JP2005281124A - 精密プレス成形用プリフォームの製造方法および光学素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定の光学恒数または特定の組成を有するB2O3−La2O3系ガラスを溶融しガラス塊に成形し、該ガラス塊の全表面をエッチング処理することにより、精密プレス成形用プリフォームの製造方法;B2O3ガラスを、前記ガラス塊の表面をエッチング液によりエッチング処理した後、(イ)前記表面を有機溶媒に接触させるか、あるいは前記ガラス塊を、酸またはアルカリとアルコールの混合液からなるエッチング液によりエッチング処理する工程、または(ロ)前記表面をスクラブ洗浄により洗浄する工程を有することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法;およびこれらの方法で得られた前記プリフォームを加熱・精密プレス成形する光学素子の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
精密プレス成形法は、プレス成形によって、高精度な加工が施されたプレス成形型の成形面をガラスに転写して光学機能面を形成する方法であって、例えば研磨加工では莫大な手間とコストがかかる非球面レンズなどを生産性よく量産することができる。このような精密プレス成形は、表面が滑らかで内部、表面ともに欠陥のないプリフォームを必要とする。
精密プレス成形ではプレス成形品の研削、研磨は例えばレンズの心取り加工など最小限に限られるか、あるいは研削、研磨加工を行わない。また、プリフォームの重量に大幅な過不足があると、プレス成形品の精度が低下したり、プレス成形時にはみ出したガラスがプレス成形型の間に進入するなどの問題が発生する。そのため、プリフォームの重量精度は製造しようとする光学素子毎に精密に決められている。
一方、冷間加工は多くの工程を経てプリフォームを作るため、手間、時間、コストがかかるという問題があるとともに、研磨の際に破損しやすいガラスへの適用にも問題がある。特にプリフォームの重量を目的の重量に正確に合わせるためには、より多くの手間、時間、コストがかかる。
熱間成形法は優れた製法ではあるが、溶融ガラスからプリフォーム1個分に相当する溶融ガラス塊を分離してガラス塊を直接成形してプリフォームにするため、内部品質は勿論、プリフォームの表面状態や重量精度の高いガラス塊を作らなければならない。
低粘性のガラスが流出してからプリフォームに成形されるまでの間、ガラス表面は高温状態で雰囲気に曝される。そうするとガラス中の揮発しやすい成分(易揮発成分)、例えばB2O3やアルカリ金属酸化物などがガラス表面から揮発し、プリフォーム表面近傍に脈理が発生する。失透していないプリフォームであっても、一部に脈理を含むプリフォームは光学素子を精密プレス成形により作製するための素材として使用することができない。
さらに、低粘性のガラスを金型に受けて金型から噴出するガスにより風圧を加えながら浮上して成形する浮上成形を行うと、ガラスを金型に供給したり、浮上成形中に低粘性ガラスの表面に気泡が取り込まれやすいという問題もある。この状態でガラスの粘性が上昇したり固化すると、プリフォーム表面に気泡が残留してしまう。
熱間成形において、上記いずれの問題が生じてもプリフォームは不良品となってしまう。
一方、上記観点からは熱間加工に劣るものの、冷間加工でもプリフォームを生産することはできる。冷間加工でプリフォームを作製する場合でも、研磨加工などによりガラスの表面が変質することがある。また、プリフォームを悪条件のもとに保管したりするとガラス表面が変質することがある。また、取り扱いによってはプリフォームの異物が付着してプリフォームの表面品質を低下させてしまう。
熱間成形、冷間加工いずれの方法においても、プリフォームの表面品質を低下させないことが重要である。
(1)溶融ガラスから精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、
溶融ガラスをガラス塊に成形し、該ガラス塊の全表面をエッチング処理することにより、所定重量の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを作製すること、および前記ガラスが、屈折率(nd)1.75以上で、アッベ数(νd)25〜58であって、B2O3およびLa2O3を含む光学ガラスであることを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
(2)溶融ガラスから精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、
