記に開示したスクリーニングアッセイで同定された他の分子は、種々の疾患の治療のために、製薬組成物の形態で投与することができる。
GLM−Rポリペプチドが細胞内であり、全抗体が阻害剤として用いられる場合、内在化抗体が好ましい。しかし、リポフェクション又はリポソームも抗体、又は抗体断片を細胞に導入するのに使用できる。抗体断片が用いられる場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小阻害断片が通常は好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持したペプチド分子が設計できる。このようなペプチドは、化学的に合成でき、又は組換えDNA技術によって生成できる(例えば、Marascoら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 7889-7893 [1993])。ここでの製剤は、治療すべき特定の徴候に必要な場合に1以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的仮性を持つものも含んでよい。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、細胞毒性薬、サイトカイン、化学療法剤又は成長阻害剤等、その機能を亢進する薬剤を含んでもよい。これらの分子は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術は、上掲のRemington's Pharmaceutical Scienceに開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。除放性マトリクスの例は、ポリエステルヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタメート、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商品名)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリ-(D)-3-ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物学的活性の低下及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を通した分子間S-S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の付加、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
G.抗GLM−R抗体の用途
本発明の抗GLM−R抗体は様々な有用性を有している。例えば、抗GLM−R抗体は、GLM−Rの診断アッセイ、例えばその特定細胞、組織、又は血清での発現の検出に用いられる。競合的結合アッセイ、直接又は間接サンドウィッチアッセイ及び不均一又は均一相で行われる免疫沈降アッセイ[Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc. (1987) pp. 147-158]等のこの分野で知られた種々の診断アッセイ技術が使用される。診断アッセイで用いられる抗体は、検出可能な部位で標識される。検出可能な部位は、直接又は間接に、検出可能なシグナルを生成しなければならない。例えば、検出可能な部位は、H、14C、32P、35S又は125I等の放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン等の蛍光又は化学発光化合物、あるいはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素であってよい。抗体に検出可能な部位を抱合させるためにこの分野で知られた任意の方法が用いられ、それにはHunter等 Nature, 144:945 (1962);David等, Biochemistry, 13: 1014 (1974);Pain等, J. Immunol. Meth., 40:219 (1981) ;及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)に記載された方法が含まれる。
また、抗GLM−R抗体は組換え細胞培養又は天然供給源からのGLM−Rのアフィニティー精製にも有用である。この方法においては、GLM−Rに対する抗体を、当該分野でよく知られている方法を使用して、セファデックス樹脂や濾紙のような適当な支持体に固定化する。次に、固定化された抗体を、精製するGLM−Rを含む試料と接触させた後、固定化された抗体に結合したGLM−R以外の試料中の物質を実質的に全て除去するのに適当な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、GLM−Rを抗体から脱離させる他の適当な溶媒で支持体を洗浄する。
後述の実施例は例示のみを目的として開示しており、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものではない。
H.トランスジェニック動物
新規ヒトGLM−R又はそれに類似した他種、例えばマウスのGLM−Rをコードする核酸は、トランスジェニック動物又は「ノックアウト」動物のいずれかを産生することに使用でき、これらは治療的に有用な試薬の開発やスクリーニングに有用である。トランスジェニック動物(例えばマウス)とは、出生前、例えば胚段階で、その動物又はその動物の祖先に導入された導入遺伝子を含む細胞を有する動物である。導入遺伝子とは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれたDNAである。一実施形態では、コード化マウスcDNA又はその適当な配列を使用して、確立された技術及びGLM−RをコードするDNAを発現する細胞を含むトランスジェニック動物を作成するために使用されるゲノム配列に基づき、コード化ゲノムDNAをクローニングすることができる。トランスジェニック動物、特にマウスなどの動物を産生する方法は、当該分野において常套的になっており、例えば米国特許第4736866号や第4870009号に記述されている。典型的には、特定の細胞を組織特異的エンハンサーでの導入遺伝子の導入の標的とし、その結果GLM−Rの産生が可能である。胚段階で動物の生殖系列に導入されたものをコードする導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物は、DNAコード化の発現の増大の影響を調べるために使用できる。このような動物は、例えば肥満症、悪液質、又は摂食障害など、体重関連障害に対する保護をもたらすと思われる試薬のテスター動物として使用できる。本発明のこの態様においては、動物を試薬で治療し、導入遺伝子を有する未治療の動物に比べ疾病の発症率が低ければ、疾病に対する治療上の処置の可能性が示される。
あるいは、GLM−Rの非ヒト相同体は、動物の胚性細胞に導入されたコード化変更ゲノムDNAと、コード化内在性遺伝子との間の相同的組換えによって、GLM−Rをコードする欠陥又は変更遺伝子を有する「ノックアウト」動物を作成するために使用できる。例えば、GLM−RをコードするマウスcDNAは、確立された技術に従い、コード化ゲノムDNAのクローニングに使用できる。GLM−RをコードするゲノムDNAの一部を欠失させる(例えばエクソン)か、又は組み込みをモニターするために使用可能な選択性マーカーをコードする遺伝子等の他の遺伝子で置換することができる。典型的には、ベクターは無変化のフランキングDNA(5’と3’末端の両方)を数キロベース含む(例えば、相同的組換えベクターについてはThomas及びCapecchi, Cell, 51:503(1987)を参照のこと)。ベクターを胚幹細胞株に(例えばエレクトロポレーションによって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に組換えられた細胞を選択する(例えば、Li等, Cell, 69:915(1992)参照)。選択された細胞は次に動物(例えばマウス)の胚盤胞内に注入されて集合キメラを形成する(例えば、Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照のこと)。その後、キメラ胚を適切な偽妊娠の雌性乳母動物に移植し、期間をおいて「ノックアウト」動物を作り出す。胚細胞に相同的に組換えられたDNAを有する子孫は標準的な技術により同定され、それらを利用して全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物は、移植片を受容し、腫瘍を拒絶し、感染性の疾病を防ぐ能力を特徴とし、基本免疫生物学の研究に使用することができる。
トランスジェニック動物の創造に使用される特定の一技術は、酵母人工染色体(YAC)を使用する。酵母人工染色体は、酵母染色体のエレメントから構築されたクローニングベクターであり、インビボでベクターを酵母細胞に複製及び維持することを可能にする。酵母エレメントには、セントロメア、自律増殖配列、一対のテロメア、酵母選択可能マーカー、及びバクテリア中のYACベクターアームの選択と複製のための、通常バクテリア由来の複製及び選択可能マーカーが含まれる。
宿主動物のゲノムへの挿入のための内在遺伝子座の遺伝子ターゲティングと組み合わせてYACを使用することができる。YACを使用することの利点は、数百キロベースのDNAを宿主細胞に挿入できることである。したがって、YACクローニング媒体の使用により、かなり多くの導入遺伝子領域を含めることが可能になる。さらなる利点は、酵母において高頻度相同性組換えを利用することで、YAC上の配列を削除したり、YAC上に配列を挿入したりすることができることである。これにより、YAC導入遺伝子の設計が容易になる。
ヒト抗体を創造する場合などに、ヒト核酸の大セグメントを動物へ組み込むという別の方法は、「小座位(minilocus)アプローチ」として知られている。「小座位アプローチ」は、遺伝子座を有する個々の遺伝子の導入による(免疫グロブリンなどの)対象遺伝子の遺伝子座の複製に関する。例えば、遺伝子座が免疫グロブリンである場合、構成遺伝子は、1又は複数のVH遺伝子、1又は複数のDH遺伝子、1又は複数のJH遺伝子、mu定常領域、第2の定常領域であり得、それらは動物への挿入のために単一構造に形成させることができる。このアプローチの例は、Surani他による米国特許第5545807号、Lonberg及びKayによる米国特許第5545806号、同第5625825号、同第5625126号、同第5633425号、同第5661016号、5770429号、同第5789650号及び同第5814318号、Krimpenfort及びBernsによる米国特許第5591669号、Berns他による米国特許第5612205号、同第5721367号、同第5789215号、Choi及びDunnによる米国特許第5643763号、欧州特許第0546073B1号、国際特許出願WO92/3918、WO92/22645、WO92/22647、WO92/22670、WO93/12227、WO94/00569、WO94/25585、WO96/14436、WO97/13852、WO98/24884に記載されている。他の例は、Taylor他、Nucleic Acids Res. 20: 6287-6295, 1992年;Chen他、Inter. Immunol. 5: 647-656, 1993年; Tuaillon他、J. Immunol. 154: 6453-6465, 1995年; Choi他、Nature Genetics 4: 117-123, 1993年、Lonberg他、Nature 368:856-859, 1994年、Taylor他、Internat. Immunol. 6: 579-591, 1994年、Tuaillon他、J. Immunol 154: 6453-6465, 1995年、及びFishwild他、Nature Biotech. 14: 845-851, 1996年に紹介されている。
ヒト核酸を哺乳類細胞へ導入するための更に別の方法は、「微小核細胞融合」と称されている。微小核細胞融合では、欧州特許出願公開第0843961号に記載のように、ヒト染色体の一部又は全部をマウスに導入することができる。この方法により導入遺伝子が相当量の遺伝子材料を含むことになるので、特定の座位に多数の遺伝子が含まれる場合、特定の遺伝子それぞれの発現プロファイルに対して可能な制御は一般に大きくない。微小核細胞融合の別の問題点は、導入染色体の有糸分裂及び減数分裂ともに不安定なことである。例えば、導入遺伝子が免疫グロブリン遺伝子座であったとき、ヒトIgH、IgK又はその両方をコード化する導入染色体は80%に近い頻度で失われた。
I.単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患のためのGLM−Rポリヌクレオチド及びそれによってコードされたポリペプチドの用途
本発明は、また、単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患のためのGLM−R DNA、それからコード化されたポリペプチド(そのペプチド断片及びそれに対する抗体を含む)、並びにペプチド断片も目的としている。
そのような使用とは、例えば、(1)単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患の予防的及び診断的評価及びそのような異常が進行する危険を有する個体の識別;(2)単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患の治療方法;(3)GLM−R DNAの発現を調節する化合物の同定、(4)又はGLM−Rポリペプチドの活性を調節する化合物の同定である。更に具体的には、個体に対するそのような使用には、GLM−R突然変異の存在の検知、あるいは、野生型発現レベル、病的状態と相関する遺伝子プロフィールを有する非病的生物、又は単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患の罹患率と比較したGLM−Rポリペプチドの発現過剰又は発現不足の検知を含む。
ここに開示する方法は、例えば、少なくとも1つのここに開示した特定のGLM−R核酸又は抗GLM−Rポリペプチドを含む予めパッケージされた診断用キットを利用することにより実行することができ、それにより、体重異常を示す個体をスクリーニング及び診断し、ついで単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患を患う疾病素質を有する個体をスクリーニングすることもできる。
GLM−R突然変異の検出において、問題の個体由来の有核細胞をゲノム核酸の供給源として使用することができる。GLM−R発現の検出において、GLM−R DNAが発現される任意の細胞型又は組織、例えば、GLM−R DNAを発現することが本明細書で示されている組織又は細胞を使用することができる。核酸に基づく検出技術及びタンパク質に基づく検出技術の両方について後述する。
(1)GLM−R核酸の検出
GLM−R DNA内部における突然変異又は多型は、多数の技術により検出可能である。そのようなアッセイ技術の開始点として、任意の有核細胞由来の核酸を使用し、当該技術分野で周知の標準的な核酸調製手順に従って単離することができる。
生物学的試料のハイブリダイゼーション又は増殖アッセイにゲノムDNAを使用して、点突然変異、挿入、欠失及び染色体再配列を含め、GLM−R遺伝子構造に伴う異常性を検出することができる。このようなアッセイは、サザン分析、一本鎖高次構造多型(SSCP)分析、及びPCR分析を含み、またそれらに限定されない。
GLM−R遺伝子に特異的な突然変異の検出のための診断方法では、例えば、試料由来の(患者の試料、又はその他適切な細胞供給源から取得するなどした)核酸を、1又は複数の標識された核酸試薬(組換えDNA分子、クローン化遺伝子、又はその縮重変異体を含む)に、これら試薬をGLM−R遺伝子に隣接する又はその内部の相補的配列に対して特異的にアニーリングするのに適した条件下で接触させてインキュベートすることを含みうる。好ましくは、そのような核酸試薬の長さは少なくとも15から30ヌクレオチドである。
培養後、アニーリングされていない核酸を核酸から取り除く:GLM−R分子ハイブリッド。ついでハイブリダイズした核酸の存在を(そのような核酸が存在する場合は)検出する。このような検出方式を使用することにより、対象とする細胞型又は組織由来の核酸を、例えば、膜、あるいはマイクロタイタプレート又はポリスチレンビーズ上の可塑性表面などの固体の担体に固定化することができる。この場合、培養後、アニーリングされていない標識核酸試薬は容易に除去される。アニーリングされ、標識された残存するGLM−R核酸試薬の検出は、当該技術分野において周知の標準的な技術を使用して行う。核酸試薬をアニーリングしたGLM−R DNA配列を正常GLM−R DNA配列に予想されるアニーリングパターンと比較することにより、GLM−R DNA突然変異が存在するかどうかを決定することができる。
好ましい実施形態では、基質又は「遺伝子チップ」に固定されたGLM−R核酸配列のマイクロアッセイを使用することにより、GLM−R遺伝子突然変異又は多型性を検出することができる(Cronin,他、Human Mutation 7: 244-255, 1996年参照)。
患者の試料又はその他適切な細胞供給源におけるGLM−R遺伝子に特異的な核酸分子の検出のための別の診断方法は、例えばPCR(米国特許第4,683,202号に開示された実験形態)によりそれらを増幅し、それに続いて、たとえば上記に列挙した当該技術分野で周知の技術を使用して増幅分子を分析することを含む。その結果得られる増幅配列を、増幅された核酸がGLM−R遺伝子の正常なコピーのみを含む場合に予想されるものと比較することにより、GLM−R遺伝子突然変異が存在するかどうかを決定することができる。
そのような増幅に関連する診断的スクリーニング分析に好ましいそれらGLM−R核酸配列は、GLM−Rエクソン配列を増幅するオリゴヌクレオチドプライマーである。したがって、このようなオリゴヌクレオチドプライマーの配列は、後述するようなエクソン全体又はコード化領域の分析を可能にするために、GLM−Rイントロン配列から取得するのが好ましい。GLM−Rエクソンの増幅に有用なプライマーの対は、好ましくは、隣接するイントロンから取得する。25個のGLM−Rエクソンの各々を増幅することにより適切なプライマーの対を選択することができる。
GLM−Rエクソンを増幅するためのプライマーは、図1に示すGLM−Rのコード化及び非翻訳配列を使用することにより、当該技術分野の従来技術の1つにより常套的に設計することができる。このような増幅に関連する分析に好ましい付加的なGLM−R核酸配列は、GLM−R多型性の存在を検出する配列である。このような多型性には、単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患に結びつく突然変異を示すものを含む。
更に、単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患に結びつけられる突然変異を含め、GLM−R遺伝子自体の突然変異に非常に近似する多型性に対し、周知の遺伝子型特定技術を実施してもよい。GLM−R遺伝子の突然変異を保持していると思われる系統の固体を特定するために、そのような多型性を使用することができる。多型性がGLM−R遺伝子の突然変異との連鎖不平衡を示す場合、多型性を使用してそのような突然変異を保持していると思われる個体を集団全体から識別することができる。
