JP2005302628A - 非水電解質電池用正極活物質、正極及び非水電解質電池 - Google Patents

非水電解質電池用正極活物質、正極及び非水電解質電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 ハイレート放電特性に優れ、かつ高温貯蔵時の膨れと発熱が抑制された非水電解質電池用正極活物質を提供することを目的とする。
【解決手段】 組成がLixCoO2(但し、モル比xは、0.95≦x≦1.02を示す)で表される一次粒子の二次凝集粒子を含み、メジアン径が10〜13μmの範囲内で、BET法による比表面積が0.2〜0.4m2/gの範囲内であり、前記一次粒子は、平均最小粒径が0.5〜2μmの範囲内で、かつ平均最大粒径が10〜13μmの範囲内であることを特徴とする。
【選択図】 図4

Description

本発明は、非水電解質電池用正極活物質、正極及び非水電解質電池に関するものである。
現在、非水電解質電池の一例であるリチウムイオン二次電池の正極活物質としては、主にLiCoO2が用いられている。特許文献1には、平均粒径が10〜150μmで、かつ5μm以下の粒子が30容量%未満であるLixMO2(但し、Mは1以上の遷移金属を表し、0.05≦x≦1.10である)粒子を正極に用いた非水電解液二次電池が記載されている。
このLixMO2粒子を含む正極は、高い活物質充填密度が得られるものの、非水電解液に対する濡れ性が低く、しかもリチウムイオン拡散速度が遅いため、二次電池のハイレート放電特性が低くなるという問題点を有する。
特許番号第2615854号の特許公報
本発明は、ハイレート放電特性に優れ、かつ高温貯蔵時の膨れが抑制された非水電解質電池用正極活物質と、この正極活物質を備えた正極と、この正極活物質を備えた非水電解質電池を提供することを目的とする。
本発明に係る非水電解質電池用正極活物質は、組成がLixCoO2(但し、モル比xは、0.95≦x≦1.02を示す)で表される一次粒子の二次凝集粒子を含み、メジアン径が10〜13μmの範囲内で、BET法による比表面積が0.2〜0.4m2/gの範囲内であり、
前記一次粒子は、平均最小粒径が0.5〜2μmの範囲内で、かつ平均最大粒径が10〜13μmの範囲内であることを特徴とするものである。
本発明に係る正極は、前記正極活物質を含み、かつ
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)を体積比(EC:MEC)が1:2になるように混合した非水溶媒に1MのLiPF6が溶解された非水溶液との反応開始点が80℃以上であることを特徴とするものである。
本発明に係る非水電解質電池は、正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質とを備えるものであって、
前記正極活物質は、組成がLixCoO2(但し、モル比xは、0.95≦x≦1.02を示す)で表される一次粒子の二次凝集粒子を含み、メジアン径が10〜13μmの範囲内で、BET法による比表面積が0.2〜0.4m2/gの範囲内であり、
前記一次粒子は、平均最小粒径が0.5〜2μmの範囲内で、かつ平均最大粒径が10〜13μmの範囲内であることを特徴とするものである。
本発明によれば、ハイレート特性に優れ、かつ高温貯蔵時の膨れが抑制された非水電解質電池用正極活物質と、この正極活物質を備える正極と、この正極活物質を備える非水電解質電池を提供することができる。
以下、本発明に係る非水電解質電池用正極活物質の一実施形態について説明する。この正極活物質は、組成がLixCoO2(但し、モル比xは、0.95≦x≦1.02を示す)で表される一次粒子で構成される二次凝集粒子を含み、メジアン径が10〜13μmの範囲内で、かつBET法による比表面積が0.2〜0.4m2/gの範囲内である。また、前記一次粒子は、平均最小粒径が0.5〜2μmの範囲内で、かつ平均最大粒径が10〜13μmの範囲内である。
(Liのモル比x)
Liのモル比xを前記範囲に規定する理由について説明する。リチウムのモル比xを0.95未満にすると、電池反応に関与するリチウムイオン量が不足するため、高容量を得られない。一方、リチウムのモル比xが1.02を超えると、非水電解質との反応が低温から開始されるため、80℃付近での高温貯蔵時の電池膨れが大きくなる。モル比xのより好ましい範囲は、0.98〜1.01である。
(粒子形態)