溶融ガラスをガラス塊に成形し、該ガラス塊の全表面をエッチング処理することにより、所定重量の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを作製すること、および前記ガラスが、モル%表示でB2O3 15〜60%、SiO2 0〜40%、La2O3 5〜22%、Gd2O3 0〜20%、ZnO 0〜45%、Li2O 0〜15%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜10%、ZrO2 0〜15%、Ta2O5 0〜15%、WO3 0〜15%、Nb2O5 0〜10%、MgO 0〜15%、CaO 0〜15%、SrO 0〜15%、BaO 0〜15%、Y2O3 0〜15%、Yb2O3 0〜15%、TiO2 0〜20%、Bi2O3 0〜10%およびSb2O3 0〜1%を含む光学ガラスであることを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
(3)ガラス塊が、液相温度において10dPa・s以下の粘度を有するガラスからなる上記(1)または(2)に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
(4)ガラス塊をエッチング液に浸漬してエッチング処理する上記(1)、(2)または(3)に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
(5)ガラス塊の全表面をエッチング処理して、少なくとも深さ0.5μmの表面層を除去し、所定重量の精密プレス成形用プリフォームを作製する上記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
(6)ガラス塊をアニール処理したのち、エッチング処理する上記(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
(7)B2O3を含む光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームの製造方法において、
前記光学ガラスからなるガラス塊の表面をエッチング液によりエッチング処理した後、前記表面を有機溶媒に接触させるか、あるいは前記ガラス塊を、酸またはアルカリとアルコールの混合液からなるエッチング液によりエッチング処理する工程を有することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
(8)B2O3を含む光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームの製造方法において、
前記光学ガラスからなるガラス塊の表面をエッチング液によりエッチング処理する工程と、エッチング処理したガラス塊をスクラブ洗浄により洗浄する工程を有することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
(9)上記(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の製造方法により作製された精密プレス成形用プリフォームを、加熱し、精密プレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法、
(10)プレス成形型にプリフォームを導入し、前記成形型とプリフォームを共に加熱して精密プレス成形する上記(9)に記載の光学素子の製造方法、および
(11)予め加熱されたプリフォームをプレス成形型に導入し、精密プレス成形する上記(9)に記載の光学素子の製造方法、
を提供するものである。
また本発明の精密プレス成形用プリフォームの製造方法によれば、B2O3−La2O3系ガラスからなる高品質なガラス製プリフォームを高い生産性のもとに製造することもできる。
さらに、上記ガラスが液相温度における粘度が10dPa・s以下のガラスであっても、機械加工することなく、高品質なプリフォームを高い生産性のもとに製造することもできる。
また、熱間成形したガラス塊をエッチング液に浸漬して表面をエッチング処理することにより、容易に所定重量のプリフォームを製造することもできる。
さらに、熱間成形したガラス塊の少なくとも深さ0.5μmの表面層をエッチング除去して、ガラス塊を所定重量に合わせることにより、脈理や気泡などの欠陥が含まれる表面欠陥層を確実に除去したプリフォームを得ることもできる。
また、熱間成形したガラス塊をアニール処理した後、エッチング処理することによりエッチング時に内部応力による損傷を防止することもできる。
