JP2005325108A - 更年期症の予防又は改善剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】更年期、若年性更年期障害、月経前症候群(PMS)などの女性ホルモンバランスの崩れによって生ずる全身倦怠感をはじめ、ほてり、冷え、むくみ、肩凝り、腰痛、いらいら、不安、などの不定愁訴、並びに、肌の弾力性低下、泌尿生殖器の萎縮による性交痛や尿失禁、高脂血症、肥満、骨粗鬆症に極めて有効な更年期症候群の予防・改善薬を提供する。
【解決手段】山帰来を含有することを特徴とする更年期障害の予防又は改善剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、山帰来を含有し、更年期障害の予防又は改善に供する薬剤に関する。
女性機能を代表する物質であるエストロゲンは1923年のAllen & Doisyによる発見以来、生殖医学・生物学の中心的な物質の一つとして研究が進められてきた。エストロゲン(卵胞ホルモン)はエステロン、エストラジオール、エストリオールが1930年代に単離・生成され、プロゲステロン(黄体ホルモン)とともに、男性ホルモン(アンドロゲン)に対比したものとして、女性が女性たるために最も重要な物質と位置づけられてきた。このエストロゲンは主に卵巣の顆粒膜細胞から産生され、その分泌は下垂体前葉より分泌される性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピンとも称され、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)とがある)により支配されるが、エストロゲンの血中レベルが低下するとFSHの分泌が促進され、エストロゲンの血中レベルが上昇するとFSHの分泌が抑制されるため、エストロゲンは卵巣機能の自己調整に働く巧妙なフィードバック機構の中心的役割を担っている。さらに、エストロゲンは標的組織である間脳−下垂体前葉−性器及び乳腺のみならず、種々の組織に受容体を有しており、生殖機能に作用するだけでなく、脳、心血管、骨格、皮膚、その他の全身の組織に作用が及ぶ。そのため、「女性の身体を創る」このホルモンの働きが女性のQOL(Quality of Life)に深く関わっている(以上、非特許文献1参照)。
そのため、このホルモンの分泌不足あるいはホルモンバランスの失調は月経異常を発症するだけでなく、器質的変化に相応しない自律神経失調症を中心とした不定愁訴をも発症する。このホルモンバランスの失調による「不定愁訴」の症状としては、その発症時期によって、性周期の変化に伴う月経困難症や月経前症候群(PMS)、閉経に伴う更年期障害などが挙げられる。さらに、近年、20〜40歳の女性において、社会進出に伴うストレスや喫煙、ダイエット等のため、ホルモンバランスの調整機能が低下し、更年期障害に類似の症状を呈する若年性更年期障害を発症するケースも増えている。
そして、前記諸症状には身体症状と精神症状とがあり、いずれもホルモンバランス調整機能(卵巣機能も含む)の低下若しくは衰退に伴うエストロゲンの低下を中心とした身体要因に精神的負荷・ストレスなどの精神的要因が加わって発症する。その具体的な症状としては、血管運動神経障害症状である、のぼせ、ほてり(ホットフラッシュ)、異常発汗、手足の冷え、むくみ、肩凝り、頭痛等と、精神神経障害症状である、易疲労感、脱力感、いらいら感、不安、睡眠障害、頭重感、めまい等が挙げられる。これらの諸症状は、ホルモンバランス調整機能と自律神経系とが密接に関係しあっていることから、過度の精神的ストレスを受けることにより増悪する。また、内因性エストロゲンの低下が続くと、肌の弾力性低下、泌尿生殖器の萎縮による性交痛や尿失禁を発症し、動脈硬化、高脂血症、肥満などの代謝異常、骨粗鬆症等を発症する虞も高くなる(非特許文献2及び3参照)。さらに、痛みに対する閾値が男性よりも低い女性とって、ストレスやホルモンバランスの乱れは、さらに痛みを強く感じやすくなる要因となっている(非特許文献4及び5参照)。
