JP4142456B2 - アクリルアミド生成抑制剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、食品の調理・加工工程で発生するアクリルアミド生成を抑制することができるアクリルアミド生成抑制剤に関する。より詳細には、本発明はルテオリンを有効成分とし、ルテオリンを食品の調理・加工工程で利用することによって生成する食品中のアクリルアミド生成物を抑制する製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、油ちょうあるいは炒め調理した加工食品等の褐変反応を防止するため、多くの方法が検討されている。特にでんぷん、アミノ酸、油や小麦粉を含む食品などの加工食品を油ちょうした場合、最終的な食品の味、風味や色調は褐変反応の影響を受け、また、黄金色の色調を重視する加工食品の商品価値そのものが褐変反応の影響を受ける。
【0003】
このような褐変反応は、アミノ・カルボニル反応に起因するものと考えられている。詳しくは、アスコルビン酸、グルコースなどのようにエンジオール構造(−C(OH)=C(OH)−など)が中性ないし酸性条件下でキノン化(−CO=CO−)あるいはアミノ化(−C(NHR)=C(NHR)−)した構造が空気中で褐変しやすいために生じる。アミノ・カルボニル反応の各段階で酸化反応が起こり、最終的な生成物が褐変している変化を示す。また、本発明でいう褐変反応は、食品の調理の段階で、高温下、アミノ基(アスパラギンやメチオニンに由来)とカルボニル基(還元糖に由来)とが反応して褐色または黒色を呈することをいい、コーヒー、パン、味噌などでは芳香成分の生成、適度の焼色などを付与するという機能を含む(非特許文献1)。
【0004】
一方、最近になって、フライドポテトやラスクなどの揚げパンなど、高温で調理した食品からアクリルアミドという発ガン性の高い物質が生成されることが報告されており、食品業界において大きな問題となっている。
【0005】
油で揚げた食品中にアクリルアミドが生成することについては、これまで報告が少なく、また発ガンなどの有害性の報告についても最近の報告である(ストックホルム報告)(非特許文献2〜5)。アクリルアミドの生成の原因はすでに公表されており、アスパラギンとグルコースとの反応によるアミノ・カルボニル反応に起因することが報告されており(非特許文献6〜7)、この生成を止める方法、あるいは生成を止める物質の検討が急務である。
【0006】
アクリルアミド生成の条件としては、食材を茹でた場合には生成しないが、油で揚げたり、高温で焼いたりする場合に生成することが知られている。
野菜に由来する水と使用する油を混合させた条件下でアミノ・カルボニル反応を抑制する場合、酸化や褐変などの反応を止めるために、ビタミンCやビタミンEあるいはクエン酸を含めた有機酸などの褐変防止剤あるいは酸化防止剤の併用が防止効果を示すことは容易に推測できるが、高温条件下で油が多く酸化されやすい条件では、褐変防止剤の変質あるいは酸化防止剤自身の酸化も早く、その効果が期待しがたいのが現状である。
【0007】
また、フライドポテト、ポテトチップス、ビスケット、フライドチキン、フレンチフライなど油で調理した油ちょう食品は、外食産業等の業務用あるいは一般消費者に、加工食品や総菜の形態で提供されたり、総菜や弁当の具材として利用される場合が多く、アミノ・カルボニル反応あるいは褐変反応による外観変化は、これらの商品価値を高く保つためにも解決すべき重要な課題である。
【0008】
従来、褐変には酵素反応による褐変と非酵素反応による褐変がある。非酵素反応による褐変の内、アミノ化合物と還元糖およびその他のカルボニル化合物との間に起こる反応が重要で、この反応はアミノ・カルボニル反応と呼ばれる。この反応はメイラード反応とも呼ばれる。この反応機構は初期、中期、後期の3つの段階に分けられる。そのうち初期段階はアミノ化合物(アミノ酸など)とカルボニル化合物の結合による窒素配糖体の生成からアマドリ転移化合物の生成までを示す。中期段階はアマドリ転移化合物のエノール型が分解してから、フルフラール類の生成までの過程である。後期段階は褐変活性の強い各種化合物が複雑な反応をして高分子の着色色素を形成する(非特許文献8)。
【0009】
アミノ・カルボニル反応は、アミノ化合物(アミノ酸、ペプチド、たんぱく質、アミン類など)とカルボニル化合物(糖、分解した糖、脂肪が酸化して生成した化合物など)を含み、大別すると、▲1▼糖が中心になるもの、▲2▼アスコルビン酸が中心になるもの、▲3▼油が中心になるものの3つに分かれる。その反応機構はさまざまであるが、食品のアミノカルボニル反応を抑制するための決定的な方法がないのが現状である(非特許文献9〜11)。
【0010】
