JP2005302776A - 光学ベンチの製造方法、光学ベンチ、および光学モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】 光学ベンチ上に光学部品搭載のための導電性材料層を印刷により形成する際、下地としてPt等のAu-Snとの親和性の低い金属が用いられている場合でも、パッド寸法を明確に規定して、精度が高くかつ量産性の高い実装を可能にする。
【解決手段】 光学部品を搭載する光学ベンチ10であって、部品を位置決めしながら搭載するための溝12を有するSi基板11と、このSi基板11上に形成され、金錫(Au-Sn)との親和性が低いTi-Pt下地層13と、このTi-Pt下地層13の上に形成されTi-Pt下地層13よりもAu-Snとの親和性の高いAu下地層14と、このAu下地層14の上に形成されるAu-Sn膜15とを有する。
【選択図】 図1
【解決手段】 光学部品を搭載する光学ベンチ10であって、部品を位置決めしながら搭載するための溝12を有するSi基板11と、このSi基板11上に形成され、金錫(Au-Sn)との親和性が低いTi-Pt下地層13と、このTi-Pt下地層13の上に形成されTi-Pt下地層13よりもAu-Snとの親和性の高いAu下地層14と、このAu下地層14の上に形成されるAu-Sn膜15とを有する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、例えば光学素子を搭載するための光学ベンチ、およびその製造方法等に係り、より詳しくは、導電性材料層を有する光学ベンチ、およびその製造方法等に関する。
近年、光通信技術の進展に伴い、例えばネットワークに用いられる種々の部品、デバイス、およびそれらを用いた光学モジュールのニーズが高まっており、活発な研究開発が行われている。特に、光ファイバ、レンズ、レーザダイオード等の部品を適宜組み合わせたモジュールにおいて、その基本コンポーネントとして光学モジュールが多用されている。
このような光学モジュールに関する従来技術として、例えば、Si基板上に溝を設け、その溝に球状のレンズを位置決めして固定し、また、Si基板上に所定の配線を形成して光学モジュールを構成するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような光学モジュールとしては幾つかの形態が存在するが、中でも、3次元加工技術であるマイクロマシニング(MEMS)によりSiウェハに対して溝を形成し、これにファイバやレンズを埋め込んで固定する方法が量産性に優れた方法として注目されている。このMEMSにより形成された光学モジュール用の基板は、シリコンオプティカルベンチ(ベンチ、光学ベンチ)と呼ばれ、光学モジュールを構成する一つのキーデバイスとなっている。
これらの光学モジュールに用いられる光学デバイスは、例えば光増幅や合分波等に使用される等、用途に応じて種々の形態があるが、一般には光信号発生源としてのレーザダイオード(LD)などの光源を備えて形成されることが多い。例えばレーザダイオードの光学ベンチへの搭載は、耐熱性および接続の信頼性の観点から、一般的に金錫(Au-Sn)を用いて行われる。このAu-Snからなる接続用パッドの形成は、従来、蒸着またはスパッタなどの薄膜堆積によって行われている。
しかしながら、かかる接続用パッドの生成では、数μmの厚膜を形成する必要があり、工程に極めて時間がかかると共に、パッドパターンを形成するためにフォトリソグラフィのプロセスが必要となり、製造価格および時間の増大を招いていた。また、上記特許文献1のように、蒸着等によりAu-Sn膜を形成する場合には、通常、AuおよびSnの原料ペレット等を別々に用意し、二元薄膜形成により成膜することが必要となることから、組成が完全には均一になり難く、そのために微妙な溶融温度のばらつきや溶融金属の流動の不均一を招いてしまい、レーザダイオード等の光学デバイスの実装に支障を来たすことがあった。また、合金ターゲット等を用いて1つのソースによる成膜を行う場合でも、合金ターゲットの使用が進むにつれてイールド(yield:収率)の違い等による組成のズレが生じ、均一な組成を保つことが困難であった。
