上記したように、従来技術の踏切は、床板がコンクリート製の重量物であるため、敷設作業を効率よく行えないという問題があった。そのため、従来は、踏切の設置作業に要する工期が長くなったり、多数の作業者を要するという問題があった。一方、旧来使用されていた木製の床板は、鉄筋コンクリート製の床板に比べて軽量であるが、耐久性が低いために頻繁にメンテナンス作業を行わねばならず、保守に多額の費用や手間がかかってしまうという問題を有する。
また、支承部材212は、別々に成形された下片部215aと上片部215bとを組み合わせて使用するものである。上片部215bは、下片部215aから独立した部材である。そのため、床板202の敷設時には、作業者がまず可変部215aを設置した後に床板202を設置し、その後上片部215bをレール頭部207の底面と床板202との間に横から嵌め込むという作業を要する。従って、従来技術において、床板202の敷設作業は、熟練を要する、極めて効率の悪い作業である。
また、支承部材214は、一体成形されたゴム製の部材であるため、床板203の敷設作業は、支承部材212を用いる場合よりも比較的容易である。しかし、支承部材214を用いる場合であっても、係合部206を支承部材214の溝218に嵌め込むために重量物である床板303を傾斜させたり取り回す必要があり、敷設作業が困難である。
上記したように、従来技術において採用されている床板202,203は、鉄筋コンクリート製の重量物であるため、敷設には重機等の大がかりな装置を用いる必要がある。そのため、床板202,203の傾斜させるなどの姿勢変更を行うだけの作業であっても熟練を要し、多くの時間を要する。
また、メンテナンス等のために床板202,203を取り外す場合についても、敷設時と同様に特殊な冶具や重機を要するばかりか、作業に多くの時間と労力を要する。
かかる問題に鑑み、本発明では、床板の施工性に優れ、容易に敷設あるいは撤去可能な踏切の提供を目的とした。
そこで上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、レールに沿って敷設された床板によって道床が覆われた踏切において、レールは、鉄道の車輪と面接する頭部と、道床側に固定される底部と、頭部と底部とを繋ぐ腹部とを有し、レールと床板との間には支承部材が介在しており、当該支承部材には、前記腹部の側面を被覆し、頭部の側面と略面一となる被覆部と、当該被覆部から突出した突出部とが設けられており、床板には、前記突出部と係合する係合部が設けられていることを特徴とする踏切である。
本発明の踏切は、床板とレールとの間に介在している支承部材が、レールの腹部を被覆し、被覆部が前記頭部の側面と略面一になる。そのため、本発明の踏切は、例えば床板をレールに対して上下方向に移動させるだけで敷設あるいは撤去可能である。即ち、本発明の踏切は、従来技術の踏切のように床板を傾斜させレールに対して無理に嵌め込んだり、特別な冶具や工具を使用しなくても床板の敷設・撤去を行える。従って、本発明によれば、床板の敷設あるいは撤去が容易な踏切を提供できる。また、本発明の踏切は敷設あるいは撤去が容易であるため、これらの作業に要する人員および工期を大幅に削減することができる。
本発明の踏切において採用されている支承部材は、被覆部から突出した突出部を有しており、この突出部と係合する係合部が床板に設けられている。そのため、本発明の踏切は、ひとたび敷設されると、突出部と係合部とによって形成される係合関係により、人や車両が床板上を通過しても、床板は浮き上がらない。したがって、本発明によれば、床板の安定性に優れた踏切を提供できる。
また、通常敷設される踏切の多くはレールの延伸方向に複数の床板を並設して構成されるため、隣接する床板との摩擦により摩耗を起こすことが想定される。上記したように、本発明の踏切では、人や車両の通過により床板に荷重が作用しても、床板の浮き上がりが殆ど起こらない。そのため、上記した構成によれば、床板を複数並設して構成される踏切であっても、床板同士の摩擦が生じにくく、これによる摩耗も少ない。従って、上記した構成によれば、床板の摩耗に対するメンテナンスの手間を大幅に削減し、踏切の管理に要するコストを最小限に抑制できる。
また、同様の課題を解決すべく提供される請求項2に記載の発明は、床板によって道床が覆われた踏切において、軌間外の道床に固定され、床板の一端あるいは両端を支持する支持部材を有し、当該支持部材と床板との間には支承部材が介在しており、支承部材には、床板の側面に沿う方向に延伸した被覆部と、当該被覆部から床板側に突出した突出部とが設けられており、床板には、支承部材の突出部と係合する係合部が設けられていることを特徴とする踏切である。
本発明の踏切において、支持部材の床板支持部と床板との間に介在している支承部材は、被覆部が床板の側面に沿う方向に延伸している。そのため、本発明の踏切は、床板を支承部材に対して上下方向に移動させるだけで踏切を敷設あるいは撤去できる。即ち、本発明の踏切は、従来技術のように重機等等を用いて床板を傾斜させたり、特別な冶具を用いて床板をねじ込むなどの特殊な作業を行わなくても敷設できる。従って、本発明によれば、床板を容易に敷設あるいは撤去可能な施工性に優れた踏切を提供できる。
上記したように、本発明の踏切は、床板を容易に敷設あるいは撤去できるため、踏切の敷設・撤去作業に要する人員や工期を大幅に削減することができる。
本発明の踏切において、支承部材は、床板と面接する保持面よりも支持部材から離れる方向に突出した突出部を有している。一方、床板には、支承部材の突出部と係合する係合部が設けられている。そのため、本発明の踏切は、床板を敷設すると床板の係合部と支承部材の突出部とが係合し、床板が支持部材にしっかりと固定される。従って、上記した構成によれば、人や車両の通行等により床板の局所に荷重が集中しても、床板が浮き上がらない安定性に優れた踏切を提供できる。
本発明の踏切は、床板の浮き上がり等が殆ど起こらないため、床板とこれに隣接する部材との摩擦が起こりにくい。そのため、本発明の踏切は、例えば従来の踏切のようにレールの延伸方向に複数の床板を並べて配置しても、床板同士の摩擦が生じにくく、これによる摩耗も少ない。従って、上記した構成によれば、床板の摩耗が少なく、メンテナンスの手間や費用を最小限に抑制可能な踏切を提供できる。
