JP2005337364A - 動圧軸受装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 シール部材をハウジング内周に押し込む際に発生する摩耗粉がハウジング内部に侵入しないようにする。
【解決手段】 シール部材10をハウジング7の開口部の内周7dに接着剤Mの介在の下で押し込む。シール部材10の押し込み方向前方側に回り込んだ接着剤Mは、シール部材10の外周10cとハウジング内周7dとの間の下側のテーパ状空間T1の毛細管力によって保持される。摩耗粉はテーパ状空間T1内の接着剤Mによって捕捉され、接着剤Mの固化によって接着剤M中に封じ込められる。
【選択図】 図4

Description

本発明は、軸受隙間に生じる潤滑油の動圧作用で軸部材を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置に関する。この軸受装置は、情報機器、例えばHDD、FDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置などのスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、あるいは電気機器、例えば軸流ファンなどの小型モータ用として好適である。
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化などが求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の一つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、この種の軸受として、上記要求性能に優れた特性を有する動圧軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
例えば、HDD等のディスク駆動装置のスピンドルモータに組込まれる動圧軸受装置では、軸部材をラジアル方向に回転自在に非接触支持するラジアル軸受部と、軸部材をスラスト方向に回転自在に非接触支持するスラスト軸受部とが設けられ、ラジアル軸受部として、軸受スリーブの内周面又は軸部材の外周面に動圧発生用の溝(動圧溝)を設けた動圧軸受が用いられる。スラスト軸受部としては、例えば、軸部材のフランジ部の両端面、又は、これに対向する面(軸受スリーブの端面や、ハウジングに固定されるスラスト部材の端面等)に動圧溝を設けた動圧軸受が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
通常、軸受スリーブはハウジングの内周の所定位置に固定される。また、ハウジングの内部空間に注油した潤滑油が外部に漏れるのを防止するために、ハウジングの一端側の開口部内周にシール部材を装着する場合がある。
特開2002―061641号公報
上記ような動圧軸受装置において、シール部材をハウジングの内周に固定するための一般的手段として圧入が考えられる。しかしながら、圧入では、これに伴うシール部材の外周とハウジングの内周との摺動摩擦によって摩耗粉をはじめ、微細な金属粉や樹脂粉等(以下、「摩耗粉」という。)が生成され、ハウジング内部に侵入する可能性がある。ハウジング内に侵入した摩耗粉は潤滑流体に混じって軸受部に入り、軸受の性能や寿命に好ましくない影響を与える。
圧入以外の方法でシール部材を固定する場合でも、シール部材をハウジングの内周に押し込む際に、シール部材の外周とハウジングの内周との間にかじりを生じ、同様に摩耗粉を発生するおそれがある。
本発明は、上記摩耗粉を確実に補足してハウジング内部への侵入を防止することを目的とする。
本発明は、一端が開口されると共に、他端が閉塞されたハウジングと、ハウジング内部に配置された軸受スリーブと、軸受スリーブに挿入された軸部材と、ハウジングの開口部をシールするシール部材とを具備し、軸部材と軸受スリーブとの間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で軸部材と軸受スリーブとを非接触に保持する動圧軸受装置において、シール部材の外周をハウジングの内周に接着固定すると共に、シール部材の外周とハウジングの内周との間に、接着剤を保持するテーパ状空間を介在させたものである。ハウジングの他端を閉塞する部分は、ハウジングと一体に形成する他、別部品で形成することもできる。なお、テーパ状空間は、シール部材の両端面のうち少なくとも何れか一方に開口させることができる。
上記構成によれば、シール部材をハウジングの開口部内周に押し込む際に摩耗粉が生成されたとしても、その摩耗粉が接着剤によって捕捉され、接着剤の固化によって接着剤中に封じ込められる。そのため、シール部材とハウジングとの摺動に伴うハウジング内部への摩耗粉の侵入が防止される。また、シール部材をハウジング内周に押し込む際に接着剤が潤滑剤の役目をするので、摩耗粉の発生が低減され、また、押し込み作業も容易になる。