粒子形態に係るパラメータを前記範囲に規定する理由について説明する。
一次粒子の平均最小粒径を0.5μm未満にするか、平均最大粒径を10μm未満にすると、オーブン試験のような過酷な高温環境下において熱暴走やガス噴出等を招く危険性がある。一方、一次粒子の平均最小粒径が2μmを超えるか、平均最大粒径が13μmを超えると、正極活物質のリチウムイオン拡散速度と、正極活物質の非水電解質に対する濡れ性が低下するため、優れたハイレート放電特性を得られない。なお、平均最大粒径のより好ましい範囲は、10.5〜12μmである。
正極活物質のメジアン径を前記範囲に規定する理由について説明する。メジアン径を10μm未満にすると、オーブン試験のような過酷な高温環境下において熱暴走やガス噴出等を招く危険性がある。一方、メジアン径を13μmより大きくすると、ハイレート放電特性が低下する。メジアン径のより好ましい範囲は、10.5〜12μmである。なお、二次凝集粒子を含む正極活物質ではなく、単粒子からなる正極活物質でもメジアン径を10〜13μmの範囲内にすることにより高い活物質充填密度が得られるものの、非水電解質との濡れ性が劣り、リチウムイオン拡散速度が遅く、しかも比表面積が小さくなるため、ハイレート放電特性が低下する恐れがある。
正極活物質のメジアン径(μm)について説明する。ここで、メジアン径とは、マイクロトラック法で粒度分布を測定し、粒径が小さい粒子からその体積を積算して50%に達した粒子の粒径(50%累積頻度粒径)を示す。
粒度分布は、以下に説明する方法で測定される。すなわち、レーザ光散乱型粒度分布計(例えば、LEEDS&NORTHRUP社製MICROTRACIIPARTICLE−SIZE ANALYZER)を用いて、粒度分布を測定する。これは測定原理として粒子にレーザ光を照射した時に生じる光の散乱現象を利用している。散乱光の強度および散乱角度は粒子の大きさに大きく依存するため、この散乱光の強度及び散乱角度を光学検出器で測定し、これをコンピュータ処理することによって、粒体の粒度分布が得られる。
メジアン径の測定に際しては、湿式の試料を測定できるレーザ光散乱型粒度分布計が好適に使用できる。具体的には、活物質を適当な溶媒中に懸濁させてスラリーを作製し、これを超音波で十分分散させた後、測定することが好ましい。超音波装置の形式は、超音波発振機より連結された金属製のチップが直にスラリーに浸漬されている構造のものが好ましい。この構造は、スラリーに直接超音波が伝達されるために効率良く分散できること、分散の再現性に優れている利点がある。
超音波出力は100W以上であることが望ましい。100W未満では、時間を掛けて超音波を照射しても力学的エネルギーが不足しており、微細構造間の凝集を破壊することが難しい。一方、200W以上のエネルギーを投入すると、スラリー温度が急速に上昇し、分散状態の再現性を得ることが困難である。
超音波振動子の振動数は20kHz程度のものが用いられる。特に、振動数を追尾することが可能な制御系を備えていることが好ましい。
スラリー濃度は、0.001〜1質量%の範囲内であることが望ましい。これ以上の濃度では粒子同士の会合確率が高くなり、破砕された微粒子が再凝集を起こし正確な破砕の状況を把握することが困難である。また、0.001質量%未満のスラリー濃度では、粒子による超音波エネルギーの吸収効率が低下する他、散乱を光検知する測定装置の制約でS/N比が低下し、ノイズが増加する。
上記の超音波照射時間は、5分以内であることが望ましい。これ以上の照射はスラリー温度が上昇し、超音波の振幅を変化させるため、再現性が乏しくなる。
BET法による比表面積を0.2m2/g未満にすると、正極活物質の反応性が低下するため、優れたハイレート放電特性を得られない。一方、比表面積が0.4m2/gを超えると、オーブン試験のような過酷な高温環境下において熱暴走やガス噴出等を招く危険性がある。比表面積のより好ましい範囲は、0.27〜0.34m2/gである。
正極活物質のタップ密度は、2.4g/cc以上にすることが望ましい。
本発明に係る正極活物質は、例えば、以下に説明する方法で作製される。まず、金属コバルトを硝酸水溶液に溶解させた後、これに水酸化ナトリウム水溶液を添加することによりフレーク状のCo(OH)2一次粒子からなる凝集体を得る。この際、硝酸の代わりに硫酸を使用することも可能であるが、硫酸を用いると正極活物質中に硫黄成分が残留する可能性があるため、好ましくない。この凝集体を焼成することによりCo(OH)2をCo34に酸化させる。なお、焼成後も、フレーク状一次粒子の凝集構造は維持される。リチウム塩とCo34の凝集体とを大気雰囲気もしくは酸素雰囲気中で焼成することにより、正極活物質を得る。
