JP2005314159A - 情報記録媒体用ガラス基板およびその製造方法並びに情報記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

情報記録媒体用ガラス基板およびその製造方法並びに情報記録媒体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高耐熱性と、急激な温度変化に晒された時であっても割れない高耐熱衝撃性を有するとともに、加傷に対する強度が高い情報記録媒体用ガラス基板を提供する。
【解決手段】SiO、Al、ZrO、CaO、BaO、LiO及びNaOを必須成分とし、モル%表示で、SiO 50〜70%、Al 1〜10%、ZrO 0%を超え12%以下、CaO 2〜24%、BaO 0%を超え15%以下、MgO 0〜10%、SrO 0〜15%、(ただし、CaO+BaO+MgO+SrO 10%を超え25%未満)LiO 0%を超え6%以下、NaO 0%を超え10%以下、KO 0〜5%、TiO 0〜10%、を含むガラスからなることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ハードディスク、特に磁気記録方式のハードディスクのような情報記録媒体に用いられる情報記録媒体用ガラス基板とその製造方法、ならびに該情報記録媒体用ガラス基板を用いた情報記録媒体とその製造方法に関する。
現在、ハードディスクなどの情報記録媒体の基板材料はアルミニウムとガラスが主流になっている。ガラス基板としては特許文献1に記載されているように、ガラスを化学強化したものが用いられ、得られる情報記録媒体に十分な信頼性が付与されている。
ところで近年、上記ハードディスクなどの情報記録媒体の製造において、基板上に成膜する膜に新規な特性を付与するため、例えば垂直磁気記録方式の膜構造を得るために、基板を高温で熱処理する必要性が出てきた。代表的な基板材料であるアルミニウムは高温に晒すと変形してハードディスクに求められる高い平坦性が損なわれるという問題があるため、このような使用には適さない。一方ガラスの場合も、高温処理に対しても十分な平坦性が維持されるよう、高い耐熱性(高いガラス転移温度)が求められることになっている。
特許第3412804号公報
しかし、ガラス基板を構成するガラスの耐熱性を高めるだけでは、ガラス基板が急激な温度変化に晒された時に熱衝撃によって破損するおそれがある。
すなわち、高いガラス転移温度を有するガラスからなるガラス基板であっても、例えば、高温に加熱した状態から常温付近まで急冷すると割れが生じる場合がある。
また、ガラス基板としては加傷に対する強度が高く、製造工程において割れることのない信頼性の高い基板が求められている。
本発明は、上記課題を解決すべく、高耐熱性と、急激な温度変化に晒された時であっても割れることがない高耐熱衝撃性を有するとともに、加傷に対する強度が高い情報記録媒体用ガラス基板とその製造方法、および該ガラス基板を備えた磁気ディスクなどの情報記録媒体とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、少量のLiOを含有するとともに特定の組成を有するガラスからなるガラス基板を用いることにより、上記目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)SiO、Al、ZrO、CaO、BaO、LiO及びNaOを必須成分とし、モル%表示で、
SiO 50〜70%、
Al 1〜10%、
ZrO 0%を超え12%以下、
CaO 2〜24%、
BaO 0%を超え15%以下、
MgO 0〜10%、
SrO 0〜15%、
(ただし、CaO+BaO+MgO+SrO 10%を超え25%未満)
LiO 0%を超え6%以下、
NaO 0%を超え10%以下、
O 0〜5%、
TiO 0〜10%、
を含むガラスからなることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板、
(2)170℃に加熱した状態から20℃に保たれた水中に導入、浸漬して急冷したときに割れない耐熱衝撃性を有する上記(1)に記載の情報記録媒体用ガラス基板、
(3)ガラス転移温度が560℃以上であるガラスからなる上記(1)または(2)に記載の情報記録媒体用ガラス基板、
(4)100〜300℃における平均線膨張係数が70×10−7/K以上であるガラスからなる上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板、
