JP2005314634A - 光ラジカル重合開始剤、感光性樹脂組成物及び、物品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 下記式(1)で表される芳香族5員環イミド構造を有する化合物(a)からなる光ラジカル重合開始剤。式中、R1〜R4は、それぞれ独立して水素原子又は置換基であり、互いに結合した環構造であってもよい。
【化1】
【選択図】 なし
Description
さらに詳しくは、耐熱性及び安定性が高く、透明性が高く、ラジカル反応後に低分子量の分解物や不安定な未反応体の残留が非常に少なく、合成の自由度及び経済性に優れた光ラジカル重合開始剤に関する。また本発明は、当該光ラジカル重合開始剤を含有し、感度が高く、保存安定性が良く、光照射時に開始剤に起因する揮発成分及び臭気の発生が少ない感光性樹脂組成物、さらには、該感光性樹脂組成物により少なくとも一部分が形成された、開始剤由来の低分子又は不安定残留物が非常に少ない、高耐熱性、高安定性、高品質の物品に関する。
一般に多く用いられるネガ型の感光性樹脂の一つに、エチレン性不飽和結合を一つ以上有する化合物、光照射によりラジカルを発生させる光ラジカル開始剤、及び、必要に応じて、現像性や塗膜の柔軟性等を付与する高分子化合物、無機フィラー、顔料等を配合した樹脂組成物がある。この組成物に放射線を照射すると、エチレン性不飽和結合を有する化合物がラジカル反応により結合し、大分子量化して硬化する。この硬化反応の際に、架橋反応により3次元網目構造が発達することにより、得られる硬化物の硬度、強度、密着性、耐溶剤性、耐熱性が向上する。
ポストベークの条件を、より高温で、より長時間にすることによってラジカル開始剤由来の残存物をより多く除去することが可能であるが、固体中からの揮発の為、完全に除去することは困難である。より多くのラジカル開始剤由来の不純物を除去する為に条件を厳しくすると、その条件が、かえって製品不良を起こす原因となる。
しかし、マレイミド化合物は、その骨格から熱分解温度が低いため、光硬化工程に至る前の加熱工程によってラジカルを発生させたり或いは開始剤由来の低分子分解物を生成させるという問題があった。
また、マレイミド基自体がエチレン性2重結合を有するため、マレイミド基と(メタ)アクリル基を両方有するモノマーをラジカル重合すると、架橋反応が進行しゲル化しやすい。そのため、マレイミド基を有する(メタ)アクリレートをラジカル重合させる場合には、ポリマーの線状性を制御することが必ずしも容易ではない。さらに、アクリルポリマーの側鎖にマレイミド部位を導入した構造を得たい場合には、マレイミド基を有する(メタ)アクリレートをラジカル重合させる方法では難しいため、反応性の側鎖を有するアクリルポリマーにマレイミド部位を高分子反応によって導入しなければならなかった。
上記特許文献1及び2では、マレイミド基にシクロヘキシル基等の置換基を導入し、立体障害によりマレイミド基の反応性を低下させることにより、この問題を克服している。しかしながら、その反面マレイミド部位の反応性が低下するため、ラジカル反応開始効率も低下するという問題があった。
また、マレイミド基はUVの吸収極大が290nm付近にあると報告されており(非特許文献2)、そのモル吸光係数も低く、一般的に用いられる高圧水銀灯のような露光光源からの光を十分に利用できないという問題もある。
しかしながら、これらの光ラジカル重合開始剤は分子構造が特異であることもあって汎用性の高い原料を利用しにくいため、原料自体の入手コストが高くなりやすい。或いは、入手した原料から出発して意図した構造のものを得るために多段階の合成工程を経なければならない場合には、合成コストが高くなりやすい。従って、これらの光ラジカル重合開始剤はコスト高の傾向があり、重合開始能や硬化生成物の物性はそれほど高い機能を求めない代わりにコストを下げたいというような目的には用いることが難しいという問題があった。
しかしながら、この文献では溶液中での反応であると共に、フタルイミド化合物の分子内環化反応のみしか記載されておらず、生成したラジカル種によってラジカル重合を行う可能性は記載されていない。一般に、各種反応において生成したラジカル種は、その構造によって反応性が異なり、すべてがラジカル重合の開始できるわけではなく、その構造によりラジカル重合を開始できるラジカルと開始できないラジカルがある。
