JP2005340715A - 磁気メモリ装置及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高透磁率層による磁束集中効果が有効にTMR素子の磁化自由層(記憶層)に作用し、その結果、書き込み電流を低減させることができ、TMR素子の書き込み特性のばらつきの影響を受けにくい磁気メモリ装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 磁化固定層4とトンネルバリア層3と磁化自由層2とが積層されてなるTMR素子10Bからなるメモリ部を有し、書き込み用ワード線14が絶縁層62を介してTMR素子10Bに対向配置された磁気メモリ装置において、高透磁率層61を書き込み用ワード線14の底部に設け、書き込み用ワード線14の側面からTMR素子10Bの側面に形成された絶縁体層63を介して、高透磁率層64をTMR素子10Bの側面に磁化自由層2の位置まで設ける。更に、書き込み用ワード線14を貫通する読み出し用プラグを設け、TMR素子10Bの下方に読み出し配線40を設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】 磁化固定層4とトンネルバリア層3と磁化自由層2とが積層されてなるTMR素子10Bからなるメモリ部を有し、書き込み用ワード線14が絶縁層62を介してTMR素子10Bに対向配置された磁気メモリ装置において、高透磁率層61を書き込み用ワード線14の底部に設け、書き込み用ワード線14の側面からTMR素子10Bの側面に形成された絶縁体層63を介して、高透磁率層64をTMR素子10Bの側面に磁化自由層2の位置まで設ける。更に、書き込み用ワード線14を貫通する読み出し用プラグを設け、TMR素子10Bの下方に読み出し配線40を設ける。
【選択図】 図1
Description
本発明は、磁化方向が固定された磁化固定層と、トンネルバリア層と、磁化方向の変化が可能な磁化自由層とが積層されてなるトンネル磁気抵抗効果素子によって磁気メモリ素子が構成され、この磁気メモリ素子からなるメモリ部を有する磁気メモリ装置、特に磁気ランダムアクセスメモリ、即ちいわゆる不揮発性メモリであるMRAM(Magnetic Random Access Memory)として構成された磁気メモリ装置及びその製造方法に関するものである。
情報通信機器、特に携帯端末などの個人用小型機器の飛躍的な普及に伴い、これを構成するメモリやロジックなどの素子には、高集積化、高速化、低消費電力化など、一層の高性能化が要求されている。
特に不揮発性メモリは、ユビキタス時代に必要不可欠であると考えられている。電源の消耗やトラブルが生じた場合や、サーバーとネットワークが何らかの障害により切断された場合でも、不揮発性メモリは、個人情報を含めた重要な情報を保護することができる。また、最近の携帯機器は、不要の回路ブロックをスタンバイ状態にしてできるだけ消費電力を抑えるように設計されているが、高速のワークメモリと大容量ストレージメモリとを兼ねることができる不揮発性メモリが実現できれば、消費電力とメモリの無駄を無くすことができる。また、高速の大容量不揮発性メモリが実現できれば、電源を入れると瞬時に起動できる“インスタント・オン”機能も可能になってくる。
不揮発性メモリとしては、半導体を用いたフラッシュメモリや、強誘電体を用いたFRAM(Ferroelectric Random Access Memory )なども挙げられる。
しかしながら、フラッシュメモリは、情報の書き込み時間がμ秒のオーダーであり、書き込み速度が遅いという欠点がある。一方、FRAMにおいては、書き換え可能回数が1012〜1014であり、完全にSRAM(Static Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)に置き換えるには持久力(Endurance)が小さく、また強誘電体キャパシタの微細加工が難しいという問題が指摘されている。
これらの欠点を有さず、高速、大容量(高集積化)、低消費電力の不揮発性メモリとして注目されているのが、MRAM(Magnetic Random Access Memory)と称される磁気メモリである。
初期のMRAMは、J.M.Daughton,Thin Solid Films,vol.216, pp.162-168, 1992で報告されているAMR(Anisotropic Magnetoresistive)効果や、D.D.Tang et al.,IEDM Technical Digest,pp.995-997,1997で報告されているGMR(Giant Magnetoresistance)効果を使ったスピンバルブをベースにしたものであった。しかし、これらのメモリは、負荷のメモリセル抵抗が10〜100Ωと低いため、読み出し時のビットあたりの消費電力が大きく、大容量化が難しいという欠点があった。
一方、トンネル磁気抵抗TMR(Tunnel Magnetoresistance)効果は、R.Meservey et al.,Physics Reports,vol.238,pp.214-217,1994で報告されているように、当初は抵抗変化率が室温で1〜2%の材料しかなかったが、T.Miyazaki et al.,J.Magnetism & Magnetic Material,vol.139,(L231),1995で報告されているように、20%近くの抵抗変化率を有する材料が得られるようになった。このような近年のTMR材料の特性向上によって、TMR効果を用いたMRAMに注目が集まるようになってきている。
TMR素子は、磁化自由層(記憶層)と磁化固定層との2つの磁性層の間にトンネルバリア層を挟持した構造をもち、2つの磁性層の磁化方向が「平行」であるか、「反平行」であるかを”0”または”1”の情報として記憶し、この相対的な磁化方向の違いによってトンネルバリア層を流れる電流の強度が変化することを利用して、情報の読み出しを行う記憶素子である。
TMR型のMRAMは、マトリクス状に配列されたTMR素子を有するとともに、所望のTMR素子に情報を記録するために、行方向および列方向からアクセスするためのビット線とワード線とを有しており、その交差領域に位置するTMR素子にのみ、後述するアステロイド特性を利用して、選択的に情報の書き込みを行い得るように構成されている。
TMR型のMRAMは、ナノ磁性体特有のスピン依存伝導現象に基づく磁気抵抗効果を利用して情報の読み出しを行い得る半導体磁気メモリであり、外部から電力を供給することなしに記憶を保持できる不揮発性メモリである。しかも、構造が単純であるため、高集積化が容易である。また、磁気モーメントの反転により記録を行うため、書き換え可能回数が大であり、アクセス時間についても非常に高速であることが予想され、既に100MHzで動作可能であることがR. Scheuerlein et al.,ISSCC Digest of Technical Papers,pp.129129,Feb.2000で報告されている。
以下、TMR型のMRAMについて更に詳細に説明する。
図25は、MRAMのメモリセルの記憶素子となるTMR素子10Aの斜視図である。TMR素子10Aは、支持基板7の上に設けられ、磁化の方向が比較的容易に反転する磁化自由層(記憶層)2と、磁化の方向が固定されている磁化固定層4とを含んでいる。磁化自由層(記憶層)2と磁化固定層4とには、例えばニッケル、鉄、コバルト、またはこれらの合金を主成分とする強磁性体が用いられる。また、磁化固定層4は、合成反強磁性結合(SAF: Synthetic Antiferromagnet)をもつ多層膜(強磁性体/金属/強磁性体の積層膜)であってもよい。SAFについては、S.S.Parkin et.al.,Physical Review Letters,7,May,pp.2304-2307(1990)で報告されている。
磁化固定層4は反強磁性体層5に接して形成されており、両層間に働く交換相互作用によって、磁化固定層4は強い一方向の磁気異方性を持つことになる。反強磁性体層5の材料としては、例えば、鉄、ニッケル、白金、イリジウムおよびロジウムなどのマンガン合金、あるいはコバルトやニッケルの酸化物などを使用できる。
磁化自由層(記憶層)2は、磁化固定層4の磁化方向と平行な磁化容易軸(強磁性体が容易に磁化される方向軸)を有し、磁化固定層4の磁化方向に対し平行または反平行のいずれかの方向に磁化されやすく、この2つの状態間で比較的容易に磁化方向を反転させ得るように構成されている。従って、磁化自由層(記憶層)2を情報記憶媒体として用いる場合には、磁化固定層4の磁化方向に対し「平行」および「反平行」に磁化した磁化自由層(記憶層)2の2つの状態を、情報の“0”と“1”に対応させる。
また、磁化自由層(記憶層)2と磁化固定層4との間には、アルミニウム、マグネシウム、シリコン等の酸化物もしくは窒化物等からなる絶縁体によるトンネルバリア層3が形成されており、磁化自由層(記憶層)2と磁化固定層4との磁気的結合を切るとともに、磁化自由層(記憶層)2の磁化方向に応じたトンネル電流を流す役割を担っている。TMR素子10Aを構成する磁性層および導体層は、主にスパッタリング法により形成されるが、トンネルバリア層3は、スパッタリングで形成された金属膜を酸化もしくは窒化させることにより得ることができる。
トップコート層1は、TMR素子10Aと、TMR素子10Aに接続される配線との相互拡散防止や、接触抵抗低減および磁化自由層(記憶層)2の酸化防止という役割があり、通常は、銅、タンタル、窒化チタンおよびチタン等の材料が使用できる。引き出し電極層6は、TMR素子10Aと直列に接続される読み出し用トランジスタなどとの接続に用いられる。この引き出し電極層6は反強磁性体層5を兼ねてもよい。
図26は、MRAMのメモリセルの一部を示す拡大斜視図である。ここでは、一例として9個のメモリセルを示しているが、このMRAMでは、相互に交差するビット線11と書き込み用ワード線14とが配され、これらの配線11と14が交差する層間に、TMR素子10Aがマトリックス状に配置されている。
MRAMのメモリセルには、主として2種類の形式がある。1つは、TMR素子が単独で用いられるクロスポイント型のMRAMセルである。クロスポイント型のMRAMは、メモリセルの面積を小さくできるが、アクセス速度が遅くなる。他の1つは、TMR素子が読み出し用トランジスタなどの選択素子と共に用いられる型のMRAMセルで、選択素子1つがTMR素子1つに配される1T1J構造、または、これをコンプリメンタリに配置した、選択用素子2つがTMR素子2つに配される2T2J構造からなるMRAMセルがある。
図27および28は、1T1J型のMRAMの等価回路図を示している。図27は全体の構成を示し、図28はその部分拡大図である。図28では、一例として6個のメモリセルを示しているが、書き込み用ビット線13と書き込み用ワード線14とが交差する層間に、TMR素子10Aがマトリックス状に配置されると共に、情報の読み出しの際に該当するセルのTMR素子10Aを選択するための電界効果トランジスタ18が配され、TMR素子10Aに直列に接続されている。
更に、読み出し用ビット線15、電界効果トランジスタ18のON、OFFを制御する読み出し用ワード線16、および読み出された情報を出力するセンス線17が設けられている。そして、周辺回路部において、書き込み用ビット線13には書き込み用ビット線電流駆動回路19が接続され、書き込み用ワード線14には書き込み用ワード線電流駆動回路20が接続され、読み出し用ビット線15には読み出し用ビット線駆動回路21が接続され、読み出し用ワード線16には読み出し用ワード線駆動回路22が接続され、センス線17には読み出された情報を検出するセンスアンプ23が接続されている。
図29は、従来の1T1J型MRAMのメモリセルの一例(比較例1)を示す断面図である。但し、図29では、見やすくするため、層間絶縁膜50、54および56は、層間絶縁膜間の境界やハッチングを図示省略して示している。
メモリセルの上部には、書き込み用ビット線13と読み出し用ビット線15とが層間絶縁膜54を間に挟んで設けられ、読み出し用ビット線15に接してその下にTMR素子10Aが配置され、さらにTMR素子10Aの引き出し電極層6の下に絶縁層162を挟んで書き込み用ワード線14が配置されている。
一方、メモリセルの下部には、例えばp型シリコン半導体基板30内に形成されたp型ウエル領域31に、ドレイン電極33、ドレイン領域34、ゲート電極16、ゲート絶縁膜35、ソース領域36、およびソース電極37よりなるn型のMOS型電界効果トランジスタ18が設けられている。トランジスタ18のゲート電極16は、セル間をつないで帯状に形成され、読み出し用ワード線16を兼ねている。また、ドレイン電極33は、引き出し配線106と、読み出し用接続プラグ141、143、および読み出し用ランディングパッド142、144(以下の図中では、接続プラグはプラグ、ランディングパッドはランドと略記する。)からなる読み出し配線140とを介してTMR素子10Aの引き出し電極層6に接続されており、ソース電極37はセンス線17に接続されている。
このように構成されたメモリセルにおいて、TMR素子10Aへの情報の書き込みは、書き込み用ビット線13および書き込み用ワード線14に電流を流し、これらから発生する磁界の合成磁界によって磁化自由層(記憶層)2の磁化方向を、磁化固定層4の磁化方向に対して「平行」または「反平行」に定めることによって行う。
TMR素子10Aの磁化自由層(記憶層)2における磁界は、通常、磁化容易軸方向の磁界HEAが書き込み用ビット線13を流れる書き込み電流によって印加され、磁化困難軸方向の磁界HHAが書き込み用ワード線14を流れる書き込み電流によって印加され、これらの磁界HEAとHHAとのベクトル合成による合成磁界が作用する。
