JP2005257536A - 親和性物質測定方法 - Google Patents

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【課題】 本発明は、親和性物質の凝集反応を利用した測定方法、およびそのための装置に関する。
【解決手段】測定対象である親和性物質と、この親和性物質との結合親和性を有する結合パートナーとの結合反応が、凝集反応によって測定される。結合パートナーは担体粒子に結合されており、結合反応によって担体粒子が凝集する。本発明は、電場を印加する前に反応液をインキュベートすることによって、凝集反応を増強する。また本発明は、電界中に置かれた反応液の温度や粘度の調整によって、凝集反応を増強する。本発明は、測定感度の向上に貢献する。
【選択図】なし

Description

本発明は担体粒子の凝集反応を利用した親和性物質の測定方法、および装置に関する。
親和性物質の存在を検出または測定する方法としては、例えば、酵素免疫測定法、あるいは放射線免疫測定法などが従来から用いられている。いずれの方法においても、親和性物質をその結合パートナーと結合させ、両者の結合レベルに基づいて、親和性物質が測定される。これらの方法は高感度であり精度も高い。しかし酵素、あるいは放射性同位元素を標識として使用するため試薬が不安定である。また放射性同位元素の利用にあたっては、保管および保存上の規制があることから、測定において細かい配慮や技術を要求される。そのため、より簡便な測定方法が求められていた。またこれらの方法は測定に比較的長時間を要するため、緊急な検査に対応することが難しい。これらの背景のもとで、高感度且つ迅速な測定方法が盛んに研究されるようになった。
1970年以降、親和性物質と結合パートナーとの結合を担体粒子の凝集を指標として測定する分析方法が実用化された。この方法は、担体粒子の凝集の程度を光学的に測定することによって、定量的な分析を可能とした。たとえば担体粒子としてラテックス粒子を利用した、免疫学的粒子凝集反応を光学的に測定する方法は、ラテックス凝集比濁法(Latex Agglutination Turbidimetry)と呼ばれている。これらの分析方法における反応温度は、一般的には37〜45℃の範囲で行われ、撹拌翼などによって撹拌することにより特異的凝集反応が進行する。このとき測定(反応)に要する時間は、およそ10〜20分で、酵素免疫測定法、あるいは放射線免疫測定法に比べ迅速である。一方、測定感度、あるいは測定範囲については、酵素免疫測定法等に比べ劣るといわれている。
ラテックス凝集法における粒度分布測定法も公知である(非特許文献1/カムビアソら, J. Immunol. Methods 18, 33, 1977、非特許文献2/松沢ら,化学と工業, 第36巻, 第4号, 1982)。ラテックス凝集比濁法が、粒子懸濁液の光の透過度を測定するのに対して、粒度分布測定法においては分散した個々の粒子の状態や数が測定される。カンビアソらの報告においては、粒子径0.8μmのラテックスに抗体を結合させた試薬と抗原とを37℃で20分間反応させた。反応後の粒子数を計数し、凝集による粒子数の減少のレベルに基いて抗原を測定した。粒子数は、レーザー散乱光を原理とした計数機で測定した。
一方、松沢らは、粒子径1μmのラテックス粒子に抗体を結合させた試薬を抗原と6時間反応させた。反応後、電気抵抗法により平均粒子容積を計測して、抗原を測定した。しかし、実用化されて普及したのはシースフローによるレーザー散乱法を用いたPAMIAシステム(株式会社シスメックス)のみである。PAMIAでは、粒子径0.78μmのラテックス粒子が使用されている。45℃で15分間の反応後にラテックス粒子を計数して免疫測定を行うものである。PAMIAは、ラテックス凝集比濁法に比べ高感度化されているが、放射免疫測定法(RIA)や酵素免疫測定法(EIA)といった高感度免疫測定に比べると感度は劣るといわれている。
ラテックス凝集比濁法においては、一般に粒子径0.05〜0.6μmのラテックス粒子が用いられている。ラテックス凝集粒度分布解析法の場合は、このように小さい粒子では、測定妨害物質の影響を受けやすい。たとえば、血液や尿などの体液中には、脂質、蛋白、血球成分などが共存する。これらの共存物質は担体粒子との識別が難しい。そのため担体粒子を正しく計数できない場合がある、これらの測定妨害物質の影響を避けるために、比較的大きい粒子が使用されてきた。一方で、松沢らのように1μm程度の粒子径になると、凝集反応が起こりにくくなるため、0.8μm程度のラテックス粒子が用いられていた。また、松沢らが平均粒子容積を計測するのに使用したアパーチャー(細孔)の口径は30μmである。このサイズではアパーチャーの詰まりの影響を受けやすい。しかし、これより大きい口径のアパーチャーでは0.8〜1μmの粒子の検出はできなくなる。
更に、親和性物質と結合パートナーの結合に基づく担体粒子の凝集を促進し、また形成される凝集塊の検出を容易にするために、反応系に交流電圧を印加する方法が公知である(特開平7−83928号/特許文献1)。この方法は、担体粒子の凝集により親和性物質の存在を検出又は測定する方法であって、10mM以上の塩の共存下に5〜50V/mmの電界強度になるように交流電圧を該反応系に印加することを特徴とする。
結合パートナーを保持した担体粒子は、電場に置かれると電場に沿ってに並ぶ(パールチェイン化)。その後電場を停止すると並んでいた担体粒子が再分散する。パールチェイン化の際に親和性物質が存在すると、結合パートナーが親和性物質と結合する。その結果、電場を停止後も担体粒子の再分散が起こらず、パールチェイン化した担体の存在がなおも認められる。前記測定方法は、この現象を利用している。すなわち、電場においては、親和性物質の反応が促進される。そして電場を停止後に担体粒子を再分散させれば、反応生成物を検出することができる。
特開平7−83928号 カムビアソら, J. Immunol. Methods 18, 33, 1977 松沢ら,化学と工業, 第36巻, 第4号, 1982
電場の印加を利用した親和性物質の測定方法においては、親和性物質の反応は、結合パートナーを保持した担体粒子のパールチェイン化の際に起こる。両者の反応によって凝集した担体粒子が、結合の指標として検出または測定される。したがって、両者の反応を促進することができれば、反応効率の向上を実現できる可能性がある。あるいは、もしも反応を阻害する要因を明らかにし、その影響を取り除く方法が提供されれば有用である。
本発明は、親和性物質と結合パートナーとの結合によって担体粒子を凝集させる方法において、両者の結合を促進することができる方法の提供を課題とする。あるいは本発明の課題は、両者の結合の阻害要因の影響を抑制するための方法を提供することである。
パールチェイン化された担体粒子が保持している結合パートナーが親和性物質と効率的に結合するためには、できるだけ多くの親和性物質が結合パートナーと接触する条件を与えればよいはずである。言い換えれば、結合パートナーとの接触の機会を逸した親和性物質が多い条件は、反応効率が低い条件であると言うことができる。このような条件下では、両者の結合を担体粒子の凝集によって検出する測定方法においては、測定感度の向上が妨げられる可能性がある。本発明者らは、親和性物質と結合パートナーとの結合の効率を向上させるための方法を明らかにし本発明を完成した。
加えて、電圧を印加された反応液の温度は、ジュール熱によって上昇する。本発明者らは、反応液の温度が親和性物質−結合パートナー間の反応に与える影響について解析した。その結果、反応液の温度の上昇が、両者の結合に対して阻害的に作用する可能性があることを確認した。そして、電場を印加している反応液の温度条件の制御によって、好適な反応条件を実現できることを明らかにし、本発明を完成した。すなわち本発明は、以下の測定方法、測定装置、あるいは結合パートナーを保持した担体粒子の親和性物質による凝集を促進させるための方法を提供する。
〔1〕次の工程を含む、親和性物質の測定方法。
(1)測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定対象親和性物質とを混合した反応液をインキュベートする工程、
(2)工程(1)の反応液に、電圧パルスを印加する工程、
(3)工程(2)の後に、測定対象である親和性物質との結合によって形成された担体粒子の凝集塊、および測定対象である親和性物質と結合せず凝集塊を形成しなかった担体粒子のいずれかまたは両方を計数する工程、および
(4)工程(3)の後に、凝集塊の形成レベル、および凝集塊を形成しなかった担体粒子のレベルのいずれか、または両方に基づいて測定対象物質のレベルを決定する工程
〔2〕工程(1)が、前記反応液を37〜90℃でインキュベートする工程である〔1〕に記載の方法。
〔3〕工程(1)が、前記反応液を40〜90℃でインキュベートする工程である〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記反応液中に水溶性高分子が含有されていることを特徴とする〔1〕に記載の方法。
〔5〕工程(2)における反応液の粘度を0.8〜3mPasに調整する〔1〕に記載の方法。
〔6〕工程(2)を0〜20℃で行うことを特徴とする〔1〕に記載の親和性物質の測定方法。
〔7〕工程(2)を0〜10℃で行うことを特徴とする〔6〕に記載の親和性物質の測定方法。
〔8〕凝集塊および凝集塊を形成しなかった担体粒子のいずれか、または両方を、その三次元情報を指標として計数する〔1〕に記載の方法。
〔9〕親和性物質と結合パートナーの結合が、抗原抗体反応による結合である〔1〕に記載の方法。
〔10〕親和性物質が抗原であり、結合パートナーが抗体またはその抗原結合領域を含む断片である〔9〕に記載の方法。
〔11〕親和性物質が抗体またはその抗原結合領域を含む断片であり、結合パートナーが抗原またはその抗原決定基を含む断片である〔9〕に記載の方法。
〔12〕電圧パルスが交流電圧パルスである〔1〕に記載の方法。
〔13〕次の工程を含む、親和性物質の測定方法。
(1’)少なくとも測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定対象親和性物質とを含む反応液を、凝集試薬成分と混合する前または後にインキュベートする工程であって、前記担体粒子は凝集試薬によって凝集し、かつ測定対象親和性物質によってその凝集は阻害される工程
(2’)凝集試薬成分の存在下で工程(1’)の反応液に、電圧パルスを印加する工程、
(3’)工程(2’)の後に、凝集試薬との結合によって形成された担体粒子の凝集塊、および測定対象である親和性物質との結合によって凝集を阻害された担体粒子のいずれかまたは両方を計数する工程、および