(5)化学強化されている上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板、
(6)垂直記録方式の情報記録媒体用である上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板、
(7)SiO、Al、ZrO、CaO、BaO、LiO及びNaOを必須成分とし、モル%表示で、
SiO 50〜70%、
Al 1〜10%、
ZrO 0%を超え12%以下、
CaO 2〜24%、
BaO 0%を超え15%以下、
MgO 0〜10%、
SrO 0〜15%、
(ただし、CaO+BaO+MgO+SrO 10%を超え25%未満)
LiO 0%を超え6%以下、
NaO 0%を超え10%以下、
O 0〜5%、
TiO 0〜10%、
を含む熔融ガラスを成形して板状ガラスを得る工程を含むことを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法、
(8)上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板上に少なくとも情報記録層を有することを特徴とする情報記録媒体、および
(9)上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板上に情報記録層を形成させる工程を含むことを特徴とする情報記録媒体の製造方法
を提供するものである。
本発明によれば、高耐熱性と高耐熱衝撃性を有するとともに、加傷に対する強度が高い情報記録媒体用ガラス基板を得ることができ、この基板を用いることにより、ガラス基板の割れを生ずることなく、高温下においても平坦、平滑な基板表面を維持し、垂直磁気記録方式の磁気ディスク等を高い生産性で生産することが可能となる。
本発明は、情報記録媒体用ガラス基板とその製造方法、ならびに該情報記録媒体用ガラス基板を用いた情報記録媒体とその製造方法に関するものであり、以下、これらについて順次説明する。
I.情報記録媒体用ガラス基板
本発明の情報記録媒体用ガラス基板(以下、適宜「本発明のガラス基板」という)は、ハードディスクなどの磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光ディスクなどの光記録媒体といった情報記録媒体のガラス基板として供される。
〔ガラス成分および組成〕
先ず、本発明のガラス基板を構成するガラス成分および組成について説明する。なお、以下、特記しない限り各成分の導入量や複数成分の合計量はモル%により表示するものとする。
本発明のガラス基板は、
SiO、Al、ZrO、CaO、BaO、LiO及びNaOを必須成分とし、モル%表示で、
SiO 50〜70%、
Al 1〜10%、
ZrO 0%を超え12%以下、
CaO 2〜24%、
BaO 0%を超え15%以下、
MgO 0〜10%、
SrO 0〜15%、
(ただし、CaO+BaO+MgO+SrO 10%を超え25%未満)
LiO 0%を超え6%以下、
NaO 0%を超え10%以下、
O 0〜5%、
TiO 0〜10%、
を含むガラスからなることを特徴とする。
SiOは、ガラスの網目構造を形成する主成分であり、ガラスの安定性向上、ガラス転移温度の上昇、化学的耐久性の向上に寄与する必須成分である。SiOの量が過少の場合、上記性質が損なわれるため、50%以上の導入が必要であり、60%以上導入することが好ましい。一方、SiOの量が過剰になるとヤング率やガラスの熔解性が低下するため、その導入量を70%以下、好ましくは67%以下にする。
Alは、ガラス転移温度の上昇、耐久性の向上ならびにガラス構造の安定化、剛性度の向上に寄与する必須成分であり、ガラスからのアルカリ溶出を抑制する機能を有する。上記効果を得る上から、Alの導入量を1%以上、好ましくは3%以上とする。一方、過剰の導入により熔解性が低下するので、その導入量を10%以下、好ましくは7%以下にする。
ZrOは、化学的耐久性、剛性度、ヤング率を向上させる必須成分である。前記効果を得る上から、ZrOは0%よりも多く、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上導入する。一方、過剰の導入によりガラスの比重が増加し、熔解性が低下するため、導入量を12%以下、好ましくは10%以下にする。
CaOは、熔解性の向上、熱膨張係数やヤング率の向上に寄与する必須成分である。前記効果を得るためには、その導入量を2%以上、好ましくは10%以上とする。しかし過剰の導入によりガラスの安定性が低下するため、導入量を24%以下、好ましくは20%以下にする。
