JP2004157364A - 誘電体多層膜フィルタの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】多層膜誘電体フィルタの製造方法に於いて、チップ化への切断加工時の歩留まり向上の手段を提供する。
【解決手段】ガラス基板や、ガラスなどの基板上にポリイミド膜をスピンコート法によって作成したものに、誘電体多層膜を形成し、その誘電体多層膜を樹脂層でコーティングした後、切断する方法であり、誘電体多層膜の上に金属、あるいはそれらの酸化物の膜を積層させた後、EVA樹脂などの樹脂層でコーティングし、支持材と貼り合わせた後、切断するものである。チップ化の切断は、誘電体多層膜を形成した基板の裏面側からコーティング樹脂の途中まで行い、切断したものを酸性溶液に浸漬させてチップを分離することにより、歩留まり良く、清浄な多層膜フィルタの製造が可能になる。
【選択図】 なし
【解決手段】ガラス基板や、ガラスなどの基板上にポリイミド膜をスピンコート法によって作成したものに、誘電体多層膜を形成し、その誘電体多層膜を樹脂層でコーティングした後、切断する方法であり、誘電体多層膜の上に金属、あるいはそれらの酸化物の膜を積層させた後、EVA樹脂などの樹脂層でコーティングし、支持材と貼り合わせた後、切断するものである。チップ化の切断は、誘電体多層膜を形成した基板の裏面側からコーティング樹脂の途中まで行い、切断したものを酸性溶液に浸漬させてチップを分離することにより、歩留まり良く、清浄な多層膜フィルタの製造が可能になる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光通信に使用する誘電体多層膜フィルタの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報通信システムの基盤技術として光通信技術が浸透していくにつれて誘電体多層膜フィルタは、光ネットワーク用キーデバイスとして、その重要性が高まっている。
【0003】
この誘電体多層膜フィルタは、光ファイバと光ファイバとの間や光導波路の間に間隙を設け挿入して使用されることが多く、フィルタを挿入した時に生じる過剰損失を低減するために損失の少ない薄いものが要求される。
【0004】
そのため、通常は、平板状の光学ガラス基板の上に、多層膜を蒸着し、その後、裏側から研磨して所望の薄さとし、ついで所定の大きさに切断され製造される。
【0005】
また、基板の研磨作業を省いて、かつ強度を保ち、損失が少なく、薄い誘電体多層膜フィルタを製造するため、ポリイミド薄膜をガラス基板の上にスピンコートで形成し、その上に多層膜フィルタを蒸着し、その後、ガラス基板と分離する方法が提案されている。
【0006】
この場合ポリイミド樹脂膜を使用することが耐熱性、強度の面から適しているが、光学特性、剥離性の面から、フッ素化ポリイミド樹脂がさらに適している。(特許文献1参照)
これらの製造方法において、誘電体多層膜フィルタのチップ化は、ガラスなどの基板上に誘電体多層膜を形成した後にチップへと切断するか、もしくは基板上に成膜したポリイミド樹脂の上に誘電体多層膜を形成しチップへと切断した後に、ポリイミド膜と支持基盤を剥離させる方法が取られている。すなわち、基板をガラスなどの支持材に熱溶融性の接着剤で固定した上でダイサーにセットし、多層膜側から所定サイズに切断していた。
【0007】
しかしながら、この切断工程においては、多層膜の表面に直接、ダイサーの歯があたるため、誘電体多層フィルタにカケ、クラック、キズが発生する事が多く、フィルタの歩留まりが低いという問題があった。また基板に付着した接着剤を効率良く清浄化するのが困難でありさらに歩留まりが低下していた。
【0008】
また、ポリイミド膜上に形成した多層膜フィルタは、ガラス基板上に直接形成したものと同じように、切断工程でカケ、クラック、キズが発生するとともに、ガラス基板とポリイミド膜とが剥離する事が多く、切断時の歩留まりが悪いという問題があった。
【0009】
すなわち、ポリイミド膜とガラス基板の接着を強くすると、後工程でのガラス基板との分離時にポリイミド膜に剥離模様が入り不良化し、また、接着が弱いと切断時にガラス基板とポリイミド膜が剥離し、カケ、クラック、キズが発生し歩留まりが低下した。
【0010】
ポリイミド樹脂の上に、誘電体多層膜フィルタを形成する製造方法として、支持基板上に形成したポリイミド膜を一旦基板から剥離させ、再度、他の基材に接着剤を用いて貼り付け、チップ化するためにポリイミド膜から接着層の途中までチップ形状に応じた切り込みを入れ、その上に誘電体多層膜を形成した後、接着剤を溶剤で溶解する方法が開示されている。(特許文献2参照)
