JP2005309211A - 電子写真感光体、およびそれを用いた電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体、およびそれを用いた電子写真装置 Download PDF

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Abstract

【課題】コロナ放電によって発生するコロナ放電生成物の影響が少なく、如何なる環境下においても、電子写真装置本体の電源オフ時に電子写真感光体の加温が必要なく、電源オン直後の複写1枚目から画像ボケや画像流れのない高品質の画像が得られる電子写真感光体および電子写真装置を提供する。
【解決手段】導電性基体上に光導電層と、少なくとも水素原子を含みシリコン原子を母体とする非単結晶材料で形成される表面保護層を設けた電子写真感光体において、表面保護層に含有される水素原子の含有量をERDA(Elastic Recoil Detection Analysis:弾性反跳検出法)分析により測定する際、表面保護層にヘリウムイオンを加速エネルギー2.3MeVで50μC照射した後の水素量が、ヘリウムイオン照射前に存在した水素量に対して30%以上、80%以下となることを特徴とする電子写真感光体およびそれを用いた電子写真装置。
【選択図】 図1

Description

本発明は非単結晶シリコン系の表面保護層を用いた電子写真感光体およびそれを用いた電子写真装置に関するものであって、いかなる環境下においても細線や微小ドットを良好に再現し、かつ、コントラストが良く、極めて高品質の画像を得ることの出来る電子写真感光体および電子写真装置に関するものである。
電子写真感光体に用いる素子部材の技術としては、セレン、硫化カドミニウム、酸化亜鉛、フタロシアニン、アモルファスシリコン(以下「a-Si」と記す)等、各種の材料が提案されている。中でもa-Siに代表される珪素原子を主成分として含む非単結晶質堆積膜、例えば水素及び/又はハロゲン(例えばフッ素、塩素等)で補償されたa-Si等のアモルファス堆積膜は高性能、高耐久、無公害な感光体として提案され、そのいくつかは実用化されている。こうした堆積膜の形成法として従来、スパッタリング法、熱により原料ガスを分解する熱CVD法、光により原料ガスを分解する光CVD法、プラズマにより原料ガスを分解するプラズマCVD法等、多数知られている。中でもプラズマCVD法、即ち原料ガスを直流又は高周波(RF、VHF)、マイクロ波などのグロー放電等によって分解し、ガラス、石英、耐熱性合成樹脂フィルム、ステンレス、アルミニウム等の導電性基体上に薄膜状の堆積膜を形成する方法は、電子写真用a-Si堆積膜の形成方法等において現在、実用化が非常に進んでおり、そのための装置も各種提案されている。
例えば、シリコン原子を主体とし、水素原子またはハロゲン原子の少なくともいずれか一方を含むアモルファス材料で構成されている光導電層の上にシリコン原子及び炭素原子を母体とし、水素原子を含む非光導電性のアモルファス材料で構成された表面障壁層を設けた光導電部材の例が知られている(例えば、特許文献1参照)。
更に、表面層として、シリコン原子と炭素原子と41〜70atomic%の水素原子を構成要素として含む非晶質材料で構成された材料を用いる技術が記載されている(例えば、特許文献2参照)。
これらの技術により、電気的、光学的、光導電率的特性が向上し、更に、画像品位の向上も可能になっている。
特開昭57-115551号公報 特開昭62-168161号公報
しかしながら近年、電子写真装置は従来にも増して、高画質化、高速化、耐環境性が求められている。特に耐環境性という点では、電子写真装置が全世界に普及するに伴って、使用される環境はさまざまな条件となってきており、例えば東南アジア等で使用される場合、高温、高湿度環境下においても、良好な画質が求められているのが現状である。
従来の電子写真装置では電子写真感光体の帯電、または除電手段としては、多くの場合ワイヤー電極(直径50〜100μmの金メッキを施したタングステン線等の金属線)とシールド板を主構成部材とするコロナ帯電器(コロトロン、スコロトロン)が利用されている。即ち該コロナ帯電器のワイヤー電極に高電圧(4〜8kV程度)を印加することにより発生するコロナ電流を電子写真感光体面に作用させて電子写真感光体面の帯電及び、除電を行うものである。
しかしコロナ放電に伴い、かなり大量のオゾン(O3)が発生する。発生オゾンは空気中の窒素を酸化して窒素酸化物(NOx)等を生成し、更には、その生成窒素酸化物等は空気中の水分と反応して硝酸等を生じさせる。そして窒素酸化物、硝酸等のコロナ放電生成物は電子写真感光体や周辺の機器に付着堆積して、それらの表面を汚損する。
コロナ放電生成物は吸湿性が強いため、高湿環境に電子写真装置を設置した場合、電子写真感光体表面はコロナ放電生成物の吸湿によって低抵抗化し、実質的に面内方向の電荷保持能力が全面的に或いは部分面的に低下する。そして表面電荷が面方向にリークして静電荷潜像パターンが崩れ、いわゆる画像ボケや画像流れと称される画像欠陥を生じさせる。
又、コロナ帯電器のシールド板内面に付着したコロナ放電生成物は電子写真装置の稼働中のみならず夜間等の装置の長時間休止中に揮発遊離し、それが帯電器の放電開口付近の電子写真感光体表面に付着して更に吸湿し、その電子写真感光体表面を低抵抗化させる。その為、長時間の装置休止後に出力される一枚目、或は数十枚のコピーについて、上記の装置休止中の帯電器開口に対応する領域に画像ボケ、画像流れが生じ易い。
特に、a-Siを用いた電子写真感光体は、上記の画像ボケ、画像流れが大きな問題となる。即ちa-Si電子写真感光体は他の電子写真感光体に比べて帯電及び除電の効率が低く、所定の帯電及び除電電位を得るのに必要なコロナ帯電電流量が多いため、他の電子写真感光体の場合よりも帯電器に印加する電圧を高くして帯電電流量を大幅に増大させる構成がとられる。更に、a-Si電子写真感光体は特に高速電子写真装置に用いられる場合が多く、この様な場合の帯電電流量は例えば2000μΑにも上るものがある。コロナ帯電電流量とオゾン発生量は比例的な関係にあることから、電子写真感光体がa-Si電子写真感光体であり、それをコロナ帯電で帯電及び除電処理する構成では、特にオゾンの発生量が多くなり、そのために前記コロナ放電生成物の発生による画像ボケ、画像流れの問題が特に大きいものとなる。
