JP2005309275A - フレネルレンズシート、透過型スクリーン及び背面投射型表示装置 - Google Patents

フレネルレンズシート、透過型スクリーン及び背面投射型表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 投影映像のゆがみが発生し難いフレネルレンズシート等を提供する。
【解決手段】 入射面とその入射面から入射する映像光の一部又は全部を全反射して所望の方向に偏向する全反射面とを有する単位全反射フレネルレンズが入光側に配列されたフレネルレンズシートであって、フレネルレンズシートの垂直方向の長さH(cm)、フレネルレンズシートの水平方向の長さL(cm)、フレネルレンズシートの厚さT(cm)、及びフレネルレンズシートの弾性係数E(kgf/cm)とが、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、の関係を満たすように構成して、前記課題を解決した。また、フレネルレンズシートを、フレネルレンズが形成されたフレネルレンズ形成シートと、その出光面側に貼り合わされる補助シートとで構成することにより、フレネルレンズシート製造時における金型からの離型作業の効率化を達成した。
【選択図】 なし




Description

本発明は、投影映像にゆがみが発生し難いフレネルレンズシート、透過型スクリーン及び背面投射型表示装置に関するものである。
背面投射型表示装置であるプロジェクションテレビジョンには、光源から発せられた映像光を拡大投影する透過型スクリーンが設けられている。この透過型スクリーンは、一般に、光源から拡大投射される映像光を観察者側へ平行光又は略平行光に屈折させるフレネルレンズ要素と、その平行光又は略平行光を散乱させて広い範囲の観察者へ提供するレンチキュラーレンズ要素とで構成されている。このような背面投射型表示装置の光源としては、従来、三原色が別々の管から投射される3管方式のCRT光源が一般的であったが、近年、LCDやDLPを用いた単管方式の光源も使用されてきている。
単管方式の光源8を用いた従来型の背面投射型表示装置52においては、図16に示すように、透過型スクリーン10の中心に対して垂直又は略垂直に映像光5を入射させる方式が一般的であった。そのため、図17に示すように、透過型スクリーン10の位置が光源8の方向に近づいても遠ざかっても投影映像に影響を与えることはなかった。
これに対して、図5に示すように、透過型スクリーンの中心に対して斜めに映像光5を入射させることにより、従来に比べて大幅な薄型化を図った背面投射型表示装置51が提案されている。こうした背面投射型表示装置51に対しては、全反射タイプのフレネルレンズが形成されたフレネルレンズシートの使用が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
特開昭61−208041号公報(特許請求の範囲)
ところで、フレネルレンズシートを有する透過型スクリーン10の中心に対して斜めに映像光5を入射させる薄型の背面投射型表示装置51(図5を参照)において、フレネルレンズシートはその周辺が枠体に支持されて設置され、フレネルレンズシートの四辺が同一の平面上に保持されるが、フレネルレンズシート自身の荷重によりフレネルレンズシート1にたわみが生じることがある。その結果、透過型スクリーン10に膨れや浮きが生じる場合には、フレネルレンズの位置が光源8の方向(すなわち、シートの厚さ方向)に近づいたり遠ざかったりすることになる。そのため、図6に示すように、特にフレネルレンズシートの中央付近では、表示される映像の高さ方向の位置が変化することになる。したがって、例えばフレネルレンズシートにたわみが生じる場合には、フレネルレンズシートの中心部のフレネルレンズの位置がシートの厚さ方向に変化するが、周辺部のフレネルレンズの位置はあまり変化しないので、透過型スクリーンに表示される映像にゆがみが生じる。例えば、水平な直線を透過型スクリーン上に表示した場合に、水平方向でその直線が曲がって見えることがある。
特に最近、背面投射型表示装置に対しては、より一層の薄型化が要請されているので、全反射タイプのフレネルレンズが配列されたフレネルレンズシートの中心での映像光の入射角がより大きくなる傾向にあることから、透過型スクリーンに表示される映像のゆがみの問題がより顕著になるものと予想される。しかしながら、従来においては、こうした問題に対して全く考慮されていなかったという実情がある。
また、前述した全反射フレネルレンズが形成されたフレネルレンズシートは、フレネルレンズシート形成用の平面状の金型に成形樹脂を塗布・硬化させた後、その金型からフレネルレンズシートを離型することにより製造される。しかしながら、特に全反射フレネルレンズシートの製造においては、例えば図12に示すような角度を有するフレネルレンズ要素と金型とが噛み合っているので、フレネルレンズシートの厚さが厚い場合には、シートの柔軟性が低下して極めて離型し難い状況になるという問題があった。そのため、前述したように、投影映像のゆがみが発生し難いフレネルレンズシートの提供、という要請に加え、フレネルレンズシート製造時における金型からの離型作業の効率化を達成できるフレネルレンズシートの提供、という要請がある。
本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであって、その第1の目的は、投影映像のゆがみが発生し難いフレネルレンズシート、及びそのフレネルレンズシートを備えた透過型スクリーン、背面投射型表示装置を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、さらに加えて、フレネルレンズシート製造時における金型からの離型作業の効率化を達成できるフレネルレンズシート、及びそのフレネルレンズシートを備えた透過型スクリーン、背面投射型表示装置を提供することにある。
本発明者は、前記問題に対して鋭意研究を重ねた結果、フレネルレンズシートのたわみの程度について実用上問題のないレベルを見出し、それを実現するために必要とされるフレネルレンズシートのサイズ(垂直方向の長さ×水平方向の長さ)及び厚さと物性値(弾性係数)との関係を見出して本発明に到達した。
すなわち、前記第1の目的を達成する本発明のフレネルレンズシートは、入射面と当該入射面から入射する映像光の一部又は全部を全反射して所望の方向に偏向する全反射面とを有する単位全反射フレネルレンズが入光側に配列されたフレネルレンズシートであって、フレネルレンズシートの垂直方向の長さH(cm)、フレネルレンズシートの水平方向の長さL(cm)、フレネルレンズシートの厚さT(cm)、及びフレネルレンズシートの弾性係数E(kgf/cm)とが、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、の関係を満たすことに特徴を有するものである。なお、本発明では弾性係数の単位としてkgf/cmを用いるが、1kgf/cmは約9.8N/cmである。
また、前記第1の目的を達成する本発明のフレネルレンズシートは、基材の入光側に、入射面と当該入射面から入射する映像光の一部又は全部を全反射して所望の方向に偏向する全反射面とを有する単位全反射フレネルレンズが配列されたフレネルレンズを有するフレネルレンズシートであって、基材の垂直方向の長さH(cm)、基材の水平方向の長さL(cm)、基材の厚さT(cm)、及び基材の弾性係数E(kgf/cm)とが、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、の関係を満たすことに特徴を有するものである。
