JP4599072B2 - 溶融ガラス流出パイプ、精密プレス用プリフォームの製造方法および光学素子の製造方法 - Google Patents

溶融ガラス流出パイプ、精密プレス用プリフォームの製造方法および光学素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、精密プレス成形用プリフォームの製造法に関する。さらに詳しくは、P2O5を含有するガラス系など溶融状態では白金又は白金合金等の流出口素材と濡れやすく、そのために脈理が発生しやすいガラス系で、精密プレス成形用プリフォームを安定して製造するための製造方法、ならびに前記製法により作製したプリフォームを精密プレス成形して光学素子を製造する方法に関するものである。
デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ、カメラ付携帯電話などの小型化、高画素化、高性能化に伴い、高屈折高分散ガラス、高屈折低分散ガラス、低屈折超低分散ガラスからなるレンズが光学系に必要となった。またレンズを非球面化することで光学系の更なる小型化が可能となるため、これらの光学特性を有する非球面レンズが渇望されている。一方、非球面ガラスレンズの製造法としては、素材のガラス製プリフォームを精密プレス成形する方法が主流である。よって、上記ガラスからプリフォームを熱間成形する技術や、プリフォームを精密プレスする技術の開発が必要となった。ここで熱間成形とは、溶融ガラスから直接プリフォーム成形する技術であり、溶融ガラスから作製した軟化状態のガラス塊をさらに所定形状に成形することでプリフォーム成形する。しかし上記光学恒数を有する光学ガラスは以前から知られてはいるが、ガラスの特性上、プリフォームを熱間成形できない場合や、精密プレスが困難な場合が非常に多かった。特に高屈折高分散ガラスや低屈折超低分散ガラスは、組成中にP205を含有する組成が殆どであり、そのために熱間で精密プレス用プリフォームを安定して成形することが非常に難しい。以下にその理由を説明する。
これらガラスを溶融した溶融ガラスは、ガラス流出口に使われる白金や白金合金素材(例えば、白金−金合金など)に極めて濡れやすい。そのため、流出口外周にガラスが付着してガラス流出口外周が短時間の内に溶融ガラスで覆われてしまう。流出口外周に付着したガラスは流出口に滞留するため、時間経過とともに結晶化などを起こし、変質してしまう。このように変質したガラスが流出口先端外周に付着していると、流出する溶融ガラス表面に変質ガラスが混入し、熱間成形したプリフォーム表面に筋状の濃い表面脈理が発生する。
ガラス流出口での溶融ガラスの濡れ抑制法としては、例えば、流出口周りの雰囲気を非酸化性雰囲気に調整する方法が知られている。このような方法の例は、例えば、特許第2786113(特開平08-73229)号公報、特開平09-202623号公報、特開平10-194752号公報等に開示されている。しかしこれらの方法は、大気中での濡れ角が30°を超える溶融ガラスには有効だが、濡れ角が30°以下の溶融ガラスでは雰囲気の完全な置換が困難であるため充分な抑制効果が得られないことが多かった。
また、これらとは別に、特開2002-121032号公報に記載のように、ノズル先端から気体を噴き出す方法により溶融ガラスの濡れを抑制することも知られている。この方法では、気流の勢いでガラスが濡れ上がるのを抑制する。しかし成形中のトラブル等により気体噴出部にガラスが付着してしまった場合には、毛細管現象のため気体噴出部にガラスが侵入し正常な成形ができなくなるという問題がある。このようなトラブルは、流出口直下で成形型を上昇・下降させるような成形で特に発生しやすく、実用上は大きな問題である。
特許第2786113(特開平08-73229)号公報 特開平09-202623号公報 特開平10-194752号公報 特開2002-121032号公報
そこで本発明の第1の目的は、流出口先端での溶融ガラスの濡れ上がりに起因する脈理発生を抑制しつつ精密プレス成形用プリフォームを製造する新たな方法を提供することにある。
さらに本発明の第2の目的は、上記方法により作製したプリフォームを精密プレス成形して高品質な光学素子を高い生産性のもとに製造する方法を提供することである。
本発明者らは、精密プレス成形用プリフォームの熱間成形において、流出口先端での濡れ上がりに起因する脈理発生を抑制する方法について鋭意検討した。その結果、溶融ガラスが流出口外周部最先端に濡れ上がる状態で溶融ガラス塊を分離してプリフォームを熱間成形する方法であっても、流出口外周部最先端に濡れ上がった溶融ガラスの少なくとも一部が一定時間で常時入れ代われば、変質が進行したガラスが滞留し、それが新たな溶融ガラスに混入し脈理が発生することを抑制できることを見いだした。
具体的には、本発明(精密プレス成形用プリフォーム作製方法)の第1の態様では、流出口最先端部の周壁に濡れ上がった溶融ガラスの少なくとも一部を、ガラス塊形成のために流出口最先端部に流出し、流出パイプの先端に形成され分離する前の溶融ガラス滴を形成する溶融ガラスと流出口最先端付近で一体化させる。その結果、変質したガラスの流出口最先端への蓄積を抑制し、脈理が発生することを抑制する。前記溶融ガラスの一体化により、濡れ上がった溶融ガラスの少なくとも一部と溶融ガラス滴との間で溶融ガラスの交換を生じ、流出口最先端部の外周壁に濡れ上がった溶融ガラスの少なくとも一部がガラス塊形成毎に入れ代わるものと推測される。従って、脈理発生を抑制できる程度に溶融ガラスの一体化(その結果、溶融ガラスの交換)が生じるように、流出口先端の形状を工夫した。
本発明(精密プレス成形用プリフォーム作製方法)の第2の態様では、一定時間おきに流出口先端の溶融ガラスが濡れ上がった部分を流出ガラス溜まりに浸け、溶融ガラスが濡れ上がった流出口最先端部の周壁を溶融ガラスで洗浄する。
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[請求項]
流出する溶融ガラスから溶融ガラス塊を形成するための流出パイプであって、
溶融ガラス塊の形成が前記流出パイプの先端の流出口において行われ、
前記流出パイプは、その先端に段差部を有し、段差部の外径は、段差部に隣接する流出パイプの外径より小さく、
前記段差部の外径が2〜6mmであり、
前記段差部の長さは5mm以下である
ことを特徴とする流出パイプ。
[請求項]
流出パイプとの素材との接触角が30°以下の溶融ガラスから溶融ガラス塊を形成するために用いられる請求項1に記載の流出パイプ。
[請求項3]
流出パイプの流出口より流出する溶融ガラスから一定質量の溶融ガラス塊を繰り返し分離して、複数のガラス塊を連続的に成形する精密プレス成形用プリフォームの製造方法において、
前記流出パイプとして、請求項1または2に記載の流出パイプを用いることを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
[請求項4]
流出パイプの流出口より流出する溶融ガラスから一定質量の溶融ガラス塊を繰り返し分離して、複数のガラス塊を連続的に成形する精密プレス成形用プリフォームの製造方法において、
前記流出パイプとして、その先端に段差部を有し、段差部の外径は、段差部に隣接する流出パイプの外径より小さい流出パイプを使用し、
流出口から上方に濡れ上がる溶融ガラスが段差部の下端面に接触し、かつ段差部の外周壁に濡れ上がる溶融ガラスの少なくとも一部が流出パイプの先端に形成され分離する前の溶融ガラス滴と一体化する期間を含むことを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
[請求項]
流出パイプの流出口より流出する溶融ガラスから一定質量の溶融ガラス塊を繰り返し分離して、複数のガラス塊を連続的に成形する精密プレス成形用プリフォームの製造方法において、
