JP2005306738A - テトラアミン化合物、トリス(3−ブロモフェニル)アミン及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、有機光導電体及びその製造方法に関し、特にテトラアミン化合物、トリス(3−ブロモフェニル)アミン及びそれらの製造方法に関する。
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展には目覚ましいものがある。特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行うレーザプリンタやデジタル複写機は、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。さらに、それらは高速化技術との融合によりフルカラー印刷が可能なレーザプリンタあるいはデジタル複写機へと応用されてきている。
これらの電子写真方式のレーザプリンタやデジタル複写機等に使用される感光体としては、有機系の感光材料(OPC)を用いたものが、コスト、生産性及び無公害性等の理由から一般に広く応用されている。OPC感光体の層構成は単層型と機能分離型積層構造に大別される。最初の実用化OPCであるPVK−TNF電荷移動錯体型感光体は前者の単層型であった。
一方、1968年 、林とRegensburgerにより各々独立してPVK/a−Se積層感光体が発明され、後には1977年Melzらにより、また1978年、Schlosserにより有機顔料分散層と有機低分子分散ポリマー層という感光層全てが有機材料からなる積層感光体が発表された。
これらは光を吸収して電荷を発生する電荷発生層(CGL)と、CGLで生成した電荷を注入、輸送し、表面電荷を中和する電荷輸送層(CTL)からなるという概念から、機能分離型積層感光体とも呼ばれる。この開発によって、単層感光体に比べ感度、耐久性が飛躍的に向上した。また電荷発生物質(CGM)、電荷輸送物質(CTM)といわれる、それぞれ異なる機能を有する材料を個別に分子設計できるため、それら材料の選択幅が大きく増加した。これらの理由により機能分離型積層感光体は現在のOPC感光体の主流層構成となっている。
機能分離型の感光体における静電潜像形成のメカニズムは、感光体を帯電した後、光照射すると、光は電荷輸送層を通過し、電荷発生層中の電荷発生物質により吸収され、電荷を生成する。それによって発生した電荷が電荷発生層及び電荷輸送層の界面で電荷輸送層に注入され、さらに電界によって電荷輸送層中を移動し、感光体の表面電荷を打ち消すことにより静電潜像を形成するものである。
近年では、電子写真装置の高速化あるいは装置の小型化に伴う感光体の小径化によって、感光体の高速応答性ならびに安定性が、より一層重要な課題となっている。
商品化されている電荷輸送材料としては、1,1−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン(例えば、特許文献1参照)、5−[4−(N,N−ジ−p−トリルアミノ)ベンジリデン]−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン(例えば、特許文献2参照)、9−メチルカルバゾール−3−アルデヒド、1、1−ジフェニルヒドラゾン、ピレン−1−アルデヒド、1,1−ジフェニルヒドラゾン(例えば、特許文献3参照)、4‘−ビス(4−メチルフェニル)アミノ−α−フェニルスチルベン、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン、9,9−ジメチル−2−(ジ−p−トリルアミノ)フルオレンなどがある。
一般的な電荷輸送層は、これら低分子電荷輸送材料をバインダー樹脂中に分子分散させた約10〜30μm程度の固溶体膜である。また、このバインダー樹脂としてほとんどの電子写真感光体においてビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂もしくはそれらと他の樹脂との共重合体が用いられている。しかしながら、これらの電荷輸送材料では、今後のより速いプロセススピードに充分に対応できるほどの応答性を有していない。
一方、これら電荷輸送材料の高速応答性(高移動度)に関する分子設計指針が示されている(例えば、非特許文献1参照)。すなわちフェニルアミン基(>N−phenyl)を感応基とし、この数と移動度とは明らかな相関がみられ、感応基数が分子中に多いほど高移動度であることが述べられている。これに基づき、本発明に係る化合物に類似のテトラアミン化合物が開示されている(例えば、特許文献4、5参照)。しかし、これら電荷輸送材料はアミノ基同士お互いにベンゼン環のパラ位に置換されているため移動度が非常に悪いことが電子写真学会誌,29(4),366(1990)に記載されている(例えば非特許文献2参照)。
特開昭62−30255号公報
特開昭63−225660号公報
特開昭58−159536号公報
特許第3016896号公報
特開平9−222741号公報
電子写真学会誌,25(3),16(1986)
電子写真学会誌,29(4),366(1990)
本発明は、上述した実情を考慮してなされたもので、今後の電子写真の高速化に対応すべく、高速応答性ならびに安定性の高い感光体を得るための有機光導電体として有用なテトラアミン化合物、トリス(3−ブロモフェニル)アミン及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、請求項1記載のテトラアミン化合物は下記式(1)で表されることを特徴とする。
(Rは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のフェニルまたは置換もしくは無置換のフェノキシ基を表す。)
請求項3記載のトリス(3−ブロモフェニル)アミンの製造方法は、3−ブロモアニリンと3−ブロモヨードベンゼンとを反応させることを特徴とする。
本発明によれば、式(1)で表わされるテトラアミン化合物は新規で、かつ前記したように光導電性素材として有効に機能し、電子写真用感光体の感光層の電荷輸送物質等として好適に使用され、特に電荷発生層と電荷輸送層を二層に区分した、所謂機能分離型感光層における電荷輸送物質として有用なものとすることができる。