また、最近は、高周波回路部品等において粒子状のAu-Sn材料を用いてペーストを作製し、これを用いて印刷によってパターン形成する方法も一部で検討されている。これらの印刷によれば、工程費用および時間が著しく軽減されることから非常に有用な方法であるが、上述のような光学デバイスに適用する場合には難点があった。すなわち、レーザダイオード等の実装においては、レンズ、ファイバその他と低損失で光結合する必要があるため、光軸方向(y方向)、幅方向(x方向)、高さ方向(z方向)について極めて高精度のアライメントが必要になる。しかしながら、従来のAu-Snの印刷では溶融後のパッドエリアおよび高さを一定に保つことが困難であった。これは、Au-Snペーストを印刷後、通常はリフローにより溶融させて表面を平滑化させるが、このときの印刷量を厳密に一定に保つことができず、印刷条件を一定にしてかつリフロー装置の設定条件を一定にした場合でも、リフロー後のパッドエリアを規定することが困難になる。このために、レーザダイオードのボンディングパッド等を印刷で形成することができなかった。
これらの状況に鑑み、本発明者らは、印刷エリアを規定することにより、上述の問題を解決することを先に提案している(特願2003−356061)。かかる提案技術により、従来の問題点は基本的に解決されるが、溶融後の印刷の厚さはペーストの量と濡れ広がり性とによって定まるため、一定の公差を有した状態になっている。公差の程度はペースト材料の性質や印刷条件によって様々であるが、一般に±1μm以上あり、場合によっては±3μmにもなることがあった。この高さ方向の位置合わせは、通常、素子搭載の際にAu-Snパッドを溶融させつつアクティブアライメントによって行われるが、より迅速かつ高精度にアライメントを行う上では、この公差はできるだけ小さいことが望ましく、そのための技術的方策が必要であった。
そこで、本発明者らは、加熱ヘッドを用いて熱圧着によりパッド形成を行う方法について先に考案している(特願2003−392340)。即ち、高さ方向の位置決め機構を備えた加熱ヘッドにより、印刷後の状態であるAu-Snパッドを加熱溶融させ、更に所定の高さまで押圧した後に冷却させることによりパッド形成を行う。例えば、所謂高精度ボンダー等の精密実装機に搭載されている加熱ヘッドを用いることで、1μm以下の高さ方向の位置合わせが可能となり、同時に一般に500℃程度までの加熱および加圧を行うことができる。このため、寸法バラツキを極めて小さく保つことが可能となる。
かかる場合、パッドエリアはツールの先端形状にほぼ適合する形で規定されるが、Au-Snに対する下地の親和力が低い場合、即ちAu-Snの濡れ性が悪い場合は、明確な形状が得られないことがある。つまり、加熱溶融時にAu-Snがスムーズに濡れ広がらず、パッドエリアとして必要となる所定エリアが十分にカバーされない場合があった。特に、一般にSiベンチにおける配線用下地金属としてPtが用いられるが、Au-SnはPtに対する濡れ性が悪いことから、加熱による広がりが不足してツール加圧によっても形が正確に定まりにくい傾向があった。
ここで、Au-Snの下地層としてAu膜を使用すると、Au-Snの溶融時にAuとの反応が生じ、Auが固相拡散して溶融金属中に入り込み、合金化することによって良好な濡れ性および接合性が得られる。但し、上述した加熱ヘッドを用いた方法においては、ベタのAu膜が下地として存在すると、溶融したAu-Snの流動がほぼ無制限に広がってしまい、ツール先端による形状制御が困難となる。
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、光学ベンチ上に光学部品搭載のための導電性材料層を形成する際、下地としてPt等のAu-Snとの親和性の低い金属が用いられている場合でも、パッド寸法を明確に規定して、精度が高くかつ量産性の高い実装を可能にすることにある。
