JP2005261396A - メイラード反応阻害剤 - Google Patents

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忠博 永田
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Abstract

【課題】安全性に優れたメイラード反応阻害剤を提供する。
【解決手段】本発明は、ネギ類植物精油成分に含まれるモノスルフィド化合物、またはネギ類植物のモノスルフィド化合物含有画分を有効成分として含有するメイラード反応阻害剤を提供する。
【選択図】なし


Description

本発明はメイラード反応阻害剤に関する。より詳しくは、本発明は食経験のある植物の抽出物またはそれに含まれる化合物を有効成分とする、食品に対しても安全性の高いメイラード反応阻害剤に関する。さらに本発明は、当該メイラード反応阻害剤を利用した食品処理剤、メイラード反応阻害方法、並びにメイラード反応阻害剤で処理することによってメイラード反応が阻害されてなる食品に関する。
食品の褐変反応は、食品に適度な色合いを与えたり、香ばしい香りを付与するために、古来から使用されている。この褐変反応は、酵素的反応と非酵素的反応に大別される。酵素的反応には、例えば、ポリフェノール化合物がポリフェノールオキシダーゼの作用により結合してメラニン様物質を作る反応が含まれる。非酵素的反応にはカラメル化反応およびメイラード反応が含まれる。このうち、カラメル化反応は、糖分が過熱されて相互に反応して褐色化し、還元性の高分子化合物となる反応であるが、広義には、この糖の褐変による反応も、メイラード反応に含まれる(非特許文献1)。
メイラード反応は、別名、アミノカルボニル反応、メラノイジン反応、または非酵素的褐変反応とも呼ばれているもので、アミノ基(NH2−)のカルボニル基(−CO−)への求核反応による縮合反応である。食品を煮たり焼いたりすると香ばしい匂いが生じると共に、着色が起こってくることが古来より知られているが、これは、食品中の還元糖とタンパク質のアミノ基との間で起こるメイラード反応によるものである。メイラード反応の結果として、その反応生成物により褐変を生じるため、食品分野においては、食品に適度な焼き色を付与するために利用されている。パン、クッキー、カステラ、みそ、乳製品などがその好例である。しかし、過度な反応によると着色の度合いが強くなりすぎて製品としては不都合が生じることもある。
メイラード反応に関与するカルボニル基を有する化合物としては、アルデヒドやケトンだけでなく、糖や脂肪等から生じるカルボニル化合物が含まれる。また、メイラード反応に関与するアミノ基を有する化合物としては、遊離アミノ酸、ペプチド、たんぱく質、及びアミン類がある。このように様々な食品中には、メイラード反応に関与するカルボニル基やアミノ基を有する化合物がたくさん含まれているので、あらゆる食品分野でメイラード反応が起こる可能性がある。
メイラード反応のメカニズムは非常に複雑で、現在でもその全貌が完全に明らかになっているとは言いがたいが、1)糖とアミノ基とが結合して窒素配糖体やアマドリ転位生成物を生成する初期段階、2)次にこれらが分解して反応性の強い種々のカルボニル化合物を生じる中間段階、3)カルボニル化合物がアミノ化合物と反応して(アミノ−カルボニル反応)、褐色の物質を作る終期段階、に分けられることが報告されている。そして、上記アミノ−カルボニル反応によって生成する褐色の物質をメラノイジンと呼ぶ。メラノイジンの化学構造の詳細については、未だ不明である。
メイラード反応に関与する化合物は、次のように分類されて理解されている。
(1) カルボニル化合物
代表的な素材としては、グルコース、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)、フルフラール、ヘキサナール、シトラール、シクロエキサノンなどが挙げられ、とくに2位または3位の位置に水酸基を有するアルデヒド(α、β−不飽和アルデヒド)は脱水すると、2−エナールを生成するので褐変しやすい。
(2) 還元糖
グルコース、マンノース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、リボースなど。これらの糖は、酸性条件下やアルカリ条件下で褐変しやすい物質に変化する。たとえば、グルコースを弱アルカリ条件下におくと、異性化がおこる。このとき、グルコースはフルクトースとマンノースの3つの混合物にかわるといわれているが、ほとんどの場合グルコースとフルクトースの混合物である。この変化は、1,2−エンジオールを通り、強アルカリ性では空気中の酸素と反応し、酸化分解が起こる。これらの糖は単独でも褐変を起こしやすいことが知られている(非特許文献2)。
(3) レダクトン類
レダクトンとはアスコルビン酸のように、2,6−ジクロルフェノールインドフェノール色素を還元して脱色するような還元力を示すエンジオール構造を有する化合物の総称である。
これら(1)〜(3)の3種類のうち、いずれかの化合物とアミノ化合物(アミノ基を含む化合物)とが共存する場合、褐変が促進されることが知られている。
早瀬らはグルコースとグリシン(モル比1:1)を100℃加熱し、透析して得られる非透析メラノイジンについて、部分構造を解析した結果、窒素周辺の構造、還元糖側鎖の構造、還元糖炭素1位の構造、重合様式を推定し、四級エナミン型、ピロール環、2級アミド態などの存在を明らかにしている(非特許文献3)。
