JP2005319384A - 水素分離材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の水素分離材の製造方法は、少なくともその一部に、孔径が水素を選択的に透過し得るサイズである水素分離層(典型的には表面層)を有する多孔体を用意する工程と、(好ましくは水素分離層を表面活性化処理、例えばプラズマ処理後)その水素分離層に、長周期型の周期表第5族、8族、9族及び10族元素からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素(好ましくはPd)を中心金属の少なくとも一つとする錯体(好ましくはアセタト錯体及び/又はアセチルアセトナト錯体)を担持(好ましくは浸漬により)させる工程と、を含むことを特徴とする。好ましくは、錯体担持工程中及びその後に、焼成処理を含まない。
【選択図】 なし
Description
このような多孔質セラミックス膜の構成要素として、高珪酸成分ガラス(例えば、バイコールガラス)が挙げられる。該ガラス製の膜は、耐熱性及び耐食性には優れている。しかし、孔径が約40オングストローム以上と大きいため、水素などの分離に用いる場合にはその分離係数が低いという欠点がある。そこで、このような高珪酸成分ガラスを支持体として、その表面に孔径のより小さな薄膜状の水素分離層を形成させることが検討されている。このような水素を選択的に透過し得る薄膜分離層の製膜法としては、ゾル・ゲル法、CVD法、水熱合成法、電極酸化法などが提案されている。これらの各方法の中でゾル・ゲル法(非特許文献1参照)又はシランや塩化物を用いたCVD法により製膜されたシリカ薄膜が高い分離性能が得られると報告されている。また、特許文献1及び3には、このような分離膜の耐久性を向上するためにシランカップリング剤によりその表面を処理する方法が開示されている。それでもなお、水素ガス分離装置として用いるにはより高い水素分離性能が求められている。
そこで本発明は、かかる従来の課題を解決すべく開発されたものであり、水素分離性能、即ち、水素選択透過性及び水素透過速度の高い水素分離材及びその製造方法を提供することを目的とする。
採用する多孔体の水素分離層は、前記いずれのセラミック又は有機質のものから構成されていてもよいが、シリカ、シラザンなどの珪素化合物、ポリイミドなどの有機化合物が好適であり、特にこのうちシリカを用いることが適当なサイズの細孔径を得ることができるために好ましい。また、水素分離層(膜)の厚さは、特に制限されないが、好ましくは10〜1000nm、より好ましくは10〜200nm程度が効率のよい良好な水素透過性を得ることができるために望ましい。
このような中間層及び水素分離層は、従来公知の種々の方法により、多孔体(支持層を構成する基材)上に形成することができ、その方法はいずれも限定されない。例えば、中間層(例えばアルミナ中間層)の形成方法としては、中間層を形成するゾル(例えば、ベーマイトゾル)を支持層にディップコーティングして支持層表面にゲル膜を形成し、これを乾燥、焼成するゾル・ゲル法、または、中間層を形成する粒子(例えば、アルミナ粒子)を分散させた溶液中に支持層をディップコーティングして支持層表面に担持させ、これを乾燥、焼成する方法が挙げられる。
また、多孔体の水素分離層は、所望により、錯体担持工程前に表面活性化処理を施されていてもよい。このような処理としては、特に限定されず、従来公知のいずれの表面活性処理でも行い得る。例えば、熱処理、レーザー処理、プラズマ処理、酸処理、界面活性剤処理などが挙げられる。このうち特に、プラズマ処理が好ましい。多孔体の水素分離層は、表面活性化処理を施すことにより、錯体の担持処理時間や担持量を調整することができる。
また、前記列挙した金属の他に、又は前記金属のうちで、触媒作用を有する金属を中心金属とする錯体を用いることによって、該錯体を水素生成反応などの反応性基として作用させることができる。或いは、何らかの耐久性向上作用を有する金属を中心金属とする錯体を用いると、水素分離材の耐久性を向上することができる。例えば、Ti、Zr、及び/又はTaを中心金属とする錯体を用いて、腐食性ガス及び水蒸気雰囲気中における安定性を向上することができる。
