JP2005282272A - 合成桁の床版打替工法および床版間の軸力伝達装置 - Google Patents

合成桁の床版打替工法および床版間の軸力伝達装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 合成桁の床版打替工法および床版間の軸力伝達装置において、合成桁打替時にも主桁に過大な応力負荷がかからず、施工を短時間で終えることができ、施工完了時に応力分布を改善することができるようにする。
【解決手段】 旧床版2を撤去した区間Iに、新床版1を配置し、一方の端部を新床版1Aと他方の端部と床版端面2aとの間に軸力伝達装置4を配置する。そしてジャッキ4Aにより軸力を導入し、主桁3の応力分布を改善して、目地コンクリート6を打設し、ジベル孔1bにモルタルを打設して主桁3と新床版1とを接合する。装置本体4Bで軸力を保持したまま、交通開放し、その後、この工程を繰り返す。新床版1と主桁3の接合により応力分布は永久的に保持され、主桁3の耐荷力は向上する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、合成桁の床版打替工法および床版間の軸力伝達装置に関する。
従来、例えば道路橋などに用いられる合成桁において、劣化した旧床版を新床版に打ち替える際、交通遮断期間を最小限にするために、交通量の少ない深夜帯などに交通遮断して、旧床版の一定区間を撤去し、その区間に新床版を配設して逐次床版を打ち替え、その養生後、例えば翌朝に交通開放するといった床版打替施工が行われている。このような施工においては、旧床版が撤去されたときに合成桁の剛性が低下することを防止するため、新床版と旧床版との間の未接合部分に軸力伝達装置を配置して、床版と主桁の一体性が失われないような状態で、交通開放していた。
例えば、特許文献1にそのような道路橋等における合成桁床版の打替工法が記載されている。
この打替工法は、旧床版を一定区間撤去した後、主桁間にコンクリートスラブを配置し、それらの端面間に目地コンクリートを打設して主桁上に接合された新床版を構築し、その養生後に新床版の端面と旧床版の端面との間に、支圧板を介して軸力伝達装置をセットし、それぞれの端面が離間する方向に圧力をかけることにより床版の端面間の軸力伝達を図るものである。
また例えば、特許文献2にそのような合成桁の床版打替工法に用いる軸力伝達装置が記載されている。
この軸力伝達装置は、対向する床版のそれぞれの端面に支圧板を設け、それら支圧板の間に、床版の対向方向に加圧可能な流体圧シリンダと、それを覆って一方の支圧板に設けられた固定筒体と、その外周に螺合する可動筒体を有し、流体圧シリンダでそれぞれの端面を離間させる方向に圧力をかけ、所定間隔を開けた状態で、可動筒体を螺進させて他方の支圧板に当接させ、可動筒体と固定筒体とにより支圧板間の間隔を保持するというものである。
また、特許文献3には、別の軸力伝達装置が記載されている。
この軸力伝達装置は、対向する床版のそれぞれの端面に支圧板を設け、それら支圧板の間にそれぞれの端面を離間させる方向に移動させるターンバックル機構が設けられたものである。
特開昭58−150604号公報(第2−3頁、図1−4) 実開昭59−65011号公報(第5−8頁、図3−4) 実開昭63−56711号公報(第7−9頁、図1)
しかしながら、上記のような従来の合成桁の床版打替工法および床版間の軸力伝達装置には、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術によれば、主桁間に配置したコンクリートスラブに目地コンクリートを打設して新床版を構築するので、その養生期間中は、主桁が非合成桁の状態となっている。そして主桁が上面側に圧縮応力を受ける非合成桁状態の応力分布を保持したまま、目地コンクリートが硬化して、新床版が主桁と一体化される。その後、新床版と旧床版との間に軸力伝達装置をセットし、合成桁の状態を構築するものである。したがって主桁は非合成状態で床版荷重を受けるため、主桁の応力負荷が軽減されず、打替施工後も上面側に圧縮応力が残留するという問題があった。
また、コンクリートスラブを目地コンクリートで接合して新床版を構築した後、軸力導入作業を行わなければならないため、時間がかかり施工効率が上がらないため工期が長引き、施工コストが増大するという問題があった。
