JP2005512954A6 - ヒトパピローマウイルスe2トランスアクチベーションドメイン/インヒビター共結晶および前記インヒビター結合ポケットの境界を定めるx線座標 - Google Patents

ヒトパピローマウイルスe2トランスアクチベーションドメイン/インヒビター共結晶および前記インヒビター結合ポケットの境界を定めるx線座標 Download PDF

Info

Publication number
JP2005512954A6
JP2005512954A6 JP2003512265A JP2003512265A JP2005512954A6 JP 2005512954 A6 JP2005512954 A6 JP 2005512954A6 JP 2003512265 A JP2003512265 A JP 2003512265A JP 2003512265 A JP2003512265 A JP 2003512265A JP 2005512954 A6 JP2005512954 A6 JP 2005512954A6
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tad
hpv
inhibitor
buffer
concentration
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2003512265A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4602665B2 (ja
JP2005512954A (ja
JP2005512954A5 (ja
Inventor
デイル アール キャメロン
ジャックス アーチャンボールト
クリスチャン ヨアキム
ピーター ホワイト
ヨン ワン
Original Assignee
ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング filed Critical ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
Priority claimed from PCT/CA2002/001058 external-priority patent/WO2003006495A2/en
Publication of JP2005512954A publication Critical patent/JP2005512954A/ja
Publication of JP2005512954A6 publication Critical patent/JP2005512954A6/ja
Publication of JP2005512954A5 publication Critical patent/JP2005512954A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4602665B2 publication Critical patent/JP4602665B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

インヒビターLと複合体を形成した配列番号2のPV E2 TAD様ポリペプチドを含む結晶化させることができる組成物が開示される。本発明はまた、前記結晶化可能HPV E2 TAD−インヒビター複合体(HPV E2 TAD−L)を製造する方法を提供する。前記方法は以下の工程を含む:a)精製緩衝液に含まれる精製HPV E2 TADを可溶化インヒビターLと混合し、前記HPV E2 TAD−L複合体を含む複合体溶液を作製し;さらに、b)結晶化緩衝液中でa)から前記複合体を結晶化させる。本発明はまた結晶化アポHPV E2 TADを製造する方法を提供する。前記方法は以下の工程を含む:a)精製緩衝液に含まれるアポHPV E2 TADを結晶化緩衝液と混合する。インヒビター結合ポケットを明らかにするHPV E2 TAD−L複合体のX線結晶構造座標もまた提供される。前記インヒビター結合ポケットは、前記ポケットと結合する有望な小分子インヒビターのスクリーニングに有用である。