かかる目的のもと、本発明は、Ptなどの金錫(Au-Sn)との親和性の低い第1の下地層上に、Au-Snと親和性の高いAu薄膜などの第2の下地層を形成し、この第2の下地層を所定形状にパターニングすることで上記課題を解決している。即ち、本発明は、光学素子が導電性材料層を介して接合される光学ベンチの製造方法であって、基板上に第1の下地層を形成する第1下地層形成工程と、この第1下地層形成工程により形成された第1の下地層の上に第1の下地層よりもAu-Snとの親和性の高い第2の下地層を形成する第2下地層形成工程と、この第2下地層形成工程により形成された第2の下地層の上にAu-Snの合金粒子を含むペーストを印刷する印刷工程と、この印刷工程により印刷されたペーストを加熱ヘッドを用いて溶融させて、第2の下地層の上にAu-Sn膜からなる導電性材料層を形成する加熱溶融工程とを含む。尚、「基板上」とは、基板に直接的であるか、基板との間に他の部材を挟んで間接的であるかを問うものではない。以下も同様である。
ここで、この第2下地層形成工程は、レーザエッチングにより第2の下地層をパッドエリアに合わせてパターニングすること、または印刷によりパッドエリアに合わせて第2の下地層を形成することを特徴とすれば、パターニングされ、または形成される第2の下地層の端面がダレた状態となり、Au-Sn膜が濡れ広がっていく際に、厚さ方向および外形線方向にグラジュアルなラインが得られる点で好ましい。この「印刷」としては、インクジェット印刷やスクリーン印刷が挙げられる。
また、この加熱溶融工程にて用いられる加熱ヘッドは、ペーストに接触する先端部の寸法形状が第2の下地層の領域と同等またはそれ以上であることを特徴とすれば、塗布されたAu-Snペーストが所定範囲に亘って十分に加熱溶融できる点で優れている。
更に、第1下地層形成工程によって第1の下地層が形成される基板上に、部品を位置決めしながら搭載するための溝を予め形成する溝形成工程を更に備えたことを特徴とすることができる。
更に、第1下地層形成工程によって第1の下地層が形成される基板上に、部品を位置決めしながら搭載するための溝を予め形成する溝形成工程を更に備えたことを特徴とすることができる。
他の観点から捉えると、本発明が適用される光学ベンチは、部品を位置決めしながら搭載するための溝を有する基板と、この基板上に形成される第1の下地層と、この第1の下地層の上に形成され第1の下地層よりも金錫(Au-Sn)との親和性の高い第2の下地層と、この第2の下地層の上に形成されるAu-Sn膜とを含む。
ここで、この第1の下地層は、プラチナ(Pt)を含む例えばチタン白金(Ti-Pt)からなる薄膜から形成されることを特徴とすることができる。また、この第2の下地層は、金(Au)を含む例えばAu薄膜から形成されていることを特徴とすることができる。更に、このAu-Sn膜は、Au-Snの合金粒子を含むペーストが第2の下地層上に形成された後に、このペーストに加熱ヘッドを加圧させることにより形成されることを特徴とすることができる。また更に、このAu-Sn膜は、第2の下地層のパターンによって形成されるパッドエリアに略一致するように領域が形成されることを特徴とすることができる。
一方、本発明が適用される光学モジュールは、溝、配線、およびAu-Sn膜からなる導電性材料層を有する基板と、この導電性材料層に接合される光学駆動部品と、溝に位置決めされて配置される光学部品とを含み、この基板は、基板上に形成される第1の下地層と、この第1の下地層の上に形成され第1の下地層よりもAu-Snとの親和性の高い第2の下地層とを有し、この第2の下地層の上に導電性材料層が形成されていることを特徴としている。特に、この基板における第1の下地層はプラチナ(Pt)を含む薄膜から形成され、第2の下地層は金(Au)を含む薄膜から形成されていることを特徴とすることができる。
本発明によれば、光学素子を搭載する光学ベンチにおいて、例えば金錫(Au-Sn)からなる導電性材料層を得る際、厚さバラツキが極めて小さい印刷パッドを形成することが可能となり、光学素子の実装効率を向上させることができる。