上記請求項1又は2に記載の踏切は、複数の床板を並置して構成され、前記床板が、隣接する床板と対向する接続面を有し、当該接続面から突出した係合部および当該係合部と係合可能な被係合部のいずれか一方あるいは双方が設けられたものであり、隣接する一方の床板の係合部と他方の床板の被係合部とを係合させることにより連結されていることを特徴とするものであってもよい。(請求項3)
本発明の踏切を構成する床板は、隣接する床板と対向する接続面に、係合部や被係合部を設けたものである。本発明の踏切は、床板に設けられた係合部と被係合部とを接続することにより連結されている。そのため係合部あるいは被係合部の位置を調整することにより、隣接する床板同士の位置関係を調整できる。さらに具体的には、例えば係合部および被係合部の位置が床板の厚さ方向において同位置となるように調整すれば、隣接する床板の天面を互いに面一とすることが可能である。即ち、本発明によれば、各床板の係合部と被係合部とを連結するだけで天面が面一となるように敷設することができ、道床を地均し等の作業をさほど厳密に行う必要がない。従って、本発明によれば、特別な高さ調整等を行うことなく隣接する床板の天面同士が面一となるように敷設可能な踏切を提供できる。
請求項4に記載の発明は、床板が、底面側に開口した空洞部を有し、当該空洞部は、レールを枕木に固定する固定装置を収納可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の踏切である。
本発明の踏切では、床板の底面側に開口した空洞部に固定装置が収納され、床板と固定装置との直接的な接触を防止できる。そのため、床板の上方から荷重が作用しても、その荷重は局所に集中しない。よって本発明によれば、床板と固定装置との接触による床板の割れや破損を防止できる。
上記請求項1乃至4に記載の踏切は、床板が、長繊維を一定方向に引き揃えて埋設した合成木材製であることが望ましい。(請求項5)
本発明の踏切用床板は、合成木材製であるため、従来技術の鉄筋コンクリリート製の踏切用床板よりも極めて軽量である。従って、本発明によれば、軽量で軌道への床板の敷設・撤去作業を効率よく行え、これらの作業に要する人員や工期、コスト等を最小限に抑制できる。
ここで、上記した踏切は、雨天時のように床板が濡れていると、踏切を通過する人や車両がスリップを起こす可能性がある。また、床板の側面や底面の摩擦係数が低いと、床板に作用する外力によって床板自身が位置ズレ等を起こしてしまう可能性もある。
かかる知見に基づき、上記した踏切は、床板の天面、底面、側面の少なくともいずれかの一部または全部の摩擦係数が他の部位よりも高い構成とすることも可能である。
かかる構成によれば、踏切を通過する人や車両のスリップを防止できる安全性の高い踏切を提供できる。また同様に、底面や側面の一部または全部を他の部位よりも摩擦係数が高い構成とすれば、床板に大きな外力が作用しても床板の敷設位置のズレ等が起こらない。
上記したように、踏切は複数の床板を並設して構成され、床板の接続面同士が面接した状態で敷設されることが多い。このようにして構成される踏切では、床板上を人や車両が通過することによりよって、並設された床板の接続面同士が摩擦を起こし、摩耗してしまうおそれがある。
そこでかかる知見に基づき、上記した踏切は、複数の床板をレールに沿って並置して構成し、隣接する床板間に摩擦係数が合成木材よりも低い摩耗防止部材を介在させた構成とすることも可能である。
かかる構成によれば、人や車両の通行等により隣接する床板や他部材との摩擦があっても、摩耗が殆ど起こらない踏切を提供できる。
上記した踏切を構成する支承部材は、レールに面接する背面とレールとの間に空間を形成する空間形成部を有するものであってもよい。
かかる構成によれば、支承部材に対して何らかの外力が作用すれば、支承部材が容易に変形できる。そのため、上記した構成によれば、例えば床板の敷設・撤去時に床板によって支承部材の突出部を押圧するなどすれば床板の敷設・撤去の支障となる突出部を一時的に変形させ、スムーズに床板の敷設・撤去作業を行うことができる。
上記した踏切において採用されている支承部材は、突出部の内部に空間部を有するものであってもよい。
かかる構成によれば、例えば床板等を介して突出部に対して外力を作用させれば、床板の敷設作業時あるいは撤去作業時に床板の移動を阻止する突出部を一時的に変形させることが可能であり、床板の敷設・撤去作業をより一層容易に行える。
上記した踏切において、支承部材は、床板の短手方向あるいは長手方向の一部と係合しているものであってもよい。
かかる構成によっても、床板上を通過する人や車両等から床板に対して外力が作用しても、床板が浮き上がらない安定性の高い踏切を提供できる。
また、上記した踏切において、支承部材の一部または全部に支承部材よりも耐摩耗性が高い保護部材が装着されていてもよい。
かかる構成によれば、支承部材が、人や車両が踏切を横断することによる摩擦や、床板やレール等の他部材との摩擦による摩耗することを防止できる。
上記した踏切において、床板は、隣接して配置される床板あるいは他部材と接触する部分の耐摩耗性が他の部位よりも高いことが望ましい。
かかる構成によれば、何らかの理由で床板同士の摩擦や、床板と他部材との摩擦が起こっても、床板の摩耗を最小限に抑制できる。従って、本発明によれば、敷設後長期にわたって床板の摩耗が起こらない踏切を提供できる。
さらに、上記した踏切は、床板が、短手方向あるいは長手方向の略中央部に枕木が位置するように敷設されたものであってもよい。
かかる構成によれば、踏切を通過する人や車両から受けた外力が床板の一部に集中的に作用することを防止できる。従って、本発明によれば、外力が局所に集中することによる踏切用床板の浮き上がりや損傷を防止できる。
本発明によれば、特別な冶具や工具を使用しなくても床板の敷設・撤去を行える施工性に優れた踏切を提供できる。また、本発明の踏切は敷設あるいは撤去が容易であるため、これらの作業に要する人員および工期を大幅に削減することができる。
続いて、本発明の実施形態の踏切について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態の踏切を示す正面図および断面図である。また、図2は、図1に示す踏切において採用されている床板の正面図、断面図、並びに側面図である。図3,4は、図2に示す床板を天面側および底面側から観察した状態を示す斜視図であり、図5はこの床板の分解斜視図である。図6は、図2〜5に示す床板において採用されている芯材を示す斜視図である。図7は、図1に示す踏切において採用されている床板の正面図ならびに断面図であり、図8,9,10は、この床板の斜視図および分解斜視図である。図11は、図1に示す踏切の要部を拡大した断面図である。図12,13は、本実施形態の踏切において採用される支承部材を示す斜視図である。なお、以下の説明において上下方向の位置関係や表裏の関係は、踏切を敷設した際の姿勢を基準として説明する。