また、本発明の精密プレス成形用プリフォームの製造方法によれば、エッチング液によるエッチング処理により生じるゲル状の付着物を効率よく除去することができるので、B2O3系ガラスからなる高品質な(特に表面品質の高い)プリフォームを高い生産性のもとに製造することができる。
また、本発明の光学素子の製造方法によれば、高屈折率ガラスからなる高品質な光学素子を高い生産性のもとに製造することができる。
[プリフォームの製造方法]
本発明の精密プレス成形用プリフォームの製造方法には、製造方法1、製造方法2、製造方法3ならびに製造方法4の4つの態様がある。
第1の態様である製造方法1は、溶融ガラスから精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、溶融ガラスをガラス塊に成形し、該ガラス塊の全表面をエッチング処理することにより、所定重量の光学的に均質な光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを作製すること、および前記ガラスが、屈折率(nd)1.75以上で、アッベ数(νd)25〜58であって、B2O3およびLa2O3を含む光学ガラス(以下、ガラス1という。)であることを特徴とするものである。
次に分離した溶融ガラス塊をガラス塊成形型で受ける、あるいは一時的に溶融ガラス塊支持体で支持した後にガラス塊成形型に移して所定形状のガラス塊に成形する。ガラス塊成形型上では、ガラスに風圧を加えて浮上させながら成形する方法(浮上成形法という。)が望ましい。
このようにして得たガラス塊の表面を光学顕微鏡で拡大観察すると、ガラス塊全面にわたって脈理が認められる。このようなガラス塊の全表面をエッチング処理により所定の深さまで除去したガラス塊には、上記脈理が認められない。したがって、この脈理は表面近傍に局在する表面脈理である。ガラス塊表面の変質層、例えばヤケなどは、表面から深さ0.1μm以下の部分に限られるが、表面脈理は光学顕微鏡を用いた観察により認識可能な深さにまで達しているため、ガラス塊表面から少なくとも0.5μm以上の深さまでエッチング処理することが望まれる。
精密プレス成形によって作製される光学素子としては、レンズなどの回転対称軸を一つ備える形状のものが圧倒的に多い。したがって、プリフォームの形状としても、球状、回転対称軸を一つ備える形状(例えば、回転楕円体や、球を一定の軸方向に延ばした形状やつぶした形状など)が望まれている。このような形状のプリフォームを作製するには、目的とするプリフォーム形状に相似する形状のガラス塊を成形しエッチングすればよい。
一方、球状ガラス塊の球対称性に注目すると、エッチング処理により除去される深さが対称性のために全表面において均一になり、球状ガラス塊をエッチングすれば容易に球状プリフォームを作製できるというメリットがある。
(ガラス1)
ガラス1は、屈折率(nd)が1.75以上かつアッベ数(νd)が25〜58の光学的に均質なB2O3およびLa2O3を含む光学ガラスである。ガラス1は、ガラス網目構造形成成分としてB2O3を含み、高屈折率付与成分としてLa2O3を含む。また低温軟化性付与成分として場合によってはZnOやLi2Oを含む。
以下、ガラス1の好ましい組成について説明するが、各成分の含有量は特記しなに限り、モル%表示とする。
ZrO2は高屈折率・低分散の成分として使われる。少量のZrO2を導入することにより、ガラスの屈折率を低下させずに、高温粘性や失透に対する安定性を改善する効果がある。しかし、15%を超えて導入すると、液相温度が急激に上昇し、失透に対する安定性も悪化するので、その導入量を0〜15%にするのがよい。より好ましくは0〜10%の範囲、さらに好ましくは1〜10%の範囲である。
TiO2も屈折率を高める成分であるが過剰導入により、ガラス安定性が低下し、ガラスが着色するので0〜20%導入することが好ましい。
Bi2O3は屈折率を高め、ガラス安定性を向上する働きをするが、過剰導入によりガラスが着色するので0〜10%の導入が好ましい。
O5の各成分を含むガラスにおいて、高屈折率・低分散(nd>1.75かつνd>25)の高機能性を保つためにはLa2O3+Gd2O3の合計量を12%以上にするのが好ましく、12〜35%とするのがさらに好ましい。
精密プレス成形用ガラスとしては、精密プレス成形の適性すなわち低ガラス転移温度を付与するものの、ガラスを不安定にする成分であるLi2O等を添加する必要がある。高屈折率低分散性に必須なランタノイド酸化物の添加量を増大させるとガラス形成が難しくなる。しかしながら、ランタノイド酸化物におけるLa2O3の配分(上記分率)を0.3〜1となるようにすることにより、ランタノイド系酸化物の添加量を増大させながら安定なガラスを得ることが可能となり、安定度を低下させるLi2O等の成分を添加したガラスに対しても、安定にガラス形成を行うことが可能となる。また、この比率を保つことにより、液相温度の低下と高温粘性の向上に大きく寄与する。La2O3/ΣLn2O3を上記範囲にすると、Ln2O3の合計量が同じでも、前記比率が大きいガラスと比較して、はるかに安定なガラスを得ることが可能になった。さらに、La2O3、Gd2O3、Yb2O3、Y2O3、Sc2O3の合計含有量(ΣLn2O3)を12〜35%とすることが上記理由により好ましい。
