JP2001172763A - 金属含有硬質炭素膜の形成方法 - Google Patents

金属含有硬質炭素膜の形成方法

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JP2001172763A JP35689799A JP35689799A JP2001172763A JP 2001172763 A JP2001172763 A JP 2001172763A JP 35689799 A JP35689799 A JP 35689799A JP 35689799 A JP35689799 A JP 35689799A JP 2001172763 A JP2001172763 A JP 2001172763A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 均一に成膜できるというアークイオンプレー
ティング法の特徴を損なうことなく、各種の金属を含有
した硬質炭素膜の形成方法を提供する。 【解決手段】 炭素を含む炭素含有ガスと希ガスとを主
成分とする雰囲気ガスを供給しつつ、その雰囲気ガス中
でアーク放電を行うことにより金属ターゲットを蒸発し
てイオン化し、金属原子のイオンおよび炭素含有分子の
イオンやラジカルを負の電圧を印加した被処理体に供給
して成膜する。その際、環状の電磁石9によってターゲ
ット6の蒸発面Sにほぼ直交して前方に発散ないし平行
に進行する磁力線を形成し、この磁力線によって被処理
体Wの近傍付近で雰囲気ガスのプラズマ化を促進し、希
ガスイオンによるスパッタエッチングを行いつつ成膜す
る。希ガス流量:炭素含有ガス流量は1:9〜9:1が
望ましい。また、このときの被処理体に印加するバイア
ス電圧は、アース電位に対して−50V〜−500Vが
望ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、高耐摩耗性、低摩
擦摺動特性を有する硬質炭素膜の形成方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】硬質炭素膜に金属を含有させることによ
って、摩擦係数の低減化や膜応力緩和による密着性の向
上、膜への電気伝導性付与等を行うことができる。硬質
炭素膜は、プラズマCVD法、スパッタリング法、イオ
ンプレーティング法等で成膜される。硬質炭素膜内に金
属を含有させるには、上記手法において、金属元素を含
むガスを反応系に供給して膜中に金属元素を添加する方
法、金属をスパッタや電子ビーム等により蒸発させて膜
中に金属元素を添加する方法、金属をイオン注入するこ
とにより膜中に金属元素を添加する方法等が採られる。
【0003】しかし、プラズマCVD法、スパッタリン
グ法においては、複雑形状物への均一成膜が困難であ
る。すなわち、プラズマCVD法においては、何れもプ
ラズマの発生を高周波で行っており、高周波を基板に印
加するため、切削工具などに金属含有硬質炭素膜をコー
ティングする場合には、刃先にプラズマが集中するた
め、刃先とそれ以外の部分では膜厚が異なるようにな
り、場合によっては、刃先の膜がスパッタ効果により成
膜されないことすら生じ、均一な成膜が困難であるとい
う欠点がある。また、スパッタリングによる成膜に関し
ては、成膜圧力が非常に低いので、スパッタされた炭素
原子の回り込みが悪くなり、この方法の場合にも均一成
膜が困難である。また、イオンプレーティング法におい
ても、高周波印加型のイオンプレーティング法において
は、前記プラズマCVD法と同様の問題があり、均一な
成膜が困難である。
【0004】一方、イオンプレーティング法の一種とし
て、アークイオンプレーティング法がある。この方法
は、雰囲気ガス(Arガス)中で、陰極物質(ターゲッ
トともいう。)と陽極との間でアーク放電を生じさせ、
陰極物質を蒸発させて陰極物質の原子をイオン化し、こ
のイオンを負電位にバイアスされた被処理体に加速供