MRAMでは、それぞれ一方のみでは磁化反転が起こらない強さの磁界HEA(<一方向反転磁界Hk)およびHHA(<Hk)を印加し、アステロイド磁化反転特性を利用して、電流を流している書き込み用ビット線13と書き込み用ワード線14との交差点にあり、HEAとHHAの両磁界が共に作用するメモリセルにだけ磁性スピンの反転を起こさせ、書き込みを行うことが一般的である。以下、この原理を詳述する(米国特許 第6081445号明細書参照。)。
図30は、情報書き込み動作時における、TMR素子の磁化自由層(記憶層)2の磁界応答特性を示すアステロイド曲線のグラフである。アステロイド曲線は、エネルギー最小の条件から、次式
HEA 2/3 + HHA 2/3 = Hs 2/3
で与えられ、TMR素子の書き込み条件、すなわち印加された磁界によって磁化自由層(記憶層)2の磁化方向が反転可能となるしきい値を表している。
HEA 2/3 + HHA 2/3 = Hs 2/3
で与えられ、TMR素子の書き込み条件、すなわち印加された磁界によって磁化自由層(記憶層)2の磁化方向が反転可能となるしきい値を表している。
図30に示すように、磁化容易軸方向に印加された磁界HEAをHx(<Hk)とし、磁化困難軸方向に印加された磁界HHAをHy(<Hk)とすると、HxとHyとのベクトル和である合成磁界Hが磁化自由層(記憶層)2に作用し、この合成磁界Hがアステロイド曲線上の点Cに対応するしきい値Hcより大きく、アステロイド曲線の外部の領域151または152に達する大きさであるとき、磁化自由層(記憶層)2の磁化方向を反転させることが可能となる。他方、ベクトル和がアステロイド曲線の内部の領域150にとどまる合成磁界Hは、磁化自由層(記憶層)2の磁化方向を反転させることができない。
上述の磁化方向反転特性は、磁化容易軸方向磁界HEAと磁化困難軸方向磁界HHAとが共に存在する場合には、磁化方向を反転させるのに必要な磁界の大きさが、それぞれが単独で作用する場合に比べて低減されると共に、書き込み用ビット線13と線14の2本の書き込み線を用いることにより、両者の交差点にあるメモリセルのTMR素子10Aにだけ選択的に情報を書き込むことが可能になる原理を示している。
即ち、書き込み用ビット線13を流れる書き込み電流によって、その書き込み用ビット線13の下方に配置されたすべてのTMR素子10Aに、磁化容易軸方向磁界HEAであるHxが印加され、また、書き込み用ワード線14を流れる書き込み電流によって、その書き込み用ワード線14の上方に配置されたすべてのTMR素子10Aに、磁化困難軸方向磁界HHAであるHyが印加される。しかし、磁化容易軸方向又は磁化困難軸方向に単独の磁界が作用する場合、磁化反転に必要になる磁界のしきい値は、上記のアステロイド曲線の磁化容易軸(x軸)または磁化困難軸(y軸)上での値、一方向反転磁界Hkである。従って、Hkより小さいHxやHyを作用させても、それぞれ単独では磁化自由層(記憶層)2の磁化方向を反転させることはできない。しかしながら、書き込み電流が流れる書き込み用ビット線13と書き込み用ワード線14との交点にあり、HxとHyとが共に作用するメモリセルでは、その合成磁界Hがアステロイド曲線上のしきい値Hcをこえてアステロイド曲線の外部の領域151(A)に達し、磁化自由層(記憶層)2の磁化方向を反転させることが可能である。
なお、HxまたはHyが一方向反転磁界Hkより大きいと、それが印加されるすべてのメモリセルに情報が書き込まれてしまう不都合が生じるから、HxおよびHyはHk未満でなければならず、領域152は不適当である。従って、情報の書き込みのために磁化自由層(記憶層)2に印加する合成磁界として適切な領域は、図30に灰色で示した領域151(A)である。
図31は、TMR素子10Aにおける情報の読み出し動作を説明するための概略断面図である。ここでは、TMR素子10Aの層構成を概略図示しており、トップコート層1、反強磁性体層5および引き出し電極層6は図示を省略している。
TMR素子10Aに記録された情報の読み出しは、磁気抵抗効果の1種であるTMR効果を利用して行う。TMR効果とは、トンネルバリア層を挟んで対向している2つの磁性層間を流れるトンネル電流に対する抵抗が、2つの磁性層の磁性スピンの向きが「平行」であれば小さくなり、「反平行」であれば大きくなる現象である。
具体的には、図31に示すように、書き込み用ビット線13から磁化自由層(記憶層)2、トンネルバリア層3および磁化固定層4を貫いて流れるトンネル電流を供給し、上記の抵抗の大小に対応した読み出し電流を取り出し、この大小によって磁化自由層(記憶層)2の磁性スピンの向きを検出する。
即ち、図31の左図に示すように、磁化自由層(記憶層)2と磁化固定層4との磁化の方向が「平行」で、磁性スピンが揃っている場合には、これら2つの層の間の抵抗は小さく、大きな読み出し電流がトンネルバリア層3を貫いて流れる。他方、図31の右図に示すように、磁化自由層(記憶層)2と磁化固定層4との磁化の方向が「反平行」で、磁性スピンが逆向きの場合には、これら2つの層の間の抵抗は大きく、トンネルバリア層3を貫いて流れる読み出し電流は小さい。
図29に示したように、TMR素子10Aの引き出し電極層6は、引き出し配線106と読み出し配線140とによって読み出し用トランジスタ18のドレイン電極33へ接続され、読み出し用トランジスタ18のソース電極37はセンス線17へ接続されている。従って、MRAMの読み出し動作時には、駆動電圧が印加された読み出し用ビット線15に接続されているTMR素子10Aのうち、ゲート電極(読み出し用ワード線)16への制御信号の印加によって選択されたTMR素子10Aの読み出し電流のみが、読み出し用電界効果トランジスタ18を介してセンス線17へ出力される。このようにして電界効果トランジスタ18は、TMR素子10Aに記憶されている情報を選択的に読み出すためのスイッチング素子として機能する。
なお、トランジスタ18は、n型またはp型電界効果トランジスタであってよいが、その他、ダイオード、バイポーラトランジスタ、MESFET(Metal Semiconductor Field Effect Transistor)等、各種のスイッチング素子を用いることができる。
以上に説明したように、図29に示した1T1J型のMRAMは、書き込み用ビット線13およびワード線14と、読み出し用ビット線15およびワード線16とが独立に設けられているため、ほぼ同時に書き込み動作と読み出し動作とを行うことが可能である(M.Durlam et.al., International Electron Devices Meeting Technical Digest,pp.995-997 (2003) 参照。)。この場合、書き込み用ビット線13およびワード線14と、読み出し用ビット線15およびワード線16とは、電気的に絶縁されていなければならない。
また、後述の特許文献1など、従来多くの試作結果が報告されているMRAMがそうであるように、書き込み用ビット線13と読み出し用ビット線15とを一本のビット線で兼用することもできる。この場合も、書き込み用ワード線14と読み出し用ワード線16とは電気的に絶縁されていなければならない。
いずれの場合でも、図29に示したように、書き込み用ワード線14は、これを流れる電流によって発生する磁場がTMR素子10Aに有効に作用するように、引き出し電極層6にできるだけ接近して、その真下に設けられる。そして、引き出し電極層6から読み出し用ワード線16までの配線は、書き込み用ワード線14との接触を避けるために、引き出し配線106を設けてTMR素子10Aの下方からオフセットした位置に導き、この位置で、読み出し用トランジスタ18と接続するための読み出し用接続プラグ141、143および読み出し用ランディングパッド142、144などの読み出し配線140を形成するのが通常である。
先述したように、高速で高集積化が容易という長所を有するMRAMではあるが、現在のところ、書き込みのために必要な電流は他のメモリデバイスに比べて大きい。TMR素子の磁化自由層(記臆層)の反転磁界は20〜200Oe程度であり、磁化方向の反転に必要な電流は数mAから数十mAになる。これはMRAMを携帯機器において電池駆動で用いる場合、大きな問題になる。
また、高集積化という面からは、書き込み用ビット線と書き込み用ワード線の線幅は、リソグラフィ技術から定まる最小線幅に近い線幅とすることが求められる。例えば、ビット線幅およびワード線幅を0.3μmとし、配線の膜厚を500nmとし、10mAの電流を流した場合、電流密度は6×106A/cm2となり、実用電流密度が0.5〜1×106A/cm2である銅配線を使った場合でも、エレクトロマイグレーションに対する寿命が大きな問題になる。高集積化をさらに進めると、微細化したTMR素子の磁化自由層の反転磁界は増加し、他方、配線の線幅は縮小しなければならないため、配線の信頼性はより大きな問題となる。
また、大電流駆動用の駆動回路を書き込み用ビット線と書き込み用ワード線に設けるため、駆動回路の占有面積が大きくなり、集積度の向上を阻害する原因になる。
更に、TMR素子の微細化により、磁束の漏れによって隣接ビットにまで磁界が発生し、正常な動作を妨害するという問題が発生する。
これらの問題点に対する対策として、後述の特許文献1では、書き込み用ワード線の、TMR素子に対向している部分以外の周囲を高透磁率材料からなる層で取り囲み、書き込み用ワード線を流れる電流によって生じる磁束を、TMR素子の磁化自由層(記憶層)に集中させる構造が提案されている。この高透磁率層は、書き込み用ビット線にも設けることができる。
図32は、特許文献1に開示されているのと同様の高透磁率層161を、図29に示したMRAMの書き込み用ワード線に設けた例(比較例2)を示す断面図である。高透磁率材料としては、パーマロイをはじめとするコバルト鉄合金CoFeやニッケル鉄合金NiFe等の軟磁性材料が用いられる。
しかしながら、図32に示す構造のMRAMでは、書き込み用ワード線14の周囲に設けられた高透磁率層161と、TMR素子10Aの磁化自由層(記憶層)2とが離れ過ぎているため、TMR素子10Aに対して高透磁率層161の磁束集中効果が十分作用せず、書き込み電流の低下が十分ではないという問題がある。
図33は、図29に示した、書き込み用ワード線14に高透磁率層を設けていない比較例1と、図32に示した、高透磁率層161を設けた比較例2とについて、MRAMの書き込み用ワード線14とその周囲における磁束分布を、解析ソフトウェアである「マイクロマグ(商品名)」を用いたシミュレーションで求めた計算結果を示す説明図である。
図33によると、高透磁率層161を設けていない比較例1では、磁束は書き込み用ワード線14の周囲の空間にほぼ一様に分布している。それに対し、高透磁率層161を設けた比較例2では、磁束は、主として、高透磁率層161で覆われた領域ではその内部を伝わり、高透磁率層161の両端部間で空間を伝わる閉ループを形成する。このため、空間を伝わる磁束は、コの字形に設けられた高透磁率層161の先端部とその間に集中しており、高透磁率層161による磁束集中効果が有望であることが示されている。しかしながら、磁束集中効果が特に著しい領域は、TMR素子10Aの磁化自由層2が置かれた位置をはずれており、比較例2では、高透磁率層161の磁束集中効果がTMR素子10Aに対して有効に生かされていないことがわかる。
また、TMR素子10Aと書き込み用ワード線14は異なるマスクステップで作られる。この際、メモリセルのサイズをできるだけ小さくするためには、TMR素子10Aの幅を書き込み用ワード線14の線幅と等しいか、それ以下にする必要がある。この結果、マスク合わせのずれが生じ、アステロイド特性が非対称になって書き込み特性のばらつきが大きくなる可能性がある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高透磁率層による磁束集中効果が有効にTMR素子の磁化自由層(記憶層)に作用し、その結果、書き込み電流を低減させることができ、TMR素子の書き込み特性のばらつきの影響を受けにくい磁気メモリ装置及びその製造方法を提供することにある。
即ち、本発明は、磁化方向が固定された磁化固定層と、トンネルバリア層と、磁化方向の変化が可能な磁化自由層とがこの順に積層された積層体からなるトンネル磁気抵抗効果素子によって磁気メモリ素子が構成され、前記磁化自由層の側に配置された第1配線と、前記磁化固定層の側で絶縁層を介して前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向配置された第2配線とを用いて前記トンネル磁気抵抗効果素子へ書き込みを行うように構成され、前記第2配線の周囲のうち、前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向する対向面以外の面の少なくとも一部に高透磁率層が設けられている磁気メモリ装置であって、前記高透磁率層が前記対向面の位置よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側に延設されている、第1の磁気メモリ装置に係わり、また、前記第1の磁気メモリ装置の製造方法であって、前記第2配線を形成する工程と、前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向する対向面以外の面の少なくとも一部において前記第2配線の周囲に高透磁率層を設け、この際、前記高透磁率層を前記対向面の位置よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側に延設する工程を有する、第1の磁気メモリ装置の製造方法に係わるものである。
