JP2005350355A - ビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンおよびそのジ(メタ)アクリロイル誘導体の製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】パーフルオロシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルを還元して高純度のビス(ヒドロキシメチル)パーフルオロシクロヘキサンを高収率で製造する方法およびこの生成物のジ(メタ)アクリロイル誘導体を製造する方法を提供する。
【解決手段】パーフルオロシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルを還元してビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンを製造するに際し、還元剤として水素化ジアルキルアルミニウムを用いる。このようにして得られたビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンは、アクリル酸ハライドまたはメタクリル酸ハライドと反応させて(メタ)アクリロイル化され、その際水素化金属化合物またはアルキル基含有金属誘導体が塩基として用いられる。

Description

本発明は、ビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンおよびそのジ(メタ)アクリロイル誘導体の製造法に関する。さらに詳しくは、高純度のビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンを高収率で製造する方法およびこの生成物のジ(メタ)アクリロイル誘導体を製造する方法に関する。
ビス(ヒドロキシメチル)パーフルオロシクロヘキサンの合成法として、パーフルオロシクロヘキサンジカルボン酸ジフロライドを水素化ホウ素ナトリウムで還元し、ジオール化する例が知られている。
FCO-Rf-COF → HOCH2-Rf-CH2OH
(Rf:パーフルオロシクロヘキサン残基)
特開昭61−180731号公報
しかしながら、この方法は腐食性の高い酸フロライドを取扱うため安全性に問題があり、さらに酸フロライド等の酸ハライドそのものを還元した場合には、反応中に生じたアルコールと未反応酸ハライドとの反応により、それらの縮合エステルがさらに生じ易く、好ましい還元方法とはいえない。
そこで、一般的に行われているように、パーフルオロシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルを水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元すると、後記比較例の結果に示されるように、反応基質の分解反応が起り、収率は12%と大きく低下する。
ROCO-Rf-COOR → HOCH2-Rf-CH2OH
また、前記特許文献1では、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)パーフルオロシクロヘキサンにトリアルキルアミン触媒の存在下でメタクリル酸クロライドを反応させ、対応するジメタクリレートを得ているが、その収率は80%、純度は90%であると述べられており、これは重合性単量体として重合反応に供するには不十分な純度であり、また収率も高収率であるとは言い難い。
本発明の目的は、パーフルオロシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルを還元して高純度のビス(ヒドロキシメチル)パーフルオロシクロヘキサンを高収率で製造する方法およびこの生成物のジ(メタ)アクリロイル誘導体を製造する方法を提供することにある。
上記本発明の第1の目的は、パーフルオロシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルを還元してビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンを製造するに際し、還元剤として水素化ジアルキルアルミニウムを用いることによって達成される。
また、上記本発明の第2の目的は、このようにして得られたビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンをアクリル酸ハライドまたはメタクリル酸ハライドと反応させ(メタ)アクリロイル化することによって達成され、その際水素化金属化合物またはアルキル基含有金属誘導体が塩基として用いられる。
パーフルオロシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルを還元するに際し、還元剤として水素化ジアルキルアルミニウム、好ましくは水素化ジイソブチルアルミニウムを用いることにより、高純度のビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンを高収率で製造することができる。
このようにして得られたビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンをアクリル酸ハライドまたはメタクリル酸ハライドと反応させて得られた(メタ)アクリロイル誘導体は、一分子中に2つの重合性官能基を有し、かつ一分子中に多数のフッ素原子を含有する環状化合物であるため、熱的安定性や化学的安定性にすぐれ、また良好な光学特性や界面活性特性をも併せ持っている。
パーフルオロシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルとしては、炭素数1〜4の低級アルキル基を有する1,4-または1,3-ジ置換体、例えばジメトキシカルボニルパーフルオロシクロヘキサンまたはこれに対応するジエトキシ、ジプロポキシ、ジイソプロポキシ、ジn-ブトキシ等の1,4-ジ置換体または1,3-ジ置換体が用いられ、好ましくは1,4-ジメトキシカルボニルパーフルオロシクロヘキサンが用いられる。
これらのパーフルオロシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルの還元は、還元剤として従来用いられていた水素化ホウ素ナトリウムに代えて水素化ジアルキルアルミニウムを用いることによって行われ、副反応を抑えて高純度のビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンを与える。
酸性還元剤である水素化ジアルキルアルミニウムとしては、入手の容易性や安定性などの点から、水素化ジイソブチルアルミニウムAlH(i-C4H8)2が好んで用いられる。水素化ジアルキルアルミニウムは、パーフルオロシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルに対して、4.0〜8.0倍モル、好ましくは4.5〜6.0倍モルが用いられる。水素化ジイソブチルアルミニウムは、約1モル/Lの濃度の各種溶媒溶液が市販されており、各種溶媒溶液としては例えばn-ヘキサン、トルエン、シクロロメタン等の炭化水素系または塩素化炭化水素系の有機溶媒溶液が挙げられる。
還元反応は、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ジアルキルエーテル、環状エーテル等の溶媒、好ましくは低温反応条件下でも流動性を失うことのないジクロロメタンやテトラヒドロフランの存在下に、約-80〜0℃、好ましくは約-80〜-20℃の反応温度で行われる。
実際には、このような反応温度条件下で、パーフルオロシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルの反応溶媒溶液中に水素化ジイソブチルアルミニウム溶液をゆっくりと滴下し、一夜かけて室温迄内温を上昇させた後、塩酸水溶液をゆっくりと滴下することにより反応を停止させ、有機層および水層をジエチルエーテルで抽出した有機層を合せて、洗浄、乾燥、濃縮することにより高粘度回収残渣を得、さらに回収残渣を再結晶することにより、白色結晶としてビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンを得ることができる。
この際用いられる再結晶溶媒としては、目的生成物を部分的に溶解させる溶媒であることが好ましく、例えばクロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒、n-ヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶媒が挙げられ、特に好ましくは塩素化炭化水素系溶媒が用いられる。再結晶温度は、約-80℃から室温迄の広範囲の温度が用いられるが、再結晶温度を下げすぎると不純物が目的生成物中に取り込まれ、純度の低下がみられるので、約-20〜5℃の温度での再結晶が好ましく、これによって純度(ガスクロマトグラフィーによる)が100%の目的生成物を得ることができる。
このようにして得られたビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンの水酸基は、アクリル酸ハライドまたはメタクリル酸ハライドとの縮合反応によって(メタ)アクリロイル化される。
この反応に際しては、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化金属化合物またはn-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、カリウム(ヘキサメチルジシラザン;〔(CH3)3Si〕2NK)、ナトリウム(ヘキサメチルジシラザン)、リチウム(ヘキサメチルジシラザン)等のアルキル基含有金属化合物が塩基(水酸基のアルコキサイド化試薬)として用いられ、取扱性、入手の容易性、価格などの点からは水素化リチウム、ブチルリチウムが、また収率の点からはn-ブチルリチウムが好んで用いられる。これらの触媒は、ビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンに対して、約2〜3倍モル、好ましくは2.0〜2.2倍モルの割合で用いられる。
この縮合反応は、塩基によってアルコキサイド基に変換された水酸基と(メタ)アクリル酸ハライドとの間の反応として行われ、反応溶媒としてはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、好ましくはテトラヒドロフランが用いられ、約-80℃から室温迄の反応温度範囲、好ましくは制御の容易さから約-20〜5℃の反応温度で行われる。
実際には、このような反応条件下で、ビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサン溶液に塩基をゆっくりと滴下した後、(メタ)アクリル酸ハライド溶液をゆっくりと滴下し、攪拌した後室温に戻し、室温条件下で攪拌した後再び反応温度程度に冷却し、塩酸水溶液、飽和アンモニウムクロライド水溶液等を注意深く滴下して過剰の塩基を失活させて反応を停止させ、有機層および水層をジエチルエーテルで抽出した有機層を合せて洗浄、乾燥、濃縮することにより、黄色油状の(メタ)アクリロイル化された化合物を得ることができる。なお、塩基が液体の場合には上記の如く塩基が滴下されるが、塩基が固体の場合には塩基溶液中への滴下となる。
この反応の際、反応原料や目的生成物の望まない重合を制御するため、反応系内にフェノチアジン、ハイドロキノン、メトキノン等の重合禁止剤を生成が予想される目的物の重量に対して約0.01〜10重量%、好ましくは約0.03〜0.1重量%の割合で添加されることが望ましく、このような割合での重合禁止剤の添加は、目的生成物の重合の妨げとはならない。
目的生成物であるビス〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕パーフルオロシクロヘキサンの精製は再結晶によって行われ、再結晶ロ液中の目的生成物は分子蒸留によって精製される。再結晶には、無極性の炭化水素系溶媒、好ましくはn-ヘキサンが、粗製物1gに対し一般に約0.8〜2gの割合で用いられ、回収率および純度の点からは約0.9〜1gの割合で用いられることが好ましい。また、再結晶温度としては、約-80℃から室温迄の広い温度範囲をとり得るが、不純物除去との兼合いから約-20℃から室温の温度範囲で再結晶を行うことが好ましい。再結晶時のロ液中の目的生成物は、濃縮され、さらに分子蒸留によって精製される。
