JP4447154B2 - 基板の分離回収方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板と保護材層が接着された保護材積層基板から、基板を効率良く分離回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミック基板等の部材は、使用目的に応じて機械加工を施し、所望の形状の加工品に仕上げてから用いることが多い。例えば、半導体回路部品の基板として使用される窒化アルミニウム焼結体基板は、表面に金属層や抵抗体薄膜といった導電パターンが形成された後、所望の大きさのチップに切断されて使用される。
【0003】
しかして、こうしたセラミック基板は、比較的脆い部材であるため、これに切断、溝形成、孔開け等の加工を行う場合には、該基板加工部のクラック、カケおよびバリ、表面のキズ、さらには上記表面に形成させる導電パターン層の剥離等が発生するのを防ぐために、基板表面に予めガラス板等の保護材層を接着剤を用いて接着し、積層基板としてから加工を行うのが一般的である。そして、上記保護材層積層基板は、加工後に溶剤を作用させて接着剤を溶解もしくは膨潤させることにより目的とする基板から、保護材層を剥離し、次いで両者を洗浄・乾燥してから、目的部材のみピンセットで分離回収していた。
【0004】
しかし、この方法は手作業であるため非効率であり、一度に多数の基板を回収するには大きな労力を必要とした。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記加工後の保護材層積層基板から、効率良く目的基板のみを分離回収することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記保護材層積層基板作製時、代表的な保護材層であるガラス板と目的部材であるセラミック基板の比重を測定してみたところ、両者には比較的大きな比重差があるという知見を得た。そして、この比重差を利用すれば、上記課題が解決できるのではないかと考え、さらに検討を行った結果、保護材層積層基板に溶剤を作用させて剥離した保護材層と基板を、両者の中間の比重を有する液体中に浸漬することにより、容易に分離できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、窒化アルミニウム焼結体基板表面に、ブロモホルムより0.1以上小さい比重を有する保護材層が、接着剤により接着されてなる保護材層積層基板に、溶剤を作用させて剥離した後、基板と保護材層をブロモホルムに浸漬することにより分離させ、ブロモホルム中から基板を選択的に回収することを特徴とする基板の分離回収方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる保護材層積層基板は、窒化アルミニウム焼結体基板(以下、単に基板と称する)に、ブロモホルムより0.1以上小さい比重を有する保護材層(以下、単に保護材層と称する)が積層されたものが適宜選択され、接着剤で接着されて作製される。保護材層を接着した状態で、基板に切断、溝形成、孔開け等の機械加工を行うことにより、該基板加工部のクラック、カケおよびバリ、表面のキズ等の発生を防止し、チップ等の基板加工品を良好に製造することができる。
【0010】
ここで、基板の厚みは、特に限定されないが、加工時の作業性等から、0.1mm〜10.0mm程度であることが好ましい。
【0011】
基板の表面状態は、未加工面、各種ホーニング処理面、ラップ面、鏡面加工面等が特に制限無く、本発明に適用することができる。
【0012】
また、これら基板には、表面にメタライズ層が形成されていても良い。メタライズ層は、保護材層接着および加工時に剥離を生じない程度の密着性を有していれば、特に制限を受けない。導体ペーストを印刷・焼成した厚膜メタライズ、スパッタリング等の物理的・化学的な蒸着法によって形成されたメタライズ、めっき、金属箔接着等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、パターンのメタライズ層が形成されていても構わない。このように基板表面にメタライズ層が形成されている場合は、さらにその表面に保護材層を設けることにより、基板加工時に該メタライズ層の剥離等の損傷が防止でき好ましい。
【0013】
メタライズ層を形成する金属としては、チタニウム、クロム、モリブデン、タングステン、タングステンチタニウム、アルミニウム、ニッケルクロム、タンタル、窒化タンタル、その他の公知の導電性金属の中から、基板との密着性や用途等を考慮して適宜、洗濯して用いればよい。
