特開平09−197833号公報
特開2000−066497号公報
従来、電子写真方式を適用した複写機、プリンタ、ファクシミリあるいはこれらの機能を兼ね備えた複合機等の画像形成装置で用いられる現像装置としては、感光体ドラム等の像担持体上に形成された静電潜像を現像剤にて可視像化するものが知られている。この種の現像装置に用いられる現像方式としては、現像剤として着色粒子であるトナーのみを用いる一成分現像方式と、現像剤として磁性体粒子と着色粒子であるトナーとを混合攪拌したものを用いる二成分現像方式とに大別される。
上記二成分現像方式の現像装置としては、画質、維持性、安定性など優れた点が多いことから、トナーを磁性キャリアに混合した現像剤を磁場によって搬送して現像する磁気ブラシ現像方法が広く用いられている。この磁気ブラシ現像方法では、トナーと磁性キャリアとの摩擦で発生した静電気力により、トナーが磁性キャリアの表面に担持されるが、このトナーは、像担持体上の静電潜像に接近すると、静電潜像担持体と現像剤担持体との間に形成される電界によって静電潜像上へ飛翔し、静電潜像を可視像化する。また、現像剤は、現像によって消費されたトナーを補充しながら反復使用される。
しかし、このような磁気ブラシ現像方式においては、トナー濃度(トナーと磁性キャリアの混合比)を一定範囲に保つ制御を行わないと、トナー濃度が上昇した場合には、トナー飛散やカブリが発生する一方、トナー濃度が低下した場合には、濃度斑や画像抜けなどが発生してしまう。したがって、安定した画像を得るためには、トナー濃度を一定に保つ必要がある。
そこで、従来の磁気ブラシ現像方式では、安定した画像を得るためにトナー濃度センサやトナー補給部材を現像装置に搭載して、トナー濃度を一定にする制御を行うように構成されている。例えば、トナー濃度センサによりトナー濃度を検知し、この検知情報に基づいてトナー濃度が低下したと判断した後、トナー補給部材によりトナー補給が行われる。
しかし、この種の磁気ブラシ現像方式にあっては、トナー濃度センサやトナー補給部材が必要不可欠であり、現像装置の大型化、高コスト化が避けられない。また、検知対象の濃度パッチを作成するなど、トナー濃度の検知システムが面倒であるという問題を有している。
このような問題を解決する先行技術としては、トナー濃度センサやトナー補給部材を用いずに、トナー濃度を一定に保つ現像装置が既に提案されている。この現像装置は、二成分現像剤を収容する現像剤収容部と、現像剤収容部と連通し且つトナーを収容するトナー収容部とを有し、現像剤担持体上の二成分現像剤量を規制部材で規制し、現像剤担持体上における二成分現像剤のトナー濃度変化によって、二成分現像剤のトナーの取り込みを自律的に制御することで、トナー濃度を調整するように構成したものである(例えば、特許文献1参照)。
この自律的なトナー濃度の制御方法は、現像剤担持体に担持搬送される現像剤移動層と、現像剤収容部内で現像剤が循環する現像剤循環層とを発生させ、現像剤収容部と連通しているトナー収容部からのトナーを取り込むというものである。つまり、現像工程において、トナーが消費されると、現像剤収容部内に収容された現像剤の嵩が減少し、減少した嵩分のトナーがトナー収容部から現像剤収容部に補給されることで、現像剤収容部内の現像剤は、トナー濃度を保つということである。
また、このような自律的にトナー濃度を調整する現像装置においては、現像剤収容部内に撹拌搬送部材を設け、この撹拌搬送部材により現像剤の撹拌不足による帯電不良を防止する現像装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、上記先行技術にあっては、いずれもトナー濃度変化に対応した現像剤の体積変化と現像剤の動きとによって、トナー濃度の制御をしているため、現像剤の体積変化や現像剤の動きを顕著にする必要がある。
このような要請下においては、通常の二成分現像方式と比較して、少ない現像剤量で且つ現像剤担持体周辺の現像剤収容部内の現像剤密度を高くする必要があるため、現像剤の循環が悪く、現像剤の動きが活発な箇所と活発でない箇所とが存在して、トナーの取り込みが均一に行われない。また、現像剤量が少ないことから現像剤中に含まれるトナーの絶対量が少ないこと、現像剤密度が高いためトナー濃度が減少しても現像剤の体積変動は緩やかでありトナーの取り込みスピードが遅いことから、トナー消費の激しい高密度画像を連続で出力する際に現像剤担持体上へのトナーの供給が十分に行われず、所望の濃度が得られない。
さらに、予め現像剤量を少なく設定しなければならないため、1つの磁性キャリアにかかるストレスが大きくなり、磁性キャリアの寿命が短くなる。つまり、ランニングコストが上昇し、また、応答性が遅いため、高密度画像の濃度を確保できないといった課題が生じてしまう。
そこで、本出願人は、上記の問題点を解決するために、図13に示されるような現像装置を既に提案している。
この特願2004−039368号公報に係る現像装置100は、図13に示されるように、二成分現像剤を磁力により担持搬送する現像剤担持体132と、現像剤担持体132に隣接して二成分現像剤を収容する現像剤収容部133と、現像剤収容部133に軸方向のほぼ全域に亘って延在するトナー補給路137を介して連通し、このトナー補給路137を通じてトナーを供給可能に収容するトナー収容部135と、現像剤収容部133に隣接し現像剤収容部133と連通して設けられる現像剤退避部134と、現像剤収容部133及び現像剤退避部134に対して現像剤担持体132の現像剤搬送方向下流側に設けられ、現像剤担持体132により担持搬送される二成分現像剤の一部を余剰現像剤としてせき止め、トナー濃度に応じて現像剤収容部又は現像剤退避部に余剰現像剤を分離する現像剤分離手段111と、現像剤分離手段111により分離された余剰現像剤を現像剤収容部133又は現像剤退避部134に導入すると共に互いを仕切る現像剤仕切部材139と、現像剤収容部133内に設けられ、現像剤を撹拌搬送する回転自在に形成された複数の現像剤撹拌搬送部材136とを備え、現像剤仕切部材139により現像剤退避部134に導入された二成分現像剤が現像剤収容部133に供給される際には、複数の現像剤撹拌搬送部材136のうち、現像剤担持体132に最近接している現像剤撹拌搬送部材とは異なる現像剤撹拌搬送部材へ供給されると共に、二成分現像剤が現像剤担持体132に供給される際には、複数の現像剤撹拌搬送部材136のうち、現像剤担持体132に最近接している現像剤撹拌搬送部材136を経て供給されるように構成し、取り込まれたトナーの安定した撹拌帯電による軸方向のトナー濃度の均一化及び画像片寄りのある画像の連続プリント後のゴースト改善を図ったものである。