これらの発明によれば、前記の関係を満たすようにフレネルレンズシートを構成したので、フレネルレンズシートにたわみが生じ難く、投影映像のゆがみが発生し難い。さらに、前記関係式を満たすように、フレネルレンズシートの材質に応じたサイズ及び厚さを設計したり、フレネルレンズシートのサイズ及び厚さから材質を選定することができるので、設計コストや製造コストの大幅な削減を期待できる。
前記第2の目的を達成する本発明のフレネルレンズシートは、前記の本発明のフレネルレンズシートにおいて、前記フレネルレンズシートは、フレネルレンズが形成されたフレネルレンズ形成シートと、当該フレネルレンズ形成シートの出光面側に貼り合わされる補助シートとからなることに特徴を有する。
この発明によれば、フレネルレンズシートをフレネルレンズ形成シートと補助シートとで構成するので、フレネルレンズ形成シートの厚さをより一層薄くすることができる。そのため、フレネルレンズの転写形状が形成されている金型から、薄く柔軟なフレネルレンズ形成シートを容易に離型することができるので、フレネルレンズシートの製造の効率化を達成できる。また、フレネルレンズシートの全体としては、前記の関係を満たすのでたわみが生じ難く投影映像のゆがみが発生し難いと共に、金型からの離型作業の効率化を達成できるフレネルレンズシートの提供が可能となる。
本発明のフレネルレンズシートにおいて、前記補助シートが、レンチキュラーレンズが形成されたレンチキュラーレンズシートであることが好ましい。この発明は、フレネルレンズ形成シートとレンチキュラーレンズシートとを一体化したフレネルレンズシートを、極めて効率的に作製できる構成としたものである。
本発明のフレネルレンズシートにおいて、前記フレネルレンズ形成シートと前記補助シートとが、同じ材質であることが好ましい。この発明によれば、フレネルレンズ形成シートと補助シートとが同じ材質であるので、たわみが生じ難く投影映像のゆがみが発生し難い。その結果、平面性の悪化を最小限に抑えたフレネルレンズシートの提供が可能となる。
本発明のフレネルレンズシートにおいて、フレネルレンズシートが、光を拡散させる拡散剤を含有していることが好ましい。また、本発明のフレネルレンズシートにおいて、フレネルレンズシートが、光を吸収するように着色されていることが好ましい。また、本発明のフレネルレンズシートにおいて、フレネルレンズシートが、光吸収層を有していることが好ましい。
これらの発明によれば、全反射フレネルレンズを有したフレネルレンズシートに発生し易い迷光を拡散又は吸収することができるので、迷光に基づいて発生する二重像の問題を解決することができる。その結果、投影映像のゆがみが発生し難いと共に、二重像も発生し難くなる。
本発明のフレネルレンズシートにおいて、フレネルレンズシートの片面又は両面に、反射率を低下させる層が形成されていることが好ましい。この発明によれば、映像のコントラストが、反射光により低下するのを抑制することができる。
また、本発明の透過型スクリーンは、前記のフレネルレンズシートの出光面に、光を拡散させるレンチキュラーレンズが形成されていることに特徴を有するものである。また、本発明の透過型スクリーンは、前記のフレネルレンズシートの出光面側に、光を拡散させるレンチキュラーレンズを有するレンチキュラーレンズシートが配置されていることに特徴を有するものである。これらの発明は、フレネルレンズ要素とレンチキュラーレンズ要素とを備える透過型スクリーンを提供するものである。
本発明の透過型スクリーンにおいて、透過型スクリーンの片面又は両面に、反射率を低下させる層が形成されていることが好ましい。この発明によれば、反射光による映像のコントラストが低下するのを抑制することができる。
また、本発明の背面投射型表示装置は、前記のフレネルレンズシート、又は前記の透過型スクリーンを含むことに特徴を有するものである。
以上説明したように、本発明のフレネルレンズシート及び透過型スクリーンによれば、投影映像のゆがみが発生し難い。さらに、前記の関係式を満たすように、フレネルレンズシートの材質に応じたサイズ及び厚さを設計したり、フレネルレンズシートのサイズ及び厚さから材質を選定することができるので、設計コストや製造コストの大幅な削減を期待できる。
また、本発明のフレネルレンズシート及び透過型スクリーンによれば、フレネルレンズ形成シートと補助シートとで構成してフレネルレンズ形成シートの厚さをより一層薄くすることができるので、フレネルレンズの転写形状が形成されている金型から、薄く柔軟なフレネルレンズ形成シートを容易に離型することができる。その結果、前記効果に加えて、フレネルレンズシートの製造の効率化を達成できる。
また、本発明の背面投射型表示装置によれば、こうした投影映像のゆがみが発生し難い本発明のフレネルレンズシートを備えたので、大幅な薄型化を達成することが可能となる。
本発明のフレネルレンズシート、透過型スクリーン及び背面投射型表示装置について具体的に説明する。
(フレネルレンズシート)
本発明のフレネルレンズシート1は、図1に示すように、入射面3とその入射面3から入射する映像光5の一部又は全部を全反射して所望の方向に偏向する全反射面4とを有する単位全反射フレネルレンズ2が入光側に配列されたものである。より具体的には、図1に示すように、全反射フレネルレンズ2を備えた単一構造からなるフレネルレンズシート1、又は、図2に示すように、基材11とその基材11上に形成されたフレネルレンズ要素部分12とからなる複合形態のフレネルレンズシート1’に例示されるものである。
そして、本発明の特徴は、これらのフレネルレンズシート1、1’において、フレネルレンズシート1又は基材11の垂直方向の長さH(cm)、フレネルレンズシート1又は基材11の水平方向の長さL(cm)、フレネルレンズシート1又は基材11の厚さT(cm)、及びフレネルレンズシート1又は基材11の弾性係数E(kgf/cm)とが、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、の関係を満たすことにある。なお、本願では必要に応じて、図1に示す態様のフレネルレンズシート1の各特性値をH、L、T及びEと表し、図2に示す態様の基材11の各特性値をH、L、T及びEと表す。
本発明のフレネルレンズシートは、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、の関係式を満たすので、フレネルレンズシートを透過した映像光7にゆがみを生じさせる程度の変形(たわみによる変形のこと)が、フレネルレンズシートに起こらない。その結果、フレネルレンズシートの中心に対する映像光5の入射角度θが大きい場合においても、フレネルレンズシートを透過した映像光7に顕著なゆがみが生じないので、近年の背面投射型表示装置の薄型化及び高品質化に寄与できる。一方、H×H/(10×E×T×T)>3L/2000、となる場合には、フレネルレンズシートを透過した映像光7にゆがみを生じさせる程度の変形(たわみによる変形のこと)が起こることがある。その結果、フレネルレンズシートを透過した映像光7に顕著なゆがみが生じることがある。
ここで、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、とした理由について詳しく説明する。