次いで、上述した本発明に係る正極活物質を含む正極について説明する。この正極は、正極集電体と、前記正極集電体に担持され、前記正極活物質を含む活物質含有層とを含むものである。
この正極は、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)を体積比(EC:MEC)が1:2になるように混合した非水溶媒に1MのLiPF6が溶解された非水溶液との反応開始点が80℃以上であることが望ましい。
すなわち、正極に対Li電位4.8Vで15時間定電流定電圧充電が施された後、2時間放置され、ひきつづき、アルゴンガス雰囲気で重量が1.5mgとなる大きさに打ち抜く。打ち抜かれた正極は、容器内に収容された後、前述した組成の非水溶液3μLが滴下される。ひきつづき、密封系の示差走査熱量計測定を行ない、25℃から5℃/分で昇温した際に接線法により求める反応開始点が80℃以上となるものである。
反応開始点が80℃未満である正極は、高温貯蔵時のガス発生量が多いため、高温貯蔵時の電池膨れの増大を招く恐れがある。反応開始点が高い方が電池膨れ抑制効果が高いものの、反応開始点が120℃を超えると、正極の非水電解質に対する反応性が低下するため、ハイレート放電特性のみならず放電容量なども低下する恐れがあることから、反応開始点は80〜120℃の範囲内にすることが望ましい。反応開始点のより好ましい範囲は85℃〜105℃で、さらに好ましい範囲は95℃〜105℃である。
正極の密度は、3.3g/cc以上にすることが望ましい。
本発明に係る正極活物質を含む正極は、例えば、本発明の正極活物質と導電材と結着材とを適当な溶媒に懸濁させ、得られた懸濁物を集電体表面に塗布し、乾燥し、プレスすることにより作製される。
この正極においては、導電材としてBET法による比表面積が10〜80m2/gの炭素粉末を用い、正極活物質100重量部に対して炭素粉末を0.3〜3重量部、結着材を0.1〜2.8重量部配合させることが望ましい。
炭素粉末としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等の導電性カーボン粉末を挙げることができる。炭素粉末のBET法による比表面積を前記範囲に規定する理由を説明する。比表面積を10m2/g未満にすると、充分な電子伝導性が得られない恐れがある。一方、比表面積が80m2/gを超えると、より多くの結着材を必要とすることになるため、電池容量的に不利になる可能性がある。比表面積のより好ましい範囲は、15〜60m2/gである。また、炭素粉末の添加量のより好ましい範囲は0.5〜2.5重量部である。
結着材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムなどが挙げられる。結着材の添加量のより好ましい範囲は、0.3〜2.5重量部である。
集電体としては、導電性材料であれば特に制限されること無く使用できるが、特に正極用の集電体としては電池反応時に酸化されにくい材料を使用することが好ましく、例えばアルミニウム、ステンレス、チタンなどを使用することができる。
以上説明した本発明に係る非水電解質電池用正極活物質によれば、組成がLixCoO2で表される一次粒子の二次凝集粒子を含み、メジアン径が10〜13μmの範囲内で、BET法による比表面積が0.2〜0.4m2/gの範囲内で、前記一次粒子の平均最小粒径が0.5〜2μmの範囲内で、かつ前記一次粒子の平均最大粒径が10〜13μmの範囲内であるため、活物質充填密度を損なうことなく、非水電解質に対する濡れ性とリチウムイオン拡散速度を向上することができる。また、この正極活物質は、高温貯蔵時のガス発生と発熱を抑制することが可能である。
従って、本発明によれば、正極の活物質充填密度が高く、ハイレート放電特性に優れ、かつ高温貯蔵時の膨れと発熱が抑制された安全性の高い非水電解質電池を提供することができる。
また、本発明に係る正極活物質を含む正極には、正極活物質100重量部に対してBET法による比表面積が10〜80m2/gの炭素粉末を0.3〜3重量部と、正極活物質100重量部に対して0.1〜2.8重量部の結着材とを含有させることが望ましい。このような正極を備えた非水電解質電池は、ハイレート放電特性をさらに向上することができる。