又、a-Si電子写真感光体の場合は、表面硬度が他の電子写真感光体に比べて極めて高いことが逆作用して、該電子写真感光体表面に付着したコロナ放電生成物が、いつまでも残留し易い。
そのため、現状では電子写真感光体内部に電子写真感光体を加温するためのヒーターを内蔵したり、温風送風装置により温風を電子写真感光体に送風して電子写真感光体表面を加温(30〜50℃)するなどして乾燥状態に保たせることにより電子写真感光体表面に付着しているコロナ放電生成物の吸湿による電子写真感光体表面の実質的な低抵抗化を抑えて画像ボケや画像流れ現象を防止する処置が取られている。特にa-Si電子写真感光体の場合は、この加温乾燥手段は不可欠なものとして組み込まれている。
しかし、加温ヒーターによる画像ボケ防止の手段は、高温/高湿の環境下で長時間電源を切っていた電子写真装置の電源を入れた直後の複写1枚目からボケのない鮮明な画像を提供するために、常時加温ヒーターの電源を入れておく必要がある。このため、本体電源が切られている夜間といえども加温ヒーターには常時通電されており、近年の省エネルギー、省資源の方向からは改善が望まれている点である。
よって、エコロジー、省資源の観点から、少なくとも電子写真装置本体の電源を切っている間は加温ヒーターへの通電を切ることが求められていた。そして休止期間中の電子写真感光体の加温がなくても、電子写真装置本体の電源オン直後の複写1枚目から画像ボケや画像流れが発生しない電子写真感光体が強く求められていた。
本発明の目的は、コロナ放電によって発生するコロナ放電生成物の影響が少なく、如何なる環境下においても、電子写真装置本体の電源を切っている時に電子写真感光体の加温が必要なく、電源を入れた直後の1枚目から画像ボケや画像流れのない高品質の画像が得られる電子写真感光体を提供し、休止時の通電を必要としない、省電力の電子写真装置を提供することを目的とする。
また、帯電能が充分で、感度が高く、濃度の濃い鮮明な画像が安定して得られる電子写真感光体を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、以下に示す発明により、高温・多湿環境下において夜間の加温ヒーターを切ることができ、電子写真装置本体の電源をいれた直後の複写1枚目から画像流れのない鮮明な画像が得られると共に、電気特性の向上が可能となる、すなわち上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、導電性基体上に光導電層と、少なくとも水素原子を含みシリコン原子を母体とする非単結晶材料で形成される表面保護層を設けた電子写真感光体において、該表面保護層に含有される水素原子の含有量をERDA(Elastic Recoil Detection Analysis:弾性反跳検出法)分析により測定する際、該表面保護層にヘリウムイオンを加速エネルギー2.3MeVで50μC照射した後の水素量が、ヘリウムイオン照射前に存在した水素量に対して30%以上、80%以下となることを特徴とする電子写真感光体に関する。
以上説明したように本発明によれば、導電性基体上に光導電層と、少なくとも水素原子を含みシリコン原子を母体とする非単結晶材料で形成される表面保護層を設けた電子写真感光体において、表面保護層に含有される水素原子の含有量をERDA分析により測定する際、表面保護層にヘリウムイオンを加速エネルギー2.3MeVで50μC照射した後の水素量が、ヘリウムイオン照射前に存在した水素量に対して30%以上、80%以下となる表面保護層を用いることによって、コロナ放電によって発生するコロナ放電生成物の影響の少ない電子写真感光体を提供することができ、如何なる環境下においても、電子写真装置本体の電源オフ時に電子写真感光体の加温が必要なく、電源オン直後の複写1枚目から画像ボケや画像流れのない高品質の画像が得られる電子写真感光体および電子写真装置を提供することが可能となる。さらに、電子写真感光体の帯電能および感度を向上させることが可能となる。
上記の効果が得られる本発明の形態について、以下、詳述する。
本発明者らは、a-Si系の表面保護層を用いた電子写真感光体について、電子写真装置本体が休止状態のときに、電子写真感光体を加温しなくても、電子写真装置本体の電源を入れた直後の複写1枚目から画像流れのない鮮明な画像が得られる電子写真感光体を開発するために鋭意検討を行った。
まず、材料として従来から電子写真感光体の表面保護層としてよく使われてきたアモルファス炭化珪素やアモルファス窒化珪素やアモルファス酸化珪素といったa-Si系の材料を選び、作製条件を様々に変化させたときのオゾン生成物による影響の度合いと、それらの材料に含まれる水素量の関係を調べた。
a-Si系の材料中の水素量は、ERDA分析を用いることで、絶対値を測定することが可能である。ERDA分析の測定装置の概略を図1に示す。ERDA分析とは、イオン加速器によってMeV程度に加速したイオンを試料表面に当て、弾性的に反跳された軽元素を半導体検出器でエネルギー分析することで元素の定量分析を行なう方法である。図1では、イオン源として、ヘリウムイオン(4He+)を用い、試料に入射角75度で入射させている。ヘリウムイオンによって弾性的に反跳された水素原子は前方に散乱される。散乱された水素原子は反跳角30度に設置された検出器にフィルターを介して入射する。フィルターは散乱された入射粒子や反跳重粒子をフィルター内で止める厚さに設定されており、水素原子のみが通過するようになっている。検出器に入射した水素原子のエネルギースペクトルを求め、そのエネルギースペクトルから深さ分布を求めることができる。すなわち、反跳水素原子のエネルギーを深さに、収量を濃度(密度)に換算することによって、水素原子濃度の深さ分布が得られる。ERDA分析は反跳粒子を検出するという手法なので、当然ながら、入射イオンビームによる水素の脱離があるが、もともとERDA分析では反跳断面積が大きいために検出感度が高く、短時間に測定を完了できるということもあり、通常の測定においては水素の脱離は無視できる程度に小さく、このため非破壊的検査と考えることができる。なお、ERDA分析法によって水素原子を測定する場合を特に、HFS(Hydrogen Forward scattering Spectrometry)分析法と呼ぶ場合がある。
