JP2005515749A - 酵母中での異種たんぱく質の高効率生産のための方法および組成物 - Google Patents
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Abstract
本発明は、異種たんぱく質が正しく折返されないことに関連する従来の問題を解決することにより、酵母および他の菌類における異種たんぱく質の効率的生産を可能にする方法および組成物を提供するものである。本発明によれば、折返し不良たんぱく質を退化のため細胞質ゾルに戻す菌類による品質管理機構を操作し、これらのたんぱく質が代わりに分泌されるようにするものである。
Description
【0001】
(技術分野)
本発明は、概略的に分子生物学の分野に関する。特に、本発明は、小胞体による処理によりたんぱく質を操作することにより酵母および他の菌中で異種たんぱく質を高効率で生産する新規な方法に関する。本発明の方法は異種たんぱく質の大規模生産に使用することができる。本発明はこのような方法に限らず、そのための新規なベクターにも関係する。
【0002】
(背景技術)
遺伝子操作技術の発展により、微生物を用いて有用なたんぱく質を大量に生産することが可能になった。大腸菌又は枯草菌のような原核生物はその明確に確立された遺伝的性質のため宿主として広く使用されている。しかし、薬理学的に興味のある生物学的分子の殆どは真核生物細胞から分泌されるたんぱく質であり、これは原核生物から生産しようとする場合は、しばしば機能しない。従って、好ましい真核生物たんぱく質、例えばホルモン、抗体、凝固因子、プロテアーゼ、酵素、成長因子、並びにワクチンに使用される病原体の阻害剤および分子を工業的規模で生産する場合に問題となっている。理想的には、発酵により安価に生育できる微生物を用いてこれらの分子を生産することであるが、バクテリアなどの発現システムは真核生物により用いられる分泌器官に欠け、従って、この種のたんぱく質を正しく合成することができない。
【0003】
酵母、真核生物の単一細胞として、この問題に対して極めて有望なものと思われる。なぜならば、酵母は全ての真核生物に共通の正常な分泌路を有しているからである。しかし、このアプローチは部分的な成功にしか繋がっていない。なぜならば、異種たんぱく質の殆どが誤って局在化されたり、正しく折り返しされていないからである。正しく局在化させる1つの方策は、異種たんぱく質の輸送を方向付ける内生信号シーケンスを小胞体に融合させることであり、これは分泌路の第1のステップである。これにより局在化の問題の解決に役立つことになるが、内生信号シーケンスの助けで殆どの異種たんぱく質を正しくその区分に輸送させたとしても、依然として正しく折り返されないでいる。このような状況下で、哺乳類組織培養を用いた合成法が唯一の実際的選択となっていた。残念ながら、そのための生育媒体および必要な装置は非常に高価であり、複雑な選択となる。
【0004】
酵母は更に安全性が高い。なぜならば、サッカロミケスはアルコール製品およびパンなどの発酵製品の製造に古くから使用されてきたからである。酵母は一般に、バクテリアよりも高い細胞密度で培養され、更に連続方式で行われる。更に、イーストは培養基に輸送されたとき、分泌されたたんぱく質の糖たんぱく質化を促進させ、この変性に必要なたんぱく質の活性を保存させる。しかし、他の微生物から分泌された多くのたんぱく質がイースト中で活性たんぱく質をなぜ生産できないかがなぞのままであり、この種のタイプのたんぱく質のための不確実な発現システムもそのまま残されたものとなる。
【0005】
上記説明から明らかなように、たんぱく質の誤折返し(misfolding)(不完全な折り返し、又は折返し不良)の問題を生じさせることなく、イースト中での生産の利点を生かすことができる効果的で、簡便で、かつ、迅速な形質転換システムの開発の必要性が依然として存在する。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記要望を達成し得るイーストのための形質転換方式を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、バクテリアに適用されるような形質転換法を異種たんぱく質の商業的生産のために適用可能なメカニズムを提供することである。
【0008】
本発明の更に他の目的は、このような形質転換プロコールに使用するためのポリヌクレオチド構成、ベクター、形質転換細胞を提供することである。
本発明の他の目的は以下の本発明の記述から明らかになるであろう。
【0009】
(発明の概要)
この方法は、酵母の遺伝的改良を可能にし、商業的に重要なたんぱく質製品、例えばヒトの成長ホルモンなどの大規模生産のための生物発酵剤として容易に使用することができる。本発明は、多くの異種たんぱく質が折返し不良を生じさせていた酵母発現システムと関係する従前の問題を解決することにより、酵母中での異種分泌たんぱく質の正しい合成を促進させるものである。更に、本発明は、酵母の発現が或る程度の成功を収めたたんぱく質の収率および活性を改善するものである。すなわち、本発明は、元の宿主微生物中で合成されたたんぱく質とより類似(同一でないとしても)する異種たんぱく質の生産を酵母中で可能とするものである。
【0010】
本発明の形質転換法を用いることにより、当該分野で公知であって、バクテリア、植物および動物に対し日常的に適用されてきた遺伝子工学技術を酵母に対し遺伝子的に操作し、組換えたんぱく質の収集のための生産に利用することができる。
【0011】
本発明によれば、誤折返しの(misfolded)たんぱく質を細胞質ゾルに戻し退化させるところの酵母による品質管理機構が操作され、従って、このようなたんぱく質が代わりに分泌される。本発明の好ましい態様において、受容酵母細胞が使用され、これを操作することにより、O−グリコシル化物又はSec13族の副路(Bypass of Sec Thirteen families)と関連する酵素が抑制される。品質管理の一部として、酵母特異的修飾を有するたんぱく質が除去される。O−グリコシルかの抑制は、正しくない酵母特異的修飾を防止し、それにより酵母の品質管理機構を避けることができる。本発明によれば、欠失突然変異株などの本発明の受容宿主細胞、アンチセンス又はこれらの酵素族の調節経路に含まれる酵素の外因性アゴニスト又はアンタゴニストの管理さえも発生させるための任意の方法を使用することができる。
【0012】
本発明は更に、このようなトランスジェニック(形質転換)酵母から分離されたたんぱく質産物を含む新規な組成物を提供する。更に、この手法に用いられる発現構成体並びに、形質転換細胞、ベクター、これらを組み込んだ形質転換酵母細胞なども提供するものである。好ましい態様において、酵母中にて形質転換たんぱく質の生産を容易にするように新規なベクターが設計されている。
【0013】
定義:
本発明の組成物、方法に関係する種々の用語が使用されているが、この明細書および請求の範囲全体に亘って、特に断りのない限り、その意味は以下に定義する通りである。
【0014】
種々の単位、接頭語、記号はそれぞれ認められたSI単位系で表されている。特に断りのない限り、核酸は5′末端から3′末端に向って左から右に記載され;アミノ酸配列はアミノ基からカルボキシル基に向かって左から右にそれぞれ記載されている。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含み、その規定された範囲内の各整数を含むものである。アミノ酸は、IUPAC−IUB生化学命名委員会により推薦された一般に公知の3文字記号又は1文字記号で参照されている。同様に、ヌクレオチドも一般に認められている単一文字コードにより参照されている。特に別途与えられていない限り、ここに記載されているソフトウエア、電気および電子用語は文献、The New IEEE Standard Dictionary of Electrical and Electronics Terms (5版、1993)に定義されているものである。以下に定義する用語は明細書全体を参照することにより、より完全に定義づけられるものである。
【0015】
“アンチセンス・オリゴヌクレオチド”とは、少なくとも6個の連続的ヌクレオチドの分子であり、これはDNA(アンチジーン)又はRNA(アンチセンス)に対し相補的であり、内因性たんぱく質の転写又は翻訳のプロセスと干渉し、従って遺伝子産物が抑制される。
【0016】
“クローニングベクター”は、DNA分子、例えばプラスミド、コスミド、バクテリオファージであり、これはホスト(宿主)細胞にて自律複製する能力を有する。クローニングベクターは典型的には、1又は小数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含み、この部位で、ベクターおよびクローニングベクターで形質転換された細胞の認識および選択に使用するのに適したマーカー遺伝子の基本的生物学的機能を失うことなく確定可能な形式で異質のDNA配列が挿入される。このマーカー遺伝子は、典型的なものとして、ハイグロマイシン、テトラサイクリン、アンピシリンなどの抗生物質に対し抵抗を示すものが含まれる。
【0017】
“コーデング・シーケンス”又は“コーデング領域”とは、シーケンスが発現されたとき、遺伝子産物を生産するのに必要なシーケンス情報を有する核酸分子を指すものである。
【0018】
“少なめに修飾された変異型”の用語は、アミノ酸および核酸配列の双方に適用される。特定の核酸配列に関し、少なめに修飾された変異型は、アミノ酸配列の同一の変異型又は少なめに修飾された変異型をコード化する核酸を指す。遺伝暗号の同義性のため、多数の機能的に同一な核酸が或る与えられたたんぱく質をコード化する。例えば、コドン、GCA、GCC、GCGおよびGCUは全てアミノ酸、アラニンをコード化する。すなわち、アラニンがコドンにより特定されるところの全ての位置において、コード化されたポリペプチドを変化させることなく、コドンは記述された対応する任意のコドンに変化し得る。このような核酸変異は“サイレント変異”であり、少なめに修飾された変異の1つの種を表している。遺伝暗号を参照することによりポリペプチドをもコード化するこの場合の核酸配列の全ては、核酸の全ての可能なサイレント変異を記述するものである。核酸中の各コドン(通常、メチオニンのための唯一のコドンであるAUG および通常、トリプトファンのための唯一のコドンであるUGGを除く)を修飾することにより機能的に同一の分子を生産し得ることは当業者であれば認識し得るであろう。従って、本発明のポリペプチドをコード化する核酸の各サイレント変異は、記述された各ポリペプチド配列中に暗示されており、本発明の範囲に含まれるものである。
【0019】
アミノ酸配列に関し、核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はたんぱく質配列に対する個々の置換、削除、又は追加であって、コード化シーケンスにおいて単一のアミノ酸又はアミノ酸の僅かな割合を変更、追加、又は削除するものは“少なめに修飾された変異型”であり、この変化はアミノ酸を化学的に類似するアミノ酸で置換することになる。すなわち、1ないし15からなる整数の群から選択されるアミノ酸残渣の任意の数のものがそのように変更される。従って、例えば、1,2,3,4,5,7および10個の変更が可能である。
【0020】
少なめに修飾された変異型は一般に、それらが得られた元の非修飾ポリペプチド配列と同様の生物学的活性を与える。例えば、基質特異性、酵素活性又はリガンド/レセプター結合性はその生来の基質についての生来のたんぱく質の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%である。機能的に同様のアミノ酸を与える保守的(conservative)置換表は周知である。
【0021】
以下の6つのグループは夫々互いに保守的(conservative)置換であるアミノ酸を包含している:
1)アニリン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、ワセリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
更に、Creighton(1984)Proteins W.H. Freeman and Companyを参照のこと。
【0022】
“共抑制”の擁護は、微生物中での遺伝子の発現を抑制する方法であり、この場合、構成物(construct)が微生物に導入される。この構成物は常在性遺伝子と同一、又は常在性遺伝子とヌクレオチド相同を分ち合う配列の1又はそれ以上のコピーを有している。
【0023】
特定の核酸について“コード化する”又は“コード化された”とは、特定のたんぱく質への翻訳のための情報を有することを意味する。たんぱく質をコード化する核酸は、その核酸の翻訳された領域内に非翻訳シーケンス(例えばイントロン)を含むこともあり、又はこのような介入的非翻訳シーケンス(例えば、cDNAのように)に欠けることもある。たんぱく質がコード化される情報はコドンの使用により特定される。典型的なものとして、アミノ酸配列は“ユニバーサル”遺伝暗号を用いて核酸によりコード化される。しかし、ユニバーサル遺伝暗号の変異型、例えば或る種の植物、動物、ミトコンドリア菌、マイコプラズマ・カプリコラム(Mycoplasma capricolum)又は繊毛虫に存在するようなもの、は核酸がその中に発現されているときに使用することができる。
【0024】
核酸が合成的に製造され又は変更されるとき、核酸が発現される目的の宿主の公知のコドンを選択することが好ましい。例えば、本発明の核酸配列は植物および菌種の双方に発現させることができるが、配列を特定のコドン選択およびGCコンテント選択(GC content preferences)の為に修飾することができる。なぜならば、ここに引用した参照文献に記載されているように、これらの選択物は異なるものであるからである。
【0025】
“発現”の用語は、遺伝子産物の生合成を指している。構造的遺伝子発現はmRNAへの構造遺伝子の転写およびこのmRNAから1又はそれ以上のポリペプチドへの翻訳が含まれる。
【0026】
“発現ベクター”とは、宿主細胞に発現されている遺伝子を含むDNA分子である。典型的には、遺伝子発現はプロモータ、組織特異的調節因子およびエンハンサーを含む或る種の調節因子の制御下に置かれる。このような遺伝子は調節因子に“操作可能に連結”されていると言われている。
【0027】
ここで使用されているところの、核酸との関連での“異種”とは、外来種に由来する核酸であり、同一種から由来するものとすると、それは故意的なヒトの介入による組成および/又はゲノム座に関しての生来の形態から実質的に修飾されたものである。例えば、異種構造遺伝子に操作可能に連結されたプロモータは、その構造遺伝子が得られたものとは異なる種からのもの、又は同一種から由来するものとすると、その本来の形態から実質的に修飾されたものとなる。異種たんぱく質は外来種からのもの、又は同一種から由来するものとすると、それは故意的なヒトの介入により本来の形態から実質的に修飾されたものとなる。
【0028】
ここで用いられている“高厳格性”とは、以下に相当する条件又はハイブリッド形成を意味する。すなわち、50%ホルムアミド、5X SSPE, 2% SDS, 10Xデンハルト(Denhardt't)溶液、および100μg/mLサケ精子DNAを含む緩衝液中に42℃で12時間ハイブリッド化し、55℃で0.1X SSC, 0.1% SDSにより洗浄し、Kodak X-Omat ARフィルムに−70℃で4日間 露出させる。
【0029】
“宿主細胞”とは、ベクターを含み、ベクターの複製および/又は発現を支持する細胞を意味する。宿主細胞は大腸菌のような原核生物細胞、又は菌類、昆虫、両生類又は哺乳類細胞のような真核生物細胞であってもよい。好ましい宿主細胞は菌類細胞である。
【0030】
核酸を細胞に挿入する文面における“導入した”の用語は、“トランスフェクション”、“形質転換” 又は“トランスダクション(形質導入)”を意味し、真核生物細胞又は原核生物細胞への核酸の組み入れを参照する場合も含み、この場合、核酸は細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、色素体又はミトコンドリアDNA)中に組み込まれ、自律リプリコンに変換され、又は過渡的に発現される(例えば、感染mRNA)。
【0031】
“ポリヌクレオチド構成”又は“DNA構成”の用語は、発現構成を指す場合に時折用いられる。しかし、これは更に、生来の宿主細胞配列又は例えばウイルスの見られるものに相当する外因性配列の共抑制のために設計されたアンチセンス・オリゴヌクレオチド又はヌクレオチドを含むものである。
【0032】
“操作可能に連結された”の用語は、コード化シーケンスの発現のために必要な調節シーケンスがコード化シーケンスとの関連で核酸分子の適当な位置に配置され、コード化シーケンスの発現を可能にすることを意味している。これと同一の定義が、発現ベクター内での他の転写制御因子(例えば、エンハンサー)のシーケンスにも適用される。
【0033】
転写および翻訳制御シーケンスはDNA調節シーケンス、例えば、プロモータ、エンハンサー、ポリアデニル化信号、ターミネイターなどであり、これらは宿主細胞中でのコード化シーケンスの発現のために提供される。
【0034】
ここで使用されている“ポリヌクレオチド”は、デオキシリボポリヌクレオチド、リボポリヌクレオチド又はこれらの相似体であって天然のリボポリヌクレオチドの基本的性質を有し、厳密なハイブリッド化条件のもとで、天然のヌクレオチドと実質的に同様のヌクレオチド配列にハイブリッド化され、および/又は、天然のヌクレオチドと同様のアミノ酸に翻されるものをも指す。ポリヌクレオチドは、天然又は異種構造又は調節遺伝子の全長のもの、又は部分列のものであってもよい。特に指示しない限り、この用語は特定の配列およびその相補的配列を包含するものである。従って、ポリヌクレオチドのように、安定性又はその他の理由により修飾された主鎖を有するDNA又はRNAの用語はその意味で使用されている。更に、2つの例を挙げて説明すると、通常でない塩基、例えばイノシン、又は修飾された塩基、例えばトリチル化塩基は、ここで用いられる用語として、双方ともポリヌクレオチドである。DNA又はRNAに対し、非常に多くの修飾がなされており、これらは当業者に公知にように多くの有用な目的に役立つものである。ここで使用されるポリヌクレオチドの用語は、そのように化学的、酵素学的又は代謝的に修飾されたポリヌクレオチドの形態を包含し、更に、ウイルスおよびなかんずく単純および複雑な細胞を含めた細胞の特徴を表すDNA又はRNAの化学的形態をも包含する。
【0035】
本明細書に互換的に使用されている“ポリペプチド”、“ペプチド”又は“たんぱく質”の用語は、アミノ酸残基のポリマーを指している。これらの用語は、アミノ酸残基の1又はそれ以上が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学的類似体であるアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマーにも適用される。天然に存在するアミノ酸のこのような類似体の基本的性質は、たんぱく質に組み込まれたとき、そのたんぱく質は抗体に対し、つまり、同一のたんぱく質に対し引き出されたものであるが、天然に存在するアミノ酸で全体的に構成される抗体に対し特に反応的となる。これら“ポリペプチド”、“ペプチド”又は“たんぱく質”の用語は、限定的ではないが、ホスホリル化、グリコシル化、脂質付加、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマーカルボキシル化、ヒドロキシル化、およびADP−リボシル化などを含む修飾をも含まれる。公知のように、又は上記のように、ポリペプチドは全体が線状的なものではない。例えば、ポリペプチドはユビキチン化のため、分岐状であったり、あるいは、翻訳後処理、例えば天然の処理事象、天然には生じないヒトの操作による事象の結果、一般に生じるところの分岐鎖を有する又は有しない環状のものとなる。環状、分岐状、分岐環状ポリペプチドは非翻訳の自然のプロセスにより、又は完全な合成法により合成することができる。更に、本発明は、本発明のたんぱく質のメチオニン含有およびメチオニン非含有末端アミノ基変異体を包含するものである。たんぱく質に関し、“N−末端領域”とは、たんぱく質の末端アミノ基に隣接する約50個のアミノ酸を含む領域である。
【0036】
“プロモータ”、“プロモータ領域”又は“プロモータ配列”の用語は、一般に、遺伝子の転写調節領域を指し、コード化領域の5′又は3′側、又はコード化領域内、又はイントロン内で見られる。一般に、プロモータは、細胞内でRNAポリメラーゼを結合することができ、かつ、下流側(3′側)コード化シーケンスの転写を開始し得るDNA調節領域である。典型的な5′プロモータ配列は、3′末端で転写開始部位により境界が限られ、上流に向けて延び(5′方向)、背景以上の検知可能なレベルで転写を開始するのに必要な塩基又は因子の最小数を含む。プロモータ配列内には転写開始部位(ヌクレアーゼS1を用いたマッピングで都合よく規定できる)並びに、RNAポリメラーゼの結合の原因となるたんぱく質結合領域(コンセンサス配列)がある。このプロモータの用語は、上記配列の基本的調節特性を含み、かつ、翻訳開始部位の前の長い末端繰返し領域を適宜包含する。
【0037】
“組換え宿主”は、クローニングベクター又は発現ベクターのいづれかを含む原核生物細胞又は真核生物細胞のいづれであってもよい。この用語は、更に、宿主細胞の染色体又はゲノム中にクローン遺伝子を含むように遺伝子的に処理した原核生物細胞又は真核生物細胞であってもよい。
【0038】
“レポータ遺伝子”の用語は、標準的方法で直接的又は間接的に容易に検知することができる産物をコード化できる遺伝子を指す。
【0039】
“選択可能なマーカー遺伝子”の用語は、形質転換細胞に対する抗生抵抗のような選択可能な表現型を、発現の際に、付与する産物をコード化する遺伝子を指す。
【0040】
オリゴヌクレオチド又は他の単一ストランドの核酸分子に関して、“特異的にハイブリッド化する”の用語は、十分に相補的な配列の2つの単一ストランドの核酸分子間の会合を指し、そのハイブリッド化が当該分野で一般に用いられている所定の条件下で、すなわち、厳密な条件下(時折、“実質的に相補的”と呼ばれる)で可能であることを意味する。特に、この用語は単一ストランドのDNA又はRNA分子内に含まれる実質的に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドのハイブリッド化を指し、非相補的な配列の単一ストランドの核酸を有するオリゴヌクレオチドのハイブリッド化を実質的に除外するものである。
【0041】
“構築遺伝子”の用語は、メッセンジャーRNA(mRNA)に転写されたDNA配列を指し、これは次に特定のポリペプチドの特徴を示すアミノ酸配列に翻訳される。
【0042】
“ベクター”は、リプリコン、例えばプラスミド、ファージ、コスミド、ウイルスを指し、これに対し他の核酸セグメントが操作可能に挿入され、このセグメントの複製および発現を生じさせる。
【0043】
(図面の説明)
図1は、酵母におけるKHNの発現を示す写真図。ここでKHNは野生型細胞およびER関連退化突然変異体cue1として表されている。これら細胞を35Sアミノ酸でパルス標識付けし、図示の時間に亘って追跡した。ついで、KHNを洗浄溶解物から免疫沈降し、SDS−PAGEにより溶解し、更にオートラジオグラフィにより可視化した。
【0044】
図2は、 エンドグリコシダーゼHを用いてKHNからのN結合糖の除去を示す写真図である。cue1細胞に表されたKHNを35Sアミノ酸でパルス標識付けし、図示の時間に亘って追跡した。ついで、KHNを免疫沈降させ、エンドHを用いて処理又はモック(mock)処理した。次いで、KHNをSDS−PAGEにより溶解し、更にオートラジオグラフィにより可視化した。
【0045】
図3は、O-結合グリコシル化により修飾したKHNを示す写真図である。ここでKHNはcue1、pmt2およびpmt1突然変異体菌株で表されている。細胞をパルス標識付けし、記載されているように追跡した。ついで、KHNを免疫沈降させ、図1のように分析した。
【0046】
図4は、BST1遺伝子およびPMT2遺伝子についての細胞突然変異体を示すグラフ図であって、野生型との比較においてKGFP活性が劇的に改善されたことを示している。平均蛍光強度はΔbst1細胞については5倍であり、Δpmt2細胞については9倍となっている。
【0047】
図5は、KGFP-発現細胞の蛍光顕微鏡写真図である。ここで、KGFPを発現する野生型およびpmt2突然変異細胞は、Spot IIデジタルカメラと連動させたZeiss Axioplanエピ蛍光顕微鏡を用いて写した。露光時間は図示の通りである。
【0048】
図6は、KHNは急速に退化されたたんぱく質であり、これはGolgi器官に輸送される。(A)KHNを発現する野生型およびΔcue1細胞は[35S]メチオニン/システインを用い30で10分間、代謝的にパルス標識付けし、図示の時間に亘って冷間追跡した。KHNを抗HNポリクローン抗血清を用い洗浄溶解物から免疫沈降し、10%SDSポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により溶解させた。指示した箇所において、N−結合炭水化物を免疫沈降したたんぱく質中にて500UエンドグリコシダーゼH(エンドH)を用いて3時間、培養することにより除去した。非特異的に免疫沈降したたんぱく質の位置は星印で示している。(B)KHNを発現する野生型Δpmt1細胞およびΔpmt2細胞を上記(A)について記載したのと同様に分析した。(C)KHNを発現する野生型、sec12-4およびsec18-1細胞を22℃で対数期で生育させ、37℃でシフトさせた。30分後、細胞をパルス標識付けし、図示の時間に亘って追跡した。KHNを免疫沈降し、上記(A)について記載したのと同様に分析した。KHNp1およびKHNp2型の位置は指示され(A)、矢印がp1型の位置を示している(BおよびC)。
【0049】
図7は、KHNtはERAD経路による退化のための基板である。(A)KHNtを発現する野生型および突然変異菌株を[35S]メチオニン/システインを用いて10分間、パルス標識付けし、図示の時間に亘って冷間追跡した。KHNtの免疫沈降を抗HAモノクローン抗体(HA.11:BabCo)を用いて行い、トータルTCA析出可能カウントにより正規化した。たんぱく質をSDS−PAGEにより分析し、更にオートラジオグラフィにより可視化した。(B)上記Aについて記載した実験を、Aに示したオートラジオグラムを発生させたのと同一のゲルを用いたホスホリルマーガー(phosphorlmager)分析により定量した。(C)野生型およびERAD突然変異体中におけるKHNtの相対定常状態レベルをイムノブロッテングにより分析した。細胞溶解物(細胞の0.2OD600当量)の等量を各レーンに負荷させ、電気泳動により分離し、ニトロセルロースに移し、HA.11モノクローン抗体を用いて調べた。たんぱく質をケミルミネセンス(Pierce Chemical社)を用いて可視化した。(D)野生型およびERAD突然変異細胞のKHN+の免疫局在化を、固定および浸透化細胞を用いグラススライド上にて行った。KHNtおよびBiPを、α‐HAモノクローン抗体およびα‐Kar2pポリクローン抗血清を夫々用いて検出した。蛍光二次抗体の結合の後、KHNtをレッドチャンネル(a,bおよびc)中にて可視化し、BiPをグリーンチャンネル(d,eおよびf)中にて可視化した。各チャンネルにおいて、画像を同一の露出時間で捕捉した。バー(Bar)は2μm。
【0050】
図8は、ER-to-Golgi輸送が、可溶性であるが非膜結合のERAD基質(substrate)の退化のために必要である。(A−D)野生型およびER輸送突然変異菌株sec12-4およびsec18−1発現HA標識付きERAD基質を22℃で対数繁殖期で生育させ、37℃の制限温度で30分間、シフトさせた。更に、図7に示す説明例に従った時経歴を実行、分析した。データは種々の菌株背景における各基質2ついて退化の速度を比較するためにプロットした。Δcue1菌株をSte6-166pおよびSec61-2pについてのポジティブ対照として含めた。
【0051】
図9は、可溶性ERAD基質をCOPII小胞に含ませた。再構成COPII出芽反応を、KHNt(A)、CPY* HA(B)およびSte6-166p(C)を発現する野生型から分離したER膜上で行った。Tの標識付けレーンは出芽反応で使用した全薄膜の10分の1を表し、マイナス(−)レーンは、精製COPII成分のない状態で形成された小胞の量を示し、プラス(+)レーンは、COPIIたんぱく質を加えたときに生産された小胞を示している。全薄膜および出芽小胞を遠心分離により収集し、ポリアクリルアミド・ゲルを用いて溶解させ、標識たんぱく質について免疫ブロットを行った(immunoblotted)。グリコ・プロ・α-ファクター(gpαf)を蛍光間接撮影法を用いて検出した。
【0052】
図10は、Ste6-166pを除いて、KHNt(A)、CPY* HAの退化にはGolgi-to-ER輸送を必要とする。菌株を22℃で対数繁殖期で生育させ、33℃にシフトさせた後、直ちにパルス-標識付けした以外は、図2に示す説明例に記載のようにして、パルス-追跡分析を野生型およびsec21-1菌株発現(A)KHNt、(B)CPY* HAおよび(C)Ste6-166pについて行った。33℃での培養を冷間追跡のために継続した(時間は図示の通り)。ゲルはオートラジオグラフィ(左側)により可視化し、ホスホリルマーガー分析(右側)により定量した。Cにおいて、このゲル像はホスホリルマーガー走査によるものである。
【0053】
図11は、per17-1は回復経路に特異的な突然変異体であり、正しく折返されたたんぱく質を除く、誤折返したんぱく質の輸送を阻止するものである。(A)野生型およびper17-1細胞中のKHNt、CPY* HA、Ste6-166pおよびSec61-2pの代謝回転を、図7に示す説明例に従って代謝パルス-追跡分析により測定した。実験はSec61-2pを発現する菌株を除いて、30℃で行った。Sec61-2pを発現する菌株は30℃で対数繁殖期で生育させ、37℃の温度で30分間、シフトさせ、パルス-追跡を継続して行った。(B)Aで示すKHNt時経歴のゲルから発生した放射能写真が一番上に示されている。p1(ER)およびp2(Golgi)型の位置が示されている。内因性CPYおよびGas1pが、KHNt時経歴から作られたライゼート(溶菌液)の少量から平行して免疫沈降された。たんぱく質はゲル電気泳動により分離され、オートラジオグラフィ(P1,ER proCPY; P2,Golgi proCPY; mCPY,マチュアCPY;ER Gas 1p, Gas 1pのER型;mGas 1, マチュアGolgi修飾Gas 1p)により可視化させた。(C)野生型およびper17-1細胞を10分間、パルス標識付けし、図示した時間に亘り追跡を行った。CPSおよびALPを免疫沈降させ、ゲル電気泳動により分析し、更にオートラジオグラフィを行った。各たんぱく質のpro(proCPSおよびproALP)およびマチュア(mCPSおよびmALP)型が示されている。
【0054】
図12は、誤折返したんぱく質のper17-1細胞における免疫局在化。(A)KHNt(a-c)およびCPY* HA(d-f)を発現するper17-1細胞およびCPY* HA(g-I)を発現するΔder1細胞を固定し、対数培養から浸出させた。これらの細胞をα-HAおよびα-Kar2p抗体で染色し、ついでAlexa Fluor 546ヤギα-マウス(a,dおよびg)およびAlexa Fluor 488ヤギα-ラビット(b,eおよびh)二次抗体で染色した。DAPI(c,fおよびI)での染色により核の位置が示される。矢線は共局在化の特定位置を示している。(B)HAエピトープ標識付きSRβを発現する野生型およびper17-1細胞を、Aと同様に処理し、一次抗体に結合させた。Alexa Fluor 546ヤギα-ラビットおよびAlexa Fluor 488ヤギα-マウスを使用し、BiPをレッドチャンネル(aおよびd)で可視化させ、SRβをグリーンチャンネル(bおよびc)で可視化させた。バー(Bar)は2μM.
