JP2005310810A - 配線付き基板形成用の積層体、配線付き基板およびその形成方法 - Google Patents

配線付き基板形成用の積層体、配線付き基板およびその形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】付着性に優れ、低抵抗で、エッチング性に優れる配線付き基板形成用の積層体、かつ該積層体をエッチングして配線付き基板を形成する方法および得られた配線付き基板の提供。
【解決手段】基板上に、Ni−Mo合金を主成分としかつ酸素および/または窒素を含む下地層と、Moを主成分とする導体層とを有することを特徴とする配線付き基板形成用の積層体。前記下地層における酸素と窒素の合計含有率は3〜25原子%であることが好ましい。
【選択図】図2


Description

本発明は、有機エレクトロルミネセンス(有機EL)素子などのフラットパネルディスプレイ用電極配線として用いられる配線付き基板とその形成方法およびそのために好適に使用される配線付き基板形成用の積層体に関する。
フラットパネルディスプレイは、近年の高度情報化に伴って、ますます需要が高まっている。最近特に、自己発光型で低電圧駆動が可能な有機EL素子ディスプレイが次世代のディスプレイとして注目されている。有機EL素子は基本的には、スズドープ酸化インジウム(ITO)の透明電極(陽極)と金属電極(陰極)の間に、陽極側から正孔輸送層、発光層、電子輸送層などの有機質層が形成された構造をしている。近年のカラー化や高精細化には、ITO層のさらなる低抵抗化が必要であるが、ITO層の低抵抗化は既に限界に近づいている。そこで、薄膜トランジスタ(TFT)や液晶ディスプレイ(LCD)に広く採用されているように、Cr、Al、Agなどの低抵抗金属を配線として使用し、ITO層からなる電極と組み合わせることにより、実質的に素子回路の低抵抗化を実現することが検討されている。
Crは、耐アルカリ性などの化学的耐久性に優れた金属であるが、比較的抵抗値が高いという問題がある。また、Alは低抵抗ではあるが、ヒロックが発生しやすく、また表面にAl酸化物が形成されやすく接触抵抗が高いという問題がある。また、AgもAlと同様低抵抗であるが、Ag粒子が凝集しやすく、マイグレーションが生じやすいという問題がある。
上記問題点を解決するために、Moを配線の材料として使用することが検討されている。Moは耐熱性が高い金属であり、ヒロックが発生しにくく、凝集しにくいという長所がある。また、他の金属やその酸化物との接触抵抗が低く、直接これらの金属と電気的な接続が可能である。更に、有機EL表示素子作製時に必須の紫外線―オゾン処理または酸素プラズマ処理を実施しても低接触抵抗を維持できる。しかし、Moは付着力が弱く、配線形成時や表示素子形成時に膜剥がれが生じやすく、歩留まりの低下を生じやすい問題があった。
上記問題点を解決するため、Moの付着力を向上する方法として、液晶表示素子用の基板を形成する方法ではあるが、基板をフッ化水素の水溶液で処理した後に、Moの成膜を行う方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、この方法では、基板の前処理を新たに行う必要があり、生産性やコストの点で問題があった。また、該方法による付着力の改善はきわめて軽微であった。
特開平10−177968号公報
本発明は、付着性に優れ、低抵抗で、エッチング速度が良好というエッチング性に優れる配線付き基板形成用の積層体、かつ該積層体をエッチングして得られた配線付き基板を提供することが目的である。特に有機EL素子ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイに用いる電極配線用に好適な配線付き基板形成用の積層体、該積層体をエッチングして得られた配線付き基板を提供することが目的である。
本発明は基板上に、Ni−Mo合金を主成分としかつ酸素および/または窒素を含む下地層と、Moを主成分とする導体層とを有することを特徴とする配線付き基板形成用の積層体を提供する。