ところで近年は、いわゆるオールインワンカートリッジによるメンテナンスフリー化が進み、プリンター等の画像形成装置の多くは売り切りとなり、現像装置及びこれを内蔵した画像形成装置が必ずしも適切な設置がされるとは限らなくなっている。また装置の小型化も進み、プリンター等をユーザーが余剰スペースに設置するケースが増えており、ややもすると装置が水平状態に設置されないことがある。特に現像装置がその長手方向(軸方向)に傾いた状態で設置されると、現像装置内で現像剤が軸方向に片寄る傾向が生じる。上述の現像装置の場合では、現像剤の片寄りの影響を受け自律的トナー濃度制御の収束値である飽和トナー濃度レベルが軸方向で不均一となり、プリント濃度の軸方向ムラという不具合を生じる虞があった。さらに片寄りがひどい場合には、トナー濃度の軸方向差も顕著となり端部かぶりや端部トナークラウド汚れといった不具合を生じる虞があった。飽和トナー濃度レベルが軸方向で不均一となるメカニズムは、傾斜方向上側に相当する現像装置端部で現像剤量が低下し、トナー供給口にV字状の空隙が発現し、この空隙にトナーが埋まり現像室内の現像剤フローによりトナーが取り込まれるためにトナー濃度が過剰に上昇することによって生じるものである。さらに、反対側(下側)端部では現像剤量が過剰となり分離手段による分離現像剤の流れによるトナー取り込み作用が阻害され印字に伴ったトナー消費に追従できなくなる。こうした現象は、現像剤収容部内に複数の現像剤撹拌部材を有し、現像装置の長手方向(軸方向)に現像剤を循環させる上述の構成の現像装置においては、軸方向の現像剤量差を均す効果が期待できるものの、傾斜角度が大きくなると現像装置端部では上記現象が発現する虞が生じていた。
そこで、本発明は上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、現像装置が軸方向に傾斜して配置された場合でも、軸方向のトナー濃度差の発生を抑制し、これにより画像かぶりや画像濃度ムラの少ない良質な画像を得ることができる現像装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の現像装置は、二成分現像剤を磁力により担持搬送する現像剤担持体と、現像剤担持体に隣接して二成分現像剤を収容する現像剤収容部と、現像剤収容部を介して現像剤担持体と連通して設けられトナーを供給可能に収容するトナー収容部と、現像剤収容部に隣接し現像剤収容部と連通する現像剤退避部と、現像剤収容部及び現像剤退避部に対して現像剤担持体の現像剤搬送方向下流側に設けられ、現像剤担持体により担持搬送される二成分現像剤の一部を余剰現像剤としてせき止め、トナー濃度に応じて現像剤収容部又は現像剤退避部に余剰現像剤を分離する現像剤分離手段と、現像剤収容部内に設けられ、現像剤を撹拌搬送する複数の現像剤撹拌搬送部材とを有し、現像剤収容部のトナー濃度に応じて、現像剤退避部に導入された二成分現像剤がトナー収容部から補給されたトナーを取り込みながら現像剤収容部に流入する現像装置において、前記現像剤収容部とトナー収容部の軸方向端部は、両者における二成分現像剤の流通を防止するように互いに遮蔽されていると共に、前記現像剤退避部に分離された二成分現像剤は、前記トナー収容部の軸方向の一部領域に設けられ、現像剤収容部と連通しているトナー供給路を介して前記現像剤収容部に供給されることを特徴とする。
このようにトナー濃度を所定の値に保つように自律的に制御する現像装置において、現像装置が軸方向(長手方向)に沿って傾きを持って設置されると、現像剤収容部内の二成分現像剤には、重力の影響によって、現像装置の軸方向の一端部側に沿った偏りが生じる。そして、この状態で、トナー収容部からトナーが現像剤収容部へ供給されると、現像剤収容部内の二成分現像剤のトナー濃度が、現像装置の軸方向で不均一となる。
また、現像装置の傾きに沿った低い部分の現像剤量が多くなるため、現像剤収容部側からトナー収容部側への現像剤の逆流が発生すると共に、反対側(傾きに沿った高い部分)の現像剤量がさらに減少し、この部分に過剰なトナーが流入することによって、軸方向におけるトナー濃度の不均一化が一層助長される。
従って、現像装置が軸方向に沿って傾斜した状態で配置されると、現像剤収容部内の二成分現像剤のトナー濃度が、現像剤量の偏りに伴って現像装置の軸方向で不均一となり、トナー濃度が高い部分では、画像上にかぶりが生じたり、文字の太りや文字の散りなどが発生し、トナー濃度が低い部分では、濃度斑や画像抜けなどが発生するという虞が生じる。
そこで、上述のように構成した本発明に係る現像装置においては、現像剤担持体と、現像剤収容部と、トナー収容部と、現像剤退避部と、現像剤分離手段と、複数の現像剤撹拌搬送部材とを有し、現像剤収容部とトナー収容部の軸方向端部は、両者における二成分現像剤の流通を防止するように互いに遮蔽されていると共に、現像剤退避部に分離された二成分現像剤は、トナー収容部の軸方向の一部領域に設けられ、現像剤収容部と連通しているトナー供給路を介して前記現像剤収容部に供給されるように構成されているので、現像装置が軸方向に傾斜して配置された場合でも、軸方向端部においては現像剤収容部とトナー収容部とが遮蔽されていることにより傾斜配置に伴う現像剤収容部側からトナー収容部側への現像剤の逆流や、トナー収容部側から現像剤収容部側への過剰なトナーの流入を防止すると共に、軸方向の一部領域に設けられたトナー供給路により、傾斜に伴うトナー供給路の軸方向両端部における現像剤の高低差が低減される。これにより、軸方向のトナー濃度差の発生を抑制し、画像かぶりや画像濃度ムラの少ない良質な画像が得られる現像装置を提供することができる。
ここで、軸方向とは、現像剤担持体の回転軸方向に沿った方向をいうものとする。
また、前記現像剤分離手段により分離された前記余剰現像剤を現像剤収容部又は現像剤退避部に導入すると共に互いを仕切る現像剤仕切部材をさらに備え、この現像剤仕切部材の下端の軸方向中央部近傍には、前記トナー供給路に連通するトナー供給口が形成されていると共に、前記仕切部材の表面には、前記現像剤退避部に導入された二成分現像剤が、該トナー供給口に集約されるようなガイド傾斜面が形成されていてもよい。
この場合は、余剰現像剤を現像剤収容部又は現像剤退避部に導入すると共に互いを仕切る現像剤仕切部材をさらに備え、この現像剤仕切部材の下端の軸方向中央部近傍には、トナー供給路に連通するトナー供給口が形成されていると共に、仕切部材の表面には、現像剤退避部に導入された二成分現像剤が、該トナー供給口に集約されるようなガイド傾斜面が形成されているので、トナーを取り込むための開口部を絞ったことによる二成分現像剤の取り込み性能の低下を抑制することができる。
また、前記現像剤分離手段により分離された前記余剰現像剤を現像剤収容部又は現像剤退避部に導入すると共に互いを仕切る現像剤仕切部材をさらに備え、この現像剤仕切部材の下端の軸方向中央部近傍には、現像剤退避部に導入された二成分現像剤が、前記トナー供給路への流入を可能とするトナー供給口が形成されていると共に、該仕切部材の軸方向の幅は、該トナー供給口の軸方向の幅と略同等となるように形成されていてもよい。