BaOは、熱膨張係数や耐久性の向上に寄与する必須成分である。前記効果を得るためには、BaOは0%よりも多く、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上導入する。しかし、過剰の導入により耐久性が低下するとともにガラスの比重が増大するため、導入量を15%以下、好ましくは10%以下にする。
MgO、SrOはともに熔解性の向上、熱膨張係数およびヤング率の増加に寄与する任意成分である。過剰導入により、ガラスの耐久性やガラスの安定性が低下するため、MgOの導入量は0〜10%とし、好ましくは0〜3.5%とする。SrOの導入量は0〜15%とし、好ましくは0〜10%とする。
CaO、BaOを含むアルカリ土類金属酸化物は、アルカリ金属酸化物とともにガラスの熔解性向上や熱膨張係数の増加に寄与する働きをするが、アルカリ金属酸化物に比べてガラス転移温度を低下させにくい。そのため、任意成分であるMgO、SrOも含めたアルカリ土類金属酸化物は、合計導入量(CaO+BaO+MgO+SrO)を10%よりも多く、好ましくは13%以上、より好ましくは15%以上にする。一方、過剰導入によりガラスが脆くなったり、化学強化をする場合おいては強化の効率が低下するため、上記合計量を25%未満、好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下にする。
上記アルカリ土類金属酸化物の中で、CaOとBaOのみが必須成分であり、MgOとSrOが任意成分である理由は、アルカリ土類金属酸化物中でCaOが比重を増大させず、耐水性も悪化させず、耐失透性を向上させるとともに、熔解性を向上させる働きが強く、BaOがガラス転移温度を高め、熱膨張係数も大きくする働きが最も強いからである。MgOは比重低減の面でCaOよりも有利ではあるが、熱膨張係数を低下させる働きが他のアルカリ土類金属酸化物と比べて強いので、MgOよりもCaOを積極的に使用する。以上のような理由から、アルカリ土類金属酸化物の合計導入量に対するCaOの導入割合は、モル比で、CaO/(CaO+BaO+MgO+SrO)が0.5以上にするのが好ましく、0.55以上にするのがより好ましく、0.6以上にするのがさらに好ましい。同じくアルカリ土類金属酸化物の合計導入量に対するBaOの導入割合は、モル比で、BaO/(CaO+BaO+MgO+SrO)が0.15以上にするのが好ましく、0.16以上にするのがより好ましく、0.17以上にするのがさらに好ましい。
LiOは、ガラスの熔解性を向上させ、熱膨張係数を増加させるとともに、ガラス基板を化学強化する際にはイオン交換の対象となるLiイオンを供給し、化学強化の効率向上にも寄与する成分であるが、特筆すべきは、ガラスの耐熱衝撃性を向上させる成分である点である。
一般に、LiOはガラス転移温度を低下させる成分であるため、情報記録媒体用ガラス基板を構成するガラスとして単に耐熱性の向上と熱膨張係数の増加のみを目的とする場合には、LiOを導入するメリットは少なく、過剰導入により耐熱性が大幅に低下する恐れが強いため、導入することが好ましくないと考えられる成分である。しかしながら、本発明者等は、驚くべきことにLiOを少量導入したガラスは、LiOを含まないガラスに比べて高い耐熱衝撃性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記効果を得る上で、LiOは0%よりも多く、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上導入する。一方、過剰導入によりガラス転移温度が著しく低下し、耐熱性が損なわれるため、その導入量を6%以下、好ましくは4%以下にする。
NaOは、ガラスの熔解性の向上、熱膨張係数の増加に効果のある必須成分であり、化学強化する場合においてはイオン交換の対象となるNaイオンを供給する成分でもある。上記効果を得る上で、NaOは、0%よりも多く、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上導入する。一方、過剰導入によりガラス転移温度の低下、化学的耐久性の悪化、基板表面からのアルカリ溶出の問題が生じるため、導入量は10%以下、好ましくは8%以下にする。
Oは、熔解性の向上、およびガラス転移温度を高く保ちながら熱膨張係数を上昇させる任意成分であるが、過剰に導入するとガラスが脆くなったり、ガラス転移温度が低下する。また、化学強化する場合にはNaイオンとの間でイオン交換がおこり化学強化後の強度が上がらなくなる。したがって、その導入量を0〜5%、好ましくは3.5%未満、より好ましくは0〜2%とする。
