JP3466229B2 - 錫めっき方法 - Google Patents
錫めっき方法Info
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Description
途に使用される電気めっきブリキおよび薄錫めっき鋼板
の製造に用いる錫めっき方法に関するものである。
れる錫めっき浴としては、ハロゲン浴、フェロスタン浴
(フェノールスルホン酸浴)、アルカリ浴等が従来から
よく知られている。アルカリ浴は四価の錫である錫酸ナ
トリウムを錫源としているため、二価の錫を使用する他
の浴を用いた場合と同一付着量を得るためには、約2倍
の電気量が必要で、経済的理由から国内外を問わず、現
在これを使用している電気めっきラインはほとんどな
い。ハロゲン浴は高電流密度でのめっきが可能であると
いう利点がある一方、その腐食性のため、装置類のメン
テナンスが他の浴に比べて面倒であり、また不溶性陽極
を使用できないという欠点があり、広く使用されるに至
っていない。現在、世界中のほとんどのブリキライン
で、主にフェノールスルホン酸を酸成分とするフェロス
タン浴が採用されている。
られたブリキは光沢等の外観、耐食性、加工性に優れて
おり、ここ数十年間、TFS−CT(ティンフリースチ
ール・クロムタイプ)やニッケルめっき鋼板等、他の容
器用表面処理鋼板が発明、実用化されたにも関わらず、
その需要は衰えることなく今日に至っている。しかし、
フェロスタン浴はブリキを製造上、理想的な錫めっき浴
というわけではなかった。それは、以下に述べる2つの
理由による。
多量のフェノールスルホン酸を含んでいるため廃棄前に
これを分解する処理工程が不可欠である。また、フェロ
スタン浴でのめっきは通常40〜45℃程度で行われる
が、この温度ではフェノールスルホン酸が若干揮発し、
局所排気をしているとはいえ、少量は作業者が吸い込ん
でしまう。
製造のためにフェノールスルホン酸は工業的に大量生産
され、低価格となってはいるが、それでも硫酸のような
無機酸と比較すると非常に高価である。また、先に述べ
たように、廃液の処理が容易でなく、コストアップの一
因となっている。
酸浴が考えられる。硫酸浴は従来バッチでの小ロットの
めっきには使用されてきた。その硫酸濃度は100g/
l以上である。このめっき浴をブリキ製造にそのまま用
いることは困難である。それは、硫酸が高濃度になる
と、めっきの析出効率が悪くなる、装置類の劣化が激し
くなる、等の問題があるためである。そこで硫酸濃度を
低くすることが容易に考えられるが、SnO2 を主成分
とするスラッジの生成が非常に多いという問題が生じ
る。
アノード酸化および酸素・空気による酸化により錫(I
I) が錫(IV)に酸化され、SnO2 を主成分とするス
ラッジが生成しやすい。SnO2 は実際上電析する錫と
しては働かず、通常これを回収・再生する。また、四価
の錫を電析に使用すると、二価の錫に比べて2倍の電気
量を必要とするため、見かけの電流効率が下がり、経済
的に不利になる。従来のフェロスタン浴では投入した錫
の5〜8%ほどがスラッジとして取り除かれている。フ
ェロスタン浴と同程度の酸濃度の硫酸浴では錫(II) は
更に不安定で、より多くのスラッジが生成するため、そ
のままではブリキ製造には不適であり、スラッジを抑制
する手段を講じる必要がある。そこで、本発明は、スラ
ッジの生成を抑制できる方法および低公害で低コストの
錫めっき方法の提供を目的とする。
低価格という点から酸成分として硫酸に着目し、良好な
めっき可能な電流の高電流密度化およびスラッジ生成の
低減法について種々検討した結果、本発明に至ったもの
である。本発明は、二つ以上の電子供与性置換基を有
し、そのうちの少なくとも一つがヒドロキシ基である溶
液溶解性の芳香族化合物であるスラッジ抑制剤を0.0
1〜0.2g/l添加した硫酸濃度5g/l以上50g
/l以下の硫酸浴を用いて浴温30〜70℃で鋼板に電
気錫めっきを施す方法、また、二つ以上の電子供与性置
換基を有し、そのうちの少なくとも一つがヒドロキシ基
であり、窒素がベンゼン環の炭素と結合する置換基を有
する電解液溶解性の芳香族化合物であるスラッジ抑制剤
を0.1〜0.2g/l添加した硫酸濃度5g/l以上
50g/l以下の硫酸浴を用いて浴温30〜70℃で鋼
板に電気錫めっきを施すことを特徴とする錫めっき方
法、好ましくは、該スラッジ抑制剤がo−ヒドロキシア