このERDA分析法を用い、様々な条件で作成した表面保護層について水素量の分析を行い、画像流れとの対応を調べた。しかし、画像流れの程度と表面保護層中に含まれる水素量とは直接的には相関が見られなかった。しかし、ERDA分析を行う過程において、通常の試料に比べて、測定中の水素の脱離が大きいものがあることが分かってきた。すなわち、ERDA分析においては、ヘリウムイオンを加速して被分析物に衝突させ、その際にたたき出される水素原子を捉えることで水素量を測定しているが、上述の通り、通常の材料においては、たたき出される水素原子の量は、全体の含有量から見て無視できる程度の量にすぎず、分析を行っている間に分析値が減少していく、ということはない。しかし、ある条件で作製した表面保護層においては、ERDA分析を行っている間に、水素に起因する信号が減少していくものが見られた。そして、このように水素原子が減少するような条件で作製した表面保護層を用いた感光体に限って画像流れの程度が良好である、との相関を見いだすに至った。
更に詳細に検討を行った結果、ERDA分析の測定条件として、加速エネルギー2.3MeV、入射角75度でヘリウムイオンを入射させ、反跳角30度に検出器を配置した状態で測定を行う場合、50μC照射した後の水素量が、ヘリウムイオン照射前に存在した水素量に対して30%以上、80%以下となる表面保護層において、特に画像流れが良好な結果が得られた。
なお、ヘリウムイオン照射前に存在した水素量は、次のようにして求められる。すなわち、ヘリウムイオンを照射するとき、総照射量が50μCになるまで水素量の経時変化を測定する。測定された水素量データをイオン照射量に対してプロットし、得られた曲線を0μCに外挿することによって照射前の水素量が求められる。イオン照射初期の水素量の変化は大きくないため、滑らかな曲線で近似することで、容易に0μCに外挿することが可能である。
このような、特定の条件で作製したa-Si系の表面保護層が画像流れに対して良好な結果を出す理由については、現在のところ本発明者らも明確には理解出来ていないが、次のように想像している。
a-Si系の材料を表面保護層に用いた場合、電子写真プロセスに供している間に、コロナ帯電から発生するオゾンによって表面が酸化され、より親水性の酸化珪素が形成されてゆき、撥水性が極端に損なわれていく(撥水性とは純水の水滴を評価サンプルに乗せた時の接触角で評価し、この接触角が大きいほど高い撥水性を示す)。電子写真感光体の表面の撥水性が低下すると、よりオゾン生成物や水蒸気を吸着し易くなり、結果として高湿環境で画像流れが発生し易くなるのである。
ところが、本発明のa-Si系の表面保護層のように膜中の水素原子の結合が弱く、離脱しやすい場合、表面の結合の切れたダングリングボンドに水素原子が移動しやすく、その結果、表面の酸化を防止し、撥水性の低下を抑えているのではないかと想像している。そして、表面保護層の撥水性がある程度維持されるため、電子写真装置の休止中に降り積もったオゾン生成物は、電源オン後のウォームアップ中にクリーナーなどによって掻き落とされやすく、休止後の複写1枚目から鮮明な画像を出力することが可能になったものと考えられる。
なお、本発明の表面保護層を用いた電子写真感光体に関して、帯電能や感度の向上といった電気特性の改善が見られた。これは予期し得ぬ効果であったが、表面保護層の水素の結合状態を本発明の範囲に制御することが上部阻止能の向上や、表面保護層の透明度の向上に影響を与えているものと想像される。

以下に図面を用いて本発明を具体的に説明する。
図2は本発明による電子写真感光体の模式的な断面図であり、201は電子写真感光体の表面保護層であり、202は光導電層、203は導電性基体である。
本発明において使用される導電性基体の材料としては、Al、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、Ti、Pt、Pd、Fe等の金属、及びこれらの合金、例えばステンレス等が挙げられる。
また、導電性基体の材料として、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルムまたはシート、ガラス、セラミック等の電気絶縁性材料を用いて、導電性基体の少なくとも光受容層を作製する側の表面を導電処理し、導電性基体として用いることができる。
使用される導電性基体の形状は平滑表面あるいは微小な凹凸表面を有する円筒型または無端ベルト型とすることができ、その厚さは、所望通りの電子写真感光体を形成し得るように適宜決定する。電子写真感光体としての可撓性が要求される場合には、導電性基体としての機能が十分発揮できる範囲内で可能な限り薄くすることができる。しかしながら、導電性基体は、製造上及び取り扱い上、機械的強度等の点から、通常10μm以上とすることが好ましい。
本発明によるところのa-Si系の表面保護層201は少なくとも水素を含むシリコンを母体としたアモルファス材料から成り、好ましくはアモルファス炭化珪素やアモルファス窒化珪素、アモルファス酸化珪素といった材料に代表される炭素原子、窒素原子、酸素原子の少なくとも1つ以上を含有する材料が挙げられる。含有される炭素原子、窒素原子、酸素原子の総和は、シリコン原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の総和に対して40〜90原子%であることが望ましい。これらの原子の含有量を40原子%以上とすることで電子写真感光体の重要な電気特性の1つである帯電能を確保するために必要な阻止能を得ることができる。また、90原子%以下とすることで、硬度低下や、透過率の悪化を防止することができる。
a-Si系の表面保護層中に含まれる水素原子の含有量は、構成原子の総量に対して通常の場合30〜70原子%、好適には40〜60原子%とするのが望ましい。これらの水素含有量の範囲内で形成される感光体は、実用面において優れたものとして充分適用させ得るものである。表面保護層内の水素含有量を30原子%以上に制御することで表面保護層内の欠陥が大幅に減少し、その結果、従来に比べて光透過率が改善し、電子写真感光体としての感度の向上を図ることができる。一方、前記表面保護層中の水素含有量を70原子%以下とすることで表面保護層の硬度低下を防止でき、繰り返し使用に対して充分な耐性を得ることができる。従って、表面保護層中の水素含有量を前記の範囲内に制御することが優れた所望の電子写真特性を得る上で重要な因子の1つである。