Lu2O3は他の成分に比べて使用頻度が少ない。また、希少価値の高い物質でもあることから光学ガラス原料としては高額であり、コスト面からは使用したくない成分である。また敢えて導入する必要もないので、Lu2O3を導入しないことが望ましい。
カドミウム、クロム、水銀などの環境上問題となる元素、トリウムなどの放射性元素、ヒ素などの有毒な元素を含まないことが望ましい。
なお、ガラス1には物性調整のために、合計量で5%以下のTiO2、Al2O3、Ga2O3などを導入してもよい。
ガラス成分としてB2O3 15〜60%、SiO2 0〜40%、La2O3 5〜22%、Gd2O3 0〜20%、ZnO 0〜45%、 Li2O 0〜15%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜10%、ZrO2 0〜15%、Ta2O5 0〜15%、WO3 0〜15%、Nb2O5 0〜10%、MgO 0〜15%、CaO 0〜15%、SrO 0〜15%、BaO 0〜15%、Y2O3 0〜15%、Yb2O3 0〜15%、TiO2 0〜20%、Bi2O3 0〜10%を含むガラス、
さらに前記いずれかのガラスであって、B2O3、SiO2、ZnO、Li2O、La2O3、Gd2O3、ZrO2、Ta2O5、WO3、Y2O3、Yb2O3の合計含有量が95%以上のものがより好ましく、99%以上であることがさらに好ましく、100%であることが一層好ましい。
ガラス2は、モル%表示でB2O3 15〜60%、SiO2 0〜40%、La2O3 5〜22%、Gd2O3 0〜20%、ZnO 0〜45%、Li2O 0〜15%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜10%、ZrO2 0〜15%、Ta2O5 0〜15%、WO3 0〜15%、Nb2O5 0〜10%、MgO 0〜15%、CaO 0〜15%、SrO 0〜15%、BaO 0〜15%、Y2O3 0〜15%、Yb2O3 0〜15%、TiO2 0〜20%、Bi2O3 0〜10%およびSb2O3 0〜1%を含む光学ガラスである。また、ガラス2の好ましい範囲は、ガラス1の組成範囲の好ましい範囲と同等である、
ガラス1、2としてより好ましいものは、B2O3 20〜45%、SiO2 1〜30%、La2O3 7〜18%、Gd2O3 2〜16%、ZnO 5〜32%、Li2O 2〜12%、Na2O 0〜8%、K2O 0〜8%、ZrO2 1〜10%、Ta2O5 1〜8%、WO3 0〜12%、Nb2O5 0〜5%、MgO 0〜12%、CaO 0〜12%、SrO 0〜12%、BaO 0〜10%、Y2O3 0〜10%、Yb2O3 0〜10%、Sb2O3 0〜1%を含み、La2O3およびGd2O3の合計量が12〜35%、La2O3/Ln2O3が0.3〜1のガラスである。
第1の範囲は屈折率(nd)が極めて高い範囲であり、ガラス1、2の中でも液相粘性が低い。高屈折率ガラスは、一定の屈折率(nd)に対してアッベ数(νd)が小さいほうが比較的安定性を向上させやすいが、アッベ数(νd)が大きくなると安定したガラスを得るのが難しくなる。そのため、第2の範囲も第1の範囲同様、ガラス1、2の中でも液相粘性が低くなる。屈折率(nd)の上限は特に限定しないが、2.1以下を目安にすればよい。
このように易揮発成分であるB2O3やLi2Oを含むガラスを用いて熱間成形しても、本発明によれば高品質なプリフォームを作製することができる。
次に、第3の態様ならびに第4の態様について説明する。これらの態様は上記熱間成形により生じるガラス塊表面層の変質ガラスを除去する際や、熱間成形によらずガラス塊表面に生じる変質ガラスやガラス塊表面に固着した異物を除去して、高品質なプリフォームを高い生産性のもとに製造する方法を提供するものである。B2O3を含む光学ガラスからなるガラス塊をエッチング液でエッチング処理すると、上記変質ガラスや異物を除去することができるが、エッチング液とガラス成分の反応によりガラス表面にゲル状の生成物が堆積する。この生成物はガラスを水中で超音波洗浄しても除去することができない。このゲル状物質はSiO2が含まれる組成では特に顕著にみられる。第3の態様あるいは第4の態様はこのゲル状堆積物を効率よく除去すること、あるいはゲル状堆積物の発生を低減しつつ、効率よく除去することを可能にする。
