以下に、図を用いて本発明に係る現像装置を備えた画像形成装置の一実施形態について具体的に説明する。なお、これら実施形態は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれらの実施形態により限定されるものではない。
以下に図1〜図10を用いて本発明に係る現像装置を備えた電子写真方式の画像形成装置の第1実施形態の構成について説明する。
(画像形成装置)
図1により本発明に係る現像装置を備えた画像形成装置の第1実施形態について説明する。図1に示す画像形成装置本体17内には画像形成手段となる画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdが並設され、各々異なった色のトナー画像が潜像、現像、転写のプロセスを経て記録シート等の記録材18上に形成される。以下、記述の煩雑化を防ぐために、イエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの4つの画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdを画像形成部Pで代表させて説明するものとし、関連する次の各プロセス手段についても同様とする。
画像形成部Pは、それぞれ専用の像担持体となる感光ドラム30a,30b,30c,30dを具備し、各感光ドラム30a〜30d上に各色のトナー画像が形成される。各感光ドラム30a〜30dに隣接して中間転写ベルトからなる中間転写体130が設置される。該感光ドラム30a〜30dに形成された各色のトナー画像が中間転写体130上に一次転写され、二次転写ローラ11が設けられた二次転写部で記録材18上に転写される。更に、トナー画像が転写された記録材18は、定着部9で加熱及び加圧することによりトナー画像を記録材18に定着した後、記録画像として装置外に排出される。
感光ドラム30a〜30dの外周には、それぞれドラム帯電器20a,20b,20c,20d、現像装置100a,100b,100c,100d、一次転写帯電器24a,24b,24c,24d及びクリーナ40a,40b,40c,40dが設けられる。画像形成装置本体17の上方部には更に光源装置13a,13b,13c,13d及びポリゴンミラーが設置されている。
光源装置13a〜13dから発せられたレーザー光をポリゴンミラーを回転して走査する。その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、回転多面鏡で等角度走査されたビームを結像面上で等速走査させる機能を有するfθレンズにより感光ドラム30a〜30dの母線上に集光して露光する。これにより、該感光ドラム30a〜30d上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。
現像装置100a〜100dには、現像剤としてそれぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのトナーが図示しない供給装置により所定量充填されている。現像装置100a〜100dは、それぞれ感光ドラム30a〜30d上(像担持体上)に形成された静電潜像にトナー及び磁性キャリアを含む現像剤を用いて現像する。そして、シアントナー画像、マゼンタトナー画像、イエロートナー画像及びブラックトナー画像として可視像化する。
中間転写体130は、図1の矢印A方向に感光ドラム30の回転周速度と同じ周速度をもって回転駆動されている。感光ドラム30a上に形成担持されたイエロートナー画像は、感光ドラム30aと中間転写体130とのニップ部を通過する。その過程で、中間転写体130に印加される一次転写バイアス電圧により形成される電界と圧力により、中間転写体130の外周面に中間転写されていく。
11は二次転写ローラで、中間転写体130に対応して平行に軸受させて該中間転写体130の下面部に接触させて配設してある。二次転写ローラ11には、二次転写バイアス電源によって所望の二次転写バイアス電圧が印加されている。中間転写体130上に重畳転写された合成カラートナー画像の記録材18への転写は、給送カセット10からレジストローラ12、図示しない転写前ガイドを通過する。そして中間転写体130と二次転写ローラ11との当接ニップ部に所定のタイミングで記録材18が給送される。同時に二次転写バイアス電圧がバイアス電源から印加される。この二次転写バイアス電圧により中間転写体130から記録材18へ合成カラートナー画像が転写される。
以下、同様にマゼンタトナー画像、シアントナー画像、ブラックトナー画像が順次、中間転写体130上に重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が形成される。
一次転写が終了した感光ドラム30a〜30dは、それぞれのクリーナ40a〜40dにより転写残トナーをクリーニングして除去され、引き続き次の静電潜像の形成に備えられる。尚、中間転写体130上に残留したトナー及びその他の異物は、中間転写体130の表面に不織布からなるクリーニングウエブ19を当接させて拭い取るようにしている。
トナー画像の転写を受けた記録材18は、二次転写ローラ11が設けられた二次転写部と定着部9との間に設けられた記録材搬送部を通り、定着部9に導入される。そして、熱と圧力を加えることでトナー画像が記録材18上に定着され、フルカラープリントとして排出トレイ63に排出される。
尚、本実施形態に係る画像形成装置の構成は一例であって、様々な方式が適用可能であり、基本的には上記した様に帯電、露光、現像、転写、定着の工程で画像が形成される。
(現像装置の概略構成)
次に、前述した画像形成装置に設置されている本実施形態に係る現像装置100について、図2を用いて説明する。図2(a)は、本実施形態に係る現像装置100を示す断面図であり、現像装置100を背面から見た図である。図2(b)は上部から見た断面図である。現像装置100aは、現像容器21を備える。現像容器21には、非磁性トナー(以下、単に「トナー」という)と、磁性キャリアと、を含有する二成分現像剤が収容されている。現像剤については詳しく後述する。
現像容器21の内部は、隔壁7によって現像室4と攪拌室5とに区画され、該攪拌室5の上方には現像装置100とは別体のトナー貯蔵室50が設けられ、該トナー貯蔵室50内には補給用トナー(非磁性トナー)が収容されている。尚、現像容器21の攪拌室5の上部にはトナー補給口8が設けられ、該トナー補給口8を経てトナー画像形成に消費されたトナーに見合った量の補給用トナーが攪拌室5内に落下補給される。ここで、この現像装置100における二成分現像方式について説明する。