給、堆積して陰極物質を含む膜を成膜する方法である。
このアークイオンプレーティング法によると、成膜時の
ガス圧力が比較的高いために原子の回り込みが良く、一
般に複雑形状物に対しても比較的均一に成膜することが
できる。
【0005】アークイオンプレーティング法によって、
金属を含有する硬質炭素膜を作製する方法としては2方
法がある。1つは、2種のターゲットすなわちカーボン
と膜に含有させる金属とからなるターゲットを各々設
け、これらを同時に蒸発させる方法であり、他の1つ
は、ターゲットとしてカーボンのみを用い、これを蒸発
させながら反応ガス雰囲気中に金属元素を含むガスを添
加する方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、アーク
イオンプレーティング法において、ターゲットとして炭
素を用いて硬質炭素膜を成膜すると、アークスポットが
ターゲット上であまり動かないため、カーボンの蒸発が
不均一となり、均一な硬質炭素膜が得られないという欠
点がある。また、2種のターゲットを用いる方法は、金
属物質の蒸発速度が速すぎて金属炭化物や金属の成膜が
優勢となり硬質炭素膜が生成し難いといいう問題があ
る。また、金属元素を含むガスを添加する方法は、金属
元素を含有するガスの種類が限られるため、Sn、Zn
等の特定の金属元素しか添加できないという欠点があ
る。
【0007】本発明はかかる問題に鑑みなされたもの
で、均一に成膜できるというアークイオンプレーティン
グ法の特徴を損なうことなく、各種の金属を含有させる
ことができる硬質炭素膜の形成方法を提供するものであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
の解決を鋭意検討した結果、陰極物質の蒸発面とほぼ垂
直に交差する磁力線を発生させるために陰極物質の蒸発
面および/または蒸発面の前方を取り囲むように磁界形
成手段が配置されたアーク式蒸発源を有するアークイオ
ンプレーティング装置を用いて、ターゲットとして炭素
膜中に添加したい金属を用い、少なくとも炭素を含有す
るガスと希ガスとを含有する雰囲気ガス中でアーク放電
を行うことにより被処理体上に陰極物質である金属を含
有する硬質炭素膜を形成することができることを見出
し、本発明を完成するに至った。
【0009】すなわち、本発明の金属含有硬質炭素膜の
形成方法は、炭素を含む炭素含有ガスと希ガスとを主成
分とする雰囲気ガスを供給しつつ、その雰囲気ガス中で
アーク放電を行うことにより陰極物質を構成する金属を
蒸発してイオン化し、前記金属原子のイオンおよび炭素
含有分子のイオンやラジカルを負のバイアス電圧を印加
した被処理体に供給して、金属を含む炭素膜を成膜する
金属含有硬質炭素膜の形成方法であって、陰極物質の蒸
発面にほぼ直交して前方に発散ないし平行に進行する磁
力線を形成し、この磁力線によって被処理体の近傍付近
で雰囲気ガスのプラズマ化を促進し、希ガスイオンによ
るスパッタエッチングを行いつつ成膜する方法である。
【0010】成膜に際しては、希ガスの炭素含有ガスに
対する流量比率(希ガス流量:炭素含有ガス流量)は
1:9〜9:1であることが望ましい。また、このとき
の被処理体に印加する電圧としては、アース電位に対し
て−50V〜−500Vであることが望ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】まず、本発明を実施するためのア
ークイオンプレーティング(AIPと略記することがあ
る。)装置の一例を図1を参照して簡単に説明する。こ
のAIP装置は、真空排気する排気口11および雰囲気
ガスを供給するガス供給口12とを有する真空容器1
と、アーク放電によって陰極を構成するターゲットを蒸
発させてイオン化するアーク式蒸発源2と、金属含有硬
質炭素膜のコーティング対象である被処理体Wを支持す
る支持台3と、この支持台3と前記真空容器1との間で
支持台3を通して被処理体Wに負のバイアス電圧を印加