しかしこの方法で作製したポリイミド多層膜フィルタは、ポリイミド膜が薄いために、支持材からの剥離、及び、他の支持材に接着する工程で、作業性に困難さがあった。また、チップ化するための切り込み時に、ポリイミド表面が切り粉で汚れるため、誘電体多層膜を形成前にポリイミド膜表面を十分清浄にする必要が生じていた。また、接着剤除去作業が必要であった。
【0011】
【特許文献1】
特開平4−211203号公報
【特許文献2】
特開2000−180618号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、多層膜フィルタの製造工程においては切断工程に関わる歩留まりが悪いという問題があった。
【0013】
そこで本発明は、上記の課題を解決し、ガラス基板、あるいはガラス基板上に成膜したポリイミド膜上に製造する多層膜フィルタのカケ、クラック、キズの発生を低下させ、歩留まりを向上させると共に、作業性の良い光通信用フィルタの作製方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、誘電体多層膜フィルタの作製時の、チップへの切断工程において、多層膜側を樹脂でコーティングした後に、切断することにより、歩留まりの向上と、作業の効率化をはかる方法を見いだしたものである。
【0015】
すなわち、ガラス基板や、ガラスなどの基板上にポリイミド膜をスピンコート法によって作成したものに、誘電体多層膜を形成し、その誘電体多層膜を樹脂層でコーティングした後、切断する方法であり、誘電体多層膜の上に金属、あるいはそれらの酸化物膜を積層させた後、EVA樹脂などの樹脂層でコーティングし、支持材と貼り合わせた後、切断するものである。
【0016】
チップ化のための切断は、誘電体多層膜を形成した基板の裏面側からコーティング樹脂の途中まで行うため、多層膜フィルタの表面から切断する方法に較べ、カケ、クラック、キズの発生が低下し、切断したものを酸性溶液に浸漬させてチップを分離することにより、接着剤による基板表面の汚れは発生せず、歩留まり良く、清浄な多層膜フィルタの製造が可能になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、誘電体多層膜フィルタ製造時の歩留まり向上について鋭意検討した。
【0018】
図1は本発明の誘電体多層膜フィルタ製造方法の実施の一形態として、ガラス基板の上に製造する多層膜フィルタについて説明する図である。
【0019】
ガラス基板1(図1−a)の上に、誘電体多層膜2(図1−b)を形成する。この時、裏面よりガラス基板を所定の厚さに研磨することもある。続いて金属膜3(図1−c)を設け、次に樹脂4(図1−d)をコーティングした後、支持材5(図1−e)を張り合わせ、切り込みを基板側1から樹脂層4まで入れ(図1−f)、酸性溶液に浸し、3、4、5を除去し、(図1−g)のようにチップ化するものである。
【0020】
誘電体多層膜上に形成する金属膜は、後で酸性溶液に溶解するものであれば良いが、Ti、Al、Ni、Zn、Cr,Fe、Cu、Sn、Pb、Coなどの金属、またはこれらの酸化物、亜酸化物、あるいはこれらの混合物等を使用することができる。これらの膜の厚さは特に限定されないが、50nm以上が好ましく、より好ましくは150nm以上である。50nmを下回ると基材上に形成した誘電体多層膜とEVA膜が部分的に接触する事があり、この場合、後工程での多層膜と樹脂層の分離が困難になる。
【0021】
これらの金属及び金属酸化物膜などを誘電体多層膜上に形成する方法は特に限定されないが、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法などの方法が好適に使用できる。
【0022】
この金属膜は切断後、酸性溶液に浸すことにより溶解され、樹脂層と多層膜フィルタチップが清浄な状態で分離するため、接着剤を使用した場合のように、手数のかかる接着剤除去作業を実施する必要がない。酸性溶液としては0.1〜9.6Nの塩酸溶液が好適に使用できる。0.1N未満の濃度では、時間がかかり、また9.6Nをこえると、多層膜表面を侵すことがある。
【0023】
