JP3842121B2 - フレネルレンズシートおよび透過型投影スクリーン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透過型投影スクリーンに用いたときに、投影光の利用率が全面に渡って高く、特に周辺部におけるレンズ機能の低下の無い改良されたフレネルレンズシート、およびそのようなフレネルレンズシートを用いて構成された透過型投影スクリーンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スクリーン背面よりプロジェクターで投影する際に使用する透過型投影スクリーンにおいては、プロジェクターから角度を持って広がる投影光を観察者側に集光させるために、フレネル凸レンズ(以降、単にフレネルレンズと言う。)を用いている。このフレネルレンズは、レンズを同心円状に細かく分割し、各部分におけるその傾斜角のみを平面上に形成した単位レンズ群でレンズ面を構成したもので、通常のレンズと同じ機能を持ちながら、厚みが薄く、従って軽量化が図れるメリットがある。
【0003】
フレネルレンズのレンズ面に対し、フレネルレンズの光軸と平行な平行光が入射する場合には、レンズ面が、分割された単位レンズ群からなっていても支障はないが、比較的近い位置に置かれた光源から、角度を持って広がる光が入射する場合、各単位レンズの斜面であるレンズ斜面に入射する以外に、互いに隣接する単位レンズの境界にある、光軸と垂直な面(以降、レンズ垂直面と言う。)にも入射する。
【0004】
図1および図2は、この種の分野で用いられる従来のフレネルレンズの働きを示す図である。図1および図2に示す従来のフレネルレンズシート11としては、いずれも、多数の単位レンズからなるレンズ面を上面に有するフレネルレンズシートのレンズの光軸よりも右側の一部の断面を示しており、各レンズ斜面12aは右下がりの斜面をなしており、各単位レンズの境界にはレンズ垂直面12bを有しているものである。なお、図1および図2、並びに後に引用する図3におけるフレネルレンズシートは、いずれもレンズのピッチが互いに等しいものとする。
【0005】
図1に示す例では、フレネルレンズシート11のレンズ面(図の上面)に、図の左上方より、光軸に対し20°の角度で光I11およびI12が、各々、レンズ垂直面12bおよびレンズ斜面12aに入射する。レンズ斜面12aは、光軸に対し20°の角度で入射した光が図面の下方に向かって垂直方向に出射するよう、予め傾きθが定めてあるので(θ=29.266°、ただし、屈折率;1.55とする。)、レンズ斜面に入射した光I12は、レンズ斜面12aで屈折し、正面で観察可能な光I12’となる。これに対し、レンズ垂直面に入射した光I11は、レンズ垂直面で屈折してフレネルレンズシート1内の斜め右下方向に進む光I11’となり、最終的には、フレネルレンズシート1の垂直方向から、かなり右側にずれた方向(=レンズの外側向きの方向)を向いて出射するので、正面から観察する観察者にとっては観察不可能な光となる。このように、光軸に対し20°の角度で入射した光のうち、レンズ斜面から入射した光のみが利用可能な有効光であり、有効光の割合は、フレネルレンズシート11の素材の屈折率を1.55程度とするとき、約80%である。
【0006】
図2においては、光軸に対し38°の角度で光I11およびI12が入射したときの様子を示している。レンズ斜面12aは、光軸に対し38°の角度で入射した光が下方の垂直方向に出射するよう、予め傾きθが定めてあるので(θ=38.937°、ただし、屈折率;1.55とする。)、レンズ斜面に入射した光I12は、垂直方向に出射する観察可能な光I12’となるが、レンズ垂直面に入射した光I11は、屈折後、上記の図1の場合よりも上向きで、従って、フレネルレンズシート11のより右側を目指して進む光I11’となり、フレネルレンズシート11の垂直方向から、上記の場合よりも、もっと右側にずれた方向に出射するので、正面から観察する観察者にとっては、より一層、観察不可能な光となる。このように、光軸に対して38°の角度で光が入射した場合、レンズ斜面に入射する光の割合が低く、有効光の割合は、37%程度となるため、実際上、透過型投影スクリーン用途としては使用できないものである。
【0007】