第3の態様である製造方法3は、B2O3を含む光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームの製造方法において、前記光学ガラスからなるガラス塊の表面をエッチング液によりエッチング処理した後、前記表面を有機溶媒に接触させるか、あるいは前記ガラス塊を、酸またはアルカリとアルコールの混合液からなるエッチング液によりエッチング処理する工程を有することを特徴とするものである。
製造方法3には、ガラス塊の表面をエッチング液によりエッチング処理した後、前記表面を有機溶媒に接触させる第1の形態と、ガラス塊を、酸またはアルカリとアルコールの混合液からなるエッチング液によりエッチング処理する工程を有する第2の形態とがあり、第1の形態と第2の形態をともに適用することもできる。
第1の形態のエッチング液、第2の形態の酸またはアルカリは、製造方法1、2の説明において述べたものと同様のものを使用すればよい。第1の形態における有機溶媒としてはアルコールなどを使用することができる。第1の形態および第2の形態におけるアルコールとして好ましいものは、エタノール、イソプロピルアルコールである。第1の形態において、上記表面を有機溶媒に接触させるとともに有機溶媒で洗浄してゲル状堆積物を除去してもよいし、有機溶媒に接触させた後、洗浄液によって洗浄してゲル状堆積物を除去してもよい。洗浄液としては有機溶媒(例えばエタノール、イソプロピルアルコール、その他のアルコール)、水などを用いることができる。エッチングされたガラス表面と有機溶媒の接触は、ガラスを有機溶媒中に浸漬する、すなわちガラス塊全表面を有機溶媒に接触させてもよいし、ガラスに有機溶媒をかけてもよい。ただし、ガラス表面と有機溶媒との接触はエッチング処理後、ガラス表面が乾燥する前に行うことが望ましい。
第2の形態は、酸またはアルカリとアルコールの混合液からなるエッチング液を用いてゲル状堆積物の生成を低減、防止するが酸やアルカリをアルコールで希釈することになるので、エッチング速度が低下する。したがって、除去すべきガラス塊表面層が厚い場合や、生産性を高めるためにエッチング処理時間の短縮化を図る上から、第2の形態よりも、第1の形態であって第2の形態でない製造方法がより好ましい。なお、第2の形態もエッチング処理後にガラス表面に有機溶媒を接触させた後、洗浄液によって洗浄してゲル状堆積物を除去してもよい。洗浄液としては有機溶媒(例えばエタノール、イソプロピルアルコール、その他のアルコール)、水などを用いることができる。
製造方法3は、後述する製造方法4よりも比較的、手間やコストをかけずに容易にゲル状堆積物を除去することができ、清浄な表面を有するプリフォームを高い生産性のもとに製造することができる。なお、エッチング液と有機溶媒の好ましい組み合わせ、酸とアルコールの好ましい組み合わせは、ともに塩酸とエタノールの組み合わせ、塩酸とイソプロピルアルコールの組み合わせである。
第4の態様である製造方法4は、B2O3を含む光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームの製造方法において、前記光学ガラスからなるガラス塊の表面をエッチング液によりエッチング処理する工程と、エッチング処理したガラス塊をスクラブ洗浄により洗浄する工程を有することを特徴とする。
製造方法4において、エッチング処理は製造方法3の第1の形態と同様に行えばよい。また、エッチング処理後、ガラス表面が乾燥する前に洗浄することがゲル状堆積物を除去する上で好ましい。スクラブ洗浄は公知の方法を適用すればよい。
製造方法3、4における光学ガラスとしては製造方法1や製造方法2で説明したガラスや、SiO2を含有するガラス、中でもSiO2を0.1〜40%含有するガラス、特にSiO2を1〜40%含有するガラスあるいは製造方法1や製造方法2で説明したガラスであって、SiO2を含むもの(特にSiO2を前記含有量含むもの)が好ましい。
製造方法3は製造方法1または製造方法2、あるいは製造方法1および製造方法2と組み合わせることができ、製造方法4は製造方法1または製造方法2、あるいは製造方法1および製造方法2と組み合わせることができる。
なお、製造方法3、4におけるガラス塊は溶融ガラスを成形して直接得られるものに限られない。例えば、光学ガラスからなる板状ガラスやガラスブロックなどのガラス成形体を切断あるいは割断によって分割してガラス片を作製し、得られたガラス片を研磨する工程を経て作製したガラス塊を用いてもよい。その際、ガラス塊の重量精度は製造方法1あるいは製造方法3で説明したようにすることが好ましい。
このようにして、製造方法3、4によって作製したプリフォームの表面ならびに内部品質は製造方法1、2により作製したものと同様、良好なものである。