アミノ・カルボニル反応(メイラード反応)の阻害剤としては、例えば、3−ヒドロキシ−4−アミノメチルピリジン誘導体 (特許文献1)、環状α−ヒドロキシケトン化合物 (特許文献2)、5−アミノアルキル−4−アミノメチル−3−ヒドロキシピリジン誘導体 (特許文献3)、カルカデ、ハイビスカス、シャゼンシ、トウニン、マロニエ、ケイシ、ゴミシ、シコン、センナ、トシシ、ビャッキョウからの植物抽出物、又はプランタゴサイド、5,7,3',4',5'−ペンタヒドロキシフラバノン (特許文献4)などが開示され、これらの阻害剤を食品に添加することも開示されているが、これらの阻害剤は生体内のタンパク質が関与するメイラード反応の阻害剤であり、網膜症、腎症、糖尿病性合併症等の疾患や皮膚の老化の予防・治療を意図したものであって、でんぷん、アミノ酸、油や小麦粉を含む食品などの加工食品を油ちょうした場合のアミノ・カルボニル反応の阻害に関しては何ら開示も示唆もされていない。
【0011】
食品の加熱調理中に生じるアミノ・カルボニル反応が問題となるのは、食品の褐変が生じる場合である。このような食品の褐変反応抑制及び褐変反応抑制方法として、従来、▲1▼温度と時間の管理、▲2▼褐変反応抑制剤の併用のいずれかの方法やそれらの組み合わせに依存していた。たとえば、酸化防止による褐変反応抑制法としては、以下の方法が報告されている。
【0012】
アクリルアミドを生成しやすいジャガイモの脂肪酸組成は飽和脂肪酸25%、オレイン酸5%、リノール酸40%と報告されており、酸化による劣化が敏感な食材である。また、ジャガイモ中に含まれるアスパラギン/アスパラギン酸の含有量は0.82g/100gであり、グルタミン酸に次いで多く、本発明のアクリルアミド生成の要因となる物質が多く含まれていることがわかる。そのため、ジャガイモ製品の褐変防止のために、褐変反応の前段階にある酸化を防止するために酸化防止剤であるBHAとクエン酸やプロピルガレート(カテキン類)との併用を試みられ、乾燥食品中でのBHAの使用量は0.001〜0.1%が好ましいとされている。ただし、油ちょう食品の場合、BHAは揮発しやすく、使用した酸化防止剤の揮発性のために期待する効果が出ていないのが現状である(非特許文献12)。
【0013】
また、タマネギなどの含まれるケルセチンでポテトフレークの酸化防止効果(褐変防止)を検討しているが、ケルセチンとカフェイン酸との併用が望ましく、単独での使用は効果がないことが報告されている(非特許文献13)。
【0014】
また、ポテトフレークには、酸性ピロリン酸ナトリウムが鉄と反応し、ポテトの色調を黒くなるのを防止することが報告されているが、酸化防止あるいは酸化による褐変防止に著効があったとは報告されていない(非特許文献14)。
【0015】
でんぷん系の食品を調製する場合に、ビタミンCやビタミンEなどの酸化防止剤、クエン酸及び酢酸などの酸化還元作用のある有機酸、重合リン酸塩、みょうばん及びコウジ酸等を1種または2種以上組み合わせて用いる方法が提案されている。しかしながら、ビタミンCには顕著な褐変反応抑制効果がないとの報告もあり、また使用したビタミンCが空気酸化などによって酸化されると褐変反応抑制効果も失われるという問題がある。また、上記以外の酸化防止剤も褐変反応抑制効果が弱かったり、効果があっても味に影響し、必ずしも好ましいものとはいえない(非特許文献15、非特許文献16)。
【0016】
このため、食品中のアクリルアミド生成を阻害するために、食経験のある素材や天然に由来する素材からアクリルアミド生成抑制剤を求めて検討が進められてきた。
【0017】
特許文献5には、食用油の製造方法において、アマニ種子、エゴマ種子、シソ種子、月見草種子、ボラージ種子を用いて、リノレン酸を多く含む食用油の製造を検討されているが、種子からの脂肪酸部分に着目し、これにトコフェロール、レシチン、緑茶抽出物などの抗酸化作用物質と併用し、植物種子油脂の安定性を議論するに留まっている。
【0018】
また、春菊、紅花の葉から分離される7位の配糖体(シナロサイド、非特許文献17)については、酸化防止剤としての利用を検討されているが、油性食品での検討はされていない。
【0019】
特許文献6は、消臭剤として、シソ科植物からのエキスを検討している。水溶性抽出物を有効成分として含む素材にはアスコルビン酸を併用し、酸化防止を併用物に委ねねばならず、油ちょう時のアクリルアミドの生成阻害については、何ら検討されていない。
【0020】
特許文献7は、揚げ物用ころも材に、緑茶抽出物、ウーロン茶抽出物などのポリフェノール化合物に、マスタード、サンショウ、シソなどの香辛料を併用することをかかげ、油揚げ時の油酔いを防止することを検討しているが、アクリルアミドとの関わりを指摘する内容はなく、また、実施例でもシソの利用はなく、検討されていることから、アクリルアミドの生成を予見することは困難であり、阻害物質としての検討は困難であった。
【0021】
このように、食経験のある素材や天然に由来する素材からも、油ちょう時のアクリルアミド生成を抑制する成分は見いだされていないのが実情である。
【0022】
また、食品に使用する場合には、食品本来の味、風味及び色に影響を与えないように、それ自体が味や臭いを有さず、また使用するものの安全性や加熱によって生成した生成物の安全性が確保できることが望まれる。
【0023】
【特許文献1】
特開平9−221473号公報
【特許文献2】
特開平9−315960号公報
【特許文献3】
特開平10−158244号公報
【特許文献4】
特開平11−106336号公報
【特許文献5】