【0055】
図13は、出芽酵母におけるER品質管理の提案されたモデル。
転座の後、誤折返したんぱく質を保持経路(白色矢線)又は回復経路(黒色矢線)について選別する。回復経路においては、たんぱく質をCOPII小胞に包み込み、Golgi器官に輸送し、退化輸送経路を介して回復させる。ERにおいては、双方の経路の基質がERADに収斂される。たんぱく質はトランスロコン錯体を介してER膜を横切り、ユビキチン化(ubiquitination)により標識付けされ、サイトソル26Sプロテアソームにより退化される。
【0056】
図14は、pDN477、すなわち、酵母中に異種たんぱく質の高いレベルの発現を可能にする酵母発現ベクターのプラスミドマップである。メッセンジャーRNA合成が、強力なTDH3プロモータ(図示しない)により駆動される。それには、酵母BiP(KAR2)遺伝子からの信号シーケンス(‘SS')がふくまれ、これはcDNAをClal(5')およびXbal(3')部位へ挿入することによりたんぱく質の転座を共翻訳的(より哺乳類的)SRP分泌経路へと向けさせる。分泌を避けるため、又は内因性信号シーケンスを使用するため、コード化シーケンスがBamH1(5')およびXbal(3')部位へ挿入される。転写はACT1ターミネータにより終結される。ベクターは更に、酵母および複製(ARS1)および動原体(CEN4)の酵母起源における選択のためのURA3遺伝子を含んでいる。他のマーカーを備えた又はゲノムへの合体のためのpDN477の種々のバージョンについても入手可能である。
【0057】
発明の具体的説明:
本発明は、酵母中での分泌たんぱく質の折返しおよび熟成のプロセスを理解するための研究から発展したものである。この研究において、酵母分泌経路において多数の異種たんぱく質が発現された。最初のものはクラゲからのグリーン蛍光たんぱく質(GFP)であった。これを分泌経路に向けさせるため、Kar2pたんぱく質からの内因性酵母信号シーケンスをGFPの末端アミノ基に融合させた。Kar2pは酵母中のより“哺乳類”的SRP経路を利用し、この信号シーケンスはたんぱく質を特定の転座経路へ向けさせる。この信号シーケンスは、酵母特異的後転座経路を使用するところの一般に使用されているα-因子信号シーケンスとは反対に好ましい。更に、小胞体(ER)保持モチーフHDELがカルボキシル末端基に融合され、たんぱく質をERへ局在化させる。GFPはたんぱく質の折返しをモニターするのに理想的な分子である。なぜならば、その蛍光活性が正しいたんぱく質コンフォメーションに依存し、容易に測定することができるからである。発現された場合、KGFPと呼ばれるキメラたんぱく質は正しく局在化されるが、蛍光活性は非常に低く、ER中に正しく折り返されていないことを示唆している。この低い活性は分泌経路における発現に特異的である。なぜならば、ER転座突然変異体sec63を使用したサイトゾルにおける発現は鮮やかなサイトゾル蛍光を示すからである。なぜKGFPが酵母分泌経路において効果的に折り返さないかは明らかでない。
【0058】
これに対し、HNと呼ばれるサルウイルス5からの哺乳類ウイルス、グリコたんぱく質が発現したときに前進がなされた。HNが選択された理由は、その折返しが容易にモニターできるからである。酵母中にHNを発現させるため、ウイルス信号/アンカードメイン(酵母中には認められない)をKar2p信号シーケンスで置換した。KHLと呼ばれる得られたたんぱく質は、効果的にグリコシル化されたので(図1)、分泌経路に正しく標的させることができる。
【0059】
このたんぱく質は急速に退化された(図1)。これは、ERにおいて誤折返しされたたんぱく質に共通して発生する。これは、ER-関連たんぱく質退化に欠陥があるユビキチン化突然変異体cue1によりKHNが安定化されることを我々が見出したときに確認された(図1)。可動性の時間依存シフトも観察され、これは炭水化物(KHNはグリコたんぱく質である)の改質を示唆するものである。従って、このシフトが、エンドグリコシダーゼHでKHNを消化することによるN−結合炭水化物の改質によるものか否かをテストした。図2に示すように、このシフトは、KHN N-結合糖の改質によるものではない。他の可能性は、KHNがO−結合糖により改質されるということである。これは意外なことである。なぜならば、HNはその正常の哺乳類宿主においてN-結合糖によってのみ通常、改質されるからである。この可能性を、O−結合グリコシル化に欠陥がある酵母菌株にKHNを発現させることによりテストした。酵母において、O−結合グリコシル化がERで開始されるが、これはたんぱく質イムノシルトランスフェラーゼ(PMT)と呼ばれる遺伝子科の作用を介して行われる。意外にも、HNにおける改質がこれら突然変異体pmt1およびpmt2の2つにより阻止されることが本発明者により見出され、これによりKHNがO−結合グリコシル化により不適当に改質されることが示された(図3)。
【0060】
より高度の真核生物において、O−結合グリコシル化はまれな改質であり、これはGolgi器官において発生する。このように、全てのポリペプチドはO−結合糖の添加前に折り返される。対照的に、O−結合グリコシル化の最初のステップが酵母細胞のERにおいて発生する。しかし、何がO−結合グリコシル化を知らせるのかは知られておらず、殆どの異種たんぱく質がO−結合グリコシル化され得る可能性はある。従来知られていなかったので、本発明者は、O−結合グリコシル化によるER中での発生期のポリペプチドの不適当な改質が結合鎖の化学的性質を変化させ、潜在的に誤折返しを生じさせるものと仮定した。よくても、たとえ、たんぱく質が改質により折り返すことができたとしても、そのたんぱく質の活性および安定性は或る程度妥協するものとなるであろう。なぜならば、それが天然の形態のものと化学的に異なるからである。この仮定を検査するため、我々は我々のレポータ構成体KGFP(KHNはこの目的のためには余り理想的ではない。なぜならば、それが天然のHNの可溶性変種であって、哺乳類細胞における折返しについて部分的に妥協することになるからである)を用いて、この押返しに対するO−結合グリコシル化抑制作用を試験した。
【0061】
KGFPは野生型およびpmt突然変異細胞において酵母、TDH3プロモータにより発現された。KGFPが蛍光マーカーであるため、発光強度の変化を介して折返しをモニターすることができた。更に、エピ蛍光顕微鏡を用いてKGFPを発現細胞中に可視的に映し出すことができた。全ての場合において、KHNをERに正しく向けさせることができた。興味深いことに、pmt2は最も強い作用を示した。それは対照のものと比較して、より明るいER染色パターンを示した。他のpmt突然変異体4および3はより小さい作用を示した。蛍光活性の明らかな増大を定量氏、特徴づけるため、KGFPを発現する野生型およびpmt2突然変異細胞に対しフローサイトメトリーを行った。図4に示すように、pmt2細胞における蛍光活性は野生型細胞のものを超えた均一な増加を示した。その平均活性はpmt2突然変異体においてほぼ8.5倍高く(109.5ユニット対12.9ユニット)、bst1については、5.5倍の増加(71.4ユニット対12.9ユニット)を示した。この差異は固有の活性度の差によるものである。なぜならば、定量的パルス追跡分析により、発現レベルおよび安定性は双方の菌株において同様であることが判明しているからである。更に、直接蛍光鏡検法の結果、活性の劇的な改良が認められ、その改良がKGFPの誤局在化によるものでないことが示されたからである(図5)。
【0062】
これらのデータは、酵母中に発現された異種たんぱく質がO-結合グリコシル化により不適切に改質されたことを示している。言い換えれば、この改質はたんぱく質の熟成および活性化のマイナスの結果をもたらす。内因性信号シーケンスを用いた発現をO−結合グリコシル化に欠ける特定の突然変異菌株と結合させることにより、酵母に発現された異種たんぱく質の活性を劇的に改善することができることが本発明者等により確立された。酵母には6PMT遺伝子が存在し、これが重複するものでなく、基質特異性について差異を表すから、菌株から6個の遺伝子の任意のものを失欠することにより、異常型O−グリコシル化の望ましい抑制を達成することができる。更に、突然変異を、正しい折返しの促進のために組合わせることができる。すなわち、本発明者等は、酵母中の商業的に重要な分子の安価な発現の可能性を妨げていた問題を解消する新規な解決法を提供することに成功した。
【0063】
現在、準備規模でのたんぱく質の合成のための種々の発現システムが知られている。最も一般的な微生物である大腸菌は一般には、真核生物分泌たんぱく質の合成には有用ではない。なぜならば、そのバクテリア分泌が基本的に異なるからである。酵母システムはその使用が制限されたものとなっている。なぜならば、多くのたんぱく質は、先の未知の理由により忠実に合成されないからである。本発明によれば、ウイルス性グリコたんぱく質、SV5HNの可溶型で誤折返しをもたらしていたものを活用して上記問題の解決が図られている。本発明者等は、O−結合グリコシル化を抑制することにより(実施例では特定の突然変異菌株が示されているが、他の任意の抑制方法でも同様の効果が得られるものと思われる)、活性的異種たんぱく質の合成が劇的に向上することを明らかにした。更に、より“哺乳類的”である内因性共翻訳特異的(cotranslational-specific)信号シーケンスの使用も、酵母ERに対する正しい標的化のために好ましいものである。このアプローチはS.cervisiaeで開発されたが、これはS.pombeおよびS.pastorisを含む他の全ての酵母、更に他の菌にも適用することができる。なぜならば、これらは全て、ER中にてたんぱく質をO−グリコシル化する機構を共有しているからである。
【0064】
このシステムは広範な用途に供することができる。なぜならば、殆ど全ての異種たんぱく質(分泌性又は非分泌性)を合成することができるからである。例えば、これには抗体、ホルモン、成長因子およびインヒビター、毒素、凝固因子、酵素、免疫用たんぱく質などが含まれる。たんぱく質の大規模合成への適用に加えて、本発明は、酵母を、ヒトの病気に関係するたんぱく質を用いた研究および薬剤審査のための強力な研究道具として使用することを可能にするものである。例えば、嚢胞性繊維症膜貫通電気伝導調節因子(CFTR)、プリオンたんぱく質、アゴニスト又はアンタゴニストを選別するための細胞性レセプター、アルツハイマー病のβ‐アミロイド先駆物質たんぱく質の処理などに使用することができる。
【0065】
本発明によれば、酵母形質転換を、品質管理機構が抑制乃至操作された環境下で行われ、従って、GolgiおよびERにおける伝統的経路によりたんぱく質が退化されることはない。好ましい例として、受容細胞環境はO−グリコシルかが抑制されるような環境である。これは当業者にとって公知のアンチセンス(antisense)又はコサプレッション(cosuppression)の使用を介して、又はO−結合グリコシル化に関係する遺伝子中の突然変異機能を喪失した酵母宿主菌株の処理を介して達成することができる。好ましい例として、O−結合グリコシル化を遺伝子のPMT科を操作することにより抑制することができる。
【0066】
他の例として、品質管理機構をSec Thirteen遺伝子又は他の同様の機能を有する遺伝子のバイパスの突然変異又は抑制により操作することができる。
【0067】
アンチセンス又はコサプレッションは一般に知られ、かつ、使用されており、例えば、前述のAusebelらに記載されている。更に、受容酵母細胞ラインにおける突然変異を構築する技法も公知であり、Sambrookら(1989)に記載されているように標準的なものである。この技法の例として、統合的分断(Shortle,1982 Science 217:373,“Lethal Disruption of the Yeast Actin Gene of Integrative DNA Transformation”); 1工程遺伝子分断(Rothstein,1983 Methods Enzymol. 101:202-210,“One Step gene Disruption in Yeast”); PCR媒介1工程遺伝子分断(Baudinら,1993 Saccharomyces cerevisiae.Nucl.Acids Res. 21:3329-3330,“A Simple and Efficient Method for Direct gene Deletion in Saccaromyces cerevisiae”);転座(SchererおよびDavis,1979 PNAS. 76:4951-4955,“Replacement of Chromosome Segments with Altered DNA Sequences Constructed in vitro ”)などが含まれる。好ましい例として、Er品質管理の操作を用いた受容環境を、正しい品質管理に必要な遺伝子に欠ける失欠突然変異酵母又は菌受容菌株を処理することにより作ることができる。
【0068】
本発明の好ましい例において、上記遺伝子はByPass 又はSec 13(Thirteen)遺伝子(Elrod-EricksonおよびKaiser, 1996, Molecular biology of the Cell, 7:1043)である。他のそのような遺伝子を、同様の機能を有し、かつ、本発明に有用なBST科中の酵母中に同定し得ることが予想される。他の酵母BST遺伝子を他の種から公知のシーケンスを用いて同定することができ、それによりプローブを発生させ、公知の技術に従ってライブラリーでハイブリッド化する。この技術については本明細書に開示されており、かつ、文献、Ausubel, Protocols in Molecular Biology 1997, Wiley and Sonsにも開示されている。
【0069】
他の好ましい例において、受容酵母細胞を操作し、O-マンノシル化の抑制が行われる。これはO−結合グリコシル化経路において酵素を抑制することにより達成される。菌に最初に観察されたたんぱく質O-マンノシル化が小胞体で開始され、分泌たんぱく質のセリル又はトレオニル残基のドリコル活性化マンノースからマンノースの転写が行われる。この反応はたんぱく質O-マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)の科により触媒化される(Protein O-mannosylation, Biochimicaら、Biophysica Acta 1426(1999)297-307、Strahl-Bolsingerら)。
【0070】
好ましい例において、抑制される酵素は遺伝子のPMT科である。現在、6又はそれ以上のたんぱく質O−グリコシル化遺伝子PMT1-7が知られている(The PMT gene family: protein O-glycosylation in Saccharomyces cerevisiae is vital, The EMBO Journal Gentzsch et al, vol 15, no.21 pp.5752-5759 1996)。
【0071】
たんぱく質o-マンノシル化はO-結合グリコシル化における最初の工程であり、この経路における他の工程の抑制は本発明により同様の結果を与えるものと予想される(例えば、Hersgovicsら、”Glycoprotein Biosynthesis in Yeast", The FASEB Journal Vol. 7 1993 pgs 540-550参照)。これは、例えば、第3のマンノース残基の結合を助けるMNT/KRE2遺伝子科(KTR1およびYUR1)の抑制を含む。他のO-結合グリコシル化突然変異体を、ここに記載された計画案を使用して容易に調べることができ、本発明に従って働くことのできる他の突然変異体を日常のスクリーニングにより識別することができるであろう。
【0072】
酵母における組換えたんぱく質の製造を、本発明で開示された技法と、当業者に公知の種々の技法および手段とを組合わせて行うことができる。本発明は更に、ポリヌクレオチドの使用を含み、これはその発現が宿主菌細胞に好ましい構築遺伝子をコード化する。これらのポリヌクレオチドはしばしば、構築遺伝子およびしばしば終止配列に操作可能に結合されたプロモータ領域を組み入れた発現構築物の形をなしている。この構築物は遺伝形質転換たんぱく質を直接的に分泌させる信号シーケンスを含むものであってもよい。この構築物は通常、ベクター内に、プラスミドベクターを含み、このプラスミドベクターはバクテリア(クローニングベクター)内にベクターの複製および維持のための特徴、および宿主(発現ベクター)内に、選択可能なマーカー遺伝子および/又は組込みのための配列および/又は機能を含む。
【0073】
これらの成分の各々は、本発明で使用されるとき、本発明の範疇に含まれる。殆どの場合、別の手段が全てのプロセスの各段階において存在する。これらの手段の選択は変化要因に依存し、例えばプラスミドベクターシステムであって、組換えDNA分子乃クローニングおよび導入、改質されるべき酵母種、特定の構築遺伝子、プロモータ要素、使用される上流側要素などの選択されるものに依存する。当業者であれば、機能を達成するため、適当な別の手段を適宜選択することができるであろう。公知のように、多くの酵母種は形質転換可能であり、発酵性であり、従って、本発明に従うプロモータ分子の調整制御下で所望の遺伝子を含み、発現する細胞を得ることができる。
【0074】
以下のものは、本発明の方法を実施する際に使用される分子生物学的技法の非制限的全体像である。
本発明のポリヌクレオチド構築物は分子生物学の分野で周知の類似の要素を共有する。例えば、各構築物において、興味のあるDNAは、好ましくは酵母細胞にて機能するプロモータに操作可能に連結され(すなわち、確実に機能するために配置され)、それによりDNAを転写することができ(RNA転写へ)、更に複製システムを含むベクターを有するであろう。好ましい例として、興味のあるDNAは、外因源からのものであり、共抑制(co-suppression)が所望の計画案のものでない限り、内因性遺伝子の共抑制を防止するようになっている。
【0075】
酵母クローニングベクターおよび遺伝子:
酵母での複製モードに基づいて、一般に使用されている酵母は、5種類のカテゴリーに分類することができる。つまり、Yip, Yrp, Ycp, YTEpおよびYlpプラスミドである。Ylpプラスミド(酵母線状プラスミド)を除いて、全てのものは大腸菌、プラスミドベクターデベロップメント内に維持することができる。
【0076】
キメラプラスミドベクターの3つのタイプのものがStruhlらにより開発された(Struhl、K., 1979, "High-frequency transformation of yeast: autonomous replication of hybrid DNA molecules", Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:1035-1039): (i) Ylpプラスミド(酵母組込みプラスミド):受容菌株のゲノムに組み込まれることにより複製したり、形質転換することはできない;(ii) YEpプラスミド(酵母エピソーマルプラスミド):酵母2−μmサークル、内因性酵母プラスミドの複製源を有し、受容細胞中で複製することができる;(iii) YRpプラスミド(酵母複製プラスミド):酵母自律複製配列(ARS)を利用して、複製することができる。組込みベクターは低い効率、1-10形質転換体/μgで形質転換された。酵母細胞中で複製できるプラスミドは、より高い効率で形質転換された。Yepベクターは一般に、0.5−2.0x104形質転換体/μg(入力プラスミドDNA)で形質転換される。YRp7プラスミドは、0.5−2.0x103形質転換体/μg(入力プラスミドDNA)を作製した。Struhlら(Struhl、K., 1979, "High-frequency transformation of yeast: autonomous replication of hybrid DNA molecules", Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:1035-1039): (i) Ylpプラスミド(酵母組込みプラスミド)は、ゲノムへの組込みを要するプラスミドは、酵母細胞中で自律的に複製で鬼る酵母プラスミドベクターよりも、低い効率で形質転換されることを実証した。それ以来、2つの他の酵母プラスミドベクターが開発された。ARSおよび酵母動原体を有する酵母動原体プラスミド(YCp)(Clarke, L.,ら、1980、”Isolation of a yeast centromere and construction of functional small circular chromosomes", Nature, 287:504-509; Parent, S.A.ら、1985、“Vector system for the expression, analysis and cloning of DNA sequences in S. cerevisiae", Yeast J: 83-138)はYRpプラスミドよりも安定であるが、1細胞当り僅か1つのコピーにしか存在しない。酵母人工動原体(YACs)は、動原体およびABS と共に、2つの選択可能なマーカー、2つのテロマー、およびクローニング部位を有する円形プラスミドとして増殖された(Burke, L.,ら、1987、”Cloning of large segments of exogenous DNA into yeast by means of artificial chromosome vectors", Science, 236:806-812; Murray, A.W.,ら、1983、”Construction of artificial chromosomes in yeast", Nature, 305:189-193)。このベクターはテロメア(末端小粒)間の配列を除去することにより線状化され、異質DNAはクローニング部位に挿入される。その結果、長さが100-1000kbの線状人工クロソームが得られ、これは有糸分裂又は減数分裂を介して増殖することができる。
【0077】
プロモータ:
本発明の方法で使用される発現構成体、プロモータ又は制御システムは、誘導プロモータおよび構成性プロモータを含むものもよい。多数の適当なプロモータシステムが入手可能である。誘導酵母プロモータの例として、GAL(ガラクトキナーゼ)およびPHO5(アルカリ性ホスファターゼ)が挙げられる(SchneiderおよびGuarente, 1991)。GALプロモータはガラクトースにより活性化され、PHO5はホスフェートのない媒体により誘発される。
【0078】
構成性プロモータも使用することができる。この例として、ADH1(アルコール・デヒドロゲナーゼI)、TPI(トリオース・ホスフェート・イソメラーゼ)およびPGK(3ホスホグリセレート・キナーゼ)が最も一般的に使用される(Ausubel, Short Protocols in Molecular biolory, 1999 John Wiley and Sons)。
これらおよび他のこのようなプロモータは公知であり、Genbankなどから入手可能である。好ましい例において、このプロモータは受容宿主細胞種と相同のものが使用される。例えば、S. cerevisiae形質転換プロトコルにおいて、S. cerevisiaeプロモータをポリヌクレオチド構築に使用することができる。
【0079】
このプロモータ構成体にイントロン配列を含めることも好ましい。なぜならば、コード化領域にイントロン配列を含めることにより、発現および特異性が向上するからである。
【0080】
更に、1つのプロモータの領域を、異なるプロモータの領域に結合させ、所望のプロモータ活性を得て、キメラプロモータとしてもよい。遺伝子発現を調節する合成プロモータも使用可能である。
この発現システムは、転写ターミネータおよび/又はエンハンサー素子のような補足素子を使用することにより、更に最適化することができる。
【0081】
他の調節用部材:
プロモータ配列に加えて、発現カセット又はポリヌクレオチド構成体は、更に構築遺伝子の下流側に転写終止領域を含め、効率的終点を提供するようにしてもよい。この終止領域又はポリアデニル化信号はプロモータ配列と同様の遺伝子から、又は異なる遺伝子から得ることができる。このポリアデニル化配列には、限定的ではないが、Agrobacteriumオクトピンシンサーゼ(octopine synthase)信号(Gielenら、EMBO J.(1984) 3:835-846)又はノパリンシンサーゼ(nopaline synthase)信号(Depickerら、Mol.and Appl. Genet.(1982) 1:561-573)が含まれる。
【0082】
トランス遺伝子により製造されたたんぱく質の、亜細胞区画、例えば空胞、ペルオキシソーム、グリオキシソーム、細胞壁又はミトコンドリオンへの輸送、又はアポプラスト又は成長培基の分泌のため輸送は、信号シーケンスをコード化するヌクレオチド配列を、関係するたんぱく質をコード化する遺伝子の5´および/又は3´領域へ操作可能に連結することにより達成することができる。構築遺伝子の5´および/又は3´末端へ配列を向けさせることにより、たんぱく質合成および処理の間に、コード化されたたんぱく質が最終的に何処に配置されるのかを判定することができる。信号シーケンスの存在はポリペプチドを細胞内小器官又は亜細胞区画へ向けさせ、又は分泌のためアポプラストへ向けさせ、又は外部環境へと向けさせる。多くの信号シーケンスが特に酵母のために知られており、例えばBiPシーケンスが知られている。たんぱく質コード化シーケンスに操作可能に結合されたシーケンスは、得られるたんぱく質を分泌たんぱく質にさせる。分泌たんぱく質のための信号シーケンスの使用は本発明にとって好ましいが、本発明は信号シーケンスにより方向付けられた分泌たんぱく質に加えて、従来の方法により処理されたたんぱく質をも包含することを意図している。
【0083】
マーカー遺伝子:
ここに記載したDNA配列およびプロモータの任意のものを含む組換えDNA分子は、更に選択マーカー遺伝子を含むものであってもよい。なお、この選択マーカー遺伝子は、薬品又は生理学的ストレスに対する細胞抵抗を付与する選択遺伝子生産物をコード化したり、細胞に区別可能な表現型特徴を付与し、組換えDNA分子で形質転換された細胞が選択剤を用いて容易に選択できるようにするものである。酵母の形質転換に使用される選択可能なマーカー遺伝子の例としては、URA3, LEU2, HIS3およびTRP1などを挙げることができる。これらの遺伝子は酵母宿主における特別の代謝欠陥(栄養要求性)を補うものである。例えばベノミル又は真核毒などの殺菌剤に抵抗を示すマーカーを使用してもよい。
【0084】
複製剤:
酵母発現ベクターは酵母2−μmサークルから得られる複製剤を含むものであってもよい。なお、この酵母2−μmサークルは、娘細胞への正しいコード番号および正しい分離を確実に与えるDNA部位および遺伝子を有するものである。
【0085】
たんぱく質:
本発明による遺伝形質転換酵母を用い、異質たんぱく質を商業的規模で生産することができる。すなわち、形質転換された酵母の選択および増殖のための技術、すなわち公知の技術、を用いて従来の方法により複数の遺伝形質転換酵母を得て、ついで、異種たんぱく質を関連する組織又はトータルバイオマスから抽出し、又は成長培地に分泌させ(液体又は固体)、それにより回収する。植物および菌バイオマスからのたんぱく質抽出は公知の方法(HeneyおよびOrr, Anal. Biochem. 114: 92-6(1981);および個々に引用した参照文献)により行うことができる。
【0086】
形質転換:
酵母の形質転換について、多数の標準的プロトコル(計画案)が存在し、下記のようなものを、本発明に従って使用することができる。
スフェロプラスト形質転換:
酵母細胞の形質転換について、多数の方法が知られており、例えばスフェロプラスト法を用い、酵母細胞壁を除去し(好ましくは、グルスラーゼにより酵素的に除去)、ついでPEGおよびプラスミド(好ましくは、自己複製)DNAで処理する。
【0087】
サンプルスフェロプラスト形質転換プロトコル:
1. 細胞を50mL YPAD中で3x107細胞/mLの濃度まで成長させる。
2.400x600xgで5分間、遠心分離することにより、細胞を収穫し、20mLの滅菌水で2回洗浄し、20mLの1Mソルビトールで1回洗浄する。この細胞を20mLのSPEM(1Mソルビトール、10mM燐酸ナトリウム、pH=7.5, 10mM EDTAプラス40μmのβ‐メルカプトエタノール(使用直前に添加))中に懸濁させる。