ここで、更年期障害を発症した患者では治療を目的にエストロゲンを投与するホルモン補充療法(HRT)が使用されているが、胃腸障害、血栓症、子宮出血、肝障害や、さらには、長期間投与すると子宮癌や乳癌などが発現等の虞があり、HRTの普及率は日本において2〜3%にすぎない(非特許文献6参照)。また、種々の危険性からWHI(Women’s Health Initiative)におけるエストロゲン単独投与群の試験の中止が報告され(非特許文献7参照)、HRTへの不安が拡大している。近年、ホルモンバランスの概念やその失調に伴う疾患、その対処方法についての理解は深まっており、多くの女性は安全性と利便性を求め、自己の生活スタイルに合わせて、エストロゲン作用物質を含む植物エキスあるいは分画成分が配合された医薬品や健康食品・サプリメントを服用している。なお、エストロゲン作用物質を含む植物、エキス、分画を植物性エストロゲンと称し、例えば、ゲニステイン、ダイゼインなどの大豆イソフラボン類(非特許文献8参照)、プエラリアミリフィカ(ガウクレア)(非特許文献9参照)、レッドクローバー(非特許文献10参照)、ブラックコホッシュ(非特許文献11参照)、甘草(リコリス)(非特許文献10参照)、葛根、ヨクイニン(非特許文献12参照)等もエストロゲン様作用を有することが報告されている。
鈴木秋悦ら編「エストロゲン−新しい視点から見た作用−」メジカルビュー社、1999年、p.10 武谷雄二編「女性と予防医学」中山書店、1998年、p.239 渡部清明ら編「臨床病理レビュー特集大31号 シリーズ 女の一生と臨床検査 −更年期をめぐる身体の変化とその臨床−」克誠堂出版、2004年、p1 労働大臣官房制作調査部統計調査第二課編「平成9年労働者健康状況調査報告」1998年 貴邑富久子監修「性差精査医学 女と男のよりよい健康と医療のために」じほう、2003年、p121 鈴木秋悦ら編「エストロゲン−新しい視点から見た作用−」メジカルビュー社、1999年、p.68 「NIH Asks Participants in Women’s Health Initiative Estrogen−Alone Study to Stop Study Pills、 Begin Follow−up Phase Statement from Barbara Alving、 M.D.、 Director of the Women’s Health Initiative and Acting Director of the National Heart、Lung、and Blood Institute」NIH News、2004年3月2日、http://www.nhlbi.nih.gov/new/press/04-03-02.htm E.Chengら「Science」120巻、p.575、1954年、A.L.Murkiesら「J.Clin.Endocrinol.Metab.」83巻、p.497、1998年 S.Chansakaowら「Planta Med」66巻、p.572、2000年 D.T.Zavaら「Proc.Soc.Exp.Biol.Med.、」217巻、p.369、1998年 Z.Liuら「Wei Sheng Yan Jiu」30巻、p.77、2001年 鈴木秋悦ら編「エストロゲン−新しい視点から見た作用−」メジカルビュー社、1999年、p.114
したがって、本発明の課題は、更年期障害、若年性更年期障害、月経前症候群(PMS)などの女性ホルモンバランスの崩れによって生ずる全身倦怠感をはじめ、ほてり、冷え、むくみ、肩凝り、腰痛、いらいら、不安などの不定愁訴、並びに、肌の弾力性低下、泌尿生殖器の萎縮による性交痛や尿失禁、高脂血症、肥満、骨粗鬆症に極めて有効で副作用の少ない更年期症候群の予防又は改善剤を提供することである。
本発明者は、山帰来がステロイド系サポニンを含有することに着目し、山帰来末又はその抽出物の投与によって女性様ホルモンを増大させることが更年期症の予防又は改善に有効であることを見出した。
かかる知見に基づき完成した本発明の態様の一つは、山帰来を含有することを特徴とする更年期障害の予防又は改善剤である。
本発明の他の態様は、山帰来を含有することを特徴とする若年性更年期障害の予防又は改善剤である。
本発明の他の態様は、山帰来を含有することを特徴とする月経前症候群の予防又は改善剤である。
本発明により、女性ホルモンバランスの失調あるいはエストロゲン欠乏によって生じる全身倦怠感をはじめ、ほてり、冷え、むくみ、肩凝り、腰痛、いらいら、不安などの不定愁訴、肌の弾力性低下、泌尿生殖器の萎縮による性交痛や尿失禁、高脂血症、肥満、骨粗鬆症等の諸疾患の予防及び改善に有効な医薬品等を提供することが可能となった。
「山帰来(サンキライ、スミラックス リゾマ:Smilax Rhizoma)」とは日本薬局方に収載されるユリ科(Liliaceae)のスミラック チャイナ:Smilax chainaやスミラックス グラブラ:S.glabraの塊茎である。「土茯苓(ドブクリョウ)」「バッカツ」とも称される。慢性皮膚疾患に対する排膿、アトピー性皮膚炎の治療、解毒、利尿、体質改善に用いられる。含有成分としてサポニン(スミラックスサポニンA、B、C)、シトステロール、スティグマステロールがある。また、この生薬の同属植物としてはスミラックス オフィシナリス:S.Officinalis、スミラックス ヤピカンガ:S.japicanga、スミラックス フェブリフューガ:S.febrifuga等のサルサパリラ(Sarsaparilla)が知られ、その含有成分のサルササポニン、サルササポゲニン、スミラゲニンは痴呆症、物忘れ、アルツハイマー病などの治療に有効であるという報告がある(特表2002−50752号公報参照)。
