突起の研磨において研磨後の最終的な突起の高さは、2枚のガラス部材間で形成された液晶層の間隔より低くなければならない。しかしながら、上記特許文献1に記載の除去装置のようにCCDカメラ等の異物検出手段を使用したものでは、うねりを持つガラス面に形成されたパターン面に微小突起が存在する場合、正確に高さを検知しながら、削り過ぎないよう微小突起を歩留まりよく研磨するのは困難であった。
また、上記特許文献2に記載のものでは、センサーにて突起の高さ寸法が検知した場合、その高さ分を研磨することになる。しかしながら、その高さ寸法に基づく研磨量の制御したとしても、その研磨量が正確に算出されない場合や、正確に算出されたとしても、基板に対する装置の研磨部位をその算出された量分を正確に研磨することができないおそれもある。
この発明は、上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的はパターン面に微小突起が存在する場合において、削り過ぎることなく確実に研磨することができる研磨装置を提供する。
そこで請求項1の研磨装置は、液晶パネル等に用いられるフィルタ基板1の突起を、研磨ヘッド3の被走行面6を走行する研磨テープ2にて研磨する研磨装置であって、上記研磨ヘッド3の被走行面6から突出して研磨テープ2を介してフィルタ基板1の突起に押し当てられる研磨ピン5と、一対の高さ測定器4A,Bと、上記研磨ピン5が研磨テープ2を介して突起に押し当たっているときの上記研磨ピン5の状態を検出するセンサー20とを備え、上記一対の高さ測定器4A,Bとセンサー20とによって、上記測定器4A,4Bが同一高さとして検知した平面の高さに上記フィルタ基板1の研磨ピン対応部の高さが略一致するまで、上記研磨テープ2による突起の研磨を行うことを特徴としている。
上記請求項1の研磨装置では、研磨ピン5が突起に対応しているときに、上記フィルタ基板1の研磨ピン対応部の高さが、測定器4A、4Bが同一高さとして検知した平面の高さ略一致するまで、研磨テープ2による突起の研磨を行うことができる。このため、フィルタ基板1の研磨ピン対応部に突起があれば、この高さが、測定器4A、4Bにて同一高さとして検知された平面よりも高いことになり、この平面の高さに一致するまで研磨することになる。
請求項2の研磨装置は、上記一対の高さ測定器4A、4Bとセンサー20とによって、突起のない基板基準面を上記平面として検知することを特徴としている。
上記請求項2の研磨装置では、一対の高さ測定器4A、4Bとセンサー20とによって、突起のない基板基準面を上記平面として検知することができるので、フィルタ基板1の研磨ピン対応部をこの平面の高さとなるまで研磨することによって、研磨ピン対応部を基板基準面の高さとすることができる。
請求項3の研磨装置は、上記センサー20は、研磨ピン5が研磨テープ2を介して突起に押し当たっているときの突起からの押上力を検知し、上記研磨ピン5が上記平面に対応しているときに、研磨ピン5に作用する押上力が所定値以下となり、上記研磨ピン5に上記所定値を越えた押上力が作用しているときに、その押上力が所定値以下となるまで、上記研磨テープ2による突起の研磨を行うことを特徴としている。
上記請求項3の研磨装置では、一対の測定器4A、4Bとセンサー20とによって、研磨ピン5に作用する押上力が所定値以下となる平面(突起のない基板基準面)の高さ位置を検知することになる。また、センサー20にて検知した押上力が所定値を越えていれば、研磨ピン5が突起に対応して、この突起から押上力を受けていることになる。このため、研磨テープ2にてこの突起を研磨して行けば、この突起が研磨されて行くに従ってこの押上力が小さくなる。そして、押上力が所定値以下となれば、フィルタ基板1の研磨ピン対応部の高さが、基板基準面(突起のない平面)の高さと略一致する。すなわち、研磨ピン5が研磨テープ2を介して突起に押し当たっているときに、押上力が所定値以下となるまで研磨すれば、このフィルタ基板1の研磨ピン対応部の高さ位置が、突起のない平面(基板基準面)の高さに略一致することになる。
請求項4の研磨装置は、上記センサー20は研磨ピン5の高さ位置を検知し、上記研磨ピン5が上記平面に対応しているときに、研磨ピン5の下端53の高さ位置が高さ測定器4A、4Bの測定子46、52の高さ位置と略一致し、上記研磨ピン5の下端53の高さが測定子46、52の高さよりも高いときに、この研磨ピン5の下端53が上記平面に略一致するまで、上記研磨テープ2による突起の研磨を行うことを特徴としている。