本発明の配線付き基板形成用の積層体を用いることにより、付着性に優れ、かつ低抵抗でエッチング速度が良好というエッチング性に優れる配線付き基板を形成でき、この配線付き基板を電極配線として用いることで高精細で信頼性の高いディスプレイを形成できる。特に、本発明の配線付き基板形成用の積層体は、アルカリ処理(アルカリ溶液による洗浄やパターニング)を施した後でも付着性が劣ることがないため、素子寿命の長く、発光特性の向上のため、配線の低抵抗が望まれる有機EL素子に有用である。
本発明に使用される基板は、必ずしも平面で板状である必要はなく、曲面でも異型状でもよい。基板としては、ガラス基板、セラミック基板、プラスチック基板、金属基板などが挙げられる。基板側から発光させる構造を有する有機EL素子に用いる場合には、基板は透明であることが好ましく、特にガラス基板が強度および耐熱性の点から好ましい。ガラス基板としては、無色透明なソーダライムガラス基板、石英ガラス基板、ホウケイ酸ガラス基板、無アルカリガラス基板が例示される。有機EL素子に用いる場合のガラス基板の厚さは0.2〜1.5mmであるのが、強度および透過率の点から好ましい。
本発明の配線付き基板形成用の積層体は、Ni−Mo合金を主成分としかつ酸素および/または窒素を含む下地層と、Moを主成分とする導体層とからなる積層体である。導体層がMoであるため、配線を低抵抗にすることができる。また、有機EL素子を作製するときに必須の処理である紫外線−オゾン処理または酸素プラズマ処理を施しても低接触抵抗を維持できる。
Moを主成分とする層(以下、Mo層ともいう。)を導体層に用いた場合、形成された積層体は低抵抗であるが、基板またはITO層との付着性が充分でないという問題があった。そこで、導体層の下に下地層であるを設けることが考えられた。下地層としては、Moを主成分としかつ酸素および/または窒素を含む層を用いることが検討されてきた。このような組成を有する下地層を形成した場合、下地層を形成しない場合と比較して付着性が向上することは確認できたが、洗浄やパターニングの条件が厳しくなった場合(例えば、アルカリ性溶液を用いて洗浄する場合、洗浄時間が長くなったり、洗浄温度が高くなったりする等)、このような組成を有する下地層では付着性が不充分であった。
本発明は、上記問題点を解決することを課題としたものであり、Ni−Mo合金を主成分としかつ酸素および/または窒素を含む層を下地層として用いることで、形成された積層体は低抵抗でエッチング速度が良好となり、かつ厳しい条件で洗浄やパターニングを行った後も付着性に優れる。
導体層のMo含有率は、抵抗値を低くできる点で、80〜100原子%、特に90〜100原子%であることが好ましい。導体層には、耐食性向上の点で、Nb、Ta、Wなどの添加金属を含んでいても良く、添加金属の含有率はMoに対して合計で0.1〜20原子%であることが好ましい。20原子%超ではエッチング速度が遅くなり好ましくない。また、導体層には、不純物として、Fe、Ti、Alなどが含有されていてもよく、その含有率はMoに対して合計で1質量%以下であることが好ましい。導体層の膜厚は、充分な導電性や良好なパターニング性が得られる点で、100〜500nmであることが好ましく、150〜400nmであることがより好ましい。
本発明の配線付き基板形成用の積層体においては、基板またはITO層と配線との付着性改善のために、導体層の下に下地層を設ける。下地層はNi−Mo合金を主成分としかつ酸素および/または窒素を含む層である。下地層のNi含有率は、40〜90原子%、特に45〜70原子%であることが付着性の点で好ましい。前記下地層のMo含有率は、10〜60原子%、特に10〜40原子%であることが付着性の点で好ましい。下地層は、耐食性向上などの目的で、Ti、V、Cr、Fe、Co、Zr、Nb、Ta、W等の添加金属を含んでいてもよく、その含有率は、0.1〜10原子%であることが好ましい。下地層の膜厚は、付着性およびパターニング性の点で、3〜100nm、特に5〜30nmであることが好ましい。