この方法に使用できる多型性は、一塩基多型性、及び単純配列長多型(SSLP)制限酵素標的配列、に配列変化を伴う制限断片長多型(RFLP)を含む。例えば、米国特許第5075217号には、(dC−dA)n−(dG−dT)n短縦列反復のブロックの長さ多型性に基づくDNAマーカーが開示されている。(dC−dA)n−(dG−dT)nブロックの平均分離は、30,000−60,000bpと推定されている。接近して配置されたマーカーは高頻度の共通遺伝を示し、GLM−R遺伝子の突然変異などの遺伝子突然変異の同定、及びGLM−R遺伝子の突然変異に関連する疾病及び障害の診断に極度に有益である。
また、米国特許第5364759号には、短いトリ及びテトラヌクレオチド反復配列を検出するためのDNAプロファイリングアッセイが開示されている。この方法は、GLM−R遺伝子などの目的のDNAを抽出すること、抽出したDNAを増幅すること、及び反復配列に標識して患者のDNAの遺伝子型地図を形成することを含む。
加えて、GLM−Rプローブを使用して直接RFLPを同定することができる。更に、GLM−R配列から獲得したGLM−Rプローブ又はプライマーを使用して、YAC、BAC、PAC,コスミド、ファージ、又はプラスミドなどの遺伝子クローンを単離することができる。
標準的ハイブリダイゼ―ション又は配列決定法を使用して、これらのクローンに含まれるDNAを一塩基多型性についてスクリーニングすることができる。GLM−R遺伝子発現のレベルもアッセイすることができる。例えば、GLM−R遺伝子を発現していることが分かっているか、疑われている細胞型又は組織、例えば筋肉、脳、腎臓、精巣、心臓、肝臓、肺、皮膚、視床下部、脾臓、及び脂肪性組織由来のRNAを単離し、上述のハイブリダイゼーション、又はPCR技術を使用して試験してもよい。単離される細胞は細胞培地又は患者から得てもよい。培地から取得した細胞の分析は、細胞ベース遺伝子治療技術の一部として使用されるか、あるいは、GLM−R遺伝子の発現に対する化合物の効果を試験するための、細胞の評価において必要な過程でありうる。このような分析により、GLM−R遺伝子発現の活性又は非活性を含め、GLM−R遺伝子の発現パターンの量的及び質的な面の両方を明らかにすることができる。
このような検出体系の一実施形態では、(例えば、RNA分子をcDNAに逆転写することにより)目的のRNA分子からcDNA分子を合成する。ついで、その結果得られるDNAの全て又は一部を、PCR増幅反応などの核酸増幅反応の鋳型として使用する。本方法の逆転写及び核酸増幅の過程において合成開始試薬(例えば、プライマー)として使用される核酸試薬は、ここに開示するGLM−R遺伝子核酸試薬から選択される。
このような核酸試薬に好ましい長さは、少なくとも9−30ヌクレオチドである。増幅産物の検出のために、放射性的に又は非放射性的に標識したヌクレオチドを使用して核酸増幅を実行してもよい。あるいは、標準的な臭化エチジウム染色によるか、又はその他任意の適切な核酸染色法を使用することにより産物を可視化するのに十分な増幅産物を作成してもよい。
適切な細胞の十分量を取得できるのであれば、増幅技術の代替法として、標準的なノーザン分析法を実行することにより、GLM−R遺伝子のmRNA発現レベルを決定することができる。
加えて、そのようなGLM−R遺伝子発現アッセイを「インサイツ」で、つまり、細胞診又は切除術によって取得した患者組織の組織分画(固定及び/又は凍結)で直接的に実行することが可能であり、よって核酸の精製が不要である。ここに開示するような核酸試薬を、そのようなインサイツ処理においてプローブ及び/又はプライマーとして使用してもよい(例えば、Nuovo, G.J., 1992年、"PCR In Situ Hybridization: Protocols and Applications", Raven Press, NY参照)。
(2)GLM−R遺伝子産物の検出
天然配列、変異体、及びそのポリペプチド断片を含むGLM−R遺伝子産物の検出に、そのようなGLM−R遺伝子産物に対する抗体を使用してもよい。このような抗GLM−R抗体は、単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患の診断及び予後に使用してもよい。GLM−R遺伝子発現、又はGLM−R遺伝子産物合成のレベルにおける異常、又はGLM−R遺伝子産物の構造、一時的発現、及び/又は物理的位置の異常を発見するために、このような方法を使用できる。ここに開示する抗体及びイムノアッセイ方法は、例えば、単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患の治療の効果を評価する際に重要なインビトロでの用途を有する。抗体、又は抗体の断片(例えば以下に記すもの)を使用して、インビトロで潜在的治療化合物をスクリーニングし、GLM−R遺伝子発現及びGLM−R遺伝子産物生成に対するその効果を決定することができる。単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患の有利な効果を有する化合物を同定し、治療的有効量を決定することができる。
また、インビトロのイムノアッセイを使用して、例えば、単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患に対する細胞ベース遺伝子療法の効果を評価してもよい。GLM−R遺伝子産物に対する抗体をインビトロで使用して、例えば、GLM−R遺伝子産物を生成するように遺伝子設計されている細胞におけるGLM−R遺伝子発現レベルを決定してもよい。細胞内GLM−R遺伝子産物の場合、そのような評価は、好ましくは細胞ライセートを又は抽出物を使用して行う。この分析により、インビボでの治療効果、並びに遺伝子置換プロトコルの最適化を達成するのに必要な形質転換した細胞の数を決定することができる。
分析対象の組織又は細胞型は通常GLM−R遺伝子を発現していることが分かっているか、又は疑われているものを含む。ここで使用するタンパク質単離方法は、例えば、Harlow及びLaneにより開示されたもの(1988年、"Antibodies: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)などでよい。単離された細胞は、細胞培地又は患者から採取することができる。培地から取得した細胞の分析は、細胞ベース遺伝子治療技術の一部として使用されるか、あるいは、GLM−R遺伝子の発現に対する化合物の効果を試験するための、細胞の評価において必要な過程である。
GLM−R遺伝子産物、保存変異体、又はそのペプチド断片の好ましい診断法には、例えば、GLM−R遺伝子産物又は保存的な変異体又はペプチド断片を、抗GLM−R遺伝子産物に特異的な抗体とそれらとの相互作用により検出する、イムノアッセイを使用できる。
例えば、上述のような抗体、又は抗体の断片を使用して、GLM−R遺伝子産物又は保存的な変異体又はそのペプチド断片の存在を量的又は質的に検出してもよい。これは、例えば、蛍光標識した抗体を光学顕微鏡、フローサイトメトリー、又は蛍光定量的検出と組み合わせて使用する免疫蛍光技術により行うことができる。この技術は細胞表面に発現したGLM−R遺伝子産物のために特に好ましい。
加えて、GLM−R遺伝子産物、保存的な変異体又はそれらのペプチド断片をインサイツで検出するために、本発明において有用な抗体(又はその断片)を、免疫蛍光法又は免疫電子顕微鏡法において組織学的に使用してもよい。インサイツでの検出は、患者から組織学的標本を取り出し、それに対してGLM−Rポリペプチドに結合する標識した抗体を加えることより達成できる。抗体(又は断片)の添加は、生物学的試料に標識した抗体(又は断片)をオーバーレイすることにより行うのが好ましい。本方法の使用により、GLM−R遺伝子産物、保存的な変異体又はペプチド断片の存在だけでなく、試験された組織内におけるその分布も決定することが可能である。本発明の使用により、多種多様な組織学的方法(例えば染色法)を修正してGLM−R遺伝子産物のインサイツでの検出を達成することが可能であることが、当業者には容易に理解できるであろう。
GLM−R遺伝子産物、保存的な変異体又はそのペプチド断片のイムノアッセイは、一般に、(1)生体液、組織抽出物、収集直後の細胞、又は細胞のライセートなどの試料を、GLM−R遺伝子産物、保存的な変異体又はそのペプチド断片を同定することのできる、検出可能に標識された抗体の存在下で培養すること、及び(2)当該技術分野で周知の多数の技術のうちのいずれか1つにより結合した抗体を検出すること、を含む。
細胞、細胞片又は可溶性蛋白質を固定化することができるニトロセルロースなどの固相支持体又は担体に、生物学的試料を接触させて固定する。ついで支持体を適切な緩衝液で洗浄し、その後検出可能に標識したGLM−R遺伝子産物に特異的な抗体で処理する。
緩衝液で固相支持体の2度目の洗浄を行い、非結合抗体を除去する。その後、固相支持体上の結合標識の量を、従来からある手段により検出する。
「固体相支持体又は担体」とは、抗原又は抗体に結合可能な任意の支持体を意味する。周知の支持体又は担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然及び加工セルロース、ポリアクリルアミド、斑レイ岩、及び磁鉄鉱が含まれる。本発明の目的のために、担体の性質は、ある程度可溶性でもよく、又は非可溶でもよい。支持体の材料は、結合分子が抗原又は抗体に結合できる限り、可能な構造的構成のいずれを有するものでもよい。したがって、支持体の構造は、ビーズのような球状、又は試験管の内部表面やロッドの外部表面のような円柱状でよい。あるいは、表面はシート、試験用ストリップなどのように平坦でもよい。好ましい支持体にはポリスチレンのビーズが含まれる。抗体又は抗原の結合に使用できるその他多数の適切な担体が当業者に既知であり、当業者は常套的実験の使用によりそのような担体を確認することができる。
GLM−R遺伝子産物に特異的な抗体を検出可能に標識する方法は、酵素イムノアッセイ(EIA)などの検出が容易な酵素の使用である(Voller, A., “The Enzyme Linked Immunosorbent Assay (ELISA) II, Diagnostic Horizons 2: 1-7, Microbiological Associates Quarterly Publication, Walkersville, MD, 1978年; Voller, A.他、J. Clin. Pathol. 31, 507-520, 1978年; Butler, J.E., Meth. Enzymol. 73: 482-523, 1981年; Maggio, E.(編)、 Enzyme Immunoassay, CRC Press, Boca Raton, FL, 1980年; Ishikawa, E.他(編), Enzyme Immunoassay, Kgaku Shoin, Tokyo, 1981年)。抗体に結合する酵素は好適な基質、好ましくは色素産生基質に反応し、分光光度手段、蛍光手段、視覚的手段などにより検出可能な化学成分を生じる。抗体を検出可能に標識する酵素は、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌のヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコール脱水素酵素、α-グリセロリン酸、脱水素酵素、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリリン酸、アスパラギナーゼ、グルコース酸化酵素、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸脱水素酵素グルコアミラーゼ及びアセチルコリネステラーゼを含み、またそれらに限定されない。検出は、酵素に色素産生基質を使用する比色分析方法により実行可能である。基質の酵素反応範囲を、同様に調製した基準と比較する視覚的比較により検出を行ってもよい。
様々な他のイムノアッセイのいずれかを使用して検出を行うこともできる。例えば、抗体又は抗体断片を放射標識することにより、ラジオイムノアッセイ(RIA)を使用してGLM−R遺伝子産物を検出することが可能である(例えば、Weintraub, B., Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, 1986年3月)。そのような手段をガンマカウンター又はシンチレーションカウンターとして使用するか、又はオートラジオグラフィーにより、放射活性同位元素を検出することができる。
抗体を蛍光性化合物で標識することも可能である。蛍光標識した抗体を適切な波長の光に曝すと、蛍光によりその存在を検出することができる。最も広く使用されている蛍光標識用化合物は、フルオレセインイソチオシアン酸塩、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド及びフルオレサミンである。
152Euなどのフルオレセイン放出金属、又はランタニド系のその他金属を使用して、抗体を検出可能に標識することができる。これら金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属キレート群を使用して、抗体に添付することができる。
抗体は、化学発光化合物に結合させることにより検出可能に標識することができる。この時、化学発光タグの付いた抗体の存在は、化学反応の過程で生じるルミネセンスの存在を検出することにより決定される。特に有益な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、サーロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩及びシュウ酸塩エステルを含む。
同様に、生物発光化合物を使用して本発明の抗体を標識してもよい。生物発光とは、触媒タンパク質により化学発光反応の効率が上昇する、生物学系に見られる化学蛍光の一つの型である。生物発光タンパク質の存在は、ルミネセンスの存在を検出することで決定することができる。標識のために重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及びエクオリンである。
(3)GLM−R核酸又は遺伝子産物と相互作用する化合物のスクリーニングアッセイ
以下のアッセイは、GLM−R遺伝子産物、GLM−R遺伝子産物と相互作用するタンパク質、又はタンパク質の一部に結合する化合物、GLM−R遺伝子産物とタンパク質との相互作用を阻害する化合物、及びGLM−R遺伝子の活性を調節する(すなわち、GLM−R遺伝子の発現レベルを調節する、及び/又はGLM−R遺伝子産物の活性を調節する)化合物を同定するように設計されている。本アッセイはまた、GLM−R遺伝子制御配列(例えば、プロモーター配列;例えば、Platt, J. Biol. Chem. 269: 28558-28562, 1994年参照。参照により本文献全体を本発明に包含する)に結合し、GLM−R遺伝子発現のレベルを調節できる化合物を同定するために使用できる。このような化合物は、血液脳関門を通過でき、適切な細胞内へ達し及び/又は進入し、GLM−R遺伝子又は体重制御経路に関わるその他複数の遺伝子の発現、又は細胞内タンパク質に影響できるような小有機分子を含むことができ、またそれに限定されない。
このようなタンパク質の同定方法について以下に説明する。本タンパク質は単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患に関与できる。更に、これら化合物の中には、GLM−R遺伝子発現レベル及び/又はGLM−R遺伝子の生産活動に影響を与え、単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患の治療に使用できる化合物がある。
化合物は、例えばIg端(Ig-tailed)融合ペプチド及びランダムペプチドライブラリー(例えばLam等, Nature 354: 82-84 (1991);Houghten等, Nature 354: 84-86 (1991)参照)及びD構造及び/又はL構造のアミノ酸からなるコンビナトリアルケミストリーから得られた分子ライブラリーのメンバーを非限定的に含む可溶ペプチドなどのペプチド、(ランダムな又は一部縮重した、特異的リンペプチドライブラリーを非限定的に含む)リン酸ペプチド(例えば、Songyang等, Cell 72: 767-778(1993))、(ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラ又は一本鎖抗体、及びFAb、F(ab’)、及びFAb発現ライブラリー断片、及びそのエピトープ結合断片を非限定的に含む)抗体、及び小有機又は無機分子を含み、またそれらに限定されない。
ここに開示するようなアッセイにより同定された化合物は、例えば、GLM−R遺伝子産物の生物学的機能を確定するのに、また単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患を改善するのに有用である。
(a)GLM−R遺伝子産物に結合する化合物のインビトロスクリーニングアッセイ
本発明のGLM−R遺伝子産物に結合可能な化合物を同定するためのインビトロ系を設計することができる。同定される化合物は、例えば、無傷の、及び/又は突然変異のGLM−R遺伝子産物の活性を調節する際、GLM−R遺伝子産物の生物学的機能を確定する際、正常なGLM−R遺伝子産物の相互作用を妨害する化合物を同定するスクリーニングにおいて、有用であるか、あるいはそれ自体がそのような相互作用を妨害することができる。
GLM−R遺伝子産物に結合する化合物を同定するために使用されるアッセイの原理は、GLM−R遺伝子産物と試験化合物の反応混合物を、それら2成分が相互作用して結合するのに十分な時間と条件の下で調製し、それにより、反応混合物中で除去及び/又は検出できる複合体を形成させることを含む。これらのアッセイは、様々な方法で実施することができる。例えば、このようなアッセイを行う一つの方法は、GLM−R遺伝子産物又は試験物質を固体の支持体上に係留し、反応の終わりに、固体の支持体上に形成されるGLM−R遺伝子産物/試験化合物複合体を検出することを含む。このような方法の一実施形態では、GLM−R遺伝子産物を固体の支持体上に係留することができ、係留されていない試験化合物を直接的に又は間接的に標識することができる。
実際には、マイクロタイタプレートを固体の支持体として簡便に利用する。係留した成分は、非共有又は共有接着により固定化できる。非共有接着は、単に固体表面をタンパク質の溶液で被覆し、乾燥させることにより達成することができる。あるいは、タンパク質の固定化に特異的な、固定化抗体、好適にはモノクローナル抗体を、タンパク質を固体表面上に係留するために使用することができる。表面は事前に準備し、保存しておくことも可能である。
アッセイを実施するために、係留された成分を含む被覆表面に非固定化成分を加える。反応完了後、形成された複合体が固体表面に固定化されて残るようにして、反応しなかった成分を(例えば洗浄により)除去する。固体表面上に係留された複合体の検出は、多くの方法で行うことができる。予め固定化されていない成分に事前に標識している場合、表面上に固定化された標識が検出されるということは、複合体が形成されたことを示す。予め固定化されていない成分を事前に標識しない場合、表面上に係留した複合体を検出するためには間接的標識を使用することができる;例えば、予め固定化されていない成分に特異的な標識抗体を使用する(一方、抗体は、標識抗Ig抗体で直接的に標識するか又は間接的に標識できる)。
あるいは、液相で反応を行い、未反応成分から反応産物を分離し、複合体を検出する;例えば、GLM−R遺伝子産物又は試験化合物に特異的な固定化抗体を使用することにより溶液中に形成された複合体、及び可能な複合体のその他の成分に特異的な標識抗体を係留し、係留された複合体を検出する。
(b)GLM−R遺伝子産物と相互作用するタンパク質のアッセイ