TiOは、化学的耐久性、剛性度、ヤング率の向上に効果がある任意成分である。しかし過剰の導入によって、耐失透性、耐水性が低下し、比重が増加する。そのため、導入量を0〜10%、好ましくは0〜3%にする。なお耐水性の低下防止を優先させる場合にはTiOを導入しないことが望ましい。
本発明のガラス基板においては、上記成分に加えて、B、ZnOを添加することもできるが、Bは、耐水性、耐酸性、耐熱性を低下させる働きをし、ZnOも過剰の導入により耐熱性を低下する働きがあるため、敢えて導入する必要はない。
また、耐熱性、耐久性、弾性率を高めるために希土類酸化物を導入することもできる。希土類酸化物の導入量は合計で0〜5%、より好ましくは0〜3%とする。しかし、希土類金属酸化物はガラスの比重を高めるとともに、原料コストが高いことから敢えて導入する必要はない。上記希土類酸化物としては、Y、La、Gd、Yb、Pr、Sc、Sm、Tb、Dy、Nd、Eu、Ho、Er、Tm、Luを例示することができる。希土類酸化物を導入する場合は、比重の増加が比較的少なく、ヤング率の上昇効果が大きいYを使用することが好ましい。
さらに上記ガラス成分に清澄剤を添加して泡切れをよくすることもできる。清澄剤としては、Sb、As、フッ化物、塩化物、SO、CeO、SnO、HOなどを例示することができる。この中でSbとAsの清澄効果が最も高いため、強力な清澄効果を得たい場合には、Sbおよび/またはAsを添加することが好ましい。その場合、SbとAsの外割り添加量を合計で1重量%以下とすることが望ましい。ガラス基板は基板ブランクを作製した後に、このブランクに研磨などの機械加工を施すことによって作られるが、機械加工ではスラッジが発生するともに、研磨廃液中にもガラス粉が混入する。そのため、有害な廃棄物を発生させないという観点からAsの使用は避けることが好ましい。
したがって、清澄効果を重視する場合は、清澄剤としてSbを外割りで0〜1重量%、より好ましくは0.1〜1重量%添加することが好ましい。Sbの使用は後述する熔融ガラスをプレス成形して基板ブランクを作製する方法において好適に使用される。
一方、後述するフロート法を利用して基板ブランクを作製する場合、酸化性の強いSb、Asの添加は避けるべきである。その場合には清澄剤として、フッ化物、塩化物、SO、CeO、SnO、HOなどを使用すればよいが、フッ化物、塩化物は揮発性が強く、均質なガラスを得るにはあまり適当ではない。またSOも環境影響上好ましくないため、フッ化物、塩化物、SOは敢えて添加する必要はない。
本発明のガラス基板の好ましいガラス組成としては、SiO、Al、ZrO、MgO、CaO、SrO、BaO、LiO、NaO、KOおよびTiOの合計量が98%よりも多いもの、より好ましくは上記合計量が99%よりも多いもの、さらに好ましくは、上記合計量が100%のものである。なお、上記各組成には、外割りでSbを0〜1重量%添加してもよい。なお、上記各ガラス組成において耐水性を重視する場合にはTiOを導入しないことが好ましいことから、上記成分からTiOを排除して考えればよい。
なお、本発明のガラス基板を構成する上記ガラスは、周知の高温熔融法によりガラス原料を加熱、熔解し、清澄、均質化した熔融ガラスを冷却して得られるものである。
〔ガラスおよびガラス基板の特性〕
次に本発明のガラス基板を構成するガラスの特性および本発明のガラス基板の特性について説明する。
上述したように、本発明のガラス基板を構成するガラスはLiOを必須成分とする上述の特定組成を有し、このガラスからなる情報記録媒体用ガラス基板は高い耐熱衝撃性を有する。具体的には、基板形状に加工したガラス(化学強化されていてもよいし、化学強化されていない状態でもよい)を170℃に加熱した状態から、20℃に保たれた水中に導入、浸漬して急冷したときに割れない耐熱衝撃性を備えている。
前記耐熱衝撃性を調べる際に使用する水の量は、加熱したガラスを浸漬しても水温が20℃に保たれるのに十分な量とすればよい。このような観点から上記の水の量は、ガラス1枚あたり10リットル以上であることが好ましい。
本発明のガラス基板は、高い耐熱衝撃性を備えているため、高温状態のガラス基板を急速に冷却する場合、例えば、垂直磁気記録方式の磁気ディスクを製造するために、高温スパッタや高温アニールを行った後、高温のガラス基板を把持することで把持した部分が急冷される場合であっても、熱衝撃によるガラス基板の破損を生じない。この為、ガラス基板を高温スパッタや高温アニール処理後、冷却することなく、高温状態でハンドリングして次工程の処理を行うことが可能となり、ガラス基板の生産性を向上させることができる。