このように、従来よりメイラード反応のメカニズムやその生成物についての研究は進められているものの、その反応を阻害する素材や方法については、今だ十分な検討がなされていない。特に、食品そのもの或いは食品に用いる素材や添加物の分野では、褐色の色調を望まない向きも多いことから、メイラード反応を阻害する作用を有する新規な素材並びにメイラード反応を阻害する方法の開発が望まれている。とりわけタンパク質を含む、例えば粉乳、乾燥卵、及び食肉などを用いた食品については、褐変をもたらすメイラード反応を防止することが強く望まれている。
本発明に関連する技術として、非特許文献4には、ひき肉製品にタマネギとニンニクの搾汁を添加して、貯蔵した加熱ひき肉製品の酸化を抑制する技術が記載されている。しかし、当該文献にはメイラード反応に関する記載はなく、また酸化防止方法とメイラード反応との関連性は明らかにされていない。
また、従来よりアスコルビン酸はメイラード反応阻害に利用されているが、アスコルビン酸は使用する食品等の条件によって、逆にメイラード反応促進剤として働く場合があり、安定して所望の効果が得られないという問題がある。また、亜硫酸塩によってグリシン−グルコースのメイラード反応の反応速度を検討する研究が行なわれているが(非特許文献5)、メイラード反応の抑制に対して汎用性が乏しく、実用化には至っていないのが現状である。
藤巻正生ら編、改訂新版食品化学、pp105-108、朝倉書店(1976) 藤巻正生ら編、改訂新版食品化学、pp60、朝倉書店(1976) 早瀬文孝、加藤博通、油化学、38,865(1981) Jurdi-Haldeman,D.,Macneil,J.H.,&Yared,D.M.,J.Food Potec., 50,411(1987) Swales,S.,&Wedzicha,B.L.,Food add. Contam..9(5), 479-483 (1992)
本発明はメイラード反応を阻害するための製剤、並びにその方法を提供することを目的とする。好適には、本発明はメイラード反応に起因して生じる褐変を抑制する製剤、並びにその方法を提供することを目的とする。なお、メイラード反応阻害剤を食品に適用する場合には、そのもの自体の安全性や加熱等によって生じる生成物の安全性が確認されていることが必要である。そこで、本発明のより好適な目的は、食経験のある植物から得られる成分を有効成分とするメイラード反応阻害剤を提供することである。
さらに本発明の目的は、当該メイラード反応阻害剤を含有する食品処理剤、及び当該処理剤で処理されることによってメイラード反応が抑制されてなる食品を提供することである。
本発明者らは、従来から天然抽出物の機能性に着目し、とくにメイラード反応の活性を阻害する天然抽出物について鋭意研究を行ってきた。その結果、ネギ類に含まれているモノスルフィド化合物が、当該メイラード反応の阻害に対して優れた効果を発揮することを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本願発明は下記の態様を含むものである;
項1 モノスルフィド化合物を有効成分として含有するメイラード反応阻害剤。
項2 モノスルフィド化合物が、メチル基、プロピル基、アリル基、及びイソプロピル基より選択される少なくとも1つの官能基を有するものである、項1記載のメイラード反応阻害剤。
項3 有効成分として、アリルプロピルモノスルフィド、メチルプロピルモノスルフィド、ジイソプロピルモノスルフィド、ジメチルモノスルフィド、アリルメチルモノスルフィド、ジプロピルモノスルフィド、及びジアリルモノスルフィドより選択される1または2以上のモノスルフィド化合物を含有するものである、項1または2に記載するメイラード反応阻害剤。
項4 モノスルフィド化合物がネギ類植物に由来するものである、項1乃至3のいずれかに記載するメイラード反応阻害剤。
項5 ネギ類植物のモノスルフィド化合物含有画分を有効成分として含有するものである、項1乃至4のいずれかに記載するメイラード反応阻害剤。
項6 上記モノスルフィド化合物含有画分が、ネギ類植物の精油画分である項5に記載するメイラード反応阻害剤。
項7 上記モノスルフィド化合物含有画分が、ネギ類植物を水、有機溶剤またはこれらの混合溶媒で抽出して得られるものである、項5または6に記載するメイラード反応阻害剤。
項8 項1乃至7のいずれか1項に記載のメイラード反応阻害剤を含有する食品処理剤。
項9 項1乃至7のいずれか1項に記載のメイラード反応阻害剤を被験物質に適用する工程を含む、メイラード反応の阻害方法。
項10 項1乃至7のいずれか1項に記載のメイラード反応阻害剤または項8に記載の食品処理剤を用いて処理されることにより、メイラード反応が抑制されてなる食品。
本発明によれば、メイラード反応を抑制することができ、その結果、メイラード反応に起因する褐変を防止することができる。本発明のメイラード反応阻害剤は、食経験に基づいて安全性が確認されているネギ類に含まれているモノスルフィド化合物を有効成分とするものである。ゆえに安全性が高く、食品や医薬品など、ヒトに適用される製品の処理剤として好適に使用することができる。
本発明のメイラード反応阻害剤は、モノスルフィド化合物を有効成分として含むことを特徴とするものである。
なお、本発明が対象とするメイラード反応は、当該分野で定義されるもののなかでも広義のメイラード反応を意味するものであり、糖分が過熱されて相互に反応して褐色化し、還元性の高分子化合物となる反応(カラメル化反応)も、本発明が対象とするメイラード反応に含まれる。但し、本発明のメイラード反応阻害剤は、少なくとも1つのメイラード反応に対して阻害(抑制)効果を発揮するものであればよく、すべてのメイラード反応に対して阻害(抑制)効果を発揮する必要はない。