特開2000−316473号公報
【特許文献6】
特開平11−197222号公報
【特許文献7】
特開2002―27933号公報
【非特許文献1】
中村敏郎、木村進、加藤博通:食品の変色とその化学、光琳 (1967) 291頁
【非特許文献2】
Swedish National Food Agency website http://www.slv.se
【非特許文献3】
Rosen,J.& Hellenas, K.E.The Analyst 127 (2002) 880-882頁
【非特許文献4】
WHO FAO/WHO Consultation on the Health Implications of Acrylamide in Foods (Geneva,25- June 2002)
【非特許文献5】
IARC IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans 60, (1994) 389頁
【非特許文献6】
D.S.Mottram, B.L.Wedzicha, A.T.Dodson, Nature、No.419、2002 448-449頁
【非特許文献7】
R.H.Stadler,I.Blank, N.Varga, F.Robert, J. Hau, P.A.Guy, M-C. Robert, S.Riediker,Nature,No.419, (2002) 449頁
【非特許文献8】
谷川英一、食品衛生学事典、医歯薬出版(1977)122頁
【非特許文献9】
中村敏郎、木村進、加藤博通:食品の変色とその化学、光琳 (1967) 233頁
【非特許文献10】
鎌田栄基、片山 脩:食品の色、光琳(1965)108頁
【非特許文献11】
細貝裕太郎:食品衛生学事典、医歯薬出版 (1977) 21頁
【非特許文献12】
太田静行編:食品と酸化防止剤(1987)食品資材研究会刊、138頁
【非特許文献13】
太田静行編:食品と酸化防止剤(1987)食品資材研究会刊、227頁
【非特許文献14】
太田静行編:食品と酸化防止剤(1987)食品資材研究会刊、227頁
【非特許文献15】
中村敏郎、木村進、加藤博通:食品の変色とその化学、光琳 (1967) 233頁
【非特許文献16】
藤巻正生ら編;改訂新版食品化学 (1976) 朝倉書店、249-257頁
【非特許文献17】
Horhammer et al.,Acta Cim.Acad.Sci.Hung.40,4638(1964)
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、食経験のある植物に含まれる成分を有効成分とする、アクリルアミド生成抑制剤を提供することである。より詳細には、本発明は安全でしかも色や臭いの点で処理する食品に悪影響を与えないアクリルアミド生成抑制剤を提供することを目的とする。更に、本発明の目的は、当該アクリルアミド生成抑制剤の製造方法、並びに当該アクリルアミド生成抑制剤を用いた食品のアクリルアミド生成抑制方法を提供することである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題の解決を求めて鋭意研究を重ねていたところ、シソ科植物シソ中に含まれるフラボンの一種ルテオリンに、食品のアクリルアミド生成に対して優れた抑制効果があることを見いだした。また、本発明者らは、シソ科植物シソから低級アルコール等の溶媒の存在下で抽出して調製した抽出物の前駆体にも同じ効果があることを見出した。
【0026】
そして本発明者らは、これらのルテオリン及び植物抽出物の前駆体は処理対象とする食品に色や臭い等の悪影響を殆ど与えることなく、アクリルアミド生成抑制処理に有効に利用できること、並びにアクリルアミド生成による野菜及び加工食品(油ちょう食品)の劣化が有意に防止できるため加工食品(油ちょう食品)のアクリルアミド生成抑制及び品質保持に極めて有効であることを確認した。
【0027】
本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は下記(1)〜(5)に掲げる食品のアクリルアミド生成抑制剤である:
(1)ルテオリンを有効成分として含有する、食品のアクリルアミド生成抑制剤。
(2)ルテオリンである、(1)に記載のアクリルアミド生成抑制剤。
(3)シソ科植物のルテオリンを有効成分として含有する、(1)または(2)に記載のアクリルアミド生成抑制剤。
(4)シソ科植物のルテオリンが、それぞれシソ科植物の水溶性画分に由来する(3)に記載のアクリルアミド生成抑制剤。
(5)前記シソ科植物がシソ(青シソもしくは赤シソ)、または春菊(キク科)、セロリ(セリ科)、ピーマン(ナス科)より選択される1種又は2種以上である、(3)または(4)に記載のアクリルアミド抑制剤。
(6)前記シソ科植物がシソの葉またはシソの種子より選択される1種又は2種以上である、(3)または(4)に記載のアクリルアミド抑制剤。
また、本発明は、アクリルアミド生成抑制及び品質保持等の使用目的や用途に関わらず、食品の処理に用いられる下記(7)に掲げる組成物である:
