JP2005307288A - 炭素系膜及び炭素系膜形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水素濃度5原子%以下の層と、水素濃度が5原子%より大きく15原子%以下の層とが、それぞれ少なくとも一層ずつ含まれ、最も基材側の層は水素濃度が5原子%以下の層である炭素系膜。水素濃度が膜厚方向に変化しており、最も水素濃度が低く該水素濃度が5原子%以下の基材Wに隣り合う膜部分が含まれ、平均膜中水素濃度が5原子%以上で15原子%より小さい炭素系膜。かかる炭素系膜を形成するための、炭素を主成分とするカソード11を真空アーク放電により蒸発させて炭素系膜を基材W上に形成する炭素系膜形成装置。該装置は、100アンペア以下のアーク電流で真空アーク放電を維持するために、カソードの存在領域にアーク安定化用ガスを導入するガス導入装置G及び(又は)アーク電源13とカソード11との間のリアクタンス成分発生回路Rを有している。【選択図】 図1
Description
例えば、特開2003−62705号公報や特開2003−62708号公報は、工具基材上に物理的蒸着方法、例えば陰極アークイオンプレーティング法により、緻密で、硬度の高い非晶質カーボン膜を形成することを開示している。
また、本発明は、かかる炭素系膜を生産性良好に形成することができる炭素系膜形成装置を提供することを課題とする。
(1)第1タイプの炭素系膜(異なる水素濃度の層が積層された炭素系膜)
基材上に形成されたアモルファス構造を有する炭素系膜であって、水素濃度が5原子%以下の層と、水素濃度が5原子%より大きく15原子%以下の層とが、それぞれ少なくとも一層ずつ含まれ、それらの層が積層されており、最も基材側の層は水素濃度が5原子%以下の層である炭素系膜。
基材上に形成されたアモルファス構造を有する炭素系膜であって、水素濃度が膜厚方向に変化しており、最も水素濃度が低く該水素濃度が5原子%以下の前記基材に隣り合う膜部分が含まれており、膜全体における平均膜中水素濃度が5原子%以上で15原子%より小さい炭素系膜。
上記いずれの炭素系膜もこれを形成した基材の耐摩擦摩耗特性を向上させる。
ここで、炭素系膜を形成する「基材」は、例えば、自動車部品、機械部品などの加工等に用いる各種工具、成形用金型、或いはそれらの部品等を構成する基材であり、基材の用途等については特に制限はない。
基材材質としては、工具鋼(炭素工具鋼等)、合金工具鋼、構造用合金鋼、軸受け鋼、ステンレス鋼などを例示できる。
このように金属を主成分とする中間層を形成した基材本体の炭素系膜形成対象面の材質は該中間層が密着性良好に形成されるものであればよいが、代表的には金属材料を例示できる。
膜形成対象基材を配置する成膜室と、
炭素を主成分とするカソード、該カソードに対するアノード及びアーク電源を含むアーク放電回路とを有し、
該カソードを真空アーク放電により蒸発させて該基材上に炭素系膜を形成する装置であって、100アンペア以下のアーク電流で真空アーク放電を維持するために該カソードの存在領域にアーク安定化用ガスを導入するガス導入装置を備えている炭素系膜形成装置を提供する。
膜形成対象基材を配置する成膜室と、
炭素を主成分とするカソード、該カソードに対するアノード及びアーク電源を含むアーク放電回路とを有し、
該カソードを真空アーク放電により蒸発させて該基材上に炭素系膜を形成する装置であって、前記アーク放電回路は、前記アーク電源と前記カソードとの間に、100アンペア以下のアーク電流で真空アーク放電を維持するためのリアクタンス成分発生回路を有している炭素系膜形成装置も提供する。
膜形成装置は前掲のガス導入装置とこのリアクタンス成分発生回路の双方を有していてもよい。
また、本発明によると、かかる炭素系膜を生産性良好に形成することができる炭素系膜形成装置を提供することができる。
図1は本発明に係る炭素系膜形成装置の1例の構成を概略的に示す図である。
この膜形成装置は真空アーク蒸着装置であり、蒸発源1、成膜室2、蒸発源1と成膜室2を接続するダクト3及び成膜室2内に設置された、被成膜基材Wを支持するホルダHを備えている。