3. 45μLのジモリラーゼ(zymolyase)20T(10μg/mL)を添加し、緩やかに攪拌しながら30℃で20−30分間、培養することにより細胞をスフェロプラストに転換する。この時点までに、細胞の90%をスフェロプラストに転換させる。
4.250xgで4分間、遠心分離することにより、スフェロプラストを収穫し、上澄み液を静かに除去する。ペレットを20mLのSTC(1Mソルビトール、10mM のTris-HCl, pH=7.5, 10mM CaCl2)で1回洗浄し、2mLのSTC中に懸濁させる。
5.STC中の懸濁液150μLを、10μL未満中の5μgのキャリアDNAおよび5μg以下のプラスミドDNAと静かに混合することによりスフェロプラストを形質転換させる。この混合物を室温で10分間培養する。1mLのPEG試薬[10mM Tris-HCl, pH=7.5, 10mM CaCl2, 20%(w/v)PEG 8000;滅菌フィルター]を添加し,静かに混合し,更に培養を10分間継続する。
6.250xgで4分間、遠心分離することにより、スフェロプラストを収穫し、150μLのSOS(1Mソルビトール、6.5mM CaCl2, 0.25%の酵母抽出液、0.5%のバクトペプトン)中に懸濁させる。このスフェロプラストの希釈液を8mLのTOP(1.0Mソルビトールおよび2.5%の寒天を含む選択性培養基、45℃にて維持)および適当な選択性培養基(0.9Mソルビトールおよび3%のグルコースを含む)と混合する。30℃で3−4日培養した後、得られた形質転換物を回収する。
【0088】
Li+形質転換:
この方法は酵母細胞を特定の一価アルカリカチオン(Na+、K+、Rb+、Cs+、Li+)による処理を含み、これをPEGとの組み合わせで使用し、無垢の酵母細胞によるプラスミドDNA摂取を刺激する(Itoら、1983、J.Bacteriology,"Transformation of Intact yeast cells treated with alkali cations", 353:163-168)。ついで、5分間の熱ショックを与え、その後、細胞を選択性培養基上にて培養する。最も良好な結果は酢酸リチウム(LiAc)を用いた場合に得られた。超音波処理したキャリアDNAの添加は効率を増大させるのに使用することができ、単一連鎖DNA又はRNAの反応液への添加も反応を最適化するために使用することができる。異なる選択可能なマーカー遺伝子を有する2つのベクターを使用し、単一の形質転換反応における2つの異なる遺伝子をノックアウト(knockout)したり、選択性プラスミドとの共形質転換を用いて非選択的遺伝子分断を調べることもできる。以下の例は、殆どの実験菌株に対し使用可能で、酵母2−ハイブリッドシステムのような用途において、プラスミドライブラリーの効率的形質転換に適していることが知られているLiAc/ssDNA/PEGプロトコルのための標準的手法である。
【0089】
サンプルLiAc/ssDNA/PEGプロトコル:
1. 細胞を2X YPAD中にて一晩、成長させ、ついで、暖かい2X YPAD中に5x106細胞/mLで懸濁させ、2つの細胞区分について2x107細胞/mLの濃度まで再度、成長させる。
2.3000xgで5分間、遠心分離することにより、細胞を収穫し、滅菌蒸留水で2回洗浄し、滅菌蒸留水中にて109細胞/mLで再度、懸濁させる。
3. 108細胞のサンプルを1.5mLマイクロ遠心分離チューブに移し、細胞をペレットかさせ、上澄み液を除去する。
4.ペレットを360μLの形質転換混合物(240μLの50%PEG3500(w/v)、36μLの1.0M LiAc、50μLの2.0mg/mL単一鎖キャリアDNA、0.1-10μgのプラスミドDNAプラス水からなる溶液34μL)内で再度、懸濁させる。
5.この形質転換混合液中の細胞を42℃で40分間培養する。この細胞をマイクロ遠心分離機にてペレット化し、形質転換混合液を除去する。
6.この細胞ペレットを1mLの滅菌液中に再度、懸濁させ、このサンプルを選択性培養基にて培養する。
【0090】
電気穿孔法:
電気穿孔法、つまり、電気的パルスを使用して細胞膜中に過渡パルスを形成させる方法は植物および動物細胞の形質転換に広く利用されている。更に、酵母スフェロプラスト並びに無垢酵母細胞にも使用されている(Karube, 1985, FEBS lett, 182:90-94; Hashimoto, 1985; Appl. Microbiol. Biotechnol. 21:336-339)。電気穿孔法は更にPEGおよびLiAc/ssDNA/PEG法との組合せでも使用されている。標準的電気穿孔プロトコルは以下に示すとおりである。
【0091】
表3.サンプルスフェロプラスト形質転換プロトコル:
1. 細胞をYPD中で1x107細胞/mLの濃度まで成長させる。
2.遠心分離(1500xgで5分間)することにより、細胞を収穫し、この細胞を1x109細胞/mLで25mMのDTT(YPD培養基中、20mM HEPES, pH=8.0)中に懸濁させ、30℃で10分間、培養する。
3. この細胞をEB(10mM Tris-HCl, pH=7.5, 270mMスクロース、1mM MgCl2)で2回洗浄し、EBに1x109細胞/mLで再度、懸濁させる。
4.48μLのサンプルを、2μLのプラスミドDNAと混合し、スクエアパルス発生装置、CNRSセル・エレクトロパルセータの電極間に搬送する。
5.細胞に、1.74kV/cmの電界強度、15msのパルス長でパルスを印加する。
6.予め加熱した30℃のYPDの1mLを直ちに添加し、その懸濁液を30℃で1時間、培養する。ついで、細胞をマイクロ遠心分離機にてペレット化し、SD培養基中に再度、懸濁させ、適当な培養基にて培養する。
【0092】
酵母形質転換は、ガラスビーズを用いて行うこともでき(Costanzoら、1988.Genetics 120:667-670)、更に、バイオリジテクス(biolisitics)を用いて行うこともできる(Kleinら、1987.Nature 327:70-73)。
【0093】
スフェロプラスト、リチウムカチオンおよび電気穿孔法は、殆どの酵母種、例えばS.pompe, Candida albicans, Pichia pastoris, Hansenula polymorpha, Klyveromyces spp, Yamadazyma ohmeri, Yarrowia lipolytica, Schwanniomyces occidentalisなどに適用することができる。
【0094】
酵母形質転換についての更なる情報については、以下の文献に開示されている。すなわち、Gietzら、“Genetic Transformation of Yeast" BioTechinques 30:816-831(2001年4月);Wangら、“Transformation System of non-Saccharomyces Yeast" Crit. Rev. BioTechnol. 2001;21(3):177-218に開示されている。
【0095】
DNA配列をホモ接合状態にすることがしばしば望まれる。これは細胞ラインを作るのに2以上の形質転換を必要とする。すなわち、同一の遺伝子産物をコード化する第1および第2の組換えDNA分子を用いた形質転換を必要とする。更に、本発明の方法の幾つかの例においては、酵母細胞が少なくとも2つのDNA配列を含む組換えDNA分子で形質変換されること;又は1以上の組換えDNA分子で形質変換されることが考えられる。このような例におけるDNA配列又は組換えDNA分子は、同一のベクター内にあることにより物理的に結合されたり、異なるベクター上にて物理的に別になっていてもよい。細胞は、各ベクターが独特の選択マーカー遺伝子を有するのであれば、1以上のベクターで同時に形質転換されるものであってもよい。その他、細胞は1以上のベクターで形質転換し、中間の再生工程が最初のベクターによる形質転換の後に逐次的に続くようにしてもよい。更に、異なるDNA配列又は異なる組換えDNA分子を有する個々の酵母細胞間又は酵母ライン間で有性交配を行うようにしてもよい。この場合、好ましくは、DNA配列又は組換えDNA分子が同一の染色体上に連結され、又は配置されており、交配の子孫から、双方のDNA配列又は異なる組換えDNA分子を有する酵母を選択する。
【0096】
形質転換された酵母中のここに記載したDNA配列およびプロモータを有する組換えDNA分子の発現は、公知のノーザンブロット法および/又はサザンブロット法を用いてモニターすることができる。
【0097】
再生された酵母は標準の生育媒体(例えば、固体又は液体栄養媒体、穀物、バーミキュライト、コンポスト、ピート、木材、おがくず、麦わらなど)に移送され,公知の方法により生育され又は培養される。
【0098】
ポリヌクレオチドが、再生された遺伝形質転換酵母中に安定的に組み込まれた後、有性交配により他の酵母に転写することができる。多重化されるべき種に応じて任意の数の標準的手法を使用することも可能である。
【0099】
位置的作用から開放された酵母を回収するために、任意の組換え構成体を有する各形質転換された酵母を多数発生させることは有意なことである。更に、導入された組換えDNA分子の1以上のコピーを含む酵母を選択し、この組換えDNA分子の高いレベルの発現を得ることは好ましいことである。
【0100】
上述のように、特定の種において、可能な特定の遺伝子について同型接合である酵母ラインを生産することが好ましい。或る種においては、これが単一胞子培養を用いることにより可能である。このような技法を使用することにより、挿入された遺伝子を担持し、ついで、染色体数を自然に又はコルヒチンを使用して倍増することができる単相ラインを作製することができる。これにより、挿入された遺伝子について同型接合である酵母菌株が得られ、このことは、挿入された遺伝子が、その遺伝子を有する酵母の検出のための適当な選択マーカー遺伝子を備え持っているか否かについて容易に検査することを可能にする。
【0101】
以下の実施例は本発明を更に説明するものであり、何ら限定することを意図するものではない。ここでの実施例および説明では特に、S. cervisiaeを参照しているが、この技法は他の酵母種にも等しく適用可能である。ここに引用した全ての参照文献はその全体が参照としてここに組み込まれるものとする。
【0102】
実施例
実施例1
分泌経路に向けられたたんぱく質を小胞体(ER)の膜を最初に貫通させる。ルーメンに入り込むため、たんぱく質は“トランスロコン”(Johnson and van Waes, 1999)と呼ばれるたんぱく質孔を横切る。ナセント(新生)たんぱく質がこのルーメン内に解放され、これに対し、膜たんぱく質はER膜内に統合される。これらのたんぱく質は未折返し状態に転座されているので、それらの天然コンフォメーションへの組込みがER中で後の工程で発生する。この目的のため、オルガネラ(細胞小器官)が、正しいたんぱく質折返しおよび改質に必要な原料物質、酵素およびシャペロン(chaperones)のインベントリー(inventory)を維持する。これらの機能の局在化された性質のため、“ER品質管理”と呼ばれる機構が、新規に合成されたポリペプチドのこれらの機能部位への輸送を、それらがその天然のコンフォメーションへ到達するまで、防止する(Ellgaadら、1999)。
【0103】
この品質管理機構は更に、たんぱく質が折返しをしない場合に、重要な役割を果たす。誤折返したんぱく質は、“ER関連たんぱく質退化(ERAD)”と呼ばれる退化経路へ向けられる(Sommer and Wolf, 1997; Brodsky and McCracken, 1999)。この経路において、退化はERのルーメン内では発生しない。その代わりに、たんぱく質は、輸入に用いられた同じトランスロコン錯体を介してサイトゾル(細胞質ゾル)へ戻るべく輸送される(Wiertzら、1996;Pilonら、1997;Plemperら、1997;ZhouおよびSchekman, 1999)。レトロ転座又は転位と呼ばれるプロセスは、ユビキナチン化、すなわち、退化のための基質の必要とする共有改質に通常、結び付けられる(Biedererら、1997)。このユビキナチン化はERのサイトゾル表面で行われる。なぜならば、E2およびE3酵素、Ubc7pおよびHrd1p/Der3pはそれぞれ、そこに局在化し、トランスロコンに隣接して配置されるからである(Hillerら、1996;Bordalloら、1998;およびBaysら, 2001)。一旦、標識付けされると、これらたんぱく質はサイトゾル26Sプロテアソームにより急速に退化される(Hillerら、1996)。
【0104】
退化の時点近くのERAD基質の運命について多くのことが知られているが、これらがどのようにして認識され、維持され、転座/ユビキナチン化機構に向けられるかについてはあまり理解されていない。明らかにされている1つのモデルは、新生ポリペプチドが、輸入後にトランスロコン内に部分的に残ることである。このポリペプチドは折返しがなされたときに始めて解放され、これに対し、誤折返したんぱく質は同一の孔を介してレトロ転座される。この仮想は訴えるものがある。なぜならば、それは保持および退化についての単純なメカ二ストを規定するものであるからである。しかし、このモデルは、十分に確立された酵母可溶性ERAD基質、つまりCPY*と呼ばれるカルボキペプチダーゼYの突然変異体が膜を完全に横切って転座することが示された結果、疑いが生じた(Plemperら、1999)。
【0105】
哺乳類細胞において、十分に特徴づけられた水泡性口内炎ウイルスG(VSV-G)たんぱく質の突然変異体、ts045が39.5℃、つまり誤折返しの原因となる温度にシフトされた細胞のERに局在化することが観察された(KreisおよびLodish、1986)。グリーン蛍光たんぱく質に融合されたVSV-G ts045を用いた研究(elegant study)によりER保持機構直接的証拠が得られた。生きた細胞での光漂白実験を用いたところ、組込み膜たんぱく質は膜の面に自由に移動するが、ERを残すことはなかった(Nehlsら、2000)。制限温度での長期の培養を通してVSV-G ts045を発現する細胞において、たんぱく質の一部はERを逃れ、Golgiに輸送され、回収される(HammondおよびHelenius、1994)。これらの初期の実験は、より極端な条件下で行われたが、これらは誤折返したんぱく質の循環機構の可能性をそのまま残すものであった。酵母において、この機構はあまり明らかではない。しかし、ER-to-Golgi輸送のない状態で、Step6pおよびYorlp組込み膜(integral membrane)たんぱく質の突然変異体の効果的な退化は哺乳類2ついての見解を支持するものと思われる(Loayzaら、1998;Katzmannら、1999)。
【0106】
誤折返し可溶性たんぱく質および膜たんぱく質の双方についての一般的品質管理機構は空間的問題を生じさせる。なぜならば、これら2つのクラスはERの別個の領域を占める(すなわち、ルーメン対膜)からである。従って、異なる認識および標的機構が存在し、たんぱく質を退化経路に向けさせるということはもっともらしい。この見解において、誤折返し可溶性たんぱく質および膜たんぱく質の双方により用いられるユビキチン/プロテアソーム経路を、ER保持機構についての終点又は消失機構の収束点として考えることができる。
【0107】
この研究において、出芽酵母、Saccharomyces cerevisiaeにおいて、ERAD特異的退化に曝される幾つかの品質管理基質の運命が本発明者により検査された。品質管理基質の別々のクラスを確定する保持および回収機構の共存が実証された。双方の経路について、ERにおける分類工程が発生し、それにより回収経路の基質はCOPII輸送小胞体中に包み込まれ、保持されるべき基質は除外される。更に、本発明者は遺伝子的アプローチを用い、これら2つの経路を切開する突然変異体を分離した。Per17-1と呼ばれる遺伝子BSTIの機能対立遺伝子を失った突然変異体(機能突然変異体の如何なる損失も同様の作用を及ぼす)が誤折返したんぱく質のER-to-Golgi輸送を防止するとともに、殆どの正常なたんぱく質の輸送を保持した。ERと関連する小区画(subcompartments)における誤折返したんぱく質の蓄積および安定化から考えられるように、Per17-1細胞においては、品質管理は回収経路の初期の段階で中断された。
【0108】
KHNはERADのためのGolgi器官から回収された誤折返したんぱく質である。
ウイルス膜たんぱく質は、たんぱく質の折返しおよびER品質管理を研究するためのすぐれたモデルである(Gethingら、1986;Machamberら、1990;HammondおよびHelenius、1994)。品質管理機構をより良く理解するため、この発明の利点を出芽酵母、S. cerevisiaeの安易な遺伝的性質と結びつけることを求めた。なお、この開示された技法は他の任意の菌種にも等しく適用することができる。サルウイルス5血球凝集素、ノイラミニダーゼ(HN)が選択された。その理由はその折返し状態を確立された方法によりモニターすることができるからである(Ngら、1989)。HNを発現させるため、HN信号/アンカー領域を、酵母Kar2たんぱく質殻の分裂可能な(cleavable)信号シーケンスで置き換え、融合構成体を適度の酵母PRO(CPY)プロモータの下流側に配置させた。これは酵母中における内因性信号/アンカー領域の少ない利用をバイパスするためになされたものである。その結果得られたたんぱく質(KHNと称されるもの)は、哺乳類細胞中に先に特徴づけられたHNの可溶性変形体と似ている(ParksおよびLamb、1990)。
【0109】
本発明者等は代謝パルス追跡分析によりKHNの発現をモニターし、予期しないような結果を観察した。図6Aに示すように、KHNは30分の追跡の後、急速に失われ、60分以内までに殆ど検出することができなかった。細胞および培基の双方からのたんぱく質を免疫沈降のため一緒にしたので、KHNの分泌をその損失を償うために妨げた。その他、異質たんぱく質として、KHNは正しく折返すことをせず、品質管理を介して退化されるようにする。この考えと一致して、KHNは、二硫化物結合ダイマーを形成せず、コンフォメーション依存抗HNモノクローン抗体に対し反応性を示さない。ERADに向けられたたんぱく質のユビキナチン化に必要な遺伝子であるCUD(Biedererら、1997)を欠けた菌株において、KHNは同じ時間帯の間(図6A、中間部)、安定化するものと思われる。本発明者等はKHNを真実のERAD基質として確認した。なぜならば、これが多重ERAD特異的突然変異体により安定化されるからである(下記参照)。興味深いことに、KHNの安定化はERAD基質のための予想外の特徴、すなわち、ゲル移動度の時間依存的減少を向上させた(図6A、中間部)。本発明者等は次に、変化させた形態の性質を探求した。
【0110】
分子量の段階的増加が多くの酵母分泌経路たんぱく質の熟成の間に一般に観察される。この増加はERに当初から結合されている炭水化物の同化によるものである(HerscovicsおよびOrlean、1993)。遅延は新生ポリペプチドを、改質酵素が存在するGolgi器官に輸送するのに必要な時間を反映するものである(GemmillおよびTrimble、1999;StrahlBolsingerら、1999)。これを念頭に、これに述べた改質は、KHNがGolgiに輸送され、退化のためERへ回収される興味をそそる可能性を生じさせるものであった。本発明者はこの可能性を、最初にこのシフトが実際に炭水化物改質によるものか否かを判定することにより取り組んだ。エンドグリコシダーゼH消化を用い、KHNからN-結合炭水化物を除去した。もし、ゲル移動性シフトが全てN-結合糖の改質によるものとすると、エンドグリコシダーゼH処理後において全ての形のKHNが等しく移行するであろう。図6A(右側)に示すように、N-結合糖の除去はこの移動度の差をなくすことができなかった。本発明者は次に、O−マンノシル化の最初の工程で、特異的欠陥の突然変異体を使用してO-結合炭水化物についてテストした。O−マンノシル化はERで、Man-P-dolicholからポリペプチドへの単一マンノース残基の移動を伴って開始された。たんぱく質マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)科の酵素がこの反応を促進させる。個々のPMT遺伝子を欠ける菌株はグリコシル化において基質特異的欠陥を表し、これらの遺伝子の非冗長性を反映する(GentzschおよびTanner、1996)。本発明者は、各PMT科メンバー(PMT1-PMT6)を単一的に除いた菌株中にKHNを発現させた。図6Bに示すように、PMT1およびPMT2のない菌株はKHN移動性シフトを防止し、p1が圧倒的な形で残り、これは最終的には退化された。これらのデータから、KHN O−グリコシル化はPMT1およびPMT2に依存し、これらの産物は共に作用し錯体を形成することが示された(Gentzschら、1995)。この特別のたんぱく質特異的KHN処理はPMT3-PMT6を単独に欠けた菌株において影響されず、これはこのたんぱく質に対する基質特異性によるものと思われる。他のPMTも他のたんぱく質で作動するものと思われる。
【0111】
ERにおいてO−マンノシル化されたたんぱく質は通常、Golgiにおける炭水化物の延長化を介して改質される(Lussierら、1997)。KHNゲル移動性シフトがポストER処理によるものか否かをテストするため、本発明者は、十分に特徴づけられたER-to-Golgi輸送突然変異体、sec12-4およびsec18-1中にてKHNを発現させた(Eakleら、1988;Nakanoら、1988;BarloweおよびSchekman、1993)。輸送がこれらの菌株において阻止されると、KHNは長時間に亘ってpl型に留まる(図6C)。これは改質酵素が存在するGolgi器官におけるp2型の形成と合致する。これらのデータから、我々はこのER型をp1と指名し、Golgi型をp2と指名する。興味深いことに、KHNの反転がこれらの突然変異体で阻害されるように思われ、ERからの輸送が退化のための必要な工程であることを示唆している。残念なことに、p1およびp2型をオーバーラップするたんぱく質の非特異的免疫沈降がKHN反転の動態を測定困難にしている。従って、安定化の程度をこれらの実験から結論づけることができなかった。
【0112】
KHN反転の動態を正確に測定するため、COOH末端トリプルHAエピトープ標識(KHNt)を有する改質型が構築された。抗HAモノクローン抗体を使用したとき、KHNtの免疫沈降はバックグラウンド(background)から解放され、収量は抗HNポリクローン抗血清を用いた実験から、さもなくば区別することができなかった(図7A)。反転の割合が若干減少するように思える以外は、KHNtはKHNと同様に改質され、退化される(図7Aの頂部と図6Aの左側との比較)。予備的結果では、KHNがERADの経路の基質になることができることを示唆しているが、Golgiへのその輸送により、一部が液胞(リソソームの酵母均等物)中に送り続けられ退化されるという可能性が生じた。しかし、これはKHNtが、機能性液胞プロテアーゼに欠けた突然変異体中において野性型と同様に退化されたので、その可能性が排除された(図7A、図7B、Δpep4)。KHNがERADの基質であることを確実に確立するため、本発明者は、この経路において特に欠けている突然変異の幾つかにおいてKHNtの安定性を測定した。図7に示すように、CUE1(Ubc7pをER膜に固定することによるユビキナチン化において役割をなす)、DER1(ERADに必要とするER膜たんぱく質をコード化する)又はHRD1/DER3(ER局在E3ユビキナチン・リガーゼをコード化する)遺伝子の無い菌株にKHNtを発現させたとき、その退化が、他の確立されたERAD基質と同様な程度に阻害された(Hamptonら、1996;Knopら、1996;Biedererら、1997;Bordalloら、1998)。ウエスターン・ブロット分析の結果、突然変異体の各々において、KHNtの高分子量(p2)型の定常的蓄積が見られ、それにより野生型細胞で優先的に退化されたものが、これらの種であることが確認された(図7C)。
【0113】
ERAD機能について欠陥のある細胞のERに誤折返したんぱく質が蓄積される(Knopら、1996;Loayzaら、1998)。KHNtが退化前にGolgiに輸送されるから、ERADが分断されたときに、どこにそれが蓄積されるかについての疑問が生じる。ERマーカーBiPとの共局在化により示されるように、間接的免疫蛍光法を行うことにより、KHNもERAD突然変異体細胞のERに蓄積されることが本発明者により見出された(図7D)。これらのデータは、KHNtが幾つかの確立されたERAD基質と同様に行動すること、およびその退化のための回収経路の可能性を示している。
【0114】
ERADに向けられたたんぱく質の品質管理のための2つの別々の機構:
予想外の観察‐輸送に繋がったER‐to‐Golgi突然変異体におけるKHNの発現は、その退化のための必須の工程と思われる。突然変異体、Ste6pおよびYor1pを含む他のERAD基質が同一の条件下で正常に退化することが観察されたことから(Loayzaら、1998;Katzmannら、1999)、このことは意外なことである。このもっともらしい矛盾は、もし異常型のたんぱく質を退化に向けさせる異なる機構が存在するのであれば解決される。すなわち、Ste6pおよびYor1p(双方とも組込み(integral)膜たんぱく質である)のようなたんぱく質のための静的(非循環)ER保持機構;およびKHNなどの他のたんぱく質のための輸送および回収機構である。退化前の基質の運命を評価するため、本発明者は相補をin vivoおよびin vitroアプローチで適用した。
【0115】
最初に、ER-to-Golgi輸送を防止する効果を検査した。ERAD基質、Ste6-166pがsec18突然変異体中で退化することが報告されており、輸送が阻止去れとしてもERADが正常に機能することが示唆されている(Loayzaら、1998)。本発明者は、Ste6-166pの安定性が野生型のものと同じであることを見出すことにより、secl2およびsec18細胞の双方における観察を確認した(図8A)。対照として、本発明者はERAD欠損突然変異体が同一条件下でSte6-166pを安定化することを示した(図8A)。本発明者は更に、ERADに供した他の膜たんぱく質であるSec61-2pを分析した(SommerおよびJentsch、1993;Biedererら1996)。Sec61p自体がERADにおいて役割を果すから、Sec61-2pは異所的に発現され、HAエピトープ標識を有する野生型から区別することができた。Ste6-166pの場合と同様に、Sec61-2pは、各菌株において制限的条件下で正常に退化される(図8B)。対照的に、KHNtの退化は著しく阻害された(図8C)。コアERAD機能は、これらの菌株において正常であるから、この欠陥は退化に先立つKHNt転送(trafficking)パターンの混乱の結果と思われる。この要求がKHNtに特異のものか、又はER品質管理のより一般的な特徴を反映するものか否かについて疑問が生じた。そのため、本発明者は、他の十分に特徴づけられた可溶性基質、CPY*(Fingerら、1993)のHAエピトープ標識付きバージョン(version)を検査した。CPY* HAがコアERAD機構を使用することが十分に確立されているが、それが回収サイクルを保持するのか、又は行うかは明らかでない。図8Dに示すように、CPY* HAはsecl2およびsec18突然変異体の双方において強く安定化され、これも小胞輸送経路に依存することを示唆している。しかし、これは意外なことである。なぜならば、CPY*がsec18突然変異体中で退化することが先に報告されていたからである(Fingerら、1993)。個々で、この退化は3時間もの長い追跡期間の後に最も明白となる。本発明者は更に、輸送突然変異体における幾つかの退化を観察し、基質の可なりの部分が、同様の長期の追跡の適用により退化されるものと期待した。
【0116】