タンパク質−タンパク質相互作用の検出に適した任意の方法を使用して、GLM−R遺伝子産物−タンパク質相互作用を同定することができる。使用可能な伝統的な方法としては、勾配又はクロマトグラフカラムによる同時精製、架橋及び共免疫沈降を挙げることができる。このような方法を利用することで、GLM−R遺伝子産物と相互作用するタンパク質を同定することができる。これに限定されないが、このようなタンパク質はGLM−R遺伝子産物を含みうる。単離後、そのようなタンパク質を同定し、標準的技術と共に使用することにより、それが相互作用するタンパク質を同定することができる。例えば、GLM−R遺伝子産物と相互作用するタンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部は、エドマン分解法といった当該技術分野で周知の技術を使用して確認することができる(例えば、Creighton, "Proteins: Structures and Molecular Principles", W.H. Freeman & Co., N.Y., pp.34-49 (1983)を参照)。このようなタンパク質をコード化する遺伝子配列のスクリーニングに使用できるオリゴヌクレオチドの混合物の生成のためのガイドとして、取得したアミノ酸配列を使用することができる。スクリーニングは、例えば、標準的なハイブリダイゼーション又はPCR技術により行うことができる。オリゴヌクレオチド混合物の生成及びスクリーニングの方法は周知である(例えば、上掲のAusubel, 及び1990, "PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications", Innis等編 Academic Press, Inc., New Yorkを参照)。
加えて、GLM−R遺伝子産物と相互作用するタンパク質をコード化する遺伝子の同時同定を行う方法を採用することも可能である。これらの方法には、例えば、Xgt11ライブラリーの抗体探索の周知技術と同様にしてGLM−R遺伝子産物を使用し、標識されたGLM−R遺伝子産物での発現ライブラリーを探索することが含まれる。インビボでのタンパク質の相互作用を検出する一方法であるハイブリッド系は、限定的にでなく、例示のみを目的で詳細に説明する。この系の一バーションは公開されており(Chien等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:9578-9582 (1991))、クローンテック社(カリフォルニア州パロアルト)から市販されている。
簡潔に説明すると、このような系の使用により、GLM−R遺伝子産物に融合する転写活性化因子タンパク質のDNA結合ドメインから構成された一方と、未知のタンパク質に融合する転写活性化因子タンパク質の活性化ドメインから構成された他方の2つのハイブリッドタンパク質をコード化するプラスミドが構築される。このとき、未知のタンパク質は、cDNAライブラリーの一部としてこのプラスミドに組換えられたcDNAによりコードされている。DNA結合ドメイン融合プラスミド及びcDNAライブラリーは、転写活性化因子の結合部位をその制御領域が含むレポーター遺伝子(例えばHBS又はlacZ)を含む酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種に形質転換される。いずれのハイブリッドタンパク質も単独ではレポーター遺伝子の転写を活性化することはできない(DNA結合ドメインハイブリッドは活性機能を提供しないためできず、活性化ドメインハイブリッドは活性化因子の結合部位に局在化しないためできない)。2つのハイブリッドタンパク質が相互作用することにより、機能活性化因子タンパク質が再構成され、レポーター遺伝子が発現するので、レポーター遺伝子がレポーター遺伝子産物のアッセイにより検出される。
2−ハイブリッド系又は関連する方法を使用して、「ベイト」遺伝子産物と相互作用するタンパク質について活性化ドメインライブラリーをスクリーニングすることができる。限定的にではなく例示的に、GLM−R遺伝子産物をベイト遺伝子産物として使用することができる。全ゲノム又はcDNA配列を活性化ドメインをコード化するDNAに融合する。
DNA結合ドメインに融合させたベイトGLM−R遺伝子産物のハイブリッドをコード化するプラスミド及びこのライブラリーを、酵母レポーター種に同時形質転換し、得られた形質転換体をレポーター遺伝子を発現するものについてスクリーニングする。例えば、ベイトGLM−R遺伝子配列、例えばGLM−R遺伝子のオープンリーディングフレームをベクターにクローン化し、よってGAL4タンパク質のDNA結合ドメインをコード化するDNAに翻訳して融合させることができる。これらコロニーを精製し、レポーター遺伝子発現を引き起こすライブラリープラスミドを単離する。ついでDNA配列決定によってライブラリープラスミドによりコード化されたタンパク質を同定する。
ベイトGLM−R遺伝子産物と相互作用するタンパク質が検出される細胞系のcDNAライブラリーは、当該技術分野で常套的に実施されている方法を使用して作成することができる。ここに開示する特定の系に従って、例えばcDNA断片をベクターに挿入し、GAL4の転写活性化ドメインに翻訳して融合させることができる。GAL4活性化配列を含むプロモーターにより、このようなライブラリーを、lacZ遺伝子を含む酵母種に、ベイトGLM−R遺伝子−GAL4融合プラスミドと共に同時形質変換することができる。
ベイトGLM−R遺伝子産物と相互作用するGAL4転写活性化ドメインに融合されたcDNAコード化タンパク質は、活性なGAL4タンパク質を再構成し、それによりHIS3遺伝子の発現を推進する。ヒスチジンを欠く半固体の寒天ベースの培地を含むペトリ皿で成長させることにより、HIS3を発現するコロニーを検出することができる。
ついで、これらの種からcDNAを精製し、当該技術分野の常套的技術を使用してベイトGLM−R遺伝子産物と相互作用するタンパク質を作成し単離する。
(c)GLM−R遺伝子産物巨大分子相互作用を阻害する化合物のアッセイ
GLM−R遺伝子産物は、タンパク質などの巨大分子の1つ又は複数とインビボで相互作用しうる。例えば、GLM−R遺伝子−産物は、GLM−R遺伝子産物とインビボで相互作用しうる。GLM−R遺伝子産物と相互作用する他の巨大分子は、核酸分子及びここに開示するような方法により同定されるタンパク質を含み、またそれらに限定されない。ここでの検討の目的に対して、巨大分子をここで「結合パートナー」と称する。結合パートナーに結合するGLM−R遺伝子産物を阻害する化合物は、GLM−R遺伝子産物、特に突然変異GLM−R遺伝子産物の活性を調節するのに有用な場合がある。このような化合物は、ペペウチドなどの分子を含むが、これに限定されない。
GLM−R遺伝子産物と結合パートナー又はパートナー群との相互作用を妨害する化合物の同定に使用されるアッセイ系の基本原理は、GLM−R遺伝子産物と結合パートナーを含む反応混合物を、それら2つが相互作用して結合するのに十分な時間と条件の下で調製し、それにより複合体を形成することを含む。化合物の抑制的活性を試験するために、反応混合物を試験化合物が存在する状態及び存在しない状態で調製する。試験化合物は反応混合物に最初から含んでもよく、又はGLM−R遺伝子産物とその結合パートナー添加後のある時点で加えてもよい。試験化合物が無い状態と、複合体の形成をブロックすることが知られている化合物の存在下で、対照反応混合物をインキュベートする。その後、GLM−R遺伝子産物と結合パートナーとの間に形成されたいかなる複合体も検出する。対照の反応物に複合体が形成されたのに試験化合物を含む反応混合物に複合体が形成されていないことは、化合物がGLM−R遺伝子産物と結合パートナーとの相互作用を妨害したことを示す。また、試験化合物と正常なGLM−R遺伝子産物を含む反応混合物中における複合体の形成を、試験化合物と突然変異GLM−R遺伝子産物を含む反応混合物中の複合物形成と比較する。この比較は、突然変異GLM−R遺伝子産物の相互作用を阻害するが正常なGLM−R遺伝子産物の相互作用は阻害しない化合物を同定することが望まれる場合に重要でありうる。
GLM−R遺伝子産物と結合パートナーとの相互作用を妨害する化合物のアッセイは、不均一様式でも均一様式でも実施できる。不均一アッセイでは、GLM−R遺伝子産物又は結合パートナーの何れかを固体支持体に係留し、反応の最後に固体支持体上に形成される複合体を検出することを含む。均一アッセイでは、反応全体を液相中で実施する。いずれの方法でも、試験している化合物に関する異なる情報を得るために、反応物質の添加順序を変えることができる。例えば、GLM−R遺伝子産物と結合パートナーとの相互作用を(例えば競合により)妨害する試験化合物を、試験物質の存在下で反応させることにより、つまり、GLM−R遺伝子産物及び相互作用的細胞内結合パートナーの添加の前又はそれらと同時に試験物質を反応混合物に加えて、同定することができる。あるいは、予め形成されていた複合体を阻害する試験化合物、例えば複合体の成分の1つを置き換える結合定数のより大きい化合物を、複合体の形成後に反応混合物に試験化合物を加えることにより試験することができる。様々な様式を以下に簡潔に記載する。
均一アッセイ系では、GLM−R遺伝子産物又は相互作用的結合パートナーのいずれかを固体表面に係留する一方、係留しない種に直接的又は間接的に標識する。実際には、マイクロタイタプレートが簡便に使用される。係留した種は非共有接着又は共有結合により固定化しうる。非共有結合は、単に、固体表面をGLM−R遺伝子産物又は結合パートナーの溶液で被覆し、乾燥させることにより実施することができる。あるいは、係留しようとする種に特異的な固定化抗体を使用して固体表面に係留することができる。表面は事前に調製して保存してもよい。
アッセイを行うために、試験化合物を伴うか、又は伴わない被覆表面に固定化種のパートナーを曝す。反応完了後、反応しなかった成分を(例えば洗浄により)除去し、形成された複合体は固体表面に固定化されて残る。固体表面上に係留された複合体の検出は多くの方法で行うことができる。固定化しない種に事前に標識してある場合、表面上に固定化された標識が検出されるということは、複合体が形成されたことを意味する。固定化されていない種に事前に標識していない場合、表面上に係留する複合体を検出するために間接的標識、例えば最初に固定化されていない種に特異的な標識抗体(一方、抗体は標識抗Ig抗体で直接的又は間接的に標識できる)を使用できる。反応成分の添加順序によって、複合物の形成を抑制する、又は事前に形成された複合体を阻害する試験化合物を検出することができる。
あるいは、試験化合物の存在下、又は試験化合物が存在しない状態で、反応を液相中で実施し、反応産物を未反応成分から分離し、例えば、結合成分の一方に特異的な固定化抗体を使用することにより溶液中に形成されたいかなる複合体をも係留し、また他方のパートナーに特異的な標識抗体を使用することにより係留した複合体を検出することにより、複合物を検出することができる。ここでも、液相に反応物質を添加する順序によって、複合体の形成を抑制する試験化合物、又は予め形成されていた複合体を阻害する試験化合物を同定することができる。
本発明の別の実施形態では、均一アッセイを使用できる。この方法では、GLM−R遺伝子産物又はその結合パートナーのいずれかに標識するが、標識により生じる信号は複合体形成により抑えられる、事前に形成されたGLM−R遺伝子産物と相互作用的結合パートナーの複合体を調製する(例えば、この方法をイムノアッセイに使用したRubensteinの米国特許第4109496号を参照)。予め形成されていた複合物の種と競合し、その一つを置換する試験物質を添加することにより、バックグラウンドを越える信号が生成される。このようにして、GLM−R遺伝子産物/結合パートナー相互作用を阻害する試験物質が同定できる。
本発明の別の実施形態では、完全長タンパク質の一方又は両方の代わりに、GLM−R遺伝子産物及び/又は結合パートナー(結合パートナーがタンパク質である場合)の結合ドメインに対応するペプチド断片を使用して、これらと同じ技術を用いることができる。結合部位の同定及び単離には、当該技術分野で常套的に実施されるいかなる方法も使用できる。これらの方法は、タンパク質の1つをコード化する遺伝子の突然変異生成、及び免疫沈降アッセイにおける結合阻害のスクリーニングを含み、またそれらに限定されない。ついで、複合体の第2の成分をコード化する遺伝子の相補的突然変異を選択することができる。各タンパク質をコード化する遺伝子の配列分析により、相互作用的結合に関与するタンパク質の領域に対応する突然変異が明らかになる。あるいは、前セクションに記載の方法を使用して固体表面に1つのタンパク質を係留し、トリプシンなどのタンパク分解性酵素で処理しておいたその結合パートナーと相互作用させ、更に結合させることが可能である。洗浄後、結合ドメインを含む、標識した短ペプチドが固体材料に不随して残余する場合があり、それを単離しアミノ酸配列決定により同定することができる。また、セグメントをコード化する遺伝子を操作してタンパク質のペプチド断片が発現すると、結合活性について試験し、精製又は合成することができる。
限定的な意味ではなく、例示として挙げると、本セクションでは、GST−1融合タンパク質を作成し、それをグルタチオンアガロースのビーズに結合させることにより、上述のようにGLM−R遺伝子産物を固体材料に係留することができる。結合パートナーは35Sなどの放射性アイソトープで標識することができ、トリプシンなどのタンパク質分解性酵素で分解することができる。ついで、係留したGST−1融合タンパク質に分解産物を加え、結合させることができる。結合しないペプチドを洗浄後、結合パートナーの結合ドメインを表す標識した結合物質を溶出させ、精製し、周知の方法によりアミノ酸配列について解析することができる。このようにして同定されたペプチドは合成的に製造可能であるか、又は組換えDNA技術を使用して製造可能である。
(d)体重異常疾患の治療に有用な化合物を同定するためのアッセイ
先に述べたようなアッセイ技術により同定される結合化合物を含む、またそれに限定されない化合物を、体重異常の症状を治療する能力について試験することができる。ここに開示するアッセイは、GLM−R遺伝子発現に作用することにより、又はGLM−R遺伝子産物活性のレベルに作用することにより、GLM−R活性に影響する化合物を同定することができる。例えば、GLM−R遺伝子及び/又はGLM−R遺伝子産物が含まれる経路の別の段階、例えばGLM−R遺伝子が媒介する経路の段階の「上流」又は「下流」において、化合物を同定してもよい。このような化合物は、これと同じ経路に作用することにより、体重異常の進行に対するGLM−Rの効果を調節できる。このような化合物を障害の治療法の一部として使用することが可能である。
以下に記載するのは、体重異常症状を改善する能力を示す化合物を同定するための細胞ベースアッセイ及び動物アッセイである。まず、細胞ベースシステムを使用して体重異常の症状を改善する作用を有する化合物を同定することができる。このような細胞システムは、例えば、組換え又は非組換え細胞、例えばGLM−R遺伝子を発現する細胞系を含む。
このような細胞システムを利用する際は、体重異常の症状を改善する能力を示すと思われる化合物にGLM−Rを接触させる。その際、接触させる細胞においてそのような症状の改善が明らかになるのに十分な濃度及び十分な時間で接触させる。接触後、細胞をアッセイし、例えばGLM−R mRNA転写のための細胞ライセートをアッセイ(例えばノーザン分析により)することによりGLM−R遺伝子の発現の変化を測定するか、又は細胞が発現するGLM−R遺伝子産物を得ることができる。GLM−R遺伝子の発現を調節する化合物は治療薬として好ましい候補である。
これに加えて、哺乳類の体重異常の動物モデル、例えばヒトGLM−R遺伝子又はGLM−R遺伝子の改変型を含むトランスジェニックマウス、又は動物に基づく系を使用して、この異常の症状を改善できる能力を有する化合物を同定することができる。薬物、製薬、治療法、介入の同定のために、このような動物モデルを試験物質として使用できる。例えば、体重異常の症状を改善する能力を示すと思われる化合物に動物モデルを接触させる。その際、接そのような症状の改善が明らかになるのに十分な濃度及び十分な時間で接触させる。障害の症状の後退を評価することにより、接触に対する動物の反応をモニターしてもよい。
介入では、体重異常疾患様の症状のいずれかの面を後退させる任意の治療が、そのような疾患のヒトの治療的介入の候補として考慮されなければならない。
(4)単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患の治療のための化合物及び方法
単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患を治療できる方法と化合物について以下に述べる。そのような方法には、例えば、哺乳類GLM−R遺伝子及び/又は哺乳類GLM−R遺伝子産物の合成又は活性の発現を調節する化合物を投与することにより単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患の症状を改善することが含まれる。あるいは、単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患がGLM−R遺伝子突然変異に起因している場合は、そのような方法は、哺乳類に無傷のGLM−R遺伝子産物をコード化する核酸分子を供給し、それにより無傷のGLM−R遺伝子産物を発現させ、単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患を改善することを含むことができる。GLM−R遺伝子突然変異に起因する哺乳類の体重異常の治療法の別の実施形態では、当方法は、無傷のGLM−R遺伝子産物をコード化する核酸分子を含む細胞を哺乳類に供給することにより、細胞に無傷のGLM−R遺伝子産物を発現させ、異常症状を改善することを含むことができる。
あるいは、単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患の症状は、GLM−R遺伝子発現及び/又はGLM−R遺伝子産物の活性を増大させることにより改善することができる。
(a)抑制的アンチセンス、リボザイム及び三重らせん法
別の実施形態では、単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患の症状は、GLM−R遺伝子配列を周知のアンチセンス、「ノックアウト」遺伝子、リボザイム及び/又は三重らせん方法と組み合わせて使用し、GLM−R遺伝子発現のレベルを下げることにより、GLM−R遺伝子発現レベル及び/又はGLM−R遺伝子産物活性レベルを低下させて、改善することができる。哺乳類の体重異常の症状を改善する能力を含め、GLM−R遺伝子の活性、発現又は合成を調節する能力を示す化合物として、アンチセンス、リボザイム、及び三重らせん分子を挙げることができる。無傷の、又は適切であれば突然変異の標的遺伝子活性を、低下させる、又は抑制するように、そのような分子を設計してもよい。そのような分子の生成及び使用のための技術は当該技術分野において周知である。
アンチセンスRNA及びDNA分子は、標的のmRNAにハイブリダイゼーションすることにより、及びタンパク質の転換を防止することにより、mRNAの転写を直接的にブロックするように作用する。アンチセンス法には、標的遺伝子RNAに相補的なオリゴヌクレオチドの設計が含まれる。アンチセンスヌクレオチドは、相補的標的遺伝子mRNA転写に結合し、転換を防止する。絶対的相補性は好ましいが、必須ではない。
