JP2005314668A - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】帯電圧減衰半減期が短く、静電気消散性能と機械的特性バランスに優れた樹脂組成物及び、その組成物からなる電気・電子機器部品、磁気・光学記録媒体関連部品を提供する。
【解決手段】ゴム質重合体(a)に、ビニル系単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(A)2〜20重量%と、該芳香族ビニル系単量体(b)、該シアン化ビニル系単量体(c)、該不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)、及びその他のビニル系単量体(e)から選ばれた1種以上の単量体を構成成分として含有するビニル系(共)重合体(B)11〜50重量%と、ポリアミドエラストマー(C)5〜20重量%と、ポリカーボネート樹脂(D)35〜60重量%と、少なくとも1種の官能基を有する変性ビニル系共重合体(E)0.2〜10重量%及び炭素繊維(F)2〜20重量%を含有してなる熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】ゴム質重合体(a)に、ビニル系単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(A)2〜20重量%と、該芳香族ビニル系単量体(b)、該シアン化ビニル系単量体(c)、該不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)、及びその他のビニル系単量体(e)から選ばれた1種以上の単量体を構成成分として含有するビニル系(共)重合体(B)11〜50重量%と、ポリアミドエラストマー(C)5〜20重量%と、ポリカーボネート樹脂(D)35〜60重量%と、少なくとも1種の官能基を有する変性ビニル系共重合体(E)0.2〜10重量%及び炭素繊維(F)2〜20重量%を含有してなる熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
本発明は、静電気消散性能と機械的特性バランスに優れた熱可塑性樹脂組成物及び成形品並びにそれを用いてなる電気・電子機器部品、磁気・光学記録媒体関連部品に関するものである。
熱可塑性樹脂は、優れた機械的性質と成形加工性によって家庭電気機器、OA機器あるいは自動車などの部品に多く使用されている。しかしながら、熱可塑性樹脂の大半は電気絶縁性であり、最近の精密な電気・電子制御装置を備えた各種機器において、発生する静電気により制御装置の誤作動が起こる問題があった。そこで、発生した静電気を除去する必要があり、制電性及び導電性が付与された機器及びその部品類に適した熱可塑性樹脂成形品が望まれていた。
一般的に、熱可塑性樹脂に制電性を付与する方法としては、熱可塑性樹脂にアミン系帯電防止剤を添加する方法、及び持続的に制電性を付与する方法としてポリエーテルエステルアミドをはじめとするポリアミドエラストマーを配合する方法が公知である。
しかしながら、これらの方法で付与される制電性能では、各種機器・装置によっては十分でなく、問題解決にならない場合があった。また、熱可塑性樹脂に導電性を付与する方法としては、例えば、カーボンブラック、炭素繊維、金属粉末あるいは金属繊維に代表される導電性充填材を熱可塑性樹脂に配合することが知られている(特許文献1参照)。
特開2002−317098号公報(請求項1)
しかしながら、熱可塑性樹脂にこれらの導電性充填材を配合した場合、カーボンブラックでは、所望の導電性を得るために比較的多く配合する必要があり、そのため機械特性や流動性の低下という課題があり、また繊維状フィラーでは、ウェルド強度や流動性の低下という課題があった。また、導電性と静電気消散性能が必ずしも一致しないこともあった。
本発明の目的は、上記問題を解決する手段として、導電性を有しかつ静電気消散性能と機械的特性バランスに優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、かかる性能を有する成形品、およびその成形品を用いた電気・電子機器部品、磁気・光学記録媒体関連部品を提供することにある。
本発明は上記目的を達成せんとするものであり、本発明の熱可塑性樹脂組成物組成物は、ゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)からなる群から選ばれた1種以上の単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(A)2〜20重量%と、該芳香族ビニル系単量体(b)、該シアン化ビニル系単量体(c)、該不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)からなる群から選ばれた1種以上の単量体を構成成分として含有するビニル系重合体またはビニル系共重合体(B)11〜50重量%と、ポリアミドエラストマー(C)5〜20重量%と、ポリカーボネート樹脂(D)35〜60重量%と、分子鎖中にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基及びアミド基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する変性ビニル系共重合体(E)0.2〜10重量%、及び炭素繊維(F)2〜20重量%を含有してなる熱可塑性樹脂組成物(ただし、各成分の含有量の合計(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)=100重量%)であって、下式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。
(B)の含有量/(C)の含有量>2 ・・・ (1)
(B)の含有量/(A)の含有量>2 ・・・ (2)
本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のポリアミドエラストマー(C)は、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、または炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(C−1)と、数平均分子量200〜6000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール(C−2)を構成成分として含むグラフトまたはブロック共重合体であり、また、前記のポリ(アルキレンオキシド)グリコール(C−2)はポリエチレンオキシドグリコールである。
