JP2005314586A - 梁構造を有する射出成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 少量の導電性物質の添加で、高い導電性を有する樹脂組成物及び成形体を提供する。
【解決手段】 (A)マトリックス相を形成する融点Maを有する結晶性樹脂又はガラス転移点Taを有する非晶性樹脂(以下、マトリックス相を形成する樹脂(A)という)、(B)分散相(連結相)を形成する融点Mbを有する結晶性樹脂又はガラス転移温度Tbを有する非晶性樹脂(以下、分散相を形成する樹脂(B)という)、(C)強化繊維、及び(D)導電性物質を含有する導電性耐熱性樹脂組成物であって、該強化繊維(C)の周囲は、該分散相を形成する樹脂(B)によって実質的に被覆され、該分散相を形成する樹脂(B)によって被覆された強化繊維(C)が互いに連結して梁構造を形成しており、かつ、該導電性物質(D)は、実質的に該分散相を形成する樹脂(B)中に存在する導電性耐熱性樹脂組成物。
【選択図】 図1
【解決手段】 (A)マトリックス相を形成する融点Maを有する結晶性樹脂又はガラス転移点Taを有する非晶性樹脂(以下、マトリックス相を形成する樹脂(A)という)、(B)分散相(連結相)を形成する融点Mbを有する結晶性樹脂又はガラス転移温度Tbを有する非晶性樹脂(以下、分散相を形成する樹脂(B)という)、(C)強化繊維、及び(D)導電性物質を含有する導電性耐熱性樹脂組成物であって、該強化繊維(C)の周囲は、該分散相を形成する樹脂(B)によって実質的に被覆され、該分散相を形成する樹脂(B)によって被覆された強化繊維(C)が互いに連結して梁構造を形成しており、かつ、該導電性物質(D)は、実質的に該分散相を形成する樹脂(B)中に存在する導電性耐熱性樹脂組成物。
【選択図】 図1
Description
本発明は、繊維強化樹脂組成物に関し、特に、マトリックスを形成する樹脂、分散相(連結相)を形成する熱可塑性樹脂、強化繊維及び導電性物質からなる耐熱性及び導電性を有する繊維強化樹脂組成物に関する。
プラスチックに導電性を付与した導電性プラスチックが開発され、機能性プラスチックとして様々な用途で使用されている。中でも、各種導電性物質をプラスチックに分散させた導電性プラスチック複合材料が、物性・性能・コストの点に優れており、多くの材料が開発されている。しかし、これらは何れも、プラスチックに導電性物質を均一に分散させたものであり、高価な導電性物質をかなり多量に使用することが必要となっている。また、機械的特性、特に耐熱性等は、マトリックス樹脂により規定されており、高温下で使用する場合は、おのずと高価な耐熱性樹脂を使用すること必要であった。
一方、熱可塑性樹脂に、各種強化繊維を均一に分散させた繊維強化樹脂は、強度や剛性、耐熱性が高く、様々な用途に用いられている。また、この強化繊維による樹脂改質の手法は、非常に多くの樹脂に適用され、樹脂の重要な改質技術となっている。しかし、いずれの技術においても、熱可塑性樹脂の熱変形温度を、その樹脂の融点以上に高くすることはできず、製品の使用温度によって、樹脂が使い分けられている。言い換えれば、ある樹脂の使用温度の上限は、その樹脂の融点で決定されることが従来の常識であった。
そこで、本願出願人は、熱変形温度が高く、高い温度環境で使用できる耐熱性繊維強化樹脂組成物を提供すべく研究を重ね、マトリックス相を形成する熱可塑性樹脂に、分散相(連結相)を形成する他の熱可塑性樹脂を分散させ強化繊維と連結させていわゆる梁構造を形成することにより、熱可塑性樹脂の熱変形温度を大幅に向上できることを見出し、特許出願を行った(特許文献1、2)。
従来、成形体の耐熱性は、使用するマトリックス樹脂の耐熱性によって決定されるというのが常識であったが、この限界を超えた耐熱性(すなわち、結晶性樹脂の場合は、その融点を超えた耐熱性、非晶性樹脂の場合は、そのガラス転移温度を超えた耐熱性)を有し、且つ非常に少量の導電性物質の添加で高い導電性を有する樹脂組成物及び成形体を安価に提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のような、一見不可能に見える技術について鋭意検討を行ったところ、上記特許文献1及び2に記載の梁構造を有する耐熱性樹脂組成物の、分散相(連結相)を形成する熱可塑性樹脂中に、少量の導電性物質を含有させることにより、耐熱性樹脂組成物に高い導電性を持たせることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
[1](A)マトリックス相を形成する融点Maを有する結晶性樹脂又はガラス転移点Taを有する非晶性樹脂(以下、マトリックス相を形成する樹脂(A)という)、
(B)分散相(連結相)を形成する融点Mbを有する結晶性樹脂又はガラス転移温度Tbを有する非晶性樹脂(以下、分散相を形成する樹脂(B)という)、
(C)平均繊維長が0.3mm以上の強化繊維、及び
(D)導電性物質
を含有する導電性耐熱性樹脂組成物であって、
該強化繊維(C)の周囲は、該分散相を形成する樹脂(B)によって実質的に被覆され、該分散相を形成する樹脂(B)によって被覆された強化繊維(C)が互いに連結して梁構造を形成しており、かつ、
該導電性物質(D)は、実質的に該分散相を形成する樹脂(B)中に存在する
導電性耐熱性樹脂組成物;
[2]前記導電性物質(D)を0.1〜10質量%含有する上記[1]に記載の導電性耐熱性樹脂組成物;
[3]前記マトリックス相を形成する樹脂(A)が結晶性樹脂であり、当該導電性耐熱性樹脂組成物からなる成形体の加熱撓み温度(低荷重)が、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)の融点Maよりも20℃以上高い、上記[1]又は[2]に記載の導電性耐熱性樹脂組成物;
[4]前記マトリックス相を形成する樹脂(A)が非晶性樹脂であり、当該導電性耐熱性樹脂組成物からなる成形体の加熱撓み温度(低荷重)が、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)のガラス転移温度Taよりも30℃以上高い、上記[1]又は[2]に記載の導電性耐熱性樹脂組成物;
[5]前記強化繊維(C)が、ガラス繊維、金属繊維及びカーボン繊維からなる群から選択される1種以上の繊維である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の導電性耐熱性樹脂組成物;