図1において1は本実施形態の踏切である。踏切1は、道床を覆うように床板2,3を敷設して形成されるものである。床板2は、道床上に一定間隔で複数配置された枕木5上にレール6,6を平行に敷設して形成される軌間内に固定されたものである。また、床板3は、レール6,6の外側に、レール6,6と、これに対して平行に配置された支承ブロック7,7(支持部材)とにわたって敷設されたものである。床板2,3は、いずれもレール6,6の延伸方向に短手方向が向き、長手方向がレール6,6に対して交差するように敷設される。
床板2,3は、いずれも構成部材の大部分が所定方向に向けて埋設した長繊維で補強した樹脂、すなわち合成木材により形成されたものであり、より好ましくはガラス長繊維を所定方向に引き揃えて埋設した熱硬化性樹脂発砲体(例えば、積水化学工業株式会社製、商品名「エスロンネオランバーFFU」など)により形成されたものである。合成木材は、長年にわたって風雨にさらされる環境下に配置されても腐食などの劣化がおこらないため、床板2,3の構成材料として好適に使用できる。
床板2は、図1〜図5に示すように、平板状の天面板10に対して補強板11,12,13および芯材15を接着剤等を用いて固定したものである。ここで、天面板10等の各部材を接着する接着剤は、特に限定されるものではなく、各部材を構成する合成木材の長繊維や熱硬化性樹脂発泡体などの材質に応じて適宜選定することができる。例えば、天面板10、補強板11,12,13および芯材15がガラス長繊維と硬質ウレタン樹脂発泡体とによって構成されている場合、接着剤としてエポキシ樹脂を好適に用いることができる。
天面板10は、図2に矢印F1で示すように、長手方向に長繊維を引き揃えて埋設した合成木材製の部材である。天面板10は、天面16に砂等の吹き付け加工を施したものである。そのため天面板10は、天面16が裏面17等の他の面や床板2の底面をなす補強板12や補強板13よりも摩擦係数が高い。そのため、踏切1は、雨天時等で天面板10が濡れている場合であっても床板2上を通過する人や車両がスリップ等を起こさず安全に通過できる。
天面板10の裏面17側には、図5に示すように天面板10の長尺方向両端部の角が切り落とされ段状になった角落部18が設けられている。また、裏面17には、角落部18に沿って6つの凹部20が設けられている。凹部20は、補強板11,12を固定するための埋栓21あるいは埋栓22を挿入するためのものである。
天面板10の長尺方向両端部には、補強板11,12が積層され、接着剤および合成木材製の埋栓21,22によって固定されている。補強板11,12は、図5に示すようにそれぞれの長尺方向中途部に切り欠き23,25が設けられている。切り欠き23,25は、側面11a,12a側から側面11b,12b側に切り込まれた矩形状のものであり、これにより補強板11,12は平面視が略「コ」字型になっている。補強板11,12は、いずれも合成木材製の板体であり、図2に矢印F2で示すように長繊維を各補強板11,12の長尺方向に引き揃えて埋設したものである。
補強板11,12は、天面板10の裏面17に積層され一体化される。補強板11,12は、いずれも長尺方向の長さが、天面板10の短手方向の長さと同一である。一方、補強板12は、短尺方向の長さが補強板11よりも短い。補強板11,12は、側面11b,12bを揃えて積層され、天面板10の裏面側17側に段状の空洞部28を形成する。
補強板11,12の短手方向中間部には、長手方向に等間隔に並んだ貫通孔26,27が設けられている。側面11b,12bが揃うように補強板11,12を積層した時、補強板11の長尺方向中央部にある2つの貫通孔26は、補強板12の切り欠き25側に露出し、他の貫通孔26は補強板12の貫通孔27と連通する。補強板11,12は、補強板12の貫通孔27あるいは切り欠き25に露出した貫通孔26に埋栓21,22を挿通することにより一体化され、天面板10の裏面17に固定されている。補強板11,12は、天面板10の長尺方向両端部から側面11a,12a側の端部が突出し、片持ち状となるように固定されている。補強板11,12は、芯材15を裏面側から支持して突端部31(凸部)を形成している。
芯材15は、図6に示すように、合成木材製で中実のブロック体の天面15a側の角を円弧状にえぐり取って形成された係合部30を有する部材である。芯材15は、図15に示すように天面15aおよび側面15dが天面板10の角落部18に面接し、底面15bが天面板10の端部から片持ち状に突出した補強板11に面接している。即ち、芯材15は、補強板11および角落部18によって挟持されており、補強板11および天面板10との面接部分が接着固定されている。そのため、芯材15は、図5等に示すように係合部30が床板2の長尺方向外側に位置し、床板2の天面側に向く姿勢となるように接着固定され、これにより突端部31が形成されている。
一方、天面板10の長尺方向両端部において、補強板11,12の切り欠き23,25に相当する位置には芯材15が固定されておらず、空洞部28が形成されている。空洞部28は、天面板10の短尺方向両端部に固定された芯材15,15、天面板10の段部18および切り欠き23,25によって囲まれた段状の空間であり、床板2の底面に向けて開口している。空洞部28は、天面板10の短尺方向略中央部に位置しており、レール6を枕木5に固定する固定装置8(締結装置)を収納可能な大きさとなっている。
補強板13は、図2に矢印F3で示すように長手方向に長繊維が引き揃えられ埋設された合成木材製の平板である。補強板13は、図2や図4,5等に示すように長尺方向が天面板10の短手方向に向くように固定されている。補強板13は、天面板10の裏面17側であって、天面板10の長尺方向略中央部に接着固定されている。補強板13は、天面板10と長繊維の方向が交差しており、天面板10の長尺方向略中央部を補強している。