(4)工程(3’)の後に、凝集塊の形成レベル、および凝集塊を形成しなかった担体粒子のレベルのいずれか、または両方に基づいて測定対象物質のレベルを決定する工程
〔14〕工程(1’)において、前記反応液をインキュベート後、工程(2’)の前に凝集試薬を混合する〔13〕に記載の方法。
〔15〕凝集試薬を混合後に、工程(2’)の前に更にインキュベートする工程を含む〔13〕に記載の方法。
〔16〕工程(1’)において、前記反応液を凝集試薬の存在下でインキュベートした後、工程(2’)を実施する〔13〕に記載の方法。
〔17〕特定の物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、前記特定物質とを含む反応液に電圧パルスを印加する手段を含む、担体粒子を凝集させるための装置において、反応液の温度を37℃〜90℃に加熱するための手段を有することを特徴とする装置。
〔18〕特定の物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、前記特定物質とを含む反応液に電圧パルスを印加する工程を含む、担体粒子を凝集させるための方法において、電圧を印加している間の反応液の温度を0℃〜20℃とすることを特徴とする方法。
〔19〕結合パートナーと特定の物質との結合が、抗原抗体反応である〔18〕に記載の方法。
〔20〕電圧パルスが交流電圧パルスである〔18〕に記載の方法。
〔21〕反応液に水溶性高分子を添加する〔18〕に記載の方法。
〔22〕反応液の粘度を0.8〜3mPasに調整する〔18〕に記載の方法。
〔23〕前記担体粒子と特定の物質とを、電圧パルスを印加する前に37℃〜90℃でインキュベートする工程を含む〔18〕に記載の方法。
〔24〕特定の物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、前記特定物質とを含む反応液に電圧パルスを印加する手段を含む、担体粒子を凝集させるための装置において、電圧を印加している間の反応液の温度を0℃〜20℃にするための手段を有することを特徴とする装置。
〔25〕 以下の要素を含む、測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定すべき親和性物質との結合を、前記担体粒子の親和性物質または凝集試薬による凝集を指標として測定するための測定装置。
a:反応液を保持するための空間、
b:反応液の温度を37℃〜90℃でインキュベートするための手段、
c:反応液に電圧パルスを印加するための手段、
d:パルス電圧の印加時における反応液の温度を0℃〜20℃とするための手段、および
e:反応液に含まれる担体粒子と担体粒子の凝集塊のいずれか、または両方を計数するための手段
本発明によって、電場を印加した反応液における、結合パートナーを保持した担体粒子の親和性物質との結合反応を促進するための方法、あるいはその反応を阻害する要因の影響を抑制するための方法が提供された。担体粒子の凝集を指標とする親和性物質の測定において、好適な反応条件を示した報告は多くない。本発明によって、たとえば、担体粒子の凝集を指標とする免疫学的結合反応を利用した測定方法の感度の上昇、あるいは反応時間の短縮を実現することができる。本発明は、上記反応の最適化に貢献する。
本発明は、次の工程を含む、親和性物質の測定方法に関する。
(1)測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定対象親和性物質とを混合した反応液をインキュベートする工程、
(2)工程(1)の反応液に、電圧パルスを印加する工程、
(3)工程(2)の後に、測定対象である親和性物質との結合によって形成された担体粒子の凝集塊、および測定対象である親和性物質と結合せず凝集塊を形成しなかった担体粒子のいずれかまたは両方を計数する工程、および
(4)工程(3)の後に、凝集塊の形成レベル、および凝集塊を形成しなかった担体粒子のレベルのいずれか、または両方に基づいて測定対象物質のレベルを決定する工程
本発明の特徴は、測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定対象親和性物質とを混合した反応液を、電圧パルスを印加する前にインキュベートすることにある。本発明者らは電圧パルス印加前の反応液のインキュベートによって、電圧パルス印加後の凝集塊の形成が促進されることを明らかにした。すなわち、電圧パルス印加前のインキュベートによって反応が促進される。
本発明において、反応液のインキュベートは、たとえば室温以上の温度で実施される。インキュベートの温度は、反応液に含まれる各種の反応成分の活性を維持できる限り、できるだけ高温であることが望ましい。インキュベートのための時間は限定されない。すなわちインキュベートの温度において、反応成分の変性をもたらさない範囲でインキュベートすることができる。インキュベートの時間は長いほど促進効果も増強される。したがって、必要なレベルの促進効果を期待できる温度と時間の条件を予め設定することが望ましい。
具体的には、たとえばインキュベートのための温度条件として、通常37−90℃、好ましくは40−90℃、あるいは45−80℃を示すことができる。たとえば親和性物質である蛋白質抗原を、結合パートナーである抗体を用いて、本発明に基づいて測定することができる。抗体や抗原を構成する蛋白質は高温では変性することが知られている。しかし、たとえば血清の非動化のための一般的な条件である56℃30分というインキュベート条件は、多くの蛋白質は変性しない。更に本発明者らは、イムノアッセイのような低い蛋白質濃度条件で、短時間の処理であれば、90℃程度の温度であっても蛋白質の変性は無視しうることを確認した。たとえば45−80℃の範囲において、5−180秒のインキュベートは、ほぼ同じレベルの反応促進効果を得られることが確認された(図3)。したがって、本発明における好ましいインキュベートの条件として、好ましくは45−80℃、より好ましくは50−65℃で、5秒以上、たとえば5−30秒を示すことができる。
本発明においては、より長いインキュベート時間をも含まれることは言うまでもない。しかし、反応時間の短縮が望まれる場合には、5秒以上の短い時間を採用することによって、反応時間を犠牲にすることなく目的とする反応促進効果を期待することができる。また、たとえば80℃を越える高温条件においては、インキュベート時間を5−180秒とすることで、蛋白質の変性を避けることができる。
あるいは、本発明の方法を耐熱性の物質の反応に応用する場合には、高温条件は問題とならない。たとえばDNAは、高温条件下でもきわめて安定である。したがってDNA間の結合を担体粒子の凝集によって測定しようとする場合には、インキュベートのための温度としてより高い温度を選択することもできる。
本発明において、インキュベートによって反応が促進されるメカニズムは、次のように説明することができる。電圧パルスの印加によって整列した担体粒子は、その上に固定された結合パートナーが、親和性物質を介して別の担体粒子上の結合パートナーと架橋されることによって凝集塊を構成する。一連の反応は、担体粒子が整列したときに起きると考えられていた。しかし本発明者が得た知見によると、電圧パルス印加前のインキュベートが反応の効率化に貢献することが確認された。またこのインキュベートの間に、担体粒子上の抗体に抗原が結合した状態が形成されることも明らかにした。つまり、電圧パルス印可によって担体粒子を整列させる前に、抗体が抗原を捕捉した状態にしておくことが反応を効率化すると考えられた。
担体粒子が整列した状態においては、担体粒子上の結合パートナーと反応液中に存在する親和性物質の接触の機会が制限されていると考えられる。電圧パルスを印加した反応液中では、電場の断続的な印加によって、担体粒子の整列と分散が繰り返される。その結果、結合パートナーと親和性物質の接触の機会は増加する。一方、電圧パルスを印加されていない条件下では、電圧パルス印加時と比べて、担体粒子の自由度ははるかに大きいと考えられる。その結果、担体粒子上の結合パートナーと親和性物質の接触の機会が増大する。親和性物質を捕捉した結合パートナーを有する担体粒子は、電圧パルスの印加によって他の担体粒子とともに電場に整列する。このとき結合パートナーは既に親和性物質を捕捉しているので、接近した他の担体粒子の結合パートナーとの結合によって速やかに凝集塊が形成される。
つまり電圧パルスの印加の後に担体粒子の凝集を検出し、その凝集を指標として親和性物質を測定する方法においては、担体粒子の凝集塊は、以下の一次反応と二次反応を経て形成されると言ってよい。
一次反応:担体粒子上の結合パートナーが親和性物質を捕捉する反応。このとき、必ずしも親和性物質を介した担体粒子間の架橋構造は形成されなくても良い。
二次反応:複数の担体粒子上の結合パートナーが親和性物質に結合する反応。その結果、親和性物質を介した担体粒子間の架橋構造(すなわち凝集塊)が形成される。
二次反応は電圧パルスの印加によって促進される。しかし一次反応を促進するための具体的な条件は明らかにされていなかった。したがって本発明は、一次反応の促進のための条件を提供したと捉えることもできる。すなわち本発明における電圧パルスの印加前のインキュベート工程は、一次反応の促進のための工程であると言うこともできる。
本発明においては、電圧パルスを印加する前の反応液中に水溶性高分子化合物を添加することができる。水溶性高分子化合物の存在下で、親和性物質と結合パートナーの結合を粒子凝集反応によって検出することによって、凝集反応の強化、あるいは安定化を達成することができる。反応液中の水溶性高分子化合物の濃度は、たとえば0.05〜5%から適宜選択することができる。より好ましくは0.1〜3%、更に好ましくは0.3〜1%である。凝集反応の強化作用が強い化合物は、5%を超える濃度において、非特異的凝集反応の可能性を大きくする傾向がある。また、0.05%以下の低い濃度では、その効果が十分に期待できない場合がある。
水溶性高分子化合物としては、ポリエチレングリコール、デキストラン、カルボキシメチルセルロース等を用いることができる。ポリエチレングリコールの分子量は、6000〜2000000が好ましい。これらの水溶性高分子化合物は1種類でも良いし、2種類以上を組み合わせてもよい。水溶性高分子化合物を反応液に添加するためには、粒子担体を含む試薬中に予め必要量を添加しておくことができる。あるいは水溶性高分子化合物を粒子担体とは異なる試薬として混合することもできる。たとえば、サンプルの希釈液中に水溶性高分子化合物を添加しておくことができるできる。更に、混合される複数の試薬、並びに希釈液中に添加しておくこともできる。