本発明の山帰来含有予防又は改善剤は、更年期障害、若年性更年期障害及び月経前症候群の予防又は改善に用いられ、経口投与される。
山帰来の有効投与量は原生薬換算量として、健康成人で1日50mg〜10000mgであり、好ましくは100mg〜5000mgである。
本発明の予防又は改善剤は、山帰来(生薬末または抽出物)を配合し、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤などを混合して常法により、顆粒剤、散剤、カプセル剤、錠剤、ドライシロップ剤、液剤などの経口製剤とすることができる。
さらに、必要に応じて他の生理活性成分、ミネラル、ビタミン、アミノ酸、ホルモン、栄養成分、香料等を混合することにより、嗜好性をもたせることもできる。また生薬としては、特に限定すべきものではないが、イズイ、インヨウカク(イカリソウ)、茴香、鬱金、烏薬、エゾウコギ(刺五加、五加皮)、営実、延胡索、黄蓍、黄ゴン、黄精、黄柏、黄連、遠志、何首烏、莪述、霍香、葛根、カノコソウ、カロコン、乾姜、甘草、桔梗、桔梗根、枳実、羌活、枸杞子、枸杞葉、ケツジツ、桂皮、肉桂、桂枝、苦参、苦楝皮、玄参、紅花、紅参、香附子、厚朴、牛膝、呉茱萸、五味子、胡蘆巴、虎杖根、柴胡、細辛、石榴、山梔子、山茱萸、山査子、鎖陽、山椒、山奈、山扁豆、山稜、酸棗仁、西洋山査子、山薬、地骨皮、生姜、縮砂、蛇床子、女貞子、芍薬、沙参、菖蒲根、升麻、商陸、地黄、熟地黄、沈香、川キュウ、川骨、川楝皮、蒼朮、桑白皮、菖蒲根、石斛、石菖根、接骨木、前胡、桑白皮、蘇葉、蒼朮、続断、大蒜、大棗、大豆、沢瀉、竹節人参、丁字(母丁香、公丁香)、陳皮、当帰、杜仲、党参、橙皮、莵絲子、桃仁、人参、巴戟天、反鼻、麦門冬、白シ、白朮、茯苓、覆盆子、防己、蒲公英、補骨脂、ムイラプアマ、木香、牡丹皮、益母草、益智、良姜、竜眼肉、ヨクイニン、ローヤルゼリー、イカリソウなどを配合することができる。
以下に実施例及び試験例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。なお、各生薬はエキスとして配合した場合は、その原生薬換算量を括弧書きで併記する。
実施例1
山帰来乾燥エキス 110 g(500g)
アビセル−PH01 192 g
コンスターチ−JP 513 g
エロジール−200 90 g
HPL−L−微粉 90 g
上記組成の粉体1466.6gの混合末にアルコールを適量添加後、バーチカルグラニュレータ(パウレック社製)で湿式造粒し、流動層乾燥機(フロイント社製)で乾燥した。24メッシュの篩で分級し、篩残はスピードミル(岡田精工社製)で粗砕した。これにビタミンB6 10g、エロジール−200 9g、ステアリン酸マグネシウム 9gを添加して混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒を8.5mm径2段R面の杵を使い、コレクト19型打錠機(菊水製作所製)で打錠し、1錠重量200mgの錠剤を得た。
実施例2
山帰来末 500 g
ビタミンB6 50 g
ビタミンE 300 g
乳糖 500 g
トウモロコシデンプン 245 g
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム 32.5g
軽質無水ケイ酸 37.5g
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 50 g
ヒドロキシプロピルセルロース 50 g
上記組成の粉体1567gをバーチカルグラニュレータで湿式造粒し、流動層乾燥機で乾燥した。24メッシュの篩で分級し、篩残はスピードミルで粗砕した。これにステアリン酸マグネシウム20g及びタルク30gを添加して混合した。得られた顆粒を400mgずつ1号カプセルに充填し、カプセル剤を得た。
試験例1
実験材料:エストラジオール、山帰来30%エタノール抽出エキス及び山帰来末を用いた。
実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入)
実験方法:子宮重量を指標としたエストロゲン効果測定試験
