JP2005323596A - 雲南sl−001菌の培養によるビタミンkの生産方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ビタミンK誘導体、特にメナキノン−7(ビタミンK2)誘導体を、効率よく生産する方法を提供する。
【解決手段】第1の態様に係るビタミンK2の生産方法は、納豆菌の一種である雲南SL−001菌を培養し、培養された菌体及び/又は培養液から、ソックスレー抽出、及び酸性化による沈殿によって、ビタミンK誘導体を得る工程を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、枯草菌(Bacillus
subtilis)の培養方法、当該方法によって培養される微生物の培養物、該培養物由来の水溶性ビタミンK誘導体ならびに該微生物の培養物または水溶性ビタミンK誘導体を含む食品、飲料または飼料に関するものである。
ビタミンKは、従来、血液が凝固する際に必要な因子として知られており、このビタミンの欠乏は血液凝固能の低下をもたらすので抗出血性ビタミンとも呼ばれる脂溶性ビタミンの一種である。このビタミンKの欠乏が血液凝固能の低下をもたらす原因としては、近年、プロトロンビンを含む数種の血液凝固因子の生合成にビタミンKが不可欠であることが示唆された。しかしながら、血液凝固能の低下を防止するために必要とされるビタミンKの量はμgオーダーと極めて微量であり、一般的には、成人では腸内細菌から供給されるので、ビタミンK欠乏症になることはまれであり、また、ビタミンK欠乏性出血症の治療には合成ビタミンK1やK2が医薬品として用いられ、これまではこの予防を目的として天然ビタミンK1濃縮物が食品として利用されているため、ビタミンKはこれまであまり注目されることはなかった。
しかしながら、近年、ビタミンKには骨形成促進作用及び骨吸収抑制作用があり、ビタミンKの投与で骨密度が増加することが明らかにされた。一方、骨粗鬆症は、老化や疾病などの原因によって起こる、骨がもろくなる病態で、骨折したり、激しい痛みなどを伴い、老人医療の面から大きな社会問題となりつつある病気であり、骨粗鬆症患者におけるビタミンKの血中濃度を調べてみると健常人に比べて約1/2と少ないことが報告された。このため、合成ビタミンKが骨粗鬆症用治療薬として臨床試験が行われているが、出血症の治療・予防の場合と異なり、骨粗鬆症の治療・予防では、一日に45mg以上という多量のビタミンKの投与で骨量を増す改善効果があることが臨床試験により証明されている。また、骨粗鬆症は発病してからの治療より予防が重要であり、このためには食品から日常的にビタミンKを摂取することが望まれるが、健常者の場合、一日にどのくらいのビタミンKを摂取すれば骨量が増し、骨粗鬆症の予防に役立つかは明らかではない上、既存の食品で上記したような量を摂取することは難しいと思われる。
上述したように、ビタミンKの摂取は日常の食品を通じて行われるのが望ましく、実際、ビタミンK1は緑黄色野菜や海草類などから、ビタミンK2は納豆などの発酵食品から摂取することができる。しかしながら、市販の食品から骨粗鬆症の改善に有効な量であるとの報告のある45mgのビタミンKを摂取しようとする場合、例えば、ビタミンKを1ppm含有する食品では、一日に45kgという多量の食品を食する必要があるが、このようなことは実際には非常に困難である。また、食品のうちでビタミンKの含量が十数ppmと最も多いのは納豆であるが、たとえ、このような納豆を食しても一日に数百gから数kgの量を食さなくてはならず、嗜好上、これだけの量を毎日食することは困難である上、摂取されたビタミンKの半減期は短く、単発で経口摂取したのでは効果が不十分であったり、また逆に一時に大量摂取すると副作用の問題も残されていた。このため、ビタミンKが濃縮されたものを摂取することが望ましいが、出血症予防のために調製粉乳に添加している市販の天然ビタミンK濃縮物は高価であり、医薬品の合成ビタミンKは食品に使用できないという問題があった。
ところで、ビタミンK類の中で、自然界に存在するのはビタミンK1およびビタミンK2群のみである。ビタミンK1は、食品中では、特に緑色野菜、植物油、海藻等に多く含まれており、例えば、海藻・海苔・茶葉などに数十ppm、大豆油、ほうれん草やブロッコリーなどに数ppm含まれており、また2−メチル−1,4−ナフトキノンとフィチルアセテートを縮合することよって合成される。また、ビタミンK2群は、側鎖長の違いによりメナキノン−1〜14(MK−1〜14)の同族体が知られている。これらのうち、特にメナキノン−7(本明細書では、単に「MK−7」ともいう)は、ビタミンK2の代表的な物質であり、主に納豆菌によって合成されるが、自然界では納豆でも数〜十数ppmと比較的微量にしか存在しない上半減期が短いため、単離が非常に困難であり、これまで、MK−7高含量の脂質を調製した例は、特開平8−73396号公報一例くらいしか知られていない。
このため、ビタミンK2を納豆菌等の微生物を用いて大量に生産することが試みられ、天然ビタミンK2を得る方法としては多くの研究が知られており、例えば、フラボバクテリウム属に属する微生物の培養液からビタミンK2を採取する方法(特公平7−28748号及び特公平7−51070号公報)、大豆煮汁や豆腐粕等に納豆菌を接種して発酵させることによりビタミンKを生産する方法(特開平10−295393号、特開平8−19378号、特開平8−9916号及び特開平8−173078号公報)が挙げられる。これらの方法に加えて、納豆菌の発酵物をアルコール、エーテル、エステルやケトン等の有機溶媒による溶媒抽出などを行うことによって天然ビタミンK2、特に天然MK−7を多量に含む濃縮脂質を得る方法(特開平8−73396号公報)が提案されている。しかしながら、フラボバクテリウムなどのビタミンK生産菌を使用する方法は、フラボバクテリウムが食品としての安全性が証明されていないので、直ちに食品に供することはできないという問題がある。また、納豆菌を用いてビタミンKを調製する方法では、確かに最大約40mg/リットル培養液という比較的ビタミンK含有量の高い培養物が得られたものの、ここで産生するのは水溶性ではなく脂溶性のビタミンKであるため、その使用できる用途は非常に限定されたものとなる。さらに、納豆菌の発酵物を有機溶媒で抽出することによって調製される天然メナキノン−7高含量脂質は、大豆等の食用に供することができるものを原料として調製されてはいるものの、有機溶媒を使用するため食品に使用する際にはこの有機溶媒を完全に除去しなければならずこのための設備や時間がさらに必要となる上、上記と同様、得られるMK−7高含量脂質はその名称からも明らかなように脂溶性であるためその使用できる用途が限定される。
上述したように、納豆、納豆の製造過程で発生する粕、煮汁等の副産物の発酵物から納豆菌等の微生物を用いてビタミンKやMK−7を生産する(即ち、菌体外からビタミンKやMK−7を取り出す)方法は多数報告されてきた。
特公平7−28748号 特公平7−51070号 特開平10−295393号 特開平8−19378号 特開平8−9916号 特開平8−173078号 特開平8−73396号
本発明の目的は、ビタミンK誘導体、特にメナキノン−7(ビタミンK2)誘導体を最も多量に枯草菌(Bacillus
subtilis)の菌体内に貯蔵するようにこの微生物を培養する方法、このような方法によって培養された菌体内に多量のビタミンK誘導体、特にメナキノン−7(ビタミンK2)誘導体を蓄積する枯草菌(Bacillus