【0014】
次に、本発明に用いられる保護材層は、板状で、接着時および加工時に変形や破損を生じない部材の中から、ブロモホルムより0.1以上小さい比重を有する部材が選択される。具体的には、ソーダ石灰ガラス(比重2.50付近)やホウケイ酸ガラス(比重2.23付近)等のガラス板、塩化ビニル樹脂(比重1.41付近)やメタクリル樹脂(比重1.19付近)等のプラスチック板等から選択される。
【0015】
なお、保護材層の比重は、比重が0.2以上である。
【0016】
また、板状の保護材層の厚みは、特に限定されないが、接着時の取扱い易さや、接着後の加工時の作業性から、0.01mm〜5mm程度であることが好ましい。
【0017】
接着剤は、加工時に基板と保護材層が剥離せず、加工後溶剤により溶解あるいは膨潤して剥離するものであれば、公知のものが制限無く使用できる。例えば、市販の瞬間接着剤、ワックス等が挙げられる。
【0018】
上記接着剤を用いて、加工しようとする基板に前記保護材層を接着し、一体化する。保護材層は、基板の加工面または表裏両面に接着する。保護材層を接着した保護材層積層基板は、通常、基板に機械加工が施される。具体的には、所望の大きさ・形状のチップとするためダイシングによる切断や溝形成を行う。また、基板の両面を電気的に接続するためのビアホール形成用等の孔開けをドリルにより行う。
【0019】
本発明では、このようにして、機械加工が施される等した保護材層積層基板に対し、以下の工程A〜Dを順次行うことにより、目的とする基板のみを効率良く分離回収することができる。
【0020】
工程A:上記保護材層積層基板と溶剤とを接触させ、該保護材層積層基板中の接着剤を溶解もしくは膨潤させることにより基板と保護材層とを剥離させる工程である。
【0021】
溶剤は瞬間接着剤、ワックス等に作用し、溶解もしくは膨潤させる物であれば特に限定されない。例えば、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチレンクロライド等の有機溶剤、アルカリ鹸化型の水系洗浄剤等が挙げられる。
【0022】
溶剤の接触方法は、特に限定されないが、保護材層積層基板の溶剤中への浸漬、溶剤のスプレー、溶剤蒸気中での保持等が適用される。また、溶剤の加温、攪拌、超音波等を併用しても良い。
【0023】
上記方法で、加工後の保護材層積層基板と溶剤とを一定時間接触させることにより、基板と保護材層を接着していた接着剤が溶解もしくは膨潤し、溶剤中で基板と保護材が剥離する。ただし、該溶剤は、通常、基板および保護材層に比べ比重が小さいため、剥離した基板と保護材が混在した状態で、溶剤中に滞留している。
【0024】
工程B:基板と保護材層を剥離するのに用いた溶剤を除去する工程である。
【0025】
接着剤を溶解もしくは膨潤させ、基板と保護材層を剥離させた後の溶剤は、以降の工程では不要となるため基板および保護材層と分離除去する。分離除去する方法は特に限定されないが、デカンテーション、ろ過、網治具によるすくい取り等が採用でき、特に切断加工で基板を細分化する場合は、有効である。このようにして溶剤を除去された基板と保護材層との混合物には、必要により洗浄や乾燥等を施しても良い。乾燥手法としては、イソプロピルアルコールによる蒸気乾燥や風乾等を適宜に行えばよい。
【0026】
工程C:工程Aで剥離された基板および保護材層をブロモホルムに浸漬し、基板と保護材層とを分離させる工程である。
【0027】
本発明において、分離する保護材層とブロモホルムとの比重差は0.1以上、好ましくは0.3以上離れているのが、分離がより容易であることから好ましい。
【0029】
ブロモホルムは、窒化アルミニウム焼結体及びガラス板と十分な比重差があり両者の分離が容易な上、該窒化アルミニウム焼結体からなる基板に対して極めて安定であり、該基板表面が侵されて変色、シミ等が生じることがほとんど生じない。窒化アルミニウム焼結体基板を半導体回路部品の基板として用いる場合には、その表面の清浄さや化学的安定性はとりわけ要求され僅かの劣化も半導体回路基板の信頼性を低下させる原因になり許されないため、分離用液体として上記ブロモホルムを用いる態様は特に好適である。
【0030】
工程Bで接着剤を溶解もしくは膨潤させた溶液を除去した、基板と保護材層の混合物をブロモホルムに浸漬させ、しばらく放置すると、ブロモホルムより比重の小さい保護材層は、溶液中に浮遊し、ブロモホルムより比重の大きい基板は、沈降する。浸漬中に溶液を軽く攪拌したり、超音波をかけても良い。