このようにして作製したプリフォームを洗浄した後に、必要に応じて離型膜などの薄膜を表面に形成してもよい。離型膜としては炭素含有膜、自己組織化膜などを例示することができる。
[光学素子の製造方法]
本発明の光学素子の製造方法は、上記製造方法により作製した精密プレス成形用プリフォームを加熱し、精密プレス成形することを特徴とするものである。
精密プレス成形はモールドオプティクス成形法とも呼ばれ、既に当該発明の属する技術分野においてはよく知られたものである。光学素子の光線を透過したり、屈折させたり、回折させたり、反射させたりする面を光学機能面と呼ぶ。例えばレンズを例にとると非球面レンズの非球面や球面レンズの球面などのレンズ面が光学機能面に相当する。精密プレス成形法はプレス成形型の成形面を精密にガラスに転写することにより、プレス成形で光学機能面を形成する方法である。つまり光学機能面を仕上げるために研削や研磨などの機械加工を加える必要がない。
なお、これら光学素子には必要に応じて、反射防止膜、全反射膜、部分反射膜、分光特性を有する膜などの光学薄膜を設けることもできる。
精密プレス成形法では、プレス成形型の成形面を良好な状態に保つため成形時の雰囲気を非酸化性ガスにすることが望ましい。非酸化性ガスとしては窒素、窒素と水素の混合ガスなどが好ましい。
プレス圧力は適宜調整すればよいが、5〜15MPa程度を目安にすることができる。また、プレス時間も適宜調整すればよいが、10〜300秒の範囲を目安にすることができる。
(精密プレス成形法1)
この方法は、プレス成形型に前記プリフォームを導入し、前記成形型とプリフォームを共に加熱し、精密プレス成形するというものである(精密プレス成形法1という)。
精密プレス成形法1において、プレス成形型と前記プリフォームの温度をともに、プリフォームを構成するガラスが106〜1012dPa・sの粘度を示す温度に加熱して精密プレス成形を行うことが好ましい。
また前記ガラスが1012dPa・s以上、より好ましくは1014dPa・s以上、さらに好ましくは1016dPa・s以上の粘度を示す温度にまで冷却してから精密プレス成形品をプレス成形型から取り出すことが望ましい。
上記の条件により、プレス成形型成形面の形状をガラスにより精密に転写することができるとともに、精密プレス成形品を変形することなく取り出すこともできる。
この方法は、前記プリフォームを加熱した後に、プレス成形型に導入し、精密プレス成形する、すなわち、プレス成形型とプリフォームを別々に予熱し、予熱したプリフォームをプレス成形型に導入して精密プレス成形するというものである(精密プレス成形法2という)。
この方法によれば、前記プリフォームをプレス成形型に導入する前に予め加熱するので、サイクルタイムを短縮化しつつ、表面欠陥のない良好な面精度の光学素子を製造することができる。
なおプレス成形型の予熱温度をプリフォームの予熱温度よりも低く設定することが好ましい。このようにプレス成形型の予熱温度を低くすることにより、前記型の消耗を低減することができる。
また、プリフォーム加熱をプレス成形型内で行う必要がないので、使用するプレス成形型の数を少なくすることもできる。
また、前記プリフォームを浮上しながら予熱することが好ましく、さらに前記プリフォームを構成するガラスが105.5〜109dPa・s、より好ましくは105.5dPa・s以上109dPa・s未満の粘度を示す温度に予熱することがさらに好ましい。
またプレス開始と同時又はプレスの途中からガラスの冷却を開始することが好ましい。
なおプレス成形型の温度は、前記プリフォームの予熱温度よりも低い温度に調温させるが、前記ガラスが109〜1012dPa・sの粘度を示す温度を目安にすればよい。
この方法において、プレス成形後、前記ガラスの粘度が1012dPa・s以上にまで冷却してから離型することが好ましい。
精密プレス成形された光学素子はプレス成形型より取り出され、必要に応じて徐冷される。また、レンズを成形した場合には、心取り加工を行ってもよい。また、必要に応じて表面に光学薄膜をコートしてもよい。
このようにして、B2O3−La2O3系ガラスからなる高品質な光学素子を高い生産性のもとに作製することができる。
実施例
(1)表1〜表7にプリフォームを作るためのガラス材料の組成及びその特性として屈折率(nd)、アッべ数(νd)、転移温度(Tg)、屈伏点 (Ts)、及び液相温度(L.T.)を示す。上記ガラスの特性は各成分の原料として各々相当する酸化物、フツ化物、水酸化物、炭酸塩、及び硝酸塩を使用し、ガラス化した後に表1〜表7に示す組成となるように秤量し、十分混合した後、白金坩堝に投入して電気炉で1050〜1200℃の温度範囲で溶融、清澄、攪拌して均質化し、適当な温度に予熱した金型に鋳込んだ後、ガラス転移温度まで冷却してから直ちにアニール炉に入れ、室温まで徐冷したものを試料にして測定したものである。