上記請求項4の研磨装置では、センサー20は研磨ピン5の高さ位置を検知し、一対の高さ測定器4A、4Bとこのセンサー20にて、研磨ピン5の下端53の高さ位置が高さ測定器4A、4Bの測定子46、52の高さ位置と略一致する平面(突起のない基板基準面)の高さ位置を検知することができる。そこで、研磨ピン5が突起に対応しているときには、この研磨ピン5の下端53の高さがこの平面よりも高いことになるので、研磨テープ2によってこの突起を研磨していけば、突起の高さが順次低くなり、これに伴って研磨ピンが順次下降して行く。このため、研磨ピン5の下端53が突起のない基板基準面に略一致するまで、研磨することができる。
請求項5の研磨装置は、一対の高さ測定器4A、4Bの測定子46、52間に上記研磨ピン5の下端53が配置されて、この測定子46、52と研磨ピン5の下端53とが略同一直線上に並ぶことを特徴としている。
上記請求項5の研磨装置では、一対の高さ測定器4A、4Bの測定子46、52間に研磨ピン5の下端53が配置されて、この測定子46、52と研磨ピン5の下端53とが略同一直線上に並んでいるので、例えば、傾斜面において、2つの測定器4A、4Bにて測定された高さの平均値が中央の研磨ピン5に対応する部位の高さ(突起がないときの高さ)であると言える。このため、傾斜面等であっても、この傾斜面における突起がないときの基板基準面の高さ位置を検知することができる。
請求項6の研磨装置は、上記研磨ピン5の無摺動抵抗状態での上下動が可能なスライド機構8を備えたことを特徴としている。
上記請求項6の研磨装置では、研磨ピン5の無摺動抵抗状態での上下動が可能なスライド機構8を備えているので、研磨ピン5に作用する突起からの押上力を精度よく検知することができ、また、研磨ピン5の上下動も滑らかに行うことができ、研磨ピン5の高さ位置を精度よく検知することができる。
請求項7の研磨装置は、一方の測定器4Aは、水平方向に移動して突起の研磨前及び研磨後の高さ測定が可能であることを特徴としている。
上記請求項7の研磨装置では、一方の測定器4Aは、研磨前の突起の高さを測定して、研磨条件の決定を行うと共に、研磨後の突起の高さの確認を行って、再研磨の必要性の判断が可能となる。
請求項8の研磨装置は、上記研磨ピン5の反基板方向への移動を規制して、研磨ピン5から上記突起に対して必要量の軸方向押圧力を付与するロック構造60を設けたことを特徴としている。
上記請求項8の研磨装置では、研磨ピン5が、研磨ヘッド3の被走行面6から突出して研磨テープ2を介してフィルタ基板1の突起に押し当てられるので、フィルタ基板1の突起を研磨することができる。しかも、ロック構造60にて、研磨ピン5から突起に対して必要量の軸方向押圧力を付与することができるので、突起の研磨時に軸方向押圧力(推力)が不足することがなくなる。
請求項9の研磨装置は、上記ロック構造60を、研磨ピン5に連設された軸部材13に設けられる鍔部61と、この鍔部61を受けるストッパ部材62とから構成し、上記研磨ピン5の反基板方向への移動量を規制することを特徴としている。
上記請求項9の研磨装置では、ロック構造60は鍔部61とストッパ部材62とで構成されるので、簡単な構成であり、しかも、研磨ピン5の反基板方向への移動量を規制することができるので、必要量の軸方向押圧力を確実に突起に対して付与することができる。
請求項10の研磨装置は、上記鍔部61にマグネット63を埋め込むと共に、上記ストッパ部材62を磁性体とし、上記マグネット63とストッパ部材62とで生じる吸着力にて、上記研磨ピン5及び軸部材13の自重による基板方向への押圧力の発生を防止することを特徴としている。
上記請求項10の研磨装置では、鍔部61のマグネット63がストッパ部材62に吸着することによって、研磨ピン5及び軸部材13の自重による基板方向への押圧力の発生を防止できるので、過研磨となるのを回避することができる。
請求項1の研磨装置によれば、フィルタ基板の研磨ピン対応部に突起があれば、この高さが平面(一対の測定器によって同一高さとして検知された平面)よりも高いことになり、この平面の高さに一致するまで研磨すれば、この突起を確実に除去することができる。