樹脂層は、スピンコート法を使用することができるが、フィルム状の樹脂膜を使用することがより好適である。使用する樹脂は特に限定されないが、EVA膜の他にPVB膜、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などが好適に使用できる。樹脂層の厚さは、100μm以上、400μm以下が好ましい。100μm未満では、膜としての強度が弱いことがあり、また、樹脂層の途中までしか切断しないため400μmを越える厚さは必要としない。
【0024】
フィルム状の樹脂膜を、金属膜の上にコーティングし、ガラスなどの支持材で挟み込み、熱処理をして硬化させ、金属膜と支持材を接着させたものをダイサーにセットし、基板側から樹脂層まで切断し、その後酸処理すれば、金属膜が溶解し、フィルタチップが樹脂から剥離し個々に分離するため、水などで洗浄することで、清浄なチップを効率的に得ることができる。
【0025】
ここで、切断を樹脂側から実施しても、カケ、クラック、キズの数を減少させることができるが、基板側まで切断するためには、基板を支持材に接着する必要があり、接着剤の汚れにより不良品が増加し、また、汚れの除去作業が煩雑となる。
【0026】
切断は基板の裏面より支持材まで行っても良いが、樹脂層の途中まで行っておけば、酸処理工程で、チップが容易に剥離するため、十分である。
【0027】
ガラス基板にポリイミド膜を成膜し、その上に誘電体多層膜を形成した場合は、誘電体多層膜の上に蒸着した金属膜を、EVAなどの樹脂膜でコーティングし、ガラスなどの支持材に張り付け熱処理をし、硬化、接着させた時点で、ガラス基板を取り除く。ガラス基板とポリイミド膜は接着力が弱いため、ガラス基板を容易に取り除くことができる。基板を取り除いた誘電体多層膜の支持材をダイサーにセットしポリイミド側から樹脂層まで切断したものを酸処理すれば、フィルタチップが、樹脂から剥離し、個々に分離したチップを得ることができる。
【0028】
【実施例】次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0029】
(実施例1)ガラス基板上(100mmΦ×8mmt)に誘電体多層膜をイオンビームスパッタリング法で形成した後、裏面よりガラス基板を厚さ1mmに研削、研磨した。該多層膜上にスパッタリング法でTi:Alが1:1(モル比)からなる金属膜を厚さ150nm積層させた。
【0030】
次に、この基材と対向する支持材のガラスとで膜厚250μmのEVA膜(東ソー社製 メルセンG)を挟持し、90℃で20分加熱し接着した。チップ化は誘電体多層膜を形成した基板面が上になるようにダイサーにセットし、所定サイズの1.4mm角にEVA膜の途中まで切断溝を施した。
【0031】
その後チップを回収するために4.8Nの塩酸水溶液に一晩浸漬し、金属膜を溶解させ、EVA膜と誘電体多層膜を剥離させた。その後水洗して有機溶剤のエタノールで乾燥させた。得られたフィルタチップ1,800個を偏光顕微鏡で目視検査したところ、誘電体多層膜にカケ95個、クラック52個、キズ13個の不良品があったが良品率91.1%と極めて良好であった。
【0032】
(実施例2)ガラス基板(100mmΦ×8mmt)上に誘電体多層膜を形成するポリイミド樹脂膜をスピンコート法によって形成し、乾燥、焼成をさせた後、イオンアシスト蒸着法により誘電体多層膜を形成した。
【0033】
その後、多層膜上にスパッタリング法でTi:Alが1:1(モル比)からなる金属膜を厚さ150nm積層させて、この面と対向する支持材のガラスとで膜厚250μmのEVA膜を挟持し、90℃で20分加熱し接着した。チップ化はポリイミド樹脂膜からガラス基板を除去した後、ポリイミド樹脂膜の裏面が上になるようにダイサーにセットし、所定サイズの0.5×2mm角にEVA膜の途中まで切断溝を施した。
【0034】
チップの回収は実施例1と同様に行った。得られたフィルタチップ3,600個を偏光顕微鏡で目視検査したところ、誘電体多層膜にカケ212個、クラック62個、キズ15個の不良品があったが良品率92.0%と極めて良好であった。
【0035】
(比較例1)所定厚のガラス基板(100mmΦ×8mmt)上にイオンビームスパッタリング法により、誘電体多層膜を形成した後、ガラス基板を裏面より厚さ1mmに研削、研磨し支持材のガラスに熱溶融性の接着剤で固定した。チップ化は誘電体多層膜が上になるようダイサーにセットし、所定サイズの1.4mm角に接着層の途中まで切断溝を施した。その後チップを回収するため支持材のガラス側を加熱し、接着剤を溶かしてチップを回収した。なお、該チップには接着剤が付着していたので、チップ一つ一つに対して溶剤のエタノールで汚れを拭きとった。得られたフィルタチップ1,800個を偏光顕微鏡で目視検査したところ、カケ151個、ワレ149個、キズ78個の不良品があり良品率は79.0%と低いものであった。
