JP2005314799A - 錫めっき方法とこれに用いられる錫めっき浴 - Google Patents

錫めっき方法とこれに用いられる錫めっき浴 Download PDF

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Abstract

【課題】スルホン酸浴を用いた錫めっき方法であって、例えば、錫イオン供給源として酸化錫を使用しない場合や、可溶性陽極を使用した場合や、既存のハロゲン浴の錫めっきラインに、スルホン酸系液を入れ、そのまま使用する場合等でも、めっき均一性に優れ、例えば、缶用材料として用いる場合でも耐食性や外観の劣化が生じない錫めっき方法を提供すること。
【解決手段】錫イオンと、めっき電導助剤としてスルホン酸系化合物とを含有する錫めっき浴を用いる鋼板の電気錫めっき方法において、錫めっき浴中の塩素イオン濃度を0.5g/l以下、かつ、フッ素イオン濃度を2g/l以下に管理してめっきすることを特徴とする電気錫めっき方法。
【選択図】なし

Description

本発明は電気錫めっき方法と、これに用いられる電気錫めっき用スルホン酸系錫めっき浴に関する。
錫めっきまたは錫合金めっき方法として、錫イオンあるいはさらに合金めっきとしての金属イオンを主成分とし、電導助剤と光沢剤と、あるいはこれにさらに酸化防止剤とを添加した浴が用いられている。これらは用いる電導助剤によって、塩素、フッ素等のハロゲンを用いたハロゲン浴と、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸等を用いたスルホン酸浴とに分類される。
このうちハロゲン浴においては、浴中で、空気酸化によって2価から4価となった錫が溶解度の小さいフッ化物塩となり、ハロゲンイオンを含む大量のスラッジが発生する。
また、ハロゲン浴に、鋼板の溶解によって生成した3価の鉄イオンが混入すると、錫が2価から4価へ酸化し、前記と同様にスラッジが発生する。ハロゲン浴では、これを防止するために、めっき浴中に鉄イオンと反応して化合物を作る添加剤を使用し3価の鉄イオンを除去するが、3価の鉄イオン自体が不溶性の塩として析出沈殿するので、やはり、めっき浴中で多量のスラッジが発生する。
これらのハロゲンイオンを含む錫スラッジは、浴中から分離、除去され、埋め立て処分等が施されるが、近年、環境問題がクローズアップされる中で、処理が困難となってきた。そこで、ハロゲン浴から、スラッジ発生量の少ないスルホン酸浴への切り替えが行われるようになった。
しかし、このスルホン酸浴は、スラッジ発生量は少ないものの、原因不明のめっき均一性の低下により耐食性が劣る場合があった。
これに対し、高速錫めっきにおけるめっき溶液の安定性や錫めっき表面の外観等の向上を目的として、錫化合物とアルキルスルホン酸、界面活性剤からなる基本溶液を含む電解液を用いてブリキ板を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。ここでは、界面活性剤はめっき粒子微細化およびリフロー特性を有する艶消仕上げまたは光沢仕上げのめっき層の製造を助けるものであるとの記載があり、これらの働きを有する界面活性剤の化学構造を規定している。すなわち錫めっき浴を構成するもののうち、界面活性剤が錫めっき性に大きくかかわることが記載されている。
しかしながら、この技術を適用しても、めっきが不均一となり耐食性が劣る場合があった。
また、不溶性陽極を使用し錫イオンを酸化錫として供給し、錫系の電気めっきを行う場合のめっき品質の劣化を防止する浴管理法として、浴中の塩素イオン濃度を陰イオン交換樹脂を用いて1g/l以下にする浴管理法が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、この方法を適用しても、めっきが不均一となり耐食性が劣る場合があった。
特許第2757972号明細書 特開平6-57499号公報
本発明は、スルホン酸浴を用いた錫めっき方法であって、めっき均一性の低下により耐食性が劣ることなく、外観の劣化も生じない錫めっき方法と、これに用いられる錫めっき浴とを提供することを課題とする。