また特許文献2に記載の技術によれば、対向する床版の端面にそれぞれ設けられた支圧板に流体圧シリンダで圧力をかけるので、例えば新床版の端面に継手用鉄筋やプレストレス導入用緊張端などの突起物がある場合には支圧板を配置する場所がとれないという問題があった。
また、流体圧シリンダが固定筒体の内部に設けられているので、交通開放時に取り外すことができない。この軸力伝達装置では、交通解放時に活荷重による振動や衝撃を蒙るので、流体圧シリンダを高強度の構成としなければならないという問題がある。また、次区間の打替にあたっては、可動筒体を順次緩めて配置換えをするなどの手間がかかるという問題がある。
また特許文献3に記載の技術によれば、可動筒体の問題の他は、特許文献2と同様の問題があるものである。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その一つの目的は、合成桁打替時にも主桁に過大な応力負荷がかからず、施工を短時間で終えることができ、施工完了時に応力分布を改善することができる合成桁の床版打替工法およびそれに好適に用いることができる床版間の軸力伝達装置を提供することにある。
また、本発明のもう一つの目的は、新床版の端面に突起物が設けられた場合でも容易に配置することができ、加圧手段の信頼性を向上でき、しかも迅速な施工が可能となる床版間の軸力伝達装置を提供することにある。
上記の課題の少なくとも一つを解決するために、請求項1に記載の発明では、主桁上に床版を固定した合成桁の旧床版を橋軸方向に順次打ち替える床版打替工法であって、主桁上の旧床版の一定区間を撤去し、該一定区間内に、打替の終点側の旧床版の端面から所定距離だけ離して新床版を配置し、該新床版と該新床版に隣接する打替の起点側の床版との間に、橋軸方向の応力を伝達するための軸力伝達部材を設置し、その後、前記新床版の終点側端面と該終点側端面と対向する前記旧床版の端面との間に、それぞれの端面が離間する方向に加圧力を加える軸力伝達装置を配置し、該軸力伝達装置により、前記主桁の上面側に引張応力を発生せしめる加圧力を前記それぞれの端面にかけて、前記加圧力を保持した状態で、前記新床版を、該新床版に隣接する打替の基点側の床版および前記主桁に固定する。
この発明によれば、軸力伝達部材と軸力伝達装置を設置、配置した状態で、軸力伝達装置により主桁の上面側に引張応力を発生せしめる加圧力を新床版に隣接するそれぞれの床版の端面にかけた状態で、新床版を、打替の起点側の床版と主桁とに固定するので、主桁の引張力をプレロードとして永久的に保持させることができる。したがって主桁の残留応力分布を改善した合成桁を構築することができ、主桁の耐荷力を向上できる。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の合成桁の床版打替工法において、前記軸力伝達装置による加圧位置を前記新床版と固定される前記主桁の上面と上下方向に重なる領域に設けた工法とする。
この発明によれば、主桁の上面と上下方向に重なる領域に軸力伝達装置の加圧位置を設けるので、安定した加圧を行うことができるとともに、作業性を向上することができる。
請求項3に記載の発明では、互いに対向する床版の端面の間に配置され、前記互いに対向する床版間に軸力を伝達するための軸力伝達装置であって、前記床版の端面の一方側を加圧する加圧手段が、装置本体に着脱可能に設けられ、該装置本体に、前記加圧手段の反力をとる加圧手段受け部と、前記床版の端面の他方に当接して前記加圧手段の反力を伝達する圧伝達部と、該圧伝達部と連結されることにより前記床版の端面の一方と略平行な隙間が形成される位置で対向方向に支持された支圧面とが設けられ、前記圧伝達部が前記床版の端面の他方の突起物を避けるための切欠きを備える構成とする。
この発明によれば、互いに対向する床版の端面の一方に、加圧手段により圧力をかけ、その反力を装置本体の加圧手段受け部で受け、加圧手段の反力を、圧伝達部を介して床版の端面の他方側に伝達することができる。その際、圧伝達部に床版の端面の他方の突起物を避けるための切欠きが設けられているので、継手用鉄筋やプレストレス導入用緊張端などの突起物がある場合でも装置本体を配置することができる。
一方、床版の端面の一方と略平行な隙間を形成する支圧面が圧伝達部により床版の対向方向に支持されるので、その隙間に、例えばグラウトモルタルなどの充填材を注入するなどして、互いに対向する床版の端面を密着させることができる。その結果、加圧手段を装置本体から外しても、装置本体により、対向する床版間に軸力を伝達することができる。