ニソール、m−ヒドロキシアニソール、ピロガロールの
1種または2種以上であること、さらに、芳香族化合物
がヒドロキノン、p−ヒドロキシアニソールの1種また
は2種、ないしo−アミノフェノール、m−アミノフェ
ノール、p−アミノフェノールの1種または2種以上で
ある錫めっき方法である。
ジ生成量は浴中の硫酸濃度が高いほど少なくなる。硫酸
濃度を100g/l程度まで上げるとフェロスタン浴と
同程度のスラッジ生成量となるが、硫酸を高濃度とする
ことによる弊害が生じる。すなわち電解時に錫析出とと
もに水素発生が多くなるとともに電析した錫が溶解する
ようになり見かけのめっきの析出効率が低下する。ま
た、周囲の装置等の腐食が増加する。そこで、スラッジ
生成の抑制には硫酸の高濃度化でなく、他の薬品の作用
を利用する方が好ましい。このような作用を有する薬品
を種々検討したところ、ベンゼンの二以上の水素が置換
基に置き換わったもので、少なくとも置換基の位置がヒ
ドロキシ基(水酸基)であるものが上記作用を有するこ
とがわかった。
はヒドロキシ基、アミノ基、メトキシ基のような電子供
与性のE効果を有する置換基が有効であった。具体的に
は、モノヒドロキシフェニル化合物(o−ヒドロキシア
ニソール、m−ヒドロキシアニソール、p−ヒドロキシ
アニソール、o−アミノフェノール、m−アミノフェノ
ール、p−アミノフェノール等)、ジヒドロキシフェニ
ル化合物(ヒドロキノン、2,3−ヒドロキシ安息香
酸、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,5−
ジヒドロキシトルエン等)、トリヒドロキシフェニル化
合物(ピロガロール、フロログルシン、没食子酸、没食
子酸n−プロピル、3,4,5−トリヒドロキシ安息香
酸等)である。
ト位(o−)またはパラ位(p−)のものが低濃度でも
効果が大きいことが判明した。すなわち、m−ヒドロキ
シアニソールよりo−およびp−ヒドロキシアニソール
の方が、フロログルシンよりピロガロール、没食子酸等
の方が、また、m−アミノフェノールよりo−アミノフ
ェノール、p−アミノフェノールの方がスラッジ生成を
抑制する効果が大きい。置換基の種類としてはアミノ基
よりはメトキシ基、ヒドロキシ基の方がスラッジ抑制効
果は大きい。その他、2−メルカプトフェノール等のチ
ォフェノール類もスラッジ抑制効果があるが、悪臭のた
め、実用的ではない。
の理由によりその種類によって異なる。o−ヒドロキシ
アニソール、p−ヒドロキシアニソール、ヒドロキノ
ン、ピロガロール、没食子酸、没食子酸n−プロピル、
2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒド
ロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒ
ド等、ヒドロキシ基のo−位またはp−位に酸素がベン
ゼン環の炭素と結合する置換基を有するスラッジ抑制剤
はスラッジ抑制効果が大きいため、0.01g/lでス
ラッジ生成を抑制することができる。
ン、3,5−ジヒドロキシトルエン等、酸素がベンゼン
環の炭素と結合する置換基がヒドロキシ基のm−位にあ
るものおよびo−アミノフェノール、m−アミノフェノ
ール、p−アミノフェノール等、ベンゼン環の炭素と結
合する原子が窒素であるものは0.1g/l以上の添加
量が望ましい。これらスラッジ抑制剤の濃度の上限は
0.2g/lとする。これ以上の添加は効果が飽和して
しまうので、経済的な理由およびフェノール類の使用を
低減して低公害化を狙った本発明の主旨に反するため避
けるべきである。
る。本発明のスラッジ抑制剤を添加した硫酸浴で錫めっ
きを施す鋼板は特に限定せず、用途により適切な鋼板を
用いればよい。前処理として電解アルカリ脱脂、硫酸酸
洗により表面の清浄、活性化を施す。また、用途によっ
てはニッケルめっきNi−Fe合金めっき等の下地めっ
きを施した鋼板を用いることも可能である。
0℃未満の浴温を得るには冷却のためのコストがかか
り、経済的でないばかりでなく、外観、耐食性の優れた
めっきが得られない。70℃を超える浴温での操業は、
装置類の腐食や鋼板の鉄溶出促進による浴の劣化が促進
されることおよび蒸気の発生が多くなり、作業環境が悪
くなることから避けるべきである。
効率は良好であり、まためっき外観も良好であり、スラ
ッジ抑制剤のめっきへの悪影響は認められない。アノー
