JP2005307101A - 熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 硬化収縮が少なく、耐クラック性に優れた熱硬化性樹脂組成物、及び無用剤もしくは微量の有機溶剤で液状化が可能であり、硬化物中に残存する揮発性化合物による層間剥離等がなく、絶縁信頼性や耐熱性等の特性に優れる熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)エポキシ樹脂、(B)多官能フェノール化合物、(C)硬化触媒、(D)フィラー、及び(E)オキセタン化合物を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物であり、好ましくは、前記オキセタン化合物(E)が、常温で液状である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、多層プリント配線板製造に有用な熱硬化性樹脂組成物及びそれを用いた多層プリント配線板に関する。さらに詳しくは、多層基板や両面基板等のプリント配線板のバイアホール、スルーホール等の永久穴埋め用組成物等として有用な硬化収縮が少なく、耐クラック性に優れた液状の熱硬化性樹脂組成物及びそれを用いた多層プリント配線板に関する。
近年、プリント配線板のパターンの細線化と実装面積の縮小化が進んでおり、さらにプリント配線板を備える機器の小型化・高機能化に対応すべく、プリント配線板のさらなる軽薄短小化が望まれている。そのため、プリント配線板は、コア材の上下に樹脂絶縁層を形成し、必要な回路を形成してからさらに樹脂絶縁層を形成し、導体回路を形成していく方式のビルドアップ工法へ、また実装部品は、BGA(ボール・グリッド・アレイ)、LGA(ランド・グリッド・アレイ)等のエリアアレイ型への進化が進められてきた。最近では、さらなる高密度化のために、穴部・凹部上にパッド形成し部品実装をしたり、穴部・凹部上にビアを形成する仕様へと移行している。このような状況下において、穴部・凹部に充填するための充填性、研磨性、硬化物特性に加えて、穴部・凹部上に形成される蓋めっきの密着性に優れた永久穴埋め用組成物の開発が望まれている。
尚、本明細書において、「穴部」とは、プリント配線板の製造過程で形成されるバイアホールやスルーホール等を総称する用語である。
一般に、プリント配線板の永久穴埋め用インキとしては、その硬化物が機械的、電気的、化学的性質に優れ、接着性も良好であることから、熱硬化型のエポキシ樹脂組成物が広く用いられている。また、かかるエポキシ樹脂組成物には、硬化物の熱膨張を低減するために無機フィラーが多く含まれている。
このような組成物としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、イミダゾール硬化剤を含有する無溶剤の樹脂充填剤(特許文献1、参照。)が提案されている。このような組成物は、接着性に優れ、有機溶剤の揮発による収縮も無くなるが、イミダゾールによる触媒硬化のため、硬化物中の歪みが大きく、絶縁信頼性や耐熱性も十分なものとは言えず、さらなる改良が求められている。
特開平10−75027号公報(特許請求の範囲)
本発明は、前記したような事情に鑑みてなされたものであり、その基本的な目的は、硬化収縮が少なく、耐クラック性に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、無用剤もしくは微量の有機溶剤で液状化が可能であり、硬化物中に残存する揮発性化合物による層間剥離等がなく、絶縁信頼性や耐熱性等の特性に優れる熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
さらにまた、基板上に層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、かつ充填物が充填された穴部を有するプリント配線板の充填物として用いることにより、熱ストレスによる層間剥離等がなく、絶縁信頼性や耐熱性等の特性に優れる高信頼性のプリント配線板を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明の基本的な態様としては、(A)エポキシ樹脂、(B)多官能フェノール化合物、(C)硬化触媒、(D)フィラー、及び(E)オキセタン化合物を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物が提供される。好適な態様においては、上記熱硬化性樹脂組成物に用いられるオキセタン化合物(E)は、常温で液状であり、その配合量は、全組成物中に10質量%以下であることが好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、オキセタン化合物を使用することにより、硬化物の弾性率が低下し、耐クラック性に優れたものとなる。さらに、好ましい態様として、液状のオキセタン化合物を用いることにより、作業環境を汚染する有機溶剤を削減又は全廃することが可能となる。更に、このような揮発性化合物の含有量を削減又は全廃することにより、多層プリント配線板製造後に残存する揮発性化合物による層間剥離等も無くなり、信頼性の高い多層プリント配線板を提供することが可能となる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の特徴は、(A)エポキシ樹脂、(B)多官能フェノール化合物、(C)硬化触媒、及び(D)フィラーをからなる熱硬化型エポキシ樹脂組成物に、(E)オキセタン化合物を配合している点にある。
すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記オキセタン化合物(E)を配合することにより、前記エポキシ樹脂(A)と前記多官能フェノール化合物(B)、及び(C)前記硬化触媒からなる組成物に比べ、硬化収縮が少なくなり、また弾性率が低下し、硬化歪みが緩和されることを見出した。さらに、前記オキセタン化合物(E)として、液状のオキセタン化合物を用いることにより、電気絶縁性等を低下させることなく、無溶剤もしくは微量の有機溶剤で液状化が可能になることを見出した。
さらにまた、このような熱硬化性樹脂組成物を、基板上に層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、かつ充填物が充填された穴部を有するプリント配線板の充填物として用いることにより、熱ストレスによる層間剥離等がなく、絶縁信頼性や耐熱性等の特性に優れる高信頼性のプリント配線板が得られることを見出した。
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物の各構成成分について詳しく説明する。