subtilis)の培養物、このような培養物由来の水溶性ビタミンK誘導体、特に水溶性メナキノン−7(ビタミンK2)誘導体、ならびに上記培養物または水溶性ビタミンK誘導体、特に水溶性メナキノン−7(ビタミンK2)誘導体を含む食品を提供するものである。
本発明の他の目的は、通常の食品からは充分な量の摂取ができないまたは摂取困難な天然ビタミンK、特に天然MK−7を簡単に日常的摂取することを可能にすることを目的として、ビタミンK誘導体、特にメナキノン−7(ビタミンK2)誘導体を最も多量に枯草菌(Bacillus
subtilis)の菌体内に貯蔵するようにこの微生物を培養する方法、このような方法によって培養された菌体内に多量のビタミンK誘導体、特にメナキノン−7(ビタミンK2)誘導体を蓄積する枯草菌(Bacillus
subtilis)の培養物、このような培養物由来の水溶性ビタミンK誘導体、特に水溶性メナキノン−7(ビタミンK2)誘導体、ならびに上記培養物または水溶性ビタミンK誘導体、特に水溶性メナキノン−7(ビタミンK2)誘導体を含む食品を提供するものである。
本発明のさらなる他の目的は、通常の食品からは充分な量の摂取ができないまたは摂取困難な天然ビタミンK、特に天然MK−7を簡単に日常的に摂取することを可能にすることを目的として、ビタミンK誘導体、特にメナキノン−7(ビタミンK2)誘導体を最も多量に枯草菌(Bacillus
subtilis)の菌体内に貯蔵するようにこの微生物を培養する方法、このような方法によって培養されかつ長時間血中濃度を必要な濃度に高めたままそれを維持する効果を有しかつ安全性にも優れたビタミンK誘導体、特にメナキノン−7(ビタミンK2)誘導体を多量に菌体内に蓄積する枯草菌(Bacillus
subtilis)の培養物、長時間血中濃度を必要な濃度に高めたままそれを維持する効果を有しかつ安全性にも優れた上記培養物由来の水溶性ビタミンK誘導体、特に水溶性メナキノン−7(ビタミンK2)誘導体、ならびに上記培養物または水溶性ビタミンK誘導体、特に水溶性メナキノン−7(ビタミンK2)誘導体を含む食品を提供するものである。
本発明者は、上記事情を鑑みて、納豆の成分(Experientia,
43:1110, 1987;Acta Haematol.,
84: 139, 1990;Fibrinolysis,
6: 86, 1992;日本薬剤師会誌、30: 73, 1994;バイオインダストリー、14: 47, 1996)、あるいは納豆菌中及び血中ビタミンKの分析(日本血栓止血誌、8: 287, 1997;Fibrinolysis & Proteolysis, Vol.12,
Supplement 1, 205, p.75, 1998)について鋭意研究を行ってきた結果、納豆等の納豆菌の発酵物やそれに含まれるビタミンKの摂取ではなく、生きた枯草菌そのものの摂取によって高い血漿中のビタミンK、特にMK−7濃度の亢進効果が認められること、及び特に納豆菌の場合は他に比べて極めて高い血漿中濃度の持続効果を発揮することを見い出した。
また、本発明者は、特定の成長段階まで培養した納豆菌は菌体内に多量のMK−7を蓄積しており、この段階で回収された納豆菌またはその培養物そのものを摂取することによって高い血漿中のビタミンK、特にMK−7濃度が認められかつこのようにして摂取された際の血漿中のビタミンK濃度は長持間持続することをも発見した。上記知見に加えて、本発明者は、上記段階で回収された納豆菌の菌体内に蓄積されたビタミンK、特にMK−7は水溶性であることをも発見し、このような水溶性のビタミンK、特にMK−7を用いることにより、その用途は非常に広がるであろうと期待した。
本発明の第1の態様に係るビタミンKの生産方法は、雲南SL−001菌を培養し、培養された菌体及び/又は培養液からビタミンK誘導体を得る工程を含む。
本発明の第2の態様に係るビタミンK誘導体は、雲南SL−001菌を培養し、培養された菌体及び/又は培養液から得られる。
本発明の第3の態様に係る食品、飲料または飼料は、雲南SL−001菌を培養し、培養された菌体及び/又は培養液から得られるビタミンK誘導体を含む。
雲南SL−001菌は納豆菌の一種であり、その安全性は確保されている。上記方法によって培養された培養物またはこのような培養物由来の水溶性ビタミンK誘導体を含む食品、飲料または飼料は、従来に比べて多量の水溶性ビタミンK誘導体、特にメナキノン−7誘導体を含みかつ高い安全性を有するため、このような食品、飲料または飼料を食することによって、ビタミンKを効率的にかつ簡単に日常的に摂取することができ、これにより骨粗鬆症の改善がより一層期待できる。
また、本発明の培養方法によって培養される培養物由来の水溶性ビタミンK誘導体は、従来脂溶性であったビタミンKを水溶性にその性質を変えることが可能であるという画期的な発明を包含するものである。さらに、本発明による水溶性ビタミンK誘導体は優れた光安定性を有するものである。この発明により、従来に比べてビタミンKの用途がかなり拡大できることはいうまでもなく、ゆえに本発明は産業上の観点から非常に高い価値を有することが期待できる。
さらに、本発明による培養物または水溶性ビタミンK誘導体を含む食品を摂取することにより、効率よく血中ビタミンK濃度を高めることができ、また、従来の薬品や食品で摂取されるビタミンKそのものに比べて血中濃度の高まりをはるかに長持間持続できることから、骨粗鬆症予防のより高い効果も期待できる。
本発明に使用される雲南SL-001菌は、平成11年5月7日付で通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に、受託番号FERM BP−6713号で国際寄託された。
本発明において、雲南SL-001菌を菌体内で産生されたビタミンKが菌体外に放出される前に培養を終了して回収することが好ましく、雲南SL-001菌の培養(例えば、培地や培養条件)などについては、枯草菌(Bacillus subtilis)を一般的に培養するのと同様の培地及び培養条件が使用できる。これにより、ビタミンKは、菌体外にはほとんど放出されずに微生物菌体中に選択的にかつ多量に蓄積されるため、このような特定の状態の菌体を回収するという簡単な操作によって、ビタミンKを多量に含む菌体が得られ、このようにして回収された菌体は、安全性が確認されている菌であり、菌体からビタミンKを抽出するという操作を介さずとも、そのまま菌体を食するあるいはこのような菌体の培養物を一般的な食品に含ませることも可能である。
本発明において、雲南SL-001菌の菌体の回収時期は、上述したように、菌体内で産生されたビタミンKが菌体外に放出される前が好ましく、更に、好ましくは前記微生物の菌体数が対数期から定常期に入る時期である。また、対数期から定常期に入る時期でかつナットウキナーゼが産生される前に菌体を回収することが好ましい。より具体的には、培養時間は培養温度及びpHや菌体の初期濃度等の培養条件および培養方法によって異なるものの、例えば、500ml容量の三角フラスコを用いて300mlの培養液(組成:1.5%ポリペプトン−S、1%グルコース、0.1%酵母エキス、pH7.2)中に雲南SL-001株を、5×106個/mlの初期濃度で接種して37℃で振盪培養(100rpm)を行った場合、0.5〜4日間、好ましくは660nmでの吸光度で最大値を示した直後(1〜2日間)である。