適用可能な錯体としては、従来公知の製造方法によって合成したもの特に制限なく用いることができるが、例えば、アヅマックス株式会社、及びエヌ・イーケムキャット株式会社から容易に入手可能であり、ここから入手した錯体を好適に用いることができる。
錯体を多孔体の水素分離層に担持させる手段としては、特に制限されず、従来公知のいずれの手段によってもよい。例えば、錯体を含む溶液の浸漬、スプレー塗布、又はロールコーティングが挙げられる。水素分離層が多孔体の表面層である場合、特にこのうち、表面層全体に均一に担持可能で、かつ作業性の良好な浸漬が好ましい。
担持工程における処理温度は、特に限定されず、適宜選択することができるが、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは室温〜150℃、特に好ましくは室温〜100℃程度である。このような温度範囲で処理することにより、水素分離層の外面及び細孔内壁面に錯体を均一で高分散に担持可能であるとともに、金属錯体粒子の凝集などの好ましくない挙動を抑制する。
錯体を含む溶液の溶媒としては、いずれの種類の溶媒であってもよく、例えば、水、又は有機溶剤が挙げられる。溶剤は、用いる錯体及び水素分離層の材質に応じて適宜選択することができる。特に、水素分離層がシリカで構成されている場合には、耐水性が低いために有機溶剤を適用することが好ましい。また、水素分離層がシラザン(即ち、SiN結合を主体とする化合物、例えば、ポリシラザン)で構成されている場合には、作業性の良好な水を適用することが好ましい。
ここで開示された方法によると、水素親和性に優れる所定の金属を、水素を選択的に透過する所定の平均細孔径を有する水素分離層に高分散に担持した水素分離材を製造することができる。このため、高い水素選択透過性及び透過速度を実現することができる。また、得られた水素分離材は、多孔体として耐久性に優れるものを選択することにより、耐久性(例えば、耐熱性、耐湿性、耐蝕性)に優れ、高温の大気中や水蒸気雰囲気下においても劣化が防止され、高い安定性を保持することができる。従って、水素が必要とされるいずれの用途においても好適に適用することができる。例えば、燃料電池、電解コンデンサなどにおける水素の供給に用いることができる。
(1)水素分離材の製造
<1−1>多孔体(シリカ表面層)の製造
支持層として、気孔率が40%、平均細孔径(水銀圧入法に基づく)が60nmの中空糸膜のα‐アルミナを用意した。
その細孔表面及び細孔内に、中間層としてγ一アルミナ薄膜を形成させた。即ち、γ‐アルミナ薄膜の形成は、ゾル・ゲル法によりアルミニウムイソプロポキシドを加水分解後、酸で解こうすることにより調製したベーマイトゾルを用いた。これを前記にて用意したα‐アルミナ支持層にディップコーティング(引上げ速度0.5〜2.0mm/秒)することによりベーマイトゲル膜を形成させ、その後室温〜60℃で一夜乾燥させた後、約400〜800℃で約5〜10時間焼成する操作を、1回以上、好適には複数回(ここでは2 回)繰り返すことにより行った。この結果、気孔率44%、平均細孔径4nmの中間層を得ることができた。或いは、γ‐アルミナ薄膜(中間層)は、γ一アルミナ粒子(粒径20〜200nm)を水に分散させ、α‐アルミナ支持層にディップコーティング(引上げ速度0.5〜2.0mm/秒)し、これを室温〜60℃で一夜乾燥させた後、約400〜800℃で約5〜10時間焼成する操作を、1回以上、一般には複数回繰り返すことによっても、形成させることができる。
次いで、得られた中間層表面に、水素分離層(表面層)としてシリカ薄膜を作成した。即ち、シリカ源をγ‐アルミナ薄膜の表面及び細孔内においてシリカ化することにより行った。担持されたシリカは、膜の表面層を薄膜状で閉塞した。シリカ源としては、テトラエトキシシラン等の低級アルコキシシランを用い、ゾル・ゲル法によりこれをエタノール中で酸を用いて加水分解させてゾルを作成し、ディップコーティング(引上げ速度0.5〜2.0mm/秒)し、焼成することでシリカ薄膜を形成させた。ここで、加水分解してシリカを生成するものであれば、シリカ源としてテトラ低級アルコキシシラン以外のものを用いてもよい。この結果、気孔率およそ21%、平均細孔径0.3〜0.5nmのシリカ表面層(水素分離層)を得ることができた。
