JP2005287450A - 揚げ物用衣改良剤、それを用いた衣剤、打ち粉及び揚げ物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 セルロース及び乳化剤とからなる揚げ物用衣改良剤。
Description
これらは乳化・混合といった元々乳化剤が基本的に有する機能を期待したものであり、本発明品のような、「食感向上」と「油っぽさ改善」の両立に関する記載は見当たらない。
水不溶性のセルロース類の衣類への利用はいくつか提案されている。例えば、フライ用バッター液に使用してフライ製品の油脂量を減少させる方法(非特許文献1)、セルロースの添加或いは特定の形状を有する微粒化セルロース素材をコーティングすることにより、電子レンジ加熱時に具材の水分や脂質をできるだけ外部に放出せず、かつ蛋白質等を収縮させないで具材内部が蒸し状態となるような衣を提供、或いは肉汁や水分の分離が少なく、保存安定性の良い揚げ物を提供しようとするものなどが知られている(特許文献11、12)。
また、衣にセルロース或いは結晶セルロースを配合することで、油ちょう直後の食感がクリスピーでサクサク感があり、常温、冷蔵、冷凍保存されたフライ済み食品を電子レンジ加熱した際、衣のべとつきがなく、クリスピー感のある揚げ物を提供する方法(特許文献13〜15)、バッター液にセルロースを配合してノンフライ揚げ物用食品を製造する方法なども提案されている。(特許文献16)
このようにセルロースは衣の食感改良材として提案されてはいる。しかし、いずれも効果はみられるものの充分ではなく、また、保存された揚げ物特有の「食感向上」と「油っぽさの改善」の両立に関する記載は見当たらない。
すなわち、本発明はセルロース及び乳化剤からなる揚げ物用衣改良剤である。
本発明の揚げ物用衣改良剤にはセルロースと乳化剤が必須成分であり、衣剤等には両成分のみで配合しても良いが、小麦粉、澱粉、米粉等を混合して混合粉として使用することもできる。
本発明の揚げ物用衣改良剤は、天ぷら粉や通常バッター粉、バッター液と称される衣剤ないしは衣剤液に配合して使用する他に、揚げ物における種物に直接まぶす、いわゆる打ち粉に添加して使用することもできる。
本発明におけるセルロースとはゴボウや豆類などの野菜に含まれる不溶性の食物繊維で、グルコースが多数結合した鎖状高分子化合物である。構造的にはDグルコースがβ−1、4結合で連鎖状に連なったもので、セルロースは人の消化酵素によって分解されないことから腸内消化管の活動を促進したり便通を整えたり、コレステロール吸着等の有害物質の排出に効果があると言われている。
通常食品に用いられるセルロースは、直径数ミクロン〜百数十ミクロン程度で、他に微細化、微粒子化、結晶化されたものが食品に利用されている。食感、分散性から言えば、微細であることが望ましいが、充分に保水力を保っているものであればいずれも使用できる。
本発明において使用する乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが挙げられるが、特に望ましいのはポリグリセリン脂肪酸エステルである。ポリグリセリン脂肪酸エステルはグリセリンの重合物に脂肪酸がエステル結合したものである。さらに、平均グリセリン重合度が2〜5であり、かつ、構成脂肪酸の50%以上、より好ましくは90%以上がステアリン酸である(HLBが8以下の親油性)ポリグリセリン脂肪酸エステルが好適である。重合度とステアリン酸の含有量が上記範囲から外れたポリグリセリン脂肪酸エステルでは、効果はみられるものの食感改善機能がやや不足する傾向がある。この場合、平均グリセリン重合度とは、重合したグリセリン数の平均値を指している。
さらに、本発明の揚げ物用衣改良剤においては、セルロースと乳化剤の配合比率も性能に大きく影響するものであり、セルロースと乳化剤、特にポリグリセリン脂肪酸エステルの重量配合比は20〜5:1で、より好ましくは15〜7:1である。この範囲を外れると、それぞれが単独で使用されるときの効果しか期待できなくなる。