本発明において、雲南SL-001菌の培養では、枯草菌(Bacillus subtilis)を一般的に培養するのと同様の培地及び培養条件が使用され、例えば、本発明による培養に使用される培地は、当業者には公知の成分からなる培地が使用でき特に制限されず、各種培養成分を適宜混合することにより調製してもあるいは市販の培地をそのまま使用してもあるいは市販の培地に上記公知の成分を補助成分として添加した培地を使用してもよい。この際、培地は、固体または液体培地のいずれを使用してもよく使用目的によって適宜選択され、また、使用する微生物が資化しうる炭素源、適量の窒素源、無機塩及びその他の栄養素を含有する培地であれば、合成培地または天然培地のいずれであってもよい。
本発明による雲南SL-001菌の培養において使用できる炭素源は、菌株が良好に生育し、ビタミンKを効率よく産生できるものであれば特に制限されない。具体的には、デンプンまたはその組成画分、焙焼デキストリン、加工デンプン、デンプン誘導体、物理処理デンプン、α−デンプン、可溶性デンプン、アミロース、アミロペクチン、マルトオリゴ糖、シクロデキストリン、プルラン、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、甘藷デンプン及びデキストリン、グリセリン、ソルビトール、麦芽汁、グルコース等の炭水化物が挙げられる。これらの炭素源のうち、ビタミンKの産生の観点から、グルコース及びデンプンが好ましく使用される。これらの炭素源は、単独あるいは2種以上の混合物の形態で使用できる。
本発明による雲南SL-001菌の培養において使用できる窒素源もまた、菌株が良好に生育し、ビタミンKを効率よく産生できるものであれば特に制限されない。具体的には、肉エキス、麦芽エキス、ペプトン、大豆由来のポリペプトン(例えば、ポリペプトン−S)、酵母エキス、味液(大豆タンパク酸加水分解物)、大豆粉末、ミルクカゼイン、カザミノ酸、各種アミノ酸及びコーンスティープリカー等の有機窒素化合物、およびアンモニア、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム及び塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩、尿素等の無機窒素化合物等が挙げられる。これらの窒素源のうち、ビタミンKの産生の観点から、大豆由来のポリペプトン(例えば、ポリペプトン−S)及び大豆粉末が好ましく使用される。これらの窒素源も、単独あるいは2種以上の混合物の形態で使用できる。
本発明による培養に使用できる無機塩もまた、使用する種によって異なり、菌株が良好に生育し、ビタミンKを良好に産生できうるものであれば特に制限されないが、具体的には、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、銅、鉄及び亜鉛などのリン酸塩、塩酸塩、硫酸塩及び酢酸塩等から選ばれた1種または2種以上を使用することができる。
また、本発明による培養に市販の培地を使用する場合の市販の培地としては、例えば、栄養ブイヨン(nutrient broth)(乾燥ブイヨン)(日水製薬株式会社または日本製薬株式会社製)、ポリペプトン−S(和光純薬製)などが挙げられる。
または、本発明において、雲南SL-001菌の培養に使用する培地として、オカラ、大豆、味噌や納豆製造時に副生する大豆煮汁、豆腐や油揚げ製造時に副生する豆腐粕、大豆を原料とした製油時に副生する大豆粕、味噌製造時の副産物である大豆の種皮など、納豆菌によって発酵できる材料を使用してもよい。この際、必要であれば、この材料に上記したような炭素源、窒素源及び無機塩を適宜添加してもよい。
本発明において、雲南SL-001菌の培養は、従来公知の方法と同様にして行われ、その際の培養条件は、培地の組成及び培養法によって適宜選択され、菌株が増殖しビタミンKを効率よく産生できる条件であれば特に制限されない。培養温度は、通常、20〜45℃、好ましくは37〜42℃であり、また、培養に適当な培地のpHは、通常、6.0〜9.5、好ましくは7.0〜8.5である。
本発明において、「雲南SL-001菌の培養物」ということばは、上記方法によって培養された雲南SL-001菌の菌体および菌体外に産生された産物の双方を含む。後者の場合では、雲南SL-001菌が、他の枯草菌(Bacillus subtilis)に比べてより高い菌体外での収率を示すため、好ましい。
上述したように、本発明の方法によって培養された雲南SL-001菌の培養物は、多量のビタミンK、特にビタミンK2、さらに特にメナキノン−7(MK−7)をその菌体内に蓄積している。具体的には、培養物中に蓄積されるビタミンK、ビタミンK2およびMK−7の量は、培地の種類や培養条件などによって変化するが、通常、10〜200mg/100g真空熱乾燥菌体である。なお、本明細書において、菌体内に蓄積されるMK−7、MK−4及びビタミンK1の量は、下記実施例の項で記載される方法によって測定された値である。
本発明の方法によって培養された雲南SL-001菌を含む枯草菌(Bacillus subtilis)の培養物を濾過や遠心分離等の既知の方法により集菌した後、これを凍結乾燥、風乾、真空熱乾燥等の公知の方法により乾燥し、この乾燥菌体を水に溶解したところ、ビタミンKが水に溶け出してくる。即ち、この菌体中には多量のビタミンK(特にMK−7)が含まれる点を合わせて考慮すると、菌体内に蓄積されたビタミンK(特にMK−7)は菌体内では何らかの変化を受けて水溶性となっていると考えられ、このような水溶性が付与された形態のビタミンK、ビタミンK2及びメナキノン−7(MK−7)を、本願明細書において、それぞれ、「水溶性ビタミンK誘導体」(または、単に「ビタミンK誘導体」と称する)、「水溶性ビタミンK2誘導体」(または、単に「ビタミンK2誘導体」と称する)及び「水溶性メナキノン−7誘導体(水溶性MK−7誘導体)」と称する。この際、水溶性メナキノン−7誘導体は、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で測定される際に約10万の分子量の単一のバンドを示す点、ゲル瀘過で測定される際には10万以上の分子量を示す点、およびメナキノン−7の分子量が約649である点を考慮することにより、MK−7に何らかの物質(例えば、糖タンパク質)が結合して安定化されて水に可溶性のビタミンK誘導体(ビタミンK2誘導体及びメナキノン−7誘導体を含む;以下、省略)が菌体内で形成されるのではないかと推定される。しかしながら、上記仮説によって本発明の概念が限定されるものではないことはいうまでもない。
本発明において、水に対するビタミンK誘導体、ビタミンK2誘導体及びメナキノン−7誘導体の溶解度は、使用する菌体や培地の種類、培養条件及び培養物の処理(抽出)方法などによって変化する。例えば、ビタミンK誘導体の溶解度は、培養菌体の水抽出操作による場合、約105μg/100ml水(20℃)であり、液体培養上清の場合、約300μg/100ml水(20℃)であり、さらに、納豆の水抽出操作による場合、約1,500μg/100ml水(20℃)である。
本発明に係る食品、飲料または飼料は、雲南SL-001菌(納豆菌)という安全性が確認されている菌を使用するため、培養物および/または水溶性ビタミンK誘導体のみから構成されてもよい。