この場合は、現像剤仕切部材の下端の軸方向中央部近傍には、現像剤退避部に導入された二成分現像剤が、トナー供給路への流入を可能とするトナー供給口が形成されていると共に、この仕切部材の軸方向の幅は、トナー供給口の軸方向の幅と略同等となるように形成されているので、現像剤退避部に導入された二成分現像剤を現像剤収容部に供給可能とする仕切部材の構成を、ガイド斜面を省略して簡易に実現することができる。
ここで、前記複数の現像剤撹拌搬送部材の間には、現像剤撹拌搬送部材間の二成分現像剤の入れ替わりを不能とする、軸方向端部の所定の領域に延在している遮蔽壁が設けられており、かつ、前記トナー供給路の軸方向の幅に対応する領域においては、現像剤撹拌搬送部材間の二成分現像剤の入れ替わりを可能とする突起部が形成されていてもよい。
この場合は、複数の現像剤撹拌搬送部材の間の軸方向の端部領域には、現像剤撹拌搬送部材間の二成分現像剤の入れ替わりを不能とする遮蔽壁が設けられており、かつ、トナー供給路の軸方向の幅に対応する領域においては、現像剤撹拌搬送部材間の二成分現像剤の入れ替わりを可能とする突起部が形成されているので、トナー供給路に集約流入された二成分現像剤により第二の現像剤撹拌搬送部材側が満たされた場合には、余剰な現像剤を速やかに第一の現像剤撹拌搬送部材側に流出させ、現像剤担持体への二成分現像剤の速やかな供給を可能とすることができる。一方、軸方向の傾斜配置等で、二成分現像剤が第一の現像剤撹拌部材の端部に片寄った場合には、この領域に形成された遮蔽壁により二成分現像剤が現像剤撹拌部材側に逆流して現像剤担持体への現像剤供給量が減少することを防止することができる。
また、前記現像剤分離手段により分離された余剰現像剤を現像剤収容部又は現像剤退避部に導入すると共に互いを仕切る現像剤仕切部材をさらに備え、この現像剤仕切部材の下端の軸方向中央部近傍には、前記トナー供給路に連通するトナー供給口が形成されていると共に、軸方向両端部は、現像剤退避部に導入された二成分現像剤が、トナー収容部からのトナーを取り込まずに現像剤収容部に流入するように構成されていてもよい。
この場合は、現像剤分離手段により分離された前記余剰現像剤を現像剤収容部又は現像剤退避部に導入すると共に互いを仕切る現像剤仕切部材をさらに備え、この現像剤仕切部材の下端の軸方向中央部近傍には、トナー供給路に連通するトナー供給口が形成されていると共に、軸方向両端部は、現像剤退避部に導入された二成分現像剤が、トナー収容部からのトナーを取り込まずに現像剤収容部に流入するように構成されているので、仕切部材上の傾斜板フローが幅方向全域に亘って均一に存在し、例えば、ハーフトーン画像を取り続けたときでも仕切部材上を流れる現像剤フローの流下スピードは現像剤担持体の軸方向で一様となり、現像剤担持体上の部分的な層形成量低下が発生せず、一様なプリント濃度を得ることができる。
さらに、前記複数の現像剤撹拌搬送部材の間には、それぞれの現像剤撹拌搬送部材の周囲を流動する現像剤が互いに入れ替わり可能なような連通路を形成する突起部が設けられていてもよい。
この場合は、仕切板上の傾斜板フローが軸方向全域に亘って存在するような場合に、中央部のトナー供給口からトナー収容部のトナーを取り込みながら供給される二成分現像剤と、軸方向端部からトナーを取り込まずに現像剤収容部に供給される二成分現像剤とについて、仕切部材上の現像剤フローを損なうことなく、現像剤の撹拌搬送部材の軸方向に沿った流れと、搬送部材間の流れとが速やかにバランスよく実現し、十分に撹拌帯電した現像剤を軸方向に亘ってトナー濃度が均一となるように搬送することが可能となる。
以上において、前記現像剤分離部で分離された二成分現像剤がトナー収容部からのトナーを取り込みながら現像剤収容部に流入する際は、現像剤担持体に最近接する現像剤撹拌搬送部材とは異なる現像剤撹拌搬送部材へ流入する構成であってもよい。
また、前記仕切部材は、現像剤担持体に近接し、この現像剤担持体に対して所定の距離を有する一端側が他端側に比べ重力方向上部に位置してなる構成であってもよい。
さらに、前記複数の撹拌搬送部材のそれぞれは、らせん状のオーガーとして形成されていてもよい。
また、本発明の画像形成装置は、上記現像装置を備えることを特徴とする。
本発明によれば、二成分現像剤を用い自律的にトナーを取り込み、現像剤のトナー濃度を一定に保つ自律トナー濃度制御現像方式の現像装置において、現像装置がその長手軸方向に傾斜した状態で設置されても、現像装置の軸方向におけるトナー濃度差の発生を抑制し、画像かぶりや画像濃度ムラの少ない良質な画像を得ることができる。
<実施の形態1>
以下に、本発明に係る実施の形態を図面を参照して説明する。
まず、本発明の実施の形態1に係る現像装置を含む画像形成装置の概略構成について、図1を参照して説明する。
図1に示されるように、本発明に係る現像装置が適用される画像形成装置10は、一様帯電後に像光を照射することにより表面に静電電位の差による潜像が形成される感光体ドラム21を備えており、この周囲に、感光体ドラム21の表面を一様に帯電させる帯電装置22と、感光体ドラム21に像光を照射して表面に潜像を形成する露光装置23と、感光体ドラム21上の潜像にトナーを選択的に転移させてトナー像を形成する現像装置24と、感光体ドラム21と対向し、被記録媒体28を挟んで感光体ドラム21との間に転写バイアス電界を生成する転写ロール26と、トナー像の転写後に感光体ドラム21に残留するトナーを除去するクリーニング装置29とが設けられている。そして、感光体ドラム21と転写ロール26との対向部(ニップ部)の上流側から被記録媒体28を供給するようになっており、下流側には被記録媒体28上に転写された未定着トナー像を加熱溶融し被記録媒体28に圧着する定着装置50が設けられている。ここで、感光体ドラム21は、矢印方向に回転する金属製ドラムの表面に有機感光材料、アモルファスセレン系感光材料、アモルファスシリコン系感光材料等からなる感光体層を形成したものを用いることができる。また、帯電装置22は、ステンレススチール、アルミニウム等の導電性を有する金属のロールに高抵抗材料のコーティングを施したものであり、感光体ドラム21に当接され、従動回転するようになっている。そして、所定の電圧が印加されることにより、該ロールと感光体ドラム21との接触部近傍における微小間隙内で継続的な放電を生じ、感光体ドラム21の表面をほぼ一様に帯電するものである。露光装置23は、レーザ書込み装置やLEDアレイを有し、画像信号に基づいて点滅するレーザ光を発生し、これをポリゴンミラーによって感光体ドラム21の主走査方向にスキャンするものであり、これにより感光体ドラム21の表面に静電潜像を形成する。この静電潜像は、光の当たった部分の感光体ドラム21の表面電位が低下し、光の当たっていない高電位部分とのコントラストによる電位画像として形成される。また、現像装置24は、ハウジング31内に着色粒子であるトナー及び磁性キャリアからなる二成分現像剤を収容し、現像剤担持体32に二成分現像剤を担持させ、この現像剤担持体32にバイアス電源25からの現像バイアスを印加することで、現像剤担持体32を静電潜像の高電位部と低電位部との中間電位に保持し、静電潜像の画像部を帯電されたトナーにて現像するようにしたものである。さらに、転写装置26は、例えば感光体ドラム21に接触配置される転写ロールにて構成され、バイアス電源27によって感光体ドラム21上のトナー像が引き付けられる方向の転写バイアスが印加されることで、感光体ドラム21上のトナー像を被記録媒体28に転与させるようにしたものである。また、感光体ドラム21上に残留したトナーは、例えばドクターブレード式のクリーニング装置29によって除去される。