現像容器21の感光ドラム30側の部位には開口部が形成され、現像手段として現像剤担持体となる中空で円筒状の現像スリーブ1が該開口部から外部に突出するように構成されている。現像スリーブ1は現像容器21の開口部近傍に回転可能に組み込まれている。現像スリーブ1は感光ドラム30上(像坦持体上)に形成された静電潜像にトナー及び磁性キャリアを含む現像剤を用いて現像する現像手段として構成される。
尚、本実施形態においては、現像スリーブ1の直径は20(mm)のものを用いている。また、現像スリーブ1は、例えば、ステンレス(SUS305AC)のような、非磁性材から形成され、その内部には磁性発生手段となる磁石2が現像スリーブ1の内部に固定配置されている。
現像スリーブ1の内部に固定配置された磁石2は、感光ドラム30と現像スリーブ1との対向部である現像領域の近傍に配設される現像磁極である磁極S1を有する。更に、現像スリーブ1上に担持された現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材である規制ブレード3に対向した現像剤層厚規制磁極である磁極N1を有する。更に、現像剤を現像スリーブ1上に担持させながら搬送するための磁極N2,S2,N3を有する。
また、磁石2は、現像磁極である磁極S1が感光ドラム30に対してドラム回転方向に5°上流になるように現像スリーブ1内に配置されている。
磁極S1は、現像スリーブ1と感光ドラム30との間の現像部の近傍に磁界を形成させ、該磁界によって磁気ブラシを形成するようになっている。上記現像部において、現像スリーブ1の回転とともに、図2(b)に示す矢印B方向に運ばれてきた現像剤は感光ドラム30と接触し、該感光ドラム30上の静電潜像は現像されることとなる。このとき、本実施形態では、現像スリーブ1と感光ドラム30との近接位置である現像部において、現像スリーブ1と感光ドラム30とは互いに逆方向に移動するようになっている。
磁極S1で現像を終了した現像剤は、磁極N1及び磁極N2により形成された反発磁界によって現像スリーブ1上から剥ぎとられ、現像室4に落下することとなる。
尚、現像スリーブ1には現像バイアス電源により、現像バイアス電圧として、交流電圧に直流電圧を重畳した振動バイアス電圧が印加される。感光ドラム30上の静電潜像の暗部電位(非露光部電位)と明部電位(露光部電位)とは、上記振動バイアス電位の最大値と最小値との間に位置している。これによって現像部に、向きが交互に変化する交番電界が形成される。この交番電界中でトナーと磁性キャリアとが激しく振動され、トナーが現像スリーブ1及び磁性キャリアヘの静電的拘束を振り切って潜像電位に対応した量のトナーが感光ドラム30に付着する。
尚、本実施形態においては、感光ドラム30上の暗部電位を−600V、明部電位を−200Vとする。現像スリーブ1には、直流バイアス電圧として、−450Vの直流電圧が印加される。そして、交流バイアス電圧として、電圧Vpp=1.8kV、周波数F=2kHzの交流電圧が印加されている。周期的なパルス波を出したときの周期とパルス幅との比となるデューティ(Duty)比は現像飛翔側に35%である。そして、図3に示すように、現像バイアス電圧である振動バイアス電圧は、最小値の電圧側に時間T1、最大値の方の電圧側に時間T2、交互にかけられるバイアス電圧とすれば、T1:T2は65:35となる。
(現像剤循環構成)
現像容器21内で現像スリーブ1に近い方の現像室4には、現像スリーブ1と略平行に配置され、現像剤を攪拌搬送するスクリュー部材4aが設けられている。現像スリーブ1から遠い方の攪拌室5には、現像剤を攪拌搬送するスクリュー部材5a,5b,5cが、同軸上に複数配置して設けられている。そして、このスクリュー部材4a及びスクリュー部材5a,5b,5cによって、現像剤が搬送及び撹拌され、現像容器21内を図2(b)に示す矢印B方向に循環する。スクリュー部材4aとスクリュー部材5a,5b,5cとの間には両端部で現像室4と攪拌室5とで連絡可能な開口部7a,7bを設けた隔壁7が設けられている。
次に現像装置100の構成について図2(b)を参照して説明する。図2(b)に示すように、スクリュー部材4aとスクリュー部材5b,5b,5cとは現像容器21内に略平行に配置され、それらの間はスクリュー部材4aとスクリュー部材5a,5b,5cとの間を現像剤が行き来しないように隔壁7によって仕切られている。現像容器21の長手方向両端部には隔壁7がなく、現像剤がスクリュー部材4aとスクリュー部材5a,5b,5cとの間を行き来できるように開口部7a,7bが設けられている。スクリュー部材4aとスクリュー部材5a,5b,5cとは図2(b)に示すように上から見ればそれぞれ左右反対方向に現像剤を循環搬送するようになっているため、現像容器21内には現像剤が途切れることなく回るような循環経路が形成される。
(スクリュー部材の構成及び駆動構成)
ここで、スクリュー部材4a,5a,5b,5cの構成と駆動方法について説明する。実際にスクリュー部材4a,5a,5b,5cを駆動したときの回転数の比、及びそのときの現像剤の循環搬送状態については後述する。
スクリュー部材4a及びスクリュー部材5a,5b,5cは、それぞれ連続した螺旋状のスクリュー羽根4a2,5a2,5b2,5c2を有する。そして、該スクリュー部材5a,5b,5cのスクリュー羽根5a2,5b2,5c2の離間ピッチは同じ間隔に設定されている。スクリュー部材5a,5b,5cは、互いに異なる単位時間当たりの回転数Ra,Rb,Rcで回転可能なように構成される。なお、本実施形態ではスクリュー部材5a,5b,5cのスクリュー羽根5a2,5b2,5c2の離間ピッチを同じ間隔に設定した。他に搬送、攪拌能力が互いに異なる形状やスクリュー羽根5a2,5b2,5c2の離間ピッチを互いに異なるように設定することも可能であり、これに限定されるものではない。
また、スクリュー部材5a,5b,5cは、互いに異なる単位時間当たりの回転数Ra,Rb,Rcで回転可能に構成される。本実施形態では、スクリュー部材5aと、スクリュー部材5cとが同一の単位時間当たりの回転数Rで回転するようにギア比等の設定を行った。しかし、これに限定されるものではない。ギア比等の駆動入力については以下に説明する。