あるいは、本発明に係る食品、飲料または飼料は、本発明による培養物および/または本発明による水溶性ビタミンK誘導体を通常食することのできる食品、飲料または飼料に含ませたものであってもよい。この際、通常食することのできる食品、飲料または飼料としては、例えば、オカラ、オカラ納豆、納豆、大豆、味噌や納豆製造時に副生する大豆煮汁、豆腐や油揚げ製造時に副生する豆腐粕、大豆を原料とした製油時に副生する大豆粕、味噌製造時の副産物である大豆の種皮、ヨーグルト、チーズ等の乳製品、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、さつま揚げ、なると、つみれ等の水産練り製品、でんぶ等の魚介類加工品、ソーセージ、フランクフルト、レバーペースト等の食肉加工品、豆腐、焼き豆腐、生揚げ、油揚げ、がんもどき、おから、凍り豆腐、湯葉等の豆製品、ピューレ等の野菜加工品、マッシュポテト、くず、はるさめ、こんにゃく、しらたき等の芋加工品、もち、白玉、白飯、麩、ビーフン、マカロニ、スパゲッティ、そうめん、そば、うどん、中華めん、即席麺、食パン、乾パン、アンパン等の穀物の加工品、冷凍食品、栄養補助食品、ジャム等の甘味類、バター、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング等の油脂類、あめ、らくがん、せんべい、あられ、カステラ、ようかん、もなか、まんじゅう、大福もち、だんご、ういろう、チョコレート、ビスケット、クッキー、ドーナツ、ケーキ、パイ、アイスクリーム、プリン、ババロア、ガム等の菓子類、豆腐、ゼリー、コンニャク、寒天またはトコロテン等のゲル状食品、コンブ、ワカメ、ノリ、テングサ等の海草類など、すべての食品;各種果汁ジュース(オレンジ、パイナップル、リンゴ、ブドウ、メロン及びイチゴジュース等を含む)、各種炭酸飲料、お茶(煎茶、ウーロン茶等を含む)、飲むヨーグルト、牛乳、豆乳、調製乳、ミネラルウォーター、清涼飲料、コーヒー、紅茶、ココアなど、すべての飲料;ならびにブタ、ウシ、ウマ、ヒツジやヤギ等の家畜、イヌ、ネコ、ウサギやハムスター等のペット、家禽及び魚など、通常、飼育される動物用のエサ(飼料)が挙げられる。
また、本発明において、食品、飲料または飼料が本発明による培養物を含む場合の食品における培養物の添加量は、使用する菌体や培地の種類や培養条件さらには水溶性ビタミンK誘導体の含量などによって変化するが、食品では、通常、0.001〜20重量%の菌体乾燥物、好ましくは0.1〜5重量%の菌体乾燥物を含む量であり、飲料では、通常、0.0001〜5(w/v)%の菌体乾燥物、好ましくは0.01〜5(w/v)%の菌体乾燥物を含む量であり、さらに、飼料では、通常、0.0001〜5重量%の菌体乾燥物、好ましくは0.001〜1重量%の菌体乾燥物を含む量である。また、食品、飲料または飼料が本発明による水溶性ビタミンK誘導体を含む場合の食品における水溶性ビタミンK誘導体の量は、上記と同様使用する菌体や培地の種類や培養条件などによって変化するが、食品では、通常、0.00001〜10重量%の水溶性ビタミンK誘導体、好ましくは0.0001〜0.1重量%の水溶性ビタミンK誘導体を含む量であり、飲料では、通常、0.00001〜0.1(w/v)%の水溶性ビタミンK誘導体、好ましくは0.0001〜0.01(w/v)%の水溶性ビタミンK誘導体を含む量であり、さらに、飼料では、通常、0.00001〜10重量%の水溶性ビタミンK誘導体、好ましくは0.0001〜1重量%の水溶性ビタミンK誘導体を含む量である。
したがって、本発明の水溶性ビタミンK(特にMK−7)誘導体を多量に含む菌体培養物および/またはこのような培養物由来の水溶性ビタミンK(特にMK−7)誘導体を含む食品を摂取することにより、従来に比べてビタミンK、特にMK−7を無理なく(不快感を過度に伴うことなく)、効率よくかつ一回に多量に摂取することができる。
本発明によるビタミンKの生産において、まず、培養された雲南SL-001菌菌体をソックスレー抽出器を用いてヘキサン、ジエチルエーテル、アセトン、エタノール及びイソプロパノール等の有機溶媒で使用する有機溶媒の沸点でソックスレー抽出し、脂溶性画分を得ることができる。次に、この画分をヘキサン、ジエチルエーテル、アセトン、エタノール及びイソプロパノール等の有機溶媒で30〜100℃で0.1〜20時間、抽出する。得られた抽出物を上記と同様の有機溶媒で所定の総容量にまで希釈する。希釈された抽出物の一部を水及びイソプロパノールと混和し、さらにタッチミキサーを使用するなどにより上記と同様の有機溶媒とさらに混和する。得られた液体混合物を遠心し、上清を乾固した後、残渣をエタノールに溶解することにより、ビタミンK2(MK−7、MK−4)及びビタミンK1等のより純度の高い脂溶性のビタミンKが調製される。
上記方法によって、脂溶性のビタミンKが公知の方法に比してより効率的に抽出され、これによりビタミンK2(MK−7、MK−4)及びビタミンK1等の脂溶性のビタミンKがより高い収率で培養菌体から回収できる。
本発明によるビタミンKの生産において、雲南SL-001菌を公知の方法または上記方法によって培養し、培養液を得る。次に、この培養液のpHを下げる、好ましくはpHを1〜3に調整することによって沈殿物が得られ、この沈殿物には菌体内に蓄積された及び菌体外に放出された水溶性ビタミンK誘導体が含まれる。したがって、この沈殿物を遠心分離などによって分離することによって、水溶性ビタミンK誘導体が分取できる。
または、雲南SL-001菌をを公知の方法または上記方法によって培養し、得られた培養液を遠心分離などによって、菌体を除去した培養上清を得る。次に、この培養上清のpHを下げる、好ましくはpHを1〜3に調整することによって沈殿物が得られ、この沈殿物には菌体外に放出された水溶性ビタミンK誘導体が含まれる。したがって、この沈殿物を遠心分離などによって分離することによって、水溶性ビタミンK誘導体が分取できる。
[実施例]以下、実施例を参照しながら、本発明をより具体的に説明する。
なお、下記実施例において、MK−7、MK−4及びビタミンK1の量は、以下の方法に従って測定した。
<各種ビタミンK量の測定方法>まず、脂溶性のMK−7、MK−4及びビタミンK1の場合の菌体試料の調製方法を以下に説明する:培養された微生物菌体1g(乾燥重量)を試料として、ソックスレー抽出器(SIBATA SPC 34, WATER BATH SIBATA WB-6C, 濾紙:ADVANTEC 84 24×100mm)で脂溶性画分を抽出する。これを100mlヘキサンで80℃で6時間抽出した後、全液量をヘキサンにより100mlに調節する。この抽出物100μlを1.0mlの蒸留水及び1.5mlのイソプロパノールと混和し、さらに4.9mlのヘキサンをタッチミキサーで約10秒間混和する。この混合液を遠心分離(3,000rpm×10分、20℃)する。得られた上清部分(有機層:水層=5.8:1.7)4.0mlをエバポレーターで濃縮・乾固した後、これを100μlのエタノールに溶解する。このようにして、菌体内に蓄積された脂溶性のMK−7、MK−4及びビタミンK1の量を測定するためのHPLC試料(以下、「ソックスレー−HPLC試料」と称する)が調製される。なお、このソックスレー−HPLC試料を用いて下記HPLCによってMK−7量を測定する方法を「ソックスレー−HPLC法」と称する。
次に、水溶性ビタミンK誘導体(MK−7を含む)の場合の試料の調製方法を以下に説明する:培養物をスパーテルでよく練った後に得られた5g量に対して、蒸留水45mlを加える。この混合液を、20℃で、3,000rpmで10分間、遠心分離し、得られた上清0.5mlを抽出試料とする。この抽出試料に、蒸留水0.5ml、イソプロパノール1.5mlを混和し、さらにヘキサン5.0mlを加え撹拌した後、20℃で3,000rpmで10分間、遠心分離する。得られた上清4.0mlをエバポレーターで濃縮・乾固し、100μlのエタノールで溶解する。このようにして、水溶性MK−7誘導体の量を測定するためのHPLC試料(以下、「HPLC試料」と称する)が調製される。なお、このHPLC試料を用いて下記HPLCによってMK−7量を測定する方法を「HPLC法」と称する。