背面投射型表示装置のスクリーンサイズとしては、対角50インチ(アスペクト比4:3、縦76.2cm×横101.6cm)程度又はそれより大きいのが一般的であるので、その大きさのスクリーンに映し出される映像がゆがんでも、そのゆがみの程度によっては観察者がゆがみの存在を認識できないことがある。
すなわち、透過型スクリーンを構成する実際のフレネルレンズシートにおいては、フレネルレンズシートが略コ字型の枠体に入れられて支持され、フレネルレンズシートの四辺が同一の平面上に保持されるが、フレネルレンズシート自身の荷重によりフレネルレンズシート1にたわみが生じることがあり、平面性が低下する。たわみがあるとは、フレネルレンズシートの中心部ではその位置が画面に対し垂直な方向にずれるということである。このようなずれが生じると、表示される画像の高さ方向(垂直方向)の位置がずれることになる。フレネルレンズシートは枠体により保持されているので、フレネルレンズシートの外周部(周辺部)の位置は変化せずに画像の高さ方向の位置も変化しない。従って、フレネルレンズシートにたわみが生じると、図3に示すように、水平な直線9をスクリーン上に表示した場合には直線が曲がって見えることになり映像にゆがみが生じる。この映像のゆがみについて、本発明者等は様々な映像で詳細に検討したところ、映像のゆがみが許容できる限界は、単位長さに対して千分の3程度であることを見出した。例えば、図3に示すように、水平な直線9をスクリーン上に表示した場合において、スクリーンの水平方向の長さL(cm)と同じ長さの直線9を表示した場合において、その直線9の曲がりPが上下方向で千分の3L(=3L/1000)以内であれば、その曲がりPを観察者が認識するのは極めて困難であることを見出した。
一方、フレネルレンズシートの中心に対して斜めに映像光5が入射する最近の薄型の背面投射型表示装置の場合、フレネルレンズシートの中心部に入射する映像光5の入射角度θは60〜65°となる。本発明者等は、こうした薄型の背面投射型表示装置において、直線9の曲がりPが上下方向で千分の3L以内となるように映像のゆがみを抑制しようとした場合、フレネルレンズシートがそのシートの厚さ方向にズレることが許容される長さQは2千分の3L以内となる(図6を参照)。従って、ゆがみの目立たない映像を得るためには、フレネルレンズシートのたわみ量Wを3L/2000以内とすればよい。
次に、本発明者等は、これ以内のたわみ量とするためにはどのようなフレネルレンズシートとすればよいかということについて詳細に検討した。
フレネルレンズシートを枠体に保持させた場合には、フレネルレンズシートのたわみ量は、フレネルレンズシートの弾性係数E、フレネルレンズシートのサイズ(高さHと幅L)、及びフレネルレンズシートの厚さTによって決まる。このうちサイズについては高さHと横幅Lの2つのパラメータがあるが、スクリーンの場合は画面の高さと横幅との比が4:3又は16:9の2つに限られるので、2つのパラメータのうち、たわみ量に関係するパラメータは高さHを採用することができる。
本発明者等は、これらのパラメータとたわみ量の関係について種々のサイズ、厚さ及び弾性係数からなるフレネルレンズシートを略コ字型の枠体に入れてたわみ量を測定し、その測定結果を詳細に検討したところ、フレネルレンズシートに必要なたわみ量が0.1〜0.3cmと少ない場合には、概ねたわみ量Wは、H×H/(10×E×T×T)であることを見出した。前述した検討で明らかになったように、許容できるたわみ量Wは、3L/2000以内であるので、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、となるのである。
なお、フレネルレンズシート1の垂直方向の長さHは、フレネルレンズシートの縦幅で定義され、基材11の垂直方向の長さHは、フレネルレンズシートを構成する基材の縦幅で定義される。また、フレネルレンズシート1の水平方向の長さLは、フレネルレンズシートの横幅で定義され、基材11の水平方向の長さLは、フレネルレンズシートを構成する基材の横幅で定義される。また、フレネルレンズシート1の厚さTは、図1に示すように、フレネルレンズ要素以外の厚さで定義され、基材11の厚さTは、図2に示すように、基材そのものの厚さで定義される。前記関係式において、厚さTを、フレネルレンズ要素以外の厚さ又は基材そのものの厚さで定義した理由は、フレネルレンズ要素部はフレネルレンズ要素以外の部分に比べて1/10又はそれ以下の厚さであるので、フレネルレンズシートのたわみの発生にほとんど影響しないからである。
フレネルレンズシート1の弾性係数Eは、フレネルレンズシートの弾性係数で定義され、基材11の弾性係数Eは、フレネルレンズシートを構成する基材の弾性係数で定義される。また、後述するように補助シートを貼り合せてフレネルレンズシートを構成する場合の弾性係数Eは、補助シートと基材等の他のシートが同じものであれば、どちらか一方のシートの弾性係数で定義される。
また、補助シートと基材等の他のシートが異なるものである場合の弾性係数Eは、補助シートによりフレネルレンズシート全体の剛性が得られると考えられる場合には、補助シートの弾性係数で定義される。一方、補助シートと基材等の他のシートとでフレネルレンズシート全体の剛性が得られると考えられる場合には、補助シートの弾性係数と基材の弾性係数又は基材以外の他のシートの弾性係数との平均値で定義される。なお、補助シートによりフレネルレンズシート全体の剛性が得られると考えられる場合とは、例えば、フレネルレンズシート全体の厚さの80%以上が補助シートである場合であり、この場合は、基材等の他のシートがフレネルレンズシート全体の剛性に影響をほとんど及ぼさないからである。また、補助シートと基材等の他のシートとでフレネルレンズシート全体の剛性が得られると考えられる場合とは、補助シートの厚さがフレネルレンズシート全体の厚さの80%未満のときである。すなわち、補助シートの厚さがフレネルレンズシート全体の厚さの80%未満のときには、基材等の他のシートはフレネルレンズシート全体の剛性に関与しているからであり、この場合には、補助シートのの弾性係数と基材等の他のシートの弾性係数との平均値をフレネルレンズシートの弾性係数にしたのである。
また、フレネルレンズシート1、基材11、補助シート等の弾性係数Eは、1種の材料により作製されている場合には、その材料の弾性係数であるが、拡散剤や他の物質が含まれている場合には、フレネルレンズシート1、基材11、補助シート等の弾性係数を測定した値であることが好ましい。この弾性係数は、例えば、フレネルレンズシート1、基材11、補助シート等から一部を採取して試験片とし、その試験片について、JIS K 7113 プラスチックの引張試験方法により測定した。
以上説明した本発明のフレネルレンズシート1、1’は、フレネルレンズシート1又は基材11の垂直方向の長さH(cm)、フレネルレンズシート1又は基材11の水平方向の長さL(cm)、フレネルレンズシート1又は基材11の厚さT(cm)、及びフレネルレンズシート1又は基材11の弾性係数E(kgf/cm)とが、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、の関係を満たすので、フレネルレンズシート1、1’を透過した映像光7にゆがみを生じさせる程度の変形(たわみによる変形のこと)が、フレネルレンズシートに起こらない。その結果、フレネルレンズシート1、1’の中心に対する映像光5の入射角度θが大きい場合においても、フレネルレンズシート1、1’を透過した映像光7に顕著なゆがみが生じないので、近年の背面投射型表示装置の薄型化及び高品質化に寄与できる。