本明細書で言うRNAの一部に「相補的」な配列とは、RNAとハイブリダイズするのに十分に相補的で、安定した二本鎖を形成する配列を意味する。二本鎖アンチセンス核酸の場合、二本鎖DNAの一本鎖はこのようにして試験され、又は三重鎖形成をアッセイしてもよい。ハイブリダイズ能は、相補性の度合いと、アンチセンス核酸の長さの両方に依存する。一般に、ハイブリダイズする核酸が長い程、それに含まれるRNAに塩基の不一致が多く、依然として安定した二本鎖(又は場合に応じて三重鎖)を形成する。当業者であれば、標準的方法を使用してハイブリダイズした複合体の融点を決定することにより、不一致の許容範囲を確定することができる。
一実施形態では、GLM−R遺伝子の非コード化領域に相補的なオリゴヌクレオチドをアンチセンス法に使用して、内因性GLM−R mRNAの転換を抑制することができた。アンチセンス核酸は少なくとも6ヌクレオチド長でなければならず、好ましくは6から約50ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドである。特定の態様では、オリゴヌクレオチドは少なくともヌクレオチドであり、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、又は少なくとも50ヌクレオチドである。
標的配列の選択にかかわらず、インビトロでの研究を初めに行い、アンチセンスヌクレオチドの遺伝子発現抑制を定量化することが好ましい。好ましくは、この研究では、アンチセンスの遺伝子抑制とオリゴヌクレオチドの非特異的生物学的効果との差異化のために対照群を使用する。また、この研究では、標的RNA又はタンパク質のレベルを内部の対照RNA又はタンパク質と比較することが好ましい。加えて、アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して得られた結果を対照ヌクレオチドと比較することが考えられる。好ましくは、対照ヌクレオチドは試験するオリゴヌクレオチドと概ね同じ長さであり、オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列とアンチセンス配列との差異は、標的配列への特異的なハイブリダイゼーションを防ぐのに必要量を超えない。
オリゴヌクレオチドは、DNA又はRNA又はそのキメラ混合物又は誘導体又は修飾された種類、一本鎖又は二本鎖であってもよい。オリゴヌクレオチドは塩基部分、糖部分、又はリン酸骨格において、例えば、分子、ハイブリダイゼーションなどの安定性を改善するために修飾してもよい。オリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、インビボにおいて、宿主細胞のレセプターを標的化するための)、又は細胞膜(例えば、Letsinger等, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 86:6553-6556;Lemaitre等, 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:648-652;1988年12月15日公開のPCT公報WO88/09810を参照のこと)又は血管−脳関門(例えば、1988年4月25日公開のPCT公報WO89/10134を参照)輸送を促進する薬剤、ハイブリダイゼーション−トリガー切断剤(例えば、Krol等, 1988, BioTechniques 6:958-976を参照のこと)又はインターカレーティング剤(Zon, 1988, Pharm. Res. 5:539-549)などの付加的な他の集団を含んでもよい。このために、オリゴヌクレオチドは他の分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション−トリガー架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション−トリガー切断剤、などと結合してもよい。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定はしないが、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルクエオシン、イノシン、NG−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(V)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(V)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6−ジアミノプリンを含む集団から選択される少なくとも一つの修飾された塩基部分を含んでもよい。
また、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定はしないが、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース、及びヘキソースを含む集団から選択される少なくとも一つの修飾された糖部分を含んでもよい。あるいは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホラミドチオエート、ホスホラミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル及びホルムアセタール又はその類似体から成る集団から選択される少なくとも一つの修飾されたリン酸骨格を含む。あるいはまた、アンチセンスオリゴヌクレオチドはα-アノメリックオリゴヌクレオチドである。α-アノメリックオリゴヌクレオチドは、相補的なRNAと特異的な二重鎖ハイブリッドを形成するが、通常の~-ユニットとは反対に、鎖は互いに平行に並ぶ(Gautier等, Nucl. Acids. Res. 15:6625-6641, 1987年)。オリゴヌクレオチドは2'-O-メチルリボヌクレオチド(Inoue等, Nucl. Acids Res. 15:6131-6148, 1987年)、又はキメラRNA-DNA類似体である(Inoue等, FEBS Lett. 215:327-330, 1987年)。
本発明のオリゴヌクレオチドは当該技術分野において既知の標準的な方法、例えば、自動DNA合成機(Biosearch, Applied Biosystems, などから購入できるような)の使用により合成してもよい。例えば、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Stein等の方法(1988, Nucl. Acids Res. 16:3209)によって合成されてもよく、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは、調整された孔のガラスポリマー支持体などを用いて調製することができる(Sarin 等, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:7448-7451)。
標的遺伝子コーディング領域の配列に相補的なアンチセンスヌクレオチドを使用することが可能であるが、転写された非翻訳領域に相補的であるものが最も好ましい。
アンチセンス分子をインビボで標的遺伝子を発現する細胞に供給する必要がある。アンチセンスDNA又はRNAを細胞に供給する多くの方法がある。例えば、アンチセンス分子を組織部位に直接注することができる。あるいは、所望の細胞を標的とするように修飾したアンチセンス分子(例えば、標的細胞表面上に発現した受容体又は抗原に特異的に結合するペプチド又は抗体に結合するアンチセンス)を全身投与することができる。
しかしながら、アンチセンスの細胞内濃度を内因性mRNAの翻訳を抑制するのに十分にするのは困難な場合が多い。したがって、好ましい方法では、強力なPol III又はPol IIプロモーターの制御下でアンチセンスオリゴヌクレオチドが配置される組換えDNA構成を利用する。そのような構成を使用して標的細胞を患者に形質移入することにより、内因性の標的遺伝子の転写物と相補的な塩基対を形成し、よって標的遺伝子のmRNAの翻訳を防止する一本鎖RNAが、十分な量で転写される。例えば、細胞に摂取されてアンチセンスRNAの転写を誘導するようにベクターを導入することができる。そのようなベクターは、所望のアンチセンスRNAを精製するように転写できるものである限り、エピソームとして残るか、又は染色体性に統合することができる。このようなベクターは、当該技術分野において常套的な組換えDNA技術方法により構築可能である。ベクターは、哺乳類細胞における複製及び発現に使用される、プラスミド、ウイルス性、又はその他当該技術分野において既知のものでよい。アンチセンスRNAをコード化する配列は、当該技術分野で哺乳類、好ましくはヒトの細胞に作用するとして知られる任意のプロモーターによって発現させることができる。このようなプロモーターは、誘導性でも構成性でもよい。このようなプロモーターは、SV40早期プロモーター領域(Bernoist及びChambon, Nature 290: 304-310, 1981年)、ラウス肉腫ウイルスの3末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamoto,他, Cell 22: 787-797, 1980年)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner他、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78: 1441-1445, 1961年)、メタロチオネイン遺伝子の制御配列(Brinster他、Nature 296: 39-42, 1982年)などを含み、またこれらに限定されない。いかなる種類のプラスミド、コスミド、YAC又はウイルスベクターも、組織サイトに直接導入可能な組換えDNA構成の調製に使用できる。あるいは、所望の組織に選択的に感染するウイルスベクターを使用することができ、この場合別の経路による投与(例えば全身投与)を行う。標的遺伝子のmRNA転写物を触媒分割するように設計されたリボザイム分子も、標的遺伝子のmRNAの翻訳を防止し、よって標的遺伝子産物の発現を防止するために使用するこができる(例えば、1990年10月4日公開のPCT国際公開WO90/11364; Sarver他、Science 247: 1222-1225, 1990年参照)。
リボザイムはRNAの特異的な切断を触媒することができる酵素的RNA分子である。(Rossi, Current Biology 4: 469-471 (1994)参照。リボザイム活性のメカニズムは、相補的標的RNAに対するリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーション、ついでヌクレオチド鎖切断を含む。リボザイム分子の組成物は標的遺伝子mRNAに相補的な一以上の配列を含み、mRNA切断の原因となる周知の触媒配列を含むはずである。この様な配列については米国特許第5093246号を参照のこと。この文献は出典明示によってここにその全体を取り込むものとする。
特異的な認識部位でmRNAを切断するリボザイムは標的遺伝子mRNAを破壊するために使用可能であるが、ハンマーヘッドリボザイムの使用が好ましい。ハンマーヘッドリボザイムは、標的mRNAと相補的な塩基対を形成する隣接領域によって決定される位置でmRNAを切断する。唯一の条件は、標的mRNAは以下の2塩基配列:5'-UG-3'を持つことである。ハンマーヘッドリボザイムの構築及び生産は当該技術分野においてよく知られており、その全体を出典明示によりここに取り込むMyers, Molecular Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, New York(特に、833ページの図4を参照のこと(1995))、並びにHaseloff及びGerlach, Nature, 334:585-591 (1988)に、より詳細に記載されている。
好ましくは、リボザイムは、切断認識部位が標的遺伝子mRNAの5'末端近くに位置するように、即ち、効率を増大し、非機能的なmRNA転写の細胞内蓄積を最小にするために加工される。
また、本発明のリボザイムは、テトラヒメナ サーモフィラ(IVS、又はL-19 IVSRNAとして知られる)中で天然に産生され、Thomas Cech及び共同研究者(Zaug等, 1984, Science, 224:574-578;Zaug及びCech, 1986, Science, 231:470-475;Zaug等, 1986, Nature, 324:429-433;University Patents Inc.による、公開された国際特許出願番号WO88/04300;Been及びCech, 1986, Cell, 47:207-216)により広範に記述されてきたRNAエンドリボヌクレアーゼ(「Cech-タイプリボザイム」と後述される)も含む。Cech-タイプリボザイムは、標的RNA配列とハイブリダイズした後、標的RNAの切断が生じる8塩基対の活性部位を持つ。本発明は標的遺伝子中に存在する8塩基対の活性配列を標的とするこれらCech-タイプリボザイムを包含する。
アンチセンスのアプローチにおいて、リボザイムは、修飾されたオリゴヌクレオチド(例えば、改善された安定、標的化などのために)で構成され、インビボで標的遺伝子を発現する細胞へ送達される。送達の好ましい方法は、形質移入された細胞が、内在性の標的遺伝子メッセージを破壊し、翻訳を阻害するのに十分な量のリボザイムを生産するように、強力で構成的なpol III又はpol IIプロモーターのコントロール下において、リボザイムを「コードする」DNAコンストラクトを用いることを含む。アンチセンス分子とは異なり、リボザイムは触媒的であるため、低い細胞内濃度が効率化のために要求される。
内因性標的遺伝子の発現は、標的とする相同性組換えを使用して、標的遺伝子、又はそのプロモーターを非活性化、又は「ノックアウト」することによっても減少させることができる(例えば、Smithies他、Nature 317: 230-234, 1985年; Thomas及びCapecchi, Cell 51: 503-512, 1987年; Thompson他、Cell 5: 313-321, 1989年参照)。例えば、内因性標的遺伝子に相同性のDNAによってはさまれた非機能的標的遺伝子(標的遺伝子のコード化領域又は制御領域)である突然変異を、選択可能マーカー及び/又は非選択可能マーカーと共に、又はそれら無しで使用し、インビボで標的遺伝子を発現する細胞を形質移入することができる。標的とする相同性組換えによるDNA構成の挿入により、標的遺伝子は非活性化される。このようなアプローチは、ES(胚幹)細胞の修飾を使用することにより非活性標的遺伝子を持つ動物子孫を産むことが可能な農業の分野に特に適している(例えば、Thomas及びCapecchi, 1987年、及びThompson, 1989年、上掲を参照)。しかしながら、適切なウイルスベクターを使用して組換えDNA構成が所望のインビボサイトに直接投与されるか、又はそれが標的とされるのであれば、このアプローチをヒトに使用することも可能である。
あるいは、標的遺伝子の制御領域(つまり、標的遺伝子プロモーター及び/又はエンハンサー)に相補的なデオキシリボヌクレオチド配列を標的し、体内の標的細胞中の標的遺伝子の転写を防ぐ三重らせん構造を形成することによっても、内因性標的遺伝子の発現を減少させることができる(概論は、Helene, Anticancer Drug Des., 6(6): 569-584, 1991年; Helene他、Ann. N.Y. Acad. Sci., 660:27-36, 1992年; 及びMaher, Bioassays 14(12): 807-815, 1992年を参照)。
転写防止のための三重らせん形成に使用される核酸分子は、一本鎖であり、且つデオキシヌクレオチドからなるものでなければならない。これらオリゴヌクレオチドの塩基組成は、Hoogsteen塩基対合則により三重らせん形成を促進するように設計される必要がある。この対合則は、一般に、二重鎖のうちの一本に存在するために、プリン又はピリミジンの大きな伸張を必要とする。ヌクレオチド配列は、結果として得られる三重らせんに関連する3つの鎖に亘りTAT及びCGCを生じるピリミジン塩基でよい。高濃度のピリミジンを含む分子は、高プリン濃度を有する二重鎖のうちの一本鎖の領域に相補的な塩基を提供する。加えて、プリンの濃度が高い、例えばG残基の伸張を有する核酸分子を選択することができる。これら分子は、GC対の豊富なDNA二本鎖を有する三重らせんを形成する。このような三重らせんでは、プリン残基の多くは標的二本鎖の一本鎖に位置し、よって三重鎖の3つの鎖にGGCトリプレットが生じる。
あるいは、三重らせん形成のために標的とされる可能性のある配列は、いわゆる「スイッチバック」核酸分子を創造することにより増加させることができる。スイッチバック分子は、5’−3’、3’−5’を交互に行うことにより合成され、その結果、それらの塩基対は、最初は二本鎖の一方を有し、次は他方を有すことになり、二本鎖の一鎖に存在するためにプリン又はピリミジンの伸張を必要とすることは無くなる。
突然変異遺伝子発現を抑制するために、アンチセンス、リボザイム、及び/又は三重らせん分子を利用する技術は、正常な標的遺伝子の対立遺伝子により生成されるmRNAの転写(三重らせん)及び/又は翻訳(アンチセンス、リボザイム)を非常に効率よく低減又は抑制できるので、存在する正常標的遺伝子産物の濃度を正常表現型に必要な量よりも低くできるという可能性が生じる。したがって、このような場合、遺伝子活性の正常レベルを確実に維持するために、以下に記載するような、使用されるアンチセンス、リボザイム、又は三重らせんの影響を受ける配列を含まない遺伝子療法により、正常な標的遺伝子の活性を示す標的遺伝子のポリペプチドをコード化及び発現する核酸分子を細胞に導入してもよい。
あるいは、標的遺伝子が細胞外タンパク質をコード化する場合、標的遺伝子活性に必須のレベルを維持するために、正常標的遺伝子タンパク質を同時投与することが好ましい。
本発明のアンチセンスRNA及びDNA、リボザイム、及び三重らせん分子は、上述のように、当該技術分野で知られているいずれのDNA及びRNA分子の合成方法によっても調製できる。これらには、当事業分野において周知の、オリゴデオキシリボヌクレオチド及びオリゴリボヌクレオチドを化学的に合成するための技術、例えば固体相ホスホラミダイト化学合成などを含む。あるいは、アンチセンスRNA分子をコード化するDNA配列のインビトロ及びインビボ転写によりRNA分子を生成してもよい。そのようなDNA配列は、T7又はSP6モリメラーゼプロモーターなどの適切なRNAポリメラーゼプロモーターを含む多種多様なベクターに包含される。あるいは、使用するプロモーターに応じて、アンチセンスRNAを構成的又は誘導的に合成するアンチセンスcDNA構成を細胞系に適切に導入することが可能である。
(b)遺伝子置換療法
ここに開示するGLM−R遺伝子核酸を、単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患の治療に利用することができる。そのような治療は遺伝子置換療法の形態を取ることができる。特に、正常なGLM−R遺伝子機能を示すGLM−R遺伝子産物の生成を促す正常GLM−R遺伝子又はGLM−R遺伝子の一部の1以上の複写を、それらに限定されないが、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルスベクター、並びに細胞内へDNAを導入するリポゾームなどのその他分子を含むベクターを使用して、患者の適切な細胞に挿入することができる。
GLM−R遺伝子は脳内に発現するので、このような遺伝子置換療法技術は、患者のこのような種類の細胞にGLM−R遺伝子配列を供給することができる。このように、一実施形態では、当該技術分野において周知の技術(例えば、1988年4月25日公開のPCT出願公開WO89/10134を参照)を使用して、GLM−R遺伝子配列が血液脳関門を通過し、配列を脳内細胞に供給することができる。血液脳関門を通過することができる供給に関しては、例えば上述のようなウイルスベクターが好ましい。