[6]同一量の導電性物質(D)がマトリックスを形成する樹脂(A)に分散されている場合の1/10以下の表面固有抵抗又は体積固有抵抗を有する、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の導電性耐熱性樹脂組成物;
[7]前記分散相を形成する樹脂(B)と前記導電性物質(D)とを予めコンパウンドした後、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)、前記強化繊維(C)及び該コンパウンド品を溶融混練してなる上記[1]〜[6]のいずれかに記載の導電性耐熱性樹脂組成物の製造方法;
[8]前記分散相を形成する樹脂(B)として、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)と非相溶であり、かつ、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)よりも、前記強化繊維(C)への親和性が高い樹脂を用いる、上記[7]に記載の導電性耐熱性樹脂組成物の製造方法;及び
[9]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の導電性耐熱性樹脂組成物を成形してなる成形体
を提供する。
[1](A)マトリックス相を形成する融点Maを有する結晶性樹脂又はガラス転移点Taを有する非晶性樹脂(以下、マトリックス相を形成する樹脂(A)という)、
(B)分散相(連結相)を形成する融点Mbを有する結晶性樹脂又はガラス転移温度Tbを有する非晶性樹脂(以下、分散相を形成する樹脂(B)という)、
(C)平均繊維長が0.3mm以上の強化繊維、及び
(D)導電性物質
を含有する導電性耐熱性樹脂組成物であって、
該強化繊維(C)の周囲は、該分散相を形成する樹脂(B)によって実質的に被覆され、該分散相を形成する樹脂(B)によって被覆された強化繊維(C)が互いに連結して梁構造を形成しており、かつ、
該導電性物質(D)は、実質的に該分散相を形成する樹脂(B)中に存在する
導電性耐熱性樹脂組成物;
[2]前記導電性物質(D)を0.1〜10質量%含有する上記[1]に記載の導電性耐熱性樹脂組成物;
[3]前記マトリックス相を形成する樹脂(A)が結晶性樹脂であり、当該導電性耐熱性樹脂組成物からなる成形体の加熱撓み温度(低荷重)が、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)の融点Maよりも20℃以上高い、上記[1]又は[2]に記載の導電性耐熱性樹脂組成物;
[4]前記マトリックス相を形成する樹脂(A)が非晶性樹脂であり、当該導電性耐熱性樹脂組成物からなる成形体の加熱撓み温度(低荷重)が、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)のガラス転移温度Taよりも30℃以上高い、上記[1]又は[2]に記載の導電性耐熱性樹脂組成物;
[5]前記強化繊維(C)が、ガラス繊維、金属繊維及びカーボン繊維からなる群から選択される1種以上の繊維である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の導電性耐熱性樹脂組成物;
[6]同一量の導電性物質(D)がマトリックスを形成する樹脂(A)に分散されている場合の1/10以下の表面固有抵抗又は体積固有抵抗を有する、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の導電性耐熱性樹脂組成物;
[7]前記分散相を形成する樹脂(B)と前記導電性物質(D)とを予めコンパウンドした後、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)、前記強化繊維(C)及び該コンパウンド品を溶融混練してなる上記[1]〜[6]のいずれかに記載の導電性耐熱性樹脂組成物の製造方法;
[8]前記分散相を形成する樹脂(B)として、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)と非相溶であり、かつ、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)よりも、前記強化繊維(C)への親和性が高い樹脂を用いる、上記[7]に記載の導電性耐熱性樹脂組成物の製造方法;及び
[9]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の導電性耐熱性樹脂組成物を成形してなる成形体
を提供する。
本発明によれば、少量の導電性物質の添加で、高い導電性を有する樹脂組成物及び成形体を得ることが可能となる。更に、マトリックス相を形成する樹脂の融点又はガラス転移温度を超える非常に高い耐熱性も同時に具備する樹脂組成物及び成形体が得られ、高価な導電性物質や耐熱性樹脂の使用量を大幅に削減でき、非常に有用な工業材料を安価に提供できる。
本発明の導電性耐熱性樹脂組成物(以下、本発明の組成物ということがある)は、
(A)マトリックス相を形成する融点Maを有する結晶性樹脂又はガラス転移点Taを有する非晶性樹脂(以下、マトリックス相を形成する樹脂(A)という)、
(B)分散相(連結相)を形成する融点Mbを有する結晶性樹脂又はガラス転移温度Tbを有する非晶性樹脂(以下、分散相を形成する樹脂(B)という)、
(C)強化繊維、及び
(D)導電性物質
を含有する導電性耐熱性樹脂組成物であって、
該強化繊維(C)の周囲は、該分散相を形成する樹脂(B)によって実質的に被覆され、該分散相を形成する樹脂(B)によって被覆された強化繊維(C)が互いに連結して梁構造を形成しており、かつ、
該導電性物質(D)は、実質的に該分散相を形成する樹脂(B)中に存在する
ことを特徴とする。
(A)マトリックス相を形成する融点Maを有する結晶性樹脂又はガラス転移点Taを有する非晶性樹脂(以下、マトリックス相を形成する樹脂(A)という)、
(B)分散相(連結相)を形成する融点Mbを有する結晶性樹脂又はガラス転移温度Tbを有する非晶性樹脂(以下、分散相を形成する樹脂(B)という)、
(C)強化繊維、及び
(D)導電性物質
を含有する導電性耐熱性樹脂組成物であって、
該強化繊維(C)の周囲は、該分散相を形成する樹脂(B)によって実質的に被覆され、該分散相を形成する樹脂(B)によって被覆された強化繊維(C)が互いに連結して梁構造を形成しており、かつ、
該導電性物質(D)は、実質的に該分散相を形成する樹脂(B)中に存在する