本発明は、これらの目的のうち少なくともひとつを解決するものである。
上記課題を解決するための本発明に係る光ラジカル重合開始剤は、下記式(1)で表される芳香族5員環イミド構造を有する化合物(a)からなることを特徴とする。
芳香族5員環イミド構造によって発生したラジカルは水素引抜きのメカニズムを経るため、エチレン性不飽和結合等の一般的なラジカル重合性基だけでなく、芳香環等種々の化合物とも反応可能である。従って、化合物(a)は、一般的な光ラジカル重合開始剤として用いられるだけでなく、様々なラジカル反応の開始剤又は促進剤として用いることが可能であり、例えば低分子量の芳香族化合物や芳香族ポリマーを含有する樹脂組成物の架橋剤として用いることができる。
この樹脂組成物を用いてパターンや成形体を作製する場合には、ラジカル重合開始剤に由来する揮発性の低分子分解物や不安定な未反応体が、樹脂組成物の硬化物中に残存する問題が生じない。その結果、硬化後の成形体や膜が高耐熱性、高安定性となる効果があり、最終製品の信頼性を低下させる問題も解決する。また、光照射時やその後の加熱工程において臭気(アウトガス)の発生がない為、作業環境が向上する。さらに、ラジカル重合開始剤のコストが安価なため、最終製品の製造コストを削減する効果がある。
しかも、類似の構造を有する6又は7員環構造のイミド基を有する化合物とほぼ同等の耐熱性、安定性、保存性を有しながら、6又は7員環構造のイミド基を有する化合物と比べてコストが安価であることから、利用価値が極めて高い。
ナフタルイミド化合物のベンゼン骨格に置換基を導入したり、ベンゼン骨格をナフタレン骨格やアントラセン骨格にすることでイミド結合のπ電子の共役が伸び、吸収波長の長波長化をすることができる。一方で、ナフタレンやアントラセンなど複数の環構造を有する部位は、溶解性の低下を招くことがある。その場合は、導入する置換基を選択することで溶解性や耐熱性などの物性を調整することができる。
R1乃至R4が水素原子又は上記例示の置換基である場合には、原料調達の容易性、合成の簡便性の点から好ましい。
1価の化学構造であって有機基以外のものとしては、例えば、シロキサン、シラン、ボラジン等が挙げられる。
A=εcb
A=吸光度
b=試料中の光路長(cm)
c=溶質の濃度(mol/L)
ここで、5%重量減少温度とは、後述の本発明の実施例と同様の手法で、熱重量分析装置を用いて重量減少を測定した時に、サンプルの重量が初期重量から5%減少した時点(換言すればサンプル重量が初期の95%となった時点)の温度である。同様に10%重量減少温度とはサンプル重量が初期重量から10%減少した時点の温度である。
塗布時の塗工適性の点からは、化合物(a)は特に溶剤に対する溶解性が高いことが好ましい。具体的には、使用する溶剤、特に後述する汎用溶剤のいずれかに対する化合物(a)の溶解性が0.1重量%以上であることが好ましい。
合成原料としては酸無水物及びその誘導体、例えば、フタル酸無水物及びその誘導体、1,2−ナフタル酸無水物、2,3−ナフタル酸無水物、1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物やその誘導体などが挙げられるが特に限定されない。
これらの原料は汎用性が高く、例えば、フタル酸無水物などはエポキシ樹脂の硬化剤などに用いられており、広く流通している。従って、安価に入手することが可能である。また、原料として利用できる化合物のバリエーションも豊富であり、式(1)のR1〜R4が様々なものを市場から入手できる。従って、意図した構造に合わせて原料を比較的自由に選択することができるので、合成工程を簡素化し、合成段階のコストを削減することが可能である。
先ず、フタル酸無水物をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に投入し攪拌する。そこへ、2−メトキシエチルアミンをフタル酸酸無水物と等モル滴下し、0℃から70℃の間で1〜15時間程度、攪拌する。この時、用いる反応溶媒はDMFに限定されず、有機極性溶媒等、最終生成物が溶解する溶媒であればよい。フタル酸酸無水物は溶解性が比較的乏しく一般の溶媒には溶解しずらいが、アミンと反応することで溶解するようになる。