(7)(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の食品のアクリルアミド生成抑制剤を含有する食品用組成物。
さらに本発明は、下記(8)〜(9)に掲げる、アクリルアミド生成抑制方法及び食品に関するものである:
(8)(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の食品のアクリルアミド生成抑制剤または請求項7に記載の食品用組成物を油ちょう時の油または食品の表面に付着させる工程を包含する、食品のアクリルアミド生成抑制方法。
(9)(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の食品のアクリルアミド生成抑制剤または請求項7に記載の食品用組成物を用いて処理された食品。
なお、本発明でいう「アクリルアミド生成」とは、野菜を油ちょう、あるいは炒める場合にジャガイモなどの野菜に含まれるアスパラギンとグルコースがアミノ・カルボニル反応(メイラード反応)を起こし、アクリルアミドを生成する反応を意味する。ただし、アスパラギンとグルコースとの反応に限らず、アスパラギン以外のアミノ酸(例えば、メチオニン、グルタミンまたはシステイン)とグルコース以外の糖質(例えばフラクトース、ガラクトース、乳糖、砂糖若しくはブタンジオンなどのアミノ・カルボニル反応過程で生じる中間体物質)とがアミノ・カルボニル反応してアクリルアミドを生成する反応をも包含するものである。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明のアクリルアミド生成抑制剤は、ルテオリンを有効成分として含有することを特徴とする。ルテオリンはシソ(Lamiacea perilla)の葉あるいは実、春菊、セロリ、ピーマン、イチョウの葉、紅花などに含まれるフラボン類である。その構造式は5,7,3',4'-OH-Flavoneである。古くはアラビノース配糖体として報告されている(Perkins, J.Chem.Soc.69,80(1896))。ルテオリンの水和物はアルコールから析出するとき、黄色い針状結晶を形成する。配糖体は水に溶け、アルカリ溶液では黄色溶液である(メルクインデックス12版)。
【0029】
本発明で用いるルテオリンは、フラボノイドの分類に位置付けられるものである。フラボノイドは、ベンゼン環2個(A環とB環)を3個の炭素原子でつないだ構造(ジフェニルプロパン構造)を有するフェニル化合物群の総称である。このフラボノイドは、3つの炭素原子からなる部分に結合するC環の構造によって分類される。フラボンはC環に1個の二重結合を有し、C環4位にカルボニル基を有するものをいう。同様にフラバノン(ナリンゲニン)はC環に二重結合を有さずC環4位にカルボニル基を有するものをいう。フラボンを骨格とする化合物である。当該骨格は任意の官能基で修飾されていてもよい。例えば、糖、好ましくはグルコースが結合されてなるシナロサイド(7位配糖体)、ガルテオリン(5位配糖体)などが含まれる。
【0030】
本発明のアクリルアミド生成抑制剤は、有効成分として、ルテオリンを含有するものであればよく、シソ科植物のルテオリン含有画分を含むものであってもよい。
【0031】
ここでシソ科植物としては、たとえば、シソ(葉、種子、全草)、セージ、バジル、ローズマリー、ラベンダー、マンネンロウ、エゴマ、コガネバナ(オウゴン)、ハンシレン、トウバナ、ハッカ、オレガノ、タイム、サルビア、マジョラム、メリッサなどがあり、ルテオニンを含む植物の種類としては、春菊、セロリ、ピーマン、イチョウの葉、紅花の葉、紅花の種子などを挙げることができる。シソ科植物として好ましくはシソである。
【0032】
同様に、フラボノイドの種類として、フラボン(アピゲニン、クリシン、ルテオリン、バイカレイン、オウゴニン、バイカリン、タンゲレチン)以外にフラボノール(ガランギン、ケルセチン、ルチン、ケンフェロール、ミリセチン、フィセチン、モリン、タマリクセチン、イソラムネチン、ゲルシトリン)、イソフラボン(ダイゼイン、ダイジン、ゲニスティン)、フラバン、フラバノール(カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、テアフラビン)、フラバノン(ナリンゲニン、ナリンギン、エリオジクチオール、ボンシリン、ヘスペレチン、ヘスペリジン)、フラバノノール、カルコン及びアントシアニジンン(シアニジン、シアニン、デルフィニジン、デルフィニン、ペラルゴニジン、ペラルゴニン、ロイコアン、シアニジン、プロペラウゴニジン、プロシアニジン、プロデルフィニジン)がある。これらのフラボノイドはセロリ、パセリ、ピーマン、春菊、レタス、ブロッコリー、リンゴ、イチゴ、タマネギ、茶、ソバ、ニラ、ダイコン、グレープフルーツ、クランベリー、ブドウ、ダイズ、茶、カカオ、紅茶、ザボン、ブンタン、レモン、ミカンなどのかんきつ類、ナス、ブルーベリー、テンジクアオイの植物に由来する(寺尾純二:フラボノイドの抗酸化活性、抗酸化物質のすべて、pp121-128、(1998)、先端医学社)。
【0033】