また、培養液中のMK−7、MK−4及びビタミンK1の量を測定するためのHPLC試料としては、培養液がそのまま使用される。
さらに、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるMK−7、MK−4及びビタミンK1量の測定は、ビタミンKが白金−アルミナ触媒でハイドロキノン体に還元され、蛍光物質になることを利用するものである。具体的には、以下の条件で測定する。
装置 ポンプ:PU−980(日本分光製)
インジェクタ :7125(日本分光製)
カラムオーブン:CO−965(日本分光製)
検出器 :蛍光検出器 821−FP(日本分光製)
データ処理装置:C−R5A(島津製作所製)
条件 カラム :ODS−IIカラム(4.6×250mm)(島津製作所製)
還元カラム:白金−アルミナ触媒カラム(和光純薬製、一級白金 −アルミナ、Pt=5%を約0.2g充填する;4.0φ×10mm)
移動相 :97%エタノール(流速;0.7ml/分)
分離・還元温度:40℃
測定波長 :励起 320nm
蛍光 430nm
注入量:10μl
このような測定方法によって、MK−7、メナキノン−4及びビタミンK1について検量線を作成したところ、MK−7の量は、0.05〜50ngの範囲で式[−0.89661+1.6993×10-6×(ビタミンKに相当するHPLCの面積(μV,sec))]によって、ならびにメナキノン−4及びビタミンK1の量は、0.01〜10ngの範囲で、それぞれ、式[−0.58657+4.8030×10-9×(ビタミンKに相当するHPLCの面積(μV,sec))]及び式[−0.44381+4.0626×10-7×(ビタミンKに相当するHPLCの面積(μV,sec))]によって、測定が可能であった。
また、検量線を作成する際のMK−7の標準品は、以下によって調製した。すなわち、600gの納豆に、75%イソプロパノール1リットル及びn−ヘキサン1リットルを加え、1時間、ゆっくりと撹拌、静置した。分離した2層のうち上層を取り、無水硫酸ナトリウムで乾燥、蒸発乾固することにより、抽出物約20gを得た。これを10mlのn−ヘキサンと混合し、400mlのクロマトグラフィー用シリカゲルに通して吸着させ、2リットルのn−ヘキサン/トルエン(1:1)で溶出・分画した。MK−7を含む画分を減圧下で蒸発乾固し、得られたシリカゲル濃縮物を5mlのn−ヘキサンで溶解し、上記と同様にして、再度シリカゲルカラムで分画し、減圧下で蒸発乾固して約350mgを得た。このうち50mgを少量のアセトンに溶解し、アセトニトリル/メタノール(1:1)で充填した60mlのクロマトグラフィー用ODS−シリカゲルに通液し、アセトニトリル/メタノール(1:1)で展開した。溶出液をHPLCでモニタリングしながら、MK−7と考えられる物質が単独で溶出している画分を分取し、減圧乾固した。得られた物質について、赤外吸収スペクトラム及びマススペクトラムを得て、MK−7であることを確認した。なお、この物質の純度を検定したところ、99.8%であった。また、フィロキノン(ビタミンK1)及びメナキノン−4(MK−4)の標準品としては、それぞれ、シグマ社(Sigma)製の特級品を用いた。測定は、3回抽出して分析した平均値により求めた。
実施例1500ml容の三角コルベン内に入れた乾燥ブイヨン(日水製薬株式会社製)を3%の濃度で0.3%の麦芽汁に溶かしたもの200mlを計10本(総量:2リットル)を130℃で約30分間加圧釜で蒸煮(オートクレーブ滅菌)した。冷却後、この培養液に、約5×108個の宮城野菌(有限会社宮城野納豆製造所、仙台)を加え、40℃で36時間、振盪培養(100rpm)した後、集菌、洗浄し、それにほぼ等量のコーンスターチを混ぜて4℃で3日間かけて風乾した。この乾燥物は、生きた納豆菌(胞子及び栄養細胞)を大量に含むものであり、これについてメナキノン−7(MK−7)蓄積量をHPLC法で測定したところ、乾燥菌体1g当たり約31.7μgであった。
次に、この乾燥菌体を5人の健常成人に1gずつ毎朝10時に経口摂取させ、摂取させてから所定の時間経過後に健常成人から採血し、血漿中のMK−7濃度を測定した。血漿中のMK−7濃度の経時変化を調べた結果を図1に示す。図1に示されるように、明らかな血漿中濃度の亢進が認められ、かつこの亢進は24時間以上持続して起こること(p<0.05)が分かった。
実施例2納豆菌として日東菌(株式会社日東薬品工業、京都)の乾燥物1g(1.8×1010個の生細胞を含む)を5人の健常成人に毎朝10時に経口摂取させた後、経時的に採血した。採血された血液から血漿を採り、この血漿中のMK−7濃度を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1及び図2に示す。なお、本実施例で使用した納豆菌のMK−7含量をHPLC法で測定したところ、約51.0μg/g乾燥菌体であった。
また、対照実験として、上記納豆菌と同量の純化したMK−7を同様にして5人の健常成人に経口摂取させ、血漿中のMK−7濃度を測定した結果を下記表1に示す。
表1及び図2に示されるように、いずれの群においても摂取してから4時間目をピークに有意な血中MK−7濃度の亢進が確認され(p<0.005)、また納豆菌摂取群の血中濃度亢進効果の方がはるかに長期間持続し、特に32時間以降の効果は純化したMK−7摂取群に比べて有意な差(p<0.005)のあることが分かった。
なお、この摂取量ではどの群もトロンボエラストグラフィー、活性部分トロンボプラスチン時間、あるいは血漿プロトロンビン、プロテインC含量などで調べた血液凝固−線溶系の活性に有意な変化は認められなかった。なお、血液のトロンボエラストグラフィー(TEG)パターンは、Hellige社、また、プロトロンビン時間(PT)及び活性化トロンボプラスチン時間(APTT)はErma社のClot Digitim
TE20装置を用いて常法通りに行った。
実施例3下記6種の納豆菌を、それぞれ、500ml容の三角フラスコ内で300mlの3%栄養ブイヨン(nutrient broth)(乾燥ブイヨン)(日本製薬株式会社製)培地中で30℃で振盪培養(100rpm)した。この際の菌の成長を660nmでの吸光度として測定し、また、培養液中及び菌体内のMK−7量を経時的に測定した。
培養時間に対する、各種納豆菌の成長、培養液中のMK−7量(μg/ml)および各種納豆菌の菌体1g当たりのMK−7量(μg/g)を、それぞれ、図3、図4及び図5に示す。
<使用した納豆菌>
雲南SL-001菌(または、「雲南菌」とも称する)
宮城野菌(有限会社宮城野納豆製造所製、仙台)
目黒菌(株式会社目黒研究所製、大阪)
日東菌(株式会社日東薬品工業製、京都)
高橋菌(高橋祐蔵研究所製、山形)
成瀬菌(株式会社成瀬醗酵化学研究所製、東京)
以下、上記納豆菌は菌名のみを記載する。