(第1実施形態)
図1は、全反射フレネルレンズ2を備えた単一構造からなるフレネルレンズシート1の一例を示す断面図である。このフレネルレンズシート1は、入射面3とその入射面3から入射する映像光5の一部又は全部を全反射して所望の方向に偏向する全反射面4とを有する単位全反射フレネルレンズ2が入光側に配列されている一体型のフレネルレンズシートであり、かつ、前述した関係式を満たすものである。
フレネルレンズシートを形成する透明樹脂としては、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂等が好ましく用いられる。フレネルレンズシートは、フレネルレンズの逆形状を有する金型を用い、前記樹脂をプレス成形、射出成形又はキャスティング成形などにより成形して製造される。前述した透明樹脂としては、混ぜものがなく均一なものを用いることができるが、迷光をなくすための各種の手段を適用することが好ましい。
ここで、迷光について説明する。迷光20とは、図7に示すように、入射面23から入射した映像光5のうち全反射面24に入射しない光のことである。この迷光20は、フレネルレンズシートに対する映像光5の入射角度θが小さいときに発生するので、フレネルレンズシートの下端付近で発生し易い。フレネルレンズシートに入射した迷光20は、出光面6で反射し、再びフレネルレンズ要素部分に入光して屈折を繰り返した後に再度出光する。このとき出光する光25は、全反射面24で反射して出光する正規の映像光7とは、出光する位置が異なる。こうした出光位置の相違が、二重像の原因となる。
本発明のフレネルレンズシートにおいては、以下の手段により、迷光による二重像の発生を抑制することが好ましい。
第1は、フレネルレンズシート内に拡散剤を含有させる手段が挙げられる。図8は、本発明のフレネルレンズシートが光を拡散させる拡散剤15を含有している一例を示す断面構成図である。拡散剤15としては、フレネルレンズシートを構成する樹脂の種類に応じ、その屈折率差を考慮して選定されるが、例えば、スチレン樹脂微粒子、シリコーン樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、MS樹脂微粒子等の有機系微粒子や、硫酸バリウム微粒子、ガラス微粒子、水酸化アルミニウム微粒子、炭酸カルシウム微粒子、シリカ(二酸化珪素)微粒子、酸化チタン微粒子等の無機系微粒子を挙げることができ、これらの1種又は2種以上が樹脂中に配合される。粒子形状については、真球形状、略球形状、不定形状等、各種のものを使用できる。このフレネルレンズシートにおいて、光路長の長い迷光20はフレネルレンズシート内で屈折を繰り返して進むが、シート中に含まれる拡散剤15により拡散されるので、二重像が目立たなくなる。
第2は、フレネルレンズシートを着色して光を吸収させる手段が挙げられる。着色剤としては、黒色の染料、顔料、カーボンブラック等が挙げられ、着色方法としては、これらの着色剤と樹脂を混ぜてキャスティング成形したり、押し出し成形したりする方法等を挙げることができる。このフレネルレンズシートにおいて、光路長の長い迷光20は、設計通りに出光する光路長の短い映像光7に比べ、着色されたフレネルレンズシート内で大幅に吸収されるので、二重像が目立たなくなる。
第3は、フレネルレンズシートに光吸収層を形成する手段が挙げられる。図9は、本発明のフレネルレンズシートが光吸収層16を有している一例を示す断面図である。この光吸収層は、フレネルレンズシートの出光面側の表面から内部に向かって形成された溝形態を呈するものであり、出光面側から平面視したとき、例えば厚さ約10μmで深さ約100μmの細い溝が光の進行方向に対して平行かつ等間隔で配列され、その細い溝にワイピング法により黒色インクを埋め込むことにより形成される。このフレネルレンズシートにおいて、光路長の長い迷光20は、光吸収層16で吸収されるので、二重像が目立たなくなる。
第4は、フレネルレンズシートの出光面に光を拡散させるレンチキュラーレンズ要素を形成する手段が挙げられる。図10は、円弧状の垂直レンチキュラーレンズ17をフレネルレンズシートの出光面に形成した例であり、図11は、台形状の垂直レンチキュラーレンズ18を出光面に形成した例である。円弧状の垂直レンチキュラーレンズ17は光を水平方向に拡散させるので、迷光も拡散され、二重像が目立たなくなる。また、台形状の垂直レンチキュラーレンズ18は、迷光を台形の斜面19で全反射させるので、迷光を目立たなくすることができる。なお、レンチキュラーレンズをフレネルレンズシートに形成する代わりに、レンチキュラーレンズを有するフレネルレンズシートとは別体のレンチキュラーレンズシートを観察者側に配置した2枚構成の複合型透過型スクリーンを構成してもよい。
本発明のフレネルレンズシートにおいては、こうした各手段を適用することにより、発生する迷光の影響を極力抑制することができる。
本発明のフレネルレンズシートの何れか一方の表面、すなわち片面又は両面に、反射率を低下させる層(以下、「反射率低下層」ということがある。)を形成してもよい。反射率低下層は、低屈折率の材質で形成されることが好ましく、例えばフッ素系樹脂やシリコーン系樹脂が好ましく用いられる。また、反射率低下層を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、ディッピング法、フローコート法などのコーティング法等が挙げられる。反射率低下層は、フレネルレンズシートの出光面側に好ましく設けられるが、両面に設けるとより効果的である。このフレネルレンズシートにおいて、反射率低下層は反射防止効果を発揮するので、表面の反射光による画像のコントラストの低下が抑制される。
なお、レンチキュラーレンズ要素を備えたフレネルレンズシートや、フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートとが組み合わされた2枚構成の複合型の透過型スクリーンに対しても、前記と同様の反射率低下層を形成することができる。
以上のような第1実施形態のフレネルレンズシート1によれば、前記の関係式を満たすので、フレネルレンズシート1を透過した映像光7にゆがみを生じさせる程度の変形(たわみによる変形のこと)が、フレネルレンズシートに起こらない。その結果、フレネルレンズシート1の中心に対する映像光5の入射角度θが大きい場合においても、フレネルレンズシート1を透過した映像光7に顕著なゆがみが生じないので、近年の背面投射型表示装置の薄型化及び高品質化に寄与できる。
(第2実施形態)
図2は、基材11とその基材11上に形成されたフレネルレンズ要素部分12とからなる複合形態のフレネルレンズシート1’の一例を示す断面図である。このフレネルレンズシート1’も、第1実施形態と同様に、入射面3とその入射面3から入射する映像光5の一部又は全部を全反射して所望の方向に偏向する全反射面4とを有する単位全反射フレネルレンズ2が入光側に配列されている複合型のフレネルレンズシートであり、かつ、前述した関係式を満たすものである。
基材11を構成する透明樹脂としては、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂等が好ましく用いられる。なお、フレネルレンズ要素部分12は基材11に比べてかなり薄いので、一般的に用いられるアクリル系のUV樹脂等を好ましく用いることができる。
