JP2005307221A - 溶剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】不燃性であり、溶解力に優れ、幅広い用途に使用できる新規な溶剤組成物を提供する。
【解決手段】1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン25〜75質量%、trans−1,2−ジクロロエチレン25〜75質量%からなる不燃性溶剤組成物、および1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン43〜53質量%とtrans−1,2−ジクロロエチレン47〜57質量%からなる不燃性溶剤組成物、および1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン38.2質量%とtrans−1,2−ジクロロエチレン61.8質量%からなる共沸溶剤組成物。
【選択図】図1
【解決手段】1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン25〜75質量%、trans−1,2−ジクロロエチレン25〜75質量%からなる不燃性溶剤組成物、および1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン43〜53質量%とtrans−1,2−ジクロロエチレン47〜57質量%からなる不燃性溶剤組成物、および1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン38.2質量%とtrans−1,2−ジクロロエチレン61.8質量%からなる共沸溶剤組成物。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、IC等の電子部品、精密機械部品、ガラス基板等の物品に付着する油脂類、プリント基板等のフラックス、塵埃などの汚れを除去するために用いられる不燃性溶剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、精密機械工業、光学機器工業、電気電子工業、およびプラスチック加工業等において、製造加工工程等で付着した油、フラックス、塵埃、ワックス等を除去するための精密洗浄には、不燃性で化学的および熱的安定性に優れ、油脂類の溶解力のあるフッ素系溶剤としてジクロロペンタフルオロプロパン(以下、R−225と記す。)等のハイドロクロロフルオロカーボン(以下、HCFCと記す。)が広く使われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、HCFCはオゾン破壊係数があるため、先進国においては2020年に生産が全廃されるという問題があった。これに対し、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン(CF3(CF2)3CH2CH3)はオゾン破壊係数がなく、地球環境への影響が小さいフッ素系溶剤であるが、油脂類の溶解力が低い問題があった。一方、trans−1,2−ジクロロエチレンは、油脂類の溶解力は高いが、引火点が4℃と低く火災等の危険性があるという問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン68.2%(質量基準である。以下同じ。)と、trans−1,2−ジクロロエチレン61.8%とからなる共沸溶剤組成物を提供する。
【0005】
本発明は、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンとtrans−1,2−ジクロロエチレンとを含み、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンとtrans−1,2−ジクロロエチレンとの合計量に対して1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンが25〜75%である溶剤組成物を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の不燃性共沸溶剤組成物は、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン38.2%と、trans−1,2−ジクロロエチレン61.8%とからなる。該共沸溶剤組成物の沸点は、圧力1010hPaにおいて45±1℃である。
【0007】
本発明の溶剤組成物は、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンとtrans−1,2−ジクロロエチレンとを含み、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンとtrans−1,2−ジクロロエチレンとの合計量に対して1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンが25〜75%である。本発明の溶剤組成物が、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンとtrans−1,2−ジクロロエチレンの実質的2成分のみからなる溶剤組成物である場合、該1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンの量が25%以上ならば引火点を有さず、75%以下であると十分な洗浄力が得られる。該1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンの量は、28〜48%であるのがより好ましい。該1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンの量が28〜48%であると、該溶剤組成物の組成変動が小さく、共沸溶剤組成物とほぼ同様に取り扱える溶剤組成物であり、この範囲の組成物はいわゆる共沸様溶剤組成物となる。
【0008】
本発明の溶剤組成物は、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンとtrans−1,2−ジクロロエチレンのみからなることが好ましいが、さらに他の化合物を含んでいてもよい。
【0009】
他の成分としては、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類(ただし、トリデカフルオロヘキサンおよびtrans−1,2−ジクロロエチレンを除く。)、エーテル類およびエステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの化合物の溶剤組成物中の含有割合は、好ましくは40%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。