するバイアス電源4とを備えている。本発明の実施に際
しては、前記雰囲気ガスとして、メタン等の炭素含有ガ
スと、アルゴン等の希ガスとの混合ガスが使用される。
【0012】前記アーク式蒸発源2は、陰極を構成する
ターゲット6と、このターゲット6と陽極を構成する前
記真空容器1との間に接続されたアーク電源7と、ター
ゲット6の蒸発面Sにほぼ直交して前方に発散ないし平
行に進行し、被処理体Wの近傍付近まで伸びる磁力線を
形成する磁界形成手段としての磁石(永久磁石)8とを
備えている。被処理体Wの近傍付近における磁束密度と
しては、被処理体の中心部において磁束密度が10G
(ガウス)以上、好ましくは30G以上とするのがよ
い。本発明の実施に際しては、ターゲット6として所望
の金属が用いられる。なお、蒸発面にほぼ直交すると
は、蒸発面の法線方向に対して0°を含み、30°程度
以下の角度をなすこと意味する。
【0013】前記磁界形成手段としての磁石8は、環状
の形態を有しており、図2に拡大表示したように、ター
ゲット6の蒸発面Sを取り囲むように配置されている。
磁界形成手段としては、前記磁石8に限らず、図3に示
すアーク式蒸発源2Aのように、コイル10とコイル電
源(図示省略)とを備えた電磁石9でもよい。また、磁
石の配置は、図3に示すように、ターゲット6の蒸発面
Sの前方(被処理体側)を取り囲むように設けてもよ
い。なお、図4に示すように、従来のAIP装置のアー
ク式蒸発源102においてもアーク放電をターゲット1
06上に集中させるための電磁石109を備えたものが
あるが、電磁石109がターゲット106の裏側に位置
しており、このため、磁力線の方向がターゲット蒸発面
近傍でターゲット表面と平行の成分を持ち、磁力線が被
処理体Wの近傍まで伸びないようになっている。
【0014】本発明で使用するAIP装置のアーク式蒸
発源と、従来のそれとの磁場構造の違いは、雰囲気ガス
のプラズマの広がり方の違いにつながる。すなわち、図
3に示すように、放電で発生した電子eの一部は磁力線
に巻き付くように運動を行い、この電子が雰囲気ガス分
子と衝突し、ガスをプラズマ化するが、従来の蒸発源1
02では、磁力線がターゲット近傍に限られるため、ガ
スのプラズマもターゲット近傍が最も密度が高く、被処
理体Wの近傍付近ではガスのプラズマ密度はかなり低い
ものとなっている。これに対し、本発明で使用する蒸発
源2では、磁力線が被処理体Wまで伸びるため、被処理
体Wの近傍付近におけるガスのプラズマ密度は従来の蒸
発源に比べ格段に高いものとなっている。
【0015】このプラズマの状態の違いは、まず第1
に、アーク放電によりターゲットから蒸発した金属の成
膜挙動に影響を与える。アーク放電によりターゲットで
ある金属を蒸発させる時には、炭素含有ガス及び希ガス
を主成分とする雰囲気ガスを真空容器1に導入しながら
行うが、本発明で使用する蒸発源2では、被処理体Wの
近傍でのガスのプラズマ密度が高い、すなわち被処理体
Wの近傍に希ガス元素のプラスイオンが従来の蒸発源1
02を用いた場合に比べて多く存在するため、被処理体
Wにバイアス電圧を印加しながら金属の成膜を行うと、
希ガス元素のイオンによる膜のスパッタエッチング作用
が働き、金属膜の成膜速度が極端に遅くなる。一方、従
来の蒸発源102では、被処理体近傍の希ガス元素イオ
ンが少ないため、被処理体に印加するバイアス電圧を大
きくしても希ガス元素イオンによるスパッタエッチング
作用が殆どなく成膜速度に殆ど変化は見られない。
【0016】第2に、メタン等の炭素含有ガスを含む雰
囲気ガスを導入しながらアーク放電を実施した場合に、
硬質炭素膜の析出速度に影響を与える。すなわち、本発
明で使用する蒸発源2では、上述の希ガスの場合と同様
に、被処理体Wの近傍で炭素含有ガスのプラズマ化が起
こるため、硬質炭素膜を生成する前駆体が多く生成し硬
質炭素膜の成膜速度が従来の蒸発源を用いたときに比べ
かなり速くなる。
【0017】上記の本発明の実施に使用するアーク蒸発