a-Si系の表面保護層中に含まれる水素原子の結合状態は、ERDA分析において、ヘリウムイオンを2.3MeVのエネルギーで照射したときに脱離するように結合状態を調整することが重要である。脱離する割合は、ヘリウムイオン照射前の水素量(水素シグナル)に対してヘリウムイオンを50μC照射した後の水素量が、30%以上、80%以下となることが望ましい。水素量が30%を切る場合には、表面保護層としての硬度が充分でなくなり、電子写真感光体として使用している間に摩耗が発生し、耐久性に問題が発生する場合がある。また、水素量が80%を超える場合は、使用中に撥水性が不充分になり、環境条件によっては画像流れが発生する場合が見られた。このため、ヘリウムイオン50μC照射後の水素量は30%以上、80%以下の範囲内に入れることが重要であり、40%以上、70%以下の範囲内に入れることが更に好適である。
なお、言うまでもないが、本発明の効果を得るためには、a-Si系の表面保護層はERDA分析において水素原子が脱離するような結合状態で含有されていることが重要であり、そのような結合状態の水素原子が含有されることによって、画像流れを効果的に防止できる。従って、ERDA分析によって水素原子を脱離させた後の電子写真感光体を用いる必要性は全くない。
本発明の表面保護層は、一例としては通常のプラズマCVD法によって調製することが出来る。一般にプラズマCVD法は装置依存性が大きく、さまざまなパラメータが有機的に結びついているため、ERDA分析時の水素の脱離量が本件範囲内になる製造条件を一律に規定することは困難である。しかし、一般的には、原料ガス種、圧力、電力、高周波電力の周波数、基体温度などの各種パラメータを最適化することによって、いかなる成膜装置においても容易に本件範囲内に入るように調整することが可能である。本発明者らが検討を行った際の大雑把なパラメータの傾向としては、たとえば、成膜時の基体温度は低いほうが水素は脱離しやすくなり、また、投入するパワーは高いほうが脱離しにくくなる傾向があった。
又、更に表面保護層中にはハロゲン原子を含有させてもよい。表面層中にハロゲン原子を含有させる方法として、例えば原料ガスにSiF4,SiFH3,Si26,SiF3,SiH3,SiCl4等のハロゲン化シリコンガスを混合させるか、CF4,CCl4,CH3CF3等のハロゲン化炭素ガスを混合させてグロー放電分解法またはスパッタリング法で形成すればよい。
a-Si系の表面保護層の使用中における摩耗量は、10nm/100000回転以下とすることが望ましい。この摩耗量は、コロナ帯電器、平均粒径8〜10μmのトナー(現像剤)、JIS硬度70度以上80度以下の弾性ゴムブレードを用いてスクレープクリーニングする電子写真装置で使用した場合の値である。本発明の電子写真感光体はこれ以外の電子写真プロセスを用いた電子写真装置にももちろん使うことができるが、表面保護層の摩耗量をこの電子写真装置の条件下で10nm/100000回転以下となるように形成することによって、他のいかなる電子写真プロセスにおいても、本発明の効果が充分得られることを確認した。
本発明のa-Si系の表面保護層をこの範囲内の摩耗量とすることによって、使用中に削れムラやすじ削れなどの偏摩耗を防止することができ、長期間に渡って均一なハーフトーン画像を得ることが可能となる。また、長寿命を特徴とするa-Si電子写真感光体に本発明の表面保護層を用いたとしても、その寿命全期間に渡ってあらゆる環境下においても鮮明な画像を提供することが可能となる。
さらに本発明においては、表面保護層には必要に応じて伝導性を制御する原子を含有させてもよい。伝導性を制御する原子は、表面保護層中に万偏なく均一に分布した状態で含有されても良いし、あるいは層厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。
前記の伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、周期表第13族原子、または周期表第15族原子を用いることができる。
本発明におけるa-Si系の表面保護層の層厚としては、通常0.01〜3μm、好適には0.05〜2μm、最適には0.1〜1μmとされるのが望ましいものである。層厚が0.01μmよりも薄いと感光体を使用中に摩耗等の理由により表面保護層が失われてしまい、3μmを越えると残留電位の増加等の電子写真特性の低下がみられる。
本発明の目的を達成し得る特性を有する表面保護層を形成するには、基体温度、反応容器内のガス圧を所望により適宜設定する必要がある。
基体温度(Ts)は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合、a-Si系の表面保護層では、好ましくは100〜300℃、より好ましくは150〜250℃、最適には170℃〜220℃とするのが望ましい。
放電空間の圧力については通常のRF(代表的には13.56MHz)電力を用いる場合には13.3Pa〜1330Pa、VHF帯(代表的には50〜450MHz)を用いる場合には13.3mPa〜13.3Pa程度に保たれる。本発明においては、表面保護層を形成するための基体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望ましい。
本発明において使用されるシリコン(Si)供給用ガスとなり得る物質としては、SiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状態の、またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとして挙げられ、更に層作成時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si26が好ましいものとして挙げられる。
炭素供給用ガスとなり得る物質としては、CH4、C22、C26、C38、C410等のガス状態の、またはガス化し得る炭化水素が有効に使用されるものとして挙げられ、更に層作成時の取り扱い易さ、炭素供給効率の良さ等の点でCH4、C22、C26が好ましいものとして挙げられる。
窒素または酸素供給用ガスとなり得る物質としては、NH3、NO、N2O、NO2、O2、CO、CO2、N2等のガス状態の、またはガス化し得る化合物が有効に使用されるものとして挙げられる。
また、ハロゲン原子供給用ガスとなり得る物質としては、たとえばF2(フッ素ガス)や、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲン間化合物を挙げることができる。更にCF4、CHF3、C26、ClF3、CHClF2、C38、C410等のフッ素含有ガスが好適に用いられる。