【0010】
炭化水素類としては、炭素数5〜15の鎖状または環状の飽和または不飽和炭化水素類が好ましく、n−ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,4−ジメチルペンタン、n−オクタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2−メチルヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、n−デカン、n−ドデカン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキセン、α−ピネン、ジペンテン、デカリン、テトラリン、アミルナフタレン等が挙げられる。より好ましくは、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の炭素数5〜7の炭化水素。
【0011】
アルコール類としては、炭素数1〜16の鎖状または環状の飽和または不飽和アルコール類が好ましく、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、α−テルピネオール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、ノニルアルコール、テトラデシルアルコール等が挙げられる。より好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数3以下のアルカノール。
【0012】
ケトン類としては、炭素数3〜9の鎖状または環状の飽和または不飽和ケトン類が好ましく、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、メシチルオキシド、ホロン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、2,4−ペンタンジオン、2,5−ヘキサンジオン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等が挙げられる。より好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3〜4のケトン。
【0013】
ハロゲン化炭化水素類としては、炭素数1〜6の飽和または不飽和の塩素化または塩素化フッ素化炭化水素類が好ましく、塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、trans−1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロプロパン、ジクロロペンタフルオロプロパン、ジクロロフルオロエタン、デカフルオロペンタン等が挙げられる。より好ましくは、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の炭素数1〜2の塩素化炭化水素。
【0014】
エーテル類としては、炭素数2〜8の鎖状または環状の飽和または不飽和エーテル類が好ましく、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、メチルアニソール、ジオキサン、フラン、メチルフラン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。より好ましくは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の炭素数4〜6のエーテル。
【0015】
エステル類としては、炭素数2〜19の鎖状または環状の飽和または不飽和エステル類が好ましく、具体的には、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル、γ−ブチロラクトン、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジペンチル、マロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、酒石酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等が挙げられる。より好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル等の炭素数3〜4のエステル。
【0016】
さらに、主として安定性を高めるために、例えば以下に挙げる化合物の1種または2種以上を0.001〜5%の範囲で本発明の溶剤組成物中へ配合できる。
【0017】
ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類。ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソ−プロピルアミン、n−ブチルアミン等のアミン類。フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−t−ブチルフェノール、t−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、ビスフェノールA、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、2,6−ジ−t−ブチルーp−クレゾール等のフェノール類。2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[(N,N−ビス−2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類。
【0018】
本発明の溶剤組成物および不燃性共沸溶剤組成物は、従来のジクロロペンタフルオロプロパン類組成物と同様に各種用途に好適に使用できる。具体的な用途としては、汚れが付着した物品を除去するための洗浄剤、種々の化合物の塗布溶剤または抽出剤などの用途がある。上記の物品の材質としては、ガラス、セラミックス、プラスチック、エラストマー、または金属などが挙げられる。また、物品の具体例としては、電子・電気機器、精密機械・器具、光学機器等、およびそれらの部品であるIC、マイクロモーター、リレー、ベアリング、光学レンズ、プリント基板、ガラス基板などが挙げられる。
【0019】