(B)の含有量/(C)の含有量>2 ・・・ (1)
(B)の含有量/(A)の含有量>2 ・・・ (2)
本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のポリアミドエラストマー(C)は、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、または炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(C−1)と、数平均分子量200〜6000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール(C−2)を構成成分として含むグラフトまたはブロック共重合体であり、また、前記のポリ(アルキレンオキシド)グリコール(C−2)はポリエチレンオキシドグリコールである。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、その熱可塑性樹脂組成物の表面固有抵抗値は、好ましくは1012Ω未満である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は成形可能であり、本発明の熱可塑性樹脂組成物が製造された成形品は、電気・電子機器部品、磁気・光学記録媒体関連部品として好適に使用される。
本発明によれば、帯電圧減衰半減期が短く、静電気消散性能と機械的特性バランスに優れた樹脂組成物が得られ、それにより精密な電気・電子制御装置への静電気の影響を低減できる電気・電子機器部品、磁気・光学記録媒体関連部品が得られる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明におけるグラフト共重合体(A)に用いられるゴム質重合体(a)は特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム及びエチレン系ゴム等を使用することができる。ゴム質重合体(a)としては、具体例として、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレン−ジエンラバー、ポリ(エチレン−イソプレン)、及びポリ(エチレン−アクリル酸メチル)等が挙げられる。これらのゴム質重合体(a)は、1種または2種以上の混合物で使用される。これらのゴム質重合体(a)のうち、耐衝撃性の点で、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)及びエチレン−プロピレンラバーが好ましく用いられる。
本発明におけるグラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体(a)の重量平均粒子径は、機械的特性と成形性等のバランスの点で、0.1〜0.5μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.15〜0.4μmの範囲である。
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系重合体またはビニル系共重合体(B)(以下、ビニル系(共)重合体という。)に用いられる芳香族ビニル系単量体(b)としては、具体例として、スチレン、α−メチルスチレン、オルソメチルスチレン、パラメチルスチレン、パラ−t−ブチルスチレン及びハロゲン化スチレン等が挙げられ、これらの1種または2種以上用いることができる。なかでも、スチレンとα−メチルスチレンが好ましく、特にスチレンが好ましい。
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いられるシアン化ビニル系単量体(c)としては、具体例として、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等が挙げられ、これらの1種または2種以上用いることができる。なかでもアクリロニトリルが耐衝撃性の点で好ましい。
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いられる不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)としては、炭素数1〜6のアルキル基または置換アルキル基を持つアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルが好適であり、これらの1種または2種以上を用いることができる。不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)としては、具体例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル及び(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等が挙げられ、なかでもメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いられる共重合可能なその他のビニル系単量体(e)としては、具体例として、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物及びアクリルアミド等の不飽和アミド化合物に代表される共重合可能なビニル化合物等を挙げることができ、これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
また、グラフト共重合体(A)の原料として添加される単量体または単量体混合物は、そのすべてが、ゴム質重合体(a)と結合してグラフト化している必要はなく、一部がグラフト化し、残りは単量体同士で結合しグラフト共重合体(A)中に含まれていても良い。グラフト率は、生産性と機械特性バランスの点で、好ましくは10〜100%の範囲であり、特に好ましくは20〜50%の範囲である。 また、グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体(a)の含有量は、20〜80重量部の範囲であることが好ましい。含有量が20重量部未満では得られる熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度が低下する傾向にあり、また含有量が80重量部を超えると溶融粘度が上昇して成形性が悪くなる傾向がある。ゴム質重合体(a)の含有量は、さらに好ましくは35重量部〜60重量部の範囲である。