伝導性を制御する原子としては、第13族原子導入用の原料物質として具体的には、硼素原子導入用としては、B26、B410、B59、B511、B610、B612、B614等の水素化硼素、BF3、BCl3、BBr3等のハロゲン化硼素等が挙げられる。この他、AlCl3、GaCl3、Ga(CH3)3、InCl3、TlCl3等も挙げることができる。
第15族原子導入用の原料物質として、有効に使用されるのは、リン原子導入用としては、PH3、P24等の水素化リン、PF3、PF5、PCl3、PCl5、PBr3、PBr5、PI3等のハロゲン化リンやPH4Iなどのハロゲン含有リン化合物が挙げられる。この他、AsH3、AsF3、AsCl3、AsBr3、AsF5、SbH3、SbF3、SbF5、SbCl3、SbCl5、BiH3、BiCl3、BiBr3等も第15族原子導入用の出発物質の有効なものとして挙げることができる。
本発明における光導電層202には水素を含むシリコン原子を母体とした非単結晶材料の膜であれば元より、有機感光体、Se感光体、CdS感光体等何でも好適に用いられる。但し、a-Si系の表面保護層との製造上の整合性の観点からは、少なくとも水素を含むa-Si系の非単結晶材料で構成することがより好ましい。
a-Si系の非単結晶材料の光導電層の作成条件としては、いかなる周波数の高周波電力、或いはマイクロ波によるグロー放電プラズマでも好適に使用出来、このグロー放電プラズマによりシリコン原子を含んだ原料ガスを分解して作成する。
光導電層の膜厚に関しては1μm〜50μmまで、複写機本体が要求する帯電能、感度に応じて適宜設定されるが、通常は帯電能、感度の点から10μm以上、工業的生産性の観点からは50μm以下が望ましい。
更に本発明においては、図3に示したように導電性基体303と光導電層302の間に、、導電性基体303からのキャリアの注入を阻止する下部阻止層304を加えても良い。
また、図4に示したように導電性基体403と光導電層402の間に、導電性基体403からのキャリアの注入を阻止する下部阻止層404、及び、光導電層402と表面保護層401の間に、表面保護層401からのキャリアの注入を阻止する上部阻止層405を設けても良い。
更に図5のように光導電層502が少なくとも光導電性を示す電荷発生層504と少なくともキャリアを輸送する電荷輸送層505が順次積層された構成の機能分離型としたものであってもよい。この電子写真感光体に光照射すると主として電荷発生層504で生成されたキャリアが電荷輸送層505を通って導電性基体503に至る。
いずれの層構成においても、表面保護層301、401または501において、水素原子がERDA分析中に脱離するような結合状態で含有されることが、本発明の効果を得る上で非常に重要である。
図6は、本発明の電子写真感光体を作成するために供される、13.56MHzの高周波電源を用いたRFプラズマCVD法による堆積装置の一例を模式的に示した図である。
この装置は大別すると、反応容器601、反応容器内を減圧する為の排気装置608から構成されている。反応容器601内にはアースに接続された導電性の受け台607の上に円筒状の導電性基体602が設置され、更に導電性基体の基体加熱ヒーター603、原料ガス導入管605が設置されている。又、カソード電極606は導電性材料からなり、絶縁碍子613によって絶縁されている。カソード電極はマッチングボックス611を介して13.56MHzの高周波電源612が接続されている。
不図示の原料ガス供給装置の各構成ガスのボンベは原料ガス導入バルブ609を介して反応容器601内のガス導入管605に接続されている。
以下、図6の装置を用いた、電子写真感光体の形成方法の一例について説明する。
例えば表面を旋盤を用いて鏡面加工を施した導電性基体602を受け台607に取りつけ、反応容器601内の基体加熱ヒーター603を包含するように取りつける。
次に、ガス供給装置内の排気を兼ねて、原料ガス導入バルブ609を開き、メインバルブ615を開いて反応容器601及び原料ガス導入管605を排気する。真空計610の読みが0.67Pa以下になった時点で原料ガス導入バルブ609から加熱用の不活性ガス、一例としてアルゴンを原料ガス導入管605より反応容器601に導入し、反応容器601内が所望の圧力になるように加熱用ガスの流量および、メインバルブ615の開口あるいは排気装置608の排気速度を調整する。その後、不図示の温度コントローラーを作動させて導電性基体602を基体加熱ヒーター603により加熱し、導電性基体602の温度を20℃〜500℃の所定の温度に制御する。導電性基体602が所望の温度に加熱されたところで、不活性ガスを徐々に止めると同時に、成膜用の所定の原料ガス、例えばSiH4、Si26、CH4、C26などの材料ガスを、またB26、PH3などのドーピングガスを不図示のミキシングパネルにより混合した後に反応容器601内に徐々に導入する。次に、不図示のマスフローコントローラーによって、各原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、反応容器601内が0.1Paから数100Paの圧力に維持するよう真空計610を見ながらメインバルブ615の開口あるいは排気装置608の排気速度を調整する。
以上の手順によって成膜準備を完了した後、導電性基体602上に光導電層の形成を行なう。内圧が安定したのを確認後、高周波電源612を所望の電力に設定して高周波電力をカソード電極606に供給し高周波グロー放電を生起させる。このときマッチングボックス611を調整し、反射波が最小となるように調整し、高周波の入射電力から反射電力を差し引いた値を所望の値に調整する。この放電エネルギーによって反応容器601内に導入させた各原料ガスが分解され、導電性基体602上に所定の堆積膜が形成される。なお、膜形成を行っている間は導電性基体602を駆動装置(不図示)によって所定の速度で回転させても良い。所望の膜厚の形成が行われた後、高周波電力の供給を止め、反応容器601への各原料ガスの流入を止めて反応容器内を一旦項真空に引き上げた後に層の形成を終える。上記のような操作を繰り返し行うことによって、光導電層は形成される。
次に、本発明のa-Si系の表面保護層を形成する場合も、必要となる原料ガスが変わるだけで、同様の手順で行うことができる。このとき、a-Si系の表面保護層に含有される水素原子が、ERDA分析において減少していくように原料ガス流量、基体温度、高周波電力などを設定し、形成することが肝要である。