ことを特徴とする。
以下、図1及び2を参照しながら本発明を説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる導電性耐熱性樹脂組成物を説明するための概念模式図であり、図2(a)は、後記する実施例2で製造した導電性耐熱性樹脂成形体の断面の電子顕微鏡写真であり、図2(b)はそれを模式化した図である。図1に示すように、この導電性耐熱性樹脂組成物1は、マトリックス相を形成する樹脂2、分散相を形成する樹脂3、強化繊維4及び分散相(連結相)中に実質的に存在する導電性物質5を含む。強化繊維4の周囲は実質的に分散相を形成する樹脂3で覆われ、さらに、分散相を形成する樹脂3と強化繊維4は互いに連結して梁構造を形成し、導電性耐熱性樹脂組成物1全体を補強している。このような梁構造により熱変形温度(加熱撓み温度)が向上すると考えられる。また、図2の電子顕微鏡写真から、実際に、マトリックス相を形成する樹脂2(ポリプロピレン)中において、強化繊維4(ガラス繊維)の周囲に分散相を形成する樹脂3(ナイロン66)及び導電性物質5(カーボン繊維)が集まっていることがわかる。
ここで、導電性物質5が「分散相(連結相)中に実質的に存在する」とは、導電性物質5がマトリックス相を形成する樹脂2中に比較し、明らかに、分散相を形成する樹脂3中に多量に存在していることを意味する。
また、「強化繊維4の周囲が分散相を形成する樹脂3によって実質的に被覆され」とは、強化繊維4の周囲が完全に分散相を形成する樹脂3で覆われている必要は無いが、その大部分が覆われており、有意に熱変形温度(加熱撓み温度)を向上させることのできる程度に覆われていることを意味する。
本発明の組成物において、「分散相を形成する樹脂3によって被覆された強化繊維4が互いに連結して梁構造を形成」することができる理由については、特許文献1及び2に詳細に記載されているが、本明細書中でも簡単に説明する。分散相を形成する樹脂3の、マトリックス相を形成する樹脂2に対する相溶性が低い場合、系が不安定で相分離が進行する。相分離が起こると、分散相を形成する樹脂3は、マトリックス相を形成する樹脂2に比べてガラス繊維に対する親和性が高いため、ガラス繊維表面に移行してガラス繊維を覆い、最後に分散相を形成する樹脂3が、ガラス繊維を介して連結した構造を形成する。(これら二種類の樹脂は、ガラス繊維が存在しない場合、相分離が進行し、互いに会合して大きな分散径(ドメイン径)を有する構造体を形成するが、ガラス繊維が存在する場合には、分散相を形成する樹脂3の多くが、ガラス繊維表面に集まるため、マトリックス相を形成する樹脂2中に残存する分散相を形成する樹脂3の量が大幅に少なくなり、会合し得なくなり、上記のようなガラス繊維を介して連結した構造を形成するのである。)このことから、分散相を形成する樹脂3は、マトリックス相を形成する樹脂2と非相溶であり、且つ、ガラス繊維との親和性が高いものが好ましいと言える。
強化繊維4と分散相を形成する樹脂3の連結方法として以下の様なメカニズムが考えられる。即ち、強化繊維4はマトリックス相を形成する結晶性樹脂2との親和性が乏しく、分散相を形成する樹脂3と親和性が高いので、強化繊維4の周辺に分散相を形成する樹脂3が選択的に集まり、隣接する強化繊維4間の隙間に分散相を形成する樹脂3が入り込む場合、又は、分散相を形成する樹脂3の周辺に強化繊維4が集合して互いに連結する場合である。いずれの場合においても、分散している強化繊維4同士が、分散相を形成する樹脂3を連結点として結合し梁構造を形成し、導電性耐熱性樹脂組成物1全体を補強し、熱変形温度(加熱撓み温度)を向上させる。即ち、本発明の組成物では、分散相を形成する樹脂3を強化繊維4の径より大きな分散粒子径になるように分散させ、好ましくは、大きな相になるように分散させ、その分散相(連結相)3を強化繊維4で繋ぐ、即ち梁の構造を形成させることにより、本特性が発揮される。そのとき、強化繊維4は、マトリックス相を形成する樹脂2よりも分散層を構成する樹脂3との接着性が高い。
また、少量の導電性物質5が、実質的に分散相を形成する樹脂3中に存在することによって、得られる組成物及び成形体に導電性を付与することができる。導電性物質5が、実質的に分散相を形成する樹脂3中に存在することができる理由は、次のように考えられる。すなわち、マトリックス相を形成する樹脂2に対し、分散相を形成する樹脂3の方が極性が高く、導電性物質との親和性に優れるためである。
また、少量の導電性物質5の配合で、本発明の組成物に高い導電性を付与できる理由は、次のように考えられる。すなわち、少量の分散相の中に導電性物質が固定されるため、分散相自体は多量の導電性物質を含むことになり、良好な導電性を示し、且つ、この分散相がガラス繊維を介して連結されるため、全体としても高い導電性を示すと解される。
導電性物質5を添加することによって、本発明の組成物又はそれからなる成形体が、同一量の導電性物質5がマトリックスを形成する樹脂2に分散されている場合の1/10以下の表面固有抵抗又は体積固有抵抗を有することが好ましく、より好ましくは1/100以下、さらに好ましくは1/10000以下、特に好ましくは1/100000以下である。
以下、上述した本発明の組成物の各構成成分について説明する。
(A)マトリックス相を形成する樹脂
本発明におけるマトリックス相を形成する樹脂は、融点Maを有する結晶性樹脂又はガラス転移点Taを有する非晶性樹脂である。
(A)マトリックス相を形成する樹脂
本発明におけるマトリックス相を形成する樹脂は、融点Maを有する結晶性樹脂又はガラス転移点Taを有する非晶性樹脂である。
結晶性樹脂としては、融点を有する結晶性熱可塑性樹脂であれば特に制限されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が挙げられる。これらの中で好ましくは、ポリプロピレン系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂等が挙げられ、より好ましくは、ポリプロピレン系樹脂である。
非晶性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)等の非晶性樹脂が挙げられる。これらの中で、好ましくは、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂である。
(B)分散相を形成する樹脂