水酸基を有するアミンとしては、2−アミノエタノール、プロパノールアミン、ヘキサノールアミン等のオキシアルキルアミン、エトキシエタノールアミン、プロポキシプロパノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール等の置換オキシアルキルアミンアミンが挙げられる。
また、2級、及び3級アミノ基を有するアミンとしては、N,N−ジメチルアミノエチレンジアミン、ジエチレントリアミン等を用いることが出来るが特に限定されない。
その他に、メルカプト基を有する2−アミノエタンチオール、スルホン酸基を有する2−アミノエチルヒドロゲンサルフェート、リン酸基を含むものとしては、2−アミノエチルジヒドロゲンホスフェート等が挙げられるが特に限定されない。
上記芳香族5員環イミド構造のイミド部位は、マレイミド化合物と同じ5員環であるが、芳香族5員環イミド構造では、イミド部位が安定性の高いベンゼン環に直接結合していることから、マレイミド化合物に比べて格段に耐熱性が高くなる。
従って、本発明の光ラジカル発生剤は、ラジカル発生機構の点から、さらにはラジカル発生部位の化学構造の点からも耐熱性、安定性、保存性が高い。
しかも、上述したように、芳香族5員環イミド構造は、6又は7員環イミド構造と同等の高い安定性を有しながら、原料コスト及び原料選択の自由度は6又は7員環イミド構造よりも優れている。
また、マレイミド化合物がマレイミド骨格自体にエチレン性不飽和結合を有しているのとは異なり、芳香族5員環イミド構造は上記π共役系を有しており、その芳香族5員環イミド骨格自体はエチレン性不飽和結合を有していないため、芳香族5員環イミド骨格が他の重合性化合物と架橋結合を形成してゲル化することはない。従って、このような芳香族5員環イミド構造を有する化合物(a)を用いて、非常に簡便に高分子の側鎖に光ラジカル開始部位を導入することが可能である。
従って、本発明の光ラジカル重合開始剤は、開始剤に由来する反応後の分解物や未反応体に起因する様々な問題、例えば、作業安全性の問題や、耐熱性・耐光性の悪化や、着色や退色、塗膜のはがれやクラックの発生等、最終製品の信頼性を低下させる問題や、薬液寿命を短くする問題や、臭気(アウトガス)が発生する問題も全て解決することができる。
しかも、上記化合物(a)は、従来から耐熱性が良好と言われている6又は7員環イミド構造を有する化合物とほぼ同等の耐熱性、安定性、保存性を有しながら、従来と比べ原料コスト及び合成コストが安価であり、さらに、感度も良好であることから、利用価値が極めて高い。
本発明に係る樹脂組成物は、前記下記式(1)で表される芳香族5員環イミド構造含有基を有する化合物(a)を必須成分として含有することを特徴とし、エチレン性不飽和基を有する化合物(b)を含有することが好ましく、必要に応じて、水素供与体、化合物(b)以外の硬化反応性化合物、化合物(a)以外のラジカル重合開始剤、高分子量のバインダー成分、又は、その他の成分をさらに含有してもよい。
ここで、架橋とは、架橋結合を生成することをいい、架橋結合とは、鎖状に結合した原子からなる分子のうちの任意の2原子間に橋をかけるようにして形成された結合をいい、この場合の結合は、同一分子内でも他分子間でも良い(化学辞典 東京化学同人 p.1082)。
エチレン性不飽和結合を有する化合物(b)としては、エチレン性不飽和結合を1つ又は2つ以上有する化合物、及び、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合と共に他の官能基を有する化合物を用いることができ、例えば、アミド系モノマー、(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、スチレン等の芳香族ビニル化合物を挙げることができる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートのいずれであっても良いことを意味する。