また、本発明は、磁化方向が固定された磁化固定層と、トンネルバリア層と、磁化方向の変化が可能な磁化自由層とがこの順に積層された積層体からなるトンネル磁気抵抗効果素子によって磁気メモリ素子が構成され、前記磁化自由層の側に配置された第1配線と、前記磁化固定層の側で絶縁層を介して前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向配置された第2配線とを用いて前記トンネル磁気抵抗効果素子へ書き込みを行うように構成され、前記第2配線の周囲のうち、前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向する対向面以外の面の少なくとも一部に高透磁率層が設けられている磁気メモリ装置であって、更に第2の高透磁率層が前記対向面の位置よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側に設けられ、前記高透磁率層と前記第2の高透磁率層とが前記第2配線の周囲に磁束の閉ループを形成する、第2の磁気メモリ装置に係わり、また、前記第2の磁気メモリ装置の製造方法であって、前記第2配線を形成する工程と、前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向する対向面以外の面の少なくとも一部において前記第2配線の周囲に前記高透磁率層を設ける工程と、前記対向面の位置よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側に前記第2の高透磁率層を設ける工程とを有する、第2の磁気メモリ装置の製造方法に係わるものである。
なお、本発明において、高透磁率層とは、透磁率μが100以上、より好ましくは1000以上の高透磁率材料からなる層を意味するものとする。
従来、前記第2配線の周囲に配設される前記高透磁率層が、前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向する前記対向面の位置よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側に設けられることはなかった。それに対し、本発明の第1の磁気メモリ装置によれば、前記高透磁率層が前記対向面の位置よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側に延設されているので、磁束集中効果が特に著しい前記高透磁率層の両先端部とその間に挟まれる領域を、前記トンネル磁気抵抗効果素子に接近させて配置することができ、より有効に前記磁束集中効果を前記トンネル磁気抵抗効果素子に作用させることができる。
また、本発明の第2の磁気メモリ装置によれば、第2の高透磁率層が前記対向面の位置よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側に設けられ、前記高透磁率層と前記第2の高透磁率層とが前記第2配線の周囲に磁束の閉ループを形成するので、前記第2の高透磁率層と前記高透磁率層とは連接して設けられていないものの、磁気的には連結しており、これら2つの高透磁率層が全体として、前記第1の磁気メモリ装置の前記高透磁率層と同様に機能し、前記2つの高透磁率層による磁束集中効果を前記トンネル磁気抵抗効果素子に有効に作用させることができる。
このため、より少ない書き込み電流によって書き込みを行うことができる。この結果、前述したエレクトロマイグレーションに対する寿命などの配線の信頼性が向上する。また、書き込み電流を供給する駆動回路を小型化することができ、駆動回路の占有面積を小さくして、集積度を向上させることができる。
また、確実に書き込みを行うことのできる書き込み電流の範囲が広がるため、前記トンネル磁気抵抗効果素子と前記第2配線との位置ずれなどによって前記トンネル磁気抵抗効果素子の書き込み特性のばらつきが生じた場合でも、その影響を受けにくくなる。また、磁束の漏れを抑制するので、隣接ビットに磁界が作用して隣接ビットの正常な動作を妨害することを防止することができる。
前記対向面の位置よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側には、前記絶縁層や前記トンネル磁気抵抗効果素子を構成する各層が存在するから、この位置に前記高透磁率層又は前記第2の高透磁率層を設けるには、従来の磁気メモリ装置の製造方法にはなかった工程が必要になる。本発明の第1の磁気メモリ装置の製造方法によれば、前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向する対向面以外の面の少なくとも一部において前記第2配線の周囲に前記高透磁率層を設け、この際、前記高透磁率層を前記対向面の位置よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側に延設する工程を有するので、前記第1の磁気メモリ装置を首尾よく製造することができる。また、本発明の第2の磁気メモリ装置の製造方法によれば、前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向する対向面以外の面の少なくとも一部において前記第2配線の周囲に前記高透磁率層を設ける工程と、前記対向面の位置よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側に前記第2の高透磁率層を設ける工程とを有するので、前記第2の磁気メモリ装置を首尾よく製造することができる。
なお、前記対向面以外の面に前記高透磁率層が形成された前記第2配線の前記対向面を化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)法により研磨すると、ディッシングとして知られているように、削り残された前記高透磁率層が前記対向面より突出することがある。このようなディッシングによる前記高透磁率層の突出部は、偶然に任されて再現性なく形成されるものであって、確実にばらつき少なく延設して設けられた本発明の前記高透磁率層とは本質的に異なるものである。
本発明の第1の磁気メモリ装置において、前記高透磁率層が、前記絶縁層よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側へ突設されているのがよい。これは、前記高透磁率層による前記磁化自由層への磁束集中効果は、前記高透磁率層の先端部が前記磁化自由層に近いほど高まるからである。但し、前記高透磁率層を前記絶縁層よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側に設けるには、前記トンネル磁気抵抗効果素子との電気的な接触を防止するために、例えば、後述する絶縁体層を設ける等の工夫が必要になる。
より望ましくは、前記高透磁率層が前記絶縁体層を介して前記積層体の側面に設けられ、前記磁化自由層の位置まで延設されているのがよい。前記高透磁率層が前記積層体の前記磁化自由層の位置まで延設されている場合には、前記磁束集中効果が高まるばかりでなく、前記磁化自由層における磁束分布が、主として、前記絶縁体層を介して前記磁化自由層に対して位置整合的に設けられた前記高透磁率層の位置と形状によって決まるようになり、前記第2配線の位置ずれによる前記書き込み特性のばらつきが生じにくくなる効果もある。
この際、前記高透磁率層の先端部が前記磁化自由層の側に湾曲して形成されているのがよい。このようにすると、前記高透磁率層の中を伝わってきた磁束がスムーズに前記磁化自由層に向かうようにすることができ、磁束集中効果がより高められる。
前記積層体の側面に前記高透磁率層を設ける具体的な方式としては、前記絶縁体層が前記積層体の前記側面から前記第2配線の側面にまで連設されていて、それに前記高透磁率層が積層されているのがよい。或いは、前記絶縁体層は前記積層体の前記側面にのみ設けられ、前記第2配線の側面には設けられないものの、前記第2配線の露出した側面から前記積層体の側面に設けられた前記絶縁体層までを包み込むように、前記高透磁率層が連続的に設けられているのでもよい。
更に、側面ばかりでなく、前記高透磁率層が前記側面と前記第2配線の底面とに亘って設けられているのがよい。磁束集中効果を高めるには、連続的に前記トンネル磁気抵抗効果素子に対する前記対向面以外のできるだけ多くの部分を包み込むように前記高透磁率層を設けることが重要である。
また、前記トンネル磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の側で、前記トンネル磁気抵抗効果素子に電気的に接続されている読み出し用の第3配線が、前記第2配線のエリア内を貫通して、この第2配線とは電気的に絶縁された状態で形成された接続孔内に設けられているのがよい。この際、前記接続孔の側壁に絶縁層が形成され、この絶縁層の内側に前記第3配線が埋設されているのがよい。このようにすると、前記第3配線を前記第2配線および前記高透磁率層と電気的に絶縁された状態で前記トンネル磁気抵抗効果素子の真下に引き出し、この位置に下部配線への接続線を設けることができる。この結果、前記第2配線のエリアを迂回し、前記トンネル磁気抵抗効果素子の真下をオフセットした位置に読み出し用の配線を設けていた従来の磁気メモリ装置に比べ、メモリセルの面積を従来より小さく抑えることができ、メモリセルの集積度を向上させることができる。
また、前記第2配線と前記積層体とが、前記第2配線の幅方向においてほぼ同一パターンに形成され、このパターンの少なくとも側面に前記高透磁率層が設けられているのがよい。このようにすると、前記磁化自由層に対して位置整合的に前記第2配線を設けることができ、前記磁化自由層と前記第2配線との位置ずれによる前記書き込み特性のばらつきを最小限に抑えることができる。
本発明の第2の磁気メモリ装置において、前記第2の高透磁率層が絶縁体層を介して前記積層体の側面に、少なくとも前記磁化固定層の位置から前記磁化自由層の位置まで設けられているのがよい。前記第2の高透磁率層が前記磁化固定層の位置から前記磁化自由層の位置まで設けられている場合には、磁束集中効果が高まるばかりでなく、前記磁化自由層における磁束分布が、主として、前記絶縁体層を介して前記磁化自由層に対して位置整合的に設けられた前記第2の高透磁率層の位置と形状によって決まるようになり、前記第2配線の位置ずれによる前記書き込み特性のばらつきが生じにくくなる効果もある。
この際、前記第2の高透磁率層の先端部が前記磁化自由層の側に湾曲して形成されているのがよい。このようにすると、前記第2の高透磁率層の中を伝わってきた磁束がスムーズに前記磁化自由層に向かうようにすることができ、磁束集中効果がより高められる。
本発明の第1および第2の磁気メモリ装置において、また、前記トンネル磁気抵抗効果素子の前記磁化自由層の側で、前記第1配線が前記トンネル磁気抵抗効果素子とは電気的に絶縁された書き込み用の第4配線と、前記トンネル磁気抵抗効果素子に電気的に接続された読み出し用の第5配線とからなるのがよい。或いは、前記第1配線が、前記読み出し用の配線と書き込み用の配線とを兼ねているのがよい。また、前記第1配線と前記第2配線とが交差して配置され、その交差点に前記トンネル磁気抵抗効果素子が配置されているのがよい。そして、前記磁化固定層と前記磁化自由層との間に前記トンネルバリア層が挟持され、前記第1又は前記第4配線と前記第2配線とにそれぞれ電流を流すことによって誘起される磁界で前記磁化自由層を所定方向に磁化して情報を書き込み、この書き込み情報を前記トンネルバリア層を介してのトンネル磁気抵抗効果によって読み出すように構成されているのがよい。これらは、MRAMの機能を最もよく発揮させる標準的な構成である。
本発明の第1の磁気メモリ装置の製造方法において、前記高透磁率層を前記絶縁層よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側へ突出させて設けるのがよい。より望ましくは、前記積層体の側面に絶縁体層を形成する工程と、前記高透磁率層をこの絶縁体層に積層して前記磁化自由層の位置まで設ける工程を有するのがよい。
より具体的には、前記絶縁体層を前記積層体の前記側面から前記第2配線の側面にまで形成するのがよい。或いは、前記絶縁体層を前記積層体の前記側面にのみ設け、前記第2配線の側面には形成しないものの、前記第2配線の露出した側面から前記積層体の側面に設けられた前記絶縁体層までを包み込むように、前記高透磁率層を連続して設けるのがよい。
この際、前記積層体の側面を前記磁化自由層の位置まで被覆する第1絶縁体層を形成する工程と、前記磁化自由層の位置を被覆しない第2絶縁体層を前記第1絶縁体層に積層する工程とを有し、前記第1及び前記第2絶縁体層に積層して、先端部が前記磁化自由層の側に湾曲した前記磁性体層を形成するのがよい。
更に、前記高透磁率層を前記側面と前記第2配線の底面とに亘って設けるのがよい。
また、前記第2配線の幅方向における前記第2配線と前記積層体とをほぼ同一パターンに自己整合的に形成する工程と、このパターンの少なくとも側面に前記高透磁率層を位置整合的に形成する工程とを有するのがよい。或いは、前記積層体の側面に形成された前記絶縁体層をマスクに用いて、前記第2配線の幅方向の形状をパターニングするのがよい。
また、前記第2配線のエリア内の少なくとも一部を貫通して前記接続孔を形成する工程と、前記接続孔内に前記第2配線とは電気的に絶縁された前記第3配線を形成する工程とを経て、請求項9〜11のいずれか1項に記載した磁気メモリ装置を製造するのがよい。
本発明の第2の磁気メモリ装置の製造方法において、前記積層体の側面に絶縁体層を形成する工程と、前記第2の高透磁率層をこの絶縁体層に積層して少なくとも前記磁化固定層の位置から前記磁化自由層の位置まで設ける工程を有するのがよい。