源2の性質を利用すれば、アークイオンプレーティング
の均一成膜性を損なうことなく、金属含有の硬質炭素膜
が生成可能となる。すなわち、密囲気ガスとして、希ガ
スと炭素含有ガスとの混合ガスを真空容器内に導入しな
がら、被処理体Wに適当なバイアス電圧を印加するとと
もに金属ターゲット6を陽極(上記AIP装置では真空
容器1)との間でアーク放電させれば、ターゲット6か
ら蒸発した金属原子のイオンと炭素含有ガスからの炭素
含有分子のイオンやラジカルが被処理体Wに加速供給さ
れて析出する。この際、炭素の析出速度が大きいという
特徴と炭素に比べ金属の方が希ガスイオンによるスパッ
タ収率が大きいという特性のために、見かけ上相対的に
炭素の析出が優勢となり、金属元素を含有した硬質炭素
膜が容易に形成できる。なお、従釆のアーク式蒸発源1
02を用いる場合では、金属の析出が速い上に炭素の析
出が遅く、かつ希ガスによるスパッタ効果が小さいため
に、硬質炭素膜とならず、金属炭化物や金属の成膜が優
勢となってしまうため、所望の金属含有硬質炭素膜を成
膜することができない。
【0018】本発明において使用する雰囲気ガスにおけ
る希ガス流量(QR)の炭素含有ガス流量(QC)に対
する比率(QR:QC)は、1:9から9:1の間であ
ることが望ましい。QR/QCが1/9より低いと希ガ
スによる金属のスパッタ効果が少なくなり、金属や金属
炭化物の析出が優勢となり、炭素の析出が過少な膜しか
生成せず、一方QR/QCが9より大きいと希ガスによ
るスパッタ効果が過大となり、炭素の析出速度も小さく
なって、金属及び炭素共にスパッタされ、成膜が困難に
なり、著しい場合は成膜しないようになる。このため、
QR/QCの下限を好ましくは1/9、より好ましくは
1/3とし、一方その上限を好ましくは9、より好まし
くは7とするのがよい。なお、雰囲気ガスは、希ガスお
よび炭素含有ガスを主成分とするものであり、膜質に影
響を及ぼさない範囲で他のガスを含有してもよく、特に
膜質を向上させたり、調整するような成分を含むガスを
含有することができる。例えば、N2ガス、H2ガスは膜
の硬度を調整するために適宜量を添加してもよい。
【0019】また、被処理体に印加するバイアス電圧B
Eは−50V〜−500Vが望ましい。BE>−50V
では希ガス元素イオンによる金属のスパッタ効果が小さ
くなり、金属炭化物や金属の成膜が優勢となってしまい
硬質炭素膜とならない。一方、り、BE<−500Vで
は希ガス元素イオンによるスパッタ効果が大きくなりす
ぎて被処理体温度の上昇が起こり、硬質炭素膜が変質し
て、すす状の膜となってしまう。このため、バイアス電
圧を好ましくは−50V〜−500V、より好ましくは
−70V〜−450V、さらに好ましくは−100Vか
ら−400Vとするのがよい。
【0020】本発明で用いられる希ガスとしては、A
r、Kr、Xe、Rnが望ましい。He、Neは質量が
小さいために、金属に対するスパッタ効果が小さいから
である。また、炭素含有ガスとしては、メタン、エタ
ン、プロパン、ブタン等の飽和炭化水素、エチレン、ア
セチレン、プロピレン、ブチレン等の不飽和炭化水素、
ベンゼン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール
等のアルコールなどを使用することができる。また、本
発明において用いられる金属ターゲットは、一般にアー
クイオンプレーティングで用いられているターゲットで
あれば問題なく使用可能であり、合金ターゲットを使用
することもできる。
【0021】本発明においては、ターゲットに金属を用
いているため、アークスポットの偏りが無く、アーク放
電により発生した電子と被処理体の近傍付近まで伸びる
磁場により生じたプラズマ中に被処理体を曝して成膜す
るため、均一厚さの硬質炭素膜を析出させることができ
る。
【0022】また、本発明においては、陰極物質の蒸発
面にほぼ直交して前方に発散ないし平行に進行する磁力