物品に付着する汚れとしては、物品または物品を構成する部品を製造する際に使用され、最終的に除去されなければならない汚れまたは物品の使用時に付着する汚れが挙げられる。汚れを形成する物質としては、グリース類、鉱油類、ワックス類、油性インキ類等の油脂類、フラックス類、塵埃が挙げられる。
【0020】
上記汚れを除去する具体的手段としては、例えば、手拭き、浸漬、スプレー、揺動、超音波洗浄、蒸気洗浄またはこれらを組み合わせた方法等を採用できる。
【0021】
本発明の溶剤組成物は、混合比を変えることにより、汚れ等の溶解力を調整することができる。
【0022】
【実施例】
例1〜3、6〜8、12〜14、18〜20、22は実施例、例4〜5、9〜11、15〜17、21は比較例である。
R−569:1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、
tDCE:trans−1,2−ジクロロエチレン。
【0023】
[例1〜5]
表1に記載の組成からなる溶剤組成物を用い、クリーブランド開放式引火点測定器を用いASTM D 92−90に記載の方法にしたがって室温での引火点の有無を測定した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
[例6〜11]
表2に記載の組成からなる溶剤組成物を用いて金属加工油の洗浄試験を行った。すなわち、SUS−304のテストピース(25mm×30mm×2mm)を、金属加工油:テンパーオイル(日本グリース社製)中に浸漬して金属加工油を付着させた。該テストピースは、該金属加工油中から取り出した後、40℃に保温した該溶剤組成物中で超音波をかけて5分間洗浄した。金属加工油の除去度を目視で評価した。結果を表3に示す。表中において、○:良好に除去、△:微量残存、×:かなり残存、を示す。
【0026】
【表2】
【0027】
[例12〜17]
表3に記載の組成からなる溶剤組成物を用いてフラックス洗浄試験を行った。すなわち、IPC B−25の櫛型電極基板に株式会社弘輝製のフラックスJS−64NDを塗布し、100℃で10分間乾燥後、260℃の半田浴に3秒浸漬して半田付けした。その後、室温で2時間静置してから該櫛形電極基板を40℃に保温した表3に記載の溶剤組成物中に浸漬し、超音波をかけて5分間洗浄した。フラックスの除去度を目視で評価した。結果を表4に示す。表中において、○:良好に除去、△:白色残渣が微量残存、×:白色残渣がかなり残存、を示す。
【0028】
【表3】
【0029】
[例18〜22]
表4に記載の溶剤組成物を3槽式洗浄機に入れ、8時間稼動した後の水分離槽中の溶剤をガスクロマトグラフで測定した。測定結果のうち、R−569の組成比は、表4のようになった。
【0030】
【表4】
【0031】
[例23]
オスマー型気液平衡装置にR−569とtDCEを入れ、気相と液相の温度が一定になった後、気相と液相からサンプルを採取し、ガスクロマトグラフで測定した結果を図1の実線で表した。図1の点線と該実線との交点は、共沸組成であることを示す。すなわちR−569/tDCE=38.2/61.8%において、共沸組成となることを見出した。
【0032】
【発明の効果】
本発明の溶剤組成物は、特に共沸様または共沸組成では、蒸気洗浄に用いたり、蒸留等によりリサイクル使用しても組成の変動がなく、洗浄性や各種物性が変化しない。このため、従来技術の大幅な変更を要しない。
【0033】
また、本発明の溶剤組成物は、共沸組成または該組成に近い組成においては、蒸気洗浄や蒸留等によりリサイクル使用しても組成の変動が小さいか全くなく、従来のR−225等と同様の使い方ができ、かつ洗浄性能に優れ、従来技術の大幅な変更を要しない等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】[例23]で作成したグラフ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、IC等の電子部品、精密機械部品、ガラス基板等の物品に付着する油脂類、プリント基板等のフラックス、塵埃などの汚れを除去するために用いられる不燃性溶剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、精密機械工業、光学機器工業、電気電子工業、およびプラスチック加工業等において、製造加工工程等で付着した油、フラックス、塵埃、ワックス等を除去するための精密洗浄には、不燃性で化学的および熱的安定性に優れ、油脂類の溶解力のあるフッ素系溶剤としてジクロロペンタフルオロプロパン(以下、R−225と記す。)等のハイドロクロロフルオロカーボン(以下、HCFCと記す。)が広く使われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、HCFCはオゾン破壊係数があるため、先進国においては2020年に生産が全廃されるという問題があった。これに対し、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン(CF3(CF2)3CH2CH3)はオゾン破壊係数がなく、地球環境への影響が小さいフッ素系溶剤であるが、油脂類の溶解力が低い問題があった。一方、trans−1,2−ジクロロエチレンは、油脂類の溶解力は高いが、引火点が4℃と低く火災等の危険性があるという問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン68.2%(質量基準である。以下同じ。)と、trans−1,2−ジクロロエチレン61.8%とからなる共沸溶剤組成物を提供する。
【0005】
本発明は、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンとtrans−1,2−ジクロロエチレンとを含み、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンとtrans−1,2−ジクロロエチレンとの合計量に対して1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンが25〜75%である溶剤組成物を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の不燃性共沸溶剤組成物は、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン38.2%と、trans−1,2−ジクロロエチレン61.8%とからなる。該共沸溶剤組成物の沸点は、圧力1010hPaにおいて45±1℃である。
【0007】