軌間外に敷設される床板3は、図7〜10に示すように天面板35の裏面35b側に補強板11,12および補強板36を接着剤等で固定したものである。天面板35は、その天面35aに砂等の吹き付け加工を施したものであり、裏面35b等の他の面や、床板3の底面をなす補強板12や補強板36よりも摩擦係数が大きい。そのため、踏切1は、雨等により天面35aが濡れていても、天面35a上を通過する人がスリップ等を起こさない。
天面板35は、図7に矢印F5で示すように、長繊維を長手方向に引き揃えて埋設した合成木材製の板材である。図7に示すように、天面板35は、短手方向がレール6の延伸方向に向き、長手方向がレール6の延伸方向に対して交差するように配置される。そのため、床板3の敷設時における天面板35の長繊維の方向は、レール6の延伸方向と交差している。
天面板35は、図8等に示すように長手方向の一端側の側面35cおよび天面35aが交差する部位に構成される角を円弧状にえぐり取って形成される係合部37を有する。また、図7や図9,10に示すように天面板35の裏面35bであって側面35c側の端部には、補強板36が接着固定されている。補強板36は、長手方向の長さが天面板35の短手方向の長さと略同一の板体である。補強板36は、図7に矢印F6で示すように、長手方向に長繊維を引き揃えて埋設した合成木材製の部材である。補強板36は、長繊維の方向が天面板35と略直交しており、天面板35の端部を補強している。
天面板35の長尺方向他端側の裏面35bには、図10に示すように矩形状の凹部38と、埋栓21,22を装着するための円形の凹部40とが設けられている。凹部38は、平面視が補強板11の切り欠き23と同一形状であり、天面板35の短尺方向略中央部に設けられている。凹部38,40は、それぞれ補強板11を天面板35の裏面35b側に積層固定した時に補強板11の切り欠き23および貫通孔26と連通する。天面板35の裏面35bには、図9に示すように凹部38と補強板11,12の切り欠き23,25とによって空洞部43が構成されている。天面板35の側面35dは、凹部40側に位置し、断面形状が略半円状の溝部41を有する。溝部41は、天面板35の短尺方向に直線状に延伸しており、天面板35および補強板11,12を積層した状態における厚み方向の略中央部よりもやや上方に位置している。
本実施形態の踏切1は、床板2,3をレール6,6間あるいはレール6と支承ブロック7との間に固定されたものである。床板2,3とレール6あるいは支承ブロック7との間には、支承部材50,60が介在している。
レール6は、図11に示すように図示しない鉄道の車輪が面接する頭部6aと、固定装置8(締結装置)によって枕木5側に固定される底部6bと、頭部6aと底部6bとを繋ぐ腹部6cとにより構成されている。そして、このレール6の側面に装着される支承部材50は、断面形状が略「L」字形でゴム製の部材であり、レール6の側面を被覆する。
さらに詳細に説明すると、支承部材50は、図11,12に示すように頭部6aから腹部6cに繋がる部分に形成された傾斜面6dを被覆する傾斜壁部51と、腹部6cを被覆する鉛直壁部52と、底部6bを被覆する底壁部53とを有しており、これらにより断面視が略「L」字形の保持面54とを有する。また、傾斜壁部51の先端部分には、断面視で鉛直壁部52の表面よりも水平方向に突出した突起部55が設けられている。また、支承部材50の背面56には、傾斜壁部51と鉛直壁部52との境界部分を円弧状に切り欠いた変形補助溝57(空間形成部)が設けられている。
支承部材50は、図11に示すように背面56がレール6の側面に密着するように装着されており、鉛直壁部52の表面がレール6の頭部6aの側面と略面一となっている。また、傾斜壁部51および底壁部53は、レール6の傾斜面6dおよび底部6bの表面に添着している。傾斜壁部51の先端にある突起部55は、レール6の頭部6aの表面から離れる方向に僅かに突出している。また、変形補助溝57は、レール6の頭部6aと胴部6cとの境界部分である括部6eとの間に空間部58を形成している。空間部58は、床板2,3の敷設・撤去時における支承部材50の変形に対する逃げとして機能する。
支承部材60は、図13に示すように支承ブロック7に装着され、床板3の端部を支持するものである。支承ブロック7は、長尺方向に延伸した段部61(床板支持部)を有し、段部61がレール6側を向く姿勢で配置される。支承部材60は、ゴム製で断面形状が略「L」字形の部材であり、段部61に密着する形状を有する。即ち、支承部材60は、段部61の水平面61aに沿う水平壁部60aと、水平面61aに対して垂直な垂直面61bに沿う垂直壁部60bとを有する。垂直壁部60bの先端部分、即ち支承部材60を段部61に装着した際に支承ブロック7の天面7a側となる部分には、床板3の浮上を防止するための浮上防止突起62(突起部)が設けられている。浮上防止突起62は、垂直壁部60bの表面から離れる方向に突出した傾斜面62bを有する三角柱状の突起であり、その下面62aと水平壁部60a、垂直壁部60bとによって床板3の端部を保持する保持部63を形成している。
続いて、本実施形態の踏切1の敷設方法について図面を参照しながら詳細に説明する。図14,15は、踏切1の敷設の第1段階を示す斜視図である。また、図16(a)は、踏切1の敷設の第2段階を示す側面図であり、同(b),(c)は同(a)の要部拡大図である。図17(a)は、踏切1の敷設の第3段階を示す側面図であり、同(b),(c)は同(a)の要部拡大図である。また、図18は、踏切1の別の敷設方法を示す側面図である。
床板2,3の敷設に先立って、図11および図14,15に示すようにレール6の側面および支承ブロック7の段部61に支承部材50,60が装着される。支承部材50がレール6に装着されると、レール6の腹部6cを被覆する鉛直壁部52の表面がレール6の頭部6aの側面と略面一となる。また、支承部材60の浮上防止突起62の天面62cは、支承ブロック7の天面7aと略面一になる。
支承部材50,60の装着が完了すると、枕木5に相当する位置に床板2,3の短尺方向略中央部が来るように位置合わせされる。即ち、天面板10,35の裏面17,35b側に設けられた空洞部28,43にレール6の固定用の固定装置8が納まるように支承部材50,60が位置合わせされる。この時、床板2,3は、共にその長尺方向がレール6あるいは支承ブロック7の延伸方向に対して交差する姿勢とされる。この後、床板2,3は、図16に示すように道床および枕木5に対して水平な姿勢を維持したまま道床の垂直上方から下方に降ろされる。