別の実施形態では、供給のための技術は、GLM−R遺伝子配列が発現する細胞のサイトにこのようなGLM−R遺伝子配列を直接投与することを伴う。
GLM−R遺伝子発現及び/又はGLM−R遺伝子産物活性の全体的レベルを上昇させるために使用できるその他の方法には、異質DNA制御エレメントを挿入し、挿入した制御エレメントが問題の内因性GLM−R遺伝子と作用的にリンクすることにより、細胞又は微生物内の内因性GLM−R遺伝子の発現の特徴を修正するため、標的相同性組換え方法を使用することを含む。このように、標的とする相同組換えは、「転写的に沈黙の」(つまり、通常は発現しない)内因性GLM−R遺伝子の転写を活性化するため、又は通常発現する内因性GLM−R遺伝子の発現を亢進するために使用される。
更に、適切なGLM−R発現細胞、好ましくは自己細胞を、体重異常の症状を改善するのに十分な位置及び数で、患者に導入することにより、GLM−R遺伝子発現及び/又はGLM−R遺伝子産物活性の全体的なレベルを上昇させることができる。このような細胞は組換え細胞でもそうでなくともよい。
患者のGLM−R遺伝子発現の全体的なレベルを上昇させるために投与できる細胞には、GLM−R遺伝子を発現する正常細胞、好ましくは脳細胞がある。あるいは、細胞、好ましくは自己細胞をGLM−R遺伝子配列を発現するように加工し、それを単球又はマクロファージの過剰又は不足に関連する疾患の症状の改善に好ましい位置で患者に導入することができる。あるいは、無傷のGLM−R遺伝子を発現するMHC一致個体由来の細胞を利用することができ、それは例えば脳細胞を含む。GLM−R遺伝子配列の発現は、適切な遺伝子の制御配列によって管理することにより、必要な細胞型で発現させることができる。このような遺伝子制御配列は当業者に周知である。このような細胞ベース遺伝子療法技術は当該技術分野で周知である(例えば米国特許第5,399,349号参照)。非自己細胞に細胞を投与するとき、投与には、導入する細胞に対する宿主の免疫反応防ぐ周知の技術を使用することができる。例えば、細胞外環境との直接的な成分交換が可能である一方、導入細胞が宿主の免疫系に認識されることのない密封形式で細胞を導入することができる。
加えて、本明細書に開示する技術により同定されるような、GLM−R遺伝子産物の活性を変調させることができる化合物は、当該技術分野において周知の標準的技術を使用して投与することもできる。投与される化合物が脳細胞との相互作用を伴う場合には、投与技術は、血液脳関門を通過させる周知の技術を含む。
本明細書中で引用した全ての特許及び参考文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
実施例で言及されている市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC受託番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニアである。
(実施例1)
GLM−R cDNAの単離
Swiss−Prot公的データペースから得た約950の既知の分泌タンパク質の細胞外ドメイン(ECD)配列(あれば分泌シグナル配列を含む)を、配列データベースの検索に使用した。データベースは、公的データベース(例えば、GenBank)を含んでいた。この場合、GenBankのゲノムDNA配列を、スタンフォード大学からライセンスを受けた遺伝子予測プログラムGENSCANを用いて分析した。GENSCANによる分析は、遺伝子コード化領域を予測し、ECDサーチに使用できる配列を生成する。検索は、コンピュータプログラムBLAST又はBLAST2[Altschul他、Methods in Enzymology, 266: 460-480 (1996)]を使用し、配列の6フレーム翻訳に対するECDタンパク質配列の比較として行った。それら比較のうちBLASTスコアが70(もしくは場合によっては90)以上であり、既知のタンパク質をコードしないものを、必要に応じて集め、「phrap」プログラム(Phil Green, University of Washington, Seattle, Washington)を用いてコンセンサスDNA配列に組み立てた。
コンセンサス配列から、1)PCRにより対象とする配列を含むcDNAライブラリーを同定するため、及び2)PRO21073の完全長コード化配列のクローンを単離するプローブとして用いるために、オリゴヌクレオチドを合成した。正方向及び逆方向PCRプライマーは一般に20から30ヌクレオチドの範囲であり、しばしば約100−1000bp長のPCR産物を産生するために設計される。プローブ配列は典型的には40−55bp長である。場合によっては、コンセンサス配列が約1−1.5kbpより大きいときに付加的なオリゴヌクレオチドが合成される。完全長クローンについて幾つかのライブラリーをスクリーニングするために、ライブラリーからのDNAを、上掲のAusubel等, Current Protocols in Molecular Biologyのように、PCRプライマー対を用いたPCR増幅によりスクリーニングした。ついで、ポジティブライブラリーを使用し、プローブオリゴヌクレオチド及びプライマー対の一方を用いて対象とする遺伝子をコードするクローンを単離した。
PCRプライマー(正方向と逆方向)を合成した:
正方向PCRプライマー
5'-GTCAAGGAGTCAAAGTTCTGGAGTGACTGG-3'(配列番号3)
逆方向PCRプライマー
5'-CGCACATCGCAGAGCTATGACATATTC-3'(配列番号4)
更に、合成オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを次のヌクレオチド配列を有するコンセンサスDNA172257配列から構築した:
ハイブリダイゼーションプローブ
5'-CGTACAACCTCACGGGGCTGCAGCCTTTTACAG-3'(配列番号5)
様々な組織由来の50の異なるヒトcDNAライブラリーのプールをクローニングに使用した。cDNAクローンの単離に用いたcDNAライブラリーは、Invitrogen, San Diego, CAからのもの等の市販試薬を用いて標準的な方法によって構築した。cDNAは、NotI部位を含むオリゴdTでプライムし、平滑末端でSalIヘミキナーゼアダプターに結合させ、NotIで切断し、ゲル電気泳動で適切にサイズ分類し、適切なクローニングベクター(pRKB又はpRKD等;pRK5BはSfiI部位を含まないpRK5Dの前駆体である;Holmes等, Science, 253: 1278-1280 (1991)等参照)に、独特のXhoI及びNotI部位において、所定の方向でクローニングした。
上記のようにして単離されたクローンのDNA配列決定により、完全長GLM−R核酸の完全長DNA(本明細書においてDNA173920−2924と命名する、図1、配列番号1)、及び誘導された完全長PRO21073ポリペプチドが得られた。
こうして同定された完全長クローンは、ヌクレオチド位置63−65に見掛けの翻訳開始部位を有する一つのオープンリーディングフレームを、ヌクレオチド位置2259−2261に停止シグナルを含んでいた(図1、配列番号:1)。予想されるポリペプチド前駆体は、732アミノ酸長であり、およそ82954ダルトンの算定分子量及びおよそ7.15の推定pIを有する。図2(配列番号2)に示す完全長PRO21073配列の分析により、図2に示すように様々な重要なポリペプチドドメインの存在が明らかになり、それら重要なポリペプチド領域の位置は概ね上述の通りである。クローンDNA173920−2924は、2000年5月16日にATCCに寄託され、ATCC寄託番号1874−PTAを割振られている。
図3AのGLM−R(PRO21073)配列は1型サイトカインレセプターの特徴を示す。19アミノ酸残基の予想シグナルペプチドには、WSDWSシグネチャーモチーフと2対の保存システイン残基を有する1つのサイトカインレセプター相同ドメイン(残基20−227)が続く。フィブロネクチンIII型ドメインと相同な3つのモジュール(228−324、325−420、421−516残基)は細胞外ドメインを完成し、単一の膜貫通領域(残基517−539)は193アミノ酸(残基540−732)の細胞内ドメインに接続する。Jakファミリーの細胞質チロシンキナーゼ内に、SH2ドメインを有する下流のシグナル伝達分子の結合部位として機能しうる4つのチロシン残基が存在する。
(実施例2)
ハイブリダーゼーションプローブとしてのGLM−Rポリヌクレオチドの使用
以下の方法は、SRTをコードするヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションプローブとしての使用について記述する。
完全長又は成熟SRTのコード化配列を含むDNAは、ヒト組織cDNAライブラリー又はヒト組織ゲノムライブラリー中において相同なDNA(SRTの天然に生じる変異体をコードするものなど)をスクリーニングするためのプローブとして用いられる。
何れかのライブラリーDNAを含むフィルターのハイブリダイゼーション及び洗浄は、以下のような高度にストリンジェントな条件の下にて実施される。放射標識SRT由来プローブのフィルターへのハイブリダイゼーションは、50%ホルムアミド、5xSSC、0.1%SDS、0.1%ピロリン酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム、pH6.8、2xデンハード液及び10%硫酸デキストランの溶液中、42℃で20時間実施される。フィルターの洗浄は0.1xSSC及び0.1%SDSの水溶液中にて42℃で実施される。
完全長天然配列SRTをコードするDNAと所望の配列同一性を有するDNAは、当該分野で既知の標準的な技術を用いて同定することができる。
(実施例3)
大腸菌中でのGLM−Rの発現
この実施例は、大腸菌中での組換え発現によるGLM−Rの非グリコシル化型の調製を例証する。
GLM−RをコードするDNA配列は選択されたPCRプライマーを利用して最初に増幅される。このプライマーは、選択された発現ベクター上の制限酵素部位に対応する制限酵素部位を含まなければならない。様々な発現ベクターを使用することができる。適したベクターの例としては、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性に対する遺伝子を含むpBR322(大腸菌由来; Bolivarら, Gene, 2:95 (1977)を参照のこと)がある。ベクターは制限酵素によって消化され、脱リン酸化される。ついで、PCR増幅配列がベクターにライゲーションされる。ベクターは好ましくは抗生物質耐性遺伝子、trpプロモーター、ポリhisリーダー(最初の6つのSTIIコドン、ポリhis配列、及びエンテロキナーゼ切断部位を含む)、GLM−Rコード化領域、ラムダ転写終結因子及びargU遺伝子をコードする配列を含む。
ついで、上掲のSambrookらに記載されている方法を用いて選択された大腸菌株を形質転換するために、このライゲーション混合物を利用した。形質転換体をLBプレート上でのその増殖能力によって同定し、ついで抗生物質耐性コロニーを選択する。プラスミドDNAを単離し、それを制限酵素分析及びDNA配列決定によって確認することができる。
選択されたクローンは、抗生物質が補填されたLBブロスのような液体培地で一晩かけて増殖させることができる。この一晩かけての培養を、引き続きより大きなスケールでの培養を播種するために使用してもよい。ついで細胞を所望の光学密度になるまで増殖させると、その間に発現プロモーターが作用し始める。
更に数時間、細胞を培養した後に、遠心分離によって細胞を収集することが可能である。遠心分離によって得られた細胞ペレットは、当該分野で公知の様々な薬剤を使用して可溶化でき、ついで、この溶解したGLM−Rタンパク質を、タンパク質の堅固な結合を可能にする条件下において金属キレート化カラムを用いて精製すること可能である。
以下の手法を用いて、ポリ−Hisタグ形態でGLM−Rを大腸菌で発現させてもよい。GLM−RをコードするDNAを選択したPCRプライマーを用いて最初に増幅した。このプライマーは、選択された発現ベクターの制限酵素部位に対応する制限酵素部位、及び効率的で信頼性のある翻訳開始、金属キレートカラムでの迅速な精製、及びエンテロキナーゼでのタンパク質分解的除去をもたらす他の有用な配列を含む。ついで、PCR増幅されたポリ-Hisタグ配列を発現ベクターへ結合させ、これを株52(W3110 fuhA(tonA) lon galE rpoHts(htpRts) clpP(lacIq))に基づく大腸菌宿主の形質転換に使用した。形質転換体を、最初に50mg/mlのカルベニシリンを含有するLB中で、30℃で振盪しながら3−5のO.D.600に達するまで増殖させた。ついで培養液をCRAP培地(3.57gの(NH)SO、0.71gのクエン酸ナトリウム・2HO、1.07gのKCl、5.36gのDifco酵母抽出物、500mL水中の5.36gのSheffield hycase SF、並びに110mMのMPOS、pH7.3、0.55%(w/v)のグルコース及び7mMのMgSOの混合で調製)中にて50−100倍希釈し、30℃で振盪によって約20−30時間増殖させた。SDS−PAGE分析により発現を確認するために試料を取り出し、細胞がペレットとなるようにバルク培養物を遠心分離した。精製及びリフォールディングまで、細胞ペレットを凍結させた。
0.5から1Lの発酵(6−10gペレット)からの大腸菌ペーストを、7Mのグアニジン、20mMのトリス、pH8バッファー中で10容量(w/v)で再懸濁させた。固体硫酸ナトリウム及びテトラチオン酸ナトリウムを添加して最終濃度を各々0.1M及び0.02Mとし、溶液を4℃で終夜撹拌した。この工程により、全てのシステイン残基が亜硫酸によりブロックされた変性タンパク質が生じる。溶液をBeckman Ultracentifuge中で40000rpmで30分間濃縮した。上清を金属キレートカラムバッファー(6Mのグアニジン、20mMのトリス、pH7.4)の3−5容量で希釈し、透明にするために0.22ミクロンフィルターを通して濾過した。透明抽出物を、金属キレートカラムバッファーで平衡化させた5mlのQiagen Ni-NTA金属キレートカラムに充填した。カラムを50mMのイミダゾール(Calbiochem, Utrol grade)を含む更なるバッファー、pH7.4で洗浄した。タンパク質を250mMのイミダゾールを含有するバッファーで溶離した。所望のタンパク質を含有する画分をプールし、4℃で保存した。タンパク質濃度は、そのアミノ酸配列に基づいて計算した吸光係数を用いて280nmにおけるその吸収により見積もった。
試料を20mMのトリス、pH8.6、0.3MのNaCl、2.5Mの尿素、5mMのシステイン、20mMのグリシン及び1mMのEDTAからなる新たに調製した再生バッファー中で徐々に希釈することによって、タンパク質を再生させた。リフォールディング容量は、最終的なタンパク質濃度が50から100マイクログラム/mlとなるように選択した。リフォールディング溶液を4℃で12−36時間ゆっくり撹拌した。リフォールディング反応はTFAを最終濃度0.4%(約3のpH)で添加することにより停止させた。タンパク質を更に精製する前に、溶液を0.22ミクロンフィルターを通して濾過し、アセトニトリルを最終濃度2−10%で添加した。再生したタンパク質を、Poros R1/H逆相カラムで、0.1%TFAの移動バッファーと10から80%のアセトニトリル勾配での溶離を行うことでクロマトグラフにかけた。A280吸収を持つ画分のアリコートをSDSポリアクリルアミドゲルで分析し、相同な再生タンパク質を含有する画分をプールした。一般的に、殆どの正しく再生したタンパク質形態は、これらの形態が最もコンパクトであり、その疎水性内面が逆相樹脂との相互作用から遮蔽されているので、アセトニトリルの最低濃度で溶離される。凝集した種は通常、より高いアセトニトリル濃度で溶離される。誤って折り畳まれたタンパク質を所望の形態から除くのに加えて、逆相工程は試料からエンドトキシンも除去する。
所望する折り畳みのGLM−Rポリペプチドを含有する画分をプールし、溶液に向けた窒素の弱い気流を用いてアセトニトリルを除去した。タンパク質を、透析又は調製バッファーで平衡化したG25 Superfine(Pharmacia)樹脂でのゲル濾過及び滅菌濾過により、0.14Mの塩化ナトリウム及び4%のマンニトールを含む20mMのHepes、pH6.8に調製した。
(実施例4)
哺乳動物細胞中でのGLM−Rの発現
この実施例は、哺乳動物細胞中での組換え発現による潜在的にグリコシル化した形態のGLM−Rの調製を例証する。
発現ベクターとしてベクターpRK5(1989年3月15日公開のEP307247参照)を用いた。場合によっては、GLM−R DNAを選択した制限酵素を持つpRK5に結合させ、上記のSambrook等に記載されたようなライゲーション法を用いてGLM−R DNAを挿入させる。得られたベクターは、pRK5−GLM−Rと呼ばれる。
一実施態様では、選択された宿主細胞は293細胞でもよい。ヒト293細胞(ATCC CCL 1573)は、ウシ胎児血清及び場合によっては滋養成分及び/又は抗生物質を添加したDMEMなどの培地中で組織培養プレートにおいて増殖させて集密化した。約10μgのpRK5−GLM−R DNAを約1μgのVA RNA遺伝子コード化DNA[Thimmappayaら, Cell, 31:543 (1982))]と混合し、500μlの1mMトリス−HCl、0.1mMのEDTA、0.227MのCaClに溶解させた。この混合物に、500μlの50mMのHEPES(pH7.35)、280mMのNaCl、1.5mMのNaPOを一滴づつ添加し、25℃で10分間析出物を形成させた。析出物を懸濁し、293細胞に加えて37℃で約4時間定着させた。培地を吸引し、2mlのPBS中20%グリセロールを30秒間添加した。293細胞は、ついで無血清培地で洗浄し、新鮮培地を添加し、細胞を約5日間インキュベートした。
形質移入の約24時間後、培地を除去し、培地(単独)又は200μCi/ml35S−システイン及び200μCi/ml35S−メチオニンを含む培地で置換した。12時間のインキュベーションの後、条件培地を回収し、スピンフィルターで濃縮し、15%SDSゲルに添加した。処理したゲルを乾燥させ、GLM−Rポリペプチドの存在を現す選択された時間にわたってフィルムにさらした。形質転換した細胞を含む培地に、更なるインキュベーションを施し(無血清培地で)、培地を選択されたバイオアッセイで試験した。
これに代わる技術において、GLM−Rは、Somparyracら, Proc. Natl. Acad. Sci., 12:7575 (1981)に記載されたデキストラン硫酸法を用いて293細胞に一過的に導入される。293細胞は、スピナーフラスコ内で最大密度まで増殖させ、700μgのpRK5−GLM−R DNAを添加する。細胞は、まずスピナーフラスコから遠心分離によって濃縮し、PBSで洗浄した。DNA−デキストラン沈殿物を細胞ペレット上で4時間インキュベートした。細胞を20%グリセロールで90秒間処理し、組織培地で洗浄し、組織培地、5μg/mlウシインシュリン及び0.1μg/mlウシトランスフェリンを含むスピナーフラスコに再度導入した。約4日後に、条件培地を遠心分離して濾過し、細胞及び細胞片を除去した。ついで発現されたGLM−Rを含む試料を濃縮し、透析及び/又はカラムクロマトグラフィー等の選択した方法によって精製した。