成膜室2にはガス導入装置Gが接続されている。ガス導入装置Gは図示を省略したガスボンベ、開閉弁、マスフローコントローラ等を含んでおり、さらに成膜室内に開口したガスノズルNを介して成膜室2に配管接続したものである。
ホルダHには基材Wへの膜形成を円滑ならしめるためにバイアス電源PWを接続してある。電源PWは出力可変電源であり、これにより基材のバイアス電位を制御できる。
まず、ホルダHに被成膜基材Wを搭載する。次いで排気装置EXを運転して成膜室2及びダクト3内から排気し、それらを成膜圧力まで減圧維持する。
蒸発源1において生成された前記プラズマは磁場形成コイル31により形成されたダクト内磁場により集束し、その後被成基材Wへの膜形成のために適度に広がり、イオン化されたカソード材料が基材へ向け飛翔し、かくして炭素系膜が基材W上に形成される。
必要に応じ、蒸発源10を用い、炭素系膜形成に先立って該基材に金属を主成分とする中間層を形成し、該中間層上に炭素系膜を形成してもよい。
さらに、アルゴンレーザを用いるラマン分光により得られるスペクトルにおいて、1350cm-1付近に存在するピークの強度I1350と1560cm-1付近に存在するピークの強度I1560の比(I1350/I1560)が1.0以下である炭素系膜を得ることができる。
これら実験では超硬合金からなる切削バイトの刃(切削チップ)部分にダイヤモンド状炭素膜)を形成した。また、いずれの膜形成においてもカソードとして炭素カソードを採用した。
アーク電流を50A、コイル31による磁界の強さを50ガウス、電源PWによるバイアス電圧を−50V、成膜ガス圧を0.2Paに維持するようにして、ガス導入装置Gから成膜室2内へ導入するガス種〔アルゴン(Ar)ガス、メタン(CH4 )ガス〕並びにArガス及びCH4 の双方を導入する場合の両ガスの割合を制御することで、次表に示すように積層構造の2種類の実験例膜及び傾斜構造の1種類の実験例膜を形成するとともに単層構造の2種類の比較実験例膜を形成した。
膜中水素濃度の制御については、ArガスとCH4 ガスの双方を導入するとともに(Arガス+CH4 ガス)量に対するCH4 ガス量の割合(%)を制御することで行った。具体的には、水素濃度3.8原子%の場合は、100×〔CH4 /(Ar+CH4 )〕=6%とし、水素濃度14.2原子%の場合は、これを30%とした。
摩耗幅
実験例1 3.8% +14.2% + 3.8%
0.1μm 0.3μm 0.1μm 50GPa 良 56μm
基材側← →表面側
実験例2 3.8% → 14.2%
基材側← →表面側 61GPa 良 42μm
0.5 μm
実験例3 3.8%+14.2%+ 3.8%+14.2%+ 3.8%
各0.1 μm 64GPa 良 37μm
基材側← →表面側
比較実験例1 3.8%
単層0.5 μm 80GPa 不良 剥離した
比較実験例2 14.2%
単層0.5 μm 32GPa 良 120μm
11 カソード DR ホルダHの回転駆動部
111 カソード放電面(蒸発面) PW バイアス電源
12 トリガー電極 W 被成膜基材W
13 アーク電源 31 磁場形成用コイル
14 絶縁部材 32 コイル電源
15 抵抗 EX 排気装置
R リアクタンス成分発生回路 G ガス導入装置
2 成膜室 N ガスノズル
21 絶縁部材 10 中間層形成用蒸発源
3 ダクト3
30 カソード装着部
Claims (20)
- 基材上に形成されたアモルファス構造を有する炭素系膜であって、水素濃度が5原子%以下の層と、水素濃度が5原子%より大きく15原子%以下の層とが、それぞれ少なくとも一層ずつ含まれ、それらの層が積層されており、最も基材側の層は水素濃度が5原子%以下の層であることを特徴とする炭素系膜。
- 炭素系膜全体における平均膜中水素濃度が5原子%以上で15原子%より小さい請求項1記載の炭素系膜。
- 前記積層された層の数が3以上である請求項1又は2記載の炭素系膜。