また、光学ベンチ上に光学部品搭載のための導電性材料層を形成する際、下地として導電性材料層との親和性の低い金属が用いられている場合でも、パッド寸法を明確に規定して、精度が高くかつ量産性の高い、光学素子の実装を可能にすることができる。
また、光学ベンチ上に光学部品搭載のための導電性材料層を形成する際、下地として導電性材料層との親和性の低い金属が用いられている場合でも、パッド寸法を明確に規定して、精度が高くかつ量産性の高い、光学素子の実装を可能にすることができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1(a),(b)は、本実施の形態が適用される光学ベンチの構成を示した図である。図1(a)は光学ベンチの上面図であり、図1(b)は光学ベンチのA−A断面図であり、位置関係を強調して表現している。本実施の形態が適用される光学ベンチ(シリコンオプティカルベンチ)10は、シリコンウェハであるSi基板11に、例えばレンズ等の光学部品を位置決めした状態で搭載するための深溝である溝12が形成される。また、本実施の形態が適用される光学ベンチ10では、Si基板11上に、第1の下地層としてチタン白金(Ti-Pt)下地層13、第2の下地層として金(Au)薄膜からなるAu下地層14を備えている。また、例えば、光学素子(光学部品、光学デバイス)であるレーザダイオード(LD)をダイボンディングするための導電性材料層として、金錫膜(Au-Sn膜)15が形成されている。更に、Si基板11のTi-Pt下地層13の上には、Auの配線16が形成されている。
図1(a),(b)は、本実施の形態が適用される光学ベンチの構成を示した図である。図1(a)は光学ベンチの上面図であり、図1(b)は光学ベンチのA−A断面図であり、位置関係を強調して表現している。本実施の形態が適用される光学ベンチ(シリコンオプティカルベンチ)10は、シリコンウェハであるSi基板11に、例えばレンズ等の光学部品を位置決めした状態で搭載するための深溝である溝12が形成される。また、本実施の形態が適用される光学ベンチ10では、Si基板11上に、第1の下地層としてチタン白金(Ti-Pt)下地層13、第2の下地層として金(Au)薄膜からなるAu下地層14を備えている。また、例えば、光学素子(光学部品、光学デバイス)であるレーザダイオード(LD)をダイボンディングするための導電性材料層として、金錫膜(Au-Sn膜)15が形成されている。更に、Si基板11のTi-Pt下地層13の上には、Auの配線16が形成されている。
本実施の形態では、Au-Snと親和性の低い第1の下地層であるTi-Pt下地層13に、Au-Snと親和性の高い第2の下地層であるAu下地層14が形成されている。より詳しくは、Ti-Pt下地層13の上にAu薄膜を形成した後、このAu薄膜を所定形状に予めパターニングして第2の下地層であるAu下地層14を形成している。その後、このAu下地層14上にて、溶融したAu-Snを加圧して濡れ広がらせる。これによって、溶融したAu-Snの濡れ広がる領域が第2の下地層によるパターニング領域に自動的に規定され、Au-Snの過度な広がりを防止することができ、寸法精度の高いAu-Sn膜15が形成されている。
図2は、光学ベンチ10の製造工程を示した図である。ここでは、酸化膜付きSiウェハが準備された後(ステップ101)、深溝加工により、溝12が形成される(ステップ102)。この溝12の形成は、レジストを塗布し、パターニングをした後、フッ酸を用いて溝加工が行われる領域の熱酸化膜を除去した後、KOHを用いた異方性エッチングにより行った。次に、酸化膜付きSi基板11の上にTi-Pt膜をスパッタにより0.1μm〜0.2μm厚さで形成して、第1の下地層であるTi-Pt下地層13を生成する(ステップ103)。溝12の部分について、マスキングをしない場合には、Si基板11の全面上にTi-Pt下地層13が形成される。次に、生成されたTi-Pt下地層13の上に、蒸着により0.01μm厚さのAu薄膜を形成する(ステップ104)。そして、このAu薄膜をレーザパターニングによりパッドエリアの形状にパターニングすることにより、Au-Sn印刷用パッドである第2の下地層としてAu下地層14を生成する(ステップ105)。このAu下地層14は、例えば500μm角のパッドエリアの寸法にてパターニングされる。また、リフトオフト法を用いて蒸着によりAuの配線16を生成する(ステップ106)。