まず、前記エポキシ樹脂(A)としては、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、公知慣用のものが使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、プロピレングリコール又はポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコール又はプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物などが挙げられる。
これらの中で、二官能のエポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、プロピレングリコール又はポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルなどが、粗化が容易で特に好ましい。これらは、塗膜の特性向上の要求に合わせて、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
次に、前記多官能フェノール化合物(B)としては、一分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば、公知慣用のものが使用できる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのノボラック樹脂、ビニルフェノール共重合樹脂などが挙げられるが、特に、フェノールノボラック樹脂が、反応性が高く、耐熱性を上げる効果も高いため好ましい。
このような多官能フェノール化合物(B)は、適切な硬化触媒(C)の存在下、前記エポキシ樹脂(A)と付加反応し、さらに、後述のオキセタン化合物(E)とも付加反応する。従って、多官能フェノール化合物(B)の配合量は、前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ基の当量数と、後述のオキセタン化合物(E)のオキセタン基の当量数の合計当量数に対して、1:0.7〜1:1.2であり、好ましくは1:0.8〜1:1.1である。前記多官能フェノール化合物(B)の配合量が、前記合計当量数に対して、0.7倍未満の場合、未反応のオキセタン化合物(E)やエポキシ樹脂(A)が残り、特に、オキセタン化合物は、触媒硬化し難いため、残存しやすく十分な硬化物特性が得られなくなるので好ましくない。一方、前記多官能フェノール化合物の配合量が、1.2倍を超えた場合、過剰な多官能フェノール化合物(B)が硬化物中に残存し、硬化物特性を低下させるので好ましくない。
前記硬化触媒(C)としては、前記エポキシ樹脂(A)と前記多官能フェノール化合物(B)、及び後述のオキセタン化合物(E)と前記多官能フェノール化合物(B)の硬化触媒となる化合物、例えば、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、及びホスホニウムイリドなどが挙げられ、これらの中から任意に選択することが可能であり、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中で、好ましいものとしては、商品名2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ等のイミダゾール類や、商品名2MZ−A、2E4MZ−A等のイミダゾールのAZINE化合物、商品名2MZ−OK、2PZ−OK等のイミダゾールのイソシアヌル酸塩、商品名2PHZ、2P4MHZ等のイミダゾールヒドロキシメチル体(前記商品名はいずれも四国化成工業(株)製)、ジシアンジアミドとその誘導体、メラミンとその誘導体、ジアミノマレオニトリルとその誘導体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエタノーアミン、ジアミノジフェニルメタン、有機酸ジヒドラジッド等のアミン類、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(商品名DBU、サンアプロ(株)製)、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名ATU、味の素(株)製)、又は、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物などが挙げられる。
これらの硬化触媒の中でも、ジシアンジアミド、メラミンや、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、3,9−ビス[2−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のグアナミン及びその誘導体、及びこれらの有機酸塩やエポキシアダクトなどは、銅との密着性や防錆性を有することが知られており、エポキシ樹脂の硬化剤として働くばかりでなく、プリント配線板の銅の変色防止に寄与することができるので、好適に用いることができる。
これら硬化触媒(C)の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば前記エポキシ樹脂(A)100質量当り0.1質量部以上、10質量部以下が適当である。
本発明に用いられる前記フィラー(D)は、硬化収縮による応力緩和や線膨張係数の調整のために用いられるものであり、通常の樹脂組成物に用いられている公知慣用の非導電性のものであればいかなるものであってもよい。例えば、シリカ、沈降性硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。これらは、塗膜の特性向上の要求に合わせて、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの無機フィラーの中でも、低吸湿性、低体積膨張性に特に優れるのは、シリカである。シリカは溶融、結晶性を問わず、これらの混合物であってもかまわないが、高充填性の面からは球状の溶融シリカが好ましい。
また、これらフィラー(D)の平均粒径は、3〜25μmが好ましい。平均粒径が3μm未満では硬化物の線膨張係数を低く抑える効果が少なく、一方、25μmを超えると消泡性、高充填性が得られ難くなるので好ましくない。
このようなフィラー(D)の配合割合は、組成物全体量の40〜90質量%が好ましく、さらに好ましくは、55〜75質量%である。フィラー(D)の配合割合が、40質量%未満では、得られる硬化物が充分な低膨張性を示すことができず、さらに研磨性や密着性も不充分となる。一方、90質量%を超えた場合、ペースト化が困難になり、印刷性、穴埋め充填性などが得られなくなる。
尚、導電性を有していても問題無い場合は、銅、金、銀、パラジウム等の金属粒子を併用することもできる。
本発明の特徴である前記オキセタン化合物(E)は、下記一般式(I)のように、