子宮重量を指標としたエストロゲン効果測定試験は石見らの方法(Y.Ishimiら、Endocrinology、140巻、p.1893、1999年)に準じて実施した。すなわち、無菌環境下において、ラットをペントバルビタール麻酔下、背部を切開、卵巣を摘出し(以下、「OVX」と称する)、OVX4日後から、山帰来30%エタノール抽出エキス、山帰来末(0.5%カルボキシルメチルセルロース・ナトリウムに懸濁、1.0mL/100g)を原生薬換算量として1000mg/kgの投与量にて、1日1回13日間連続経口投与を行った。最終経口投与1日後、ペントバルビタール麻酔下、開腹し、子宮を摘出し、その内容液を除去後、子宮重量を測定した。なお、正常群は、上記と同様に背部を切開、擬似的に卵巣を処理し、体内に戻した後、縫合した。正常群及び対照群は0.5%カルボキシルメチルセルロース・ナトリウムを1.0mL/100gの投与割合で投与した。
[実験結果]
正常(疑似手術)群に比較し、OVXを施したラットの子宮重量は有意に減少した。これに対して、山帰来は30%エタノール抽出エキス及び生薬末の1000mg/kg(原生薬換算量として)投与において、ともに、卵巣摘出による子宮重量低下を有意に抑制し、エストロゲン様作用が観察された。一方、エストラジオールは0.1mg/kgの投与量において子宮重量の低下を抑制した(図1参照)。
試験例2
実験材料:エストラジオール、山帰来30%エタノール抽出エキス及び山帰来末を用いた。
実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入)
実験方法:ホットフラッシュ発現を指標としたエストロゲン効果測定試験
試験例1に示した術式にて卵巣を摘出し、投与スケジュールにて経口投与したOVXラットを用いホットフラッシュの発現を測定した。ホットフラッシュの測定は小林らの方法(T.Kobayashiら、J. Endocrinol.、146巻、p.431、1995年)を一部改良して実施した。すなわち、検体最終投与4時間後、無拘束下、OVXラット尾部(尾根部1cm〜5cmの部分)の最高温度をサーモグラフ(サーモビュア JTG−6300、日本電子(株))を用いて測定した。なお、測定環境は室温23±1℃、湿度45±5%であった。
[実験結果]
正常(疑似手術)群に比較し、OVXを施したラットの尾部最高温度は有意に増加した。これに対して、山帰来は30%エタノール抽出エキス及び生薬末の1000mg/kg(原生薬換算量として)投与において、ともに、卵巣摘出によるホットフラッシュの発現を有意に抑制した。一方、エストラジオールは0.1mg/kgはその発現を抑制した(図2参照)。
試験例3
実験材料:エストラジオール、山帰来30%エタノール抽出エキス及び山帰来末を用いた。
実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入)
実験方法:血清総コレステロール値を指標としたエストロゲン効果測定試験
試験例1に記した術式にて卵巣を摘出し、投与スケジュールにて検体を経口投与したOVXラットの後大静脈から、ペントバルビタール麻酔下、採血した。採血した血液は放置した後、遠心分離(3000rpm、10分間)にて血清を得、総コレステロールをコレステロールCII−テストワコー(和光純薬)を用いて測定した。
[実験結果]
正常(疑似手術)群に比較し、OVXを施したラットの血清総コレステロール値は有意に増加した。これに対して山帰来は30%エタノール抽出エキス及び生薬末の1000mg/kg(原生薬換算量として)投与において、ともに、卵巣摘出による血清コレステロール値の増加を抑制した。一方、エストラジオールは0.1mg/kgは総コレステロール値の上昇を抑制した(図3参照)。
試験例4
実験材料:エストラジオール及び山帰来末を用いた。
実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入)
実験方法:疲労蓄積ラットの後肢足容積測定試験
ホルモンバランスの乱れにストレス等が加わることにより様々な不定愁訴を発症することから、疲労・ストレスが複合的に負荷される渡部らの疲労蓄積モデルにて検討を実施した(M.Tanaka、Y.Watanabeら、Neurosci Lett.、352巻、p.159、2003年)。本モデルは水深約1cmの水(23±1℃)を溜めた飼育ケージ(200×300×125mm)に、ラットを5日間個別飼育するものである。すなわち、OVX処置4週間後、体重及び足容積を測定し、平均値が同等になるように群構成を行った後、ラットを水浸飼育した。ラットは水を嫌うと共に全身が濡れることを避けるため、水浸飼育されると、自主的に立位となり、さらに、断眠状態ともなり、足に浮腫も生じた。検体は水浸飼育初日から1日1回5日間連日経口投与し、最終実験日には投与しなかった。足容積は、室町機械(株)製足容積測定装置を用い、水浸飼育前及び水浸飼育終了日に、ラット右後肢にて測定した。