好ましくは、2試薬系とし、緩衝液などの第一試薬に含有させておき、担体を含む第二試薬と混合して測定に使用する。このとき、第一試薬中には異好性抗体(heterophile antibody)などの非特異物質を吸収する非特異吸収剤やリウマチ因子を吸収するための物質を添加することができる。
本発明に基づく、電圧パルスの印加前のインキュベートによる反応効率の向上は、凝集阻止反応に応用することもできる。すなわち本発明は、次の工程を含む、親和性物質の測定方法を提供する。インキュベートの条件は、前記の条件と同様である。また凝集阻止反応系においても、反応液に水溶性高分子化合物を添加することができる。
(1’)少なくとも測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定対象親和性物質とを含む反応液を、凝集試薬成分と混合する前または後にインキュベートする工程であって、前記担体粒子は凝集試薬によって凝集し、かつ測定対象親和性物質によってその凝集は阻害される工程
(2’)凝集試薬成分の存在下で工程(1’)の反応液に、電圧パルスを印加する工程、
(3’)工程(2’)の後に、凝集試薬との結合によって形成された担体粒子の凝集塊、および測定対象である親和性物質との結合によって凝集を阻害された担体粒子のいずれかまたは両方を計数する工程、および
(4)工程(3’)の後に、凝集塊の形成レベル、および凝集塊を形成しなかった担体粒子のレベルのいずれか、または両方に基づいて測定対象物質のレベルを決定する工程
上記のように、電圧パルスの印加前の反応液のインキュベートは、担体粒子の凝集反応の促進に有効である。このとき、インキュベートの温度は、高いほうがより効果が大きいことは既に述べた。一方、電圧パルスを印加された反応液の温度は、ジュール熱のために上昇する。導体を電流が流れるときに、導体において発生する熱がジュール熱である。本発明者は、インキュベートにおける高温条件が凝集反応に促進的に作用するのに対して、電圧パルス印加時の温度上昇が凝集反応に対して阻害的に作用することを見出した。したがって、電圧印加時には、反応液の温度を低く維持することが有利である。
すなわち本発明は、特定の物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、前記特定物質とを含む反応液に電圧パルスを印加する工程を含む、担体粒子を凝集させるための方法において、電圧を印加している間の反応液の温度を0℃〜20℃とすることを特徴とする方法を提供する。
本発明の方法は、たとえば担体粒子の凝集を指標として親和性物質を測定する方法に利用することができる。より具体的には、次の工程を含む、親和性物質の測定方法が本発明によって提供される。
(1)測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定対象親和性物質とを混合した反応液に、0℃〜20℃の条件下で電圧パルスを印加する工程、
(2)工程(1)の後に、測定対象である親和性物質との結合によって形成された担体粒子の凝集塊、および測定対象である親和性物質と結合せず凝集塊を形成しなかった担体粒子のいずれかまたは両方を計数する工程、および
(3)工程(2)の後に、凝集塊の形成レベル、および凝集塊を形成しなかった担体粒子のレベルのいずれか、または両方に基づいて測定対象物質のレベルを決定する工程
あるいは本発明は、次の工程を含む、親和性物質の測定方法を提供する。
(1’)少なくとも測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定対象親和性物質および凝集試薬成分を含む反応液に、0℃〜20℃の条件下で電圧パルスを印加する工程、
(2’)工程(1’)の後に、凝集試薬との結合によって形成された担体粒子の凝集塊、および測定対象である親和性物質との結合によって凝集を阻害された担体粒子のいずれかまたは両方を計数する工程、および
(3)工程(2’)の後に、凝集塊の形成レベル、および凝集塊を形成しなかった担体粒子のレベルのいずれか、または両方に基づいて測定対象物質のレベルを決定する工程
本発明において、電圧パルス印加時の温度は、通常0〜20℃、たとえば0〜15℃、好ましくは1〜8℃、あるいは2〜4℃である。電圧パルスの印加によって反応液の温度は上昇する。したがって反応液の温度を低く保つためには、冷却手段を利用するのが有利である。局所的に低温環境を作り出すための好適な冷却手段として、たとえばペルチェ素子を示すことができる。ペルチェ素子とは、ペルチェ(Jean Charles A. Peltier)によって見出されたペルチェ効果を利用した半導体で構成される電子素子である。N型とP型の半導体に直流電流を流すと、半導体の片方で温度が吸収され、他方で放熱が起きる(熱交換現象)。温度が吸収される側の温度は低下し、冷却される。市販のペルチェ素子は、通常、−10℃前後の冷却能力を有している。ペルチェ素子の冷却能力は、半導体に供給する電流によって自由に制御することができる。したがって、電圧パルスを印加している間、温度センサーで反応液の温度を監視し、必要に応じてペルチェ素子を作動させることによって、所定の温度範囲に反応液の温度を維持することができる。
あるいはまた、電圧パルス印加時に反応液を十分に冷却し、電圧パルスの印加後も反応液の温度が所定の範囲にある場合には、電圧パルス印加時の冷却は必ずしも必要ではない。たとえば電圧パルスの印加終了時の反応液の温度が20℃以下であれば、印加の間の冷却無しでも、必要な温度条件を満たすことができる。予め十分に反応液を冷却し、更に必要に応じて、反応液がおかれる環境の温度上昇を抑制することができれば、電圧パルス印加の間の積極的な冷却は必須ではない。
本発明において、電圧パルスを印加する反応液は、予めインキュベートすることができる。インキュベートのための条件は先に述べたとおりである。反応液が37−90℃の高温でインキュベートされた場合には、電圧パルスを印加する前に十分に冷却する。通常、反応液の体積は1mL以下なので、反応液はきわめて短時間で冷却することができる。高温でインキュベートした反応液を冷却し、0−20℃において電圧パルスを印加するという条件は、本発明における好ましい条件である。
電圧パルス印加時の温度上昇が凝集反応に阻害的に作用するメカニズムは、次のように考えることができる。電圧パルスを印加された反応液中では、担体粒子の整列と分散が繰り返されている。担体粒子上の結合パートナーと反応液中の親和性物質(または凝集試薬成分)との接触の機会を増やすためには、担体粒子分散が有効である。同時に、複数の担体粒子を親和性物質(または凝集試薬成分)との結合によって架橋し、凝集塊を形成するためには、担体粒子の整列が有効である。しかし反応液における担体粒子の動きが激しい場合には、担体粒子が十分に整列できない可能性がある。反応液の温度が上昇した状態は、反応液に含まれる担体粒子のブラウン運動が激しくなって、電圧印加時の担体粒子の整列が難しくなっている状態であると言える。その結果、電圧の印加による担体粒子の整列が阻害され、凝集反応が阻害される。本発明に基づいて電圧パルス印加時の反応液の温度が制御された場合には、電圧印加による担体粒子の整列効果が十分に得られ、温度上昇による凝集反応の阻害を抑制することができる。
電圧パルスを印加された反応液における担体粒子の動きを抑制するために、反応液の粘度を高めることも有効である。一般的な凝集反応の反応液は、0.75mPas未満である。このような粘度においては、担体粒子の動きは抑制されず、凝集反応が阻害される場合がある。これに対して本発明者は、0.8mPas以上の粘度において、凝集反応を効率的に進められることを確認した。すなわち本発明は、特定の物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、前記特定物質とを含む反応液に電圧パルスを印加する工程を含む、担体粒子を凝集させるための方法において、電圧を印加している間の反応液の粘度を0.8mPas以上とすることを特徴とする方法を提供する。
より具体的には、次の工程を含む親和性物質の測定方法であって、反応液の粘度が0.8mPas以上である方法が本発明によって提供される。
(1)測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定対象親和性物質とを混合した反応液に電圧パルスを印加する工程、
(2)工程(1)の後に、測定対象である親和性物質との結合によって形成された担体粒子の凝集塊、および測定対象である親和性物質と結合せず凝集塊を形成しなかった担体粒子のいずれかまたは両方を計数する工程、および
(3)工程(2)の後に、凝集塊の形成レベル、および凝集塊を形成しなかった担体粒子のレベルのいずれか、または両方に基づいて測定対象物質のレベルを決定する工程
あるいは本発明は、次の工程を含む親和性物質の測定方法であって、反応液の粘度が0.8mPas以上である方法が本発明によって提供される。
(1’)少なくとも測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定対象親和性物質および凝集試薬成分を含む反応液に電圧パルスを印加する工程、
(2’)工程(1’)の後に、凝集試薬との結合によって形成された担体粒子の凝集塊、および測定対象である親和性物質との結合によって凝集を阻害された担体粒子のいずれかまたは両方を計数する工程、および
(3)工程(2’)の後に、凝集塊の形成レベル、および凝集塊を形成しなかった担体粒子のレベルのいずれか、または両方に基づいて測定対象物質のレベルを決定する工程
本発明において、反応液の粘度は、通常0.8mPasm以上、たとえば1−3mPas、好ましくは1−2mPasである。反応液の粘度は、粘度を調節することができる化合物の添加によって調節することができる。粘度を調節することができる化合物としては、親和性物質と結合パートナーとの結合に干渉しない任意の化合物を利用することができる。たとえば、牛血清アルブミン、カゼイン、グリセリン、スクロース、あるいは塩化コリン等を添加することによって、反応液の粘度を高めることができる。これらの化合物の添加量は、たとえば0.05〜5%から適宜選択することができる。より好ましくは0.1〜3%、更に好ましくは0.3〜1%である。また、反応液の組成が同じであっても、反応液の温度が低下すれば、一般に、粘度は高まる。したがって、反応液の粘度を高めるという意味でも、低温条件下での電圧パルスの印加は有効である。
当業者は、これらの化合物を反応液に添加し、電圧パルスを印加する温度条件下でその粘度を測定することにより、適当な添加量を設定することができる。液体の粘度を決定する方法は公知である。一般的には回転式粘度計や超音波式粘度計が用いられる。