本発明で用いるモノスルフィド化合物は任意の官能基で修飾されていてもよい。例えば、かかる修飾されてなるモノスルフィド化合物には、1または2の、炭素数12、好ましくは炭素数8を越えない直鎖または分枝状の鎖状アルキル基で修飾されてなるモノスルフィド化合物が含まれる。ここで典型的な鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ペプチル基、メチルプロピル基、4,4−ジメチルペンチル基、オクチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、並びにこれらの分枝鎖状異性基および同様の基を例示することができる。好ましくは炭素数1〜6の低級アルキル基である。鎖状アルキル基で修飾されてなるモノスルフィド化合物として、より好適にはジメチルモノスルフィド、ジプロピルモノスルフィド、イソプロピルモノスルフィド、ジイソプロピルモノスルフィド、及びメチルプロピルモノスルフィドを挙げることができる。
また本発明で用いられるモノスルフィド化合物には、1または2の、アリル基(1−プロペニル基)で修飾されてなるモノスルフィド化合物も含まれる。かかるモノスルフィド化合物は、アリル基とともに上記アルキル基で修飾されていてもよい。かかるものとして、ジアリルモノスルフィド、及びアリルプロピルモノスルフィドを挙げることができる。
さらに、本発明で用いられるモノスルフィド化合物には、アリール基で修飾されてなるスルフィド化合物も含まれる。ここでアリール基は、環部分中に炭素数6〜10を含む単環(例えば、フェニル基)もしくは2環式芳香族基(例えば、ナフチル基)を有するものを挙げることができる。なお、単環もしくは2環式芳香族基は置換基を有していてもよく、例えば炭素数1〜6の低級アルキル基を有する置換フェニル基または置換ナフチル基を挙げることができる。
本発明で使用するモノスルフィド化合物の修飾官能基の種類は、上記に限らず任意であり、官能基の種類に特に制限はない。また、モノスルフィド化合物の由来は問わず、合成品であっても天然物に由来するものであってもよい。好ましくは天然物に由来するものであり、より好ましくはネギ類植物に由来するものである。
なお、ネギ類はユリ科の植物であり、例えば、タマネギ、ニンニク(りん茎)、リーキ、ラッキョウ、アサギ、ワケギ、ネギ(青)、ネギ(白)、ユリ(根茎)、アマドコロ、アマナ、エンレイソウ、オモト、カタクリ、ニラ(葉)、キダチアロエ(葉)、コバイケイソウ(根、根茎)、コヤブラン、ジャノヒゲ、スズラン、バイケイソウ、ハナスゲ、イヌサフラン(種子)などを挙げることができる。また野菜として食用されているネギ類植物としては、タマネギ、ネギ(白)、ラッキョウ、ニンニクなどを挙げることができる。好ましくはタマネギ(Allium cepa LINNE)を例示することができる。
なお、タマネギには多数の栽培種があり、品種改良によって異なった種類が作り出されている。タマネギの品種は甘タマネギと辛タマネギの2つのグループに大別することができる。甘タマネギはスペインやイタリアなどで栽培されるが、日本ではほとんど栽培されていない品種である。一方、辛タマネギは中央アジア(ルーマニア、ユーゴスラビア)を経由してアメリカを経て日本に導入されたものであり、日本で一般的に栽培されているものはほとんどこのグループに入る。本発明で用いられるタマネギは、これら甘タマネギと辛タマネギの別を問わず、いずれのタマネギをも使用することができる。辛タマネギとしては、そらち黄、ひぐま、セキホク、天心、月交、北もみじ86、もみじ、及びスーパー北もみじなどの晩生タイプのタマネギを挙げることができ、本発明においても好適に用いることができる。これらのタマネギは農協や、スーパーや商店などの小売り業者等から容易に入手可能である。
本発明のメイラード反応阻害剤は、有効成分として、上記ネギ類植物のモノスルフィド化合物含有画分を含むものであってもよい。モノスルフィド化合物の含有量の多さから、好ましくはタマネギである。なお、上記モノスルフィド化合物含有画分において「モノスルフィド化合物」としては、具体的には前述するモノスルフィド化合物を挙げることができるが、好ましくはジメチルモノスルフィド、ジプロピルモノスルフィド、イソプロピルモノスルフィド、ジイソプロピルモノスルフィド、メチルプロピルモノスルフィド、ジアリルモノスルフィド、及びアリルプロピルモノスルフィド、より好ましくは、プロピル基またはイソプロピル基を1または2つ有するモノスルフィド化合物(例えば、ジプロピルモノスルフィド、イソプロピルモノスルフィド、ジイソプロピルモノスルフィドなど)である。
なお、本発明のメイラード反応阻害剤は、有効成分として上記するようなモノスルフィド化合物を選択的に使用するものである。元来、ネギ類植物であるタマネギには、ジ−2−プロペニルサルフィド、ジメチルジスルフィド、メチル−2−プロペニルジスルフィド、ジプロピルジスルフィド、プロピル−2−プロペニルジスルフィド、cis-及びtrans-1−プロペニルプロピルジスルフィド、ジ−2−プロペニルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジプロピルトリスルフィド、ジ−2−プロペニルトリスルフィド、ジ−2−プロペニルテトラスルフィド、メタンチオール、2−ヒドロキシプロパンチオール、チオプロパナール、2−チオプパナール、3−ヒドロキシチオプロパナール、チオシアン酸、メチルチオスルフィネート、3,4−ジメチルチオフェンなどの香り成分が含まれていることが知られている。これらの成分は、タマネギの精油に含まれている。なお、タマネギに含まれる精油の含量は約0.1%前後である。
タマネギの精油には、上記のようにスルフィド化合物が多く含まれているが、主なスルフィド化合物は、ジプロピルジスルフィドが約86%、プロピルアリルジスルフィド6%である。