【0031】
工程D:基板と保護材層が分離した上記ブロモホルム中から基板を選択的に回収する工程である。
【0032】
工程Cでブロモホルム中に浮遊させた後、保護材層を含む上澄み液と、基板のみが沈降した残留液を個別に回収し、それぞれ溶液を除去することにより、目的の基板を保護材層から分離し、破損もしくは紛失させることなく、速やかに回収することができる。溶液の除去の方法は、特に限定されないが、デカンテーション、ろ過、網治具によるすくい取り等が採用でき、特に切断加工で基板をチップに細分化する場合は、有効である。
【0033】
必要に応じて、上記工程C〜工程Dを数回繰り返しても良い。また、分離回収した基板は、必要に応じて、洗浄および乾燥を行うことにより、基板表面の清浄化を図ることができる。乾燥手法としては、前記したのと同様にイソプロピルアルコールによる蒸気乾燥や風乾等を適宜に行えばよい。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、セラミック基板等の表面に該基板と異なる比重を有する保護材層が接着剤により接着されてなる保護材層積層基板に、溶剤を作用させて剥離した後、基板と保護材層の中間の比重を有する液体に浸漬することにより分離させ、液体中から目的とする基板を効率良く、選択的に回収することができる。
【0035】
特に、窒化アルミニウム焼結体等のセラミック基板から、目的の大きさ、形状の半導体回路部品製造用のチップ等の基板加工品を製造する際に有効に採用できる。かかる態様において、分離用液体として、ブロモホルムを用いた場合には、該窒化アルミニウム焼結体の基板表面に、変色やシミ等も生じることがなく一層好適である。
【0036】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に例示するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例で使用した部材の比重は、窒化アルミニウム焼結体基板;3.30(アルキメデス法により測定)、ガラス基板;2.50(アルキメデス法により測定)である。
【0037】
実施例1
まず、50mm×50mmで厚さ0.3mmの窒化アルミニウム基板の両面に窒化アルミニウム基板と同じサイズのガラス基板を接着し、得られた接合体をダイシングソーを用いて0.8mm×0.8mmのサイズの小片に切断した。この時、接合体小片の取り数は2401個であった。
【0038】
工程Aとして、切断された2401個の接合体小片のすべてを、アセトン50mlの入ったビーカーに入れ、アセトン中に浸漬させ、室温で一昼夜放置して接着剤を溶解することにより、窒化アルミニウムの小片からガラスの小片を剥離させた。
【0039】
工程Bとして、窒化アルミニウムの小片が流出しないように注意しながら、デカンテーションによりビーカー内のアセトンを廃棄した。
【0040】
工程Cとして、剥離した窒化アルミニウムの小片とガラスの小片が入っているビーカーに比重2.82のブロモホルム50mlを注入した。比重差により、窒化アルミニウムの小片はビーカーの底に沈み、ガラスの小片のみがブロモホルム液中に浮遊した。
【0041】
工程Dとして、浮遊しているガラスの小片を含む上澄み液のみを、濾紙をセットしたビーカーに移し、濾過を行った後、再度ブロモホルムを注入し、上記操作による分離を繰返した。
【0042】
濾紙上には、ガラスの小片のみを分離することができ、又、ビーカー内には、2401個の窒化アルミニウムの小片のみが残り、100%の回収率で窒化アルミニウムの小片を回収することができた。なお、上記分離操作に要した時間は5分であった。
【0043】
引続き、窒化アルミニウムの小片が残っているビーカーにアセトンを注入し、1時間浸漬させ洗浄を行った後、イソプロピルアルコール蒸気中での洗浄、乾燥を行い窒化アルミニウムの小片を回収した。回収された窒化アルミニウムの小片の外観を目視により検査したところ、変色、シミ等の外観不良が僅かでも発生した小片は、2個しかなかった。
【0044】
比較例1
実施例1と同様に作製した窒化アルミニウムとガラスの接合体を、2401個の小片に切断し、実施例1の工程Bまで処理した後、工程Cとして、剥離した窒化アルミニウムの小片とガラスの小片が入っているビーカーに、ベンゼンで希釈し比重3.05に調整したヨウ化メチレン50mlを注入した。実施例1と同様に比重差により、窒化アルミニウムの小片はビーカーの底に沈み、ガラスの小片のみがヨウ化メチレン液中に浮遊した。