データは2つのERAD基質の追跡、すなわち、1つは品質管理のための小胞転送機構を使用するもの;他は静的ER保持に依存するものを示している。この区別は、選別がER中で行われ、輸送されるべき誤折返したんぱく質を、保持されるべきものから分別させることを予言するものである。secl2およびsec18突然変異体における退化速度の差は、示唆的証拠を与えるのみで、間接的効果の可能性を除外するものではなかった。これをテストするため、ER膜からCOPII−被覆小胞出芽およびカーゴ(cargo)選択を再生させるin vitro検査(Barloweら、1994)を行った。これらの実験のため、ミクロソームを、KHNt、CPY* HAおよびSte6-166pを発現する野生型菌株から用意した。これらミクロソームからのCOPII出芽小胞を分離し、小胞に包み込んだ個々のたんぱく質のレベルをイムノブロット(immunoblots)によりモニターした(図9)。各たんぱく質についての組み入れ効率を濃度計により全体に対する百分率で計算した。KHNtおよびCPY* HAについては、双方のたんぱく質がCOPII小胞中に1ないし2%で収容され、ネガチィブ対照Sec61pでは全く収容されていないことが判明された。COPII小胞中に収容された誤折返したんぱく質の量は他の分泌たんぱく質と比較して小さいが、これはKHNtの輸送が他のカーゴたんぱく質と比較して遅いことと適合するものである(図11参照)。この方法によるKHNtおよびCPY* HAの分析のため、膜をトリプシンで処理し、プロテアーゼ‐保護ルーメン種の検出を確実にした。これらのデータはERADに向けたたんぱく質のサブセットが標準膜転送機構を用いてERから最初に輸出されるという独立した確認を与えるものである。
【0117】
次に、本発明者はSte6-166pを検査した。Ste6-166pはER保持機構を用いて退化に向けられたという証拠が既に存在する(Loayzaら、1998)。しかし、この保持の性質については明確ではなかった。ER小胞出芽検査法をSte6-166pに適用したところ、他の組込み膜たんぱく質が効率的にCOPII−被覆小胞に組み込まれたが、Ste6-166pはER膜にもっぱら留まった(図9C)。これらのデータは、血漿膜たんぱく質Ste6pが、誤折返しの場合、輸送小胞からの排除によりER中に保持されることを示している。加えて、これらの結果はER品質管理の新規な一面を示している。その監視機構の一部として、細胞は誤折返しのたんぱく質をER保持又は輸送について区分けする。
【0118】
Golgiへの輸送の後、ERADによるKHNtおよびCPY* HAの退化はERへの逆行性転送を要するであろう。Golgiからの膜およびたんぱく質の逆流はCOPIクラスの被覆された小胞の形成により駆動される。誤折返しのたんぱく質の転送がCOPI被覆小胞を使用するか否かを調べるため、本発明者はKHNtおよびCPY* HAをγ‐COP突然変異体sec21-1中に発現させ、それらの反転を測定した。順方向輸送が影響されず、かつ、逆行輸送が殆ど影響を受けない30℃の許容温度で(Letourneuerら、1994)、KHNtおよびCPY* HAの退化の小さいが再生可能な遅延が観察された。しかし、33℃の半許容温度、すなわち、順方向輸送の小さな遅延だけで逆行輸送が部分的に分断される温度では(Letourneuerら、1994)、双方のたんぱく質の退化が抑制された(図10Aおよび10B)。順方向輸送の進歩が、内因性CPY(公開されていないデータ)およびKHN,p2 Golgi型の形成の分析により確認された(図10A)。ERAD機能に対する間接的作用は除外された。なぜならば、Ste6-166pの退化はsec21-1細胞において正常であるからである(図10C)。総合すると、これらのデータは、誤折返したんぱく質がER保持又はGolgiからの輸送および回収のために区分けされることを実証している。最終的に、双方の経路はERAD経路による退化のため、ERに収斂する。
【0119】
回収経路における初期でのER品質管理のために必要ない電子:
最近の研究により、ERを離れる或る種のカーゴ(cargo)たんぱく質が活動的に輸送小胞に区分けされることが実証された(Munizら、2001)。これらの区分けの分子的機構については十分に理解されていないが、特定の遺伝子がたんぱく質の僅かサブセットの輸送について暗示されている(BeldenおよびBarlowe、1996; Munizら、2000)。KHNtおよびCPY* HAがカーゴたんぱく質の新しいクラスを表すから、専用のファクターが誤折返したんぱく質を区分けし輸送小胞に包装するよう機能するか否かについて疑問が生じた。この問題を取り扱うため、本発明者は遺伝子的アプローチを用いた。もし、そのようなファクターが存在するとすると、その機能損失は、ERから正常に輸送された誤折返したんぱく質の保持および安定化を生じさせると我々は考えた。本発明者は先に、ER品質管理に関係する遺伝子を識別する強力な手段として、未折返したんぱく質応答経路を有する合成致死性(synthetic lethality)に基づく遺伝子スクリーンを報告した(Ngら、2000)。当初のスクリーンが使い尽くされたとは到底言えないので、品質管理のER保持および循環機構を詳細に分析することを意図して、その範囲を拡大させた。本発明者はこのようにして、回収経路における誤折返したんぱく質の前方向(anterograde)輸送に必要な遺伝子を発見した。
【0120】
ER(per) 突然変異体における152の劣性たんぱく質処理のプールで出発し、グリコキシル化および輸送を含む正常たんぱく質の一般的処理欠陥を表すものを除外した(Ngら、2000)。残る107について、図8の索引に記載したようにCPY* HAおよびSec61-2の安定性を測定することによりERAD活性を分析した。更に、本発明者はKHNtの安定性および処理を分析した。1つの突然変異体、per17-1について、(機能損失)KHNtおよびCPY* HAの双方は退化については欠陥がある(図11A)。しかし、他のERAD突然変異体(図7)とは異なり、KHNtはper17-1細胞においてERp1型に留まり、Golgiへの輸送ブロックと合致する(図11Bの頂部)。Gas 1p(図11Bの底部)およびper17-1細胞におけるキチナーゼ炭水化物処理は正常であり、per17-1細胞における機能的O-マンノシル化および改質のための制御に役立つ(Nuofferら、1991;GentzschおよびTanner、1996)。これはKHNtp1型の優勢が、グリコキシル化に対する間接的作用よりも、むしろ輸送欠陥を反映することを示している。興味深いことに、折返されたカードたんぱく質の輸送が異なる作用を示した。CPY輸送は野生型と同様であり、これに対し、Gas1pは正常よりも遅かった(図11B)。Gas1pは膜に固定されるから、本発明者は2つの更なる組込み膜カーゴたんぱく質、カルボキシペプチダーゼS(CPS)およびアルカリ性ホスファターゼ(ALP)(Cowlesら、1997; Spormannら、1992)を検査した。図11Cに示すように、双方のたんぱく質は区別不能に野生型に輸送され、それによりper17-1突然変異がER-to-Golgi輸送に一般的欠陥を生じさせないことが確認された。
【0121】
更に、このデータは、per17-1突然変異体が回収経路に向けられた誤折返したんぱく質の輸送を促進しないことにより、退化を抑制することを示唆している。この見解を補強するため、我々は、ER保持のために区分されたERAD基質の運命を分析した。もし、PER17がER品質管理において、このようなはっきりした役割を果す場合、この保持経路が機能するものと期待され、これらの基質がper17-1細胞において正常に反転することが期待される。図11A(底部)に示すように、Ste6-166pおよびSec61-2pは、per17-1細胞において野生型運動性で退化される。これらのデータは、per17-1対立遺伝子が循環経路に特異的であり、我々の遺伝子的戦略の正当性を示している。これらのデータはsecl2およびsec18突然変異体を用いて得たものと同様のものであるが、輸送は退化のための重要なステップであるという証拠を拡張するものである。なぜならば、幾つかの正常なカーゴたんぱく質を無傷のままで残しながら、per17-1輸送ブロックが誤折返し可溶性たんぱく質に影響を及ぼすからである。
【0122】
per17-1輸送ブロックの性質を更によく理解するため、本発明者はper17-1細胞にて安定化されたKHNtおよびCPY* HAを局在化する間接的免疫蛍光を行った。図12に示すように、KHNtおよびCPY* HAの双方が細胞全体に亘る斑点構造内に凝集された。これは輸送反応能ERAD突然変異体とは異なるものである。なぜならば、それらはこれらの基質をER全体に亘って拡散的に蓄積するからである(Knopら、1996; 図7D)。興味深いことに、この斑点分布は、sec12突然変異細胞で輸送のためブロックされたカーゴたんぱく質について観察されるパターンを思い出させるものである(Nishikawaら、1994)。これらの細胞において、ERシャペロンBiPがER内の別々の部位にカーゴたんぱく質と共に共局在化した。誤折返したんぱく質が輸送のため同様にブロックされるので、我々は更に、per17-1細胞におけるBiPの分布について検査した。図12に示すように、BiPはKHNtおよびCPY* HAと同一の斑点構造内に見出された(図12A、bおよびe)。BiPはER形態のためのマーカーとして広く使用されているが、本発明者はそのパターンがsec12細胞又はER膜の一般的再組織化の場合のようにERの副領域を反映するものか否かについて疑問を持った。これを取り扱うため、別のERマーカーが選択された。すなわち、信号認識粒子レセプターβサブユニット(SRβ)である。このSRβはER全体に分配された組込み(integral)膜たんぱく質である(Oggら、1998)。図12Bに示すように、per17-1細胞にて染色するこのSRβは野生型のものと類似し、ER形態に大きな変化がないことを示唆している(図12B、e)。これは同一の菌株で行った超微細構造分析と全く合致するものである。ダブルラベル実験において、この斑点構造は常に、SRβにより画定されたERと合致する(図12B)。これらのデータは、誤折返したんぱく質がper17-1細胞内の別々のER部位にてBiPと共に蓄積することを示している。
【0123】
PER17遺伝子の同一性が次に検査された。セントロメアYCp50ベクターに基づく酵母ゲノムライブラリーをper17-1突然変異体に形質転換した。扇形分割表現型の復元により相補クローンを得た(Ngら、2000)。失欠(deletion)マッピングを介して、BST1(sec13のバイパス)をコード化する単一のORFをPER17遺伝子として識別した。SEC13、つまりCOPII小胞被覆の成分との相互作用を介して最初にクローン化されたER組込み膜たんぱく質がBST1によりコード化される(Elrod-EricksonおよびKaiser、1996)。すなわち、BST1はER-to-Golgi輸送において役割を果すものと思われる。しかし、その正確な役割は当該分野で知られていない。なぜならば、BSTI遺伝子削除が2つの原型カーゴたんぱく質、すなわち、CPYおよび転化酵素の輸送に影響を与えるように思えないからである。これらのデータはER品質管理におけるBST1の新規な機能を示している。per17-1細胞およびΔbstl細胞が、最も正しく折返されたたんぱく質以外の誤折り返したんぱく質の輸送を防止するから、このデータはカーゴたんぱく質の区分における役割を示している(図11B;未公開のデータ)。
【0124】
考察:
ERにおける新生たんぱく質の折返し状態をモニターする細胞監視システムがほぼ25年前に最初に公開された。これらの先駆的研究では、ウイルス膜たんぱく質が誤折り返しすると、血漿膜に輸送されず、合成部位に留まることが示された。(Gethingら、1986; KreisおよびLodish、1986)。後に、この現象が適当に“ER品質管理”と呼ばれ、幾つかのヒトの病気(嚢胞性繊維症など)がその分子ベースで突然変異たんぱく質の保持および退化に帰せられるという認識に至った(CarrellおよびGooptu、1998; KimおよびArvan、1998;KopitoおよびRon、2000)。最も最近では、重要な前進がなされ、ER品質管理2ついての我々の理解が改善された。特筆すべきことは、退化工程、すなわちERADが、ERトランスロコン孔を介しての細胞質ゾルへの基質のレトロトランスロケーションに関与することが今や知られている(Wiertzら、1996; Pilonら、1997;Plemperら、1997;ZhouおよびSchekman、1999)。レトロトランスロケーションの間又はその後において、基質はユビキチン化され、26Sプロテアソームにより退化される(Wardら、1995; Hillerら、1996)。これらの進歩にも拘らず、ERADの上流側の事象2ついては不明のままである。
【0125】
本発明者は、ここに2つの別々の機構の共働により、酵母分泌経路におけるたんぱく質の生合成の品質管理を確実におこなうことを開示している。すなわち、生化学的アプローチと、遺伝子的アプローチとを組合わせることにより、保持機構を再確認すると共に、確立されているER-to-Golgi小胞輸送および回収経路を使用する他のものを明らかにするものである(図13)。本発明者は、in vivoおよびin vitroで誤折返したんぱく質のER-to-Golgi輸送の直接的証拠並びに逆行輸送の必要性を開示している。
【0126】
このアプローチの重要な点は、新規なERAD基質としてのKHNの特徴づけである。一般に研究されている他の誤折返したんぱく質とは異なり、KHNはその輸送をモニターするため、O-結合糖改質の使用を許容するものである(図6)。天然のHNたんぱく質は哺乳類細胞中ではO-グリコシル化されず、そのため、この改質は、たんぱく質が酵母中で誤折返ししたときに発生する無差別のO-マンノシル化によるものと思われる(Hartyら、2001)。これらの炭水化物の処理の結果、全部でないとしても、殆どのたんぱく質がERADの前に回収機構を使用することが示された。更に、本発明者は順方向又は逆方向輸送の分断がKHN退化の妥協を招くことを見出した。この輸送要件は特異なものではない。なぜならば、十分に特徴づけられた基質、CPY*が全ての条件下で同様に影響されるからである。保持される基質がこれらの突然変異体において正常に退化されることから、輸送および回収が効率的KHNおよびCPY*退化のための必須の工程であることをデータが強く示している。
【0127】
精製した成分を用いたin vitro小胞出芽検査により、KHNおよびCPY*がCOPII被覆小胞中に収容され、Ste6-166pが排除されるという直接的証拠が得られた。これらの実験は重要である。なぜならば、この検査はER-to-Golgi輸送の初期の事象を反映することが先に確立されたからである。このデータはin vivo実験を確認し、拡張することに役立つが、これらは更に、COPII小胞の形成時又は直前での誤折返したんぱく質のための新規なER区分け機構を開示するものである。回収経路は標準小胞輸送機構を多く使用するが、誤折返したんぱく質が折返しカーゴたんぱく質の場合と同一の小胞を占めるか否かについては明らかではない。最近、折返しカーゴたんぱく質の異なるクラスが別々の小胞群(population)を占めることが報告された(Shimoniら、2000; Munizら、2001)。従って、誤折返したんぱく質を、Golgiへの輸送のため、分化した(specialized)小胞に区分けすることも可能と考えられる。
【0128】
材料および方法:
この研究で使用されたプラスミド:
プラスミドは標準クローニング計画案(Sambrookら、1989)を用いて構築した。pDN431およびpDN436については、先に記載されたHAエピトープ標識づきCPY*発現ベクター(Ngら、2000)が使用された。pSM1083およびpSM1346については、S.Michaelis Johns Hopkins大学、Baltimore, MDから寄贈されたHAエピトープ標識づきSte6-66p発現ベクター(Loayzaら、1998)が使用された。
【0129】
HAエピトープ標識づきSte61-2p発現ベクター、pDN1002の構成:
製造者の計画案に従い、Ventポリメラーゼ(New England Biolabs,Inc.)を用い、ゲノムDNAの増幅により菌株RSY533(MATα、sec61-2, leu2, ade2, ura3, pep4-3)からsec61-2のプロモータおよびコード化配列をクローン化した。プーライマー、N782(5'-CGAATCCGTCGTTCGTCACC-3')およびN183(5'-TTCCCATGGAATCAGAAAATCCTGG-3')を用い、増幅された2,016-bpフラグメントをHindIIIおよびNcoIを用いて消化し、1,931-bpフラグメントを精製した。この精製したフラグメントを、同一の酵素を用いて消化したpDN333にくくりつけた。pDN333はpDN280(Ngら、1996)からのHA標識づきインサートをpRS315(SikrskiおよびHieter、1989)に挿入することにより発生させた。N183からのNcol部位はSec61-2pコード化配列を、ベクター配列を有するフレーム中に配置させ、このベクター配列は単一のHA標識をコード化し、それにACTTターミネータ配列が続けられている。
【0130】
KHN発現ベクター、pSM31、pSM56、pSM70およびpSM72の構成:
KHN融合遺伝子を、Kar2p(信号配列および信号ぺプチダーゼ分断部位)の最初の45アミノ酸をコード化する配列を、SV5HN遺伝子のCOOH末端528アミノ酸にくくりつけることにより構築した。双方のフラグメントをVentポリメラーゼを用いたPCRにより増幅させ、pDN251中に挿入させpSM31を発生させた。このpDN251は、TDH3プロモータの代わりに温和PRC7プロモータを含めた以外は、酵母発現ベクターpDN251 (Ngら、1996)と同一である。pSM70は、イン‐フレーム(in-frame)で挿入したトリプルHAエピトープ標識をKHNのCOOH末端に添加した以外はpSM31と同一である。このトリプルHAエピトープ標識をコード化する配列は、pCS124(C.Shamu, Hawvard大学、Cambridge, MAからの寄贈)から切り取ったものである。pSM56およびpSM72はそれぞれpSM31およびpSM70と類似するが、ただし、KHN遺伝子配列がpRS315にサブクローン化されている点で異なる。
【0131】
pES69は、pS0459 (Oggら、1998)からHAエピトープ標識づきSRβについての遺伝子を含むNotI/KpnIフラグメントをpRS426(SikorskiおよびHieter、1989)に挿入することにより構築したものである。
【0132】
菌株および抗体:
この研究で使用された酵母菌株を表Iに示す。抗HAモノクローン抗体(HA.11)はBab Co.社から購入した。抗Kar2p抗体はPeter Walter(カルフォニア大学、サンフランシスコ、CA)から提供された。抗CPY抗血清はReid Gilmore (マサチューセット大学、Worcester、MA)から提供された。抗GaslpはHoward Riezman (Basel大学、Basel、スイス国)から寄付された。抗ALPおよび抗CPS抗血清はChris BurdおよびScott Emr (カルフォニア大学、サンフランシスコ、CA)から寄付された。抗HN抗血清は先に記載したとおりである(Ngら、1990)。Alexa Fluor488又は546でラベルした二次抗体はMolecular Probes, Inc.から購入した。
【0133】
細胞ラベリングおよび免疫沈降:
典型例として、対数期の細胞2A600OD Uをペレットかし、メチオニンおよびシステインを欠いた合成完全培基1.0mLに懸濁させた。30分間の培養の後、適当な温度で、細胞をTran35S-ラベル(ICN Biomedicals)480μCiでラベルした。常温メチオニン/システインを最終濃度、2mMとなるまで添加することにより追跡を開始した。この追跡は、組み込まれていないラベルの細胞内プールを使い尽くすパルスの終点の30秒前に開始した。このラベリング/追跡はトリクロロ酢酸を10%まで添加することにより終了させた。細胞ライゼートの作製、免疫沈降手法、ゲル電気泳動、免疫沈降したたんぱく質の定量は、いずれも先に記載したとおりである(Ngら、2000)。
【0134】
in vitro出芽試験:
小胞出芽を、精製COPIIたんぱく質(Sar1p、Sec23p錯体、およびSec13p錯体)を用い、公知の手法(Barioweら、1994)に従ってミクロソーム(WuesterhubeおよびSchekman、1992)を培養することにより、in vitroでERから繁殖させた。ミクロソームは誤折返しKHNt、CPY′HAおよびSte6-166p(SMY248, WKY114およびSMY225)を発現する細胞から製造した。COPII小胞へのたんぱく質の組込みを測定するため、全出芽反応液の15μLアリコートおよび出芽小胞を含む上澄み液150μLを、TLA100.3ロータ(Beck. Man Coulter)中にて100,000gで遠心分離し膜を収集した。得られた膜ペレットをSDS-PAGEサンプル緩衝液30μL中に溶解し、10−15μLを12.5%ポリアクリルアミドゲルで分解させた。COPII小胞に含まれたKHNtおよびCPY′の測定のため、膜をトリプシン(100μg/mL)で氷上にて10分間、処理し、ついでトリプシン抑制剤(100μg/mL)で処理し、プロテアーゼ‐保護種の検出を確実にするようにした。反応全体から小胞に包装した個々のたんぱく質(KHNtCPY・,Ste6-166p, Bos1p, Erv25p, Sec61p)の百分率は免疫ブロット法の濃度計走査により判定した。出芽小胞に包装されたプロテアーゼ‐保護[35S]glyco-pro α-ファクターを、[35S]prepro-pro-α-Fのミクロソームへの翻訳後の転座(Wuestehubeおよび Schekman、1992)の後、コンカナバリンA−セファロースで析出させることにより測定した。更に、[35S]glyco-pro α-ファクターを、ニトロセルロース膜への転写および蛍光スクリーンへの露出の後、ホスホリルマーガー(phosphorlmager)分析(分子力学)により可視化した。
【0135】
間接的免疫蛍光顕微鏡検査法:
細胞を合成完全培基中にて0.5-0.9のOD600まで生育させた。ホルムアルデヒド(EMグレード;Polysciences, Inc.)を直接、培養基に対し、30℃で1時間かけて3.7%間で添加した。固定後、細胞を遠心分離により収集し、5mLの0.1M燐酸カリウム緩衝液(pH=7.5)で洗浄した。細胞をスフェロブラスト緩衝液(1.0mg/mLジモリアーゼ20T[ICN Biomedicals],0.1M燐酸カリウム、pH=7.5、0.1% 2−メルカプトエタノール)中にて30℃で30分間、培養し細胞壁を消化させた。この消化は細胞をPBSにて一度洗浄することにより終了させた。細胞懸濁液30μLを、ポリ‐L-リシン被覆スライドの各液溜めに1分間適用し、PBSで3回洗浄した。これらスライドをアセトン中に5分間、-20℃にて浸漬し、ついで空冷させた。その後の工程は室温で行った。30μLのPBSブロック(PBS中、3%BSA)を各液溜めに添加し、30分間培養した。一次抗体、α‐HA又はα‐Kar2pを、PBSブロックに対し、それぞれ1:1,000又は1:5,000の希釈率で1時間適用した。液溜めをPBSブロックで3乃至5回洗浄した。30μLの二次抗体(Alexa Fluor 488ヤギα-マウス又はα-ラビットおよびAlexa Fluor 546ヤギα-マウス又はα-ラビット;Molecular Probes, Inc.)を各液溜めに添加し、暗室で45分間培養した。ついで、液溜めをPBSブロックで5乃至7回洗浄し、PBSで2回洗浄した。各液溜めを5μLのマウンティング(mounting)媒体で(PBS, 90゜/グリセロール、0.025μg/mL DAPI)で封止し、更にガラスカバースリップで封止した。これらサンプルをZEISS Axioplanエピ蛍光顕微鏡で観察した。画像をSpot 2冷却デジタルカメラ(Diagnostic Instruments)を用いて収集し、Adobe Photoshopm 4.0を用いて保管した。KHNtを用いた実験において、遺伝子の2つのコピーを各菌株に導入し、検出を向上させた。単一のコピーにおける低発現レベルは、酵母細胞によるこの哺乳類ウイルス遺伝子の最適とは言えないコドンの使用によるものと思われる。遺伝子投与を増加させることにより、発現レベルは単一のコピーにおいてCPY* HAに類似し、ERAD基質としての、その処理に影響を与えるものではなかった(未公開のデータ)。
【0136】
参照:以下の文献は、ここに引用した他の全ての参照文献に加えて,参照としてここに組み込まれるものである。
【0137】
【0138】
実施例2
真核生物分泌たんぱく質の発現のための酵母ベクターシステムである。我々は多様なベクターシステムを設計し、構築した(酵母における異種(例えば、哺乳類)分泌および膜たんぱく質の発現については図14参照のこと)。このベクターは大腸菌での繁殖および操作のためのバクテリア・レプリコンを有している。更に、これは複製および有糸分裂安定性のため酵素原と動原体とを有している。その他,安定な菌株を発生させるためゲノム組込みのためのバージョンも入手可能である。この発現モジュールは使用者の必要に応じて容易に操作することができる。発現はTDH3プロモータ(S.cerevisiaeにおける公知の最も強力な構成性プロモータ)から駆動することができる。計略的に置かれた制限部位は主体自身の信号シーケンスの使用、又はモジュールに含まれる酵母BiP信号シーケンスの使用を許容する。酵母BiP信号シーケンス旗のものよりもより効果的であることが証明されている。なぜならば、それがSRP経路へ、すなわち、哺乳類細胞において分泌および膜たんぱく質により使用される第一次経路である共翻訳(cotranslational)転座機構へ組換えたんぱく質を方向付けるからである。一般に使用されているα‐ファクター信号シーケンスは問題があることが証明された。なぜならば、それがより高度の真核生物に稀な後翻訳経路を使用するからである。これと対照的に、BiP信号シーケンスの100%成功率の効能が異種たんぱく質の発現について示された。このモジュールは更に、6−ヒスチジン標識を有し、組換えたんぱく質の精製を容易にしている。この標識は、必要がなければ、主体cDNAの挿入の間に除去することもできる。転写は酵母ACT1ターミネータにより終了される。
(技術分野)
本発明は、概略的に分子生物学の分野に関する。特に、本発明は、小胞体による処理によりたんぱく質を操作することにより酵母および他の菌中で異種たんぱく質を高効率で生産する新規な方法に関する。本発明の方法は異種たんぱく質の大規模生産に使用することができる。本発明はこのような方法に限らず、そのための新規なベクターにも関係する。
【0002】
(背景技術)
遺伝子操作技術の発展により、微生物を用いて有用なたんぱく質を大量に生産することが可能になった。大腸菌又は枯草菌のような原核生物はその明確に確立された遺伝的性質のため宿主として広く使用されている。しかし、薬理学的に興味のある生物学的分子の殆どは真核生物細胞から分泌されるたんぱく質であり、これは原核生物から生産しようとする場合は、しばしば機能しない。従って、好ましい真核生物たんぱく質、例えばホルモン、抗体、凝固因子、プロテアーゼ、酵素、成長因子、並びにワクチンに使用される病原体の阻害剤および分子を工業的規模で生産する場合に問題となっている。理想的には、発酵により安価に生育できる微生物を用いてこれらの分子を生産することであるが、バクテリアなどの発現システムは真核生物により用いられる分泌器官に欠け、従って、この種のたんぱく質を正しく合成することができない。
【0003】
酵母、真核生物の単一細胞として、この問題に対して極めて有望なものと思われる。なぜならば、酵母は全ての真核生物に共通の正常な分泌路を有しているからである。しかし、このアプローチは部分的な成功にしか繋がっていない。なぜならば、異種たんぱく質の殆どが誤って局在化されたり、正しく折り返しされていないからである。正しく局在化させる1つの方策は、異種たんぱく質の輸送を方向付ける内生信号シーケンスを小胞体に融合させることであり、これは分泌路の第1のステップである。これにより局在化の問題の解決に役立つことになるが、内生信号シーケンスの助けで殆どの異種たんぱく質を正しくその区分に輸送させたとしても、依然として正しく折り返されないでいる。このような状況下で、哺乳類組織培養を用いた合成法が唯一の実際的選択となっていた。残念ながら、そのための生育媒体および必要な装置は非常に高価であり、複雑な選択となる。
【0004】
酵母は更に安全性が高い。なぜならば、サッカロミケスはアルコール製品およびパンなどの発酵製品の製造に古くから使用されてきたからである。酵母は一般に、バクテリアよりも高い細胞密度で培養され、更に連続方式で行われる。更に、イーストは培養基に輸送されたとき、分泌されたたんぱく質の糖たんぱく質化を促進させ、この変性に必要なたんぱく質の活性を保存させる。しかし、他の微生物から分泌された多くのたんぱく質がイースト中で活性たんぱく質をなぜ生産できないかがなぞのままであり、この種のタイプのたんぱく質のための不確実な発現システムもそのまま残されたものとなる。
【0005】