したがって、請求項1または2に記載の合成桁の床版打替工法に好適に用いることができる装置となる。
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の床版間の軸力伝達装置において、前記切欠きが、前記装置本体の配置時に下側に開口するスリット状に設けられた構成とする。
この発明によれば、切欠きが装置本体の配置時に下側に開口するスリット状なので、切欠きの下側に床版の端面の突起物があっても、突起物に干渉することなく、装置本体を上から下に落とし込んで配置することができる。
請求項5に記載の発明では、請求項3または4に記載の床版間の軸力伝達装置において、前記装置本体が、前記床版を配置する主桁上に載置した状態で加圧可能な形状とされた構成とする。
この発明によれば、装置本体を主桁上に載置してから、加圧手段により加圧を行うことができるから、装置本体を支持するための支持部材などを別途設ける必要がなく、施工を簡素化することができる。
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の床版間の軸力伝達装置において、前記圧伝達部および支圧面が、前記床版の端面の長手方向に沿って前記床版を載置する主桁の幅以上の範囲にわたって設けられ、前記加圧手段の少なくとも一つを前記主桁の上方に配置可能とした構成とする。
この発明によれば、少なくとも一つの加圧手段を主桁の上方において加圧するとともに、その際の反力を主桁幅以上の範囲にわたる圧伝達部により床版の端面の他方に伝達し、少なくともその範囲で床版の端面の一方に対向する支圧面を設けることができる。その結果、主桁の上方で、主桁の軸線に沿って対向する床版を互いに離間する方向に加圧することができ、主桁の幅以上の領域でその対向間隔を固定保持することができる。
請求項7に記載の発明では、請求項3〜6のいずれかに記載の床版間の軸力伝達装置において、前記加圧手段が、前記装置本体が前記床版の端面の間に配置された状態で、上方向からの着脱が可能とされた構成とする。
この発明によれば、装置本体が床版の端面の間に配置されてから、必要に応じて上方向からの着脱が可能となる。その結果、装置本体を床版間に配置して位置決めした後、上方向から加圧手段を取り付けることができ、また、装置本体を床版の端面間に固定した後、上方向から加圧手段を撤去することができるので施工が容易となる。
請求項8に記載の発明では、請求項3〜7のいずれかに記載の床版間の軸力伝達装置において、前記装置本体が、前記互いに対向する床版の端面間で、少なくとも上方向に突出することなく配置可能とされた構成とする。
この発明によれば、装置本体が配置された状態で、少なくとも上方向に突出しないから、装置本体状を覆う例えば覆工板が簡素化され、交通開放する際、床版上の凹凸をきわめて小さくすることができる。特に、加圧手段が着脱可能なので、加圧作業時に上方向に突出する形状の加圧手段を用いても交通開放時の床版の凹凸きわめて少なくすることができる。
本発明の合成桁の床版打替工法によれば、新床版を主桁に接合する前に軸力伝達装置で床版間に軸力を導入し、主桁の応力分布を改善してから新床版と接合するので、合成桁打替時にも主桁に過大な応力負荷がかからず、施工を短時間で終えることができ、施工完了時に応力分布を改善することができ、その結果、交通止めなどの期間を短縮しながらも、信頼性の高い合成桁の打ち替えができるという効果を奏する。
また、本発明の床版間の軸力伝達装置によれば、本発明の合成桁の床版打替工法に好適な軸力伝達装置となるとともに、下面側に切り欠きを備え、上方からの着脱が可能な装置本体上に加圧手段受け部を設けて、加圧手段を着脱可能に設け、圧力を幅広く分散させるように設置することができるので、新床版の端面に突起物が設けられた場合でも容易に配置することができ、加圧手段の信頼性を向上でき、しかも迅速な施工が可能となるという効果を奏する。
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、実施形態が異なる場合でも、同一または相当する部材には同一符号を付し、共通する説明は省略する。
本発明の実施形態に係る合成桁の床版打替工法について説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態に係る合成桁の床版打替工法の概略を説明するため概略平面図である。図1(b)は、図1(a)におけるA−A断面図である。図2(c)、(d)は、それぞれ図1(a)におけるB−B断面図およびC−C断面図である。