前記流出パイプは、その先端に段差部を有し、段差部の外径は、段差部に隣接する流出パイプの外径より小さく、かつ段差部の長さは5mm以下であり、
前記段差部の外周面に溶融ガラスを濡れ上がらせた状態で、前記溶融ガラス塊の分離を行うことを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
[請求項]
前記流出口付近のパイプ外周面に濡れ上がった溶融ガラスの流出口外周における厚みが、溶融ガラス塊の分離の度に変化する状態で前記分離を行うことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
[請求項]
流出口先端の外径が2〜6mmであり、流出口先端から段差までの距離が1〜4mmであることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
[請求項]
前記成形後、流出口を含む流出パイプ先端のクリーニング工程を行うことを含み、
前記クリーニング工程、前記パイプ先端部分を溶融ガラスに浸漬することで行う、請求項3〜7のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
[請求項]
流出口先端外周面に濡れ上がったガラスを保温又は加熱することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
[請求項10]
流出口から溶融ガラス塊を滴下するか、流出する溶融ガラス流先端を支持体または受け型で支持した後、前記支持体または受け型を降下して前記先端を含む溶融ガラス塊を溶融ガラス流から分離するか、または溶融ガラス流先端を支持体で支持した後、前記支持を取り除いて前記先端を含む溶融ガラス塊を溶融ガラス流から分離するかのいずれかの方法により、所定質量の溶融ガラス塊を得ることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
[請求項11]
分離されたガラス塊のプリフォームへの成形を、ガラス塊に風圧を加え、浮上させながら行うことを特徴とする請求項10のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
[請求項12]
燐酸含有ガラスからなるガラス塊を成形することを特徴とする請求項11のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
[請求項13]
ガラス製のプリフォームを精密プレス成形する光学素子の製造方法において、
請求項12のいずれか1項に記載の製造方法によってプリフォームを作製し、作製したプリフォームを精密プレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
[請求項14]
プレス成形型にプリフォームを導入し、前記成形型とプリフォームを一緒に加熱して精密プレス成形することを特徴とする請求項13に記載の光学素子の製造方法。
[請求項15]
プレス成形型に予熱されたプリフォームを導入して、精密プレス成形することを特徴とする請求項13に記載の光学素子の製造方法。
本発明の精密プレス用プリフォームの製造方法によれば、流出口で濡れ上がるガラスでも、表面、内部とも脈理がない高品質で安価な精密プレス用プリフォームを提供することができる。
さらに本発明の光学素子の製造方法によれば、高品質な光学素子を高い生産性のもとに製造することができる。
流出パイプの流出口で溶融ガラスの濡れ上がりがある状態でプリフォームを熱間成形する場合、成形開始直後あるいは、成形開始から一定時間後に図1のような表面脈理が発生することが非常に多い。脈理発生までの時間は、流出口の温度設定、ガラス組成(熱的安定性)、ガラスからの特定成分の揮発量等によって決まるが、10時間以上にわたり脈理を発生させないことはかなり困難であった。それに対して、本発明では、下記流出パイプ及びプリフォームの製造方法を用いることで、上記脈理発生を抑制できる。
(流出パイプ)
本発明の流出パイプは、流出する溶融ガラスから溶融ガラス塊を形成するための流出パイプであって、溶融ガラス塊の形成が前記流出パイプの先端の流出口において行われ、前記流出パイプは、その先端に段差部を有し、段差部の外径は、段差部に隣接する流出パイプの外径より小さい。
流出する溶融ガラスから溶融ガラス塊を形成するための流出パイプは、例えば、図2に側面図を示すが、通常は白金または白金合金からなるパイプであり、溶融ガラス溜めから供給される溶融ガラスを、流出パイプの先端の流出口から滴下することで、溶融ガラス塊を形成する。
そして本発明の流出パイプ1は、例えば、図2に示すように、その先端に段差部2を有し、段差部2の外径は、段差部に隣接する流出パイプ3の外径より小さい。
そして、本発明の第1の流出パイプは、段差部の長さは、濡れ上がる溶融ガラスが段差部の下端面2aに接触し、かつ段差部の外周壁に濡れ上がる溶融ガラスの少なくとも一部が流出パイプの先端に形成され分離する前の溶融ガラス滴と一時的に一体化し得る程度であることを特徴とする。
本発明の第2の流出パイプは、前記段差部の外径が2〜6mmであり、前記段差部の長さは5mm以下であることを特徴とする。
流出パイプから溶融ガラスを流出させると、前述のように流出パイプの外壁を流出口から上方に溶融ガラスが濡れ上がるが、流出パイプの先端(流出口付近)に流出パイプの外径より小さい外径を有する段差部2を有すると、溶融ガラスは図2に示すような状態で濡れ上がる。すなわち、段差部を足場とすることで、流出口先端に濡れ上がり、付着した溶融ガラスは、段差部が無い場合に比べて厚く付着できるようになる。このような状態で自然滴下または降下切断法で流出口から溶融ガラスを切断分離すると、切断前後で流出口先端の段差部に濡れ上がった溶融ガラスの厚みが変動する。この状態を図3により説明する。(A)は、図2と同様の状態であり、溶融ガラスGが流出して、段差部に溶融ガラスが濡れ上がった状態である。次いで、(B)に示すように、成形型5が下降して、流出した溶融ガラスGが切断分離すると、段差部に濡れ上がっていた溶融ガラスの一部は、切断分離する側の溶融ガラスに吸引され、段差部に濡れ上がっていた溶融ガラス量は減少する。次いで、(C)に示すように、流出口から次の新たな溶融ガラスG'が流出してくると段差部に濡れ上がる溶融ガラス量は増加する。実際に、流出パイプから流出する溶融ガラスをよく観察すると、段差部において、溶融ガラスの厚みの変動(脈動)に合わせ、新たに流出してくるガラスと濡れ上がったガラスが液交換していることが分かる。そして、このように流出するガラスと濡れ上がったガラスが切断の度に液交換することで、少なくとも流出口外周最先端部でのガラスの変質が抑制され、脈理が発生しにくくなる。
従って、本発明の第1の流出パイプでは、段差部2の長さを、濡れ上がる溶融ガラスが段差部の下端面に接触し、かつ段差部の外周壁に濡れ上がる溶融ガラスの少なくとも一部が流出パイプの先端に形成され分離する前の溶融ガラス滴と一時的に一体化し得る程度とする。流出パイプの寸法は、作製される溶融ガラス塊の大きさや溶融ガラスの粘度などを考慮して、これまでも適宜決定されてきた。従って、上記段差部の長さも、作製される溶融ガラス塊の大きさや溶融ガラスの粘度などを考慮しつつ、その上で、上記条件を満足するように、適宜決定できる。
本発明の第2の流出パイプでは、段差部の外径は2〜6mmと規定し、段差部の長さは5mm以下と規定する。段差部の外径は、通常の流出パイプの外径を考慮して、これよりも小さく、かつ所定量の溶融ガラスを流出させることができる(即ち、所定の生産性を確保出来る)という観点から決定されている。また、段差部の長さは、上記本発明の第1の流出パイプにおける、段差部の長さを特定する事項を考慮し、かつ実際にプリフォームを作製することが多いガラス組成とガラス組成により決まる溶融ガラスの粘度や流出パイプの素材との濡れ性等を考慮して、5mm以下と規定する。