Description

発明の詳細な説明
発明の分野
本発明は、乳頭腫(パピローマ)ウイルスE2タンパク質、特にインヒビターと複合体を形成するヒトパピローマウイルス11(HPV−11)E2タンパク質のトランスアクチベーションドメインの結晶構造に関する。本発明は特に、インヒビター結合ポケットの境界を定める結晶構造座標、および前記ポケットに適合する有望なインヒビターを特定することができる三次元構造モデルを提供する。さらにまた、パピローマウイルス(特にヒトパピローマウイルス)のDNA複製に必要なE2タンパク質活性のインヒビターをデザインおよび選別することを可能にする方法が開示される。
発明の背景
乳頭腫(パピローマ)ウイルス(PV)はエンベロープをもたないDNAウイルスで、上皮の過剰増殖病巣を誘発する。パピローマウイルスは自然界に広く分布し、高等脊椎動物で認められる。とりわけ、ヒト、ウシ、ウサギ、ウマおよびイヌ由来のウイルスの性状が決定されている。最初のパピローマウイルスは、ワタオウサギパピローマウイルス(CRPV)として1933年に報告された。そのときから、ワタオウサギパピローマウイルスは、ウシパピローマウイルス1型(BPV−1)とともにパピローマウイルスに関する研究のための実験用標準ウイルスとして役立ってきた。ほとんどの動物のパピローマウイルスは純粋な上皮性増殖病巣に附随し、さらに動物のほとんどの病巣が皮膚に存在する。ヒトでは、これまでに同定された75を越えるパピローマウイルス(HPV)の型があり、それらは感染部位によって分類されてきた:皮膚上皮および粘膜上皮(口腔および生殖器粘膜)。前記皮膚関連疾患には扁平いぼ、足底いぼなどが含まれる。粘膜関連疾患には喉頭乳頭腫および肛門性器疾患(子宮頸癌を含む)が含まれる(Fields, 1996, Vurology, 3rd ed. Lippincott-Raven Pub., Philadelphia, N.Y.)。
肛門性器疾患と関係がある25を越すHVPの型が存在する。これらは“低リスク”型と“高リスク”型とに分けられる。低リスク型にはHVP6型と11型が含まれ、前記は、主に良性の病巣、例えば尖圭コンジローム(性器いぼ)および軽度の扁平上皮内病巣(SIL)を誘発する。米国では、約5百万人が性器いぼを示し、そのうちの90%はHPV−6およびHPV−11による。
高リスク型は重度SILおよび子宮頚癌に関連し、きわめてしばしばHVP16、18、31、33、35、45および52型が含まれる。軽度SILから重度SILへの移行は、低リスクHVP型を含む病巣と較べて高リスクHVP−16および18を含む病巣ではるかに頻繁である。さらに4つのHVP型(16、18、31および45型)のみが子宮頚癌で頻繁に検出される。世界中で毎年、約50万の新規症例が子宮頸部の侵襲性癌と診断されている(Fields, 1996, 上掲書)。
性器いぼの治療には物理的除去、例えば凍結療法、CO2レーザー、電気外科手術、または外科的切除が含まれる。細胞毒製剤(例えばトリクロロ酢酸(TCA)、ポドフィリンまたはポドフィロクス)もまた用いることができる。免疫調節剤(例えばインターフェロンおよびイミキノイド(アルダラ(Aldara(登録商標),3M Pharmaceuticals))もまた利用することができる。前記の治療は全てのウイルス粒子の除去に完全に有効であるというわけではなく、高い代償または前記に関連する不快な副作用が存在する。さらにまた再発性いぼは一般的である(Beutner & Ferenczy, 1997, Amer. J. Med., 102(5A):28-37)。
従来のHPV感染治療方法が有効ではないことで、前記の感染を制御または排除する新規な手段を特定することの必要性が示された。最近では、抗ウイルス化合物、特にウイルス複製を妨げることができる化合物の発見に向けて努力が重ねられている(Hughes & Romanos, 1993, Nucleic Acids Res. 21:5817-5823; Clark et al., Antiviral Res., 1998, 37(2):97-106; Hajduk et al., 1997, J. Med. Chem., 49(20):3144-3150; Cowsert et al., 1993, Antimicrob. Agents. Chemother., 37(2):171-177)。したがって最終的に、HPV感染によって惹起されるいずれかの疾患を排除する可能性を有する、含有されるべき有望な化学療法標的薬剤を特定するためにHPVの遺伝学の研究が重要になった。
PVのライフサイクルは角化細胞の分化と密接に結びついている。感染は、基底上皮内の組織破壊部位で発生すると考えられている。正常細胞とは異なり、垂直分化中の細胞は分裂し続ける。感染細胞が前進分化にあるときは、細胞の複製機構は維持され、それによってウイルスDNAの複製は増加し、最終的には後期遺伝子発現およびビリオンアッセンブリーが分化最終点の角化細胞で生じ、ウイルス粒子が放出される(Fields, 上掲書)。
パピローマウイルスゲノムの各々のコード鎖は、約10個の明瞭な翻訳開放読み枠を含み、これらは初期ORFまたは後期ORFに分類されている。E1からE8遺伝子はウイルス複製サイクルの初期に発現される。2つの後期遺伝子(L1およびL2)は、それぞれメジャーおよびマイナーキャプシドタンパク質をコードする。前記E1およびE2遺伝子生成物は、ウイルスDNA複製で機能し、一方E5、E6およびE7はホスト細胞増殖を調節する。E3、E4およびE8遺伝子生成物の機能は現時点では明らかではない。
HPVの研究によって、E1およびE2タンパク質はウイルスDNA複製に必要な唯一のウイルスタンパク質である(Kuo et al., 1994, J. Biol. Chem. 30:24058-24065)。この要件はウシパピローマウイルス1型(BPV−1)のそれと同様である。実際のところ、全てのパピローマウイルス(PV)のE1およびE2タンパク質並びに複製起点配列間には、ウイルスの種および型に関係なく高度な類似性が存在する(Kuo et al., 1994, 上掲書)。
ウイルスDNAの複製がin vitroで進行し、E1タンパク質が過剰に存在する場合は、複製はE2の非存在下で進行することが可能である。in vivoでは、大量の細胞性DNAが存在するとき、複製にはE1およびE2の両方の存在が要求される。in vivoでの複製開始機構は、E1およびE2の複製起点への協調的結合を必要とし、それによって三次元的タンパク質−DNA複合体のアッセンブリーがもたらされると考えられている(Mohr et al., 1990, Science 250:1694-1699)。E2タンパク質は転写活性化因子であり、E1タンパク質と結合し、そうすることでE1のBPV複製起点への結合を高める(Seo et al., 1993b, Proc. Natl. Acad. Sci., 90:2865-2869)。したがって、E2は、E1を複製起点に誘導する特異的な因子として機能する(Sedman & Stenlud, 1995, Embo. J. 14:6218-6228)。HPVでは、E2はE1の複製起点への結合を安定化させると提唱されている(Lui et al., 1995, J. Biol. Chem. 270(45):27283-27291; McBride et al., 1991, J. Biol. Chem. 266:18411-18414)。これらのDNA−タンパク質およびタンパク質−タンパク質相互作用はDNA複製起点で生じる(Sverdrup & Myers, 上掲書)。
多数のヒトおよび動物の血清型の特徴を有する約45kDのE2タンパク質は、2つのドメインを含む共通の構成を有する。そのN−末端のトランスアクチベーションドメイン(TAD)は長さが約220アミノ酸であり、そのC−末端のDNA結合ドメイン(DBD)は100アミノ酸である。両ドメインは可撓性のリンカー領域によって結合している。
E2は、ウイルスのイニシエータータンパク質E1とともにDNA複製起点に協調的に結合し、最終的には機能的なE1六量体を生じることによってウイルスの複製を活性化させる。E2はまたウイルス転写の中心的な調節因子であり、基本的転写因子(TATA結合タンパク質、TFIIIBおよびTAFII70(近位プロモータ結合タンパク質、例えばSp1)、および他の細胞性因子(例えばAMF−1、これはE2の転写活性化に正の影響を及ぼす)を含む)と相互作用を示す。
前記の多くの相互作用のいずれが転写活性化の達成に十分であるのかまたは必要であるのかはなおあいまいである。前記の細目は、エンハンサー結合タンパク質は以下のようにして転写活性化因子として機能するという考えに一致する:エンハンサー結合タンパク質は特異的なタンパク質−タンパク質の接触により、全般的転写機構の成分をプロモーターに結合させてRNAポリメラーゼIIの補充という目的を達成する。E2の第三の機能は、ウイルスDNAの正確な分離を促進することである。ウシパピローマウイルス(BPV)ゲノムおよびE2タンパク質は有糸分裂時にホスト細胞染色体で一緒に存在するが、前記は完全なE2 TADの存在に依存する。
E2DBDは二量体化して、DNA結合部位の大溝(major groove)内に位置する側面を接する認識らせんとともにβ−バレルを形成する。対照的に、E2 TADの構造は、HarrisとBotchan( 1999, Science, 284(5420):1673)がX線結晶学によってHPV−18のE2 TADタンパク分解フラグメントの最初のモデルを提供するまでは不明であった。前記のモデルによって、55Åx40Åx30Åのカシューナッツ形タンパク質が提唱された。前記タンパク質は、その一方の側面に凹形の割れ目を、反対の面に細長い隆起部を有する。前記著者らは、明瞭に他と区別可能な表面が既知のE2の活性に対応するか否かを調べ、特に、転写にとって重要な特有の表面の範囲を明らかにするE175、L178、Y179およびI73を包含する主要なくぼみの内側端を構成する主要残基クラスターを特定した。
Antsonら(2000, Nature, 403:805-809)は、HPV−16由来の完全なE2 TADの結晶構造(7つの保存残基(R37、A69、I73、E76、L77、T81およびQ80)のクラスターを含む、第二の新規に特定された仮定的E2−E2 TAD接触面を含む)を開示した。前記著者らは、Q12およびE39はE1との相互作用に必要であろうと提唱した。
E2タンパク質は抗ウイルス剤として有望な標的であると考えられる。しかしながら、E2を標的とする薬剤発見の試みは、インヒビターと複合体を形成するE2の構造に関する情報の欠如によって妨げられてきた。ハリス(Harris)のモデルもアントソン(Antson)のモデルも潜在的インヒビター結合ポケットの位置特定および/または性状決定に関して何らの情報も提供していない。アポ−E2 TADの構造に関する情報は、前記アポ−タンパク質の表面に関してある貴重な情報を提供したが、前記はインヒビターとの結合時に誘発される構造変化に典型的ではないことことが今では明らかである。
固有のE2インヒビターの欠如(E2インヒビターはE2とインヒビターの共結晶に必要である)は、E2内のインヒビター結合ポケットの探索を妨げてきた。したがって、そのようなタンパク質−インヒビター複合体のX線結晶学的分析はこれまで可能ではなかった。
本発明は多数の文献を引用するが、それら文献は参照により本明細書に含まれる。
発明の要旨
本発明は、ヒトパピローマウイルスE2タンパク質のトランスアクチベーションドメインとE2の小分子インヒビターとの複合体を含む新規な組成物、並びに前記組成物の製造方法を提供することによって、従来技術では未解決であった問題を解決した。有利なことには、本発明はさらに、結晶化およびX線回折が可能で、それによってHPVE2タンパク質のトランスアクチベーションドメインのインヒビター結合ポケットに関する重要な情報を提供することができるE2−インヒビター複合体を提供する。前記インヒビターは、共結晶を精製する極めて貴重なツールを提供し、HPVの複製サイクル中にE1との相互反応に必要であろうと思われる、以前には不明であったインヒビター結合ポケットの性状決定を可能にする。