本工法により打ち替える旧床版2は、例えば鉄筋コンクリートなどからなり、橋脚間などに架設されたH形鋼などからなる主桁3の主桁上面3b(主桁の上面)に剛に接合されており、道路橋などに利用される合成桁を形成している。
本実施形態の合成桁の床版打替工法は、例えば夜間に施工を行い、昼間は交通開放して、施工を中断するものである。図1には、本工法の施工が開始される時点の様子が示されている。打替は長さLの区間ごとに行われ、図示の左から右に進行する。以下では、この打替方向に基づいて起点側(図1の左側)と終点側(図1の右側)とを区別する。打替方向と橋軸方向とは一致している。
新床版1が固定された長さLの範囲を区間I、その終点側の長さLの範囲の区間IIと称すると、区間Iは施工区間であり、区間IIは旧床版2が残存する次の施工区間である。
また、以下では床版を水平に配置した例で説明する。そこで特に断らない限り、個々の装置や部品の説明においても、その配置時の姿勢に基づいて、上(下)側、上(下)方向などと称する。
まず本実施形態における新床版1、軸力伝達装置4の構成について説明する。
新床版1は、打替方向の床版端面1a、1a間の幅が長さ(L−L)を有するプレキャストコンクリート版からなり、橋軸方向にプレストレスを導入するための緊張材(不図示)が配置されている場合もある。床版端面1aには、図2(c)に示したように、橋軸方向に延ばされたU字状のループ継手用鉄筋1c…(継手用鉄筋)が設けられている。
そして、例えば前前日に施工された新床版1Aの床版端面1aに対して、距離Lをあけて床版端面1aを対向させ、その間に、橋軸方向に長さLを有する軸力伝達部材10…が適宜個数設置されている。軸力伝達部材10は、軸力を伝達できる部材であればどのような部材でもよいが、例えばH形鋼などにより製作することができる。そして、それぞれの床版端面1aと短時間で強度が発現する超早強コンクリートなどからなる目地コンクリート6が打設されて、互いに接合されている。すなわち軸力伝達部材10は、目地コンクリート6に埋設されている。
新床版1の下方には打替方向に沿って、主桁3、3が配置されている。
新床版1と主桁3とは、主桁上面3bに適宜ピッチで設けられたジベル3a…が新床版1のジベル孔1bに貫入され、ジベル孔1b…にモルタルなどの充填材が打設されることにより、主桁3の延設方向に固定されている(図2(d)参照)。その結果、主桁上面3bと新床版1の下面に設けられた床版取付面1dとが一体化され、合成桁が形成されている。
終点側の床版端面1aは、新床版1を配置する際に切断された旧床版2の切断面である床版端面2aと対向している。床版端面1a、2aの間の主桁3、3上にはそれぞれ軸力伝達装置4が配置されている。
軸力伝達装置4は、ジャッキ4A(加圧手段)と装置本体4Bからなり、主桁上面3b上で受台5により高さを調整して配置されている。
軸力伝達装置4について、図3、4を参照して説明する。
図3(a)は、本実施形態の軸力伝達装置4について説明するための平面説明図である。図3(b)、(c)は、図3(a)におけるそれぞれE−E線、D−D線に沿う断面説明図である。図4は、図3(a)におけるF−F断面図、G−G断面図である。
ジャッキ4Aは、床版端面2aを橋軸方向に加圧するためのもので、例えば油圧ジャッキやねじジャッキなどが採用できる。本実施形態では、ジャッキ4Aと床版端面2aとの間には、ジャッキ4Aからの圧力を床版端面2a上の所定範囲に分散させるために、例えば鋼材ブロックなどからなる支圧板8が設けられている。これは、床版端面2aが平坦な平面に仕上げられず、ジャッキ4Aにより安定して加圧することが難しい場合、あるいは、加圧時の応力集中により床版端面2aにひび割れや破損が発生する可能性がある場合に備えるためのものである。したがって、これらの問題が生じない場合には、省略してジャッキ4Aで直に床版端面2aを加圧してもよい。また、支圧板8は必ずしも着脱自在とする必要はなく、床版端面2aとの間に、例えばエポキシ樹脂のコーキング材などの充填材を介して鋼板を固設するような使い捨てのものでもよい。