ビニル系(共)重合体(B)としては、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−α-メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体及びアクリロニトリル−スチレン−N-フェニルマレイミド共重合体等を挙げることができる。これらのビニル系(共)重合体(B)は、1種または複数種類を用いることができる。
グラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いられる単量体は、機械的特性と生産性のバランスの点で、芳香族ビニル系単量体(b)10〜90重量%、シアン化ビニル系単量体(c)0〜50重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)0〜90重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)0〜60重量%からなることが好ましい。その単量体は、より好ましくは、芳香族ビニル系単量体(b)15〜80重量%、シアン化ビニル系単量体(c)0〜35重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)0〜80重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)0〜40重量%である。特に、芳香族ビニル系単量体(b)とシアン化ビニル系単量体(c)の組み合わせが好ましく、この場合のシアン化ビニル系単量体(c)のより好ましい配合割合は2〜40重量%の範囲である。
グラフト共重合体(A)の配合量は、2〜20重量%の範囲であり、好ましくは4〜15重量%の範囲である。グラフト共重合体(A)のが2重量%未満では、耐衝撃性に劣り、20重量%を超えると成形性が悪化する。
ビニル系(共)重合体(B)の配合量は、11〜50重量%の範囲であり、好ましくは20〜45重量%の範囲である。ビニル系(共)重合体(B)が11重量%未満では、ポリアミドエラストマー(C)の配合量が減り、静電気消散性能に劣り、50重量%を超えるとポリカーボネート樹脂(D)の配合量が減り、耐衝撃性、耐熱性が低下する。
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)の製造方法には特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合などのいずれであってもよい。また、製造時における単量体の仕込方法にも特に制限はなく、初期一括仕込み、単量体の一部または全てを連続仕込み、あるいは単量体の一部または全てを分割仕込みのいずれの方法を用いてもよい。
本発明におけるビニル系(共)重合体(B)の還元粘度(ηsp/c)は、0.1〜0.8dl/gの範囲であることが好ましい。これ以外の場合、耐衝撃性が低下し、或いは溶融粘度が上昇して成形性が悪くなりやすい。さらに好ましい還元粘度(ηsp/c)は0.3〜0.7dl/gである。
本発明におけるポリアミドエラストマー(C)は、公知のものを使用することができるが、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸またはラクタム、もしくは炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(C−1)と数平均分子量200〜6000の範囲のポリ(アルキレンオキシド)グリコール(C−2)を構成成分として含むグラフト、またはブロック共重合体が好ましく、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(C−2)がポリエチレンオキシドグリコールであるものが、より好ましい。
ここで、炭素数が6以上のアミノカルボン酸またはラクタム、もしくは炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(C−1)として、具体的には、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸、あるいはカプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウロラクタム等のラクタム、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩、及びヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩等のナイロン塩が挙げられる。ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(C−2)の例としては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリ(1、2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1、3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックまたはランダム共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロックまたはランダム共重合体等が用いられる。また、ビスフェノールAや脂肪酸のアルキレンオキシド付加物などが共重合されていても良い。該ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(C−2)の数平均分子量は、200〜6000の範囲であり、特に好ましくは300〜4000の範囲である。また、必要に応じてポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分の両末端をアミノ化またはカルボキシル化しても良い。
本発明における、炭素数が6以上のアミノカルボン酸またはラクタム、もしくは炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(B−1)とポリ(アルキレンオキシド)グリコールの結合は、通常エステル結合、アミド結合であるが特にこれらのみに限定されない。また、ジカルボン酸、ジアミン等の第三成分を反応成分として用いることも可能であり、この場合のジカルボン酸成分として、炭素数4〜20のものが好ましく、その例として、重合性、色調及び物性の点で、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウムのような芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸のような脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、及び1,10−デカンジカルボン酸が好ましく用いられる。また、ジアミン成分としては、芳香族、脂環族及び脂肪族のジアミンが用いられ、中でも脂肪族ジアミンのヘキサメチレンジアミンが好ましく用いられる。