同様にネギ類植物であるニンニクには、アリイン、シクロアリイン、S−メチルシステインスルホキシド、γ−グルタミル−S−アリル−L−システイン、グルタチオンなどの成分が含まれていることが知られている。ニンニクに含まれるスルフィド化合物は、主としてジアリルジスルフィド74%、メチルアリルジスルフィド22%である。また、ニラに含まれるスルフィド化合物は、主としてメチルプロピルジスルフィド54%、ジプロピルジスルフィド38%であり、ラッキョウに含まれるスルフィド化合物は、主としてはジメチルジスルフィドが87%、アサツキに含まれるスルフィド化合物は、主としてジプロピルジスルフィド63%、ネギに含まれるスルフィド化合物は、主としてはジプロピルジスルフィド65%である(Agnes Sass-Kissら: J.Sci.Food Agri.1998,76,189-194, Sinhaら: J.Agric.Food Chem.1992,40,842-845, J.Agri. Food Chem.1980,28,1037-1038, Boelensら:J.Agr.Food Chem.1971,19,NO.5,984-991, Henk Maarse編:Volatilecompounds in foods and beverages, 1991,Marrcel Dekker 203-271)。
このように、ネギ類植物に含まれるモノスルフィド化合物の割合は少なく、それがゆえにこれらの機能特性については、従来、着目されることがなかった。
モノスルフィド化合物またはモノスルフィド化合物含有画分の取得に使用されるネギ類植物の部位は、特に制限されず、ネギ類植物の全植物体であっても、また部分部位、例えば葉、茎、根、花またはりん茎(可食部)のいずれであってもよい。好ましくは可食部であり、例えばネギ類植物としてタマネギを使用する場合は、葉及びりん茎(可食部)を好適な部位として用いることができる。
ネギ類植物に含まれるモノスルフィド化合物、及び当該化合物を含有する画分は、ネギ類植物(例えば、好適にはタマネギ、ネギ、ラッキョウ)を溶媒との共存下で抽出処理して調製取得することができる。ここでネギ類は、そのまま(生)の状態で抽出処理に供してもよいし、また生のままスライスしたり細断した破砕物、摺り下ろした物、または搾り液を抽出処理に供してもよい。さらにネギ類植物の乾燥物をそのままもしくは破砕、粉砕して抽出処理に供することもできる。
抽出に使用する溶媒(抽出溶媒)としては、メタノール、エタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-プロパノール、及び2-プロパノール等の炭素数1〜4の低級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、及びブチレングリコール等の多価アルコール;アセトン、エチルメチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ジクロロメタン、食用油脂、ヘキサン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2-トリクロロエテン及び水を挙げることができる。好ましくはエタノールなどの低級アルコール、及び水である。
上記に掲げる抽出溶媒は、1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて用いてもよい。より好ましくは水と他の成分との混合物であり、特に低級アルコールと水との混合物(含水アルコール)、より好ましくはエタノールと水との混合物(含水エタノール)を挙げることができる。含水アルコールとしては、具体的には水を40〜60容量%の割合で含む含水アルコールを好適に用いることができる。
抽出に用いるネギ類植物に対して用いられる上記抽出溶媒の割合としては、特に制限されないが、生のネギ類植物100重量部に対して用いられる溶媒の重量比に換算した場合、通常50〜20,000重量部、好ましくは10〜10,000重量部を例示することができる。
なお、モノスルフィド化合物含有画分に含まれるモノスルフィド化合物含有量を高める方法として、上記抽出方法に代えてまたは加えて、圧縮、蒸留(水蒸気蒸留、分画蒸留、アロマディスティレート、回収エッセンス)、抽出(チンクチャー、マセレーション、パーコレーション、オレオレジン、コンクリート、アブソリュート)、亜臨界または超臨界抽出方法などの方法を採用することもできる。
上記方法によって得られた抽出物から、さらにモノスルフィド化合物またはそれを含有する画分を単離・取得する方法として、HPLCを利用することもできる。HPLC条件は特に制限されないが、一例を挙げると下記の条件のHPLCを例示することができる。
(HPLC条件:分析用)
カラム:Develosil C30-UG-5(150mm×φ4.6mm)
溶出液:A液)アセトニトリル、B液)水
0分 - A液30%/B液70%、70分 - A液30%/B液70%、75分 - A液100%/B液0%、80分 - A液30%/B液70%
流速:0.5ml/min
検出:210nm
(HPLC条件:分取用)
システム:Waters社Delta Prep 4000
カラム:Develosil C30-UG-5(250mm×φ20mm)
溶出液:A液)アセトニトリル、B液)水
0分 - A液30%/B液70%、140分 - A液30%/B液70%、150分 - A液100%/B液0%、160分 - A液30%/B液70%
流速:12.0ml/min
検出:210nm。