線を形成するため、アークスポットが小さく速く動き回
るという特徴があり、アークイオンプレーティングの欠
点と言われているマクロパーティクルが出にくいという
特徴も備えており、このため、従来の蒸発源で成膜した
膜に比べ表面粗さも小さく良好である。
【0023】以下、実施例によって本発明をさらに具体
的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的
に解釈されるものではない。
【0024】
【実施例】〔実施例1〕図2に示すアーク式蒸発源2を
備えた図1のAIP装置を用い、ターゲットとしてTi
を用い、基板(被処理体)の中心部における磁束密度を
40Gとした。真空容器を真空排気した後、メタンを2
50sccm、アルゴンを250sccm流し、真空容
器内の圧力を0.02torrとして、ターゲットにア
ーク電流が60Aとなるようにしてアーク放電を20分
間行い、基板上に硬質炭素膜の形成を行った。このと
き、基板として約1.2cm角の超硬チップと10cm
角のSKD11材を用いた。また、基板に印加するバイ
アス電圧は−200Vとした。得られた炭素膜につい
て、膜厚およびビッカース硬度を測定(荷重25g)す
るとともに、EPMAにより膜中のTiの分析を行っ
た。
【0025】炭素膜の膜厚は基板のどの部分を測定して
も2.0μm ±0.2μm と均一であり、硬度もHv3
000±200とほば均一な高硬度であった。また、E
PMA分析から、炭素膜中にTiが約5at%含有され
ていることが確認された。
【0026】また、比較のため、図4に示す従来のアー
ク式蒸発源102を用いて同様の条件で成膜を行ったと
ころ、生成した膜は金属光沢を示しており、EPMAで
組成を分析したところ、Ti55at%、C45at%
となっており、TiCが生成していることが確認され、
もはや硬質炭素膜とは言えないものとなっていた。
【0027】さらに、比較として、電極板が平行に配置
された平行平板型の高周波プラズマCVD装置を用い
て、メタンガス100sccm、TiC14を10sc
cm、ガス圧を0.02torr、高周波出力200W
の条件で40分間硬質炭素膜の成膜を行った。基板は上
記と同様の約1.2cm角の超硬チップと10cm角の
SKD11材を用い、これらを高周波印加側の電極板に
設置した。
【0028】上記と同様の要領にて、基板に成膜された
炭素膜の膜厚を測定したところ、特に基板のエッジ部分
は膜が薄く、0.5μm であるのに対し、基板中央部の
膜厚は約2μm となっており、膜厚にバラツキが見られ
た。
【0029】〔実施例2〕図2に示すアーク式蒸発源2
を備えた図1のAIP装置を用い、ターゲットとしてC
uを用い、基板の中心部における磁束密度を30Gとし
た。真空容器を真空排気した後、クリプトンとエタンと
を流し、真空容器内の圧力を0.02torrとして、
基板に一300Vのバイアス電圧を印加し、ターゲット
にアーク電流が60Aとなるようにしてアーク放電を2
0分間行い、基板上に硬質炭素膜を形成した。このと
き、基板として約1.2cm角の超硬チップを用いた。
クリプトンのエタンに対する流量比(クリプトン流量:
エタン流量)を10:1〜1:10まで変えて成膜を行
い、得られた膜について、ビッカース硬度の測定(荷重
25g)及びEPMAによる膜中のCuの分析を行っ
た。その結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】同表より、クリプトン流量が過多(クリプ
トン/エタン流量比10/1)の試料No. 1は、クリプ
トンイオンによるスパッタが効き過ぎて成膜しなかっ
た。一方、クリプトン流量が過少(クリプトン/エタン
流量比1/10)の試料No. 11は、クリプトンイオン
によるスパッタが過少なため、膜中のCuが過多とな
り、硬度の低下が著しい。
【0032】〔実施例3〕図3に示すアーク式蒸発源2
Aを備えた図1のAIP装置を用い、ターゲットとして