このフレネルレンズシート1’は、図2に示すように、微小な全反射フレネルレンズ2を形成した部分12と、シートの剛性を担う基材11部分とから構成されている。このフレネルレンズシート1’は、基材11上のフレネルレンズ要素部分12をUV硬化樹脂で形成できるので、レンズの形成が容易であり、製造コストを低減することができるという効果がある。
このような構成において、フレネルレンズシート1’のたわみの程度を決定するのは基材11であるので、その基材11の特性が前述した本発明の特徴的な関係式を満たせばよい。フレネルレンズ要素部分12は、基材11に比べて1/10又はそれ以下の厚さであるので、フレネルレンズシート1’のたわみの発生にほとんど影響しない。
なお、この第2実施形態の場合においても、第1実施形態の場合と同様に、拡散剤を含有させたり、出光側にレンチキュラーレンズやルーバーを形成するなどして、迷光の影響を抑制したり、コントラストの低減を抑制することができる。
以上のような第2実施形態のフレネルレンズシート1’によれば、前記の関係式を満たすので、フレネルレンズシート1’を透過した映像光7にゆがみを生じさせる程度の変形(たわみによる変形のこと)が、フレネルレンズシートに起こらない。その結果、フレネルレンズシート1’の中心に対する映像光5の入射角度θが大きい場合においても、フレネルレンズシート1’を透過した映像光7に顕著なゆがみが生じないので、近年の背面投射型表示装置の薄型化及び高品質化に寄与できる。
(第3実施形態)
図13(a)は、フレネルレンズ形成シート13と、そのフレネルレンズ形成シート13の出光面側に貼り合わされる補助シート14とからなる複合形態のフレネルレンズシート41の一例を示す断面図である。このフレネルレンズシート41も、第1実施形態と同様に、入射面3とその入射面3から入射する映像光5の一部又は全部を全反射して所望の方向に偏向する全反射面4とを有する単位全反射フレネルレンズ2が入光側に配列されている複合型のフレネルレンズシート41であり、かつ、フレネルレンズシート41全体として前述した関係式を満たすものである。この第3実施形態のフレネルレンズシート41は、そのフレネルレンズ形成シート13が、第1実施形態で説明したように、全反射フレネルレンズ2を備えた単一構造である点に特徴がある。
このフレネルレンズシート41は、補助シート14の厚さに比べてフレネルレンズ形成シート13の厚さが薄い。そのため、補助シート14を構成する透明樹脂として、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂等が好ましく用いられる。そして、フレネルレンズシート全体として前述した関係式を満たすように構成することにより、投影映像のゆがみの発生を抑え、平面性の悪化を最小限に抑えることができる。
一方、フレネルレンズ形成シート13は補助シート14に比べて薄いので、前述した第2実施形態で説明したように、映像のゆがみにあまり影響しない。そのため、通常は一般的に用いられるアクリル系のUV樹脂等が用いられるが、補助シート14と同様の樹脂で形成することもできる。
フレネルレンズ形成シート13は、図14に示すように、フレネルレンズの逆形状を有する金型42を用い、前記樹脂をプレス成形、射出成形又はキャスティング成形などにより成形し、その金型42から離型することにより製造される。なお、前述した透明樹脂としては、混ぜものがなく均一なものを用いることができるが、迷光をなくすための前述した各種の手段を適用することが好ましい。
フレネルレンズ形成シート13と補助シート14とは、エポキシ系の透明な接着剤やアクリル系の透明な粘着剤で貼り合わせることができ、また、UV硬化樹脂を塗布して積層した後にUV照射により貼り合わせてもよい。このときの接着剤層又は粘着剤層等の厚さは約10〜100μmであることが好ましい。
また、補助シートを、レンチキュラーレンズが形成されたレンチキュラーレンズシートとすることも可能である。フレネルレンズ形成シートにレンチキュラーレンズシートを貼り合わせて一体化させることにより、レンチキュラーレンズを有するフレネルレンズシートを極めて効率的に作製することができる。
フレネルレンズシートの厚さについては、前述した関係式を満たすことができる厚さであることが必要であるが、通常0.2〜0.6cmであることが好ましい。また、フレネルレンズ形成シート13の厚さについては、特にフレネルレンズ要素の先端角aが約40°程度(例えば、36〜44°)とかなり鋭角な場合においては、良好な離型性の観点から、通常0.05〜0.2cmであることが好ましく、0.1〜0.2cmであることがより好ましい。また、補助シート14の厚さについては、通常0.2〜0.4cmであることが好ましい。
この第3実施形態の場合においても、第1実施形態の場合と同様に、拡散剤を含有させたり、出光側にレンチキュラーレンズやルーバーを形成するなどして、迷光の影響を抑制したり、コントラストの低減を抑制することができる。
以上のような第3実施形態のフレネルレンズシートによれば、フレネルレンズ形成シート13の厚さをより一層薄くすることができるので、フレネルレンズの転写形状(逆形状)が形成されている金型42から、薄く柔軟なフレネルレンズ形成シート13を容易に離型することができる。その結果、フレネルレンズシートの製造の効率化を達成できる。また、フレネルレンズシートの全体としては、前記の関係式を満たすので、投影映像のゆがみが発生し難く、金型からの離型作業の効率化を達成できるフレネルレンズシートの提供が可能となる。
(第4実施形態)
図13(b)は、フレネルレンズ形成シート13’と、そのフレネルレンズ形成シート13’の出光面側に貼り合わされる補助シート14とからなる複合形態のフレネルレンズシート41’の一例を示す断面図である。このフレネルレンズシート41’も、第1実施形態と同様に、入射面3とその入射面3から入射する映像光5の一部又は全部を全反射して所望の方向に偏向する全反射面4とを有する単位全反射フレネルレンズ2が入光側に配列されている複合型のフレネルレンズシート41’であり、かつ、フレネルレンズシート41’全体として前述した関係式を満たすものである。
この第4実施形態のフレネルレンズシート41’は、図13(b)に示すように、そのフレネルレンズ形成シート13’が、シートの剛性を担う基材11と、その基材11上に形成された微小な全反射フレネルレンズ要素部分12とからなる複合形態である点に特徴がある。
このフレネルレンズシート41’は、補助シート14の厚さに比べてフレネルレンズ形成シート13’の厚さが薄く、さらにそのフレネルレンズ形成シート13’においては、基材11に比べてフレネルレンズ要素部分12の厚さはかなり薄く形成されている。そのため、補助シート14を構成する透明樹脂として、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、硝子板等が好ましく用いられる。そして、フレネルレンズシート41’の全体として前述した関係式を満たすように構成することにより、投影映像のゆがみの発生を抑え、平面性の悪化を最小限に抑えることができる。
一方、フレネルレンズ形成シート13’は補助シート14に比べて薄いので、前述した第2実施形態で説明したように、映像のゆがみにあまり影響しない。そのため、通常は一般的に用いられるUV樹脂等が用いられるが、補助シート14と同様の樹脂で形成することができる。なお、このフレネルレンズ形成シート13’において、基材上のフレネルレンズ要素部分12をUV硬化樹脂で形成することにより、レンズの形成を容易とすることができ、製造コストを低減することができるという効果がある。また、フレネルレンズ形成シート13’を構成する基材を11を補助シート14と同様の樹脂で形成し、フレネルレンズ要素部分12をUV樹脂で形成することもできる。