請求項2の研磨装置によれば、フィルタ基板の研磨ピン対応部をこの平面の高さとなるまで研磨することによって、研磨ピン対応部を基板基準面の高さとすることができる。このため、このフィルタ基板におけるこの基板での突起を確実に除去することができる。
請求項3の研磨装置によれば、センサーにて検知された押上力が所定値を越えていれば、研磨ピンが突起に対応して、研磨ピンが研磨テープを介して突起に押し当たっている状態である。このような状態のときに、押上力が所定値以下となるまで研磨すれば、この基板の研磨ピン対応部の高さ位置が平面(一対の測定器が同一高さとして検知した平面)の高さに略一致することになって、この研磨ピン対応部における突起が研磨されて除去されたことになる。すなわち、研磨ピンで突起の高さを押上力を検知するセンサーにて捕らえることにより、研磨中の突起の高さを監視しつつ研磨動作を行うことができ、しかも、誤差は含んではいるが、実用的な突起の高さ検知が可能である。このため、研磨動作と高さ測定の時間を短縮して、突起を効率よく研磨修正することができることになる。
請求項4の研磨装置によれば、フィルタ基板の研磨ピン対応部に突起があれば、研磨ピンの下端の高さ位置が平面(一対の測定器が同一高さとして検知した平面)よりも高くなっている。そこで、研磨テープによってこの突起を研磨していけば、この研磨によってこの突起の高さが順次低くなり、これに伴って研磨ピンが順次下降して行く。このため、研磨ピンの下端が上記平面(突起がない基板基準面)に略一致するまで研磨すれば、この突起を確実に除去することができる。
請求項5の研磨装置によれば、傾斜面等における突起がないときの基板基準面の高さ位置を検知することができる。これによって、一対の測定子間が傾斜していて傾斜面に形成されていて、しかもこの傾斜面に突起があっても、この突起の研磨を確実に行うことができる。
請求項6の研磨装置によれば、研磨ピンに作用する突起からの押上力を精度よく検知することができ、また、研磨ピン5の上下動も滑らかに行うことができ、研磨ピン5の高さ位置を精度よく検知することができる。これによって、研磨テープによる研磨量の制御が安定して、高精度に突起を研磨することができる。
請求項7の研磨装置によれば、一方の測定器は、研磨前の突起の高さを測定して、研磨条件の決定を行うと共に、研磨後の突起の高さの確認を行って、再研磨の必要性の判断が可能となる。これによって、この研磨装置を使用した研磨作業において、研磨されていない突起が残るのを回避でき、精度のよい研磨作業を行うことができる。
請求項8の研磨装置によれば、突起の研磨時に軸方向押圧力(推力)が不足することがなくなるので、研磨未完了の突起が残るのを回避でき、精度のよい研磨作業を行うことができる。
請求項9の研磨装置によれば、ロック構造が簡単な構成であるので、装置のシンプル化を図ることができる。しかも、必要量の軸方向押圧力を突起に対して確実に付与することができて、研磨圧力不足となるのを安定して防止でき、高精度の研磨が可能となる。
請求項10の研磨装置によれば、過研磨となるのを回避することができ、しかも、研磨圧力不足となるのを防止でき、安定した研磨を行うことができる。
次に、この発明の研磨装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は研磨装置の要部左側面図であり、図2は研磨装置の要部正面図であり、図3は研磨装置の要部右側面図である。この研磨装置は、液晶パネル等に用いられるフィルタ基板1の突起を研磨するものである。すなわち、この研磨装置は、研磨テープ2と、この研磨テープ2が走行する研磨ヘッド3と、一対の接触式の高さ測定器4A、4B等を揺する研磨ユニットUを備えている。そして、研磨ヘッド3には研磨ピン5(図4と図5等参照)が上下動可能に収納されている。
研磨ヘッド3は、図4〜図7等に示すように、下面が凸曲面からなって、上記研磨テープ2が走行する被走行面6に形成されると共に、中空室7が設けられたブロック体からなり、スライド機構8が連結されている。研磨ヘッド3の中空室7は、本体部10と、本体部10の底面中央部に設けられる凹所11とを有し、この凹所11に被走行面6に開口する開口部12が設けられている。また、中空室7にはスライド機構8の軸部材13の先端部が遊嵌状に嵌入している。さらに、軸部材13の先端面には凹所11に遊嵌状に嵌入する膨出部14が設けられ、膨出部14に、開口部12に遊嵌状に嵌入する上記研磨ピン5が突設されている。