ポリアミドエラストマー(C)の含有量は、5〜20重量%の範囲であり、好ましくは8〜20重量%の範囲である。ポリアミドエラストマー(C)の含有量が5重量%未満では、静電気消散性能が低下し、一方、含有量が20重量%を超えると剛性の低下及び成形加工性が悪化する。ポリアミドエラストマー(C)の製造方法については、特に限定されず、公知の方法を利用することができる。例えば、アミノカルボン酸またはラクタムもしくは炭素数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(イ)とジカルボン酸(ロ)を反応させて両末端がカルボン酸基のポリアミドプレポリマーを作り、これにポリ(アルキレンオキシド)グリコール(ハ)を真空下に反応させる方法、あるいは前記の(イ)、(ロ)、(ハ)の化合物を反応槽に仕込み、水の存在下、または不存在下に高温で加熱反応させることによりカルボン酸末端のポリアミドエラストマーを生成させ、その後、常圧または減圧下で重合を進める方法が知られている。また、上記(イ)、(ロ)、(ハ)の化合物を同時に反応槽に仕込み、溶融重合した後、高真空下で一挙に重合を進める方法もある。
本発明におけるポリカーボネート樹脂(D)には、特に制限はなく、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族−芳香族ポリカーボネート樹脂などを使用することができる。その中でも、機械的特性などのバランスに優れた芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましく用いられる。
ポリカーボネート樹脂(D)の配合量は、35〜60重量%の範囲であり、好ましくは35〜55重量%の範囲である。ポリカーボネート樹脂(D)が35重量%未満では、耐衝撃性と耐熱性に劣り、60重量%を超えると静電気消散性が発現しにくく、また成形性に劣る。ポリカーボネート樹脂(D)の製造方法については、特に限定されず、公知の方法を利用することができる。例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(通称、ビスフェノールA)のポリカーボネートの製造には、ジオキシ化合物として4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンを用いて苛性アルカリ水溶液及び溶剤存在下にホスゲンを吹き込んで製造するホスゲン法などを利用することができる。
本発明における分子鎖中にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基及びアミド基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する変性ビニル系共重合体(E)とは、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)及び不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)からなる群から選ばれた1種以上の単量体及びカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基及びアミド基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する単量体が共重合されたものである。
カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基及びアミド基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する単量体の種類については、特に制限はなく、芳香族ビニル系単量体(b)やシアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)と共重合可能なもので有れば、いずれも使用することができる。その単量体としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートが挙げられ、とくにメタクリル酸と無水マレイン酸が好ましく使用される。これらの単量体は2種以上を併用することもできる。
変性ビニル系共重合体(E)中のカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基及びアミド基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する単量体の含有量は、0.1〜20重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜15重量%の範囲である。官能基を有する単量体の含有量が、0.1重量%未満では、相溶化効果が低下傾向となり、また、20重量%を超えると、変性ビニル系共重合体の製造が困難になったり、自己反応によるゲル化が発生することがある。
本発明における分子鎖中にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基及びアミド基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する変性ビニル系共重合体(E)の配合量は、0.2〜10重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜8重量%の範囲である。変性ビニル系共重合体(E)が、0.2重量%未満では、ポリアミドエラストマー(C)とビニル系(共)重合体(B)やポリカーボネート樹脂(D)との相溶性が劣り、10重量%を超えるとビニル系(共)重合体(B)やポリカーボネート樹脂(D)の量が減ることになり、機械的特性バランスが悪化する。
変性ビニル系共重合体(E)の製造方法については、特に限定されず、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合など、公知の方法を利用することができる。