本発明はまた、HPVE2のインヒビター結合ポケットと少なくともいくつかの構造的に類似する特色を含む分子または分子複合体の三次元構造の少なくとも一部分を決定する方法を提供する。
本発明はまた、有望なインヒビターの結合を分析および予測し、前記特定されたポケットと結合するさらに別のインヒビターの探索を促進することができる3Dモデルを提供する。本発明で開示する前記ポケットの位置の特定および性状の決定によって、PV感染の治療において有望な新規治療目標が提供される。
本発明はまた、前記新規な目標を調節することができる薬剤を特定するためのスクリーニング方法、およびPVDNA複製を妨げることができる少なくとも1つの前記のような薬剤を選択するシステムを提供する。
本発明はまた、E1−E2相互作用を抑制する薬剤を製造する方法を提供する。前記方法は、本明細書に開示したポケットに適合する薬剤を特定するかまたはデザインすることを含む。
本発明の第一の特徴にしたがえば結晶化可能組成物が提供される。前記組成物は、下記式のインヒビターLと複合体を形成した配列番号:2のPV E2 TAD様ポリペプチドを含む。
Figure 2005512954
本発明の第二の特徴にしたがえば、上記で定義した、前記インヒビターLと複合体を形成した配列番号:2のPV E2 TAD様ポリペプチドを含む結晶が提供される。
本発明の第三の特徴にしたがえば、上記で定義した結晶化PV E2 TAD−インヒビター複合体を製造する方法が提供される。前記方法は以下の工程を含む:
a)精製緩衝液に含まれる精製PV E2 TADを可溶化インヒビターLと混合し、前記PV E2 TAD−L複合体を含む複合体溶液を作製し;さらに、
b)結晶化緩衝液中でa)から前記複合体を結晶化させる。
本発明の第四の特徴にしたがえば、以下を含む、結晶化アポPV E2 TADを製造する方法が提供される:
a)精製緩衝液に含まれるアポPV E2 TADを結晶化緩衝液と混合する。
本発明の第五の特徴にしたがえば、上記で定義した結晶化PV E2 TAD−インヒビター複合体を製造する方法が提供される。前記方法は以下の工程を含む:
a)結晶化緩衝液にインヒビターLを溶解し;さらに、
b)上記で定義した結晶化アポPV E2 TADを浸漬する。
本発明の第六の特徴にしたがえば、上記で定義したPV E2 TAD−インヒビター複合体(PV E2 TAD−L)のX線結晶構造座標が提供される。
本発明の第七の特徴にしたがえば、コンピュータ読出し可能データ保存媒体が提供される。前記媒体は、図9に示すX線結晶構造座標または前記構造座標の少なくとも一部分に関してコード化されたデータ保存物質を含む。
本発明の第八の特徴にしたがえば、本明細書に定義した前記PV E2 TAD−L複合体の三次元映像を作製するコンピュータが提供される。前記コンピュータは以下を含む:
a)図9に示す前記構造座標に関してコード化されたデータ保存物質を含むコンピュータ読出し可能データ保存媒体;
b)前記コンピュータ読出し可能データを加工するための指示の保存用メモリー;
c)前記コンピュータ読出し可能データを前記三次元映像に加工することを目的とする、前記コンピュータ読出し可能データ保存媒体と結合させた中央演算ユニット;および
d)前記三次元映像をディスプレーするための、前記中央演算ユニットと結合させたディスプレーユニット。
本発明の第九の特徴にしたがえば、E2 TADインヒビターの特定または性状決定に有用なE2タンパク質を製造する方法が提供される。前記方法は以下の工程を含む:
a)本明細書に定義したHPV E2 TAD−L結晶構造を用いてHPVインヒビター結合ポケットの残基を特定し;
b)前記HPVインヒビター結合ポケット残基を別のPVE2の類似残基と比較し;
c)前記他のPV残基を前記HPV残基に変異させてハイブリッドを作製し、
d)前記ハイブリッドをインヒビターによる抑制についてテストする。
定義
本明細書を通して以下の略語が用いられる。
“結合する”という用語は、化学物質または化合物、またはその一部分との間での近接した状態を指す。前記結合は非共有結合でもよく(この場合、水素結合、ファンデルワールス力または静電気的相互作用は並列している状態で極めて有利に働く)、または共有結合でもよい。
本明細書で用いられる“結合ポケット”は分子または分子複合体の一領域を指し、前記は、その形状の結果として別の分子、分子複合体、化学物質または化合物と優先的に結合する。本明細書で用いられるように、前記ポケットは少なくとも深い空洞を含み、場合によって浅い空洞も含む。
本明細書で用いられる“複合体”は、化学的物質と結合した分子またはタンパク質、その保存的類似体もしくは切端形の組合せを指す。
本出願で用いられるα−アミノ酸の略語は以下に示される:
Figure 2005512954
本明細書で用いられる“類似体”という用語は、本発明では、アミノ酸配列であって本来の配列と実質的に類似する生物学的活性(機能的または構造的活性のいずれか)を保持するアミノ酸配列を指す。前記類似体は同じ種に由来するものでも異なる種に由来するものでもよく、さらに天然の類似体でも合成によって製造されてもよい。前記の類似体には、タンパク質の生物学的活性が保存されていることを条件として、1つまたは2つ以上のアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列が含まれる。特に、“保存的類似体”という用語は、下記の表に定義されるように強い類似性または弱い類似性を有する別のアミノ酸によって置換されたアミノ酸を含む類似体を指す(例えば以下を参照されたい:M.O. Dayhoff, (1978), Atlas of Protein Sequence and Structure, 5, sippl. 3, National Biomedical Research Foundation, Washington, D.C.)。
アミノ酸の類似性に関する表
Figure 2005512954
アミノ酸またはアミノ酸残基に関して“側鎖”という用語は、α−アミノ酸のα−炭素原子と結合した基を意味する。例えば、グリシンのR−基側鎖は水素であり、アラニンのそれはメチル、バリンのそれはイソプロピルである。α−アミノ酸の固有のR−基または側鎖については以下の成書に記載されている:A.L. Lehninger's text on Biochemistry(4章を参照されたい)。
“切端”という用語は、E2 TADアミノ酸配列の任意のセグメントおよび/または上記に記載された一切の類似体の任意のセグメントであって、図9の座標によって境界が定められたインヒビター結合ポケットと同じ空間的関係にある、本発明のインヒビター結合ポケットの深い空洞の範囲を決定するために十分なアミノ酸を含むセグメントを指す。
“根平均二乗偏差”または“rms偏差”または“rmsd”という用語は、平均から逸脱した値を二乗したものの算術的平均の平方根を指す。原子を対象とする場合は、数字はオングストローム(Å)で与えられる。前記は、傾向または対象からの逸脱または変動を表現する一方法である。本発明では、全てのrmsdの比較は、H32、W33およびL94のみの主鎖原子を用いて重ね合わせた構造を剛体移動のみにより最小のオーバーラップrmsと比較することによって得られた。我々のアポ構造と本明細書に開示した複合体との間の前記操作に対する主鎖原子のrmsdは0.078Åである。
好ましい実施態様
1.組成物
第一の実施態様にしたがえば、下記式Lと複合体を形成した配列番号2のHPV E2 TAD様ポリペプチドを含む結晶化可能組成物が提供される:
Figure 2005512954
好ましくは、前記組成物は、HPVE2タンパク質のアミノ酸1−220(配列番号1)(Swiss Protのナンバリングにしたがって以下のように定義される:遺伝子座VE2_HPV11アクセッションP04015;固有ID、g137671)、その保存的類似体または切端形を含む。より好ましくは、E2のトランスアクチベーションドメイン(TAD)はアミノ酸1−218、好ましくは1−215、より好ましくは1−201を含む。さらに好ましくは、本発明に用いられるE2 TADはアミノ酸2−201、特に2−196を含む。さらに好ましくは、本組成物はE2 TADのアミノ酸15−104を含む。
第一の実施態様の別の特徴では、本発明で用いられるHPV E2 TADはHPV−11から得られ、さらに小分子インヒビターLと複合体を形成する。他のタイプのパピローマウイルス(PV)(BPV(ウシパピローマウイルス)またはCRPV(ワタオウサギパピローマウイルス)を含む)もまた本発明に含まれる。
第二の実施態様にしたがえば、インヒビターLと複合体を形成した配列番号2のHPV E2 TAD様ポリペプチドを含む結晶が提供される。
2.結晶化の方法
本発明の第三の実施態様にしたがえば、上記に定義した結晶化HPV E2 TAD−インヒビター複合体(HPV E2 TAD−L)の製造方法が提供される。前記方法は以下の工程を含む:
a)精製緩衝液に含まれる精製HPV E2 TADを可溶化インヒビターLと混合して、前記PV E2 TAD−L複合体を含む複合体溶液を作製し;さらに
b)前記複合体をa)から結晶化緩衝液中で結晶化させる。
第三の実施態様の工程a)の好ましい特徴では、前記インヒビターLは100%DMSO中で60mMの濃度で可溶化される。
第三の実施態様の工程a)の好ましい特徴では、前記精製緩衝液は、TCEPおよびDTTから選択できる還元剤を含む。より好ましくは、前記緩衝剤はTCEPである。好ましくは、前記緩衝剤は、約1mMから約10mMの濃度のTCPEである。より好ましくは、前記緩衝剤は5mMの濃度のTCPEである。
好ましくは、前記精製緩衝液はpH7から9の間で用いられる。より好ましくは、前記精製緩衝液はpH8で用いられる。
前記緩衝剤の他にさらに、HPV E2 TADの安定化を促進するために塩を添加することができる。好ましくは、前記塩はNaCl、NH4SO4またはKClから選択することができる。より好ましくは、前記塩は約200mMから約800mMの濃度のNaClである。より好ましくは、前記塩は500mMの濃度のNaClである。
前記還元剤の他にさらに、HPV E2 TADの安定化をさらに促進するために緩衝液を添加することができる。好ましくは、前記緩衝液はトリス−HCl、HEPESまたはビス−トリスから選択することができる。より好ましくは、前記緩衝液は約0nMから約50mMの濃度のトリス−HClである。さらに好ましくは、前記緩衝液は25nMの濃度のトリス−HClである。
前記還元剤の他にさらに、HPV E2 TADのプロテアーゼによる分解を減少させるためにキレート剤を添加することができる。好ましくは、前記キレート剤はEDTAまたはEGTAでもよい。より好ましくは前記キレート剤は0mMから1mMの濃度のEDTAである。さらに好ましくは、前記キレート剤は0mMから0.5mMの濃度のEDTAである。さらに好ましくは前記キレート剤は0.1mMの濃度のEDTAである。
第三の実施態様の工程a)の好ましい特徴では、好ましくは、HPV E2 TADタンパク質溶液は、前記精製緩衝液中で約5mg/mLから約15mg/mLの濃度で用いられる。より好ましくは、前記PV E2 TADは前記精製緩衝液中で約10mg/mLのHPV E2 TAD濃度で用いられる。
第三の実施態様の工程b)の好ましい特徴では、好ましくは、前記結晶化緩衝液は、MES、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムから選択することができる。より好ましくは、前記結晶化緩衝液は約50mMから約0.2Mの濃度のMESである。さらに好ましくは、前記結晶化緩衝液は0.1Mの濃度のMESである。
好ましくは前記結晶化緩衝液は、HPV E2 TADの結晶化を促進する沈澱剤をさらに含む。好ましくは前記沈澱剤は、MPD、イソプロパノール、エタノールまたは第三ブタノールから選択することができる。より好ましくは、前記沈澱剤は、30%から約40%の濃度のMPDである。さらに好ましくは、前記沈澱剤は35%の濃度のMPDである。