(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)

オキセタン環を含有する化合物であり、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどのオキセタンアルコール類を原料として、エーテル化、エステル化することにより多官能オキセタン化合物を得ることができる。具体的な化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−101)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−211)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−212)、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亞合成社製の商品名 OXT−121)、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成社製の商品名 OXT−221)などが挙げられる。さらに、フェノールノボラックタイプのオキセタン化合物なども挙げられる。これらの中で、液状のオキセタン化合物が、希釈効果も有しており好ましい。更に、好ましくは、液状で二官能であるビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成社製の商品名 OXT−221)が、希釈効果や特性面から好ましい。
このような液状のオキセタン化合物(E)は、エピクロルヒドリンと多官能アルコールから合成されるポリグリシジルエーテル化合物などの反応性希釈剤と異なり、原料にエピクロルヒドリンのようなハロゲン化合物を用いないことから、電気特性に優れ、皮膚刺激性も少ないという特徴を有している。
上記オキセタン化合物(E)の配合量としては、全組成物中に、10質量%以下、好ましくは、2〜8質量%である。上記オキセタン化合物(E)の配合量が、全組成物中に、10質量%を超えた場合、組成物の硬化性が低下したり、硬化物の耐熱性が低下するので好ましくない。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、組成物の粘度を調整するため、上記液状のオキセタン化合物以外に、希釈溶剤を添加してもよい。希釈溶剤の配合割合は、組成物全体量の10質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは、5質量%以下であり、無添加であればより一層好ましい。希釈溶剤の配合割合が、10質量%を超えると、加熱工程時に揮発成分の蒸発の影響により、穴部内に泡やクラックが発生しやすくなる。
前記希釈溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、及び上記グリコールエーテル類の酢酸エステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤などの有機溶剤が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いても良い。
尚、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物上に、無電解めっきを行なう場合、熱硬化性樹脂組成物の粗化を容易にし、めっきとのピール強度を向上させるために、オキサジン化合物を配合しても良い。
前記オキサジン化合物とは、フェノール化合物、ホルマリン及び第一級アミンを反応させて得られるオキサジン環を有する化合物であり、例えば四国化成工業(株)製のB−a型ベンゾオキサジンや、ビスフェノールFとホルマリン及びアニリンから誘導される四国化成工業(株)製のF−a型ベンゾオキサジンなどが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせても使用できる。
このようなオキサジン化合物を配合することにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、プリント配線板のスルーホールやバイアホール等の穴部や凹部に充填し、完全に硬化した後でも、過マンガン酸カリウム水溶液などで容易に粗化でき、めっきの密着性を向上することができる。また、このようなオキサジン化合物は、熱による開環重合し、フェノール性水酸基が生じ、前記エポキシ樹脂(A)と反応する。また、その開環触媒として、オルソ位またはパラ位に置換基のないフェノール類などの弱酸及び強酸が用いられることは知られている。
上記オキサジン化合物の配合量としては、組成物中の有機成分100質量%に対して、2.5質量%以上、50質量%未満にすることが好ましい。前記オキサジン環含有化合物の配合量が、有機成分中の2.5質量%未満の場合、めっきとの密着性に対して効果が得られないので好ましくない。また、50質量%以上の場合は、硬化時に穴部内でボイドやクラックが発生しやすくなるので好ましくない。
さらに本発明の組成物には、必要に応じて、通常のスクリーン印刷用レジストインキに使用されているフタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、保管時の保存安定性を付与するためにハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、クレー、カオリン、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤もしくはチキソトロピー剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤などの密着性付与剤のような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
以上のような構成成分からなる本発明の熱硬化性樹脂組成物の粘度は、25℃で、1000dPa・s以下であることが充填性の面で好ましい。その粘度調整用として用いられる前記オキセタン化合物(E)もしくは前記希釈溶剤の配合量は、組成物中の10質量%以下であることで、充填後硬化時の組成物中のクラック発生を低減させることができる。
かくして得られる本発明の熱硬化性樹脂組成物は、従来より使用されているスクリーン印刷法、ロールコーティング法等を利用してプリント配線板のバイアホールに充填することができる。次いで、約70〜130℃で約30〜90分程度加熱し、その後、約140〜180℃に昇温して約30〜90分程度加熱して硬化(仕上げ硬化)する。このようにして硬化された組成物の基板表面からはみ出している不必要部分を物理研磨により容易に除去でき、平坦面とすることができる。なお、本発明の組成物は、プリント配線板の永久穴埋め用インキとしてのみでなく、上記のような優れた特性の故にICパッケージの封止剤等、他の用途にも好適に用いることができる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」とあるのは、特に断りのない限り全て重量基準である。
実施例1〜3及び比較例1、2
下記表1に示す配合成分を、予備混合した後、3本ロールミルで練肉分散させて各熱硬化性樹脂組成物を得た。