前記したように、本発明の前記式(2)で表わされるトリス(3−ブロモフェニル)アミンは新規な化合物であり、この化合物は3−ブロモアニリンと3−ブロモヨードベンゼンとを反応させることにより製造することができる。また、該前記式(1)で表わされるテトラアミン化合物も新規化合物であって対応する前記式(3)で表わされるジフェニルアミン誘導体と、前記式(2)で表わされるトリス(3−ブロモフェニル)アミンとを反応させることにより製造することができる。
これらを製造するには、原料混合物に、触媒量の銅粉、酸化銅、硫酸銅あるいはハロゲン化銅などと、縮合反応中に生ずるハロゲン化水素を中和するのに充分な量、具体的には0.5〜4倍モルの塩基性物質を加え、溶媒の存在下又は無溶媒下で、窒素雰囲気下、150〜250℃程度の温度において反応させる所謂ウルマン反応により製造することができる。
この場合、塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドなどを挙げることができる。また、反応溶媒としては、ニトロベンゼン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、キノリン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどを挙げることができる。
また、トリ−tert−ブチルホスフィンとパラジウム化合物を必須成分とする触媒と塩基性物質の存在下反応することにより得ることもできる。パラジウム化合物としては酢酸パラジウム、及びトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムが挙げられ、ハロゲン化合物に対しパラジウム換算で0.001〜20.0モル%であり、好ましくは0.01〜10.0モル%である。トリ−tert−ブチルホスフィンの量はパラジウム化合物に対して0.5〜10倍モルでありより好ましくは0.8〜5倍モルである。塩基性物質、溶媒としては上記に挙げた同様のものを用いることができる。
本発明の前記式(1)で表されるテトラアミン化合物、前記式(3)で表わされるジフェニルアミン誘導体の式(1)及び式(3)におけるR基の具体例として、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの低級アルキル基が、またアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの低級アルコキシ基が挙げられる。更に、アルキル基、アルコキシ基における置換基としては、フェニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェニルオキシ基などが挙げられ、またフェニル基、フェノキシ基における置換基としては、低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など)、低級アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など)及びハロゲン原子(例えば臭素、塩素など)が挙げられる。
本発明の前記式(1)で表わされる新規なテトラアミン化合物は、電子写真用感光体に於ける光導電性素材として極めて有用である。更にこのものは、有機顔料あるいは無機顔料を電荷発生材料とする、所謂機能分離型感光体に於ける電荷輸送材料としてとりわけ有用である。
有機顔料としては、シーアイピグメントブルー25(カラーインデックスCI21180)、シーアイピグメントレッド41(CI21200)、シーアイアシッドレッド52(CI45100)、シーアイベーシックレッド3(CI45210)、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号公報に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133445号公報)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132347号公報に記載)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号公報に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号公報に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号公報に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号公報に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号公報に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−14967号公報に記載)、ベンズアントロン骨格を有するアゾ顔料などのアゾ顔料。例えば、シーアイピグメントブルー16(CI74100)、Y型オキソチタニウムフタロシアニン(特開昭64−17066号公報)、A(β)型オキソチタニウムフタロシアニン、B(α)型オキソチタニウムフタロシアニン、I型オキソチタニウムフタロシアニン(特開平11−21466号公報に記載)、2型クロロガリウムフタロシアニン(飯島他,日本化学会第67春季年回,1B4,04(1994))、5型ヒドロキシガリウムフタロシアニン(大門他,日本化学会第67春季年回,1B4,05(1994))、X型無金属フタロシアニン(米国特許第3,816,118号)などのフタロシアニン系顔料、シーアイバットブラウン5(CI73410)、シーアイバットダイ(CI73030)などのインジコ系顔料、アルゴスカーレットB(バイエル社製)、インタンスレンスカーレットR(バイエル社製)などのペリレン顔料などが挙げられる。なお、これらの材料は単独あるいは2種類以上が併用されても良い。また、セレン、セレン−テルル、硫化カドミウム、α−シリコン等の無機顔料も使用できる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
(実施例1)
(トリス(3−ブロモフェニル)アミンの製造)