スクリュー部材4aのスクリュー軸4a1の両端部は、現像容器21を貫通して回転自在に軸支されており、その両端部にはスクリュー部材5a,5c側と駆動を連結させるためのギア41,42が固着されている。
攪拌室5におけるスクリュー部材は、同軸上に配置されたスクリュー部材5a,5b,5cに複数に分かれており、それぞれ独立して回転可能なように設定されている。これにより複数のスクリュー部材5a,5b,5cの互いの回転速度比を互いに異なる複数の画像形成プロセススピードやトナー補給手段となるトナー補給口8から補給されるトナーの補給量等の作像条件に応じて変更する。
攪拌室5の現像剤搬送方向(図2の左右方向)の中央部に配置されるスクリュー部材5bは、スクリュー羽根5b2が設けられる大径のスクリュー軸5b1の両側に小径の回転軸5b3,5b4が固着されている。そして、該回転軸5b3,5b4は現像容器21を貫通して回転自在に軸支されている。スクリュー部材5a,5cのスクリュー軸5a1,5c1はスクリュー軸5b1の外径と同径で回転軸5b3,5b4に対して回転自在に外装される円筒状部材で構成される。そして、該スクリュー軸5a1,5c1のそれぞれの両端部に取り付けられたベアリング部材531,532,533,534を介して回転軸5b3,5b4に対して回転自在に支持されている。また、スクリュー軸5a1,5c1のそれぞれの一端部は現像容器21を貫通して回転自在に軸支されている。
スクリュー部材5aは、スクリュー部材5bよりも現像剤搬送方向上流側(図2(b)の左側)に位置し、スクリュー部材5bと同軸上に配置されている。スクリュー部材5aのスクリュー軸5a1の現像剤搬送方向上流側の一端部は現像容器21を貫通し、両端部側に取り付けられたベアリング部材531,532を介して回転自在に支持されている。なお、スクリュー部材5aのスクリュー軸5a1上に配されたスクリュー羽根5a2は、スクリュー部材5bのスクリュー軸5b1と干渉しないように配置されている。また、スクリュー部材5aにおいて、現像容器21を貫通した現像剤搬送方向上流側の端部には、スクリュー部材4aのスクリュー軸4a1に固着されたギア42と噛合するギア52が固着されている。
スクリュー部材5cは、スクリュー部材5bよりも現像剤搬送方向下流側(図2(b)の右側)に位置し、スクリュー部材5bと同軸上に配置されている。スクリュー部材5cのスクリュー軸5c1の現像剤搬送方向下流側の一端部は現像容器21を貫通し、両端部側に取り付けられたベアリング部材533,534を介して回転自在に支持されている。なお、スクリュー部材5cのスクリュー軸5c1上に配されたスクリュー羽根5c2は、スクリュー部材5bのスクリュー軸5b1と干渉しないように配置されている。また、スクリュー部材5cにおいて、現像容器21を貫通した現像剤搬送方向下流側の端部には、スクリュー部材4aのスクリュー軸4a1に固着されたギア41と噛合するギア51が固着されている。
スクリュー部材5aのスクリュー軸5a1の一端部、及びスクリュー部材5bの回転軸5b4の一端部には、それぞれスクリュー部材5a,5b,5cを回転駆動する駆動手段となるモータ92,91が取り付けられている。本実施形態では、モータ91がスクリュー部材5bの回転駆動源となっており、モータ92がスクリュー部材5a,4a,5cの回転駆動源となっている。本実施形態では、スクリュー部材5aのスクリュー軸5a1に設けられたギア52がスクリュー部材4aのスクリュー軸4a1に設けられたギア42に回転駆動力を伝達し、スクリュー部材4aを回転駆動する。同時に、スクリュー部材4aのスクリュー軸4a1に設けられたギア41がスクリュー部材5cのスクリュー軸5c1に設けられたギア51に回転駆動力を伝達し、スクリュー部材5cを回転駆動させる構成になっている。
なお、以下には、現像容器21の攪拌室5側に設けられるスクリュー部材5a,5b,5cの構成についての説明を主に行うが、現像室4側に設けられるスクリュー部材4aについても同様に構成することが出来る。
(トナー濃度検知及びトナー補給の概略構成)
スクリュー部材5aの後方の壁面となる現像剤搬送方向上流側(図2(b)の左側)には、画像形成時に消費されたトナー量を検出する検出手段としてのトナー濃度センサ6が設けられている。トナー濃度センサ6としては、本実施形態では、トナーと磁性キヤリアとの混合比として見掛けの透磁率変化を検知するインダクタンス検知方式を採用したものを使用した。トナー濃度センサ6のセンサ面に対して現像剤が滞留すると、現像剤のトナー濃度を正確に検出できなくなる。このため、トナー濃度センサ6のセンサ面に現像剤が滞留しないように、該トナー濃度センサ6は、そのセンサ面がスクリュー部材5aの近傍で現像剤面に対して垂直になるように配置されている。尚、ここで、トナー濃度とは、トナーと磁性キャリアとの混合比であり、T/D比と称されるものである。
このように、攪拌室5において、トナー濃度センサ6をスクリュー部材5aの現像剤搬送方向上流側(図2(b)の左側)に設けているのは、画像形成にトナーが使用されてトナー濃度が下がった現像剤に対して直ちにトナー濃度を検出するためである。
現像室4のスクリュー部材4a側に存在して画像形成に用いられた現像剤は前述した循環経路によりスクリュー部材5a側に送られ、トナー濃度センサ6によりトナー濃度が検出される。その検出結果に応じてトナー濃度センサ6の現像剤搬送方向下流側(図2(b)の右側)に設けられたトナー補給口8を通じてトナー貯蔵室50a,50b,50c,50dから適正量のトナーが現像剤に補給される。これによって現像剤のトナー濃度が常に一定に保たれる。
次に、現像剤を順調に攪拌及び搬送でき、さらに良好な画像形成を行うためには、次の点に留意しなければならない。
(現像剤の循環搬送バランス)
第1に、図2(b)において、現像室4のスクリュー部材4aと、攪拌室5側に設けられるスクリュー部材5a,5b,5cとの現像剤の搬送速度のバランスを一定に保つ必要がある。なぜならば、スクリュー部材4aと、スクリュー部材5a,5b,5cとの現像剤の搬送速度が異なると、現像剤の受け渡し部にて現像剤が滞り、現像剤の循環性が大きく損なわれ、現像剤詰まりや現像剤溢れの原因になってしまうためである。すなわち、攪拌室5と現像室4の現像剤の受け渡し部においては、現像剤の受け渡し量は一定である必要がある。