【0045】
さらに、工程Dとして、浮遊しているガラスの小片を含む上澄み液のみを、濾紙をセットしたビーカーに移し、濾過を行った後、再度ヨウ化メチレンを注入し、上記操作による分離を繰返した。
【0046】
濾紙上には、ガラスの小片のみを分離することができ、又、ビーカー内には、2401個の窒化アルミニウムの小片のみが残り、100%の回収率で窒化アルミニウムの小片を回収することができた。なお、上記分離操作に要した時間は5分であった。
【0047】
引続き、窒化アルミニウムの小片が残っているビーカーにアセトンを注入し、1時間浸漬させ洗浄を行った後、イソプロピルアルコール蒸気中での洗浄、乾燥を行い窒化アルミニウムの小片を回収した。回収された窒化アルミニウムの小片の外観を目視により検査したところ、変色、シミ等の外観不良が僅かでも発生した小片は、12個であった。
【0048】
比較例2
実施例1と同様に作製した窒化アルミニウムとガラスの接合体を、2401個の小片に切断し、実施例1の工程Bまで処理した後、工程Cとして、剥離した窒化アルミニウムの小片とガラスの小片が入っているビーカーに、水で希釈し比重2.68に調整したクレリーチ溶液50mlを注入した。実施例1と同様に比重差により、窒化アルミニウムの小片はビーカーの底に沈み、ガラスの小片のみがクレリーチ溶液中に浮遊した。
【0049】
さらに、工程Dとして、浮遊しているガラスの小片を含む上澄み液のみを、濾紙をセットしたビーカーに移し、濾過を行った後、再度クレリーチ溶液を注入し、上記操作による分離を繰返した。
【0050】
濾紙上には、ガラスの小片のみを分離することができ、又、ビーカー内には、2401個の窒化アルミニウムの小片のみが残り、100%の回収率で窒化アルミニウムの小片を回収することができた。なお、上記分離操作に要した時間は5分であった。
【0051】
引続き、窒化アルミニウムの小片が残っているビーカーに水を注入し、十分に窒化アルミニウムの小片を洗浄した後、水を廃棄した。続いて、アセトンを注入し、1時間浸漬させ洗浄を行った後、イソプロピルアルコール蒸気中での洗浄、乾燥を行い窒化アルミニウムの小片を回収した。回収された窒化アルミニウムの小片の外観を目視により検査したところ、変色、シミ等の外観不良が僅かでも発生した小片は、25個であった。
【0052】
比較例3
実施例1と同様に作製した窒化アルミニウムとガラスの接合体を、2401個の小片に切断し、実施例1の工程Bまで処理した後、窒化アルミニウムの小片とガラスの小片が混在して残ったビーカーにアセトンの新液を注入し、1時間浸漬させ洗浄を行った後、イソプロピルアルコール蒸気中での洗浄、乾燥を行い窒化アルミニウムの小片とガラスの小片が混在物を回収した。
【0053】
最後に、ピンセットを用い、窒化アルミニウムの小片のみを選別し、分離した。上記分離操作に要した時間は1時間であった。なお、ピンセットによる分離の際、操作ミスによる窒化アルミニウムの小片の破損や紛失のため、17個が回収できなかった。また、回収された窒化アルミニウムの小片の外観を検査したところ、変色、シミ等の外観不良が発生した小片は、1871個であった。ガラスの小片と重なったまま乾燥された窒化アルミニウムの小片が多かったためと考えられた。
Claims (3)
- 窒化アルミニウム焼結体基板の表面に、ブロモホルムより0.1以上小さい比重を有する保護材層が、接着剤により接着されてなる保護材積層基板から基板を分離回収する方法であって、下記工程A〜工程Dを順次行うことを特徴とする基板の分離回収方法。
工程A:上記保護材積層基板と溶剤とを接触させ、該保護材積層基板中の接着剤を溶解もしくは膨潤させることにより基板と保護材層とを剥離する工程、
工程B:溶剤を除去する工程、
工程C:工程Aで剥離された基板および保護材層をブロモホルムに浸漬し、基板と保護材とを分離させる工程、
工程D:基板と保護材層が分離した上記ブロモホルム中から基板を選択的に回収する工程。 - ブロモホルムと保護材層との比重差が0.3以上である請求項1記載の基板の分離回収方法。
- 保護材積層基板の状態において、基板に機械加工を施した後、請求項1〜2のいずれかに記載の方法により該機械加工が施された基板を分離回収することを特徴とする基板加工品の製造方法。
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