また、定着装置50は、例えばヒートロール方式であり、加熱ロール51と加圧ロール52とを有し、この加熱ロール51と加庄ロール52との間に被記録媒体28を通過させることによりトナー像を被記録媒体28に定着するようになっている。
次に、本実施の形態に係る現像装置の詳細について、図2〜図4を参照して説明する。図2は本実施の形態に係る現像装置24を示す平面図であり、簡明化のためせき止め部41を取り外した状態で示している。また、図3は、図2のX−X線に沿った断面図であり、図4は、図2のY−Y線に沿った断面図である。
まず、実施の形態1に係る現像装置24の概略構成について、図3及び図4を参照して説明する。
図3に示されるように、現像装置24は、感光体ドラム21に向かって開口するハウジング31を有し、このハウジング31の開口に面して現像剤担持体32が配設され、ハウジング31のうち、現像剤担持体32に隣接した部位には収容された二成分現像剤Gを撹拌搬送する複数の現像剤撹拌搬送部材36a,36bを有する現像剤収容部33と、現像剤担持体32に隣接し、現像剤収容部33に対して現像剤担持体32の現像剤搬送方向下流側に設けられる現像剤退避部34と、現像剤収容部33を介して現像剤担持体32に連通し、トナーT及び現像剤退避部34から流出した二成分現像剤Gを収容するトナー収容部35とが形成されている。また、トナー収容部35には、トナーT及び現像剤退避部34から流出する二成分現像剤Gをトナー収容部35の底壁面に沿って掃き出すように撹拌搬送するトナー撹拌搬送部材351が設けられている。さらに、図4に最も良く示されるように、現像剤収容部33とトナー収容部35とは、軸方向端部において、両者間の二成分現像剤Gの流通が不能となるように、壁面40により互いに遮蔽されている。
なお、本実施の形態において、二成分現像剤Gは、トナーTと磁性キャリアからなる現像剤であり、トナーTは、例えば非磁性トナーを用いるが、磁性キャリアと磁気特性が異なるものであれば、磁性トナーを用いても差し支えない。
また、現像剤担持体32は、反時計回りに回転する回転スリーブ321と、この回転スリーブ321の内部に固定的に配設された磁極ロール322とを備えている。そして、この磁極ロール322は、例えば7極の磁極(S1〜S3,N1〜N4)にて構成されている。
さらに、搬送磁極(N2)と現像磁極(S1)との間に、現像剤担持体32と対向するようにせき止め部41が配設されている。このせき止め部41は、現像剤担持体32と同程度の幅を有し、一端をハウジング31により支持され、先端部を数十μm〜数百μm程度の間隙で現像剤担持体32に近接させている。そして、例えば、せき止め部41と現像剤担持体32の磁極とにより、トナー濃度に応じて二成分現像剤Gを現像剤収容部33又は現像剤退避部に分離する現像剤分離手段が構成されている。なお、本実施の形態では、せき止め部41に多くの二成分現像剤Gを供給するために、後述する現像剤仕切部材39と現像剤担持体32との間隙は、せき止め部41と現像剤担持体32との間隙よりも広く設定されている。
また、現像剤収容部33は二成分現像剤Gが収容されるスペースを有し、現像剤収容部33内のうち現像剤担持体32に近接した位置に第一の現像剤撹拌搬送部材36a(以下、サプライオーガーともいう)が配設され、この第一の現像剤撹拌搬送部材36aと略水平な位置に第二の現像剤撹拌搬送部材36b(以下、アドミックスオーガーともいう)が配設されている。そして、これらの第一及び第二の現像剤撹拌搬送部材36a,36bは、略同一の外径を有し、互いに逆方向に回転(例えば36aが反時計回り、36bが時計回り)するように構成されており、これにより、現像装置24の軸方向端部から端部へと現像剤が往復循環するような流れと、第一及び第二の現像剤撹拌搬送部材36a,36bのそれぞれの現像剤が互いに入れ替わるような流れとが形成可能となっている。
ここで、各現像剤撹拌搬送部材36a,36bは、シャフト部と、このシャフト部の表面にらせん状に形成された羽部とを有する、いわゆるスパイラル状のオーガーで構成されている。このようなスパイラル状のオーガーを現像剤撹拌搬送部材として用いることにより、現像剤の周方向の撹拌と軸方向の搬送とをより効率的に行うことができる。
さらに、現像剤収容部33の底部形状は、現像剤担持体32、現像剤撹拌搬送部材36a,36bに沿った湾曲形状に形成されていると共に、現像剤担持体32、現像剤撹拌搬送部材36aの間に所定間隔の現像剤搬送路が確保されている。
また、現像剤収容部33と、現像剤退避部34との間には、両者を仕切っている現像剤仕切部材39が配設されている。
この現像剤仕切部材39は、現像剤担持体32と同程度の軸方向の幅で形成され、現像剤担持体32から第二の現像剤撹拌搬送部材36bの上方に向かって傾斜配置(本実施の形態においては、水平方向に対して略30°)されたベースプレート39aと、このベースプレート39aの下端から連接し、より急な傾斜角度(水平方向に対して略45°)を有するベースプレート39bとを備えている。このベースプレート39a及び39bの傾斜部長さは傾斜部上を流れる二成分現像剤Gが現像剤収容部33に流れ込むような長さに設定されている。
このように、せき止め部41に近接し、せき止め部41から傾斜部上への二成分現像剤Gの押し出し圧力が作用し易いベースプレート39aを緩やかな傾斜にして、この押し出し圧力が作用し難いベースプレート39bをより急な傾斜にすることにより、仕切部材39上に流出した二成分現像剤Gを第二の現像剤撹拌部材側に円滑に流動させることができる。
そして、ベースプレート39aのうち、現像剤担持体32側に位置する上端部39dは、現像剤担持体32内の搬送磁極(N1)の直上、あるいは搬送磁極(N1)から現像剤搬送方向上流側(時計回り方向側)において、現像剤担持体32の表面と数百μm〜数mmの位置で対向配置されている。
