JP2005301111A - 誘電体多層膜フィルタの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガラス基板を用いた誘電体多層膜フィルタの製造方法に於いて、誘電体多層膜形成するガラス基板の厚みに依存されず、また、研削及び研磨加工後の分離および再接着する手間を省くことができ、かつ、フィルタの低損失化が図れ、さらに、歩留まりを向上させることのできる誘電体多層膜フィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板を用いた誘電体多層膜フィルタの製造時における基板の研削及び研磨工程において、あらかじめ真球状の粒子を含んだ接着剤および熱溶融性接着剤で基板周辺を樹脂層で埋め込み基板を研削及び研磨加工した後、誘電体多層膜を形成し、その後、カッティング、チップ化することで、ガラス基板と支持体との接着、分離、接着するなどの煩わしさが解消でき、また、基板の厚みに制約を受けないで低損失化が図れる高性能な誘電体多層膜フィルタの製造が可能になる。
【選択図】 なし
【解決手段】ガラス基板を用いた誘電体多層膜フィルタの製造時における基板の研削及び研磨工程において、あらかじめ真球状の粒子を含んだ接着剤および熱溶融性接着剤で基板周辺を樹脂層で埋め込み基板を研削及び研磨加工した後、誘電体多層膜を形成し、その後、カッティング、チップ化することで、ガラス基板と支持体との接着、分離、接着するなどの煩わしさが解消でき、また、基板の厚みに制約を受けないで低損失化が図れる高性能な誘電体多層膜フィルタの製造が可能になる。
【選択図】 なし
Description
本発明は光通信に使用する誘電体多層膜フィルタの製造方法に関するものである。
誘電体多層膜フィルタの製造は、ガラス基板上にイオンアシスト蒸着などにより誘電体多層膜を形成した後、基板裏面より基板を所定の厚さ(例えば、1±0.05mm)に研削及び研磨加工し、その後、支持体から分離し研削及び研磨を行った加工面に反射低減膜を形成し、再度接着剤を介して平滑な固い支持体と接着してカッティング、チップ化する方法が取られていた(非特許文献1参照)。
しかしながら、上記のような誘電体多層膜フィルタの製造方法においては、誘電体多層膜を形成するガラス基板の厚みが薄いと多層膜の圧縮応力によって基板が凸状に変形するので、基板は例えば10mm程度の厚さが必要である。したがって、誘電体多層膜を形成したガラス基板を所定の厚さまで研削及び研磨加工する必要があった。
伊勢田徹:ガラスの加工;機械加工,ガラス工学ハンドブック(山根正之ほか編),朝倉書店(1999),P392〜404
伊勢田徹:ガラスの加工;機械加工,ガラス工学ハンドブック(山根正之ほか編),朝倉書店(1999),P392〜404
本発明は、誘電体多層膜フィルタの製造工程において、上述のような、ガラス基板の研削及び研磨加工工程を迅速化し、高品質で低コストな、誘電体多層膜フィルタの製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決し目標を達成するために、本発明者らは、誘電体多層膜フィルタの製造方法において、煩雑な加工工程に着目し、フィルタの低損失化が図れ、かつ、歩留まりを低下させることのない製造方法を考え出した。
すなわち、請求項1記載の発明に係わる誘電体多層膜フィルタの製造方法では、誘電体多層膜を形成するガラス基板の裏面側に反射低減膜、金属または金属酸化物膜がこの順に形成された基板と、該基板を固定する支持体とが真球状の粒子を含んだ接着剤で接着、固定する第1の工程と、前記誘電体多層膜を形成する基板の周辺部を第1の工程で使用した接着剤もしくは熱溶融性接着剤で埋め込んだ後、研削及び研磨加工を行う第2の工程と、前記基板上に誘電体多層膜を形成した後、カッティング、チップ化することを特徴としている。
次に、請求項2に記載の発明に係わる誘電体多層膜フィルタの製造方法では、請求項1に記載の誘電体多層膜フィルタの製造方法の第1の工程において、前記真球状の粒子の径が50μm以上、500μm以下であること特徴としている。
さらに、請求項3に記載の発明に係わる誘電体多層膜フィルタの製造方法では、請求項1に記載の誘電体多層膜フィルタの製造方法の第1の工程において、前記接着剤が樹脂性であること特徴としている。
また、請求項4に記載の発明に係わる誘電体多層膜フィルタの製造方法では、請求項1に記載の誘電体多層膜フィルタの製造方法の第2の工程において、前記接着剤のせん断接着強度が10N/mm2(102kg/cm2)以上であることを特徴としている。