本発明者は、めっき電導助剤としてスルホン酸系化合物を含有する錫めっき浴を用いる鋼板の電気錫めっき方法において、錫めっき浴中の塩素イオン濃度を0.5g/l以下、かつ、フッ素イオン濃度を2g/l以下に管理してめっきすることを特徴とする電気錫めっき方法により、めっき均一性を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の(a)〜(d)に示す電気錫めっき方法および電気錫めっき浴を提供する。
(a)錫イオンと、めっき電導助剤としてスルホン酸系化合物とを含有する錫めっき浴を用いる鋼板の電気錫めっき方法において、
錫めっき浴中の塩素イオン濃度を0.5g/l以下、かつ、フッ素イオン濃度を2g/l以下に管理してめっきすることを特徴とする電気錫めっき方法。
(b)前記スルホン酸系化合物が、アルキルスルホン酸、アルカノールスルホン酸およびフェノールスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(a)に記載の電気錫めっき方法。
(c)錫イオンと、スルホン酸系化合物のめっき電導助剤とを含有し、塩素イオン濃度0.5g/l以下で、かつ、フッ素イオン濃度2g/l以下である、前記(a)または(b)に記載の電気錫めっき方法に用いられる錫めっき浴。
(d)錫イオンと、スルホン酸系化合物のめっき電導助剤とを含有し、鉄イオン濃度3〜20g/l、塩素イオン濃度0.5g/l以下、かつ、フッ素イオン濃度2g/l以下である錫めっき浴。
本発明は、錫めっき、特に錫めっき鋼板や錫めっき後にリフロー処理されるぶりき材のめっき方法と、それに用いられるスルホン酸系錫めっき浴であって、めっき浴中の塩素含有量とフッ素含有量とを基準値以下に管理することによって、得られる錫めっき均一性が改善し、特に外観や耐食性が要求される用途にも適用できる。
また、本発明は、既存の錫めっきラインのハロゲン浴に、スルホン酸系液を装入し使用した場合に、所定のめっき成分を調整しても十分なめっき均一性が得られず耐食性が劣る問題を解決し、優れた外観と耐食性とを有する錫めっき層が得られるようになる。
本発明者は、原因不明のめっき均一性の低下による耐食性の劣化が、スルホン酸浴中の塩素イオン濃度およびフッ素イオン濃度と関係することを知見した。そして、塩素イオン濃度0.5g/l以下、かつ、フッ素イオン濃度2g/l以下であれば、めっき均一性の低下を防止できることがわかった。
つまり、本発明は、錫イオンと、めっき電導助剤としてスルホン酸系化合物とを含有する錫めっき浴を用いる鋼板の電気錫めっき方法において、
錫めっき浴中の塩素イオン濃度を0.5g/l以下、かつ、フッ素イオン濃度を2g/l以下に管理してめっきすることを特徴とする電気錫めっき方法である。
以下に詳細に説明する。
<被めっき対象物>
本発明の被めっき対象物は、電気錫めっきすることが可能な金属物であれば、特に限定されない。例えば鋼板(缶用表面処理鋼板等)が挙げられる。
<めっき工程>
本発明の電気錫めっき工程は、例えば缶用表面処理鋼板の連続めっき製造工程の電気錫めっき工程である。また、本発明の電気錫めっき工程の主設備はめっき設備であるが、めっき設備の前にめっき前処理設備、めっき設備の後にめっき後処理設備があってもよい。
ここで、めっき前処理設備としては、酸洗浄設備、脱脂設備、水洗設備等が挙げられる。また、めっき後処理設備としては、水洗設備、湯洗設備、乾燥設備、クロメート処理設備、封孔処理設備、着色処理設備、塗装設備、ラミネート処理設備、リフロー処理設備、ベーキング処理設備等が挙げられる。さらに、前後の処理設備としては、例えば、上記に加えて、さらに錫めっき以外の、例えば、ニッケル、鉄、亜鉛、クロム、コバルトまたはリン等のめっき処理設備や化学処理設備等を有してもよい。
<めっき設備・装置>
本発明において、錫めっき設備は、通常の設備等を備えていればよく、例えば、めっき槽、通電手段、攪拌手段、濾過機、加熱設備、冷却設備、乾燥機(乾燥炉)等の設備および装置を備えた電気錫めっき設備が挙げられる。
<錫めっき浴について>
本発明は錫イオンを有する錫めっき浴および錫合金めっき浴を対象とするが、この錫合金は、錫と、鉛、銀、亜鉛、ビスマス、インジウム、ニッケル、コバルト、銅、金、アンチモン等から選ばれた金属との合金である。具体的には、錫−鉛、錫−亜鉛、錫−銀、錫−ビスマス、錫−ニッケル、錫−インジウム、錫−コバルト、錫−銅、錫−金、錫−アンチモンなどの2成分系の錫−合金を初め、錫−ニッケル−亜鉛、錫−銅−亜鉛などの3成分系の錫合金も含まれる。