好ましくは、前記結晶化緩衝液は4.5から6.5のpHで用いられる。さらに好ましくは前記結晶化緩衝液は5.5のpHで用いられる。
第三の実施態様の工程b)の好ましい特徴では、前記結晶化は0℃から10℃で実施される。より好ましくは前記結晶化は4℃で実施される。
第三の実施態様の好ましい特徴では、HPV E2 TAD−L複合体の結晶化は懸垂滴蒸気拡散技術(hanging drop vapor diffusion technique)を用いて実施した。
第三の実施態様の重要な特徴では、結晶化HPV E2 TAD−L複合体の発明はX線結晶学の適用が容易である。X線結晶分析を用いて、生成HPV E2 TAD−インヒビター複合体結晶は、単位胞寸法がa=b=60.7Åでc=82.5Åである空間群P4(1)に属し、さらに不整単位につき1つの分子を含む。初期回折データは、R−軸IIイメージプレートエリア検出装置(Molecular Structure Corp. Texas)を搭載したホームソースX線発生装置(Rigaku, Japan)を用いて測定された。好ましくは、3.15Åの解像データを100Kに冷却した複合体の単一結晶について集めた。
本発明の第四の実施態様にしたがえば、アポHPV E2 TADを結晶化させる方法が提供される。前記方法は、a)精製緩衝液に含まれるアポHPV E2 TADを結晶化緩衝液と混合することを含む。
第四の実施態様の好ましい特徴では、前記アポHPV E2 TADはアポHPV−11E2 TADである。より好ましくは、前記アポHPV E2 TADはアポSe−HPV−11E2 TADである。
第四の実施態様の好ましい特徴では、前記精製緩衝液は本明細書に記載したものを含む。好ましくは、前記アポHPV E2 TADタンパク質溶液は、前記精製緩衝液中で約1mg/mLから約15mg/mLの濃度で用いられる。より好ましくは、前記アポHPV E2 TADは前記精製緩衝液中で約1mg/mLから約10mg/mLのE2 TADの濃度で用いられる。さらに好ましくは、前記アポHPV E2 TADは前記精製緩衝液中で5mg/mLの濃度で用いられる。
第四の実施態様の好ましい特徴では、前記結晶化緩衝液は、MES、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムから選択することができる。より好ましくは、前記結晶化緩衝液は約50mMから0.2Mの濃度のコハク酸ナトリウムである。さらに好ましくは、前記結晶化緩衝液は0.1Mの濃度のコハク酸ナトリウムである。
好ましくは、前記結晶化緩衝液はさらに、PEG8K、PEG4KまたはPEG5Kモノメチルエーテルを含む。より好ましくは、前記結晶化緩衝液はさらに、約10%から約25%の濃度のPEG5Kモノメチルエーテルを含む。さらに好ましくは、前記結晶化緩衝液はさらに18%の濃度のPEG5Kモノメチルエーテルを含む。
好ましくは、前記結晶化緩衝液は4.5から6.5のpHで用いられる。さらに好ましくは、前記結晶化緩衝液は5.0のpHで用いられる。
好ましくは、前記結晶化緩衝液はさらに約0.1Mから約0.4Mの濃度の硫酸アンモニウムを含む。さらに好ましくは、前記結晶化緩衝液はさらに0.2Mの濃度の硫酸アンモニウムを含む。
第四の実施態様の工程の好ましい特徴では、前記結晶化は0℃から10℃で実施される。より好ましくは前記結晶化は4℃で実施される。
前記アポHPV−11E2 TAD結晶は、単位胞寸法がa=54.9Å、b=169.9Åおよびc=46.1Åである空間群C222に属し、さらに不整単位につき1つの分子を含む。回折データは、ビームラインX4a(NSLS, Brookhaven National Laboratory, New York)により採集した。4つのデータセットを、セレニウム吸収端近くの4つの異なるx線波長(0.9790Å、0.9794Å、0.9743Å、および0.9879Å)で100Kに冷却した単一結晶から集めた。画像はADSCQ4CCDにより採集した。好ましくは、最大解像は2.4Åであった。
本発明の第五の実施態様にしたがえば、以下の工程を含む、結晶化HPV E2 TAD−インヒビター複合体(HPV E2 TAD−L)の製造方法が提供される:
a)インヒビターLを結晶化緩衝液に溶解し;さらに
b)結晶化アポHPV E2 TADをa)に浸漬する。
本発明の第五の実施態様のまた別の特徴では、以下の工程を含む、上記に定義した結晶化HPV E2 TAD−インヒビター複合体(HPV E2 TAD−L)の製造方法が提供される:
a)結晶化HPV E2 TADを含む結晶化緩衝液にインヒビターLを添加する。
3.X線座標
第六の実施態様にしたがえば、上記に定義したHPV E2 TAD−インヒビター複合体(HPV E2 TAD−L)のX線結晶構造座標が提供される。より好ましくは、前記座標はインヒビター結合ポケットの座標である。さらに好ましくは、前記HPV E2 TAD−インヒビター複合体の座標一式は図9のとおりである。
好ましくは、インヒビター結合ポケットは、アミノ酸H32、W33およびL94の側鎖によって境界が定められる深い空洞を含み、前記HPV E2 TADのY19の側鎖はその天然の位置から移動して、小分子インヒビターの侵入を許容するような容積をもつ深い空洞を形成する。より好ましくは、前記深い空洞はその底部に並んだH29およびT97を有する。さらに好ましくは、前記ポケットはさらに、アミノ酸L15、I36、E39、K68、N71およびA72の1つまたは2つ以上によって境界が定められる浅い空洞を含む。
好ましくは前記インヒビター結合ポケットは、以下のアミノ酸クラスターに割り当てられた座標にしたがってその境界が明示される:
15 21......28........ 39.....68 72........90 104
LLELYEE...... KHIMHWKCIRLE..... KGHNA........ EPWTLQDTSYEMWLT
(配列番号9) (配列番号10) (配列番号11) (配列番号18)
より好ましくは、前記インヒビター結合ポケットおよび特にその深い空洞は、図9のようにH32、W33およびL94の座標によって定められる。より好ましくは、前記は、H32、W33およびL94の側鎖の座標によって定められる。
また別には、タンパク質構築物のY19の側鎖を変更してもよい。前記はY19の側鎖に妨害されることなく類似の深い空洞を再現するであろう。
さらに好ましくは、前記深いポケットの底部はアミノ酸H29およびT97の座標によってその境界が定められる。さらに好ましくは、前記インヒビター結合ポケットの浅い空洞は、アミノ酸L15、I36、E39、K68、N71およびA72の1つまたは2つ以上の座標によって境界が定められる。
本発明のHPV E2 TAD−L複合体の三次元構造は、図9に示す一組の構造座標によって定められる。“構造座標”という用語は、結晶形態にあるE2−L複合体の原子(散乱中心)によってX線の単色ビームの回折を基にして得られたパターンに関する、数学的操作で得られるデカルト座標を指す。この回折データを用いて、結晶の繰返し単位の電子密度マップを計算する。続いて前記電子密度マップを用いて、E2 TADインヒビターポケットの個々の原子の位置を確定する。
タンパク質またはタンパク質−インヒビター複合体またはその部分に対する一組の構造座標は、三次元における形状を定める相対的位置を示す一組の点であることは当業者には理解されよう。したがって、完全に異なる一組の座標が類似または同一の形状を示すことがあるということは可能なことである。
座標における変動は、構造座標の数学的操作によって生じるであろう。例えば、図9に示す構造座標は、構造座標の結晶学的並べ換え、構造座標セットの細分化もしくはマトリックス操作、または上記の任意の組合せによって操作することができる。
分子または分子複合体またはその部分が同じものと考えることができるほどHPVE2タンパク質またはHPV E2 TADの全てもしくはその部分と十分に類似しているか否かを決定するためには、種々の計算による分析が必要である。そのような分析は、従来のソフトアプリケーション、例えばQUANTAのモリキュラーシミラリティーアプリケーション(Molecular Simulations Inc., San Diego, CA)バージョン4.1で実施できる。
前記モリキュラーシミラリティーアプリケーションは、異なる構造、同じ構造の異なる配置、および同じ構造の異なる部分間での比較を可能にする。構造を比較するためにモリキュラーシミラリティーで用いられる方法は4つの工程に分割される:1)比較されるべき構造のローディング;2)これら構造中の同価原子の決定;3)フィッティング(重ね合わせ)操作の実施;および4)結果の分析。
各構造は名称によって特定される。続いて1つの構造を標的(すなわち固定構造)として特定し、残りの全ては作業構造(すなわち移動構造)である。QUANTA内の原子同価性はユーザーの入力によって決定されるので、本発明の目的のためにはrmsd値は、比較される2つの構造間のアミノ酸H32、W33およびL94のための主鎖原子を用いて決定された。
剛体フィッティング法(rigid fitting method)を用いたときは、標的構造との最適な重ね合わせを得るために前記作業構造を転換および回転させる。前記のフィッティング操作は、同価原子の固有対に対する前記重ね合わせの根平均二乗差が絶対最小であるように、移動構造に適用するべき最適な転換および回転を計算するアルゴリズムを用いる。2つの構造を重ね合わせた後、rmsd値は、同価原子の固有セットについて計算することができる。
4.機械読出し可能媒体に保存された座標
第七の実施態様では、図9に示す構造座標または前記構造座標の少なくとも一部に関してコード化されたデータ保存物質を含むコンピュータ読出し可能データ保存媒体が提供される。そのようなコンピュータ読出し可能データ保存媒体の例は当業者には周知であり、例えばCD−ROMおよびディスク(“フレキシブルディスク”)が含まれる。
したがって本発明にしたがえば、HPVE2−インヒビター複合体(および特にHPV E2 TAD−L複合体)およびその部分の構造座標を機械読出し可能保存媒体に保存することができる。前記のデータを種々の目的、例えば薬剤の発見およびタンパク質結晶のX線結晶解析に用いることができる。
したがって第八の実施態様では、以下を含むHPV E2 TAD−L複合体の三次元映像を作製するコンピュータが提供される:
a)図9に示す前記構造座標に関してコード化されたデータ保存物質を含むコンピュータ読出し可能データ保存媒体;
b)前記コンピュータ読出し可能データを加工するための指示を保存するメモリー;
c)前記コンピュータ読出し可能データを前記三次元映像に加工するために、前記コンピュータ読出し可能データ保存媒体と結合させた中央演算ユニット;および
d)前記三次元映像をディスプレーするために前記中央演算ユニットと結合させたディスプレーユニット。
5.ポケットの三次元構造
本発明はまた、HPV E2 TADインヒビター結合ポケットと構造的に類似する特色を含む分子複合体の少なくとも一部分の三次元構造が提供される。
本発明にしたがえば、前記インヒビター結合ポケットの形状は、深いポケットおよび場合によって浅いポケットを含むとみなすことができる(図7参照)。前記深い空洞の形状は、アミノ酸H32、W33およびL94の側鎖の相対的な位置によって定められ、図9に示すそれらの絶対座標によって決められない。類似の座標または三次元モデルは異なる技術から得ることができ、本発明の範囲内に含まれる。
したがって本発明はまた、HPVE2−インヒビター複合体、特にHPV E2 TAD−L複合体の三次元構造を提供する。重要なことには、前記によって、HPV E2 TADインヒビター結合ポケットの形状および構造に関する情報が初めて提供された。
6.スクリーンニングのために三次元モデルを使用する
第九の実施態様では、アミノ酸H32、W33およびL94を含むHPV−11E2タンパク質トランスアクチベーションドメインの構造座標またはその三次元モデルによって定められる結合ポケットを含むパピローマウイルスE2トランスアクチベーションドメインと結合する化学物質の潜在的能力を評価する方法が提供される。