本発明において親和性物質、および親和性物質との結合活性を有する結合パートナーとは、結合反応を構成することができるあらゆる物質の組み合わせを含む。すなわち、ある物質とある物質とが結合するとき、一方が親和性物質であり、他方は結合パートナーである。本発明における親和性物質および結合パートナーは、天然の物質であることもできるし、人工的に合成された化合物であってもよい。また親和性物質および結合パートナーは、精製された物質であることもできるし、不純物の共存も許容される。更に、親和性物質および結合パートナーは、細胞やウイルスの表面に存在していてもよい。
本発明において、親和性物質と結合パートナーとの結合反応の例として、たとえば次のような反応を示すことができる。これらの反応を構成する物質は、いずれも本発明における親和性物質または結合パートナーとすることができる。
抗原またはハプテンと抗体との反応(免疫反応)
相補的な塩基配列を有する核酸間のハイブリダイゼーション
レクチンとそのレセプターとの反応
レクチンと糖鎖の反応
リガンドとレセプターの反応
DNAと転写調節因子の反応
上記結合反応の中で、本発明における好ましい結合反応として、たとえば免疫反応を示すことができる。免疫反応を構成する抗原として、次のような物質を示すことができる。これらの抗原は、抗原分子そのもののみならず、その断片や、細胞表面に存在した状態であっても良い。なおこれらの物質は抗原物質の例であり、これら以外の抗原物質に本発明を応用できることは言うまでも無い。たとえば、ラテックス、血球等を担体として使用する免疫学的凝集反応に基づく測定が可能な抗原性物質は、いずれも本発明における親和性物質とすることができる。
腫瘍マーカー:
AFP、CEA、CA19−9、PSA等
凝固線溶糸マーカー:
プロテインC、プロテインS、アンチトロンビン(AT)III、FDP、FDP−D−ダイマー等
感染症マーカー:
CRP、ASO、HBs抗原等
ホルモン:
甲状腺刺激ホルモン(TSH)、プロラクチン、インシュリン等
組織成分:
ミオグロビン、ミオシン、ヘモグロビン等
その他:
DNA等の核酸など
抗原性物質とそれを認識する抗体は、いずれかを親和性物質として、そして他方を結合パートナーとして利用することができる。本発明において親和性物質とは、当該物質を測定対象とするときに、親和性物質と呼ぶ。他方、結合パートナーとは、親和性物質を測定するためにプローブとして利用することができる、当該親和性物質に対する結合活性を有する物質を言う。したがって、抗原を測定するときには、抗体を結合パートナーとして利用することができる。逆に、抗体を測定するときには、該抗体が認識する抗原を結合パートナーとして利用することができる。たとえば、ラテックス、血球等を担体として使用する免疫学的凝集反応に基づく測定が可能な抗体は、いずれも本発明における親和性物質とすることができる。HBs(B型肝炎ウイルス表面抗原)、HBc(B型肝炎ウイルスコア抗原)、HCV(C型肝炎)、HIV(AIDSウイルス)、TP(梅毒)等に対する抗体が、免疫学的凝集反応によって測定されている。
親和性物質と結合パートナーとの反応を担体粒子の凝集を指標として測定するためのいくつかの反応原理が公知である。これらの反応原理は、いずれも本発明に応用することができる。以下に担体粒子の凝集を指標とする、親和性物質と結合パートナーとの反応を利用した測定原理を例示する。
直接凝集反応:
測定対象物質と担体粒子上の結合パートナーとの反応による、担体粒子の凝集が検出される。たとえば、抗原分子を結合パートナーである抗体によって測定する場合が、この原理に含まれる。あるいは逆に、抗原を結合した担体粒子の凝集を指標として、親和性物質である抗体を測定する場合も、この原理に含まれる。直接凝集反応においては、通常、凝集のレベルと測定対象物質である親和性物質の量は正比例する。
凝集阻止反応:
ハプテンと呼ばれる低分子抗原は、担体粒子の凝集に必要な抗原を介した架橋構造を作りにくい。そのため、直接凝集反応の原理ではハプテンを検出することができない。そこで、複数分子のハプテンまたはそのエピトープを含む断片を担体に結合したポリハプテンと、担体粒子上の抗体との結合による凝集反応が利用される。ポリハプテンは、複数の抗体分子を架橋することができるので、担体粒子を凝集させる。しかしハプテンが存在すると、ポリハプテンと抗体との反応が阻止され、担体粒子の凝集が阻止される。凝集阻止のレベルは、ハプテンの存在と正比例する。言い換えれば、測定対象物質の量と、凝集反応のレベルは逆比例する。
ハプテンに分類される測定対象抗原には、以下のような成分が挙げられる。
ホルモン:
エストロゲン、エストラジオール
薬剤:
テオフィリン
本発明においてハプテンを凝集阻止反応の原理に基づいて測定するためには、ハプテンに対する抗体を結合した担体粒子を凝集させることができる成分が必要である。ハプテンに対する抗体を結合した担体粒子を凝集させることができる成分を、本発明においては凝集試薬と言う。凝集試薬は、抗体との特異的な親和性を有し、かつ抗体との結合によって担体粒子を架橋する作用を有する試薬と定義される。先に述べたポリハプテンは、ハプテンの測定において凝集試薬として用いることができる。
本発明において、結合パートナーは、担体粒子に結合して用いられる。本発明の担体粒子としては、ラテックス粒子、カオリン、金コロイド、赤血球細胞、ゼラチン、リポソーム等が挙げられる。ラテックス粒子としては、凝集反応において一般に用いられているものが使用できる。ポリスチレン系ラテックス、ポリビニルトルエン系ラテックス、ポリメタクリレート系のラテックス粒子が公知である。好ましい粒子担体はポリスチレン系ラテックス粒子である。官能基を有するモノマーの共重合によって、ラテックス粒子表面に官能基を導入したラテックス粒子を用いることもできる。たとえば、−COOH、−OH、−NH2 、−SO3等の官能基を有するラテックス粒子が公知である。官能基を有するラテックス粒子には、結合パートナーを化学的に結合させることができる。
担体粒子の平均粒径は、例えばラテックス粒子の場合、0.3〜20μmが好ましい。平均粒径が0.3μm以下、または20μm以上であるとパールチェインが形成されにくく好ましくない。担体粒子の平均粒径は、例えばラテックス粒子の場合、さらに好ましくは2〜10μmである。また、誘電分極が大きい楕円形粒子を用いることにより、より小さい担体粒子を使用することもできる。
このように、公知のラテックス凝集比濁法における担体粒子が0.05〜0.6μmであるのと比べ、本発明の方法においては1μm以上の大きなサイズの粒子を利用することができる。電圧パルスを印加する工程の利用によって凝集反応が促進される結果、大きなサイズの粒子であっても短時間で十分な反応が進行するためである。担体粒子が大きいことは、以下のような利点につながる。まず、粒子を計測するためのアパーチャーサイズを大きくすることができる。その結果、アパーチャーが詰まりにくくなる。また、担体粒子が大きくなることによって、体液に含まれる測定妨害物質との識別が容易になる。その結果、測定精度が向上する。
本発明において、担体粒子としてラテックス粒子に代えて他の粒子を用いる場合にも、ラテックス粒子と同様のサイズの粒子を利用することができる。たとえば、カオリン、金コロイド、ゼラチン、あるいはリポソーム等の粒子を担体粒子に用いる場合に、担体粒子の平均粒径は好ましくは0.3〜20μmである。
結合パートナーと粒子担体は、それぞれの素材に応じた方法によって結合させることができる。当業者は、両者の結合方法を適宜選択することができる。たとえばラテックス粒子には、抗原や抗体、あるいはそれらの断片などの蛋白質を物理吸着することができる。表面に官能基を有するラテックス粒子においては、当該官能基との共有結合が可能な置換基を化学的に結合させることができる。たとえば、−COOHを有するラテックスには、蛋白質の−NH2を結合させることができる。
結合パートナーを結合させた担体粒子は、必要に応じてブロッキングすることができる。具体的には、担体粒子表面を不活性蛋白質で処理することによって、担体粒子表面に対する非特異的な蛋白質の結合を防止することができる。不活性蛋白質としては、ウシ血清アルブミンや脱脂粉乳などを用いることができる。更に、担体粒子の分散性を向上させるために、分散媒に界面活性剤や糖類を加えることができる。また、微生物の繁殖を防ぐために、粒子担体に抗菌剤を添加することもできる。
本発明は、親和性物質と担体粒子を電界中で整列させる工程を含む。電界中に担体粒子を整列させ、凝集反応を行わせる方法は公知である(特開平7−83928号)。すなわち、親和性物質と担体粒子を含む反応液に電圧パルスを印加することにより、担体粒子を電界に沿って整列させることができる。
このとき、凝集阻止反応の原理を利用する場合には、親和性物質と担体粒子は、凝集試薬の共存下で整列させられる。凝集試薬は、担体粒子と測定対象親和性物質との接触の後に接触させることができる。あるいは予め測定対象親和性物質と凝集試薬を混合した後に担体粒子を添加することによって、3つの成分を同時に接触させることができる。
電圧パルスには交流成分、または直流成分を利用することができる。両者を任意に組み合わせることもできる。反応液は電気分解を起こしやすいので交流電圧が好ましい。交流電圧には、方形波、矩形波、あるいは正弦波等を用いることができる。反応液(試薬)のイオン強度により、交流電圧の電源周波数を任意に設定することができる。交流電圧は波高値で示したとき、5〜50V/mmの電解強度が得られるように印加する。電解強度が5V/mmよりも小さいと担体のパールチェイン化が起こりにくく、したがって凝集反応の促進が不十分となる。電解強度が50V/mmを超えると反応液の電気分解が起こりやすく、凝集反応の測定が困難となる。より好ましくは10〜20V/mmの電界強度が得られるように印加する。交流の周波数は10KHz〜10MHzの周波数が好ましい。より好ましくは50KHz〜1MHzの周波数である。
反応系中の担体粒子の濃度が高いほどパールチェインが形成されやすいので凝集反応が促進される。また、担体粒子の濃度が高いほど生物学的特異的反応性物質が存在しない場合に再分散したときの担体粒子の凝集率が大きくなる傾向がある。反応系中の担体粒子の濃度は、例えばラテックス粒子の場合、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.05〜1重量%である。