本発明のガラス基板を構成するガラスは、高耐熱性を有するため、情報記録媒体を製造するプロセス中にガラス基板が高温に晒されても平坦性が損なわれることがない。
この耐熱性の指標はガラス転移温度により定量的に示される。本発明のガラス基板においてガラス転移温度は560℃以上であることが好ましく、580℃以上であることがより好ましく、600以上であることがさらに好ましい。ガラス転移温度に上限はないが、基板材料として要求される他の性質が損なわれないようにするために800℃以下を目安に設定すればよい。
本発明のガラス基板を構成するガラスは、情報記録装置において基板の中心部を固定するクランプ材質の熱膨張特性に合わせるため、熱膨張係数が大きいものであることが好ましい。通常、クランプはステンレス鋼で作られているため、100〜300℃におけるガラスの平均線膨張係数を70×10−7/K以上としてステンレス鋼とガラスの熱膨張特性をマッチングさせることが好ましく、75×10−7/K〜120×10−7/Kの範囲であることがより好ましい。
本発明のガラス基板は、これに限定されるわけではないが、化学強化されていることが好ましい。化学強化されたガラス基板は高強度が付与されるので、ガラス基板の破損をより有効に防止することができる。ガラス基板の化学強化法については、後述する。
また、本発明のガラス基板を構成するガラスは、高剛性を有し、情報記録媒体を安定して高速回転させ得る材質であることが好ましい。このため、その比重は2.4〜3.0であることが好ましく、2.4〜2.9であることがより好ましい。また、ヤング率は75GPa以上であることが好ましく、80GPa以上であることがより好ましい。ヤング率の上限に特に制限はないが、100GPa以下を目安に考えればよい。
剛性率は30GPa以上であることが好ましく、30〜35GPaであることがより好ましい。ポアソン比は0.22〜0.25であることが好ましい。さらに、上記ヤング率と比重から算出される比弾性率(比弾性率=ヤング率/比重)が26×10Nm/kg以上、好ましくは26×10〜32×10Nm/kgであることが好ましい。
本発明のガラス基板は、磁気記録媒体用基板として用いることができ、特に垂直磁気記録方式の磁気記録媒体用基板として好適に用いることができる。すなわち、本発明のガラス基板は、基板を構成するガラスの転移温度が情報記録媒体製造時の熱処理温度よりも十分に高いため、製造過程における熱処理によっても変形せず、かつ高い耐熱衝撃性を有するので製造工程中の取扱いも容易であり、高い生産性のもとに情報記録媒体を製造することができる。従って本発明のガラス基板は、高温熱処理を必要とする垂直磁気記録方式の磁気記録媒体の製造に好適に用いることができる。
II.情報記録媒体用ガラス基板の製造方法
本発明のガラス基板の製造方法は、上記ガラス組成を有する熔融ガラスを成形して板状ガラスを得る工程を含むことを特徴とする。
熔融ガラスを成形して板状ガラスを得る方法としては、プレス成形法、フロート法、ダウンドロー法などが挙げられる。
プレス成形法は、熔融ガラスをプレス成形型中でプレスして、基板の寸法に機械加工による取り代を加えた寸法のディスク状ブランク(板状ガラス)を得るものである。
フロート法は、ガラスより比重の重い熔融金属が入っているフロートバスの上で、熔融ガラスを浮かべながら流して薄板ガラスを製造する方法であり、得られた薄板ガラスを円盤状に加工してディスク状ブランク(板状ガラス)を得るものである。この方法では、熔融ガラスの下面は表面が完全に水平な熔融金属に接しており、熔融ガラスの上面にはガラスの自重により均一に負荷が課されるため、上面および下面が平滑な板状ガラスを得ることができる。
ダウンドロー法は、熔融ガラスを例えば断面がくさび状の成形体に沿って流下させ、成形体の下端部で合流させた後、引き抜いて得たシート状のガラスをディスク状に加工してディスク状ブランク(板状ガラス)を得るものである。
上記の3つの方法で得られたディスク状ブランク(板状ガラス)は、通常、芯抜き加工、内外周面加工、主表面の研削、研磨加工を施すことにより基板に仕上げられる。
この他、熔融ガラスを鋳型にキャストして円柱ガラスを成形し、そのガラスをスライスして薄板状のブランクとし、芯抜き加工、内外周面加工、主表面の研削、研磨加工を施して基板に仕上げる方法もある。