また、浴中の錫および錫合金を形成する金属の合計濃度は、5〜40g/l程度、浴のpHは0.1〜1.0程度、温度は20〜60℃程度とすることが好ましい。
<めっき電導助剤について>
本発明ではめっき電導助剤として、スルホン酸系化合物を用いる。これは通常使用されるスルホン酸系化合物であれば特に限定されないが、アルキルスルホン酸、アルカノールスルホン酸およびフェノールスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であると好ましい。これらを用いるとめっき製品の外観が特に優れ、めっき効率に優れためっき浴が得られるからである。錫イオンは水溶液中で、これらスルホン酸と親和性を有し、スルホン酸錫として存在する。
また、めっき電導助剤の浴中濃度は、通常使用範囲であれば特に限定されないが、めっき製品の外観、めっき効率等の観点から、10〜50g/lが好ましい。
前記アルキルスルホン酸として、具体的にはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸等を例示することができる。
前記アルカノールスルホン酸として、具体的にはエタノールスルホン酸、プロパノールスルホン酸、ペンタノールスルホン酸等を例示することができる。
<光沢剤>
本発明の電気錫めっき方法において、必要により光沢剤を使用することができる。光沢剤は、均一性に優れためっき層を形成させる成分である。錫めっき浴の光沢剤としては界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、脂肪族または芳香族のアルキレンオキシド縮合体、ペタイン、アルキレンオキシドポリマー、イミダゾリニウム化合物、第四アンモニウム化合物、アミンのエチレンオキシド誘導体、ホスホネートが好適に用いられる。アルキレンオキシド縮合体は単一のアルキレンオキシドから成る縮合体でもよいし、2種以上のアルキレンオキシドから成る縮合体でもよい。さらにこれらの縮合体の中から1種あるいは2種以上を用いて使用することができる。また、光沢剤の特性としては、発泡性の低いものあるいは消泡性の高いものを用いることが好ましい。ぶりきの製造ラインのような攪拌の激しい条件下で使用される場合には、錫めっき浴は気泡を発生しやすいからである。
これらの特性を発揮するために光沢剤の浴中濃度は、光沢剤の種類に応じて適宜設定すればよく、0.1〜10g/l程度とすることが好ましい。
<酸化防止剤>
本発明の電気錫めっき方法において、必要により酸化防止剤を使用することができる。
酸化防止剤は特に限定されないが、例えば、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、ジヒドロキシナフタレンスルホン酸、ナフトールジスルホン酸、カテコールスルホン酸、カテコール、ヒドロキノン、レゾシノール等を例示できる。
また、酸化防止剤の浴中濃度は、本発明の目的を損なわない範囲であればよいが、1〜10g/lが好ましい。
<原料の種類、原料の供給方法>
本発明は、可溶性陽極、不溶性陽極のいずれの場合も適用できる。不溶性陽極の場合には、錫めっき浴に、例えばメタンスルホン酸錫、酸化錫等を装入することで、錫イオンを補給できる。錫イオンを錫めっき浴に補給する方法は、特に限定されないが、例えば、特開昭61−41799号公報に記載されている酸化錫の添加法を適用できる。
<錫めっき浴への塩素イオン、フッ素イオン混入経路について>
錫めっき浴へ補給される酸化錫には、不純物として塩素イオン、フッ素イオンが含有されている場合があり、被めっき対象物のめっき処理時間の経過とともに、該塩素イオンおよび該フッ素イオンは、次第に錫めっき浴中に蓄積され、濃度が高まる(特許文献2参照)。そしてめっき均一性が悪化する。
<その他の塩素イオン、フッ素イオン混入経路について>
錫めっき浴中の塩素イオンおよびフッ素イオンを増加させる要因としては、前記酸化錫以外に、電導助剤からの混入がある。
例えば、メタンスルホン酸を電導助剤として使用する場合、メタンスルホン酸には塩素が混入している場合がある。これは次の式1、式2に示すメタンスルホン酸の製法に由来する。