上記の二例からも分かるように、光軸に対し、入射する光の角度が大きくなるほど、有効光の割合が減少する。上記の光軸に対し38°の角度で光が入射する例は、50型(フレネルレンズの半径;635mmに相当)のテレビジョンセットであれば、フレネルレンズシート11がプロジェクターから約800mmの位置である場合に相当するので、有効光の割合を高くすることができれば、テレビジョンセットをコンパクトの構成できる点で、極めて魅力的である。従って、このような条件下でも、有効光の割合が高いフレネルレンズシートが強く望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明においては、入射する光の角度が大きくなっても、入射した光を有効に観察者に向けることが可能なフレネルレンズシートを提供することを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決する手段】
上記の課題は、フレネルレンズシートのレンズの一部において、フレネルレンズのレンズ斜面に入射した光を、フレネルレンズシートに垂直な光軸方向よりもレンズの内側を向いて出射するよう、また、フレネルレンズのレンズ垂直面に入射した光を、光軸方向よりもレンズの外側を向いて出射するよう、さらに、各々の出射する方向が前記光軸に対してほぼ対称で、かつ、ある範囲に納まるように、レンズ斜面の傾きを設定することにより、課題を解決することができた。
【0010】
第1の発明は、シートの一方の面にフレネルレンズを有しており、前記フレネルレンズの光軸上から前記フレネルレンズに光を当てたときに、少なくとも前記フレネルレンズの一部において、前記フレネルレンズを構成するレンズ斜面に入射した光が、前記シートの反対側の面から前記フレネルレンズの光軸方向よりも内側を向いて出射し、かつ、前記フレネルレンズを構成するレンズ垂直面に入射した光が、前記シートの反対側の面から前記光軸方向よりも外側を向いて出射すると共に、各々の出射する方向が前記光軸に対してほぼ対称な方向となるようレンズ斜面の角度θが構成されていることを特徴とするフレネルレンズシートに関するものである。
第2の発明は、第1の発明において、前記レンズ斜面に入射し、前記シートの反対側の面から出射する光が、前記フレネルレンズの外周部へ向かうほど、焦点距離が短くなるよう構成されていることを特徴とするフレネルレンズシートに関するものである。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記シートの厚みが1mm以下であることを特徴とするフレネルレンズシートに関するものである。
第4の発明は、第1〜第3いずれかの発明において、前記シートの前記フレネルレンズを有していない方の側に、前記シートの屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層が積層されていることを特徴とするフレネルレンズシートに関するものである。
第5の発明は、第1〜第4いずれかの発明において、前記シート内に光拡散材が分散されていることを特徴とするフレネルレンズシートに関するものである。
第6の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、前記シートの前記フレネルレンズを有する側とは反対側にレンチキュラーレンズを有することを特徴とするフレネルレンズシートに関するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
図3(a)は、本発明のフレネルレンズシート1の働きを示す図である。図3(a)に示すフレネルレンズシート1も、図1や図2を引用して説明したフレネルレンズシート11と同様に、多数の単位レンズからなるレンズ面を上面に有するフレネルレンズシートであり、図では、そのレンズの光軸よりも右側の一部の断面を示してある。各レンズ斜面2aは右下がりの斜面をなし、各単位レンズの境界にはレンズ垂直面2bを有しているものであるが、レンズ斜面2aは図2におけるレンズ斜面(図3(a)中にも破線で示す。)にくらべ、より右下がりの急な斜面をなし、フレネルレンズシート1のシート方向(図では左右方向)に対し、角度θ(図では、θ=45.592°、ただし、屈折率;1.55とする。)の傾きを有するものであり、角度θが急であることに基づき、レンズ垂直面2bも図2のものにくらべて高くなっている。
【0012】
この図3(a)に示すフレネルレンズシート1に対し、図2におけるのと同様、光軸に対し38°の角度で光I1およびI2が入射すると、レンズ斜面2aは、図2に示すフレネルレンズシート11のレンズ斜面12a(図3(a)中、破線でも表示)よりも急な角度を有しているので、レンズ斜面2aに入射した光I2は、レンズ斜面2aで屈折した後、フレネルレンズシート1の下方に、垂直方向よりもレンズの内側向きの方向にずれた角度θ2の方向に出射する。