また、攪拌室5内においては、スクリュー部材5a,5b,5cに分割された構成になっている。それぞれの単位時間当たりの回転数Ra,Rb,Rcを設定する際には、現像剤の循環性が保たれる範囲で単位時間当たりの回転数Ra,Rb,Rcを制御しなければならない。スクリュー部材5a,5b,5c間で現像剤の搬送速度差が大きくなりすぎると、現像剤の循環性が大きく損なわれ、現像剤詰まりや現像剤溢れの原因になってしまう。ただし、後述するが、現像剤面高さを制御して現像剤の攪拌性能を向上させることも重要で、この現像剤面高さ制御は現像剤の循環搬送バランスが大きく崩れない範囲で行うことが重要になってくる。
(現像剤面高さ)
第2に、図2(a)において、スクリュー部材4aが設けられた現像室4、及びスクリュー部材5a,5b,5cが設けられた攪拌室5における現像剤面高さを所定の高さに維持する必要がある。
現像室4において、この現像剤面の高さが低過ぎると、スクリュー部材4aにより搬送される現像剤量が全体量として少なくなり過ぎる。この場合、現像スリーブ1に供給される現像剤が規制ブレード3の規制部にて滞留する量が減少し、この部分でのスクリュー部材4aからの現像剤の供給ムラを招き易くなる。その結果、スクリュー羽根4a2の離間ピッチで画像に濃度ムラができる所謂スクリューピッチムラが生じる。
逆に現像剤面が高過ぎて現像スリーブ1の現像剤が引き剥がされる部分を完全に現像剤が覆ってしまった場合、剥がされた現像剤が覆われた現像剤により押さえ付けられて現像スリーブ1上に戻ってしまう。その場合にスクリュー部材4aのスクリュー羽根4a2の近傍部で現像剤の引き剥がしが比較的良好に行なわれるのに対して、それ以外の部分が引き剥がされないでいるためにベタ画像印字時のスクリューピッチムラの発生を招いてしまう。従って、現像剤面高さは現像スリーブ1の現像剤が引き剥がされる部分の反発極間を完全に覆うことなく、規制ブレード3の規制部を十分に覆うような高さとするのが望ましい。
また、攪拌室5においては、スクリュー部材5a,5b,5c側は補給された新しいトナーと現像容器21内の現像剤の混合攪拌という目的があるが、この現像剤面高さが高すぎる場合、スクリュー部材5a,5b,5cよりも高い位置にある現像剤は撹拌され難い。特に、トナー補給を行うときに、現像剤面がスクリュー部材5aよりも高い位置にある場合、現像剤中の磁性キャリアよりも比重の小さいトナーは現像剤面に浮いたままになってしまうことがある。こうなると、補給されたトナーは攪拌室5内にある現像剤とはなかなか混ざらず、殆ど未帯電のトナーがそのまま現像スリーブ1側に供給されてしまい、画像かぶりや濃度不良等の問題が発生する。
一方、スクリュー部材5a,5b,5cでの現像剤面の高さが低すぎると、補給されたトナーが回転しているスクリュー部材5a,5b,5cに直接接触する量が多くなる。この場合、トナーの飛散が多くなり、トナーが直接、現像室4側に飛散してしまい、画像かぶりが発生し易いという問題になる。或いは攪拌室5の現像剤搬送方向下流側(図2(b)の右側)に飛散してしまう。これにより、現像剤がスクリュー部材5a,5b,5cのスクリュー軸5a1,5b1,5c1を中心とした周方向にせん断されつつ回転して移動する距離である攪拌搬送経路長が短か過ぎて攪拌不良となり、同じく画像かぶりの原因になってしまう。
即ち、攪拌室5側においては、トナー補給口8から補給された新しいトナーを効率良く現像剤中に取り込み、その後で効率良く攪拌、混合、微分散する構成が重要になる。
現像剤面高さと、トナー攪拌性能については、図5に示す比較例1、2を用いてさらに詳細に説明する。図5は比較例1、2において攪拌室5に設けられるスクリュー部材5a,5b,5cの構成及び現像剤高さを断面方向から見た概略図である。
図5(a)に示す比較例1は、現像剤の攪拌搬送能力がスクリュー部材5a,5b,5cの長手方向で一定である場合で、各スクリュー羽根5a2,5b2,5c2の離間ピッチが同ピッチで同軸上に配置され、スクリュー部材5a,5b,5cは一体的に回転する。この場合の現像剤面高さはスクリュー部材5a,5b,5cの長手方向で略一定になる。このとき、現像剤面がスクリュー部材5a,5b,5cよりも高い場合は、補給されたトナーが現像剤の中に取り込まれ難くなり、現像室4にくるまでに十分に帯電付与されないトナーの存在確立が高くなってしまう。一方、現像剤面がスクリュー部材5a,5b,5cよりも低い場合は、補給されたトナーが現像剤に取り込まれる際の取り込み不良は少なくなる。トナー補給口8から補給されたトナーがスクリュー部材5aのスクリュー羽根5a2に直接接触し易くなる。このため、該スクリュー羽根5a2に直接接触したトナーが攪拌室5の現像剤搬送方向下流側(図5の右側)に飛散し、同じく十分に帯電付与されないトナー量が多くなってしまう可能性がある。すなわち、トナー補給口8近傍では補給されたトナーが直接、スクリュー部材5aのスクリュー羽根5a2に接触し難い。さらに補給トナーの現像室4内への取り込み性能が十分である現像剤面高さが要求され、図5(a)に示すように、現像剤面高さが一定である場合は、現像剤循環搬送バランスを取るのが困難になってくる。
図5(b)に示す比較例2は、現像剤の攪拌搬送能力を高めるスクリュー部材5a,5b,5cを用いた場合で、この場合の現像剤面高さは、図5(b)のようになる。スクリュー部材5a,5b,5cの構成は従来用いられている構成で、同軸上で一体的に回転するスクリュー羽根5a2,5b2,5c2の離間ピッチを調整すると共に、現像剤の攪拌性能の向上を行うフィン部材16が設けられている。まず、攪拌室5の中央部に配置されるスクリュー部材5bでは、現像剤の進行方向(図5の左から右方向)への搬送速度Vが速くなるように、スクリュー羽根5b2の離間ピッチが広く取られている。一方、中央部のスクリュー部材5bの上流側及び下流側領域では、現像剤の搬送速度Vが中央部よりも遅くなるように、中央部よりもスクリュー羽根5a2,5c2の離間ピッチが狭くなっている。さらに、現像剤の攪拌性能を向上させるためにスクリュー軸5a1,5c1のスクリュー羽根5a2,5c2を避けた位置にフィン部材16が設けられている。このようなスクリュー部材5a,5b,5cの構成を用いると、攪拌室5の中央部はその上流側や下流側よりも現像剤の搬送速度Vが速いため、現像剤面高さが低くなる。従って、トナー補給口8から補給されたトナーがスクリュー部材5bの下部方向へ移動し易くなるため、補給トナーの現像剤への取り込み性能が格段に向上する。一方、攪拌室5の中央部よりも現像剤搬送方向下流側(図5(b)の右側)の領域においては、中央部よりも現像剤の搬送速度Vが遅い。このため、特にスクリュー羽根5b2からスクリュー羽根5c2に移行するスクリュー羽根の離間ピッチが異なる境界近傍で、現像剤の搬送速度Vb,Vcの差によって現像剤面高さが高くなる。この現像剤面高さが高くなった部分では、現像剤の搬送速度Vが遅く、さらにフィン部材16によって十分に攪拌される。また、攪拌室5の中央部よりも搬送方向上流側の領域においては、中央部よりも搬送速度Vが遅いため、中央部よりも現像剤面高さが高くなる。この現像剤面高さは、トナー補給口8から補給されたトナーが直接、スクリュー羽根5a2に接触し難い高さに調整することが好ましい。このように現像剤面高さを調整することによって、補給トナーの取り込み性能や攪拌性能が満たされ、現像剤循環搬送バランスがとり易い構成になっている。