その後、ステップ107からステップ109にて、Au-Sn膜15が生成される。
図3(a)〜(c)は、このAu-Sn膜15の生成工程を説明するための図である。図2および図3を用いて説明すると、Au-Sn膜15の生成工程では、まず、第2の下地層であるAu下地層14の上に、ディスペンサによりAu-Snペーストが塗布される(ステップ107)。塗布されるAu-Snペーストとして、例えば粉末含有量が体積比で50%、平均粒子径が10μmのものを用いた。そして、塗布されたAu-Snペーストを310℃−10秒の条件でリフローしてメルトさせた後、市販のフラックス洗浄液を用いて洗浄を行って、図3(a)に示すような印刷パッド29を形成する(ステップ108)。図3(a)では、Si基板11の上にTi-Pt下地層13、さらにその上にAu下地層14が形成され、その上に印刷パッド29が形成されている様子が示されている。その後、図3(b)に示すように、加熱ヘッド31を用いて印刷パッド29を約320℃で加熱して、加熱溶融させると共に加圧する(ステップ109)。その結果、図3(c)に示すようなAu-Sn膜15が生成されて処理が終了する。このようにして形成されるAu-Sn膜15は、厚さdが約3.5μmとなるように、また、図3(c)に示すように、溶融後の範囲が500μm角の所定のパッドエリア(Au下地層14の寸法)にほぼ一致するように、予めその量が調整されている。このときの加圧力は例えば100g/cm2であった。また加熱圧着は、日本アビオニクス株式会社製の抵抗溶接機を用いて行い、この抵抗溶接機のツールを加熱ヘッド31として用いた。加熱ヘッド31は、パッドエリアを形成するAu下地層14に対して、各辺の長さが約2倍、即ち、面積にして約4倍の寸法のものを採用している。
図3(a)〜(c)は、このAu-Sn膜15の生成工程を説明するための図である。図2および図3を用いて説明すると、Au-Sn膜15の生成工程では、まず、第2の下地層であるAu下地層14の上に、ディスペンサによりAu-Snペーストが塗布される(ステップ107)。塗布されるAu-Snペーストとして、例えば粉末含有量が体積比で50%、平均粒子径が10μmのものを用いた。そして、塗布されたAu-Snペーストを310℃−10秒の条件でリフローしてメルトさせた後、市販のフラックス洗浄液を用いて洗浄を行って、図3(a)に示すような印刷パッド29を形成する(ステップ108)。図3(a)では、Si基板11の上にTi-Pt下地層13、さらにその上にAu下地層14が形成され、その上に印刷パッド29が形成されている様子が示されている。その後、図3(b)に示すように、加熱ヘッド31を用いて印刷パッド29を約320℃で加熱して、加熱溶融させると共に加圧する(ステップ109)。その結果、図3(c)に示すようなAu-Sn膜15が生成されて処理が終了する。このようにして形成されるAu-Sn膜15は、厚さdが約3.5μmとなるように、また、図3(c)に示すように、溶融後の範囲が500μm角の所定のパッドエリア(Au下地層14の寸法)にほぼ一致するように、予めその量が調整されている。このときの加圧力は例えば100g/cm2であった。また加熱圧着は、日本アビオニクス株式会社製の抵抗溶接機を用いて行い、この抵抗溶接機のツールを加熱ヘッド31として用いた。加熱ヘッド31は、パッドエリアを形成するAu下地層14に対して、各辺の長さが約2倍、即ち、面積にして約4倍の寸法のものを採用している。
以上のようにして形成される本実施の形態における光学ベンチ10は、従来の多層薄膜方式で形成したパッドと比較した場合、所定の組成を持つAu-Snペーストの印刷によりパッドが形成されることから、組成が極めて安定している。また、繰り返しごとのバラツキは実質的に生じないことに加え、高さバラツキが比較的狭い範囲に収めることが可能となった。