Crを用い、基板の中心部における磁束密度を20Gと
した。真空容器を真空排気した後、メタンを250sc
cm、アルゴンを250sccm流し、真空容器内の圧
力を0.04torrとして、ターゲットにアーク電流
が60Aとなるようにしてアーク放電を20分間行い、
基板上に硬質炭素膜を形成した。このとき、基板とし
て、約1.2cm角の超硬チップを用いた。また、基板
に印加するバイアス電圧は−10V〜−600Vまで変
えて成膜を行い、得られた膜について、ビッカース硬度
の測定(荷重25g)及びEPMAによる膜中のCrの
分析を行った。その結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】同表より、バイアス電圧が−10の試料N
o. 21では、アルゴンガスによるスパッタ効果が過少
であるため、Crの析出が優勢となり、炭素膜の硬度低
下が著しい。また、バイアス電圧を−600Vとした試
料No. 29では、基板の温度が500℃を越え、膜質が
すす状になり、炭素膜を成膜することができなかった。
一方、バイアス電圧が−50〜−500の試料No. 22
〜28では、ビッカース硬度がHv1000以上の硬質
炭素膜が得られた。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、ターゲットとして金属
を用いるため、アークスポットの偏りがなく、ターゲッ
ト表面全体から金属を速やかに蒸発させることができ、
しかも被処理体の近傍付近にまで伸びる磁力線によって
希ガスイオンによるスパッタ効果により金属の析出を抑
制しつつ炭素含有ガスから炭素含有分子のイオン化及び
ラジカル化を促進させることができる。このため、被処
理体の表面に種々の金属を含有する硬質炭素膜を容易に
形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に使用するアークイオンプレーテ
ィング装置の概略図である。
【図2】本発明の実施に供するアーク式蒸発源の要部拡
大断面図である。
【図3】本発明の実施に供する他のアーク式蒸発源の要
部拡大断面図である。
【図4】従来のアーク式蒸発源の要部拡大断面図であ
る。
【符号の説明】
2、2A アーク式蒸発源 4 バイアス電源 6 ターゲット(陰極物質) 8 磁石(磁界形成手段) 9 電磁石(磁界形成手段) W 被処理体

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素を含む炭素含有ガスと希ガスとを主
    成分とする雰囲気ガスを供給しつつ、その雰囲気ガス中
    でアーク放電を行うことにより陰極物質を構成する金属
    を蒸発してイオン化し、前記金属原子のイオンおよび炭
    素含有分子のイオンやラジカルを負のバイアス電圧を印
    加した被処理体に供給して、金属を含む炭素膜を成膜す
    る金属含有硬質炭素膜の形成方法であって、 陰極物質の蒸発面にほぼ直交して前方に発散ないし平行
    に進行する磁力線を形成し、この磁力線によって被処理
    体の近傍付近で雰囲気ガスのプラズマ化を促進し、希ガ
    スイオンによるスパッタエッチングを行いつつ成膜す
    る、金属含有硬質炭素膜の形成方法。
  2. 【請求項2】 雰囲気ガスにおける希ガスの炭素含有ガ
    スに対する流量比率が1:9〜9:1である請求項1記
    載の金属含有硬質炭素膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 被処理体に印加するバイアス電圧がアー
    ス電位に対して−50V〜−500Vである請求項1又
    は2記載の金属含有硬質炭素膜の製造方法。
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Cited By (4)

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