上記説明から明らかなように、たんぱく質の誤折返し(misfolding)(不完全な折り返し、又は折返し不良)の問題を生じさせることなく、イースト中での生産の利点を生かすことができる効果的で、簡便で、かつ、迅速な形質転換システムの開発の必要性が依然として存在する。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記要望を達成し得るイーストのための形質転換方式を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、バクテリアに適用されるような形質転換法を異種たんぱく質の商業的生産のために適用可能なメカニズムを提供することである。
【0008】
本発明の更に他の目的は、このような形質転換プロコールに使用するためのポリヌクレオチド構成、ベクター、形質転換細胞を提供することである。
本発明の他の目的は以下の本発明の記述から明らかになるであろう。
【0009】
(発明の概要)
この方法は、酵母の遺伝的改良を可能にし、商業的に重要なたんぱく質製品、例えばヒトの成長ホルモンなどの大規模生産のための生物発酵剤として容易に使用することができる。本発明は、多くの異種たんぱく質が折返し不良を生じさせていた酵母発現システムと関係する従前の問題を解決することにより、酵母中での異種分泌たんぱく質の正しい合成を促進させるものである。更に、本発明は、酵母の発現が或る程度の成功を収めたたんぱく質の収率および活性を改善するものである。すなわち、本発明は、元の宿主微生物中で合成されたたんぱく質とより類似(同一でないとしても)する異種たんぱく質の生産を酵母中で可能とするものである。
【0010】
本発明の形質転換法を用いることにより、当該分野で公知であって、バクテリア、植物および動物に対し日常的に適用されてきた遺伝子工学技術を酵母に対し遺伝子的に操作し、組換えたんぱく質の収集のための生産に利用することができる。
【0011】
本発明によれば、誤折返しの(misfolded)たんぱく質を細胞質ゾルに戻し退化させるところの酵母による品質管理機構が操作され、従って、このようなたんぱく質が代わりに分泌される。本発明の好ましい態様において、受容酵母細胞が使用され、これを操作することにより、O−グリコシル化物又はSec13族の副路(Bypass of Sec Thirteen families)と関連する酵素が抑制される。品質管理の一部として、酵母特異的修飾を有するたんぱく質が除去される。O−グリコシルかの抑制は、正しくない酵母特異的修飾を防止し、それにより酵母の品質管理機構を避けることができる。本発明によれば、欠失突然変異株などの本発明の受容宿主細胞、アンチセンス又はこれらの酵素族の調節経路に含まれる酵素の外因性アゴニスト又はアンタゴニストの管理さえも発生させるための任意の方法を使用することができる。
【0012】
本発明は更に、このようなトランスジェニック(形質転換)酵母から分離されたたんぱく質産物を含む新規な組成物を提供する。更に、この手法に用いられる発現構成体並びに、形質転換細胞、ベクター、これらを組み込んだ形質転換酵母細胞なども提供するものである。好ましい態様において、酵母中にて形質転換たんぱく質の生産を容易にするように新規なベクターが設計されている。
【0013】
定義:
本発明の組成物、方法に関係する種々の用語が使用されているが、この明細書および請求の範囲全体に亘って、特に断りのない限り、その意味は以下に定義する通りである。
【0014】
種々の単位、接頭語、記号はそれぞれ認められたSI単位系で表されている。特に断りのない限り、核酸は5′末端から3′末端に向って左から右に記載され;アミノ酸配列はアミノ基からカルボキシル基に向かって左から右にそれぞれ記載されている。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含み、その規定された範囲内の各整数を含むものである。アミノ酸は、IUPAC−IUB生化学命名委員会により推薦された一般に公知の3文字記号又は1文字記号で参照されている。同様に、ヌクレオチドも一般に認められている単一文字コードにより参照されている。特に別途与えられていない限り、ここに記載されているソフトウエア、電気および電子用語は文献、The New IEEE Standard Dictionary of Electrical and Electronics Terms (5版、1993)に定義されているものである。以下に定義する用語は明細書全体を参照することにより、より完全に定義づけられるものである。
【0015】
“アンチセンス・オリゴヌクレオチド”とは、少なくとも6個の連続的ヌクレオチドの分子であり、これはDNA(アンチジーン)又はRNA(アンチセンス)に対し相補的であり、内因性たんぱく質の転写又は翻訳のプロセスと干渉し、従って遺伝子産物が抑制される。
【0016】
“クローニングベクター”は、DNA分子、例えばプラスミド、コスミド、バクテリオファージであり、これはホスト(宿主)細胞にて自律複製する能力を有する。クローニングベクターは典型的には、1又は小数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含み、この部位で、ベクターおよびクローニングベクターで形質転換された細胞の認識および選択に使用するのに適したマーカー遺伝子の基本的生物学的機能を失うことなく確定可能な形式で異質のDNA配列が挿入される。このマーカー遺伝子は、典型的なものとして、ハイグロマイシン、テトラサイクリン、アンピシリンなどの抗生物質に対し抵抗を示すものが含まれる。
【0017】
“コーデング・シーケンス”又は“コーデング領域”とは、シーケンスが発現されたとき、遺伝子産物を生産するのに必要なシーケンス情報を有する核酸分子を指すものである。
【0018】
“少なめに修飾された変異型”の用語は、アミノ酸および核酸配列の双方に適用される。特定の核酸配列に関し、少なめに修飾された変異型は、アミノ酸配列の同一の変異型又は少なめに修飾された変異型をコード化する核酸を指す。遺伝暗号の同義性のため、多数の機能的に同一な核酸が或る与えられたたんぱく質をコード化する。例えば、コドン、GCA、GCC、GCGおよびGCUは全てアミノ酸、アラニンをコード化する。すなわち、アラニンがコドンにより特定されるところの全ての位置において、コード化されたポリペプチドを変化させることなく、コドンは記述された対応する任意のコドンに変化し得る。このような核酸変異は“サイレント変異”であり、少なめに修飾された変異の1つの種を表している。遺伝暗号を参照することによりポリペプチドをもコード化するこの場合の核酸配列の全ては、核酸の全ての可能なサイレント変異を記述するものである。核酸中の各コドン(通常、メチオニンのための唯一のコドンであるAUG および通常、トリプトファンのための唯一のコドンであるUGGを除く)を修飾することにより機能的に同一の分子を生産し得ることは当業者であれば認識し得るであろう。従って、本発明のポリペプチドをコード化する核酸の各サイレント変異は、記述された各ポリペプチド配列中に暗示されており、本発明の範囲に含まれるものである。
【0019】
アミノ酸配列に関し、核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はたんぱく質配列に対する個々の置換、削除、又は追加であって、コード化シーケンスにおいて単一のアミノ酸又はアミノ酸の僅かな割合を変更、追加、又は削除するものは“少なめに修飾された変異型”であり、この変化はアミノ酸を化学的に類似するアミノ酸で置換することになる。すなわち、1ないし15からなる整数の群から選択されるアミノ酸残渣の任意の数のものがそのように変更される。従って、例えば、1,2,3,4,5,7および10個の変更が可能である。
【0020】
少なめに修飾された変異型は一般に、それらが得られた元の非修飾ポリペプチド配列と同様の生物学的活性を与える。例えば、基質特異性、酵素活性又はリガンド/レセプター結合性はその生来の基質についての生来のたんぱく質の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%である。機能的に同様のアミノ酸を与える保守的(conservative)置換表は周知である。
【0021】
以下の6つのグループは夫々互いに保守的(conservative)置換であるアミノ酸を包含している:
1)アニリン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、ワセリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
更に、Creighton(1984)Proteins W.H. Freeman and Companyを参照のこと。
【0022】
“共抑制”の擁護は、微生物中での遺伝子の発現を抑制する方法であり、この場合、構成物(construct)が微生物に導入される。この構成物は常在性遺伝子と同一、又は常在性遺伝子とヌクレオチド相同を分ち合う配列の1又はそれ以上のコピーを有している。
【0023】
特定の核酸について“コード化する”又は“コード化された”とは、特定のたんぱく質への翻訳のための情報を有することを意味する。たんぱく質をコード化する核酸は、その核酸の翻訳された領域内に非翻訳シーケンス(例えばイントロン)を含むこともあり、又はこのような介入的非翻訳シーケンス(例えば、cDNAのように)に欠けることもある。たんぱく質がコード化される情報はコドンの使用により特定される。典型的なものとして、アミノ酸配列は“ユニバーサル”遺伝暗号を用いて核酸によりコード化される。しかし、ユニバーサル遺伝暗号の変異型、例えば或る種の植物、動物、ミトコンドリア菌、マイコプラズマ・カプリコラム(Mycoplasma capricolum)又は繊毛虫に存在するようなもの、は核酸がその中に発現されているときに使用することができる。
【0024】
核酸が合成的に製造され又は変更されるとき、核酸が発現される目的の宿主の公知のコドンを選択することが好ましい。例えば、本発明の核酸配列は植物および菌種の双方に発現させることができるが、配列を特定のコドン選択およびGCコンテント選択(GC content preferences)の為に修飾することができる。なぜならば、ここに引用した参照文献に記載されているように、これらの選択物は異なるものであるからである。
【0025】
“発現”の用語は、遺伝子産物の生合成を指している。構造的遺伝子発現はmRNAへの構造遺伝子の転写およびこのmRNAから1又はそれ以上のポリペプチドへの翻訳が含まれる。
【0026】
“発現ベクター”とは、宿主細胞に発現されている遺伝子を含むDNA分子である。典型的には、遺伝子発現はプロモータ、組織特異的調節因子およびエンハンサーを含む或る種の調節因子の制御下に置かれる。このような遺伝子は調節因子に“操作可能に連結”されていると言われている。
【0027】
ここで使用されているところの、核酸との関連での“異種”とは、外来種に由来する核酸であり、同一種から由来するものとすると、それは故意的なヒトの介入による組成および/又はゲノム座に関しての生来の形態から実質的に修飾されたものである。例えば、異種構造遺伝子に操作可能に連結されたプロモータは、その構造遺伝子が得られたものとは異なる種からのもの、又は同一種から由来するものとすると、その本来の形態から実質的に修飾されたものとなる。異種たんぱく質は外来種からのもの、又は同一種から由来するものとすると、それは故意的なヒトの介入により本来の形態から実質的に修飾されたものとなる。
【0028】
ここで用いられている“高厳格性”とは、以下に相当する条件又はハイブリッド形成を意味する。すなわち、50%ホルムアミド、5X SSPE, 2% SDS, 10Xデンハルト(Denhardt't)溶液、および100μg/mLサケ精子DNAを含む緩衝液中に42℃で12時間ハイブリッド化し、55℃で0.1X SSC, 0.1% SDSにより洗浄し、Kodak X-Omat ARフィルムに−70℃で4日間 露出させる。
【0029】
“宿主細胞”とは、ベクターを含み、ベクターの複製および/又は発現を支持する細胞を意味する。宿主細胞は大腸菌のような原核生物細胞、又は菌類、昆虫、両生類又は哺乳類細胞のような真核生物細胞であってもよい。好ましい宿主細胞は菌類細胞である。
【0030】
核酸を細胞に挿入する文面における“導入した”の用語は、“トランスフェクション”、“形質転換” 又は“トランスダクション(形質導入)”を意味し、真核生物細胞又は原核生物細胞への核酸の組み入れを参照する場合も含み、この場合、核酸は細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、色素体又はミトコンドリアDNA)中に組み込まれ、自律リプリコンに変換され、又は過渡的に発現される(例えば、感染mRNA)。
【0031】
“ポリヌクレオチド構成”又は“DNA構成”の用語は、発現構成を指す場合に時折用いられる。しかし、これは更に、生来の宿主細胞配列又は例えばウイルスの見られるものに相当する外因性配列の共抑制のために設計されたアンチセンス・オリゴヌクレオチド又はヌクレオチドを含むものである。
【0032】
“操作可能に連結された”の用語は、コード化シーケンスの発現のために必要な調節シーケンスがコード化シーケンスとの関連で核酸分子の適当な位置に配置され、コード化シーケンスの発現を可能にすることを意味している。これと同一の定義が、発現ベクター内での他の転写制御因子(例えば、エンハンサー)のシーケンスにも適用される。
【0033】
転写および翻訳制御シーケンスはDNA調節シーケンス、例えば、プロモータ、エンハンサー、ポリアデニル化信号、ターミネイターなどであり、これらは宿主細胞中でのコード化シーケンスの発現のために提供される。
【0034】
ここで使用されている“ポリヌクレオチド”は、デオキシリボポリヌクレオチド、リボポリヌクレオチド又はこれらの相似体であって天然のリボポリヌクレオチドの基本的性質を有し、厳密なハイブリッド化条件のもとで、天然のヌクレオチドと実質的に同様のヌクレオチド配列にハイブリッド化され、および/又は、天然のヌクレオチドと同様のアミノ酸に翻されるものをも指す。ポリヌクレオチドは、天然又は異種構造又は調節遺伝子の全長のもの、又は部分列のものであってもよい。特に指示しない限り、この用語は特定の配列およびその相補的配列を包含するものである。従って、ポリヌクレオチドのように、安定性又はその他の理由により修飾された主鎖を有するDNA又はRNAの用語はその意味で使用されている。更に、2つの例を挙げて説明すると、通常でない塩基、例えばイノシン、又は修飾された塩基、例えばトリチル化塩基は、ここで用いられる用語として、双方ともポリヌクレオチドである。DNA又はRNAに対し、非常に多くの修飾がなされており、これらは当業者に公知にように多くの有用な目的に役立つものである。ここで使用されるポリヌクレオチドの用語は、そのように化学的、酵素学的又は代謝的に修飾されたポリヌクレオチドの形態を包含し、更に、ウイルスおよびなかんずく単純および複雑な細胞を含めた細胞の特徴を表すDNA又はRNAの化学的形態をも包含する。
【0035】
本明細書に互換的に使用されている“ポリペプチド”、“ペプチド”又は“たんぱく質”の用語は、アミノ酸残基のポリマーを指している。これらの用語は、アミノ酸残基の1又はそれ以上が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学的類似体であるアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマーにも適用される。天然に存在するアミノ酸のこのような類似体の基本的性質は、たんぱく質に組み込まれたとき、そのたんぱく質は抗体に対し、つまり、同一のたんぱく質に対し引き出されたものであるが、天然に存在するアミノ酸で全体的に構成される抗体に対し特に反応的となる。これら“ポリペプチド”、“ペプチド”又は“たんぱく質”の用語は、限定的ではないが、ホスホリル化、グリコシル化、脂質付加、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマーカルボキシル化、ヒドロキシル化、およびADP−リボシル化などを含む修飾をも含まれる。公知のように、又は上記のように、ポリペプチドは全体が線状的なものではない。例えば、ポリペプチドはユビキチン化のため、分岐状であったり、あるいは、翻訳後処理、例えば天然の処理事象、天然には生じないヒトの操作による事象の結果、一般に生じるところの分岐鎖を有する又は有しない環状のものとなる。環状、分岐状、分岐環状ポリペプチドは非翻訳の自然のプロセスにより、又は完全な合成法により合成することができる。更に、本発明は、本発明のたんぱく質のメチオニン含有およびメチオニン非含有末端アミノ基変異体を包含するものである。たんぱく質に関し、“N−末端領域”とは、たんぱく質の末端アミノ基に隣接する約50個のアミノ酸を含む領域である。
【0036】
“プロモータ”、“プロモータ領域”又は“プロモータ配列”の用語は、一般に、遺伝子の転写調節領域を指し、コード化領域の5′又は3′側、又はコード化領域内、又はイントロン内で見られる。一般に、プロモータは、細胞内でRNAポリメラーゼを結合することができ、かつ、下流側(3′側)コード化シーケンスの転写を開始し得るDNA調節領域である。典型的な5′プロモータ配列は、3′末端で転写開始部位により境界が限られ、上流に向けて延び(5′方向)、背景以上の検知可能なレベルで転写を開始するのに必要な塩基又は因子の最小数を含む。プロモータ配列内には転写開始部位(ヌクレアーゼS1を用いたマッピングで都合よく規定できる)並びに、RNAポリメラーゼの結合の原因となるたんぱく質結合領域(コンセンサス配列)がある。このプロモータの用語は、上記配列の基本的調節特性を含み、かつ、翻訳開始部位の前の長い末端繰返し領域を適宜包含する。
【0037】
“組換え宿主”は、クローニングベクター又は発現ベクターのいづれかを含む原核生物細胞又は真核生物細胞のいづれであってもよい。この用語は、更に、宿主細胞の染色体又はゲノム中にクローン遺伝子を含むように遺伝子的に処理した原核生物細胞又は真核生物細胞であってもよい。
【0038】
“レポータ遺伝子”の用語は、標準的方法で直接的又は間接的に容易に検知することができる産物をコード化できる遺伝子を指す。
【0039】
“選択可能なマーカー遺伝子”の用語は、形質転換細胞に対する抗生抵抗のような選択可能な表現型を、発現の際に、付与する産物をコード化する遺伝子を指す。
【0040】
オリゴヌクレオチド又は他の単一ストランドの核酸分子に関して、“特異的にハイブリッド化する”の用語は、十分に相補的な配列の2つの単一ストランドの核酸分子間の会合を指し、そのハイブリッド化が当該分野で一般に用いられている所定の条件下で、すなわち、厳密な条件下(時折、“実質的に相補的”と呼ばれる)で可能であることを意味する。特に、この用語は単一ストランドのDNA又はRNA分子内に含まれる実質的に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドのハイブリッド化を指し、非相補的な配列の単一ストランドの核酸を有するオリゴヌクレオチドのハイブリッド化を実質的に除外するものである。
【0041】
“構築遺伝子”の用語は、メッセンジャーRNA(mRNA)に転写されたDNA配列を指し、これは次に特定のポリペプチドの特徴を示すアミノ酸配列に翻訳される。
【0042】
“ベクター”は、リプリコン、例えばプラスミド、ファージ、コスミド、ウイルスを指し、これに対し他の核酸セグメントが操作可能に挿入され、このセグメントの複製および発現を生じさせる。
【0043】
(図面の説明)
図1は、酵母におけるKHNの発現を示す写真図。ここでKHNは野生型細胞およびER関連退化突然変異体cue1として表されている。これら細胞を35Sアミノ酸でパルス標識付けし、図示の時間に亘って追跡した。ついで、KHNを洗浄溶解物から免疫沈降し、SDS−PAGEにより溶解し、更にオートラジオグラフィにより可視化した。
【0044】
図2は、 エンドグリコシダーゼHを用いてKHNからのN結合糖の除去を示す写真図である。cue1細胞に表されたKHNを35Sアミノ酸でパルス標識付けし、図示の時間に亘って追跡した。ついで、KHNを免疫沈降させ、エンドHを用いて処理又はモック(mock)処理した。次いで、KHNをSDS−PAGEにより溶解し、更にオートラジオグラフィにより可視化した。
【0045】
図3は、O-結合グリコシル化により修飾したKHNを示す写真図である。ここでKHNはcue1、pmt2およびpmt1突然変異体菌株で表されている。細胞をパルス標識付けし、記載されているように追跡した。ついで、KHNを免疫沈降させ、図1のように分析した。
【0046】
図4は、BST1遺伝子およびPMT2遺伝子についての細胞突然変異体を示すグラフ図であって、野生型との比較においてKGFP活性が劇的に改善されたことを示している。平均蛍光強度はΔbst1細胞については5倍であり、Δpmt2細胞については9倍となっている。
【0047】
図5は、KGFP-発現細胞の蛍光顕微鏡写真図である。ここで、KGFPを発現する野生型およびpmt2突然変異細胞は、Spot IIデジタルカメラと連動させたZeiss Axioplanエピ蛍光顕微鏡を用いて写した。露光時間は図示の通りである。
【0048】
図6は、KHNは急速に退化されたたんぱく質であり、これはGolgi器官に輸送される。(A)KHNを発現する野生型およびΔcue1細胞は[35S]メチオニン/システインを用い30で10分間、代謝的にパルス標識付けし、図示の時間に亘って冷間追跡した。KHNを抗HNポリクローン抗血清を用い洗浄溶解物から免疫沈降し、10%SDSポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により溶解させた。指示した箇所において、N−結合炭水化物を免疫沈降したたんぱく質中にて500UエンドグリコシダーゼH(エンドH)を用いて3時間、培養することにより除去した。非特異的に免疫沈降したたんぱく質の位置は星印で示している。(B)KHNを発現する野生型Δpmt1細胞およびΔpmt2細胞を上記(A)について記載したのと同様に分析した。(C)KHNを発現する野生型、sec12-4およびsec18-1細胞を22℃で対数期で生育させ、37℃でシフトさせた。30分後、細胞をパルス標識付けし、図示の時間に亘って追跡した。KHNを免疫沈降し、上記(A)について記載したのと同様に分析した。KHNp1およびKHNp2型の位置は指示され(A)、矢印がp1型の位置を示している(BおよびC)。
【0049】
図7は、KHNtはERAD経路による退化のための基板である。(A)KHNtを発現する野生型および突然変異菌株を[35S]メチオニン/システインを用いて10分間、パルス標識付けし、図示の時間に亘って冷間追跡した。KHNtの免疫沈降を抗HAモノクローン抗体(HA.11:BabCo)を用いて行い、トータルTCA析出可能カウントにより正規化した。たんぱく質をSDS−PAGEにより分析し、更にオートラジオグラフィにより可視化した。(B)上記Aについて記載した実験を、Aに示したオートラジオグラムを発生させたのと同一のゲルを用いたホスホリルマーガー(phosphorlmager)分析により定量した。(C)野生型およびERAD突然変異体中におけるKHNtの相対定常状態レベルをイムノブロッテングにより分析した。細胞溶解物(細胞の0.2OD600当量)の等量を各レーンに負荷させ、電気泳動により分離し、ニトロセルロースに移し、HA.11モノクローン抗体を用いて調べた。たんぱく質をケミルミネセンス(Pierce Chemical社)を用いて可視化した。(D)野生型およびERAD突然変異細胞のKHN+の免疫局在化を、固定および浸透化細胞を用いグラススライド上にて行った。KHNtおよびBiPを、α‐HAモノクローン抗体およびα‐Kar2pポリクローン抗血清を夫々用いて検出した。蛍光二次抗体の結合の後、KHNtをレッドチャンネル(a,bおよびc)中にて可視化し、BiPをグリーンチャンネル(d,eおよびf)中にて可視化した。各チャンネルにおいて、画像を同一の露出時間で捕捉した。バー(Bar)は2μm。
【0050】
図8は、ER-to-Golgi輸送が、可溶性であるが非膜結合のERAD基質(substrate)の退化のために必要である。(A−D)野生型およびER輸送突然変異菌株sec12-4およびsec18−1発現HA標識付きERAD基質を22℃で対数繁殖期で生育させ、37℃の制限温度で30分間、シフトさせた。更に、図7に示す説明例に従った時経歴を実行、分析した。データは種々の菌株背景における各基質2ついて退化の速度を比較するためにプロットした。Δcue1菌株をSte6-166pおよびSec61-2pについてのポジティブ対照として含めた。
【0051】
図9は、可溶性ERAD基質をCOPII小胞に含ませた。再構成COPII出芽反応を、KHNt(A)、CPY* HA(B)およびSte6-166p(C)を発現する野生型から分離したER膜上で行った。Tの標識付けレーンは出芽反応で使用した全薄膜の10分の1を表し、マイナス(−)レーンは、精製COPII成分のない状態で形成された小胞の量を示し、プラス(+)レーンは、COPIIたんぱく質を加えたときに生産された小胞を示している。全薄膜および出芽小胞を遠心分離により収集し、ポリアクリルアミド・ゲルを用いて溶解させ、標識たんぱく質について免疫ブロットを行った(immunoblotted)。グリコ・プロ・α-ファクター(gpαf)を蛍光間接撮影法を用いて検出した。
【0052】
図10は、Ste6-166pを除いて、KHNt(A)、CPY* HAの退化にはGolgi-to-ER輸送を必要とする。菌株を22℃で対数繁殖期で生育させ、33℃にシフトさせた後、直ちにパルス-標識付けした以外は、図2に示す説明例に記載のようにして、パルス-追跡分析を野生型およびsec21-1菌株発現(A)KHNt、(B)CPY* HAおよび(C)Ste6-166pについて行った。33℃での培養を冷間追跡のために継続した(時間は図示の通り)。ゲルはオートラジオグラフィ(左側)により可視化し、ホスホリルマーガー分析(右側)により定量した。Cにおいて、このゲル像はホスホリルマーガー走査によるものである。
【0053】
図11は、per17-1は回復経路に特異的な突然変異体であり、正しく折返されたたんぱく質を除く、誤折返したんぱく質の輸送を阻止するものである。(A)野生型およびper17-1細胞中のKHNt、CPY* HA、Ste6-166pおよびSec61-2pの代謝回転を、図7に示す説明例に従って代謝パルス-追跡分析により測定した。実験はSec61-2pを発現する菌株を除いて、30℃で行った。Sec61-2pを発現する菌株は30℃で対数繁殖期で生育させ、37℃の温度で30分間、シフトさせ、パルス-追跡を継続して行った。(B)Aで示すKHNt時経歴のゲルから発生した放射能写真が一番上に示されている。p1(ER)およびp2(Golgi)型の位置が示されている。内因性CPYおよびGas1pが、KHNt時経歴から作られたライゼート(溶菌液)の少量から平行して免疫沈降された。たんぱく質はゲル電気泳動により分離され、オートラジオグラフィ(P1,ER proCPY; P2,Golgi proCPY; mCPY,マチュアCPY;ER Gas 1p, Gas 1pのER型;mGas 1, マチュアGolgi修飾Gas 1p)により可視化させた。(C)野生型およびper17-1細胞を10分間、パルス標識付けし、図示した時間に亘り追跡を行った。CPSおよびALPを免疫沈降させ、ゲル電気泳動により分析し、更にオートラジオグラフィを行った。各たんぱく質のpro(proCPSおよびproALP)およびマチュア(mCPSおよびmALP)型が示されている。
【0054】
図12は、誤折返したんぱく質のper17-1細胞における免疫局在化。(A)KHNt(a-c)およびCPY* HA(d-f)を発現するper17-1細胞およびCPY* HA(g-I)を発現するΔder1細胞を固定し、対数培養から浸出させた。これらの細胞をα-HAおよびα-Kar2p抗体で染色し、ついでAlexa Fluor 546ヤギα-マウス(a,dおよびg)およびAlexa Fluor 488ヤギα-ラビット(b,eおよびh)二次抗体で染色した。DAPI(c,fおよびI)での染色により核の位置が示される。矢線は共局在化の特定位置を示している。(B)HAエピトープ標識付きSRβを発現する野生型およびper17-1細胞を、Aと同様に処理し、一次抗体に結合させた。Alexa Fluor 546ヤギα-ラビットおよびAlexa Fluor 488ヤギα-マウスを使用し、BiPをレッドチャンネル(aおよびd)で可視化させ、SRβをグリーンチャンネル(bおよびc)で可視化させた。バー(Bar)は2μM.