【0013】
また、図3(a)に示すフレネルレンズシート1のレンズ垂直面2bに入射した光I1は、屈折してフレネルレンズシート1内の右下方向に進む光I1’となり、フレネルレンズシート1の下面で全反射した後、入射側の幾つかのレンズ垂直面およびレンズ斜面を透過した後、レンズ斜面で全反射して、レンズの下方に、垂直方向よりもレンズの外側向きの方向にずれた角度角度θ1の方向に出射する。ただし、レンズ斜面2aの角度が図2に示すものよりも急であるため、出射する光の方向は、図2示すフレネルレンズシート11にくらべれば、内側向き、即ち、θ1が小さい方向となっている。
【0014】
即ち、図1および図2を引用した従来の例においては、レンズ斜面に入射した光のみが観察可能であり、レンズ垂直面に入射した光は、観察可能な範囲外に出射していたのに対し、本発明においては、レンズ斜面に入射した光は、レンズの内側向きにθ2の傾きを持って、また、レンズ垂直面に入射した光はレンズの外側向きにθ1の傾きを持って出射する。各々の出射光の角度θ1およびθ2が、小さく、いずれも10°以下であるか、または両角度θ1およびθ2の合計が20°以下であれば、十分視認可能である。また、これら出射光の角度θ1およびθ2は値がほぼ等しい、すなわち、出射光の方向が光軸方向に対し、ほぼ対称であることが好ましく、0.5≦θ1/θ2≦2であることが好ましい。
【0015】
レンズの垂直方向に対し、上記の両角度θ1およびθ2がほぼ等しい場合、即ち、レンズの垂直方向に対称に出射する場合は、トータル的には、垂直方向に出射した光とほぼ同じ働きを果す。フレネルレンズシート1は、レンチキュラーレンズシート等の拡散手段と組み合わせて使用するので、拡散手段と組み合わせたときの様子を次に説明する。
【0016】
図3(b)は、図3(a)に示すフレネルレンズシート1を反時計回りに90°回転させて示し、かつ、その出射光を拡散手段3を付加して拡散させるよう構成した状態を示すものである。まず、図3(b)に示すように、拡散手段21は、拡散手段に対して垂直な方向(破線で示す方向である。)から光が入射したとすれば、符号Ic1およびIc2を付した角度範囲θDに光を拡散させ得るものである。そこで、フレネルレンズシート1に斜め方向から入射した光Iが、フレネルレンズシート1の垂直方向よりも角度θ1の傾きを持ってフレネルレンズシート1の外側(図3(b)では上側)の方向に、また、フレネルレンズシート1の垂直方向よりも角度θ2の傾きを持ってフレネルレンズシート1の内側(図3(b)では下側)の方向に、角度θ1およびθ2がほぼ等しい関係を有して出射したとすると、これらの出射光のうち、上側に角度θ1の方向に出射した光は、拡散手段21に入射して符号IO1およびIO2(添え字「o」は外側を表す。)を付した角度範囲に拡散し、また、垂直方向に対し角度θ2を有して出射した光は、拡散手段21に入射して符号Ii1およびIi2(添え字「i」は内側を表す。)を付した角度範囲に拡散し、いずれの角度範囲も、先の拡散手段に対して垂直な方向(破線で示す方向である。)から光が入射した場合の角度範囲θDとほぼ等しい。ここで、符号Ii1およびIO2を付した角度範囲θD’では、2種類の拡散光が重複しているので、この角度範囲内であれば、先の角度範囲θDにくらべれば、若干狭い角度範囲ではあるものの、ほぼ同範囲に、先の角度範囲θD内におけるのと同様の強度の光が得られる。
【0017】
図4に示すように、本発明のフレネルレンズシート1においては、フレネルレンズシート1のレンズ斜面2aのシート方向となす角度θは、入射光の角度αおよび出射光の角度β、および入射光が屈折して得られる屈折光とフレネルレンズシート1のなす角度γとの関係を有しており、角度αは、レンズ面側の光軸上に設置されるプロジェクターとレンズ面との距離F1と、フレネルレンズシート1の半径Rとの関係を、また、角度βは、想定された観察位置とフレネルレンズシート1との距離F2と上記Rとの関係で決まる。また、フレネルレンズシート1を構成する素材の屈折率nも入射光の屈折等に影響を与え、結局、レンズ斜面の角度θは、上記のα、β、γ、およびnとから次のように求めることができる。
【0018】