本発明のメイラード反応阻害剤は、前述するモノスルフィド化合物またはネギ類植物から得られるモノスルフィド化合物含有画分だけからなってもよいし、また本発明の効果を妨げない範囲で、食品衛生上許容される担体や添加剤を含んでいてもよい。担体としては、水;エタノール等の低級アルコール;プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;砂糖、果糖、ぶどう糖、デキストリン、シクロデキストリン、環状オリゴ糖などの糖質;ソルビトールなどの糖アルコール;アラビアガム、キトサン、キサンタンガムなどのガム質;清酒、ウォッカや焼酎などの蒸留酒;油脂類、グリシン、酢酸ナトリウムなど製造用剤を例示することができる。また、添加剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤、 を例示することができる。
また、本発明のメイラード反応阻害剤は、本発明の効果を損なわないことを限度として、メイラード反応の阻害作用が知られている成分や褐変抑制効果が知られている成分などの他の成分を含むこともこともできる。かかる成分としては、例えばビタミンC、エリソルビン酸ナトリウム、ビタミンE、ヤマモモ抽出物、酵素処理ルチン、ケルセチン、ケンフェロール、ミリスチン、イソクエルシトリン、ナリンゲニンなどのフラボノイド類、及び食塩等を挙げることができる。
本発明のメイラード反応阻害剤の形態は特に制限されない。例えば本発明のメイラード反応阻害剤は、錠剤、顆粒状または粉末状等の固形物、液状や乳液状などの液体、またはペースト状等の半固形物等の任意の形態で用いることができる。
なお、メイラード反応阻害剤を粉末状態に調製する方法としては、例えば、上記モノスルフィド化合物またはネギ類植物から得られるモノスルフィド化合物含有画分に、必要に応じてデキストリンやシクロデキストリン等の糖類または糖アルコールなどの賦形剤または炭酸カルシウム、セラミックス、シリカゲル、活性炭などのポーラスな無機有機質を加え、次いで凍結乾燥、噴霧乾燥または凍結粉砕などを行う方法を挙げることができる。また、メイラード反応阻害剤を顆粒状態に調製する方法としては、例えば、上記モノスルフィド化合物またはネギ類植物から得られるモノスルフィド化合物含有画分にエタノールを配合してエタノール製剤(通常10〜60重量%エタノール濃度)を調製し、次いでこれを炭酸カルシウムに吸着させて造粒する方法を挙げることができる。さらに、メイラード反応阻害剤を液体状態に調製する方法としては、例えば、上記モノスルフィド化合物またはネギ類植物から得られるモノスルフィド化合物含有画分に食用液体油脂を配合する方法を挙げることができる。
なお、メイラード反応阻害剤に含まれる有効成分たるモノスルフィド化合物の含有量は、通常1〜100重量%の割合で適宜選択することができる。
本発明のメイラード反応阻害剤は、メイラード反応が生じるおそれのある成分を含む組成物の褐変防止処理、並びに品質保持のための処理に好適に使用することができる。かかる組成物としては、メイラード反応の発生やそれに起因して生じる褐変が好ましくないものであれば、特に制限されない。具体的には、食品、医薬品、医薬部外品、香粧品、飼料などを挙げることができる。
特に、本発明のメイラード反応阻害剤は、加工食品の褐変防止処理、加工食品の製造工程時での褐変防止処理並びに品質保持のための処理工程に好適に使用することができる。この意味で本発明のメイラード反応阻害剤は、使用する目的にかかわらず、食品の処理剤として定義することもできる。
上記各組成物(食品、医薬品、医薬部外品、香粧品、飼料など)のメイラード反応阻害またはメイラード反応に起因して生じる褐変を防止する方法としては、前述する本発明のメイラード反応阻害剤を各組成物と接触させる方法を挙げることができる。
接触方法としては、各組成物の形態や製造方法に応じて適宜選択され、特に制限されない。例えば、食品を例にすると、食品の表面または切断面にメイラード反応阻害剤を塗布若しくは噴霧する方法、メイラード反応阻害剤を含む溶液中に食品を浸漬する方法、メイラード反応阻害剤を食品の配合物に添加混合する方法などを挙げることができる。なお、この場合、メイラード反応阻害剤の添加時期は特に制限されず、食品の製造または加工処理過程で行われても、または最終的に得られた食品に対して行われても良い。
なお、ここで食品としては、飲食物、嗜好品、餌料、飼料、肥料、サプリメント素材、医薬品、医薬部外品などを挙げることができる。たとえば、褐変が食品の商品の価値に影響されやすい飲料や食品;麦茶、ほうじ茶、ココア、コーヒー飲料など焙煎を行う嗜好飲料;色目を明るくした惣菜(フレンチフライ、ポテトチップス、フライドポテト、コーンスナック);甘栗、豆菓子、ワッフル、かりんとう、せんべい、クラッカー、シリアル、麦こがし、アーモンド、プレッツエル、クッキー、ビスケットなどの菓子類;コロッケ、トンカツ、唐揚、フライドポテト、餃子、春巻などの加工食品;サンドウィッチ;シチュー、カレー、カレー粉を用いたカレー食品;リゾット、パスタなどのレトルト食品:焦げ目をつけた焼おにぎりやご飯;豚肉、魚介、野菜などの天ぷらを含む食品;または食品付き麺、うどん、長崎ちゃんぽん麺、うどん、冷麺、蕎麦、油あげ即席めん、ラーメンなど;野菜やご飯類の炒め物(中華どんぶり、チャーハンなど);しょうゆで味付けした食品、野菜、食品や果実をオーブンで焼いた焼き物(チキン、ターキー);野菜のてんぷら、魚肉を揚げたさつま揚げや各種具材のてんぷらなどの各種の総菜や弁当等、を例示することができる。なお、上記は単に例示であって、これらの食品のみに適用できるわけではなく、他の食品に対しても適用することができる。