下地層は、酸化、窒化、酸窒化、酸炭化または酸窒炭化などの処理をすることにより、酸素および/または窒素を含有させた層となる。前記処理は、下地層をスパッタ法により形成する際に、スパッタガスとして、酸素、窒素、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素からなる群から選ばれる1種以上などの反応性ガスとArガスとの混合ガスを用いることで行うことができる。スパッタガス中の反応性ガスの含有率は、付着性の観点からスパッタガス全体の5〜50体積%であることが好ましい。
前記処理を行うことで、下地層は酸素および/または窒素を含有するため、基板またはITO層との付着性に優れ、高いアルカリ性を有する洗浄液によるアルカリ処理(アルカリ溶液による洗浄やパターニング)を施した後であっても膜が剥離することがない。下地層における酸素と窒素の合計含有率は3〜25原子%、特に5〜15原子%であることが好ましい。また、酸素および窒素の合計含有率が上記範囲にあるかぎり、炭素を含んでいてもよい。5原子%未満では、付着性がほとんど向上せず、25原子%超では、下地層のエッチング速度が遅くなりすぎるため好ましくない。
前記下地層を設けることで、基板またはITO層と導体層との付着性を良好とできるため、形成された配線を低抵抗に維持できるとともに、得られた配線付き基板を用いた有機ELの表示素子などの電子装置の信頼性を向上させることができる。また、得られる配線付き基板形成用の積層体は精細なパターニングが可能である。さらに、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする際に、導体層と下地層とが同じエッチング液でほぼ同じ速度でエッチングすることができ、一括してパターニングが可能である。
導体層と下地層とのエッチング速度が大きく異なると、配線を形成する際にオーバーエッチングや残渣の原因となる点で好ましくない。下地層のエッチング速度は、エッチング液の種類に応じて、付着性等に影響を与えない範囲で酸素および窒素の合計含有率を変動させることで容易に調整することが可能である。下地層に酸素、窒素、炭素等を含有させると、エッチング速度は遅くなる傾向がある。また、Niに対するMoの比率を小さくすることでエッチング速度は遅くなる傾向がある。
前記導体層の上に、耐食性の向上などの他の機能を付加するためにキャップ層を設けてもよい。MoはAlやAgと比較すると耐熱性や接触抵抗に優れているため、キャップ層は必須ではない。
本発明の配線付き基板形成用の積層体は、スパッタ法を用いて形成されることが好ましい。例えば、ガラス基板の一方の表面上にNi−Mo系ターゲットを用いてスパッタすることにより下地層を形成する工程と、該下地層の上に、Mo金属ターゲットを用いてスパッタすることにより導体層を形成する工程と、の組合わせにより形成される。
Ni−Mo系ターゲットとしては、例えば、Ni−Mo合金ターゲット、Feを含有するNi−Mo合金ターゲット、Feを含有するNi−Mo非合金ターゲットなどが例示される。Feを含有するNi−Mo非合金ターゲットとしては、例えば、ターゲット面積よりも小さいNi板、Mo板、Fe板をモザイク状に組合わせたものや、Ni−Mo合金ターゲット板とFe板を組合わせたものも含む。NiとMoとをそれぞれ別々のターゲットとして用いて合金層を形成してもよいが、導体層の組成の制御性および均一性の向上の観点からあらかじめ所望の組成のNi−Mo合金を作製して、これをターゲットとして用いることが好ましい。また、Mo系ターゲットとしては、例えば、Mo金属ターゲット、Wを含有するMo合金ターゲット、Wを含有するMo非合金ターゲットなどが例示される。Wを含有するMo非合金ターゲットとしては、例えば、ターゲット面積よりも小さいMo板、W板をモザイク状に組合わせたものも含む。スパッタ法により、大面積にわたり、膜厚が均一な配線付き基板形成用の積層体が形成できる。