スライド機構8は研磨ピン5の無摺動抵抗状態での上下動を可能とするものであって、いわゆるエアベアリングであり、かつ推力ポート15に圧力をかけることにより推力(押し下げ力)を発生することができるものを使用している。すなわち、スライド機構8は上記軸部材(ロッド)13が上下動自在に挿通される孔部17を有するボディ18を備え、ロッド13が孔部17内に配置される上下一対のブッシュ19、19(多孔質からなる)にて支持されている。そして、ベアリングポート16にエアを供給することによって、ロッド外周面と、ブッシュ19、19との間をほんの僅か浮かせることにより非接触にして、摺動抵抗を無くすようにしている。そのため、研磨ピン5を横方向にぐらつかせることなく、軸方向に沿って確実に上下動させることができ、しかも、研磨ピン5の状態を検知するためのセンサー20に精度良く伝達することができる。この際のセンサー20は、後述するように、研磨ピン5の突起からの押上力を検知するロードセルである。
ところで、研磨ピン5の先端は、研磨ヘッド3の被走行面6から僅か(例えば、数十ミクロン程度)に突出している。また、被走行面6には後述するように、研磨テープ2が走行することになって、研磨時に研磨テープ2が突起に押し当てられる。このため、研磨ピン5は研磨テープ2を介して突起に押し当てられ、この突起からの押上力が作用する。このため、軸部材13にはこの押上力を検知するセンサー(この場合、ロードセル)20が連結されている。すなわち、軸部材13に連結部材21を介して、ロードセル20のロッド22が接続され、研磨ピン5に押上力が作用すれば、軸部材13および連結部材21を介してロッド22に伝わり、このロードセル20にてその押上力を検知することができる。
また、研磨テープ2は、図1〜図3に示すように、送り側リール23と巻き取り側リール24とに巻設され、送り側リール23はトルクモータ25に連結されている。すなわち、各リール23、24は枠体26に回転自在に支持され、駆動機構27によって送り側リール23側の研磨テープ2が順次巻き取り側リール24に巻き取られる。駆動機構27は、駆動用モータ28と、研磨テープ2の走行をガイドするローラ29と、駆動用モータ28の駆動力を伝達する伝達部材30等を備える。また、伝達部材30は、駆動用モータ28の出力軸に付設される第1歯車31と、この第1歯車31に噛合する第2歯車32と、巻き取り側リール24の軸部材33(軸受38にて回転自在に支持されている)に付設されるプーリー34等を備え、第2歯車32のプーリー部35と、プーリー34にベルト36が掛け回まわされている。さらに、プーリー部35とプーリー34との間には中間プーリー37が配置されている。なお、第2歯車32が枠体26に軸受38を介して回転自在に支持されている軸部材40の一端側に支持され、上記ローラ29がこの軸部材40の他端側に支持されている。
そして、枠体26の表面(リール23、24が付設さている面)には、複数のガイドローラ41・・が配置され、研磨テープ2が各ガイドローラ41・・及びローラ29にガイドされつつ走行する。すなわち、駆動機構27の駆動用モータ28が駆動することによって、ローラ29及び巻き取り側リール24が回転して、研磨テープ2は、第1ガイドローラ41aと第2ガイドローラ41bにガイドされて研磨ヘッド3の被走行面6を走行して、第3ガイドローラ41c、第4ガイドローラ41d、ローラ29、及び第5ガイドローラ41eにガイドされて巻き取り側リール24に巻き取られる。なお、リール23、24は、その軸部材が枠体26に固着された基板39を介して前面側に突出し、この基板39からは上下一対のガイドローラ43、43が突設されている。すなわち、ガイドローラ43は、図3に示すように、その基端部が枠体26及び基板39に支持される軸部材43aと、軸部材43aに外嵌されるローラ部43bとからなり、リール23、24間に配置されている。
ところで、研磨テープ2は、合成樹脂等からなる基材に、酸化アルミニウム、酸化クロム、ダイヤモンド等の研磨粒子を付着させたものである。また、図8に示すように、研磨ヘッド3の被走行面6には複数の吸着孔42・・が開口して、この吸着孔42・・から研磨テープ2を被走行面6側に吸引して、走行中の研磨テープ2が被走行面6に密接するようにしている。このため、研磨テープ2は、研磨ヘッド3の被走行面6に対してずれることなく走行することになって、研磨時において確実に突起を研磨することができる。