なお、これらの中で、アルコール、食用油など極性の低い溶媒に溶けやすいものを選択することが好ましく、ルテオリン以外にフラバノンの一種であるナリンゲニンは、ザボンの果皮、ブンタンの果皮に含まれる。また、ナリンゲニンを得るために、グレープフルーツなどの含まれる配糖体ナリンギンから糖を脱離して、本目的に用いることも可能である。
【0034】
本発明で用いられるシソ科植物シソとしては、通常食用に用いられるシソを広く挙げることができる。具体的にはシソ科植物シソ(Lamiacea perilla)を例示することができる。用いられる部位は特に制限されず、シソ科植物シソの全植物体であっても、また部分部位、例えば葉、茎、根、花または種子(可食部)のいずれであってもよい。好ましくは葉または種子(可食部)である。
【0035】
シソ科植物シソには多数の栽培種があり、選別、品種改良によって異なった種類が作り出されている。シソ科植物シソの品種は赤シソと青シソがあり、本発明において、いずれも好適に用いることができる。これらのシソは農協や、スーパーや商店などの小売り業者等から容易に入手可能である。
【0036】
これらのシソ科植物のルテオリンを含有する画分は、シソ科植物(例えば、好適にはシソ)を溶媒との共存下で抽出処理して調製取得することができる。ここでシソ科植物シソの葉あるいは実は、そのまま(生)の状態で抽出処理に供してもよいし、また生のままスライスしたり細断した破砕物、摺り下ろした物、または搾り液を抽出処理に供してもよい。さらにシソ科植物シソの乾燥物をそのまま若しくは破砕、粉砕して抽出処理に供することもできる。抽出処理に供する好適な態様として、生のまま破砕後、圧搾して得た搾り液を挙げることができる。あるいは水溶性画分を含む成分を調製するための圧縮、蒸留(水蒸気蒸留、分画蒸留、アロマディスティレート、回収エッセンス)、抽出(チンクチャー、マセレーション、パーコレーション、オレオレジン、コンクリート、アブソリュート)、亜臨界または超臨界抽出方法など調製方法に制限されない。
【0037】
上記溶媒としては、メタノール、エタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-プロパノール、及び2-プロパノール等の炭素数1〜4の低級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、及びブチレングリコール等の多価アルコール;アセトン、エチルメチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ジクロロメタン、食用油脂、ヘキサン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2-トリクロロエテン及び水を挙げることができる。好ましくはエタノールなどの低級アルコール、及び水である。
【0038】
上記に掲げる溶媒は、1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて用いてもよい。より好ましくは水と他の成分との混合物であり、特に低級アルコールと水との混合物(含水アルコール)、より好ましくはエタノールと水との混合物(含水エタノール)を挙げることができる。含水アルコールとしては、具体的には水を)10〜99.5重量%の割合で含む含水アルコールを好適に用いることができる。また、ルテオリン(糖のないもの)は40%以下のエタノールには溶けにくく、水中では沈澱を生じる。さらには、アルコール還流抽出のように水溶性画分を選択的に採取し、精製工程で上記の溶媒を留去し、本発明にあるルテオリンまたはルテオリン含有抽出物で構成してもよい。また水溶性画分、オレオレジンに含まれる天然ケミカル、合成ケミカルを構成成分として単独あるいは複合で利用してもよい。さらには、水に容易に可溶化するルテオリンとして、ルテオリン配糖体を提供してもよく、5位、7位あるいはこれら以外の位置に配位してもよく、単糖、オリゴ糖及び多糖類との結合物も適用することができる。
【0039】
シソ科植物に対して用いられる上記溶媒の割合としては、特に制限されないが、生のシソ科またはシソ科植物100重量部に対して用いられる溶媒を重量比に換算した場合、通常50〜20,000重量部、好ましくは10〜10,000重量部を例示することができる。
【0040】
本発明のアクリルアミド生成抑制剤は、上記ルテオリンまたはルテオリン含有植物抽出物(シソ科植物のルテオリン含有画分)だけからなってもよいし、また本発明の効果を妨げない範囲で、食品衛生上許容される担体や添加剤を用いてもよい。担体としては、水;エタノール等の低級アルコール;プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;砂糖、果糖、ぶどう糖、デキストリン、シクロデキストリン、環状オリゴ糖などの糖質、これら糖質との併用あるいは、糖転移酵素による糖付加物にすることも可能である;ソルビトールなどの糖アルコール;アラビアガム、キトサン、キサンタンガムなどのガム質;清酒、ウォッカや焼酎などの蒸留酒;乳化剤、油脂に直接添加あるいは固体油脂を加熱し、溶融したとろにルテオリンあるいはその抽出物を混合して固化させてもよい。グリシン、酢酸ナトリウムなど製造用剤を例示することができる。また、添加剤としてグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤を用い、これらの乳化剤に溶かして混合後、液体あるいは固体の状態で提供する方法や油に溶解したルテオリンあるいはその抽出物を乳化剤で乳化させ、その後液体、乳化物、マイクロカプセル物、吸着物あるいは粉末、固体の状態で提供することなど任意の方法を例示することができる。