セルロースと乳化剤特にポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物はそのまま、衣改良剤組成物として使用できるが、予め小麦粉、澱粉、米粉等を混合して混合粉として使用することもできる。
本発明の揚げ物用衣改良剤を衣剤に配合する際には、対象となるのは単なる小麦粉だけでなく、各種の成分が配合された天ぷら用粉、バッター用粉でも良く、幅広い使用が可能である。これらのうち、本発明の衣改良剤が最も効果を発揮するものは天ぷら衣であるが、フライ或いは唐揚げバッターにおいても一定の効果が期待できる。
本発明における揚げ物とは、天ぷら、フライ、唐揚げに代表される油ちょう品で、肉類、魚介類、野菜類の具材にバッター液を付着させ油中で油ちょうして作られる。天ぷらの場合は、具材に水で溶いたバッター液を付着させ油ちょうされる。本発明の揚げ物用衣改良剤を天ぷら用に使用する場合、主に穀物粉で構成される天ぷら粉に配合して使用される。天ぷら粉への配合比は1〜10重量%が望ましい。1重量%より少ないと充分な効果が得られず、10重量%を越えると、天ぷらの風味が落ちる上に過度に花咲き状態になり揚げ物の外観が著しく悪化し、好ましい揚げ物が得られない。
本発明の衣改良剤は衣の食感が最も顕著に反映される天ぷらにおいて、その効果を遺憾なく発揮し得るが、フライ品に使用する際にも同様な効果を期待することができる。
フライは一般に具材に打ち粉、バッター液、さらにパン粉を順に付着させてから油ちょうするが、天ぷらと同様、打ち粉として、またはバッター粉へ配合して本発明の衣改良剤を使用することができる。
打ち粉の付着量は、天ぷらと同様、具材の形状、表面積によって変化するが、通常の打ち粉作業と同じで効果が得られる。
さらに唐揚げに使用する場合は、唐揚げ粉に配合しても良く、或いは打ち粉として使用することも可能である。
[試験例1]ポリグリセリン脂肪酸エステル1種の配合(えびの天ぷら)
市販の天ぷら粉に下記表1に示す各種粉体を混合し、加水したものを揚げ物用衣組成物とする。解凍した尾付きむきエビ(約20g)に打ち粉(薄力粉)をして揚げ物用衣組成物をつけ、180℃の大豆油で2分30秒油ちょうした。得られた天ぷらの油ちょう直後の食感、及び油ちょう後3時間経過後(室温放置)に600Wの電子レンジで30秒加熱した食感を10名のパネラーに試食させた。これら天ぷらの評価項目は衣のサクミ、油っぽさ、総合評価、外観とした。評価基準は、サクミ、総合評価、外観(油ちょう直後)に関しては市販天ぷら粉をコントロールとし、同等のものを3、非常に好ましいものを5、非常に好ましくないものを1とする5段階評価とし、パネラーの平均値で表した。油っぽさに関しては、市販天ぷら粉をコントロールとし、同等のものを3、非常に油っぽくないものを5、非常に油っぽいものを1とする5段階評価とし、パネラーの平均値で表した。(以下の試験例においても同じ)結果を表1に示す。
表1に示すように市販天ぷら粉に各種ポリグリセリン脂肪酸エステル0.3%を添加して得た各衣組成物でフライした天ぷらの食感を評価した。
脂肪酸組成ステアリン酸が90%のポリグリAを0.3%配合したAは、サクサクとした軽い食感となりBと同様に経時的な食感の劣りが小さかった。
脂肪酸組成ステアリン酸が3%のポリグリCを0.3%配合したCは、ポリグリ無添加のDと大きな違いがなかった。ポリグリ無添加のDはサクミがなく柔らかい食感で、経時的な食感の劣りが大きく歯切れが悪くなった。天ぷらの外観については、A、BはC、Dより衣が大きく付き衣の剣立ちが非常に良かった。
(えびの天ぷら)
表2のように、E〜Gは粒子の異なる粉末セルロースを市販天ぷら粉に3%添加し、Hはイヌリンを3%、Iはカードランを0.5%添加した揚げ物衣組成物で試験例1と同様に作成した天ぷらを評価した。粉末セルロースの粒子径の大きい方がやや油っぽくはなるがサクミが強くなる傾向がある。が、粒子径による違いは小さかった。いずれもH〜Jよりサクミが強くなり油っぽさも抑える効果があった。しかし、試験例1で示したA、Bほどのサクサク感は感じられなかった。また、外観についてもA、Bほどの剣立ちではなかったがH〜Jより好ましかった。