分散相を形成する樹脂は、融点Mbを有する結晶性樹脂又はガラス転移点Tbを有する非晶性樹脂であり、マトリックス相を形成する樹脂と比較して極性が高く、ガラス繊維との親和性に優れるものである。
分散相を形成する樹脂(B)である、結晶性樹脂としては、ポリアミド樹脂(PA)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)等が揚げられ及び非晶性樹脂としては、酸グラフト変性ポリフェニレンオキシド等が挙げられる。
分散相を形成する樹脂は、融点Mbを有する結晶性樹脂又はガラス転移点Tbを有する非晶性樹脂であり、マトリックス相を形成する樹脂と比較して極性が高く、ガラス繊維との親和性に優れるものである。
分散相を形成する樹脂(B)である、結晶性樹脂としては、ポリアミド樹脂(PA)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)等が揚げられ及び非晶性樹脂としては、酸グラフト変性ポリフェニレンオキシド等が挙げられる。
分散相を形成する樹脂(B)は、マトリックス相を形成する樹脂(A)が結晶性樹脂である場合はその融点Ma又は非晶性樹脂の場合はそのガラス転移点Taよりも高い融点Mb又はガラス転移点Tbを有することが好ましい。融点Mb又はガラス転移点Tbが、マトリックス相を形成する樹脂(A)の融点Ma又はガラス転移点Taよりも40℃、より好ましくは60℃高いことが好ましい。マトリックス相を形成する樹脂(A)の融点Ma又はガラス転移点Taより分散相を形成する樹脂(B)の融点Mb又はガラス点移転Tbが低いと、マトリックス相を形成する樹脂(A)の熱変形温度(加熱撓み温度)を向上させる効果が十分得られない恐れがある。
(C)強化繊維
強化繊維(C)は、有機繊維、無機繊維のいずれを用いてもよい。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セラミック繊維等が挙げられる。この中で好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維であり、特にガラス繊維が好ましい。組成物中の強化繊維(C)の平均繊維長は、0.3mm以上、好ましくは0.5mm以上である。平均繊維長が0.3mm未満では効果的に梁構造が形成されにくくなる。組成物中の強化繊維(C)の直径(繊維径)は、好ましくは3〜30μm、より好ましくは6〜18μmである。直径が3μm未満では、分散性が悪くなり、30μmより大きい場合は、強度の低下が発生する場合がある。
強化繊維(C)は、有機繊維、無機繊維のいずれを用いてもよい。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セラミック繊維等が挙げられる。この中で好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維であり、特にガラス繊維が好ましい。組成物中の強化繊維(C)の平均繊維長は、0.3mm以上、好ましくは0.5mm以上である。平均繊維長が0.3mm未満では効果的に梁構造が形成されにくくなる。組成物中の強化繊維(C)の直径(繊維径)は、好ましくは3〜30μm、より好ましくは6〜18μmである。直径が3μm未満では、分散性が悪くなり、30μmより大きい場合は、強度の低下が発生する場合がある。
強化繊維(C)は分散相を形成する樹脂(B)との親和性を向上させるため、表面処理を施すことが好ましい。この処理剤としては、例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系、ボラン系等のカップリング剤がある。特にアミノシラン処理、エポキシシラン処理等の表面処理が好ましい。表面処理剤を選択するときは、マトリックス相を形成する樹脂(A)より分散相を形成する樹脂(B)に対してより高い接着性(親和性)を示す表面処理剤を選択する。例えば、マトリックス相を形成する樹脂(A)が分散相を形成する樹脂(B)より極性が低い場合は、極性の高い(親水性)表面処理剤を選択する。具体的には、マトリックス相を形成する樹脂(A)がポリプロピレン系樹脂(結晶性熱可塑性樹脂)のように極性が低い場合、マトリックス相を形成する樹脂(A)に親和性が低い親水性表面処理剤が好ましい。
(D)導電性物質
導電性物質(D)としては、例えば、カーボン繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、金属粉、金属繊維、表面メッキガラス繊維、表面メッキ粉体等が揚げられる。
導電性物質(D)としては、例えば、カーボン繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、金属粉、金属繊維、表面メッキガラス繊維、表面メッキ粉体等が揚げられる。
本発明の組成物における上記マトリックス相を形成する樹脂(A)と分散相を形成する樹脂(B)の配合比率は、マトリックス相を形成する樹脂(A)と分散相を形成する樹脂(B)の総和を100重量%としたとき、分散相を形成する樹脂(B)の比率が好ましくは50重量%未満、さらに好ましくは、5〜40重量%である。分散相を形成する樹脂(B)の比率が5重量%未満になると梁構造を形成しなくなり、50重量%を超えると、マトリックス相と分散相の相反転が生じると共に層剥離が発生する恐れがある。
本発明の組成物における強化繊維(C)の配合量は好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜45重量%である。配合量が10重量%未満では、強化繊維(C)の補強効果が現れず、また梁構造が形成されにくくなる。また、60重量%を超えると、流動性や外観が悪化する恐れがある。
本発明の組成物における導電性物質(D)の配合量は、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。配合量が0.1質量%未満では、得られる組成物に導電性が現れず、10質量%を超えると、流れが悪くなったり、コストが高くなったりして実用的でなくなる。
尚、上記マトリックス相を形成する樹脂(A)及び分散相を形成する樹脂(B)は、各熱可塑性樹脂の特性を損なわない範囲において、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、エラストマー等の各種添加剤を含んでいてもよい。