段差2aの位置が流出口先端から5mm以上離れていると、ガラス組成によっては、図4に模式的に示すように流出口先端外周の溶融ガラス層を厚くすることができず、前記した液交換が起こりにくくなるので脈理の抑制効果が充分得られない場合が有る。このような観点から、流出口先端から段差2aまでの距離は、1〜3mmであることがより好ましい。また流出口先端の外径が6mm以上では、図5に模式的に示すように表面張力により流出口先端の溶融ガラス層が薄くなってしまい、前記した液交換が起こりにくくなるので脈理の抑制効果が充分得られない場合がある。また、流出口先端の外径が2mm以下になると、流出口先端の溶融ガラス層が厚くなりすぎるためか、プリフォームの内部に脈理が発生しやすくなる。よって流出口先端の外径は2〜6mmの範囲が好ましく、3〜5mmとすることがより好ましい。
本発明の流出パイプは、流出パイプの素材との接触角が30°以下の溶融ガラスから溶融ガラス塊を形成するために用いられる場合、特に、上記濡れ上がりが原因となる脈理発生を有効に抑制することができる。
本発明は、濡れ上がりやすいガラスすなわち接触角が小さいガラス、例えば接触角が 30°以下、より好ましくは20°以下、さらに好ましくは10°以下のガラスへの適用が好ましい。接触角の測定は次のようにして行う。
水平に保持されている白金合金(白金が95at%、金が5at%)製の平板(表面を鏡面加工したもの。平面視上の大きさは20×20mm。)の中央付近に4×4×4mmの大きさのガラス試料を載せ、大気中において前記のガラス試料をその液相温度より20℃高い温度に加熱し、この状態で30分間保持することによって前記のガラス試料を一旦溶融させた後、アニールする。このアニールは、溶融したガラス試料をそのガラス転移温度下で1時間保持した後に−30℃/時の降温速度の下に室温まで冷却することによって行われる。次に、固化したガラス試料を液体とみなして、当該ガラス試料と前記の平板との接触角を測定する。
なお、「表面を鏡面加工した白金合金製の平板」とは、表面のRz が500〜10000オングストロームとなるように加工した平板のことである。Rz の値が小さい方が測定結果にバラツキが生じ難くなるが、前記の範囲内であれば、例えば5000〜10000オングストロームであってもよいし、1000〜10000オングストロームであってもよい。
本発明では流出パイプ先端にガラスを濡れ上がらせて成形するので、パイプ材料としては、普通の白金または白金合金を使用出来る。白金合金は、強度や硬度、融点を考慮して選択することができる。白金合金の具体例としては、例えば、85Pt−10Rh−5Auの合金や95Pt−5Auの合金等の市販の材料を使用できる。但し、これらの材料を用いても、リン酸塩ガラスの濡れ上がりを防止するのは困難である。尚、上記合金についてPt、Rh及びAuの前に記載された数値は、合金中の各金属の重量%表示による含有量である。
パイプが上記各種材料で形成される場合であっても、パイプ外周への濡れ上がりやすさを示す定量的な指標として上記接触角を使用することができる。
(精密プレス成形用プリフォームの製造方法)
本発明の精密プレス成形用プリフォームの製造方法は、流出パイプの流出口より流出する溶融ガラスから一定質量の溶融ガラス塊を繰り返し分離して、複数のガラス塊を連続的に成形することを含む。
流出パイプの流出口より流出する溶融ガラスから一定質量の溶融ガラス塊を繰り返し分離する場合に採用する、流出口からの溶融ガラスの切断法としては、自然滴下法または降下切断法が好ましい。両方法とも、溶融ガラスを鉛直下方に引き伸ばして切断するため、流出口先端外周に濡れ上がったガラスを過剰に巻き込むことがない。これに対し、受け型を水平方向に移動させて溶融ガラスを切断するような方法では、流出口先端外周に濡れ上がったガラスを過剰に巻きこむため、本発明の効果は得られにくい。
本発明の精密プレス成形用プリフォームの製造方法の第1の態様は、流出パイプとして、前記本発明の流出パイプを用いることを特徴とする。
本発明の精密プレス成形用プリフォームの製造方法の第2の態様は、流出パイプの流出口付近のパイプ外周面に濡れ上がった溶融ガラスの流出口外周における厚みが、溶融ガラス塊の分離の度に変化する状態で溶融ガラス塊の分離を行うことを特徴とする。
本発明の効果(脈理発生防止効果)は、前述のように流出するガラスと濡れ上がったガラスが切断の度に液交換することで、少なくとも流出口外周最先端部でのガラスの変質が抑制されるために生じる。そこで本発明の製造方法(第2の態様)では、流出パイプの流出口付近のパイプ外周面に濡れ上がった溶融ガラスの流出口外周における厚みが、溶融ガラス塊の分離の度に変化する状態で溶融ガラス塊の分離を行うことで、流出するガラスと濡れ上がったガラスとを切断の度に液交換する。このような状態での溶融ガラス塊の分離は、例えば、上記本発明の第1及び第2の態様の流出パイプを用いることで、実施できる。
本発明の精密プレス成形用プリフォームの製造方法の第3の態様は、流出パイプは、その先端に段差部を有し、段差部の外径は、段差部に隣接する流出パイプの外径より小さく、かつ段差部の長さは5mm以下であり、前記段差部の外周面に溶融ガラスを濡れ上がらせた状態で、前記溶融ガラス塊の分離を行うことを特徴とする。
本発明の効果(脈理発生防止効果)は、前述のように流出するガラスと濡れ上がったガラスが切断の度に液交換することで、少なくとも流出口外周最先端部でのガラスの変質が抑制されるために生じる。そこで本発明の製造方法(第3の態様)では、流出パイプとして、その先端に段差部を有し、段差部の外径は、段差部に隣接する流出パイプの外径より小さく、かつ段差部の長さは5mm以下である流出パイプを用い、かつ、段差部の外周面に溶融ガラスを濡れ上がらせた状態で、前記溶融ガラス塊の分離を行うことで、流出するガラスと濡れ上がったガラスとを切断の度に液交換する。このような状態での溶融ガラス塊の分離は、例えば、上記本発明の第2の態様の流出パイプを用いることで、実施できる。
本発明の製造方法(第3の態様)では、流出口付近のパイプ外周面に濡れ上がった溶融ガラスの流出口外周における厚みが溶融ガラス塊の分離の度に変化する状態で溶融ガラス塊の分離を行うことが好ましい。これは、流出するガラスと濡れ上がったガラスとの溶融ガラス塊の分離の度の液交換が行われ、本発明の効果(脈理発生防止効果)が得られ易くなるからである。
本発明の製造方法で使用する流出パイプは、流出口先端の外径が2〜6mmであり、流出口先端から段差までの距離が1〜4mmであることが、本発明の効果(脈理発生防止効果)が得られ易くなるという観点から好ましい。
本発明の製造方法においては、パイプ流出口外周に濡れ上がったガラスが新たに流出するガラスと短時間で入れ替わることが望ましい。このようなガラスの入れ替わりは、低粘性のガラスほど流動性が高いために迅速に行われる。このような観点から、本発明では液相温度において50dPa・s以下の粘度を示すガラスを使用することが好ましく、前記粘度が10dPa・s以下のガラスの使用がより好ましい。ガラスの入れ替わりの観点から好ましい粘度の下限を特に限定さればいが、前記粘度が1dPa・sよりも低くなるとプリフォームの成形が困難になるため、上記粘度の下限は1dPa・sを目処と考えればよい。特に好ましい範囲は3〜10dPa・sである。
なお、ガラスの液相温度(L.T.)は次のようにして測定する。まず、白金ルツボにガラス試料約50gを入れ、約1100℃にて約15分溶融後に一端冷却して固化させた後、異なる温度に設定された環境(例えば10℃間隔で設定された異なる環境)下にて2時間保持したものを、炉外で放冷して結晶析出の有無を顕微鏡により観察し、結晶の認められない最低温度を液相温度(L.T.)とした。
また、ガラスの粘度は、“JIS Z 8803-1991 「液体の粘度−測定方法」8.単一円筒形回転粘度計による粘度測定”に基づき、回転円筒法によってガラスの液相温度における粘度を測定した。