すなわち、電池の高容量化のためには、活物質以外の副材をできるだけ少なくすることが望ましいが、電子の導電パスを確保するために必要最小限の炭素粉末とそれを集電体に結着させる結着材を添加する必要がある。炭素粉末及び結着材の添加量と、前述した正極作製工程におけるプレス圧との間には、おおむね、以下に説明するような関係がある。プレス圧が比較的弱い場合、正極内部における活物質粒子間の空隙が大きくなるため、その空隙を適度に埋めるのに十分な量の炭素粉末とそれらをつなぎとめる結着材が必要である。一方、加圧が比較的強い場合には、活物質粒子間の空隙が小さくなるため、炭素粉末と結着材の添加量をより少なくしないと、活物質間の空隙を完全に埋めることになり、非水電解質の含浸性が低下し、電池特性の悪化を招く。
この関係に示すように、高容量の電池を得るためには、正極の活物質充填密度を高くし、かつ非水電解質の浸透を阻害しない十分な空隙が確保された正極の内部構造が必要である。本発明に係る正極活物質によると、プレス圧を高めに設定しなくても炭素粉末と結着材の必要量をより少なくすることができ、正極活物質とBET法による比表面積が10〜80m2/gの炭素粉末と結着材とを正極活物質:炭素粉末:結着材が100重量部:0.3〜3重量部:0.1〜2.8重量部の配合比で混合することにより、高い活物質充填密度を確保しつつ、活物質粒子間の空隙を比較的大きくして非水電解質の浸透性を向上することができる。よって、非水電解質電池のハイレート放電特性をさらに向上することができる。
本発明に係る非水電解質電池は、本発明に係る正極活物質もしくは正極を備えた一次電池もしくは二次電池である。この非水電解質電池の一実施形態としては、正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置されるセパレータと、非水電解質とを備えるものが挙げられる。以下、負極、セパレータ及び非水電解質について説明する。
1)負極
負極は、集電体と、集電体の片面もしくは両面に形成される負極層とを含む。
この負極は、例えば、負極材料の粉末及び結着剤を有機溶媒の存在下で混練し、得られた懸濁物を集電体に塗布し、乾燥後、プレスすることにより作製される。
負極材料としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物、アルミニウム、マグネシウム、スズ、けい素等の金属、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、リチウム合金などを挙げることができる。
前記炭素質物としては、黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素などの黒鉛質材料もしくは炭素質材料、熱硬化性樹脂、等方性ピッチ、メソフェーズピッチ、メソフェーズピッチ系炭素繊維、メソフェーズ小球体など(特に、メソフェーズピッチ系炭素繊維が容量や充放電サイクル特性が高くなり好ましい)に500〜3000℃で熱処理を施すことにより得られる黒鉛質材料または炭素質材料等を挙げることができる。中でも、前記熱処理の温度を2000℃以上にすることにより得られ、(002)面の面間隔d002が0.34nm以下である黒鉛結晶を有する黒鉛質材料を用いるのが好ましい。このような黒鉛質材料を炭素質物として含む負極を備えた非水電解質二次電池は、電池容量および大電流放電特性を大幅に向上することができる。前記面間隔d002 は、0.336nm以下であることが更に好ましい。
前記結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などを用いることができる。
負極材料と結着剤の配合割合は、負極材料90〜98重量%、結着剤1〜10重量%の範囲にすることが好ましい。
集電体としては、導電性材料であれば特に制限されることなく使用することができる。中でも、銅、ステンレス、あるいはニッケルからなる箔、メッシュ、パンチドメタル、ラスメタルなどを用いることができる。
2)セパレータ
セパレータとしては、例えば、多孔質材料を使用することができる。かかるセパレータとしては、例えば、合成樹脂製不織布、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルムなどを挙げることができる。
3)非水電解質
