JP2005281722A - 溶鋼からの脱Mn抑制方法、およびRH脱ガス装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上吹ランス11と、上吹ランス11から噴射される酸素ガスの送酸速度を調節する送酸速度調節装置40と、上吹ランス11の高さを移動させるランス高さ移動装置30と、二次精錬によって排出される排気ガスから溶鋼中の炭素濃度を測定する炭素濃度測定装置20と、炭素濃度測定装置20によって測定された炭素濃度に基づいて、送酸速度調節装置40で調整する送酸速度を所望の送酸速度に制御するとともに、ランス高さ移動装置30で移動させる上吹ランス11の高さを所望の高さに制御する上吹ランス制御手段50とを備え、上吹ランス制御手段50は、前記所望の高さおよび所望の送酸速度を、上吹ランス11からの酸素ガスの噴射によって溶鋼の表面に形成される凹部の面積である火点面積の減少を抑制するように制御する。
【選択図】図1
Description
ここで、溶鋼の表面に酸素ガスを噴射すると、酸素ガスの動圧によって溶鋼の表面に反応界面となる凹部が形成される(以下、「火点」とよぶ)。火点において酸素ガスの供給量が多くなれば、火点温度は上昇する。そして、火点温度の上昇につれてMnの蒸発および酸化も進行するため脱Mnの量も増大する。
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、Mn(マンガン)を含有する溶鋼から脱炭を行なう際に、脱炭を効率良く行なうとともに脱Mnを抑制してMnの歩留まりを向上させる脱Mn抑制方法およびRH脱ガス装置を提供することを目的としている。
しかし、精錬中期以降、ある程度脱炭反応が進行すると脱Mnの進行が始まる。これは溶鋼中の炭素濃度が低下して、反応界面近傍での溶鋼中の炭素がMnに対して少なくなるため、吹き込まれた酸素とMnとが反応する確率が増えるためである(炭素移動律速)。このように、溶鋼からの脱炭が進行するにつれて、酸素供給律速から炭素移動律速へ移行する度合いが次第に大きくなる。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の脱Mn抑制方法であって、前記酸素ガスの送酸速度を低下させるとともに、前記上吹ランスの高さを溶鋼表面に接近させることによる前記火点面積の減少の抑制は、当該火点面積を一定に保つように実施することを特徴としている。
請求項1ないし5に記載の発明によれば、溶鋼中の炭素濃度の低下に基づいて、酸素ガスの送酸速度を低下させることができる。これにより、火点に供給される酸素量が減少するため火点温度を低下させることが可能になる。したがって、脱Mnを抑制してMnの歩留まりを向上させることができる。さらに、酸素ガスの送酸速度を低下するに際して、反応界面である火点面積の減少を抑制するようにしている。そのため、脱炭効率の低下も抑制することができる。特に、請求項3に記載の発明にように、火点面積の減少の抑制を、当該火点面積を一定に保つように実施すれば、脱炭効率を維持する上でより好適である。
図1は、本発明に係るRH脱ガス装置の構成を説明する説明図であり、同図では、装置の一部をブロック図で示すとともに、RH脱ガス装置の真空槽を縦断面で示している。
同図に示すように、RH脱ガス装置10は、真空槽13と、上吹きランス11とを備えている。
上吹きランス11は、真空槽13の頂部から真空槽13内に垂下して設置されており、垂下したランス先端の開口部から酸素ガス200を噴射可能になっている。