次に、一方の高さ測定器4Aは、図1と図4に示すように、測定器本体部44と、この測定器本体部44から伸びる揺動アーム45と、この揺動アーム45の先端に設けられた測定子46とを有し、揺動アーム45の揺動量から測定子46の上下変位を検出することによって、この測定子46が接触しているフィルタ基板1の高さを測定することができる。この場合、高さ測定器4Aの測定子46は、研磨ヘッド3に対して枠体26側に配置され、移動機構47によって、矢印A方向の水平移動が可能とされる。なお、この移動機構47は移動用モータとボールねじ機構等から構成され、測定器本体部44を上記矢印Aのように移動させることができる。そして、測定子46は研磨テ−プ2の走行方向に沿った所定長さのいわゆる蒲鉾型とされる。
また、他方の高さ測定器4Bは、上記一方の高さ測定器4Aと同様、図2等に示すように、測定器本体部50と、この測定器本体部50から伸びる揺動アーム51と、この揺動アーム51の先端に設けられた測定子52とを有し、揺動アーム51の揺動量から測定子52の上下変位を検出することによって、この測定子52が接触しているフィルタ基板1の高さを測定することができる。この場合、この他方の高さ測定器4Bは、研磨ヘッド3に関して一方の高さ測定器4Aと反対側に配置され、また、高さ測定器4Aと相違して矢印A方向の移動が可能ではなく、測定子52は球形型とされる。
この場合、一対の測定器4A、4Bの測定子46、52の間に、研磨ピン5の下端(圧力受部)53が配置され、しかも、図8に示すように、下面視において同一直線L上にほぼ並んでいる。この直線Lは、研磨ヘッド3の被走行面6に対する研磨テープ2の走行方向Bに対して略直交している。ところで、上記研磨ユニットUには、図1〜図3等に示すように、昇降用モータを備えた昇降機構55が枠体26に連結され、この昇降機能55のボールねじ駆動により、研磨ユニットUが上下動する。このため、研磨ユニットUを下降させて、フィルタ基板1に測定子46、52を接触させることができ、この測定子46、52の高さが同一である平面を検知することができる。そして、測定子46、52の高さが同一であると検知した平面において、研磨ピン5の下端53の対応部に突起がない場合には、研磨ピン5の下端53が受ける押上力が所定値以下である。そこで、研磨ピン5の押上力がこのような状態では、この下端53の対応部に突起がないことになる。
次に、上記研磨装置を使用して基板1上の突起を研磨(除去)する方法を説明する。まず、フィルタ基板1上に、一対の測定器4A、4Bの測定子46、52を接触させ、この状態で研磨ピン5のフィルタ基板1からの押上力が所定値以下であるときを、基板基準面(突起のない平面であって、一対の測定器4A、4Bにて同一高さとして検知した平面)の高さとする。そして、フィルタ基板1が載置固定されているステージを相互に直交するX軸、Y軸に沿って水平移動させる。なお、フィルタ基板1の突起の位置は、欠陥位置情報を具備したデータネットワーク等から得ることができる。そこで、このフィルタ基板1に突起があって、この突起に研磨ピン5が対応すれば、この突起からの押上力がこの研磨ピン5に作用し、ロードセルからなるセンサー20がこの押上力を検知する。この際、センサー20にて検知される押上力が上記所定値を越えることになる。そこで、研磨テープ2を走行させつつ研磨ヘッド3を下降させる。これによって、この突起が研磨テープ2によって研磨されていく。この研磨によって突起の高さが順次低くなって、突起からの押上力が小さくなっていく。そして、その押上力が所定値以下になったときに、研磨ヘッド3の下降を停止して研磨を終了する。この状態では、押上力が所定値以下となっており、この所定値以下の場合においては、フィルタ基板1の研磨ピン対応部(つまり、突起があった部位)の高さを基板基準面の高さに略一致させることができ、突起が研磨されてなくなっていることになる。