本発明のメイラード反応阻害剤の添加量は、処理する対象物の種類や処理方法等によって種々異なり一概に規定することができないが、例えば、食品等の対象物の表面または切断面に塗布若しくは噴霧する場合、当該塗布若しくは噴霧に使用する処理液中に含まれるメイラード反応阻害剤の量は、モノスルフィド化合物の量として、1〜10,000μg/ml、好ましくは1〜100μg/mlの割合を例示することができる。
また、食品等の対象物を浸漬混合処理する場合は、該浸漬処理に使用する溶液中に含まれるメイラード反応阻害剤の量は、モノスルフィド化合物の量として、1〜10,000μg/ml、好ましくは10〜1,000μg/mlの割合を例示することができる。
また本発明は、上記メイラード反応阻害剤で処理することによって、メイラード反応が抑制され、当該反応に起因して生じる褐変が抑制されてなる各種の組成物(食品、医薬品、医薬部外品、香粧品、飼料など)をも提供するものである。当該食品は、上記メイラード反応阻害剤で処理され、メイラード反応が抑制され、当該反応に起因して生じる褐変が抑制されてなるものであれば特に制限されない。
以下、本発明の内容を以下の参考例、実施例及び実験例を用いて具体的に説明する。但し、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
実施例1 タマネギからの超臨界抽出
生タマネギ1600gを水洗後、カッターで粉砕し、これをろ布でろ過して、約400gの微淡黄色清澄なタマネギ搾汁を得た(タマネギ粉砕物1600g使用)。この調製したタマネギ搾汁のうち190ml(タマネギ760g分)に、95容量%エタノール(含水エタノール)60mlを添加して混合した(タマネギ(760g):含水エタノール(60ml)=38:3)。調製したタマネギ含有エタノール溶液250mlを、超臨界抽出システムの抽出槽に充填し、圧力17.5MPa及び温度50℃に調整した超臨界状態の二酸化炭素700Lを導入した。二酸化炭素導入後、25分間そのままの状態で保持し、次いで抽出槽を温度調節しつつ圧力調整バルブを用いて開放して、二酸化炭素を分離槽に放出して、タマネギ超臨界CO2抽出物50gをサンプル採取口から採取した(タマネギ760g分)。得られた超臨界CO2抽出物の収率(使用した生タマネギの重量に対する超臨界CO2抽出物の重量比)は6.6%であった。これを、下記条件のGC−MS分析に供した。
<GC−MS分析条件>
機器: GC 3800(Varian社製)、MS Saturn2100T(Varian社製)
カラム:DB-5msitd(Micromass社製)、0.25mmi.d.×30m
注入量:1μl、split(100:1)
注入温度: 250℃
カラム温度:60℃(10分保持、10℃/min)→250℃(10分保持)
転送ライン温度:280℃
キャリアガス:ヘリウムガス
イオントラップ温度:220℃
イオン化電圧: 70eV
イオン化モード:EI+。
その結果、後記表1に示すように、タマネギの超臨界CO2抽出物には、モノスルフィドが含まれていることが確認された。なお、タマネギに由来するモノスルフィド類としては、ハイドロゲンスルフィド(hydrogen sulfide)、プロピレンスルフィド、ジメチルスルフィド、メチルプロピルスルフィド、メチル 1-プロピルスルフィド、アリルメチルスルフィド、1-プロペニルプロピルスルフィド、ジアリルスルフィド、 ビス(1-プロピル)スルフィドなどが報告されている(特許庁発行:特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料、pp856、平成12(2000).1.14発行)。
実施例2 タマネギ抽出物の水蒸気蒸留
生タマネギ1600gを水洗後、カッターで8分割に粗く粉砕し、得られた粉砕物1kgに95容量%エタノール(含水エタノール)1kgを添加し浸漬した状態(タマネギ:含水エタノール=1:1(重量比))で、冷蔵庫(4℃)内に放置した。12時間後、浸漬処理物をろ紙でろ過し、ろ紙上に残ったタマネギ粉砕物(残渣)を除去して、タマネギ抽出液(濾液)1.8kgを得た。この抽出物を水蒸気蒸留方法によって濃縮した。濃縮した成分は精油を含んでおり、その中にモノスルフィドが含まれていることが、上記条件のGC−MS分析によって確認された(表1参照)。
実施例1のタマネギ超臨界CO2抽出物および実施例2のタマネギ水蒸気蒸留処理物中に見出された主なスルフィド化合物を表1に示す。なお、物質の同定は、各スルフィド化合物の標品を同様に上記条件のGC−MS分析にかけて、その保持時間と対比することで行った。その結果、存在が確認できたスルフィド化合物については「○」を、確認できなかったスルフィド化合物については「−」を付している。
表1に記載するモノスルフィドのうち、中でもジイソプロピルスルフィドは高い割合で含まれていた。
実施例3 ソックスレー還流装置の使用によって生じるメイラード反応の阻害
Joegenらの報告書によれば、ソックスレー還流装置を用いて、アスパラギンをグルコースの存在下でメタノールを用いて還流すると、メイラード反応が生じることが報告されている(Joergen R. Pederson and Jim O.Olsson;Soxlet extraction of acrylamide from potato chips, Analyst,128,332-334,2003, Masaharu Tanaka, Yukio Yoneda, Yasuko Terada,Eri Endo and Tshihiro Yamada;Comment on "Soxlet extraction of acrylamide from potato chips" by J.R.Peserson and J.O.Olsson,Analyst,2003,128,322;Created using the RSG Communication template-see HYPERLINK "http://www.RSC.ORG/ELECTRONICFILES" www.RSC.ORG/ELECTRONICFILES FOR FURTHER DETAILS.)。