本発明の組成物の熱変形温度(加熱撓み温度)は、マトリックス相を形成する樹脂(A)が結晶性樹脂である場合、その融点Maより高く、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは60℃以上高い。ただし、好ましくは、150℃を超えない。20℃未満の熱変形温度(加熱撓み温度)の改善では実用上有為性が小さく、150℃を超えると、マトリックス相を形成する結晶性樹脂(A)より著しく高融点の分散相を形成する樹脂(B)を用いる必要があるため、マトリックス相を形成する結晶性樹脂(A)の熱分解等が起こり易くなり好ましくない。
また、本発明の組成物の熱変形温度(加熱撓み温度)は、マトリックス相を形成する樹脂(A)が非晶性樹脂である場合、そのガラス転移点Taより高く、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上高い。ただし、好ましくは、200℃を超えない。30℃未満の熱変形温度(加熱撓み温度)の改善では実用上有為性が小さく、200℃を超えると、マトリックス相を形成する非晶性樹脂(A)より著しく高いガラス転移点の分散相を形成する樹脂(B)を用いる必要があるため、マトリックス相を形成する非晶性樹脂(A)の熱分解等が起こり易くなり好ましくない。
次に、本発明の導電性耐熱性樹脂組成物の製造方法(以下、本発明の製造方法ということがある)について説明する。本発明の製造方法は、上記分散相を形成する樹脂(B)と上記導電性物質(D)とを予めコンパウンドした後、上記マトリックス相を形成する樹脂(A)、上記強化繊維(C)及び該コンパウンド品を溶融混練することを特徴とする。
本発明の組成物は、マトリックス相を形成する樹脂(A)と分散相を形成する樹脂(B)を溶融ブレンドした場合、分散相を形成する樹脂(B)のドメイン径が大きくなるような不安定系となり、また、好ましくは、分散相を形成する樹脂(B)と強化繊維(C)の界面せん断強度Fbが、マトリックス相を形成する樹脂(A)と強化繊維(C)の界面せん断強度Faに比べて、大きくなるようにマトリックス相を形成する樹脂(A)、分散相を形成する樹脂(B)及び繊維(C)を選定する。分散相を形成する樹脂(B)のドメイン径を大きくするためには、例えば、マトリックス相を形成する樹脂(A)、分散相を形成する樹脂(B)及び強化繊維(C)を混合するときに相溶化剤を使用しないことが好ましい。相溶化剤を使用すると、分散相を形成する樹脂(B)のドメイン径が小さくなり系が安定化するため、強化繊維(C)に分散相を形成する樹脂(B)が選択的に移行しなくなり、梁構造が形成しにくくなるため熱変形温度(加熱撓み温度)の向上が期待できなくなる。
また、分散相を形成する樹脂(B)と強化繊維(C)の界面せん断強度Fbを、マトリックス相を形成する樹脂(A)に比べて、大きくするためには、強化繊維(C)を樹脂(A)より分散相を形成する樹脂(B)に対して高い接着性(親和性)を示す表面処理剤で処理することが好ましい。表面処理剤としては、前述した通りである。
本発明の製造方法においては、マトリックス相を形成する樹脂(A)として、分散相を形成する樹脂(B)と非相溶であり、かつ、分散相を形成する樹脂(B)よりも、強化繊維(C)への親和性が低い樹脂を用いることが好ましい。
上記に説明したような本発明の組成物は、従来考えられなかったような、構成成分であるマトリックス相を形成する樹脂(A)の融点Ma又はガラス転移点Taよりはるかに高い熱変形温度(加熱撓み温度)を有する。従って、マトリックス相を形成する樹脂(A)の使用温度範囲を大幅に拡大できる。
次に、本発明の導電性耐熱性樹脂組成物からなる成形体(以下、本発明の成形体ということがある)について説明する。
本発明の成形体は、上記本発明の組成物を成形してなり、成形方法は特に制限されず、成形体に応じて適宜選択すればよい。好ましくは射出成形である。
本発明の成形体は、上記本発明の組成物を成形してなり、成形方法は特に制限されず、成形体に応じて適宜選択すればよい。好ましくは射出成形である。
本発明の成形体は、上記本発明の組成物からなっているため、本発明の組成物と同様の物性を有している。すなわち、マトリックス相を形成する樹脂(A)の融点Ma又はガラス転移点Taよりはるかに高い熱変形温度(加熱撓み温度)を有すると同時に、高い導電性を有する。
本発明によれば、少量の導電性物質(D)の添加で、高い導電性を得ることができるため、安価に導電性耐熱性樹脂組成物及びそれからなる成形体を製造することができる。
上記物性を有する本発明の成形体は、具体的には、例えば、コンピューター、OA機器、VTR、TV、家庭用電気機器のハウジング、カバー、内部機構部品、プリンターシャーシ、コネクター、温調付き便座、便蓋用材、自動車、自動二輪エンジン近傍のカバー、機構部品、厨房電気器具等の用途に用いることができる。
以下、実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
ナイロン6(宇部興産社製、UBEナイロン6 1013B、融点231℃;以下、PA6という)80質量%とカーボン繊維(三菱レーヨン社製、商品名:パイロフィルTR06U、平均繊維長:6mm;以下、CFという)20質量%を用い、二軸混練機にて溶融混練しペレットAを得た。更に得られたペレットA25質量%と非晶性ポリスチレン(出光石油化学社製、出光ポリスチHH−30、ガラス転移点=100℃;以下、PSという)45質量%とアミノシラン処理されたガラス繊維(チョップドストランド)(旭ファイバーガラス社製、FT−17、繊維径=10μm、平均繊維長=3mm;以下、GF1という)30質量%を二軸混練機で溶融混練した。ペレットAとPSのみをホッパーから供給し、250℃で混練溶融させた後、GF1を混練機のサイドより供給し、混練を行ないペレットBを得た。
得られたペレットBを、100℃で乾燥した後、射出成形機を使用して、温度250℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片の特性評価結果を表1に示す。
実施例1
ナイロン6(宇部興産社製、UBEナイロン6 1013B、融点231℃;以下、PA6という)80質量%とカーボン繊維(三菱レーヨン社製、商品名:パイロフィルTR06U、平均繊維長:6mm;以下、CFという)20質量%を用い、二軸混練機にて溶融混練しペレットAを得た。更に得られたペレットA25質量%と非晶性ポリスチレン(出光石油化学社製、出光ポリスチHH−30、ガラス転移点=100℃;以下、PSという)45質量%とアミノシラン処理されたガラス繊維(チョップドストランド)(旭ファイバーガラス社製、FT−17、繊維径=10μm、平均繊維長=3mm;以下、GF1という)30質量%を二軸混練機で溶融混練した。ペレットAとPSのみをホッパーから供給し、250℃で混練溶融させた後、GF1を混練機のサイドより供給し、混練を行ないペレットBを得た。