【0041】
また、本発明のアクリルアミド生成抑制剤は、本発明の効果を損なわないことを限度として、褐変反応抑制効果が指摘されている他の成分を含むこともこともできる。他の褐変反応抑制成分としては、ビタミンC、エリソルビン酸ナトリウム、ビタミンE、ヤマモモ抽出物、酵素処理ルチン、及び食塩等を挙げることができる。
【0042】
本発明のアクリルアミド生成抑制剤の形態は特に制限されない。例えば本発明のアクリルアミド生成抑制剤は、錠剤、顆粒状または粉末状等の固形物、液状や乳液状などの液体、またはペースト状等の半固形物、あるいは水溶性画分、オレオレジンのまま、さらには水溶性画分を乳化剤で乳化した液体製剤の形態で用いることができる。粉末状態には、例えば、上記ルテオリンまたはルテオリン含有植物抽出物(シソ科植物のルテオリン含有画分)に、必要に応じてデキストリンやシクロデキストリン等の糖類または糖アルコールなどの賦形剤または炭酸カルシウム、セラミックス、シリカゲル、活性炭などのポーラスな無機有機質に加え、凍結乾燥、噴霧乾燥または凍結粉砕などの手法によって調製することができる。好ましくは、粉末、特にエタノールを10〜99.5重量%の割合で含むエタノール製剤を炭酸カルシウムに吸着させた顆粒の形態である。
【0043】
本発明のアクリルアミド生成抑制剤は、加工食品のアクリルアミド生成抑制処理、加工食品の製造工程時でのアクリルアミド生成抑制処理並びに品質保持のための処理工程に好適に使用することができる。この意味で本発明のアクリルアミド生成抑制剤は、使用する目的にかかわらず、食品の処理剤として定義することもできる。
【0044】
上記食品のアクリルアミド生成を防止する方法としては、前述する本発明のアクリルアミド生成抑制剤(処理剤)を食品と接触させる方法を挙げることができる。
【0045】
接触方法としては、特に制限されないが、食品の表面または切断面にアクリルアミド生成抑制剤を塗布若しくは噴霧する方法、アクリルアミド生成抑制剤を含む溶液中に食品を浸漬する方法、アクリルアミド生成抑制剤を食品の配合に添加混合する方法などを挙げることができる。
【0046】
なお、食品(原型を留めない状態まで処理されたものを含む)へのアクリルアミド生成抑制剤の添加混合は、食品の加工処理過程で行われてもよいし、また最終的に得られた処理物に対して行われても良い。具体的には、油ちょう時の食用油脂に添加、油脂に添加後、油ちょうあるいは炒めに利用する方法を指摘することができる。
【0047】
本発明のアクリルアミド生成抑制剤の処理対象物への適用量は、処理する対象物の種類や処理方法等によって種々異なり一概に規定することができないが、例えば、食品の表面または切断面に塗布若しくは噴霧する場合、当該塗布若しくは噴霧に使用する処理液中に含まれるルテオリンの量として、1〜100,000μg/ml、好ましくは1〜1000μg/mlの割合を例示することができる。
【0048】
また、食品を浸漬処理する場合は、該浸漬処理に使用する溶液中に含まれるルテオリンの量として、1〜100,000μg/ml、好ましくは1〜10,000μg/mlの割合を例示することができる。食用油脂に添加する場合にはあっては、同じ割合で添加することができる。
【0049】
さらに、食品にアクリルアミド生成抑制剤を添加混合する場合は、最終処理物中にルテオリンが1μg/ml以上、好ましくは2μg/ml以上の割合で含まれるような量を配合することができる。上限は特に制限されないが、通常10,000μg/ml、好ましくは2,000μg/mlである。
【0050】
また本発明は上記アクリルアミド生成抑制剤で処理した食品をも提供するものである。当該食品は、上記アクリルアミド生成抑制剤で処理したものであれば特に制限されない。
【0051】
本発明のアクリルアミド生成抑制剤は、前述するように食品の処理に使用しても当該処理対象物に色、味及び臭い等の悪影響を殆ど与えないことを特徴とする。ゆえに、本発明は加熱、油ちょうする食品、並びに食べる際にレンジや熱湯などで再加熱処理するレトルト食品(密封包装食品)や弁当、あるいは加熱調理して食する冷凍食品などの食品を広く対象とすることができる。
【0052】