本発明の精密プレス成形用プリフォームの製造方法は、流出時の粘性が低く、流出口先端での脈動と脈動による液交換が起こりやすく、しかもガラスからの揮発成分も比較的少ないガラスからなるプリフォームの製造に好適である。このように脈理が発生しやすいガラスでも本方法により充分な脈理抑制効果が得られる。このように、本方法の適用が特に好ましいガラスとしては、燐酸含有ガラスを例示することができる。特に、P2O5を15〜70モル%含むガラスへの適用が好ましく、20〜70モル%含むガラスへの適用がより好ましい。
燐酸含有ガラスとしては、P25、Nb25およびLi2Oを含有するガラス、P25およびBaOを含有するガラス、P25およびZnOを含有するガラス、P25、BaOおよびZnOを含有するガラスなどがある。
(P25、Nb25およびLi2Oを含有するガラス)
25、Nb25およびLi2Oを含有するガラスは、屈折率(nd)1.7以上、アッベ数(νd)35以下(特に屈折率(nd)1.75〜2、アッベ数(νd)17〜30)の光学恒数を実現するガラスとして好ましい。このようなガラスとしては、モル%表示で、P2O5 15〜45%、Nb2O5 3〜35%、Li2O 2〜35%、TiO2 0〜20%、WO3 0〜40%、Bi23 0〜20%、B2O3 0〜30%、BaO 0〜25%、ZnO 0〜25%、MgO 0〜20%、CaO 0〜20%、SrO 0〜20%、Na2O 0〜30%、K2O 0〜30%(但しLi2O、Na2OおよびK2Oの合計量が45%以下)、Al2O3 0〜15%、SiO2 0〜15%、La2O3 0〜10%、Gd2O3 0〜10%、Yb2O3 0〜10%、ZrO2 0〜5%、Ta2O5 0〜10%を含むガラスを例示することができる。
上記組成範囲において、P2O5は、ガラスの網目構造の形成物であり、ガラスに製造可能な安定性を持たせるための必須成分である。しかし、P2O5の含有量が45モル%を超えると、ガラスの転移温度や屈伏点が上昇し、耐候性も悪化する傾向がある。また15モル%未満では、ガラスの失透傾向が強くなりガラスが不安定となるので、P2O5の含有量を15〜45%の範囲とすることが好ましく、17〜40モル%の範囲とするのがより好ましい。
Nb2O5は、上記のように高屈折率・高分散などの特性を持たせるために欠かせない成分である。しかし、その導入量が35%を超えると、ガラス転移温度や屈伏点が高くなり、安定性も悪化、高温溶解性も悪くなり、精密プレス時に発泡や着色しやすくなるという傾向がある。これに対し、その導入量が3%以下となると、ガラスの耐久性が悪化し、所要の高屈折率を得にくくなるため、その導入量を3〜35%の範囲にするのが好ましく、5〜30%の範囲にするのがより好ましい。
Li2Oは、上記のようにガラス転移温度を下げるのに最も効果的成分であり、他のアルカリに比べ、屈折率を低下させにくく、耐久性を悪化させない。しかし、その導入量が2%未満では転移温度の低下が難しく、35%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪化し、耐久性も悪くなるため、Li2Oの導入量を2〜35%の範囲にするのが好ましい。より好ましくは5〜30%の範囲である。
TiO2は、高屈折率高分散性を付与し、熱的安定性を向上させる効果がある。しかし、その含有量が20%を超えると、ガラスの熱的安定性や透過率が急激に悪化し、屈伏点や液相温度も急上昇し、精密プレス成形時にガラスが着色しやすくなる。したがって、その導入量を0〜20%にするのが好ましく、0〜15%にするのがより好ましい。
WO3は、高屈折率高分散特性と低温軟化性を付与する上で効果的な成分である。WO3はアルカリ金属酸化物と同様にガラス転移温度や屈伏点を下げる働きや、屈折率を上げる働きをする。そして、ガラスとプレス成形型との濡れ性を抑制する効果があるため、精密プレス成形の際にガラスの離型性が非常に良くなるという効果を奏する。しかし、WO3の過剰導入、例えば40%を超えて導入すると、ガラスが着色しやすくなる一方、ガラスの高温粘性も低くなるので、熱間成形が難しくなる傾向がある。したがって、その含有量を0〜40%とすることが好ましく、0〜35%の範囲とすることがより好ましい。
Bi2O3は、高屈折率高分散性を付与する成分であり、ガラスの生成領域を大幅に拡大し、安定化させる効果のある成分であり、また、ガラスの耐候性を高める成分である。したがって、Bi23を導入することにより、P25の含有量の少ないガラスでもガラス化を可能にする。また、Bi23を導入することにより、熔融状態のガラスを白金製プレート上に置いたときの濡れ角を大きくすることができる。上記濡れ角の増加により、流出パイプの外周にガラスが濡れ上がりにくくなる。そのため、プリフォームの表面脈理の低減にも効果がある。また濡れ上がりを低減することにより、ガラス塊の重量精度をより向上させることもできる。しかし、その導入量が20%超えると、ガラスは逆に失透しやすくなると同時に着色しやすくなる恐れがあるため、Bi23の含有量は0〜20%とすることが好ましく、0〜15%とすることがより好ましい。なお、Bi23導入により上記効果を得るには、上記範囲内において、Bi2O3の量を0.2%以上とするのが好ましく、0.5%以上とするのがより好ましい。
B2O3は、ガラスの熔融性の向上やガラスの均質化に有効な成分であると同時に、少量の導入でガラス内部にあるOHの結合性を変え、精密プレス成形時におけるガラスの発泡を抑制する効果が得られる。しかし、B2O3を30%より多く導入すると、ガラスの耐候性が悪化したり、ガラスが不安定になるため、その導入量を0〜30%の範囲にすることが好ましい。より好ましい範囲は0〜25%の範囲である。
BaOは、高屈折率を付与し、失透安定性を向上させ、液相温度を低下させる効果のある成分である。WO3を導入する場合、特に多量のWO3を導入する場合、BaOの導入でガラスの着色を抑え、失透安定性を高める効果が大きく、P2O5含有量の少ない場合、ガラスの耐候性を高める効果もある。しかし、BaOの導入量が25%を超えると、ガラスが不安定となるばかりでなく、転移温度も屈伏点も高くなるので、BaOの導入量を0〜25%にするのが好ましく、0〜20%にするのがより好ましい。
ZnOはガラスの屈折率や分散を高めるために導入し得る成分で、少量のZnOの導入でガラス転移温度や屈伏点、液相温度を低下させる効果もある。しかし、過剰に導入すると、ガラスの失透安定性が著しく悪化し、液相温度も逆に高くなる恐れがある。したがって、ZnO導入量を0〜25%にすることが好ましく、0〜20%の範囲がより好ましく、0〜15%の範囲がさらに好ましい。
MgO、CaO、SrOはガラスの安定性や耐候性を調整するために導入された成分であるが、あまりにも多く導入すると、ガラスが非常に不安定となるので、導入量をそれぞれ0〜20%にするのが好ましく、0〜15%がより好ましい。
Na2O、K2Oは、いずれもガラスの耐失透性を向上させるとともに、ガラス転移温度、屈伏点、液相温度を低下させ、ガラスの熔融性を改善するために導入し得る成分である。しかし、Na2OとK2Oのいずれかが30%より多いと、あるいはLi2O、Na2O及びK2Oの合計量が45%よりも多いと、ガラスの安定性が悪くなるばかりでなく、ガラスの耐候性や耐久性が悪くなる恐れがあるため、Na2OとK2Oの導入量をそれぞれ0〜30%にするのが好ましく、Li2O、Na2O及びK2Oの合計量を0〜45%にするのが好ましい。より好ましくは、Na2Oを0〜20%、K2Oを0〜25%であり、Na2Oを0〜5重量%にするのがさらに好ましい。
Al2O3、SiO2、La2O3、Gd2O3、Yb2O3、ZrO2、Ta2O3は、ガラスの安定性や光学恒数を調整するときに導入し得る成分である。しかし、これらの成分のすべてはガラス転移温度を高めるので、精密プレス成形性を低下させる恐れがある。したがって、その導入量を、Al2O3、SiO2についてはそれぞれ15%未満、La2O3、Gd2O3、Yb2O3、ZrO2、Ta2O3についてはそれぞれ0〜10%に抑えることが望ましく、Al2O3、SiO2についてはそれぞれ0〜12%、La2O3、Gd2O3、Yb2O3、ZrO2、Ta2O3についてはそれぞれ0〜8%にするのがより好ましい。