次に、実施例について本発明を説明する。
実施例1
窒素雰囲気下で、1,4-ジメトキシカルボニルパーフルオロシクロヘキサン(エクスフルアー・リサーチ・コーポレーション製品;GCによる純度97.2%)100g(249ミリモル)をテトラヒドロフラン900ml中に溶解させた溶液を、ドライアイス/メタノールで冷却し、内温を-70℃以下に保ちながら、水素化ジイソブチルアルミニウムのn-ヘキサン溶液(濃度0.95モル/L)1210ml(Al化合物として1.15モル)をゆっくりと滴下した。一夜かけて内温を室温迄上昇させた後、反応混合物を氷冷した10重量%塩酸水溶液2510g中にゆっくりと滴下して反応を停止させ、有機層を分離した。
有機層を分離した水層を1000mlのジエチルエーテルで2回抽出し、上記有機層と合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、モレキュラーシーブス3Aおよび無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ロ別した後、ロ液を減圧下で濃縮した。得られた高粘度の残渣は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、目的物である1,4-ビス(ヒドロキシメチル)パーフルオロシクロヘキサンであることが確認された。
1H-NMR(アセトン-d6,TMS)δ:4.37(2H,t,J=22.0Hz、CH2)
5.06(1H,t,J=6.97Hz、OH)
19F-NMR(アセトン-d6,CFCl3):-123.2ppm(8F,dd,J=13.5ppm、CF2)
-187.9ppm(2F,t,J=0.1ppm、CF)
この回収残渣にクロロホルム160mlを加え、50℃に加熱し、均一溶液とした後-20℃に8時間放置すると、白色結晶である目的物質(GCによる純度100%)が67.9g(収率83.9%)得られた。
実施例2
窒素雰囲気下で、n-ヘキサンで洗浄した水素化ナトリウム(60%油性)0.57g(14.3ミリモル)のジエチルエーテル懸濁液15mlを5℃に冷却し、上記精製1,4-ビス(ヒドロキシメチル)パーフルオロシクロヘキサン2.20g(6.79ミリモル)のジエチルエーテル溶液20mlをゆっくりと滴下した。水素ガスの発生が観測されるので、5℃の温度を維持したまま、1時間攪拌を続けた。
次いで、そこにアクリル酸クロライド(GCによる純度95%)1.42g(14.9ミリモル)のジエチルエーテル溶液10mlをゆっくりと滴下し、5℃で1時間攪拌した後室温に戻し、8時間攪拌した。再び5℃に冷却し、10%塩酸水溶液20mlを注意深く滴下して過剰の水素化ナトリウムを失活させ、有機層を分離した。
有機層を分離した水層を、さらに20mlのジエチルエーテルで2回洗浄し、上記有機層と合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20mlおよび飽和食塩水20mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロ過およびロ液の減圧下での濃縮を行い、黄色油状の1,4-ビス(アクリロイルオキシメチル)パーフルオロシクロヘキサン(GCによる純度73.7%)3.12g(収率79.9%)を得た。
実施例3
窒素雰囲気下で、前記精製1,4-ビス(ヒドロキシメチル)パーフルオロシクロヘキサン56.5g(174ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液1850mlを-20℃に冷却し、そこにn-ブチルリチウムのn-ヘキサン溶液(濃度1.54モル/L)250ml(n-ブチルリチウムとして383ミリモル)をゆっくりと滴下した。この温度を保ちながら1時間攪拌した後、アクリル酸クロライド(GCによる純度95%)36.5g(383ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液150mlをゆっくりと滴下した。この温度を保ちながら1時間攪拌した後、飽和アンモニウムクロライド水溶液500mlをゆっくりと滴下し、反応を停止し、有機層を分離した。
有機層を分離した水層を、さらに500mlのジエチルエーテルで2回洗浄し、上記有機層と合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液500mlおよび飽和食塩水500mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ロ別および溶媒の減圧下での留去を行い、黄色油状の1,4-ビス(アクリロイルオキシメチル)パーフルオロシクロヘキサン(GCによる純度91.5%)79.5g(収率96.5%)を得た。
得られた1,4-ビス(アクリロイルオキシメチル)パーフルオロシクロヘキサン(純度91.5%)71.5gに40℃に加熱したn-ヘキサン70gを加え、さらに50℃に加熱して均一な溶液とした。これを、遮光下で室温になる迄放置し、さらに-20℃で12時間以上静置した。生じた結晶をロ別し、ロ別された結晶をn-ヘキサンで洗浄して、淡黄色結晶(GCによる純度96.3%)36.3gを得た。
また、ロ液を濃縮すると、黄色油状の1,4-ビス(アクリロイルオキシメチル)パーフルオロシクロヘキサン(GCによる純度80.4%)31.6gが回収された。これについて、シバタ製硝子分子蒸留装置を用いて、分子蒸留による精製を行った。すなわち、熱媒に1,4-ジオキサン(沸点100℃)を用い、蒸留装置内部を真空ポンプで400Paとした上で、蒸留装置上部から上記回収物31.0gをゆっくりと滴下し、蒸留回収留分(GCによる純度62.7%)8.79gおよび回収残渣(GCによる純度91.2%)21.4gを得た。