本発明の配線付き基板形成用の積層体は、具体的には、例えば次のような方法により形成される。
Ni−Mo系ターゲットおよびMo系タ−ゲットを直流マグネトロンスパッタ装置のカソードに別々に取付ける。さらに、基板を基板ホルダーに取付ける。次いで、成膜室内を真空に排気後、スパッタガスとしてArガスと二酸化炭素等の反応性ガスとの混合ガスを導入する。Arガス以外にHe、Ne、Krガスなども用いることができるが、放電が安定で、安価なArガスが好ましい。スパッタ圧力は0.1〜2Paが好ましい。また背圧は1×10−6〜1×10−2Paが好ましい。基板温度は室温〜400℃が好ましい。上記条件によりNi−Mo合金ターゲットを用いてスパッタすることにより、基板上にNi−Mo合金を主成分としかつ酸素および/または窒素を含む下地層を形成する。
次いで、成膜室内を真空に排気後、スパッタガスとしてArガスを導入する。Arガス以外にHe、Ne、Krガスなども用いることができるが、放電が安定で、安価なArガスが好ましい。スパッタ圧力は0.1〜2Paが好ましい。また背圧は1×10−6〜1×10−2Paが好ましい。基板温度は室温〜400℃が好ましい。上記条件によりMo系ターゲットを用いてスパッタすることにより、下地層の上に導体層としてのMo層を形成し、配線付き基板形成用の積層体を形成する。
本発明の配線付き基板形成用の積層体は、以上説明したように、2層を基板上に有するものが基本であるが、これに限定されずに、さらに下記のような他の層を有する3層以上の層を有するものも包含する。他の層もスパッタ法により形成されるのが好ましい。
また、本発明の配線付き基板形成用の積層体は、基板と下地層との間にITO層を有していてもよい。ITO層は透明電極として用いることができる。本発明の配線付き基板形成用の積層体において、基板上にITO層を形成した後に、下地層および導体層を形成する際に必要箇所をマスクしておけば、マスクされた箇所は下地層および導体層がなく、ITO層のみとなる。このITO層のみの部分を電極として用いて、例えば、必要な場合は、その上に、有機質層を形成して有機EL素子とすることができる。一方、マスクしない箇所は、ITO層の上に下地層および導体層が形成され、電極であるITO層と配線としての下地層および導体層が段差なく接続される。
ITO層は、例えばガラス基板上にITO層をエレクトロンビーム法、スパッタ法、イオンプレーティング法などを用いて成膜することにより形成される。ITO層は、例えばInとSnOとの総量に対してSnOが3〜15質量%含有されるITOターゲットを用いて、スパッタにより成膜するのが好ましい。スパッタガスはOとArの混合ガスであることが好ましく、酸素ガス濃度はスパッタガス全体に対して0.2〜2体積%であるのが好ましい。ITO層の膜厚は50〜300nm、特に100〜200nmが好ましい。
また、本発明の配線付き基板形成用の積層体は、下地層と基板との間に、シリカ層を有していてもよい。該シリカ層は、基板と接していても、接していなくてもよい。該シリカ層は、通常シリカターゲットを用いて、スパッタ法により形成される。基板がガラス基板の場合は、ガラス基板中のアルカリ成分が導体層に移行して導体層が劣化するのを防止することができ好ましい。膜厚は5〜30nmであることが好ましい。
本発明の配線付き基板の形成用の積層体は、低抵抗でかつ付着性に優れるので、洗浄時やパターニング時に膜が剥離することがなく、安定して精細な配線付き基板を形成できる。また、得られた配線付き基板を用いると、表示素子の作製時に配線が剥離することがないので高精細で信頼性の高い表示素子を形成できる。かくして得られた本発明の配線付き基板の形成用の積層体は、好ましくはフォトリソグラフ法でエッチングして配線付き基板に形成される。