まず、フレネルレンズシート1との角度αを有して、フレネルレンズシート1のシート方向と角度θを有するレンズ斜面に入射した光I2は、屈折した後、シート方向に垂直な方向に対して、γの角度に進んで行く。入射光I2の方向と屈折後の屈折光の方向とは、α、γ、θ、およびnから表現される次の(1)の関係を有する。
sin(θ+α)/sin(θ−γ)=n ・・・(1)
【0019】
上記(1)の左辺の分母および分子は、次の(2)および(3)のように表現でき、これらを上記(1)に代入して整理すると、(4)のように表現できる。
sin(θ+α)=sinθcosα+cosθsinα ・・・(2)
sin(θ−γ)=sinθcosγ−cosθsinγ ・・・(3)
tanθ=(sinα+nsinγ)/(ncosγ−cosα)・(4)
【0020】
角度γは、フレネルレンズシート1から出射した光の角度βから逆に決められるべきものであるから、βが0でない場合には、下記(5)のように表現することができ、さらに、γが小さいときは、近似的により簡略化した下記(5’)のように表現することもできる。
sinγ/sinβ=1/n ・・・(5)
γ=sinβ/n ・・・(5’)
【0021】
従来技術の説明においても説明したように、フレネルレンズシート1に入射した光のうち、レンズ斜面に入射する有効光の割合は、入射光とフレネルレンズシート1との角度によっても異なり、言い換えれば、フレネルレンズシート1上の位置によって異なるので、有効光の割合が問題になるのは、特に、フレネルレンズシートの外周部であって、かつ、入射光の角度が大きい場合である。
【0022】
従って、上記の(4)および(5)(もしくは(5’))の関係が、フレネルレンズシートの中心から外周にかけての全域に渡って成立するよう製作すれば、理想的であり、この結果、レンズシート全域に渡って、有効光の割合を高く保つことが可能であるが、実用的には、入射光の角度が0°以上で30°未満の範囲では、有効光の割合が比較的高いので、角度βを0°とし、即ち、出射光の方向がいずれも光軸と平行な方向な方向になるようにレンズ斜面の角度θを決め、有効光の割合が低下する、少なくともフレネルレンズシートの一部、即ち、入射光の角度が28°以上になる範囲においては、角度βが、例えば、5°〜10°程度になるようにレンズ斜面の角度θを決め、出射光を、先に述べたように、レンズシートの光軸方向よりも外側および内側に向けて、観察し得る出射光の強度を高めることが一つの実用的な処方である。
【0023】
上記のように、角度βを一つのフレネルレンズシート1内で、0°と有限なある値との2通りとする処方では、角度βが切り替わる境界付近での出射光の強度変化が目立ちやすい傾向が見られるので、このことを緩和する意味では、角度βを3通り以上に設定するとなおよい。
【0024】
ところで、図3(a)に示すように、レンズ斜面2aに入射した光I2は、フレネルレンズシート1の、入射位置とは反対側(図では下方)から出射するが、レンズ垂直面2bに入射した光I1は、各レンズに番号を対応させたとすると、入射した位置が仮に1番のレンズであるとすると、右方の5番のレンズの下方から出射しており、少なくともレンズ4つ分のズレを生じている。このズレが大きくなると、投影される映像が二重になって見える欠点が生じ得るが、ズレが小さい場合には、通常の観察距離を保って観察する際には、ズレとなって視認されることがごく少ない。このズレを積極的に小さくするには、フレネルレンズシート1の厚みを薄くするほうが好ましく、通常の商用テレビジョン放送の画面を投影し、レンズピッチが0.01mm〜0.5mm程度であれば、フレネルレンズシートの厚みが1mm以下であれば問題が殆どなく、厚みが0.5mm以下であれば実質上問題がない。
【0025】
フレネルレンズシート1の厚みを薄くする替わりに、レンズ面2aの直下に、レンズを構成する材料の屈折率よりも低い屈折率を有する材料からなる低屈折率層を設けて反射層としてもよく、このようにすると、フレネルレンズシート1のレンズ垂直面2bから入射した光が、フレネルレンズシート1内で全反射するまでの距離が短くなり、ひいては、出射する位置が、入射した位置に近づくので、先に述べたようなズレに基づく二重映像の発生を防止しやすい。図5は、そのような低屈折率層を設けたフレネルレンズシートの例を示すもので、図3におけるものと同様なレンズ斜面およびレンズ垂直面を有するフレネルレンズ層22の非レンズ面側(図では下面側)に、低屈折率層4、および支持用の透明基材シート5を順に積層した積層構造を有するフレネルレンズシート1’とすることができる。