床板2は、図16(b)に示すように、単にレール6,6の垂直上方から下降させるだけでは床板2の四隅から長尺方向外側に向けて突出した突端部31が支承部材50の突起部55に当たってレール6,6間に嵌り込まない。しかし、支承部材50は、背面56側に変形補助溝57が形成されており、傾斜壁部51と鉛直壁部52との境界部分の肉厚が薄くなっている。また、支承部材50とレール6との間には、変形補助溝57に相当する空間部58が設けられている。そのため、図16(b)に矢印Aで示すように床板2の上方から荷重を作用させたり、へら状の冶具を床板2の突端部31の側面にあてがうなどすると、支承部材50の突起部55が弾性変形して空間部58側に潜る。この状態でさらに矢印Aで示すように床板2を押し込むと、図17(a),(b)に示すように突起部55が芯材15に設けられた係合部30に嵌る。これにより、空間部58側に潜っていた突起部55が弾性力により元の姿勢に戻る。突起部55が係合部30と係合すると、天面板10の天面がレール6の頭部6aと面一となり、床板2の敷設が完了する。
床板3についても、単にレール6,6の垂直上方から下降させるだけでは、レール6に装着された支承部材50の突起部55や支承ブロック7に装着された支承部材60の浮上防止突起62に引っかかり、レール6と支承ブロック7との間に嵌り込まない。
上記したように、レール6に装着されている支承部材50は、変形補助溝57を有し、レール6との間に空間部58を形成して容易に弾性変形できる。そのため、図16(b)に矢印A’で示すように床板3の端部に外力を作用させたり、天面板35の側面35dにへら状の冶具をあてがうなどすると、支承部材50が弾性変形し、支承部材50をスムーズに道床側へ押し込める。床板3の天面板35がレール6の頭部6aと面一となるまで押し込まれると、床板3の側面35dに設けられた溝部41に支承部材50の突起部55が係合する。
一方、支承ブロック7に装着されている支承部材60は、浮上防止突起62が上方からの押圧力を受けて弾性変形可能な部材である。そのため、図16(c)に矢印Bで示すように床板3に上方から荷重を作用させると、床板3の裏面に固定された補強板36や天面板35の側面35cによってレール6の側面に装着された支承部材60の浮上防止突起62が弾性変形する。床板3をさらに下方に押し込むと、床板3が徐々に道床側に嵌っていく。
天面板35の角にある係合部37が突起部55に相当する位置まで床板3が押し込まれると、弾性変形して天面板35の側面35cと支承ブロック7との間で押しつぶされたような状態になっていた浮上防止突起62が元の姿勢に戻り、係合部37と係合する。床板3が、支承部材50,60間に嵌り込むと、図17に示すように天面板35の天面35aとレール6の頭部6aとが面一になり、床板3の敷設が完了する。
床板2,3は上記した手順・方法に限らず、例えば一端側を先に支承部材50に装着しておいて、その後に他端側を支承部材50あるいは支承部材60に装着させることにより敷設することも可能である。さらに具体的に説明すると、図18に示すように、まず床板2を長尺方向一方側の端部を道床側(下方)に傾斜させた姿勢とし、突端部31,31がレール6に装着された支承部材50側に方向付ける。その後、図18に矢印Aで示すように、床板2の一端側に設けられた突端部31,31を支承部材50に挿入した状態とする。これにより、床板2の一端側の係合部30,30は、一方のレール6に装着された支承部材50の突起部55と係合した状態になる。
床板2の一端側の突端部31,31が一方のレール6側に装着されると、これに続いて床板2を図18に矢印Aで示すようにレール6側(以下、既設側と称す)に押圧しつつ、床板2の他端側を矢印Bで示すように道床側に押し込む。これにより、床板2の既設側にある支承部材50の突起部55は、レール6との間に形成された空間部58側に逃げ、床板2が既設側に押し寄せられた状態となり、その分だけ床板2の他端側(以下、未設側と称す)に隙間が生じる。
上記したように床板2の既設側をレール6側に押しつけた状態で床板2の未設側を道床側に下降させると、未設側の突端部31は、未設側の支承部材50の突起部55に僅かに接触するか、突起部55をかすめて支承部材50に嵌り込む。ここで突端部31が突起部55に接触する場合、突起部55は、突端部31によって押圧され、レール6との間に形成された空間部58等に逃げる。
床板2の未設側の端部が支承部材50に嵌り込むと、既設側の支承部材50の弾性力により床板2が未設側に押し返される。これにより、突起部55が突端部31を構成する芯材15の角に設けられた係合部30に完全に係合し、床板2の敷設が完了する。
床板3についても、床板2と同様の方法・手順でレール6と支承ブロック7との間に敷設される。さらに具体的に説明すると、床板3は、図18に示すように天面板35の裏面35bに補強板11,12を積層固定した側(以下、レール側端部と称す)の端部をレール6側に向け、下方に傾斜させた姿勢とされる。床板3は、図18に矢印A’で示すようにレール側端部を下方に向けた状態で支承部材50側に押し込まれ、側面35dの溝部41と支承部材50の突起部55とが係合した状態となる。
床板3の溝部41と支承部材50の突起部55とが係合すると、引き続きレール端部側に押圧力を加えたまま、溝部41と突起部55との係合部を支点として図18に矢印B’で示すように床板2の他端側(以下、ブロック側端部と称す)の端部を下方に押し込む。これにより床板3のブロック側端部から突出した突端部31は、支承ブロック7の段部61に装着された支承部材60の浮上防止突起62に僅かに接触するか、この浮上防止突起62をかすめて支承部材60に嵌り込む。床板3は、レール側端部が装着されている支承部材50の弾性力によりブロック側端部側に押し返され、係合部37が支承部材60の浮上防止突起62と完全に係合し、床板3の敷設が完了する。
上記したように、床板2,3の一端側を先に支承部材50に装着し、その後に他端側を支承部材50や支承部材60に装着する場合は、床板2,3を傾斜させる必要があるため、床板2,3を水平に押し込んで敷設する場合よりも労力を要する。しかし、本実施形態の床板2,3は、大部分が合成木材製であるため、鉄筋コンクリート等で作製された従来技術の床板よりも極めて軽量である。そのため、床板2,3を敷設する場合であっても重機等の大がかりな機器類を用いる必要がない。