このフレネルレンズ形成シート13’は、フレネルレンズの逆形状を有する金型42を用い、フレネルレンズ要素部分12を形成するための透明樹脂をプレス成形、射出成形又はキャスティング成形などにより基材11上に成形して製造される。前述した透明樹脂としては、混ぜものがなく均一なものを用いることができるが、迷光をなくすための前述した各種の手段を適用することが好ましい。
また、フレネルレンズ形成シート13’と補助シート14との貼り合わせについても、前述した第3実施形態で説明したのと同様である。また、補助シート14を、レンチキュラーレンズが形成されたレンチキュラーレンズシートとすることも、前記第3実施形態と同様に可能であり、同様の効果を奏する。また、フレネルレンズシート41’の厚さ、フレネルレンズ形成シート13’の厚さ、及び、補助シート14の厚さについても、前記第3実施形態と同様に可能であり、同様の効果を奏する。
このような構成において、フレネルレンズシートのたわみの程度を決定するのは、フレネルレンズ形成シート13’を構成する基材11、及び補助シート14であるので、その基材と補助シートとからなるフレネルレンズシート全体の特性が前述した本発明の特徴的な関係式を満たせばよい。フレネルレンズ要素部分12は、フレネルレンズシート41’全体の厚さに比べて1/10又はそれ以下の厚さであるので、フレネルレンズシート41’のたわみの発生にほとんど影響しない。
なお、この第4実施形態の場合においても、第1実施形態の場合と同様に、拡散剤を含有させたり、出光側にレンチキュラーレンズやルーバーを形成するなどして、迷光の影響を抑制したり、コントラストの低減を抑制することができる。
以上のような第4実施形態のフレネルレンズシートによれば、フレネルレンズ形成シート13’の厚さをより一層薄くすることができるので、フレネルレンズの転写形状(逆形状)が形成されている金型42から、薄く柔軟なフレネルレンズ形成シート13’を容易に離型することができる。その結果、フレネルレンズシートの製造の効率化を達成できる。また、フレネルレンズシートの全体としては、前記の関係式を満たすので、投影映像のゆがみが発生し難く、金型からの離型作業の効率化を達成できるフレネルレンズシートの提供が可能となる。
(透過型スクリーン及び背面投射型表示装置)
本発明の透過型スクリーン30は、本発明に係るフレネルレンズシート自体で透過型スクリーンを構成するもの、本発明のフレネルレンズシート1とレンチキュラーレンズシート31とを有するもの(図15を参照)、さらにそれらに前面シート等を加えたもの、等々を挙げることができる。何れにしても本発明の透過型スクリーンは、前述した関係式を満たすフレネルレンズシートを備えているものである。また、本発明の背面投射型表示装置は、前述した本発明のフレネルレンズシート又は透過型スクリーンを備えるものである。
本発明の特徴を満たし、本発明の所期の目的を達成することができる限りにおいて、本発明のフレネルレンズシートには、従来公知の他の構成を付加してもよい。
以下、本発明の透過型スクリーンについて具体的な実施例に基づき説明する。
(実施例1)
映像光が後方より斜めに投射される背面投射型表示装置として、画面サイズ50インチ(アスペクト比16:9、縦62.3cm×横110.7cm)、フレネルレンズシートからプロジェクター(光源)までの水平距離25cm、画面下端からプロジェクターを含む水平面までの垂直距離17cm、画面中心での映像光の入射角62.6°となるように構成した。
フレネルレンズシートは、アクリル樹脂で形成し、厚さTを0.35cm、レンズピッチを0.011cmとなるように形成した。このフレネルレンズシートの弾性係数は30000kgf/cmであった。弾性係数は、JIS K 7113 プラスチックの引張試験方法により測定した。なお、このフレネルレンズシートには拡散剤がフレネルレンズシート全体の0.1重量%含まれていた。
これらの値を、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、に代入すると、H×H/(10×E×T×T)=0.106、3L/2000=0.166であるので、0.106≦0.166、となった。
このフレネルレンズシートを有する実施例1の透過型スクリーンでは、ゆがみがない良好な映像が得られた。
また、図15に示すように、前記のフレネルレンズシート1の出光面側に、フレネルレンズシート1とは別体のレンチキュラーレンズシート31を配置して透過型スクリーンを構成した。そのレンチキュラーレンズシート31は、厚さ0.1cmでピッチ0.014cmの垂直レンチキュラーレンズ32を有し、光拡散剤を含みかつ垂直レンチキュラーレンズ32のレンズ表面に沿った部分にだけ光吸収層33を有するレンチキュラーレンズシート(ピークゲイン4、αH25°、αV8°)である。ここで、ゲインとは、スクリーンの後方から光線を入射し、前方に出てくる光の輝度の角度分布を測定し、スクリーンにおける照度と各々の輝度とから、ゲインG=π×輝度(cd/m)/照度(lx)の関係式により求めたものである。なお、ピークゲインとは、スクリーンの中で最大のゲイン値のことであり、本願においては、スクリーンの中心をスクリーンの正面から観察したときのゲインの最大値を示す。また、αHは水平方向のピークゲインの半値角のことであり、αVは垂直方向のピークゲインの半値角を表すものである。このように別体のレンチキュラーレンズシート31を有する透過型スクリーンにおいても、ゆがみがない良好な映像が得られた。
(実施例2)
映像光が後方より斜めに投射される背面投射型表示装置として、画面サイズ60インチ(アスペクト比16:9、縦74.7cm×横132.8cm)、フレネルレンズシートからプロジェクター(光源)までの水平距離23cm、画面下端からプロジェクターを含む水平面までの垂直距離20cm、画面中心での映像光の入射角68°となるように構成した。
フレネルレンズシートは、ポリカーボネートで形成し、厚さTを0.45cm、レンズピッチを0.011cmとなるように形成した。このフレネルレンズシートの弾性係数は25000kgf/cmであった。弾性係数は、JIS K 7113 プラスチックの引張試験方法により測定した。なお、このフレネルレンズシートには拡散剤がフレネルレンズシート全体の0.05重量%含まれていた。
これらの値を、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、に代入すると、H×H/(10×E×T×T)=0.11、3L/2000=0.213であるので、0.11≦0.213、となった。
このフレネルレンズシートを有する実施例2の透過型スクリーンでは、ゆがみがない良好な映像が得られた。
また、前記のフレネルレンズシートの出光面側に、フレネルレンズシートとは別体のレンチキュラーレンズシートを配置して透過型スクリーンを構成した。そのレンチキュラーレンズシートは、厚さ0.1cmでピッチ0.014cmの垂直レンチキュラーレンズを有し、光拡散剤を含みかつ垂直レンチキュラーレンズのレンズ表面に沿った部分にだけ光吸収層を有するレンチキュラーレンズシート(ピークゲイン4、αH25°、αV8°)である。このように別体のレンチキュラーレンズシートを有する透過型スクリーンにおいても、ゆがみがない良好な映像が得られた。