本発明の溶剤組成物は、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンとtrans−1,2−ジクロロエチレンとを含み、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンとtrans−1,2−ジクロロエチレンとの合計量に対して1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンが25〜75%である。本発明の溶剤組成物が、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンとtrans−1,2−ジクロロエチレンの実質的2成分のみからなる溶剤組成物である場合、該1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンの量が25%以上ならば引火点を有さず、75%以下であると十分な洗浄力が得られる。該1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンの量は、28〜48%であるのがより好ましい。該1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンの量が28〜48%であると、該溶剤組成物の組成変動が小さく、共沸溶剤組成物とほぼ同様に取り扱える溶剤組成物であり、この範囲の組成物はいわゆる共沸様溶剤組成物となる。
【0008】
本発明の溶剤組成物は、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンとtrans−1,2−ジクロロエチレンのみからなることが好ましいが、さらに他の化合物を含んでいてもよい。
【0009】
他の成分としては、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類(ただし、トリデカフルオロヘキサンおよびtrans−1,2−ジクロロエチレンを除く。)、エーテル類およびエステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの化合物の溶剤組成物中の含有割合は、好ましくは40%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。
【0010】
炭化水素類としては、炭素数5〜15の鎖状または環状の飽和または不飽和炭化水素類が好ましく、n−ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,4−ジメチルペンタン、n−オクタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2−メチルヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、n−デカン、n−ドデカン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキセン、α−ピネン、ジペンテン、デカリン、テトラリン、アミルナフタレン等が挙げられる。より好ましくは、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の炭素数5〜7の炭化水素。
【0011】
アルコール類としては、炭素数1〜16の鎖状または環状の飽和または不飽和アルコール類が好ましく、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、α−テルピネオール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、ノニルアルコール、テトラデシルアルコール等が挙げられる。より好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数3以下のアルカノール。
【0012】
ケトン類としては、炭素数3〜9の鎖状または環状の飽和または不飽和ケトン類が好ましく、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、メシチルオキシド、ホロン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、2,4−ペンタンジオン、2,5−ヘキサンジオン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等が挙げられる。より好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3〜4のケトン。
【0013】
ハロゲン化炭化水素類としては、炭素数1〜6の飽和または不飽和の塩素化または塩素化フッ素化炭化水素類が好ましく、塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、trans−1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロプロパン、ジクロロペンタフルオロプロパン、ジクロロフルオロエタン、デカフルオロペンタン等が挙げられる。より好ましくは、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の炭素数1〜2の塩素化炭化水素。
【0014】
エーテル類としては、炭素数2〜8の鎖状または環状の飽和または不飽和エーテル類が好ましく、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、メチルアニソール、ジオキサン、フラン、メチルフラン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。より好ましくは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の炭素数4〜6のエーテル。
【0015】
エステル類としては、炭素数2〜19の鎖状または環状の飽和または不飽和エステル類が好ましく、具体的には、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル、γ−ブチロラクトン、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジペンチル、マロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、酒石酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等が挙げられる。より好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル等の炭素数3〜4のエステル。
【0016】