詳しくは、炭素濃度測定装置20は、ガス流量計21と、炭素濃度演算部22と、不図示のタイマとを備えている。ガス流量計21は、排ガス量を測定可能なように真空槽13上部の排ガス管16に設置されている。また、タイマは、溶鋼の脱炭処理時間を測定可能になっている。そして、炭素濃度演算部22は、ガス流量計21で測定した排ガス量と、予め測定されている当該RH脱ガス装置10による直近の実績排ガス量との差である排ガス流量差とから、タイマが計測している脱炭処理時間での、その時点における炭素濃度の推定値を随時演算して、溶鋼中の炭素濃度を測定(推定)可能になっている。なお、炭素濃度演算部22は、所定のプログラムに基づいて溶鋼中の炭素濃度の測定(推定)処理が実行されるが、当該炭素濃度の測定処理は、本願出願人によりすでに開示された技術(特許第3293674号)に基づいて実施可能であるので、詳しい説明は省略する。
ランス高さ移動部31は、移動アクチュエータ部31cと、気密シール部31fと、を備えて構成されている。
移動アクチュエータ部31cは、直線案内装置31aと、移動アクチュエータ31bとを有する。直線案内装置31aは、上吹きランス11の先端部分の開口部と反対側の端部と作動的に連結されており、上吹きランス11を所定の軌道上で支持する。移動アクチュエータ31bは、不図示の例えばラック・ピニオン機構によって上吹きランス11と作動的に連結されており、上吹きランス11を上昇・下降させて所定の位置に設定するようになっている。なお、移動アクチュエータ31bにはサーボモータが使用されている。
気密シール31dは、真空槽13頂部の鉄皮13aに取り付けられており、内部に高圧ガスを導入可能な中空部を有する伸縮可能な弾性部材である。気密シール圧力制御弁31eは、気密シール31dの内部に導入する高圧ガスの圧力を調整する。気密シール31dは、気密シール圧力制御弁31eから内部に高圧のガスが導入されると、上吹きランス11との隙間を閉塞する方向に気密シール31dが拡張して真空槽13内を気密しつつ上吹きランス11を把持することができる。また、気密シール31d内の高圧ガスが気密シール圧力制御弁31eで適度に減圧されると、上吹きランス11の把持力を弱める。これにより、気密シール部31fは、真空槽13内を気密するとともに、上吹きランス11を把持可能になっている。
流量制御弁41は、酸素ガスの供給ライン上に設置されており、酸素ガスの送酸速度を調節することができる。絞り弁アクチュエータ42は、流量制御弁41内の絞り弁を開閉するアクチュエータである。これにより、送酸速度調節装置40は、後述する上吹ランス制御部50からの制御信号によって、流量制御弁41内の絞り弁を駆動して上吹きランス11から噴射される酸素ガスの送酸速度を調節可能になっている。
上吹ランス制御部50は、所定の制御プログラムに基づいて、演算およびシステム全体を制御するCPUと、所定領域にあらかじめCPUの制御プログラム等を格納しているROMと、ROM等から読み出したデータやCPUの演算過程で必要な演算結果を格納するためのRAMと、操作デスク60を含めた、炭素濃度演算部22、ランス高さ制御部32、絞り弁アクチュエータ42等の外部装置に対してデータの入出力を媒介するI/Fとで構成されている。これらは、データを転送するための信号線であるバスで相互にかつデータ授受可能に接続されている。これにより、監視者は、操作デスク60から上吹ランス制御部50へ上吹ランス制御処理の実行指令を入力可能になっている。また、上吹ランス制御部50は、炭素濃度演算部22、ランス高さ制御部32、絞り弁アクチュエータ42への所定の実行指令を出力可能になっている。
ステップS114では、上吹ランス制御処理の管理段階nを「n=n+1」に改めて設定し、ステップS102に処理を戻す。
RH脱ガス装置10による二次精錬では、真空槽13内の、Mnを含有する溶鋼100表面に上吹ランス11から酸素ガス200を噴射して、溶鋼100中に酸素を吹き込むことによって脱炭が行なわれるが、上述したように、精錬初期ではMnよりも炭素が優先的に酸素と反応する(酸素供給律速)。
そこで、このRH脱ガス装置10による二次精錬では、二次精錬が開始されると、炭素濃度測定装置20によって溶鋼中の炭素濃度の測定(推定)が随時なされ、上吹ランス制御部50で、その時点における現在の炭素濃度Kdが逐次読み込まれて、刻々変化する炭素濃度が監視される(ステップS108)。