【0026】
上記の積層構造において、低屈折率層4の厚みは、厚くてもよいが、入射光を全反射させることが可能であれば薄くてもよく、一例として、5μm〜100μm程度である。また、下層の透明基材シート5は省いてもよいが、上層のフレネルレンズ層22および低屈折率層4が薄いと、自立性が乏しくなるため、補強の意味で積層することが好ましい。なお、低屈折率層4は、フレネルレンズ層22および透明基材シート5を積層する接着剤層の機能を兼ねることができる。
【0027】
上記のように、フレネルレンズ層22の非レンズ面側に低屈折率層4を積層して反射層とすると、低屈折率層4のフレネルレンズ層22が積層したのとは反対側には、種々の層を積層しても、それらの層がフレネルレンズの特性に影響を与えることが無いので、低屈折率層4の下面の層として、光拡散材が分散された層を積層したり、下面側にレンズ形状を有する層を積層する等、付加的な要素を単独、もしくは適宜に組み合わせて適用してもよい。図6は、そのような要素を付加した例を示すもので、透明基材シート5としては、粒子状の光拡散材5aが分散されたものを用い、かつ、透明基材シート5の下面側に断面がV地状の突起の表面からなる全反射面6およびレンチキュラーレンズ7の形状を交互に有するものを積層してフレネルレンズシート1”とすることができる。
【0028】
以上の説明においては、図4に示すように、フレネルレンズシート1のレンズ面に対し、レンズの光軸上に置かれたプロジェクターから光が入射することを主に念頭において説明したので、具体的には、レンズの外周部において、レンズ斜面に入射した光をレンズ光軸方向よりも内側を向いて出射させ、レンズ垂直面に入射した光をレンズ光軸方向よりも外側を向いて出射させるようにすることが好ましく、この場合、「フレネルレンズの一部」は、「フレネルレンズの外周部」を指す。ただし、プロジェクターをレンズの光軸上にではなく、斜め方向に設置して投影する場合には、レンズのプロジェクターから遠い方の側において、レンズ斜面に入射した光をレンズ光軸方向よりも内側(プロジェクターのある側)を向いて出射させ、レンズ垂直面に入射した光をレンズ光軸方向よりも外側(プロジェクターのない側)を向いて出射させるようにすることが好ましく、「フレネルレンズの一部」は、「フレネルレンズの一端(その周辺を含む。)」を指す。
【0029】
以下に、本発明のフレネルレンズシート11の具体的な製造例を掲げる。
【0030】
【製造例】
(製造例1)
厚み;0.8mm、レンズピッチ;0.1mmの50型画面(縦/横=3/4、画面の対角線の長さ;1270mm)用フレネルレンズシートを屈折率nが、1.55である素材を用いて作成した。設計条件としては、F1;800mm、F2;∞(ただし、0mm≦R<450mm)、もしくは4000mm(ただし、450mm≦R≦635mm)とした。F1、F2、およびRは、図4(b)を引用した段落〔0017〕に説明したものである。これらの条件を段落〔0019〕および〔0020〕に説明した(4)および(5)に当てはめて計算し、フレネルレンズシート上の各位置におけるレンズ斜面の角度θを求めた結果に基づいて金型を切削して使用し、紫外線硬化性樹脂を金型面に流して硬化させ、フレネルレンズシートを得た。
【0031】
一例として、R=500mmにおける計算例を示す。まずF2=4000mm、R=500mmであるので、これらから角度β(=θ2)を求めると、β=7.125°である。得られたβを基にγを計算すると、γ=4.611°である。一方、角度αは、F1=800mmであるので、α=32°である。得られたα、およびγ、並びにnから、段落〔0019〕に説明した(4)により、θ=43.19°が得られる。なお、入射光がレンズ垂直面に入射して得られる出射光の角度は11.288°(フレネルレンズシートの法線に対し、レンズの外側に向かう角度θ1)である。この出射光の角度は、図3中に示すように、レンズ垂直面に入射した光I1が、全反射および屈折を順次起こすのに従って、計算により求められ、全反射が起きる臨界角は、40.178°である。
【0032】
上記の製造例1で得られたフレネルレンズの、0mm≦R<450mmの範囲から出光した光と、R=500mmにおいて出光した光の各々を、拡散手段に入射し、拡散手段から出光する光の強度は、次のようになる。
【0033】