(1)そこで上記のメイラード反応系を利用して(但し、アスパラギンに代えてグリシンを使用)、モノスルフィド化合物のメイラード反応阻害作用を調べた。
具体的には、グルコース(キシダ化学)0.5g、L−グリシン(キシダ化学)0.5g及び被験化合物(表2参照)10μlを、メタノール(キシダ化学)40mlに分散させ、セミミクロソックスレー抽出装置(TOP社製)にて2時間還流し、還流後の反応液の500nmでの吸光度を分光光度計(日本分光社製UV560)を用いて測定した。なお、上記被験化合物として、ジイソプロピルモノスルフィド(8mg/10μl)(Oxford chemical社製)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)(20μl /10μl)(比較区1)(キシダ化学社製)、ヤマモモ抽出物(1.5mg/10μl)(比較区2)(三栄源エフ・エフ・アイ社製、主成分イソクエルシトリン)、及びアリルプロピルトリスルフィド(4.4mg/10μl)(比較区3)(Oxford chemical社製)を用いた。また、対照区(コントロール)として、被験化合物を含まない試験区を設定した。結果を表2に示す。
上記の結果から、グリシンとグルコースを組み合わせた対照区は、2時間の還流で、メイラード反応による褐色現象を生じて高い吸光度を示した。それに対して、各被験化合物はいずれもメイラード反応による褐変現象を抑制する効果を示したが、中でもジイソプロピルスルフィドは、優れた褐変抑制効果を発揮した。このことは、ジイソプロピルスルフィドがメイラード反応を抑制する成分として有用であることを示すものである。
なお、図1に上記各試験区で得られた還流後の反応溶液を写した写真の画像(原図:カラー)を示す。図(A)は、左から、対照区(グリシン+グルコース)、本発明(グリシン+グルコース+ジイソプロピルモノスルフィド)、比較区1(グリシン+グルコース+BHT)の結果を、図(B)は、左から、比較区1(グリシン+グルコース+BHT)、比較区2(グリシン+グルコース+ヤマモモ抽出物)、及び比較区3(グリシン+グルコース+アリルプロピルトリスルフィド)の結果を示す。
(2)次に、上記2時間還流後の溶液中のグルコース量(グルコース残存量)を測定し、これを反応に使用したグルコース量(初発量)と比較してグルコース残存割合(%)を求めた。そして、これからメイラード反応によるグルコース消費量を評価した。なお、溶液中のグルコース量は、下記条件のHPLCを用いて保持時間7.717minでの面積から測定した。
<HPLC条件>
カラム :Shodex SUGAR SC1011(昭和電工社製、内径8mm×長さ300mm)
溶出液 :0.1mM 硫酸カルシウム(pH6.0)
流速 :1ml/min
検出器 :RI
カラムの温度:80℃
注入量 :10μL。
結果を表3に示す。
上記の結果からわかるように、対照区は2時間の還流で約30%のグルコースが消費されていたのに対し、各被験化合物はいずれもこのグルコース消費を抑制する効果を示した。中でもジイソプロピルモノスルフィドは、上記グルコース消費に対して優れた抑制効果を発揮した。この結果は、上記(1)の結果とよく一致しており、この結果からもジイソプロピルモノスルフィドがメイラード反応を抑制する成分として有用であることがわかる。
なお、上記の結果から、当該実施例で使用した方法が、被験物質のメイラード反応に対する抑制効果を評価する方法として利用できることがわかる。すなわち、当該方法は、メイラード反応を抑制する作用を有する物質をスクリーニングする方法として、また被験物質のメイラード反応に対する抑制効果の有無、ならびにその程度を評価する方法として有効に利用することができる。
実施例4
実施例3(1)と同様の方法にて、ジイソプロピルモノスルフィド以外のモノスルフィド化合物(ジイソプロピルモノスルフィド、ジメチルモノスルフィド)についてメイラード反応に対する抑制効果を検討した。
具体的には、まず、グルコース(キシダ化学)0.5g、L−グリシン(キシダ化学)0.5g、及び被験化合物(表4参照)を、メタノール(キシダ化学)40mlに分散させ、セミミクロソックスレー抽出装置(TOP社製)にて2時間還流した。次いで、還流液を室温まで冷却した後、メスフラスコ(容量100ml)に入れ、純水で100mlに調整し、500nmにおける吸光度を分光光度計(日本分光社製UV560)を用いて測定した。結果を表4に示す。
上記表の結果から、ジイソプロピルモノスルフィドと同様に、ジメチルモノスルフィドといったモノスルフィド化合物にも、優れたメイラード反応阻害効果があることがわかった。
実施例5
グルコースやフルクトースなどの糖に炭酸水素ナトリウムなどのアルカリまたは緩衝液(例えば、pH5.5など)を添加し、この混合液を加熱することで褐変することが知られている(Swales、S.ら、Food Add.& Contam.,9(5),479-483(1992))。また、アルカリ条件によって、グルコースが一部フルクトースに変化し、加熱することで褐変が進行することが報告されている(藤巻正生ら編、改訂新版食品化学、pp105-108、朝倉書店(1976))。