場合によって、本発明はさらに、前記結合ポケットが、前記深いポケットの底部の境界を定めるH29およびT97の一方または両方の構造座標をさらに含む、前記化学物質の潜在的能力の評価方法を提供する。
場合によって、本発明はさらに、前記結合ポケットが、L15、I36、E39、K68、N71およびA72から成る群から選択される少なくとも1つのアミノ酸の構造座標をさらに含む、前記化学物質の潜在的能力の評価方法を提供する。
本発明は、HPV E2 TADインヒビター結合ポケットまたはその任意の部分に適合および/または結合することができる抑制性化合物を含む化学物質を考案、選別および合成するために、構造を基準にしてまたは論理的に薬剤をデザインする技術を使用することを初めて可能にした。
本発明によって可能になった特に有用な薬剤デザイン技術の1つは反復薬剤デザインである。反復薬剤デザインは、連続的なタンパク質/化合物セットの三次元構造を判定および評価することによってタンパク質と化合物の結合を最適化する方法である。
天然のリガンドまたは基質とそれらの対応するレセプターまたは酵素の結合ポケットとの結合は、多くの生物学的作用メカニズムの基礎であることは、当業者には理解されるところであろう。同様に、多くの薬剤が、レセプターおよび酵素の結合腔との結合を介してそれらの生物学的作用を発揮する。そのような結合は結合ポケットの全体または任意の部分で発生するであろう。そのような結合を理解することによって、その標的レセプターまたは酵素とより有利に結合し、したがって生物学的作用が改善された薬剤のデザインが促進されるであろう。したがって、このような情報はレセプターまたは酵素の有望なリガンドまたはインヒビター、例えばHPVE2様ポリペプチド、より重要なことにはHPV E2 TADのインヒビターの考案に重要である。
反復薬剤デザインでは、一連のタンパク質/化合物複合体の結晶が得られ、続いて各複合体の三次元構造が解明される。そのようなアプローチによって各複合体のタンパク質と化合物間の結合を看破することができる。これは、抑制活性をもつ化合物の選別、前記新規なタンパク質/化合物複合体の入手、前記複合体の三次元構造の解明、および前記新規なタンパク質/化合物複合体と以前に解明されたタンパク質/化合物複合体との間の結合の比較によって達成される。化合物の変化がタンパク質/化合物結合にどのような影響を与えたかを調べることによって、これらの結合を最適化させることができる。
いくつかの事例では、反復薬剤デザインは、連続的なタンパク質−化合物複合体を形成し、続いて新規な各複合体を結晶化させることによって実施される。また別には、予め形成させたタンパク質結晶を上記で述べたようにインヒビターの存在下で浸漬し、それによってタンパク質/化合物複合体を形成し、さらに個々のタンパク質/化合物複合体の結晶化の要件を調べる。有利なことには、本発明で提供されるHPVE2タンパク質結晶、特にE2 TAD結晶は、上記で述べたようにインヒビターまたは特にE2インヒビター(例えば化合物L)の存在下で浸漬して、E2−インヒビター結晶複合体を提供することができる。
7.スクリーニングのためにポケットを使用する
ある事例では、Y19の側鎖を欠くE2 TADを創出し、本明細書に示したインヒビター結合ポケットを再現することができる。一次配列を前記のように改変して類似の結合ポケットを得ることは本発明の範囲内に包含される。さらにまたスクリーンニングの目的でそのような改変E2 TADを使用し、新規に特定したポケットの有望なインヒビターをスクリーニングすることもまた本発明に包含される。
8.インヒビターの効率的結合のためにワタオウサギパピローマウイルス(CRPV)を改変する
十番目の特徴では、以下の工程を含む、E2 TADインヒビターの特定または性状決定に有用なE2タンパク質の製造方法が提供される:
a)上記に示したHPV E2 TAD−L結晶構造を用いて、HPVインヒビター結合ポケット残基を特定し;
b)前記HPVインヒビター結合ポケット残基をワタオウサギパピローマウイルス(CRPV)のタンパク質残基と比較し;
c)前記CRPV残基を前記HPV残基に変異させてハイブリッドを作製し;さらに
d)前記ハイブリッドをインヒビターによる抑制についてテストする。
実験用ウサギのワタオウサギパピローマウイルス(CRPV)による感染またはCRPVゲノムのこれらウサギの皮膚への導入によって大きないぼの増殖がもたらされる。CRPVモデル系は有望な抗HPV治療の評価に用いられてきた(J.W. Kreider et al. (1992) “Preclinical system for evaluating topical podofilox treatment of papillomas: dose response and duration of growth prior to treatment “, J. Invest. Dermatol. 99:813-818)。前記は、E2結合−HPVDNA複製インヒビターのin vivo有効性の検査のために便利なシステムであると考えられよう。しかしながら、CRPVおよびHPVE2タンパク質はわずかに39%の配列同一性を共有するだけであり、HPVタンパク質に結合するインヒビターはCRPVE2に結合しないかもしれない。
本明細書に述べたHPV E2 TAD−インヒビターの結晶構造を用いて、HPVインヒビター結合ポケットのメンバーであり、CRPVタンパク質では相違する残基を特定することができる。続いて対応するCRPV残基をHPVの対応する残基に変異させることができる。E2タンパク質を生成させるために、得られたハイブリッドをハイブリッド遺伝子のin vitro翻訳によってテストし、前記E2タンパク質をin vitroアッセイ(例えばE2依存E1−DNA結合アッセイ)で調べることができる(実施例6参照)。ハイブリッドタンパク質が前記アッセイで機能を示し、HPVインヒビターに感受性を示すことが証明された場合は、前記対応する遺伝子を用いてウサギでのいぼの増殖を誘発することができる。前記の方法により生じたいぼは、初めにHPVE2を標的としていたインヒビターによって治療可能であるはずである。したがって、HPVTADインヒビター複合体の分析によって生じた前記ハイブリッドモデルは、動物モデルでHPV化合物複合体に用いることができる。この技術はまた他のパピローマウイルス、例えばウシパピローマウイルス(BPV)(ただしこれに限定されない)にも応用できる。
本発明のさらに完全な理解のために以下の実施例で説明する。これらの実施例は説明を目的としており、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
実施例
実施例1:HPV−11E2 TADの発現と精製
Hisタグ付加HPV−11E2トランスアクチベーションドメインの発現:HPV−11E2(配列番号2)のアミノ酸2−201をプラスミドpCR3-E2(Titolo, 1999)から以下のプライマーを用いてPCRによって増幅させた:5’−CAA GAC GTG CGC TAG ACC ATG GGA CAT CAC CAT CAC CAT CAC GAA GCA ATA GCC AAG −3’(センス)(配列番号3)および5’−CAC CAA GTG GAT CCG CTA GCT TAG CTA GAT ACA GAT GCA GGA−3’(アンチセンス)(配列番号4)。前記PCR生成物をNcoIおよびBamHIを用いて消化し、さらに同じように消化したプラスミドpET-28bに連結した。前記連結生成物でマックスエフィシェンシー(MAX Efficiency(登録商標))コンピテントDH5α大腸菌(LifeTechnologies)を形質転換させた。Hisタグ付加HPV11E2 TAD(His−TAD)をコードするリコンビナントプラスミドを形質転換DH5αの培養から単離し、E2 TADのDNA配列は正確であることを立証した。続いて前記単離プラスミドで大腸菌株BL21(DE3)pLysS(Novagen)を形質転換させた。
E2トランスアクチベーションドメインのC−末端に配置されるさらに4つのリジンをコードする第二の構築物(Lysテール付加TAD)を以下のプライマーを用いてPCRによって作製した:5’−GGG CGC TAG ACC ATG GGA CAT CAC CAT CAC CAT CAC GAA GCA ATA GCC AAG CGT TTA G−3’(センスプライマー)(配列番号5)および5’−CCC CGG ATC CTC ATT ACT TTT TCT TTT TGC TAG ATA CAG ATG CAG GAG AAC−3’(アンチセンスプライマー)(配列番号6)。このPCR生成物を上記のように消化し、プラスミドpET15bに連結した。HPV11E2のアミノ酸2−201をコードするDNA配列が正確であることを立証し、このプラスミドで上記のように大腸菌株BL21(DE3)pLysSを形質転換した。
タンパク質の発現については、サークルグロー(CircleGrow)培養液(Bio101)(34μg/mLのクロラムフェニコールおよび50μg/mLのカナマイシン(His-TAD)または100μg/mLのアンピシリン(Lysテール付加TAD)を含む)に新鮮な一晩培養を1/25容積で接種し、O.D.(600nm)が約1.0に達するまで細胞を37℃で増殖させた。続いて前記培養を22℃に移し、タンパク質の発現を0.5mMのIPGTを用いてO.D.(600nm)で誘発した。6時間後に細胞を遠心によって採集し、ドライアイス上で凍結させ−80℃で保存した。
Hisタグ付加HPV11TADタンパク質の精製:精製方法は、Hisタグ付加TADおよびLysテール付加TADタンパク質と同一であった。全工程は4℃で実施した。細胞を以下のプロテアーゼインヒビターを含む精製緩衝液(25mMトリス−HCl(pH8.0)、500mMのNaCl、5mMのTCEP)に5mL/gで再懸濁させた:ペプスタチン、ロイペプチンおよびアンチペイン(各5μg/mL)、フェニルメチルスルホニルフルオリド(1mM)およびペファブロック(Pefabloc(登録商標);Roche、0.4mM)。前記懸濁物を超音波処理し、粗溶解物を26,000gで30分遠心した。上清を硫酸ニッケルで平衡化させた5mLのハイトラップキレートカラム(Hi-Trap, APB)に注入した。精製緩衝液+0mMおよび25mMのイミダゾールで洗浄した後、TADを100mMのイミダゾールを含む精製緩衝液で溶出させた。TAD含有分画をプールして5mL未満に濃縮し、続いて精製緩衝液+0.1mMのEDTAで平衡化させたスーパーデックス−75ゲルろ過カラム(APB)にロードした。純粋なTADを含有する分画をプールし、約5mg/mLに濃縮するか(Hisタグ付加TAD)または12mg/mLに濃縮した(Lysテール付加TAD)。濃縮タンパク質を分注し、ドライアイス上で凍結して−80℃で保存した。
セレノメチオニンを含むHis−TADの発現と精製:His−TADをコードするプラスミドで大腸菌株B834(メチオニン栄養要求株)を形質転換した。単一細菌コロニーを、34μg/mLのクロラムフェニコールおよび50μg/mLのカナマイシンを含むLB培養液中の一晩培養の接種に用いた。前記培養の一部分を、メチオニンを欠くDL30培養液(D.M. LeMaster & R.M. Richards, Biochemistry (1985) 24:7263-68)で4000倍に希釈した。前記培養液には2μg/mLのビオチンおよびチアミン、並びに50μg/mLのD,L−セレノメチオニン並びに同じ抗生物質が補充された。37℃で26時間後に培養は0.8の密度(O.D. 600nm)に達し、発現は0.5mMのIPTGで23℃で誘発した。約7時間後に細胞を採集し上記に述べたように保存した。精製はHis−TADについて上記に述べたように実施したが、ただし精製緩衝液は使用前にヘリウムでパージし、His−TADは、50および100mMのイミダゾールで洗浄後、200mMのイミダゾールで溶出させた。
実施例2:化合物Lの合成および精製

