ところで、基板1のパターン上には段差や傾斜があるため、研磨ピン5の下端53に対応する部分を、測定器4A、4Bの測定子46、52の高さ位置に合わせた場合、削り過ぎを招くおそれがある。このため、上記所定値の設定を変更して、測定子46、52の高さ位置に対して1〜2ミクロン程度オフセットさせるようにして、削りすぎを防止するようにするのが好ましい。これは、液晶パネルのギャップは3〜4ミクロンであるので、この1〜2ミクロン程度のオフセットによって、微小突起が残っても、電気的或は光学的な欠陥とならず、逆に削り過ぎによる欠陥が生じるのを防止できるからである。
また、一方の測定器4Aは、水平方向に移動して突起の研磨前及び研磨後の高さ測定が可能であるので、ある突起に対して一回の研磨作業を行って、その突起が基板基準面の高さまで研磨されたか否かの判断を行うことができ、研磨が不充分ならば、再度この突起の研磨作業を行うことができ、突起がなくなるまで研磨作業を行うことができる。
この研磨装置によれば、研磨ピン5が突起に対応しているときに、上記フィルタ基板1の研磨ピン対応部の高さが、測定器4A、4Bが同一高さとして検知した平面の高さに略一致するまで、研磨テープ2による突起の研磨を行うことができる。このため、フィルタ基板1の研磨ピン対応部に突起があれば、この高さが、測定器4A、4Bにて同一高さとして検知された平面よりも高いことになり、この平面の高さに一致するまで研磨することになる。この場合、センサー20にて検知した押上力が所定値を越えていれば、研磨ピン5が突起に対応して、この突起から押上力を受けていることになる。このため、研磨テープ2にてこの突起を研磨して行けば、この突起が研磨されて行くに従ってこの押上力が小さくなる。そして、押上力が所定値以下となれば、フィルタ基板1の研磨ピン対応部の高さが、上記平面の高さと略一致する。すなわち、研磨ピン5が研磨テープ2を介して突起に押し当たっているときに、押上力が所定値以下となるまで研磨すれば、このフィルタ基板1の研磨ピン対応部の高さ位置が平面(突起のない基板基準面)の高さに略一致することになって、この研磨ピン対応部における突起が研磨されて除去されたことになる。このように、この研磨装置では、研磨ピン5で突起の高さをロードセル20にて捕らえることにより、研磨中の突起の高さを監視しつつ研磨動作を行うことができ、しかも、誤差は含んではいるが、実用的な突起の高さ検知が可能である。このため、研磨動作と高さ測定の時間を短縮して、突起を効率よく研磨修正することができる。特に、一対の測定器4A、4Bにて同一高さとして検知された平面を、突起のない基板基準面しているので、研磨ピン対応部の高さが基板基準面の高さに略一致するまで研磨することによって、このフィルタ基板1におけるこの基板1での突起を確実に除去することができる。
また、一対の高さ測定器4A、4Bの測定子46、52間に研磨ピン5の下端53が配置されて、この測定子46、52と研磨ピン5の下端53とが略同一直線L上に同等距離間隔で並ぶので、傾斜面において、2つの測定器4A、4Bにて測定された高さの平均値が中央の研磨ピン5に対応する部位の高さ(突起がないときの高さ)であるといえる。このため、一対の測定子46、52とセンサー20とで、傾斜面における突起がないときの基板基準面の高さ位置を検知することができる。これによって、一対の測定子46、52間が傾斜していて傾斜面となっており、しかもこの傾斜面に突起があったとしても、この突起の研磨を行うことができる。
研磨ピン5の無摺動抵抗状態での上下動が可能なスライド機構8を備えているので、研磨ピン5に作用する突起からの押上力を精度よく検知することができる。これによって、研磨テープ2による研磨量の制御が安定して、高精度に突起を研磨することができる。ところで、実際の突起の研磨では、研磨テープ走行時の張力、エアベアリング8の加圧力によりロードセル20の数値は変化する。また、研磨テープ2の弾性歪は研磨テープ2に対する加圧力に比例し、加圧力が大きいほど研磨ピン5の高さ検知感度は低下する。この際ヤング率が大きいほど研磨テープ2の歪は小さくなる。さらに、突起が小さい場合は研磨テープ自身の弾性歪によりこの突起が埋もれてしまう場合もある。そこで、この研磨装置では、突起の高さ、削り易さ等に応じてエアベアリング8の加圧力の調整を行いロードセル数値の安定領域を研磨終了点として、高速研磨が可能な研磨装置を実現することができる。すなわち、加圧量を制御するためのエアベリング8により、研磨ピン5の自重からエアベリング8の最大加圧力まで制御可能であり、これによって、種々の材質の研磨テープ2に対応でき、コストの低減を図ることができる。また、研磨のスピードは研磨圧力が大きくなるに従って速くなると考えられる。このため、初回(1回目)の研磨動作で削れなかった硬い突起に対しては、2回目の研磨において、高さ測定感度よりも研磨スピードを優先させて、加圧力を強くすることも可能である。さらに、一方の測定器4Aは、研磨前の突起の高さを測定して研磨条件の決定を行うと共に、研磨後の突起の高さの確認を行って、1回研磨された突起の再研磨の必要性の判断を行うことができる。これによって、この研磨装置を使用した研磨作業において、研磨されていない突起が残るのを回避でき、精度のよい研磨作業を行うことができる。