試験例1、2で示したように、粉末セルロースとポリグリのどちらかを1種添加するとサクミは増し経時的な食感の劣りも低減される。しかし、それぞれの欠点があり、粉末セルロース1種では油っぽさは抑えられるが、ポリグリ(脂肪酸組成ステアリン酸が50%、又は90%)と比較するとサクミ強化力が足りない。ポリグリ1種ではサクミが非常に強くなるが油っぽさも感じる。表3に示すようにポリグリと粉末セルロースの2種を組み合わせて添加し油ちょうしたところ、それぞれの良さを持ち、且つそれぞれの欠点をカバーする効果があった。また、食感だけでなく、外観についても1種添加より2種添加の方が剣立ちが良く大きな衣となった。2種の適正な配合比率については、粉末セルロース:ポリグリ=20〜5:1となる。実施例3は配合比が4:1、実施例4は24:1であるが、いずれも実施例1、2と比較すると、それぞれが単独で使用されるときの効果が強く現れるようであった。
本発明品を用いて鶏の唐揚げを作成した。鶏もも肉20gに下味をつけて表4に示す各種の打ち粉し、175℃の油で油ちょうして唐揚げを製造した。得られた唐揚げの油ちょう直後と油ちょう3時間後の食感の食感を比較した。表4に示すように実施例5が最も好ましい食感となり、経時的な食感の劣りが小さかった。打ち粉に使用した場合にも揚げ物の食感改良が可能であった。
表3で示した配合の実施例1、2、比較例4の衣組成物で得られたえびの天ぷらの衣の水分・油分含量を測定した。水分は減圧乾燥法、油分はソックスレー抽出法で測定した。表5に示すように実施例1、2は比較例4より低水分・高油分となり、油ちょう中に水と油の置換がされたことが示唆された。
表3で示した配合の実施例1、2、比較例4の衣組成物で得られたバッターを一定の型で冷凍したものを油ちょうし、テクスチャーアナライザー(英弘精機(株)製)による物性評価を行った。油ちょう後に23℃・湿度90%のデシケーター内に3時間保存したものと、油ちょう直後のものをテクスチャーアナライザーによって、60度の円錐型プランジャーでサンプルを20%圧縮し、得られたピークの山の数を測定した。このピーク数が多いほどサクサク感が強いことが示唆される。その結果、表5に示すように実施例1、2は比較例4よりピーク数が多くサクミが強いことが分かった。特に油ちょう3時間後の実施例1、2と比較例4の差が大きく、ポリグリと粉末セルロースの2種を添加すると、無添加と比較して油ちょう直後のサクミが強く、時間が経過してもサクミを維持できることが確認できた。
Claims (8)
- セルロース及び乳化剤とからなる揚げ物用衣改良剤。
- セルロースと乳化剤の重量比が20〜5:1である請求項1に記載の揚げ物用衣改良剤。
- 乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステルである請求項1又は2に記載の揚げ物用衣改良剤。
- ポリグリセリン脂肪酸エステルの平均グリセリン重合度が2〜5であり、かつ、構成脂肪酸の50%以上がステアリン酸であることを特徴とする請求項3に記載の揚げ物用衣改良剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の揚げ物用衣改良剤を含むことを特徴とする揚げ物用衣剤。
- 穀紛類100重量部に対して請求項1〜4のいずれかに記載の揚げ物用衣改良剤を1〜10重量部配合してなる揚げ物用衣剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の揚げ物用衣改良剤を配合してなる打ち粉。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の揚げ物用衣改良剤、衣剤、打ち粉を使用してなる揚げ物。
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