また、テーパ状空間の毛細管力によって接着剤がテーパ状空間の縮小側に保持されるため、ハウジング内周とシール部材外周との間に確実に接着剤を介在させることができ、高い接着力が得られる。
特にシール部材をハウジング内周に押し込む際には、シール部材の押し込み方向前方側に接着剤が回り込む現象が生じ、その回り込みが顕著な場合には、接着剤が互いに当接するシール部材の端面と軸受スリーブの端面との間に入り込み、軸受性能に悪影響を与えることも予想される。この時、テーパ状空間が、ハウジングの閉塞側を漸次拡大させた形状であれば、シール部材の押し込み方向前方側に回り込んだ接着剤が、テーパ状空間の毛細管力によってテーパ状部分の縮小側に保持されるため、押し込み方向前方側への接着剤の回り込みが阻止される。また、接着剤の保持効果が高まる結果、接着剤による摩耗粉の捕捉および封じ込め効果も高まる。
一方、テーパ状空間がハウジングの開口側を漸次拡大させたものであれば、シール部材をハウジング内周に押し込んだ後は、当該テーパ状空間の毛細管力で保持された潤滑剤により当該テーパ状空間よりもハウジングの閉塞側を封止することができる。この場合、特にハウジングの内周に、当該テーパ状空間内に位置し、ハウジングの外部側に面した段部を設けておくと、シール部材の押し込み後に当該テーパ状空間内に残る接着剤の量が多くなるので、封止効果が一層高まる。
この動圧軸受装置においては、上記ハウジングの閉塞側を漸次拡大させたテーパ状空間、およびハウジングの開口側を漸次拡大させたテーパ状空間を併せ持つ形態をとることもできる。この場合、二つのテーパ状空間は軸方向に離隔させて配置され、かつそれぞれ相手側から離隔する方向に漸次拡大させた形態をとる。これにより、両テーパ状空間が奏する前述の各効果を併せて得ることができる。
以上に述べた各テーパ状空間は、シール部材の外周およびハウジングの内周のうち、少なくとも一方にテーパ面を設けることによって形成することができる。好ましくは、シール部材の外周にテーパ面を設けるのが良い。
本発明によれば、シール部材をハウジング内周に押し込む際に摩耗粉が生成されたとしても、その摩耗粉が接着剤によって捕捉され、接着剤の固化によって接着剤中に封じ込められる。そのため、摩耗粉を確実に補足することができ、摩耗粉のハウジング内への侵入を防止することができる。また、接着剤がテーパ状空間の毛細管力によってその縮小側に確実に保持されるため、高い固定力を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態に係る動圧軸受装置1を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、軸部材2に装着されたロータ(ディスクハブ)3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータ4およびロータマグネット5とを備えている。ディスクハブ3は小径円筒部3aと大径円筒部3bとを備えており、小径円筒部の外周に図示しない磁気ディスク等のディスクが一または複数枚保持される。ステータ4はブラケット6の外周に取付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3の大径円筒部3b内周に取付けられる。動圧軸受装置1のハウジング7は、ブラケット6の内周に装着される。ステータ4に通電すると、ステータ4とロータマグネット5との間の電磁力でロータマグネット5が回転し、それによって、ディスクハブ3および軸部材2が一体となって回転する。
図2は、動圧軸受装置1を示している。この動圧軸受装置1は、一端を開口すると共に、他端を閉塞した有底円筒状のハウジング7と、ハウジング7の内周に固定された軸受スリーブ8およびシール部材10と、軸部材2とを主要な構成部品して構成される。
軸受スリーブ8の内周面8aと軸部材2の軸部2aの外周面2a1との間に第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが軸方向に離隔して設けられる。また、軸受スリーブ8の下側端面8cと軸部材2のフランジ部2bの上側端面2b1との間に第1スラスト軸受部S1が設けられ、ハウジング7の底部7cの内底面7c1とフランジ部2bの下側端面2b2との間に第2スラスト軸受部S2が設けられる。尚、説明の便宜上、ハウジング7の底部7cの側を下側、これと軸方向反対の側を上側として説明を進める。
ハウジング7は、例えば、黄銅等の軟質金属材料や熱可塑性樹脂等の樹脂材料で形成され、円筒状の側部7bと、側部7bの下端に一体形成された底部7cとを備えている。側部7bの外周面のうち、その上方部分7b1は他所よりも小径に形成され、図1に示すように、この小径外周面7b1とディスクハブ3の小径円筒部3aの内周面3a1との間にラビリンスシールLが形成されている。底部7cは側部7bと別部材で形成することもできる。