さらに、本実施形態において支承部材50の突起部55、並びに、この突起部55と係合する係合部30や溝部41はいずれも断面形状が略円弧状である。そのため、上記したように床板2,3の一端側(端部X)にある係合部30や溝部41と突起部55とを先に係合させてから他端側(端部Y)を固定する場合は、この係合部分を支点として床板2,3をスムーズに回動させることができ、係合部分に無理な力が作用しない。そのため、本実施形態の踏切1は、上記したようにして床板2,3を敷設する場合であっても、床板2,3の端部Yを支承部材50,60に装着する際に先に支承部材50に装着された端部Xが外れたりせずスムーズに敷設できる。
また、逆に床板2,3を撤去する場合は、例えば図17に矢印Aや矢印Bで示すように床板2,3の底面側から天面側に向かう方向に外力を作用させる。これにより支承部材50,60の突起部55や浮上防止突起62が弾性変形するため、床板2,3を容易に撤去することができる。
上記実施形態において支承部材50は、背面56に変形補助溝57を設け、床板2,3の敷設時における突起部55の変形を補助するものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに具体的には、床板2,3は、支承部材50に代わって図19に示すように中空部66(空間部)を設けた支承部材65を採用することも可能である。支承部材65は、中空部66が突起部55の内部にあるため、突起部55は外力の作用により容易に変形することができる。
また、上記実施形態において支承部材60は、浮上防止突起62が中実であったが、これに代わって図20に示すように浮上防止突起62の内部に中空部70を有する支承部材68を採用してもよい。支承部材68は、図20に矢印Aで示すように浮上防止突起62の傾斜面62aに対して上方から外力が作用すると、傾斜面62aが矢印Bで示すように垂直壁部60b側に移動する。しかし、図20に矢印Cで示すように浮上防止突起62の下方から上方に向けて外力が作用しても浮上防止突起62は殆ど変形せず、床板3をしっかりと保持できる。そのため、支承部材65を採用すれば、踏切1を支承部材60を採用した場合よりも小さな外力を作用させるだけで床板3を敷設でき、大きな力が作用しない限り床板3が浮き上がらない構造とすることができる。
踏切1は、図21に示すように上記した支承部材60や支承部材68の浮上防止突起62に代わって、浮上防止段部72(突起部)を設けた支承部材71を用いて床板2,3を支持した構成とすることも可能である。浮上防止段部72は、垂直壁部60bの上端部分を屈曲させた形状であり、水平壁部60aに対して略平行に突出した下面72aと、水平面61に対して一定の傾斜を有する傾斜面72bとを有する。支承部材71は、浮上防止段部72と支承ブロック7の垂直面61bとの間に中空部73を形成する。中空部73は、浮上防止段部72の裏側に存在するため、図21に矢印Aで示すように傾斜面72bに上方から外力が作用すると、浮上防止段部72は矢印Bでしめすように垂直壁部60b側に変形する。そのため支承部材71を採用すれば、支承部材60を採用した場合よりも小さな外力を作用させるだけで床板3を敷設することができる。
一方、支承部材71の浮上防止段部72は、図21に矢印Cで示すように下面72aの下方から突き上げる方向に力が作用しても大きく変形しない。そのため、通常の状態において床板3を浮上させようとする力が作用しても、浮上防止段部72は殆ど変形せず、床板3の浮上を防止できる。
上記実施形態において採用されている支承部材60は、軌間外において床板3の一端を支持するものであり、踏切1の端部を構成するものである。レール6は元来、側面が溝状になっているため、支承部材50は、レール6の側面に装着されると上下方向に多少大きな力が作用してもレール6から逸脱しない。
一方、踏切を通過する人や車両から床板2,3の長尺方向一端側に負荷が集中的に作用すると、この負荷の作用点に相対する側の端部には上方に浮き上がろうとする力が作用する。さらに具体的には、床板3の支承ブロック7側の端部に集中的に作用すると、レール6側の端部には床板2,3を上方に浮き上がらせようとする力が作用する。しかし、レール6は極めて重く、さらに固定装置8(締結装置)によって枕木5にしっかりと固定されているため、人や車両が通過したとしてもレール6やレール6に装着された支承部材50は上方には浮き上がらない。
これとは逆に、床板3のレール6側の端部に荷重が集中すると、床板3の支承ブロック7側の端部には上方に浮き上がろうとする力が作用する。上記した支承部材60等は、いずれも支承ブロック7にしっかりと固定されており、さらに浮上防止突起62や浮上防止段部72等を有しているため、多少の負荷が作用しても床板3は上方に浮き上がらない。しかし、支承ブロック7の段部61は上方に向けて開放されているため、経年劣化等の何らかの理由で支承部材60等が支承ブロック7から外れると、レール6側の端部に作用する外力により床板3が支承部材60等と共に浮上してしまうおそれがある。
そこで、かかる問題に対応すべく、上記した支承ブロック7および支承部材60に代わって、図22に示すような支承部材75および支承ブロック76(支持部材)を採用してもよい。支承部材75は、支承ブロック76に面接する垂直壁部60bの背面側に向かって突出した鈎状部77を有する。また、支承ブロック76は、水平面61aに対して平行に突出した係止面80を有し、この係止面80と水平面61aとの間に装着溝78を形成している。装着溝78は、支承部材75の鈎状部77を装着可能であり、支承ブロック76の長尺方向に延伸している。支承部材75は、装着溝78に鈎状部77が嵌め込まれた状態で固定される。そのため、支承部材75は、床板3の支承ブロック76側の端部に上方に向かう力が作用しても支承ブロック76から外れない。従って、図22に示すような支承部材75および支承ブロック76を採用すれば、より一層確実に床板3を固定することができる。
上記したように支承部材50は、レール6の側面に装着されているため、床板2,3上を通過する人や車両等と直接的に接触しない。そのため、支承部材50は、比較的摩耗が少なく、長期にわたって床板2,3を保持することができる。一方、上記実施形態に示したように、支承ブロック7に装着された支承部材60等は、浮上防止段部72の天面等が露出しているため、人や車両等の通行に伴い摩耗するおそれがある。