以上のように、現像剤面高さに関しては、トナー補給口8の近辺では、ある程度現像剤面高さが高く、その下流側で補給トナーの取り込み性能を上げるために現像剤面高さを下げる。更にその下流側で攪拌性能を上げるために現像剤の搬送速度Vを落とし、現像剤面高さを上げることが望ましい。
(攪拌搬送能力とトナー帯電付与性)
次に、現像剤の攪拌搬送能力とトナー帯電付与性について説明する。まず、図6(a)に図5(a)に示す比較例1の現像容器21内に収容されたトナー粒子分布に対するトナー帯電量分布を表す。図6(a)の縦軸はトナー粒子分布数であり、横軸は帯電量である。横軸の帯電量は右側がプラス、左側がマイナスである。図2(b)に示すスクリュー部材5cからスクリュー部材4aへ現像剤を受け渡す隔壁7の一端部に設けられた開口部7bの部位を測定ポイントCとする。図5(a)に示す比較例1の場合、トナー補給口8から補給されたトナーがスクリュー部材5aのスクリュー羽根5a2に直接接触して飛散したり、或いは、補給されたトナーが十分に現像剤の中に取り込まれなかった。このために、現像剤の攪拌及び混合が十分に行なわれず、帯電量が0近傍にあるトナー量が増え、帯電不良のトナーが増えていることが分かる。トナーは負極性であるので0よりマイナス側が好ましい。帯電付与が十分できていないために、トナーの飛散や画像かぶりが生じ易い状態になっている。
一方、図6(b)は図5(b)に示す比較例2の現像容器21内に収容されたトナー粒子分布に対するトナー帯電量分布を表す。図5(b)に示す比較例2の場合、トナー補給口8から補給されたトナーがスクリュー部材5aのスクリュー羽根5a2に直接接触して飛散することがない。さらには攪拌室5の中央部で現像剤面高さが低くなっているため、補給されたトナーが現像剤の中に十分に取り込まれ、その後、現像剤の搬送速度Vが遅くなった部分で十分に攪拌されている。これにより、図6(b)に示すように、帯電量が0近傍のトナーが非常に少ないことが分かる。つまり、トナーの飛散や画像かぶりが生じることが少ない。
(スクリュー部材の動作説明)
本実施形態は、画像形成装置の画像形成プロセススピードが変わったときでも、(1)現像剤の循環搬送バランスを確保する。(2)現像剤面高さを適正化し、現像剤へのトナー取り込み性能、攪拌及び混合性能を上げる。(3)トナー帯電付与性能を上げる。これらの3点を解決した。なお、以下には、攪拌室5側のスクリュー部材5a,5b,5cの構成についての説明を主に行うが、現像室4側のスクリュー部材4aも同様の構成を用いることが出来る。
本実施形態では、図7に示すように、スクリュー部材5a,5b,5cのスクリュー羽根5a2,5b2,5c2の離間ピッチを何れも16(mm)とした。また、スクリュー部材5a,5cのスクリュー軸5a1,5c1にはスクリュー羽根5a2,5c2を避ける位置に攪拌及び混合性能を促進するための板状部材からなるフィン部材16を設けた。フィン部材16はスクリュー羽根5a2,5c2のそれぞれの離間ピッチ16(mm)に対して2個取り付けた。フィン部材16の構成は、図7(b),(c)に示すように、幅が4(mm)、高さが5(mm)、厚さが1(mm)の板状部材を採用した。また、このときのスクリュー羽根5a2,5b2,5c2の外径は何れも20(mm)とし、スクリュー軸5a1,5b1,5c1の外径は何れも10(mm)とした。尚、本実施形態では、中央部に設けらるスクリュー部材5bのスクリュー軸5b1の大径部が10(mm)で、その両側に設けられた回転軸5b3,5b4の外径は8(mm)とした。
また、攪拌室5におけるスクリュー部材5a,5b,5c全体の長さは、合計で360(mm)とし、スクリュー部材5a,5b,5cのそれぞれの長さが120(mm)とした。スクリュー部材5a,5b,5cの長さについては、スクリュー部材5aのトナー補給口8の位置における補給トナーの飛散防止及び取り込み性を重視した構成である必要がある。またトナー補給口8の現像剤搬送方向下流側(図2(b)の右側)にスクリュー部材5bを設けた構成であることが重要である。スクリュー部材5bの構成は、現像剤面の高さを下げ、補給トナーの取り込み性を最重視した構成である必要があり、補給トナーの十分な取り込み性能を確保した後にスクリュー部材5cを設けた構成であることが重要である。スクリュー部材5cの構成は、現像剤の搬送速度Vを下げた上で現像剤の攪拌混合性能を最重要視した構成である必要があり、特にスクリュー部材5bと、スクリュー部材5cとの境界における現像剤の攪拌性能が重要である。また、大きくは、スクリュー部材5b以降における現像剤の攪拌混合能力の向上により、十分なトナー帯電付与性が得られることが重要である。本実施形態においては、少なくともスクリュー部材5b,5cを合計した全長が80(mm)〜100(mm)程度必要になる。ただし、現像装置100の構成や現像剤量によって、スクリュー部材5a,5b,5cの必要な長さは変わり、前述した数値に限定されるものではない。
このとき、スクリュー部材5a,5b,5cのスクリュー軸5a1,5b1,5c1の外径は、現像剤搬送方向上流側(図2(b)の左側)の方が大きいか、もしくは同径であることが望ましい。現像剤は現像剤搬送方向上流側から下流側に向かって(図2(b)の左側から右側に向かって)搬送される。現像剤搬送方向下流側のスクリュー軸の外径が大きい場合、スクリュー部材5a,5b,5cの連結部分で現像剤による圧縮が起こり、トナーの凝集が発生し易くなる。
次に、各スクリュー部材5a,5b,5cの回転動作について図4及び図8を用いて説明する。
本実施形態においては、画像形成動作の画像形成プロセススピードを300(mm/sec)と、100(mm/sec)との2種類を持つ画像形成装置を用いた。なお、上記画像形成プロセススピードは、紙種、環境、光沢モード、その他のモード等、様々な条件によって決まり、上記の2種類に限定されるものではない。