【0036】
(比較例2)ガラス基板上(100mmΦ×8mmt)に誘電体多層膜を形成するポリイミド樹脂膜をスピンコート法によって形成し、乾燥、焼成をさせた後、イオンアシスト蒸着法により誘電体多層膜を形成した。
【0037】
ここでポリイミド樹脂膜とガラス基板は接着力が弱いので、誘電体多層膜を形成したポリイミド樹脂膜をガラス基板より剥離させ、再度、支持材に熱溶融性の接着剤で固定した。チップ化は誘電体多層膜が上になるようダイサーにセットし、所定サイズの0.5×2mm角に接着層の途中まで切断溝を施した。その後チップを回収するため支持材のガラス側を加熱し、接着剤を溶かしてチップを回収した。猶、該チップには接着剤が付着していたので、比較例1と同様の処理を行った。得られたフィルタチップ3,600個を偏光顕微鏡で目視検査したところ、カケ362個、ワレ473個、キズ128個の不良品があり良品率73.3%と低いものであった。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、光通信用フィルタの作製にあたっては、誘電体多層膜の切断工程において、チップのカケ、ワレ、キズの発生率を減らすと共に、チップの汚損原因である接着剤の除去作業を必要とせず、効率的に誘電体多層膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の方法により、多層膜フィルタを製造する工程を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 誘電体多層膜
3 金属膜
4 樹脂層
5 支持材
【発明の属する技術分野】
本発明は光通信に使用する誘電体多層膜フィルタの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報通信システムの基盤技術として光通信技術が浸透していくにつれて誘電体多層膜フィルタは、光ネットワーク用キーデバイスとして、その重要性が高まっている。
【0003】
この誘電体多層膜フィルタは、光ファイバと光ファイバとの間や光導波路の間に間隙を設け挿入して使用されることが多く、フィルタを挿入した時に生じる過剰損失を低減するために損失の少ない薄いものが要求される。
【0004】
そのため、通常は、平板状の光学ガラス基板の上に、多層膜を蒸着し、その後、裏側から研磨して所望の薄さとし、ついで所定の大きさに切断され製造される。
【0005】
また、基板の研磨作業を省いて、かつ強度を保ち、損失が少なく、薄い誘電体多層膜フィルタを製造するため、ポリイミド薄膜をガラス基板の上にスピンコートで形成し、その上に多層膜フィルタを蒸着し、その後、ガラス基板と分離する方法が提案されている。
【0006】
この場合ポリイミド樹脂膜を使用することが耐熱性、強度の面から適しているが、光学特性、剥離性の面から、フッ素化ポリイミド樹脂がさらに適している。(特許文献1参照)
これらの製造方法において、誘電体多層膜フィルタのチップ化は、ガラスなどの基板上に誘電体多層膜を形成した後にチップへと切断するか、もしくは基板上に成膜したポリイミド樹脂の上に誘電体多層膜を形成しチップへと切断した後に、ポリイミド膜と支持基盤を剥離させる方法が取られている。すなわち、基板をガラスなどの支持材に熱溶融性の接着剤で固定した上でダイサーにセットし、多層膜側から所定サイズに切断していた。
【0007】
しかしながら、この切断工程においては、多層膜の表面に直接、ダイサーの歯があたるため、誘電体多層フィルタにカケ、クラック、キズが発生する事が多く、フィルタの歩留まりが低いという問題があった。また基板に付着した接着剤を効率良く清浄化するのが困難でありさらに歩留まりが低下していた。
【0008】
また、ポリイミド膜上に形成した多層膜フィルタは、ガラス基板上に直接形成したものと同じように、切断工程でカケ、クラック、キズが発生するとともに、ガラス基板とポリイミド膜とが剥離する事が多く、切断時の歩留まりが悪いという問題があった。
【0009】
すなわち、ポリイミド膜とガラス基板の接着を強くすると、後工程でのガラス基板との分離時にポリイミド膜に剥離模様が入り不良化し、また、接着が弱いと切断時にガラス基板とポリイミド膜が剥離し、カケ、クラック、キズが発生し歩留まりが低下した。
【0010】