得られたペレットBを、100℃で乾燥した後、射出成形機を使用して、温度250℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片の特性評価結果を表1に示す。
試験片の特性評価は以下のように行った。
(a)曲げ弾性率(MPa)
JIS K−7203に準拠した。
(b)加熱撓み温度(低荷重)(℃)
JIS K−7207に準拠した。荷重はB法(4.6kgf/cm2)を用いた。
(c)表面固有抵抗(Ω)
JIS K−6911に準拠した。
(a)曲げ弾性率(MPa)
JIS K−7203に準拠した。
(b)加熱撓み温度(低荷重)(℃)
JIS K−7207に準拠した。荷重はB法(4.6kgf/cm2)を用いた。
(c)表面固有抵抗(Ω)
JIS K−6911に準拠した。
比較例1
実施例1で用いたペレットAを用いず、PS65質量%、CF5質量%、GF1 30質量%を用いた。PSとCFをホッパーに供給、GF1は混練機の途中より供給し、230℃で溶融混練を行いペレットを得た。
得られたペレットは実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1で用いたペレットAを用いず、PS65質量%、CF5質量%、GF1 30質量%を用いた。PSとCFをホッパーに供給、GF1は混練機の途中より供給し、230℃で溶融混練を行いペレットを得た。
得られたペレットは実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
比較例2
実施例1において、GF1を使用せず、ペレットA25質量%とPS75質量%を溶融混練してペレットを得た。
得られたペレットは実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、GF1を使用せず、ペレットA25質量%とPS75質量%を溶融混練してペレットを得た。
得られたペレットは実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
比較例3
PA6 95質量%とCF5質量%を用い、二軸混練機にて250℃で溶融混練を行いペレットを得た。
得られたペレットは実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
PA6 95質量%とCF5質量%を用い、二軸混練機にて250℃で溶融混練を行いペレットを得た。
得られたペレットは実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
比較例4
実施例1において、GF1をミルドファイバー(旭ファイバーグラス社製、商品名:MF06JB1−20、平均繊維長:0.1mm;以下、MFという)に変えた以外は、同様にしてペレットを得た。
得られたペレットは実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、GF1をミルドファイバー(旭ファイバーグラス社製、商品名:MF06JB1−20、平均繊維長:0.1mm;以下、MFという)に変えた以外は、同様にしてペレットを得た。
得られたペレットは実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2
ナイロン66(宇部興産社製、UBEナイロン66 2020B、融点=264℃;以下、PA66という)70質量%とCF30質量%を用い、二軸混練機にて溶融混練しペレットCを得た。更に得られたペレットC10質量%とポリプロピレン(出光石油化学社製、出光ポリプロJ−785H、融点=165℃;以下、PP1という)50質量%とGF1 40質量%を二軸混練機で溶融混練した。ペレットC及びPP1のみをホッパーから供給し、280℃で混練溶融させた後、GF1を混練機のサイドより供給し、混練を行ないペレットDを得た。
得られたペレットDを、100℃で乾燥した後、射出成形機を使用して、温度280℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片の評価結果を表1に示す。
ナイロン66(宇部興産社製、UBEナイロン66 2020B、融点=264℃;以下、PA66という)70質量%とCF30質量%を用い、二軸混練機にて溶融混練しペレットCを得た。更に得られたペレットC10質量%とポリプロピレン(出光石油化学社製、出光ポリプロJ−785H、融点=165℃;以下、PP1という)50質量%とGF1 40質量%を二軸混練機で溶融混練した。ペレットC及びPP1のみをホッパーから供給し、280℃で混練溶融させた後、GF1を混練機のサイドより供給し、混練を行ないペレットDを得た。
得られたペレットDを、100℃で乾燥した後、射出成形機を使用して、温度280℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片の評価結果を表1に示す。
比較例5
PA66 7質量%とCF1 3質量%とPP1 47質量%とマレイン酸変性ポリプロピレン(出光石油化学社製、出光ポリタックH−1000P、融点=158℃;以下、変MAPPという)3質量%とGF1 40質量%を用い、二軸混練機にて280℃で溶融混練することによりペレットを得た。GF以外のものをホッパーに供給し、またGFはサイドフィードを行なった。
得られたペレットを、100℃で乾燥した後、射出成形機を使用して、温度280℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片の評価結果を表1に示す。
PA66 7質量%とCF1 3質量%とPP1 47質量%とマレイン酸変性ポリプロピレン(出光石油化学社製、出光ポリタックH−1000P、融点=158℃;以下、変MAPPという)3質量%とGF1 40質量%を用い、二軸混練機にて280℃で溶融混練することによりペレットを得た。GF以外のものをホッパーに供給し、またGFはサイドフィードを行なった。
得られたペレットを、100℃で乾燥した後、射出成形機を使用して、温度280℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片の評価結果を表1に示す。