図7はVHFプラズマCVD法による電子写真感光体の形成装置の一例の模式図である。
反応容器701は誘電体部材701(a)と上蓋701(b)から成る。反応容器701の下部には排気配管709が接続され、排気配管709の他端は不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)に接続されている。反応容器701の中心部を取り囲むように、堆積膜の形成される複数の導電性基体705が互いに平行になるように同一円周上に配置されている。複数の導電性基体705は基体加熱ヒーター707を内蔵した導電性の受け台706によって各々保持されている。そして、反応容器701内にはSiH4、GeH4、H2、CH4、B26、PH3、Ar、He等のガスボンベからなる不図示のガス供給装置に接続されたガス供給手段710があり、反応容器701の外にはカソード電極702が設置されている。カソード電極702には、高周波電源703がマッチングボックス704と高周波電力分岐手段712を介して接続されている。さらに、導電性基体705は各々の回転機構708によって、回転可能になっている。
図7の装置を用いた、電子写真感光体の形成方法の手順はカソードと導電性基体の配置が異なることと、常に導電性基体が回転機構708によって駆動されていることを除いて、基本的に図6の装置の方法と同様である。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
(実施例1)
図6に示すRFプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用い、導電性基体602として直径80mm、長さ358mmのアルミニウムシリンダーを設置し、表1に示す条件に従い、前述の堆積膜形成方法でa-Siから成る光導電層、アモルファス炭化珪素膜から成る表面保護層で構成された電子写真感光体を作成した。
なお、表1の表面保護層の製造条件は、あらかじめERDA分析における水素原子の脱離量が本件範囲内になることを確認した条件である。
Figure 2005309211
(比較例1)
図6に示すRFプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用い、実施例1と同様にして表1の条件で電子写真感光体の形成を行った。但し、表面保護層の成膜時の基板温度は290℃、パワーは200Wとし、ERDA分析において水素原子が脱離しない条件で成膜を行った。
実施例1、比較例1で作成した電子写真感光体は、下記の方法で評価を行った。
(画像流れ)
電子写真感光体をキヤノン製複写機iR5000改造機(プロセススピード265mm/sec)に搭載し、30℃/80%の高温・高湿環境にてA4コピー用紙を縦送りで通紙しながら1日2万枚づつ、計10万枚の複写耐久を行った。なお、iR5000改造機は、コロナ帯電器を使用しており、トナーは平均粒径が9μmのものを用いた。また、クリーニングブレードはJIS硬度が73度のものを用いた。
夜間は本体電源、および感光体の加温ヒーターをオフにし、12時間以上同一環境で放置した。そして、次の日、朝一番に電源を入れ、ウォームアップ完了と同時に画像出しを行い画像流れの評価を行った。
画像は白地に全面仮名文字よりなるキヤノン製テストチャ-トを原稿台に置き、通常の露光量でコピーをとる。得られたコピ-画像を観察し、画像上の細線がぼけていないか評価した。更にハーフトーンチャートをコピーし、得られたコピー画像に白抜けがないかを目視で確認した。但し、この時画像上でムラがある時は、全画像領域で一番悪い部分の結果を示した。

◎ … 10万枚耐久後も、文字、およびハーフトーン共に鮮明な複写画像が得られた
○ … 耐久中にハーフトーンに一部濃度の薄い部分が発生したが文字は鮮明で良好
△ … 10万枚耐久後、文字の一部がかすれているが、判読可能で問題なし
× … 耐久途中で、文字の一部が判読できなくなった。
(撥水性の評価)
上記のA4コピー10万枚耐久後の電子写真感光体表面の撥水性を評価する為に協和界面科学社製の接触角計(CA-S-ロール型)を用いて、純水による接触角を測定した。

◎ … 70度以上
○ … 50度以上、70度未満
△ … 30度以上、50度未満
× … 30度未満。
(ERDA測定前後での水素量変化)
ERDA分析を前述の方法で行った際の表面保護層中の水素量の変化を調べた。ERDA分析の測定条件は、ヘリウムイオンの加速エネルギー;2.3MeV、入射角;75度、反跳角;30度に検出器を配置、ヘリウムイオンの総照射量;50μCとした。この条件で水素量(あるいは水素の信号強度)を測定し、イオン照射前の水素量を100%としたときの50μC照射時の水素量を相対値で示した。イオン照射前の水素量は、前述の方法で外挿して求めた。
(表面保護層の水素含有量)
上記のERDA分析において、ヘリウムイオン照射前の表面保護層中の水素量を求めた。水素量は深さ500nmまでのデプスプロファイルを求め、その平均値とした。
(摩耗量の評価)
上記のA4コピー10万枚耐久後の電子写真感光体を用いて、更に耐久を合計100万枚まで続行した。そして電子写真感光体の表面保護層の膜厚を耐久前後で反射式干渉計を用いて測定し、差を求めることで摩耗量を求めた。得られた結果は、感光体10万回転当たりの削れ量で表した。

◎ … 摩耗量は5nm/10万回転以下で非常に良好
○ … 摩耗量は7nm/10万回転以下で良好
△ … 摩耗量は10nm/10万回転以下で問題なし
× …摩耗量が10nm/10万回転を越えた。
(耐久後の画像評価)
上記の100万枚耐久後の電子写真感光体を用いてハーフトーン画像を出力し、スジや濃度ムラがないか確認した。さらに電子写真感光体の表面を目視、および顕微鏡観察し、スジ削れや偏摩耗が発生していないかを観察した。

◎ … 感光体表面の顕微鏡観察で問題なく、画像も良好
○ … 感光体表面に顕微鏡観察でわずかにスジが見えるが、画像には出ず、良好
△ … 目視で感光体表面にスジ削れがわずかに見え、
画像上に僅かに現れるが実用上問題ないレベル
× … 画像の一部にスジ状のムラが見られ、問題となる場合がある
(帯電能)
電子写真装置の主帯電器に一定の電流(例えば1000μA)を流し、現像器位置にセットした表面電位計(TREK社Model344)の電位センサーにより暗部電位を測定した。したがって、暗部電位が大きいほど帯電能が良好であることを示す。帯電能の評価結果は、比較例1の結果を基準とした場合の相対比較でランク付けを行った。