CH3SH+3Cl2+2H2O → CH3SO2Cl+5HCl ・・・・(式1)
CH3SO2Cl+H2O → 2CH3SO3H+HCl ・・・・(式2)
また、錫めっき工程の前処理として通常被めっき対象物を酸洗浄、水洗する。このため、錫めっき浴に装入する被めっき対象物に付着している酸、水に含有している塩素イオンおよびフッ素イオンが、錫めっき浴に混入する可能性がある。
<ハロゲン浴からの変換の場合>
さらに、既存の錫めっきラインのハロゲン浴に、スルホン酸系液を装入し使用する場合、スルホン酸系液を装入する前にハロゲン浴を十分に洗浄しても、塩素イオンおよびフッ素イオンを高濃度で含有するスラッジが残存するので、該スラッジから、塩素イオンおよびフッ素イオンがスルホン酸系液の錫めっき浴に混入する可能性がある。
上記のようにハロゲン浴では多量のスラッジが発生するので、めっき設備内でめっき液に触れる全ての部位にスラッジが蓄積されている。該部位を十分に酸洗浄した後に、スルホン酸系液を装入するが、めっき設備内のタンク等の単純な構造の設備の場合は目視で確認可能であり、スラッジを除去しやすいが、配管内やロール等、確認や除去作業が困難な設備個所ではスラッジが多量に残っている場合がある。
このスラッジはその生成機構から、塩素よりはむしろフッ素を多量に含有し、錫、鉄も含有している。また、このようなスラッジは、pH3〜4の弱酸性であるハロゲン浴においては溶解度が低いので析出物となっているが、pH1以下であるスルホン酸浴中では溶解度が高まる。従ってスルホン酸系液を装入した場合に、この析出物が溶解するので、塩素イオンおよびフッ素イオンがスルホン酸系めっき浴に混入することとなる。例えば、初期建浴にめっき液中のフッ素が高濃度になってしまい、めっき均一性が劣る場合がある。
<電気錫めっき方法>
本発明の電気錫めっき方法は、高速めっき、バレルめっき、ひっかけによるめっき等、通常の方法に適用できる。
電流密度、浴温度等の錫めっき操業条件も、通常の条件を適用できる。例えば、電流密度は、1〜200A/dm2、通電時間は、0.05sec〜10min、錫めっき浴温度は、20〜60℃、錫めっき浴のpHは、0.1〜1.0、高速めっきの場合のラインスピードは、30〜500m/minであればよい。これらの操業条件でめっき処理を行うと、0.1〜20μm程度の厚さのめっきが被めっき対象物に施される。
ここで、電流密度は30A/dm2以上200A/dm2以下とすると好ましい。
本発明の錫めっき方法を用いて30A/dm2以上200A/dm2以下の電流密度でめっきすることにより、優れた生産性と優れためっき均一性を有する錫めっき鋼板が製造できる。電流密度30A/dm2以上とすることにより、めっき時間が短縮され、優れた生産性が得られる傾向がある。また、電流密度30A/dm2より低い場合には、電着表面の状態の影響を受けやすく、不均一なめっきになる傾向がある。塩素イオンやフッ素イオン等が混入する場合には特に不均一な電着が起る傾向があるため、電流密度は、30A/dm2以上とするのが好ましい。
一方、優れた生産性を必要とせず、むしろ広範囲の電流密度条件での処理が必要な場合、すなわち1A/dm2以上200A/dm2以下の電流密度でめっき処理する場合には、塩素イオン濃度0.2g/l以下で、さらに、フッ素イオン濃度1g/l以下とした錫めっき浴を用いることにより、より優れためっき均一性を有する錫めっき鋼板が製造できる。塩素イオン濃度0.2g/l、フッ素イオン濃度1g/lを超える場合には1A/dm2以上30A/dm2以下の範囲で若干不均一な錫めっきとなる傾向がある。もちろん塩素イオン濃度0.2g/l以下でさらにフッ素イオン濃度1g/l以下の場合には電流密度30A/dm2以上でもめっき均一性に優れた錫めっきが得られる。また、電流密度が200A/dm2以上の場合でもめっき均一性が悪化する傾向がある。加えて、整流器等の設備投資費用が高額となるため、実用上200A/dm2以下が好ましい。
<塩素イオン、フッ素イオンの影響>