前記<1>多孔体の製造において得られた多孔体に、プラズマ処理を10分間行った。
<1−3>錯体の担持
前記<1−1>のようにして得られた水素分離層を、80℃に加熱した以下の錯体溶液中に12時間浸漬し、前記水素分離層(シリカ層)にそれぞれ錯体を担持した。
(サンプルNo.1)パラジウム2,4−ペンタジオネート(溶媒:トルエン中1 モル%)
(サンプルNo.2)トリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウムクロライド(溶媒:トルエン中1モル%)
(サンプルNo.3)1,3−ビス(ジフェニルフォスフィノ)プロパンニッケルクロライド(溶媒:トルエン中1モル%)
一方、前記<1−2>のようにして表面処理を行った多孔体を、以下の錯体溶液中に12時間浸漬し、前記水素分離層(シリカ層)にそれぞれ錯体を担持した。
(サンプルNo.4)パラジウム2,4−ペンタジオネート(溶媒:トルエン中1モル%)
(サンプルNo.5)コバルト2,4−ペンタジオネート(溶媒:トルエン中1モル%)
(サンプルNo.6)バナジウム2,4−ペンタジオネート(溶媒:トルエン中1モル%)
(サンプルNo.7)ルテニウム2,4−ペンタジオネート(溶媒:トルエン中1モル%)
(サンプルNo.8>パラジウムアセテート(溶媒:アセトン中1モル%)
これら得られた錯体は、80℃において3時間乾燥した。いずれも錯体担持後に加熱又は焼成処理を行わなくても水素分離層の外面及びその細孔内壁面に担持された。水素分離層の単位体積あたりに含有される中心金属は20モル/cm3程度であった。また、錯体の溶媒が有機溶剤であるため、浸漬によるシリカ構造の変化が見られなかった。
(1)シリカ源としてテトラエトキシシランの代わりにポリシラザンを用いて、シリカ膜を形成したこと以外は、前記<1−1>多孔体の製造と同様にして多孔体を製造した。即ち、市販のポリシラザンを水中に溶解したポリシラザン溶液をγーアルミナ薄膜に厚さ1〜3μmで塗布し、60℃において3時間乾燥し、ポリシラザンから成る薄層を得た。次いで、酸化雰囲気(空気)中450℃において3時間焼成し、気孔率24%、平均細孔径0.3〜0.5nmのシリカ表面層(水素分離層)を形成した。
(2)テトラエトキシシランの代わりにポリシラザンを用い、水素分離層(表面層)としてシリカ薄膜の代わりにシラザン薄膜を形成したこと以外は、前記<1−1>多孔体の製造と同様にして多孔体を製造した。即ち、市販のポリシラザンを水中に溶解したポリシラザン溶液をγーアルミナ薄膜に厚さ1〜3μmで塗布し、60℃において3時間乾燥し、ポリシラザンから成る薄層を得た。次いで、非酸化雰囲気(N2ガス)中500℃において3時間焼成し、気孔率35%、平均細孔径約0.5nmのシラザン表面層(水素分離層)を形成した。
<2−2>表面活性化処理
前記<1−2>表面活性化処理と同様にして前記<2−1>にて得られた水素分離層をそれぞれプラズマ処理した。
前記<2−2>のようにして表面処理を行った(1)シリカ表面層又は(2)シラザン表面層を、以下の錯体溶液中に12時間浸漬し、水素分離層にそれぞれ錯体を担持した。
(サンプルNo.9)水素分離層:シリカ、錯体:パラジウム2,4−ペンタジオネート(溶媒:トルエン中1モル%)
(サンプルNo.10)水素分離層:シラザン、錯体:テトラアンミンジパラジウム(II)硝酸塩([Pd(NH3)4](NO3)2)(溶媒:水中1モル%)
これら錯体は、80℃において3時間乾燥した。錯体担持後に加熱又は焼成処理を行わなくても水素分離層の外面及びその細孔内壁面に担持された。水素分離層の単位体積あたりに含有される中心金属は20モル/cm3程度であった。また、サンプルNo.9では、錯体の溶媒が有機溶剤であるため、シリカ構造に変化は見られなかった。さらに、サンプルNo.10では、錯体の溶媒が水であっても、浸漬によるシラザン構造の変化は見られなかった。
前記<1−1>多孔体の製造において得られた多孔体をそのまま(錯体を担持しないで)用意し、サンプルNo.11とした。