そこで本実施例5では、1M グルコース10mlに、0.2M 炭酸水素ナトリウム1ml及び各種のスルフィド化合物を添加混合して、溶液のpHを9に調整した後、100℃で30分間加熱して、溶液の褐変の度合いを確認するとともに、実施例3で用いたHPLC条件を用いて、褐変生成物(褐変物質)の有無と反応液中のグルコース量の変化、並びに反応生成物であるフルクトースの量の変化を調べ、スルフィド化合物が還元糖の褐変に与える影響を調べた。なお、スルフィド化合物として、表5に示すモノスルフィド化合物(ジイソプロピルモノスルフィド、ジプロピルモノスルフィド及びメチルプロピルモノスルフィド)、ジスルフィド化合物(ジメチルジスルフィド)、及びトリスルフィド化合物(アリルプロピルトリスルフィド)を用いた。評価は、スルフィド化合物を添加しない反応系(1M グルコース10ml、0.2M 炭酸水素ナトリウム1ml)(無添加区)について得られた結果と対比することで行った。褐変抑制効果は、各試験区の溶液の褐変を肉眼観察し、無添加区の溶液の褐変を低減する度合いを評価した。褐変を低減する度合いが高いほど+の値が多く、低減する度合いが低いとその数を減じて表現した。結果を表5に示す。
上記の結果から、モノスルフィド化合物によると、還元糖を用いたメイラード反応によって生じた無添加区における溶液の褐変を顕著に抑制できることがわかる。ジスルフィド化合物やトリスルフィド化合物には、その効果は殆ど見られないことから、還元糖を用いたメイラード反応における褐変抑制効果は、スルフィド化合物の中でもモノスルフィド化合物特有の効果であることがわかる。
なお、無添加区とモノスルフィド化合物添加区で得られた結果の対比から、次の傾向が認められた。
(1) 添加区における褐変物質1,2,3の合計数量は、無添加区に比して少ない。
(2) 添加区におけるグルコースとフルクトースの合計量は、無添加区に比して少ない(なお、グルコースはアルカリ条件下でフルクトースを生成する)。
(3) モノスルフィド化合物添加区の中でもジイソプロピルモノスルフィド添加区及びジプロピルモノスルフィド添加区ではフルクトースの生成が認められない。メチルプロピルモノスルフィド添加区ではフルクトースの生成が認められる、その生成量は添加区、並びにジスルフィド化合物添加区及びトリスルフィド化合物添加区におけるフルクトースの生成量より有意に少ない。
(3)のことから、モノスルフィド化合物の中でも特にジイソプロピルモノスルフィド及びジプロピルモノスルフィドは、アルカリ条件下でグルコースを異性化せず、その結果フルクトースに起因する(またはフルクトースによって促進される)褐変を防止する効果を有していると思われる。メチルプロピルモノスルフィドも、対照区と比べると(またジスルフィド化合物及びトリスルフィド化合物と比べても)、アルカリ条件下でのグルコースの異性化を抑制する効果(フルクトース生成抑制効果)を有意に有しており、フルクトースに起因する(またはフルクトースによって促進される)褐変を防止する効果を有していると思われる。また、メチルプロピルモノスルフィドは、褐変物質1の生成抑制効果に優れており、それが褐変抑制効果に反映していると思われた。
以上のことから、還元糖を用いたメイラード反応に対して、本発明のモノスルフィド化合物は、上記3つの要因に基づく褐変のいずれかを抑制する効果を有することがわかった。
図1は、実施例3で用いた溶液を写した写真の画像を示す。(図(A)は、左から、対照区(グリシン+グルコース)、本発明(グリシン+グルコース+ジイソプロピルモノスルフィド[DPS])、比較区1(グリシン+グルコース+BHT)の結果を、図(B)は、左から、比較区1(グリシン+グルコース+BHT)、比較区2(グリシン+グルコース+ヤマモモ抽出物[ISOQUERCITRIN])、及び比較区3(グリシン+グルコース+アリルプロピルトリスルフィド[AMTS])の結果を示す。

Claims (10)

  1. モノスルフィド化合物を有効成分として含有するメイラード反応阻害剤。
  2. モノスルフィド化合物が、メチル基、プロピル基、アリル基、及びイソプロピル基より選択される少なくとも1つの官能基を有するものである、請求項1記載のメイラード反応阻害剤。
  3. 有効成分として、アリルプロピルモノスルフィド、メチルプロピルモノスルフィド、ジイソプロピルモノスルフィド、ジメチルモノスルフィド、アリルメチルモノスルフィド、ジプロピルモノスルフィド、及びジアリルモノスルフィドより選択される1または2以上のモノスルフィド化合物を含有するものである、請求項1または2に記載するメイラード反応阻害剤。
  4. モノスルフィド化合物がネギ類植物に由来するものである、請求項1乃至3のいずれかに記載するメイラード反応阻害剤。
  5. ネギ類植物のモノスルフィド化合物含有画分を有効成分として含有するものである、請求項1乃至4のいずれかに記載するメイラード反応阻害剤。
  6. 上記モノスルフィド化合物含有画分が、ネギ類植物の精油画分である請求項5に記載するメイラード反応阻害剤。
  7. 上記モノスルフィド化合物含有画分が、ネギ類植物を水、有機溶剤またはこれらの混合溶媒で抽出して得られるものである、請求項5または6に記載するメイラード反応阻害剤。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のメイラード反応阻害剤を含有する食品処理剤。
  9. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のメイラード反応阻害剤を被験物質に適用する工程を含む、メイラード反応の阻害方法。
  10. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のメイラード反応阻害剤または請求項8に記載の食品処理剤を用いて処理されることにより、メイラード反応が抑制されてなる食品。


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