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、ヘキサヒドロフタルイミドエチルアクリレート、コハクイミドエチルアクリレート等のイミドアクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノールのアルキレンオキシド付加物のアクリレート類及びそのハロゲン核置換体;エチレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート等の、グリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のポリオールおよびそのアルキレンオキサイドの(メタ)アクリル酸エステル化物、イソシアヌール酸EO変性ジまたはトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ここで、ポリオールとしては、低分子量ポリオール、ポリエチレングリコール及びポリエステルポリオール等があり、低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられ、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等が挙げられ、ポリエステルポリオールとしては、これら低分子量ポリオール及び/又はポリエーテルポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分との反応物が挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキシド付加物等のポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分とからの反応物等が挙げられる。
樹脂組成物を、電子部材やカラーフィルター等の用途で露光によりパターンを形成するレジストとして用いる場合には、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を向上させる為に、化合物(b)としてカルボキシル基やフェノール性水酸基、スルホン酸基、水酸基等のアルカリ可溶性や、親水性の官能基を有すものを用いても良い。
また、化合物(b)は、照射光に対する樹脂組成物の感度を阻害しないために、照射波長と化合物(a)の芳香族5員環イミド構造の吸収波長が重なる波長領域に吸収を持たないことが好ましい。
また、硬化反応性化合物として、化合物(b)と共に他のラジカル反応性化合物を組み合わせて用いる場合には、組み合わせるラジカル反応性化合物の種類及び量に応じて化合物(a)の量を適宜調節する。
水素供与体の水素供与性基としては、アルキル基のように炭素に直接水素がついている官能基や、一般に水素供与性基として用いられているアミン、チオール、水酸基、又は、エーテル結合を有する有機基等が挙げられる。特に、水素を供与しやすいチオール、アミン、水酸基、及び、エーテル結合を有する有機基が感度の点から好ましい。エーテル結合は、該エーテル結合の隣りの炭化水素構造(アルカン、アルケン)の水素が引き抜かれ易いと言われている。従って、エーテル結合を含む水素供与基は、そのような水素を有する構造であることが好ましい。
水酸基等の官能基を有する3級アミンの例としては、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール等が挙げられる。さらに、2,2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を持つ反応性モノマーでもある3級アミンを用いても良い。
これら任意成分の配合割合は、樹脂組成物の固形分全体に対し、0.1重量%〜95重量%の範囲が好ましい。0.1重量%未満だと、添加物を添加した効果が発揮されにくく、95重量%を越えると、樹脂組成物の特性が最終生成物に反映されにくい。
このようにして得られる本発明の樹脂組成物は、耐熱性が高い化合物(a)を光ラジカル重合開始剤として含有するので、樹脂組成物の状態での耐熱性、安定性、保存性が高い。
芳香族5員環構造を有する化合物(a)からなる光ラジカル重合開始剤を用いる本発明の樹脂組成物及びそのラジカル反応による硬化物は、6又は7員環イミド基を有する開始剤を用いる場合と同等の優れた耐熱性、安定性、保存性を発揮する。
電子部品の場合には、例えば、半導体装置のアンダーフィル剤、封止剤、等が例示できる。
層間絶縁膜としては、耐熱性、絶縁信頼性が要求されるビルドアップ基板用の層間絶縁膜や燃料電池における層間絶縁膜、自動車部品や家電製品の絶縁コーティング、等を上記感光性樹脂組成物の硬化物により形成することができる。
光学部材の場合には、各種光学レンズのオーバーコートや、反射防止膜、光導波路、分波装置等の光回路部品、レリーフ型、及び体積型のホログラム、等が例示できる。