装置本体4Bは、ジャッキ4Aを固定して加圧時の反力をとり、その反力を床版端面1aに伝達するための構造体である。本実施形態では、形鋼と鋼板を溶接して、外形寸法が、L×W×Hの略直方体状の形成している(図3(a)、(b)参照)。ここで、寸法Lは、ジャッキ4Aを、スパンLの床版端面1a、2aの間に上方から落とし込んで配置することができるように、L<Lとされた短手幅である。また、Wは床版端面1a、2aに対向する方向の長手幅であり、主桁上面3bの橋軸と直角方向の幅よりも広い幅とされている。また、寸法Hは高さ寸法であり、少なくとも新床版1および旧床版2の厚さ以下の寸法とされ、装置本体4Bを床版端面1a、2a間に配置したとき、装置本体4Bが高さ方向に突出しないようにすることができる寸法とされている。
装置本体4Bの概略構成は、支圧面4a、ジャッキ受け部4b(加圧手段受け部)、天板4c、圧伝達面4d…および底板4f…からなる。
支圧面4aは、加圧時に床版端面2aに対して距離(L−L)だけ離れて対向する平面であり、図3(b)に示したように、ジャッキ4Aの配置位置の両側にそれぞれ設けられている。
ジャッキ受け部4bは、ジャッキ4Aを橋軸方向に支持して加圧時の反力をとるための受け面である。そして、支圧面4a、4a間の、支圧面4aから距離Nだけ引っ込んだ位置に設けられている(図3(a)参照)。距離Nは、ジャッキ4Aを収縮させてジャッキ受け部4bに取り付けたとき、ジャッキ4Aが支圧面4aより突出しない寸法とされている。したがって、軸力伝達装置4は、ジャッキ4Aを取り付けた状態であっても、短手幅がLに収まり、上方から落とし込んで床版端面1a、2aの間に配置することが可能となっている。
なお、ジャッキ4Aを装置本体4Bに取り付ける方法は所定強度で取り付けられればどのようなものでもよく、例えばボルト締結などが採用できる。
天板4cは、外形寸法L×Wの鋼板の長手方向の略中央にコ字状の切欠きSが形成された平面視凹字状の板部材である。そして、切欠きS側の端部がそれぞれ支圧面4a、ジャッキ受け部4b、支圧面4aの上側端部に接合されている。切欠きSは、少なくともジャッキ4Aの上方向から出し入れと着脱が可能な大きさとされている。
圧伝達面4d…は、支圧面4aに平行で、距離Lだけ離れた位置に飛び飛びに設けられた板部材であり、それぞれの上側の端部は、天板4cの端部に接合されている。また、支圧面4aと圧伝達面4dとの間には、それぞれ少なくとも一つのリブ4eが設けられている。リブ4e…の上端は天板4cに接合されている。
底板4f…は、圧伝達面4dと支圧面4aとの下端に接合された鋼板でその間に配置されたリブ4eの下端とも接合されている。
また、ジャッキ受け部4bの対向位置にも圧伝達面4dが設けられ、その間に、天板4c、リブ4eおよび底板4fが上記と同様に接合されている。
上記のような構成により装置本体4Bは、それぞれの圧伝達面4dと、それらに対向する支圧面4aまたはジャッキ受け部4bとが、リブ4e、天板4c、底板4fと接合されて橋軸方向の圧縮荷重を受けることができる。そして、それらが支圧面4a、天板4cにより橋軸方向と交差する方向に一体化されることにより、ジャッキ受け部4bが受ける圧縮荷重(ジャッキ4Aからの反力)をそれぞれの圧伝達面4dに分散して伝達することができる構造体をなしている。
そして、図3(a)に示したように、各底板4fの間には、床版端面1aに設けられたループ継手用鉄筋1c…を避けるための隙間であるスリットS…(切欠き)が形成されている。また、図3(c)に示したように、各圧伝達面4dの間には、同じくループ継手用鉄筋1c…を避けるための隙間であるスリットS…(切欠き)が形成されている。
その結果、床版端面1aからループ継手用鉄筋1c…が突出しているにもかかわらず、軸力伝達装置4をループ継手用鉄筋1c…に干渉させることなく、上方から所定位置に落とし込んで床版端面1a、2a間に配置することが可能となっている(図4(b)参照)。
本実施形態に係る合成桁の床版打替工法の各工程について説明する。
本工法は、旧床版撤去工程、新床版設置工程、軸力導入工程および床版固定工程からなる。そして、これらを順次行ってから、施工区間を変えてそれらを反復することにより、逐次床版を打ち替えていくものである。
旧床版撤去工程では、図1に示す区間IIの範囲の旧床版2を切断、破砕などして撤去し、区間IIの端部である図示の2点鎖線の位置に新たな床版端面2aを形成する。こうして、区間Iの終点の床版端面1aと新たな床版端面2aとの間に主桁3、3が露出させられる。
そして、主桁上面3b、3bの適宜位置にジベル3a…を設ける。もし、旧床版2を固定していたジベルが再利用可能であれば、ジベルを残して旧床版2を撤去し、ジベル3a…の設置を省略することができる。