そこで、かかる問題に対処すべく、例えば図23に示すように、支承ブロック7と支承部材68等との間に保護部材81を設け、支承部材68等を被覆する構成としてもよい。保護部材81は、合成木材よりも耐摩耗性に優れる金属板等を折り曲げ加工して作製された断面形状が略「コ」字形の部材である。保護部材81は、支承ブロック7の段部61を構成する水平面61aおよび垂直面61bに沿って装着される水平面81a、垂直面81bと、垂直面81bに対して垂直な被覆面81cとを有し、これらによって包囲される係合溝81dを形成している。段部61に保護部材81を装着すると、被覆面81cは、支承ブロック7の天面61cと略面一となる。保護部材81には、垂直壁部60bを背にして支承部材60が嵌め込まれる。これにより、保護部材81の被覆面81cは、支承部材68の天面62cを被覆し、人や車両が踏切1を通過することによる支承部材68の摩耗を防止することができる。
ここで、床板2,3に対して作用する荷重が大きいと想定される場合は、この荷重をしっかりと支持すべく、支承部材50の底面壁部53や支承部材60の水平壁部60aの大きさを大きくすることが望ましい。また、底面壁部53や水平壁部60aの大きさを大きくする場合は、これらの全体が、これらを下方から支持するレール6の脚部6cや支承ブロック7の水平面61aと面接触していることが望ましい。
上記したように、支承ブロック7は軌間外に配置されるものであり、比較的設計変更の自由度が高い。そのため、支承ブロック7に装着される床板3側から支承ブロック7側に向けて大きな荷重が作用すると想定される場合は、支承ブロック7の水平面61aを大きくすると共に、これと床板3の間に介在する支承部材60の水平壁部60aを大きくすることにより床板3に作用する荷重をしっかりと支持できる。
これに対して、レール6は、規定のサイズであり、通常はこれに装着される支承部材50の形状に合わせてレール6を設計変更することはできない。そのため、床板2に対して作用する荷重を支持すべく、ただ単に支承部材50の底面壁部53の大きさを大きくするだけでは、底面壁部53がレール6の脚部6bからはみ出し、床板3に対して作用する荷重をしっかりと支持できないばかりか、底面壁部53のはみ出し部分と脚部6bとの境界部分に外力が集中し、支承部材50が損傷するおそれがある。
そこで、かかる問題に対処すべく、図23(c),(d)に示すように、レール6に装着される支承部材50の底面壁部53をレール6の底部6bからはみ出す大きさにすると共に、鉛直壁部52および底面壁部53に背面56側から補強部材82を装着し、これをレール6と支承部材50との間に介在させる構造としてもよい。かかる構成とすれば、図23(d)のように上方から作用する荷重F7が支承部材50を下方に押す力F8と支承部材50が床板3を押す力F9とに分散される。床板3は、レール6,6間に殆ど隙間がない状態で敷設されているため、床板3を押す力F9は他方のレール6に装着された支承部材50に吸収され、相殺される。さらに、支承部材50は、補強部材82により補強されている。そのため、図23(c),(d)に示すような構成とすれば、床板3に対して上方から大きな荷重F8が作用してもしっかりと支持することができる。なお、補強部材82は、例えば金属のような強度の高い素材で製作されることが望ましい。また、図23(c),(d)に示す補強部材82は、支承部材50の背面側から保持面54側に向けて折り曲げられた係合部82a,82bを有するものであるが、これらがない構成としてもよい。また、補強部材82は、支承部材50に設けられた変形補助溝57のような床板2,3の敷設・撤去時における支承部材50の変形用の溝等を持たないものにも好適に使用できる。
上記実施形態では、床板3と支承ブロック7との間には、床板3の短手方向の全体(全幅)にわたって支承部材60が介在していたが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに具体的には、例えば図24に示すように床板3の短手方向に延伸した係合部37の両端部や一部のみを支承部材60で固定する構造としてもよい。
上記したように、支承部材60を床板3の短手方向の一部のみに介在させる場合、支承部材60が介在していない部分、即ち図24の網掛けを施した部分には、床板3の天板35の端部に設けられた係合部37によって床板3と支承ブロック7との間に溝ができてしまう。そのため、この溝に砂塵等のゴミや雨水等が溜まって美観を損ねたり、歩行者がつまずくなどの問題が発生するおそれがある。そのため、支承部材60を床板3の短手方向の一部のみに装着する場合は、図25に示すように、上記実施形態において天面板35に設けられていた係合部37に代わって、支承部材7が介在する部分にのみ係合部37と同様の形状の係合部83を設けた構成とすることが望ましい。かかる構成によれば、支承ブロックと床板3との間に溝が形成されるのを防止でき、天面35a全体にわたって面一な踏切1を構成できる。
上記実施形態の踏切1は、床板2,3をレール6の延伸方向に複数並置することにより構成されるものであったが、各床板2,3はそれぞれ独立的に敷設されたものであった。そのため、複数の床板2,3が敷設される場合、敷設位置の道床の起伏や不陸の有無等の条件によっては踏切1の天面が不揃いになるおそれがある。かかる問題を解決するためには、道床の地均しや床板2,3の高さ方向の位置調整を厳密に行わねばならず、踏切1の敷設作業の作業効率に大きな影響を与えかねない。
また、床板2,3を複数並べて敷設した時、踏切1上を人や車両が通過すると床板2,3が僅かに振動してこすれあう。そのため、踏切1は、長年にわたって使用し続けると床板2同士あるいは床板3が面接触している部分が摩耗してしまうおそれがある。
そこで、かかる問題に鑑みて、例えば上記した床板2,3に代わって図26に示す床板85や図27に示す床板86を採用することも可能である。以下、床板85,86について床板2,3との相違点を中心として詳細に説明する。
床板85,86は、いずれも大部分が床板2,3と同一の構成を有するが、天面板10,35の裏面側に連結補強板87,88が固定されている点と、天面板10,35を短手方向に貫通した貫通孔90,91を設け、この貫通孔90,91のそれぞれにカラー部材92(摩耗防止部材)を装着した点が大きく異なる。
さらに具体的に説明すると、カラー部材92は、床板85同士の摩擦による摩耗を防止するためのものであり、合成木材よりも耐摩耗性にすぐれたステンレス鋼等を成形加工したものである。カラー部材92は、図28に示すように貫通孔90,91に挿通される筒部92aと、その一端側の開口部の周囲に設けられた円板形のフランジ部92bとを有する。カラー部材92は、筒部92aが挿通孔90,91内に挿通されると、フランジ部92bが天面板10,35の側面10a,10bや側面35e,35fとほぼ面一になる。ここで、側面10a,10bおよび側面35e,35fは、複数の床板85,86を並置した時に互いに対向する面であり、両者の接合面として機能する面である。