- 基材上に形成されたアモルファス構造を有する炭素系膜であって、水素濃度が膜厚方向に変化しており、最も水素濃度が低く該水素濃度が5原子%以下の前記基材に隣り合う膜部分が含まれており、膜全体における平均膜中水素濃度が5原子%以上で15原子%より小さいことを特徴とする炭素系膜。
- ナノインデンタ法による硬度計測において、膜表面から深さ50nmの位置での膜硬度が40GPa以上である請求項1から4のいずれかに記載の炭素系膜。
- アルゴンレーザを用いるラマン分光により得られるスペクトルにおいて、1350cm-1付近に存在するピークの強度I1350と1560cm-1付近に存在するピークの強度I1560の比(I1350/I1560)が1.0以下である請求項1から5のいずれかに記載の炭素系膜。
- 前記基材は該基材本体表面に0.05μm以上の厚みを有する、金属を主成分とする密着性向上中間層が少なくとも1層形成されており、該中間層上に形成された請求項1から6のいずれかに記載の炭素系膜。
- 炭素を主成分とするカソードを真空アーク放電により蒸発させて形成された請求項1から7のいずれかに記載の炭素系膜。
- 前記カソードの真空アーク放電による蒸発を、不活性ガス、水素ガス、炭化水素ガスから選ばれた少なくとも1種のガスの雰囲気であって、ガス圧1Pa以下のガス雰囲気中で行って形成された請求項8記載の炭素系膜。
- 前記不活性ガスはヘリウム(He)ガス及びネオン(Ne)ガスから選ばれた少なくとも1種のガスである請求項9記載の炭素系膜。
- 請求項1から7のいずれかに記載の炭素系膜を形成する膜形成装置であって、膜形成対象基材を配置する成膜室と、炭素を主成分とするカソード、該カソードに対するアノード及びアーク電源を含むアーク放電回路とを有し、該カソードを真空アーク放電により蒸発させて該基材上に炭素系膜を形成する装置であり、
100アンペア以下のアーク電流で真空アーク放電を維持するために該カソードの存在領域にアーク安定化用ガスを導入するガス導入装置を備えていることを特徴とする炭素系膜形成装置。 - 前記ガス導入装置は、不活性ガス、水素ガス、炭化水素ガスから選ばれた少なくとも1種のガスを導入するものである請求項11記載の炭素系膜形成装置。
- 前記不活性ガスはヘリウム(He)ガス及びネオン(Ne)ガスから選ばれた少なくとも1種のガスである請求項12記載の炭素系膜形成装置。
- 前記アーク放電回路は、前記アーク電源と前記カソードとの間に、100アンペア以下のアーク電流で真空アーク放電を維持するためのリアクタンス成分発生回路を有している請求項11、12又は13記載の炭素系膜形成装置。
- 請求項1から7のいずれかに記載の炭素系膜を形成する膜形成装置であって、膜形成対象基材を配置する成膜室と、炭素を主成分とするカソード、該カソードに対するアノード及びアーク電源を含むアーク放電回路とを有し、該カソードを真空アーク放電により蒸発させて該基材上に炭素系膜を形成する装置であり、
前記アーク放電回路は、前記アーク電源と前記カソードとの間に、100アンペア以下のアーク電流で真空アーク放電を維持するためのリアクタンス成分発生回路を有していることを特徴とする炭素系膜形成装置。 - 前記アーク放電回路におけるリアクタンス成分発生のためのインダクタンスは1mH以上である請求項14又は15記載の炭素系膜形成装置。
- 前記アーク電流は60アンペア以下である請求項11から16のいずれかに記載の炭素系膜形成装置。
- 前記アノードのアーク放電面の面積は前記カソードのアーク放電面の面積より大きい請求項11から17のいずれかに記載の炭素系膜形成装置。
- 前記カソードのアーク放電面の面積aに対する前記アノードのアーク放電面の面積bの比率b/aが2以上である請求項18記載の炭素系膜形成装置。
- 前記カソードのアーク放電面おいて、該アーク放電面に対し垂直成分が50ガウス以上の磁界を発生させる磁界発生装置を備えている請求項11から19のいずれかに記載の炭素系膜形成装置。
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