まず、図4に示すように、制御部に設けられた画像形成プロセススピード判断手段により、上記何れの画像形成プロセススピードで画像形成が行なわれるかを判断する。次に、この判断結果から現像装置100内のスクリュー部材4a,5a,5b,5cの単位時間当たりの回転数(回転速度)Rを決定する。この決定された単位時間当たりの回転数(回転速度)Rに応じた信号をスクリュー部材4a,5a,5b,5cの駆動手段となるモータ91,92へ入力する。そして、それぞれのスクリュー部材4a,5a,5b,5cが決定された単位時間当たりの回転数(回転速度)Rにて回転駆動される。
図8に示すように、画像形成動作がスタートすると、ステップS1において、画像形成動作の画像形成プロセススピードが300(mm/sec)であるか否かを判定する。この判定結果に基づき、例えば画像形成プロセススピードが300(mm/sec)である場合は、ステップS2に進む。そして、スクリュー部材5a,5b,5cがそれぞれ9.0(rps;revolution per second;毎秒回転数)、10.0(rps)、9.0(rps)で回転駆動される。また、ステップS1において、画像形成プロセススピードが300(mm/sec)でない場合、本実施形態では100(mm/sec)の場合で、ステップS3に進む。そして、スクリュー部材5a,5b,5cがそれぞれ3.0(rps)、5.0(rps)、3.0(rps)で回転駆動される。尚、現像室4のスクリュー部材4aは図2(b)に示されたように攪拌室5のスクリュー部材5a,5cと同じ単位時間当たりの回転数Rにて回転駆動される。本実施形態においては、スクリュー部材4a,5a,5b,5cの単位時間当たりの回転数Rをそれぞれ前述した数値になるように設定した。スクリュー部材4a,5a,5b,5cの構成、現像剤の種類、現像剤の量、使用環境、現像剤の寿命等で、適宜適正値が異なり、これに限定されるものではない。
以上のような設定を行い、実際に現像剤の循環搬送バランスを確認したところ、何れの回転数設定においても、現像剤の滞留、現像剤溢れや現像剤詰まりを発生することなく、現像剤の循環搬送がバランス良く取れていることが確認できた。
また、トナー補給口8から補給した新しいトナーについての飛散防止性能、取り込み性能、攪拌及び混合性能、トナー帯電付与性能の確認を行った。その結果、攪拌室5の現像剤搬送方向上流側(図2(b)の左側)でトナー補給口8の近傍におけるスクリュー部材5a側では補給トナーの飛散はほとんど起こらない。未帯電トナーの現像剤搬送方向下流側(図2(b)の右側)への移動も低く抑えられていることが確認できた。また、攪拌室5の中央部に設けられたスクリュー部材5b側では、補給トナーの現像剤への取り込み性能が十分に確保され、さらに、現像剤搬送方向下流側に設けられたスクリュー部材5c側では十分な攪拌及び混合性能を確保できることが確認できた。
なお、補給トナーの現像剤内への取り込み性の確認は、現像剤とは異なる色のトナーをトナー補給口8から補給して、その色のトナーが現像剤搬送方向下流側で十分に混ざっていることからも確認できる。さらに、トナーの飛散防止性能、取り込み性能、攪拌及び混合性能の確認は、スクリュー部材5cからスクリュー部材4aへ現像剤を受け渡す隔壁7の一端部に設けられた開口部7aの部分を測定ポイントCとしたときのトナーの帯電付与性の確認からも検証できる。検証結果については、図5(b)に示す比較例2と併せて図9に示す。
比較例2として、図5(b)に示すように、スクリュー部材5a,5b,5cが同軸上で現像剤搬送方向上流側と下流側とで分割されない従来のスクリュー部材の構成を用いて検証を行った。図5(b)に示すスクリュー部材5a,5b,5cの構成としては、図7に示した本実施形態と同様に同軸上に同じ離間ピッチでスクリュー羽根5a2,5b2,5c2を設け、スクリュー軸5a1,5c1に相当する位置にフィン部材16を設けたものである。
図5(b)に示す比較例2で用いたスクリュー部材5a,5b,5cは、同軸で一体的に回転する構成であるため、画像形成プロセススピードによって、各スクリュー部材5a,5b,5cの回転速度比は変更できない。図2(b)及び図7に示す本実施形態と、図5(b)に示す比較例2で用いたスクリュー部材5a,5b,5cの画像形成動作の画像形成プロセススピードと、それぞれのスクリュー部材5a,5b,5cの回転数との関係は、以下の表1のようになる。
また、上記表1におけるそれぞれのスクリュー部材5a,5b,5cの回転数における現像剤面高さを模式的に表すと、図10のようになる。
図10から分かるように、本実施形態においては、画像形成プロセススピードによらず、現像剤面高さが適正に保たれている。一方、比較例2の場合、画像形成プロセススピード300(mm/sec)におけるスクリュー部材5a,5b,5cの回転数の場合は、現像剤面高さが適正である。画像形成プロセススピードが100(mm/sec)における現像剤面高さは、スクリュー部材5bにおいて十分に現像剤面高さが下がっていないことが分かる。これは、粉体からなる現像剤の搬送において、搬送速度Vが遅くなってくる。そうすると、固体としての影響が強くなり、スクリュー部材5a,5b,5cの回転速度に対する現像剤の進行方向(図5(b)の左から右方向)への搬送の影響が鈍くなってくることからも説明できる。また、実際に各々のスクリュー部材5a,5b,5cにおける現像剤の搬送速度Vを測定すると、表2のようになった。
現像剤の搬送速度Vの測定は、トナーの取り込み性の検証時と同様、本来の現像剤とは異なる色のトナーをトナー補給口8から補給して、その色のトナーが単位時間後に搬送された距離の算出から求めた。なお、測定値はばらつきを含めて5回測定した値の平均値とした。上記値は、スクリュー部材5a,5b,5cのスクリュー羽根5a2,5b2,5c2の離間ピッチ及びスクリュー部材5a,5b,5cの回転数を考慮すると妥当である。また、フィン部材16によるスクリュー軸5a1,5b1,5c1の周方向となるせん断方向への搬送力を考慮すると妥当である。また粉体からなる現像剤の搬送であることを考慮すると適当な数値であると考えられる。
比較例2及び本実施形態においては、画像形成プロセススピードが300(mm/sec)でのスクリュー部材5a,5b,5cの単位時間当たりの回転数Rは同じで、現像剤の進行方向における搬送速度Vも同じになる。従来例においては、この状態で現像剤の循環搬送バランス、及び現像剤面高さの適正化が行なわれている。