前記のようにして得られた水素分離材について、それぞれ水素分離性能を評価した。
評価は、図1に示すような水素透過試験装置1によって行った。即ち、水素透過試験装置1は、主に、ガス供給部3と、分離部5と、測定部7とから構成される。ガス供給部3は、水素のガスボンベ9及び窒素のガスボンベ11が備えられ、バルブ13を有するチューブ14によって分離部5と接続されている。分離部5は、外周に電気炉15が設けられ、所定の温度に加熱可能に構成されている。また、その中心部には、前記により製造された中空糸状の水素分離材17が配置され、該水素分離材17の外周からガスを供給されるとともに、内周から水素を選択的に透過して排出可能に構成されている。水素分離材17の内周は、一端が密閉されて他端が測定部7に設けられるガスクロマトグラフ18とチューブ19により接続され、排出された水素及び窒素の透過速度を測定可能に構成されている。また、水素分離材17の内周側と外周側との圧力差を測定するために、それぞれガス供給側のチューブ14及び水素排出側のチューブ19には圧力計21,23が配置されている。また、測定終了後次の測定を開始前に分離部5内部のガスを排気するために、チューブ14,19間にはガスを吸引可能な真空ポンプ25が配置されている。
電気炉15により所定の温度に分離部5を保持しつつ、ガス供給部3から、容積比約1:1の水素:窒素を水素分離材17の外周側から導入し、該膜の外周側と内周側との圧力差が0.1MPaとなるように設定した。水素分離材17を透過したガスの流量は測定部7のガスクロマトグラフ18を用いることで測定し、それぞれのガスに対する透過速度を得た。それぞれのガスに対する透過速度から、150℃及び600℃における該水素分離材17の水素‐窒素の分離における透過係数比(PH2/PN2)及び水素透過速度を求めた。これらの結果を以下の表1に示す。
特に、シリカ薄膜にPdのアセチルアセトナト錯体又はアセタト錯体を担持したサンプルNo.1、4、及び8は、いずれも150以上の高い水素透過係数比と、1.0×10−6モル・m−2・s−1・Pa−1以上の高い水素透過速度を実現することができた。また、シラザン薄膜にPdのアセチルアセトナト錯体を担持したサンプルNo.10は、4.0×10−6モル・m−2・s−1・Pa−1以上の高い水素透過速度を実現することができた。
3…ガス供給部
5…分離部
7…測定部
9…水素のガスボンベ
11…窒素のガスボンベ
15…電気炉
17…水素分離材
18…ガスクロマトグラフ
21、23…圧力計
25…真空ポンプ
Claims (10)
- 水素分離材の製造方法において、
多孔体であって、少なくともその一部に、孔径が水素を選択的に透過し得るサイズである水素分離層を有する多孔体を用意する工程と、
その多孔体の水素分離層に、長周期型の周期表第5族、8族、9族及び10族元素からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素を中心金属の少なくとも一つとする錯体を担持させる工程と、
を含む、水素分離材の製造方法。 - 前記錯体が中心金属としてPdを含む、請求項1記載の方法。
- 前記錯体担持工程において、前記錯体を含有する溶液に前記多孔体を浸漬する、請求項1又は2記載の方法。
- 前記多孔体の水素分離層がシリカで構成され、前記溶液の溶媒が有機溶剤である、請求項3記載の方法。
- 前記多孔体の水素分離層がシラザンで構成され、前記溶液の溶媒が水である、請求項3記載の方法。
- 前記錯体は、アセタト錯体及び/又はアセチルアセトナト錯体である、請求項1〜5のうちのいずれかに記載の方法。
- 前記錯体担持工程中及びその後に、焼成処理を含まない、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の方法。
- 前記錯体担持工程前に、少なくとも前記水素分離層に対して表面活性化処理を施す、請求項1〜7のうちのいずれかに記載の方法。
- 前記表面活性化処理は、プラズマ処理を含む、請求項8記載の方法。
- 請求項1〜9のうちのいずれかに記載の方法によって得られた水素分離材。
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