ドは溶性、不溶性のどちらでも使用できる。不溶性アノ
ードとしてはチタンを母材とし、白金めっきを施した従
来のものでよい。用途によっては錫めっき後の鋼板にリ
フロー処理を施す。従来のフェロスタン浴などではめっ
き液の希釈液がそのままフラックスになり得たので、通
常ドラッグアウト槽をストリップが通過するだけでフラ
ックス塗布の目的を達成している。しかし、本発明のめ
っき浴は希釈してもフラックスとして作用しないので、
極めて平滑で光沢の優れたブリキを必要とする場合は、
めっき、水洗後にフラックスを塗布する工程を入れるこ
とが望ましい。しかし、フラックスを塗布しないでリフ
ローしても、実用上十分な光沢を有するブリキを得るこ
とができる。
硫酸を用いている。硫酸は、若干のミストが出るもの
の、本質的に不揮発性で作業環境や大気の汚染が少ない
上、廃液処理上の問題が、従来の有機スルホン酸を用い
る浴と比較して少なく、低価格である点も工業的に有利
である。硫酸濃度は5〜50g/lとする。5g/l未
満ではめっき光沢が優れないし、浴のpHが高く、電解
時に陰極近傍でさらにpHが高くなって錫が水酸化物ま
たは酸化物の形で沈殿してしまう。50g/l以上では
めっき性が飽和してしまうことに加え、電解時の水素発
生が多くなるとともに一旦析出した錫が若干溶解してし
まうために見かけの析出効率が下がり、経済的に好まし
くない。また、浴中への鉄の溶出量も多くなり、浴の長
期にわたる安定した使用ができなくなる。さらには腐食
性が高くなり、装置類への悪影響がある。
特に硫酸錫(II)として加えることが望ましい。操業中
は錫アノードを使用してアノードの溶解によって電解で
失われる錫(II)イオンを補給してもよいし、アノード
に白金めっきを施したチタン電極等の不溶性アノードを
使用し、錫(II)イオン補給は別の方法、例えば、めっ
き液中に金属錫粒を浸漬し、酸素または空気を吹き込ん
で酸素による酸化反応を利用してもよい。錫めっきの添
加剤は特に限定しない。有機スルホン酸浴で使用される
添加剤が同様に使用可能である。一例として、フェロス
タン浴で使用されるENSA(エトキシ化α−ナフトー
ルスルホン酸)が問題なく使用できる。
めっき浴に共通の組成は下記の通りである。 硫酸錫(II) 36.2g/l(錫として20g/l) 硫酸 16.7g/l ENSA 4.0g/l ここに記載していない実施例のめっき浴の条件について
は表1および表2に記載した。浴温は全て45℃に統一
した。以下に記した方法により、(1)スラッジ生成、
(2)錫溶解、(3)めっき性およびめっき鋼板特性に
ついて試験した。
8mmの錫粒を5kg充填し、80リットルのめっき液
を60リットル/分で循環させ、1.5リットル/分の
酸素を吹き込んだ。溶解槽内圧力は2kgf/cm2 と
した。酸素吹き込み2時間後のめっき液2リットルをろ
過し、スラッジの重量を測定した。
ルに45℃のめっき液2リットルを循環させ、アノード
には白金めっきを施したチタンを用い、アノード電流密
度25A/dm2 で30000クーロンの電解を行って
スラッジ生成量を測定した。
8mmの錫粒を5kg充填し、80リットルのめっき液
を60リットル/分で循環させ、1.5リットル/分の
酸素を吹き込んだ。溶解槽内圧力は2kgf/cm2 と
した。2時間後の液中Sn2+をよう素滴定によって求め
た。
て不溶性アノードとして白金めっきチタン電極を使用
し、25A/dm2 で50クーロン/dm2 の錫めっき
を行った。めっき性、めっき鋼板特性を下記の方法で評
価した。
測定し、理論付着量に対する百分率を陰極電流効率とし
た。 b)耐食性 ATC試験 鋼板に錫めっきを施した後、260℃でリフロー処理
し、脱脂し、金属錫を電解剥離して試験片を作成した。
2.25cm2 の通電部を残してシールし、26.7℃
のトマトジュースに浸漬して、20時間後の試験片と錫
極間に流れるカップル電流を測定した。
に比較例をそれぞれ示す。これらの結果から明らかなよ
うに、本発明の方法によればスラッジの生成を抑制して
良好な錫めっきを施すことが可能である。
害という魅力がある一方、スラッジ発生が多く、ブリキ
製造には実用的でないと考えられていた硫酸浴でもスラ
ッジの生成を抑制して錫めっきができるので、めっき廃
液の有害性が低減されて廃液の処理が容易となり、高価
な酸を浴に使わなくてすむので、製造コストも低くでき
る。
Claims (5)
- 【請求項1】 二つ以上の電子供与性置換基を有し、そ