Sb2O3はガラスの清澄剤として有効であるが、1%超えて添加すると、精密プレス成形時にガラスが発泡しやすくなるので、その導入量は0〜1%とする。さらに、TeO2、Cs2Oなどのその他の成分も本発明の目的を損なわない程度であれば合計で5%までの導入可能である。
ただし、TeO2は毒性があるため、環境影響上から使用しないことが望ましく、同様にPbO、As2O3、CdO、Tl2Oや放射性物質、Cr、Hgなどの化合物も使用しないことが望ましい。また、Ag2Oも特別、必要もないので導入しないことが好ましい。
[P25−BaO含有ガラス]
25およびBaOを含有するガラスは、アッベ数(νd)55以上(特にアッベ数(νd)55〜80)の光学恒数を実現するガラスとして好ましい。
上記ガラスとしては、モル%表示で、P2O5 20〜65%、BaO 1〜50%、Li2O 0〜30%、Na2O 0〜20%、K2O 0〜15%、ZnO 0〜20%、B2O3 0〜25%、Al2O3 0〜10%、Gd2O3 0〜10%、MgO 0〜20%、CaO 0〜20%、SrO 0〜20%、Bi23 0〜10%、Sb2O3 0〜1%を含むガラスを例示することができる。
[P25−ZnO含有ガラス]
25およびBaOを含有するガラスも、アッベ数(νd)55以上(特にアッベ数(νd)55〜80)の光学恒数を実現するガラスとして好ましい。
上記ガラスとしては、モル%表示で、P2O5 20〜65%、ZnO 0.1〜20%、Li2O 0〜30%、Na2O 0〜20%、K2O 0〜15%、B2O3 0〜25%、Al2O3 0〜10%、Gd2O3 0〜10%、MgO 0〜20%、CaO 0〜20%、SrO 0〜20%、BaO 0〜50%、Bi23 0〜10%、Sb2O3 0〜1%を含むガラスを例示することができる。
[P25−BaO−ZnO含有ガラス]
25、BaOおよびZnOを含有するガラスも、アッベ数(νd)55以上(特にアッベ数(νd)55〜80)の光学恒数を実現するガラスとして好ましい。
上記ガラスとしては、モル%表示で、P2O5 20〜65%、BaO 1〜50%、ZnO 0.1〜20%、Li2O 0〜30%、Na2O 0〜20%、K2O 0〜15%、B2O3 0〜25%、Al2O3 0〜10%、Gd2O3 0〜10%、MgO 0〜20%、CaO 0〜20%、SrO 0〜20%、Bi23 0〜10%、Sb2O3 0〜1%を含むガラスを例示することができる。
25−BaO含有ガラス、P25−ZnO含有ガラス、P25−BaO−ZnO含有ガラスにおいて、P2O5は、ガラスの網目構造の形成物であり、20%以下ではガラスの安定性が低下し、65%を超えるとガラスの転移温度や屈伏点が上昇し、耐候性が悪化する傾向が生じる。
BaOは、屈折率を高め、耐失透性や耐候性を向上する働きを有するが過剰の導入により、ガラス転移温度や屈伏点が上昇し、ガラスの安定性も低下する。
ZnOは、ガラス転移温度や屈伏点を低下させ、ガラスの安定性も向上させる働きをするが、過剰の導入により分散が大きくなる。
Li2Oは、ガラス転移温度や屈伏点を低下させるが、過剰の導入により耐候性やガラスの安定性が低下し、屈折率も低下してしまう。
Na2O、K2Oは低温軟化性、耐失透性、ガラスの熔解性、安定性を向上させる働きをするが、過剰の導入によりガラスの安定性が低下し、耐候性も悪化してしまう。
23は、ガラスの熔解性や均質性を向上させる働きをするとともに、ガラス中の水酸基の結合性を変えて精密プレス成形時にガラスが発泡するのを防ぐ働きもする。しかし、過剰に導入すると耐候性が悪化し、ガラスの安定性も低下してしまう。
Al23は、耐候性を向上させる働きをするが、過剰の導入によりガラス転移温度や屈伏点が上昇し、ガラスの安定性、熔解性が悪化してしまう。また屈折率も低下してしまう。
Gd23は、屈折率を高めるとともにガラスの安定性を向上する働きをするが、過剰の導入により分散が大きくなったり、ガラスの安定性が低下してしまう。
MgOは、耐候性、安定性を高め、低温軟化性を改善する働きをするが、過剰導入によりガラスの安定性が低下してしまう。
CaO、SrOは、ガラスの安定性を向上させるが、過剰導入によりガラスの耐久性が低下し、屈折率も低下してしまう。
Bi23は、屈折率を高めるとともにガラスの安定性を向上させる任意成分である。
Sb23は、清澄剤として添加され得る。過剰の添加により精密プレス成形時にガラスが発泡しやすくなる。
以上のガラスは燐酸含有ガラスの例であるが、これらのガラスは精密プレス成形用のガラスとして非常に有用ではあるが、濡れ上がりにより良質なプリフォーム成形が難しいガラスでもある。しかし、このようなガラスでも本発明の流出パイプを使用し、あるいは本発明の製造方法を適用することにより、高い生産性のものとにプリフォームを製造することができ、延いては高品質な光学素子を高い生産性のもとに製造することができる。
(精密プレス成形用プリフォームの製造方法(別法))
本発明の精密プレス成形用プリフォームの製造方法(第4の態様)は、流出パイプの流出口より流出する溶融ガラスから溶融ガラス塊を繰り返し分離して、複数のガラス塊を連続して成形する工程と流出口を含む流出パイプ先端のクリーニング工程を交互に行うことを含む精密プレス成形用プリフォームの製造方法である。
流出パイプの流出口より流出する溶融ガラスから溶融ガラス塊を繰り返し分離して、複数のガラス塊を連続して成形する工程は、前記第1〜第3の態様と同様に行うことができる。但し、ガラス塊成形工程は、前記第1〜第3の態様以外の方法、即ち、流出パイプを使用しないで実施することもできるが、クリーニングからクリーニングまでの時間を延長するために、前記第1〜第3の態様の流出パイプを使用することが望ましい。
さらに本発明の第4の態様は、流出口を含む流出パイプ先端のクリーニング工程を前記ガラス塊成形工程と交互に行うことを含む。
クリーニング工程は、ガラス塊成形工程において、所定個数または所定時間ガラス塊を成形する毎に行うことができ、所定個数または所定時間は、ガラスの種類(溶融ガラスの濡れ上がりによる脈理の発生し易さ)等を考慮して適宜決定できる。
前記第1〜第3の態様の方法によっても、濡れ上がりによる脈理を完全に抑制できない場合もある。このような場合は、溶融ガラスからの特定成分の揮発量が多い場合が多い。このような場合は、濡れ上がった溶融ガラスが変質し脈理が発生し始める前に、変質したガラスを除去することが有効である。即ち、本発明の第4の態様は、本発明の第1〜第3の態様の方法によっても流出口最先端のガラスの変質を十分に抑制でない場合に特に有効である。変質ガラスを除去する間隔はガラス組成や流出条件、そして前記した方法によって長くすることが可能である。そこで、本発明の第4の態様では、変質ガラスを除去する目的で、クリーニング工程を設ける。クリーニング工程は、流出パイプ先端部分を溶融ガラスに浸漬することで行う。
より具体的には、クリーニング工程は、例えば、流出する溶融ガラスを受ける受け型を流出口に接近させ、受け型上に溜まる溶融ガラスにパイプ先端部分が浸漬するまで溶融ガラスを溜め、次いで、受け型を下方に移動させて溶融ガラス流から溶融ガラス塊を分離し、分離した溶融ガラス塊を廃棄することで行うことができる。パイプ先端部分の溶融ガラスへの浸漬は、パイプ先端部分外周に濡れ上がった溶融ガラスの少なくとも1mmが浸漬するように行うことが、より効果的に流出パイプ先端をクリーニングするという観点から好ましい。