[実験結果]水浸飼育によるむくみ発現に対する山帰来の作用
正常(疑似手術)ラット及びOVXラットを水浸飼育すると、正常飼育したラットの足容積に比して、正常ラットは12.6±3.6%腫脹しているのに対して、OVXラットは26.7±3.3%腫脹しており、OVXを施すことによりむくみが発現しやすいことが明らかとなった。このむくみの発現に対して、エストラジオール0.1mg/kg(経口)は有意に抑制することから、むくみの発現はホルモンバランスの乱れによって増強することを裏付ける一結果であると考えられた。これに対して、山帰来末1000mg/kgはこのむくみの発生を有意に抑制した(図4参照)。
試験例5
実験材料:エストラジオール、山帰来末を用いた。
実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入)
実験方法:疲労蓄積ラットの後肢足部温度測定試験
試験例4で作製した疲労蓄積OVXラットを用いて実験を行った。OVXラットを水浸飼育ケージから取り出し、後肢足部の水分を拭き取った後、ラット後肢の甲から指先の温度をサーモグラフ(サーモビュア JTG−6300、日本電子(株))を用いて測定し、その測定部位での最低温度を求めた。なお、測定環境は室温23±2℃、湿度45±8%であった。
[実験結果]水浸飼育による後肢足部最低温度の低下(冷え)に対する山帰来の作用
通常飼育のOVXラットの後肢足部最低温度は20.8±0.5℃で有るのに対して、水浸飼育したOVXラットのそれは19.1±0.4℃であり、有意な温度低下が確認された。さらに、後肢足部の中での温度差を観察すると、甲側よりも指側の方が温度差が大きく、OVXラットの方に冷えが生じやすいことが確認された。これに対して、山帰来末1000mg/kgはこの温度低下を抑制した(図5参照)。この検討結果から、山帰来は女性特有な疾患の一つであり、さらに、ホルモンバランスの乱れにより陥りやすい冷えの発現を改善することが考えられた。
試験例6
実験材料:山帰来末を用いた。
実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入)
実験方法:疲労蓄積ラットの痛み閾値測定試験
試験例4で作製した疲労蓄積OVXラットを用いて実験を行ったラットを水浸飼育ケージから取り出した直後に、尾部の水分を拭き取り、室町機械製デジタル・ランダルセリット式鎮痛効果測定装置(MK−201D)にて尾部の痛み閾値を測定した。
[実験結果]水浸飼育による痛み閾値低下に対する山帰来の作用
正常(疑似手術)ラット及びOVXラットの痛み閾値はそれぞれ188±17mmHg及び158±20mmHgであり、OVXのみでは、痛み閾値の差は生じなかった。これらラットを水浸飼育すると痛み閾値がそれぞれ低下し、その値は133±27mmHg(29%低下)及び69±8mmHg(56%低下)であり、OVXラットが疲労及びストレスを複合的に曝されることにより、痛みに対する反応が増していることが確認された。OVXラットのこの痛み閾値低下に対して、エストラジオール0.1mg/kg(経口)は有意に抑制し、この痛みに対する行動変化がホルモンバランスを整えることにより改善されることが明らかとなった。これに対して、山帰来末1000mg/kgはこの痛み閾値の低下を抑制した(図6参照)。これらのことから、葛根、山帰来、熟地黄の2種以上の組み合わせは、痛みを過敏に感じる女性にとって、痛みが主訴となる肩こり、頭痛、腰痛などの痛みの緩和に有効であることが考えられた。
本発明により、副作用が少なく、長期間の経口投与に適した更年期障害、若年性更年期障害、月経前症候群の予防及び治療用医薬品の開発が期待される。
山帰来の卵巣摘出ラットにおける子宮重量低下に対する作用を示すグラフである。 山帰来の卵巣摘出ラットにおけるホットフラッシュ発現に対する作用を示すグラフである。 山帰来の卵巣摘出ラットにおける血清総コレステロール値に対する作用を示すグラフである。 山帰来末の水浸飼育した卵巣摘出ラットのむくみ発現に対する作用を示すグラフである。 山帰来末の水浸飼育した卵巣摘出ラットの後肢足部最低温度の低下(冷え)発現に対する作用を示すグラフである。 山帰来末の水浸飼育した卵巣摘出ラットの尾部の痛み閾値の低下に対する作用を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 山帰来を含有することを特徴とする更年期障害の予防又は改善剤。
  2. 山帰来を含有することを特徴とする若年性更年期障害の予防又は改善剤。
  3. 山帰来を含有することを特徴とする月経前症候群の予防又は改善剤。
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