◎ … 20%以上の良化
○ … 10%以上20%未満の良化
△ … 10%未満の良化
× … 比較例1より悪化。
(感度)
現像器位置での暗部電位が一定値(例えば450V)となるよう主帯電器電流を調整した後、原稿に反射濃度0.1以下の所定の白紙を用い、現像器位置での明部電位が所定の値となるよう像露光(波長655nmの半導体レーザー)を調整した際の像露光量により評価する。したがって、像露光量が少ないほど感度が良好であることを示す。感度測定は感光体母線方向全領域に渡って行い、その平均値とした。感度の評価結果は、比較例1の結果を基準とした場合の相対比較でランク付けを行った。

◎ … 20%以上の良化
○ … 10%以上20%未満の良化
△ … 10%未満の良化
× … 比較例1より悪化。
実施例1、比較例1のERDA分析による水素脱離の結果を図8に示す。図8(a)は実施例1の結果である。この図では、便宜上、ヘリウムイオンの照射量が50μCのときの水素の信号強度を1としたときのイオン照射中の水素の信号強度の変化を示している。この結果から分かるように、ヘリウムイオンの照射量が少ない領域では水素の脱離量は少なく、従って滑らかな曲線で0μCに向かって外挿することで容易にイオン照射前の水素の信号強度を求めることができる。図8(a)の結果では、イオン照射前の信号強度比は1.92であり、従って、照射前の水素量に対して50μC照射後の水素量は52%であることが分かる。
一方、図8(b)は比較例1の結果である。この結果から明らかなように従来の表面保護層においては、ヘリウムイオンを50μCまで照射しても水素の信号強度はほとんど変化せず、水素の脱離がないことが分かる。
その他の評価結果をまとめて表2に示す。表2から分かるように、本発明の電子写真感光体を用いることによって、複写機の夜間休止中にドラム加温ヒーターの電源を切っても、翌朝の複写一枚目から鮮明な画像が得られることが分かる。また、また、予期しなかった効果であるが、本発明の表面保護層を用いることで、帯電能、感度といった電子写真感光体の特性に関しても改善が見られる。これは、表面保護層の水素の結合範囲を本発明の特定の範囲に制御することにより、上部阻止能が向上し、また、膜の透明度が向上したことが影響していると推定される。
Figure 2005309211
(実施例2)
図6に示すRFプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用い、導電性基体602として直径80mm、長さ358mmのアルミニウムシリンダー上に、表2に示す条件に従い、前述の堆積膜形成方法でa-Siから成る下部阻止層および光導電層、アモルファス炭化珪素膜から成る表面保護層で構成された電子写真感光体を作成した。本実施例では、表面保護層のパワーおよび基板温度を変化させることにより、ERDA分析での水素の変化量を30%〜80%の範囲で変化させた感光体2A〜2Eを作製した。
Figure 2005309211
(比較例2)
図6に示すRFプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用い、導電性基体602として直径80mm、長さ358mmのアルミニウムシリンダー上に、表2に示す条件に従い、前述の堆積膜形成方法でa-Siから成る下部阻止層および光導電層、アモルファス炭化珪素膜から成る表面保護層で構成された電子写真感光体を作成した。本比較例では、表面保護層のパワーおよび基板温度を変化させることにより、ERDA分析での水素の変化量を25%、85%に変化させた感光体2F、2Gを作製した。
実施例2、比較例2で得られた電子写真感光体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。表4からわかるように、ERDA分析における水素量の変化が30%〜80%のときに限って、本発明の効果が顕著に得られることが判明した。
Figure 2005309211
(実施例3)
図7に示すVHFプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用い、導電性基体705として直径80mm、長さ358mmのアルミニウムシリンダー上に、表5に示す条件に従い、前述の堆積膜形成方法でa-Siから成る下部阻止層および光導電層、上部阻止層、アモルファス炭化珪素膜から成る表面保護層で構成された電子写真感光体を作成した。本実施例では、表面保護層のパワーおよび基板温度を変化させることにより、水素含有量を25%〜75%の範囲で変化させた感光体3A〜3Gを作製した。
Figure 2005309211
上記の方法で得られた電子写真感光体は、実施例1と同様の評価を行った。結果を表6に示す。表6からわかるように、本発明の表面保護層では、水素含有量を30原子%〜70原子%とすることで更に良好な結果が得られることが判明した。
Figure 2005309211
(実施例4)
図7に示すVHFプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用い、導電性基体705として直径80mm、長さ358mmのアルミニウムシリンダー上に、表7に示す条件に従い、前述の堆積膜形成方法でa-Siから成る下部阻止層および光導電層、アモルファス炭化珪素膜から成る表面保護層で構成された電子写真感光体を作成した。本実施例では、表面保護層の炭素量を35原子%〜92原子%の範囲で変化させた感光体4A〜4Gを作製した。
なお、表面保護層の炭素量の測定には、RBS(Rutherford Backscattering Spectrometry)を用いた。
Figure 2005309211
上記の方法で得られた電子写真感光体は、実施例1と同様の評価を行った。結果を表8に示す。表8からわかるように、本発明の表面保護層は、炭素量が40原子%〜90原子%の範囲で更に良好な結果が得られることが判明した。
Figure 2005309211
(実施例5)
図6に示すRFプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用い、導電性基体602として直径80mm、長さ358mmのアルミニウムシリンダー上に、表9に示す条件に従い、前述の堆積膜形成方法でa-Siから成る下部阻止層および光導電層、アモルファス窒化珪素膜から成る表面保護層で構成された電子写真感光体を作成した。本実施例では、表面保護層の窒素量を35原子%〜92原子%の範囲で変化させた感光体5A〜5Gを作製した。