【0055】
図13は、出芽酵母におけるER品質管理の提案されたモデル。
転座の後、誤折返したんぱく質を保持経路(白色矢線)又は回復経路(黒色矢線)について選別する。回復経路においては、たんぱく質をCOPII小胞に包み込み、Golgi器官に輸送し、退化輸送経路を介して回復させる。ERにおいては、双方の経路の基質がERADに収斂される。たんぱく質はトランスロコン錯体を介してER膜を横切り、ユビキチン化(ubiquitination)により標識付けされ、サイトソル26Sプロテアソームにより退化される。
【0056】
図14は、pDN477、すなわち、酵母中に異種たんぱく質の高いレベルの発現を可能にする酵母発現ベクターのプラスミドマップである。メッセンジャーRNA合成が、強力なTDH3プロモータ(図示しない)により駆動される。それには、酵母BiP(KAR2)遺伝子からの信号シーケンス(‘SS')がふくまれ、これはcDNAをClal(5')およびXbal(3')部位へ挿入することによりたんぱく質の転座を共翻訳的(より哺乳類的)SRP分泌経路へと向けさせる。分泌を避けるため、又は内因性信号シーケンスを使用するため、コード化シーケンスがBamH1(5')およびXbal(3')部位へ挿入される。転写はACT1ターミネータにより終結される。ベクターは更に、酵母および複製(ARS1)および動原体(CEN4)の酵母起源における選択のためのURA3遺伝子を含んでいる。他のマーカーを備えた又はゲノムへの合体のためのpDN477の種々のバージョンについても入手可能である。
【0057】
発明の具体的説明:
本発明は、酵母中での分泌たんぱく質の折返しおよび熟成のプロセスを理解するための研究から発展したものである。この研究において、酵母分泌経路において多数の異種たんぱく質が発現された。最初のものはクラゲからのグリーン蛍光たんぱく質(GFP)であった。これを分泌経路に向けさせるため、Kar2pたんぱく質からの内因性酵母信号シーケンスをGFPの末端アミノ基に融合させた。Kar2pは酵母中のより“哺乳類”的SRP経路を利用し、この信号シーケンスはたんぱく質を特定の転座経路へ向けさせる。この信号シーケンスは、酵母特異的後転座経路を使用するところの一般に使用されているα-因子信号シーケンスとは反対に好ましい。更に、小胞体(ER)保持モチーフHDELがカルボキシル末端基に融合され、たんぱく質をERへ局在化させる。GFPはたんぱく質の折返しをモニターするのに理想的な分子である。なぜならば、その蛍光活性が正しいたんぱく質コンフォメーションに依存し、容易に測定することができるからである。発現された場合、KGFPと呼ばれるキメラたんぱく質は正しく局在化されるが、蛍光活性は非常に低く、ER中に正しく折り返されていないことを示唆している。この低い活性は分泌経路における発現に特異的である。なぜならば、ER転座突然変異体sec63を使用したサイトゾルにおける発現は鮮やかなサイトゾル蛍光を示すからである。なぜKGFPが酵母分泌経路において効果的に折り返さないかは明らかでない。
【0058】
これに対し、HNと呼ばれるサルウイルス5からの哺乳類ウイルス、グリコたんぱく質が発現したときに前進がなされた。HNが選択された理由は、その折返しが容易にモニターできるからである。酵母中にHNを発現させるため、ウイルス信号/アンカードメイン(酵母中には認められない)をKar2p信号シーケンスで置換した。KHLと呼ばれる得られたたんぱく質は、効果的にグリコシル化されたので(図1)、分泌経路に正しく標的させることができる。
【0059】
このたんぱく質は急速に退化された(図1)。これは、ERにおいて誤折返しされたたんぱく質に共通して発生する。これは、ER-関連たんぱく質退化に欠陥があるユビキチン化突然変異体cue1によりKHNが安定化されることを我々が見出したときに確認された(図1)。可動性の時間依存シフトも観察され、これは炭水化物(KHNはグリコたんぱく質である)の改質を示唆するものである。従って、このシフトが、エンドグリコシダーゼHでKHNを消化することによるN−結合炭水化物の改質によるものか否かをテストした。図2に示すように、このシフトは、KHN N-結合糖の改質によるものではない。他の可能性は、KHNがO−結合糖により改質されるということである。これは意外なことである。なぜならば、HNはその正常の哺乳類宿主においてN-結合糖によってのみ通常、改質されるからである。この可能性を、O−結合グリコシル化に欠陥がある酵母菌株にKHNを発現させることによりテストした。酵母において、O−結合グリコシル化がERで開始されるが、これはたんぱく質イムノシルトランスフェラーゼ(PMT)と呼ばれる遺伝子科の作用を介して行われる。意外にも、HNにおける改質がこれら突然変異体pmt1およびpmt2の2つにより阻止されることが本発明者により見出され、これによりKHNがO−結合グリコシル化により不適当に改質されることが示された(図3)。
【0060】
より高度の真核生物において、O−結合グリコシル化はまれな改質であり、これはGolgi器官において発生する。このように、全てのポリペプチドはO−結合糖の添加前に折り返される。対照的に、O−結合グリコシル化の最初のステップが酵母細胞のERにおいて発生する。しかし、何がO−結合グリコシル化を知らせるのかは知られておらず、殆どの異種たんぱく質がO−結合グリコシル化され得る可能性はある。従来知られていなかったので、本発明者は、O−結合グリコシル化によるER中での発生期のポリペプチドの不適当な改質が結合鎖の化学的性質を変化させ、潜在的に誤折返しを生じさせるものと仮定した。よくても、たとえ、たんぱく質が改質により折り返すことができたとしても、そのたんぱく質の活性および安定性は或る程度妥協するものとなるであろう。なぜならば、それが天然の形態のものと化学的に異なるからである。この仮定を検査するため、我々は我々のレポータ構成体KGFP(KHNはこの目的のためには余り理想的ではない。なぜならば、それが天然のHNの可溶性変種であって、哺乳類細胞における折返しについて部分的に妥協することになるからである)を用いて、この押返しに対するO−結合グリコシル化抑制作用を試験した。
【0061】
KGFPは野生型およびpmt突然変異細胞において酵母、TDH3プロモータにより発現された。KGFPが蛍光マーカーであるため、発光強度の変化を介して折返しをモニターすることができた。更に、エピ蛍光顕微鏡を用いてKGFPを発現細胞中に可視的に映し出すことができた。全ての場合において、KHNをERに正しく向けさせることができた。興味深いことに、pmt2は最も強い作用を示した。それは対照のものと比較して、より明るいER染色パターンを示した。他のpmt突然変異体4および3はより小さい作用を示した。蛍光活性の明らかな増大を定量氏、特徴づけるため、KGFPを発現する野生型およびpmt2突然変異細胞に対しフローサイトメトリーを行った。図4に示すように、pmt2細胞における蛍光活性は野生型細胞のものを超えた均一な増加を示した。その平均活性はpmt2突然変異体においてほぼ8.5倍高く(109.5ユニット対12.9ユニット)、bst1については、5.5倍の増加(71.4ユニット対12.9ユニット)を示した。この差異は固有の活性度の差によるものである。なぜならば、定量的パルス追跡分析により、発現レベルおよび安定性は双方の菌株において同様であることが判明しているからである。更に、直接蛍光鏡検法の結果、活性の劇的な改良が認められ、その改良がKGFPの誤局在化によるものでないことが示されたからである(図5)。
【0062】
これらのデータは、酵母中に発現された異種たんぱく質がO-結合グリコシル化により不適切に改質されたことを示している。言い換えれば、この改質はたんぱく質の熟成および活性化のマイナスの結果をもたらす。内因性信号シーケンスを用いた発現をO−結合グリコシル化に欠ける特定の突然変異菌株と結合させることにより、酵母に発現された異種たんぱく質の活性を劇的に改善することができることが本発明者等により確立された。酵母には6PMT遺伝子が存在し、これが重複するものでなく、基質特異性について差異を表すから、菌株から6個の遺伝子の任意のものを失欠することにより、異常型O−グリコシル化の望ましい抑制を達成することができる。更に、突然変異を、正しい折返しの促進のために組合わせることができる。すなわち、本発明者等は、酵母中の商業的に重要な分子の安価な発現の可能性を妨げていた問題を解消する新規な解決法を提供することに成功した。
【0063】
現在、準備規模でのたんぱく質の合成のための種々の発現システムが知られている。最も一般的な微生物である大腸菌は一般には、真核生物分泌たんぱく質の合成には有用ではない。なぜならば、そのバクテリア分泌が基本的に異なるからである。酵母システムはその使用が制限されたものとなっている。なぜならば、多くのたんぱく質は、先の未知の理由により忠実に合成されないからである。本発明によれば、ウイルス性グリコたんぱく質、SV5HNの可溶型で誤折返しをもたらしていたものを活用して上記問題の解決が図られている。本発明者等は、O−結合グリコシル化を抑制することにより(実施例では特定の突然変異菌株が示されているが、他の任意の抑制方法でも同様の効果が得られるものと思われる)、活性的異種たんぱく質の合成が劇的に向上することを明らかにした。更に、より“哺乳類的”である内因性共翻訳特異的(cotranslational-specific)信号シーケンスの使用も、酵母ERに対する正しい標的化のために好ましいものである。このアプローチはS.cervisiaeで開発されたが、これはS.pombeおよびS.pastorisを含む他の全ての酵母、更に他の菌にも適用することができる。なぜならば、これらは全て、ER中にてたんぱく質をO−グリコシル化する機構を共有しているからである。
【0064】
このシステムは広範な用途に供することができる。なぜならば、殆ど全ての異種たんぱく質(分泌性又は非分泌性)を合成することができるからである。例えば、これには抗体、ホルモン、成長因子およびインヒビター、毒素、凝固因子、酵素、免疫用たんぱく質などが含まれる。たんぱく質の大規模合成への適用に加えて、本発明は、酵母を、ヒトの病気に関係するたんぱく質を用いた研究および薬剤審査のための強力な研究道具として使用することを可能にするものである。例えば、嚢胞性繊維症膜貫通電気伝導調節因子(CFTR)、プリオンたんぱく質、アゴニスト又はアンタゴニストを選別するための細胞性レセプター、アルツハイマー病のβ‐アミロイド先駆物質たんぱく質の処理などに使用することができる。
【0065】
本発明によれば、酵母形質転換を、品質管理機構が抑制乃至操作された環境下で行われ、従って、GolgiおよびERにおける伝統的経路によりたんぱく質が退化されることはない。好ましい例として、受容細胞環境はO−グリコシルかが抑制されるような環境である。これは当業者にとって公知のアンチセンス(antisense)又はコサプレッション(cosuppression)の使用を介して、又はO−結合グリコシル化に関係する遺伝子中の突然変異機能を喪失した酵母宿主菌株の処理を介して達成することができる。好ましい例として、O−結合グリコシル化を遺伝子のPMT科を操作することにより抑制することができる。
【0066】
他の例として、品質管理機構をSec Thirteen遺伝子又は他の同様の機能を有する遺伝子のバイパスの突然変異又は抑制により操作することができる。
【0067】
アンチセンス又はコサプレッションは一般に知られ、かつ、使用されており、例えば、前述のAusebelらに記載されている。更に、受容酵母細胞ラインにおける突然変異を構築する技法も公知であり、Sambrookら(1989)に記載されているように標準的なものである。この技法の例として、統合的分断(Shortle,1982 Science 217:373,“Lethal Disruption of the Yeast Actin Gene of Integrative DNA Transformation”); 1工程遺伝子分断(Rothstein,1983 Methods Enzymol. 101:202-210,“One Step gene Disruption in Yeast”); PCR媒介1工程遺伝子分断(Baudinら,1993 Saccharomyces cerevisiae.Nucl.Acids Res. 21:3329-3330,“A Simple and Efficient Method for Direct gene Deletion in Saccaromyces cerevisiae”);転座(SchererおよびDavis,1979 PNAS. 76:4951-4955,“Replacement of Chromosome Segments with Altered DNA Sequences Constructed in vitro ”)などが含まれる。好ましい例として、Er品質管理の操作を用いた受容環境を、正しい品質管理に必要な遺伝子に欠ける失欠突然変異酵母又は菌受容菌株を処理することにより作ることができる。
【0068】
本発明の好ましい例において、上記遺伝子はByPass 又はSec 13(Thirteen)遺伝子(Elrod-EricksonおよびKaiser, 1996, Molecular biology of the Cell, 7:1043)である。他のそのような遺伝子を、同様の機能を有し、かつ、本発明に有用なBST科中の酵母中に同定し得ることが予想される。他の酵母BST遺伝子を他の種から公知のシーケンスを用いて同定することができ、それによりプローブを発生させ、公知の技術に従ってライブラリーでハイブリッド化する。この技術については本明細書に開示されており、かつ、文献、Ausubel, Protocols in Molecular Biology 1997, Wiley and Sonsにも開示されている。
【0069】
他の好ましい例において、受容酵母細胞を操作し、O-マンノシル化の抑制が行われる。これはO−結合グリコシル化経路において酵素を抑制することにより達成される。菌に最初に観察されたたんぱく質O-マンノシル化が小胞体で開始され、分泌たんぱく質のセリル又はトレオニル残基のドリコル活性化マンノースからマンノースの転写が行われる。この反応はたんぱく質O-マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)の科により触媒化される(Protein O-mannosylation, Biochimicaら、Biophysica Acta 1426(1999)297-307、Strahl-Bolsingerら)。
【0070】
好ましい例において、抑制される酵素は遺伝子のPMT科である。現在、6又はそれ以上のたんぱく質O−グリコシル化遺伝子PMT1-7が知られている(The PMT gene family: protein O-glycosylation in Saccharomyces cerevisiae is vital, The EMBO Journal Gentzsch et al, vol 15, no.21 pp.5752-5759 1996)。
【0071】
たんぱく質o-マンノシル化はO-結合グリコシル化における最初の工程であり、この経路における他の工程の抑制は本発明により同様の結果を与えるものと予想される(例えば、Hersgovicsら、”Glycoprotein Biosynthesis in Yeast", The FASEB Journal Vol. 7 1993 pgs 540-550参照)。これは、例えば、第3のマンノース残基の結合を助けるMNT/KRE2遺伝子科(KTR1およびYUR1)の抑制を含む。他のO-結合グリコシル化突然変異体を、ここに記載された計画案を使用して容易に調べることができ、本発明に従って働くことのできる他の突然変異体を日常のスクリーニングにより識別することができるであろう。
【0072】
酵母における組換えたんぱく質の製造を、本発明で開示された技法と、当業者に公知の種々の技法および手段とを組合わせて行うことができる。本発明は更に、ポリヌクレオチドの使用を含み、これはその発現が宿主菌細胞に好ましい構築遺伝子をコード化する。これらのポリヌクレオチドはしばしば、構築遺伝子およびしばしば終止配列に操作可能に結合されたプロモータ領域を組み入れた発現構築物の形をなしている。この構築物は遺伝形質転換たんぱく質を直接的に分泌させる信号シーケンスを含むものであってもよい。この構築物は通常、ベクター内に、プラスミドベクターを含み、このプラスミドベクターはバクテリア(クローニングベクター)内にベクターの複製および維持のための特徴、および宿主(発現ベクター)内に、選択可能なマーカー遺伝子および/又は組込みのための配列および/又は機能を含む。
【0073】
これらの成分の各々は、本発明で使用されるとき、本発明の範疇に含まれる。殆どの場合、別の手段が全てのプロセスの各段階において存在する。これらの手段の選択は変化要因に依存し、例えばプラスミドベクターシステムであって、組換えDNA分子乃クローニングおよび導入、改質されるべき酵母種、特定の構築遺伝子、プロモータ要素、使用される上流側要素などの選択されるものに依存する。当業者であれば、機能を達成するため、適当な別の手段を適宜選択することができるであろう。公知のように、多くの酵母種は形質転換可能であり、発酵性であり、従って、本発明に従うプロモータ分子の調整制御下で所望の遺伝子を含み、発現する細胞を得ることができる。
【0074】
以下のものは、本発明の方法を実施する際に使用される分子生物学的技法の非制限的全体像である。
本発明のポリヌクレオチド構築物は分子生物学の分野で周知の類似の要素を共有する。例えば、各構築物において、興味のあるDNAは、好ましくは酵母細胞にて機能するプロモータに操作可能に連結され(すなわち、確実に機能するために配置され)、それによりDNAを転写することができ(RNA転写へ)、更に複製システムを含むベクターを有するであろう。好ましい例として、興味のあるDNAは、外因源からのものであり、共抑制(co-suppression)が所望の計画案のものでない限り、内因性遺伝子の共抑制を防止するようになっている。
【0075】
酵母クローニングベクターおよび遺伝子:
酵母での複製モードに基づいて、一般に使用されている酵母は、5種類のカテゴリーに分類することができる。つまり、Yip, Yrp, Ycp, YTEpおよびYlpプラスミドである。Ylpプラスミド(酵母線状プラスミド)を除いて、全てのものは大腸菌、プラスミドベクターデベロップメント内に維持することができる。
【0076】
キメラプラスミドベクターの3つのタイプのものがStruhlらにより開発された(Struhl、K., 1979, "High-frequency transformation of yeast: autonomous replication of hybrid DNA molecules", Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:1035-1039): (i) Ylpプラスミド(酵母組込みプラスミド):受容菌株のゲノムに組み込まれることにより複製したり、形質転換することはできない;(ii) YEpプラスミド(酵母エピソーマルプラスミド):酵母2−μmサークル、内因性酵母プラスミドの複製源を有し、受容細胞中で複製することができる;(iii) YRpプラスミド(酵母複製プラスミド):酵母自律複製配列(ARS)を利用して、複製することができる。組込みベクターは低い効率、1-10形質転換体/μgで形質転換された。酵母細胞中で複製できるプラスミドは、より高い効率で形質転換された。Yepベクターは一般に、0.5−2.0x104形質転換体/μg(入力プラスミドDNA)で形質転換される。YRp7プラスミドは、0.5−2.0x103形質転換体/μg(入力プラスミドDNA)を作製した。Struhlら(Struhl、K., 1979, "High-frequency transformation of yeast: autonomous replication of hybrid DNA molecules", Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:1035-1039): (i) Ylpプラスミド(酵母組込みプラスミド)は、ゲノムへの組込みを要するプラスミドは、酵母細胞中で自律的に複製で鬼る酵母プラスミドベクターよりも、低い効率で形質転換されることを実証した。それ以来、2つの他の酵母プラスミドベクターが開発された。ARSおよび酵母動原体を有する酵母動原体プラスミド(YCp)(Clarke, L.,ら、1980、”Isolation of a yeast centromere and construction of functional small circular chromosomes", Nature, 287:504-509; Parent, S.A.ら、1985、“Vector system for the expression, analysis and cloning of DNA sequences in S. cerevisiae", Yeast J: 83-138)はYRpプラスミドよりも安定であるが、1細胞当り僅か1つのコピーにしか存在しない。酵母人工動原体(YACs)は、動原体およびABS と共に、2つの選択可能なマーカー、2つのテロマー、およびクローニング部位を有する円形プラスミドとして増殖された(Burke, L.,ら、1987、”Cloning of large segments of exogenous DNA into yeast by means of artificial chromosome vectors", Science, 236:806-812; Murray, A.W.,ら、1983、”Construction of artificial chromosomes in yeast", Nature, 305:189-193)。このベクターはテロメア(末端小粒)間の配列を除去することにより線状化され、異質DNAはクローニング部位に挿入される。その結果、長さが100-1000kbの線状人工クロソームが得られ、これは有糸分裂又は減数分裂を介して増殖することができる。
【0077】
プロモータ:
本発明の方法で使用される発現構成体、プロモータ又は制御システムは、誘導プロモータおよび構成性プロモータを含むものもよい。多数の適当なプロモータシステムが入手可能である。誘導酵母プロモータの例として、GAL(ガラクトキナーゼ)およびPHO5(アルカリ性ホスファターゼ)が挙げられる(SchneiderおよびGuarente, 1991)。GALプロモータはガラクトースにより活性化され、PHO5はホスフェートのない媒体により誘発される。
【0078】
構成性プロモータも使用することができる。この例として、ADH1(アルコール・デヒドロゲナーゼI)、TPI(トリオース・ホスフェート・イソメラーゼ)およびPGK(3ホスホグリセレート・キナーゼ)が最も一般的に使用される(Ausubel, Short Protocols in Molecular biolory, 1999 John Wiley and Sons)。
これらおよび他のこのようなプロモータは公知であり、Genbankなどから入手可能である。好ましい例において、このプロモータは受容宿主細胞種と相同のものが使用される。例えば、S. cerevisiae形質転換プロトコルにおいて、S. cerevisiaeプロモータをポリヌクレオチド構築に使用することができる。
【0079】
このプロモータ構成体にイントロン配列を含めることも好ましい。なぜならば、コード化領域にイントロン配列を含めることにより、発現および特異性が向上するからである。
【0080】
更に、1つのプロモータの領域を、異なるプロモータの領域に結合させ、所望のプロモータ活性を得て、キメラプロモータとしてもよい。遺伝子発現を調節する合成プロモータも使用可能である。
この発現システムは、転写ターミネータおよび/又はエンハンサー素子のような補足素子を使用することにより、更に最適化することができる。
【0081】
他の調節用部材:
プロモータ配列に加えて、発現カセット又はポリヌクレオチド構成体は、更に構築遺伝子の下流側に転写終止領域を含め、効率的終点を提供するようにしてもよい。この終止領域又はポリアデニル化信号はプロモータ配列と同様の遺伝子から、又は異なる遺伝子から得ることができる。このポリアデニル化配列には、限定的ではないが、Agrobacteriumオクトピンシンサーゼ(octopine synthase)信号(Gielenら、EMBO J.(1984) 3:835-846)又はノパリンシンサーゼ(nopaline synthase)信号(Depickerら、Mol.and Appl. Genet.(1982) 1:561-573)が含まれる。
【0082】
トランス遺伝子により製造されたたんぱく質の、亜細胞区画、例えば空胞、ペルオキシソーム、グリオキシソーム、細胞壁又はミトコンドリオンへの輸送、又はアポプラスト又は成長培基の分泌のため輸送は、信号シーケンスをコード化するヌクレオチド配列を、関係するたんぱく質をコード化する遺伝子の5´および/又は3´領域へ操作可能に連結することにより達成することができる。構築遺伝子の5´および/又は3´末端へ配列を向けさせることにより、たんぱく質合成および処理の間に、コード化されたたんぱく質が最終的に何処に配置されるのかを判定することができる。信号シーケンスの存在はポリペプチドを細胞内小器官又は亜細胞区画へ向けさせ、又は分泌のためアポプラストへ向けさせ、又は外部環境へと向けさせる。多くの信号シーケンスが特に酵母のために知られており、例えばBiPシーケンスが知られている。たんぱく質コード化シーケンスに操作可能に結合されたシーケンスは、得られるたんぱく質を分泌たんぱく質にさせる。分泌たんぱく質のための信号シーケンスの使用は本発明にとって好ましいが、本発明は信号シーケンスにより方向付けられた分泌たんぱく質に加えて、従来の方法により処理されたたんぱく質をも包含することを意図している。
【0083】
マーカー遺伝子:
ここに記載したDNA配列およびプロモータの任意のものを含む組換えDNA分子は、更に選択マーカー遺伝子を含むものであってもよい。なお、この選択マーカー遺伝子は、薬品又は生理学的ストレスに対する細胞抵抗を付与する選択遺伝子生産物をコード化したり、細胞に区別可能な表現型特徴を付与し、組換えDNA分子で形質転換された細胞が選択剤を用いて容易に選択できるようにするものである。酵母の形質転換に使用される選択可能なマーカー遺伝子の例としては、URA3, LEU2, HIS3およびTRP1などを挙げることができる。これらの遺伝子は酵母宿主における特別の代謝欠陥(栄養要求性)を補うものである。例えばベノミル又は真核毒などの殺菌剤に抵抗を示すマーカーを使用してもよい。
【0084】
複製剤:
酵母発現ベクターは酵母2−μmサークルから得られる複製剤を含むものであってもよい。なお、この酵母2−μmサークルは、娘細胞への正しいコード番号および正しい分離を確実に与えるDNA部位および遺伝子を有するものである。
【0085】
たんぱく質:
本発明による遺伝形質転換酵母を用い、異質たんぱく質を商業的規模で生産することができる。すなわち、形質転換された酵母の選択および増殖のための技術、すなわち公知の技術、を用いて従来の方法により複数の遺伝形質転換酵母を得て、ついで、異種たんぱく質を関連する組織又はトータルバイオマスから抽出し、又は成長培地に分泌させ(液体又は固体)、それにより回収する。植物および菌バイオマスからのたんぱく質抽出は公知の方法(HeneyおよびOrr, Anal. Biochem. 114: 92-6(1981);および個々に引用した参照文献)により行うことができる。
【0086】
形質転換:
酵母の形質転換について、多数の標準的プロトコル(計画案)が存在し、下記のようなものを、本発明に従って使用することができる。
スフェロプラスト形質転換:
酵母細胞の形質転換について、多数の方法が知られており、例えばスフェロプラスト法を用い、酵母細胞壁を除去し(好ましくは、グルスラーゼにより酵素的に除去)、ついでPEGおよびプラスミド(好ましくは、自己複製)DNAで処理する。
【0087】
サンプルスフェロプラスト形質転換プロトコル:
1. 細胞を50mL YPAD中で3x107細胞/mLの濃度まで成長させる。
2.400x600xgで5分間、遠心分離することにより、細胞を収穫し、20mLの滅菌水で2回洗浄し、20mLの1Mソルビトールで1回洗浄する。この細胞を20mLのSPEM(1Mソルビトール、10mM燐酸ナトリウム、pH=7.5, 10mM EDTAプラス40μmのβ‐メルカプトエタノール(使用直前に添加))中に懸濁させる。
3. 45μLのジモリラーゼ(zymolyase)20T(10μg/mL)を添加し、緩やかに攪拌しながら30℃で20−30分間、培養することにより細胞をスフェロプラストに転換する。この時点までに、細胞の90%をスフェロプラストに転換させる。
4.250xgで4分間、遠心分離することにより、スフェロプラストを収穫し、上澄み液を静かに除去する。ペレットを20mLのSTC(1Mソルビトール、10mM のTris-HCl, pH=7.5, 10mM CaCl2)で1回洗浄し、2mLのSTC中に懸濁させる。
5.STC中の懸濁液150μLを、10μL未満中の5μgのキャリアDNAおよび5μg以下のプラスミドDNAと静かに混合することによりスフェロプラストを形質転換させる。この混合物を室温で10分間培養する。1mLのPEG試薬[10mM Tris-HCl, pH=7.5, 10mM CaCl2, 20%(w/v)PEG 8000;滅菌フィルター]を添加し,静かに混合し,更に培養を10分間継続する。