本発明が対象とする食品の一例を挙げると、揚げ物(フレンチフライ、ポテトチップス、フライドポテト、コーンスナック)、甘栗、豆菓子、ワッフル、かりんとう、せんべい、クラッカー、シリアル、麦こがし、アーモンド、プレッツエル、クッキー、ビスケットなどの菓子類;コロッケ、トンカツ、フライドポテト、餃子、春巻などの加工食品(油ちょう食品)、油ちょう食品をパンではさんだサンドウィッチ;シチュー、カレー、カレー粉を用いたカレー食品、リゾット、パスタなどのレトルト食品:焦げ目をつけた焼おにぎりやご飯;豚肉、魚介、野菜などの天ぷらを含む食品または食品付き麺(油揚げ入りきつねうどん、長崎ちゃんぽん麺、うどん、冷麺、蕎麦、油あげ即席めん、ラーメンなど);野菜、ご飯類の炒め物(中華どんぶり、チャーハンなど);しょうゆで味付けした食品、野菜、食品や果実のオーブンで焼いた焼き物(チキン、ターキー);野菜のてんぷら、魚肉を揚げたさつま揚げや各種具材のてんぷらなどの各種の総菜や弁当等、麦茶、ほうじ茶、コーヒー飲料など焙煎を行う嗜好飲料を例示することができる。なお、上記は単に例示であって、これらの食品のみに適用できるわけではなく、他の食品に対しても適用することができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明のアクリルアミド生成抑制剤は、食経験に基づいて安全性が確認されているシソなどのシソ科植物に含まれる成分であるルテオリンを有効成分とするものである。ゆえに、食用の野菜、食品及び食品の処理剤として好適に使用することができる。
【0054】
また本発明のアクリルアミド生成抑制剤は、シソ科植物に由来する臭いや着色が殆ど問題とならず、加工食品(油ちょう食品)の風味を殆ど損なわないで、加工食品(油ちょう食品)のアクリルアミド生成抑制及び品質保持に有効に利用することができる。
【0055】
【実施例】
以下、本発明の内容を以下の参考例、実施例及び実験例を用いて具体的に説明する。但し、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0056】
実施例1 ルテオリン
本試験で標準物質として、試薬ルテオリン(和光純薬社製、Mw=286.24)を用いた。ルテオリン0.1gを正確に量り、95%エタノールにて10mlに調製し、1%エタノール溶液を調製した。この溶液を検量線作成、UVスペクトル測定並びにHPLC測定に利用した。なお、ルテオリンに関する一般的な情報は以下の通りであった。
UVスペクトルデータ(図1)
ルテオリンの極大吸収(λmax)は4つのピークが見出され、それぞれ227、253、291及び343nmに見出された(0.1%エタノール溶液、0.2μメンブランフィルターろ過したもの)。253nm及び343nm付近の吸収は、5、7、4‘にある3つのOH基の吸収に由来するものと思われる(メルクインデックス(12版)から、268、333nm in MeOH)。
HPLCデータ(図2)
上記UVスペクトル測定で用いた試料を用いて、HPLC分析を行った。その結果、得られた溶出時間(RT)は7.03minであり、波長の範囲(200〜400nm)において鮮明な1ピークが観察された。なお、この試料を用い、λmaxにおけるピーク面積(括弧内はλmaxの値)を求めた。それらの値は48.7637(227)、44.4369(253)、26.2715(291)及び47.1066(343)であった。
HPLC条件
カラム:Deverosil C30-UG-5 φ4.6mm×長さ250mm(Nomura Chemical Co.,Ltd.)
溶媒:アセトニトリル/水(50/50)
検出器:マルチチャネル(200〜400nm)
流速:0.6ml
注入量:10μl
時間:45分にて
以上のデータを基礎的なデータとして使用し、ルテオリンの含量の指標として利用した。
【0057】
実施例2
予めフードカッターで粉砕したシソ(実、乾燥物)117gを75%エタノール300gと混合し、室温で1晩放置する。上記の抽出液を吸引ろ過し、微褐色水溶液191gを得た。次に得られた抽出液100gに酢酸エチル110ml、エーテル115ml及び水215gを加え、液―液分配し、2層に分離させた。
上層液(鮮明な黄色)260gと下層液(無色透明な淡い茶色)221gを得、上層120gを約5倍濃縮して、抽出濃縮液23.5gを得た。この液を0.22μのメンブレンフィルターでろ過し、HPLCクロマトグラフ(図3)を得た。得られたルテオニンの含量を求めるため、図1(ピーク4)のλ343nmにおけるエリア面積と濃度から得た検量線(Y=46.261X、r^2=1)を用いて計算したとき、抽出濃縮液に含まれるルテオリンの含量は0.06%であった。
【0058】
実施例3
実施例2で調製したシソ科植物シソ抽出濃縮物で得たHPLCクロマトグラフィーで見出されたルテオリンと同じ標準品(試料1)を用い、試料10μg/gを食用サラダ油600gに添加した。
試料2:ナリンゲニン(フラバノンの一種)
ナリンゲニンは試薬(ナカライテスク社製、98%以上)を用いた。添加量は油に対し10μg/gを添加した。
参考例1:(±)−α―トコフェロール(和光純薬社、純度98%以上、密度(20℃)0.950g/ml、試薬、油600gに対し100μg/g添加)
参考例2:ブチルヒドロキシアニソール(BHA)(キシダ化学社純度99%、試薬1級、油600gに対し100μg/g添加)
参考例3:ブチルヒドロキシトルエン(BHT)(和光純薬社、純度98%以上、試薬、油600gに対し100μg/g添加)
参考例4:酸化防止剤などを使用していない試験区(対照品)