尚、第1の下地層としては種々のものがあり得るが、成膜性、耐久性、熱伝導性等の面からPtを含むものが適する。また、第2の下地層としては、Au-Snとの親和性、導電性、成膜性等の面からAuが適する。
尚、第1の下地層としては種々のものがあり得るが、成膜性、耐久性、熱伝導性等の面からPtを含むものが適する。また、第2の下地層としては、Au-Snとの親和性、導電性、成膜性等の面からAuが適する。
図4(a)〜(c)は、数々の条件下でAu-Snペーストを加熱・加圧溶融させた場合の濡れ広がり状態例を示した図である。図4(a)は、本実施の形態の比較例として、Au下地層14を設けずにAu-Snペーストの塗布、および加熱・加圧溶融が行われた場合の濡れ広がりを示している。Au下地層14を設けずに形成されるAu-Sn膜15は、パッドエリアとして予め想定されている領域に整合せず、不安定な形状であった。これは、第1の下地層であるTi-Pt下地層13のPtが表面に露出しており、Ptに対するAu-Snの親和性が低く、即ち濡れ性が悪いことから、リフローおよび加熱圧着によっても下地になじんでいかないためである。
図4(b)は、加熱ヘッド31の寸法がパッドエリアであるAu下地層14よりも小さいものを用いた場合の濡れ広がり状態を示している。比較のために、加熱ヘッド31の各辺の寸法がパッドエリアとしてAu下地層14によって形成される領域の約70%、面積にしてAu下地層14の約50%のヘッドを用いた。このときの結果が図4(b)に示されている。かかる場合、Au-Sn膜15のパッド形状は比較的一定していたが、寸法が小さく、パッドエリアとしてのAu下地層14をカバーしきれていなかった。また、Au-Sn膜15の周辺には、図の斜線で示す肉厚部分が生じていた。このように、パッドエリアに対して加熱ヘッド31の寸法が小さいと、Au-Snペーストが十分に加熱溶融されず、パッドエリアを十分にカバーすることができなくなる。即ち、加熱ヘッド31のヘッド先端の寸法形状を、パターニングされた所定形状の下地層の領域よりも大きい範囲にすることにより、塗布されたAu-SnペーストがパッドエリアとしてのAu下地層14の範囲に亘って十分に加熱溶融され、より良好なAu-Sn膜15を得ることができる。
図4(c)は、Au下地層14のパターニングをフォトリソグラフィにより行った結果を示している。かかる場合に、Au-Sn膜15のパッド形状は、パッドエリアとしてのAu下地層14にほぼ整合していたが、Au-SnがAu下地層14のパターニングエリアから飛散した飛散箇所が生じていた。これは、フォトリソグラフィによると、下地であるAu下地層14のパターン輪郭がシャープになり、界面部分が不連続的な状態になって、溶融したAu-Snが加圧されて濡れ広がっていく際に、突出して飛散する部分が生じやすいためである。一方、レーザエッチングの場合には、端面がダレた状態になり、厚さ方向および外形線方向ともにグラジュアルな(滑らかな)ラインとなる。この場合には、溶融Au-Snの流動が連続的となり、かつ外形線になじんで行きやすく、図4(c)に示すような飛散が抑制される。即ち、第2の下地層として例えばAu下地層14を蒸着やスパッタ等の薄膜で形成した場合、パターニングの方法はフォトリソグラフィ等のエッチング方式によっても勿論可能である。エッチングを用いた場合には、パターンの輪郭がシャープに形成され、このことは用途によっては有用である。例えばサブミクロンの大きさであるファインパターンが必要とされる場合等には必須である。しかしながら図4(c)に示すような飛散箇所を生じ難くするためには、グラジュアルなラインを形成できるレーザエッチング等が好ましい。
尚、第2の下地層であるAu下地層14をインクジェット印刷で形成した場合も輪郭はグラジュアルなラインとなり、レーザエッチングと同様な効果が得られる。かかる場合、ステップ105に示したパターニング行程が不要となることから、量産効率を高める意味でも効果が高い。