本発明における炭素繊維(F)には特に制限はなく、PAN(ポリアクリロニトリル)系、ピッチ系等いずれも使用することができ、また金属コートを施した炭素繊維も使用することができる。その中でも、機械特性が高いPAN系炭素繊維が好ましく用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中における炭素繊維(F)の配合量は、2〜20重量%の範囲であり、好ましくは3〜20重量%である。炭素繊維(F)が2重量%未満では、静電気消散性に劣り、20重量%を超えると成形性、表面外観に劣る。
本発明において、グラフト共重合体(A)、ビニル系(共)重合体(B)及びポリアミドエラストマー(C)の配合量比については、下式(1)及び(2)を満たす必要がある。
ビニル系(共)重合体(B)の含有量/ポリアミドエラストマー(C)の含有量>2 ・・・ (1)
ビニル系(共)重合体(B)の含有量/グラフト共重合体(A)の含有量>2 ・・・ (2)
上記式(1)は、静電気消散性を効率的に発現させるための配合比率を表しており、これ以外の範囲では、すなわち、ポリアミドエラストマー(C)に対するビニル系(共)重合体(B)の量が少ない場合、ポリアミドエラストマー(C)の分散性が劣り、制電性と静電気消散性が低下する。また、上記式(2)は、成形性と耐衝撃性の良バランス化を達成するための比率であり、これ以外の範囲では、すなわち、ビニル系(共)重合体(B)に対するグラフト共重合体(A)の量が多い場合、成形性が悪化する。
ビニル系(共)重合体(B)の含有量/グラフト共重合体(A)の含有量>2 ・・・ (2)
上記式(1)は、静電気消散性を効率的に発現させるための配合比率を表しており、これ以外の範囲では、すなわち、ポリアミドエラストマー(C)に対するビニル系(共)重合体(B)の量が少ない場合、ポリアミドエラストマー(C)の分散性が劣り、制電性と静電気消散性が低下する。また、上記式(2)は、成形性と耐衝撃性の良バランス化を達成するための比率であり、これ以外の範囲では、すなわち、ビニル系(共)重合体(B)に対するグラフト共重合体(A)の量が多い場合、成形性が悪化する。
また、本発明における熱可塑性樹脂組成物の表面固有抵抗値は、1012Ω未満であることが好ましい。表面固有抵抗値は低ければ低いほどよい。
また、本発明における熱可塑性樹脂組成物のスタティックオネストメーターにより測定される帯電圧は通常、1000V以下であり、より好ましくは800V以下であり、更に好ましくは400V以下である。帯電圧は低ければ低いほどよい。
本発明における熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はないが、好ましくは、サイドフィード式2軸押出機にて、ホッパーに炭素繊維(F)以外のものをあらかじめ混合したものを仕込み、サイドフィードにて炭素繊維(F)を送りこむ方法である。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、各種の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン6やナイロン6,6等のポリアミド樹脂、変性PPE樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、あるいはそれらの変性物やエラストマー類を配合することにより、成形用樹脂組成物として性能をさらに改良することができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、ヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系、含リン有機化合物系などの酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンソフェノン系、サクシレート系などの紫外線吸収剤、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系などの光安定剤などの各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類などの滑剤、フタル酸エステル類、リン酸エステル類などの可塑剤、臭素化化合物やリン酸エステル、赤燐等の各種難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどの難燃助剤、アルキルカルボン酸やアルキルスルホン酸の金属塩、カーボンブラック、顔料および染料、各成分が酸・塩基性であった場合の中和剤などを添加することもでき、また、各種強化剤や充填材を配合することもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、これを成形することによって、電気・電子機器部品や磁気・光学記録媒体関連部品として好適に使用することができる成形品を得ることができる。本発明の電気・電子機器部品や磁気・光学記録媒体関連部品のための成形品は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形およびガスアシスト成形などの現在熱可塑性樹脂の成形に用いられる公知の方法によって成形される。本発明における電気・電子機器部品、磁気・光学記録媒体関連部品の表面固有抵抗値は1012Ω未満であることが好ましい。
本発明における電気・電子機器部品とは、精密な電気・電子制御装置を備えた各種機器の部品のことをいい、例えば、カーナビゲーションシステムやカーオーディオシステム、また、電気自動車に搭載される燃料電池周辺機器などの自動車用電装部品、ICが搭載された業務又は家庭用電子玩具などIC周辺部品または筐体などの業務または家庭用デジタル電子機器部品、スロットマシンやパチンコまたは電子ゲーム装置などの業務用遊技・娯楽機器部品などが挙げられる。
本発明における磁気・光学記録媒体関連部品とは、磁気テープ、磁気ディスクや光ディスク、磁気光ディスクなどに各種情報を記録する、例えば、ハードディスクやMOディスク関連部品、デジタルビデオカセット関連部品などが挙げられる。
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、これらの実施例をもって本発明は制限されるものではない。なお、下記の実施例及び比較例中、特にことわりのない限り「部」または「%」で表示したものは、すべて重量比率を表わしたものである。熱可塑性樹脂の特性について、分析方法を下記する。
(1)重量平均ゴム粒子径
「Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt, P.H.Biddison」記載のアルギン酸ナトリウム法によって求める。すなわち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める。
「Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt, P.H.Biddison」記載のアルギン酸ナトリウム法によって求める。すなわち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める。
(2)グラフト率
グラフト共重合体所定量(m)にアセトンを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離後、不溶分を濾取し、この不溶分を60℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式より算出した。
グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100
(ここで、Lはグラフト共重合体のゴム含有量である。)。
グラフト共重合体所定量(m)にアセトンを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離後、不溶分を濾取し、この不溶分を60℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式より算出した。
グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100
(ここで、Lはグラフト共重合体のゴム含有量である。)。
(3)還元粘度ηsp/c
サンプル1gにアセトン200mlを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物(アセトン可溶分)を60℃の温度で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml(メチルエチルケトン、30℃)に調整し、ウベローデ粘度計を用いηsp/cを測定した。
サンプル1gにアセトン200mlを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物(アセトン可溶分)を60℃の温度で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml(メチルエチルケトン、30℃)に調整し、ウベローデ粘度計を用いηsp/cを測定した。
(4)アイゾット衝撃強度
ASTM D256に準拠し(3.2mmノッチ付き、23℃)測定した。
ASTM D256に準拠し(3.2mmノッチ付き、23℃)測定した。
(5)表面固有抵抗値(導電性)
80℃の温度の熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250℃に設定した東芝(株)製IS50A成形機内に充填し、射出成形により角板成形品(40mm(W)×50mm(L)×3mm(t))を得た。ASTM D257に準拠し、測定した。印加電圧500V、1分後の値を読みとった。但し、表面固有抵抗値107Ω以下の場合には、上記条件では測定困難であるので、40mm(W)×50mm(L)×3mm(t)の成形品の40mm側両端に導電性ペースト(”ドータイト”D−500(藤倉化成(株)製)商品名)を幅5mmで平行に塗布し、乾燥後、デジタルマルチメーター(アドバンテスト製TR6877)にて抵抗値を測定する方法によった。また、成形品の場合は、平坦部を切り出し、測定する。
80℃の温度の熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250℃に設定した東芝(株)製IS50A成形機内に充填し、射出成形により角板成形品(40mm(W)×50mm(L)×3mm(t))を得た。ASTM D257に準拠し、測定した。印加電圧500V、1分後の値を読みとった。但し、表面固有抵抗値107Ω以下の場合には、上記条件では測定困難であるので、40mm(W)×50mm(L)×3mm(t)の成形品の40mm側両端に導電性ペースト(”ドータイト”D−500(藤倉化成(株)製)商品名)を幅5mmで平行に塗布し、乾燥後、デジタルマルチメーター(アドバンテスト製TR6877)にて抵抗値を測定する方法によった。また、成形品の場合は、平坦部を切り出し、測定する。
(6)帯電圧及び帯電圧減衰半減期(静電気消散性能)
上記(5)と同一の角板成形品にてスタティックオネストメーター(宍戸製)で測定した。成形品と印加電極との距離を15mm、検出電極との距離を10mmとし、8kVの電圧を1分間印加し、そのときの帯電圧を読みとった。帯電圧減衰半減期は、印加を止め、帯電圧が半減するまでの時間を読みとった。帯電圧が低く、かつ帯電圧減衰半減期が短いほど静電気消散性能に優れるといえる。また、成形品の場合も(5)と同様にして測定する。帯電圧は、30V以上が測定可能範囲である。
上記(5)と同一の角板成形品にてスタティックオネストメーター(宍戸製)で測定した。成形品と印加電極との距離を15mm、検出電極との距離を10mmとし、8kVの電圧を1分間印加し、そのときの帯電圧を読みとった。帯電圧減衰半減期は、印加を止め、帯電圧が半減するまでの時間を読みとった。帯電圧が低く、かつ帯電圧減衰半減期が短いほど静電気消散性能に優れるといえる。また、成形品の場合も(5)と同様にして測定する。帯電圧は、30V以上が測定可能範囲である。
(参考例1) グラフト共重合体(A)A1の製造方法
窒素置換した反応器に、純水120部、ブドウ糖0.5部、ピロリン酸ナトリウム0.5部、硫酸第一鉄0.005部およびポリブタジエンラテックス(ゴム粒子径0.3μm、ゲル含有率85%)60部(固形分換算)を仕込み、撹拌しながら反応器内の温度を65℃の温度に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始としてモノマ(スチレン30部,アクリロニトリル10部)およびt−ドデシルメルカプタン0.3部からなる混合物を5時間かけて連続滴下した。同時に並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25部、オレイン酸カリウム2.5部および純水25部からなる水溶液を7時間かけて連続滴下し、反応を完結させた。得られたスチレン系共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和後、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体(A)A1を得た。このグラフト共重合体(A−1)A1のグラフト率は35%であり、樹脂成分のηsp/cは0.35dl/gであった。