一方、画像形成プロセススピードが100(mm/sec)の場合、比較例2では、図10に示すように、現像剤面の高さが十分に下がっていない。これは、スクリュー部材5a,5b,5cの単位時間当たりの回転数Rの絶対値が小さくなってしまうことにより、現像剤の進行方向における搬送速度Vの絶対値が小さくなり、その結果、現像剤の搬送速度差が小さくなってしまう。さらには、現像剤の搬送速度Vの絶対値が小さくなることにより、スクリュー部材5a,5b,5cの回転速度に対する現像剤の進行方向(図5(b)の左から右方向)への搬送への影響が鈍くなってしまったことが原因と考えられる。
そこで、本実施形態のように、画像形成プロセススピードが遅い場合には、攪拌室5の中央部のスクリュー部材5bの単位時間当たりの回転数Rを上げる。画像形成プロセススピードが速い場合におけるスクリュー部材5a,5b,5cの互いの回転速度比よりも、中央部のスクリュー部材5bの回転速度比を大きくする。これによって、スクリュー部材5aと、スクリュー部材5bとの回転速度差を大きくし、現像剤面高さを適正にすることが可能になる。
上記表1のようなスクリュー部材5a,5b,5cの互いの回転速度比を用いた結果、画像形成プロセススピードが300(mm/sec)、100(mm/sec)における本実施形態及び比較例2のトナーの帯電付与性は図9に示すような結果になった。
図5(b)に示す比較例2のように従来用いられているスクリュー部材5a,5b,5cの構成においては、スクリュー部材5a,5b,5cが同軸上で現像剤搬送方向上流側と下流側とで分割されていない。このため、同軸上で且つ同一の単位時間当たりの回転数Rで回転する。このため図9に示すように、画像形成プロセススピードが300(mm/sec)の場合は、十分な攪拌及び混合性能が得られて、帯電量が0近傍のトナーが非常に少ない。画像形成プロセススピードが100(mm/sec)の場合は、十分な攪拌及び混合性能が得られず、帯電量が0近傍のトナーが増えてしまっていることが分かる。
一方、図2(b)及び図7に示す本実施形態で用いたスクリュー部材5a,5b,5cの構成のように、スクリュー部材5a,5b,5cが同軸上で現像剤搬送方向上流側と下流側とで分割される。そして、それぞれの単位時間当たりの回転数R(回転速度)で回転するように自在に設定できる構成とした。そして、画像形成プロセススピードに対応して各スクリュー部材5a,5b,5cで必要な現像剤の搬送速度差を設ける。これによって、画像形成プロセススピードに関係なく、十分な攪拌及び混合性能が得られ、図9に示すように、帯電量が0近傍のトナーが非常に少なくなり、良好な帯電状態を維持することが可能になる。
以上説明したように、本実施形態のような構成を用いることにより、画像形成装置の画像形成プロセススピードが変わったときでも、(1)現像剤の循環搬送バランスが確保出来る。(2)現像剤面高さを適正化し、現像剤へのトナー取り込み性能、攪拌及び混合性能を向上することが出来る。(3)トナー帯電付与性能を向上することが出来る。これにより、現像剤の循環性悪化による現像剤溢れや現像剤詰まり、或いは、トナー飛散や画像かぶりを発生させることがない。さらには、トナーの帯電付与性を安定させ、安定的に現像剤の攪拌搬送能力を向上させることが出来る。その結果、出力画像濃度のばらつきとして、画像信号濃度が1.0のばらつきが、従来はレンジでΔD=0.2程度であったものが、ΔD=0.1程度に抑えることができ、より安定した画像出力が得られるようになる。
本実施形態においては、作像条件としてトナーの補給量に応じて、前記第1実施形態で説明したスクリュー部材5a,5b,5cのそれぞれの単位時間当たりの回転数R(回転速度)を変更することを特徴とする。スクリュー部材5a,5b,5cの構成は、前記第1実施形態と同様である。また、現像条件、画像形成プロセス等は、前記第1実施形態と同様である。
(スクリュー部材の動作説明)
本実施形態では、現像容器21内に補給されるトナー量が変わったときにおいても、(1)現像剤の循環搬送バランスを確保する。(2)現像剤面高さを適正化し、現像剤へのトナーの取り込み性能、攪拌及び混合性能を向上する。(3)トナー帯電付与性能を向上する。(4)現像剤の劣化を抑制する。これらを満たすように適宜、スクリュー部材5a,5b,5cの単位時間当たりの回転数Rを制御する。
まず、各スクリュー部材5a,5b,5cの回転動作について図4及び図11を用いて説明する。
本実施形態においては、前述したように、画像形成時に消費されたトナー量を検出する検出手段としてのトナー濃度センサ6は、トナーと磁性キヤリアとの混合比の見掛け上の透磁率変化を検知するインダクタンス検知方式を採用した。なおトナー消費量を検出する検出手段としては、上記に限定されるものではなく、従来から提案されている例えば出力する画像のデューティ(DUTY)を積算してトナー補給量に対応させるビデオカウントを用いる方法がある。
まず、図4に示すように、検出手段となるトナー濃度センサ6により、画像形成にトナーが使用されてトナー濃度がどの程度下がったかを検知し、その結果からトナー補給量決定手段により補給するトナー量を決定する。次に、この決定結果から回転速度決定手段により現像装置100内のスクリュー部材4a,5a,5b,5cの単位時間当たりの回転数R(回転速度)を決定する。この決定された単位時間当たりの回転数R(回転速度)に応じた信号をスクリュー部材4a,5a,5b,5cの駆動手段となるモータ91,92に入力する。そして、それぞれのスクリュー部材4a,5a,5b,5cが決定された単位時間当たりの回転数R(回転速度)にて回転駆動される。