比較例6
ポリプロピレン(出光石油化学社製、出光ポリプロJ−3003GV、融点=167℃;以下、PP2という)90質量%とCF10質量%を用い、二軸混練機にて200℃で溶融混練を行いペレットを得た。
得られたペレットは実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
ポリプロピレン(出光石油化学社製、出光ポリプロJ−3003GV、融点=167℃;以下、PP2という)90質量%とCF10質量%を用い、二軸混練機にて200℃で溶融混練を行いペレットを得た。
得られたペレットは実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例3
PA66 90質量%とカーボンナノファイバー(昭和電工社製、VGCS;以下、CNFという)10質量%を用い、二軸混練機にて溶融混練しペレットEを得た。更に得られたペレットE20質量%とポリカーボネート(出光石油化学社製、出光タフロンA1900、ガラス転移点=151℃;以下、PCという)50質量%とガラスファイバー(チョップドストランド)(旭ファイバーグラス社製、MA409C、平均繊維長=3mm;以下、GF2という)30質量%を二軸混練機で溶融混練した。ペレットE及びPCのみをホッパーから供給し、280℃で混練溶融させた後、GF2を混練機のサイドより供給し、混練を行ないペレットFを得た。
得られたペレットFを、120℃で乾燥した後、射出成形機を使用して、温度280℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片の評価結果を表1に示す。
PA66 90質量%とカーボンナノファイバー(昭和電工社製、VGCS;以下、CNFという)10質量%を用い、二軸混練機にて溶融混練しペレットEを得た。更に得られたペレットE20質量%とポリカーボネート(出光石油化学社製、出光タフロンA1900、ガラス転移点=151℃;以下、PCという)50質量%とガラスファイバー(チョップドストランド)(旭ファイバーグラス社製、MA409C、平均繊維長=3mm;以下、GF2という)30質量%を二軸混練機で溶融混練した。ペレットE及びPCのみをホッパーから供給し、280℃で混練溶融させた後、GF2を混練機のサイドより供給し、混練を行ないペレットFを得た。
得られたペレットFを、120℃で乾燥した後、射出成形機を使用して、温度280℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片の評価結果を表1に示す。
比較例7
PC65質量%とCNF5質量%とGF2 30質量%を二軸混練機で溶融混練した。PCとCNFをホッパーから供給し、GF2はサイドより供給した。
得られたペレットを、120℃で乾燥した後、射出成形機を使用して、温度280℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片の評価結果を表1に示す。
PC65質量%とCNF5質量%とGF2 30質量%を二軸混練機で溶融混練した。PCとCNFをホッパーから供給し、GF2はサイドより供給した。
得られたペレットを、120℃で乾燥した後、射出成形機を使用して、温度280℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片の評価結果を表1に示す。
表1中の記号は、以下のとおりである。
(A):融点Ma又はガラス転移点Taを有する、マトリックス相を形成する樹脂
(B):融点Mb又はガラス転移点Tbを有する、分散相を形成する樹脂
(C):強化繊維
(D):導電性物質
PS:非結晶性ポリスチレン(出光石油化学社製、出光ポリスチHH−30;ガラス転移点=100℃)
PA6:ナイロン6(宇部興産社製、UBEナイロン6 1013B;融点=231℃)
GF1:ガラス繊維(チョップドストランド)(旭ファイバーグラス社製、FT−17、平均繊維長=3mm)
CF:カーボン繊維(三菱レーヨン社製、商品名:パイロフィル、TR06U)
MF:ミルドファイバー(旭ファイバーグラス社製、商品名:グラスロンMF、MF06JB1−20)
PP1:ポリプロピレン(出光石油化学社製、出光ポリプロJ−785H、融点=165℃)
PA66:ナイロン66(宇部興産社製、UBEナイロン66 2020B、融点=264℃)
MAPP:マレイン酸変性ポリプロピレン(出光石油化学社製、出光ポリタックH−1000P、融点=158℃)
PP2:ポリプロピレン(出光石油化学社製、出光ポリプロJ−3003GV、融点=167℃)
PC:ポリカーボネート(出光石油化学社製、出光タフロンA1900、ガラス転移点=151℃)
GF2:ガラス繊維(チョップドストランド)(旭ファイバーグラス社製、MA409C、平均繊維長=3mm)
CNF:カーボンナノファイバー(昭和電工社製、VGCS)
(A):融点Ma又はガラス転移点Taを有する、マトリックス相を形成する樹脂
(B):融点Mb又はガラス転移点Tbを有する、分散相を形成する樹脂
(C):強化繊維
(D):導電性物質
PS:非結晶性ポリスチレン(出光石油化学社製、出光ポリスチHH−30;ガラス転移点=100℃)
PA6:ナイロン6(宇部興産社製、UBEナイロン6 1013B;融点=231℃)
GF1:ガラス繊維(チョップドストランド)(旭ファイバーグラス社製、FT−17、平均繊維長=3mm)
CF:カーボン繊維(三菱レーヨン社製、商品名:パイロフィル、TR06U)
MF:ミルドファイバー(旭ファイバーグラス社製、商品名:グラスロンMF、MF06JB1−20)
PP1:ポリプロピレン(出光石油化学社製、出光ポリプロJ−785H、融点=165℃)
PA66:ナイロン66(宇部興産社製、UBEナイロン66 2020B、融点=264℃)
MAPP:マレイン酸変性ポリプロピレン(出光石油化学社製、出光ポリタックH−1000P、融点=158℃)
PP2:ポリプロピレン(出光石油化学社製、出光ポリプロJ−3003GV、融点=167℃)
PC:ポリカーボネート(出光石油化学社製、出光タフロンA1900、ガラス転移点=151℃)
GF2:ガラス繊維(チョップドストランド)(旭ファイバーグラス社製、MA409C、平均繊維長=3mm)
CNF:カーボンナノファイバー(昭和電工社製、VGCS)
分散相を形成する樹脂(B)を用いていない比較例1及び7では、梁構造が形成されないために、曲げ弾性率、加熱撓み温度も向上せず、導電性物質(D)を添加していても表面固有抵抗は飛躍的に低くはなっていない。