図3から示されるように、菌の成長は、すべての納豆菌で類似の挙動を示し、660nmでの平均吸光度(n=6)として表すと、0.5日目で0.583、1日目で1.011、2日目で0.948、3日目で0.854、5日目で0.592、および7日目で0.552であり、これから菌の成長は培養開始後1〜2日で定常状態となることが分かった。また、培養液中に放出されるMK−7量は、図4から示されるように、やはりすべての納豆菌で類似の挙動を示し、6種の納豆菌による平均値換算で、0.5日目で0.563μg/ml、1日目で1.592μg/ml、3日目で3.867μg/ml、5日目で4.317μg/ml、7日目で4.784μg/mlであり、これから、培地中に放出されるMK−7量は、菌の成長が定常状態になる1〜2日目よりもむしろそれ以降に急激に増加し、特に4日目以降に多量のMK−7が培地中に放出された。この結果に比例するように、菌体1g当たりのMK−7量に換算した場合のMK−7量(やはりすべての納豆菌で類似の挙動を示した)は、図5から示されるように、2日目で最大(平均で約300μg/g乾燥菌)となり、培地中に多量の放出し始める4日目以降ではむしろ減っていくことが分かった。
実施例4オカラ(旭松食品株式会社、飯田市)を−25℃で凍結保存し、必要時に解凍して使用した。解凍したオカラを、120℃で30分間、オートクレーブで滅菌した後、約120ml容のポリスチレンペーパー(PSP)容器に入れ、これを納豆菌の培地とした。
別途、市販の納豆に使用されている4種の納豆菌株(高橋菌、成瀬菌、宮城野菌及び朝日菌)、薬剤として使用されている2種の納豆菌株(日東菌及び目黒菌)、ならびに中国雲南の納豆から分離された納豆菌株(雲南菌 SL-001)の合計7種の納豆菌を、それぞれ、500ml容の三角フラスコ内で150mlの3%栄養ブイヨン(nutrient broth)(乾燥ブイヨン)(日水製薬株式会社製)培地中で37℃で3日間、振盪培養(100rpm)することによって、上記7種の納豆菌の前培養液を調製した。
上記で調製されたオカラ(湿重量50g)に、これら計7種の納豆菌の前培養液(生菌数:2×108個/ml)0.5mlを、それぞれ、添加し、37℃で8日間、静置して発酵し続けた。
発酵し始めてから所定の日数(1、2、4、6、8日目)経過後、納豆菌を水中に懸濁し、これを金属製の茶漉しで濾過した後、遠心分離(3,000rpm×10分)することによって、各菌体の培養物を調製し、これをMK−7測定用のソックスレー−HPLC試料とした。このようにして調製されたソックスレー−HPLC試料について、MK−7量及び線溶(血栓溶解)活性を測定し、その結果を図6に示す。
図6から明らかなように、菌体数1010個当たりの菌体内のMK−7濃度は1〜2日目で高く、それ以降は減少し、これに比例するようにMK−7が培地中に放出され、培地中に放出されるMK−7の量は、発酵後2日をピークとするナットウキナーゼ(NK)による血栓溶解活性が高まる時点(標準フィブリン平板法でも、合成基質分解法でも発酵開始後2日以内に最高値に達する)より遅れた4日目をピークとすることが分かった。
また、いずれの納豆菌についても、オカラ湿重量1g当たり1.9μg以上という高いMK−7生産性(水に溶け出した量が、平均で、雲南菌
36.6μg/gオカラ湿重量;宮城野菌 1.9μg/gオカラ湿重量;成瀬菌
14.2μg/gオカラ湿重量;高橋菌 6.8μg/gオカラ湿重量;朝日菌 11.9μg/gオカラ湿重量;目黒菌 1.9μg/gオカラ湿重量;および日東菌5.2μg/gオカラ湿重量)が確認された。特に、雲南菌(SL-001)は、36.6μg/gオカラ湿重量という高いMK−7生産量を示し、この値は、計算上、他の納豆菌の生産量に比べて2〜20倍という高い値であり、また、従来報告(山口迪夫監修、日本食品成分表、医歯薬出版、東京、1997年、pp.52-53;坂野俊行ら、ビタミン、62、393-398(1988);H. Ikeda and Y. Doi, Eur. J.Biochem., 192,
219-223 (1990);および池田ひろ、家政誌、43、643-648(1992))されている納豆の分析値(6.2〜8.7μg/gオカラ湿重量)の4倍以上という高いものであった。
実施例5日東菌を、500ml三角フラスコ内で0.5、2及び3%ポリペプトンS(和光純薬製)を含む液体培地300ml中に生菌数が2×106個/mlとなるように添加し、これを37℃で2日間、振盪培養(100rpm)した。この培養液を遠心分離(3,000rpm×10分)し、上清と菌体に分けた。菌体はさらに水洗し、凍結乾燥した。
このように調製された培養上清中のMK−7量をHPLC法を用いて測定し、および菌体内のMK−7量をソックスレー−HPLC法を用いて測定し、その結果を下記表2に示す。なお、ポリペプトンS濃度が0.5及び3%での菌体の収率は、培地600ml(2本分)当たり、それぞれ、0.24g(乾燥菌体重量)及び1.18g(乾燥菌体重量)であった。
実施例6
目黒菌を41℃で2日間、振盪培養し、この培養液を遠心分離し、上清と菌体に分けた。
つぎに、このように調製された菌体1.011g(乾燥重量)(菌数:5×1011個)を試料として、ソックスレー抽出器(SIBATA SPC 34, WATER BATH SIBATA WB-6C, 濾紙:ADVANTEC 84 24×100mm)で脂溶性画分を6時間抽出した。これを100mlヘキサンで80℃で6時間抽出した後、全液量をヘキサンにより100mlに調節する。この抽出物100μlを1.0mlの蒸留水及び1.5mlのイソプロパノールと混和し、さらに4.9mlのヘキサンをタッチミキサーで約10秒間混和する。この混合液を遠心分離(3,000rpm×10分、20℃)する。得られた上清(有機層:水層=5.8:1.7)14mlを乾固した後、これを100μlのエタノールに溶解する。このようにして得られたサンプルについて、MK−7量をソックスレー−HPLC法を用いて測定したところ、672.6μg/g乾燥菌体であった。
実施例7
目黒菌を、37℃で、菌体内に最大量のビタミンK誘導体を蓄積する2日間、培養した。このようにして得られた培養物を蒸留水で洗浄した後、凍結乾燥した。この凍結乾燥物1g(5×1011細胞/g乾燥重量)を腸溶カプセルに充填したものを5人の健常成人(A〜E)に摂取させた。なお、この凍結乾燥物中のMK−7含量をソックスレー−HPLC法によって測定したところ、凍結乾燥物1g当たり、708.0μgのMK−7が含まれていた。所定期間経過後、健常成人から採血し、血漿中のMK−7濃度を、実施例1と同様にして測定した。結果を表3に示す。
表3の結果から、本願発明の菌体培養物を投与することによって、有意な血漿中のMK−7濃度の亢進が認められ、かつこの亢進効果は極めて長期間にわたり、摂取後少なくとも1週間は血漿中のMK−7濃度を正常血中濃度範囲(0.88±0.19ng/ml)の約2倍に持続できることが分かった。
実施例8
実施例6と同様にして調製された目黒菌由来のMK−7を乾燥し、白色粉末状のMK−7乾燥物を調製した。このMK−7乾燥物に室温で蛍光灯を5時間照射した。この際、MK−7量を実施例6と同様にして経時的に測定し、この結果を図7(白抜きの丸)に示す。図7に示されるように、MK−7量は、蛍光灯を照射してもほとんど変化しなかったことから、本発明により得られたMK−7は光に対して非常に高い安定性を有することが分かる。
また、このようにして調製されたMK−7乾燥物を、同条件で蛍光灯照射下で1週間保存した後、同様にして、MK−7量を測定したが、ほとんど変化が認められなかった。
比較例1
菌体を実施例6と同様にして調製した。この菌体2gを乳鉢にとり、海砂3、水3mlを乳鉢に加えた。次に、この乳鉢に、アセトンで磨砕抽出(20ml×4)し、ガラスフィルターで吸引濾過した。濾液全量を分液ロートに移し、ジエチルエーテル100ml及び水50mlを添加して抽出して、エーテル層を分離した。水層にさらにジエチルエーテル100mlを添加して、エーテル層を分離した。これらのエーテル層を合わせて、溶媒を留去し、さらにこれをシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン10ml、シリカゲル5g)にかけて、ヘキサン/ジエチルエーテル(85/15(v/v))30mlで溶出した。さらに、溶出液から溶媒を留去した後、2−プロパノールに溶解し、脂溶性MK−7を調製した。