この際、前記積層体の側面を前記磁化自由層の位置まで被覆する第1絶縁体層を形成する工程と、前記磁化自由層の位置を被覆しない第2絶縁体層を前記第1絶縁体層に積層する工程とを有し、前記第1及び前記第2絶縁体層に積層して、先端部が前記磁化自由層の側に湾曲した前記第2の高透磁率層を形成するのがよい。
以上に述べた第1及び第2の磁気メモリ装置の製造方法によれば、前記第1及び前記第2の磁気メモリ装置を、それぞれ首尾よく製造することができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的に説明する。
実施の形態1
図1は、実施の形態1に基づくMRAMの要部断面図であり、図2は、そのMRAMを有する1T1J型のMRAMのメモリ部に配置されるメモリセルの1つを示す断面図である。但し、図2では、見やすくするため、層間絶縁膜50は層間絶縁膜の全体を示すのみで、各層間絶縁膜間の境界やハッチングは図示省略し、図1でも、層間絶縁膜のハッチングは図示を省略している(以下、同様。)。
図1は、実施の形態1に基づくMRAMの要部断面図であり、図2は、そのMRAMを有する1T1J型のMRAMのメモリ部に配置されるメモリセルの1つを示す断面図である。但し、図2では、見やすくするため、層間絶縁膜50は層間絶縁膜の全体を示すのみで、各層間絶縁膜間の境界やハッチングは図示省略し、図1でも、層間絶縁膜のハッチングは図示を省略している(以下、同様。)。
図2に示すように、メモリセルの上部には、前記第4配線である書き込み用ビット線13と、前記第5配線である読み出し用ビット線15とが、層間絶縁膜54を間に挟んで設けられて前記第1配線を構成し、読み出し用ビット線15に接してその下に、TMR素子10Bと、前記第2配線である書き込み用ワード線14と、高透磁率層61および64などからなる複合体26が配置されている。
一方、メモリセルの下部には、例えばp型シリコン半導体基板30内に形成されたp型ウエル領域31に、ドレイン電極33、ドレイン領域34、ゲート電極16、ゲート絶縁膜35、ソース領域36、およびソース電極37よりなるn型の読み出し用MOS型電界効果トランジスタ18が設けられている。トランジスタ18のゲート電極16は、セル間をつないで帯状に形成され、読み出し用ワード線16を兼ねている。また、ソース電極37はセンス線17に接続されている。
本実施の形態に基づくMRAMが、図29または図32に示した従来のMRAMと異なる点の1つは、従来、TMR素子10Aの引き出し電極層6を引き出し配線106によって書き込み用ワード線14を迂回して引き出し、読み出し用トランジスタ18のドレイン電極33へ接続する読み出し配線140を、TMR素子10Aの直下からオフセットした位置に設けていたのに対し、本実施の形態では、書き込み用ワード線14を貫通する接続孔25を形成し、読み出し用トランジスタ18へ接続する読み出し配線40をTMR素子10Bの直下の位置に設けていることである。
即ち、接続孔25内に設けられた読み出し用接続プラグ41は、一方の端部でTMR素子10Bのバリア層8に接続されるとともに、読み出し用ランディングパッド43と45、および読み出し用接続プラグ44と共に読み出し配線40を形成し、TMR素子10Bを読み出し用トランジスタ18のドレイン電極33に電気的に接続して、TMR素子10Bの読み出し電流をセンス線17に導く働きをする。なお、以下の図中では、接続プラグはプラグ、ランディングパッドはランドと略記する。
このため、従来、ビット線の長さ方向におけるメモリセルの寸法が、オフセットした位置に読み出し配線140を設ける分だけ大きくなっていたのに対し、本実施の形態では、この加算分を無くし、メモリセルを小型化して、メモリセルの集積度を向上させることができる。
本実施の形態に基づくMRAMが従来のMRAMと異なる、より重要な相違点は、TMR素子10Bが、書き込み用ワード線14や高透磁率層61、64と一体化された複合体60として設けられていることである。図1は、複合体60とその周辺の構造を示す要部断面図である。
TMR素子10Bの基本構造は、図25に示した従来のTMR素子10Aと同様である。即ち、TMR素子10Bは、磁化の方向が比較的容易に反転する磁化自由層(記憶層)2と、磁化の方向が固定されている磁化固定層4とを含んでいる。磁化自由層(記憶層)2と磁化固定層4とには、例えばニッケル、鉄、コバルト、またはこれらの合金を主成分とする強磁性体が用いられる。また、磁化固定層4は、合成反強磁性結合(SAF)をもつ多層膜(強磁性体/金属/強磁性体の積層膜)であってもよい。
磁化固定層4は反強磁性体層5に接して形成されており、両層間に働く交換相互作用によって、磁化固定層4は強い一方向の磁気異方性を持つことになる。反強磁性体層5の材料としては、例えば、鉄、ニッケル、白金、イリジウムおよびロジウムなどのマンガン合金、あるいはコバルトやニッケルの酸化物などを使用できる。
磁化自由層(記憶層)2は、磁化固定層4の磁化方向と平行な磁化容易軸(強磁性体が容易に磁化される方向軸)を有し、磁化固定層4の磁化方向に対し平行または反平行のいずれかの方向に磁化されやすく、この2つの状態間で比較的容易に磁化方向を反転させ得るように構成されている。この磁化固定層4の磁化方向に対し「平行」および「反平行」に磁化した磁化自由層(記憶層)2の2つの状態を情報の“0”と“1”に対応させ、磁化自由層(記憶層)2を情報記憶媒体として用いる。
また、磁化自由層(記憶層)2と磁化固定層4との間には、アルミニウム、マグネシウム、シリコン等の酸化物もしくは窒化物等からなる絶縁体によるトンネルバリア層3が形成されており、磁化自由層(記憶層)2と磁化固定層4との磁気的結合を切るとともに、磁化自由層(記憶層)2の磁化方向に応じたトンネル電流を流す役割を担っている。TMR素子10Bを構成する磁性層および導体層は、主にスパッタリング法により形成されるが、トンネルバリア層3は、スパッタリングで形成された金属膜を酸化もしくは窒化させることにより得ることができる。
トップコート層1は、TMR素子10Bと、TMR素子10Bに接続される配線との相互拡散防止や、接触抵抗低減および磁化自由層(記憶層)2の酸化防止という役割があり、通常は、銅、タンタル、窒化チタンおよびチタン等の材料が使用できる。
以上に加えて、TMR素子10Bでは、トップコート層1の上部にビット線接続層9が設けられている。ビット線接続層9は、読み出し用ビット線15と電気的に接続するための導電体層で、通常、タングステンまたは窒化チタンが用いられる。
また、反強磁性体層5の下部には、従来のTMR素子10Aに設けられていた引き出し電極6の代わりに、読み出し配線40と接続するためのバリア層8が設けられている。バリア層8には、TMR素子10Bと、TMR素子10Bに接続される配線との相互拡散を防止する役割や、接触抵抗を低減させる役割があり、通常は、銅、タンタル、窒化チタンおよびチタン等の材料が使用できる。
バリア層8の下部には、絶縁層62を介して書き込み用ワード線14が対向配置されている。絶縁層62は、例えば、厚さ50nmの酸化アルミニウム(アルミナ)膜である。書き込み用ワード線14は、アルミニウム−銅合金からなり、銅を用いてもよい。書き込み用ワード線14の底部には、高透磁率層61が設けられている。高透磁率層61は、例えば、ニッケル鉄合金、コバルト鉄合金やアモルファス磁性体材料などの高透磁率材料からなる。
そして、絶縁層62、書き込み用ワード線14および高透磁率層61を貫通して接続孔25が設けられている。この接続孔25内に、例えばタングステンを埋設することによって読み出し用接続プラグ41が形成され、絶縁性側壁42によって書き込み用ワード線14から電気的に絶縁されている。絶縁性側壁42は、例えば、酸化シリコンや酸化アルミニウムや窒化シリコン等の絶縁体である。先述したように、読み出し用接続プラグ41は、一方の端部でTMR素子10Bのバリア層8に接続され、他方の端部で読み出し用ランディングパッド43に接続され、TMR素子10Bと書き込み用ワード線14の直下に読み出し配線40を形成することを可能にする。
更に、高透磁率層64が、前記積層体である磁化自由層(記憶層)2とトンネルバリア層3と磁化固定層4との積層体の側面に、絶縁体層63を介して磁化自由層2の位置まで設けられている。絶縁体層63は、少なくとも前記積層体の側面から書き込み用ワード線14の側面にまで連設されていて、例えば、酸化アルミニウムや酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁体からなる。高透磁率層64は、絶縁体層63に積層して形成され、高透磁率層61と同様、例えば、ニッケル鉄合金、コバルト鉄合金やアモルファス磁性体材料などの高透磁率材料からなる。
図3を用いて後に説明するように、磁化自由層2における磁束分布は、主として、高透磁率層64の先端部の位置と形状によって決まる。上記のように、絶縁体層63を介して積層体2〜4の側面に高透磁率層64を形成すると、高透磁率層64の先端部は、常に磁化自由層2の外周から絶縁体層63の厚み分だけ離れた位置に形成され、高透磁率層64の先端部と磁化自由層2との位置ずれはほとんど生じないため、磁化自由層2における磁束分布のばらつきが小さくなる利点がある。
このように構成されたメモリセルにおいて、TMR素子10Bへの情報の書き込みは、書き込み用ビット線13および書き込み用ワード線14に電流を流し、これらから発生する磁界の合成磁界によって磁化自由層(記憶層)2の磁化方向を、磁化固定層4の磁化方向に対して「平行」または「反平行」に定めることによって行い、この向きを情報の“0”と“1”に対応させる。
磁化自由層(記憶層)2における磁界は、磁化容易軸方向の磁界HEAが書き込み用ビット線13を流れる書き込み電流によって印加され、磁化困難軸方向の磁界HHAが書き込み用ワード線14を流れる書き込み電流によって印加され、これらの磁界HEAとHHAとのベクトル合成による合成磁界が作用する。
図30は、MRAMの書き込み条件を示すアステロイド曲線であり、印加された磁界HEAおよびHHAによって磁化自由層(記憶層)2の磁化方向の反転が起こるしきい値を示している。このアステロイド曲線の外部に相当する合成磁界が発生すると、磁化反転が可能になるが、アステロイド曲線の内部の合成磁界では、磁化自由層(記憶層)2の磁化方向を一方から他方へ反転させることはできない。MRAMでは、磁界HEAおよびHHAの一方のみでは磁化反転が起こらない磁界HEAおよびHHAを印加し、アステロイド磁化反転特性を利用して、指定されたメモリセルだけに磁性スピンの反転を起こさせ、書き込みを行う。
但し、電流を流している書き込み用ビット線13および書き込み用ワード線14の交点以外のセルにおいても、書き込み用ビット線13または書き込み用ワード線14単独で発生する磁界が印加されるため、それらの大きさが一方向反転磁界HK以上の場合は、交点以外のセルの磁化方向も反転してしまう。このため、書き込み用ビット線13または書き込み用ワード線14単独で発生する磁界では磁化自由層(記憶層)2の磁化方向の反転が起こらないように、書き込み用ビット線13および書き込み用ワード線14に流す電流の大きさなどを、合成磁界が図中の灰色の領域151(A)におさまるように調整する。
情報の読み出しは、磁気抵抗効果を応用したTMR効果を利用して行い、トンネルバリア層2を挟んだ磁化自由層(記憶層)2と磁気固定層4との間に読み出しビット線15から電流(トンネル電流)を流し、上記の抵抗の高低に応じた出力電流を、読み出し用電界効果トランジスタ18を介してセンス線17に取り出すことによって行う。
図3は、実施の形態1に基づくMRAMにおける磁束分布の計算結果を示す説明図であり、先述した図33と同様、書き込み用ワード線とその周囲における磁束分布を、解析ソフトウェア「マイクロマグ(商品名)」を用いたシミュレーションで求めた結果である。
図33(b)に示した比較例2と同様に、書き込み用ワード線14を高透磁率層61と64で包み込んでいるため、磁束は、コの字形に設けられた高透磁率材料層の端部とその間に集中している。しかも、比較例2とは異なり、磁束集中効果が特に高い領域とTMR素子10Bの磁化自由層2が設けられている位置とが一致しており、TMR素子10Bに対して磁束集中効果が有効に作用することがわかる。
また、図3からわかるように、磁化自由層2における磁束分布は、高透磁率層64の先端部の位置と形状の影響を強く受ける。本実施の形態では、先述したように、高透磁率層64が磁化自由層2の外周から絶縁体層63の厚み分だけ離れた位置に位置整合的に形成されるため、磁化自由層2における磁束分布のばらつきが小さくなる。このため、書き込み用ワード線14が磁化自由層2に対して位置ずれして形成されたとしても、その影響は小さく、書き込み用ワード線14の位置ずれによるTMR素子10Bの書き込み特性のばらつきが生じにくくなる。
図4は、実施の形態1に基づくMRAMおよび比較例1および2のMRAMにおいて、磁化方向を反転させるのに必要な電流値を示すグラフである。図4によると、書き込み用ワード線に高透磁率層を設けていない比較例1のMRAMでは、書き込み用ワード線に流す電流による磁界が磁化自由層に有効に作用しないため、書き込み用ワード線に流す電流を増加させても、書き込み用ビット線に流す電流値の減少は緩慢である。それに比べて、書き込み用ワード線に高透磁率層を設けた比較例2および本実施の形態のMRAMでは、書き込み用ワード線に流す電流による磁界が磁化自由層に有効に作用するため、書き込み用ワード線に流す電流を増加させると、書き込み用ビット線に流す必要のある電流値を四分の一から五分の一程度に減少させることができる。特に、書き込み用ワード線に流す電流が小さい領域で比べると、書き込み用ワード線に流す電流によって書き込み用ビット線に流す必要のある電流値を低減させる効果は、本実施の形態の方が比較例2に比べてはるかに優っており、これは前述したように、高透磁率層による磁束集中効果が磁化自由層に有効に作用した結果である。