強化繊維(C)を用いていない比較例2では、当然ながら曲げ弾性率が低く、加熱撓み温度も、用いたマトリックス相を形成する樹脂(A)に依存していることがわかる。さらに、表面固有抵抗も高い(導電性が低い)。
マトリックス相を形成する樹脂(A)に導電性物質(D)を加えただけの比較例3及び6では、当然ながら曲げ弾性率が低く、加熱撓み温度も、用いたマトリックス相を形成する樹脂(A)に依存している。表面固有抵抗については、比較例3の倍量を用いた比較例6の方が低くなってはいることは当然のことであるが、特に飛躍的に導電性が向上しているとは言えない。
これに対し、マトリックス相を形成する樹脂(A)、強化繊維(C)の周囲を実質的に覆っている分散相を形成する樹脂(B)、分散相を形成する樹脂(B)中に実質的に存在する導電性物質(D)からなる、梁構造を有する実施例1〜3の成形体は、曲げ弾性率及び加熱撓み温度が高く、表面固有抵抗が小さい(導電性が高い)ことがわかる。
強化繊維として、平均繊維長が0.1mmと小さいミルドファイバーを用いた比較例4では、曲げ弾性率が低く、表面抵抗が大きい(導電性が低い)。
本発明によれば、少量の導電性物質の添加で、高い導電性を有する樹脂組成物及び成形体を得ることが可能となる。更に、マトリックス相を形成する樹脂の融点又はガラス転移温度を超える非常に高い耐熱性も同時に具備する樹脂組成物及び成形体が得られ、高価な導電性物質や耐熱性樹脂の使用量を大幅に削減でき、非常に有用な工業材料を安価に提供できる。
本発明の成形体は、具体的には、例えば、コンピューター、OA機器、VTR、TV、家庭用電気機器のハウジング、カバー、内部機構部品、プリンターシャーシ、コネクター、温調付き便座、便蓋用材、自動車、自動二輪エンジン近傍のカバー、機構部品、厨房電気器具等の用途に用いることができる。
1 導電性耐熱性樹脂組成物
2 マトリックス相を形成する樹脂
3 分散相を形成する樹脂
4 強化繊維
5 導電性物質
2 マトリックス相を形成する樹脂
3 分散相を形成する樹脂
4 強化繊維
5 導電性物質
Claims (9)
- (A)マトリックス相を形成する融点Maを有する結晶性樹脂又はガラス転移点Taを有する非晶性樹脂(以下、マトリックス相を形成する樹脂(A)という)、
(B)分散相(連結相)を形成する融点Mbを有する結晶性樹脂又はガラス転移温度Tbを有する非晶性樹脂(以下、分散相を形成する樹脂(B)という)、
(C)平均繊維長が0.3mm以上の強化繊維、及び
(D)導電性物質
を含有する導電性耐熱性樹脂組成物であって、
該強化繊維(C)の周囲は、該分散相を形成する樹脂(B)によって実質的に被覆され、該分散相を形成する樹脂(B)によって被覆された強化繊維(C)が互いに連結して梁構造を形成しており、かつ、
該導電性物質(D)は、実質的に該分散相を形成する樹脂(B)中に存在する
導電性耐熱性樹脂組成物。 - 前記導電性物質(D)を0.1〜10質量%含有する請求項1に記載の導電性耐熱性樹脂組成物。
- 前記マトリックス相を形成する樹脂(A)が結晶性樹脂であり、当該導電性耐熱性樹脂組成物からなる成形体の加熱撓み温度(低荷重)が、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)の融点Maよりも20℃以上高い、請求項1又は2に記載の導電性耐熱性樹脂組成物。
- 前記マトリックス相を形成する樹脂(A)が非晶性樹脂であり、当該導電性耐熱性樹脂組成物からなる成形体の加熱撓み温度(低荷重)が、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)のガラス転移温度Taよりも30℃以上高い、請求項1又は2に記載の導電性耐熱性樹脂組成物。
- 前記強化繊維(C)が、ガラス繊維、金属繊維及びカーボン繊維からなる群から選択される1種以上の繊維である請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性耐熱性樹脂組成物。
- 同一量の導電性物質(D)がマトリックスを形成する樹脂(A)に分散されている場合の1/10以下の表面固有抵抗又は体積固有抵抗を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性耐熱性樹脂組成物。
- 前記分散相を形成する樹脂(B)と前記導電性物質(D)とを予めコンパウンドした後、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)、前記強化繊維(C)及び該コンパウンド品を溶融混練してなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性耐熱性樹脂組成物の製造方法。
- 前記分散相を形成する樹脂(B)として、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)と非相溶であり、かつ、前記マトリックス相を形成する樹脂(A)よりも、前記強化繊維(C)への親和性が高い樹脂を用いる、請求項7に記載の導電性耐熱性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性耐熱性樹脂組成物を成形してなる成形体。
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JP2007154157A (ja) * | 2005-11-11 | 2007-06-21 | Nissin Kogyo Co Ltd | 熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法 |
JP2007217633A (ja) * | 2006-02-20 | 2007-08-30 | Prime Polymer:Kk | 成形体及びその製造方法 |
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WO2012124450A1 (ja) * | 2011-03-17 | 2012-09-20 | 東レ株式会社 | プリプレグ、プリプレグの製造方法および炭素繊維強化複合材料 |
-
2004
- 2004-04-30 JP JP2004135275A patent/JP2005314586A/ja active Pending
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