建築材料の場合には、壁紙、壁材、床材その他の揮発成分の少ない表皮材料、接着・粘着材料、インキ等が例示できる。
1L(リットル)のなす型フラスコに、フタル酸無水物14.8g(0.1mol)と、N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMF)300mlと、触媒量のピリジンを入れ、攪拌した。そこに、2−メトキシエチルアミン7.5g(0.1mol)を滴下し、室温で5時間攪拌した後、無水酢酸100mlを加え、120℃で5時間攪拌した。その後、ロータリーエバポレーターによって、DMFと無水酢酸等を留去した。そのサンプルをDMFに適当な濃度で溶解させ、蒸留水へ滴下し、再沈殿によって精製した。その後、エタノールによって再結晶をし、下記式で表される化合物1(N−2−メトキシエチルフタルイミド、化合物(a)の一つ)の針状結晶を17.8g得た。
使用原料のアミンを、2−(2−アミノエトキシ)エタノールに変更した以外は、上記実施例1と同様の条件で反応を行った。各原料は実施例1と同じモル数で仕込んだ。この反応では、末端に水酸基を有するアミンを用いたため、末端の水酸基が無水酢酸によってアセチル化された化合物2(化合物(a)の一つ)が定量的に得られた。
使用原料の酸無水物を、2,3−ナフタル酸無水物に変更した以外は、前記実施例1と同様の条件で反応を行った。各原料は、実施例1と同じモル数で仕込んだ。その結果、下記式で表される化合物3が得られた。
使用原料の酸無水物を、1,2−ナフタル酸無水物に変更した以外は、前記実施例1と同様の条件で反応を行った。各原料は、実施例1と同じモル数で仕込んだ。その結果、下記式で表される化合物4が得られた。
テトラヒドロフタル酸無水物と2−アミノエタノールを、WO98/58912号公報と同様の手法で反応させ、比較化合物1を得た。
比較化合物1 10.0g(40mmol)と、4―ジメチルアミノピリジン 5.4g(44mmol)を1Lの3つ口フラスコに投入し、中央部の口に塩化カルシウム管を取り付け、残りの2つの口はシリコンWキャップ(商品名:アズワン社製)で密閉した。そこへ予め脱水されたテトラヒドロフラン(THF)500mlをシリンジを用いて投入し室温で攪拌した。そこへ、アクリル酸クロライド4.0g(44mmol)を滴下し、室温で10時間攪拌した。その後、反応液を分液ろうとに移し、1N・HClで処理し、4−ジメチルアミノピリジンを水層に移動させた。水層と油層に分離した後、油層を、さらに、飽和NaHCO3水溶液を用いて処理し、未反応のアクリル酸クロライド由来のアクリル酸を水層に移動させ、油層と水層を分離した。このようにして、得られた油層を硫酸マグネシウム等の適当な脱水剤で脱水し、ろ過を行なった。このろ液から溶媒を留去した物をクロロホルム−酢酸エチル混合溶媒で再結晶して、テトラヒドロフタリミド骨格とアクリロイル基を有する比較化合物2を10.3g得た。
マレイミド構造を有する化合物であるシクロヘキシルマレイミド(比較化合物3)を準備した。
(1)UV吸収評価
化合物1、3、4及び比較化合物3(シクロヘキシルマレイミド)の10−5Mアセトニトリル溶液を用い、UV吸収スペクトルを測定した。その結果を図1に示す。化合物1は295nm付近に極大を有し、350nm程度まで裾が伸びている事が確認された。295nmにおけるモル吸光係数は、化合物1は3300であり、比較化合物3は1100であった。同じ5員環イミド構造を有する化合物でも、芳香族5員環構造を取ることによって紫外線を多く吸収できる事がわかる。そのため、比較化合物3のようなマレイミド化合物に比べ、フタルイミド化合物のような芳香族5員環構造を有する化合物は、照射された光をより多く吸収でき、より感度を向上させることが可能となる。
さらに、芳香環をベンゼン環からナフタレン環に変更した化合物3と化合物4は、さらに吸収が長波長シフトし350nm〜370nm付近に極大を持つ。このことで、一般的に露光光源として用いられる高圧水銀灯の365nmの発光を効率よく吸収できる為、より一層の感度向上が可能である。
差動型示差熱天秤(製品名:TG8120、(株)リガク製)を用いて、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で、化合物1、2、3、4の5%重量減少温度を測定した。比較のため比較化合物2と、自己解裂型光ラジカル開始剤Irg907(商品名「イルガキュア907」、チバスペシャルティケミカルズ製)についても、同様に測定を行なった。