次に、図1および図2に示したMRAMの作製工程のフローを、図5〜図7の概略断面図により説明する。但し、下層配線を形成する工程までの工程は従来と同じであるから、これについては、要点のみを説明する。
まず、公知の半導体技術によって、例えば、シリコン基板30のp型ウエル領域31に読み出し用MOS電界効果トランジスタ18と、その間を分離するSTI(Shallow Trench Isolation)などの酸化膜32を形成する。
次に、その上に積層した絶縁膜に下部配線を形成する。例えば、銅配線であれば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により層間絶縁膜として酸化シリコン膜を堆積させ、フォトリソグラフィ技術とドライエッチングにより層間絶縁膜をパターニングした後、バリア層としてタンタルまたは窒化タンタルの薄膜を層間絶縁膜の全面にスパッタ法によって形成し、CVD法やメッキ法により配線溝と開口部に銅を埋め込み、CMP法により表面を平坦化する。また、アルミニウム配線であれば、スパッタ法や蒸着法によりアルミニウム薄膜を形成し、フォトリソグラフィ技術とドライエッチングによりパターニングする。
上記のようにして形成した下部構造の上にTMR素子10Bなどの上部構造を作製する。但し、図5〜図7では、簡略化のため、タングステンからなる読み出し用接続プラグ44が形成されている層間絶縁膜51より上部のみを示し、TMR素子10B付近の要部の断面のみを示す。また、読み出し用接続プラグ44の上には、読み出し用ランディングパッド43が既に形成されているものとする。なお、図5〜図7では、見やすくするため、層間絶縁膜は、ハッチングを図示省略して示している(以下、同様。)。
まず、図5(a)に示すように、高密度プラズマCVD法による酸化シリコン膜を1000nmの厚さに堆積する。その後、CMPにより平坦化し、読み出し用ランディングパッド43の上に厚さ500nmの酸化シリコン膜が残るように、層間絶縁膜52を形成する。
次に、図5(b)に示すように、チタン(20nm)、高透磁率材料(20nm)、窒化チタン(20nm)、アルミニウム−銅合金(300nm)、チタン(10nm)、そして窒化チタン(100nm)を順次堆積させ、高透磁率層61と書き込み用ワード線14となる各層を形成する。ここで、アルミニウム−銅合金の代わりに、銅を用いてもよい。また、高透磁率材料としては、例えば、ニッケル鉄合金、コバルト鉄合金やアモルファス磁性体材料を用いる。なお、図を簡略化するため、上記の層は、すべてを示す代わりに、機能面に注目して、高透磁率層61と書き込み用ワード線14として図示している。
次に、図5(c)に示すように、全面に酸化アルミニウム(アルミナ)からなる絶縁層62を50nmの厚さに堆積させた後、その上にフォトレジスト層を形成し、このフォトレジスト層をパターニングして、開口部82を有するフォトレジスト81を形成する。更に、フォトレジスト81を200〜300℃で熱処理し、フォトレジスト81をリフローさせ、開口部82の直径を縮小させ、開口部84を有するフォトレジスト83を形成する。実線がフォトレジスト81の断面形状であり、点線がリフロー後のフォトレジスト83の断面形状である。フォトレジストの開口部の縮小方法は、この他に例えば、T.Toyoshima et al.,IEDM,333-336(1998)に報告されている側壁形成による方法を用いてもよい。また、実施の形態2で後述するように、中間層まで接続孔25を開口させた後、この接続孔25の側壁に絶縁体層を形成し、この側壁をマスクとして用いたエッチングによって残りの接続孔25を形成してもよい。
次に、図5(d)に示すように、開口部84の直径を縮小させたフォトレジスト83をマスクとするエッチングによって、絶縁層(アルミナ膜)62、書き込み用ワード線14、高透磁率層61および層間絶縁膜(酸化シリコン膜)52を順次エッチングし、読み出し用ランディングパッド43に達する接続孔25を形成する。この後、フォトレジスト83をアッシングにより除去する。
次に、図6(e)に示すように、プラズマCVD法による酸化シリコン膜を20nmの厚さに堆積させた後、エッチバックして、接続孔25に酸化シリコン膜からなる絶縁性側壁42を形成する。絶縁性側壁42を形成する材料としては、ALD(Atomic Layer Deposition)法やスパッタ法等で堆積させた酸化アルミニウムや窒化シリコン等の絶縁体でもかまわない。
次に、図6(f)に示すように、絶縁性側壁42が形成された接続孔25にタングステン層をCVD法で埋設した後、CMPにより表面を平坦化して、読み出し用接続プラグ41を形成する。また、タングステンの代わりに、315℃程度の低温で形成できるルテニウムRu等の金属を埋設してもよい。
次に、図6(g)に示すように、TMR素子10Bを構成するバリア層8、反強磁性体層5、磁化固定層4、トンネルバリア層3、磁化自由層2、そしてトップコート層1を、順次PVD(Physical Vapor Deposition:物理的気相成長法)法で堆積させる。ここでバリア層8としては、窒化チタン、タンタルまたは窒化タンタルが用いられる。反強磁性体層5としては、例えば、鉄−マンガン、ニッケル−マンガン、白金−マンガン、イリジウム−マンガン等の合金を用いる。磁化固定層4としては、ニッケル、鉄、及び/又はコバルトの合金材料を用いる。磁化固定層4は、反強磁性体層5との交換結合によって磁化の方向がピニング(pinning:固定)される。トンネルバリア層3としては、通常、酸化アルミニウム(アルミナ)が用いられる。このアルミナ膜は、0.5〜5nmと非常に薄いため、ALD法、またはアルミニウムをスパッタリングによって堆積させた後、プラズマ酸化するといった方法で形成する。磁化自由層2としても、磁化固定層4と同様、ニッケル、鉄、及び/又はコバルトの合金材料を用いる。この層は、外部磁場の印加によって、磁化方向を磁化固定層4の磁化方向に対して平行または反平行にすることができる。トップコート層1は、バリア層8と同一材料で形成する。次に、CVD法によりタングステンまたは窒化チタンからなるビット線接続層9を50nmの厚さに堆積させる。
次に、図6(h)に示すように、図示を省略したフォトレジストをマスクにして、多層膜9、1〜5、8、62、14、および61を同一マスクでエッチングして、TMR素子10Bの各層、絶縁層62、書き込み用ワード線14および高透磁率層61を書き込み用ワード線14の形状にパターニングする。この結果、磁化自由層2と書き込み用ワード線14とがほとんど位置ずれなく位置整合的に形成され、TMR素子10Bの書き込み特性のばらつきが生じにくくなる。
次に、図7(i)に示すように、酸化アルミニウム膜を全面にスパッタ法によって堆積させた後、エッチバックによって多層膜の側面に絶縁体層63を形成する。絶縁体層63の材料として、酸化アルミニウムの代わりに、CVD法やALD法で形成した酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコン等の絶縁体を用いてもよい。次に、ニッケル鉄合金NiFeまたはコバルト鉄合金CoFe等の高透磁率材料をスパッタ法によって堆積させた後、エッチバックにより側面にのみ高透磁率材料を残し、高透磁率層64を形成する。この際、高透磁率層64の先端部が磁化自由層2の位置にくるようにエッチング量を調整する。この後、フォトリソグラフィ技術とドライエッチングにより、TMR素子10Bを構成するビット線接続層9、トップコート層1、磁化自由層2、トンネルバリア層3、磁化固定層4、反強磁性体層5およびバリア層8のみをTMR素子の形状にパターニングしてTMR素子10Bを形成する。
次に、図7(j)に示すように、プラズマCVD法によって酸化シリコンからなる層間絶縁膜53を100nmの厚さに堆積した後、CMPにより表面を平坦化して、タングステンまたは窒化チタンからなるビット線接続層9を露出させる。
次に、図7(k)に示すように、標準的な配線形成技術によって、読み出し用ビット線15を形成する。読み出し用ビット線15の材料としては、アルミニウム合金、銅または窒化チタンを用いることができる。次に、層間絶縁膜54を堆積させた後、標準的な配線形成技術によって、書き込み用ビット線13や、周辺回路の配線(図示省略)や、ボンディングパッド領域(図示省略)を形成する。更に、全面にプラズCVD法により窒化シリコン膜からなる絶縁膜55を堆積させ、ボンディングパッド部(図示省略)を開口して、MRAM製造のウェーハプロセス工程を完了させる。
以上に詳述したように、本実施の形態に基づくMRAMの構造と製造方法によれば、TMR素子10Bの磁化自由層2と書き込み用ワード線14および高透磁率層64とが自己整合的に位置決めして形成され、さらに書き込み用ワード線14の底部にも高透磁率層61が配設されているため、図3と4に示したシミュレーション結果のように、TMR素子10Bの磁化自由層2に効率よく磁束を集中させ、書き込み電流を低減させることができるとともに、アライメントずれをなくし、TMR素子10Bの書き込み特性のばらつきを小さく抑えることができる。
また、書き込み用ワード線14を貫通して読み出し用接続プラグ41を形成しているので、TMR素子10Bの直下に読み出し配線40を設けることができ、メモリセルを小型化して、メモリセルの集積度を向上させることができる。
図8は、実施の形態1の変形例であるMRAMのメモリセルを示す断面図である。図2に示したMRAMと異なる点は、前記第1配線であるビット線12が書き込み用ビット線と読み出し用ビット線とを兼ねていることである。このようにすると配線を簡略化できる利点がある。一方、図2に示したMRAMのように、書き込み用ビット線13と読み出し用ビット線15とを別々に設けると、ほぼ同時に書き込み動作と読み出し動作とを行うことが可能である利点がある(M.Durlam et.al., International Electron Devices Meeting Technical Digest,pp.995-997 (2003) 参照。)。このようにすると、米国特許第6543906号明細書に開示されているトグルモードで磁気メモリ素子に書き込みを行うのに好都合である。トグルモードによる書き込みでは、書き込み電流の方向を反転させる必要がないので、駆動回路を簡素化および高速化することができる。
実施の形態2
図9と図10は、実施の形態1のMRAMと本質的に同等の構造を有するMRAMを、実施の形態2に基づく方法で作製する工程を示す断面図とである。これらは、実施の形態1の図5(b)と同じ状態から始まり、図6(f)に相当する状態を形成するところまでを示している。この後の工程は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
図9と図10は、実施の形態1のMRAMと本質的に同等の構造を有するMRAMを、実施の形態2に基づく方法で作製する工程を示す断面図とである。これらは、実施の形態1の図5(b)と同じ状態から始まり、図6(f)に相当する状態を形成するところまでを示している。この後の工程は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
本実施の形態では、一気に読み出し用ランド43に達する接続孔を形成するのではなく、例えば、書き込み用ワード線14を貫通するところまで接続孔を形成し、この状態で絶縁性の側壁を形成した後、この側壁をマスクにしてエッチングして読み出し用ランド43に達する接続孔を形成する。
まず、図9(a)に示すように、チタン(20nm)、高透磁率材料(20nm)、窒化チタン(20nm)、アルミニウム−銅合金(300nm)、チタン(10nm)、そして窒化チタン(100nm)を順次堆積させ、高透磁率層61と書き込み用ワード線14となる各層を形成する。ここで、アルミニウム−銅合金の代わりに、銅を用いてもよい。また、高透磁率材料としては、例えば、ニッケル鉄合金、コバルト鉄合金やアモルファス磁性体材料を用いる。なお、これらの層は、機能面に注目して、高透磁率層61と書き込み用ワード線14として図示している。
次に、図9(b)に示すように、全面に酸化アルミニウム(アルミナ)からなる絶縁層62を50nmの厚さに堆積させた後、その上にフォトレジスト層を形成し、このフォトレジスト層をパターニングして、開口部92を有するフォトレジスト91を形成する。開口部92の内径は、接続孔の内径と同じとする。
次に、図9(c)に示すように、フォトレジスト91をマスクとするエッチングによって、絶縁層(アルミナ膜)62と書き込み用ワード線14と高透磁率層61とを順次エッチングし、層間絶縁膜52に達する接続孔26を形成する。この後、フォトレジスト91をアッシングにより除去する。
次に、図10(d)に示すように、プラズマCVD法による窒化シリコン膜を20nmの厚さに堆積した後、エッチバックして、接続孔26に窒化シリコン膜からなる絶縁性側壁46を形成する。
次に、図10(e)に示すように、絶縁層(アルミナ膜)62と窒化シリコン膜からなる側壁46をマスクとして用いて、層間絶縁膜52をエッチングし、読み出し用ランディングパッド43に達する接続孔27を形成する。
次に、図10(f)に示すように、接続孔27にタングステン層をCVD法で埋設した後、CMPにより表面を平坦化して、読み出し用接続プラグ41を形成する。