非水電解質としては、液状もしくはゲル状の形態を有するものを使用することができる。非水電解液は、例えば、非水溶媒に電解質を溶解させることにより調製される。ゲル状非水電解質は、例えば、非水電解液と高分子材料を複合化することにより得られる。高分子材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリエチレンオキシド(PECO)などの単量体の重合体または他の単量体との共重合体が挙げられる。
非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)などの環状カーボネートや、これらの環状カーボネートと環状カーボネートより低粘度の非水溶媒との混合溶媒を主体とする非水溶媒を用いることができる。前記低粘度の非水溶媒としては、例えば、鎖状カーボネート(例えば、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど)、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、環状エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなど)、鎖状エーテル(例えば、ジメトキシエタン、ジエトキシエタンなど)が挙げられる。非水溶媒の種類は、1種類もしくは2種類以上にすることができる。
電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、四フッ化硼酸リチウム(LiBF4)、六フッ化燐酸リチウム(LiPF6)、六フッ化砒素酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22等を用いることができる。中でも、LiPF6、LiBF4及びLiClO4よりなる群から選ばれる少なくとも2種類からなる電解質は、150℃オーブン加熱試験に耐えられ、かつ充放電サイクル特性に優れる二次電池を実現することができる。
非水溶媒に対する電解質の溶解量は、0.5〜2モル/Lとすることが好ましい。
本発明に係る非水電解質電池は、円筒形、角形、薄型、コイン型等の様々な形態にすることができる。そのうちの薄型非水電解質二次電池と角形非水電解質二次電池を図1〜図3を参照して詳細に説明する。
まず、薄型非水電解質二次電池を図1,2を参照して説明する。
図1に示すように、長箱型のカップ状をなす容器本体1内には、電極群2が収納されている。電極群2は、正極3と、負極4と、正極3と負極4の間に配置されるセパレータ5を含む積層物が偏平形状に捲回された構造を有する。非水電解質は、電極群2に保持されている。容器本体1の縁の一部は幅広になっており、蓋板6として機能する。容器本体1と蓋板6は、それぞれ、ラミネートフィルムから構成される。このラミネートフィルムは、外部保護層7と、熱可塑性樹脂を含有する内部保護層8と、外部保護層7と内部保護層8の間に配置される金属層9とを含む。容器本体1には蓋体6が内部保護層8の熱可塑性樹脂を用いてヒートシールによって固定され、それにより容器内に電極群2が密封される。正極3には正極タブ10が接続され、負極4には負極タブ11が接続され、それぞれ容器の外部に引き出されて、正極端子及び負極端子の役割を果たす。
次いで、角形非水電解質二次電池について説明する。
図3に示すように、例えばアルミニウムのような金属製の有底矩形筒状容器12内には、電極群13が収納されている。電極群13は、正極14、セパレータ15及び負極16がこの順序で積層され、扁平状に捲回されたものである。中央付近に開口部を有するスペーサ17は、電極群13の上方に配置されている。
非水電解質は、電極群13に保持されている。防爆機構18aを備え、かつ中央付近に円形孔が開口されている封口板18bは、容器12の開口部にレーザ溶接されている。負極端子19は、封口板18bの円形孔にハーメチックシールを介して配置されている。負極16から引き出された負極タブ20は、負極端子19の下端に溶接されている。一方、正極タブ(図示しない)は、正極端子を兼ねる容器12に接続されている。
[実施例]
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
(実施例1)
<正極の作製>