(a)屈折率(nd)及びアッべ数(νd)
徐冷降温速度を−30℃/hにして得られた光学ガラスについて測定した。
(b)転移温度(Tg)及び屈伏点温度(Ts)
理学電機株式会社の熱機械分析装置により昇温速度を4℃/分にして測定した。
(c)液相温度(L.T.)
400〜1150℃の温度勾配のついた失透試験炉に1時間保持し、倍率80倍の顕微鏡により結晶の有り無しを観察し、液相温度を測定した。
(d)液相粘性
“JIS Z 8803−1991「液体の粘度−測定方法」8.単一円筒形回転粘度計による粘度測定”に基づき、回転円筒法によってガラスの液相温度における粘性を測定した。
溶融ガラスの流出は、大気中、乾燥雰囲気中、あるいは酸素ガスを0.1〜50体積%含む不活性ガス(窒素またはアルゴン、または窒素とアルゴンの混合ガス)雰囲気中で行った。
流出する溶融ガラスから所定重量の溶融ガラス塊を滴下法により分離してガスを噴出するガラス塊成形型で受け、ガラスを浮上しながら上下動させて球状のガラス塊に成形した。一定の時間間隔で滴下する溶融ガラス滴を次々とガラス塊成形型で受けて浮上成形することにより、一定重量のガラス塊を次々と成形する。ガラス塊が変形しない温度にまで冷却した後に型から取り出す。このようにして表1〜表7に示す各ガラスからなる球状ガラス塊を複数個作製した。
これらガラス塊の表面を光学顕微鏡で拡大観察すると微細な表面脈理が全表面にわたって観察された。
であった。プリフォームの全表面には精密プレス成形時の離型性を高めるための離型膜を設けてもよい。このような離型膜としては炭素膜や自己組織化膜などを例示することができる。
なお、上記ガラス塊のエッチング処理後にガラス表面にゲル状堆積物が認められた。この堆積物を効率よく除去するため、エッチング処理直後のプリフォームを表面が乾燥する前にプリフォーム全体がエタノール中に完全に没するように浸漬して全表面をエタノールに接触させた後、水で洗浄することにより、ゲル状堆積物を除去した。エタノールの代わりにイソプロピルアルコールを使用しても上記堆積物を除去することができる。複数個のガラス塊をエッチング処理した後、一括してエタノールやイソプロピルアルコールに浸漬することによって複数個のプリフォーム全表面を有機溶媒に接触させることができ、引き続いてこれらプリフォームを一括して洗浄すれば、表面が清浄なプリフォームを効率よく得ることができる。
上記有機溶媒にガラス表面を接触させる代わりに、塩酸とエタノールまたは塩酸とイソプロピルアルコールの混合液を作り、この混合液をエッチング液としてエッチング処理し、その後、エタノールやイソプロピルアルコールにて洗浄することにより、ゲル状堆積物のないプリフォームを生産することもできる。このようにして、表面が清浄なプリフォームを効率よく得ることができる。
さらに有機溶媒を使用する上記方法や、塩酸とアルコールの混合液をエッチング液として使用する上記方法によらず、エッチング処理後にプリフォーム表面が乾燥する前にスクラブ洗浄を含む洗浄を行いゲル状堆積物を除去することもできる。
次に、上記組成と同じ各種ガラスからなるガラス塊を平板状に成形されたガラス板から切断、研磨によって作製した。このガラス塊に上記の各種エッチング処理を施して、表面品質ならびに内部品質の優れたプリフォームを作製した。この場合においても、エッチング処理によるゲル状堆積物の除去あるいは前記堆積物生成の低減、防止を上記各方法を用いて行うことができる。
このレンズの表面を光学顕微鏡で拡大観察したところ、使用したプリフォーム同様、表面脈理も内部の脈理も認められず、高品質なレンズであることが確かめられた。
プレス成形型に予熱された上記プリフォームを導入し、精密プレス成形する方法でも高品質、高精度な弗燐酸塩ガラスからなる非球面レンズを成形することができた。
なお、プリフォームの形状、寸法は作製しようとする精密プレス成形品の形状等により適宜、決めればよい。
上記実施例では非球面レンズを成形したが、最終製品の形状に合わせたプレス成形型を用いつことにより、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、平凸レンズ、両凸レンズ、平凹レンズ、両凹レンズなどの各種非球面レンズあるいは各種球面レンズ、あるいはプリズム、ポリゴンミラー、回折格子などの光学素子を作製することもできる。
なお、得られた各光学素子の光学機能面には必要に応じて反射防止膜あるいは高反射膜などの光学多層膜を形成することもできる。
また、本発明の光学素子の製造方法によれば、高屈折率ガラスからなる高品質な光学素子を高い生産性のもとに製造することができる。