以上のように、本実施の形態によれば、側壁を形成する接続孔26の深さが実施の形態1の接続孔25の深さの半分以下になり、側壁を形成する工程が容易になる。その他は本質的に実施の形態1と同等であるから、実施の形態1と同等の作用効果が得られるのは言うまでもない。
実施の形態3
図11は、実施の形態3に基づくMRAMの要部断面図である。本実施の形態に基づくMRAMが実施の形態1に基づくMRAMと異なる点は、高透磁率層66の先端部が湾曲して磁化自由層2の側に突き出た凸形に形成されていることである。このようにすると、高透磁率層66の中を伝わってきた磁束がスムーズにより効率よく磁化自由層2に向かうようにすることができ、磁束集中効果が高められる。
図11は、実施の形態3に基づくMRAMの要部断面図である。本実施の形態に基づくMRAMが実施の形態1に基づくMRAMと異なる点は、高透磁率層66の先端部が湾曲して磁化自由層2の側に突き出た凸形に形成されていることである。このようにすると、高透磁率層66の中を伝わってきた磁束がスムーズにより効率よく磁化自由層2に向かうようにすることができ、磁束集中効果が高められる。
図12は、実施の形態3に基づくMRAMにおける書き込み用ワード線とその周囲での磁束分布を、先述したのと同様、解析ソフトウェアである「マイクロマグ(商品名)」を用いたシミュレーションで求めた計算結果である。
図3に示した実施の形態1に比べると、高透磁率材料層66の先端部における磁束の密度が増加しており、高透磁率層による磁束集中効果がより有効に作用していることがわかる。
図13は、実施の形態3に基づくMRAMおよび比較例1および2のMRAMにおいて、磁化方向を反転させるのに必要な電流値を示すグラフである。図4に示した比較例1と2のMRAMおよび実施の形態1に基づくMRAMにおける値も併記した。書き込み用ワード線に流す電流によって書き込み用ビット線に流す必要のある電流値を低減させる効果は、実施の形態1に基づくMRAMに比べてさらに改善されており、これは前述したように、高透磁率層による磁束集中効果が向上した結果である。
図14は、図11に示したMRAMを作製する工程を示す断面図である。これらは、実施の形態1の図6(h)と同じ状態から始まり、図7(j)に相当する状態を形成するところまでを示している。この後の工程は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
まず、図14(a)に示すように、層間絶縁膜52の上に形成されたビット線接続層9、トップコート層1、磁化自由層2、トンネルバリア層3、磁化固定層4、反強磁性体層5、バリア層8、絶縁層62、書き込み用ワード線14および高透磁率層61を同一マスクでエッチングして、書き込み用ワード線14の形状にパターニングする。
次に、図14(b)に示すように、酸化アルミニウム膜を全面にスパッタ法によって堆積させた後、エッチバックによって多層膜の側面に絶縁体層63を形成する。続いて、酸化シリコン膜を全面にCVD法によって堆積させた後、エッチバックによって多層膜の側面に絶縁体層65を形成する。この際、絶縁体層65の上端部がTMR素子10Bの磁化自由層2の位置より下になるようにエッチング量を調整する。絶縁体層63および絶縁体層65の材料としては、酸化アルミニウムや酸化シリコンの代わりに、CVD法やALD法で形成した酸化窒化シリコンまたは窒化シリコン等の絶縁体であってよく、エッチバックでの互いの選択比が大きな材料であればよい。
さらに、ニッケル鉄合金NiFeまたはコバルト鉄合金CoFe等の高透磁率材料をスパッタ法によって堆積させた後、エッチバックにより側面にのみ高透磁率材料を残し、高透磁率層64を形成する。この際、高透磁率層64の先端部が磁化自由層2の位置にくるようにエッチング量を調整する。これにより、高透磁率層64の先端部が湾曲し、磁化自由層2の側に絶縁体層65の厚さ分だけ突き出た形状が形成される。
この後、フォトリソグラフィ技術とドライエッチングにより、TMR素子10Bを構成するビット線接続層9、トップコート層1、磁化自由層2、トンネルバリア層3、磁化固定層4、反強磁性体層5およびバリア層8のみをTMR素子の形状にパターニングしてTMR素子10Bを形成する。
次に、図14(c)に示すように、プラズマCVD法によって酸化シリコンからなる層間絶縁膜53を100nmの厚さに堆積した後、CMPにより表面を平坦化して、タングステンまたは窒化チタンからなるビット線接続層9を露出させる。
以上のように、本実施の形態によれば、高透磁率層66の先端部が湾曲して磁化自由層2の側に突き出た形状に形成されているため、実施の形態1より高い磁束集中効果が得られる。その他は本質的に実施の形態1と同等であるから、実施の形態1と同等の作用効果が得られるのは言うまでもない。
即ち、TMR素子10Bの磁化自由層2と書き込み用ワード線14および高透磁率層66とが自己整合的に位置決めして形成され、さらに書き込み用ワード線14の底部にも高透磁率層61が配設されているため、TMR素子10Bの磁化自由層2に効率よく磁束を集中させ、書き込み電流を低減させることができるとともに、アライメントずれがなく、TMR素子10Bの書き込み特性のばらつきも少なくなる。
また、書き込み用ワード線14を貫通して読み出し用接続プラグ41を形成しているので、TMR素子10Bの直下に読み出し配線40を設けることができ、メモリセルを小型化して、メモリセルの集積度を向上させることができる。
実施の形態4
図15は、実施の形態4に基づくMRAMの要部断面図である。本実施の形態に基づくMRAMが実施の形態1に基づくMRAMと異なる点は、書き込み用ワード線14の底部に設けられる高透磁率層61と書き込み用ワード線14の側部に設けられる高透磁率層68とが接合して設けられていることである。このようにすると、高透磁率層61の中を伝わる磁束と高透磁率層68の中を伝わる磁束とが切れ目なく磁気的に接続されるため、高透磁率層による磁束集中効果がより高められる。
図15は、実施の形態4に基づくMRAMの要部断面図である。本実施の形態に基づくMRAMが実施の形態1に基づくMRAMと異なる点は、書き込み用ワード線14の底部に設けられる高透磁率層61と書き込み用ワード線14の側部に設けられる高透磁率層68とが接合して設けられていることである。このようにすると、高透磁率層61の中を伝わる磁束と高透磁率層68の中を伝わる磁束とが切れ目なく磁気的に接続されるため、高透磁率層による磁束集中効果がより高められる。
上記の構造を実現するために、本実施の形態では、絶縁体層67はTMR素子10Bの側面にのみ設け、書き込み用ワード線14の側面には設けない。そして、高透磁率層68を高透磁率層61の側部から磁化自由層2の側部の位置まで連続的に形成する。
図16と図17は、図15に示したMRAMを作製する工程を示す断面図である。これらは、実施の形態1の図6(g)と同じ状態から始まり、図7(j)に相当する状態を形成するところまでを示している。この後の工程は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
まず、図16(a)に示すように、読み出し用接続プラグ41が形成された高透磁率層61、書き込み用ワード線14および絶縁層62が積層された多層膜の上に、TMR素子10Bを構成するバリア層8、反強磁性体層5、磁化固定層4、トンネルバリア層3、磁化自由層2、そしてトップコート層1の各層を順次PVD法で堆積させる。次に、CVD法によりタングステンまたは窒化チタンからなるビット線接続層9を50nmの厚さに堆積させる。さらに、プラズマCVD法により窒化シリコン膜93を50nmの厚さに堆積させる。
次に、図16(b)に示すように、図示を省略したフォトレジストをマスクにして多層膜93、9、1〜5および8をエッチングし、窒化シリコン膜93およびTMR素子10Bの各層を、絶縁体層67の厚さ分だけ書き込み用ワード線14より幅狭のラインパターンにパターニングする。
次に、図16(c)に示すように、プラズマCVD法により全面に窒化シリコン膜を30nmの厚さに堆積させた後、エッチバックによって多層膜の側面に絶縁体層67を形成する。
次に、図17(d)に示すように、窒化シリコン膜93と絶縁体層67とをマスクにして、絶縁層62、書き込み用ワード線14および高透磁率層61をエッチングして、書き込み用ワード線14の形状にパターニングする。この結果、磁化自由層2と書き込み用ワード線14とがほとんど位置ずれなく位置整合的に形成され、TMR素子10Bの書き込み特性のばらつきが生じにくくなる。
次に、図17(e)に示すように、ニッケル鉄合金NiFeまたはコバルト鉄合金CoFe等の高透磁率材料をスパッタ法によって堆積させた後、エッチバックにより側面にのみ高透磁率材料を残し、高透磁率層68を形成する。この際、高透磁率層68の先端部が磁化自由層2の位置にくるようにエッチング量を調整する。この後、フォトリソグラフィ技術とドライエッチングにより、窒化シリコン膜93とTMR素子10Bを構成するビット線接続層9、トップコート層1、磁化自由層2、トンネルバリア層3、磁化固定層4、反強磁性体層5およびバリア層8の各層のみをTMR素子の形状にパターニングしてTMR素子10Bを形成する。
次に、図17(f)に示すように、プラズマCVD法によって酸化シリコンからなる層間絶縁膜53を100nmの厚さに堆積した後、CMPにより表面を平坦化して、タングステンまたは窒化チタンからなるビット線接続層9を露出させる。
以上のように、本実施の形態によれば、書き込み用ワード線14の底部に設けられる高透磁率層61と側部に設けられる高透磁率層68とが接合して設けられているので、高透磁率層による磁束集中効果がより高められる。その他は本質的に実施の形態1と同等であるから、実施の形態1と同等の作用効果が得られるのは言うまでもない。
即ち、TMR素子10Bの磁化自由層2と、書き込み用ワード線14および高透磁率層68とが自己整合的に位置決めして形成され、さらに書き込み用ワード線14の底部にも高透磁率層61が配設されているため、TMR素子10Bの磁化自由層2に効率よく磁束を集中させ、書き込み電流を低減させることができるとともに、アライメントずれがなく、TMR素子10Bの書き込み特性のばらつきも少なくなる。
また、書き込み用ワード線14を貫通して読み出し用接続プラグ41を形成しているので、TMR素子10Bの直下に読み出し配線40を設けることができ、メモリセルを小型化して、メモリセルの集積度を向上させることができる。
実施の形態5
図18は、実施の形態5に基づくMRAMの要部断面図である。本実施の形態に基づくMRAMは、実施の形態3のMRAMと実施の形態4のMRAMとの特徴をあわせもつようにしたもので、高透磁率層66の先端部が湾曲して磁化自由層2の側に突き出た凸形に形成されていること、および、書き込み用ワード線14の底部に設けられる高透磁率層61と側部に設けられる高透磁率層68とが接合して設けられていることにより、高透磁率層による磁束集中効果がより高められる。
図18は、実施の形態5に基づくMRAMの要部断面図である。本実施の形態に基づくMRAMは、実施の形態3のMRAMと実施の形態4のMRAMとの特徴をあわせもつようにしたもので、高透磁率層66の先端部が湾曲して磁化自由層2の側に突き出た凸形に形成されていること、および、書き込み用ワード線14の底部に設けられる高透磁率層61と側部に設けられる高透磁率層68とが接合して設けられていることにより、高透磁率層による磁束集中効果がより高められる。
上記の構造を実現するために、本実施の形態では、絶縁体層67はTMR素子10Bの側面にのみ絶縁体層67と絶縁体層69とを二重に設け、高透磁率層70を高透磁率層61の側部から磁化自由層2の側部の位置まで連続的に形成する。
図19と図20は、図18に示したMRAMを作製する工程を示す断面図である。これらは、実施の形態4の図16(c)と同じ状態から始まり、図17(f)に相当する状態を形成するところまでを示している。この後の工程は、実施の形態1の図7(j)の後の工程と同様であるので、説明を省略する。
まず、図19(a)に示すように、読み出し用接続プラグ41が形成された高透磁率層61、書き込み用ワード線14および絶縁層62が積層された多層膜の上に形成され、絶縁体層67と絶縁体層69との厚さ分だけ書き込み用ワード線14より幅狭のラインパターンにパターニングされた、窒化シリコン膜93、ビット線接続層9、トップコート層1、磁化自由層2、トンネルバリア層3、磁化固定層4、反強磁性体層5およびバリア層8からなる多層膜の側面に、プラズマCVD法により窒化シリコン膜の堆積とその後のエッチバックによって絶縁体層67を形成する。
次に、図19(b)に示すように、窒化シリコン膜93と絶縁体層67とをマスクにして、絶縁層62をエッチングする。
次に、図19(c)に示すように、酸化アルミニウム膜を全面にスパッタ法によって堆積させた後、エッチバックによって絶縁体層67に絶縁体層69を積層する。この際、絶縁体層65の上端部がTMR素子10Bの磁化自由層2の位置より下になるようにエッチング量を調整する。
次に、図20(d)に示すように、窒化シリコン膜93と、絶縁体層67および絶縁体層69をマスクにして、絶縁層62をエッチングする。書き込み用ワード線14および高透磁率層61をエッチングして、書き込み用ワード線14の形状にパターニングする。この結果、磁化自由層2と書き込み用ワード線14とがほとんど位置ずれなく位置整合的に形成され、TMR素子10Bの書き込み特性のばらつきが生じにくくなる。
次に、図20(e)に示すように、ニッケル鉄合金NiFeまたはコバルト鉄合金CoFe等の高透磁率材料をスパッタ法によって堆積させた後、エッチバックにより側面にのみ高透磁率材料を残し、高透磁率層70を形成する。この際、高透磁率層70の先端部が磁化自由層2の位置にくるようにエッチング量を調整する。この後、フォトリソグラフィ技術とドライエッチングにより、窒化シリコン膜93とTMR素子10Bを構成するビット線接続層9、トップコート層1、磁化自由層2、トンネルバリア層3、磁化固定層4、反強磁性体層5およびバリア層8の各層のみをTMR素子の形状にパターニングしてTMR素子10Bを形成する。