本方法によれば、流出口先端外周部の変質ガラスが、溶融ガラス溜まりに熔けこんで洗い取られるため、流出口外周部の溶融ガラスを常にリフレッシュすることができる。本方法は降下切断法に特に適している。本方法では、溶融ガラスをキャストする際に成形型(受け型)を流出口に接近させるが、成形型の位置を、所定時間おきに通常より高くするだけで良いからである。別の方法として、クリーニング時のみキャスト時間を長くする方法を採用することもできる。このような方法は、制御ソフトの変更のみで完全自動化が可能であり、非常に実用的である。一方、自然滴下法では、成形型以外の受け型にガラスを溜め、同様な操作を行わせる必要があり、自動化はやや複雑になるが可能である。もちろん本発明の方法を手動で行っても良い。なお本操作後は、一時的にプリフォーム重量が不安定化する場合が有る。よって、そのような場合には、プリフォーム重量が安定してからプリフォーム製品の採取を再開することが望ましい。
本発明の第1〜第4のプリフォームの製造方法においては、流出口先端外周面に濡れ上がったガラスを保温又は加熱することが好ましい。
溶融ガラスからの溶融ガラス塊の製造方法においては、流出パイプへの溶融ガラスの濡れ上がりによる脈理を完全に抑制できない場合もある。このような場合、濡れ上がったガラスが結晶化することで脈理が発生することが確認されている。流出口先端部は、普通は露出状態であり、しかも成形型からガスが噴出する場合、このガスで冷やされる。そのため、流出口最先端外周に付着している溶融ガラスの結晶化がより起こりやすくなる。また流出口先端部では、流出口で加熱された外気の上昇気流が発生しており、この上昇気流も流出口先端部を冷やす原因となっている。
そこで本発明では、流出口先端外周部に付着しているガラスを保温又は加熱するために、流出口先端の外側に保温構造及び又は加熱体を設けることが好ましい。具体的には、図6のように流出口4の先端から上部を円筒状のカバー6に入れて保温構造するとともに、流出口先端部での上昇気流を発生しにくくする方法(カバー6の上部を密閉する)が有効である。図6においては、カバー6の上部は耐火断熱材7で密閉されている。
流出口先端から上部を筒状のカバーに入れてカバー上部を閉じるまたはカバー上部とノズルとのクリアランスを極力小さくすることにより前記上昇気流を発生しにくくすることができる。また上昇気流低減のため、カバー下端の開口部もガラスの流出、キャストを妨げない範囲で小さくすることが望ましい。さらに、ガラスの流出、成形型へのキャストを妨げず、成形型をノズルの近づけた時でもカバーが成形型に接触しない範囲でカバーの下端を流出口先端よりも下方に延ばすこともできる。また、保温機能を高めるためにカバーを二重管で構成して内部を減圧密閉してもよい(真空断熱)し、ノズルから放射される熱線をカバー内部に極力閉じ込めるため、カバーのノズルに面する面に熱線反射膜をコートしてもよい。石英ガラスのような耐熱ガラスで二重管を作る場合には、二重管内部に熱線反射膜をコートしてもよい。熱線反射膜としては、金、アルミニウム、銅、銀などの金属膜を例示することができる。中でも熱線反射率の高い金コートが好ましい。上記金属膜は蒸着などの公知の手法により形成することができる。このようにして上記保温効果を高めることができる。
また図7のように、流出口外周に濡れ上がった溶融ガラスを外側から加熱できるよう、流出口外周より少し内径が大きい加熱体8を設けることも有効である。加熱体の加熱方式は、通電加熱、高周波加熱、赤外線加熱など何でも良いが、流出口周りの構造をコンパクト化する必要から高周波加熱方式が特に好ましい。図7には、高周波加熱コイル9が設けられている。なお加熱体の内径は、流出口周りにガラスが付着した状態で加熱体内面にガラスが付着しない径とすれば良い。
本発明の精密プレス成形用プリフォームの製造方法の第1〜第4の態様においては、流出口から溶融ガラス塊を滴下するか、流出する溶融ガラス流先端を支持体または受け型で支持した後、前記支持体または受け型を降下して前記先端を含む溶融ガラス塊を溶融ガラス流から分離するか、または溶融ガラス流先端を支持体で支持した後、前記支持を取り除いて前記先端を含む溶融ガラス塊を溶融ガラス流から分離するかのいずれかの方法により、所定質量の溶融ガラス塊を得ることが好ましい。
ガラス塊の分離方法の具体例を以下に示す。
具体例1
2枚の板状の割り部材を突き合わせた状態とし、その境界部の上面で流出ガラスの先端を受ける。割り部材上に所定重量の溶融ガラスが溜まった時、割り部材を閉じたまま急降下し、ガラス流から溶融ガラス塊を切断分離する。次に、割り部材を開き溶融ガラス塊を落下させ、割り部材の下方に待機させたプリフォーム成形型の凹部に溶融ガラス塊を挿入する。
具体例2
2枚の板状の割り部材で構成された支持体を突き合わせた状態とし、その境界部の上面で流出ガラスの先端を受ける。割り部材上に所定重量の溶融ガラスが溜まった段階で割り部材を開き、割り部材の下方に待機させたプリフォーム成形型の凹部に溶融ガラス塊を自然落下させる。
具体例3
角棒状の支持体の上面で流出ガラスの先端を受ける。支持体上に所定重量の溶融ガラスが溜まった時、支持部材を急降下し、ガラス流から溶融ガラス塊を切断分離する。次に、支持部材を回転又は傾斜させ、割り部材の下方に待機させたプリフォーム成形型の凹部に溶融ガラス塊を挿入する。
具体例4
回転テーブル上に均等配置した複数の成形型を、順次流出ノズル直下に移動させ、成形型に直接キャストする。具体的には、成形型の凹部で溶融ガラス流の先端を受け、成形型上に所定重量の溶融ガラスが溜まった時、成形型を急降下し、ガラス流から溶融ガラス塊を切断分離する。
ガラス流を切断し溶融ガラス塊を分離する際、溶融ガラス流が鉛直下方に引き伸ばされることが重要である。鉛直下方に引き伸ばされることで、ノズル外周に濡れ上がり、変質したガラスを過剰に巻き込む危険性がなくなるので、脈理を抑制することができる。
さらに、本発明の精密プレス成形用プリフォームの製造方法の第1〜第4の態様においては、分離されたガラス塊のプリフォーへの成形を、ガラス塊に風圧を加え、浮上させながら行うことが好ましい。
浮上成形の方法の具体例を以下に示す。
具体例1
溶融ガラス塊を収容する凹部を有し、凹部の一部又は全面から気体を噴出するための細孔を設けた成形型を用いる。具体的には、1〜数10個の細孔を凹部中心に対し対称配置するか、凹部自体を多孔質部材で形成する。このような成形型を用い、凹部内面から気体を噴出させた状態で溶融ガラス塊を挿入する。溶融ガラス塊と成形型の界面にはガス層(所謂ガスクッション)が形成され、型とガラスが概略非接触状態となる。急冷によるガラス塊の割れを防止するため、成形型はヒーターで100〜300℃に加熱しておく。このように、成形型上で概略浮上状態を保ちながら冷却固化することで、表面に欠陥のないプリフォームが得られる。
具体例2
ロート状の凹部(円錐状)の底部中心にガスの噴出穴を有する成形型を用意する。凹部からガスを噴出した状態で、凹部に溶融ガラス塊を挿入すると、溶融ガラス塊は気流により概略浮上・回転しながら球状化され固化し球状のプリフォームとなる。
[光学素子の製造方法]
本発明の光学素子の製造方法は、ガラス製のプリフォームを加熱し、精密プレス成形する光学素子の製造方法において、上記本発明の製造方法により作製した精密プレス成形用プリフォームを加熱、精密プレス成形することを特徴とするものである。
精密プレス成形はモールドオプティクス成形法とも呼ばれ、既に当該発明の属する技術分野においてはよく知られたものである。光学素子の光線を透過したり、屈折させたり、回折させたり、反射させたりする面を光学機能面と呼ぶ。例えばレンズを例にとると非球面レンズの非球面や球面レンズの球面などのレンズ面が光学機能面に相当する。精密プレス成形法はプレス成形型の成形面を精密にガラスに転写することにより、プレス成形で光学機能面を形成する方法である。つまり光学機能面を仕上げるために研削や研磨などの機械加工を加える必要がない。