また、上端部39dの反対側であるベースプレート39bの下端部39eには、図2及び図3に示されるように、トナー収容部35側の側面の軸方向中央部の略1/3の領域Rcにおいて、トナー収容部35と現像剤収容部33とを連通させると共に、トナー収容部35からのトナーを巻き込みながら現像剤収容部33へのトナー供給を可能とするトナー供給路37に連通しているトナー供給口37aが形成されている。一方、下端部39eの軸方向両端部の略1/3ずつの領域Rsにおいては、図2及び図4に示されるように、トナー収容部35と現像剤収容部33とを遮蔽する壁面40が形成されており、下端部39eは、この壁面40に連接され両端部領域Rsにおけるトナー収容部35と現像剤収容部33との間の二成分現像剤の流通を遮断している。また、下端部39eの下面においては、第二の現像剤撹拌搬送部材36bの外周面に倣って、この外周面と対向している対向面が、撹拌搬送部材36bの外周面と約1.5mm〜2mmの距離を隔てて形成されている。
このようにトナー供給路37の開口37aを仕切部材39の下端39eの軸方向略中央部のみに設けることにより、現像装置24が軸方向に傾斜設置された場合の開口37aの傾斜方向上端及び下端における二成分現像剤Gの高低差が低減され、二成分現像剤Gの片寄りによる影響を減少させることができる。
さらに、仕切部材39の上表面は、図2に最も良く示されるように、仕切部材39上の二成分現像剤Gを開口37aに導くように傾斜配置されているベースプレート39a及び39bと、ベースプレート39aの上端部39dの軸方向両端部からベースプレート39bの開口37aの軸方向両端部に向かって傾斜配置されている側面ガイド傾斜部39sにより形成されている。すなわち、仕切部材39上の二成分現像剤Gが、軸方向中央部領域Rcに形成されたトナー供給路37の開口37aに集約して流入するようなガイド斜面39a,39b,39sが形成されている。
このように、仕切部材39上の軸方向全域に亘って流出した二成分現像剤Gをトナー供給路37の開口37aに集約して流入するように、仕切部材39の表面をガイド斜面39a,39b,39sで形成することにより、トナーを取り込むための開口部37aを絞ったことによる仕切部材39上に流出した二成分現像剤Gの第二の現像剤撹拌部材36b側への取り込み性能の低下を抑制することができる。
次に、このようにトナー供給口37aを軸方向中央部の領域Rcに集約したことに伴う関連部材の詳細について、さらに説明する。
まず、前述した第一の現像剤撹拌搬送部材36aと第二の現像剤撹拌搬送部材36bとの間には、所定の領域において、現像剤撹拌搬送部材36a,36bにより撹拌される二成分現像剤Gが互いに入れ替わり可能なような連通路を形成しつつ、二成分現像剤Gの軸方向への搬送を可能とする軸方向に延在している突起部である隔壁Mが形成されている。
具体的には、この隔壁Mは、図2の点線に示されるように、二成分現像剤Gの軸方向折り返し領域Reを除いた領域において、軸方向に延在するように形成されている。そして、トナー供給口37aの幅に対応する軸方向の領域Rcにおいては、図3に示されるように、隔壁Mの頂部高さは、現像剤撹拌搬送部材36a,36bの回転中心よりもやや高く設定された突起部として両者を完全には隔てないように形成されている。一方、領域Rc以外の隔壁Mの延在領域においては、図4に示されるように、この隔壁Mの頂部は、仕切部材39の下端と連接され、現像剤撹拌搬送部材36a,36b間の二成分現像剤Gが互いに入れ替わり不能なように両者を隔てる遮蔽壁として形成されている。すなわち、この隔壁Mは、トナー供給口37aの幅に対応する軸方向の領域においてのみ、現像剤撹拌搬送部材36a,36b間の二成分現像剤Gが互いに入れ替わり可能なように形成されている。
このように、トナー供給口37aの幅に対応する軸方向の領域Rcにおいてのみ隔壁Mの頂部が、仕切部材39と間隙を有するように形成することにより、トナー供給口37aに集約流入された二成分現像剤Gにより第二の現像剤撹拌搬送部材36b側が満たされた場合には、余剰な現像剤を速やかに第一の現像剤撹拌搬送部材36a側に流出させ、現像剤担持体32への二成分現像剤Gの速やかな供給を可能とすることができる。一方、軸方向の傾斜配置等で、二成分現像剤Gが現像剤撹拌部材36aの端部に片寄った場合には、この領域に形成された遮蔽壁Mにより二成分現像剤Gが現像剤撹拌部材36b側に逆流して現像剤担持体32への現像剤供給量が減少することを防止することができる。
ここで、本実施形態においては、現像剤撹拌搬送部材として、2個の撹拌搬送部材36a,36bを用いているが、配設数については2個に限定されるものではなく、外径についても必ずしも同一である必要はない。すなわち、それぞれの撹拌搬送部材周りの現像剤が、軸方向に搬送されると共に、トナー供給口37aの幅に対応する軸方向の領域において、隣接する撹拌搬送部材との間で流動するように構成されていればよい。
また、トナー収容部にはトナー供給路37に対応したトナー撹拌搬送部材であるアジテータ351が収容されている。すなわち、このアジテータ351は、図4に示されるように、領域Rcに対応する軸方向中央部の略1/3の領域においては、トナー及び/又は高濃度現像剤(以下、トナー等ともいう)をトナー供給路37側に搬送する搬送羽根351aが支持部材351cに取り付けられている。一方、領域Rsに対応する中央部1/3以外の領域においては、トナー収容部35のトナー等を中央部1/3の領域に集めるような羽根が軸線に対して傾斜して折り曲げた形状の掻き寄せフィン351bとして支持部材351cに取り付けられている。なお、この端部領域の羽根は、掻き寄せフィンの代わりにコイルオーガー形状であっても差し支えない。
このようにトナー収容部35内のトナー等が、トナー供給口37aの幅に対応する軸方向の領域Rcに集約するように形成されているので、十分に撹拌混合されたトナー等を所定のトナー供給路37へ速やかに供給することができる。
また、トナー供給路37を形成しているトナー収容部35側の壁面40には、図3に示されるように、中央領域Rcに平坦な頂部を有する規制部40aが形成されており、これにより、トナーあるいは高濃度現像剤が現像剤収容部33側に過剰に押し込まれないように、この規制部40aにてトナー供給路37の上部に一旦トナーを溜める構造となっている。
次に、本実施の形態に係る現像装置24の作動の概要について、図2を参照して説明する。
図2において、現像剤収容部33における二成分現像剤Gは、現像剤撹拌搬送部材36により撹拌され、現像剤担持体32内の汲み取り磁極(N3)によって捕獲される。この後、捕獲された二成分現像剤Gは、汲み取り磁極(N3)及び搬送磁極(S3)の磁気吸引力と現像剤担持体32表面との摩擦力により、現像剤担持体32(回転スリーブ321)の回転方向に搬送される。この搬送された二成分現像剤Gは、現像剤分離手段の一部を構成するせき止め部41の近傍に到達すると、トリミング磁極として作用する搬送磁極(N1)により穂立ちを形成する。さらに、この二成分現像剤Gの穂立ちは、せき止め部41にて規制されることにより、現像剤層として現像剤担持体32上に形成され、この現像剤層は、現像領域に搬送される。そしてさらに、現像領域に搬送された二成分現像剤Gの現像剤層は、現像磁極(S1)の磁気吸引力により磁気ブラシを形成し、この磁気ブラシを形成する二成分現像剤GにおけるトナーTは、感光体ドラム21と現像剤担持体32との間に形成される現像電界によって、感光体ドラム21上の静電潜像を可視像化する。