以上説明したように本発明によれば、ガラス基板を用いた誘電体多層膜フィルタの製造において、基板をあらかじめ研削及び研磨加工するので、従来の技術のような煩わしさを解消すると共に、高性能フィルタを製造する基板の厚みの制約を回避することができ、また、ポリイミド樹脂性基板を使わないので誘電体多層膜フィルタの低損失化を図ることができる。
本発明の誘電体多層膜フィルタの製造方法においては、誘電体多層膜を形成するガラス基板の第一の面に反射低減膜を形成した上でその面を、支持体に接着剤で固定し、基板の周辺部を接着剤もしくは熱溶融性接着剤で埋め込み、基板を研削及び研磨により、所定の厚さに加工した後、誘電体多層膜を形成する。そのため、ガラス基板は、従来の方法で必要とされる厚さ(10mm程度)を必要としない。支持体に接着する強度があれば十分であり、多層膜フィルタの構造にもよるが、通常1〜3mmの範囲から選択する。3mmを超えても、必要とされる強度は増加せず、また、不必要な部分は研削及び研磨され、また、厚さが増加すると、コストも増加し、研削及び研磨の時間も増加するため好ましくない。また、1mmより薄くすると、支持体に接着するとき強度が不足することがあり好ましくない。
最終的に必要とされるガラス基板の厚さが1mmの時は、1mm厚さのガラス基板を使用すれば、研削及び研磨を実施する必要は無い。
以下に本発明の好適な実施の形態を、図を用いて詳細に説明する。
図1は、実施形態で製造された誘電体多層膜フィルタの概略正面図である。本発明の実施形態では、図1(a)の1は、誘電体多層膜を形成するガラス基板であり、図1(b)では、その上に反射低減膜2を形成し、更にその上には酸に溶解可能な金属または金属酸化物膜3を積層する。形成する膜は、金属のTi、Al、Ni、Zn、Cr,Fe、Cu、Pb、Co、Sn、金属酸化物のTiO、AlO、NiO、ZnO、CrO、FeO、CuO、PbO、CoO、SnO、あるいはこれらの混合物である。さらに金属酸化物のATO、ITOなども使用できる。これらの膜の厚さは特に限定されないが、10nm以上が好ましく、より好ましくは20nm以上である。続いて図1(c)では、ガラス基板と支持体の間隔の保持および接着、固定をする樹脂性の接着剤4と真球状の粒子5を順次形成する。
図1(d)では、誘電体多層膜を形成するガラス基板1と該基板を接着、固定する支持体6とで接着剤4と真球状の粒子5を挟持して一体化する。このとき使用する真球状の粒子の径は500μmより大きいとカッティング時にすでにカットして個々に分割した誘電体多層膜フィルタにブレが生じることが懸念されるので500μm以下が好適である。また、50μmより小さいと、接着剤内に小気泡をかみ込んだ場合、接着時に気泡による接着剤の無い部分が大きく広がりカッティング時に不利となるので、50μm以上が好適である。
尚、接着、固定時に使用する真球状の粒子にはセラミック製や樹脂製があるが特に限定されない。また、真球状の粒子の数は使用する粒子の粒径にもよるが、50μm〜500μmであれば1mm2当り2〜3個程度でよい。図1(d)の4〃は、接着剤または熱溶融性接着剤であり、誘電体多層膜を形成するガラス基板1の周辺部を埋め込んだ。
図1(e)では、誘電体多層膜膜を形成するガラス基板1を所定の厚さまで研削及び研磨加工した後、接着剤はそのままで熱溶融性の接着剤は除去し、次工程で誘電体多層膜7を形成し、カッティング、チップ化へ進むものである。このとき使用する埋め込み用の熱溶融性の接着剤は、溶融温度が200℃以下程度のものが好適である。
図1(e)では、誘電体多層膜膜を形成するガラス基板1を所定の厚さまで研削及び研磨加工した後、接着剤はそのままで熱溶融性の接着剤は除去し、次工程で誘電体多層膜7を形成し、カッティング、チップ化へ進むものである。このとき使用する埋め込み用の熱溶融性の接着剤は、溶融温度が200℃以下程度のものが好適である。
200℃を超えると昇温―降温工程で波長シフトが生じることがあり好ましくない。また、溶融温度50℃未満では、接着力不足によりガラス基板周辺部にワレ、カケが発生しやすくなる。この熱溶融性の接着剤は研削及び研磨加工時の、せん断接着強度が10N/mm2以上あることが好適である。せん断接着強度10N/mm2未満では、接着力不足により研削及び研磨加工の工程でガラス基板にワレ、カケが発生しやすくなる。
ガラス基板の埋め込みに使用する接着剤は特に限定されないが、シェラック樹脂、エポキシ樹脂などが好適に使用できる。
樹脂層の厚さは、ガラス基板上面まで覆っても良いが、基板上部は研削及び研磨加工により消滅するため、最終厚さより、2mm程度以上まで厚く埋め込めば好適である。
以上のようにして、誘電体多層膜フィルタが製造される。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