金属コバルトを硝酸水溶液に溶解させた後、この水溶液に攪拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加することにより水酸化コバルトの沈殿を生じさせ、フレーク状粒子の凝集体を得た。これを濾過して沈殿物を回収し、水洗を繰り返してpHが安定したところで乾燥することにより、フレーク状のCo(OH)2一次粒子からなる平均粒径が10μmの二次凝集粒子を得た。この凝集粒子を大気雰囲気中で600℃で焼成することによりCo(OH)2をCo34に酸化させた。得られた酸化物と炭酸リチウム粉末とをCo:Liが1:1の比率で混合し、大気雰囲気中で850℃で焼成することにより、下記表1に示す組成を有するフレーク状一次粒子からなる二次凝集粒子を正極活物質として得た。
この正極活物質を100重量部と、BET法による比表面積が50m2/gのアセチレンブラックを2重量部と、15m2/gの燐片状黒鉛を0.5重量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデンを2重量部とをN−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーをAl箔に塗布し、乾燥後、ローラープレス機で圧縮成形し、所定のサイズに裁断することにより正極を得た。
<負極の作製>
3000℃で熱処理したメソフェーズピッチ系炭素繊維94重量%に、ポリフッ化ビニリデンが6重量%溶解されたN−メチル−2−ピロリドンを添加し、合剤スラリーを調製した。この合剤スラリーを銅箔に塗布、乾燥、加熱ロールプレスして負極を作製した。
<非水電解液(液状非水電解質)の調製>
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)を体積比率1:2で混合した。得られた混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)をその濃度が1mol/Lになるように溶解させて、非水電解液を調製した。
前記正極の集電体に帯状アルミニウム箔(厚さ100μm)からなる正極リードを超音波溶接し、前記負極の集電体に帯状ニッケル箔(厚さ100μm)からなる負極リードを超音波溶接した後、前記正極及び前記負極をその間に前記セパレータを介して渦巻き状に捲回した後、偏平状に成形し、電極群を作製した。
厚さが300μmのアルミニウムシートを厚さが5mm、幅が30mm、高さが48mmの直方体の缶に成形し、得られた容器内に前記電極群を収納した。
次いで、容器内の電極群に80℃で真空乾燥を12時間施すことにより電極群及びアルミニウム缶に吸着している水分を除去した。
容器内の電極群に前記液状非水電解質を電池容量1Ah当たりの量が3.4gとなるように注入し、封止することによって、前述した図3に示す構造を有し、厚さが5mm、幅が30mm、高さが48mmの角形非水電解質二次電池を組み立てた。
(実施例2〜12及び比較例1〜9)
正極活物質におけるLiのモル比x、一次粒子の平均最小粒径と平均最大粒径、メジアン径、BET法による比表面積、正極の非水電解質との反応開始点を下記表1〜表2に示すように設定すること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成の非水電解質二次電池を組み立てた。
(比較例10)
LiCoO2で表され、メジアン径が10μmの一次粒子からなる単粒子を正極活物質として用いること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な方法により非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例1〜12及び比較例1〜10の電池について、各電池を組み立てる際に使用したのと同様な種類の正極活物質と、各電池を組み立てる際に使用したものと同様な方法で作製した正極とを用意し、以下に説明する方法で測定を行った。その結果を下記表1〜表2に示す。
<正極活物質の一次粒子の平均最小粒径と平均最大粒径の測定>
正極の任意の断面について、走査型電子顕微鏡写真を倍率3000倍で5視野撮影した。実施例1の場合の1視野を図4に示す。また、実施例1で使用した正極活物質粒子のみを撮影した走査型電子顕微鏡写真を図5に示す。図4及び図5から、実施例1の正極活物質がフレーク状の一次粒子が凝集した二次粒子からなることが理解できる。なお、走査型電子顕微鏡には、日本電子データム(株)製のJSM−5800LVを用いた。加速電圧は20kVに設定して観察を行った。