そして、上述のように構成された現像装置24において、例えば、トナー濃度が低い二成分現像剤Gの場合は、相対的に単位体積当たりの磁性キャリア密度が大きいので、見掛けの透磁率が上昇し、現像剤担持体32に対して現像剤単位体積あたりの磁気吸引力が大きくなる。このため現像剤担持体32との摩擦力が大きくなり、搬送力が大きくなるため、現像剤担持体32により、せき止め部41まで確実に搬送され、せき止め部41のせき止め力に打ち勝って、せき止め部41近傍に滞留している滞留現像剤を押し出す。この押し出された滞留現像剤は、落下現像剤となって現像剤仕切部材39上に落下し、現像剤退避部34を経て、その後、現像剤収容部33又はトナー収容部35へ流れ込む。
このように、トナー濃度の低い二成分現像剤Gが現像剤退避部34に導かれた場合、現像剤収容部33内にはその分だけスペースが作られ、その結果、トナー収容部35から現像剤収容部33に至るまでのトナー供給路37にあった二成分現像剤Gは、現像剤撹拌搬送部材36の搬送力と二成分現像剤Gの自重により、上記スペースに速やかに引き込まれ、トナー供給路37付近の二成分現像剤Gが流動する。これにより、トナー供給路37は、トナー収容部35からのトナーT及び非常に高いトナー濃度の二成分現像剤Gを受け入れ、このトナーT及び非常に高いトナー濃度の二成分現像剤Gは、トナー供給路37を経て現像剤収容部33へと速やかに供給される。ここで、非常に高いトナー濃度の二成分現像剤Gとは、現像剤退避部34からトナー収容部35に流出した二成分現像剤が該トナー収容部35内のトナーと撹拌混合され、磁性キャリアに対するトナー比率が非常に高い二成分現像剤のことである。
一方、トナー濃度が高い二成分現像剤Gの場合は、相対的に単位体積当たりの磁性キャリア密度が小さいので、見掛けの透磁率が低下し、現像剤担持体32に対して現像剤単位体積あたりの磁気吸引力が小さくなる。このため現像剤担持体32による搬送力が小さくなるため、現像剤担持体32上の二成分現像剤Gの多くは、現像剤担持体32の回転方向に対して現像剤仕切部材39の先端よりも上流側の位置で落下してしまう。この結果、二成分現像剤Gは、せき止め部41近傍に滞留している滞留現像剤を押し出すことなく、現像剤仕切部材39の上端部39dより上流側の位置で落下し、直接現像剤収容部33へ戻る。このとき、トナー濃度が低い場合と異なり、現像剤収容部33内にスペースが作られず、トナー供給路37付近の二成分現像剤Gは流動しないので、二成分現像剤Gによりトナー供給路37がふさがれている状態となり、トナー収容部35からトナーT及び非常に高いトナー濃度の二成分現像剤Gは供給されない。
以上のように、本実施の形態に係るトナー補給メカニズムは、トナー濃度に応じた二成分現像剤Gの流動性変化、嵩変化に加えて磁気吸引力の変化を利用したものであり、トナー濃度が低い二成分現像剤Gに対してはトナー補給が行われ、トナー濃度が高い二成分現像剤Gに対してはトナー補給が行われない構成になっている。
このように構成した現像装置24においては、現像剤収容部33内に、トナー収容部35内のトナーT及び非常に高い濃度の二成分現像剤Gをすばやく取り込むことができるので、高密度画像の連続出力に対応することができると共に、現像剤に対するストレスが軽減され、現像剤の長寿命化、低ランニングコスト化を実現することができる。
そして、本実施の形態に係る現像装置24においては、次のようにして、現像装置24が軸方向に傾斜して配置された場合でも、現像剤分布の軸方向の偏りによるトナー濃度の変動を抑えることで良好な画質を保つことが可能となっている。
一般に複数のオーガーで二成分現像剤を循環させる場合、現像装置端部における現像剤折り返し部(図2の領域Reに相当)では、二成分現像剤のパッキング圧が上がり、折り返し部以外の領域と比べ、現像剤水位が高く隆起した状態となる。この隆起量は現像剤の流動性や現像装置の形状、オーガーパラメータ、マグロール磁力等の影響により変動するが、折り返し部の現像剤パッキング圧と隆起による自重がバランスしたところで隆起は停止する。
本実施の形態に係る現像装置24を長手方向(軸方向)に傾斜させた場合、例えば、第二の現像剤撹拌部材(アドミックスオーガー)36bの搬送方向に下る向きにθ度傾斜させた場合、アドミックスオーガー36bの搬送端部における現像剤のパッキング圧が上昇する。
この現象について分り易く単純なモデルで説明すると、図5のように現像装置の長さをL、現像剤の見掛け嵩密度をρとすると、単位長さを直径とする重さρの玉がL個連なって傾きθの樋に並んでいる状態に相当する。このとき玉一個あたりρ・g・sinθの力が傾斜方向に作用するから、傾斜下流端部ではこの力が累積して、ρ・g・L・sinθなる荷重即ち圧力が発生する。もちろん、実際の現像装置では現像剤粒子の摩擦抵抗等によりこのモデルほど単純ではないもののこうした現象を説明するには十分合理的である。従って、傾斜下端部の現像剤隆起量は水平状態に比べ増加するが、ある傾斜角度以上となると、この隆起高さが、前述の規制部(図13における140に相当)の高さ以上となり、トナー収容部35側に流れ出すようになる。現像剤収容部33の現像剤量が減少し、流出した分反対側端部で顕著に現像剤不足となる。そして、現像剤が不足となったところにトナーが入り込み過剰にトナー濃度が上昇するという現象が生じていた。
そこで、本実施の形態では、前述したように、2つのオーガー(サプライオーガー36a,アドミックスオーガー36b)の端部における現像剤折り返し部Reの現像剤パッキング圧が上昇し易い領域では、現像剤収容部33とトナー収容部35との連通路を壁面40により遮断することで、端部で発生し易い現像剤隆起による二成分現像剤Gのトナー収容部35への流出を防ぐことができ、現像剤収容部33の現像剤量を現像装置24の傾斜に対して安定化させることができる。さらに、他端部(傾斜上方部)では現像剤収容部33に空きスペースが発生したとしても、この端部においても同様に連通路を遮断しているため該空きスペースへのトナーの流入がなく過剰なトナーの取り込みを防止することができる。