このように、Au下地層14の形成は、薄膜のパターニングによる方法以外に、印刷を用いて行うことができる。かかる場合、Au粒子の径が数nm以下の所謂ナノ粒子を用いたインクまたはペーストによる印刷が薄膜を形成する上で有効である。この印刷の方法としては、インクジェット印刷やスクリーン印刷が使用できる。
このように、Au下地層14の形成は、薄膜のパターニングによる方法以外に、印刷を用いて行うことができる。かかる場合、Au粒子の径が数nm以下の所謂ナノ粒子を用いたインクまたはペーストによる印刷が薄膜を形成する上で有効である。この印刷の方法としては、インクジェット印刷やスクリーン印刷が使用できる。
また、ステップ107に示したAu-Snペーストの塗布は、ディスペンサによらずスクリーン印刷等の印刷によって行うこともできる。更に上述したリフロー後の洗浄は、場合によっては加熱圧着後に行うこともできる。また更に、より精度良く範囲を規定する上で、パッドエリアであるAu下地層14の輪郭に沿ってPtダムを設けることも有効である。
次に、上述のようにして製造された光学ベンチ10を用いた光学モジュールについて説明する。
図5(a),(b)は、本実施の形態が適用される光学モジュールの一例を示した図である。図5(a),(b)に示す光学モジュール50は、光学ベンチ10における溝12内に、光学部品として、例えば石英製結合レンズであるレンズ51が搭載されている。また、光学ベンチ10における配線16の一部、および光学ベンチ10に形成されたAu-Sn膜15の上に、光学駆動部品として、光学素子であるレーザダイオード52が実装されている。本実施の形態では、上述した作業工程によって光学ベンチ10が作製されることから、Au-Sn膜15の精度が±3μm以内程度と高く、その結果として、光学モジュール50における組み立て整合性を向上させることが可能となる。尚、光学モジュール50に搭載される他の光学部品/駆動部品としては、ファイバ、ミラー、フィルタ、スイッチ等がある。
図5(a),(b)は、本実施の形態が適用される光学モジュールの一例を示した図である。図5(a),(b)に示す光学モジュール50は、光学ベンチ10における溝12内に、光学部品として、例えば石英製結合レンズであるレンズ51が搭載されている。また、光学ベンチ10における配線16の一部、および光学ベンチ10に形成されたAu-Sn膜15の上に、光学駆動部品として、光学素子であるレーザダイオード52が実装されている。本実施の形態では、上述した作業工程によって光学ベンチ10が作製されることから、Au-Sn膜15の精度が±3μm以内程度と高く、その結果として、光学モジュール50における組み立て整合性を向上させることが可能となる。尚、光学モジュール50に搭載される他の光学部品/駆動部品としては、ファイバ、ミラー、フィルタ、スイッチ等がある。
以上、詳述したように、本実施の形態によれば、Au-Snパッド(印刷パッド29)形成を印刷で行い、さらに加熱ツールにより加熱圧着させる方式のパッド形成において、パッドエリアに相当する領域に下地層としてAu薄膜(Au下地層14)を形成した。また、例えば、このAu薄膜のパターニングをレーザで行うことにより、下地層がPt等のAu-Snとの濡れ性が悪いものであっても、正確で安定したパッド形成を行うことができる。このとき、加熱ヘッド31としてパッドエリアより大きい寸法形状のものを用いることにより、更に高い寸法精度のものを得ることが可能となる。
本発明の活用例としては、光学素子を搭載する光学ベンチの製造、製造された光学ベンチ、および光学ベンチに光学素子が搭載された光学モジュールへの活用が考えられる。
10…光学ベンチ(シリコンオプティカルベンチ)、11…Si基板、12…溝、13…チタン白金(Ti-Pt)下地層、14…Au下地層、15…金錫膜(Au-Sn膜)、16…配線、29…印刷パッド、31…加熱ヘッド、50…光学モジュール、51…レンズ、52…レーザダイオード
Claims (11)
- 光学素子が導電性材料層を介して接合される光学ベンチの製造方法であって、
基板上に第1の下地層を形成する第1下地層形成工程と、