また、センサー20として、上記実施形態では、研磨ピン5に作用する突起からの押上力を検知するロードセルにて構成したが、研磨ピン5の高さ位置を検知する位置センサー(上下変位センサー)にて構成してもよい。この場合、研磨ピン5の下端53の高さ位置を高さ測定器4A、4Bの測定子46、52の高さ位置と略一致させる。このため、研磨ピン5が突起に対応すれば、この突起のために、研磨ピン5の下端53の高さ位置が、平面(一対の高さ測定器4A、4Bにて同一高さとして検知した平面であって、突起のない基板基準面)よりも高くなっている。そこで、研磨テープ2によってこの突起を研磨していけば、この研磨によって突起の高さが順次低くなり、これに伴って研磨ピン5が順次下降して行く。このため、研磨ピン5の下端53が基板基準面に略一致するまで、研磨すればこの突起が確実に研磨されて除去される。
このように、センサー20として、研磨ピン5の高さ位置を検知する位置センサーにて構成した場合には、研磨ピン5の下端53の高さ位置を検知し、この下端53が基板基準面に略一致するまで研磨すれば、この突起を除去することができる。また、この場合も、研磨ピン5の無摺動抵抗状態での上下動が可能なスライド機構8を備えることにより、研磨ピン5の上下動も滑らかに行うことができ、研磨ピン5の高さ位置を精度よく検知することができる。
ところで、形成される突起においては、種々の高さや硬さのものがある。上記エアベリング8を使用した場合にはその推力(押し下げ力)に限界があり、研磨しきれず、研磨未完了が生じるおそれがある。そこで、図9に示すように、ロック構造60を設け、これによって、研磨ピン5の反基板方向への移動を規制して、研磨ピン5から上記突起に対して必要量の軸方向押圧力(押し下げ力)を付与し、推力(研磨圧力)不足のまま研磨が完了しないようにするのが好ましい。
すなわち、図9に示すように、軸部材13の基端側に鍔部61を設けると共に、上記連結部材21にこの鍔部61を受けるストッパ部材(ブロック体)62を付設し、この鍔部61とストッパ部材62とでロック構造60を構成する。通常、鍔部61とストッパ部材62の鍔部対応面62aとの間に微小隙間が設けられる。このため、研磨ピン5に突起からの押上力が作用すれば研磨ピン5が反基板側へスライドして、鍔部61がストッパ部材62の鍔部対応面62aに当接する。これによって、研磨ピン5が反基板側へ移動(スライド)することが規制される。すなわち、このロック構造60では、研磨ピン5が反基板方向に微小距離だけ移動が可能であって、その移動量を規制することになる。なお、図9に示す研磨ユニットUにおいて、図4に示す研磨ユニットUと同一の構成は図4と同一の符号を付してその説明を省略する。
次に図9に示す研磨ユニットUを使用した研磨作業を説明する。この場合も、上記したように、研磨テープ2を走行させつつ研磨ヘッド3を下降させ、これによって、この突起を研磨テープ2によって研磨することになる。この際、研磨時に推力不足となって目標高さまで突起を研磨できていない情報を、センサー出力の値とその変化量から検知するように構成し、研磨できていない場合には、その研磨不足量を計算した後、研磨ユニットUを研磨方向(基板側)に上記微小隙間分降下させつつ研磨する。具体的には、鍔部61がストッパ部材62の鍔部対応面62aに当接した時のセンサー出力(例えばこれを上限値とする)を調べておいて、降下研磨動作ではその上限値を検出したタイミングからさらに研磨不足高さ分の降下研磨動を実施する。