6.250xgで4分間、遠心分離することにより、スフェロプラストを収穫し、150μLのSOS(1Mソルビトール、6.5mM CaCl2, 0.25%の酵母抽出液、0.5%のバクトペプトン)中に懸濁させる。このスフェロプラストの希釈液を8mLのTOP(1.0Mソルビトールおよび2.5%の寒天を含む選択性培養基、45℃にて維持)および適当な選択性培養基(0.9Mソルビトールおよび3%のグルコースを含む)と混合する。30℃で3−4日培養した後、得られた形質転換物を回収する。
【0088】
Li+形質転換:
この方法は酵母細胞を特定の一価アルカリカチオン(Na+、K+、Rb+、Cs+、Li+)による処理を含み、これをPEGとの組み合わせで使用し、無垢の酵母細胞によるプラスミドDNA摂取を刺激する(Itoら、1983、J.Bacteriology,"Transformation of Intact yeast cells treated with alkali cations", 353:163-168)。ついで、5分間の熱ショックを与え、その後、細胞を選択性培養基上にて培養する。最も良好な結果は酢酸リチウム(LiAc)を用いた場合に得られた。超音波処理したキャリアDNAの添加は効率を増大させるのに使用することができ、単一連鎖DNA又はRNAの反応液への添加も反応を最適化するために使用することができる。異なる選択可能なマーカー遺伝子を有する2つのベクターを使用し、単一の形質転換反応における2つの異なる遺伝子をノックアウト(knockout)したり、選択性プラスミドとの共形質転換を用いて非選択的遺伝子分断を調べることもできる。以下の例は、殆どの実験菌株に対し使用可能で、酵母2−ハイブリッドシステムのような用途において、プラスミドライブラリーの効率的形質転換に適していることが知られているLiAc/ssDNA/PEGプロトコルのための標準的手法である。
【0089】
サンプルLiAc/ssDNA/PEGプロトコル:
1. 細胞を2X YPAD中にて一晩、成長させ、ついで、暖かい2X YPAD中に5x106細胞/mLで懸濁させ、2つの細胞区分について2x107細胞/mLの濃度まで再度、成長させる。
2.3000xgで5分間、遠心分離することにより、細胞を収穫し、滅菌蒸留水で2回洗浄し、滅菌蒸留水中にて109細胞/mLで再度、懸濁させる。
3. 108細胞のサンプルを1.5mLマイクロ遠心分離チューブに移し、細胞をペレットかさせ、上澄み液を除去する。
4.ペレットを360μLの形質転換混合物(240μLの50%PEG3500(w/v)、36μLの1.0M LiAc、50μLの2.0mg/mL単一鎖キャリアDNA、0.1-10μgのプラスミドDNAプラス水からなる溶液34μL)内で再度、懸濁させる。
5.この形質転換混合液中の細胞を42℃で40分間培養する。この細胞をマイクロ遠心分離機にてペレット化し、形質転換混合液を除去する。
6.この細胞ペレットを1mLの滅菌液中に再度、懸濁させ、このサンプルを選択性培養基にて培養する。
【0090】
電気穿孔法:
電気穿孔法、つまり、電気的パルスを使用して細胞膜中に過渡パルスを形成させる方法は植物および動物細胞の形質転換に広く利用されている。更に、酵母スフェロプラスト並びに無垢酵母細胞にも使用されている(Karube, 1985, FEBS lett, 182:90-94; Hashimoto, 1985; Appl. Microbiol. Biotechnol. 21:336-339)。電気穿孔法は更にPEGおよびLiAc/ssDNA/PEG法との組合せでも使用されている。標準的電気穿孔プロトコルは以下に示すとおりである。
【0091】
表3.サンプルスフェロプラスト形質転換プロトコル:
1. 細胞をYPD中で1x107細胞/mLの濃度まで成長させる。
2.遠心分離(1500xgで5分間)することにより、細胞を収穫し、この細胞を1x109細胞/mLで25mMのDTT(YPD培養基中、20mM HEPES, pH=8.0)中に懸濁させ、30℃で10分間、培養する。
3. この細胞をEB(10mM Tris-HCl, pH=7.5, 270mMスクロース、1mM MgCl2)で2回洗浄し、EBに1x109細胞/mLで再度、懸濁させる。
4.48μLのサンプルを、2μLのプラスミドDNAと混合し、スクエアパルス発生装置、CNRSセル・エレクトロパルセータの電極間に搬送する。
5.細胞に、1.74kV/cmの電界強度、15msのパルス長でパルスを印加する。
6.予め加熱した30℃のYPDの1mLを直ちに添加し、その懸濁液を30℃で1時間、培養する。ついで、細胞をマイクロ遠心分離機にてペレット化し、SD培養基中に再度、懸濁させ、適当な培養基にて培養する。
【0092】
酵母形質転換は、ガラスビーズを用いて行うこともでき(Costanzoら、1988.Genetics 120:667-670)、更に、バイオリジテクス(biolisitics)を用いて行うこともできる(Kleinら、1987.Nature 327:70-73)。
【0093】
スフェロプラスト、リチウムカチオンおよび電気穿孔法は、殆どの酵母種、例えばS.pompe, Candida albicans, Pichia pastoris, Hansenula polymorpha, Klyveromyces spp, Yamadazyma ohmeri, Yarrowia lipolytica, Schwanniomyces occidentalisなどに適用することができる。
【0094】
酵母形質転換についての更なる情報については、以下の文献に開示されている。すなわち、Gietzら、“Genetic Transformation of Yeast" BioTechinques 30:816-831(2001年4月);Wangら、“Transformation System of non-Saccharomyces Yeast" Crit. Rev. BioTechnol. 2001;21(3):177-218に開示されている。
【0095】
DNA配列をホモ接合状態にすることがしばしば望まれる。これは細胞ラインを作るのに2以上の形質転換を必要とする。すなわち、同一の遺伝子産物をコード化する第1および第2の組換えDNA分子を用いた形質転換を必要とする。更に、本発明の方法の幾つかの例においては、酵母細胞が少なくとも2つのDNA配列を含む組換えDNA分子で形質変換されること;又は1以上の組換えDNA分子で形質変換されることが考えられる。このような例におけるDNA配列又は組換えDNA分子は、同一のベクター内にあることにより物理的に結合されたり、異なるベクター上にて物理的に別になっていてもよい。細胞は、各ベクターが独特の選択マーカー遺伝子を有するのであれば、1以上のベクターで同時に形質転換されるものであってもよい。その他、細胞は1以上のベクターで形質転換し、中間の再生工程が最初のベクターによる形質転換の後に逐次的に続くようにしてもよい。更に、異なるDNA配列又は異なる組換えDNA分子を有する個々の酵母細胞間又は酵母ライン間で有性交配を行うようにしてもよい。この場合、好ましくは、DNA配列又は組換えDNA分子が同一の染色体上に連結され、又は配置されており、交配の子孫から、双方のDNA配列又は異なる組換えDNA分子を有する酵母を選択する。
【0096】
形質転換された酵母中のここに記載したDNA配列およびプロモータを有する組換えDNA分子の発現は、公知のノーザンブロット法および/又はサザンブロット法を用いてモニターすることができる。
【0097】
再生された酵母は標準の生育媒体(例えば、固体又は液体栄養媒体、穀物、バーミキュライト、コンポスト、ピート、木材、おがくず、麦わらなど)に移送され,公知の方法により生育され又は培養される。
【0098】
ポリヌクレオチドが、再生された遺伝形質転換酵母中に安定的に組み込まれた後、有性交配により他の酵母に転写することができる。多重化されるべき種に応じて任意の数の標準的手法を使用することも可能である。
【0099】
位置的作用から開放された酵母を回収するために、任意の組換え構成体を有する各形質転換された酵母を多数発生させることは有意なことである。更に、導入された組換えDNA分子の1以上のコピーを含む酵母を選択し、この組換えDNA分子の高いレベルの発現を得ることは好ましいことである。
【0100】
上述のように、特定の種において、可能な特定の遺伝子について同型接合である酵母ラインを生産することが好ましい。或る種においては、これが単一胞子培養を用いることにより可能である。このような技法を使用することにより、挿入された遺伝子を担持し、ついで、染色体数を自然に又はコルヒチンを使用して倍増することができる単相ラインを作製することができる。これにより、挿入された遺伝子について同型接合である酵母菌株が得られ、このことは、挿入された遺伝子が、その遺伝子を有する酵母の検出のための適当な選択マーカー遺伝子を備え持っているか否かについて容易に検査することを可能にする。
【0101】
以下の実施例は本発明を更に説明するものであり、何ら限定することを意図するものではない。ここでの実施例および説明では特に、S. cervisiaeを参照しているが、この技法は他の酵母種にも等しく適用可能である。ここに引用した全ての参照文献はその全体が参照としてここに組み込まれるものとする。
【0102】
実施例
実施例1
分泌経路に向けられたたんぱく質を小胞体(ER)の膜を最初に貫通させる。ルーメンに入り込むため、たんぱく質は“トランスロコン”(Johnson and van Waes, 1999)と呼ばれるたんぱく質孔を横切る。ナセント(新生)たんぱく質がこのルーメン内に解放され、これに対し、膜たんぱく質はER膜内に統合される。これらのたんぱく質は未折返し状態に転座されているので、それらの天然コンフォメーションへの組込みがER中で後の工程で発生する。この目的のため、オルガネラ(細胞小器官)が、正しいたんぱく質折返しおよび改質に必要な原料物質、酵素およびシャペロン(chaperones)のインベントリー(inventory)を維持する。これらの機能の局在化された性質のため、“ER品質管理”と呼ばれる機構が、新規に合成されたポリペプチドのこれらの機能部位への輸送を、それらがその天然のコンフォメーションへ到達するまで、防止する(Ellgaadら、1999)。
【0103】
この品質管理機構は更に、たんぱく質が折返しをしない場合に、重要な役割を果たす。誤折返したんぱく質は、“ER関連たんぱく質退化(ERAD)”と呼ばれる退化経路へ向けられる(Sommer and Wolf, 1997; Brodsky and McCracken, 1999)。この経路において、退化はERのルーメン内では発生しない。その代わりに、たんぱく質は、輸入に用いられた同じトランスロコン錯体を介してサイトゾル(細胞質ゾル)へ戻るべく輸送される(Wiertzら、1996;Pilonら、1997;Plemperら、1997;ZhouおよびSchekman, 1999)。レトロ転座又は転位と呼ばれるプロセスは、ユビキナチン化、すなわち、退化のための基質の必要とする共有改質に通常、結び付けられる(Biedererら、1997)。このユビキナチン化はERのサイトゾル表面で行われる。なぜならば、E2およびE3酵素、Ubc7pおよびHrd1p/Der3pはそれぞれ、そこに局在化し、トランスロコンに隣接して配置されるからである(Hillerら、1996;Bordalloら、1998;およびBaysら, 2001)。一旦、標識付けされると、これらたんぱく質はサイトゾル26Sプロテアソームにより急速に退化される(Hillerら、1996)。
【0104】
退化の時点近くのERAD基質の運命について多くのことが知られているが、これらがどのようにして認識され、維持され、転座/ユビキナチン化機構に向けられるかについてはあまり理解されていない。明らかにされている1つのモデルは、新生ポリペプチドが、輸入後にトランスロコン内に部分的に残ることである。このポリペプチドは折返しがなされたときに始めて解放され、これに対し、誤折返したんぱく質は同一の孔を介してレトロ転座される。この仮想は訴えるものがある。なぜならば、それは保持および退化についての単純なメカ二ストを規定するものであるからである。しかし、このモデルは、十分に確立された酵母可溶性ERAD基質、つまりCPY*と呼ばれるカルボキペプチダーゼYの突然変異体が膜を完全に横切って転座することが示された結果、疑いが生じた(Plemperら、1999)。
【0105】
哺乳類細胞において、十分に特徴づけられた水泡性口内炎ウイルスG(VSV-G)たんぱく質の突然変異体、ts045が39.5℃、つまり誤折返しの原因となる温度にシフトされた細胞のERに局在化することが観察された(KreisおよびLodish、1986)。グリーン蛍光たんぱく質に融合されたVSV-G ts045を用いた研究(elegant study)によりER保持機構直接的証拠が得られた。生きた細胞での光漂白実験を用いたところ、組込み膜たんぱく質は膜の面に自由に移動するが、ERを残すことはなかった(Nehlsら、2000)。制限温度での長期の培養を通してVSV-G ts045を発現する細胞において、たんぱく質の一部はERを逃れ、Golgiに輸送され、回収される(HammondおよびHelenius、1994)。これらの初期の実験は、より極端な条件下で行われたが、これらは誤折返したんぱく質の循環機構の可能性をそのまま残すものであった。酵母において、この機構はあまり明らかではない。しかし、ER-to-Golgi輸送のない状態で、Step6pおよびYorlp組込み膜(integral membrane)たんぱく質の突然変異体の効果的な退化は哺乳類2ついての見解を支持するものと思われる(Loayzaら、1998;Katzmannら、1999)。
【0106】
誤折返し可溶性たんぱく質および膜たんぱく質の双方についての一般的品質管理機構は空間的問題を生じさせる。なぜならば、これら2つのクラスはERの別個の領域を占める(すなわち、ルーメン対膜)からである。従って、異なる認識および標的機構が存在し、たんぱく質を退化経路に向けさせるということはもっともらしい。この見解において、誤折返し可溶性たんぱく質および膜たんぱく質の双方により用いられるユビキチン/プロテアソーム経路を、ER保持機構についての終点又は消失機構の収束点として考えることができる。
【0107】
この研究において、出芽酵母、Saccharomyces cerevisiaeにおいて、ERAD特異的退化に曝される幾つかの品質管理基質の運命が本発明者により検査された。品質管理基質の別々のクラスを確定する保持および回収機構の共存が実証された。双方の経路について、ERにおける分類工程が発生し、それにより回収経路の基質はCOPII輸送小胞体中に包み込まれ、保持されるべき基質は除外される。更に、本発明者は遺伝子的アプローチを用い、これら2つの経路を切開する突然変異体を分離した。Per17-1と呼ばれる遺伝子BSTIの機能対立遺伝子を失った突然変異体(機能突然変異体の如何なる損失も同様の作用を及ぼす)が誤折返したんぱく質のER-to-Golgi輸送を防止するとともに、殆どの正常なたんぱく質の輸送を保持した。ERと関連する小区画(subcompartments)における誤折返したんぱく質の蓄積および安定化から考えられるように、Per17-1細胞においては、品質管理は回収経路の初期の段階で中断された。
【0108】
KHNはERADのためのGolgi器官から回収された誤折返したんぱく質である。
ウイルス膜たんぱく質は、たんぱく質の折返しおよびER品質管理を研究するためのすぐれたモデルである(Gethingら、1986;Machamberら、1990;HammondおよびHelenius、1994)。品質管理機構をより良く理解するため、この発明の利点を出芽酵母、S. cerevisiaeの安易な遺伝的性質と結びつけることを求めた。なお、この開示された技法は他の任意の菌種にも等しく適用することができる。サルウイルス5血球凝集素、ノイラミニダーゼ(HN)が選択された。その理由はその折返し状態を確立された方法によりモニターすることができるからである(Ngら、1989)。HNを発現させるため、HN信号/アンカー領域を、酵母Kar2たんぱく質殻の分裂可能な(cleavable)信号シーケンスで置き換え、融合構成体を適度の酵母PRO(CPY)プロモータの下流側に配置させた。これは酵母中における内因性信号/アンカー領域の少ない利用をバイパスするためになされたものである。その結果得られたたんぱく質(KHNと称されるもの)は、哺乳類細胞中に先に特徴づけられたHNの可溶性変形体と似ている(ParksおよびLamb、1990)。
【0109】
本発明者等は代謝パルス追跡分析によりKHNの発現をモニターし、予期しないような結果を観察した。図6Aに示すように、KHNは30分の追跡の後、急速に失われ、60分以内までに殆ど検出することができなかった。細胞および培基の双方からのたんぱく質を免疫沈降のため一緒にしたので、KHNの分泌をその損失を償うために妨げた。その他、異質たんぱく質として、KHNは正しく折返すことをせず、品質管理を介して退化されるようにする。この考えと一致して、KHNは、二硫化物結合ダイマーを形成せず、コンフォメーション依存抗HNモノクローン抗体に対し反応性を示さない。ERADに向けられたたんぱく質のユビキナチン化に必要な遺伝子であるCUD(Biedererら、1997)を欠けた菌株において、KHNは同じ時間帯の間(図6A、中間部)、安定化するものと思われる。本発明者等はKHNを真実のERAD基質として確認した。なぜならば、これが多重ERAD特異的突然変異体により安定化されるからである(下記参照)。興味深いことに、KHNの安定化はERAD基質のための予想外の特徴、すなわち、ゲル移動度の時間依存的減少を向上させた(図6A、中間部)。本発明者等は次に、変化させた形態の性質を探求した。
【0110】
分子量の段階的増加が多くの酵母分泌経路たんぱく質の熟成の間に一般に観察される。この増加はERに当初から結合されている炭水化物の同化によるものである(HerscovicsおよびOrlean、1993)。遅延は新生ポリペプチドを、改質酵素が存在するGolgi器官に輸送するのに必要な時間を反映するものである(GemmillおよびTrimble、1999;StrahlBolsingerら、1999)。これを念頭に、これに述べた改質は、KHNがGolgiに輸送され、退化のためERへ回収される興味をそそる可能性を生じさせるものであった。本発明者はこの可能性を、最初にこのシフトが実際に炭水化物改質によるものか否かを判定することにより取り組んだ。エンドグリコシダーゼH消化を用い、KHNからN-結合炭水化物を除去した。もし、ゲル移動性シフトが全てN-結合糖の改質によるものとすると、エンドグリコシダーゼH処理後において全ての形のKHNが等しく移行するであろう。図6A(右側)に示すように、N-結合糖の除去はこの移動度の差をなくすことができなかった。本発明者は次に、O−マンノシル化の最初の工程で、特異的欠陥の突然変異体を使用してO-結合炭水化物についてテストした。O−マンノシル化はERで、Man-P-dolicholからポリペプチドへの単一マンノース残基の移動を伴って開始された。たんぱく質マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)科の酵素がこの反応を促進させる。個々のPMT遺伝子を欠ける菌株はグリコシル化において基質特異的欠陥を表し、これらの遺伝子の非冗長性を反映する(GentzschおよびTanner、1996)。本発明者は、各PMT科メンバー(PMT1-PMT6)を単一的に除いた菌株中にKHNを発現させた。図6Bに示すように、PMT1およびPMT2のない菌株はKHN移動性シフトを防止し、p1が圧倒的な形で残り、これは最終的には退化された。これらのデータから、KHN O−グリコシル化はPMT1およびPMT2に依存し、これらの産物は共に作用し錯体を形成することが示された(Gentzschら、1995)。この特別のたんぱく質特異的KHN処理はPMT3-PMT6を単独に欠けた菌株において影響されず、これはこのたんぱく質に対する基質特異性によるものと思われる。他のPMTも他のたんぱく質で作動するものと思われる。
【0111】
ERにおいてO−マンノシル化されたたんぱく質は通常、Golgiにおける炭水化物の延長化を介して改質される(Lussierら、1997)。KHNゲル移動性シフトがポストER処理によるものか否かをテストするため、本発明者は、十分に特徴づけられたER-to-Golgi輸送突然変異体、sec12-4およびsec18-1中にてKHNを発現させた(Eakleら、1988;Nakanoら、1988;BarloweおよびSchekman、1993)。輸送がこれらの菌株において阻止されると、KHNは長時間に亘ってpl型に留まる(図6C)。これは改質酵素が存在するGolgi器官におけるp2型の形成と合致する。これらのデータから、我々はこのER型をp1と指名し、Golgi型をp2と指名する。興味深いことに、KHNの反転がこれらの突然変異体で阻害されるように思われ、ERからの輸送が退化のための必要な工程であることを示唆している。残念なことに、p1およびp2型をオーバーラップするたんぱく質の非特異的免疫沈降がKHN反転の動態を測定困難にしている。従って、安定化の程度をこれらの実験から結論づけることができなかった。
【0112】
KHN反転の動態を正確に測定するため、COOH末端トリプルHAエピトープ標識(KHNt)を有する改質型が構築された。抗HAモノクローン抗体を使用したとき、KHNtの免疫沈降はバックグラウンド(background)から解放され、収量は抗HNポリクローン抗血清を用いた実験から、さもなくば区別することができなかった(図7A)。反転の割合が若干減少するように思える以外は、KHNtはKHNと同様に改質され、退化される(図7Aの頂部と図6Aの左側との比較)。予備的結果では、KHNがERADの経路の基質になることができることを示唆しているが、Golgiへのその輸送により、一部が液胞(リソソームの酵母均等物)中に送り続けられ退化されるという可能性が生じた。しかし、これはKHNtが、機能性液胞プロテアーゼに欠けた突然変異体中において野性型と同様に退化されたので、その可能性が排除された(図7A、図7B、Δpep4)。KHNがERADの基質であることを確実に確立するため、本発明者は、この経路において特に欠けている突然変異の幾つかにおいてKHNtの安定性を測定した。図7に示すように、CUE1(Ubc7pをER膜に固定することによるユビキナチン化において役割をなす)、DER1(ERADに必要とするER膜たんぱく質をコード化する)又はHRD1/DER3(ER局在E3ユビキナチン・リガーゼをコード化する)遺伝子の無い菌株にKHNtを発現させたとき、その退化が、他の確立されたERAD基質と同様な程度に阻害された(Hamptonら、1996;Knopら、1996;Biedererら、1997;Bordalloら、1998)。ウエスターン・ブロット分析の結果、突然変異体の各々において、KHNtの高分子量(p2)型の定常的蓄積が見られ、それにより野生型細胞で優先的に退化されたものが、これらの種であることが確認された(図7C)。
【0113】
ERAD機能について欠陥のある細胞のERに誤折返したんぱく質が蓄積される(Knopら、1996;Loayzaら、1998)。KHNtが退化前にGolgiに輸送されるから、ERADが分断されたときに、どこにそれが蓄積されるかについての疑問が生じる。ERマーカーBiPとの共局在化により示されるように、間接的免疫蛍光法を行うことにより、KHNもERAD突然変異体細胞のERに蓄積されることが本発明者により見出された(図7D)。これらのデータは、KHNtが幾つかの確立されたERAD基質と同様に行動すること、およびその退化のための回収経路の可能性を示している。
【0114】
ERADに向けられたたんぱく質の品質管理のための2つの別々の機構:
予想外の観察‐輸送に繋がったER‐to‐Golgi突然変異体におけるKHNの発現は、その退化のための必須の工程と思われる。突然変異体、Ste6pおよびYor1pを含む他のERAD基質が同一の条件下で正常に退化することが観察されたことから(Loayzaら、1998;Katzmannら、1999)、このことは意外なことである。このもっともらしい矛盾は、もし異常型のたんぱく質を退化に向けさせる異なる機構が存在するのであれば解決される。すなわち、Ste6pおよびYor1p(双方とも組込み(integral)膜たんぱく質である)のようなたんぱく質のための静的(非循環)ER保持機構;およびKHNなどの他のたんぱく質のための輸送および回収機構である。退化前の基質の運命を評価するため、本発明者は相補をin vivoおよびin vitroアプローチで適用した。
【0115】
最初に、ER-to-Golgi輸送を防止する効果を検査した。ERAD基質、Ste6-166pがsec18突然変異体中で退化することが報告されており、輸送が阻止去れとしてもERADが正常に機能することが示唆されている(Loayzaら、1998)。本発明者は、Ste6-166pの安定性が野生型のものと同じであることを見出すことにより、secl2およびsec18細胞の双方における観察を確認した(図8A)。対照として、本発明者はERAD欠損突然変異体が同一条件下でSte6-166pを安定化することを示した(図8A)。本発明者は更に、ERADに供した他の膜たんぱく質であるSec61-2pを分析した(SommerおよびJentsch、1993;Biedererら1996)。Sec61p自体がERADにおいて役割を果すから、Sec61-2pは異所的に発現され、HAエピトープ標識を有する野生型から区別することができた。Ste6-166pの場合と同様に、Sec61-2pは、各菌株において制限的条件下で正常に退化される(図8B)。対照的に、KHNtの退化は著しく阻害された(図8C)。コアERAD機能は、これらの菌株において正常であるから、この欠陥は退化に先立つKHNt転送(trafficking)パターンの混乱の結果と思われる。この要求がKHNtに特異のものか、又はER品質管理のより一般的な特徴を反映するものか否かについて疑問が生じた。そのため、本発明者は、他の十分に特徴づけられた可溶性基質、CPY*(Fingerら、1993)のHAエピトープ標識付きバージョン(version)を検査した。CPY* HAがコアERAD機構を使用することが十分に確立されているが、それが回収サイクルを保持するのか、又は行うかは明らかでない。図8Dに示すように、CPY* HAはsecl2およびsec18突然変異体の双方において強く安定化され、これも小胞輸送経路に依存することを示唆している。しかし、これは意外なことである。なぜならば、CPY*がsec18突然変異体中で退化することが先に報告されていたからである(Fingerら、1993)。個々で、この退化は3時間もの長い追跡期間の後に最も明白となる。本発明者は更に、輸送突然変異体における幾つかの退化を観察し、基質の可なりの部分が、同様の長期の追跡の適用により退化されるものと期待した。
【0116】
データは2つのERAD基質の追跡、すなわち、1つは品質管理のための小胞転送機構を使用するもの;他は静的ER保持に依存するものを示している。この区別は、選別がER中で行われ、輸送されるべき誤折返したんぱく質を、保持されるべきものから分別させることを予言するものである。secl2およびsec18突然変異体における退化速度の差は、示唆的証拠を与えるのみで、間接的効果の可能性を除外するものではなかった。これをテストするため、ER膜からCOPII−被覆小胞出芽およびカーゴ(cargo)選択を再生させるin vitro検査(Barloweら、1994)を行った。これらの実験のため、ミクロソームを、KHNt、CPY* HAおよびSte6-166pを発現する野生型菌株から用意した。これらミクロソームからのCOPII出芽小胞を分離し、小胞に包み込んだ個々のたんぱく質のレベルをイムノブロット(immunoblots)によりモニターした(図9)。各たんぱく質についての組み入れ効率を濃度計により全体に対する百分率で計算した。KHNtおよびCPY* HAについては、双方のたんぱく質がCOPII小胞中に1ないし2%で収容され、ネガチィブ対照Sec61pでは全く収容されていないことが判明された。COPII小胞中に収容された誤折返したんぱく質の量は他の分泌たんぱく質と比較して小さいが、これはKHNtの輸送が他のカーゴたんぱく質と比較して遅いことと適合するものである(図11参照)。この方法によるKHNtおよびCPY* HAの分析のため、膜をトリプシンで処理し、プロテアーゼ‐保護ルーメン種の検出を確実にした。これらのデータはERADに向けたたんぱく質のサブセットが標準膜転送機構を用いてERから最初に輸出されるという独立した確認を与えるものである。
【0117】
次に、本発明者はSte6-166pを検査した。Ste6-166pはER保持機構を用いて退化に向けられたという証拠が既に存在する(Loayzaら、1998)。しかし、この保持の性質については明確ではなかった。ER小胞出芽検査法をSte6-166pに適用したところ、他の組込み膜たんぱく質が効率的にCOPII−被覆小胞に組み込まれたが、Ste6-166pはER膜にもっぱら留まった(図9C)。これらのデータは、血漿膜たんぱく質Ste6pが、誤折返しの場合、輸送小胞からの排除によりER中に保持されることを示している。加えて、これらの結果はER品質管理の新規な一面を示している。その監視機構の一部として、細胞は誤折返しのたんぱく質をER保持又は輸送について区分けする。
【0118】
