JP2005503064A - 能動チューナブルフィルタ回路 - Google Patents

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Abstract

本発明は、移動無線装置内の集積化(一体化)可能な能動フィルタとして用いるための能動チューナブルフィルタ回路に係る。この回路は、能動増幅器回路(A)と、この能動増幅器回路部に接続された受動共振回路(P)とを備える。能動増幅器回路(A)は、所望の入力信号を増幅して通過するように設定された第一のチューナブル部(L1)を含むリアクティブ帰還ネットワークを含み、受動共振回路(P)は、誘導部(LFB、L3或いはL4)と、動作中に所望の信号の高調波において共振する電極間キャパシタンスとを有する不活性(非導通)半導体デバイス部(FET2、FET3或いはFET4)を含む。この回路は、一つの構成(図1)においては、増幅能力を有する帯域通過フィルタとして機能し、もう一つの構成(図6)においては、増幅能力を有する高調波ノッチフィルタとして機能する。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチバンド移動無線通信用途等の用途を有する能動チューナブルフィルタ回路に係る。
【背景技術】
【0002】
マルチバンド移動無線システム(multi-band mobile radio systems)、例えば、GSM及びDCSの導入により、ハンドセットには、少なくとも2つの別個のシステムに対して動作する能力が要求されるようになってきている。サブセットの性能を改善するためにハンドセット内で用いるための回路に関する技術開発は、インピーダンス整合技術及び効率的な電力増幅器の設計に焦点が置かれてきており、この結果としてRFサブシステムの消費電力の低減及び効率の向上などの点では一定の成果が得られている。ただし、これらインピーダンス整合技術は、まだ、マルチバンド通信システム内の個々の別個の周波数バンドに対する複数のRFフィルタを必要とする。フィルタリング用途に対するチューナブル部(tunable elements)を実現するためには、2つの異なるアプローチ、すなわち、受動チューナブルコンポーネントを用いる設計(passive tunable component design)と、能動インダクタとコンデンサを用いる設計(active inductor and capacitor design)が存在する。受動チューナブルコンポーネントを用いる設計の短所は、この技術は、まだ開発段階にあり、現時点ではまだ要求される広いチューニングレンジをカバーすることはできないところにある。能動インダクタとコンデンサを用いる設計は、開発されているが、この技術は、短所として、高い寄生容量(parasitics)を有し、このためQファクタの低い(効率の悪い)設計となり、このため多くのコンポーネント設計において性能が制約されるという本質的な課題を有する。こうして、マルチバンド移動無線システムにおいては、個々の別個の周波数バンドを区別するために、別個のフィルタリングチェーンが用いられている。移動ハンドセットに対しては、多くの場合、これら個々の別個のRFフィルタチェーンはSAW技術を用いて実現される。ただし、この技術はコストが高いのみでなく、このようなフィルタモジュールは、SAWフィルタを、RFサブアセンブリの他のパーツ、例えば、電力増幅器と統合するためには、特別な集積(一体化)技術を必要とする。この個々の別個のRFフィルタチェーンを有するこの従来のRFモジュール設計は、コストが高く、電力消費も大きく、サイズも大きい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は公知のフィルタ設計のこれら短所を克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、能動チューナブルフィルタ回路が提供される。この能動チューナブルフィルタ回路は、入力信号を増幅するためのチューナブル部を含むリアクティブ(無効電流)帰還ネットワークを有する増幅部と、共振回路とを備え、この共振回路は、誘導部と、動作中にこの誘導部と共振し、入力信号の高調波をフィルタリングする不活性(非導通)半導体デバイスの電極間キャパシタンスを含む。
【0005】
本発明は、増幅タイプのフィルタリング能力と低い雑音指数を有する能動チューナブルフィルタ回路を、Qファクタの高い(効率の良い)リアクティブ(無効電流)帰還を用いて製造することができるという認識に基づく。このリアクティブ帰還は、半導体(例えばFET等のトランジスタ)の能動部の寄生容量を利用することで、非常に低いキャパシタンス値を達成し、この結果として、(入力信号の)周波数の高調波、例えば、900MHz或いはそれ以上の周波数にて共振する能力を有する回路が得られる。