前記第1下地層形成工程により形成された前記第1の下地層の上に当該第1の下地層よりも金錫(Au-Sn)との親和性の高い第2の下地層を形成する第2下地層形成工程と、
前記第2下地層形成工程により形成された前記第2の下地層の上にAu-Snの合金粒子を含むペーストを印刷する印刷工程と、
前記印刷工程により印刷された前記ペーストを加熱ヘッドを用いて溶融させて、前記第2の下地層の上にAu-Sn膜からなる前記導電性材料層を形成する加熱溶融工程と、
を含む光学ベンチの製造方法。 - 前記第2下地層形成工程は、レーザエッチングにより前記第2の下地層をパターニングすることを特徴とする請求項1記載の光学ベンチの製造方法。
- 前記第2下地層形成工程は、印刷により前記第2の下地層を形成することを特徴とする請求項1記載の光学ベンチの製造方法。
- 前記加熱溶融工程にて用いられる前記加熱ヘッドは、前記ペーストに接触する先端部の寸法形状が前記第2の下地層の領域と同等またはそれ以上であることを特徴とする請求項1記載の光学ベンチの製造方法。
- 前記第1下地層形成工程によって前記第1の下地層が形成される前記基板上に、部品を位置決めしながら搭載するための溝を形成する溝形成工程を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の光学ベンチの製造方法。
- 部品を位置決めしながら搭載するための溝を有する基板と、
前記基板上に形成される第1の下地層と、
前記第1の下地層の上に形成され当該第1の下地層よりも金錫(Au-Sn)との親和性の高い第2の下地層と、
前記第2の下地層の上に形成されるAu-Sn膜と
を含む特徴とする光学ベンチ。 - 前記第1の下地層は、プラチナ(Pt)を含む薄膜から形成され、
前記第2の下地層は、金(Au)を含む薄膜から形成されていることを特徴とする請求項6記載の光学ベンチ。 - 前記Au-Sn膜は、Au-Snの合金粒子を含むペーストが前記第2の下地層上に形成された後に当該ペーストに加熱ヘッドを加圧させることにより形成されることを特徴とする請求項6記載の光学ベンチ。
- 前記Au-Sn膜は、前記第2の下地層のパターンによって形成されるパッドエリアに略一致するように領域が形成されることを特徴とする請求項6記載の光学ベンチ。
- 溝、配線、およびAu-Sn膜からなる導電性材料層、を有する基板と、
前記導電性材料層に接合される光学駆動部品と、
前記溝に位置決めされて配置される光学部品とを含み、
前記基板は、当該基板上に形成される第1の下地層と、当該第1の下地層の上に形成され当該第1の下地層よりもAu-Snとの親和性の高い第2の下地層とを有し、当該第2の下地層の上に前記導電性材料層が形成されていることを特徴とする光学モジュール。 - 前記基板における前記第1の下地層はプラチナ(Pt)を含む薄膜から形成され、前記第2の下地層は金(Au)を含む薄膜から形成されていることを特徴とする請求項10記載の光学モジュール。
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JP2004112162A JP2005302776A (ja) | 2004-04-06 | 2004-04-06 | 光学ベンチの製造方法、光学ベンチ、および光学モジュール |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2014087896A1 (ja) | 2012-12-04 | 2014-06-12 | 三菱マテリアル株式会社 | Au-Sn-Bi合金粉末ペースト、Au-Sn-Bi合金薄膜及びその成膜方法 |
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2004
- 2004-04-06 JP JP2004112162A patent/JP2005302776A/ja not_active Withdrawn
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