参考例5:サンカテキン 茶抽出物(三井農林社製、カテキン含量10%、油600gに対しカテキンとして100μg/g添加)(ポリフェノールの代表事例)
【0059】
実施例4:冷凍スライスしたジャガイモの調理方法
次に上記実施例3で調製した試料をそれぞれ食用サラダ油600gに添加し、解凍したスライスジャガイモ(アメリカ産Pacific Valley社製、シュートリング)50gをフライヤー(パナソニック社製、NF-F150型)で加熱調理(180℃)し、2分間油ちょう後、すぐにジャガイモを取り出して、室温にて冷却後ジャガイモを冷蔵庫(5℃)で12時間冷却し、ジャガイモ全量を分析に供した。
【0060】
実施例5:前処理方法とGC−MS分析方法
前処理方法は、試料2gを0.1%ギ酸水溶液20mlに分散し、30分間攪拌した後に遠心分離(8,000rpm、30分)する。次にカラムカートリッジを通過させ、通過した液を回収し、回収した液に内部標準物質(2,3−ジブロモ−N,N’−ジメチルプロピオンアミド)を添加し、全量を100mlにする。5M硫酸を用いてpHを1.0以下とし、これに0.1M臭素酸カリウム20mlと臭化カリウム50gを添加し、臭素化する。続いて過剰の臭素を1Mチオ硫酸ナトリウムで除去し、酢酸エチル50mlで3回抽出し、脱水濃縮後、酢酸エチルにて1mlに定容後、GC−MS分析を行った。上記の方法を用いて、ジャガイモの表面に付着する衣に含まれるアクリルアミドの生成量を分析し、その生成量の値を用いてアクリルアミド生成抑制効果を評価した。(E.Tareke et al:Chem.Res.Toxicol.,No.13,517-522(2000), A.Arikawa et al:Bunseki Kagaku,No.29,T33-T38(1980), L.Castle et al:J.Agric.Food Chem.,No41,1261-1263(1993))
GC−MS分析条件
なお、GC−MS条件は以下の通りとした。
機器: GC 3800(Varian社製)、MS Saturn2000(Varian社製)
カラム:DB-5msitd(J&W)、0.25mmi.d.×30m
注入量:1μl、splitless
注入温度: 250℃
カラム温度:60℃(1分保持、15℃/min)→250℃(10分保持)
転送ライン温度:280℃
キャリアガス:ヘリウムガス
イオントラップ温度:220℃
イオン化電圧: 70eV
イオン化モード:EI+
【0061】
結果
結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
備考
nd:検出されず。
表中の()内の数字は、検出限界の値を示した。
【0063】
以上の結果、油脂に溶解する酸化防止剤(参考例3)は対照区(参考例4)の値より高い値が得られ、加熱時の熱と空気の暴露あるいはBHTの揮発によって酸化防止剤の効果を失っている可能性が示唆された。一方、シソ抽出物に含まれる成分である試料1は対照区及び参考例1〜5に比べ、検出されないか(検出限界50ppb)、対照区の約10分の1の値となり、本発明のルテオリンは食品のアクリルアミドの生成を有意に抑制することがわかった。また、配糖体から糖を分離しているナリンゲニンは対照区(参考例4)の値に比べ、半分(約55%)の抑制効果を示した。そのため、フラボノイド化合物の構造式の違いによってアクリルアミドの生成量に影響を与えることが示唆された。さらに、フラボンを含めた上位概念にあたるポリフェノールの例として緑茶抽出物を利用した場合、油性食品の系ではアクリルアミドの生成を阻害しないことがわかった。
この結果は、フラボンを代表とするルテオリンに見られた顕著な効果である。そして本実施例で用いたルテオリンは高温加熱した油(非水)中でのアクリルアミド生成阻害剤、広くはアミノ・カルボニル反応を阻害する物質として作用することがわかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、実施例1で得たルテオリンの吸収スペクトルを示す。
【図2】 図2は、実施例1で得たルテオリンのHPLCクロマトグラムを示す。
【図3】 図3は、実施例2で得たシソ実抽出濃縮液のHPLCクロマトグラムを示す。
Claims (6)
- ルテオリンを有効成分として含有する、食品のアクリルアミド生成抑制剤。
- ルテオリンである、請求項1に記載のアクリルアミド生成抑制剤。
- シソ科植物由来のルテオリンを有効成分として含有する、請求項1または2に記載のアクリルアミド生成抑制剤。
- シソ科植物由来のルテオリンが、それぞれシソ科植物の水溶性画分に由来する請求項3に記載のアクリルアミド生成抑制剤。
- 前記シソ科植物がシソ(青シソもしくは赤シソ)の葉、種子、または春菊(キク科)、セロリ(セリ科)、ピーマン(ナス科)より選択される1種又は2種以上である、請求項3または4に記載のアクリルアミド生成抑制剤。
- 前記シソ科植物がシソの葉またはシソの種子より選択される1種又は2種以上である、請求項3または4に記載のアクリルアミド生成抑制剤。
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