他の実施態様では、GLM−RをCHO細胞で発現させることができる。pRK5−GLM−Rは、CaPO又はDEAE−デキストランなどの公知の試薬を用いてCHO細胞に形質移入することができる。上記したように、細胞培地をインキュベートし、培地を培養培地(単独)又は35S−メチオニン等の放射性標識を含む培地に置換することができる。GLM−Rポリペプチドの存在を同定した後、培地を無血清培地に置換してもよい。好ましくは、培地を約6日間インキュベートし、ついで条件培地を収集する。ついで、発現されたGLM−Rを含む培地を濃縮して、任意の選択した方法によって精製することができる。
また、エピトープタグGLM−Rは、宿主CHO細胞において発現させてもよい。GLM−RはpRK5ベクターからサブクローニングしてもよい。サブクローン挿入物は、PCRを施してバキュロウイルス発現ベクター中のポリ−hisタグ等の選択されたエピトープタグを持つ枠に融合できる。ポリ−hisタグGLM−R挿入物は、ついで、安定なクローンの選択のためのDHFR等の選択マーカーを含むSV40誘導ベクターにサブクローニングできる。最後に、CHO細胞をSV40誘導ベクターで(上記のように)形質移入できる。発現を確認するために、上記のように標識化を行ってもよい。発現されたポリ−hisタグGLM−Rを含む培地は、ついで濃縮し、Ni+−キレートアフィニティクロマトグラフィー等の選択された方法により精製できる。
またGLM−Rは、一過性発現法によりCHO及び/又はCOS細胞で、あるいは他の安定な発現方法によりCHO細胞で発現させてもよい。
CHO細胞における安定な発現は以下の方法を用いて実施された。タンパク質は、それぞれのタンパク質の可溶化形態のコーディング配列(例えば、細胞外ドメイン)がIgG1のヒンジ、CH2及びCH2ドメインを含む定常領域配列に融合した、及び/又はポリ−Hisタグ形態である、IgG構築物(イムノアドヘシン)として発現された。
PCR増幅に続いて、各DNAを、Ausubelら, Current Protocols of Molecular Biology, Unit 3.16, John Wiley and Sons (1997)に記載されたような標準的技術を用いてCHO発現ベクターにサブクローニングした。CHO発現ベクターは、対象とするDNAの5'及び3'に適合する制限部位を有し、cDNAの便利なシャトル化ができるように構築される。ベクターは、Lucasら, Nucl. Acids Res. 24: 9, 1774-1779 (1996)に記載されたようにCHO細胞での発現を用い、対象とするcDNA及びジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)の発現の制御にSV40初期プロモーター/エンハンサーを用いる。DHFR発現は、形質移入に続くプラスミドの安定な維持のための選択を可能にする。
所望のプラスミドDNAの12マイクログラムを、市販の形質移入試薬Superfect(登録商標)(Quiagen), Dosper(登録商標)及びFugene(登録商標)(Boehringer Mannheim)約1千万のCHO細胞に導入する。細胞は、上記のLucas等に記載されているように増殖させた。約3x10−7細胞を、下記のような更なる増殖及び生産のためにアンプル中で凍結させた。
プラスミドDNAを含むアンプルを水槽に配して解凍し、ボルテックスにより混合した。内容物を10mLの媒質を含む遠心管にピペットして、1000rpmで5分間遠心分離した。上清を吸引して細胞を10mLの選択培地(0.2μm濾過PS20、5%の0.2μm透析濾過ウシ胎児血清を添加)中に懸濁させた。ついで細胞を90mLの選択培地を含む100mLスピナーに分ける。1−2日後、細胞を150mLの選択培地を満たした250mLスピナーに移し、37℃でインキュベートする。更に2−3日後、250mL、500mL及び2000mLのスピナーを3x10細胞/mLで播種した。細胞培地を遠心分離により新鮮培地に交換し、生産培地に再懸濁させた。任意の適切なCHO培地を用いてもよいが、実際には1992年6月16日に発行された米国特許第5,122,469号に記載された生産培地を使用した。3Lの生産スピナーを1.2x10細胞/mLで播種した。0日目に、細胞数とpHを測定した。1日目に、スピナーをサンプルし、濾過空気での散布を実施した。2日目に、スピナーをサンプルし、温度を33℃に変え、30mLの500g/Lのグルコース及び0.6mLの10%消泡剤(例えば35%ポリジメチルシロキサンエマルション、Dow Corning 365 Medical Grade Emulsion)をとった。生産を通して、pHは7.2近傍に調節し維持した。10日後、又は生存率が70%を下回るまで、細胞培地を遠心分離で回収して0.22μmフィルターを通して濾過した。濾過物は、4℃で貯蔵するか、即座に精製用カラムに充填した。
ポリ−Hisタグ作成物について、タンパク質はNi−NTAカラム(Qiagen)を用いて精製した。精製の前に、イミダゾールを条件培地に5mMの濃度まで添加した。条件培地を、0.3MのNaCl及び5mMイミダゾールを含む20mMのHepes,pH7.4バッファーで平衡化した6mlのNi−NTAカラムへ4−5ml/分の流速によって4℃でポンプ供給した。充填後、カラムを更に平衡バッファーで洗浄し、タンパク質を0.25Mイミダゾールを含む平衡バッファーで溶離した。高度に精製されたタンパク質は、続いて10mMのHepes、0.14MのNaCl及び4%のマンニトール、pH6.8を含む貯蔵バッファー中で25mlのG25 Superfine(Pharmacia)を用いて脱塩し、−80℃で貯蔵した。
イムノアドヘシン(Fc含有)作成物を、以下の通りに条件培地から精製した。条件培地を、20mMのリン酸ナトリウムバッファー、pH6.8で平衡化した5mlのプロテインAカラム(Pharmacia)へポンプ注入した。充填後、カラムを平衡バッファーで強く洗浄した後、100mMのクエン酸, pH3.5で溶離した。溶離したタンパク質は、1mlの画分を275μLの1Mトリスバッファー,pH9を含む管に回収することにより即座に中性化した。高度に精製されたタンパク質は、続いてポリ−Hisタグタンパク質について上記した貯蔵バッファー中で脱塩した。均一性はSDSポリアクリルアミドゲルとエドマン(Edman)分解によるN末端アミノ酸配列決定により評価した。
(実施例5)
酵母菌中でのGLM−Rの発現
以下の方法は、酵母菌中でのGLM−Rの組換え発現を記載する。
第1に、ADH2/GAPDHプロモーターからのGLM−Rの細胞内生産又は分泌のための酵母菌発現ベクターを作成する。GLM−RをコードするDNA及びプロモーターを選択したプラスミドの適当な制限酵素部位に挿入してGLM−Rの細胞内発現を指示する。分泌のために、GLM−RをコードするDNAを選択したプラスミドに、ADH2/GAPDHプロモーターをコードするDNA、天然GLM−Rシグナルペプチド又は他の哺乳動物シグナルペプチド、又は、例えば酵母菌α因子又はインベルターゼ分泌シグナル/リーダー配列、及び(必要ならば)GLM−Rの発現のためのリンカー配列とともにクローニングすることができる。
酵母菌株AB110などの酵母菌株は、ついで上記の発現プラスミドで形質転換し、選択された発酵培地中で培養できる。形質転換した酵母菌上清は、10%トリクロロ酢酸での沈降及びSDS−PAGEによる分離で分析し、ついでクマシーブルー染色でゲルの染色をすることができる。
続いて組換えGLM−Rは、発酵培地から遠心分離により酵母菌細胞を除去し、ついで選択されたカートリッジフィルターを用いて培地を濃縮することによって単離及び精製できる。GLM−Rを含む濃縮物は、選択されたカラムクロマトグラフィー樹脂を用いて更に精製してもよい。
(実施例6)
バキュロウイルス感染昆虫細胞中でのGLM−Rの発現
以下の方法は、バキュロウイルス感染昆虫細胞中におけるGLM−Rの組換え発現を記載する。
GLM−Rをコードする配列を、バキュロウイルス発現ベクターに含まれるエピトープタグの上流に融合させた。このようなエピトープタグは、ポリ−hisタグ及び免疫グロブリンタグ(IgGのFc領域など)を含む。pVL1393(Novagen)などの市販されているプラスミドから誘導されるプラスミドを含む種々のプラスミドを用いることができる。簡単には、GLM−R又はGLM−Rコード配列の所定部分、例えば膜貫通タンパク質の細胞外ドメインをコードする配列又はタンパク質が細胞外である場合の成熟タンパク質をコードする配列などが、5’及び3’領域に相補的なプライマーでのPCRにより増幅される。5’プライマーは、隣接する(選択された)制限酵素部位を包含していてもよい。生産物は、ついで、選択された制限酵素で消化され、発現ベクターにサブクローニングされる。
組換えバキュロウイルスは、上記のプラスミド及びBaculoGold(商品名)ウイルスDNA(Pharmingen)を、Spodoptera frugiperda(「Sf9」)細胞(ATCC CRL 1711)中にリポフェクチン(GIBCO-BRLから市販)を用いて同時形質移入することにより作成される。28℃で4−5日インキュベートした後、放出されたウイルスを回収し、更なる増幅に用いた。ウイルス感染及びタンパク質発現は、O'Reilleyら, Baculovirus expression vectors: A Laboratory Manual, Oxford: Oxford University Press (1994)に記載されているように実施した。
次に、発現されたポリ−hisタグGLM−Rは、例えばNi2+−キレートアフィニティクロマトグラフィーにより次のように精製される。抽出物は、Rupertら, Nature, 362:175-179 (1993)に記載されているように、ウイルス感染した組み換えSf9細胞から調製した。簡単には、Sf9細胞を洗浄し、超音波処理用バッファー(25mLのHepes、pH7.9;12.5mMのMgCl;0.1mMのEDTA;10%グリセロール;0.1%のNP−40;0.4MのKCl)中に再懸濁し、氷上で2回20秒間超音波処理した。超音波処理物を遠心分離で透明化し、上清を充填バッファー(50mMリン酸塩、300mMのNaCl、10%グリセロール、pH7.8)で50倍希釈し、0.45μmフィルターで濾過した。Ni2+−NTAアガロースカラム(Qiagenから市販)を5mLの総容積で調製し、25mLの水で洗浄し、25mLの充填バッファーで平衡させた。濾過した細胞抽出物は、毎分0.5mLでカラムに充填した。カラムを、分画回収が始まる点であるA280のベースラインまで充填バッファーで洗浄した。次に、カラムを、結合タンパク質を非特異的に溶離する二次洗浄バッファー(50mMリン酸塩;300mMのNaCl、10%グリセロール、pH6.0)で洗浄した。A280のベースラインに再度到達した後、カラムを二次洗浄バッファー中で0から500mMイミダゾール勾配で展開した。1mLの分画を回収し、SDS−PAGE及び銀染色又はアルカリホスファターゼ(Qiagen)に複合したNi2+−NTAでのウェスタンブロットで分析した。溶離したHis10−タグGLM−Rを含む画分をプールして充填バッファーで透析した。
あるいは、IgGタグ(又はFcタグ)GLM−Rの精製は、例えば、プロテインA又はプロテインGカラムクロマトグラフィーを含む公知のクロマトグラフィー技術を用いて実施できる。
(実施例7)
GLM−Rに結合する抗体の調製
この実施例は、GLM−Rに特異的に結合できるモノクローナル抗体の調製を例示する。
モノクローナル抗体の生産のための技術は、この分野で知られており、例えば、上記のGodingに記載されている。用いられ得る免疫原は、精製GLM−R、GLM−Rを含む融合タンパク質、細胞表面に組換えGLM−Rを発現する細胞を含む。免疫原の選択は、当業者が過度の実験をすることなくなすことができる。
オクタヒスチジンタグに融合したヒトGLM−Rの細胞外ドメインをコードする構築物を組換えPCRによって導き、pVL1393バキュロウイルス発現ベクターの修飾バージョンにクローニングした(BD Pharmingen, San Diego, CA)。GLM−R−HisがHigh−five昆虫細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)に発現し、それをニッケル−ニトリロ−三酢酸及び親和性カラムにより精製した。GLM−R−Hisに対するモノクローナル抗体を後述の方法と同様にしてbalb/cマウスで産生させた。
Balb/c等のマウスを、完全フロイントアジュバントに乳化して皮下又は腹腔内に1−100マイクログラムで注入したGLM−R免疫原で免疫化する。あるいは、免疫原をMPL-TDMアジュバント(Ribi Immunochemical Research, ハミルトン, モンタナ)に乳化し、動物の後フットパッドに注入してもよい。免疫化したマウスは、ついで10から12日後に、選択したアジュバント中に乳化した付加的免疫源で追加免疫する。その後、数週間、マウスをさらなる免疫化注射で追加免疫する。抗GLM−R抗体の検出のためのエライザアッセイで試験するために、レトロオービタル出血からの血清試料をマウスから周期的に採取してもよい。
適当な抗体力価が検出された後、抗体に「ポジティブ(陽性)」な動物に、GLM−R静脈内注射の最後の注入をすることができる。3から4日後、マウスを屠殺し、脾臓細胞を取り出した。ついで脾臓細胞を(35%ポリエチレングリコールを用いて)、ATCCから番号CRL1597で入手可能なP3X63AgU.1等の選択されたマウス骨髄腫株化細胞に融合させた。融合によりハイブリドーマ細胞が生成され、ついで、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン)培地を含む96ウェル組織培養プレートに蒔き、非融合細胞、骨髄腫ハイブリッド、及び脾臓細胞ハイブリッドの増殖を阻害した。
ハイブリドーマ細胞は、GLM−Rに対する反応性についてのエライザでスクリーニングされる。GLM−Rに対する所望のモノクローナル抗体を分泌する「ポジティブ(陽性)」ハイブリドーマ細胞の決定は、技術常識の範囲内である。
陽性ハイブリドーマ細胞を同系のBalb/cマウスに腹腔内注入し、抗GLM−Rモノクローナル抗体を含む腹水を生成させる。あるいは、ハイブリドーマ細胞を、組織培養フラスコ又はローラーボトルで増殖させることもできる。腹水中に生成されたモノクローナル抗体の精製は、硫酸アンモニウム沈降、それに続くゲル排除クロマトグラフィ−を用いて行うことができる。あるいは、抗体のプロテインA又はプロテインGへの親和性に基づくアフィニティクロマトグラフィーを用いることもできる。
(実施例8)
特異的抗体を用いたGLM−Rポリペプチドの精製
天然又は組換えGLM−Rポリペプチドは、この分野の種々の標準的なタンパク質精製方法によって精製できる。例えば、pro−GLM−Rポリペプチド、成熟ポリペプチド、又はpre−GLM−Rポリペプチドは、対象とするGLM−Rポリペプチドに特異的な抗体を用いた免疫親和性クロマトグラフィーによって精製される。一般に、免疫親和性カラムは抗GLM−Rポリペプチド抗体を活性化クロマトグラフィー樹脂に共有結合させて作成される。
ポリクローナル免疫グロブリンは、硫酸アンモニウムでの沈殿又は固定化プロテインA(Pharmacia LKB Biotechnology, Piscataway, N.J.)での精製のいずれかにより免疫血清から調製される。同様に、モノクローナル抗体は、硫酸アンモニウム沈殿又は固定化プロテインAでのクロマトグラフィーによりマウス腹水液から調製される。部分的に精製された免疫グロブリンは、CnBr−活性化セファロース(商品名)(Pharmacia LKB Biotechnology)等のクロマトグラフィー樹脂に共有結合される。抗体が樹脂に結合され、樹脂がブロックされ、誘導体樹脂は製造者の指示に従って洗浄される。
このような免疫親和性カラムは、可溶化形態のGLM−Rポリペプチドを含有する細胞からの画分を調製することによるGLM−Rポリペプチドの精製において利用される。この調製物は、界面活性剤の添加又はこの分野で公知の方法により分画遠心法を介して得られる全細胞又は細胞成分画分の可溶化により得られる。あるいは、シグナル配列を含む可溶化GLM−Rポリペプチドは、細胞が増殖する培地中に有用な量で分泌される。
可溶化GLM−Rポリペプチド含有調製物は、免疫親和性カラムを通され、カラムはGLM−Rポリペプチドの好ましい吸着を可能ならしめる条件下(例えば、洗浄剤存在下の高イオン強度バッファー)で洗浄される。ついで、カラムは、抗体/GLM−Rポリペプチド結合を分解する条件下(例えば、pH約2−3といった低pHバッファー、又は高濃度の尿素又はチオシアン酸イオン等のカオトロープ)で溶離され、GLM−Rポリペプチドが回収される。
(実施例9)
薬物スクリーニング
本発明は、GLM−Rポリペプチド又はその結合断片を種々の薬物スクリーニング技術において使用することによる化合物のスクリーニングにとって特に有用である。そのような試験に用いられるGLM−Rポリペプチド又は断片は、溶液中に遊離した状態でも、固体支持体に固定されても、細胞表面に担持されていても、或いは細胞内に位置していてもよい。薬剤スクリーニングの1つの方法では、GLM−Rポリペプチド又は断片を発現する組換え核酸で安定に形質移入される真核生物又は原核生物宿主細胞を利用する。薬剤は、そのような形質移入細胞に対して、競合的結合アッセイによってスクリーニングされる。生存可能又は固定化形態のいずれかによって、このような細胞は標準的な結合アッセイで使用できる。例えば、GLM−Rポリペプチド又は断片と試験される試薬の間での複合体の形成を測定してよい。あるいは、試験する試薬によって生ずるGLM−Rポリペプチドとその標的細胞又は標的レセプターとの間の複合体形成における減少を試験することもできる。
従って、本発明は、GLM−Rポリペプチド関連疾患又は障害に影響を与えうる薬剤又は任意の他の試薬のスクリーニング方法を提供する。これらの方法は、当該分野で良く知られている手法により、その試薬をGLM−Rポリペプチド又は断片に接触させ、(I)試薬とGLM−Rポリペプチド又は断片との間の複合体の存在について、又は(ii)GLM−Rポリペプチド又は断片と細胞との間の複合体の存在について検定することを含む。これらの競合結合アッセイでは、GLM−Rポリペプチド又は断片が典型的には標識される。適切なインキュベーションの後、遊離なGLM−Rポリペプチド又は断片を結合形態のものから分離し、遊離又は未複合の標識の量が、特定の試薬がGLM−Rポリペプチドに結合する又はGLM−Rポリペプチド/細胞複合体を阻害する能力の尺度となる。
薬剤スクリーニングのための他の技術は、ポリペプチドに対して適当な結合親和性を持つ化合物についてのハイスループットスクリーニングを提供し、1984年9月13日に公開されたWO84/03564に詳細に記載されている。簡単に述べれば、多数の異なる小型ペプチド試験化合物が、プラスチックピン等の固体支持体又は幾つかの他の表面上で合成される。GLM−Rポリペプチドに適用すると、ペプチド試験化合物はGLM−Rポリペプチドと反応して洗浄される。結合したGLM−Rポリペプチドはこの分野で良く知られた方法により検出される。精製したGLM−Rポリペプチドは、上記の薬剤スクリーニング技術に使用するためにプレート上に直接被覆することもできる。更に、非中和抗体は、ペプチドを捕捉し、それを固体支持体上に固定化するのに使用できる。
また、本発明は、GLM−Rポリペプチドに結合可能な中和抗体がGLM−Rポリペプチド又はその断片について試験化合物と特異的に競合する競合薬剤スクリーニングアッセイも考慮する。この方法において、抗体は、GLM−Rポリペプチドで、1つ又は複数の抗原決定基を持つ任意のペプチドの存在を検出するのに使用できる。
(実施例10)
合理的薬物設計
合理的薬物設計の目的は、対象とする生物活性ポリペプチド(例えば、GLM−Rポリペプチド)又はそれらが相互作用する小分子、例えばアゴニスト、アンタゴニスト、又はインヒビターの構造的類似物を製造することである。これらの例の任意のものが、GLM−Rポリペプチドのより活性で安定な形態又はインビボでGLM−Rポリペプチドに機能を促進又は阻害する薬物の創作に使用できる(参考、Hodgson, Bio/Technology, 9: 19-21 (1991))。