さらに、上述のようにサプライオーガー36aとアドミックスオーガー36bとの間で二成分現像剤Gを受け渡しする幅である端部折り返し領域Reにおけるオーガーピッチ1ないし2ピッチの幅のみに対して、現像剤収容部33とトナー収容部35との連通路を遮断するだけでも効果があるが、本実施の形態では現像装置24の長手方向を3分割し連通部(トナー供給口37a)を中央部略1/3として形成している。これは傾斜によるパッキング圧は長さ方向で累積するため、A3機のようにL寸が長い現像装置では傾斜によるパッキング圧の影響を受け易く、連通路の端部でも同様に現像剤隆起現象が起き得るため、なるべく連通路遮断幅を広く取っているためである。上述のモデルでいうと連通路端部近傍の現像剤のパッキング圧は(2/3)×ρ・g・L・sinθに低下でき、これに伴い現像剤隆起量が低減され、連通路からトナー収容部35への現像剤流出を防止することができる。
なお、本実施の形態においては、仕切部材39の軸方向の幅を現像剤担持体32と略同等の幅として形成したが、例えば、仕切部材39の幅をトナー供給口37aの開口幅と略同等の長さとして形成してもよい。すなわち、現像剤担持体32の軸方向幅に対して、トナー供給口37aの開口幅に対応する一部領域にのみ仕切部材39が幅方向に延在するように構成してもよい。
このように構成した場合には、仕切部材39上に流出した二成分現像剤Gのトナー供給路37へのトナー取り込み性能が低下するものの、ガイド斜面39s等の省略が可能となり、簡易な構成で二成分現像剤Gのトナー供給路37への還流を実現することができる。
<実施の形態2>
次に本発明の実施の形態2に係る現像装置について、図6及び図7を参照して説明する。図6は本実施の形態に係る現像装置24Aを示す平面図であり、図7は、図6のZ−Z線に沿った断面図である。
先の実施の形態においては、仕切部材39の上端部の軸方向全域に流出した二成分現像剤Gが、その下端中央部領域Rcに形成されたトナー供給口37aに集約して流入するように構成したが、このように傾斜板上の現像剤フローを一部領域に集約し、他領域(軸方向端部)における傾斜板フローを制約した場合には、軸方向領域において現像剤担持重量(MOS:スリーブ単位面積当たりの現像剤重量)に差が生じる虞がある。すなわち、傾斜板フローがある領域においては、せき止め部(層規制部)41のパッキング圧が低下し、傾斜板フローがない領域と比較すると、層規制後の現像剤担持重量が低下する傾向がある。より具体的には、例えば全面ハーフトーンの画像を採取した場合に現像剤担持体32の軸方向で均一にトナーが消費され、現像剤担持体32の軸方向全域で現像剤退避部34に現像剤が退避し、仕切部材39上に現像剤がフローする。この現像剤フローが中央部のトナー供給口37aに集約される構成をとっている場合には、トナー供給口37aの幅に対応する幅領域では、フロースピードが速く、トナー供給口37aの幅領域の外側ではフロースピードが遅くなる。このことは、仕切部材39上の現像剤フローが顕著な箇所と、そうでない箇所とでせき止め部41の現像剤パッキング状態が変化し、この変化が層形成に影響を及ぼし、フロースピードの速いトナー供給口37aの幅に対応した領域で層形成量低下を引き起こし、トナー供給口37aの幅に対応したプリント濃度ムラが発生する虞が生じる。
そこで、本実施の形態における現像装置24Aは、先の実施の形態における現像装置24の仕切部材を変更し、傾斜板フローが一律に流動するようにサイドのガイド斜面を省略して、軸方向両端部においては、仕切部材上の二成分現像剤Gが、トナー収容部35のトナーを取り込まずに、現像剤収容部33側に流入するように構成したものであり、先の実施の形態と同様な部材には同様な符号を付し、その説明は省略する。また、本実施の形態に係る現像装置が適用される画像形成装置も先の実施の形態と同様であるため、その説明は省略する。
なお、仕切部材39上の傾斜板フローを制約した場合(実施の形態1に相当)と、傾斜板フローを制約しない場合(実施の形態2に相当)とでの、性能評価結果については実施例として後述する。
図6に示されるように、本実施の形態に係る現像装置24Aは、先の実施の形態と同様に、仕切部材39Aの下端部39eには、図6に示されるように、トナー収容部35側の側面の軸方向中央部の略1/3の領域Rcにおいて、トナー収容部35と現像剤収容部33とを連通させると共に、トナー収容部35からのトナーを巻き込みながら現像剤収容部33へのトナー供給を可能とするトナー供給路37の開口37aが形成されている。一方、下端部39eの軸方向両端部の略1/3ずつの領域Rsにおいては、図6及び図7に示されるように、トナー収容部35と現像剤収容部33とを遮蔽する壁面40との間に所定の離隔(約3mm〜6mm)が設定されており、この離隔により仕切部材39A上の二成分現像剤Gがトナー収容部35内のトナーを取り込まずに、仕切部材39Aの傾斜面に沿って現像剤収容部33にそのまま流入するように形成されている。また、下端部39eの下面においては、先の実施の形態と同様に、第二の現像剤撹拌搬送部材36bの外周面に倣って、この外周面と対向している対向面が、撹拌搬送部材36bの外周面と約1.5mm〜2mmの距離を隔てて形成されている。
さらに、仕切部材39の上表面は、図6に最も良く示されるように、現像剤担持体32と略同等の軸方向の幅に亘って、それぞれ平坦な斜面を形成しているベースプレート39p,39qとで構成されている。
また、先の実施の形態と同様に、第一の現像剤撹拌搬送部材(サプライオーガー)36aと第二の現像剤撹拌搬送部材(アドミックスオーガー)36bとの間には、所定の領域において、現像剤撹拌搬送部材36a,36bにより撹拌される二成分現像剤Gが互いに入れ替わり可能なような連通路を形成しつつ、二成分現像剤Gの軸方向への搬送を可能とする軸方向に延在している突起部である隔壁M´が形成されている。
この隔壁M´は、図6の点線に示されるように、二成分現像剤Gの軸方向折り返し領域Reを除いた領域において、軸方向に延在するように形成されているが、先の実施の形態と異なり、その延在領域に亘って均一な頂部高さを有するように形成されている。すなわち、トナー供給口37aの幅に対応する領域Rcに関わらず、その全延在領域において、図7に示されるように、隔壁M´の頂部高さは、現像剤撹拌搬送部材36a,36bの回転中心と略同一の高さを有し、両者を完全には隔てないように形成されており、全領域において現像剤撹拌搬送部材36a,36b間における二成分現像剤Gの入れ替わりが可能となっている。
このように、全延在領域において隔壁Mの頂部が、仕切部材39と間隙を有するように形成することにより、本実施の形態に係る現像装置24Aのように、傾斜板フローが軸方向全域に亘って存在するような場合に、中央部のトナー供給口37aからトナー収容部35のトナーを取り込みながら供給される二成分現像剤Gと、軸方向端部からトナーを取り込まずに現像剤収容部33に供給される二成分現像剤Gとについて、仕切部材39A上の現像剤フローを損なうことなく、現像剤の現像剤撹拌搬送部材36a,36bの軸方向に沿った流れと、搬送部材36a,36b間の流れとが速やかにバランスよく実現し、十分に撹拌帯電した現像剤を軸方向に亘ってトナー濃度が均一となるように搬送することが可能となる。
次に、本実施の形態に係る現像装置24,24Aについて、性能検証した結果を実施例として以下に示す。