配線付き基板形成用の積層体に対して、その最表面である導体層の上にフォトレジストを塗布し、配線パターンを焼き付け、フォトレジストのパターンに従って、導体層などの金属層の不要部分をエッチング液で除去して配線付き基板が形成される。エッチング液は、好ましくは酸性水溶液であり、リン酸、硝酸、酢酸、硫酸、塩酸、硝酸セリウムアンモニウム、過塩素酸からなる群から選ばれる1種以上の混合物であることが好ましい。エッチング液は、特に、リン酸、硝酸、酢酸、硫酸および水の混合溶液であることが好ましく、リン酸、硝酸、酢酸および水の混合溶液であることがより好ましい。これらのエッチング液により、配線付き基板の形成の際に、配線付き基板形成用の積層体の各層は同一パターンに形成されるため好ましい。
配線付き基板形成用の積層体がITO層を有する場合には、下地層および導体層とITO層とを一緒にエッチング液により除去してもよいが、下地層および導体層を先に除去して、別にITO層を除去してもよいし、またITO層を先にパターニングしておいて、下地層/導体層をスパッタしてから、配線部分以外の下地層/導体層を除去してもよい。
次に、本発明の配線付き基板形成用の積層体を用いて、配線付き基板を形成して、有機EL素子ディスプレイを作製する好適例を、図1〜3を用いて説明する。
まずガラス基板1上にITO層を形成する。ITO層をエッチングしてストライブ状のパターンとしてITO陽極3を形成する。次に、下地層2bをスパッタ法によりガラス基板1全面を覆うように形成する。下地層2bの上に、導体層2aをスパッタ法により形成して、配線付き基板形成用の積層体を得る。ITO層は、ガラス基板1の全面に形成しても、一部に形成してもよい。
該積層体の上にフォトレジストを塗布し、フォトレジストのパターンに従って、金属層の不要部分をエッチングし、レジストを剥離して、下地層2b、導体層2aからなる配線2が形成される。その後、該積層体全体に紫外線照射洗浄を行い、次いで、有機EL素子の形成に重要な工程である紫外線−オゾン処理または酸素プラズマ処理を行う。紫外線照射洗浄は、有機物を除去することおよびITO層の表面改質を目的としており、通常、紫外線ランプにより紫外線を照射することで行う。
次に正孔輸送層、発光層、電子輸送層を有する有機質層4を、ITO陽極3の上に真空蒸着法により形成する。カソードセパレータ(隔壁)を有する場合は、有機質層4の真空蒸着を行う前に、隔壁をフォトリソグラフにより形成する。
カソード背面電極であるAl陰極5は、配線2、ITO陽極3、有機質層4が形成された後、ITO陽極3と直交するように、真空蒸着により形成する。
次に、破線で囲まれた部分を樹脂封止して封止缶6とする。
本発明の配線付き基板は、上記の配線付き基板形成用の積層体を用いているので、低抵抗で厳しい条件で洗浄やパターニングを行った後も付着性に優れ、配線が劣化しない。
以下、実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、これに限定されない。
(例1〜4)
厚さ0.7mmのソーダライムガラス基板を洗浄後、スパッタ装置にセットし、シリカターゲットを用いて、高周波マグネトロンスパッタ法により、厚さ20nmのシリカ層を該基板の上に形成し、シリカ層付きガラス基板を得た。
該シリカ層付きガラス基板の全面(ただし、基板保持のために成膜されない部分を除く)に、Ni−Mo−Fe合金(Niの含有率は74原子%、Moの含有率は22原子%、Feの含有率は4原子%)ターゲットを用いて、直流マグネトロンスパッタ法により、スパッタガスとしてそれぞれ表1に記載の体積割合のArガスとCOガスとの混合ガス(例1にあってはArガスのみ)を用い、厚さ15nmの下地層を形成し、下地層付き基板を得た。背圧は1.3×10−3Pa、スパッタ圧力は0.3Pa、パワー密度は1.4W/cmとし、基板の加熱はしなかった。
形成された下地層の体積抵抗率、エッチング速度、耐アルカリ性および元素比率を下記の方法により測定し、結果を表1および表2に示した。
(1)体積抵抗率:旧三菱油化(株)製のLoresta IP MCP−T250を用い、4探針法でシート抵抗を測定し、膜厚とシート抵抗との積を体積抵抗率とした。なお、1.4×E−5とは、1.4×10−5を意味し、他も同様である。1×E3Ω・cm以下であることが実用上好ましい。