本発明によれば、球面レンズ、非球面レンズ、マイクロレンズなどの各種のレンズ、回折格子、回折格子付のレンズ、レンズアレイ、プリズムなどの各種光学素子、用途としてはデジタルカメラやフィルム内蔵カメラの撮像光学系を構成するレンズ、カメラ付携帯電話搭載の撮像レンズ、CDやDVDをはじめとする光記録式媒体のデータ読取および/またはデータ書込み用に使用する光線を導光するためのレンズなど各種光学素子を作製することができる。
なお、これら光学素子には必要に応じて、反射防止膜、全反射膜、部分反射膜、分光特性を有する膜などの光学薄膜を設けることもできる。
精密プレス成形法に使用するプレス成形型としては公知のもの、例えば炭化珪素、超硬材料などの型材の成形面に離型膜を設けたものを例示できるが、炭化珪素製のプレス成形型が好ましい。離型膜としては炭素含有膜、貴金属合金膜などを使用することができるが、耐久性、コストの面などから炭素含有膜が好ましい。
精密プレス成形法では、プレス成形型の成形面を良好な状態に保つため成形時の雰囲気を非酸化性ガスにすることが望ましい。非酸化性ガスとしては窒素、窒素と水素の混合ガスなどが好ましい。
プレス圧力は適宜調整すればよいが、50〜150kgf/cm2の範囲を目安にすることができる。また、プレス時間も適宜調整すればよいが、10〜300秒の範囲を目安にすることができる。
次に本発明の光学素子の製造方法に特に好適な精密プレス成形法について説明する。
(精密プレス成形法1)
この方法は、プレス成形型に前記プリフォームを導入し、前記成形型とプリフォームを一緒に加熱し、精密プレス成形するというものである(精密プレス成形法1とういう)。
精密プレス成形法1において、プレス成形型と前記プリフォームの温度をともに、プリフォームを構成するガラスが106〜1012dPa・sの粘度を示す温度に加熱して精密プレス成形を行うことが好ましい。
また前記ガラスが1012dPa・s以上、より好ましくは1014dPa・s以上、さらに好ましくは1016dPa・s以上の粘度を示す温度にまで冷却してから精密プレス成形品をプレス成形型から取り出すことが望ましい。
上記の条件により、プレス成形型成形面の形状をガラスにより精密に転写することができるとともに、精密プレス成形品を変形することなく取り出すこともできる。
(精密プレス成形法2)
この方法は、前記プリフォームを加熱(予熱)した後に、プレス成形型に導入し、精密プレス成形する、すなわち、プレス成形型とプリフォームを別々に予熱し、予熱したプリフォームをプレス成形型に導入して精密プレス成形するというものである(精密プレス成形法2という)。
この方法によれば、前記プリフォームをプレス成形型に導入する前に予め加熱するので、サイクルタイムを短縮化しつつ、表面欠陥のない良好な面精度の光学素子を製造することができる。なおプレス成形型の予熱温度をプリフォームの予熱温度よりも低く設定することが好ましい。このようにプレス成形型の予熱温度を低くすることにより、前記型の消耗を低減することができる。また、プリフォーム加熱をプレス成形型内で行う必要がないので、使用するプレス成形型の数を少なくすることもできる。
精密プレス成形法2において、前記プリフォームを構成するガラスが109dPa・s以下、より好ましくは109dPa・sの粘度を示す温度に予熱することが好ましい。
また、前記プリフォームを浮上しながら予熱することが好ましく、さらに前記プリフォームを構成するガラスが105.5〜109dPa・s、より好ましくは105.5dPa・s以上109dPa・s未満の粘度を示す温度に予熱することがさらに好ましい。
またプレス開始と同時又はプレスの途中からガラスの冷却を開始することが好ましい。
なおプレス成形型の温度は、前記プリフォームの予熱温度よりも低い温度に調温させるが、前記ガラスが109〜1012dPa・sの粘度を示す温度を目安にすればよい。
この方法において、プレス成形後、前記ガラスの粘度が1012dPa・s以上にまで冷却してから離型することが好ましい。
精密プレス成形された光学素子はプレス成形型より取り出され、必要に応じて徐冷される。また、レンズを成形した場合には、心取り加工を行ってもよい。また、必要に応じて表面に光学薄膜をコートしてもよい。
実施例1
まず白金合金母材(95Pt−5Au)を研削加工して表1に示す形状寸法の流出口(図8参照)を作製し、ガラス流出パイプ先端に取り付けた。次に図示しないガラス溶解設備を使用し、表3に組成を示すP2O5を24モル%含有する溶融ガラスのカレットを溶解、清澄し、920℃に温度制御した流出口から溶融ガラスを流出させた。次に、回転テーブル円周上に複数個装着した成形型を、順次流出口に移動させ、降下切断法により所定重量の溶融ガラスを各成形型上にキャストした。なお成形型のガラス受け部には細孔があり、溶融ガラス塊を浮上成形するための気体が噴き出している。よって、成形型上の溶融ガラス塊は、ガスクッション上に保持されたまま固化され、傷や冷却による皺等の欠陥が無い1.8グラムのプリフォームを得た。また成形型は図示しないヒーターで300℃前後に加熱しカン割れを防止した。このようにプリフォームの成形を24時間以上継続し、脈理の発生状況を確認した。なお流出口先端では、前記したような溶融ガラスの脈動が生じていた。
表1のように、本実施例の流出口を使用した場合においては、少なくとも10時間以上は脈理の発生が無かった。一方、比較例の流出口を使用した場合は、成形開始から5時間以内に濡れ上がりによる脈理が発生した。
実施例2
表2のNo.5の流出口を装着し、その外側に内径8mm、外径11mmの白金合金製の円筒を流出口にネジで固定した。流出口近傍は高周波加熱により920℃に加熱した。流出口先端の外面は装着した白金合金製円筒により加熱され、ガラス流出量が0.85kg/hrから0.91kg/hrに増加した。この状態で実施例1と同様な方法で1.8グラムのプリフォームを成形したところ、脈理が発生し始める時間を21時間まで延長することができた。
実施例3
流出口を表1のNo.1の流出口に変更した以外は実施例2の条件と同じ設定で、1.8グラムのプリフォームを成形した。その結果、24時間以上にわたり脈理は発生しなかった。
実施例4
ガラスを表3に示すNo.2の組成のガラス(このガラスは、表3に示すNo.1の組成のガラスより濡れ上がり傾向が強い)に変更し、流出口として表1のNo.3の流出口を用い、流出口温度を950℃に設定した以外は実施例1と同様にプリフォームを成形した。その結果、24時間以上にわたり脈理は発生しなかった。
実施例5
表1のNo.1の流出口の外側に石英ガラス製の円筒を挿入し、流出口の上部(ガラスが濡れ上がっていない部分)に保温断熱材を充填した。この状態で実施例1と同様の条件で1.8グラムのプリフォームを成形した。流出口周りに保温構造を装着しない場合は13時間程度で脈理が発生したが、保温構造を装着することで24時間以上にわたり脈理は発生しなかった。
次に、流出口先端から上部を、石英ガラス製の二重管構造(内部は減圧密封されている)の円筒カバーに入れてカバー上部を閉じ、カバー下部の開口部もガラスの流出、キャストを妨げない範囲で極力小さくした保温構造を用いて、上記条件でプリフォームを成形した。なおカバーのノズルに面した面には金コートを施して、保温効果をさらに高めた。このようにして、24時間以上にわたり脈理を発生させずに品質の高いプリフォームを量産した。
実施例6
表2のNo.2の流出口を用い、実施例1と同様な条件で1.8グラムのプリフォームを成形した。但し、成形開始から1時間ごとにキャスト時の型位置を通常より5mm上げ、キャスト後半で流出口先端が溶融ガラス溜まりに埋没するように設定した。その後で成形型を降下してガラス流を切断後、通常のプリフォームと同様に成形した。本操作を5〜10回繰り返し、本操作中に成形したプリフォームは本操作前に成形したプリフォームに混入しないよう廃棄した。次にキャスト時の型位置を通常位置に戻し、1個以上プリフォームを成形し廃棄した後、元どおり成形を継続した。本操作を1時間毎に行うことで、流出口先端が流出ガラスで強制的に洗われるため、流出口外周に付着したガラスが変質しなくなり脈理が発生しなくなった。なお本操作は、全て自動的に行った。