前工程で配置した軸力伝達装置4、4がある場合、それらを取り外す。
以下、順次工程を説明するが、図1を参照して説明するために、便宜的に上記の旧の区間IIが新たに新の区間Iになったとして説明を続ける。すなわち、図1において、前工程の新床版1の終点に別の新床版1が配置された結果、最初の新床版1が図1の新床版1Aとなっているものとして説明していく。
新床版設置工程では、前工程で旧床版2を撤去した区間の主桁上面3b、3b上に、新床版1を上方から載置する。その際、各ジベル3aがジベル孔1b内に挿通されるように載置し、新床版1の下流側の床版端面1aと新床版1Aの上流側の床版端面1aと距離がLとなるように橋軸方向の位置を調整する。
そして、距離Lの隙間に軸力伝達部材10…を設置する。
なお、本工程では、床版取付面1dと主桁上面3bとの間は接合されていないので、区間Iは非合成桁の状態となっており、低剛性の状態となっている。
軸力導入工程では、軸力伝達装置4をクレーンなどで吊り込んで、新床版1と旧床版2との間の主桁上面3b上に上方から配置し、ジャッキ4Aが略主桁3の中心軸上に来るように位置合わせする。
このとき、装置本体4Bの下面側にはスリットS…、S…が設けられているので、ループ継手用鉄筋1c…と干渉することなく配置することができる。すなわち、ループ継手用鉄筋1cの配置間隔がジャッキ4Aの設置に必要な間隔以下であってもジャッキ4Aを配置することができるので、ジャッキ4Aの大きさが自由に選べるという利点がある。また、ジャッキ4Aの配置位置がループ継手用鉄筋1cの位置により左右されないので、ループ継手用鉄筋1cの位置に係らず、ジャッキ4Aを主桁3の軸上の上面などの適宜位置に配置することができるという利点がある。
そして、支圧板8を介して床版端面2aを加圧し、所定の圧力値に保持する。そのため、所定の圧力の軸力が旧床版2に伝達される。
一方、ジャッキ4Aの反力はジャッキ受け部4bに伝達され、装置本体4Bの各部を介して圧伝達面4d…に分散され、軸力伝達装置4が当接する床版端面1aを通して新床版1側に伝達される。この軸力は、反対側の床版端面1aからz軸力伝達部材10…を介して新床版1Aに伝達される。
したがって、軸力伝達装置4により新床版1と旧床版2との間に軸力が伝達されるとともに、ジャッキ4Aにより所定値の軸力が主桁3に導入される。
この時点で、新床版1の下面の主桁3は非合成桁であるが、新床版1A、1および旧床版2の間に軸力が伝達されることにより、剛性が高められる。その際、ジベル孔1bにモルタルを打設し養生期間をおく、といったことがないので、低剛性の状態を短時間に留めることができる。
また、軸力伝達装置4の幅Wは、主桁3の幅に比べて大きいので、比較的高い圧力をかけた場合でも安定して加圧することができる。そのため、交通開放中に衝撃力や振動を受けても床版端面1aのひび割れや損傷など起こらないようにすることができる。
なお、装置本体4Bの上下方向の位置は、適宜高さの受台5を用いることにより、新床版1の上面から突出しない範囲でなるべく上方に配置する。そして、ジャッキ4Aが旧床版2の上面側に当接するようにする。
さらに、支圧面4aと床版端面2aとの間の形成される隙間(L−L)の範囲にグラウトモルタル7を充填して硬化させる。硬化後は、ジャッキ4Aを撤去しても、床版端面1a、2aの両側に対して幅Wを有する軸力伝達部が形成される。ただし、本実施形態では、ジャッキ4Aを撤去するのは、次工程が終了してからとしている。
床版固定工程では、目地コンクリート6を打設し、強度発現するまで養生する。目地コンクリート6としては、超早強コンクリートなどを用いるので、短時間で養生が終了する。
目地コンクリート6内には、それぞれの床版端面1aから突出されたループ継手用鉄筋1cが設けられているので、目地コンクリート6の硬化後は、プレキャストされた新床版1と比べて遜色のない鉄筋コンクリート強度を実現することができる。
目地コンクリート6の打設と同時にジベル3aが挿入されたジベル孔1bのそれぞれにモルタルを打設して硬化させ、新床版1を主桁上面3bに固定する。硬化後、新床版1と主桁3とが一体化し、合成桁として高剛性を有する桁となる。橋軸方向にプレストレスを導入する場合は、目地コンクリート6硬化後、プレストレスを導入し、モルタルを打設して新床版1と主桁3を一体化させる。