次に、図20(f)に示すように、プラズマCVD法によって酸化シリコンからなる層間絶縁膜53を100nmの厚さに堆積した後、CMPにより表面を平坦化して、タングステンまたは窒化チタンからなるビット線接続層9を露出させる。
以上のように、本実施の形態に基づくMRAMは、実施の形態3と実施の形態4の特徴を兼ね備えたMRAMであり、実施の形態3、実施の形態4および実施の形態1と同様の作用効果が得られるのは言うまでもない。
実施の形態6
図21は、実施の形態6に基づくMRAMの要部平面図(a)と、平面図(a)に21A−21A線で示した位置における要部断面図(b)とである。実施の形態1〜5では、書き込み用ワード線14を貫通する読み出し用接続プラグ41を設ける例を示したが、図29に示したように、引き出し配線106を設け、TMR素子の直下からオフセットした位置に読み出し配線140を設けるMRAMにも、本発明を適用することができる。実施の形態6はそのような例である。
図21は、実施の形態6に基づくMRAMの要部平面図(a)と、平面図(a)に21A−21A線で示した位置における要部断面図(b)とである。実施の形態1〜5では、書き込み用ワード線14を貫通する読み出し用接続プラグ41を設ける例を示したが、図29に示したように、引き出し配線106を設け、TMR素子の直下からオフセットした位置に読み出し配線140を設けるMRAMにも、本発明を適用することができる。実施の形態6はそのような例である。
図21に示したMRAMでは、図32に示した従来例と同様、TMR素子10Cに対向する面以外の面において、書き込み用ワード線14が高透磁率層161で被覆されている。しかし、更に、前記第2の高透磁率層である高透磁率層164が、絶縁体層162(更には引き出し配線106)の上方において、TMR素子10Cの側面に形成された絶縁体層163に積層され、磁化固定層4の位置から磁化自由層2の位置まで設けられている。
以下、各部についてより詳しく説明する。但し、TMR素子10Cの基本構造は、前記第2の高透磁率層である高透磁率層164を設けたこと以外は、図25に示した従来のTMR素子10Aとほぼ同じであり、MRAMの配線構造も図29および図32に示した従来例と同じであるので、要点のみを記す。
メモリセルの上部には、前記第4配線である書き込み用ビット線13と、前記第5配線である読み出し用ビット線15とが、層間絶縁膜54を間に挟んで設けられて前記第1配線を構成し、読み出し用ビット線15に接してその下に、TMR素子10Cと前記第2配線である書き込み用ワード線14などが配置されている。
TMR素子10Cは、磁化の方向が比較的容易に反転する磁化自由層(記憶層)2と、磁化の方向が固定されている磁化固定層4とを含んでいる。磁化固定層4は反強磁性体層5に接して形成されており、両層間に働く交換相互作用によって、磁化固定層4は強い一方向の磁気異方性を持つ。磁化自由層(記憶層)2は、磁化固定層4の磁化方向と平行な磁化容易軸を有し、磁化固定層4の磁化方向に対し平行または反平行に磁化された2つの状態間で比較的容易に磁化方向を反転させ得るように構成されており、この2つの状態を情報の“0”と“1”に対応させて情報を記憶する。
磁化自由層(記憶層)2と磁化固定層4との間には、アルミニウム、マグネシウム、シリコン等の酸化物もしくは窒化物等からなる絶縁体によるトンネルバリア層3が形成されており、磁化自由層(記憶層)2と磁化固定層4との磁気的結合を切るとともに、磁化自由層(記憶層)2の磁化方向に応じたトンネル電流を流す役割を担っている。
トップコート層1は、TMR素子10Cと、TMR素子10Cに接続される配線との相互拡散防止や、接触抵抗低減および磁化自由層(記憶層)2の酸化防止という役割があり、通常は、銅、タンタル、窒化チタンおよびチタン等の材料が使用できる。
以上に加えて、TMR素子10Cでは、トップコート層1の上部にビット線接続層9が設けられている。ビット線接続層9は、読み出し用ビット線15と電気的に接続するための導電体層で、通常、タングステンまたは窒化チタンが用いられる。
また、反強磁性体層5の下部にはバリア層8が設けられている。バリア層8には、TMR素子10Cと、TMR素子10Cに接続される配線との相互拡散を防止する役割や、接触抵抗を低減させる役割があり、通常は、銅、タンタル、窒化チタンおよびチタン等の材料が使用できる。
反強磁性体層5は、図25に示した引き出し電極6を兼ねており、さらに、その一部は、バリア層8とともに引き出し配線106を形成するようにパターニングされている。引き出し配線106の下部の、TMR素子10Cの直下からオフセットした位置には、読み出し用ランディングパッド142および144や、読み出し用接続プラグ143が設けられ、TMR素子10Cの読み出し電流を、図示省略した読み出し用電界効果トランジスタのドレイン電極33に伝達する読み出し配線140を構成している。
バリア層8の下部の、TMR素子10Cの直下の位置には、絶縁層162を介して書き込み用ワード線14が対向配置されている。絶縁層162は、例えば、厚さ50nmの酸化アルミニウム(アルミナ)膜である。書き込み用ワード線14は、例えば銅からなり、TMR素子10Cに対向する面以外の面に高透磁率層161が設けられている。高透磁率層161は、例えば、ニッケル鉄合金、コバルト鉄合金やアモルファス磁性体材料などの高透磁率材料からなる。
さらに、高透磁率層164が、前記積層体である磁化自由層(記憶層)2とトンネルバリア層3と磁化固定層4との積層体の側面に、絶縁体層163を介して磁化固定層4の位置から磁化自由層2の位置まで設けられている。絶縁体層163は、例えば、酸化アルミニウムや酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁体からなる。高透磁率層164は、絶縁体層163に積層して形成され、高透磁率層161と同様、例えば、ニッケル鉄合金、コバルト鉄合金やアモルファス磁性体材料などの高透磁率材料からなる。
高透磁率層164と高透磁率層161とは連続して形成されていないものの、磁気的には連結しており、全体として書き込み用ワード線14をコの字形に包み込む高透磁率層を構成する。このため、書き込み用ワード線14を流れる電流によって形成される磁束は、主として、高透磁率層164と高透磁率層161とによって覆われた領域ではその内部を伝わり、高透磁率層の両端部間で空間を伝わる閉ループを形成し、空間を伝わる磁束は、全体としてコの字形をなすように設けられた高透磁率層の先端部とその間に集中する。この場合、上記高透磁率層の先端部に相当するのは磁化自由層(記憶層)2の位置に設けられた高透磁率層164の端部であるから、実施の形態1と同様の磁束集中効果が磁化自由層(記憶層)2に対し有効に作用する。
この際、実施の形態1において先述したように、TMR素子10Cの磁化自由層2における磁束分布は、主として、高透磁率層164の先端部の位置と形状によって決まる。上記のように、絶縁体層163を介して磁化自由層2の側面に高透磁率層164を形成すると、実施の形態1と同様、高透磁率層164の先端部が磁化自由層2の外周から絶縁体層163の厚み分だけ離れた位置に位置整合的に形成されるため、磁化自由層2における磁束分布のばらつきが小さくなる。このため、書き込み用ワード線14が磁化自由層2に対して位置ずれして形成されたとしても、その影響は小さくなり、書き込み用ワード線14の位置ずれによるTMR素子10Cの書き込み特性のばらつきが生じにくくなる利点もある。
なお、TMR素子10Cの平面形状は楕円形であるのがよい。これは、長軸方向端部が滑らかな曲線形状を有する形状とすることで、末端の不連続領域に高磁場や磁極(magnetic pole)が形成されるのを防止して、スムーズな磁化の反転を可能にする磁気メモリ素子からなる磁気メモリ装置を提供することができる。
次に、図21に示したMRAMの作製工程のフローを、図22〜24の要部断面図によって説明する。但し、下部構造を形成する工程は実施の形態1と同様であるから、これについては省略し、既に読み出し用ランディングパッド144の上に読み出し用接続プラグ143が形成されているものとする。また、図22〜24は、簡略化のため層間絶縁膜50より上部のみを示し、TMR素子10C付近の要部の断面のみを示す。
まず、読み出し用接続プラグ143の上部にCVD法により層間絶縁膜として酸化シリコン膜を堆積させた後、フォトリソグラフィとドライエッチングによりパターニングし、配線溝と開口部とを形成する。次に、表面全体にバリア層であるタンタルまたは窒化タンタルの薄膜(図示省略)と高透磁率層161とをスパッタ法により積層して形成する。高透磁率層161の材料としては、ニッケル鉄合金、コバルト鉄合金やアモルファス磁性体材料などの高透磁率材料を用いる。次に、全面に配線材料層である銅層をメッキ法により成膜し、配線溝と開口部に銅を埋め込む。銅層はCVD法で形成してもよい。続いて、CMP法により、初めに銅層を研磨し、次に磁性体層161およびバリア層を研磨して、表面を平坦化するとともに、配線溝と接続孔以外に付着した銅層、高透磁率層161およびバリア層を除去し、図22(a)に示すように、表面以外の面が高透磁率層161で被覆され、クラッド構造を有する書き込み用ワード線14と読み出し用ランディングパッド142を得る。
次に、図22(b)に示すように、全面にスパッタ法によって酸化アルミニウム(アルミナ)からなる絶縁層162を例えば50nmの厚さに堆積させた後、フォトリソグラフィ技術とドライエッチングによりパターニングして、読み出し用接続孔145を形成する。
次に、図22(c)に示すように、TMR素子10Cを構成するバリア層8、反強磁性体層5、磁化固定層4、トンネルバリア層3、磁化自由層2、そしてトップコート層1を、順次PVD法で堆積させる。ここでバリア層8としては、窒化チタン、タンタルまたは窒化タンタルが用いられる。反強磁性体層5としては、例えば、鉄−マンガン、ニッケル−マンガン、白金−マンガン、イリジウム−マンガン等の合金を用いる。磁化固定層4としては、ニッケル、鉄、及び/又はコバルトの合金材料を用いる。磁化固定層4は、反強磁性体層5との交換結合によって磁化の方向がピニング(pinning:固定)される。トンネルバリア層3としては、通常、酸化アルミニウム(アルミナ)が用いられる。このアルミナ膜は、0.5〜5nmと非常に薄いため、ALD法、またはアルミニウムをスパッタリングによって堆積させた後、プラズマ酸化するといった方法で形成する。磁化自由層2としても、磁化固定層4と同様、ニッケル、鉄、及び/又はコバルトの合金材料を用いる。この層は、外部磁場の印加によって、磁化方向を磁化固定層4の磁化方向に対して平行または反平行にすることができる。トップコート層1は、バリア層8と同一材料で形成する。次に、CVD法によりタングステンまたは窒化チタンからなるビット線接続層9を50nmの厚さに堆積させる。さらに、CVD法により窒化シリコン膜101を堆積させる。
次に、図23(d)に示すように、図示を省略したフォトレジストをマスクにして、多層膜101、9および1〜4をエッチングして、TMR素子10Cの楕円形状にパターニングする。
次に、図23(e)に示すように、酸化アルミニウム膜を全面にスパッタ法によって堆積させた後、エッチバックによって上記多層膜101、9および1〜4の側面に絶縁体層163を形成する。絶縁体層163の材料として、酸化アルミニウムの代わりに、CVD法やALD法で形成した酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコン等の絶縁体を用いてもよい。
次に、図23(f)に示すように、ニッケル鉄合金NiFeまたはコバルト鉄合金CoFe等の高透磁率材料をスパッタ法によって堆積させた後、エッチバックにより側面にのみ高透磁率材料を残し、高透磁率層164を形成する。この際、高透磁率層164の先端部が磁化自由層2の位置にくるようにエッチング量を調整する。
次に、図24(g)に示すように、フォトリソグラフィ技術によって引き出し配線106の形状にパターニングされたフォトレジスト102を形成し、これをマスクにしてエッチングして、反強磁性体層5、バリア層8および絶縁層162を引き出し配線106の形状にパターニングする。この際、同じマスクを用いてエッチングして、絶縁体層163および高透磁率層164の平面形状を、図21(a)に示した形状にパターニングする。あるいは、引き出し配線106の形成とは別にマスクを設け、これを用いたエッチングにより、絶縁体層163および高透磁率層164の平面形状を所望の形状にパターニングしてもよい。
次に、図24(h)に示すように、プラズマCVD法によって酸化シリコンからなる層間絶縁膜56を堆積させた後、CMPにより表面を平坦化して、タングステンまたは窒化チタンからなるビット線接続層9を露出させる。
図示は省略するが、この後、標準的な配線形成技術によって、読み出し用ビット線15を形成する。読み出し用ビット線15の材料としては、アルミニウム合金、銅または窒化チタンを用いることができる。次に、層間絶縁膜54を堆積させた後、標準的な配線形成技術によって、書き込み用ビット線13や周辺回路の配線やボンディングパッド領域を形成する。更に、全面にプラズCVD法により窒化シリコン膜からなる絶縁膜を堆積させ、ボンディングパッド部を開口して、MRAM製造のウェーハプロセス工程を完了させる。