実施例7
上記各実施例で得られたプリフォームを加熱し、図9に示すプレス装置を用い、精密プレス成形(非球面精密プレス)することにより非球面レンズを得た。精密プレス成形の詳細は次にとおりである。上記プリフォームを、非球面形状を有するSiC製の下型22及び上型21の間に静置した後、石英管11内を窒素雰囲気としてヒーター12に通電して石英管11内を加熱した。成形金型内部の温度をガラスの屈伏点+20〜60℃となる温度に設定し、同温度を維持しつつ、押し棒13を降下させて上型21を押してプレス成形型内のプリフォームを精密プレス成形した。成形圧力8MPa、成形時間30秒とし、プレス後、成形圧力を減少させて成形された弗燐酸塩ガラス製の非球面レンズを下型22及び上型21と接触させたままの状態でガラス転移温度−30℃の温度までに徐冷し、次いで室温まで急冷した。その後、非球面レンズをプレス成形型から取り出し、形状の測定および外観検査を行った。得られた非球面レンズは、きわめて精度の高いレンズであった。このレンズを観察したところ、使用したプリフォーム同様、高品質なレンズであることが確かめられた。
なお、プリフォーム表面には全表面に離型膜を設けることが好ましい。離型膜としては炭素膜や自己組織化膜などを例示することができる。
プレス成形型に予熱された上記プリフォームを導入し、精密プレス成形する方法でも高品質、高精度な弗燐酸塩ガラスからなる非球面レンズを成形することができた。
なお、プリフォームの形状、寸法は作製しようとする精密プレス成形品の形状等により適宜、決めればよい。
上記実施例では非球面レンズを成形したが、最終製品の形状に合わせたプレス成形型を用いることにより、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、平凸レンズ、両凸レンズ、平凹レンズ、両凹レンズなどの各種非球面レンズあるいは各種球面レンズ、あるいはプリズム、ポリゴンミラー、回折格子などの光学素子を作製することもできる。
なお、得られた各光学素子の光学機能面には必要に応じて反射防止膜あるいは高反射膜などの光学多層膜を形成することもできる。
熱間成形プレフォームの表面の脈理の様子。 溶融ガラスが流出する流出パイプの側面図。 流出パイプからの溶融ガラス塊の形成動作の模式説明図。 溶融ガラスが流出する流出パイプの側面図。 溶融ガラスが流出する流出パイプの側面図。 保温カバーを有する流出パイプの側面図。 加熱体を有する流出パイプの側面図。 流出パイプの先端の寸法説明図。 実施例で用いたプレス装置の概略説明図。

Claims (15)

  1. 流出する溶融ガラスから溶融ガラス塊を形成するための流出パイプであって、
    溶融ガラス塊の形成が前記流出パイプの先端の流出口において行われ、
    前記流出パイプは、その先端に段差部を有し、段差部の外径は、段差部に隣接する流出パイプの外径より小さく、
    前記段差部の外径が2〜6mmであり、
    前記段差部の長さは5mm以下である
    ことを特徴とする流出パイプ。
  2. 流出パイプとの素材との接触角が30°以下の溶融ガラスから溶融ガラス塊を形成するために用いられる請求項1に記載の流出パイプ。
  3. 流出パイプの流出口より流出する溶融ガラスから一定質量の溶融ガラス塊を繰り返し分離して、複数のガラス塊を連続的に成形する精密プレス成形用プリフォームの製造方法において、
    前記流出パイプとして、請求項1または2に記載の流出パイプを用いることを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  4. 流出パイプの流出口より流出する溶融ガラスから一定質量の溶融ガラス塊を繰り返し分離して、複数のガラス塊を連続的に成形する精密プレス成形用プリフォームの製造方法において、
    前記流出パイプとして、その先端に段差部を有し、段差部の外径は、段差部に隣接する流出パイプの外径より小さい流出パイプを使用し、
    流出口から上方に濡れ上がる溶融ガラスが段差部の下端面に接触し、かつ段差部の外周壁に濡れ上がる溶融ガラスの少なくとも一部が流出パイプの先端に形成され分離する前の溶融ガラス滴と一体化する期間を含むことを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  5. 流出パイプの流出口より流出する溶融ガラスから一定質量の溶融ガラス塊を繰り返し分離して、複数のガラス塊を連続的に成形する精密プレス成形用プリフォームの製造方法において、
    前記流出パイプは、その先端に段差部を有し、段差部の外径は、段差部に隣接する流出パイプの外径より小さく、かつ段差部の長さは5mm以下であり、
    前記段差部の外周面に溶融ガラスを濡れ上がらせた状態で、前記溶融ガラス塊の分離を行うことを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  6. 前記流出口付近のパイプ外周面に濡れ上がった溶融ガラスの流出口外周における厚みが、溶融ガラス塊の分離の度に変化する状態で前記分離を行うことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  7. 流出口先端の外径が2〜6mmであり、流出口先端から段差までの距離が1〜4mmであることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  8. 前記成形後、流出口を含む流出パイプ先端のクリーニング工程を行うことを含み、
    前記クリーニング工程、前記パイプ先端部分を溶融ガラスに浸漬することで行う、請求項3〜7のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  9. 流出口先端外周面に濡れ上がったガラスを保温又は加熱することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  10. 流出口から溶融ガラス塊を滴下するか、流出する溶融ガラス流先端を支持体または受け型で支持した後、前記支持体または受け型を降下して前記先端を含む溶融ガラス塊を溶融ガラス流から分離するか、または溶融ガラス流先端を支持体で支持した後、前記支持を取り除いて前記先端を含む溶融ガラス塊を溶融ガラス流から分離するかのいずれかの方法により、所定質量の溶融ガラス塊を得ることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  11. 分離されたガラス塊のプリフォームへの成形を、ガラス塊に風圧を加え、浮上させながら行うことを特徴とする請求項10のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  12. 燐酸含有ガラスからなるガラス塊を成形することを特徴とする請求項11のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  13. ガラス製のプリフォームを精密プレス成形する光学素子の製造方法において、
    請求項12のいずれか1項に記載の製造方法によってプリフォームを作製し、作製したプリフォームを精密プレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
  14. プレス成形型にプリフォームを導入し、前記成形型とプリフォームを一緒に加熱して精密プレス成形することを特徴とする請求項13に記載の光学素子の製造方法。
  15. プレス成形型に予熱されたプリフォームを導入して、精密プレス成形することを特徴とする請求項13に記載の光学素子の製造方法。
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