なお、表面保護層の窒素量の測定には、RBS(Rutherford Backscattering Spectrometry)を用いた。
Figure 2005309211
上記の方法で得られた電子写真感光体は、実施例1と同様の評価を行った。結果を表10に示す。表10からわかるように、本発明の表面保護層は、アモルファス窒化珪素膜の場合であっても、窒素量が40原子%〜90原子%の範囲で更に良好な結果が得られることが判明した。
Figure 2005309211
(実施例6)
図6に示すRFプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用い、導電性基体602として直径80mm、長さ358mmのアルミニウムシリンダー上に、表11に示す条件に従い、前述の堆積膜形成方法でa-Siから成る下部阻止層および光導電層、アモルファス酸化硅素膜から成る表面保護層で構成された電子写真感光体を作成した。本実施例では、表面保護層の酸素量を35原子%〜92原子%の範囲で変化させた感光体6A〜6Gを作製した。
なお、表面保護層の酸素量の測定には、RBS(Rutherford Backscattering Spectrometry)を用いた。
Figure 2005309211
上記の方法で得られた電子写真感光体は、実施例1と同様の評価を行った。結果を表12に示す。表12からわかるように、本発明の表面保護層は、アモルファス酸化硅素膜の場合であっても、酸素量が40原子%〜90原子%の範囲で更に良好な結果が得られることが判明した。
Figure 2005309211
(実施例7)
図7に示すVHFプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用い、導電性基体705として直径80mm、長さ358mmのアルミニウムシリンダーを設置し、表13に示す条件に従い、前述の堆積膜形成方法でa-Siから成る電荷輸送層、電荷発生層、アモルファス窒化硅素膜から成る表面保護層で構成された電子写真感光体を作成した。なお、表面保護層に関しては、あらかじめERDA分析において水素原子が脱離する条件を求めておいた。
Figure 2005309211
上記の方法で得られた電子写真感光体は、実施例1と同様の評価を行った。その結果、実施例1と同様の良好な結果が得られた。この結果から、光導電層の構成は、電荷発生層、電荷輸送層の機能分離型の電子写真感光体であっても、本発明は良好な結果が得られることが判明した。
ERDA分析装置の一例を示した模式的な構成図。 本発明による電子写真感光体の層構成の一例を示した図。 本発明による電子写真感光体の層構成の一例を示した図。 本発明による電子写真感光体の層構成の一例を示した図。 本発明による電子写真感光体の層構成の一例を示した図。 本発明の電子写真感光体を形成するためのRFプラズマCVD法を用いた堆積装置の模式図。 本発明の電子写真感光体を形成するためのVHFプラズマCVD法を用いた堆積装置の模式図。 実施例1と比較例1のERDA分析の結果である。
符号の説明
201 表面保護層
202 光導電層
203 導電性基体

Claims (11)

  1. 導電性基体上に光導電層と、少なくとも水素原子を含みシリコン原子を母体とする非単結晶材料で形成される表面保護層を設けた電子写真感光体において、
    該表面保護層に含有される水素原子の含有量をERDA(Elastic Recoil Detection Analysis:弾性反跳検出法)分析により測定する際、該表面保護層にヘリウムイオンを加速エネルギー2.3MeVで50μC照射した後の水素量が、ヘリウムイオン照射前に存在した水素量に対して30%以上、80%以下となることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記50μC照射した後の水素量が、ヘリウムイオン照射前に存在した水素量に対して40%以上、70%以下となることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記表面保護層が、更に炭素原子、窒素原子、酸素原子のなかから選ばれる少なくとも1つ以上の原子を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記表面保護層に含有される炭素原子、窒素原子、酸素原子の含有量がシリコンとそれらの原子の総和に対して40原子%以上、90原子%以下であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
  5. 前記表面保護層に含有される水素原子の含有量が、全原子数に対して30原子%以上、70原子%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体。
  6. 前記電子写真感光体を、コロナ帯電し、露光し、平均粒径8〜10μmの現像剤で現像し、現像された該現像剤を転写材へ転写し、転写後の該電子写真感光体表面をJIS硬度70度以上80度以下の弾性ゴムブレードでスクレープクリーニングする電子写真プロセスで用いたとき、該電子写真感光体100000回転当たりの前記表面保護層の摩耗量が10nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体。
  7. 前記光導電層が少なくとも水素を含み、シリコン原子を母体とする非単結晶材料で構成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真感光体。
  8. 前記導電性支持体と前記光導電層の間に、更に下部阻止層を設けたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電子写真感光体。
  9. 前記光導電層と前記表面保護層の間に、更に上部阻止層を設けたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電子写真感光体。
  10. 前記光導電層が電荷発生層と電荷輸送層の2層から成ることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の電子写真感光体。
  11. 請求項1乃至10のいずれかに記載の電子写真感光体を用いた電子写真装置。
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