その際、後述するように、ジャッキ4Aの加圧力を適宜の値として軸力を導入することにより、主桁3の応力分布を改善することができ、その応力分布を維持したまま固定することができるという利点がある。
以上で、区間Iでの床版打替が終了する。
そこで、交通開放するために、ジャッキ4Aを撤去し、新床版1、旧床版2間の上面側に覆工版を配設するなどの後処理を行う。
この場合、本実施形態では、ジャッキ4Aを上方から着脱可能に設けているので、加圧中に上方に飛び出ていても、交通開放時には撤去すれば、床版上に突出する部材をなくすことができる。したがって、覆工版を設置時に凹凸の少ない簡素なものとすることができるという利点がある。
上記の後処理が済み、例えば翌日に交通開放した後は、覆工版を撤去し、本工法の最初に戻って上記各工程を繰り返し、逐次打替を進める。
本実施形態による軸力導入の作用について、図5を参照して簡単に説明する。
図5(a)は、新床版設置工程後の施工区間の応力分布を説明するための概念図である。図5(b)は、同じく軸力導入工程後の施工区間の応力分布を説明するための概念図である。図5(c)は、同じく床版固定工程後の施工区間の応力分布を説明するための概念図である。
新床版設置工程後は、新床版1が主桁3に載置されている状態である。そのため、新床版1の下の主桁3(以下非合成桁部3Aと称する)は、新床版1の重量wを支えるとともに、両端に曲げモーメントMを受ける梁となっていると考えることができる。そのため、新床版1には応力が発生せず、非合成桁部3Aは、下に凸に曲げられ、応力分布は上面が圧縮で下面が引張となる分布を示す(図5(a)参照)。
軸力導入工程で軸力fを導入すると、図5(b)に示したように、新床版1が圧縮を受け、新床版1Aおよび旧床版2は、床版端面1a、2aが離間する方向に軸力fを受ける。新床版1Aおよび旧床版2は、下面が主桁3と剛に接合されているから、床版端面1a、床版端面2aのそれぞれの軸力fが、非合成桁部の端部に対して引張荷重およびMと逆符号の曲げモーメントとして作用する。その結果、非合成桁部3Aの曲げモーメントが緩和され、軸力fを十分大きくすれば、非合成桁部3Aを上に凸の曲げる荷重状態、すなわち主桁3の上面側が引張応力となる状態とすることができる。そのため、例えば、図示のように応力分布を図5(a)とは逆転させることが可能となる。
その際、軸力伝達装置4の加圧位置をできるだけ旧床版2の上側とすることにより、比較的小さな軸力fで応力分布を変更することができるようになる。
床版固定工程では、軸力fを導入したまま、新床版1と非合成桁部3Aを固定するので、新床版1および非合成桁部3Aの内部応力を保持した状態の合成桁部3Bが形成される。この内部応力は、例えば交通荷重などが載荷されたときに、主桁3での応力分布が改善されるような分布となっている。
したがって、本工法によれば、打替後の合成桁の信頼性を向上することができるという利点がある。
なお、本実施形態では、新床版1として、ループ継手用鉄筋1cを設けたプレキャストコンクリート版を用い、ループ継手用鉄筋1cを避けながら容易に着脱でき、それにより、ジャッキ4Aを主桁3の軸上の位置に置くことができる軸力伝達装置4を用いている。しかしながら、軸力伝達装置4は、スリットS、Sの位置と形状を必要に応じて変えれば、ループ継手用鉄筋1cに限らず床版端面1aから突出する他の部材も避けながら容易に着脱できるものである。
例えば、新床版1として、主桁3に載置後にプレストレスを導入するプレキャストコンクリート版を用いてもよい。この場合、床版端面1aに突出して多数の緊張端が設けられることになるから、床版端面1a上に直にジャッキ4Aを置けない場合が多いが、本実施形態の装置本体4BのスリットS、Sなどを適宜形状変更することにより、ジャッキ4Aを適宜の位置、例えば主桁3の軸上のような位置に置くことができるという利点がある。
なお、上記の説明では、新床版が、プレキャストコンクリート版、プレストレストコンクリート版である例で説明したが、主桁と固定して合成桁を形成できる床版であれば、RC床版、合成床版、鋼床版なども好適に用いることができる。
また、上記の説明では、ジャッキ4Aが軸力伝達装置4の略中央に1台設けられている例で説明したが、複数台設けるようにしてもよい。そうすれば、より広い幅にわたって均等な圧力分布を形成することができるから、より堅固な軸力伝達を行うことができるという利点がある。