軸部材2は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成され、外周面2a1を円筒状とした軸部2aと、軸部2aの下端に一体又は別体に設けられたフランジ部2bとを備えている。
軸受スリーブ8は、例えば、焼結金属からなる多孔質体、特に銅を主成分とする燒結金属の多孔質体で円筒状に形成され、ハウジング7の内周面の所定位置に固定される。
この焼結金属で形成された軸受スリーブ8の内周面8aには、第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受面となる上下2つの領域が軸方向に離隔して設けられ、該2つの領域には、例えば図3(a)に示すようなヘリングボーン形状の動圧溝8a1、8a2がそれぞれ形成される。上側の動圧溝8a1は、軸方向中心m(上下の傾斜溝間領域の軸方向中央)に対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。また、軸受スリーブ8の外周面8dには、1又は複数本の軸方向溝8d1が軸方向全長に亙って形成される。この例では、3本の軸方向溝8d1を円周等間隔に形成している。また、軸受スリーブ8の上側端面8bと下側端面8cの外周角部に、それぞれ、チャンファ8e、8fが形成される。
第1スラスト軸受部S1のスラスト軸受面となる、軸受スリーブ8の下側端面8cには、例えば図3(b)に示すようなスパイラル形状の動圧溝8c1が形成される。第2スラスト軸受部S2のスラスト軸受面となる、ハウジング底部7cの内底面7c1にもスパイラル形状の動圧溝(図示せず)が形成される。何れのスラスト軸受面においても、動圧溝の形状として、ヘリングボーン形状や放射溝形状等を採用しても良い。動圧溝を有するスラスト軸受面は、軸部材2のフランジ部2bの両端面2b1、2b2に形成することもできる。
図3(c)に示すように、軸受スリーブ8の上側端面8bは、半径方向の略中央部に設けられたV字断面の円周溝8b1により、内径側領域8b2と外径側領域8b3に区画され、内径側領域8b2には、1又は複数本の半径方向溝8b21が形成される。この例では、3本の半径方向溝8b21を円周方向に等間隔で形成している。
シール部材10は、黄銅等の金属材料や樹脂材料で環状に形成され、ハウジング7の開口側となる側部7bの上端部内周に固定されている。シール部材10の内周面10aは、上方を漸次拡径させたテーパ面状をなし、この内周面10aと、これに対向する軸部2aの円筒状の外周面2a1との間にテーパ状のシール空間Aが形成される。シール空間Aは、毛細管力によってハウジング7内部の潤滑油を保持し、そのハウジング7外部への漏れ出しを規制する。図示例とは逆に、シール部材10の内周面を円筒面状にし、これに対向する軸部2aの外周面2a1をテーパ面状にすることでシール空間Aを形成することもできる。
図4に拡大して示すように、シール部材10の下側端面10bには段差があり、段差の内径側領域10b1が軸受スリーブ8の上側端面8bと接触し、その外径側領域10b2が軸受スリーブ8の上側端面8bから離隔して当該上側端面8bとの間にヌスミ部Pを形成する。
シール部材10の外周10cは、円筒面10c1と、円筒面10c1の下端から内径側傾斜方向に延びて下側端面10bに至るテーパ面10c2と、円筒面10c1の上端から内径側傾斜方向に延びて上側端面10dに至るテーパ面10c3とで構成される。円筒面10c1は軸線と平行であり、ハウジング開口部の内周7dに接着剤を介在させたすきま嵌めで嵌合されている。
この実施形態の動圧軸受装置1は、例えば、次のような工程で組立てる。
まず、ハウジング7内に軸部材2を配し、次いで軸受スリーブ8をその内周孔に軸部2aを挿入しつつハウジング7の内周7dに押し込み、その下側端面8cをハウジング7の底部側に形成した段部7eに当接させる。これにより、軸受スリーブ8がハウジング7に対して軸方向に位置決めされる。尚、ハウジング7の内周7dに対する軸受スリーブ8の固定は、圧入、接着、圧入と接着の併用、その他の適宜の固定手段で行うことができる。
その後、シール部材10をハウジング7の一端側の開口部に押し込み、接着剤の介在の下で所定位置まで押し進め、接着剤の固化によりハウジング7に固定する。具体的には、ハウジング7の内周7dの上端部(シール部材10の固定領域)に接着剤を塗布し、その後、シール部材10をハウジング7の上端開口部から内周7dに押し込んで、シール部材10の下側端面10b(内径側領域10b1)を軸受スリーブ8の上側端面8bに当接させる。シール部材10を押し込む際、円筒面10c1と内周7dとの間に介在する接着剤が潤滑剤の役目をするので、圧入時の摩耗粉の発生が低減され、また、押し込み作業も容易になる。