使用する拡散手段としては、角度x°に関する光の強度f(x)が、半値角が20°であり、f(x)=exp(−a2x2)で、ただしa=0.04163であるガウス分布曲線に従った角度依存性を持つものを用いたとすると、フレネルレンズの0mm≦R<450mmの範囲から出光した光は、x=0°であるからf(x)=1である。これに対して、R=500mmの位置から出光した光は、θ2(図3(a)参照)が7.125°であるので、この7.125°の方向を中心とする光は、フレネルレンズに垂直な方向では、f(x)=0.91578であり、θ1(図3(a)参照)が11.288°であるので、この11.288°の方向を中心とする光は、フレネルレンズに垂直な方向では、f(x)=0.8019である。しかし、これらの値は入射光の強度が一定であることが前提であり、実際には、θ2およびθ1の方向に出光する光は、フレネルレンズシートに対したθ(図3(a)参照)=43.19°の傾きのレンズ斜面に、入射角α=32°で入射した光が、各々、レンズ垂直面およびレンズ斜面に対し、0.587:0.413の割合で入射して反対面から出光したものであるから、入射光の割合を掛けて足すと、0.91578×0.413+0.8019×0.587=0.8489となる。従って、製造例1で得られたフレネルレンズの、0mm≦R<450mmの範囲から出光した光の強度と、R=500mmにおいて出光した光の強度とは、実質的な差と感じられるほどの差を生じることがなく、実際の観察でも、それが確認された。
【0034】
(製造例2)
厚み、レンズピッチ、画面サイズ、および使用した素材の屈折率は実施例1と同じとし、設計条件としては、F1;800mm、F2;∞(ただし、0mm≦R≦430mm)、50000mm(R=440mm)、20000mm(R=450mm)、6000mm(R=460mm)、4000mm(R=470mm〜635mm)50mm≦R≦635mm)とし、Rが430mmを超えた範囲では、上記の各R値におけるF2の値を取り、かつ、それらの間が滑らかに変化するよう、F2を定めた。
【0035】
製造例2で得られたフレネルレンズシートは、製造例1で得られたフレネルレンズシート1とほぼ同等の性能を有し、製造例1で得られたものでは、R=450mm付近で、光の強度の差が僅かに視覚で感じられたのに対し、製造例2で得られたものでは、光の強度がレンズの外側に行くほど、徐々に下がるものの、目立った光の強度差のある境界の存在は視覚では感じられなかった。
【0036】
(製造例3)
製造例2と同様にして、ただし、厚みが0.2mmのフレネルレンズシートを製造し、図5に示すように光レンズ面側に低屈折率層(屈折率;1.3、厚み;0.05mm)、および透明基材シート(屈折率;1.49、厚み;2.75mm)を積層し、合計厚み;3mmの複合フレネルレンズシートを得た。この製造例3で得られた複合フレネルレンズシートと、製造例2で得られたものに、背面より映像を投影してくらべたところ、映像の鮮明さが、実用上の差は殆ど無いが、製造例3で得られたものの方が、鮮明差が視覚判定で勝っていた。また、製造例1および製造例2で得られたフレネルレンズシートは、単独では自立性が乏しいが、製造例3で得られたフレネルレンズシートは、剛性が高く、単独で自立性を有していた。
【0037】
(製造例4)
製造例3と同様に、ただし、透明基材シートとしては、下面側に、図6中、6および7で示す全反射面およびレンチキュラーレンズを有するものとし、また、透明基材シート内に、光拡散材を分散させたものを使用して、複合フレネルレンズシートを得た。この製造例4で得られたものは、単独で、左右方向の光の拡散が可能であり、フレネルレンズシート側から映像を投影して、全反射面およびレンチキュラーレンズのある側の広い角度範囲で映像の観察可能な透過型投影スクリーンとすることができた。この製造例4で得られたフレネルレンズシートも、剛性が高く、単独で自立性を有していた。
【0038】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、少なくとも、一部において、レンズ斜面から入射し、反対面から出射する光と、レンズ垂直面から入射して、反対面から出射する光とが、光軸方向に対してほぼ対称な方向となるよう構成されているので、従来利用ができなかった、レンズ斜面からの入射光に由来する光を観察方向に有効に出射可能なフレネルレンズシートを提供することができる。また、これらの構成により、焦点距離が短くても、有効に出射可能なフレネルレンズシートを提供することができる。