Figure 2005512954
5−メチル1,3−インダンジオン(A)
メタノール(79mL)中の4−メチルフタル酸無水物(25.65g,158.2mmol)の懸濁物に室温でナトリウムメトキシド(69mLの25重量%溶液、316mmol)を添加した。30分後に反応混合物を水で希釈し、水層をEt2Oで洗浄した。水層をHCl(4N)で酸性化し、Et2Oで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、ろ過して減圧下で濃縮した。
粗残留物をアセトニトリル(79mL)に溶解して0℃に冷却した。得られた溶液にDBU(31.3g,206mmol)およびヨードメタン(33.7g,237.3mmol)を連続して添加した。0℃で1時間後に、ヨードメタン(33.7g,237.3mmol)を添加し、反応物を室温に加温し、さらに1時間攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し,残留物をEt2O(300mL)で希釈した。前記エーテル溶液を塩酸(4N,100mL)、NaOH(10%)およびブラインで連続して洗浄し、乾燥させて(MgSO4)ろ過し、さらに濃縮乾燥させた。得られた残留物をジアゾメタンのエーテル溶液で処理してエステル化を完了させ、その後乾燥させて4−メチルジメチルフタレート(22.2g,収量67%)を青黄色の油として得た。
酢酸エチル(107mL)中の粗4−メチルジメチルフタレート(22.20g,106.6mmol)の溶液に水素化ナトリウム(97%,3.84g,160mmol)を添加した。得られた懸濁物を加熱して4.5時間還流させ、続いて室温に冷却し、Et2O(100mL)を添加して黄色の沈殿物を得た。前記黄色の固体をろ過し、エチルアルコール/ジエチルエーテル(1/1)の混合物で2回洗浄した。
この黄色固体を続いてHCl(4N,100mL)に溶解し、過熱して30分還流した。冷却後EtOAcを添加し、有機層を分離しブラインで洗浄し、乾燥させて(MgSO4)ろ過し、濃縮して5-メチル1,3−インダンジオンを黄色の固体(3.7g,収量22%)として得た。
工程a
エタノール(13mL)中の5−メチルインダン−1,3−ジオン(A)(410mg,2.6mmol)の溶液に3,4−ジクロロベンゾアルデヒド(B)(493mg,2.8mmol)を加え、続いてピペリジン(1滴)を添加した。反応混合物を加熱して30分還流した。冷却後、前記反応混合物に過酸化水素水(30%,0.87mL,7.7mmol)およびDBU(97mg,0.6mmol)を添加した。30分攪拌を継続し、続いてヘキサン(5mL)を添加し、沈殿物をろ過した。得られた固体をプロパノール/ヘキサン(1/1)の混合物で2回粉末化し、強真空下で乾燥させて3−(3,4−ジクロロフェニル)−スピロ(オキシラン−2,2’−[5−メチル−インダン])−1’,3’−ジオン(D)(701mg,収量82%)を得た。
工程c
3−(3,4−ジクロロフェニル)−スピロ(オキシラン−2,2’−[5−メチル−インダン])−1’,3’−ジオン(D)(200mg,0.8mmol)および1−(4−[1,2,3]−チアゾール−4イル−フェニル)−ピロール−2,5−ジオン()(155mg,0.6mmol)のトルエン(4.6mL)中の混合物を加熱して16時間還流した。冷却および濃縮後、残留物をEtOAcで粉末化して2つの化合物の混合物(cis/cis異性ラセミ体、228mg,収量60%)を得た。
工程d
CH3CN(36mL)中の化合物の溶液に、NaOH(0.02N,17.8mL,0.36mmol)を、注射筒ポンプを用いて1時間かけて添加した。添加が完了した後、反応混合物をさらに1時間攪拌した。続いて、前記溶液を凍結乾燥させてラセミ化合物(227mg,定量的収量)を得た。キラルカラム(キラセルOD,イソクラテイック溶離液は0.06%のTFAを含む65%CH3CN/H2O;205nmのUVランプ:流速7mL/分)を用いて、純粋な鏡像体Lを調製用HPLCによる分割で得た。所望の分画を一まとめにし,凍結乾燥させた。対応するナトリウム塩は、アセトニトリル中でNaOH(0.02N,1当量)で処理し、続いて凍結乾燥して白色の固体としてナトリウム塩(15mg)を得ることによって製造した。
L:1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ10.35(s,1H),8.40(d,J=8.6Hz,2H),7.89−7.80(m,3H),7.64(m,3H),7.52(d,J=8.3Hz,1H),7.51−7.34(m,1H),5.75(s,1H),4.19(m,1H),3.78(m,1H),2.57(s,3H);ESMSm/z606(MH+).
前記化合物の抑制活性は実施例6に記載した酵素アッセイにしたがって判定し、180nM
のIC50を有すると決定された。インヒビターの選択性は、実施例7に記載したSV40の大型T抗原アッセイでは活性を欠くことによって実証された。
実施例3:E2 TAD−インヒビター複合体の形成
インヒビターLの粉末を100%DMSO中で60mMの濃度で溶解させた。前記タンパク質溶液は精製緩衝液中の10mg/mLのE2 TADから成っていた(精製緩衝液:25mMトリス−HCl(pH8.0),500mMのNaCl,5mMのTCEP,0.1mMのEDTA)。E2 TAD−Lの複合体は、74μLのタンパク質溶液中に1μLのインヒビターLを混合して作製した。結晶化実験を実施する前に前記溶液を4℃で2−3時間維持した。
実施例4:結晶化およびデータの収集
アポE2 TADおよびE2 TAD−L複合体の結晶化は、懸垂滴蒸気拡散技術(A. McPherson, Preparation and Analysis of Protein Crystals, Krieger Pub. 1989)を用いてVDX結晶化プレート(Hamton Research, Laguna Niguel, California)で実施した。
特にアポHPV−11E2 TADの場合:Se−E2 TAD溶液1μL(精製緩衝液中に5mg/mL)を以下を含む溶液1μLと混合した:0.1Mのコハク酸ナトリウム(pH5.0)、18%のPEG5000mmeおよび0.2Mの硫酸アンモニウム。得られた2μLの液滴を、以下を含む1mLのレザバー溶液上に懸垂した:0.1Mのコハク酸ナトリウム(pH5.0)、18%のPEG5000mmeおよび0.2Mの硫酸アンモニウム。4℃で得られた結晶は、空間群C222に属し、単位胞寸法がa=54.9Å、b=169.9Åおよびc=46.1Åであり、不整単位につき1つの分子を含んでいた。
回折データは、ビームラインX4a(NSLS, Brookhaven National Laboratory, New York)により採集した。4つのデータセットを、セレニウム吸収端近くの4つの異なるx線波長(0.9790Å、0.9794Å、0.9743Å、および0.9879Å)で100Kに冷却した単一結晶から集めた。画像はADSCQ4CCDにより採集し、最大解像は2.4Åであった。
複合体の結晶化の場合:実施例3で述べた複合体溶液1μLを、以下を含む溶液1μLと混合した:0.1MのMES(pH5.5)および35%MPD(メチルペンタンジオール)。得られた液滴を、以下を含む1mLのレザバー溶液上に懸垂した:0.1MのMES(pH5.5)、35%MPD。続いてプレートを4℃に保存した。得られた結晶は、a=b=60.7Åでc=82.5Åの単位胞寸法をもつ空間群P4(1)に属し、さらに不整単位につき1つの分子を含んでいた。
初期回折データは、R−軸IIイメージプレートエリア検出装置(Molecular Structure Corp. Texas)を搭載したホームソースX線発生装置(Rigaku, Japan)を用いて測定された。3.15Åの解像データを100Kに冷却した複合体の単一結晶から集めた。
続いて、高解像回折データをビームラインX25(NSLS, Brookhaven National Laboratory, New York)により採集した。回折画像は、カッパ軸ゴニオメーター(Enraf-Nonius, The Netherlands)搭載ブランデイス(Brandeis)B4検出装置(Brandeis University)により収集した。2.4Åの解像度の完全なデータセットが100Kに冷却した複合体の単一結晶から収集された(図9に提示)。
実施例5:フェージング、モデル構築および改良
アポ結晶データのフェージングは、プログラムMLPHARE(Collaborative Computational Project, #4, 1994, The CCP4 suite: programs for Protein Crystallography, Acta Cryst. D50, 760-763)を用いて、MAD(マルチ波長異常分散)によって実施した。
複合体結晶の場合、分子置換(MR)法を回折データフェーズの初期概算に用いた。Se−E2 TADのアポ構造をモデルとして用いた。回転および転換検索をプログラムAMORE(Collaborative Computational Project, #4, 1994, The CCP4 suite: programs for Protein Crystallography, Acta Cryst. D50, 760-763)を用いて実施した。
電子密度マップへのモデルの構築はソフトO(Alwyn Jones, Upsala University, Sweden)を用いて実施し、モデルの改良はソフトCNX(Molecular Simulation Inc., San Diego, California)を用いて実施した。続いてこの新しいモデルを、電子密度マップ計算、モデル再構築およびモデル改良工程を含むサイクリング法によって改良した。最終的モデルはE2 TADの残基2から196および2つのインヒビターL分子を含む。もっとも新しい結晶学R因子は24.6%であり、Rfree因子は29.3%である。
実施例6:E2依存E1複製起点結合アッセイ
本アッセイは、文献(McKay, 1981, J. Mol. Biol. 145:471)に記載されたSV40T抗原のための類似のアッセイをモデルにして作製した。400bpの放射能標識DNAプローブ(HPV−11の複製起点を含む(Chiang et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5799))を、鋳型として複製起点(固有BAMH1部位内のHPV-11ゲノムのヌクレオチド7886−61)をコードするプラスミドpBluescript(登録商標)SKおよび前記複製起点に側面を接するプライマーを用いてPCRによって作製した。放射能標識は[33P]dCTPとして取り込ませた。結合アッセイ緩衝液は以下から成る:20mMのトリス(pH7.6)、100mMのNaCl、1mMのDTT、1mMのEDTA。
用いた他の試薬は、プロテインA−SPAビーズ(タイプII、Amersham)およびK72ウサギポリクローナル抗血清(HPV−11E1のC−末端14アミノ酸に対応するペプチドに対して作製)である。アマーシャム(Amersham)のプロトコルにしたがって、一ビンのビーズを25mLの結合アッセイ緩衝液と混合した。アッセイでは、飽和量のK72抗血清をビーズに添加し、前記混合物を1時間インキュベートし、1容の結合アッセイ緩衝液で洗浄し、続いて同じ容積の新しい結合緩衝液に再懸濁した。結合反応物には、8ngのE2、バキュロウイルス感染細胞から発現されたE1含有核抽出物の約100−200ng(WO99/57283で報告)、および0.4ngの放射能標識プローブが総容積80μLの結合アッセイ緩衝液に含まれていた。室温で1時間後に、25μLのK72抗体−SPAビーズ懸濁物を前記結合反応物に添加し混合した。さらに室温で1時間インキュベートした後、反応物を簡単に遠心してビーズを沈澱させ、複合体生成の程度をパッカードトップカウント(Packard TopCount(登録商標))によりシンチレーション計測で決定した。典型的には、E1およびE2を含む反応物のシグナルは、E1、E2またはその両者が除かれた場合に観察されるバックグラウンドより20−30倍高かった。
実施例7:SV40T抗原−DNA結合アッセイ
本アッセイはSV40T抗原(TAg)−複製起点複合体の形成を測定する。前記アッセイはR.D.G. McKay(J. Mol. Biol. (1981), 145:471-488)によって確立された。基本的には、前記はE2依存E1−DNA結合アッセイ(実施例6)に非常に類似し、TAgがE1およびE2に置き換えられ、放射能標識SV40複製起点プローブがHPV複製起点プローブに置き換えられている。TAgはE1およびE2と機能的相同性を共有するが配列類似性はきわめて低いので、本アッセイは実施例6のアッセイの副スクリーニングとして用いられる。
放射能標識した複製起点含有DNAプローブを、鋳型としてpCH110プラスミド(Pharmacia)を用いてPCRで作製した。前記鋳型はSV40の最小複製起点(ヌクレオチド7089−7023)をコードする。プライマーは以下のとおりである:“sv40-6958センス”=5’−GCC CCT AAC TCC GCC CAT CCC GC(配列番号7)、および“sv40-206アンチ”=5’−ACC AGA CCG CCA CGG CTT ACG GC(配列番号8)。PCR生成物は長さが約370塩基対で、100μLのPCR反応物につき50μCiのdCTP(α−33P)を用いて標識した。PCR反応に続いて、キアゲン(Qiagen(登録商標))PCR精製キットまたはフェノール抽出/エタノール沈澱法のいずれかを用いて生成物を精製した。前記精製した生成物をTEで1.5ng/μL(ゲル電気泳動で概算)に希釈した。新鮮な調製物は約150,000cpm/μLを示した。
結合反応は、30μLのTAg溶液(100ng/ウェル)、200ngの33P放射能標識DNAプローブおよび7.5μLの10xDNA結合緩衝液(200mMのトリス−HCl(pH7.6)、100mMのNaCl、1mMのEDTA、10mMのDTT)を75μLの最終容積中で混合して実施した。結合反応は室温で60分間進行させた。大型T抗原:2.0mg/mL(Chimerxから購入)。
タンパク質−DNA複合体は、プロテインA−SPAビーズに結合させたα−TAgモノクローナル抗体(PAb 101、サブタイプIgG2a、ハイブリドーマはATCCから入手、抗体は当施設内で精製)を用いて免疫学的に捕捉した。
タンパク質−DNA複合体の免疫沈澱は室温で1時間実施した。プレートを簡単に遠心し、沈澱した放射能標識DNAフラグメントをトップカウント(TopCount(登録商標))計測装置で計測した。
考察
図2はHPV−16のE2 TADの結晶構造モデルを示している(Antson et al., 2000, Nature, 403:805-809)。図5に示すように、このモデルの結合ポケット領域の拡大図は、アミノ酸Y32、W33およびL94は、適切なポケットを形成するには小さいが、小分子インヒビターを収容するために前記アミノ酸の側鎖を相当に調節することなく小分子インヒビターがその内部と結合することが可能な空洞を形成することを示している。
対応するHPV−11E2 TADドメインを結晶化してモデルを作製したときでも、前記対応するアミノ酸は再び、どのようなポケットも形成するには小さすぎるが、インヒビター結合に適した標的とみなすことができる空洞を形成することを示した(図6A)。図6Bに示したように、本発明は初めて、新しいE2 TAD−インヒビター複合体の結晶構造が、HPVDNA複製過程の有望なインヒビターを特定する唯一のツールを構成する新規で予期せぬインヒビター結合ポケットを提供することを示した。
驚くべきことに、E2 TAD−インヒビター複合体の構造は、インヒビターLの結合が19位のチロシンの側鎖の移動を誘発することを示した(図7)。この位置で、前記芳香環は、アポ構造で認められる小さな空洞から顕著な態様で回転し、深い空洞を形成する。チロシン19の側鎖の移動によって、全ての原子について1.959Åのrms偏差が生じる。この偏差が巨大な移動を構成することは当業者には理解されよう。そのような移動がそれ自身でも、または小分子インヒビターの存在下でも発生することは予測できなかったであろう。
さらにまた、ヒスチジン32のイミダゾール環は90度回転してインヒビターを収容するが、なお深い空洞の一部分であり続ける。ヒスチジン32の主鎖の移動は全ての原子について0.704Åのrms偏差を与える。これら2つの回転移動はいずれも発生することが予測されず、結合ポケット内にこの深い空洞の形成をもたらすことは予期されなかった。
図6Aに示したように、前記深い空洞はヒスチジン32、トリプトファン33およびロイシン94によってその境界が定められる。これら3つのアミノ酸残基の“全ての原子”のrmsdの置き換えは0.515Åである。前記のrmsは、結合ポケットの場合にこれら残基の天然の可撓性によっては説明できない。実際、1.0Åのrms偏差が200アミノ酸を含む完全なタンパク質の場合の正常範囲内と考えられる。この場合は、Antson(前掲書)のHPV−16アポE2 TADと本出願人のHPV−11アポE2 TADとの間のH32、W33およびL94の全ての原子についてのrms偏差は0.212Åである。これは、前記3つの残基が協調して移動することができる予想可能な(上)限界を示している。本発明は、これら3つの残基の予測可能な移動の範囲を越えている。
セリン98は、H32、W33およびL94と同じ平面上に存在せず、前記は、H32、W33およびL94によって形成される深い空洞、並びにL15、I36、E39、K68、N71、A72、S98およびY99から選択される1つまたは2つ以上のアミノ酸によって決定される浅い空洞を含むより大きなポケットのモデルを作製するためにまた用いることができるより浅い方の部分の一部分を形成する(図8参照)。
図9は、モデル作製のために用いることができるタンパク質−インヒビター複合体のX線座標リストである。これらの座標から明らかなことは、本出願人によって得られた複合体は2つのインヒビター分子を含むが、前記モデルは第二のインヒビターは深い空洞の外側に存在し、タンパク質とは顕著な態様では相互作用しないことを示しているということである。さらにまた、以下のアミノ酸は、x−線からそれらを見えなくする高い可撓性のためにアラニンとしてモデルが作製されている:E2、K107、K173、S180、M182、H183およびP196。
Harris & Botchan(Science (1999), 284(5420):1673)によれば、種々のE2タンパク質は平均してわずかに30%のアミノ酸配列同一性を有するだけである。しかしながら、突然変異による分析で、種々のE2 TADが共通の折り畳みおよび作用メカニズムを共有することが示唆された。この最後の記述に合致して、本出願人が明らかにしたインヒビター結合ポケットの範囲を定める前記アミノ酸クラスターは、低リスクと高リスクHPVの間でさえも驚くべき高さの同一性/類似性を共有する(図10)。明らかにされた最初のクラスターは、ポケット領域から移動し、それによって深い空洞を開放するアミノ酸Y19の側鎖を含む。このアミノ酸は種々のHPV型の間で高度に保存され、HPV−6、11、16および18では100%の同一性を有する。第二のクラスターは、ポケットの深い空洞を形成するヒスチジン32およびトリプトファン33を含む。ヒスチジン32はHPV−16と11間で同一であり、低リスクおよび高リスクHPV間で強い類似性を有する。一方、トリプトファン33は4つの型間で100%同一である。最後に、四番目のクラスターは、またポケットの深い空洞を形成するロイシン94を含み、前記は4つのHPV型で100%保存されている。
深いポケットの底部を形成するとき、H29はHPV−6、11および16で同一であり、HPV−18で類似している。同様に、T97はHPV−6、11および18で同一であり、HPV−16で類似している。
ポケットの浅い空洞を形成するとき、アミノ酸L15は明らかにされた最初のクラスターの一部分であり、低リスクおよび高リスクHPV間で高度に類似している。第二のクラスター内では、I36もまた高度に類似し、一方、E39は4つの型の全てで高度に保存されている。第三のクラスターは、結合ポケットの浅い空洞に並んでいることが示され、そこではK68およびN72は両方とも全型を通して高度に保存されている。最後にN71はHPV−6および11の間で同一であり、高リスク型では類似している。前記浅いポケットはさらに第四のクラスターのアミノ酸、例えばS98およびY99を含み、これらもまた種々の型のHPV間で高度に類似している。
前記高度な同一性/類似性は、本発明のHPV−11E2 TADで示したように前記ポケットはまた他の型のHPV(低リスクであれ高リスクであれ)でも見出されるであろうということを強く示している。図9のデータを用いてモデルを作製したように、おそらくこのポケット、特にこの深い空洞に結合するインヒビターは、広範囲のパピローマウイルスに由来するE2タンパク質と結合/抑制する高い確率を有するであろう。
図1Aは、Sakaiら(J. Virol. (1996) 70:1602-11)によって得られたHPV−11のE2トランスアクチベーションドメイン(配列番号1)のアミノ酸配列を示す。 図1Bは、実施例1の方法にしたがって得られたHPV−11のE2トランスアクチベーションドメイン(配列番号2)のアミノ酸配列を示す。 図2は、Antsonら(上掲書)が記載したHPV−16アポ−E2の立体リボンの模式図を示す。 図3は、本出願人が作製したHPV−11のアポ−E2の立体リボンの模式図を示す。 図4は、本明細書に記載した化合物Lと複合体を形成したHPV−11E2の立体リボンの模式図を示す。 図5は、HPV−16アポ−E2 TAD(Antson et al., 上掲書)のインヒビター結合ポケットの溶媒がアクセスできる表面を示す。 図6Aは、本出願人が作製したHPV−11アポ−E2のインヒビター結合ポケットの溶媒がアクセスできる表面を示す。 図6Bは、共結晶のインヒビター結合ポケットの溶媒がアクセスできる表面を示す。 図7は、インヒビターの結合に際して生じるY19およびH32の移動の模式図を示す。 図8は、特に深い空洞と浅い空洞を示すポケットの溶媒がアクセスできる上面図を示す。 図9は、化合物LとのE2 TAD複合体(以下ではHPV TAD E2−Lと称する)の共結晶からX線回折によって得られた、前記複合体の原子構造座標のリストである。前記複合体の調製は実施例3に記載されている。以下の用語は以下の意味を有する:AAという用語はアミノ酸を指し、前記はこの欄内の各座標によって特定される;“CPR”という用語はcis−プロリンを指す;BLHA=インヒビターLの第一の分子;BLHB=インヒビターLの第二の分子。鎖Aのアミノ酸197から201に関する情報は、それらをx−線から見えなくさせているこれら残基の高い可撓性のために欠けている。同じ理由から、以下のアミノ酸はアラニンとして作製されている:E2、K107、K173、S180、M182、H183およびP196.“X、Y、Z”は、結晶学的にデカルト座標空間内で各原子について決定される原子の位置を示す。“Occ”は、各原子が座標によって特定される位置を占有する分子の割合を示す占有係数である。値“1”は、各原子が結晶の全ての分子において同じ構成(例えば同じ位置)を有することを示す。“B”は、その原子中心の周囲の原子の移動を測定する熱係数である。深い空洞を形成する残基の座標は太字で示されている。 図10は、HPV−6A、HPV−11、HPV−16およびHPV−18のE2トランスアクチベーションドメインのインヒビター結合ポケット領域を一般的に決定するアミノ酸配列クラスターのアラインメントを示す。太字の残基は、それらがインヒビター結合ポケットの深い空洞の境界を定めることを示している。一重下線は前記深い空洞の底部の残基を示し、二重下線は浅いポケットの残基を示している。Y19はイタリック体で示されている。