上記実施例1〜3及び比較例1、2の熱硬化性樹脂組成物の25℃での粘度を下記の方法で測定し、そして配線基板の穴部に充填した硬化物の充填性、研磨性、硬化収縮、クラックの有無、ボイドの残留の有無を以下の方法で評価した。
性能評価
粘度:
前記1〜3及び比較例1、2の各熱硬化型エポキシ樹脂組成物を0.2ml採取し、コーンプレート型粘度計(トキメック社製)を用いて、25℃、回転数5rpm/minの条件で測定した。
充填性:
予めパネルめっきによりスルーホールを形成したガラスエポキシ基板に、前記実施例1〜3及び比較例1、2の各熱硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷法により下記印刷条件でスルーホール内に充填した。充填後、熱風循環式乾燥炉に入れ、120℃で1時間の予備硬化を行い、評価サンプル(1)を得た。この評価サンプルのスルーホール内に充填された硬化物の充填度合いにより充填性を評価した。評価基準は以下の通りである。
○ :完全に充填されている。
△ :充填された組成物がスルーホールの底部から周辺へ流出している。
× :スルーホールの底部まで充填されていない(充填不足)。
(印刷条件)
スキージ:スキージ厚20mm、硬度70°、斜め研磨:23°、版:PET100メッシュバイアス版、印圧:60kgf/cm2 、スキージスピード:5cm/sec、スキージ角度:80°
研磨性:
前記評価サンプル(I)をバフ研磨機で物理研磨を行い、予備硬化後、不必要部分の硬化物の除去のし易さを評価した。評価基準は以下の通りである。
○: 容易に研磨可能
△: 若干研磨しにくいもの
×: 研磨不可
凹み:
前記評価サンプル(I)をバフ研磨機で物理研磨を行い、不必要硬化部分を除去し、平滑化した。この後、熱風循環式乾燥炉に入れ、150℃で1時間本硬化を行い、評価サンプル(II)を得た。この評価サンプル(II)のスルーホール部の凹み具合を評価した。評価基準は以下の通りである。
○: 凹みなし
△: ほんの僅かに凹みが見られるもの
×: 凹みが顕著に見られるもの
クラック:
前記評価サンプル(1)をスルーホール部で切断し、断面を光学顕微鏡にて観察し、試料にクラック(割れ)が生じているスルーホールをNGとし、観察した穴数に対するNGの割合を計算した。判定基準は以下の通りである。
○:クラック発生率 0%
△:クラック発生率 50%未満
×:クラック発生率 50%以上
ボイドの残留:
前記評価サンプル(1)をスルーホール部で切断し、断面を光学顕微鏡にて観察し、スルーホール中のボイドの有無を確認した。ボイドが残留しているスルーホールをNGとし、観察した穴数に対するNGの割合を計算した。評価基準は以下の通りである。
○:ボイド残留率 0%
△:ボイド残留率 50%以下
×:ボイド残留率 50%を越えるもの

これらの試験結果を表2に示した。





表2から明らかなように、オキセタン化合物を配合した実施例1は、有機溶剤及びオキセタン化合物を配合しなかった比較例1に比べ、粘度が低く、充填性に優れている。又、オキセタン化合物の代わりに、従来の組成物のように、有機溶剤を配合した比較例2は、スルーホール部の凹みがあり、又、ボイドの残留も見られた。

Claims (5)

  1. (A)エポキシ樹脂、(B)多官能フェノール化合物、(C)硬化触媒、(D)フィラー、及び(E)オキセタン化合物を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  2. 前記オキセタン化合物(E)が、常温で液状であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記オキセタン化合物(E)の配合量が、全組成物中に10質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記熱硬化性樹脂組成物の粘度が、25℃で1,000dPa・s以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 基板上に、層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、かつ充填物が充填された穴部を有するプリント配線板において、上記穴部に充填された充填物が、前記請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とするプリント配線板。
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