【0006】
以下では、本発明が単に例示として添付の図面を用いて説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図面中、同一の参照符号は対応する要素を示す。図1は、本発明による能動チューナブルフィルタ(active tunable filter)を示す。この能動チューナブルフィルタは、能動増幅及びフィルタリング部分(active amplification and filtering part)Aと、高調波のフィルタリングを行う受動共振器部分(passive resonator parts)Pとを備える。
【0008】
能動部分Aは、能動半導体増幅デバイス、例えば、FET1を備える。入力端子10は、RF入力信号を受信するが、この入力信号はコンデンサ12を介してFET1のゲート電極に加えられる。FET1のソース電極はアースに接続され、FET1のドレーン電極はコンデンサ14を介してRF出力端子16に接続される。ドレーンバイアス電圧源(図示せず)が端子18に接続され、この端子18は直接にFET1のドレーンに接続される。
【0009】
リアクティブ(無効電流)帰還回路(reactive feedback circuit, RFC)1がFET1のドレーン電極とゲート電極の間に接続される。リアクティブ帰還回路RFC1は、FET1のドレーン電極とゲート電極の間に直列に接続された、DC阻止コンデンサC1、可変インダクタンスL1、及び抵抗R1を備える。コンデンサC2がこの直列チェーンと並列に接続される。端子20の所の周波数制御電圧源VFC(図示せず)が直列に接続された抵抗R2を介して可変インダクタンスL1の制御電極に加えられる。この可変インダクタンスL1は入力端子10上に存在する所望のRF信号を通過させるように設定される。
【0010】
受動共振器部分Pは、非導通半導体デバイス(non-conductive semi-conductor device)FET2を備え、この非導通半導体デバイスFET2は、FET2のドレーン電極とソース電極の間に直列に接続された、DC阻止コンデンサCFB、可変インダクタンスLFB、及び抵抗RFBから成るリアクティブ(無効電流)帰還ネットワークRFC2を有する。コンデンサC3がこの直列チェーンと並列に接続される。FET2のゲートはコンデンサC4を介してアースに接続され、ドレーンバイアス電圧によっては駆動されない。このため、FET2は、受動モードとして機能する。可変インダクタLFBの制御電極は抵抗R2を介して端子20に接続される。
【0011】
動作においては、ドレーンバイアス電圧が端子18に加えられ、周波数制御電圧VFCが端子20に加えられる。端子10の所のRF入力信号が帯域通過フィルタリングされ、この結果が端子16の所に現れる。
【0012】
受動部分Pのリアクティブ(無効電流)帰還回路RFCC2は、能動部分Aのリアクティブ(無効電流)帰還回路RFC1を分路し、不要な周波数において無限大のインピーダンスを与える。これが図2に示される。このフィルタの共振周波数は、非導通FET2のゲート・ドレーン間寄生キャパシタンスCgdと共振する帰還インダクタンスLFBによって決定される。帰還抵抗RFBは安定性が得られるように小さな値を有する。可変インダクタンスLFBは、可変インダクタンスL1のそれとは、インダクタンスLFBと寄生キャパシタンスCgdによって形成される共振回路が、入力端子10からの信号の二次或いはそれ以上の高調波にて共振するように、著しく異なる値を有する。
【0013】
次に、図3との関連で、この共振回路の動作について説明する。抵抗RFB が小さな値を有するときは、帰還インピーダンスは、もっぱら帰還リアクタンスの値によって決まり、このため、この回路はリアクティブ(無効電流)帰還モードとして働く。このため、この帰還インダクタンスLFBは、トランジスタ(この実施例においてはFET2)の寄生キャパシタンスと相互作用する。このリアクティブ(無効電流帰還)モードの理解を助けるために、以下の解析的表現においては、FET2の固有パラメータ(intrinsic parameters)のみが考慮される。この場合、この帰還回路は、図3に示すように表現することができる。
【0014】
2ポートネットワークパラメータ(two port network parameters)と最大安定利得(maximum stable gain, MSG)に対する表現(式)間の公知の変換式を用いることで、最大安定利得(MSG)は、以下のように表現することができる:
【数1】
Figure 2005503064
【0015】