Golgiへの輸送の後、ERADによるKHNtおよびCPY* HAの退化はERへの逆行性転送を要するであろう。Golgiからの膜およびたんぱく質の逆流はCOPIクラスの被覆された小胞の形成により駆動される。誤折返しのたんぱく質の転送がCOPI被覆小胞を使用するか否かを調べるため、本発明者はKHNtおよびCPY* HAをγ‐COP突然変異体sec21-1中に発現させ、それらの反転を測定した。順方向輸送が影響されず、かつ、逆行輸送が殆ど影響を受けない30℃の許容温度で(Letourneuerら、1994)、KHNtおよびCPY* HAの退化の小さいが再生可能な遅延が観察された。しかし、33℃の半許容温度、すなわち、順方向輸送の小さな遅延だけで逆行輸送が部分的に分断される温度では(Letourneuerら、1994)、双方のたんぱく質の退化が抑制された(図10Aおよび10B)。順方向輸送の進歩が、内因性CPY(公開されていないデータ)およびKHN,p2 Golgi型の形成の分析により確認された(図10A)。ERAD機能に対する間接的作用は除外された。なぜならば、Ste6-166pの退化はsec21-1細胞において正常であるからである(図10C)。総合すると、これらのデータは、誤折返したんぱく質がER保持又はGolgiからの輸送および回収のために区分けされることを実証している。最終的に、双方の経路はERAD経路による退化のため、ERに収斂する。
【0119】
回収経路における初期でのER品質管理のために必要ない電子:
最近の研究により、ERを離れる或る種のカーゴ(cargo)たんぱく質が活動的に輸送小胞に区分けされることが実証された(Munizら、2001)。これらの区分けの分子的機構については十分に理解されていないが、特定の遺伝子がたんぱく質の僅かサブセットの輸送について暗示されている(BeldenおよびBarlowe、1996; Munizら、2000)。KHNtおよびCPY* HAがカーゴたんぱく質の新しいクラスを表すから、専用のファクターが誤折返したんぱく質を区分けし輸送小胞に包装するよう機能するか否かについて疑問が生じた。この問題を取り扱うため、本発明者は遺伝子的アプローチを用いた。もし、そのようなファクターが存在するとすると、その機能損失は、ERから正常に輸送された誤折返したんぱく質の保持および安定化を生じさせると我々は考えた。本発明者は先に、ER品質管理に関係する遺伝子を識別する強力な手段として、未折返したんぱく質応答経路を有する合成致死性(synthetic lethality)に基づく遺伝子スクリーンを報告した(Ngら、2000)。当初のスクリーンが使い尽くされたとは到底言えないので、品質管理のER保持および循環機構を詳細に分析することを意図して、その範囲を拡大させた。本発明者はこのようにして、回収経路における誤折返したんぱく質の前方向(anterograde)輸送に必要な遺伝子を発見した。
【0120】
ER(per) 突然変異体における152の劣性たんぱく質処理のプールで出発し、グリコキシル化および輸送を含む正常たんぱく質の一般的処理欠陥を表すものを除外した(Ngら、2000)。残る107について、図8の索引に記載したようにCPY* HAおよびSec61-2の安定性を測定することによりERAD活性を分析した。更に、本発明者はKHNtの安定性および処理を分析した。1つの突然変異体、per17-1について、(機能損失)KHNtおよびCPY* HAの双方は退化については欠陥がある(図11A)。しかし、他のERAD突然変異体(図7)とは異なり、KHNtはper17-1細胞においてERp1型に留まり、Golgiへの輸送ブロックと合致する(図11Bの頂部)。Gas 1p(図11Bの底部)およびper17-1細胞におけるキチナーゼ炭水化物処理は正常であり、per17-1細胞における機能的O-マンノシル化および改質のための制御に役立つ(Nuofferら、1991;GentzschおよびTanner、1996)。これはKHNtp1型の優勢が、グリコキシル化に対する間接的作用よりも、むしろ輸送欠陥を反映することを示している。興味深いことに、折返されたカードたんぱく質の輸送が異なる作用を示した。CPY輸送は野生型と同様であり、これに対し、Gas1pは正常よりも遅かった(図11B)。Gas1pは膜に固定されるから、本発明者は2つの更なる組込み膜カーゴたんぱく質、カルボキシペプチダーゼS(CPS)およびアルカリ性ホスファターゼ(ALP)(Cowlesら、1997; Spormannら、1992)を検査した。図11Cに示すように、双方のたんぱく質は区別不能に野生型に輸送され、それによりper17-1突然変異がER-to-Golgi輸送に一般的欠陥を生じさせないことが確認された。
【0121】
更に、このデータは、per17-1突然変異体が回収経路に向けられた誤折返したんぱく質の輸送を促進しないことにより、退化を抑制することを示唆している。この見解を補強するため、我々は、ER保持のために区分されたERAD基質の運命を分析した。もし、PER17がER品質管理において、このようなはっきりした役割を果す場合、この保持経路が機能するものと期待され、これらの基質がper17-1細胞において正常に反転することが期待される。図11A(底部)に示すように、Ste6-166pおよびSec61-2pは、per17-1細胞において野生型運動性で退化される。これらのデータは、per17-1対立遺伝子が循環経路に特異的であり、我々の遺伝子的戦略の正当性を示している。これらのデータはsecl2およびsec18突然変異体を用いて得たものと同様のものであるが、輸送は退化のための重要なステップであるという証拠を拡張するものである。なぜならば、幾つかの正常なカーゴたんぱく質を無傷のままで残しながら、per17-1輸送ブロックが誤折返し可溶性たんぱく質に影響を及ぼすからである。
【0122】
per17-1輸送ブロックの性質を更によく理解するため、本発明者はper17-1細胞にて安定化されたKHNtおよびCPY* HAを局在化する間接的免疫蛍光を行った。図12に示すように、KHNtおよびCPY* HAの双方が細胞全体に亘る斑点構造内に凝集された。これは輸送反応能ERAD突然変異体とは異なるものである。なぜならば、それらはこれらの基質をER全体に亘って拡散的に蓄積するからである(Knopら、1996; 図7D)。興味深いことに、この斑点分布は、sec12突然変異細胞で輸送のためブロックされたカーゴたんぱく質について観察されるパターンを思い出させるものである(Nishikawaら、1994)。これらの細胞において、ERシャペロンBiPがER内の別々の部位にカーゴたんぱく質と共に共局在化した。誤折返したんぱく質が輸送のため同様にブロックされるので、我々は更に、per17-1細胞におけるBiPの分布について検査した。図12に示すように、BiPはKHNtおよびCPY* HAと同一の斑点構造内に見出された(図12A、bおよびe)。BiPはER形態のためのマーカーとして広く使用されているが、本発明者はそのパターンがsec12細胞又はER膜の一般的再組織化の場合のようにERの副領域を反映するものか否かについて疑問を持った。これを取り扱うため、別のERマーカーが選択された。すなわち、信号認識粒子レセプターβサブユニット(SRβ)である。このSRβはER全体に分配された組込み(integral)膜たんぱく質である(Oggら、1998)。図12Bに示すように、per17-1細胞にて染色するこのSRβは野生型のものと類似し、ER形態に大きな変化がないことを示唆している(図12B、e)。これは同一の菌株で行った超微細構造分析と全く合致するものである。ダブルラベル実験において、この斑点構造は常に、SRβにより画定されたERと合致する(図12B)。これらのデータは、誤折返したんぱく質がper17-1細胞内の別々のER部位にてBiPと共に蓄積することを示している。
【0123】
PER17遺伝子の同一性が次に検査された。セントロメアYCp50ベクターに基づく酵母ゲノムライブラリーをper17-1突然変異体に形質転換した。扇形分割表現型の復元により相補クローンを得た(Ngら、2000)。失欠(deletion)マッピングを介して、BST1(sec13のバイパス)をコード化する単一のORFをPER17遺伝子として識別した。SEC13、つまりCOPII小胞被覆の成分との相互作用を介して最初にクローン化されたER組込み膜たんぱく質がBST1によりコード化される(Elrod-EricksonおよびKaiser、1996)。すなわち、BST1はER-to-Golgi輸送において役割を果すものと思われる。しかし、その正確な役割は当該分野で知られていない。なぜならば、BSTI遺伝子削除が2つの原型カーゴたんぱく質、すなわち、CPYおよび転化酵素の輸送に影響を与えるように思えないからである。これらのデータはER品質管理におけるBST1の新規な機能を示している。per17-1細胞およびΔbstl細胞が、最も正しく折返されたたんぱく質以外の誤折り返したんぱく質の輸送を防止するから、このデータはカーゴたんぱく質の区分における役割を示している(図11B;未公開のデータ)。
【0124】
考察:
ERにおける新生たんぱく質の折返し状態をモニターする細胞監視システムがほぼ25年前に最初に公開された。これらの先駆的研究では、ウイルス膜たんぱく質が誤折り返しすると、血漿膜に輸送されず、合成部位に留まることが示された。(Gethingら、1986; KreisおよびLodish、1986)。後に、この現象が適当に“ER品質管理”と呼ばれ、幾つかのヒトの病気(嚢胞性繊維症など)がその分子ベースで突然変異たんぱく質の保持および退化に帰せられるという認識に至った(CarrellおよびGooptu、1998; KimおよびArvan、1998;KopitoおよびRon、2000)。最も最近では、重要な前進がなされ、ER品質管理2ついての我々の理解が改善された。特筆すべきことは、退化工程、すなわちERADが、ERトランスロコン孔を介しての細胞質ゾルへの基質のレトロトランスロケーションに関与することが今や知られている(Wiertzら、1996; Pilonら、1997;Plemperら、1997;ZhouおよびSchekman、1999)。レトロトランスロケーションの間又はその後において、基質はユビキチン化され、26Sプロテアソームにより退化される(Wardら、1995; Hillerら、1996)。これらの進歩にも拘らず、ERADの上流側の事象2ついては不明のままである。
【0125】
本発明者は、ここに2つの別々の機構の共働により、酵母分泌経路におけるたんぱく質の生合成の品質管理を確実におこなうことを開示している。すなわち、生化学的アプローチと、遺伝子的アプローチとを組合わせることにより、保持機構を再確認すると共に、確立されているER-to-Golgi小胞輸送および回収経路を使用する他のものを明らかにするものである(図13)。本発明者は、in vivoおよびin vitroで誤折返したんぱく質のER-to-Golgi輸送の直接的証拠並びに逆行輸送の必要性を開示している。
【0126】
このアプローチの重要な点は、新規なERAD基質としてのKHNの特徴づけである。一般に研究されている他の誤折返したんぱく質とは異なり、KHNはその輸送をモニターするため、O-結合糖改質の使用を許容するものである(図6)。天然のHNたんぱく質は哺乳類細胞中ではO-グリコシル化されず、そのため、この改質は、たんぱく質が酵母中で誤折返ししたときに発生する無差別のO-マンノシル化によるものと思われる(Hartyら、2001)。これらの炭水化物の処理の結果、全部でないとしても、殆どのたんぱく質がERADの前に回収機構を使用することが示された。更に、本発明者は順方向又は逆方向輸送の分断がKHN退化の妥協を招くことを見出した。この輸送要件は特異なものではない。なぜならば、十分に特徴づけられた基質、CPY*が全ての条件下で同様に影響されるからである。保持される基質がこれらの突然変異体において正常に退化されることから、輸送および回収が効率的KHNおよびCPY*退化のための必須の工程であることをデータが強く示している。
【0127】
精製した成分を用いたin vitro小胞出芽検査により、KHNおよびCPY*がCOPII被覆小胞中に収容され、Ste6-166pが排除されるという直接的証拠が得られた。これらの実験は重要である。なぜならば、この検査はER-to-Golgi輸送の初期の事象を反映することが先に確立されたからである。このデータはin vivo実験を確認し、拡張することに役立つが、これらは更に、COPII小胞の形成時又は直前での誤折返したんぱく質のための新規なER区分け機構を開示するものである。回収経路は標準小胞輸送機構を多く使用するが、誤折返したんぱく質が折返しカーゴたんぱく質の場合と同一の小胞を占めるか否かについては明らかではない。最近、折返しカーゴたんぱく質の異なるクラスが別々の小胞群(population)を占めることが報告された(Shimoniら、2000; Munizら、2001)。従って、誤折返したんぱく質を、Golgiへの輸送のため、分化した(specialized)小胞に区分けすることも可能と考えられる。
【0128】
材料および方法:
この研究で使用されたプラスミド:
プラスミドは標準クローニング計画案(Sambrookら、1989)を用いて構築した。pDN431およびpDN436については、先に記載されたHAエピトープ標識づきCPY*発現ベクター(Ngら、2000)が使用された。pSM1083およびpSM1346については、S.Michaelis Johns Hopkins大学、Baltimore, MDから寄贈されたHAエピトープ標識づきSte6-66p発現ベクター(Loayzaら、1998)が使用された。
【0129】
HAエピトープ標識づきSte61-2p発現ベクター、pDN1002の構成:
製造者の計画案に従い、Ventポリメラーゼ(New England Biolabs,Inc.)を用い、ゲノムDNAの増幅により菌株RSY533(MATα、sec61-2, leu2, ade2, ura3, pep4-3)からsec61-2のプロモータおよびコード化配列をクローン化した。プーライマー、N782(5'-CGAATCCGTCGTTCGTCACC-3')およびN183(5'-TTCCCATGGAATCAGAAAATCCTGG-3')を用い、増幅された2,016-bpフラグメントをHindIIIおよびNcoIを用いて消化し、1,931-bpフラグメントを精製した。この精製したフラグメントを、同一の酵素を用いて消化したpDN333にくくりつけた。pDN333はpDN280(Ngら、1996)からのHA標識づきインサートをpRS315(SikrskiおよびHieter、1989)に挿入することにより発生させた。N183からのNcol部位はSec61-2pコード化配列を、ベクター配列を有するフレーム中に配置させ、このベクター配列は単一のHA標識をコード化し、それにACTTターミネータ配列が続けられている。
【0130】
KHN発現ベクター、pSM31、pSM56、pSM70およびpSM72の構成:
KHN融合遺伝子を、Kar2p(信号配列および信号ぺプチダーゼ分断部位)の最初の45アミノ酸をコード化する配列を、SV5HN遺伝子のCOOH末端528アミノ酸にくくりつけることにより構築した。双方のフラグメントをVentポリメラーゼを用いたPCRにより増幅させ、pDN251中に挿入させpSM31を発生させた。このpDN251は、TDH3プロモータの代わりに温和PRC7プロモータを含めた以外は、酵母発現ベクターpDN251 (Ngら、1996)と同一である。pSM70は、イン‐フレーム(in-frame)で挿入したトリプルHAエピトープ標識をKHNのCOOH末端に添加した以外はpSM31と同一である。このトリプルHAエピトープ標識をコード化する配列は、pCS124(C.Shamu, Hawvard大学、Cambridge, MAからの寄贈)から切り取ったものである。pSM56およびpSM72はそれぞれpSM31およびpSM70と類似するが、ただし、KHN遺伝子配列がpRS315にサブクローン化されている点で異なる。
【0131】
pES69は、pS0459 (Oggら、1998)からHAエピトープ標識づきSRβについての遺伝子を含むNotI/KpnIフラグメントをpRS426(SikorskiおよびHieter、1989)に挿入することにより構築したものである。
【0132】
菌株および抗体:
この研究で使用された酵母菌株を表Iに示す。抗HAモノクローン抗体(HA.11)はBab Co.社から購入した。抗Kar2p抗体はPeter Walter(カルフォニア大学、サンフランシスコ、CA)から提供された。抗CPY抗血清はReid Gilmore (マサチューセット大学、Worcester、MA)から提供された。抗GaslpはHoward Riezman (Basel大学、Basel、スイス国)から寄付された。抗ALPおよび抗CPS抗血清はChris BurdおよびScott Emr (カルフォニア大学、サンフランシスコ、CA)から寄付された。抗HN抗血清は先に記載したとおりである(Ngら、1990)。Alexa Fluor488又は546でラベルした二次抗体はMolecular Probes, Inc.から購入した。
【0133】
細胞ラベリングおよび免疫沈降:
典型例として、対数期の細胞2A600OD Uをペレットかし、メチオニンおよびシステインを欠いた合成完全培基1.0mLに懸濁させた。30分間の培養の後、適当な温度で、細胞をTran35S-ラベル(ICN Biomedicals)480μCiでラベルした。常温メチオニン/システインを最終濃度、2mMとなるまで添加することにより追跡を開始した。この追跡は、組み込まれていないラベルの細胞内プールを使い尽くすパルスの終点の30秒前に開始した。このラベリング/追跡はトリクロロ酢酸を10%まで添加することにより終了させた。細胞ライゼートの作製、免疫沈降手法、ゲル電気泳動、免疫沈降したたんぱく質の定量は、いずれも先に記載したとおりである(Ngら、2000)。
【0134】
in vitro出芽試験:
小胞出芽を、精製COPIIたんぱく質(Sar1p、Sec23p錯体、およびSec13p錯体)を用い、公知の手法(Barioweら、1994)に従ってミクロソーム(WuesterhubeおよびSchekman、1992)を培養することにより、in vitroでERから繁殖させた。ミクロソームは誤折返しKHNt、CPY′HAおよびSte6-166p(SMY248, WKY114およびSMY225)を発現する細胞から製造した。COPII小胞へのたんぱく質の組込みを測定するため、全出芽反応液の15μLアリコートおよび出芽小胞を含む上澄み液150μLを、TLA100.3ロータ(Beck. Man Coulter)中にて100,000gで遠心分離し膜を収集した。得られた膜ペレットをSDS-PAGEサンプル緩衝液30μL中に溶解し、10−15μLを12.5%ポリアクリルアミドゲルで分解させた。COPII小胞に含まれたKHNtおよびCPY′の測定のため、膜をトリプシン(100μg/mL)で氷上にて10分間、処理し、ついでトリプシン抑制剤(100μg/mL)で処理し、プロテアーゼ‐保護種の検出を確実にするようにした。反応全体から小胞に包装した個々のたんぱく質(KHNtCPY・,Ste6-166p, Bos1p, Erv25p, Sec61p)の百分率は免疫ブロット法の濃度計走査により判定した。出芽小胞に包装されたプロテアーゼ‐保護[35S]glyco-pro α-ファクターを、[35S]prepro-pro-α-Fのミクロソームへの翻訳後の転座(Wuestehubeおよび Schekman、1992)の後、コンカナバリンA−セファロースで析出させることにより測定した。更に、[35S]glyco-pro α-ファクターを、ニトロセルロース膜への転写および蛍光スクリーンへの露出の後、ホスホリルマーガー(phosphorlmager)分析(分子力学)により可視化した。
【0135】
間接的免疫蛍光顕微鏡検査法:
細胞を合成完全培基中にて0.5-0.9のOD600まで生育させた。ホルムアルデヒド(EMグレード;Polysciences, Inc.)を直接、培養基に対し、30℃で1時間かけて3.7%間で添加した。固定後、細胞を遠心分離により収集し、5mLの0.1M燐酸カリウム緩衝液(pH=7.5)で洗浄した。細胞をスフェロブラスト緩衝液(1.0mg/mLジモリアーゼ20T[ICN Biomedicals],0.1M燐酸カリウム、pH=7.5、0.1% 2−メルカプトエタノール)中にて30℃で30分間、培養し細胞壁を消化させた。この消化は細胞をPBSにて一度洗浄することにより終了させた。細胞懸濁液30μLを、ポリ‐L-リシン被覆スライドの各液溜めに1分間適用し、PBSで3回洗浄した。これらスライドをアセトン中に5分間、-20℃にて浸漬し、ついで空冷させた。その後の工程は室温で行った。30μLのPBSブロック(PBS中、3%BSA)を各液溜めに添加し、30分間培養した。一次抗体、α‐HA又はα‐Kar2pを、PBSブロックに対し、それぞれ1:1,000又は1:5,000の希釈率で1時間適用した。液溜めをPBSブロックで3乃至5回洗浄した。30μLの二次抗体(Alexa Fluor 488ヤギα-マウス又はα-ラビットおよびAlexa Fluor 546ヤギα-マウス又はα-ラビット;Molecular Probes, Inc.)を各液溜めに添加し、暗室で45分間培養した。ついで、液溜めをPBSブロックで5乃至7回洗浄し、PBSで2回洗浄した。各液溜めを5μLのマウンティング(mounting)媒体で(PBS, 90゜/グリセロール、0.025μg/mL DAPI)で封止し、更にガラスカバースリップで封止した。これらサンプルをZEISS Axioplanエピ蛍光顕微鏡で観察した。画像をSpot 2冷却デジタルカメラ(Diagnostic Instruments)を用いて収集し、Adobe Photoshopm 4.0を用いて保管した。KHNtを用いた実験において、遺伝子の2つのコピーを各菌株に導入し、検出を向上させた。単一のコピーにおける低発現レベルは、酵母細胞によるこの哺乳類ウイルス遺伝子の最適とは言えないコドンの使用によるものと思われる。遺伝子投与を増加させることにより、発現レベルは単一のコピーにおいてCPY* HAに類似し、ERAD基質としての、その処理に影響を与えるものではなかった(未公開のデータ)。
【0136】
参照:以下の文献は、ここに引用した他の全ての参照文献に加えて,参照としてここに組み込まれるものである。
【0137】
【0138】
実施例2
真核生物分泌たんぱく質の発現のための酵母ベクターシステムである。我々は多様なベクターシステムを設計し、構築した(酵母における異種(例えば、哺乳類)分泌および膜たんぱく質の発現については図14参照のこと)。このベクターは大腸菌での繁殖および操作のためのバクテリア・レプリコンを有している。更に、これは複製および有糸分裂安定性のため酵素原と動原体とを有している。その他,安定な菌株を発生させるためゲノム組込みのためのバージョンも入手可能である。この発現モジュールは使用者の必要に応じて容易に操作することができる。発現はTDH3プロモータ(S.cerevisiaeにおける公知の最も強力な構成性プロモータ)から駆動することができる。計略的に置かれた制限部位は主体自身の信号シーケンスの使用、又はモジュールに含まれる酵母BiP信号シーケンスの使用を許容する。酵母BiP信号シーケンス旗のものよりもより効果的であることが証明されている。なぜならば、それがSRP経路へ、すなわち、哺乳類細胞において分泌および膜たんぱく質により使用される第一次経路である共翻訳(cotranslational)転座機構へ組換えたんぱく質を方向付けるからである。一般に使用されているα‐ファクター信号シーケンスは問題があることが証明された。なぜならば、それがより高度の真核生物に稀な後翻訳経路を使用するからである。これと対照的に、BiP信号シーケンスの100%成功率の効能が異種たんぱく質の発現について示された。このモジュールは更に、6−ヒスチジン標識を有し、組換えたんぱく質の精製を容易にしている。この標識は、必要がなければ、主体cDNAの挿入の間に除去することもできる。転写は酵母ACT1ターミネータにより終了される。
Claims (42)
- 菌類中で異種たんぱく質を生産するための方法であって、受容菌細胞を用い、該細胞中の品質管理機構を変化させ、不完全に折り返された異種たんぱく質を小胞体中で退化させないようにし、該受容菌細胞にポリヌクレオチド発現構成体を導入することを特徴とする方法。
- 該菌類細胞が酵母細胞である請求項1記載の方法。
- 該導入工程が、PEG、エレクトトポレーション、粒子衝撃、およびLiAcの群から選択される形質転換法により行う請求項1記載の方法。
- 該形質転換法がLiAc媒介形質転換である請求項3記載の方法。
- 該ポリヌクレオチド発現構成体が酵母に基づくプラスミド内のものである請求項1記載の方法。
- 該受容菌細胞がO−グリコシル化が抑制されるように修飾されたものである請求項1記載の方法。
- 該受容菌細胞がたんぱく質マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子の抑制を含むものである請求項6記載の方法。
- 該マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子が、PMT1,PMT2,PMT3,PMT4,PMT5およびPMT6からなる群から選択される遺伝子である請求項7記載の方法。
- 該PMTがPMT1である請求項8記載の方法。
- 該PMTがPMT2である請求項8記載の方法。
- 該受容菌細胞がSec Thirteen遺伝子のバイパスの抑制を与えるものである請求項8記載の方法。
- 該Sec Thirteen遺伝子のバイパスがBST1である請求項11記載の方法。
- 請求項1の方法により形質転換された酵母細胞。
- 請求項1の方法により生産されたたんぱく質。
- 菌類細胞中で異種たんぱく質を生産するための方法であって、受容菌細胞を用い、O−グリコシル化を抑制させ、誤折返し(不完全に折り返された)異種たんぱく質を退化させないようにし、該受容菌細胞にポリヌクレオチド発現構成体を導入することからなり、ここで該構成体が該細胞中で発現されるべき構築遺伝子を含み、該遺伝子が該受容菌細胞を含む菌類細胞中で発現のため制御シーケンスに操作可能に連結されていることを特徴とする方法。
- 該菌類細胞が酵母細胞である請求項15記載の方法。
- 該導入工程が、PEG、エレクトトポレーション、粒子衝撃、およびLiAcの群から選択される形質転換法により行う請求項15記載の方法。
- 該形質転換法がLiAc媒介形質転換である請求項17記載の方法。
- 該ポリヌクレオチド発現構成体が酵母に基づくプラスミド内のものである請求項15記載の方法。
- 該受容菌細胞がたんぱく質マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子を含み、その発現が抑制されるようになっている請求項15記載の方法。
- 該マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子が、PMT1,PMT2,PMT3,PMT4,PMT5およびPMT6からなる群から選択される遺伝子である請求項20記載の方法。
- 該PMTがPMT1である請求項15記載の方法。
- 該PMTがPMT2である請求項15記載の方法。
- 請求項15の方法により形質転換された酵母細胞。
- 請求項15の方法により生産されたたんぱく質。
- 菌類細胞中で異種たんぱく質を生産するための方法であって、受容菌細胞を用い、Sec Thirteen遺伝子のバイパスの発現を抑制させ、誤って折り返された異種たんぱく質を退化させないようにし、該受容菌細胞にポリヌクレオチド発現構成体を導入することからなり、ここで該構成体が該細胞中で発現されるべき構築遺伝子を含み、該遺伝子が該受容菌細胞を含む菌類細胞中で発現のため制御シーケンスに操作可能に連結されていることを特徴とする方法。
- 該菌類細胞が酵母細胞である請求項1記載の方法。
- 該導入工程が、PEG、エレクトトポレーション、粒子衝撃、およびLiAcの群から選択される形質転換法により行う請求項1記載の方法。
- 該形質転換法がLiAc媒介形質転換である請求項28記載の方法。
- 該ポリヌクレオチド発現構成体が酵母に基づくプラスミド内のものである請求項28記載の方法。
- 該Sec Thirteen遺伝子のバイパスがBST1である請求項28記載の方法。
- 請求項28の方法により形質転換された酵母細胞。
- 請求項28の方法により生産されたたんぱく質。
- 酵母細胞の形質転換に有用なポリヌクレオチドであって、酵母細胞中に発現を駆動し得るプロモータと、大腸菌中での繁殖のためのバクテリア・リプリコンと、転写終結信号と、酵母BiP信号シーケンスと、複製および有糸分裂安定性のための酵母オリジン(origin)およびセントロメアとを有し、該ポリヌクレオチドが組換えたんぱく質の発現をSRP経路へ向けさせるようにしたことを特徴とするポリヌクレオチド。
- たんぱく質精製を容易にするための6−ヒスチジンタグを更に含む請求項34記載のポリヌクレオチド。
- ベクターが図14に示すものである請求項34記載のポリヌクレオチド。
- 異種たんぱく質の生産のための酵母細胞であって、該細胞が修飾を含み、該細胞中の品質管理機構を変化させ、誤折返し異種たんぱく質が小胞体中で退化させないようにしたことを特徴とする酵母細胞。
- 該変化がO‐連結グリコシル化を抑制させる修飾を含む請求項37記載の酵母細胞。
- 該変化が機能消失のPMT変化である請求項38記載の酵母細胞。
- 該PMT変化がPMT1に対するものである請求項39記載の酵母細胞。
- 該PMT変化がPMT2に対するものである請求項39記載の酵母細胞。
- 該変化がSec Thirteen遺伝子のバイパスの生産を抑制するものである請求項37記載の酵母菌株。
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