3−ブロモアニリン6.88g(40mmol)、3−ブロモヨードベンゼン33.95g(120mmol)、炭酸カリウム22.11g、銅粉0.51gにo−ジクロロベンゼン40mlを加え、アルゴン気流下エステル管で共沸脱水しながら189℃で24時間撹拌した。室温まで放冷した後、セライトを用いて濾過し、濾液をクロロホルムで抽出、水洗し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、更に減圧濃縮して、暗褐色の油状物を得た。これをシリカゲルカラム処理〔溶離液:トルエン/n−ヘキサン(1/5)vol〕し、エタノールにて再結晶して、無色結晶の前記式2で表わされるトリス(3−ブロモフェニル)アミン7.02g(収率36.4%)を得た。
(実施例1)
(トリス(3−ブロモフェニル)アミンの製造)
3−ブロモアニリン6.88g(40mmol)、3−ブロモヨードベンゼン33.95g(120mmol)、炭酸カリウム22.11g、銅粉0.51gにo−ジクロロベンゼン40mlを加え、アルゴン気流下エステル管で共沸脱水しながら189℃で24時間撹拌した。室温まで放冷した後、セライトを用いて濾過し、濾液をクロロホルムで抽出、水洗し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、更に減圧濃縮して、暗褐色の油状物を得た。これをシリカゲルカラム処理〔溶離液:トルエン/n−ヘキサン(1/5)vol〕し、エタノールにて再結晶して、無色結晶の前記式2で表わされるトリス(3−ブロモフェニル)アミン7.02g(収率36.4%)を得た。
得られた化合物の融点は75.0〜78.0℃であり、またその元素分析値はC18H12Br3Nとして下記の通りであった。
この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)を図1に示す。
(実施例2)
(3,3',3"−トリス[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]トリフェニルアミンの製造)
酢酸パラジウム33.6mg(0.150mmol)、tert−ブトキシナトリウム1.73g(18.0mmol)、o−キシレン(脱水)15ml、トリス(3−ブロモフェニル)アミン2.41g(5.00mmol)、ジ−p−トリルアミン3.26g(16.5mmol)およびトリ−tert−ブチルホスフィン91.0mg(0.450mmol)を混合し、120℃にて3時間撹拌した。室温まで冷却した後、水を加え、トルエンにて抽出し、水洗をおこなった。有機層を減圧濃縮し得られた暗褐色の油状物をシリカゲルカラム処理〔溶離液:トルエン/n−ヘキサン(1/5)vol〕し、下記式(4)で表される無色無定形晶の3,3',3"−トリス[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]トリフェニルアミン2.89g(収率69.5%)を得た。
(3,3',3"−トリス[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]トリフェニルアミンの製造)
酢酸パラジウム33.6mg(0.150mmol)、tert−ブトキシナトリウム1.73g(18.0mmol)、o−キシレン(脱水)15ml、トリス(3−ブロモフェニル)アミン2.41g(5.00mmol)、ジ−p−トリルアミン3.26g(16.5mmol)およびトリ−tert−ブチルホスフィン91.0mg(0.450mmol)を混合し、120℃にて3時間撹拌した。室温まで冷却した後、水を加え、トルエンにて抽出し、水洗をおこなった。有機層を減圧濃縮し得られた暗褐色の油状物をシリカゲルカラム処理〔溶離液:トルエン/n−ヘキサン(1/5)vol〕し、下記式(4)で表される無色無定形晶の3,3',3"−トリス[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]トリフェニルアミン2.89g(収率69.5%)を得た。
またその元素分析値はC60H54N4として下記の通りであった。
この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)を図2に示す。
(応用例)
電荷発生物質として下記式(5)で表されるフルオレノン系ビスアゾ顔料およびポリエステル樹脂[(株)東洋紡績製バイロン200]の0.5%テトラヒドロフラン溶液500部をボールミル中で粉砕混合し、得られた分散液をアルミニウム蒸着ポリエステルフィルム上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥して約0.5μmの電荷発生層を形成した。
電荷発生物質として下記式(5)で表されるフルオレノン系ビスアゾ顔料およびポリエステル樹脂[(株)東洋紡績製バイロン200]の0.5%テトラヒドロフラン溶液500部をボールミル中で粉砕混合し、得られた分散液をアルミニウム蒸着ポリエステルフィルム上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥して約0.5μmの電荷発生層を形成した。
次に、ポリカーボネート樹脂[(株)帝人製パンライトK−1300]1部とテトラヒドロフラン8部の樹脂溶液に、電荷輸送物質として上記式6で表されるテトラアミン化合物1部を溶解し、この溶液を前記電荷輸送層上にドクターブレードで塗布し、80℃で2min、ついで120℃で5min乾燥して厚さ約20μmの電荷輸送層を形成し感光体を作成した。
次に、こうして得られた積層型電子写真感光体の応答特性を示すトランジット時間を調べるため、この感光体に静電複写紙試験装置[(株)川口電機製作所製EPA8100型]を用いて、マイナスにコロナ帯電させ、33msの露光時間で1s後に−800Vを−100Vに光減衰できる露光量を決定し、−150Vに達した時間から露光時間33msを差し引いた値をトランジット時間(tr)とし、測定をおこなった。結果はtr=9msであった。
(比較例)
以下の構造式で表される下記式(6)のテトラアミン化合物を応用例と同様な操作にて感光体作製、tr測定をおこなったところ、tr=28msであった。
以下の構造式で表される下記式(6)のテトラアミン化合物を応用例と同様な操作にて感光体作製、tr測定をおこなったところ、tr=28msであった。
Claims (4)
- 3−ブロモアニリンと3−ブロモヨードベンゼンとを反応させることを特徴とする式(2)に示すトリス(3−ブロモフェニル)アミンの製造方法。
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