本発明において、反応液には凝集反応を促進する塩を添加することができる。たとえば、10mM以上の比較的高い濃度で塩を添加することにより、凝集反応を促進することができる。ただし塩の濃度が反応系中に600mM以上の濃度で存在すると反応液の電気分解が起こり易くなるので好ましくない。より好ましい塩の濃度は10〜300mM、最も好ましい塩の濃度は25〜150mMである。生体試料自身が凝集反応を促進する塩を含有している可能性がある場合には、反応液中の最終塩濃度が上記の範囲に入るように試薬の塩濃度を調整すると良い。なお電圧パルスとして直流成分を用いる場合では約6mMの塩濃度の反応液でも電気分解が起こるため、塩の存在下では生物学的特異的凝集反応の測定は困難である。
本発明における塩は、生物学的特異的凝集反応を促進するものの中から選択され得る。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化アンモニウムが挙げられるがこれに限定されるものではない。モル電気伝導度が10mM、25℃の水溶液において100cm2/(Ω・mol)以上の値を示す塩は、本発明に用いる塩として好ましい。より具体的には、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化アンモニウム等を好ましい塩として示すことができる。
本発明において、親和性物質を含む検体は制限されない。すなわち、測定対象である親和性物質を含む任意の試料を検体として利用することができる。たとえば、血液試料、咽頭などの局所から採取された試料、唾液、喀痰、尿、あるいは便は代表的な生体試料である。その他、生体から採取されるあらゆる生体材料は、生体物質測定用の検体として本発明に利用することができる。更に、これらの生体試料を培養することによって得ることができる培養物も、本発明の検体として利用することができる。生体材料は、そのまま、あるいは必要に応じて処理した後に、検体とすることができる。たとえば、生体材料は分画、希釈、溶解、抽出などの処理を経て、検体とすることができる。
本発明において検体は原液でもよく、又は自動希釈して測定に使用される。希釈倍率は任意に設定することが可能である。反応に必要な試薬が複数種類となるときには、2試薬以上を順次に添加することも可能である。検体と試薬は電圧を印加する前に予め混合しておくことが望ましい。攪拌子を使って物理的に両者を混合することができる。あるいは電気的な方法によって、両者を混合することもできる。電気的な手法としては、異なる方向の電圧パルスの断続的な印加によって、担体粒子の位置を物理的に動かす方法を例示することができる。
本発明の測定方法を構成する各工程を以下に具体的に説明する。試料とともに必要な成分を混合した反応液は、電極配置した槽に移動して、電圧パルスを印加される。電圧パルスの印加前に、予め反応液をインキュベートする場合には、電極を備えた槽に移動後、および移動前の両方、またはいずれかの段階で、インキュベートされる。電場をかけると担体粒子は誘電分極を起こして静電的に引き合い直鎖状に並ぶ。この現象は、パールチェイン化と呼ばれている。その後電場を停止すると直鎖に並んでいた担体粒子は瞬時に再分散する。一方パールチェイン化の際に親和性物質を介して結合パートナー同士が結合すると、担体粒子は電場を停止後も分散せずに凝集塊を形成したままの状態で存在する。こうして形成された凝集塊および凝集しなかった担体粒子の両方、またはいずれかを測定することにより親和性物質の存在を検出又は測定することができる。
本発明の測定方法は、測定対象である親和性物質との結合によって形成された担体粒子の凝集塊、および測定対象である親和性物質と結合せず凝集塊を形成しなかった担体粒子のいずれかまたは両方を、指標として計数することを特徴とする。本発明において、粒子は電場を停止後に測定することができる。あるいは電場に置かれた粒子を、電場を停止することなく測定することもできる。たとえば、電場に置かれた粒子は、電場の中から取り出すことによって計数することができる。更に、粒子の計数前に、粒子を分散させる工程を実施することができる。計数前の分散工程によって、非特異的な要因によって凝集した粒子を分散させることができる。その結果、測定精度の向上が期待できる。粒子は、攪拌や反応液の希釈によって分散させられる。
凝集した単体粒子を計数するために、公知の方法を利用することができる。たとえば二次元情報に基づいて凝集のレベルを決定する方法が公知である。すなわち反応液の顕微鏡画像をスキャンし、単位面積あたりに占める凝集塊と非凝集粒子のいずれか、または両方が計数される。
あるいは本発明においては、担体粒子を、三次元情報を指標として計数することもできる。本発明において、三次元情報を指標とする計数とは、粒子および/または凝集塊の三次元情報を測定し、その結果に基づいて粒子および/または凝集塊を計数することを言う。三次元情報に基づく担体粒子の計数は、本発明における計数方法として好ましい。
三次元情報を測定するための方法は限定されない。また、本発明における計数とは、粒子および/または凝集塊の数を求めることを言う。粒子および/または凝集塊の数は、単に数のみを測定することもできる。あるいは凝集した粒子を、凝集していない粒子と区別して測定することもできる。更に、凝集した粒子については、凝集した粒子の数ごとに、その凝集塊の数を測定することもできる。三次元情報を指標として粒子を計数するためのいくつかの方法が公知である。
本発明に利用することができる粒子の計数方法は、物理的な原理に基づく測定方法が有利である。本発明において物理的な測定方法とは、粒子または凝集塊に固有の物理的な情報を評価することができる測定方法を言う。粒子または凝集塊に固有の物理的な情報は、真の測定結果と言い換えることもできる。これに対して画像情報から取得される二次元情報を解析する方法は、実際には凝集していない粒子の重なりを凝集塊として検出してしまう。このような検出結果は、粒子に固有の物理的な情報とは言えない。
粒子または凝集塊を物理的に測定するには、フローシステムの利用が有利である。フローシステムは、微細なフローセル中を通過する粒子の物理的な情報を解析することができるシステムである。フローシステムを利用することにより、容易に物理的な測定を実施することができる。すなわち本発明における物理的な測定とは、フローシステムによって粒子および凝集塊のいずれかまたは両方の三次元情報を測定し計数する工程を含む。三次元情報を指標として粒子を物理的に計数するための方法として、たとえば、コールター原理またはレーザー回析散乱法を示すことができる。
コールター原理(USPA2656508,1953年)とは、アパーチャー(細孔)の両側に電極を置き、アパーチャー内を通過する粒子による電気抵抗の変化に基づいて粒子の体積を検出する解析方法である。電解液を通して両電極間に微小電流を流したとき、電解液中に懸濁した粒子が吸引されてアパーチャーを通過すると、粒子体積に相当する電解液が粒子によって置換される。その結果、両電極間の電気抵抗に変化を生じるので、この変化を測定することにより、粒子の計数とサイズ(体積)を測定することができる。体積を検出する方法として静電容量法があるが、実用化されているものは電気抵抗法がほとんどである。
アパーチャーサイズは、解析対象となる粒子に合わせて適宜調節することができる。一般的な免疫学的な粒子凝集反反応に用いられる担体粒子の凝集を検出する場合、アパーチャーサイズとしては、通常30〜1000μm、好ましくは50〜200μmを示すことができる。
アパーチャーサイズは、担体粒子の平均粒径に対して数倍〜数百倍、好ましくは5倍〜50倍とするのが有利である。この場合、体積に比例したシグナルが検出でき、精度のよい高感度な測定が実現できる。粒子径に対してアパーチャーサイズの倍率は小さい方が感度はよくなるが、小さすぎると粒子が詰まりやすくなり、大きすぎると粒子の検出感度が低下するので好ましくない。
このようにして凝集粒子を計数することによって、凝集粒子の割合を知ることができる。凝集粒子の割合とは、計数した全粒子に占める凝集した粒子の割合を言う。また凝集粒子の割合を、凝集率(aggligation rate)と言う。更に、予め濃度がわかっている標準試料について、凝集率を求め、両者の関係をグラフにプロットすることによって、標準曲線を得ることができる。これに対して、検体の凝集率を照合すれば、検体に含まれる測定対象親和性物質の濃度を明らかにすることができる。
あるいは前記標準曲線を回帰式として表すこともできる。回帰式が得られれば、凝集率を回帰式に代入することによって、測定対象親和性物質の濃度を算出することもできる。
一方レーザー回析散乱法とは、粒子にレーザーを照射した際に生じる揺らぎを検出することにより粒子の計数と平均径を測定するものである。いずれの場合も、測定精度を高めるために、粒子の誤測定を抑制する目的として、反応粒子を希釈、超音波の印加又は/及びシースフォロー方式などを用いることが好ましい。
その他にも以下のような方法を、粒子体積の測定方法として示すことができる。
遠心沈降法:液中における粒子の沈降速度と粒径の関係を示すストークスの式により粒径分布を測定する方法。(光透過式遠心沈降法では、ストークスの法則を適用し、同じ比重の粒子ならば大粒のものの方が小粒のものよりも早く沈降することを利用する。その時の粒子濃度を光透過による濁度変化として解析し、粒度分布を求めることができる。)
キャピラリー方式:キャピラリー中を流れる粘性流体のレイノルズ数が小さい場合、そこにはポアズイユの流体が発生する。この流れはキャピラリー中央ほど速く、管壁ほど遅いため、大きな粒子は平均的に速い流束中を、小さい粒子は平均的に遅い流束中を流れて行くことになる。つまり粒子は一定長のキャピラリー中を流れる際、この移動速度の違いにより、サイズ別に分離され検出される。
三次元的画像解析:異なる方向から撮影した複数の画像情報を解析し、粒子の三次元情報を求めることができる。あるいはxy平面の画像情報をz軸方向へスキャンすることにより、粒子の三次元情報を求めることができる。
本発明の測定方法においては、凝集した(またはしなかった)担体粒子が計数される。計数の結果によって、測定対象である親和性物質が定性的に、または定量的に測定される。定性的な測定においては、凝集粒子の存在は、測定対象である親和性物質の存在を意味する。あるいは凝集阻止反応の場合には、凝集の阻止が検出されたときに、測定対象の存在が証明される。
また定量的な測定においては、凝集のレベルを測定対象である親和性物質の量と関連付けることができる。より具体的には、予め親和性物質の量が明らかな試料について本発明の測定方法を行い、凝集粒子の検出結果と親和性物質の量の関係を明らかにしておく。次に、試料について同様の測定を行い、堆積に基づく凝集粒子の検出結果から、親和性物質の量を明らかにすることができる。凝集阻止反応の場合であっても、同様にして定量的な測定は可能である。