1つの方法において、GLM−Rポリペプチド、又はGLM−Rポリペプチド-インヒビター複合体の三次元構造が、x線結晶学により、コンピュータモデル化により、最も典型的には2つの方法の組み合わせにより決定される。分子の構造を解明し活性部位を決定するためには、GLM−Rポリペプチドの形状及び電荷の両方が確認されなければならない。数は少ないが、GLM−Rポリペプチドの構造に関する有用な情報が相同タンパク質の構造に基づいたモデル化によって得られることもある。両方の場合において、関連する構造情報は、類似GLM−Rポリペプチド様分子の設計又は効果的なインヒビターの同定に使用される。合理的な薬剤設計の有用な例は、Braxton及びWells, Biochemistry, 31: 7796-7801 (1992)に示されているような向上した活性又は安定性を持つ分子、又はAthaudaら,J. Biochem., 113: 742-746 (1993)に示されているような天然ペプチドのインヒビター、アゴニスト、又はアンタゴニストとして作用する分子を含む。
また、上記のような機能アッセイによって選択された標的特異的な抗体を単離しその結晶構造を解明することもできる。この方法は、原理的には、それに続く薬剤設計が基礎をおくことのできるファーマコアを生成する。機能的な薬理学的に活性な抗体に対する抗-イディオタイプ抗体(抗-ids)を生成することにより、タンパク質結晶学をバイパスすることができる。鏡像の鏡像として、抗-idsの結合部位は最初のレセプターの類似物であると予測できる。抗-idは、ついで、化学的又は生物学的に製造したペプチドのバンクからペプチドを同定及び単離するのに使用できる。単離されたペプチドは、ファーマコアとして機能するであろう。
本発明によって、X線結晶学などの分析実験を実施するために十分な量のGLM−Rポリペプチドが入手可能である。更に、ここに提供したGLM−Rポリペプチドアミノ酸配列の知識は、X線結晶学に代わる又はそれに加わるコンピュータモデル化技術で用いられるガイダンスを提供する。
(実施例11)
GLM−R cDNAの単離及びhGH−R/GLM−Rキメラレセプターのクローニング
実施例1において報告したように、プールした組織cDNAライブラリーから完全長ヒトGLM−RをコードするcDNAを引き続いてクローニングした。異種ライブラリーのスクリーニングとマウス脾臓ライブラリーからのポリメラーゼ鎖反応(PCR)を組み合わせることにより、マウスGLM−Rを得た。
716アミノ酸残基のやや短い相同体であるマウスGLM−Rを脾臓ライブラリーからクローニングしたところ、ヒト分子に対して59.1%及び67.5%の同一性を示した(図3B)。システインの第2の対と2つの細胞質チロシン残基を除き、全ての顕著な特徴が2つの配列の間に保存されている。マウスゲノム配列の分析によりそれらの特徴を有する代替的exomの存在は明らかにならなかった(示さない)ことから、マウスタンパク質におけるシステインの欠損は、代替的mRNAスプライシングが原因とは思われない。
図3Cに示すように、ヒトGLM−Rは、IL−6シグナル変換器鎖であるgp103(H ibi等, Cell 63(6): 1149-57 (1990))と最も相同性が高く、その同一性は24.73%であり、ついでGCSF−Rとの同一性が23.94%(Larsen等, J. Exp. Med. 172(6): 1559-70 (1990))、IL−12b2との同一性が20.09%(Presky, D.H.等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(24): 14002-7 (1996))となっている。興味深いことに、ゲノム配列を分析すると、GLM−Rとgp130を隔てているのは、ヒト染色体5における24キロベース(kb)、及びマウス染色体13の合成領域における19kbのみであることが分かる。配列保存が比較的低いレベルにあることを鑑みると、この染色体の局在化パターンはmGLM−RとhGLM−Rが真に相同であることを更に確認するものである。
PCRのプライマーを、マウスゲノムデータベース(Celera)におけるデータマイニングにより得られた配列に基づいて決定した。独立したPCR反応から生じた2つのクローンを配列決定し、互いに、及びGenscanソフトウェアを使用してゲノムDNAから予測したmRNA配列と一致することを確認した。Burge, C.及びKarlin, S. J., Mol. Biol. 268 (1): 78-94 (1997)参照。ヒトGH−Rの細胞外ドメインとヒトGLM−Rの細胞内ドメインからなるキメラ分子をコードするcDNAを、部分的に相補的なプライマー5'-CTTTTCGAAACAGCAAAGGAAACCCAACAAATTGACTCA -3'(センス)(配列番号6)及び5'-GGGTTTCCTTTGCTGTTTCGAAAAGAGAAAAAC-3'(アンチセンス)(配列番号7)を使用して組換えPCRにより獲得した(Ho, S.N.等, Gene 77(1): 51-9 (1989))。この作成物を、CMVプロモーターの制御下において発現ベクターpRK5tkneoにクローニングした。
このレセプターの潜在的機能を理解するため、次にGLM−Rの発現パターンの決定を試みた。この転写物の発生量は通常小さすぎるので、いずれの器官においてもノーザンブロット分析法では信頼性をもって検出することはできなかった(図示せず)。低い発現レベルを裏付けることは、公的データベースのGLM−Rに対応するヒト発現配列タグ(EST)が存在しないということである。よって、エクソン11に位置するプライマーを使用し、リアルタイム定量的PCR(Taqman(登録商標))によりヒト総RNAの総合的パネルにおけるGLM−Rの発現を分析した(図4A)。最も高いGLM−R転写レベルが見られたのは精巣、前立腺、胸腺、骨髄及び気管であった。精巣RNA由来のGLM−R増幅産物はPCRの25周期後に検出可能となった(胸腺は26周期後;前立腺は27周期後)。一方、rpl−19増幅産物は18周期後に検出可能であった(胸腺は17周期後;前立腺は18周期後)。従って、精巣におけるGLM−R発現は、rpl−19の発現の約2=128分の1であった(胸腺、前立腺、1/2=1/512)。同様の計算により、殆どの組織においてGLM−Rはrpl−19の1/10〜1/10の大きさで発現することが分かる。
1型サイトカインレセプターは血液細胞の発達と機能に寄与することが多く、また胸腺及び骨髄におけるGLM−R発現レベルが比較的高かったため、血液細胞サブユニットにおけるGLM−Rの発現に注目した。このため、フィコール濃度勾配遠心分離後に磁気ビード分離を行うことにより、末梢血単核細胞(PBMC)サブセットを健常なヒトから単離した。ついで、ヒトGLM−Rのエキソン11に位置するプライマーを使用してこれらの細胞の破片から単離されたRNAにTaqman(登録商標)PCRを実施した(図4B)。ここでも、GLM−Rの発現レベルの絶対値は非常に低かったが、CD14ポジティブ、及びそれより低いがCD56ポジティブ細胞は、CD4、CD8、又はCD19ポジティブ細胞よりも有意に高い発現を示した。FACS分析により、GLM−Rの細胞外ドメインに対して育成されたモノクローナル抗体で発現パターンを確認した。GLM−Rタンパク質はCD14ポジティブ細胞の低レベルから中程度のレベルで検出可能であり、CD56ポジティブ細胞では殆ど検出できなかった。CD4、CD8、又はCD19ポジティブ細胞にはGLM−Rは発現しなかった。4名の異なる血液提供者について同様の結果が得られた。その代表値を図4の棒グラフに示す。GLM−Rの単球特異性発現と共に、高レベルのGLM−R転写が2つの単球ヒト細胞系であるTHP−1とU937に見られ(図4D)、一方、試験を行った他の全ての細胞系はついにGLM−Rを発現しなかった。GLM−Rは、新しく単離したヒト単球において、1μg/mlのリポ多糖体(LPS) と100ng/mlのインターフェロン−γ (IFN−γ)の組み合わせで刺激してから4時間後、56〜91倍で誘発されることが分かった(図4E)。ここで再度、FACSによりタンパク質レベルにおけるGLM−R誘発を確認した(図示せず)。適切な刺激によるT−又はB−細胞の活性化によるGLM−Rの情報制御が確認されていないことは、これが単球に限定的な減少であることを示唆している(図示せず)。
GLM−Rが活性によりシグナルを伝送することができるかどうかを確認するため、ヒトGLM−Rの細胞質領域と接合する、ヒトGH(hGH)レセプターの細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインからなるキメラ分子を構築した(図5A)。この構築物を安定的にIL−3依存性マウス32D細胞に形質移入し(Greenberger, J.S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80(10): 2931-5 (1983))、抗hGH−R抗体でポジティブに染色する3つのクローンをさらなる分析に使用した(図5B)。全てのクローンはその後のアッセイにおいて同じような結果を示した。
第一に、hGHを用いて刺激したとき、hGH−R/GLM−Rキメラが増殖のシグナル伝達を行うことができるかどうかを試験した(図5C)。hGH−R/GLM−Rを形質移入した細胞だけが、hGHに応じて投与量に依存して増殖することができた。一方、形質移入した細胞及び親細胞の両方がIL−3において同等に増殖した(図5)。
Jak/STAT経路はサイトカインレセプターが生成するシグナルを伝達するのに非常に重要であり(Ihle, J.N., Nature 377 (6550): 591-4 (1995))、STATタンパク質はサイトカインの特殊な効果の多くを伝達することが既に分かっている。Ihle, J.N., Curr. Opin. Cell Biol. 13(2): 211-7 (2001)を参照されたい。いずれのSTATタンパク質がhGHによるキメラレセプターの刺激によって活性化されるかを分析するため、電気泳動移動度シフト解析(EMSA)を実施した。fosプロモーター(m67)の血清誘導性要素の突然変異形態(Wagnerm B.J. et al., Embo. J. 9(13): 4477-84 (1990))を使用して、STAT−1、STAT−3、及びSTAT−4活性化を試験し、βカゼイン遺伝子(βCAS)の乳腺因子反応要素(Schmitt-Ney et al., Mol. Cell Biol. 11(7): 3745-55 (1991))を使用してSTAT−5及びSTAT−6の活性化を試験した。hGH刺激により、hGH−R/GLM−R形質移入細胞はm67プローブ上に強い複合体の形成を示したが、親細胞は反応しなかった。この複合体をSTAT−3に対する抗体で完全にスーパーシフトした(図6A)。抽出物をβCASプローブを用いてインキュベートしたとき、前例程はっきりしていないが、明らかに同定可能な複合体が存在しており、この複合体をSTAT−5に対する抗体で完全にスーパーシフトした(図6B)。STAT−3及びSTAT−5はまた、前述のように、親細胞及び形質移入細胞の両方において、IL−3による刺激で活性化した(Mu, S.等, Blood 86(12): 4532-4543; Pallard, C.等, J. Biol. Chem. 270(27): 15942-5 (1995))(23,24)(図6A及び6B)。インターフェロンによって刺激された遺伝子因子3、すなわち活性化したSTAT−1及びSTAT−2からなる複合体の存在を排除するため、抽出物をインターフェロン応答配列(ISRE)(25)プローブについて試験した(Reich, N.等, Proc. Natl. Acad Sci. USA 84(18): 6394-8 (1987))が、hGH特異性のゲルシフトは見られなかった(図示せず)。よって、STAT−3とSTAT−5以外のSTAT分子はこのような条件下ではhGH−R/GLM−Rにより活性化されなかった。hGH−R/GLM−Rの活性化によるSTAT−3及びSTAT−5の特異的活性化は、ホスホチロシン−免疫沈降後にSTAT−3及びSTAT−5に特異的な抗体を用いたウェスタンブロットにより確認した(図6)。
(実施例12)
GLM−R発現の定量的PCR分析
ヒトの器官由来の完全なRNAをクロンテック社(カリフォルニア州パロアルト)から入手し、Rneasyキット及びDNAseI((Qiagen, カリフォルニア州バレンシア)を用いて細胞系又は分別された細胞から完全なRNAを単離した。配列検出器7700を用い、製造者の指示書に従ってTaqman(登録商標)定量的RT−PCRを実行した(Applied Biosystems, カリフォルニア州フォスターシティ)。各試料について、2つの試験反応と、逆転写を加えない対照反応を、GLM−R mRNA及びハウスキーパーmRNAであるrpl−19の発現について分析した。ゲノムDNAによる汚染が原因で対照反応にシグナルが観察された場合、該シグナルは試験反応から差し引いた。GLM−R発現をrpl−19発現で除すことにより、任意の発現単位を計算した。プライマー発現ソフトウェア(Applied Biosystems, カリフォルニア州フォスターシティ)を用いてプローブとプライマーを設計した。プライマートリプレットは、ヒトGLM−Rについては、5'-CCTGGAGTCCCTGAAACGAA-3'(センス)(配列番号8)、5'-GTTGGTTCCCCCAGCACTG-3'(アンチセンス)(配列番号9)、5'-CTCTTACATTGTTCAGGTCATGGCCAGCA-3'(プローブ)(配列番号10)であり、ヒトrpl−19については5'- GATGCCGGAAAAACACCTTG-3' (センス)(配列番号11)、5'-TGGCTGTACCCTTCCGCTT-3'(アンチセンス)(配列番号12)、5'-CCTATGCCCATGTGCCTGCCCTT-3'(プローブ)(配列番号13)であった。
(実施例13)
血液細胞サブセットの単離、FACS分析及び単球の活性化
健常なヒトから事前承認を得てヘパリン処置した血液を採取した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1:2に希釈した血液35mlをフィコールーハイパック(Ficoll-Hypaque)(ICN Biomedicals, カリフォルニア州コスタメサ)15mlに重ね、500xgで30分間遠心分離にかけた。静止させてから末梢血単核細胞(PBMC)を回収し、PBSで一度洗浄した。RNA単離のため、様々なマーカー抗体に結合した常磁性ビーズを製造者(Milteny, カリフォルニア州オーバーン)の指示に従って使用し、白血球サブセットを分離した。FACS分析のために、完全なヒトIgG10μg/ml及びマウスIgG15μg/mlを含む緩衝液(Sigma, ミズーリ州セントルイス)中において、PBMCを氷上で30分間インキュベートすることにより、GLM−R抗体のFcレセプター媒介結合を防止した。ついで、細胞100万個につき1μgのビオチン化した抗GLM−R(IgG1)又はビオチン化したアイソタイプ対照抗体で細胞を15分間染色し、その後同じ緩衝液で2度洗浄した。2回目の染色では、ストレプトアビジン結合フィコエリトリン(strep−PE)及び蛍光細胞をフルオレシン−イソチオシアン酸塩又はCychrome(BD Pharmingen, カリフォルニア州サンディエゴ)に直接結合している様々なマーカー抗体と同時にインキュベートした。Epics−XL血液中血球測定システム(Beckman Coulter Inc., カリフォルニア州Fullerton)を使用して蛍光度を検出した。刺激実験のため、CD3、CD7、CD19、CD45RA、CD56、及びIgEに対する抗体に結合している常磁性ビーズ(Milteny, カリフォルニア州オーバーン)を用いるデプリーション戦略によりPBMCからの単球単離を実行した。この方法は、ポジティブ選択法で起こり得る、CD14抗原の連結反応により単球が活性化するという事態を避けるために選択された。これら単球を、10%ウシ血清、ペニシリン−ストレプトマイシン、及びL−グルタミンを補った2.5×10細胞/mlのRPMI(Invitrogen、カリフォルニア州Carlsbad)中において、LPS(Sigma, ミズーリ州セントルイス)1μg/ml及びIFNγ(R&D Systems, ミネソタ州ミネポリス)100ng/mlで4時間刺激した。
(実施例14)
32D細胞の培養及び形質移入
32D細胞は10%ウシ血清、L−グルタミン、及びペニシリン−ストレプトマイシンを補ったRPMI(Invitrogen、カリフォルニア州Carlsbad)中に維持した。WEHI−3B細胞からの調整培地をIL−3の供給源として使用し、最終濃度5〜10%で培養物に加えた。エレクトロポレーション及び10日間に亘る0.4mg/mlのG418(Invitrogen、カリフォルニア州Carlsbad)中に選択したバルクにより細胞を形質移入した。ついで、G418耐性細胞をhGH−Rに対するモノクローナル抗体(Genentech、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)で染色し、FACSにより96ウェルプレートの各ウェルに1つのポジティブ細胞を分配した。1週間伸張させた後、FACSによりhGH−R表面の発現について、及び増殖アッセイにより因子依存性について、それぞれクローンを再試験した。さらなる実験のために、hGH−R発現が大きく、バックグラウンド増殖が小さい3つのクローンを選択した。
(実施例15)
増殖アッセイ
成長因子を持たない完全培地中において、5×10細胞/mlの密度で細胞を20時間飢えさせた。続いて、ウェル当たり5×10個の細胞を、hGHの濃度が異なる96ウェルプレート、又は3つのWEHI−3B馴化培地に蒔いた。インキュベーション段階の最後の6時間の間にウェル当たり1μCiのH−チミジンを加え、細胞を22時間増殖させた。製造者(Packard Instruments、コネチカット州Meriden)の指示に従ってTop Count液体シンチレーション計測器を使用してチミジン取り込みを測定した。
(実施例16)
STAT活性化の分析
1条件当たり10個の細胞を洗浄してIL−3を除き、10%のウシ血清を補充したRPMI中で6時間飢えさせた。精製した組換えhGH(Genentech Inc., カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)又はマウスIL−3(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)を、それぞれ最終濃度が100ng/ml及び10ng/mlになるように加えた。37℃で15分置いた後、細胞を氷水で急冷し、氷のように冷たいPBSで一度洗浄した。Levy 等, Genes Dev. 3(9): 1362-71 (1989)の記載に従ってEMSAを実施し、オリゴヌクレオチドプローブm67 5'-CATTTCCCGTAAATCAT-3'(配列番号14)(Wagner, B.J.等, Embo J. 9(13): 4477-84 (1990))、及びβCAS 5'-GATTTCTAGGAATTCAATCC-3'(配列番号15)(Schmitt-Ney, M.等, Mol. Cell Biol. 11(7): 3745-55 (1991))を用いてゲルシフトを検出した。スーパーシフトの実験のため、ポリクローナル抗STAT−1(sc−464X)、抗STAT−3(sc−482X)及び抗STAT−5(sc−835X)(すべてSanta Cruz Biotechnology、カリフォルニア州サンタクルーズ)を使用した。ウェスタンブロット分析のために、50mMのTris pH75、150mMのNacl、2mMのEDTA、2mMのEGTA、0.1%のSDS、1%のTriton X−100、2mMのNaVO、及びcomplete(登録商標)プロテアーゼインヒビター(Roche Molecular Biochemicals、インティアナ州インディアナポリス)を含む緩衝液で細胞を溶解させた。氷上に20分間置いた後、溶解物を20000×g及び2℃で遠心分離し、上清を使用して免疫沈降を行った。4G10−アガロース(Upstate Biotechnology Inc.、ニューヨーク州レークプラシッド)とPY20−アガロース(BD transduction labs、ケンタッキー州レキシントン)の1:1の混合物を用いてチロシンリン酸化タンパク質の沈降を行った。溶解バッファーで3度洗浄した後、SDS−PAGEにより免疫沈降したタンパク質を分離し、ウェスタンブロット法によりニトロセルロースに移動させた。sc−482によりSTAT−3が検出され、sc−835(Santa Cruz Biotechnology、カリフォルニア州サンタクルーズ)及び増強した化学ルミネッセンス試薬(Amersham Pharmacia Biotech、ニュージャージー州Piscataway)によりSTAT−5が検出された。