窒素置換した反応器に、純水120部、ブドウ糖0.5部、ピロリン酸ナトリウム0.5部、硫酸第一鉄0.005部およびポリブタジエンラテックス(ゴム粒子径0.3μm、ゲル含有率85%)60部(固形分換算)を仕込み、撹拌しながら反応器内の温度を65℃の温度に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始としてモノマ(スチレン30部,アクリロニトリル10部)およびt−ドデシルメルカプタン0.3部からなる混合物を5時間かけて連続滴下した。同時に並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25部、オレイン酸カリウム2.5部および純水25部からなる水溶液を7時間かけて連続滴下し、反応を完結させた。得られたスチレン系共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和後、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体(A)A1を得た。このグラフト共重合体(A−1)A1のグラフト率は35%であり、樹脂成分のηsp/cは0.35dl/gであった。
(参考例2) ビニル系(共)重合体(B)B1の製造方法
容量が20Lで、バッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル20重量%、アクリルアミド80重量%からなる共重合体0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次にアクリロニトリル30部、スチレン5.0部、t−ドデシルメルカプタン0.46部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.39部,2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.05部の混合溶液を反応系を攪拌しながら添加し、58℃の温度に昇温し重合を開始した。重合開始から15分が経過した後オートクレーブ上部に備え付けた供給ポンプからのスチレン65部を110分かけて添加した。この間、反応温度を65℃まで昇温した。スチレンの反応系への添加終了後、50分かけて100℃の温度まで昇温した。以降は、通常の方法に従って、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行ない、ビニル系(共)重合体(B)B1を得た。このビニル系(共)重合体(B)B1のηsp/cは0.53dl/gであった。
容量が20Lで、バッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル20重量%、アクリルアミド80重量%からなる共重合体0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次にアクリロニトリル30部、スチレン5.0部、t−ドデシルメルカプタン0.46部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.39部,2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.05部の混合溶液を反応系を攪拌しながら添加し、58℃の温度に昇温し重合を開始した。重合開始から15分が経過した後オートクレーブ上部に備え付けた供給ポンプからのスチレン65部を110分かけて添加した。この間、反応温度を65℃まで昇温した。スチレンの反応系への添加終了後、50分かけて100℃の温度まで昇温した。以降は、通常の方法に従って、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行ない、ビニル系(共)重合体(B)B1を得た。このビニル系(共)重合体(B)B1のηsp/cは0.53dl/gであった。
(参考例3) ポリアミドエラストマー(C)C1の製造方法
ε−カプロラクタム45部と数平均分子量1000のポリエチレングリコール50部及びテレフタル酸9部を使用し、三酸化アンチモン触媒存在下で、260℃の温度にて3時間重合させた。得られたポリマーをストランド状に吐出させ、カットしてペレット状のポリアミドエラストマー(C)C1を得た。
ε−カプロラクタム45部と数平均分子量1000のポリエチレングリコール50部及びテレフタル酸9部を使用し、三酸化アンチモン触媒存在下で、260℃の温度にて3時間重合させた。得られたポリマーをストランド状に吐出させ、カットしてペレット状のポリアミドエラストマー(C)C1を得た。
(参考例4) ポリアミドエラストマー(C)C2の製造方法
ε−カプロラクタム45部、数平均分子量1,800のビスフェノールAのエチレンオキシド付加物45部、数平均分子量が1,800のポリエチレングリコール5部、テレフタル酸5.2部、“イルガノックス1098”( チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、酸化防止剤)0.2部を反応容器に仕込み、窒素パージして260℃の温度で60分間加熱攪拌して透明な均質溶液とした後、0.07kPa以下まで減圧した。テトラブチルチタネート0.1部を加えて、圧力は0.07kPa以下、温度は260℃の条件で、2時間反応させた。得られたポリマーをストランド状に吐出させ、カットしてペレット状のポリアミドエラストマー(C)C2を得た。
ε−カプロラクタム45部、数平均分子量1,800のビスフェノールAのエチレンオキシド付加物45部、数平均分子量が1,800のポリエチレングリコール5部、テレフタル酸5.2部、“イルガノックス1098”( チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、酸化防止剤)0.2部を反応容器に仕込み、窒素パージして260℃の温度で60分間加熱攪拌して透明な均質溶液とした後、0.07kPa以下まで減圧した。テトラブチルチタネート0.1部を加えて、圧力は0.07kPa以下、温度は260℃の条件で、2時間反応させた。得られたポリマーをストランド状に吐出させ、カットしてペレット状のポリアミドエラストマー(C)C2を得た。