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、外周部に行くほど、出射光を内側向きに出射可能になるよう構成されているので、観察位置から見たときに、明るさの低下が少ないフレネルレンズシートを提供することができる。請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2の発明の効果に加え、シートの厚みを薄く規定したので、レンズ垂直面から入射した光が、レンズ垂直面で屈折後、シート内を進む距離を短くすることができ、レンズ斜面からの入射光の出射位置とのズレを小さくできるので、二重映像の発生を防止し得る効果の高いフレネルレンズシートを提供することができる。
請求項4の発明によれば、請求項1〜請求項3いずれかの発明の効果に加え、レンズ下面に低屈折率層が積層されており、低屈折率層で全反射を行なわせることができるから、二重映像の発生を防止し得る効果の高いフレネルレンズシートを提供することができる。また、低屈折率層を介して他の種々の層を積層してもフレネルレンズの持つ機能に与える影響を遮断できるので、種々の他の機能を与えたり、シートを補強して、全体の厚みを増やすことが可能となるフレネルレンズシートを提供することができる。
請求項5の発明によれば、請求項1〜請求項4いずれかの発明の効果に加え、シート内に拡散材が分散されているので、フレネルレンズの集光効果に加え、左右上下方向の光拡散効果を有し、単独で、透過型投影スクリーンとして利用可能なフレネルレンズシートを提供することができる。
請求項6の発明によれば、請求項1〜請求項5いずれかの発明の効果に加え、シートの反対側にレンチキュラーレンズを有しているので、レンチキュラーレンズの幅方向に光を拡散させる機能が加わったことにより、レンチキュラーレンズによる所定の角度範囲への光の拡散が可能で、単独で透過型投影スクリーンとして利用可能なフレネルレンズシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のフレネルレンズシートの機能を説明する図である。
【図2】従来の、より斜面の急なフレネルレンズシートの機能を説明する図である。
【図3】本発明のフレネルレンズシートの機能を説明する図である。
【図4】本発明のフレネルレンズシートの諸元を説明する図である。
【図5】低屈折率層を積層したフレネルレンズシートの図である。
【図6】さらに機能を付加したフレネルレンズシートの図である。
【符号の説明】
1 フレネルレンズシート
2 フレネルレンズ(2a;レンズ斜面、2b;レンズ垂直面)
3 拡散手段
4 低屈折率層
5 透明基材シート
6 全反射面
7 レンチキュラーレンズ
22 フレネルレンズ層
Claims (6)
- シートの一方の面にフレネルレンズを有しており、前記フレネルレンズの光軸上から前記フレネルレンズに光を当てたときに、少なくとも前記フレネルレンズの一部において、前記フレネルレンズを構成するレンズ斜面に入射した光が、前記シートの反対側の面から前記フレネルレンズの光軸方向よりも内側を向いて出射し、かつ、前記フレネルレンズを構成するレンズ垂直面に入射した光が、前記シートの反対側の面から前記光軸方向よりも外側を向いて出射すると共に、各々の出射する方向が前記光軸に対してほぼ対称な方向となるようレンズ斜面の角度θが構成されていることを特徴とするフレネルレンズシート。
- 前記レンズ斜面に入射し、前記シートの反対側の面から出射する光が、前記フレネルレンズの外周部へ向かうほど、焦点距離が短くなるよう構成されていることを特徴とする請求項1記載のフレネルレンズシート。
- 前記シートの厚みが1mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のフレネルレンズシート。
- 前記シートの前記フレネルレンズを有していない方の側に、前記シートの屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層が積層されていることを特徴とする請求項1〜請求項3いずれか記載のフレネルレンズシート。
- 前記シート内に光拡散材が分散されていることを特徴とする請求項1〜請求項4いずれか記載のフレネルレンズシート。
- 前記シートの前記フレネルレンズを有する側とは反対側にレンチキュラーレンズを有することを特徴とする請求項1〜請求項5いずれか記載のフレネルレンズシート。
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