(実施例17)
組織発現分布
図1に示すPRO21073ポリペプチドコード化ヌクレオチド配列からオリゴヌクレオチドプローブを構築し、定量的PCR増幅反応に使用した。標準PCR反応においてその関連するテンプレートの3’末端から約200〜600の塩基の増幅された断片が生じるようにオリゴヌクレオチドプローブを選択した。異なるヒト成人及び/又は胎性組織供給源から単離したcDNAライブラリーを用いる標準定量的PCR反応にオリゴヌクレオチドプローブを使用し、それをアガロースゲル電気泳動により分析することにより、試験した様々な組織におけるPRO21073ポリペプチドコード化核酸の発現レベルの定量的測定を行った。発現パターンの知識又は様々なヒト組織タイプにおけるPRO21073ポリペプチドコード化核酸の異なる発現により、他の組織特異性マーカーの有無に関わらず組織のタイプ別に有用な診断マーカーが得られ、転移性腫瘍の主要な組織発生源、疾病診断、等が決定できる。これらのアッセイの結果を以下に示す。

DNA分子 有意な発現があった組織
DNA173920-2924: 精巣、HUVEC、前立腺及び子宮に多く発現した。 軟骨組織、心臓、骨髄、及び脾臓にも発現した。

DNA分子 有意な発現がなかった組織
DNA173290-2924: 大腸癌、胎盤、副腎及び大動脈内皮細胞に発現しなかった。
次の材料をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(アメリカ合衆国、20110−2209、バージニア州マナッサス、ユニバーシティ・ブルバード10801)(ATCC)へ寄託した:
材料 ATCC受託番号 寄託日
DNA173920-2924 1874-PTA 2000年5月16日
これらの寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約及びその規則(ブダペスト条約)の規定に従って行われた。これは、寄託の日付から30年間、寄託の生存培養物が維持されることを保証するものである。寄託物はブダペスト条約の条項に従い、またジェネンテク社とATCCとの間の合意に従い、ATCCから入手することができ、これは、何れが最初に来ようとも、関連した米国特許の発行時又は任意の米国又は外国特許出願の公開時に、寄託培養物の後代を永久かつ非制限的に入手可能とすることを保証し、米国特許法第122条及びそれに従う特許庁長官規則(特に参照番号886OG638の37CFR第1.14条を含む)に従って権利を有すると米国特許庁長官が決定した者に子孫を入手可能とすることを保証するものである。
本出願の譲受人は、寄託した材料の培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死滅もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のものと速やかに取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない。
上記の文書による明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。ここに開示した実施形態は本発明の側面の一つの説明として意図されており、機能的に等価なあらゆる作成物がこの発明の範囲内にあるため、ここに開示された作成物により本発明の範囲が限定されるものではない。ここでの材料の寄託は、ここに含まれる文書による説明が、そのベストモードを含む本発明の任意の側面の実施を可能にするために不十分であることを認めるものではないし、それが表す特定の例証に対して請求の範囲を制限するものと解釈されるものでもない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に変形することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、本明細書の請求の範囲内に入るものである。
天然配列GLM−Rをコードするヌクレオチド配列(ヌクレオチド63〜2258)をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号1)を示し、該ヌクレオチド配列(配列番号1)は本明細書で「DNA173920−2924」と呼ぶクローンである。また、開始コドン及び終止コドンの位置をそれぞれ太字及び下線で示す。 配列番号1のコード化配列から得られた天然配列GLM−R(PRO21073)ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号2)を示す。また、その他様々な重要なポリペプチドドメインのおおよその位置を示す。 配列番号1のコード化配列から得られた天然配列GLM−R(PRO21073)ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号2)を示す。また、その他様々な重要なポリペプチドドメインのおおよその位置を示す。 図3Aは、GLM−Rのドメイン構造の拡大概略図である。「S」で示すブロックはシグナルペプチドを示す。サイトカインレセプター相同ドメインは一対の楕円で示されている。4つの保存されたシステニン残基とWSDWSシグネチャーモチーフの位置を示す。フィブロネクチンIII型(FNIII)の3つの反復で細胞外ドメインが完結しており、「tm」と標識したブロックボックスが膜貫通ドメインを表している。図3Bはヒト(配列番号2)及びマウス(配列番号16)GLM−Rタンパク質配列のアラインメントを図示したものである。同一のアミノ酸残基には影を付けた。予測されたジスフィルド架橋を線で示し、WSXWSモチーフ、膜貫通ドメイン、及びボックス1モチーフを四角に囲んだ。白抜き矢印はイントロンの位置を示すもので、イントロンは、ゲノム配列の分析により両方の種に保存されていることが分かった(Celaraゲノムデータベース及びコンティグNT_016846.7, NCBI Annotation Project, National Center for Biotechnology Information, NIH, Bethesda, MD 20894, USA)。細胞質チロシン残基を黒三角で記す。図3CはGLM−R並びに関連するサイトカインレセプターの相同性及び染色体局在化を示す。アミノ酸同一性のパーセンテージはalignプログラムで計算した。 Taqman(登録商標)及びFACSによるGLM−Rの発現パターンである。図4AないしEのパネルでは、GLM−R mRNAの発現及びハウスキーピング遺伝子mRNA、rpl−19の発現から計算した任意の単位のGLM−R mRNAの発現レベルが示されている。図4Aはヒトの器官におけるGLM−R転写物の組織分布を示す。図4Bは、選別されたヒト血液細胞におけるGLM−Rの発現を示す。図4CはFACSによるヒト血液細胞上におけるGLM−Rの発現の検出を示す。新しく単離したPBMCをビオチン化抗体及びFITC又はCyChromeに結合したマーカー抗体と組み合わせたストレプトアビジン結合フィコエリトリン(PE)で二重染色した。示されたマーカーに陽性の細胞についてヒストグラムを作成した。濃い色のヒストグラムはビオチン化したアイソタイプ抗体で染色したものを、白いヒストグラムはビオチン化した抗GLM−Rで染色したものを、それぞれ示す。図4Dはヒト細胞系におけるGLM−Rの発現を示す。図4Eは、LPS/IFNgで4時間活性化した際の、3つの健常なヒト由来の単球におけるGLM−R転写のアップレギュレーションを示す(ここで、ND=検出不可)。 32D細胞にキメラhGH−R/GLM−Rキメラレセプターを導入した結果、及び増殖アッセイの結果を示す。図5AはhGH膜貫通ドメイン及びGLM−R細胞内ドメインの接合部に最も近い配列である。膜貫通領域内にあると予想されたアミノ酸を四角で囲んだ。図5Bはキメラレセプターを過剰発現している32D細胞のFACS分析である。細胞をモノクローナル抗hGH−R抗体又はアイソタイプ制御抗体(黒)で染色した後、FITC結合ヤギ抗マウス抗体で染色した。図5C及び5Dは成長ホルモン(5C)又はWEHI−3B馴化培地(5D)に応答するチミジン取り込みを示す。代表的な実験を示す。円形記号は親32D細胞を、四角はhGH−R/GLM−R形質移入細胞を表す。 hGH−R/GLM−RキメラによるSTATの活性化を示す。図6A及び6Bはm67(A)及びβCAS(B)プローブを使用した電気泳動移動度シフト解析を示す。10ng/mlのIL−3又は100ng/mlのhGHで細胞を刺激したところ、図示されているように、複合体はポリクローナル抗体でスーパーシフトした。図6CはSTAT−3及びSTAT−5のチロシンリン酸化を示す。抗ホスホチロシン抗体を用いて、刺激した細胞溶解物からリン酸化したタンパク質を免疫沈降させ、STAT−3及びSTAT−5に特異的なポリクローナル抗体を使用してウェスタンブロット法により検出した。

Claims (49)

  1. (a)図2(配列番号2)の約1又は約20から約732のアミノ酸残基の配列を含んでなるGLM−RポリペプチドをコードするDNA分子、或いは(b)(a)のDNA分子の相補体に対し、少なくとも約80%の配列同一性を有するDNAを含む、単離された核酸分子。
  2. 図1(配列番号1)の約63又は約120から約2258のヌクレオチド位の配列を含んでなる、請求項1に記載の単離された核酸分子。
  3. 図1(配列番号1)のヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載の単離された核酸分子。
  4. 図2(配列番号2)の約1又は約20から約732のアミノ酸残基の配列をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載の単離された核酸分子。
  5. (a)2000年5月16日にATCC寄託番号1874−PTA(DNA173920−2924)でATCCに寄託されたヒトタンパク質cDNAによりコードされた成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、或いは(b)(a)のDNA分子の相補体に対し、少なくとも約80%の配列同一性を有するDNAを含んでなる、単離された核酸分子。
  6. 2000年5月16日にATCC寄託番号1874−PTA(DNA173920−2924)でATCCに寄託されたヒトタンパク質cDNAによりコードされる成熟ポリペプチドをコードするDNAを含んでなる、請求項5に記載の単離された核酸分子。
  7. (a)2000年5月16日にATCC寄託番号1874−PTA(DNA173920−2924)でATCCに寄託されたヒトタンパク質cDNAの完全長ポリペプチドコード化配列、或いは(b)(a)のコード化配列の相補体に対し、少なくとも約80%の配列同一性を有するDNAを含んでなる、単離された核酸分子。
  8. 2000年5月16日にATCC寄託番号1874−PTA(DNA173920−2924)でATCCに寄託されたヒトタンパク質cDNAの完全長ポリペプチドコード化配列を含んでなる、請求項7に記載の単離された核酸分子。
  9. 図2(配列番号2)の1又は約20から約732のアミノ酸をコードする核酸配列の相補体にハイブリダイズするDNAを含んでなるGLM−Rポリペプチドをコードする、単離された核酸分子。
  10. 図2(配列番号2)の1又は約20から約732のアミノ酸をコードする核酸が図1(配列番号1)の63又は約120から約2258のヌクレオチドを有する、請求項9に記載の単離された核酸分子。
  11. ハイブリダイゼーションがストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件の下で生じる、請求項9に記載の単離された核酸分子。
  12. 少なくとも約702のヌクレオチドを含み、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、(a)図2(配列番号2)の1又は約20から約732のアミノ酸残基の配列を有するGLM−RポリペプチドをコードするDNA分子、或いは(b)(a)のDNA分子の相補体と、試験DNA分子をハイブリダイズし、試験DNA分子を単離することにより生成される、単離された核酸分子。
  13. (a)又は(b)に対して少なくとも約80%の配列同一性を有する請求項12に記載の単離された核酸分子。
  14. 請求項1ないし13のいずれか1項に記載の核酸分子を含んでなるベクター。
  15. ベクターにより形質転換された宿主細胞により認識される制御配列に、前記核酸分子が作用可能に結合させられた、請求項14に記載のベクター。
  16. 受託番号1874−PTA(DNA173920−2924)でATCCに寄託された核酸分子。
  17. 請求項16に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
  18. 前記細胞がCHO細胞である、請求項17に記載の宿主細胞。
  19. 前記細胞が大腸菌である、請求項17に記載の宿主細胞。
  20. 前記細胞が酵母細胞である、請求項17に記載の宿主細胞。
  21. 請求項17に記載の宿主細胞を前記GLM−Rポリペプチドの発現に適した条件下で培養し、細胞培地から前記GLM−Rポリペプチドを回収することを含んでなる、GLM−Rポリペプチドの生成方法。
  22. 図2(配列番号2)の約1又は約20から約732のアミノ酸残基の配列に対し、少なくとも約80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたGLM−Rポリペプチド。
  23. 図2(配列番号2)の1又は約20から約732のアミノ酸残基を含んでなる、請求項22に記載の、単離されたGLM−Rポリペプチド。
  24. 2000年5月16日にATCC寄託番号1874−PTA(DNA173920−2924)でATCCに寄託されたベクターのcDNA挿入断片によりコードされるポリペプチドに対し、少なくとも約80%の配列同一性を有する、単離されたGLM−Rポリペプチド。
  25. 2000年5月16日にATCC寄託番号1874−PTA(DNA173920−2924)でATCCに寄託されたベクターのcDNA挿入断片によりコードされる、請求項24に記載の単離されたGLM−Rポリペプチド。
  26. 図2(配列番号2)の1又は約20から約732のアミノ酸残基配列、あるいは、抗GLM−R抗体に結合部位を提供するのに十分なその断片を含んでなる、単離されたGLM−Rポリペプチド。
  27. (i)ストリンジェントな条件下で、(a)図2(配列番号2)の1又は約20から約732のアミノ酸残基配列を含むGLM−Rポリペプチドをコード化するDNA分子、或いは(b)(a)のDNA分子の相補体と、試験DNA分子をハイブリダイズさせ、(ii)前記ポリペプチドの発現に適した条件の下で前記試験DNA分子を含む宿主細胞を培養し、(iii)細胞培養物から前記ポリペプチドを回収することにより生成される、単離されたポリペプチド。
  28. 前記試験DNAが、(a)又は(b)に対して少なくとも約80%の配列同一性を有する、請求項27に記載の単離されたポリペプチド。
  29. 異種アミノ酸配列に融合されたGLM−Rポリペプチドを含んでなるキメラ分子。
  30. 前記異種アミノ酸配列はエピトープタグ配列である、請求項29に記載のキメラ分子。
  31. 前記異種アミノ酸配列は免疫グロブリンのFc領域である、請求項29に記載のキメラ分子。
  32. GLM−Rポリペプチドに特異的に結合する抗体。
  33. 前記抗体がモノクローナル抗体である請求項32に記載の抗体。
  34. 前記抗体がヒト化抗体である請求項32に記載の抗体。
  35. 前記抗体が抗体断片である請求項32に記載の抗体。
  36. GLM−Rポリペプチドのアゴニスト。
  37. GLM−Rポリペプチドのアンタゴニスト。
  38. 製薬的に許容される担体と混合されて、(a)GLM−Rポリペプチド、(b)GLM−Rポリペプチドのアゴニスト、(c)GLM−Rポリペプチドのアンタゴニスト、又は(d)抗GLM−R抗体を含有する組成物。
  39. (a)図2(配列番号2)のアミノ酸1からX(ここで、Xは図2(配列番号2)の510ないし519のいずれかのアミノ酸である)をコードするDNA分子、或いは(b)(a)のDNA分子の相補体に対して、少なくとも約80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子。
  40. (a)図2(配列番号2)のアミノ酸1からX(ここで、Xは図2(配列番号2)の510ないし519のいずれかのアミノ酸である)をコードするヌクレオチド配列、或いは(b)(a)のヌクレオチド配列の相補体を含んでなる、請求項39に記載の単離された核酸分子。
  41. 図2(配列番号2)のアミノ酸1からX(ここで、Xは図2(配列番号2)の510ないし519のいずれかのアミノ酸である)に対して少なくとも約80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離された可溶性GLM−Rポリペプチド。
  42. 図2(配列番号2)のアミノ酸1からX(ここで、Xは図2(配列番号2)の510ないし519のいずれかのアミノ酸である)を含んでなる、請求項41に記載の単離された可溶性GLM−Rポリペプチド。
  43. a)GLM−Rの試料に候補生物活性剤を添加し、
    b)前記GLM−Rに対する前記候補剤の結合性を決定することを含み、結合がGLM−Rに結合可能な生物活性剤を示す、GLM−Rに対する結合能を有する生物活性剤のスクリーニング方法。
  44. a)GLM−Rの試料に候補生物活性剤を添加する工程と、
    b)GLM−Rの生物学的活性における変化を決定する工程を含み、変化がGLM−Rの活性を調節可能な生物活性剤を示す、GLM−Rの活性を調節する能力を有する生物活性剤のスクリーニング方法。
  45. GLM−Rのレセプターの同定方法において、細胞膜物質を含む組成物にGLM−Rを組み合わせ、前記GLM−Rを前記細胞膜物質上でレセプターと複合体化させ、前記レセプターをGLM−Rレセプターとして同定することを含んでなる方法。
  46. GLM−Rが前記レセプターに結合し、前記GLM−Rとレセプターを架橋させる工程を更に含む、請求項44に記載の方法。
  47. 前記組成物が細胞である、請求項44に記載の方法。
  48. 前記組成物が細胞膜抽出調製物である、請求項44に記載の方法。
  49. GLM−Rをコード化する導入遺伝子を含むゲノムを有する齧歯動物。
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