ここで、gmは図3に示すFET2の等価回路の相互コンダクタンスを表し、ZgdはFET2のゲート・ドレーン間インピーダンスを表し、ZFBはこのリアクティブ帰還ネットワークRFC2のインピーダンスを表す。
【0016】
|1/Zgd+1/ZFB|=0のとき、最大安定利得(MSG)は無限大に達する。
【数2】
Figure 2005503064
【0017】
こうして、この帰還ループの全ての可能なリアクタンス成分が考慮されるが、ここでCFB、LFB、及びRFBは、それぞれ、この帰還ループのキャパシタンス、インダクタンス、及び抵抗を表す。RFB=0(無効電流帰還モード)、すなわち、RFB≪|ωLFB|のときは、以下のようになる。
【数3】
Figure 2005503064
【0018】
帰還抵抗RFBの値を(閾値RKより)低い値に選択すると、この帰還インダクタンスLFBは帰還キャパシタンスCFBとある周波数において共振するが、この状態においては、ωCFBLFB=1となり、極めて高い利得が、無条件に安定に得られる。この極めて高い利得を達成する設計原理が、10個の異なる帰還抵抗RFB値と、2つの異なる帰還インダクタンスLFB値を用いての掃引シミュレーションから確認された。
【0019】
図4及び図5はこの計算(シミュレーション)の結果を示す。図4は、負の利得(reverse gain)S12、つまり、利得g(dB)と、周波数f(Hz)と、帰還インピーダンスLFB(ヘンリー)と、の関係を示し、図5は、正の利得(forward gain)S21 、つまり、利得g(dB)と、周波数f(Hz)と、帰還抵抗RFB(Ω)と、の関係を示す。図4及び図5から、共振のために(つまり、S12が零に向かうと、S21が増加するために)、非常に高い利得が、安定的に得られることがわかる。この計算から、このリアクティブ(無効電流)帰還増幅器は極めて高い利得を生成できることがはっきりとわかる。
【0020】
図6は、本発明による能動フィルタの第二の実施例を示す。この実施例においては、能動フィルタは、FET3及びFET4の各接合キャパシタンスが、これらFETの外側に設けられた各インダクタンスL3及びL4と共振するために、高調波ノッチフィルタとして機能する。
【0021】
この回路の能動部分Aは、図1との関連で既に説明したそれと類似するために、簡素化のために、異なる部分についてのみ説明する。能動部分Aは、所望のRF入力信号に、端子30の所のチューニング電圧Vf1を直列に接続された抵抗32を介してインダクタンスL1の制御電極に加えることで、チューニング(同調)される。
【0022】
受動部分Pは、非導通FET3とFET4に基づく2つの回路26、28を備え、これら回路の出力は、直列に接続されたコンデンサ38を介してFET1のドレーン電極とコンデンサ14との間の接合点に接続される。
【0023】
これら回路26、28は、同一のアーキテクチャを有し、簡素化のために、以下では回路26についてのみ詳細に説明し、回路28内の対応する要素が括弧内に示される。
【0024】
チューニング電圧Vf2(Vf3)用の入力端子33(41)が、直列に接続された抵抗34(40)を介してFET3(FET4)のゲート電極に接続される。インダクタンスL3(L4)の一端は、FET3(FET4)のドレーン電極に接続され、他端はコンデンサ38に接続される。FET3(FET4)のソース電極はアースに接続される。コンデンサC3(C4)は、FET3(FET4)のゲート・ソース間キャパシタンスを分路する(に対する分路として機能する)。キャパシタンス36(42)が抵抗32(42)とアースとの間に接続される。
【0025】
チューニング電圧Vf2とVf3は、基本周波数f1の二次高調波f2と三次高調波f3に対応する。これら電圧Vf1、Vf2、及びVf3が、各々の入力端子30、33及び41に加えられると、この能動チューナブルフィルタ回路は、高調波ノッチフィルタとして振舞い、図7に示すような特性を示す。
【0026】
この帰還増幅器の雑音パラメータは、以下から成る:
【数4】
Figure 2005503064
【0027】
ここで、Rn、Gn及びYcorは、それぞれ、帰還ネットワークRFC2が存在しない場合のFET2の等価雑音抵抗、等価雑音コンダクタンス及び相関アドミタンス(correlation admittance)を表す。上の式は、RFB≒|ωLFB|のとき成立する。このことは、これら挿入された帰還部は、追加の雑音(雑音源)を生成し、増幅器への雑音として寄与することを意味する。リアクティブ(無効電流帰還)モード(RFB≪|ωLFB|)においては、これらパラメータは以下のように簡素化できる:
【数5】
Figure 2005503064
【0028】