上記したように、カラー部材92は、ステンレス鋼を加工したものであるため、錆びにくく、合成木材よりも表面のすべり特性がよい。そのため、天面板10,35の側面10a,10bや側面35e,35fにカラー部材92を装着しておけば、人や車両の通過に伴う振動によって床板85同士あるいは床板86同士がこすれ合っても、これによる床板85,86の摩耗が起こらない。
床板85を構成する天面板10の裏面側に接着固定されている連結補強板87は、図29に示すように長尺状の板体であり、長尺方向に延伸する側面87a側を等間隔に切り欠き、矩形状の凸部95と凹部96とを有している。凸部95および凹部96は、幅が同一である。そのため、仮に図28に示すように2本の連結補強板87,87を側面87a同士が対向し、一方の天面87bが上方を向き、他方の裏面87cが上方を向くように配置した場合、各連結補強板87の凸部95と凹部96とが噛み合う。
連結補強板87は、図26に示すように天面板10の裏面側であって、短手方向の両端部に側面87aが外側を向くように片持ち状に接着固定されている。そのため、凸部95は、一部が天面板10の長手方向に延伸した側面10a,10bから突出している。側面10a,10bは、複数の床板85を並置した時に互いに対向する面であり、両者の接合面として機能する面である。
天面板10の側面10a側に固定されている連結補強板87は、天面87bを床板85の底面側(図26では上側)に向けて固定されている。また、側面10b側に固定されている連結補強板87は、裏面87cを床板85の裏面側(図26では上側)に向けて固定されている。そのため、仮に2枚の床板85,85を天面板10の側面10aと側面10bとが対向するように配置した場合、図28や図31に示すように2本の連結補強板87,87が対向し、一方の床板85の凸部95が他方の床板85の凹部96に嵌合する。
また同様に、床板86の天面板35の裏面に接着固定されている連結補強板88は、上記した連結補強板87と構成が略同一であり同様の機能を発揮するものである。さらに具体的に説明すると、連結補強板88は、図30に示すように、長尺状の板体であり、長尺方向に延伸する板体の側面88aを一部切り欠くことにより凸部97および凹部98を形成したものである。凸部97および凹部98は、共に同一の幅を有する。そのため、図30に示すように2本の連結補強板88,88を側面88a同士を対向させ、一方の天面88bが上方を向き、他方の裏面88cが上方を向くように配置した場合、両者の凸部97と凹部98とが噛み合い一体化される。
図27に示すように、天面板35の裏面35b側には2つの連結補強板88が接着固定されている。そして、一方の連結補強板88は、天面88bが床板85の底面側(図27では上側)に向き、凸部97が天面板35の側面35eから外側に向けて突出するように固定されている。また、他方の連結補強板88は、裏面87cが床板85の裏面側(図27では上側)に向き、凸部97が側面35fから外側に向けて突出するように固定されている。そのため、2枚の床板86,86を並置した場合、図30や図32に示すように2本の連結補強板88,88の凸部97と凹部98とが対向し、嵌合する。
上記したように、床板85の凸部95および凹部96は、いずれも連結補強板87によって形成されるものであるため、いずれも床板85の厚み方向において同一の位置に形成されている。また同様に、床板86の凸部97および凹部98についても、床板86の厚み方向の同位置に形成されている。従って、床板2,3と同様の手順・方法によって2枚の床板85,86を設置した後、一方の床板85,86の凸部95,97を他方の床板85,86の凹部96,98に嵌合させるだけで、双方の天面板10,35同士が面一となる。
上記したようにして軌間の内外に設置された複数の床板85,86には、図31,32に示すように、側面10a,10bあるいは側面35e,35fに装着されたカラー部材92を介して連結軸100が挿通される。連結軸100は、レール6の延伸方向に並設される複数の床板85,86を横断可能な長さを有する軸体であり、その両端部にネジ部101が設けられている。そのため、連結軸100は、複数の床板85,86の貫通孔90,91を貫通する。複数の床板85,86は、側面10a,10bあるいは側面35e,35fから突出した連結軸100のネジ部101にナット102を装着することにより一体化される。
上記したように、床板85,86は、隣接する床板85,86同士が連結軸100によって一体化されているため、床板85同士や床板86同士の摩擦が殆ど起こらない。これに加えて、隣接する床板85,85の接合面となる側面10a,10bや、床板86,86の接合面となる側面35e,35fに合成木材よりも摩擦係数が小さく、耐摩耗性に優れたカラー部材92が装着されている。そのため、万一隣接する床板85,85間、あるいは床板86,86間において摩擦が起こっても、床板85,86を構成する天面板10,35やその他の構成部材の摩耗が起こらない。従って、床板85や床板86によれば、長期にわたって敷設したまま放置しておいても摩耗や損傷が少なく、床板85,86の交換等のメンテナンスに要する費用等を抑制可能な踏切1を提供できる。
上記した実施形態において、床板2,3の天面板10,35は、いずれもその天面16,35aに砂等を吹き付け加工を施して滑り止めを図ったものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに具体的には、例えば床板2,3の底面をなす補強板12や、床板2と支承部材50との接触面となる芯材15の天面15aや側面15c、係合部30等に同様の処理を施し、他の部位よりも摩擦係数の高い面を形成してもよい。また、床板2,3の天面板10等には、砂付け加工に限らず、表面を荒らしたり、表面に溝を設けるなどして、他の部位よりも摩擦係数の高い面を形成してもよい。かかる構成によれば、床板2,3上を通行する人や車両等のスリップを防止して安全性の高い踏切1や、何らかの理由で大きな外力が作用しても床板2,3の位置ズレ等が起こらない安定性の高い踏切1を提供できる。