のうちの少なくとも一つがヒドロキシル基であり、該ヒ
ドロキシ基のp−位に酸素がベンゼン環の炭素と結合す
る置換基を有する電解液溶解性の芳香族化合物であるス
ラッジ抑制剤を0.01〜0.1g/l添加した硫酸濃
度5g/l以上50g/l以下の硫酸浴を用いて浴温3
0〜70℃で鋼板に電気錫めっきを施すことを特徴とす
る錫めっき方法。 - 【請求項2】 前記芳香族化合物がヒドロキノン、p−
ヒドロキシアニソールの1種または2種であることを特
徴とする請求項1に記載の錫めっき方法。 - 【請求項3】 二つ以上の電子供与性置換基を有し、そ
のうちの少なくとも一つがヒドロキシ基であり、窒素が
ベンゼン環の炭素と結合する置換基を有する電解液溶解
性の芳香族化合物であるスラッジ抑制剤を0.1〜0.
2g/l添加した硫酸濃度5g/l以上50g/l以下
の硫酸浴を用いて浴温30〜70℃で鋼板に電気錫めっ
きを施すことを特徴とする錫めっき方法。 - 【請求項4】 前記芳香族化合物がo−アミノフェノー
ル、m−アミノフェノール、p−アミノフェノールの1
種または2種以上であることを特徴とする請求項3に記
載の錫めっき方法。 - 【請求項5】 スラッジ抑制剤として、ピロガロール:
0.01〜0.1g/l、o−ヒドロキシアニソール:
0.01〜0.1g/l、m−ヒドロキシアニソール:
0.1〜0.2g/lの1種または2種以上を添加した
硫酸濃度5g/l以上50g/l以下の硫酸浴を用いて
浴温30〜70℃で鋼板に電気錫めっきを施すことを特
徴とする錫めっき方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14161793A JP3466229B2 (ja) | 1993-06-14 | 1993-06-14 | 錫めっき方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14161793A JP3466229B2 (ja) | 1993-06-14 | 1993-06-14 | 錫めっき方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06346273A JPH06346273A (ja) | 1994-12-20 |
JP3466229B2 true JP3466229B2 (ja) | 2003-11-10 |
Family
ID=15296209
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP14161793A Expired - Lifetime JP3466229B2 (ja) | 1993-06-14 | 1993-06-14 | 錫めっき方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3466229B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5814202A (en) * | 1997-10-14 | 1998-09-29 | Usx Corporation | Electrolytic tin plating process with reduced sludge production |
US6022467A (en) * | 1997-10-14 | 2000-02-08 | Usx Corporation | Electrolytic tin plating process with reduced sludge production |
KR100805024B1 (ko) * | 2001-12-21 | 2008-02-20 | 주식회사 포스코 | 주석 입자의 용해속도를 증가시키는 방법 |
ES2354045T3 (es) | 2005-02-28 | 2011-03-09 | Rohm And Haas Electronic Materials, Llc | Procedimientos con fundente mejorados. |
-
1993
- 1993-06-14 JP JP14161793A patent/JP3466229B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
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