上述したように、RH脱ガス装置は、真空槽13内と取鍋300との間で溶鋼100を還流させつつ、真空槽13内の溶鋼100表面に酸素ガス200を上吹ランス11から噴射して溶鋼100中に酸素を吹き込むことによって脱炭をおこなうものである。
そして、特に、このRH脱ガス装置10は、上吹ランス11から噴射される酸素ガス200の送酸速度を調節する送酸速度調節装置40と、上吹ランス11の高さを移動させるランス高さ移動装置30と、二次精錬によって排出される排気ガスから溶鋼100中の炭素濃度を測定する炭素濃度測定装置20と、その炭素濃度測定装置20によって測定された炭素濃度Kdに基づいて、送酸速度調節装置40で調整する送酸速度Jを所望の送酸速度(J1,J2,J3)に制御するとともに、ランス高さ移動装置30で移動させる上吹ランス11の高さLHを所望の高さ(LH1,LH2,LH3)にそれぞれ制御する上吹ランス制御部50と、を備えている。そして、上吹ランス制御部50は、所望の高さ(LH1,LH2,LH3)および所望の送酸速度(J1,J2,J3)を、火点面積Dkの減少を抑制するように、より具体的には、火点面積Dkがほぼ一定になるように(つまり、Dk1≒Dk2≒Dk3)制御している。
例えば、上記実施形態では、炭素濃度自体を監視して管理段階の移行時期を決めているが、これに限定されず、例えば精錬経過時間で管理段階の移行時期を管理することも可能である。この場合、精錬時間が経過するにつれて炭素濃度が減少することは自明であるから、例えば過去の操業実績から精錬経過時間に対応する炭素濃度の関係を明らかにしておけば、精錬経過時間に基づいて管理段階を移行した場合であっても、間接的に炭素濃度の減少に応じて上吹ランスを制御できるからである。なお、時間管理による管理段階移行時期は、鋼種や初期の炭素量によって変えるようにすれば種々の条件に対しても対応することができる。例えば後述する実施例での低炭素高Mn鋼であれば、上記第一の管理段階(n=1)から第二の管理段階(n=2)に移行する時期は、精錬開始から約9分前後のタイミングで移行させればよい。しかし、酸素供給律速から炭素移動律速へ移行する度合いをより的確に判断して、各管理段階をより好適に移行させる上では、上記実施形態のように、実際の炭素濃度を監視して、管理段階の移行時期を決めることが望ましい。なおまた、上記実施形態では、本願出願人によりすでに開示された技術(特許第3293674号)に基づいて炭素濃度自体を監視して管理段階の移行時期を決めているが、これに限定されず、炭素濃度を測定可能な構成であれば本発明に適用可能である。
本実施例は、上記実施形態の構成からなるRH脱ガス装置による二次精錬を、低炭素高Mn鋼を溶製するに際して適用した例である。なお、この実施例でのRH脱ガス装置は、真空槽内の火点等の状態を、監視カメラ等によって確認可能になっている。
この低炭素高Mn鋼は、炭素およびMnの目標成分値が、それぞれ〔C〕0.02±(許容値)重量%、〔Mn〕1.55重量%以上とする例であり、本実施例では、二次精錬での上記管理段階を、上記実施形態同様に、精錬初期、精錬中期、精錬終期の三段階で管理した。なお、当該各管理段階は、上述したRH脱ガス装置の上吹ランス制御部50により自動制御されるため、ここでは制御に係る説明は適宜省略する。
ここで、精錬初期C1から精錬中期C2(第二の管理段階(n=2))への移行時期の基準となる管理炭素濃度K1は、〔C〕0.09重量%に設定した。これは、過去の精錬実績から、溶鋼中の炭素濃度が〔C〕0.09重量%を境界として酸素供給律速から炭素移動律速に移行する割合が特に大きくなると判断したからである。この条件で精錬を開始した。なお、精錬初期での溶鋼の炭素濃度は、〔C〕0.15重量%であった。