各視野において、全輪郭線が見えている一次粒子のみ最小長さと最大長さを測定し、つまり、全体像が視野内におさまっていない一次粒子や他の粒子が重なっているために全体像が観察できない一次粒子を除いて最小長さと最大長さを測定し、5視野分の測定結果を平均化し、正極活物質の一次粒子の平均最小長さ(平均最小粒径)および平均最大長さ(平均最大粒径)を得た。
<正極活物質のメジアン径の測定>
正極活物質0.5gを100ml水中で撹拌を行った後、超音波分散を100W−3minの条件で行った。その後、LEEDS&NORTHRUP社製MICROTRACIIPARTICLE−ANALYZER TYPE7997−10を使用してメジアン径(50%累積頻度粒径)を測定した。
<正極活物質のBET法による比表面積の測定>
カンタクロム社の比表面積計カンタソーブQS−20を使用し、測定用セルに3gの正極活物質を充填し、120℃で20分真空脱気した後、BET1点法にて比表面積を測定した。
<正極の反応開始点の測定>
まず、正極を用いて図6に示す構造のモデルセルを組み立てた。
すなわち、正極21と、面積が4cm2で、厚さが1mmのリチウム箔にニッケル網を貼付したものからなる負極22との間に、ポリプロピレン不織布からなるセパレータ23が配置されている。前記セパレータ23の負極面側には、ニッケル網にリチウム箔を貼付したものからなるリファレンス極24が配置されている。エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートが容量比1:2で混合された非水溶媒にLiPF6を1mol/L溶解させたものからなる測定用非水電解液は、前記正極21、前記負極22、前記セパレータ23及び前記リファレンス極24に含浸されている。前記正極21、前記負極22、前記セパレータ23及び前記リファレンス極24は、1対の押え板25a、25bで挟まれることにより固定されている。正極リード26、負極リード27及びリファレンス極リード28は、電流・電圧検出器(図示しない)に接続されている。
このモデルセルに対Li電位4.8Vで15時間定電流定電圧充電(対Li電位で4.8Vまで0.3C相当の電流で充電を行なった後、直ちに4.8V定電圧充電に移行し、充電開始からの総時間が15時間となったところで充電を停止する)を施した後、2時間放置した。このモデルセルから取り出した正極をメチルエチルカーボネート(MEC)に5分浸漬して洗浄し、アルゴンガス雰囲気で重量が1.5mgとなる大きさに打ち抜いた。次いで、打ち抜いた正極を容量15マイクロリットルのアルミ製密封容器に収容した後、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)を体積比(EC:MEC)が1:2になるように混合した非水溶媒に1MのLiPF6が溶解された非水溶液3μLを滴下した。このサンプルについて、密封系の示差走査熱量計測定(装置名:セイコーインスツルメンツ社製 SSC5200H,DSC220)で25℃から5℃/分で昇温し、得られたDSCチャートの一例を図7に示す。図7に示すように、一つ目のピークの最高点(図7の場合、DSCが485mW/g)の1/2の高さ(図7の場合、DSCが243mW/g)のチャート上の点からベースラインに向かって引いた接線LとベースラインBとの交点Xが反応開始点である。図7の場合、反応開始点は95℃である。
ベースラインBの引き方を図8を参照して説明する。念のために述べると、本願では、DSCチャートにおける一つ目のピークPについての反応開始点を論じている。ベースラインBは、50℃〜60℃の平坦部Yと、150℃〜160℃付近の、一つ目の発熱反応が下がり切った点Zとを結んだ直線である。
図9に、2種類のDSC曲線を示す。DSC曲線の一つ目のピークがブロードな方(P2)の反応開始点X2が88℃で、よりシャープな方(P3)の反応開始点X3が96℃である。
なお、図7〜図9は、ベースラインを図のX軸に揃えるために若干の傾き補正がなされた後の状態のものである。
実施例1〜12及び比較例1〜10の電池について、以下に説明する方法でハイレート放電特性と高温貯蔵時の電池膨れを測定し、その結果を下記表1〜2に示す。
(ハイレート放電特性)
それぞれの電池の4.2Vから3.0Vの設計容量を1時間で放電し切る電流値を1Cと定め、1C放電させた場合の容量を測定した。次に、その3倍の3Cの電流値で放電をさせた時の容量を測定し、1C放電時の容量を100%として、3C放電時の容量の維持率を評価した。