本発明の錫めっき浴中の塩素イオン濃度は0.5g/l以下、かつ、フッ素イオン濃度は2g/l以下とする必要がある。ここで、好ましくは塩素イオン濃度を0.2g/l以下、より好ましくは0.1g/l以下、さらに好ましくは0.05g/l以下とする。また、好ましくはフッ素イオン濃度を1.5g/l以下、より好ましくは1.0g/l以下とする。これらイオンが混入すると不均一なめっき部位ができてしまい、耐食性が劣る結果となるためである。塩素イオン濃度およびフッ素イオン濃度の下限は特に規定されず、どのような値でもよいが、塩素イオン濃度およびフッ素イオン濃度をあまり不必要に低減することは、コスト増加を招くばかりなので、塩素イオン濃度0.0001g/l以上、フッ素イオン濃度0.0001g/l以上とすればよい。
錫めっきの均一電着機構は十分には分かってないが、スルホン酸錫が光沢剤と会合体を形成することで、鋼板表面の活性な部分に集中的に錫が電着するのを抑制するので、均一なめっきが得られるものと考えられる。そして、これに塩素イオンやフッ素イオン等の電気的極性の大きいものが少量混入すると、該会合体のバランスが崩れ、錫めっきが局部的に電着されるので、めっき均一性が悪化すると考えられる。
<管理値以下にする方法>
錫めっき浴の成分は、通常の方法により、定期的に測定する。例えば、定期的に浴のサンプリングを行い、得られたサンプルの化学分析を行う。そして錫めっき浴中の塩素イオン、フッ素イオン濃度を把握し、管理値を超えた場合は、管理値以下となるような対策を施す。その対策としては、例えば塩素イオン濃度、フッ素イオン濃度の両方を陰イオン交換樹脂を用いて除去する方法や、塩素イオン、フッ素イオン濃度が管理値よりも低い濃度の新しいめっき液を、該錫めっき浴へ供給し、濃度を薄める方法等を挙げることができる。
また、既存の設備を用いてハロゲン浴からスルホン酸系浴へ変換する場合は、スラッジが配管系の見えない箇所に残存していないかを、十分にチェックしてスラッジを除く必要がある。
ただし、スラッジは初期に充分除去したつもりであっても、設備の内部に付着したものを完全に取り除くことは困難であり、時間と共に残存するスラッジは表面から徐々に溶解するため、実際はスルホン酸浴に変換後に徐々に塩素イオン濃度、フッ素イオン濃度、特にフッ素イオン濃度が上昇していく。また、めっき前処理工程の水洗水は特に夏場は塩素イオン濃度が上昇しているため、めっき液に持ち込まれる量が多くなる。一旦管理値以上になってしまった濃度を管理値以下にする方法としては上記の方法があるが、中でも陰イオン交換樹脂に通液するのが最も迅速である。めっき液中はpH1以下の強酸性水溶液であるため、陰イオン交換樹脂は強塩基性タイプを使用することが好ましい。強塩基性タイプの陰イオン交換樹脂は4級アンモニウムを官能基としたスチレン系樹脂が用いられるために耐酸性に優れる。また塩素イオン、フッ素イオンは、電導助剤として含有するスルホン酸系イオンとはイオン半径が大きく異なるため、樹脂の展開速度差を利用して簡単に分離除去が可能である。
以上のように、本発明の電気錫めっき方法に用いられる錫めっき浴は、
錫イオンと、スルホン酸系化合物のめっき電導助剤とを含有し、塩素イオン濃度が、0.5g/l以下であり、かつ、フッ素イオン濃度が、2g/l以下である錫めっき浴である。
また、錫めっき浴は、使用の経過とともに徐々に鉄イオン濃度が上昇するが、鉄イオン濃度が上昇しすぎると、めっき均一性が劣ったり、光沢剤の曇点が下がり光沢剤の効果が充分に発揮されなくなるため、通常3〜20g/l程度の範囲となるように管理されている。
従って、本発明の錫めっき浴は、常態では、錫イオンと、スルホン酸系化合物のめっき電導助剤とを含有し、鉄イオン濃度3〜20g/l、塩素イオン濃度0.5g/l以下、かつ、フッ素イオン濃度2g/l以下である錫めっき浴である。
本発明の錫めっき方法および錫めっき浴は、錫めっきの後、引き続いてリフロー処理(溶錫処理)、さらに化成処理されるぶりきの製造にも好適に使用できる。ぶりきは食品缶詰として使用され、めっき均一性は缶の寿命に大きく影響する。
300mm×100mmに切り出した厚さ0.2mmの冷延鋼板の試験材を、アルカリ電解脱脂、硫酸酸洗、および純水洗浄処理を行った後、芯棒に鋼板を巻きつけて回転させる回転めっきセルを用いて、錫めっき処理した。ここで回転めっきセルは鋼板表面の速度が180m/minとなるスピードで回転させた。その他の試験条件は第1表、第2表に記載したとおりであるが、実施例8は、比較例5に使用した錫めっき液を、予めフェノールスルホン酸置換した強塩基性陰イオン交換樹脂であるダイヤイオンPA316(三菱化成製)に通液しためっき液を使用した。