Claims (67)

  1. 下記式のインヒビターLと複合体を形成した配列番号2のPV E2 TAD様ポリペプチドを含む結晶化可能組成物。
    Figure 2005512954
  2. 前記ポリペプチドがHPV E2 TADである請求項1に記載の結晶化可能組成物。
  3. 前記HPV E2 TADがHPV−11から得られる請求項2に記載の結晶化可能組成物。
  4. 以下の工程を含む、請求項1に記載の結晶化PV E2 TAD−インヒビター複合体(PV E2 TAD−L)を製造する方法:
    a)精製緩衝液に含まれたPV E2 TADを可溶化インヒビターLと混合して前記PV E2 TAD−L複合体を生成し;さらに
    b)前記複合体をa)から結晶化緩衝液中で結晶化させる。
  5. 前記PV E2 TADがHPV E2 TADである請求項4に記載の方法。
  6. 工程a)において、前記精製緩衝液がTCEPおよびDTTから選択される還元剤を含む請求項4に記載の方法。
  7. 前記還元剤が約1mMから約10mMの濃度のTCEPである請求項6に記載の方法。
  8. 前記TCEPが5mMの濃度である請求項7に記載の方法。
  9. 工程a)において、前記精製緩衝液がpH7から9の間で用いられる請求項4に記載の方法。
  10. 前記精製緩衝液がpH8で用いられる請求項9に記載の方法。
  11. 工程a)において、前記精製緩衝液がさらにNaCl、NH4SO4またはKClから選択される塩を含む請求項4に記載の方法。
  12. 前記塩が約200mMから約800mMの濃度のNaClである請求項11に記載の方法。
  13. 前記塩が500mMの濃度のNaClである請求項12に記載の方法。
  14. 工程a)において、前記精製緩衝液がさらにトリス−HCl、HEPESまたはビス−トリスから選択される安定化緩衝液を含む請求項4に記載の方法。
  15. 前記安定化緩衝液が約0mMから約50mMの濃度のトリス−HClである請求項14に記載の方法。
  16. 前記安定化緩衝液が25mMの濃度のトリス−HClである請求項15に記載の方法。
  17. 工程a)において、前記精製緩衝液がさらに0mMから1mMの濃度のEDTAを含む請求項4に記載の方法。
  18. 前記EDTAが0mMから0.5mMの濃度である請求項17に記載の方法。
  19. 前記EDTAが0.1mMの濃度である請求項18に記載の方法。
  20. 工程a)において、前記PV E2 TADが、前記精製緩衝液中で約5mg/mLから約15mg/mLの濃度で用いられる請求項4に記載の方法。
  21. 前記PV E2 TADが、前記精製緩衝液中で約10mg/mLの濃度で用いられる請求項20に記載の方法。
  22. 工程b)において、前記結晶化緩衝液が、MES、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムから成る群から選択される請求項4に記載の方法。
  23. 前記結晶化緩衝液が約50mMから約0.2Mの濃度のMESである請求項22に記載の方法。
  24. 結晶化緩衝液が0.1Mの濃度のMESである請求項23に記載の方法。
  25. 工程b)において、前記結晶化緩衝液がさらに、MPD、イソプロパノール、エタノールおよびtert−ブタノールから成る群から選択される沈澱剤を含む請求項4に記載の方法。
  26. 前記沈澱剤が30%から約40%の濃度のMPDである請求項25に記載の方法。
  27. 前記沈澱剤が35%の濃度のMPDである請求項26に記載の方法。
  28. 工程b)において、前記結晶化緩衝液が4.5から6.5のpHで用いられる請求項4に記載の方法。
  29. 前記結晶化緩衝液が5.5のpHで用いられる請求項28に記載の方法。
  30. 工程b)において、前記結晶化が0℃から10℃で実施される請求項4に記載の方法。
  31. 前記結晶化が4℃で実施される請求項30に記載の方法。
  32. 以下の工程を含む結晶化アポHPV E2 TADを製造する方法:
    a)請求項4にしたがって、精製緩衝液に含まれるアポHPV E2 TADを結晶化緩衝液と混合する。
  33. 前記アポHPV E2 TADがアポSe−HPV−11E2 TADである請求項32に記載の方法。
  34. 前記結晶化緩衝液が、MES、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムから成る群から選択される請求項32に記載の方法。
  35. 前記結晶化緩衝液が約50mMから0.2Mの濃度のコハク酸ナトリウムである請求項34に記載の方法。
  36. 前記結晶化緩衝液が0.1Mの濃度のコハク酸ナトリウムである請求項35に記載の方法。
  37. 前記結晶化緩衝液がさらに、PEG8K、PEG4KまたはPEG5Kモノメチルエーテルを含む請求項36に記載の方法。
  38. 前記結晶化緩衝液がさらに、約10%から約25%の濃度のPEG5Kモノメチルエーテルを含む請求項37に記載の方法。
  39. 前記結晶化緩衝液がさらに、18%の濃度のPEG5Kモノメチルエーテルを含む請求項38に記載の方法。
  40. 前記結晶化緩衝液が4.5から6.5のpHで用いられる請求項32に記載の方法。
  41. 前記結晶化緩衝液が5.0のpHで用いられる請求項40に記載の方法。
  42. 前記結晶化緩衝液がさらに約0.1Mから約0.4Mの濃度の硫酸アンモニウムを含む請求項32に記載の方法。
  43. 前記硫酸アンモニウムが0.2Mの濃度である請求項42に記載の方法。
  44. 前記アポHPV E2 TADタンパク質溶液が、前記精製緩衝液中で約1mg/mLから約15mg/mLの濃度で用いられる請求項32に記載の方法。
  45. 前記アポHPV E2 TADが、前記精製緩衝液中で約5mg/mLの濃度で用いられる請求項44に記載の方法。
  46. 前記結晶化が0℃から10℃で実施される請求項32に記載の方法。
  47. 前記結晶化が4℃で実施される請求項46に記載の方法。
  48. 以下の工程を含む、結晶化HPV E2 TAD−インヒビター複合体(HPV E2 TAD−L)の製造方法:
    a)請求項32にしたがってインヒビターLを結晶化緩衝液中に溶解し;さらに
    b)結晶化アポHPV E2 TADをa)に浸漬する。
  49. 以下の工程を含む、結晶化HPV E2 TAD−インヒビター複合体(HPV E2 TAD−L)の製造方法:
    a)請求項32にしたがって、結晶化HPV E2 TADを含む結晶化緩衝液にインヒビターLを添加する。
  50. 請求項1に記載のHPV E2 TAD−インヒビター複合体(HPV E2 TAD−L)のX線結晶構造座標。
  51. 図9に示される請求項50に記載のX線結晶構造座標。
  52. HPV E2 TADのインヒビター結合ポケットを示す請求項51に記載のX線結晶構造座標。
  53. 前記インヒビター結合ポケットが、アミノ酸H32、W33およびL94の側鎖によって境界が定められた深い空洞を含み、前記HPV E2 TADのY19の側鎖がその天然の位置から移動して、小分子インヒビターの侵入を許容するような容積をもつ深い空洞を形成する請求項52に記載のX線結晶構造座標。
  54. 前記深い空洞がその底部に並んだH29およびT97を有する請求項53に記載のX線結晶構造座標。
  55. 前記ポケットがさらに、アミノ酸L15、I36、E39、K68、N71およびA72の1つまたは2つ以上によって境界が定められた浅い空洞を含む請求項52に記載のX線結晶構造座標。
  56. 前記インヒビター結合ポケットが、配列番号9、配列番号10、配列番号11および配列番号18によって表されるアミノ酸クラスターに割り当てられた座標にしたがってその境界を定められる請求項53に記載のX線結晶構造座標。
  57. 前記インヒビター結合ポケットの深い空洞が、図9に記載のH32、W33およびL94によって境界が定められる請求項53に記載のX線結晶構造座標。
  58. 図9に示すX線結晶構造座標または前記構造座標の少なくとも一部に関してコード化されたデータ保存物質を含むコンピュータ読出し可能データ保存媒体。
  59. 以下を含むHPV E2 TAD−L複合体の三次元映像を作製するコンピュータ:
    a)図9に示す前記構造座標に関してコード化されたデータ保存物質を含むコンピュータ読出し可能データ保存媒体;
    b)前記データを加工するための指示の保存用メモリー;
    c)前記コンピュータ読出し可能データを前記三次元映像に加工するために、前記コンピュータ読出し可能データ保存媒体と結合させた中央演算ユニット;および
    d)前記三次元映像をディスプレーするために前記中央演算ユニットと結合させたディスプレーユニット。
  60. 以下の工程を含む、E2 TADインヒビターの特定または性状決定に有用なE2タンパク質の製造方法:
    a)請求項1にしたがって、HPV E2 TAD−L結晶構造を用いて、HPVインヒビター結合ポケット残基を特定し;
    b)前記HPVインヒビター結合ポケット残基をワタオウサギパピローマウイルス(CRPV)のタンパク質残基と比較し;
    c)前記CRPV残基を前記HPV残基に変異させてハイブリッドを作製し;さらに
    d)前記ハイブリッドをインヒビターによる抑制についてテストする。
  61. 下記式Lのインヒビターと複合体を形成した配列番号2のHPV E2 TAD様ポリペプチドを含む結晶。
    Figure 2005512954
  62. 前記E2 TADが、図9に記載のアミノ酸H32、W33およびL94の座標によって形成された深い空洞を含むインヒビター結合ポケットを含む請求項61に記載の結晶。
  63. 図9に記載のHPV11E2 TADアミノ酸H32、W33およびL94の構造座標によって境界が定められた深い空洞を含む分子もしくは複合体またはその三次元モデルと結合する化学物質の潜在的能力を評価する方法。
  64. 以下の工程を含むHPV E2 TAD様結合ポケットを含む分子の有望なインヒビターを特定する方法:
    (a)H32、W33およびL94の原子座標を用いて、E2 TAD様結合ポケットを含む分子の三次元構造を作製し;
    (b)前記3D構造を用いて、前記有望なインヒビターをデザインまたは選択し;
    (c)前記インヒビターを合成し;
    (d)前記インヒビターを前記分子と接触させて、前記有望なインヒビターが前記分子と相互作用する能力を判定する。
  65. HPV E2 TADの分子と結合する化合物をデザインする方法であって、前記方法が、前記化合物と前記分子の局所領域との間の立体化学的相補性を評価する工程を含み、前記分子が以下の特徴を有する前記化合物をデザインする方法:
    (i)図9に示される原子座標に実質的に位置するE2 TADのアミノ酸1−201、その類似体または切端形;
    (ii)図9に示される座標とその完全な翻訳および/または回転によって関連を示すアミノ酸の1つまたは2つ以上のサブセット;または
    (iii)E2 TADに属するもののアミノ酸配列に存在するアミノ酸であって、図9に示される原子座標に実質的に位置するインヒビター結合ポケットのアミノ酸H32、W33およびL94によって境界が定められるE2 TADの三次元構造と同等な構造を形成するアミノ酸。
  66. HPV E2 TADのDNA複製活性を抑制する薬剤の製造方法であって、前記方法が、アミノ酸H32、W33およびL94の座標によってその境界が定められるTAD上のポケットに適合する薬剤を特定またはデザインし、それによって前記TADと結合する薬剤を製造することを含む前記複製活性を抑制する薬剤の製造方法。
  67. 請求項1に記載のHPV E2 TAD−インヒビターL複合体の結晶構造モデルが保存されているコンピュータ読出し可能媒体。
JP2003512265A 2001-07-12 2002-07-12 ヒトパピローマウイルスe2トランスアクチベーションドメイン/インヒビター共結晶および前記インヒビター結合ポケットの境界を定めるx線座標 Expired - Fee Related JP4602665B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US30441201P 2001-07-12 2001-07-12
US60/304,412 2001-07-12
PCT/CA2002/001058 WO2003006495A2 (en) 2001-07-12 2002-07-12 Human papillomavirus e2 transactivation domain/inhibitor co-crystal and x-ray coordinates defining the inhibitor-binding pocket