猶、以下の実施例において、誘電体多層膜フィルタの波長透過特性はスペクトラムアナライザ(アドバンテスト社製、Q82208)で測定した。
猶、以下の実施例において、誘電体多層膜フィルタの波長透過特性はスペクトラムアナライザ(アドバンテスト社製、Q82208)で測定した。
[実施例1]高性能の誘電体多層膜フィルタを製造するガラス基板(90mmΦ×3mmt)の裏面側にAPS(アドバンスプラズマシステム、ライボルト社製)蒸着装置で反射低減膜を形成し、その上に蒸着装置EX-550(日本真空技術社製)で金属アルミ膜を積層した。その後、該基板と支持体とを接着、固定する接着剤にエポキシ樹脂デュラルコ4538(コトロニクス社製)を塗布し、さらに、基板と支持体のギャップ保持のために100μmの真球状の粒子ミクロパールSP−L100(積水化学社製)を散布した。一方支持体には、平滑な石英ガラス(100mmΦ*3mmt)を用いてガラス基板のアルミ膜面とで真球状の粒子を含んだ接着剤を挟持するように基板を反転させて接着、固定した。尚、ガラス基板周辺部のワレ、カケを防ぐための接着剤には、基板と支持体とを接着、固定する接着剤をそのまま利用した。
次に誘電体多層膜を形成するガラス基板を厚さ0.3mmまで所要時間120分で研削及び研磨加工したが、加工面にガラス基板周辺部のワレ、カケによって発生する擦傷は見られなかった。加工面を洗浄した後、APS蒸着装置で誘電体多層膜を形成した。そして最後の工程で、基板のカッティングを行ない、チップを回収するために4.8Nの塩酸水溶液に一晩浸漬して金属アルミ膜を溶解させた。その後水洗して有機溶剤のエタノールで乾燥させた。得られた透過波長帯良品のフィルタチップ1800個を偏光顕微鏡で目視検査したところ、誘電体多層膜にカケ118個、クラック24個、キズ3個の不良品があったが、良品率91.9%と極めて良好であった。
[比較例1]実施例1の実施の形態で、誘電体多層膜を形成するガラス基板(90mmΦ×8mmt)に変更した以外は同様の方法にて誘電体多層膜フィルタを製造したが、本方法に対して製造コストが4倍と高いものになった。また、研削及び研磨加工に費やした時間も10%程度長くなってしまった。
1 ガラス基板
2 反射低減膜
3 金属または金属酸化物
4、4” 接着剤および熱溶融性接着剤
5 真球状の粒子
6 支持体
7 誘電体多層膜
2 反射低減膜
3 金属または金属酸化物
4、4” 接着剤および熱溶融性接着剤
5 真球状の粒子
6 支持体
7 誘電体多層膜
Claims (5)
- 誘電体多層膜フィルタの製造方法において、誘電体多層膜を形成するガラス基板の第一の面に反射低減膜を形成し、該面を支持体に固定し、第二の面の研削及び研磨加工を行った後、第二の面に誘電体多層膜を形成し、その後、カッティングし、チップ化することを特徴とする誘電体多層膜フィルタの製造方法。
- 誘電体多層膜フィルタの製造方法において、
(1)誘電体多層膜を形成するガラス基板の第一の面に反射低減膜、金属または金属酸化物膜をこの順に形成した基板と、該基板を固定する支持体とを真球状の粒子を含んだ接着剤で接着、固定し、
(2)該基板の周辺部を熱溶融性接着剤で埋め込んだ後、該基板の第二の面の研削及び研磨加工を行い、
(3)該基板の第二の面上に誘電体多層膜を形成した後、カッティング、チップ化することからなる請求項1記載の誘電体多層膜フィルタの製造方法。 - 誘電体多層膜フィルタの製造方法において、ガラス基板を支持体に固定する接着剤が基板と支持体のギャップ保持のための真球状の粒子を含んでおり、真球状の粒子の径が50μm以上、500μm以下であること特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の誘電体多層膜フィルタの製造方法。
- 請求項2に記載の誘電体多層膜フィルタの製造方法において、基板周辺を埋め込む熱溶融性接着剤のせん断接着強度が10N/mm2以上であることを特徴とする誘電体多層膜フィルタの製造方法。
- 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の方法で製造された誘電体多層膜フィルタ。
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---|---|---|---|
JP2004120092A JP2005301111A (ja) | 2004-04-15 | 2004-04-15 | 誘電体多層膜フィルタの製造方法 |
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