なお、めっき浴中の鉄イオン濃度は、通常のめっき浴をシミュレイトして、5g/lとなるようにした。めっき処理後は、常温にて1次、2次水洗、純水洗浄を行った後、温風ドライヤーにて、すばやく乾燥した。乾燥後の錫めっき鋼板の錫めっき量は2.8±0.2g/m2となるように電解時間を調整した。
また、一部の試料については引続きリフロー処理することによって錫の一部を合金化させ、さらにクロメート処理を行い8mg/m2(Cr換算)のクロム水和酸化物を表層に形成させた。ここでリフロー処理は、抵抗加熱法により行い、0.4g/m2の合金錫を形成した。また、クロメート処理は、30g/lの重クロム酸ナトリウム水溶液(50℃)中にて、5A/dm2、1秒の陰極電解を行った。
次に評価試験方法を示す。
<鉄露出量測定試験>
この試験方法はぶりき缶の鉄露出量を測定する試験で、M.Tsurumaru、外2名、「EVALUATION OF IRON EXPOSURE ON TINPLATE AND IN TINPLATE CANS」、Second International Tinplate Conference 1980(発行国:英国)、Industrial Tin Research Institute (ITRI) Ltd、1980年、p.348-359 に記載の方法で評価した。
2M Na2CO3 - 0.2M NaHCO3緩衝液中にて、対極を白金、参照電極をAg/AgCl電極、試験材を陽極として、1.22Vの定電位電解し3分後の電流値を測定した。測定される電流値が小さい程、鉄露出面積が小さく、均一にめっきされていると評価できる。
<鉄溶出試験>
この試験はぶりきの耐食性試験として一般的に使用されている試験方法で、東洋鋼鈑株式会社著、「ぶりきとティンフリー・スチール」、第2版、株式会社アグネ、1974年5月10日、p.223-224 に記載されている方法である。
試験面を下記の試験液(26.7±2.8℃)に2時間暴露し、その後、比色試験(485mμの吸光度)にて鉄の溶出量を測定した。比色試験のときに過酸化水素水を2mlさらに加えた。鉄溶出値は前もってつくった検量線から求めた。鉄浴出値が小さい程、めっき均一性に優れると評価できる。
硫酸2.18N 23ml
ロダンアンモニウム 40g/l 25ml
過酸化水素水 3% 2ml
計 50ml
実施例1〜8および比較例1〜5の各々に用いた浴種類を第1表に、その他の試験条件および上記、鉄露出量測定試験、鉄溶出試験の結果を第2表に示す。
Figure 2005314799
Figure 2005314799
本発明の実施例1〜8において優れためっき均一性を有する錫めっき鋼板を製造することができた。比較例1、2、5はめっき浴の塩素イオン濃度が0.5g/lを超えるため、製造された錫めっき鋼板のめっき均一性が劣る結果となった。比較例3、4は、塩素イオンは全く含有しないものの、フッ素イオンが2g/lを超えたため、製造された錫めっき鋼板のめっき均一性が劣る結果となった。
本発明の錫めっき方法と、これに用いられる錫めっき浴は、電子部品や缶用鋼板製造のために好適に使用される。

Claims (4)

  1. 錫イオンと、めっき電導助剤としてスルホン酸系化合物とを含有する錫めっき浴を用いる鋼板の電気錫めっき方法において、
    錫めっき浴中の塩素イオン濃度を0.5g/l以下、かつ、フッ素イオン濃度を2g/l以下に管理してめっきすることを特徴とする電気錫めっき方法。
  2. 前記スルホン酸系化合物が、アルキルスルホン酸、アルカノールスルホン酸およびフェノールスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の電気錫めっき方法。
  3. 錫イオンと、スルホン酸系化合物のめっき電導助剤とを含有し、塩素イオン濃度0.5g/l以下で、かつ、フッ素イオン濃度2g/l以下である、請求項1または2に記載の電気錫めっき方法に用いられる錫めっき浴。
  4. 錫イオンと、スルホン酸系化合物のめっき電導助剤とを含有し、鉄イオン濃度3〜20g/l、塩素イオン濃度0.5g/l以下、かつ、フッ素イオン濃度2g/l以下である錫めっき浴。
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