図7は、上記実施例での二次精錬における、溶鋼中のMn濃度と処理時間との関係を示すグラフである。なお、同図では、比較例として、ランス高さおよび送酸速度をそれぞれ一定にして吹き込みが行なわれていた際のグラフをあわせて図示している。
同図から分かるように、平均炭素濃度が〔C〕0.09重量%より低い範囲(同図に示す矢印E)において、実施例では、比較例に比べて平均Mn濃度の割合が大きく減少していることが分かる。
以上説明したように、本発明のRH脱ガス装置および本発明の脱Mn抑制方法によれば、脱炭を効率良く行なうとともに脱Mnを抑制して、Mnの歩留まりを向上させることができることが確認された。
11 上吹ランス
12 吹き込み管
13 真空槽
14 吸上管
15 排出管
16 排ガス管
20 炭素濃度測定装置
21 ガス流量計
22 炭素濃度演算部
30 移動装置
31 移動部
32 制御部
40 送酸速度調節装置
41 流量制御弁
42 弁アクチュエータ
50 上吹ランス制御部
60 操作デスク
100 溶鋼
200 酸素ガス
300 取鍋
C1 精錬初期
C2 精錬中期
C3 精錬終期
Dk 火点の直径(火点面積)
Jn 管理送酸速度
K 目標炭素濃度
Kd 現在の炭素濃度
Kn 管理炭素濃度
Claims (5)
- Mnを含有する溶鋼の表面に酸素ガスを噴射して前記溶鋼からの脱炭を行なう際に、前記溶鋼からの脱Mnを抑制する方法であって、
前記溶鋼中の炭素濃度の低下に基づいて、前記酸素ガスの送酸速度を、当該酸素ガスの噴射によって前記溶鋼の表面に形成される凹部の面積である火点面積の減少を抑制しつつ低下させることを特徴とする脱Mn抑制方法。 - RH脱ガス装置による2次精錬において、Mnを含有する溶鋼の表面に上吹ランスから酸素ガスを噴射して前記溶鋼からの脱炭を行なう際に、前記溶鋼からの脱Mnを抑制する方法であって、
前記溶鋼中の炭素濃度の低下に基づいて、前記上吹ランスからの酸素ガスの送酸速度を低下させるとともに、前記酸素ガスの噴射によって前記溶鋼の表面に形成される凹部の面積である火点面積の減少を抑制するように前記上吹ランスの高さを前記溶鋼表面に接近させることを特徴とする脱Mn抑制方法。 - 請求項2に記載の脱Mn抑制方法であって、
前記酸素ガスの送酸速度を低下させるとともに、前記上吹ランスの高さを溶鋼表面に接近させることによる前記火点面積の減少の抑制は、当該火点面積を一定に保つように実施することを特徴とする脱Mn抑制方法。 - 二次精錬に用いられるRH脱ガス装置であって、
溶鋼の表面に酸素ガスを噴射する上吹ランスと、該上吹ランスから噴射される酸素ガスの送酸速度を調節する送酸速度調節装置と、前記上吹ランスの高さを移動させるランス高さ移動装置と、前記二次精錬によって排出される排気ガスから前記溶鋼中の炭素濃度を測定する炭素濃度測定装置と、該炭素濃度測定装置によって測定された炭素濃度に基づいて、前記送酸速度調節装置で調節する送酸速度を所望の送酸速度に制御するとともに、前記ランス高さ移動装置で移動させる上吹ランスの高さを所望の高さに制御する上吹ランス制御手段と、を備えることを特徴とするRH脱ガス装置。 - 前記上吹ランス制御手段は、前記所望の高さおよび所望の送酸速度を、前記上吹ランスからの酸素ガスの噴射によって前記溶鋼の表面に形成される凹部の面積である火点面積の減少を抑制するように制御することを特徴とする請求項4に記載のRH脱ガス装置。
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CN102002557A (zh) * | 2010-10-29 | 2011-04-06 | 重庆钢铁(集团)有限责任公司 | Rh干式抽真空系统精炼模式自动控制方法 |
JP2016079463A (ja) * | 2014-10-17 | 2016-05-16 | 新日鐵住金株式会社 | 真空脱ガス槽内の地金除去装置及び地金除去方法 |
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