(実施例3)
実施例1とほぼ同じ投射系及びフレネルレンズシートを形成した。ただし、実施例3においては、このフレネルレンズシートの出光面側にレンチキュラーレンズを形成した。そのレンチキュラーレンズは、ピッチが0.014cmで、一部全反射面を含むような垂直レンチキュラーレンズであり、内部に拡散特性グラフの半値角(αV)が10°であるような量の拡散剤を含有させ、さらに透過率が50%になるように光吸収剤を含有させた。ピークゲイン2、αH40°、αV10°の光学特性を有するスクリーンが得られた。このスクリーンは一枚構成であるので、取り扱いも容易で、ゆがみがない良好な映像が得られた。
(実施例4)
実施例2と同じ投射系及びフレネルレンズシートを形成した。ただし、実施例4においては、厚さTが0.45cmのポリカーボネート基板の上にUV硬化樹脂によりピッチ0.011cmのフレネルレンズを形成した。UV硬化樹脂の厚さを0.02cmとした。
これらの値を、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、に代入すると、実施例2と同様に、0.11≦0.213、となった。
このフレネルレンズシートを有する実施例4の透過型スクリーンでは、ゆがみがない良好な映像が得られた。
また、前記のフレネルレンズシートの出光面側に、フレネルレンズシートとは別体のレンチキュラーレンズシートを配置して透過型スクリーンを構成した。そのレンチキュラーレンズシートは、厚さ0.1cmでピッチ0.014cmの垂直レンチキュラーレンズを有し、光拡散剤を含みかつ垂直レンチキュラーレンズのレンズ表面に沿った部分にだけ光吸収層を有するレンチキュラーレンズシート(ピークゲイン4、αH25°、αV8°)である。このように別体のレンチキュラーレンズシートを有する透過型スクリーンにおいても、ゆがみがない良好な映像が得られた。
(実施例5)
映像光が後方より斜めに投射される背面投射型表示装置として、画面サイズ70インチ(アスペクト比4:3、縦106.7cm×横142.2cm)、フレネルレンズシートからプロジェクター(光源)までの水平距離32cm、画面下端からプロジェクターを含む水平面までの垂直距離30cm、画面中心での映像光の入射角69°となるように構成した。
フレネルレンズシートは、図13(a)に示すような、アクリル−スチレン共重合体で形成した厚さ0.2cmのフレネルレンズ形成シート13と、アクリル板で形成した厚さ0.35cmの補助シート14とをアクリル系接着剤で貼り合わせて厚さ0.55cm、レンズピッチ0.011cmのフレネルレンズシート41を使用した。
このフレネルレンズシート41の作製において、図14に示すように、金型42からのフレネルレンズ形成シート13の離型作業は極めて容易であり、作業性の改善が図られた。
このフレネルレンズシート41の弾性係数は、フレネルレンズ形成シート13が33000kgf/cmであり、補助シート14が30000kgf/cmであるので、これらの平均値の31500kgf/cmであった。なお、これらのフレネルレンズ形成シート13及び補助シート14は拡散剤等を含まないものである。その値と前述の値を、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、に代入すると、H×H/(10×E×T×T)=0.12、3L/2000=0.213であるので、0.12≦0.213、となった。
このフレネルレンズシートを有する実施例5の透過型スクリーンでは、ゆがみがない良好な映像が得られた。また、前記のフレネルレンズシートの出光面側に、実施例1と同じレンチキュラーレンズシートを配置して透過型スクリーンを構成した。こうして形成され透過型スクリーンにおいても、ゆがみがない良好な映像が得られた。
(実施例6)
実施例2と同じ投射系において、実施例2と同じ厚さ(0.45cm)のフレネルレンズシートを形成した。ただし、実施例6においては、図13(a)に示すような、ポリカーボネートで形成した厚さ0.2cmのフレネルレンズ形成シート13と、そのシートと同一材質であるポリカーボネートで形成した厚さ0.25cmの補助シート14とを透明なアクリル系粘着剤で貼り合わせたフレネルレンズシート41を使用した。
このフレネルレンズシート41の作製において、金型42からのフレネルレンズ形成シート13の離型作業は極めて容易であり、作業性の改善が図られた。また、フレネルレンズ形成シート13と補助シート14との材質が同じであるので、環境変化に対する影響を受け難く、平面性も低下しなかった。
このフレネルレンズシート41の弾性係数は、フレネルレンズ形成シート13と補助シート14との材質が同じであるので、実施例2と同じ25000kgf/cmである。従って、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、についても、実施例2と同様に、0.11≦0.213、となった。このフレネルレンズシートを有する実施例6の透過型スクリーンでは、ゆがみがない良好な映像が得られた。また、前記のフレネルレンズシートの出光面側に、実施例2と同じようにレンチキュラーレンズシートを配置して透過型スクリーンを構成した。ただし、実施例6においては、レンチキュラーレンズシートは、内部に拡散特性グラフの半値角(αV)が10°であるような量の拡散剤を含有させ、さらに透過率が50%になるように光吸収剤を含有させたものを用いた。こうして形成され透過型スクリーンにおいても、ゆがみがない良好な映像が得られ。
(実施例7)
実施例1と同じ投射系において、実施例1と同じフレネルレンズシートを形成した。ただし、実施例7においては、厚さTが0.025cmのポリエステル基板の上に厚さ0.02cmのUV硬化樹脂によりピッチ0.011cmのフレネルレンズシートを形成した。このフレネルレンズシートを厚さ0.2cmの硝子板の補助シートにアクリル系接着剤で貼り合わせた。このフレネルレンズシートの作製において、金型からのフレネルレンズシートの離型作業は極めて容易であり、作業性の改善が図られた。
このフレネルレンズシートの弾性係数は、700000kgf/cmである。なお、補助シートである硝子板の厚さがフレネルレンズシート全体の厚さの80%以上であると共に硝子板には拡散剤が含まれていなかったので、フレネルレンズシートの弾性係数は硝子板の弾性係数とした。従って、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、は、H×H/(10×E×T×T)=0.0139、3L/2000=0.166であるので、0.0139≦0.166、となった。
このフレネルレンズシートを有する実施例7の透過型スクリーンでは、ゆがみがない良好な映像が得られた。また、前記のフレネルレンズシートの出光面側に、実施例1と同じレンチキュラーレンズシートを配置して透過型スクリーンを構成した。こうして形成され透過型スクリーンにおいても、ゆがみがない良好な映像が得られた。
(比較例1)
実施例1と同じ投射系において、フレネルレンズシートの厚さTを0.2cmとした以外は実施例1と同様に構成した。そのフレネルレンズシートについて、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000は、H×H/(10×E×T×T)=0.323、3L/2000=0.166であるので、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000の関係を満たさなかった。このフレネルレンズシートを有する比較例1の透過型スクリーンでは、画像がゆがんで良好な映像が得られなかった。