粒子および/または凝集塊の計数方法としては、一定の粒子数をカウントする手段においては、2個以上に凝集した粒子数/総粒子数や単粒子/総粒子数など目的に合わせて演算式を選ぶことができる。総粒子数とは、ある計測時間内に計測された全ての粒子の数であっても良いし、反応液の全量を解析の対象とする場合には、もじどおり、反応液に含まれる粒子の総数とすることもできる。反応液に含まれる粒子の総数は、反応液の全容量が明らかな場合には、その一部を計数することによって、近似的に算出することもできる。
あるいは、電気抵抗法やレーザー回析散乱法などによって、一定時間あたりに検出された粒子および/または凝集塊の数に基づいて、親和性物質を検出または測定することができる。つまり、凝集反応により単粒子は凝集して凝集塊を形成することから、時間当たりに計数される粒子数が少なくなる。または、所定数の粒子および/または凝集塊を計数するに要する時間を指標とすることもできる。このような計数方法を本発明に適用する場合には、それぞれ粒子および/または凝集塊の数と、親和性物質の量との間の関係を、回帰式として表すことができる。
抗体が感作された粒子は、抗原の濃度に応じて、2個以上の粒子からなる凝集塊の割合が多くなる。そして2個以上に凝集した粒子数/総粒子数で表される凝集率は、1.00(100%)に収束する。
コールター原理にしろレーザー回析散乱法にしろ、粒子の三次元情報を計測する方法は、二次元的な画像データを解析する方法と比較して、簡単な機器構成によって、高精度な解析が期待できる。既に述べたように、二次元的な画像データの解析においては、反応液の容積が制限される。これに対して三次元情報を計測する方法は、フロー式の解析手法を応用できるため、反応液の容積は制限されない。また反応空間の物理的な形状も制限されない。これらの理由により、機器構成はシンプルとなる。加えて、反応液量を自由に設定できることが、再現性や検出感度の向上に貢献する。
あるいは本発明は、凝集阻止反応系に応用することもできる。凝集試薬を利用する、凝集阻止反応に基づく免疫学的粒子凝集反応法の原理は既に述べた。上記工程によって、免疫学的粒子凝集反応に本発明を応用することができる。上記工程を構成する電圧パルスの印加や凝集塊の形成レベル、あるいは凝集塊を形成しなかった担体粒子のレベルの解析は、先に具体的に述べたような方法によって実施することができる。
なお凝集阻止反応の原理に基づいて本発明を実施する場合には、2個以上の粒子が凝集した凝集塊がより多く生成される条件を選択することが望ましい。あるいは、単粒子/総粒子数を指標として凝集レベルを評価する方法が好ましい。凝集阻止反応の原理に基づく場合には、このような演算式を利用したほうが、2個以上に凝集した粒子数/総粒子数の演算式に基づく解析よりも、高い感度を期待できる。
加えて本発明は、上記測定方法を実施するための装置を提供する。すなわち本発明は、特定の物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、前記特定物質とを含む反応液に電圧パルスを印加する手段を含む、担体粒子を凝集させるための装置において、反応液の温度を37℃〜90℃に加熱するための手段を有することを特徴とする装置を提供する。
あるいは本発明は、以下の要素を含む、測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定すべき親和性物質との結合を、前記担体粒子の親和性物質または凝集試薬による凝集を指標として測定するための測定装置を提供する。本発明の測定装置の構成例を図1、あるいは図5に示した。
a:反応液を保持するための空間、
b:反応液の温度を37℃〜90℃でインキュベートするための手段、
c:反応液に電圧パルスを印加するための手段、
d:パルス電圧の印加時における反応液の温度を0℃〜20℃とするための手段、および
e:反応液に含まれる担体粒子と担体粒子の凝集塊のいずれか、または両方を計数するための手段
本発明において、a:反応液を保持するための空間は、反応液を保持するための任意の空間を利用することができる。微量の試料を反応させるためには、小容量の空間であることが有利である。たとえば1μL〜10mL、好ましくは10〜500μL程度の空間を利用することができる。この空間は、必要に応じて、試料や試薬の供給手段、あるいは後に述べる担体粒子の計測手段を装備することもできる。空間に収容される反応液は、測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定対象である親和性物質を含む試料で構成される。あるいは凝集阻止反応系においては、更に凝集試薬成分が添加される。
本発明において、a:反応液を保持するための空間には、b:反応液の温度を37℃〜90℃でインキュベートするための手段が装備される。反応液を所定の温度に保持するためには、たとえば温度センサーと加熱手段を利用することができる。加熱手段としては、ヒーターやペルチェ素子を利用することができる。
次に本発明におけるc:反応液に電圧パルスを印加するための手段について説明する。電圧パルスは、反応液に接触した電極を通じて印加される。担体粒子を電場に整列されるための電極は、たとえば先に記載した先行技術文献においても利用されている。これら公知の電極を、本発明に利用することができる。本発明の装置には、電極に電圧を供給するための電源を装備することができる。
本発明の装置における電圧パルスを印加するための電極は、少なくとも1組(2つ)の電極で構成される。複数の異なる方向の電圧パルスを与えるために、3以上の電極を備えることもできる。たとえば、3つの電極A、B、Cを配置し、A−B間、B−C間、およびA−C間の3つの方向の電圧パルスを印加することができる。この他、2組(4つ)の電極を配置し、直行する電圧パルスを印加することもできる。
更に、異なる方向の電圧パルスを印加するために、電極を駆動する機構を備えることができる。たとえば、反応液の中で電極を回転させることにより、複数の異なる方向から電圧パルスを印加することができる。
本発明の装置は、d:パルス電圧の印加時における反応液の温度を0℃〜20℃とするための手段を備える。反応液を0℃〜20℃に保つための好ましい手段として、温度センサーとペルチェ素子を用いることができる。
更に本発明の装置は、e:反応液に含まれる担体粒子と担体粒子の凝集塊のいずれか、または両方を計数するための手段を含む。該計数手段は、前記空間に装備することができる。あるいは前記空間に保持された反応液を前記空間から取り出して計数手段に導入した後に、計数することもできる。
三次元情報を指標として凝集した、またはしなかった担体粒子を計数する手段としては、コールター原理、あるいはレーザー回析散乱法を利用した計測手段を利用することができる。コールター原理のためには、たとえば前記空間内の反応液を、コールター原理のための電極を備えたアパーチャーに導入して、必要な解析が行われる。レーザー回析散乱法を利用する場合も同様に、解析のための光学セルに反応液を導入して解析すればよい。
本発明において、電場においてパールチェイン化された担体粒子は、必要に応じて再分散させた後に、計数することができる。本発明の装置には、担体粒子の再分散のための機構を装備することができる。担体粒子は、希釈や超音波処理によって再分散することができる。
本発明の装置を構成する上記(a)-(e)の要素は、1つの連続する流路内に配置することができる。あるいは、各要素を不連続な空間として構成し、各要素の間を反応液を移動させることによって、本発明の測定方法を実施することもできる。
本発明の装置には、上記測定方法を実施するための付加的な機構を組み合わせることができる。本発明の装置に組み合わせることができる付加的な機構を、以下に例示する。
試料の分取機構
試料の希釈機構
測定結果の記録機構
測定結果の表示機構
測定結果の印刷機構
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
実施例1 抗原抗体反応の促進化
(1)AFP抗体感作ラテックス試薬の調製
0.1mgの抗αフェトプロテイン(AFP)抗体(ダコ社製)を1mLのグリシン緩衝液(50mMグリシン、50mM塩化ナトリウム、0.09%アジ化ナトリウム含有、以下GBSと略す)に溶解し、2.0μmのラテックス(積水化学工業製、固形分1%懸濁液)1mLを加えて37℃で2時間攪拌した後、感作したラテックスを遠心分離して上清を除去した。沈殿を0.5%牛血清アルブミンのグリシン緩衝液(0.5%BSA-GBS)1mLに懸濁させ、抗AFP抗体感作ラテックス試薬を調製した。
(2)測定装置
図1(A)の装置を使用して、親和性物質(AFP)を抗原抗体反応によって測定した。
図1の装置は、検体と試薬1(緩衝液)を分注して混合し、更に試薬2(ラテックス試薬)を分注して混合し、反応液とするための分注・攪拌槽1及び温度コントロール機構2を備える。ただし実際には、1試薬系の場合には試薬1(緩衝液)の分注は省略できる。次に反応槽3(パルス印加槽)に反応液を移動させ、電極4を介して反応液に電圧パルスを数秒から数十秒間印加される。電場に置かれた担体粒子は、パールチェイン化される。電圧パルスを印加された反応液は、希釈槽5で希釈され、粒度分布計6を用いて担体の凝集状態が測定される。図1(B)は、パルス印加槽の断面を示す図である。電極間の距離は0.8mm、電極の厚さは0.03mm、電極の長さは20mmである。
(3)測定方法
0.5%BSA-GBSを用いて、AFP抗原液を希釈して濃度0、0.0075及び0.015ng/mLの検体液を調製した。これらの検体3μLと前述した抗AFP抗体感作ラテックス試薬3μLを試験管にとり、混和し20秒間45℃〜80℃でインキュベーションした後、直ちに電極付き反応セルに注入した。(2)の装置を用いて、周波数200KHzの交流電圧(矩形波)±12V/mmの電解強度で30秒間、電圧パルスを印加した。30秒間の印加後、直ちに電場を切り、反応液を生理食塩水に希釈してコールター・マルチサイザーを使用してラテックス粒子の粒度分布を測定し、ラテックスの凝集率(Agglutination Ratio;AR;%)を、以下の式により求めた。
AR=(2個以上に凝集した粒子数)/(総粒子数)×100 (%)
結果を図2に示した。図2に示すように、本発明の方法においては、従来法に比べて高い凝集率が確認された。
本発明の条件:電圧パルスを印加する前の反応液を高温下(45℃、62℃、80℃)で20秒間インキュベート
従来法の条件:電圧パルスを印加する前の反応液は室温(25℃)で調整し、高温処理なし
この結果により、本発明によって、従来法よりも更に高感度に測定できることがわかる。また、パルス電圧を印加しない一般的なラテックス凝集法において、37℃20分間のインキュベートでは、0.015pg/mLの低濃度域の反応は認められなかった。