このため、研磨ピン5を反基板側(反研磨方向)に機械的にロックした状態で研磨ユニットUを基板側(研磨方向)に必要量(研磨未達量、研磨不足量)降下させながら研磨することになり、研磨不足となるのを防止することができる。また、この図9に示すロック構造60は、鍔部61とストッパ部材(ブロック体)62とで構成しているので、簡単な構成となっている。このため、研磨ユニットUのシンプル化を図ることができる。しかも、必要量の軸方向押圧力を突起に対して確実に付与することができて研磨圧力不足となるのを安定して防止でき、高精度の研磨が可能となる。
また、ロック構造60として、図10に示すように、研磨ピン5及び軸部材13の自重による基板方向への押圧力の発生を防止できるような構造であってもよい。すなわち、鍔部61にマグネット63を埋め込む共に、ストッパ部材62を磁性体とする。この場合、マグネット63をマグネット片から構成し、この複数個のマグネット片を周方向に沿って所定ピッチで配置するようにしても、マグネット63をリング体にて構成し、このリング状のネットネット63を鍔部61に埋め込むようにしてもよい。さらに、図10では、マグネット63が基板側に配置されているが、反基板側、つまりストッパ部材62側に配置されるものであってもよい。要は、マグネット63とストッパ部材62とで生じる吸着力にて、上記研磨ピン5及び軸部材13の自重による基板方向への押圧力の発生を防止することができればよい。
この場合、研磨作業において、推力ポート15のエア供給圧力を小さくするかまたは「0」にすれば、磁力(吸着力)により鍔部61がストッパ部材62に吸着し、研磨ピン5がロック位置に確実に収まり精度よい研磨が可能である。また、一つの突起で研磨工程で硬さ変動があった場合、すなわち先端のみ固い突起であっても、研磨ピン5及び軸部材13の自重による基板方向への押圧力の発生を防止できるので、研磨完了時に研磨ピン5及び軸部材13の自重による過研磨を防止することができる。このため、上記図10に示すようなロック構造60であれば、過研磨となるのを回避することができ、しかも、研磨圧力不足となるのを防止できるので、安定した研磨を行うことができる。
以上にこの発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記実施形態では、一対の高さ測定器4A、4Bの測定子46、52間に研磨ピン5の下端53を配置して、測定子46、52と研磨ピン5の下端53とを略同一直線L上に並ぶようにしているが、このように配置することなく、アトランダムに配置されるものであってもよい。また、上記実施形態では、一方の測定器4Aの測定子46をいわゆる蒲鉾型とし、他方の測定器4Bの測定子52を球形型としているが、この一方の測定器4Aの測定子46を球形型としてもよく、他方の測定器4Bの測定子52を蒲鉾型としてもよい。さらに、一方の測定器4Aが矢印A方向に移動しないものであってもよく、他方の測定器4Bが矢印A方向に移動可能であるものであってもよい。また、研磨の基準となるセンサー20の所定値としては、突起がない基板基準面に高さ測定器4A、4Bの測定子46、52及び研磨ピン5が接触している状態における値であるので、研磨ヘッド3の高さ位置や研磨ヘッド3からの研磨ピン5の突出量等に応じて任意に設定できる。この場合の所定値としては、零であっても、零を越えた所定の値であってもよい。このため、研磨ピン対応部が、突起がない基板基準面よりも僅かに高い場合であっても、その高さが製品として許容可能な範囲(電気的或いは光学的な欠陥とならない範囲)であれば、その押上力を所定値とすることができる。なお、研磨ピン5の押上力を検知するセンサー20として、ロードセルに限るものではなく、他の圧力センサー(例えば、圧電素子等を使用したもの)を用いることができる。
また、図9に示す実施形態ではロック構造60を備えているが、このロック構造60としては、研磨ピン5の反基板側への移動を規制すればよいので、鍔部61とストッパ部材62とで構成する以外に、例えば、軸部材13をクランプ等して移動を規制することができるもの等であればよい。さらに、図9の示すロック構造60では、研磨ピン5が反基板方向に微小距離だけ移動が可能であるが、この微小距離の移動も許容しないものであってもよい。
1・・フィルタ基板、2・・研磨テープ、3・・研磨ヘッド、4A、4B・・高さ測定器、5・・研磨ピン、6・・被走行面、8・・スライド機構、20・・センサー、46、52・・測定子、53・・下端、60・・ロック構造、61・・鍔部、62・・ストッパ部材、62a・・鍔部対応面、63・・マグネット