多官能モノマーとして、3官能アクリレート(商品名:M305、東亞合成(株)製)を用い、化合物1、2、3及び4、比較化合物2、及び、光ラジカル発生剤Irg907(商品名「イルガキュア907」、チバスペシャリティケミカルズ製)を、それぞれ多官能モノマーの2重結合に対して、光ラジカル発生剤部位がモル比で1/50になる様に混合したTHF溶液を調製した。各溶液を、クロムをスパッタしたガラス基板上にスピンコートし、塗膜を得た。また、開始剤成分や比較化合物を含有しない3官能アクリレートのみの塗膜をブランクとした。
上記塗膜をUV露光しながら、赤外分光装置(製品名:FTS 6000、BIO RAD社製)で810cm−1のピークの減少量を経時で記録し、2重結合の消失が、どの程度進行しているか確認した。測定時のサンプル周囲の雰囲気は窒素置換した。UV露光装置はウシオ電機製UVスポットキュアSP-III型(標準反射鏡タイプ)を用い、UVランプは、USH-255BY(ウシオ電機製)を用いた。
さらに、水素供与体の添加効果を確認するために、前記硬化性評価1で用いた化合物1、2、3及び4のTHF溶液に、芳香族5員環イミド基を有する化合物と等モルのトリエタノールアミンを添加し、上記の硬化性評価1と同じ手順で塗膜を作製し、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
上述の硬化性評価1の表2(水素供与体を添加しないとき)との比較から、水素供与体としてトリエタノールアミンの添加により反応率が飛躍的に向上した。この結果より、芳香族5員環イミド構造が水素引抜き型の光ラジカル重合開始部位ではないかと考えられる。このことより、アミンに代表される水素供与性基を樹脂組成物又は塗膜内に有することにより感度の向上が図れる。
Claims (11)
- 前記式(1)においてR1〜R4は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アセチル基、アセトキシ基、スルホン基、置換基を有していてもよい有機基、又はそれらが互いに結合した環構造である、請求項1に記載の光ラジカル重合開始剤。
- 5%重量減少温度が、50℃以上である請求項1乃至3のいずれかに記載の光ラジカル重合開始剤。
- 前記請求項1乃至4のいずれかに記載された化合物(a)からなる光ラジカル重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物。
- エチレン性不飽和基を有する化合物(b)をさらに含有する、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
- 水素供与体、化合物(b)以外の硬化反応性化合物、化合物(a)以外のラジカル重合開始剤、及び、重量平均分子量3000以上のバインダー樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一成分をさらに含有する請求項5又は6に記載の感光性樹脂組成物。
- 前記化合物(a)からなる光ラジカル重合開始剤の量が、感光性樹脂組成物の固形分全体の0.1重量%以上である、請求項5乃至7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- パターン形成材料として用いられることを特徴とする、請求項5乃至8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 塗料又は印刷インキ、或いは、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料の形成材料として用いられる請求項5乃至8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 前記請求項5乃至8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物により少なくとも一部分が形成されている、印刷物、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料いずれかの物品。
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