比較例1
実施例1の各検体と抗AFP感作ラテックス試薬3μLずつを試験管にとり、25℃で20秒間インキュベーションした後、電極付き反応セル注入して、実施例1と同様に高周波電圧を印加した。25℃のインキュベーション以外の操作は実施例1の操作に従った。結果を図2に示した。
比較例2
実施例1の各検体と抗AFP感作ラテックス試薬3μLずつを試験管にとり、37℃で20分間インキュベーションした。この反応液0.5μLを20mLの生理食塩水20mLに希釈して、実施例1のようにコールター・マルチサイザーを使用してラテックス粒子の粒度分布を測定して、同様に凝集率を算出した。結果を図2に示した。図2から、本発明は従来法(パルス電圧を印加する前の温度処理なし)に比べ高感度に測定することができることがわかる。
実施例2 抗原抗体反応の促進
(1)AFP抗体感作ラテックス試薬の調製
実施例1と同様にして、抗AFP抗体感作ラテックス試薬を調製した。
(2)測定装置
図1の装置を使用して、親和性物質(抗原抗体反応)を測定した。
(3)測定方法
0.5%BSA-GBSを用いて、AFP抗原液を希釈して濃度0、0.0075及び0.015ng/mLの検体液を調製した。これらの検体3μLと前述した抗AFP抗体感作ラテックス試薬3μL試験管にとり、混和し62℃で0から180秒間インキュベーションした後、直ちに電極付き反応セル注入して、前述の装置を用いて、周波数200KHzの交流電圧(矩形波)±12V/mmの電解強度で30秒間印加しパールチェインを形成させた。この30秒間の印加後、直ちに電場を切り反応液を生理食塩水に希釈してコールター・マルチサイザーを使用してラテックス粒子の粒度分布を測定し、ラテックスの凝集率(Agglutination Ratio;AR;%)を、以下の式により求めた。
AR=(2個以上に凝集した粒子数)/(総粒子数)×100 (%)
(4)結果
結果を図3に示した。図3に示すように、本発明の条件においては、従来法に比べて凝集率が高くなった。
本発明の条件:電圧パルスを印加する前の反応液を高温下(62℃)で5〜180秒間(5sec、20sec、180sec) インキュベート
従来法の条件:電圧パルスを印加する前に高温処理なし(0sec)
すなわち本発明によって、従来法よりも更に高感度に測定できることがわかる。
実施例3 抗原抗体反応の促進化
(1)PSA抗体感作ラテックス試薬(試薬2)の調製
0.1mgの抗PSA抗体(ダコ社製)を1mLのグリシン緩衝液(50mMグリシン、50mM塩化ナトリウム、0.09%アジ化ナトリウム含有、以下GBSと略す)に溶解し、2.0μmのラテックス(積水化学工業製、固形分1%懸濁液)1mLを加えて37℃で2時間攪拌した後、感作したラテックスを遠心分離して上清を除去した。沈殿を0.5%牛血清アルブミンのグリシン緩衝液(0.5%BSA-GBS)1mLに懸濁させ、抗PSA抗体感作ラテックス試薬を調製した。
(2)PEG20000を含有するTris塩酸緩衝液(試薬1)の調製
0.5%牛血清アルブミンの50mM−Tris塩酸緩衝液(50mM Tris、50mM塩化ナトリウム、0.09%アジ化ナトリウム含有、pH8.4)にポリエチレングリコール(分子量20000、以下PEG20000と略す)を0.1〜1.0%含有する反応促進試薬を調製した。対照法としてPEG20000を0濃度の試薬を調製した。
(3)測定装置
図1の装置を使用して、親和性物質(抗原抗体反応)を測定した。(温度コントロール機構2は室温設定とした。)
(4)測定方法
0.5%BSA-GBSを用いて、PSA抗原液を希釈して濃度0、及び9.5ng/mLの検体液を調整した。これらの検体1μLとPEG20000を0〜1.0%含有する0.5%BSA-Tris塩酸緩衝液3μLを混和した後、前述した抗PSA抗体感作ラテックス試薬3μL試験管にとり、混和後、直ちに電極付き反応セル注入た。前述の装置を用いて、周波数200KHzの交流電圧(矩形波)±12V/mmの電解強度で電圧パルスを30秒間印加した。30秒間の印加後、直ちに電場を切り反応液を生理食塩水に希釈してコールター・マルチサイザーを使用してラテックス粒子の粒度分布を測定し、ラテックスの凝集率(Agglutination Ratio;AR;%)を、以下の式により求めた。
AR=(2個以上に凝集した粒子数)/(総粒子数)×100 (%)
(5)結果
結果を図4に示した。図4から、本発明は対照法に比べ更に高感度に測定できることがわかる。
実施例4 凝集反応の促進
(1)抗AFP抗体感作ラテックス試薬の調製
実施例1と同様にして、抗AFP抗体感作ラテックス試薬を調製した。
(2)測定装置
図5(A)の装置を使用して、AFPを抗原抗体反応により測定した。
図5(A)の装置は、検体と試薬1(緩衝液)を分注して混合し、更に試薬2(ラテックス試薬)を分注して混合し、反応液とするための分注・攪拌槽及び温度コントロール機構を備える。ただし実際には、1試薬系の場合には緩衝液の分注を省略できる。次に反応槽2(パルス印加槽)に反応液を移動させ、電極3を介して電圧パルスを数秒から数十秒間印加する。このとき反応槽は温度コントロールユニットにより4℃に冷却される。電圧パルスを印加された反応液は、希釈槽5で希釈され、粒度分布計6を用いて担体の凝集状態が測定される。図5(B)は、パルス印加槽の断面を示す図である。電極間の距離は0.8mm、電極の厚さは0.03mm、電極の長さは20mmである。
(3)測定方法
0.5%BSA-GBSを用いて、AFP抗原液を希釈して濃度0及び0.0075ng/mLの検体液を調製した。これらの検体3μLと前述した抗AFP抗体感作ラテックス試薬3μL試験管にとり、混和し直ちに電極付き反応セルに注入した。前述の装置を用いて、周波数200KHzの交流電圧(矩形波)±12V/mmの電解強度で反応液に電圧パルスを30秒間印加した。このとき、反応セルの温度は4℃に維持した。30秒間の印加後、直ちに電場を切り反応液を生理食塩水に希釈してコールター・マルチサイザーを使用してラテックス粒子の粒度分布を測定し、ラテックスの凝集率(Agglutination Ratio;AR;%)を、以下の式により求めた。
AR=(2個以上に凝集した粒子数)/(総粒子数)×100 (%)
前述の操作を同様に5回繰り返して測定を行い、測定結果の平均値および平均値±2.6SDを求め、図6に示した。
比較例3
実施例4の各検体と抗AFP感作ラテックス試薬を用いて、反応セルの温度を22℃とするほかは全て実施例4の操作にしたがった。結果を図7に示した。
比較例4
実施例4の各検体と抗AFP感作ラテックス試薬3μLずつを試験管にとり、37℃で20分間インキュベーションした。この反応液0.5μLを20mLの生理食塩水20mLに希釈して、実施例4のようにコールター・マルチサイザーを使用してラテックス粒子の粒度分布を測定して、同様に凝集率を算出した。また、実施例4と同様に5回繰り返し測定を行い、その結果を図8に示した。
抗原濃度が0の場合の測定値(バックグランドシグナル)が、ある濃度の抗原を測定したときの値と識別できれば、この濃度の抗原を測定することができる。測定可能な抗原濃度の最小値が、検出限界である。たとえば、次の値AとBの重なりがなければ、0.0075ng/mL以上の抗原を検出することができる。
測定値A:抗原量0ng/mLと0.0075ng/mLを繰り返し測定したとき、「0ng/mLを測定した凝集率の平均値+2.6SD
測定値B:0.0075ng/mLを測定した凝集率の平均値−2.6SD
図6、図7、および図8から各条件における検出限界を比較すると、本発明の方法(図6)の検出限界は0.0075ng/mLといえる。一方、従来法(図7および図9)においては、この濃度は検出できない。このことから、電圧パルスを印加中の反応液を低温に維持する本発明は、従来法に比べ非常に短時間で更に高感度に測定できることがわかる。
実施例5 凝集反応の促進化
(1) 抗PSA抗体感作ラテックス試薬(試薬2)の調製
実施例3と同様にして、抗PSA抗体感作ラテックス試薬を調製した。
(2)Tris塩酸緩衝液(試薬1)の調製
Tris塩酸緩衝液(50mM Tris、50mM塩化ナトリウム、0.09%アジ化ナトリウム、0.25%PEG20000を含有、pH8.4)に牛血清アルブミン(以下、BSAと略す)を0.5%、2.5%、5%、7.5%及び10%含有する試薬1をそれぞれ調製した。
(3)測定装置
図1の装置を使用して、親和性物質(抗原抗体反応)を測定した。温度コントロール機構2は室温設定とした。
(4)測定方法
0.5%BSA-GBSを用いて、PSA抗原液を希釈して濃度0、9.5及び32ng/mLの検体液を調製した。これらの検体1μLと0.5%又は、2.5%又は、5%又は、7.5%又は、10%のBSAを含むTris緩衝液3μLを混和した後、前述した抗PSA抗体感作ラテックス試薬3μLを加え、混和後、直ちに電極付き反応セル注入した。前述の装置を用いて、周波数200KHzの交流電圧(矩形波)±12V/mmの電解強度で電圧パルスを30秒間印加した。30秒間の印加後、直ちに電場を切り反応液を生理食塩水に希釈してコールター・マルチサイザーを使用してラテックス粒子の粒度分布を測定し、ラテックスの凝集率(Agglutination Ratio;AR;%)を、以下の式により求めた。
AR=(2個以上に凝集した粒子数)/(総粒子数)×100 (%)
なお、最終反応液中のBSA濃度は、0.5%、1.4%、2.4%、3.5%、4.6%である。ここで最終反応液中のBSA濃度0.5%は対照法として比較した。
(5)反応液の温度測定
前述の測定方法により、パールチェインを形成させたときの反応液の温度変化を測定した。
(6)最終反応液の粘度測定
前述の最終反応液(BSA濃度0.5%〜4.6%)、BSA濃度0.3%及び6.8%の反応液の4〜52℃での粘度を、振動式粘度計(ビスコメイト)を使用して測定した。
表1
-------------------------------------------
最終反応液中のBSA濃度 印加前 遮断直前
0.5% 24℃ 37℃
1.4% 24℃ 38℃
2.4% 25℃ 37℃
3.5% 25℃ 38℃
4.6% 24℃ 37℃
-------------------------------------------
(7)結果
結果を図9および図10、ならびに表1に示した。
図9に示すように、最終反応液中のBSA濃度0.5%から3%に増加させるにつれて各濃度の凝集率が大きくなった。PSA 0ng/mL(ブランク)においても凝集率が上昇する傾向であったためブランク補正した凝集率を比較した。その結果、最終反応液中のBSA濃度を0.5%から3%に増加させることによって、顕著に凝集率が上昇することが確認された。すなわち本発明により、更に高感度化できることがわかる。