図示は省略するが、実施の形態3と同様にして、高透磁率層164を、先端部が湾曲して磁化自由層2の側に凸形に突き出た形状に形成してもよい。このようにすると、高透磁率層164の中を伝わってきた磁束がスムーズに効率よく磁化自由層2に向かうようにすることができ、磁束集中効果が高められる。
以上に説明したように、本実施の形態に基づくMRAMの構造と製造方法によれば、TMR素子10Cの磁化自由層2と高透磁率層164とが自己整合的に位置決めして形成され、さらに書き込み用ワード線14にも高透磁率層161が配設されているため、TMR素子10Cの磁化自由層2に効率よく磁束を集中させ、書き込み電流を低減させることができるとともに、アライメントずれを減らし、TMR素子10Cの書き込み特性のばらつきを抑えることができる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。本発明は、高透磁率層が、書き込み用ワード線14の周囲のうち、TMR素子に対向する対向面以外の面の少なくとも一部に、対向面の位置よりもTMR素子側に、TMR素子に対して直接または間接に設けられている以外には、その位置や形状は問わない。
MRAMは、高速かつ不揮発性の大容量メモリとしてユビキタス時代に必要不可欠なものであると考えられており、あらゆる電子装置、とりわけ、高速化、低消費電力化、高集積化などの、一層の高性能化が要求されている情報通信機器、特に携帯端末などの個人用小型機器に好適である。
1…トップコート層、2…磁化自由層(記憶層)、3…トンネルバリア層、
4…磁化固定層、5…反強磁性体層、6…引き出し電極層、7…支持基板、
8…バリア層、9…ビット線接続層、10A、10B、10C…TMR素子、
11…ビット線、13…書き込み用ビット線、14…書き込み用ワード線、
15…読み出し用ビット線、16…読み出し用ワード線(ゲート電極)、
17…センス線、18…読み出し用電界効果トランジスタ(選択用トランジスタ)、
19…書き込み用ビット線電流駆動回路、20…書き込み用ワード線電流駆動回路、
21…読み出し用ビット線駆動回路、22…読み出し用ワード線駆動回路、
23…センスアンプ、25、26、27…接続孔、30…シリコン基板、
31…ウエル領域、32…酸化シリコン膜(例えばSTI)、33…ドレイン電極、
34…ドレイン領域、35…ゲート絶縁膜、36…ソース領域、37…ソース電極、
40…読み出し配線、41、44…読み出し用接続プラグ、42…絶縁性側壁、
43、45…読み出し用ランディングパッド、46…絶縁性側壁、
50〜54…層間絶縁膜、55…絶縁膜、56…層間絶縁膜、60…複合体、
61…高透磁率層、62…絶縁層、63…絶縁体層、64…高透磁率層、
65…絶縁体層、66…高透磁率層、67…絶縁体層、68…高透磁率層、
81、83…フォトレジスト、82、84…開口部、91…フォトレジスト、
92…開口部、93…窒化シリコン膜、101…窒化シリコン膜、
102…フォトレジスト、106…引き出し配線、140…読み出し配線、
141、143…読み出し用接続プラグ、
142、144…読み出し用ランディングパッド、145…読み出し用接続孔、
161…高透磁率層、162…絶縁層、163…絶縁体層、164…高透磁率層
4…磁化固定層、5…反強磁性体層、6…引き出し電極層、7…支持基板、
8…バリア層、9…ビット線接続層、10A、10B、10C…TMR素子、
11…ビット線、13…書き込み用ビット線、14…書き込み用ワード線、
15…読み出し用ビット線、16…読み出し用ワード線(ゲート電極)、
17…センス線、18…読み出し用電界効果トランジスタ(選択用トランジスタ)、
19…書き込み用ビット線電流駆動回路、20…書き込み用ワード線電流駆動回路、
21…読み出し用ビット線駆動回路、22…読み出し用ワード線駆動回路、
23…センスアンプ、25、26、27…接続孔、30…シリコン基板、
31…ウエル領域、32…酸化シリコン膜(例えばSTI)、33…ドレイン電極、
34…ドレイン領域、35…ゲート絶縁膜、36…ソース領域、37…ソース電極、
40…読み出し配線、41、44…読み出し用接続プラグ、42…絶縁性側壁、
43、45…読み出し用ランディングパッド、46…絶縁性側壁、
50〜54…層間絶縁膜、55…絶縁膜、56…層間絶縁膜、60…複合体、
61…高透磁率層、62…絶縁層、63…絶縁体層、64…高透磁率層、
65…絶縁体層、66…高透磁率層、67…絶縁体層、68…高透磁率層、
81、83…フォトレジスト、82、84…開口部、91…フォトレジスト、
92…開口部、93…窒化シリコン膜、101…窒化シリコン膜、
102…フォトレジスト、106…引き出し配線、140…読み出し配線、
141、143…読み出し用接続プラグ、
142、144…読み出し用ランディングパッド、145…読み出し用接続孔、
161…高透磁率層、162…絶縁層、163…絶縁体層、164…高透磁率層
Claims (31)
- 磁化方向が固定された磁化固定層と、トンネルバリア層と、磁化方向の変化が可能な磁化自由層とがこの順に積層された積層体からなるトンネル磁気抵抗効果素子によって磁気メモリ素子が構成され、前記磁化自由層の側に配置された第1配線と、前記磁化固定層の側で絶縁層を介して前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向配置された第2配線とを用いて前記トンネル磁気抵抗効果素子へ書き込みを行うように構成され、前記第2配線の周囲のうち、前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向する対向面以外の面の少なくとも一部に高透磁率層が設けられている磁気メモリ装置であって、前記高透磁率層が前記対向面の位置よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側に延設されている、磁気メモリ装置。
- 前記高透磁率層が前記絶縁層よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側へ突設されている、請求項1に記載した磁気メモリ装置。
- 前記高透磁率層が絶縁体層を介して前記積層体の側面に設けられ、前記磁化自由層の位置まで延設されている、請求項1に記載した磁気メモリ装置。
- 前記絶縁体層が前記積層体の前記側面から前記第2配線の側面にまで連設されている、請求項3に記載した磁気メモリ装置。
- 前記絶縁体層が前記第2配線の側面には存在せず、露出したこの側面にも前記高透磁率層が設けられている、請求項3に記載した磁気メモリ装置。
- 前記高透磁率層が前記側面と前記第2配線の底面とに亘って設けられている、請求項4又は5に記載した磁気メモリ装置。
- 前記高透磁率層の先端部が前記磁化自由層の側に湾曲して形成されている、請求項3に記載した磁気メモリ装置。
- 前記第2配線と前記積層体とが、前記第2配線の幅方向においてほぼ同一パターンに形成され、このパターンの少なくとも側面に前記高透磁率層が設けられている、請求項3に記載した磁気メモリ装置。
- 前記トンネル磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の側で、前記トンネル磁気抵抗効果素子に電気的に接続されている読み出し用の第3配線が、前記第2配線のエリア内の少なくとも一部を貫通して、この第2配線とは電気的に絶縁された状態で形成された接続孔内に設けられている、請求項3に記載した磁気メモリ装置。
- 前記接続孔の側壁に絶縁層が形成され、この絶縁層の内側に前記第3配線が埋設されている、請求項9に記載した磁気メモリ装置。
- 前記接続孔が前記第2配線のエリア内を貫通している、請求項9に記載した磁気メモリ装置。
- 磁化方向が固定された磁化固定層と、トンネルバリア層と、磁化方向の変化が可能な磁化自由層とがこの順に積層された積層体からなるトンネル磁気抵抗効果素子によって磁気メモリ素子が構成され、前記磁化自由層の側に配置された第1配線と、前記磁化固定層の側で絶縁層を介して前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向配置された第2配線とを用いて前記トンネル磁気抵抗効果素子へ書き込みを行うように構成され、前記第2配線の周囲のうち、前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向する対向面以外の面の少なくとも一部に高透磁率層が設けられている磁気メモリ装置であって、更に第2の高透磁率層が前記対向面の位置よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側に設けられ、前記高透磁率層と前記第2の高透磁率層とが前記第2配線の周囲に磁束の閉ループを形成する、磁気メモリ装置。
- 前記第2の高透磁率層が絶縁体層を介して前記積層体の側面に、少なくとも前記磁化固定層の位置から前記磁化自由層の位置まで設けられている、請求項12に記載した磁気メモリ装置。
- 前記高透磁率層の先端部が前記磁化自由層の側に湾曲して形成されている、請求項13に記載した磁気メモリ装置。
- 前記トンネル磁気抵抗効果素子の前記磁化自由層の側で、前記第1配線が前記トンネル磁気抵抗効果素子とは電気的に絶縁された書き込み用の第4配線と、前記トンネル磁気抵抗効果素子に電気的に接続された読み出し用の第5配線とからなる、請求項1又は12に記載した磁気メモリ装置。
- 前記第1配線が、前記読み出し用の配線と書き込み用の配線とを兼ねている、請求項1又は12に記載した磁気メモリ装置。
- 前記第1配線と前記第2配線とが交差して配置され、その交差点に前記トンネル磁気抵抗効果素子が配置されている、請求項1又は12に記載した磁気メモリ装置。
- 前記磁化固定層と前記磁化自由層との間に前記トンネルバリア層が挟持され、前記第1又は前記第4配線と前記第2配線とにそれぞれ電流を流すことによって誘起される磁界で前記磁化自由層を所定方向に磁化して情報を書き込み、この書き込み情報を前記トンネルバリア層を介してのトンネル磁気抵抗効果によって読み出すように構成された、請求項1、12及び15のいずれか1項に記載した磁気メモリ装置。
- 請求項1に記載した磁気メモリ装置の製造方法であって、前記第2配線を形成する工程と、前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向する対向面以外の面の少なくとも一部において前記第2配線の周囲に高透磁率層を設け、この際、前記高透磁率層を前記対向面の位置よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側に延設する工程を有する、磁気メモリ装置の製造方法。
- 前記高透磁率層を前記絶縁層よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側へ突出させて設ける、請求項19に記載した磁気メモリ装置の製造方法。
- 前記積層体の側面に絶縁体層を形成する工程と、前記高透磁率層をこの絶縁体層に積層して前記磁化自由層の位置まで設ける工程を有する、請求項19に記載した磁気メモリ装置の製造方法。
- 前記絶縁体層を前記積層体の前記側面から前記第2配線の側面にまで形成する、請求項21に記載した磁気メモリ装置の製造方法。
- 前記絶縁体層を前記第2配線の側面には形成せず、前記高透磁率層を前記絶縁体層から前記第2配線の露出した側面にまで連続して設ける、請求項21に記載した磁気メモリ装置の製造方法。
- 前記高透磁率層を前記側面と前記第2配線の底面とに亘って設ける、請求項22又は23に記載した磁気メモリ装置の製造方法。
- 前記積層体の側面を前記磁化自由層の位置まで被覆する第1絶縁体層を形成する工程と、前記磁化自由層の位置を被覆しない第2絶縁体層を前記第1絶縁体層に積層する工程とを有し、前記第1及び前記第2絶縁体層に積層して、先端部が前記磁化自由層の側に湾曲した前記高透磁率層を形成する、請求項21に記載した磁気メモリ装置の製造方法。
- 前記第2配線の幅方向における前記第2配線と前記積層体とをほぼ同一パターンに自己整合的に形成する工程と、このパターンの少なくとも側面に前記高透磁率層を位置整合的に形成する工程とを有する、請求項21に記載した磁気メモリ装置の製造方法。
- 前記積層体の側面に形成された前記絶縁体層をマスクに用いて、前記第2配線の幅方向の形状をパターニングする、請求項26に記載した磁気メモリ装置の製造方法。
- 前記第2配線のエリア内の少なくとも一部を貫通して前記接続孔を形成する工程と、前記接続孔内に前記第2配線とは電気的に絶縁された前記第3配線を形成する工程とを経て、請求項9〜11のいずれか1項に記載した磁気メモリ装置を製造する、請求項19に記載した磁気メモリ装置の製造方法。
- 請求項12に記載した磁気メモリ装置の製造方法であって、前記第2配線を形成する工程と、前記トンネル磁気抵抗効果素子に対向する対向面以外の面の少なくとも一部において前記第2配線の周囲に前記高透磁率層を設ける工程と、前記対向面の位置よりも前記トンネル磁気抵抗効果素子側に前記第2の高透磁率層を設ける工程とを有する、磁気メモリ装置の製造方法。
- 前記積層体の側面に絶縁体層を形成する工程と、前記第2の高透磁率層をこの絶縁体層に積層して少なくとも前記磁化固定層の位置から前記磁化自由層の位置まで設ける工程を有する、請求項29に記載した磁気メモリ装置の製造方法。
- 前記積層体の側面を前記磁化自由層の位置まで被覆する第1絶縁体層を形成する工程と、前記磁化自由層の位置を被覆しない第2絶縁体層を前記第1絶縁体層に積層する工程とを有し、前記第1及び前記第2絶縁体層に積層して、先端部が前記磁化自由層の側に湾曲した前記第2の高透磁率層を形成する、請求項30に記載した磁気メモリ装置の製造方法。
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