ポリイミド樹脂の上に、誘電体多層膜フィルタを形成する製造方法として、支持基板上に形成したポリイミド膜を一旦基板から剥離させ、再度、他の基材に接着剤を用いて貼り付け、チップ化するためにポリイミド膜から接着層の途中までチップ形状に応じた切り込みを入れ、その上に誘電体多層膜を形成した後、接着剤を溶剤で溶解する方法が開示されている。(特許文献2参照)
しかしこの方法で作製したポリイミド多層膜フィルタは、ポリイミド膜が薄いために、支持材からの剥離、及び、他の支持材に接着する工程で、作業性に困難さがあった。また、チップ化するための切り込み時に、ポリイミド表面が切り粉で汚れるため、誘電体多層膜を形成前にポリイミド膜表面を十分清浄にする必要が生じていた。また、接着剤除去作業が必要であった。
【0011】
【特許文献1】
特開平4−211203号公報
【特許文献2】
特開2000−180618号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、多層膜フィルタの製造工程においては切断工程に関わる歩留まりが悪いという問題があった。
【0013】
そこで本発明は、上記の課題を解決し、ガラス基板、あるいはガラス基板上に成膜したポリイミド膜上に製造する多層膜フィルタのカケ、クラック、キズの発生を低下させ、歩留まりを向上させると共に、作業性の良い光通信用フィルタの作製方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、誘電体多層膜フィルタの作製時の、チップへの切断工程において、多層膜側を樹脂でコーティングした後に、切断することにより、歩留まりの向上と、作業の効率化をはかる方法を見いだしたものである。
【0015】
すなわち、ガラス基板や、ガラスなどの基板上にポリイミド膜をスピンコート法によって作成したものに、誘電体多層膜を形成し、その誘電体多層膜を樹脂層でコーティングした後、切断する方法であり、誘電体多層膜の上に金属、あるいはそれらの酸化物膜を積層させた後、EVA樹脂などの樹脂層でコーティングし、支持材と貼り合わせた後、切断するものである。
【0016】
チップ化のための切断は、誘電体多層膜を形成した基板の裏面側からコーティング樹脂の途中まで行うため、多層膜フィルタの表面から切断する方法に較べ、カケ、クラック、キズの発生が低下し、切断したものを酸性溶液に浸漬させてチップを分離することにより、接着剤による基板表面の汚れは発生せず、歩留まり良く、清浄な多層膜フィルタの製造が可能になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、誘電体多層膜フィルタ製造時の歩留まり向上について鋭意検討した。
【0018】
図1は本発明の誘電体多層膜フィルタ製造方法の実施の一形態として、ガラス基板の上に製造する多層膜フィルタについて説明する図である。
【0019】
ガラス基板1(図1−a)の上に、誘電体多層膜2(図1−b)を形成する。この時、裏面よりガラス基板を所定の厚さに研磨することもある。続いて金属膜3(図1−c)を設け、次に樹脂4(図1−d)をコーティングした後、支持材5(図1−e)を張り合わせ、切り込みを基板側1から樹脂層4まで入れ(図1−f)、酸性溶液に浸し、3、4、5を除去し、(図1−g)のようにチップ化するものである。
【0020】
誘電体多層膜上に形成する金属膜は、後で酸性溶液に溶解するものであれば良いが、Ti、Al、Ni、Zn、Cr,Fe、Cu、Sn、Pb、Coなどの金属、またはこれらの酸化物、亜酸化物、あるいはこれらの混合物等を使用することができる。これらの膜の厚さは特に限定されないが、50nm以上が好ましく、より好ましくは150nm以上である。50nmを下回ると基材上に形成した誘電体多層膜とEVA膜が部分的に接触する事があり、この場合、後工程での多層膜と樹脂層の分離が困難になる。
【0021】
これらの金属及び金属酸化物膜などを誘電体多層膜上に形成する方法は特に限定されないが、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法などの方法が好適に使用できる。
【0022】
この金属膜は切断後、酸性溶液に浸すことにより溶解され、樹脂層と多層膜フィルタチップが清浄な状態で分離するため、接着剤を使用した場合のように、手数のかかる接着剤除去作業を実施する必要がない。酸性溶液としては0.1〜9.6Nの塩酸溶液が好適に使用できる。0.1N未満の濃度では、時間がかかり、また9.6Nをこえると、多層膜表面を侵すことがある。
【0023】