図10から、最終反応液中のBSA濃度と粘度の関係、並びに反応液中の温度と粘度の関係がわかる。まず、図9および図10からパールチェイン形成中の温度制御を行わない条件下では、最終反応液中のBSA濃度を0.5%から3%に増加させることにより凝集率が上昇する。このとき、最終反応液中の粘度は0.75から0.9mPasに増加する。すなわち、最終反応液中の粘度を0.75から0.9mPasに調整することによって、高感度化できることがわかる。
表1は交流電圧を印加してパールチェインを形成させたときの反応液の温度変化を測定した結果である。印加前の反応液の温度は室温(約25℃)であったが、印加後は約37℃に上昇した。一方、従来法では最終反応液中のBSA濃度は0.5%程度であったが、電圧パルスの印加による温度上昇により反応液の粘度は、0.8 mPas未満(0.6〜0.75mPas)であったことがわかる。以上のことから、反応液の粘度を0.8〜0.9mPasの条件下で交流電圧を印加することにより、更に高感度に測定できることがわかる。
更に実施例4で示した電圧パルスを印加中の反応液の温度を低温に維持する該発明に関わる反応液の粘度は表1から1.4mPasであったことがわかる。これらのことから、反応液中の粘度を0.8〜3mPasの条件下で交流電圧を印加することにより、更に高感度に測定できることがわかる。以上の結果により、感度の向上のための好ましい粘度は1〜3mPas、より好ましくは1〜2mPasであることが確認された。
本発明の測定方法、あるいは測定装置は、親和性を有するあらゆる物質の測定に有用である。具体的には、生体から採取された試料の解析によって、様々な疾患の診断に有用な情報を得ることができる。より具体的には、ホルモン、腫瘍マーカー、酵素、薬剤、感染性病原体、あるいはそれらに対する抗体は、医療機関において、日常的に測定されている。これらの測定対象成分は、いずれも本発明における親和性物質に含まれる。あるいは生体試料や食品、あるいは環境から採取された試料に含まれる微生物や薬剤などを本発明によって測定、あるいは検出することもできる。
(A)は、本発明に基づく装置の構成を示す図である。また(B)は、本発明に基づく装置を構成するパルス印加槽の断面を示す。 図中の符号はそれぞれ符号の説明に記載した要素を示す。 図1の構成を有する測定装置によって本発明の測定方法を実施したときに得られた測定結果(前処理温度との関係)を示す。図中、縦軸は凝集率 P/T(%)を、横軸はAFP濃度(ng/mL)を示す。 図1の構成を有する測定装置によって本発明の測定方法を実施したときに得られた測定結果(高温下における前処理時間との関係)を示す。 図1の構成を有する測定装置によって本発明の測定方法を実施したときに得られた測定結果(反応促進剤との関係)を示す。図中のプロットはそれぞれ以下の結果を示す。□:抗原量0ng/mL(ブランク値) ○:抗原量9.5ng/mL ●:ブランク補正(9.5−0ng/mL) (A)は、本発明に基づく装置の構成を示す図である。また(B)は、本発明に基づく装置を構成するパルス印加槽の断面を示す。 図中の符号はそれぞれ符号の説明に記載した要素を示す。 図5の構成を有する測定装置によって本発明の測定方法を実施したときに得られた測定結果を示す。図中、縦軸は凝集率 P/T(%)を、横軸はAFP濃度(ng/mL)を示す。 図6の対照法の結果を示す。図中、縦軸は凝集率 P/T(%)を、横軸はAFP濃度(ng/mL)を示す。 図6の対照法の結果を示す。図中、縦軸は凝集率 P/T(%)を、横軸はAFP濃度(ng/mL)を示す。 図9は、本発明による前立腺特異抗原(PSA)の測定において、反応液に添加されたウシ血清アルブミン(BSA)の担体粒子の凝集率に与える影響を示すグラフである。図中、縦軸は凝集率(%)を、横軸は反応液におけるBSAの最終濃度を示す。各カラムは、左から順にPSA 0ng/mL、9.5ng/mL、および32ng/mLの結果を示す。グラフ中には、各BSA濃度におけるPSA 0ng/mLにおける凝集率と、9.5ng/mLにおける凝集率の差(−●−)、および32ng/mLにおける凝集率の差(−○−)を合わせて示した。 反応液の粘度に与える、反応液中のウシ血清アルブミン(BSA)の濃度の影響を示すグラフである。図中、縦軸は粘度(mPas)を、横軸は温度(℃)を示す。
符号の説明
図1
1:分注+攪拌手段 2:温度コントロール機構
3:反応槽 4:電極(パルス印加手段)
5:希釈手段 6:粒度分布測定手段
図2
1:分注+攪拌手段 2:反応槽
3:電極(パルス印加手段) 4:温度コントロール機構
5:希釈手段 6:粒度分布測定手段

Claims (25)

  1. 次の工程を含む、親和性物質の測定方法。
    (1)測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定対象親和性物質とを混合した反応液をインキュベートする工程、
    (2)工程(1)の反応液に、電圧パルスを印加する工程、
    (3)工程(2)の後に、測定対象である親和性物質との結合によって形成された担体粒子の凝集塊、および測定対象である親和性物質と結合せず凝集塊を形成しなかった担体粒子のいずれかまたは両方を計数する工程、および
    (4)工程(3)の後に、凝集塊の形成レベル、および凝集塊を形成しなかった担体粒子のレベルのいずれか、または両方に基づいて測定対象物質のレベルを決定する工程
  2. 工程(1)が、前記反応液を37〜90℃でインキュベートする工程である請求項1に記載の方法。
  3. 工程(1)が、前記反応液を40〜90℃でインキュベートする工程である請求項2に記載の方法。
  4. 前記反応液中に水溶性高分子が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  5. 工程(2)における反応液の粘度を0.8〜3mPasに調整する請求項1に記載の方法。
  6. 工程(2)を0〜20℃で行うことを特徴とする請求項1に記載の親和性物質の測定方法。
  7. 工程(2)を0〜10℃で行うことを特徴とする請求項6に記載の親和性物質の測定方法。
  8. 凝集塊および凝集塊を形成しなかった担体粒子のいずれか、または両方を、その三次元情報を指標として計数する請求項1に記載の方法。
  9. 親和性物質と結合パートナーの結合が、抗原抗体反応による結合である請求項1に記載の方法。
  10. 親和性物質が抗原であり、結合パートナーが抗体またはその抗原結合領域を含む断片である請求項9に記載の方法。
  11. 親和性物質が抗体またはその抗原結合領域を含む断片であり、結合パートナーが抗原またはその抗原決定基を含む断片である請求項9に記載の方法。
  12. 電圧パルスが交流電圧パルスである請求項1に記載の方法。
  13. 次の工程を含む、親和性物質の測定方法。
    (1’)少なくとも測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定対象親和性物質とを含む反応液を、凝集試薬成分と混合する前または後にインキュベートする工程であって、前記担体粒子は凝集試薬によって凝集し、かつ測定対象親和性物質によってその凝集は阻害される工程
    (2’)凝集試薬成分の存在下で工程(1’)の反応液に、電圧パルスを印加する工程、
    (3’)工程(2’)の後に、凝集試薬との結合によって形成された担体粒子の凝集塊、および測定対象である親和性物質との結合によって凝集を阻害された担体粒子のいずれかまたは両方を計数する工程、および
    (4)工程(3’)の後に、凝集塊の形成レベル、および凝集塊を形成しなかった担体粒子のレベルのいずれか、または両方に基づいて測定対象物質のレベルを決定する工程
  14. 工程(1’)において、前記反応液をインキュベート後、工程(2’)の前に凝集試薬を混合する請求項13に記載の方法。
  15. 凝集試薬を混合後に、工程(2’)の前に更にインキュベートする工程を含む請求項13に記載の方法。
  16. 工程(1’)において、前記反応液を凝集試薬の存在下でインキュベートした後、工程(2’)を実施する請求項13に記載の方法。
  17. 特定の物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、前記特定物質とを含む反応液に電圧パルスを印加する手段を含む、担体粒子を凝集させるための装置において、反応液の温度を37℃〜90℃に加熱するための手段を有することを特徴とする装置。
  18. 特定の物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、前記特定物質とを含む反応液に電圧パルスを印加する工程を含む、担体粒子を凝集させるための方法において、電圧を印加している間の反応液の温度を0℃〜20℃とすることを特徴とする方法。
  19. 結合パートナーと特定の物質との結合が、抗原抗体反応である請求項18に記載の方法。
  20. 電圧パルスが交流電圧パルスである請求項18に記載の方法。
  21. 反応液に水溶性高分子を添加する請求項18に記載の方法。
  22. 反応液の粘度を0.8〜3mPasに調整する請求項18に記載の方法。
  23. 前記担体粒子と特定の物質とを、電圧パルスを印加する前に37℃〜90℃でインキュベートする工程を含む請求項18に記載の方法。
  24. 特定の物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、前記特定物質とを含む反応液に電圧パルスを印加する手段を含む、担体粒子を凝集させるための装置において、電圧を印加している間の反応液の温度を0℃〜20℃にするための手段を有することを特徴とする装置。
  25. 以下の要素を含む、測定対象親和性物質との結合活性を有する結合パートナーを結合した担体粒子と、測定すべき親和性物質との結合を、前記担体粒子の親和性物質または凝集試薬による凝集を指標として測定するための測定装置。
    a:反応液を保持するための空間、
    b:反応液の温度を37℃〜90℃でインキュベートするための手段、
    c:反応液に電圧パルスを印加するための手段、
    d:パルス電圧の印加時における反応液の温度を0℃〜20℃とするための手段、および
    e:反応液に含まれる担体粒子と担体粒子の凝集塊のいずれか、または両方を計数するための手段
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