また上記の説明では、より効果的な施工ができるように、軸力伝達装置4を用いた例で説明したが、本発明の合成桁の打替工法では、新床版と主桁の固定前に軸力を導入できれば、軸力伝達装置4の構成に限ることなく、新旧床版の間を直接加圧する従来の軸力伝達装置を用いてもよい。
また、上記の説明では、ジャッキ4Aが軸力伝達装置4の略中央に1台設けられている例で説明したが、複数台設けるようにしてもよい。そうすれば、より広い幅にわたって均等な圧力分布を形成することができるから、より堅固な軸力伝達を行うことができるという利点がある。
本発明の実施形態に係る合成桁の床版打替工法の概略を説明するため概略平面図およびそのA−A断面図である。 同じく図1におけるB−B断面図およびC−C断面図である。 本発明の実施形態に係る軸力伝達装置について説明するための平面説明図、およびE−E線、D−D線に沿う断面説明図である。 同じく図3におけるF−F断面図、G−G断面図である。 本実施形態の各工程における施工区間の応力分布を説明するための概念図である。
符号の説明
1、1A 新床版
1a、2a 床版端面(床版の端面)
1c ループ継手用鉄筋
2 旧床版
3 主桁
3b 主桁上面
4 軸力伝達装置
4A ジャッキ4A(加圧手段)
4B 装置本体
4a 支圧面
4b ジャッキ受け部(加圧手段受け部)
4d 圧伝達面(圧伝達部)
4e リブ
6 目地コンクリート
8 支圧板
10 軸力伝達部材
、S スリット(切欠き)
切欠き

Claims (8)

  1. 主桁上に床版を固定した合成桁の旧床版を橋軸方向に順次打ち替える床版打替工法であって、
    主桁上の旧床版の一定区間を撤去し、
    該一定区間内に、打替の終点側の旧床版の端面から所定距離だけ離して新床版を配置し、
    該新床版と該新床版に隣接する打替の起点側の床版との間に、橋軸方向の応力を伝達するための軸力伝達部材を設置し、
    その後、前記新床版の終点側端面と該終点側端面と対向する前記旧床版の端面との間に、それぞれの端面が離間する方向に加圧力を加える軸力伝達装置を配置し、
    該軸力伝達装置により、前記主桁の上面側に引張応力を発生せしめる加圧力を前記それぞれの端面にかけて、
    前記加圧力を保持した状態で、前記新床版を、該新床版に隣接する打替の基点側の床版および前記主桁に固定することを特徴とする床版打替工法。
  2. 前記軸力伝達装置による加圧位置を前記新床版と固定される前記主桁の上面と上下方向に重なる領域に設けたことを特徴とする請求項1に記載の合成桁の床版打替工法。
  3. 互いに対向する床版の端面の間に配置され、前記互いに対向する床版間に軸力を伝達するための軸力伝達装置であって、
    前記床版の端面の一方側を加圧する加圧手段が、装置本体に着脱可能に設けられ、
    該装置本体に、前記加圧手段の反力をとる加圧手段受け部と、前記床版の端面の他方に当接して前記加圧手段の反力を伝達する圧伝達部と、該圧伝達部と連結されることにより前記床版の端面の一方と略平行な隙間が形成される位置で床版の対向方向に支持された支圧面とが設けられ、
    前記圧伝達部が前記床版の端面の他方の突起物を避けるための切欠きを備えることを特徴とする床版間の軸力伝達装置。
  4. 前記切欠きが、前記装置本体の配置時に下側に開口するスリット状に設けられたことを特徴とする請求項3に記載の床版間の軸力伝達装置。
  5. 前記装置本体が、前記床版を配置する主桁上に載置した状態で加圧可能な形状とされたことを特徴とする請求項3または4に記載の床版間の軸力伝達装置。
  6. 前記圧伝達部および支圧面が、前記床版の端面の長手方向に沿って前記床版を載置する主桁の幅以上の範囲にわたって設けられ、前記加圧手段の少なくとも一つを前記主桁の上方に配置可能としたことを特徴とする請求項5に記載の床版間の軸力伝達装置。
  7. 前記加圧手段が、前記装置本体が前記床版の端面の間に配置された状態で、上方向からの着脱が可能とされたことを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の床版間の軸力伝達装置。
  8. 前記装置本体が、前記互いに対向する床版の端面間で、少なくとも上方向に突出することなく配置可能とされたことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の床版間の軸力伝達装置。
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