2 下型
3 案内型(胴型)
4 プリフォーム
9 支持棒
10 支持台
11 石英管
12 ヒーター
13 押し棒
14 熱伝対
Claims (11)
- 溶融ガラスから精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、
溶融ガラスをガラス塊に成形し、該ガラス塊の全表面をエッチング処理することにより、所定重量の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを作製すること、および前記ガラスが、屈折率(nd)1.75以上で、アッベ数(νd)25〜58であって、B2O3およびLa2O3を含む光学ガラスであることを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。 - 溶融ガラスから精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、
溶融ガラスをガラス塊に成形し、該ガラス塊の全表面をエッチング処理することにより、所定重量の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを作製すること、および前記ガラスが、モル%表示でB2O3 15〜60%、SiO2 0〜40%、La2O3 5〜22%、Gd2O3 0〜20%、ZnO 0〜45%、Li2O 0〜15%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜10%、ZrO2 0〜15%、Ta2O5 0〜15%、WO3 0〜15%、Nb2O5 0〜10%、MgO 0〜15%、CaO 0〜15%、SrO 0〜15%、BaO 0〜15%、Y2O3 0〜15%、Yb2O3 0〜15%、TiO2 0〜20%、Bi2O3 0〜10%およびSb2O3 0〜1%を含む光学ガラスであることを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。 - ガラス塊が、液相温度において10dPa・s以下の粘度を有するガラスからなる請求項1または2に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
- ガラス塊をエッチング液に浸漬してエッチング処理する請求項1、2または3に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
- ガラス塊の全表面をエッチング処理して、少なくとも深さ0.5μmの表面層を除去し、所定重量の精密プレス成形用プリフォームを作製する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
- ガラス塊をアニール処理したのち、エッチング処理する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
- B2O3を含む光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームの製造方法において、
前記光学ガラスからなるガラス塊の表面をエッチング液によりエッチング処理した後、前記表面を有機溶媒に接触させるか、あるいは前記ガラス塊を、酸またはアルカリとアルコールの混合液からなるエッチング液によりエッチング処理する工程を有することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。 - B2O3を含む光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームの製造方法において、
前記光学ガラスからなるガラス塊の表面をエッチング液によりエッチング処理する工程と、エッチング処理したガラス塊をスクラブ洗浄により洗浄する工程を有することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。 - 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の製造方法により作製された精密プレス成形用プリフォームを、加熱し、精密プレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
- プレス成形型にプリフォームを導入し、前記成形型とプリフォームを共に加熱して精密プレス成形する請求項9に記載の光学素子の製造方法。
- 予め加熱されたプリフォームをプレス成形型に導入し、精密プレス成形する請求項9に記載の光学素子の製造方法。
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