(2)エッチング速度:リン酸(HPO)(85質量%):硝酸(60質量%):酢酸(99質量%):水が体積比で16:1:2:1の割合で混合したエッチング液でエッチングした場合の速度を測定した。生産性および導体層であるMo層とのエッチング速度の整合性の点で0.5nm/秒以上であることが実用上好ましい。
(3)耐アルカリ性:2.5質量%のNaOH水溶液(25℃)に5分間、膜付き基板を浸漬させた前後のシート抵抗の変化率を測定した。○:変化率が5%未満、△:変化率が5%以上100%未満、×:変化率が100%以上とした。
(4)元素比率:ESCAを用いて測定した。測定条件および方法は下記のとおりである。
(測定条件)
XPS装置:JEOL JPS−9000MC(日本電子(株)製)
X線源:Mg−std線、ビーム径6mmφ
X線出力:10kV、10mA
帯電補正:フラットガン
陰極 −100V
バイアス −10V
フィラメント 1.15A。
(測定方法)
(1)表面10mmφをArイオンビームにて速度1nm/秒で5nmの深さスパッタエッチングし、その中央付近を測定した。
(2)エッチング条件は、800eVのイオンビームを用い、その領域は10mmφであった。
(3)光電子の検出角度は90°であった。
(4)光電子のエネルギ分析器への入射エネルギーパスは20eVであった。
(5)Ni:3p3/2、Mo:3d、Fe:2p3/2、O:1s、C:1sのピークを測定した。
(6)ピーク面積を求め、以下の相対感度係数を用いて、表面原子数比(すなわち、元素比率)を算出した。
相対感度係数
Ni:3p3/2 47.089
Mo:3d 39.694
Fe:2p3/2 37.972
O:1s 10.958
C:1s 4.079。
(例5、6)
例1におけるシリカ層付きガラス基板(すなわち下地層形成前のもの)の全面(ただし、基板保持のために成膜されない部分を除く)に、Mo金属(Moの含有率は99.95質量%)ターゲットを用いて、直流マグネトロンスパッタ法により、スパッタガスとしてそれぞれ表1に記載の体積割合のArガスとCOガスとの混合ガス(例5にあってはArガスのみ)を用い、厚さ15nmの下地層を形成し、下地層付き基板を得た。背圧は1.3×10−3Pa、スパッタ圧力は0.3Pa、パワー密度は1.4W/cmとし、基板の加熱はしなかった。該下地層の体積抵抗率、エッチング速度、耐アルカリ性および元素比率を例1と同様の方法により測定し、結果を表1および表2に示した。
なお、ESCAによる例1〜6の元素比率の測定において、窒素のピークがMoのピークと重なり、下地層中の窒素含有量の正確な測定ができなかった。しかし、スパッタガス中に窒素を混合させていないことから、下地層に窒素は含有していないことが推測される。
Figure 2005310810
Figure 2005310810
(例7〜12)
例1で形成した該シリカ層付きガラス基板(すなわち下地層形成前のもの)に、ITO(InとSnOとの総量に対してSnO10質量%含有)ターゲットを用い、直流マグネトロンスパッタ法により、厚さ150nmのITO層を形成してITO層付きガラス基板を得た。スパッタガスには、酸素を0.5体積%含有するArガスを用いた。
次いで、形成したITO層付き基板に、それぞれ例1〜6と同様な方法により下地層を形成し、下地層付きガラス基板を形成した。
該下地層付きガラス基板に、Mo金属ターゲットを用いて、直流マグネトロンスパッタ法により、Arガス雰囲気で導体層としての厚さ300nmのMo層を形成して、配線付き基板形成用の積層体を得た。背圧は1.3×10−3Pa、スパッタ圧力は0.3Pa、パワー密度は4.3W/cmとし、基板の加熱はしなかった。下地層と導体層の形成は、大気中に取り出すことなく連続して行った。該配線付き基板形成用の積層体の膜厚、パターニング前のシート抵抗、パターニング前の付着性を下記の方法で測定して、結果を表3に示した。