熱媒をトルエンに変更し、蒸留装置内部を50Paとして、回収残渣を再度分子蒸留で精製すると、黄色油状の目的物(GCによる純度92.2%)17.8gが得られ、この蒸留回収留分を再度同じ操作で精製すると、黄色油状の目的物(GCによる純度96.0%)が15.1g得られた。
実施例4
窒素雰囲気下で、前記精製1,4-ビス(ヒドロキシメチル)パーフルオロシクロヘキサン5.0g(15.4ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液150mlを-20℃に冷却し、そこにn-ブチルリチウムのn-ヘキサン溶液(濃度1.58モル/L)23.0ml(n-ブチルリチウムとして36.3ミリモル)をゆっくりと滴下した。この温度を保ちながら1時間攪拌した後、メタクリル酸クロライド(GCによる純度99%)3.58g(33.8ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液20mlをゆっくりと滴下した。この温度を保ちながら1時間攪拌した後、飽和アンモニウムクロライド水溶液100mlをゆっくりと滴下し、反応を停止し、有機層を分離した。
有機層を分離した水層を、さらに100mlのジエチルエーテルで2回洗浄し、上記有機層と合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlおよび飽和食塩水100mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ロ別および溶媒の減圧下での留去を行い、黄色油状の1,4-ビス(メタクリロイルオキシメチル)パーフルオロシクロヘキサン(GCによる純度83.2%)7.58g(収率89%)を得た。
得られた1,4-ビス(メタクリロイルオキシメチル)パーフルオロシクロヘキサンの精製も、実施例3と同様にして行われた。
以上の各実施例で得られた生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、いずれも公知の化合物と同一であることが確認された。また、1,3-ジ置換体についても、各実施例記載の1,4-ジ置換体と同様に、対応する目的物を与えることが可能である。
比較例
窒素雰囲気下で、実施例1で用いられた1,4-ジメトキシカルボニルパーフルオロシクロヘキサン38g(100ミリモル)をエタノール120mlに溶解させ、氷冷した。そこに、内温を10℃以下に保ちながら、水素化ホウ素ナトリウム4.91g(130ミリモル)をゆっくりと滴下した。一夜かけて内温を室温迄上昇させた後、反応混合物に10重量%塩酸水溶液100mlをゆっくりと滴下して、反応を停止させた。
反応溶液を静置したところ、エタノール/水に不溶の黄色油状成分が分離したのでこれを分取し、また水層を100mlのクロロホルムで2回洗浄した。回収クロロホルム層に不溶の結晶が生じたので、これをロ別、乾燥し、白色結晶4.21g(収率12%)を得た。この白色結晶は、1H-NMRおよび19F-NMRから、目的物である1,4-ビス(ヒドロキシメチル)パーフルオロシクロヘキサン(GCによる純度89.0%)であると確認された。
一方、ロ液クロロホルム層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後濃縮すると、黄色油状の残渣19.3gが得られたが、1H-NMRおよび19F-NMRの結果は複雑な混合化合物であることを示しており、特定の化合物を同定できなかった。
本発明の最終目的物であるビス〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕パーフルオロシクロヘキサンは、可視光、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射による硬化が可能であるため、感光性硬化型インキ、電子線硬化型塗料、紫外線硬化型接着剤等への応用が可能である。また、多官能性(メタ)アクリロイルオキシアルキル基を有しているので、高密度架橋が可能となり、各種樹脂の架橋剤、改質剤等として用いられ、硬度、強度、耐熱性、耐候性、耐薬品性等の樹脂物性の向上や改良を可能とする。さらに、フッ素含有量が多いため低屈折率を示すので、ディスプレイ等の反射防止膜や光ファイバーのクラッド材等への利用を可能とする。これら以外にも、界面活性特性を利用して、各種離型コーティング剤、各種表面コーティング剤や表面改質剤、撥水撥油剤等の用途に有効に用いられる。

Claims (4)

  1. パーフルオロシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルを還元してビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンを製造するに際し、還元剤として水素化ジアルキルアルミニウムを用いることを特徴とするビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンの製造法。
  2. 請求項1記載の方法で得られたビス(ヒドロキシアルキル)パーフルオロシクロヘキサンをアクリル酸ハライドまたはメタクリル酸ハライドと反応させることを特徴とするビス〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕パーフルオロシクロヘキサンの製造法。
  3. (メタ)アクリロイル化反応が水素化金属化合物またはアルキル基含有金属化合物の存在下で行われる請求項2記載のビス〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕パーフルオロシクロヘキサンの製造法。
  4. 請求項2または3記載の方法によって得られた目的生成物を再結晶によって精製し、再結晶ロ液中の目的生成物は分子蒸留によって精製することを特徴とするビス〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕パーフルオロシクロヘキサンの精製法。
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