まず、本実施例において用いた現像装置の具体的仕様について、図3を参照して説明する。
図3において、現像剤担持体32の磁極ロール322(Al製で、表面粗さRz=20μm)はφ16mmとし、7極の磁極を配置し、回転数は406rpmに設定して、図8に示されるような着磁パターンを有するものを用いた。
また、サプライオーガー36a、アドミックスオーガー36bは、共に、外径φ10mm、シャフト径5mm、ピッチ14mmのものを用い、回転数は460rpmとした。
アジテータ351は、両端のフィン部及び中央のシート部ともに、厚さ0.1mmのPETフィルムを用い、回転数は20rpmとした。
せき止め部(層規制部材)41は、厚さ1.5mmのSUS製とし、規制後の単位面積重量が35mg/cm2となるように現像剤担持体32とのギャップを0.3mmに設定した。
トナーは磁性粉20%含有の体積平均粒径6.5μmのポリエステル系トナーを用いた。キャリアは体積平均粒径50μmのフェライト系キャリアを用いた。現像剤量は200gとした。
また、現像領域における感光体ドラム21と現像剤担持体32との距離(DRS)は0.3mmとし、現像極設定角度(MSA)は3°、帯電電位(Vh)は−550V、潜像電位(VL)は−100V〜―120V、現像バイアス(DC)は−440Vに設定し、中央部のトナー供給口37aの軸方向幅は92mmとした。
<検証評価1>
以上の条件で、まず、軸方向に亘って仕切部材39上の傾斜板フローが一部ない場合(本願発明の実施の形態1に相当)と、軸方向の全域に亘って傾斜板フローがある場合(本願発明の実施の形態2に相当)について、せき止め部41による層規制後の現像剤担持重量の比較検証を行った。具体的には、飽和トナー濃度6%で仕切部材39上に現像剤のフローがある状態の現像剤担持体32上の現像剤量と、このフローをウレタンフォームで制限して流れない状態を模擬した場合の現像剤担持体32上の現像剤量(MOS)を測定した。測定結果を図9に示す。
図9に示されるように、仕切部材39上に傾斜板フローがある場合では、MOSは約28mg/cm2であるのに対し、傾斜板フローがない場合では、約36mg/cm2であり、両者に差が生じていることが理解される。
このことは、軸方向端部において傾斜板フローが存在しない実施の形態1のような現像装置の構成とした場合、例えば、全面ハーフトーンの画像を採取した際に、仕切部材39の軸方向全域の上端から流出した現像剤フローが中央部の供給口37aに集められ、トナー供給口37aの軸方向幅に対応する幅領域では、フロースピードが速く、トナー供給口37aの軸方向幅の外側領域では、フロースピードが遅くなる。これにより、せき止め部41の現像剤パッキング圧状態が変化し、供給口37aの幅に対応する領域では層形成量低下を起こし、トナー供給口37aの軸方向幅に対応したプリント濃度ムラが発生してしまうことを意味する。
これに対して、図6及び図7に示す実施の形態2のように、トナー取り込み可能なトナー供給口37aの軸方向幅以外の端部領域においては、現像剤仕切部材39上に導入された二成分現像剤が、トナー収容部35からのトナーを取り込まずに現像剤収容部33に流入し、仕切部材39上の傾斜板フローが幅方向全域に亘って均一に存在するように構成した場合には、ハーフトーン画像を取り続けたときでも仕切部材39上を流れる現像剤フローの流下スピードは現像剤担持体32の軸方向で一様となり、上述の部分的な層形成量低下が発生せず、一様なプリント濃度が得られることを示すものである。
<検証評価2>
次に、本実施の形態に係る現像装置24,24Aを軸方向に傾斜配置した際の現像装置傾斜依存性を、トナー供給口が軸方向全域に亘っている図13に示されるような従来構成の現像装置と比較検証した。
具体的には、従来構成の現像装置(図13参照)については、水平設置状態で飽和トナー濃度(約10%)に安定させた後、反駆動部側を軸方向に3°持ち上げた状態で、画像密度10%の画像を連続形成した際の、現像剤担持体32上の現像剤トナー濃度の推移を測定した。また、実施の形態1,2に係る現像装置24,24Aについては、まず、反駆動部側を軸方向に3°持ち上げた状態で、トナー濃度5%の状態から現像装置を空回ししたときのトナー濃度の特性を測定し、その後、画像密度10%の画像を100枚連続形成した後の現像剤担持体32上のトナー濃度を測定した。従来構成の現像装置に基づく測定結果を図10に示し、実施の形態1に係る現像装置に基づく測定結果を図11に示し、実施の形態2に係る現像装置24Aに基づく測定結果を図12に示す。
図10に示されるように、従来構成の現像装置においては、傾斜上部となる反駆動部側(駆動機構が取り付けられている側と反対側)で、トナー濃度のばらつきが大きいことが理解される。
これは、軸方向の傾斜に伴って、傾斜上部においては現像剤量が低下し、この部分においては、規制部を乗り越えてトナー収容部35から過剰なトナーが現像剤収容部33に流入したためであると考えられる。
一方、図11(a),図12(a)に示されるように、実施の形態1,2に係る現像装置24,24Aにおいては、駆動部側、中央部、反駆動部側のいずれの箇所においても、速やかに飽和トナー濃度に到達し、その後安定してこの飽和トナー濃度を維持していることが理解される。さらに、図11(b),図12(b)に示されるように、その後、画像密度10%の画像を100枚連続形成した後も軸方向におけるトナー濃度の変化は見られないことが理解される。
このように本発明の実施の形態1,2に係る現像装置24,24Aによれば、軸方向に傾斜して設置された場合でも、安定してトナー濃度を維持することができ、軸方向のトナー濃度ムラによる形成画像の品質低下を防止することができる。
10:画像形成装置、21:感光体ドラム、22:帯電装置、23:露光装置、24,24A:現像装置、25:バイアス電源、26:転写装置、27:バイアス電源、28:被記録媒体、29、クリーニング装置、31:ハウジング、32:現像剤担持体、33:現像剤収容部、34:現像剤退避部、35:トナー収容部、36a:サプライオーガー、36b:アドミックスオーガー、37:トナー供給路、37a:トナー供給口、39,39A:現像剤仕切部材、39a,39b,39p,39q:ベースプレート、39s:ガイド斜面、39d:上端部、39e:下端部、40:壁面、40a:規制部、41:せき止め部、50:定着装置、51:加熱ロール、52:加圧ロール100:現像装置、111:現像剤分離手段、132:現像剤担持体、133:現像剤収容部、134:現像剤退避部、135:トナー収容部、136:現像剤撹拌搬送部材、137:トナー補給路、139:現像剤仕切部材、321:回転スリーブ、322:磁極ロール、351:アジテータ、351:トナー撹拌搬送部材、351a:搬送羽根、351b:フィン、351c:支持部材、M:隔壁、Rc:中央部領域、Re:折り返し領域、Rs:端部領域