(比較例2)
実施例2と同じ投射系において、フレネルレンズシートとして、厚さTが0.25cmのポリエステル基板の上に厚さ0.02cmのUV硬化樹脂によりピッチ0.011cmのフレネルレンズを形成したシートを用いた。このフレネルレンズシートについて、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000は、H×H/(10×E×T×T)=0.357、3L/2000=0.213であるので、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000の関係を満たさなかった。このフレネルレンズシートを有する比較例2の透過型スクリーンでは、画像がゆがんで良好な映像が得られなかった。
全反射フレネルレンズを備えた単一構造からなるフレネルレンズシートの一例を示す断面図である。 基材とその基材上に形成されたフレネルレンズ要素部分とからなる複合形態のフレネルレンズシートの一例を示す断面図である。 水平な直線をスクリーン上に映し出したときに生じる曲がりを説明する概略図である。 フレネルレンズシートのたわみについて説明する概略図である。 単管方式の光源を用いた本発明に係る薄型の背面投射型表示装置の構成を示す概略図である。 薄型の背面投射型表示装置において、フレネルレンズの位置が変化することによる映像の位置の変化を説明する概略図である。 フレネルレンズシートにおける迷光を説明する光線追跡図である。 フレネルレンズシートが光を拡散させる拡散剤を含有している一例を示す断面構成図である。 フレネルレンズシートが光吸収層を有している一例を示す断面図である。 円弧状の垂直レンチキュラーレンズをフレネルレンズシートの出光面に形成した例である。 台形状の垂直レンチキュラーレンズを出光面に形成した例である。 全反射フレネルレンズの形態の一例を示す断面図である。 本発明のフレネルレンズシートの他の例を示す断面図である。 フレネルレンズ形成シートを金型から剥離する工程の説明図である。 本発明の透過型スクリーンの一例を示す構成図である。 従来型の背面投射型表示装置の構成を示す概略図である。 従来型の背面投射型表示装置において、フレネルレンズの位置が変化することによる映像の位置の変化を説明する概略図である。
符号の説明
H フレネルレンズシート又は基材の垂直方向の長さ(cm)
L フレネルレンズシート又は基材の水平方向の長さ(cm)
T フレネルレンズシート又は基材の厚さ(cm)
θ 入射角度
P 曲がり
Q ズレの許容長さ
W たわみ量
a、b、c フレネルレンズの構成角度
1、1’、21、41、41’ フレネルレンズシート
2、22 単位全反射フレネルレンズ
3、23 入射面
4、24 全反射面
5 入射する映像光
6 出光面
7 透過した映像光
8 光源
9 直線
10、30 透過型スクリーン
11 基材
12 フレネルレンズ要素部分
13、13’ フレネルレンズ形成シート
14 補助シート
15 拡散剤
16、33 光吸収層
17 円弧状の垂直レンチキュラーレンズ
18 台形状の垂直レンチキュラーレンズ
19 台形の斜面
20 迷光
25 迷光して出光する光
31 レンチキュラーレンズシート
32 レンチキュラーレンズ
42 金型
51、52 背面投射型表示装置
53 ミラー

Claims (13)

  1. 入射面と当該入射面から入射する映像光の一部又は全部を全反射して所望の方向に偏向する全反射面とを有する単位全反射フレネルレンズが入光側に配列されたフレネルレンズシートであって、
    フレネルレンズシートの垂直方向の長さH(cm)、フレネルレンズシートの水平方向の長さL(cm)、フレネルレンズシートの厚さT(cm)、及びフレネルレンズシートの弾性係数E(kgf/cm)とが、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、の関係を満たすことを特徴とするフレネルレンズシート。
  2. 基材の入光側に、入射面と当該入射面から入射する映像光の一部又は全部を全反射して所望の方向に偏向する全反射面とを有する単位全反射フレネルレンズが配列されたフレネルレンズを有するフレネルレンズシートであって、
    基材の垂直方向の長さH(cm)、基材の水平方向の長さL(cm)、基材の厚さT(cm)、及び基材の弾性係数E(kgf/cm)とが、H×H/(10×E×T×T)≦3L/2000、の関係を満たすことを特徴とするフレネルレンズシート。
  3. 前記フレネルレンズシートは、フレネルレンズが形成されたフレネルレンズ形成シートと、当該フレネルレンズ形成シートの出光面側に貼り合わされる補助シートとからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフレネルレンズシート。
  4. 前記補助シートが、レンチキュラーレンズが形成されたレンチキュラーレンズシートであることを特徴とする請求項3に記載のフレネルレンズシート。
  5. 前記フレネルレンズ形成シートと前記補助シートとが、同じ材質であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のフレネルレンズシート。
  6. フレネルレンズシートが、光を拡散させる拡散剤を含有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフレネルレンズシート。
  7. フレネルレンズシートが、光を吸収するように着色されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のフレネルレンズシート。
  8. フレネルレンズシートが、光吸収層を有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のフレネルレンズシート。
  9. フレネルレンズシートの片面又は両面に、反射率を低下させる層が形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のフレネルレンズシート。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のフレネルレンズシートの出光面に、光を拡散させるレンチキュラーレンズが形成されていることを特徴とする透過型スクリーン。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のフレネルレンズシートの出光面側に、光を拡散させるレンチキュラーレンズを有するレンチキュラーレンズシートが配置されていることを特徴とする透過型スクリーン。
  12. 透過型スクリーンの片面又は両面に、反射率を低下させる層が形成されていることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の透過型スクリーン。
  13. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のフレネルレンズシート、又は請求項10〜12のいずれか1項に記載の透過型スクリーンを含むことを特徴とする背面投射型表示装置。
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