樹脂層は、スピンコート法を使用することができるが、フィルム状の樹脂膜を使用することがより好適である。使用する樹脂は特に限定されないが、EVA膜の他にPVB膜、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などが好適に使用できる。樹脂層の厚さは、100μm以上、400μm以下が好ましい。100μm未満では、膜としての強度が弱いことがあり、また、樹脂層の途中までしか切断しないため400μmを越える厚さは必要としない。
【0024】
フィルム状の樹脂膜を、金属膜の上にコーティングし、ガラスなどの支持材で挟み込み、熱処理をして硬化させ、金属膜と支持材を接着させたものをダイサーにセットし、基板側から樹脂層まで切断し、その後酸処理すれば、金属膜が溶解し、フィルタチップが樹脂から剥離し個々に分離するため、水などで洗浄することで、清浄なチップを効率的に得ることができる。
【0025】
ここで、切断を樹脂側から実施しても、カケ、クラック、キズの数を減少させることができるが、基板側まで切断するためには、基板を支持材に接着する必要があり、接着剤の汚れにより不良品が増加し、また、汚れの除去作業が煩雑となる。
【0026】
切断は基板の裏面より支持材まで行っても良いが、樹脂層の途中まで行っておけば、酸処理工程で、チップが容易に剥離するため、十分である。
【0027】
ガラス基板にポリイミド膜を成膜し、その上に誘電体多層膜を形成した場合は、誘電体多層膜の上に蒸着した金属膜を、EVAなどの樹脂膜でコーティングし、ガラスなどの支持材に張り付け熱処理をし、硬化、接着させた時点で、ガラス基板を取り除く。ガラス基板とポリイミド膜は接着力が弱いため、ガラス基板を容易に取り除くことができる。基板を取り除いた誘電体多層膜の支持材をダイサーにセットしポリイミド側から樹脂層まで切断したものを酸処理すれば、フィルタチップが、樹脂から剥離し、個々に分離したチップを得ることができる。
【0028】
【実施例】次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0029】
(実施例1)ガラス基板上(100mmΦ×8mmt)に誘電体多層膜をイオンビームスパッタリング法で形成した後、裏面よりガラス基板を厚さ1mmに研削、研磨した。該多層膜上にスパッタリング法でTi:Alが1:1(モル比)からなる金属膜を厚さ150nm積層させた。
【0030】
次に、この基材と対向する支持材のガラスとで膜厚250μmのEVA膜(東ソー社製 メルセンG)を挟持し、90℃で20分加熱し接着した。チップ化は誘電体多層膜を形成した基板面が上になるようにダイサーにセットし、所定サイズの1.4mm角にEVA膜の途中まで切断溝を施した。
【0031】
その後チップを回収するために4.8Nの塩酸水溶液に一晩浸漬し、金属膜を溶解させ、EVA膜と誘電体多層膜を剥離させた。その後水洗して有機溶剤のエタノールで乾燥させた。得られたフィルタチップ1,800個を偏光顕微鏡で目視検査したところ、誘電体多層膜にカケ95個、クラック52個、キズ13個の不良品があったが良品率91.1%と極めて良好であった。
【0032】
(実施例2)ガラス基板(100mmΦ×8mmt)上に誘電体多層膜を形成するポリイミド樹脂膜をスピンコート法によって形成し、乾燥、焼成をさせた後、イオンアシスト蒸着法により誘電体多層膜を形成した。
【0033】
その後、多層膜上にスパッタリング法でTi:Alが1:1(モル比)からなる金属膜を厚さ150nm積層させて、この面と対向する支持材のガラスとで膜厚250μmのEVA膜を挟持し、90℃で20分加熱し接着した。チップ化はポリイミド樹脂膜からガラス基板を除去した後、ポリイミド樹脂膜の裏面が上になるようにダイサーにセットし、所定サイズの0.5×2mm角にEVA膜の途中まで切断溝を施した。
【0034】
チップの回収は実施例1と同様に行った。得られたフィルタチップ3,600個を偏光顕微鏡で目視検査したところ、誘電体多層膜にカケ212個、クラック62個、キズ15個の不良品があったが良品率92.0%と極めて良好であった。
【0035】
(比較例1)所定厚のガラス基板(100mmΦ×8mmt)上にイオンビームスパッタリング法により、誘電体多層膜を形成した後、ガラス基板を裏面より厚さ1mmに研削、研磨し支持材のガラスに熱溶融性の接着剤で固定した。チップ化は誘電体多層膜が上になるようダイサーにセットし、所定サイズの1.4mm角に接着層の途中まで切断溝を施した。その後チップを回収するため支持材のガラス側を加熱し、接着剤を溶かしてチップを回収した。なお、該チップには接着剤が付着していたので、チップ一つ一つに対して溶剤のエタノールで汚れを拭きとった。得られたフィルタチップ1,800個を偏光顕微鏡で目視検査したところ、カケ151個、ワレ149個、キズ78個の不良品があり良品率は79.0%と低いものであった。