図11に示すように、まずステップS11において、現像容器21内のトナー濃度を検出し、そのトナー濃度に応じて現像装置100へ補給するトナー量を決定する(ステップS12)。このトナー補給量の決定は、現像装置100内のトナー濃度によって異なり、例えば本実施形態においては図12のような関係になっている。すなわち、トナー濃度として現像容器21内の磁性キャリアとトナーとの混合比(T/D比)が、8.0%以上であれば、トナー補給量は0(g)である。T/D比が7.75%以上で8.0%よりも小さければ、トナー補給量は0.5(g)である。T/D比が7.5%以上で7.75%よりも小さければ、トナー補給量は1.0(g)である。T/D比が7.5%以下であれば、トナー補給量は1.5(g)となる。ここで、本実施形態においては、以下の表3に示すように、ステップS13において、トナー補給量が0(g)の場合は、ステップS14に進み、スクリュー部材5a,5b,5cがそれぞれ9.0(rps)、8.0(rps)、9.0(rps)で回転駆動される。また、ステップS15において、トナー補給量が0.5(g)の場合は、ステップS16に進み、スクリュー部材5a,5b,5cがそれぞれ9.0(rps)、9.0(rps)、9.0(rps)で回転駆動される。また、ステップS17おいて、トナー補給量が1.0(g)の場合は、ステップS18に進み、スクリュー部材5a,5b,5cがそれぞれ9.0(rps)、10.0(rps)、9.0(rps)で回転駆動される。また、ステップS19において、トナー補給量が1.5(g)の場合は、ステップS20に進み、スクリュー部材5a,5b,5cがそれぞれ9.0(rps)、11.0(rps)、9.0(rps)で回転駆動される。尚、現像室4のスクリュー部材4aは図2(b)に示されたように攪拌室5のスクリュー部材5a,5cと同じ単位時間当たりの回転数Rにて回転駆動される。
図12においては、T/D比が8%から7.5%までの変化に対応したトナー補給量の決定を行い、またT/D比が0.25%刻みでトナー補給量を変えているが、さらに細かく分割しても構わない。また、T/D比が7.5%よりも小さい値のときの設定を行っても構わない。従って、現像装置100内におけるトナー濃度の変化と、トナー補給量との関係は、これに限定されるものではない。本実施形態においては、スクリュー部材5a,5b,5cの単位時間当たりの回転数Rをそれぞれ前述した数値になるように設定した。スクリュー部材5a,5b,5cの構成、現像剤の種類、現像剤の量、使用環境、現像剤の寿命等で、適宜適正値が異なり、これに限定されるものではない。
以上のような設定を行い、実際に現像剤の循環搬送バランスを確認したところ、何れの回転数設定においても、現像剤の滞留、現像剤溢れや現像剤詰まりを発生することなく、現像剤の循環搬送バランスが良く取れていることが確認できた。
また、トナー補給口8から補給したトナーについての飛散防止能力、取り込み性能、攪拌及び混合性能、トナー帯電付与性能の確認を行った。その結果、トナー補給口8の近傍でスクリュー部材5aでの補給トナーの飛散はほとんど起こらず、未帯電トナーの現像剤搬送方向下流側への移動も低く抑えられていることが確認できた。また、攪拌室5の中央部に設けられたスクリュー部材5bで補給トナーの現像剤内への取り込み性が十分に確保され、さらに、現像剤搬送方向下流側のスクリュー部材5cでは十分な攪拌及び混合性能を確保できることが確認できた。これは、各々のトナー補給量に対して、上記表3に示すようなスクリュー部材5a,5b,5cの回転制御を行うと、どのトナー補給量においても図6(b)に示すような帯電付与分布に近い帯電状態になることから確認できる。
また、表3のそれぞれのスクリュー部材5a,5b,5cの単位時間当たりの回転数Rにおける現像剤面高さを模式的に表すと、図13のようになる。
図13から分かるように、本実施形態の構成においては、各トナー補給量によってスクリュー部材5a,5b,5cがそれぞれ異なる単位時間当たりの回転数Rで回転するため、それぞれにおいて現像剤面高さが異なる。現像剤面高さは、補給されたトナーの現像装置100への取り込み性を考えると、攪拌室5のトナー補給口8の現像剤搬送方向下流側で低くなっている部分があることが重要である。さらに、その取り込まれたトナーを十分に攪拌及び混合するためには、現像剤面高さが低くなった部分の下流側で、現像剤の進行方向における搬送速度Vが遅くなって現像剤面高さが上がっている部分があることが重要である。
ところが、この攪拌及び混合の作用は、補給トナーがない場合、或いは、補給量が少ない場合は、攪拌及び混合の作用が無いほうが望ましい。なぜならば、補給トナーがない状態、或いは、補給量が少ない状態にも関わらず攪拌を常時行うと、現像剤の劣化が促進されてしまうためである。一方で、ある程度のトナーが補給された場合は、前述したような取り込み性能、攪拌及び混合性能が必要になってくる。
従って、本実施形態のように、トナー補給量に応じて、現像剤面高さを制御でき、必要に応じたトナーの取り込み、攪拌及び混合を行うことが重要になってくる。
ここで、実際に各々のスクリュー部材5a,5b,5cにおける現像剤の進行方向への搬送速度Vを測定すると、以下の表4のようになった。
現像剤の進行方向への搬送速度Vの測定は、前記第1実施形態と同様の方法を用いた。上記表4に記載した値は、スクリュー部材5a,5b,5cのスクリュー羽根5a2,5b2,5c2の離間ピッチ及びスクリュー部材5a,5b,5cの単位時間当たりの回転数Rを考慮すると妥当である。また、フィン部材16によるスクリュー軸5a1,5b1,5c1の周方向となるせん断方向への搬送力を考慮すると妥当である。また、粉体からなる現像剤の搬送であることを考慮すると適当な数値であると考えられる。
一方、トナーの劣化に関しては、従来例のスクリュー部材の構成のように、トナーの補給量に関わらず常に同じように攪拌力を向上させる。そのような構成の場合は、トナーの補給量が少ないとき、或いは、トナーの補給が行なわれない場合等には、トナーが必要以上に帯電する。その結果、現像性が下がり画像濃度が低くなったりする問題があった。本実施形態のように、トナーの補給量によって攪拌性能を変化させる構成を用いることにより、トナーに対して常に適正な帯電付与が行なわれるので、画像濃度のバラツキが小さくなる。
以上説明したように、本実施形態のような構成を用いることにより、現像容器21内に補給されるトナー量が変わったときにおいても、(1)現像剤の循環搬送バランスが確保出来る。(2)現像剤面高さを適正化し、現像剤へのトナーの取り込み性能、攪拌及び混合性能を向上することが出来る。(3)トナー帯電付与性能を向上することが出来る。(4)現像剤の劣化を抑制することが出来る。これにより、現像剤の循環性悪化による現像剤溢れや現像剤詰まり、或いは、トナー飛散や画像かぶりを発生させることがない。また、トナーの帯電付与性を安定させ、安定的に現像剤の攪拌搬送能力を向上させることが出来る。さらに現像剤の劣化を抑制することが可能になる。その結果、出力画像濃度のばらつきとして、画像信号濃度が1.0のばらつきが、従来はレンジでΔD=0.2程度であったものが、ΔD=0.1程度に抑えることができ、より安定した画像出力が得られるようになる。