さらに、主として安定性を高めるために、例えば以下に挙げる化合物の1種または2種以上を0.001〜5%の範囲で本発明の溶剤組成物中へ配合できる。
【0017】
ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類。ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソ−プロピルアミン、n−ブチルアミン等のアミン類。フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−t−ブチルフェノール、t−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、ビスフェノールA、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、2,6−ジ−t−ブチルーp−クレゾール等のフェノール類。2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[(N,N−ビス−2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類。
【0018】
本発明の溶剤組成物および不燃性共沸溶剤組成物は、従来のジクロロペンタフルオロプロパン類組成物と同様に各種用途に好適に使用できる。具体的な用途としては、汚れが付着した物品を除去するための洗浄剤、種々の化合物の塗布溶剤または抽出剤などの用途がある。上記の物品の材質としては、ガラス、セラミックス、プラスチック、エラストマー、または金属などが挙げられる。また、物品の具体例としては、電子・電気機器、精密機械・器具、光学機器等、およびそれらの部品であるIC、マイクロモーター、リレー、ベアリング、光学レンズ、プリント基板、ガラス基板などが挙げられる。
【0019】
物品に付着する汚れとしては、物品または物品を構成する部品を製造する際に使用され、最終的に除去されなければならない汚れまたは物品の使用時に付着する汚れが挙げられる。汚れを形成する物質としては、グリース類、鉱油類、ワックス類、油性インキ類等の油脂類、フラックス類、塵埃が挙げられる。
【0020】
上記汚れを除去する具体的手段としては、例えば、手拭き、浸漬、スプレー、揺動、超音波洗浄、蒸気洗浄またはこれらを組み合わせた方法等を採用できる。
【0021】
本発明の溶剤組成物は、混合比を変えることにより、汚れ等の溶解力を調整することができる。
【0022】
【実施例】
例1〜3、6〜8、12〜14、18〜20、22は実施例、例4〜5、9〜11、15〜17、21は比較例である。
R−569:1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、
tDCE:trans−1,2−ジクロロエチレン。
【0023】
[例1〜5]
表1に記載の組成からなる溶剤組成物を用い、クリーブランド開放式引火点測定器を用いASTM D 92−90に記載の方法にしたがって室温での引火点の有無を測定した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
[例6〜11]
表2に記載の組成からなる溶剤組成物を用いて金属加工油の洗浄試験を行った。すなわち、SUS−304のテストピース(25mm×30mm×2mm)を、金属加工油:テンパーオイル(日本グリース社製)中に浸漬して金属加工油を付着させた。該テストピースは、該金属加工油中から取り出した後、40℃に保温した該溶剤組成物中で超音波をかけて5分間洗浄した。金属加工油の除去度を目視で評価した。結果を表3に示す。表中において、○:良好に除去、△:微量残存、×:かなり残存、を示す。
【0026】
【表2】
【0027】
[例12〜17]
表3に記載の組成からなる溶剤組成物を用いてフラックス洗浄試験を行った。すなわち、IPC B−25の櫛型電極基板に株式会社弘輝製のフラックスJS−64NDを塗布し、100℃で10分間乾燥後、260℃の半田浴に3秒浸漬して半田付けした。その後、室温で2時間静置してから該櫛形電極基板を40℃に保温した表3に記載の溶剤組成物中に浸漬し、超音波をかけて5分間洗浄した。フラックスの除去度を目視で評価した。結果を表4に示す。表中において、○:良好に除去、△:白色残渣が微量残存、×:白色残渣がかなり残存、を示す。
【0028】
【表3】
【0029】
[例18〜22]
表4に記載の溶剤組成物を3槽式洗浄機に入れ、8時間稼動した後の水分離槽中の溶剤をガスクロマトグラフで測定した。測定結果のうち、R−569の組成比は、表4のようになった。
【0030】
【表4】
【0031】
[例23]
オスマー型気液平衡装置にR−569とtDCEを入れ、気相と液相の温度が一定になった後、気相と液相からサンプルを採取し、ガスクロマトグラフで測定した結果を図1の実線で表した。図1の点線と該実線との交点は、共沸組成であることを示す。すなわちR−569/tDCE=38.2/61.8%において、共沸組成となることを見出した。
【0032】
【発明の効果】
本発明の溶剤組成物は、特に共沸様または共沸組成では、蒸気洗浄に用いたり、蒸留等によりリサイクル使用しても組成の変動がなく、洗浄性や各種物性が変化しない。このため、従来技術の大幅な変更を要しない。
【0033】
また、本発明の溶剤組成物は、共沸組成または該組成に近い組成においては、蒸気洗浄や蒸留等によりリサイクル使用しても組成の変動が小さいか全くなく、従来のR−225等と同様の使い方ができ、かつ洗浄性能に優れ、従来技術の大幅な変更を要しない等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】[例23]で作成したグラフ。
Claims (2)
- 1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン38.2%(質量基準である。)と、trans−1,2−ジクロロエチレン61.8%(質量基準である。)とからなる共沸溶剤組成物。
- 1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンとtrans−1,2−ジクロロエチレンとを含み、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンとtrans−1,2−ジクロロエチレンとの合計量に対して1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンが25〜75%(質量基準である。)である溶剤組成物。
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