こうして増幅器雑音は低減されるが、ただし、リアクタンス部はまだ雑音源として機能する。
【0029】
この明細書のプリアンブルの所で説明した従来の技術によるフィルタと比較して、本発明に従って製造された能動チューナブルフィルタ回路は、単一の回路にて実現できる、共振器タイプの増幅を行うことができる、スプリアス減衰が抑圧される、高調波を除去できる、雑音指数が低い、移動機用途に適するチューナブル周波数及び利得を有する、標準の鋳造過程を用いて集積回路として製造することができる、等の長所を有する。
【0030】
上では本発明がFETを用いるものとして説明されたが、他の能動半導体デバイス、例えば、接合トランジスタを用いることもできる。
【0031】
上で説明された能動チューナブルフィルタ回路の主な用途は、無線受信機内のRF段のフロントエンドとしてである。ただし、十分に頑丈な能動半導体デバイスが入手できる場合は、本発明に従って製造されたチューナブル能動フィルタ回路は、電力増幅器回路内において、フィルタリング能力を有する増幅器回路として用いることもできる。
【0032】
この明細書及びクレーム中において、原文中のある要素の前に付けられる冠詞(”a”或いは”an”)は、これら要素が複数個存在することを排除することを意図するものではない。さらに、備える・から構成される(”comprising”)なる語句は、記載される以外の要素或いはステップが存在することを排除することを意図するものではない。
【0033】
当業者においては上の説明から他の様々な修正が明らかである。これら修正としては、能動チューナブルフィルタ回路及びこれらのための要素部品の設計、製造及び使用において公知の特徴を、上で説明された特徴の代りとして、或いはそれらに加えて、用いること等も含まれる。
【0034】
産業上の用途としては、マルチバンド移動無線通信装置内での使用等が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明によるマルチバンド移動無線通信用の能動チューナブルフィルタの第一の実施例の略回路図である。
【図2】能動チューナブルフィルタの第一の実施例にて達成可能な帯域通過応答を示すグラフである。
【図3】図1に示す帰還回路の、FETが用いられた場合の、寄生キャパシタンスのみを有する等価回路の図である。
【図4】リアクティブ(無効電流)帰還回路の利得S12のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図5】リアクティブ(無効電流)帰還回路の利得S21のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図6】本発明によるマルチバンド移動無線通信用の能動チューナブルフィルタの第二の実施例の概略回路図である。
【図7】能動チューナブルフィルタの第二の実施例にて達成可能な帯域通過応答を示すグラフである。

Claims (9)

  1. 能動チューナブルフィルタ回路であって、入力信号を増幅するためのチューナブル部を含むリアクティブ帰還ネットワークを有する増幅部と、共振回路とを備え、前記共振回路は、誘導部と、動作中にこの誘導部と共振して前記入力信号の高調波をフィルタリングする不活性半導体デバイスの電極間キャパシタンスと、を含むことを特徴とする能動チューナブルフィルタ回路。
  2. 前記共振回路が更に前記電極間キャパシタンスを分路するキャパシタンスを含むことを特徴とする請求項1記載の回路。
  3. 前記共振回路が前記誘導部と直列に接続された抵抗部を有することを特徴とする請求項2記載の回路。
  4. 前記チューナブル部及び前記誘導部が各々の制御電極を有し、これら制御電極が周波数制御電極を受信するための入力に接続されることを特徴とする請求項2或いは3記載の回路。
  5. 前記チューナブル部が可変インダクタンスから成ることを特徴とする請求項2、3、或いは4のいずれかに記載の回路。
  6. 前記共振回路がキャパシタンスと直列に接続されたインダクタンスを含むことを特徴とする請求項1記載の回路。
  7. 少なくとも2つの共振回路を備え、各共振回路が、各々の周波数制御電圧と接続するための入力端子に接続された入力と、前記リアクティブ帰還ネットワークの出力に接続された出力と、有することを特徴とする請求項1記載の回路。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の能動チューナブルフィルタ回路を備えることを特徴とするモジュール。
  9. 請求項1から7のいずれかに記載の能動チューナブルフィルタ回路を備えることを特徴とする無線通信装置。
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