主表面の研磨では、研磨材やダイヤモンドペレットによるラッピング及び酸化セリウムなどの研磨材によるポリシング加工を行うことで、表面精度を、例えば0.1〜0.6nmの範囲にすることができる。加工後、基板表面は洗浄液により洗浄して、清浄な状態とすることが好ましい。
上記の方法で得られたガラス基板は、化学強化することが好ましい。
化学強化は、公知の方法で行うことができ、NaイオンまたはKイオンを含む熔融塩にガラス基板を浸漬し、ガラス基板表面の、より原子半径が小さいLiイオンまたはNaイオンとイオン交換することにより、基板表面付近に圧縮応力層が形成される。
NaイオンまたはKイオンを含む熔融塩としては、硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウムを含む熔融塩が好ましく、硝酸ナトリウムと硝酸カリウムの混合熔融塩がより好ましい。
化学強化されたガラス基板は、さらに洗浄して、清浄な基板とすることが好ましい。上記洗浄液としては、ケイフッ酸溶液などの酸やアルカリ溶液、有機溶媒などを適宜選択して用いることができる。
このようにして得られる本発明のガラス基板はディスク形状をしており、中心には基板を回転するためのクランプを取りつけるための穴が設けられている。ディスクの外径は、公称1インチ、2.5インチなど各種ディスクに対応する径のものに対応可能である。
III.情報記録媒体とその製造方法
本発明の情報記録媒体は、上記情報記録媒体用ガラス基板上に少なくとも情報記録層を有することを特徴とし、情報記録層を適宜選択することによって、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光記録媒体などの種々の情報記録媒体として使用することができる。
以下、磁気記録媒体である磁気ディスクを例に、基板上に形成される膜構成などについて説明する。
磁気ディスクは、通常、ガラス基板の上に順次、下地層、磁性層、保護層、潤滑層などの層を有する。
磁性層は特に限定されないが、例えば、Co−Cr系、Co−Cr−Pt系、Co−Ni−Cr系、Co−Ni−Pt系、Co−Ni−Cr−Pt系、およびCo−Cr−Ta系などの磁性層であることが好ましい。なお、ここで、系とは、明記されている物質を少なくとも含むことを意味する。
下地層としては、Ni層、Ni−P層、Cr層などを使用することができ、保護層としては、カーボン膜などを使用することができ、潤滑層としてはパーフルオロポリエーテル系などの潤滑剤を使用することができる。
本発明の情報記録媒体として好適なものとして、特に垂直磁気記録方式の磁気記録媒体を挙げることができる。垂直磁気記録方式の磁気記録媒体の製造には、高温処理を必要とするが、本発明の情報記録媒体用ガラス基板は、基板を構成するガラスの転移温度が情報記録媒体の製造過程における熱処理時の温度よりも十分に高いため、熱処理によっても変形せず、かつ高い耐熱衝撃性を有するので、製造工程中の取扱いも容易であり、高い生産性のもとに情報記録媒体を製造することができる。
垂直磁気記録方式の磁気ディスクは、従来の長手磁気記録方式の磁気記録媒体の面記録密度(100GBit/(2.5cm))よりも高記録密度(例えば1TBit/(2.5cm))であるため、更なる高密度記録化が可能な情報記録媒体である。
垂直磁気記録方式の磁気ディスクでは、基板状に形成される膜構成は、非磁性材料であるガラス基板上に垂直磁気記録層を形成した単層膜、軟磁性層と磁気記録層を順次積層した二層膜、および硬磁性層、軟磁性層及び磁気記録層を順次積層した三層膜などを好適なものとして例示できる。その中で二層膜と三層膜は単層膜よりも高記録密度化及び磁気モーメントの安定維持に適しているので好ましい。
本発明の情報記録媒体の製造方法は、上記情報記録媒体用ガラス基板上に情報記録層を形成させる工程を含むことを特徴とし、上記情報記録媒体用ガラス基板上に、通常、下地層、情報記録層(磁性層)、保護層、潤滑層などを順次形成することにより情報記録媒体を製造することができる。各層の形成に際しては、スパッタリング法等、公知の方法を用いることができる。
また、上記多層磁性膜垂直磁気記録媒体の特性を向上させるためには、高温スパッタ機での成膜や成膜後の400〜600℃での高温熱処理(アニール処理)を行うこともできる。
本発明のガラス基板は高い耐熱性と高い耐熱衝撃性を有し、加傷に対する強度が高いため、上記高温処理によっても基板が変形することなく優れた平坦性を保つことができ、情報記録媒体の生産性を向上させることが可能である。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
(実施例1)