【0036】
(比較例2)ガラス基板上(100mmΦ×8mmt)に誘電体多層膜を形成するポリイミド樹脂膜をスピンコート法によって形成し、乾燥、焼成をさせた後、イオンアシスト蒸着法により誘電体多層膜を形成した。
【0037】
ここでポリイミド樹脂膜とガラス基板は接着力が弱いので、誘電体多層膜を形成したポリイミド樹脂膜をガラス基板より剥離させ、再度、支持材に熱溶融性の接着剤で固定した。チップ化は誘電体多層膜が上になるようダイサーにセットし、所定サイズの0.5×2mm角に接着層の途中まで切断溝を施した。その後チップを回収するため支持材のガラス側を加熱し、接着剤を溶かしてチップを回収した。猶、該チップには接着剤が付着していたので、比較例1と同様の処理を行った。得られたフィルタチップ3,600個を偏光顕微鏡で目視検査したところ、カケ362個、ワレ473個、キズ128個の不良品があり良品率73.3%と低いものであった。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、光通信用フィルタの作製にあたっては、誘電体多層膜の切断工程において、チップのカケ、ワレ、キズの発生率を減らすと共に、チップの汚損原因である接着剤の除去作業を必要とせず、効率的に誘電体多層膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の方法により、多層膜フィルタを製造する工程を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 誘電体多層膜
3 金属膜
4 樹脂層
5 支持材
Claims (8)
- 基板上に誘電体多層膜を形成し、その誘電体多層膜を樹脂層でコーティングした後、基板側より切断することを特徴とする誘電体多層膜フィルタの製造方法。
- 誘電体多層膜の上に、金属あるいはそれらの酸化物を積層させた後、樹脂層でコーティングし、その後、切断することを特徴とする請求項1に記載の誘電体多層膜フィルタの製造方法。
- 誘電体多層膜を樹脂層でコーティングし、支持材と貼り合わせた後、基板側から切断することを特徴とする請求項1または、請求項2に記載の誘電体多層膜フィルタの製造方法。
- 誘電体多層膜を形成する基板が平坦な基板上にポリイミド樹脂の膜をコーティングしたものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の誘電体多層膜フィルタの製造方法。
- 誘電体多層膜をコーティングする樹脂がEVA樹脂であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の誘電体多層膜フィルタの製造方法。
- 誘電体多層膜の切断を、誘電体多層膜を形成した基板の裏面側から樹脂層の途中まで行うことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の誘電体多層膜フィルタの製造方法。
- 樹脂層の途中まで切断した基板を酸性水溶液に浸漬させてチップを分離することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の誘電体多層膜フィルタの製造方法。
- 請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法で製造された誘電体多層膜フィルタ。
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2002
- 2002-11-07 JP JP2002323563A patent/JP2004157364A/ja active Pending
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WO2006073069A1 (ja) * | 2005-01-06 | 2006-07-13 | Central Glass Company, Limited | 光学多層膜フィルタの製造方法及び光学多層膜フィルタ |
JP2006189596A (ja) * | 2005-01-06 | 2006-07-20 | Central Glass Co Ltd | 光学多層膜フィルタの製造方法及び光学多層膜フィルタ |
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