(高温貯蔵時電池膨れ)
それぞれの電池を1Cで4.2Vまで3時間充電後、100℃の恒温槽に24時間放置し、放置前後での電池厚さ変化から電池膨れ(%)を測定した。
Figure 2005302628
Figure 2005302628
表1,2から明らかなように、組成がLixCoO2で表される一次粒子の二次凝集粒子を含み、メジアン径が10〜13μmの範囲内で、BET法による比表面積が0.2〜0.4m2/gの範囲内で、一次粒子の平均最小粒径が0.5〜2μmの範囲内で、かつ平均最大粒径が10〜13μmの範囲内である正極活物質を備えた実施例1〜12の電池は、3C放電時の容量維持率が高く、充電高温貯蔵時の電池膨れが小さいことが理解できる。
これに対し、平均最小粒径が0.5μmよりも小さい比較例1の電池、平均最大粒径が10μmよりも小さい比較例3の電池、メジアン径が10μmよりも小さい比較例5の電池、比表面積が0.4m2/gよりも大きい比較例8の電池は、充電高温貯蔵時の膨れが実施例1〜12よりも大きかった。
一方、平均最小粒径が2μmより大きい比較例2の電池と、平均最大粒径が13μmよりも大きい比較例4の電池と、メジアン径が13μmよりも大きい比較例6の電池と、比表面積が0.2m2/gよりも小さい比較例7の電池は、3C放電時の容量維持率が実施例1〜12よりも低かった。
また、リチウムのモル比xが1.02を超える比較例9の電池と、メジアン径が10μmの一次粒子からなる単粒子を用いる比較例10の電池は、3C放電時の容量維持率が実施例1〜12よりも低く、そのうえ充電高温貯蔵時の電池膨れが実施例1〜12よりも大きかった。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態である薄型非水電解質二次電池を示す斜視図。 図1の非水電解質二次電池を厚さ方向に切断した部分断面図。 本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態である角形非水電解質二次電池を示す部分切欠斜視図。 実施例1の正極断面の走査型電子顕微鏡写真。 実施例1で使用する正極活物質粒子の走査型電子顕微鏡写真。 実施例1〜12の正極について示差走査熱量測定を行う際に使用するモデルセルを示す模式図。 正極についての示差走査熱量測定結果の一例を示す特性図。 ベースラインの引き方を説明するためのDSCチャートを示す特性図。 様々な反応開始点を有するDSC曲線が表わされているDSCチャートを示す特性図。
符号の説明
1…容器本体、2…電極群、3…正極、4…負極、5…セパレータ、6…蓋板、7…外部保護層、8…内部保護層、9…金属層、10…正極端子、11…負極端子、L,L1,L2,L3…接線、B…ベースライン、X,X1,X2,X3…反応開始点、P,P1〜P3…DSC曲線における一つ目のピーク、Y…平坦部、Z…一つ目のピークが落ちきった部分。

Claims (3)

  1. 組成がLixCoO2(但し、モル比xは、0.95≦x≦1.02を示す)で表される一次粒子の二次凝集粒子を含み、メジアン径が10〜13μmの範囲内で、BET法による比表面積が0.2〜0.4m2/gの範囲内であり、
    前記一次粒子は、平均最小粒径が0.5〜2μmの範囲内で、かつ平均最大粒径が10〜13μmの範囲内であることを特徴とする非水電解質電池用正極活物質。
  2. 請求項1に記載の正極活物質を含み、かつ
    エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)を体積比(EC:MEC)が1:2になるように混合した非水溶媒に1MのLiPF6が溶解された非水溶液との反応開始点が80℃以上であることを特徴とする正極。
  3. 正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質とを備える非水電解質電池であって、
    前記正極活物質は、組成がLixCoO2(但し、モル比xは、0.95≦x≦1.02を示す)で表される一次粒子の二次凝集粒子を含み、メジアン径が10〜13μmの範囲内で、BET法による比表面積が0.2〜0.4m2/gの範囲内であり、
    前記一次粒子は、平均最小粒径が0.5〜2μmの範囲内で、かつ平均最大粒径が10〜13μmの範囲内であることを特徴とする非水電解質電池。
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