モル%表示で、表1〜表3に示すガラス組成No.1〜15を有するガラスが得られるように、出発原料としてSiO、Al、Al(OH)、CaCO、BaCO、LiCO、NaCO、KCO、TiO、ZrO2などを用いてガラス原料を300〜1500g秤量し、十分に混合して調合バッチと成し、これを白金坩堝に入れ、1400〜1600℃の温度で空気中約3〜8時間ガラスの熔解を行った。
熔解後、ガラス融液を40×40×20mmカーボン金型に流し、ガラス転移温度まで放冷してから直ちにアニール炉にいれ、一時間保持した後、炉内で室温まで放冷した。
得られたガラスを顕微鏡で観察したが、ガラス中に結晶粒子は認められなかった。また、得られたガラスは均質性が高く、未熔解物も認められず、高い熔解性を確認することができた。
次に、得られた基板用ガラスのガラス転移温度、100〜300℃における平均線膨張係数、比重、ヤング率、比弾性率、剛性率、ポアソン比を測定した。また、得られた測定結果から別途比弾性率を算出した。前記各特性をガラス組成とともに表1〜表3に示す。
また、上記各組成に外割で0.5重量%のSbを添加したガラスを作り、同様の特性を得た。なお。Sbを添加したガラスでは、顕微鏡により観察しても気泡は全く認められなかった。各特性の測定方法を以下に示す。
(1)ガラス転移温度
ガラスを5mmφ×20mmの形状に加工し、リガク社製の熱機械分析装置(TMA8140)を用いて+4℃/分の昇温速度で測定した。なお、標準試料としてはSiOを用いた。なお、ガラス転移温度は、ガラスの粘度が1013.3dPa・sとなる温度に相当する。
(2)平均線膨張係数
100℃〜300℃における平均線膨張係数を、ガラス転移温度の測定時に併せて測定した。
(3)比重
ガラスを40×20×15mmの形状の加工し、アルキメデス法により測定した。
(4)ヤング率、剛性率、ポアソン比
ガラスを40×20×15mmの形状の加工し、超音波法により測定した。
(5)比弾性率
上記ヤング率と比重から(比弾性率=ヤング率/比重)の式により算出した。
次に上記と同様にして得られた熔融ガラスを金型上に供給してプレス成形し、ディスク状の基板ブランクを成形した。基板ブランクにはアニールが施された後、芯抜き加工により中心穴を形成し、内外周面加工、主表面の研削、研磨加工を施して外径65.0mm、中心穴内径20.0mm、厚み0.635mmのディスク状基板とした。
耐熱衝撃性の調べるため、上記基板(化学強化なし)を170℃に加熱し、水温20℃に保たれた10リットルの水に投入、浸漬したところ、基板は急冷されたにもかかわらず割れなかった。
次に、上記基板と同じものを用意し、420℃に加熱された硝酸ナトリウムと硝酸カリウムの混合熔融塩に4時間浸漬して化学強化を行った。
本実施例のガラス基板は、公称2.5インチの磁気ディスクとして適しており、特に、高耐熱性および高強度を備えた基板として、垂直磁気記録方式の磁気ディスクとして好適である。
(比較例1)
表3に示す比較ガラス組成No.1〜2を有し、LiOを含まないガラスが得られるように、実施例1と同様にして各ガラスを得た。得られたガラスのガラス転移温度、平均線膨張係数、比重、ヤング率、剛性率、ポアソン比、比弾性率を実施例1と同様の方法で測定した。得られた結果を表3に示す。
実施例1と同様にして比較ガラスのそれぞれを成形し、外径65.0mm、中心穴内径20.0mm、厚み0.635mmのディスク状基板を得た。得られたディスク状基板の耐熱衝撃性の調べるため、得られた基板(化学強化なし)を170℃に加熱し、水温20℃に保たれた10リットルの水に投入、浸漬したところ、基板は急冷されて割れを生じた。
Figure 2005314159
Figure 2005314159
Figure 2005314159
(実施例2)
次に、実施例1と同じガラス組成No.1〜15を有するガラスから、外径27.4mm、中心穴内径7.0mm、厚さ0.381mmのディスク状基板をそれぞれ作製した。
具体的には、均質化された熔融ガラスをプレス成形型へ供給し、プレス成形、徐冷した後、得られたディスク状基板に研削、研磨などの機械加工を施し、450℃に加熱された硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合熔融塩(重量比で硝酸カリウム:硝酸ナトリウム=3:2)に4時間浸漬して化学強化を行い、得られた基板を洗浄することによりディスク状基板を作製した。
洗浄後における各ガラス基板の主表面の中心線平均粗さRaを、原子間力顕微鏡(AFM)にて測定したところ、0.1〜0.6nmであった。