このようにして調製された脂溶性MK−7を乾燥し、MK−7乾燥物を調製した。このMK−7乾燥物に室温で蛍光灯を5時間照射した後、実施例6と同様にして脂溶性MK−7を測定し、その結果を図7(黒塗りの四角)に示す。図7に示されるように、MK−7量は、蛍光灯を約3時間照射すると、測定不可能になることから、このようにして調製されたMK−7は光に対して非常に不安定であることが示される。
実施例9
日東菌を振盪培養し、この培養液を遠心分離して、上清と菌体に分けた。このようにして調製された微生物菌体の培養物のMK−7の量をソックスレー−HPLC法によって測定したところ、MK−7量換算で、564.0μg/g乾燥菌体であった。
この菌体0.1gに蒸留水5mlを加え、超音波処理を行った。次に、処理液を遠心分離し、この上清について水溶性MK−7誘導体量をHPLC法によって測定したところ、52.6μg/g乾燥菌体であった。
次に、水溶性MK−7誘導体を水に溶かした溶液について、Sephadex G50カラム(予め、0.15M NaClを含む0.05M リン酸緩衝液、pH7.5で平衡化したもの:2.5×50cm)によるゲル濾過を行い、各フラクションについてMK−7含量をHPLC法によって測定した。この結果を図8に示す。図8から示されるように、MK−7を多く含む部分(フラクション番号17〜25)は、アミノ酸部分(フラクション番号46〜49)よりかなり高分子量域に溶出されることが分かる。
実施例10
オカラは、旭松食品株式会社(飯田市)より提供されたものを、−25℃で凍結保存し、必要時に解凍して使用した。
別途、中国雲南の納豆から分離した納豆菌株(雲南菌 SL-001)を、500ml容の三角フラスコ内で150mlの3%栄養ブイヨン(nutrient broth)(乾燥ブイヨン)(日水製薬株式会社製)培地中で37℃で3日間、振盪培養(100rpm)することによって、納豆菌の前培養液を調製した。
解凍したオカラ1kg(湿重量)を、120℃で30分間、オートクレーブで滅菌した後、約120ml容量のポリスチレンペーパー(PSP)容器に入れた。この容器に、上記で調製された納豆菌の前培養液を添加し、37℃で4日間、発酵させた。このようにして発酵させたオカラ納豆1kg(湿重量)に対して、5リットルの水を加え、室温で1時間撹拌し、遠心分離(3,000rpm、10分間)した。得られた上清に対して、620gのイオン交換樹脂(DEAE-Sepharose CL-613)を加え、撹拌した後、室温で30分間、静置した。次に、これをガラスカラム(7.5cmφ×100cm)に充填し、蒸留水及び0.05Mリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄した後、0.1〜0.8M
NaClを含む0.05Mリン酸緩衝液(pH7.0)でグラジエント溶出した。各画分について、HPLCによってビタミンK量を測定し、ビタミンKを含む画分をメンブランフィルター(Millipore製、分子量10,000)で濃縮し、蒸留水で透析した後、凍結乾燥し、薄黄色粉末として水溶性ビタミンK誘導体を得た。
このようにして得られた水溶性ビタミンK誘導体及び上記と同じオカラをイソプロパノールで抽出したものを、HPLCによって分析し、その結果を図9に示す。なお、図9において、MK−4、ビタミンK1及びMK−7の保持時間は、それぞれ、約8.2分、約11.3分及び約17.5分であり、矢印はMK−7の保持時間を示す。図9から、オカラのイソプロパノール抽出物の60%以上が水溶性分画に抽出され、また、ビタミンKとしては、ビタミンK1、MK−4の量は少なく、常に95%以上がMK−7で占められることが分かった。
また、この水溶性ビタミンK誘導体について、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析を行ったところ、分子量約10万の位置に幅広いながら単一のバンドを示した。この結果から、水溶性ビタミンK誘導体は他の糖タンパク質と分子量約10万の複合体を形成しているのではないかと考察される。また、この際の納豆1kgからの水溶性ビタミンK誘導体の収率は、3回の操作による平均で、約5.3g(830μg
水溶性MK−7誘導体/gを含む)であった。
実施例11
500ml容の三角フラスコ5本に、それぞれ、300mlの3%乾燥ブイヨン(日水製薬株式会社製)培地を入れ、120℃で15分間オートクレーブ滅菌した。これらの培地に、雲南SL-001菌を一白金耳ずつ接種し、37℃で振盪培養(100rpm)した。4日後、培養液を合わせたものを遠心分離(5,000rpm×10分)し、得られた上清を400mlずつ3つに分けて、各上清のpHを希塩酸で1.02、2.07及び3.01に調節した。室温で3時間放置した後、上清を遠心分離(5,000rpm×10分、10℃)し、白色の沈殿を分離した。この白色沈殿物を少量の蒸留水に溶かして、重炭酸アンモニウム粉末でpHを7.0に調節した後、凍結乾燥した。この結果、凍結乾燥物の重量は、1.02、2.07及び3.01のpHの場合、それぞれ、0.52g、0.28g及び0.31gであった。次に、この凍結乾燥物について、MK−7含量(μg/g乾燥物)をソックスレー−HPLC法で調べたところ、1.02、2.07及び3.01のpHの場合、それぞれ、2,800μg/g乾燥物、2,200μg/g乾燥物及び2,000μg/g乾燥物であった。さらに、各凍結乾燥物15mgを蒸留水5mlに添加した溶液を遠心分離(10,000rpm×10分)した。得られた上清(水溶性分画)について、同様にしてMK−7含量を調べたところ、1.02、2.07及び3.01のpHの場合、それぞれ、1,500μg/g乾燥物、1,800μg/g乾燥物及び1,800μg/g乾燥物であったから、各水溶性分画の可溶化率は、約54%、約82%及び約90%であることことが分かった。
実施例12
大豆を水道水に一晩浸漬したもの3.9kgを105℃で30分間オートクレーブ滅菌した後、1m四方のステンレス製トレイ2枚に広げた。これに、普通寒天培地のスラントに培養された枯草菌(Bacillus subtilis Warburgt)(東京大学応用微生物研究所、IAM12118株)10白金耳を100mlの滅菌水に添加したものを接種し、ウレタン製の蓋をした後、37℃で4日間静置培養した。4日後の発酵大豆の全重量(2枚分)は約4.5kgであった。次に、発酵大豆に10リットルの蒸留水を加え、よく撹拌した後、ガーゼ付金網(メッシュ100mm)で濾過した。得られた上清中の水溶性MK−7含量をHPLC法で測定したところ、総量(即ち、4.5kg発酵大豆当たり)29.8mgが回収できた。
実施例13
500ml三角フラスコに2%ポリペプトン−S(和光純薬製)300mlを入れ、120℃で15分間オートクレーブ滅菌した。これに、枯草菌(Bacillussubtilis Warburgt)(東京大学応用微生物研究所、IAM12118株)1白金耳接種し、37℃で4日間、振盪培養(100rpm)した。この培養液を遠心分離(6,000rpm×10分)し、上清と菌体に分けた。菌体はさらに水洗して、凍結乾燥した。