Publications (4)

Publication Number Publication Date
JP2005512954A JP2005512954A (ja) 2005-05-12
JP2005512954A6 true JP2005512954A6 (ja) 2005-08-04
JP2005512954A5 JP2005512954A5 (ja) 2006-01-05
JP4602665B2 JP4602665B2 (ja) 2010-12-22

Family

ID=23176405

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003512265A Expired - Fee Related JP4602665B2 (ja) 2001-07-12 2002-07-12 ヒトパピローマウイルスe2トランスアクチベーションドメイン/インヒビター共結晶および前記インヒビター結合ポケットの境界を定めるx線座標

Country Status (14)

Country Link
US (1) US7167801B2 (ja)
EP (2) EP1695980B1 (ja)
JP (1) JP4602665B2 (ja)
AT (2) ATE465414T1 (ja)
AU (1) AU2002317122B2 (ja)
CA (1) CA2448482C (ja)
DE (2) DE60236114D1 (ja)
DK (2) DK1695980T3 (ja)
ES (2) ES2342309T3 (ja)
HU (1) HUP0402069A3 (ja)
IL (2) IL159150A0 (ja)
MX (1) MXPA04000271A (ja)
NZ (1) NZ531068A (ja)
WO (1) WO2003006495A2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20070219767A1 (en) * 2003-05-06 2007-09-20 Carter Daniel C Atomic coordinates of albumin drug complexes and method of use of pharmaceutical development
WO2004104191A1 (en) * 2003-05-26 2004-12-02 Biotie Therapies Corporation Crystalline vap-1 and uses thereof
WO2005041895A2 (en) * 2003-11-03 2005-05-12 New Century Pharmaceuticals, Inc. Albumin binding sites for evaluating drug interactions and methods of evaluating or designing drugs based on their albumin binding properties
US20090118301A1 (en) * 2007-11-02 2009-05-07 Arbor Vita Corporation Compositions and Methods for Treating Cancer
CN112891520A (zh) * 2021-04-13 2021-06-04 吉林省国大生物工程有限公司 一种预防和控制人乳头瘤病毒感染(hpv)的活性生物蛋白的制备方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07500245A (ja) * 1991-10-11 1995-01-12 カイロン コーポレーション パピローマウイルスの複製の阻害剤を同定する方法および組成物
US6306580B1 (en) 1998-05-01 2001-10-23 Boehringer Ingelheim (Canada) Ltd. Preparation of human papillomavirus E1 having helicase activity and method therefor
ATE235509T1 (de) 1998-06-30 2003-04-15 Deutsches Krebsforsch Peptide zur inhibition von hpv e7 proteinen
WO2000075182A1 (fr) * 1999-06-04 2000-12-14 Akira Kaji Cristal de proteine du facteur de recyclage ribosomique (rrf) et son application sur la base de donnees de structure tridimensionnelles provenant du cristal
GB9921938D0 (en) 1999-09-17 1999-11-17 Univ York Target for antiviral therapy
WO2001037194A2 (en) * 1999-11-16 2001-05-25 Vertex Pharmaceuticals Incorporated Crystallizable compositions comprising a caspase-7
AU2002218897A1 (en) 2000-12-18 2002-07-01 Boehringer Ingelheim (Canada) Ltd. Inhibitors of papilloma virus

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Cole et al. Genome organization and nucleotide sequence of human papillomavirus type 33, which is associated with cervical cancer
Rawls et al. Chemical synthesis of human papillomavirus type 16 E7 oncoprotein: autonomous protein domains for induction of cellular DNA synthesis and for trans activation
BRPI0414845B1 (pt) mólecula de ácido nucleico, vetor, célula de levedura, partícula semelhante a vírus, bem como método para produzir a dita partícula semelhante a vírus
WO2021013060A1 (zh) 嵌合的人乳头瘤病毒51型l1蛋白
JP2024009010A (ja) キメラパピローマウイルスl1タンパク質
JP4602665B2 (ja) ヒトパピローマウイルスe2トランスアクチベーションドメイン/インヒビター共結晶および前記インヒビター結合ポケットの境界を定めるx線座標
JP2005512954A6 (ja) ヒトパピローマウイルスe2トランスアクチベーションドメイン/インヒビター共結晶および前記インヒビター結合ポケットの境界を定めるx線座標
EP0563307A1 (en) Medicaments for the treatment of papillomavirus diseases
WO2021013078A1 (zh) 嵌合的人乳头瘤病毒52型l1蛋白
AU2002317122A1 (en) Human papillomavirus E2 transactivation domain/inhibitor co-crystal and x-ray coordinates defining the inhibitor-binding pocket
WO2003068940A2 (en) Complexes and methods of using same
WO2021013075A1 (zh) 嵌合的人乳头瘤病毒18型l1蛋白
WO2021013076A1 (zh) 嵌合的人乳头瘤病毒45型l1蛋白
WO2021013077A1 (zh) 嵌合的人乳头瘤病毒58型l1蛋白
WO2021013069A1 (zh) 嵌合的人乳头瘤病毒11型l1蛋白
WO2021013067A1 (zh) 嵌合的人乳头瘤病毒6型l1蛋白
WO2021013062A1 (zh) 嵌合的人乳头瘤病毒31型l1蛋白
WO2021013063A1 (zh) 嵌合的人乳头瘤病毒16型l1蛋白
WO2021013070A1 (zh) 嵌合的人乳头瘤病毒35型l1蛋白
WO2021013079A1 (zh) 嵌合的人乳头瘤病毒56型l1蛋白
JP2004535377A (ja) Metap2を阻害する方法
JP2001513823A (ja) パピローマウイルス感染を阻止する化合物の構造に基づく合理的デザイン
JP4430821B2 (ja) E1オリゴマー化に関係するパピローマウイルスe1ヘリカーゼの領域
GROSSMAN Biochemical characterization of the papillomavirus E6 and E2 regulatory proteins
AU2004200590A1 (en) Regions of papilloma virus E1 helicase involved in E1 oligomerization