形成された配線付き基板形成用の積層体を、ライン/スペースが15μm/105μm、または4μm/28μmのマスクパターンを用い、フォトリソグラフ法により、リン酸(HPO)(85質量%):硝酸(60質量%):酢酸(99質量%):水が体積比で16:1:2:1の割合で混合したエッチング液を用いてパターニングを行い、配線付き基板を形成した。次いで、5質量%のNaOH水溶液(60℃)に10分間配線付き基板を浸漬することでアルカリ処理を行った後、前記配線付き基板のアルカリ処理後の付着性を測定し、結果を表3に示した。
測定方法は下記のとおりである。
(1)パターニング前のシート抵抗:旧三菱油化(株)製のLoresta IP MCP−T250を用いて4探針法で測定した。
(2)パターニング前の付着性:JIS−K5600−5−6(1999年)で定義されるクロスカット法に準じて測定した。一辺が1mmの升目を膜面に100個形成し、升目にテープを付着し、手で剥がした時の剥がれた升目が10個以上のときを×とし、1〜9個のときを△とし、1個も剥がれなかった場合を○とした。
(3)アルカリ処理後の付着性(15μmパターン):JIS−K5600−5−6(1999年)に準じて行った。膜面に15μmの幅を有するパターンにテープを付着し、手で剥がした時の剥がれたパターンの本数が5%以上のときを×とし、5%未満のときを○とした。
(4)アルカリ処理後の付着性(4μmパターン):JIS−K5600−5−6(1999年)に準じて行った。膜面に4μmの幅を有するパターンにテープを付着し、手で剥がした時の剥がれたパターンの本数が5%以上のときを×とし、5%未満のときを○とした。
Figure 2005310810
例7および例11は、下地層形成時のスパッタガスとしてArガスのみを用いているため、パターニング前の付着性が劣り好ましくない。例12は、ある程度の酸素を含有しているため、パターニング前の付着性は問題ないが、下地層としてMoを用いているため、アルカリ処理により付着性に劣り、特により厳しい条件である4μパターンの付着性が不充分である。
これに対し、例8、9および10では、下地膜にNi−Mo合金を用いており、かつ好適な量の酸素を含有しているため、パターニング前の付着性が優れ、また、60℃という高温のアルカリ性の溶液に浸漬しても付着性が劣ることがない。また、4μmパターンという非常に細いパターンであっても付着性が劣ることがなく、さらにエッチング速度も早く、特に有機EL素子として有用である。
本発明の配線付き基板形成用の積層体は、付着性に優れ、かつ低抵抗で、エッチング性に優れるため、有機EL素子の電極配線として有用である。
本発明の配線付き基板形成用の積層体をパターニングして得られる配線付き基板の1例を示す一部切り欠き正面図である。 図1のII−II線での断面図である。 図1のIII−III線での断面図である。
符号の説明
1:ガラス基板
2:配線
2a:導体層
2b:下地層
3:ITO陽極
4:有機質層
5:Al陰極

Claims (6)

  1. 基板上に、Ni−Mo合金を主成分としかつ酸素および/または窒素を含む下地層と、Moを主成分とする導体層とを有することを特徴とする配線付き基板形成用の積層体。
  2. 下地層における酸素と窒素の合計含有率は3〜25原子%である請求項1に記載の配線付き基板形成用の積層体。
  3. 前記導体層と基板との間にITO層を有する請求項1または2に記載の配線付き基板形成用の積層体。
  4. 請求項1、2または3記載の積層体にパターニングを施してなる配線付き基板。
  5. 請求項4に記載の配線付き基板を電極配線として用いた有機EL素子。
  6. 基板上に、または基板上に形成されてなるITO層の上に、スパッタ法によりNi−Mo合金を主成分としかつ酸素および/または窒素を含む下地層を形成し、該下地層の上に、スパッタ法によりMoを主成分とする導体層を形成してなる配線付き基板形成用の積層体の製造方法。
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