(参考例5) 変性ビニル系共重合体(E)E1の製造方法
スチレン70部、アクリロニトリル25部、メタクリル酸5部を懸濁重合して、ビーズ状の変性ビニル系共重合体(E)E1を得た。
スチレン70部、アクリロニトリル25部、メタクリル酸5部を懸濁重合して、ビーズ状の変性ビニル系共重合体(E)E1を得た。
を用いた。
(実施例1〜6)
参考例1〜5で得られたグラフト共重合体(A)A1、ビニル系(共)重合体(B)B1、ポリアミドエラストマー(C)C1、C2、ポリカーボネート樹脂(D)D1(出光石油化学(株)製”タフロン”(登録商標)A2200)及び変性ビニル系共重合体(E)E1を、表1に示した配合比で混合し、ベント付30mmφ2軸押出機(池貝製PCM−30)を使用して、樹脂温度250℃で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。炭素繊維(F)(東レ(株)製”トレカ”(登録商標)TW14−006)は、サイドからフィードした。次いで、射出成形機により、シリンダー温度250℃、金型温度60℃で試験片を成形し、上記条件で物性を測定した。得られた測定結果を表1に示した。
参考例1〜5で得られたグラフト共重合体(A)A1、ビニル系(共)重合体(B)B1、ポリアミドエラストマー(C)C1、C2、ポリカーボネート樹脂(D)D1(出光石油化学(株)製”タフロン”(登録商標)A2200)及び変性ビニル系共重合体(E)E1を、表1に示した配合比で混合し、ベント付30mmφ2軸押出機(池貝製PCM−30)を使用して、樹脂温度250℃で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。炭素繊維(F)(東レ(株)製”トレカ”(登録商標)TW14−006)は、サイドからフィードした。次いで、射出成形機により、シリンダー温度250℃、金型温度60℃で試験片を成形し、上記条件で物性を測定した。得られた測定結果を表1に示した。
(比較例1〜4)
参考例1〜3、5で得られたグラフト共重合体(A)A1、ビニル系(共)重合体(B)B1、ポリアミドエラストマー(C)C1、ポリカーボネート樹脂(D)D1及び変性ビニル系共重合体(E)E1を表1に示した配合比で混合し、実施例1と同様の方法で試験片を成形製造し、各物性を測定した。測定結果を表2に示した。
参考例1〜3、5で得られたグラフト共重合体(A)A1、ビニル系(共)重合体(B)B1、ポリアミドエラストマー(C)C1、ポリカーボネート樹脂(D)D1及び変性ビニル系共重合体(E)E1を表1に示した配合比で混合し、実施例1と同様の方法で試験片を成形製造し、各物性を測定した。測定結果を表2に示した。
表1と表2の結果から、次のことが明らかである。本発明の熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜6)ではいずれも帯電圧減衰半減期が短く、耐衝撃性にも優れていた。このことから、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、電気・電子機器部品、磁気・光学記録媒体関連部品として好適な樹脂材料である。
これに対し、ポリカーボネート樹脂(D)D1が、35重量%未満のもの(比較例1)では、耐衝撃性が低い。ポリカーボネート樹脂(D)D1が、60重量%を超え、ビニル系(共)重合体(B)B1が、11重量%未満のもの(比較例2)では、静電気消散性が劣る。また、炭素繊維(F)が、2重量%未満のもの(比較例3)では、静電気消散性、表面固有抵抗値が劣る。そして、ポリアミドエラストマー(C)C1が、5重量%未満のもの(比較例4)は、静電気消散性と表面固有抵抗値に劣る。
Claims (7)
- ゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)からなる群から選ばれた1種以上の単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(A)2〜20重量%と、該芳香族ビニル系単量体(b)、該シアン化ビニル系単量体(c)、該不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)からなる群から選ばれた1種以上の単量体を構成成分として含有するビニル系重合体またはビニル系共重合体(B)11〜50重量%と、ポリアミドエラストマー(C)5〜20重量%と、ポリカーボネート樹脂(D)35〜60重量%と、分子鎖中にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基及びアミド基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する変性ビニル系共重合体(E)0.2〜10重量%、及び炭素繊維(F)2〜20重量%を含有してなる熱可塑性樹脂組成物(ただし、各成分の含有量の合計(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)=100重量%)であって、下式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
(B)の含有量/(C)の含有量>2 ・・・ (1)
(B)の含有量/(A)の含有量>2 ・・・ (2) - ポリアミドエラストマー(C)が、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、または炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(C−1)と、数平均分子量200〜6000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール(C−2)を構成成分として含むグラフトまたはブロック共重合体である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(C−2)がポリエチレンオキシドグリコールである請求項2記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 表面固有抵抗値が1012Ω未満である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
- 請求項5記載の成形品を用いて製造された電気・電子機器部品。
- 請求項5記載の成形品を用いて製造された磁気・光学記録媒体関連部品。
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