図4は、シール部材10の押し込みが完了した状態を示している。この状態では、シール部材10の外周10cの円筒面10c1がハウジング7の内周7dと図示しない接着剤を介して対向する。この部分よりもハウジング7の閉塞側で第一のテーパ状空間T1が隣接し、ハウジング7の開口側で第二のテーパ状空間T2が隣接している。第一のテーパ状空間T1は、シール部材10の外周10cの下側のテーパ面10c2とハウジング7の内周7dとの間に形成され、シール部材10の押し込み方向となる下側(ハウジング閉塞側)に向かって漸次拡大した形状を有する。また、第二のテーパ状空間T2は、シール部材10の外周10cの上側のテーパ面10c3とハウジング7の内周7dとの間に形成され、ハウジング7の開口側である上方に向かって漸次拡大した形状を有する。テーパ状空間T1、T2の何れもシール部材10の下側端面10bおよび上側端面10dに開口し、特に第一のテーパ状空間T1は、ヌスミ部Pおよび円周溝8b1とも連通している。
シール部材10の押し込みに伴って、シール部材10の圧入方向前方側に回り込んだ接着剤Mは、第一のテーパ状空間T1の毛細管力によって保持される。押し込みの際、シール部材10とハウジング内周7dとのかじり等によって発生した摩耗粉は、第一のテーパ状空間T1内の接着剤Mによって捕捉され、接着剤Mの固化によって接着剤M中に封じ込められる。第一のテーパ状空間T1による接着剤Mの保持効果により、接着剤Mの軸受スリーブ8の端面8b側への流動が阻止されると共に、接着剤Mによる摩耗粉の捕捉および封じ込め効果も高められる。
また、第二のテーパ状空間T2の毛細管力によって接着剤Mが保持され、その接着剤Mによって、これよりもハウジング内部側でシール部材外周10cとハウジング内周7dとの間の隙間が確実に封止される。特にこの場合、図4に破線で示すように、第二のテーパ状空間T2に面するハウジング7の内周7dに段部12を設けておくと、シール部材10の装着後に第二のテーパ状空間T2内に残る接着剤Mの量が多くなるので、封止効果が一層高まる。
以上の実施形態では、シール部材10をハウジング7の内周7dにすきま嵌めで押し込む場合を例示したが、シール部材10をハウジング7の内周に接着剤の介在の下で圧入して固定することもできる。圧入の場合、ハウジング内周7dとの摺動で摩耗粉の発生量も多くなるが、その場合でも摩耗粉のハウジング7の内部への侵入を確実に防止することができる。
また、以上の実施形態では、第一のテーパ状空間T1および第二のテーパ状空間T2の双方を設ける場合を例示しているが、必要に応じて何れか一方のテーパ状空間のみを設けることもできる。
上記のようにして組立が完了すると、軸部材2の軸部2aは軸受スリーブ8の
内周面8aに挿入され、フランジ部2bは軸受スリーブ8の下側端面8cとハウジング7の内底面7c1との間の空間部に収容された状態となる。その後、シール部材10でシールされたハウジング7の内部空間に、軸受スリーブ8の内部気孔を含め、潤滑流体、例えば潤滑油を充満させる。潤滑油の油面は、シール空
間Aの範囲内に維持される。
軸部材2の回転時、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域
(上下2箇所の領域)は、それぞれ、軸部2aの外周面2a1とラジアル軸受隙
間を介して対向する。また、軸受スリーブ8の下側端面8cのスラスト軸受面と
なる領域はフランジ部2bの上側端面2b1とスラスト軸受隙間を介して対向し
、スラスト部材10の上側端面10aのスラスト軸受面となる領域はフランジ部
2bの下側端面2b2とスラスト軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材2
の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材2の軸部
2aが上記ラジアル軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によってラジアル方向
に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をラジアル方向に回転自
在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが構成
される。同時に、上記スラスト軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材2のフ
ランジ部2bが上記スラスト軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によって両ス