上記洗浄操作は周知の洗浄液を用いて行われるが、基板を構成するガラスのアルカリ溶出量が極めて低レベルなので洗浄時における基板の表面荒れを抑えることができた。
得られたガラス基板について実施例1と同様の耐熱衝撃性テストを行ったが、ガラス基板(化学強化あり)はいずれも割れなかった。
本実施例のガラス基板は、公称1インチの磁気ディスク用基板として適しており、特に、高耐熱性および高強度を備えた基板として、垂直磁気記録方式の磁気ディスク用基板として好適である。
なお、上記ガラス基板を得るために、上記プレス成形法以外に、例えば、フロート法により薄板ガラスを成形し、この薄板ガラスを円盤状に加工してガラス基板を作成してもよい。
(実施例3)
洗浄、乾燥した実施例1および2のガラス基板を用いて垂直磁気記録方式の磁気ディスクを作製した。磁気記録層の形成において、軟磁性層と磁気記録層を順次に積層した二層膜、及び硬磁性層、軟磁性層及び磁気記録層を順次に積層した三層膜の2つのタイプの垂直磁気記録方式の磁気ディスクを作製した。この工程中、磁気記録膜を400〜600℃において高温熱処理(スパッタリングおよびアニーリング)したが、いずれの基板も変形せず高い平坦性を保っていた。
このように、本発明のガラス基板はガラス転移温度が高く、耐熱衝撃性にも優れているので、磁気記録媒体特性向上のための高温処理、高温スパッタ機での磁気膜作成に適している。
なお、上記実施例では磁気記録媒体を例に説明したが、その他の情報記録媒体、例えば、光記録方式や光磁気記録方式のものでも同様に良好な結果を得ることができる。

Claims (9)

  1. SiO、Al、ZrO、CaO、BaO、LiO及びNaOを必須成分とし、モル%表示で、
    SiO 50〜70%、
    Al 1〜10%、
    ZrO 0%を超え12%以下、
    CaO 2〜24%、
    BaO 0%を超え15%以下、
    MgO 0〜10%、
    SrO 0〜15%、
    (ただし、CaO+BaO+MgO+SrO 10%を超え25%未満)
    LiO 0%を超え6%以下、
    NaO 0%を超え10%以下、
    O 0〜5%、
    TiO 0〜10%、
    を含むガラスからなることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板。
  2. 170℃に加熱した状態から20℃に保たれた水中に導入、浸漬して急冷したときに割れない耐熱衝撃性を有する請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
  3. ガラス転移温度が560℃以上であるガラスからなる請求項1または2に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
  4. 100〜300℃における平均線膨張係数が70×10−7/K以上であるガラスからなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
  5. 化学強化されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
  6. 垂直記録方式の情報記録媒体用である請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
  7. SiO、Al、ZrO、CaO、BaO、LiO及びNaOを必須成分とし、モル%表示で、
    SiO 50〜70%、
    Al 1〜10%、
    ZrO 0%を超え12%以下、
    CaO 2〜24%、
    BaO 0%を超え15%以下、
    MgO 0〜10%、
    SrO 0〜15%、
    (ただし、CaO+BaO+MgO+SrO 10%を超え25%未満)
    LiO 0%を超え6%以下、
    NaO 0%を超え10%以下、
    O 0〜5%、
    TiO 0〜10%、
    を含む熔融ガラスを成形して板状ガラスを得る工程を含むことを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板上に少なくとも情報記録層を有することを特徴とする情報記録媒体。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板上に情報記録層を形成させる工程を含むことを特徴とする情報記録媒体の製造方法。

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