上清について、MK−7含量をHPLC法で測定したところ、140μg/100ml上清であった。また、菌体についても、MK−7含量をソックスレー−HPLC法で測定したところ、22mg/100g凍結乾燥菌体であった。
実施例14
朝食のみ絶食させた健常成人(21〜63歳、男性)5人に、実施例9で調製された1000μgの水溶性MK−7誘導体を含む水溶性ビタミンK誘導体を、午前10時に経口摂取させた後、経時的に採血し、水溶性MK−7誘導体の血中濃度を測定した。なお、比較対照として、1000μgの精製MK−7を経口摂取させて同様の実験を行った。また、本実施例に参加した健常成人には、既往症及び血液検査による異常は認められなかった。
この結果、血漿中の主要なビタミンKはMK−7であり、水溶性MK−7誘導体投与後の血漿中のMK−7濃度は、投与前が1.3±0.8ng/ml(血漿)であったのに対して、投与後4時間目にはその約40倍の49.9±29.1ng/ml(血漿)(p<0.05)にまで増加し、さらにその亢進効果は等量の純MK−7を経口投与した場合に比べて、はるかに長持間(24時間目において、純MK−7群では3.2±2.3ng/mlであるのに対して、水溶性MK−7誘導体群では21.0±12.1ng/ml、p<0.05)持続することが分かった。
実施例15
鍋の中に、牛乳400g、砂糖80g及びコーンスターチ8gを入れて、撹拌・混合しながら加熱した。この混合液を沸騰直前で火を弱めて冷却した後、これに実施例3と同様にして培養された宮城野菌の培養物を凍結乾燥した物(730μg
ビタミンK/g乾燥菌体)10gを加え、さらに約2分間よく撹拌した。これとは別にボールに卵黄40gをとって、泡立てた。この泡立てた卵黄に、上記の撹拌混合物全部を徐々に添加し、混合した。次に、これを水冷した後、冷蔵庫で10℃以下まで冷却した。最後に、この冷却した混合物に、さらに泡立てた生クリーム150g及びバニラエッセンス5gを加えて、アイスクリームフリーザーに入れて冷やして固めることによって、ビタミンK入りアイスクリームを製造した。
実施例16
日東菌を、2リットルのジャーファーメンター中で、培養液(グルコース10g、ポリペプトン5g及び酵母エキス5gを水で1リットルに溶かしたもの)0.8リットル中に接種し、40℃で、通気拡散培養(500rpmの撹拌速度;0.5リットル/分の通気量)により、1.5日間発酵した。
このようにして得られた日東菌の培養物のMK−7量を従来の方法(坂野ら、ビタミン、62:393〜398、1988年)に準じて抽出・測定した。簡潔にいうと、上記で得られた日東菌の培養物を凍結乾燥し、その凍結乾燥粉末0.1gにイソプロパノール10mlを加え、タッチミキサーで撹拌抽出した後、遠心分離(3,000rpm×10分)した。上清100μlを1.0mlの水及び1.5mlのイソプロパノールと混和し、さらに4.9mlのヘキサンをタッチミキサーで約10秒間混和した。この混合液を遠心分離(3,000rpm×10分、20℃)した。得られた上清部分(有機層:水層=5.8:1.7)4.0mlをエバポレーターで濃縮・乾固した後、これを100μlのエタノールに溶解した。このようにして、調製された試料について、上記各種ビタミンK量の測定方法の項に記載されたHPLC条件と同様の条件を用いて、培養物のMK−7量を測定したことろ、15.1μg/gであった。また、上記操作において、イソプロパノールの代わりにクロロホルム/メタノール(1:1)混合液及びエーテルを用いて、上記操作を繰り返したところ、MK−7量は、それぞれ、15.0μg/g及び13.6μg/gであり、イソプロパノールを用いた場合とほぼ同等のMK−7量を示した。
これに対して、上記と同様にして得られた日東菌の培養物について、MK−7量をソックスレー−HPLC法で測定した結果、日東菌の培養物のMK−7量は、564.0μg/gであった。
これらの結果から、従来の方法では、納豆菌を効率よく抽出することが困難であり、培養物のMK−7量が良好に測定できなかったのに対して、本願発明で使用されるソックスレー−HPLC法は、従来の方法に比べて、MK−7の抽出効率が向上し、培養物のMK−7量をより良好に測定することができることが示された。
は、実施例1における調製された納豆菌乾燥物1gを各々5人の健常成人に経口摂取させた時の、経時的な血漿中のビタミンK(メナキノン−7)濃度の変化を示すグラフである。 は、実施例2における納豆菌乾燥物1.8×1010細胞を各々5人の健常成人に経口摂取させた時の、経時的な血漿中のビタミンK(メナキノン−7)濃度の変化を示すグラフである。 は、実施例3における培養時間に対する各種納豆菌の成長を示すグラフである。 は、実施例3における培養時間に対する各種納豆菌の培養液中のMK−7量を示すグラフである。 は、実施例3における培養時間に対する各種納豆菌の菌体内に蓄積されたMK−7量を示すグラフである。 は、実施例4における菌体内に蓄積されるMK−7量、線溶活性及び菌体外に放出されたMK−7量を示すグラフである。 は、実施例7及び比較例1において、蛍光灯による照射時間に対するMK−7量を示すグラフである。 は、実施例10において、ゲル濾過を行った際のパターンおよび各フラクションにおけるMK−7量を示すグラフである。 は、実施例9において、水溶性ビタミンK誘導体及びオカラのイソプロパノール抽出物のHPLC分析結果示すグラフである。

Claims (15)

  1. 雲南SL−001菌を培養し、培養された菌体及び/又は培養液からビタミンK誘導体を得る工程を含むことを特徴とするビタミンKの生産方法。
  2. 前記ビタミンK誘導体はビタミンK2誘導体である請求項1に記載のビタミンKの生産方法。
  3. 前記ビタミンK2誘導体はメナキノン−7誘導体である請求項2に記載のビタミンKの生産方法。
  4. 前記培養された菌体をソックスレー抽出することによってビタミンKを得ることを特徴とする請求項1,2又は3に記載のビタミンKの生産方法。
  5. 前記培養液を酸性化し、沈殿物を得る工程を更に含むことを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載のビタミンKの生産方法。
  6. 雲南SL−001菌を培養し、培養された菌体及び/又は培養液から得られるビタミンK誘導体。
  7. 前記ビタミンK誘導体はビタミンK2誘導体である請求項6に記載のビタミンK誘導体。
  8. 前記ビタミンK2誘導体はメナキノン−7誘導体である請求項7に記載のビタミンK誘導体。
  9. 前記培養された菌体をソックスレー抽出することによってビタミンKを得ることを特徴とする請求項6,7又は8に記載のビタミンK誘導体。
  10. 前記培養液を酸性化し、沈殿物を得ることによって分取することを特徴とする請求項6,7,8又は9に記載のビタミンK誘導体。
  11. 雲南SL−001菌を培養し、培養された菌体及び/又は培養液から得られるビタミンK誘導体を含む食品、飲料または飼料。
  12. 前記ビタミンK誘導体はビタミンK2誘導体である請求項11に記載の食品、飲料または飼料。
  13. 前記ビタミンK2誘導体はメナキノン−7誘導体である請求項12に記載の食品、飲料または飼料。
  14. 前記培養された菌体をソックスレー抽出することによって前記ビタミンKを得ることを特徴とする請求項11,12又は13に記載の食品、飲料または飼料。
  15. 前記培養液を酸性化し、沈殿物を得ることによって前記ビタミンKを分取することを特徴とする請求項11,12,13又は14に記載の食品、飲料または飼料。
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