ラスト方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をスラスト方
向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部S1と第2スラスト軸受部S
2とが構成される。
前述したように、第1ラジアル軸受部R1の動圧溝8a1は、軸方向中心mに
対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法
X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている{図3(a)}。その
ため、軸部材2の回転時、動圧溝8a1による潤滑油の引き込み力(ポンピング
力)は上側領域が下側領域に比べて相対的に大きくなる。そして、この引き込み
力の差圧によって、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部2aの外周面2a1との
間の隙間に満たされた潤滑油が下方に流動し、第1スラスト軸受部S1のスラス
ト軸受隙間→軸方向溝8d1→ヌスミ部P→円周溝8b1→半径方向溝8b21
という経路を循環して、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部2aの外周面2a1
との間の隙間に戻り、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受隙間に再び引き込
まれる。このように、潤滑油がハウジング7の内部空間を流動循環するように構
成することで、内部空間内の潤滑油の圧力が局部的に負圧になる現象を防止して
、負圧発生に伴う気泡の生成、気泡の生成に起因する潤滑油の漏れや振動の発生
等の問題を解消することができる。また、何らかの理由で潤滑油中に気泡が混入
した場合でも、気泡が潤滑油に伴って循環する際にシール空間A内の潤滑油の油
面(気液界面)から外気に排出されるので、気泡による悪影響はより一層効果的
に防止される。
なお、各軸受部R1・R2、T1・T2の軸受構造は以上の例示には限定されず、種々の軸受構造に変更することができる。例えば、ラジアル軸受部R1、R2は円弧軸受やステップ軸受で構成することができ、スラスト軸受部T1、T2は軸部材2の軸端をハウジング底部7cで接触支持するピボット軸受で構成することもできる。
本発明に係る動圧軸受装置を使用した情報機器用スピンドルモータの断面図である。 本発明に係る動圧軸受装置の一実施形態を示す断面図である。 軸受スリーブの断面図{図3(a)}、下側端面{図3(b)}、上側端面{図3(c)}を示す図である。 ハウジングの上端側内周の周辺を示す部分拡大断面図である。
符号の説明
1 動圧軸受装置
2 軸部材
2a 軸部
2b フランジ部
7 ハウジング
7c 底部
7c1 内底面
8 軸受スリーブ
8a 内周面
10 シール部材
10c 外周
10c1 円筒面
10c2 テーパ面
10c3 テーパ面
R1 ラジアル軸受部
R2 ラジアル軸受部
S1 スラスト軸受部
S2 スラスト軸受部
M 接着剤
T1 テーパ状空間(第一のテーパ状空間)
T2 テーパ状空間(第二のテーパ状空間)

Claims (7)

  1. 一端が開口されると共に、他端が閉塞されたハウジングと、ハウジング内部に配置された軸受スリーブと、軸受スリーブに挿入された軸部材と、ハウジングの開口部をシールするシール部材とを具備し、軸部材と軸受スリーブとの間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で軸部材と軸受スリーブとを非接触に保持する動圧軸受装置において、
    シール部材の外周をハウジングの内周に接着固定すると共に、シール部材の外周とハウジングの内周との間に、接着剤を保持するテーパ状空間を介在させたことを特徴とする動圧軸受装置。
  2. テーパ状空間が、シール部材の両端面のうち少なくとも何れか一方に開口している請求項1記載の動圧軸受装置。
  3. テーパ状空間が、ハウジングの閉塞側を漸次拡大させたものである請求項2記載の動圧軸受装置。
  4. テーパ状空間が、ハウジングの開口側を漸次拡大させたものである請求項2記載の動圧軸受装置。
  5. 二つのテーパ状空間を軸方向に離隔させて配置し、両テーパ状空間をそれぞれ相手側から離隔する方向に漸次拡大させた請求項1記載の動圧軸受装置。
  6. シール部材の外周に、請求項2〜5の何れかに記載したテーパ状空間を形成するテーパ面を設けた動圧軸受装置。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載の動圧軸受装置を備えるモータ。
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